(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028941
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】血液中のCandida aurisを処置するための方法および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/54 20060101AFI20240227BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240227BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/58 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K31/54
A61K47/60
A61K47/34
A61K47/36
A61P31/10
A61K9/51
A61K9/58
A61K47/18
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208579
(22)【出願日】2023-12-11
(62)【分割の表示】P 2020534324の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/608,843
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518057435
【氏名又は名称】コーメディクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ディルッチオ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ライデンバーグ,ブルース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血液中のCandida aurisを処置するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、血液中のC.aurisを処置するのに有効な濃度でタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を血液に投与するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中のCandida aurisを処置するための方法であって、血液中のC.aurisを処置するのに有効な濃度でタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を血液に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、ナノ粒子送達系内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の固体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が粉末を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
液体コアが溶液または懸濁液を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナノ粒子送達系が、多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングで密封さ
れた、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
液体コアが溶液または懸濁液を含み、多孔質体が多孔質球体またはナノチューブを含み、固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリマーに結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
1種または複数ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートが、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルトリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含むコア;ならびに
一時的に当該コアを遮蔽する加水分解性被覆物
を含むナノ粒子
を含む、医薬組成物。
【請求項31】
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン固体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請
求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
担体をさらに含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン液体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項38】
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
担体をさらに含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項42】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ナノ粒子が、多孔質体によって担持され、後に固体加水分解性被覆物で密封されたタウロリジン液体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項44】
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
担体をさらに含む、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項48】
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
ポリマーに結合されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項50】
ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項52】
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートが、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを含む、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルトリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項52に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
係属中の先願特許出願への参照
本特許出願は、CorMedix,Inc.およびRobert DiLuccioらによって2017年12月21日に出願された、血液中のCandida aurisを処置するための方法および医薬組成物(METHODS AND PHARMACEUTICAL COMPOSITIONS FOR TREATING CANDIDA AURIS IN BLOOD)に関する係属中の先願米国特許仮出願第62/608,843号(代理人整理番号CORMEDIX-24 PROV)の利益を主張するものであり、その特許出願は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は一般に、患者を処置するための方法および医薬組成物に関し、より詳細には血液中のCandida aurisを処置するための方法および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
1.Candida auris概論
Candida aurisは、酵母として増殖する真菌の一種であり、2009年に初めて記載されている。それは、カンジダ属のうち、ヒトにおいてカンジダ症(カンジダによって引き起こされる真菌感染症)を引き起こす数少ない種の一つである。多くの場合、カンジダ症は、免疫系が弱った患者による院内感染として起こる。Candida auris(C.aurisと呼ばれることもある)は、血流(真菌血症)、中枢神経系、内臓などが感染する、侵襲性カンジダ症を引き起こし得る。Candida aurisは、その多剤耐性のために、最近ますます関心を集めている。Candida aurisは、他のカンジダ種と誤認されやすいために、処置も複雑である。
【0004】
2.臨床的意義
上述のように、Candida auris(C.auris)は、ヒトにおいてカンジダ症を引き起こすことがある数少ないカンジダ種の一つであり、多くの場合、免疫系が弱った患者による院内感染として起こる。それは、侵襲性カンジダ症を引き起こすことがあり、それにおいて、血流(真菌血症)、中枢神経系、内臓(例えば、腎臓、肝臓、脾臓など)、骨、筋肉、関節、眼、などが侵される。C.aurisは、その多剤耐性のために、臨床上の関心をますます集めている。
【0005】
上にも述べたように、C.aurisは、他のカンジダ種と誤認されやすいために、処置が複雑である。
一般の読者に理解できる、2016年の時点でのC.aurisの臨床的関連性の概略は、ミネソタ大学感染症研究政策センターによって出版された。
【0006】
3.歴史
C.aurisは、日本の東京都健康長寿医療センターで70才の日本人女性の外耳道から単離された後に、初めて記載された。それは、エキノカンジン系の殺真菌剤である、殺真菌剤ミカファンギンの存在下で増殖できることに基づいて単離された。菌株の表現型解析、化学分類学的解析、および系統発生解析から、C.aurisは、カンジダ属の新たな菌株として樹立された。
【0007】
病原性C.aurisの最初の3症例は、2011年に韓国から報告された。2つの分離株は、2009年の研究の間に得られ、3番目は1996年からの保管試料から発見さ
れた。3つの症例すべてに持続性の真菌血症、すなわち血流感染症があり、患者のうち2人は、血流感染症からの合併症のためにその後死亡した。注目すべきことに、分離株は、標準方法を使用してCandida haemuloniおよびRhodotorula
glutinisと当初、誤認されたが、後にDNA配列解析で正しくC.aurisと同定された。これらの最初の症例から、C.aurisによるカンジダ症の有効な処置のためには、正確な種の同定および正しい抗真菌薬の適時の適用が重要であることが強調される。
【0008】
2009~2011年の間に、12のC.auris分離株が、デリー(インド)の2つの病院の患者から得られた。同じ遺伝子型が、別個の状況、すなわち、集中治療、外科、内科、がん、新生児、および小児病棟で見出され、それらは、医療従事者に関して相互排他的であった。これらの患者のほとんどは、持続性カンジダ血症を有しており、高い死亡率が観察された。すべての分離株は同じクローン株のものであり、DNA配列解析によってのみ明確に同定された(以前と同じように、菌株は、確立された診断臨床検査を使用して誤認されていた)。インドの研究者は2013年に「ほとんどの診断研究室は菌株の同定にDNA配列に基づく方法を使用せず、よってC.aurisの流行はほぼ確実に過小評価されているため、C.aurisは、報告されるよりはるかに蔓延していると考えられる」と書いた。
【0009】
C.auris菌は他の大陸に広がり、2016年の初めには、多剤耐性菌株がついには東南アジア諸国で発見された。ヨーロッパでのC.aurisの最初の報告は、ロンドンの心胸部の病院であるブロンプトン王立病院での2016年10月の集団発生であった。
【0010】
2017年4月に、CDC所長、Anne Schuchatは、C.aurisを「破滅的な脅威」と名付けた。2017年5月の時点で、CDCは、そのウェブサイト上で米国でのC.aurisの77の症例を報告している。これらのうち、69の症例は、ニューヨークおよびニュージャージーで採取された試料からであった。
【0011】
よって、C.auris感染症、特にC.aurisの血液媒介感染症を処置するための有効な手法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、C.aurisの血液媒介感染症を処置するための方法および医薬組成物に関する。
より詳細には、本発明は、タウロリジンとして一般に知られる4,4’-メチレン-ビス(テトラヒドロ-1,2,4-チアジアジン)-1,1,1’,1’,-テトラオキシド、および/またはタウロリジン誘導体(下記参照)の、C.auris血液媒介病原体を中和するための使用に関する。
【0013】
本発明によれば、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)は、血液中のC.aurisを処置するように、化合物の非経口送達で許容できる適正な担体と共に医薬組成物中に組み込み、製剤化することができる。
【0014】
本発明の鍵となる態様は、加水分解プロセスによって放出されるタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)の活性部分がC.auris病原体に対して非常に有効になり得るように、C.auris病原体の近傍で長期間、加水分解する、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)を提供することである。この目的のために、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)は、好ましくは、以下の形で供される:
(i)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)を組み込んだ分解性ナノ粒子、例えば、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン固体コア、もしくは固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン液体コア、もしくは多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングによって密封されたタウロリジン液体コアなど(注記:本発明の目的のために、ナノ粒子という用語は、マイクロサイズの寸法を含めた、ナノスケールのサイズ以上の寸法を有する任意の粒子を含むことが意図される);
(ii)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)が、治療部位へ送達するためのポリマーに結合されている、ポリマーベースの系、例えば、タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリエチレングリコール(PEG)に結合されている、PEG化された系;
(iii)固体のタウロリジン含有および/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)含有粒子の懸濁液;
(iv)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)をもたらすプロドラッグ;または
(v)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)の効果を延ばすことができる、タウロリジン含有および/もしくはタウロリジン誘導体(下記参照)含有溶液。
【0015】
本発明の好ましい一形態では、血液中のCandida aurisを処置するための方法であって、血液中のC.aurisを処置するのに有効な濃度でタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を血液に投与するステップを含む方法が提供される。
【0016】
本発明の別の好ましい形態では、
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含むコア;ならびに
一時的にコアを遮蔽する加水分解性被覆物
を含むナノ粒子
を含む、医薬組成物が提供される。
【0017】
本発明の別の好ましい形態では、ポリマーに結合されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
本発明の別の好ましい形態では、1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の目的および特徴は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明によってより完全に開示されるかまたは明らかになるであろう。これらは、添付の図面と共に考察すべきであり、図面において同様の番号は同様の部材を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】タウロリジンの作用機序を示す概略図である。
【
図2】タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を使用してC.aurisの血液媒介感染症を処置することの有効性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.タウロリジン概論
タウロリジン(4,4’-メチレン-ビス(テトラヒドロ-1,2,4-チアジアジン)-1,1,1’,1’,-テトラオキシド)および/またはタウロリジン誘導体(下記
参照)は、抗菌性および抗リポ多糖性を有することが知られている。タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)は、抗炎症性を備えることも知られている。タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)の免疫調節作用は、マクロファージおよび多形核白血球のプライミングおよび活性化によって媒介されると報告されている。
【0021】
タウロリジンは、アミノ酸のタウリンから誘導される。水溶液中で、親分子のタウロリジンは、N-ヒドロキシメチルタウルルタムおよびタウルルタムと平衡を形成し、タウリンアミド、メチレングリコール、およびホルムアルデヒドは下流の誘導体である。本発明の目的のために、N-ヒドロキシメチルタウルルタム、タウルルタム、タウリンアミド、メチレングリコール、およびホルムアルデヒドはすべて、タウロリジン誘導体と考えることができる。タウロリジンの作用機序を示す
図1を参照されたい。
【0022】
タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の活性部分は、誘導体のメチロール基であると考えられており、これが、細菌の細胞壁、細胞膜、および細胞膜のタンパク質、ならびに内毒素および外毒素の一級アミノ基と反応する。微生物は死滅し、生じる毒素は不活化される。in vitroでの破壊時間はおよそ30分である。
【0023】
タウロリジンは、分子式C7H16N4O4S2および融点154℃を有する、白色からオフホワイト色の粉末として存在する。
タウロリジンの一般的な特性として、周囲条件で保管されたときの固体状態における許容できる安定性、およそ170℃での分解を伴う融解、ならびに水溶液および有機溶媒中での以下の溶解度が挙げられる:
水:20℃で1%
希HCl:可溶
希NaOH:可溶
CHCl3:不溶
EtOH:難溶
DMF:およそ60℃で2mL中1g
アセトン:120mL中1g
沸騰エタノール:130mL中1g
沸騰メタノール:170mL中1g
沸騰酢酸エチル:200mL中1g
脱イオン水中のタウロリジンの飽和溶液は、ほぼ血液のpHである、7.4のpHを有する。オクタノールと水(pH7.2に緩衝されている)との間のタウロリジンの見かけの分配係数はおよそ0.13であり、したがって脂肪組織中にいかなる有意な程度にも蓄積しないと予測されるはずである。
【0024】
タウロリジンの合成は、幾つもの特許(米国特許第3,423,408号;スイス特許第482,713号;および英国特許第1,124,285号が含まれる)で扱われており、5段階で実施される:
(1)タウリン(taurinc)、無水フタル酸、氷酢酸、および酢酸カリウムから、カリウムフタルイミドエタンスルホネートを調製する;
(2)次いで、カリウムフタルイミドエタンスルホネートを、オキシ塩化リンでの塩素化によってフタルイミドエタンスルホニルクロリドに変換する;
(3)フタルイミドエタンスルホニルクロリドをアンモニアと反応させて、フタルイミドエタンスルホンアミドを形成する;
(4)フタルイミドエタンスルホンアミドをヒドラジン水和物と反応させて、タウリンアミドヒドロクロリドを形成する;ならびに
(5)タウリンアミドヒドロクロリドおよびホルムアルデヒドから、タウロリジンを調
製する。
【0025】
タウロリジンの抗菌作用は、1998年9月11日に出願された米国特許出願第09/151,885号;米国特許第3,423,408号;などの文献に記載されている。加えて、以下の米国特許は、タウロリジンの様々な用途およびタウロリジンを含有する様々な組成物について記載している:米国特許第4,107,305号、内毒素血症の処置;米国特許第4,337,251号、手術の結果としての癒着形成の排除;米国特許第4,587,268号、吸収性水性ゲル;米国特許第4,604,391号、骨炎または骨髄炎の発生の防止;米国特許第4,626,536号、血液中の毒性タンパク質またはペプチドへの対策;米国特許第4,772,468号、骨空洞の処置;および先天性、手術による、または外傷による欠損を、タウロリジンをその中/上に吸収させた自然骨塩を含む組成物で充填するための方法を対象とする、米国特許第4,882,149号。
【0026】
タウロリジンは、40g/日を超える全身用量、ならびに300gまで、およびそれを超える累積用量で、安全かつ忍容性が高いことが示されている。
【0027】
2.本発明の新規医薬組成物
今回、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を、C.auris血液媒介病原体を中和するようにC.aurisの血液媒介感染症に適用することができることが発見された。例えば、C.auris血液媒介病原体をタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体で処置することの有効性を示す
図2を参照されたい。
【0028】
本発明によれば、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、血液中のC.aurisを処置するように、化合物の非経口送達で許容できる適正な担体と共に医薬組成物中に組み込み、製剤化することができる。
【0029】
本発明の鍵となる態様は、加水分解プロセスによって放出されるタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体(下記参照)の活性部分がC.auris病原体に対して非常に有効になり得るように、C.auris病原体の近傍で長期間、加水分解する、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を提供することである。この目的のために、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、好ましくは、以下の形で供される:
(i)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体を組み込んだ分解性ナノ粒子、例えば、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン固体コア、もしくは固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン液体コア、もしくは多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングによって密封されたタウロリジン液体コアなど(注記:本発明の目的のために、ナノ粒子という用語は、マイクロサイズの寸法を含めた、ナノスケールのサイズ以上の寸法を有する任意の粒子を含むことが意図される);
(ii)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリマーに結合されている、ポリマーベースの系、例えば、タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリエチレングリコール(PEG)に結合されている、PEG化された系;
(iii)固体のタウロリジン含有および/もしくはタウロリジン誘導体含有粒子の懸濁液;
(iv)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体をもたらすプロドラッグ;または
(v)タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体の効果を延ばすことができる、タウロリジン含有および/もしくはタウロリジン誘導体含有溶液。
【0030】
タウロリジンは、それ自体、血液のpH、すなわち7.5~7.4の間に緩衝すべきであり(所望であれば、タウロリジン誘導体も緩衝してもよい)、医薬組成物は、有利なこ
とに、新規タウロリジン含有医薬組成物のために細胞透過性を増大させる物質を含有することができる。
【0031】
血液中に導入するのに適した新規タウロリジン含有および/またはタウロリジン誘導体含有医薬組成物は、pH7.5~7.4に緩衝化された、粉末、溶液(例えば、水溶液)、または懸濁液の形態であってもよく、非経口剤形に通常組み込まれる抗凝固薬および防腐剤と共に製剤化することができる。
【0032】
本発明によれば、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を1種または複数の担体(これらは賦形剤である)と共に含む新規医薬組成物が提供される。担体は、例えば、そのような形態に慣例的なものであってもよく、ゼラチン、滅菌水、および/または懸濁化剤、乳化剤、分散剤、増粘剤、もしくはゲル化剤を含んでもよい。
【0033】
粉末、溶液、または懸濁液の形態の本発明の医薬組成物は、溶液(例えば、水溶液)もしくは懸濁液の場合、好ましくは約0.10重量%~約20.0重量%の間、より好ましくは約0.5重量%~約2.0重量%の間の濃度でタウロリジンを含有してもよく、または粉末の場合、約10重量%までの濃度でタウロリジンを含有してもよい。本発明におけるタウロリジンの製剤は、好ましくは約0.5%、1.0%、2.0%、または4.0%w/体積である。
【0034】
血液中に導入されるタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の量は、血液中のC.auris病原体の濃度に応じて異なり、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の量が、血液中に存在するC.aurisを処置するのに十分であるように調節される。
【0035】
3.ナノ粒子
3.1 ナノ粒子送達系
本発明の一形態では、加水分解性コーティングが加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を覆い、混合物が血液中に導入されたときに、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を血液中での速すぎる加水分解から保護するように、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、ナノ粒子を形成するように、加水分解性コーティング(これは賦形剤である)内に封入される(ナノ粒子は、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の中心と、加水分解性賦形剤のコーティングとを含む)。その後、加水分解性コーティングが加水分解されて、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体が血液に曝露されると、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、加水分解してその活性部分(すなわち、メチロール基)となり、それによってC.auris病原体を処置する局所抗菌効果がもたらされる。このように、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の封入は、C.auris病原体に対して持続性抗菌作用をもたらすように、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の加水分解を遅延させる。
【0036】
言い換えれば、本発明の一形態では、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体が加水分解性コーティングによって封入された状態で、すなわち、ナノ粒子を形成するような状態で、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、加水分解性コーティング(これは賦形剤である)によって覆われる。ナノ粒子が血液中に導入されたとき、加水分解性賦形剤コーティングは、最初に、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の時期尚早な加水分解から保護する。加水分解性コーティングが加水分解されたときに、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体が血液に曝露されると、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、加水分解して、C.auris感染症を処置する(またはC.auris感染症の再発を防止す
る)その活性部分(すなわち、メチロール部分)となる。このように、加水分解性タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の封入は、C.auris病原体に対して持続性抗菌作用をもたらすように、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の加水分解を遅延させる。
【0037】
注記:本発明の目的について、ナノ粒子という用語は、マイクロサイズの寸法を含めた、ナノスケールのサイズ以上の寸法を有する任意の粒子を含むことが意図される。
本発明の好ましい一形態では、ナノ粒子は、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン固体コアを含む。
【0038】
本発明の別の好ましい形態では、ナノ粒子は、固体賦形剤コーティングによっておおわれたタウロリジン液体コアを含む。
本発明のさらに別の好ましい形態では、ナノ粒子は、多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングで密封されたタウロリジン液体コアを含む。
【0039】
本発明の一形態では、加水分解性賦形剤コーティングは、例えば、緩徐に吸収する固体ポリマーを含む。例として、限定するものではないが、ポリマーコーティングは、ポリラクチドまたはポリラクテートを含んでもよい。
【0040】
本発明の一形態では、固体賦形剤コーティングは、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖、最も好ましくは非消化性多糖を含むこともある。例として、限定するものではないが、本発明の好ましい一形態では、多糖コーティングは、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含むこともある。
【0041】
本発明の好ましい一形態では、ナノ粒子は、適切な医薬担体、例えば、流体で血液に送達される。本発明の好ましい一形態では、適切な医薬担体は、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含むこともある。
【0042】
3.2 タウロリジンナノ粒子
タウロリジンナノ粒子は、賦形剤コーティングによって密封された、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の中心を含む。
【0043】
本発明の好ましい一形態では、ナノ粒子は、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン固体コアを含む。例として、限定するものではないが、タウロリジン固体コアは、タウロリジン粉末から形成してもよく、固体賦形剤コーティングは、緩徐に吸収する固体ポリマー、例えば、ポリラクチドまたはポリラクテートを含むものの中の一種から形成してもよい。本発明の好ましい一形態では、固体賦形剤コーティングは、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖、最も好ましくは非消化性多糖を含むこともある。例として、限定するものではないが、本発明の好ましい一形態では、多糖コーティングは、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含むこともある。
【0044】
本発明の別の好ましい形態では、ナノ粒子は、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジン液体コアを含む。例として、限定するものではないが、タウロリジン液体コアは、1,000μg(mcg)/mL~5,000μg(mcg)/mL、最も好ましくは3,000μg(mcg)/mLの濃度のタウロリジン溶液または油中懸濁液、好ましくは栄養物、最も好ましくは中鎖トリグリセリドから形成してもよく、固体賦形剤コーティングは、緩徐に吸収する固体ポリマー、例えば、ポリラクチドまたはポリラクテートを含むものの中の一種から形成してもよい。本発明の好ましい一形態では、固体賦形剤コーティングは、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖、最も好ましくは非消化性多糖を含むこともある。例として、限定するものではないが、本発明の好ましい一形
態では、多糖コーティングは、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含むこともある。
【0045】
本発明の別の好ましい形態では、ナノ粒子は、多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングで密封されたタウロリジン液体コアを含む。例として、限定するものではないが、タウロリジンコアは、1,000μg(mcg)/mL~5,000μg(mcg)/mL、最も好ましくは3,000μg(mcg)/mLでの濃度のタウロリジン溶液または油中懸濁液、好ましくは栄養物、最も好ましくは中鎖トリグリセリドを含む。タウロリジン液体コアは、多孔質体内に含有され、タウロリジンナノ粒子を形成するように、次いで固体賦形剤コーティングで密封される。例として、限定するものではないが、タウロリジンコアは、多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブ内に含有してもよい。タウロリジンが多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブ内に含有される場合、多孔質シリケート球体またはナノチューブの開口部(「細孔」)は、緩徐に吸収する固体ポリマー、例えば、ポリラクチドまたはポリラクテートを含むものの中の一種のコーティングで塞がれていてもよい。本発明の好ましい一形態では、タウロリジンが多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブ内に含有される場合、球体またはナノチューブの開口部(「細孔」)は、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖、最も好ましくは非消化性多糖のコーティングで塞がれることもある。例として、限定するものではないが、本発明の好ましい一形態では、多糖コーティングは、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含むこともある。
【0046】
3.3 タウロリジンが多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブ内に含有されるタウロリジンナノ粒子の製造
タウロリジンが多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブ内に含有される場合、多孔質シリケート球体またはカーボンナノチューブは、好ましくは10nm~1000nmのサイズを有する。多孔質シリケート球体またはナノチューブは、充填およびコーティングの前に完全に清浄にされ、滅菌される。タウロリジン溶液または懸濁液が調製され、多孔質シリケート球体またはナノチューブの親油性は、多孔質シリケート球体またはナノチューブをタウロリジン溶液または懸濁液で充填することを容易にする。
【0047】
充填された球体またはナノチューブは、次いで緩徐に吸収する固体ポリマー、例えば、ポリラクチドまたはポリラクテートを含むものの中の一種のコーティングで被覆される。本発明の好ましい一形態では、充填された球体またはナノチューブは、真菌のマンノプロテインに特異的に結合することとなる多糖で被覆される。例として、限定するものではないが、本発明の好ましい一形態では、多糖コーティングは、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含むこともある。密封コーティング(例えば、ポリラクチド、ポリラクテート、または多糖)は、噴霧乾燥プロセスを通して、充填された球体またはナノチューブ上を被覆してもよい。
【0048】
ナノ粒子は、次いで、血液への送達に適した医薬担体、例えば流体中に混合される。本発明の好ましい一形態では、適切な医薬担体は、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含むこともある。
【0049】
3.4 タウロリジンナノ粒子の抗真菌作用の機序
使用において、医薬組成物(例えば、担体およびタウロリジン含有ナノ粒子)は、患者の血流中に導入される。医薬組成物が入口点からC.auris感染症の部位に移動するとき、タウロリジンコアを覆う加水分解性ポリマーコーティングはある種の犠牲層として働き、ナノ粒子が血流を進んで行くにつれて時間の経過と共に緩徐に分解する。最終的に加水分解性ポリマーコーティングは、タウロリジンコアが血液に曝露されるところまで分解する。タウロリジンコアは、次いで加水分解して、C.auris感染症を標的とする
活性部分(メチロール誘導体)となる。
【0050】
ナノ粒子が、真菌マンノプロテインに特異的に結合することとなる多糖を含む外側コーティングを含む場合では、タウロリジンナノ粒子が真菌の細胞壁とぶつかると、ナノ粒子の外側多糖コーティングは真菌のマンノプロテインに結合し、ブラウン運動により、真菌の細胞壁にナノ粒子中の細孔から詰め物を取り除くエネルギーが与えられる。細孔から詰め物が取り除かれると、タウロリジンの油液または懸濁液が放出され、タウロリジンが血液または組織液中に溶解する。タウロリジンが水に曝露されると、加水分解して、真菌細胞壁の直ぐ近くに作られる活性部分(メチロール誘導体)となる。タウロリジンの活性部分の、この超局所送達によって、標的微生物に対するタウロリジンの選択性が強化される。
【0051】
4.ポリマー担体(例えば、PEG)を有する非経口送達系
本発明の別の形態では、非経口送達系は、治療部位へ送達するためのポリマーに結合されているタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を含むこともある(例えば、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリエチレングリコール(PEG)に結合されている場合など)。
【0052】
本発明の好ましい一形態では、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体は、持続性抗菌作用をもたらすように、タウロリジンおよび/もしくはタウロリジン誘導体の溶解度を増大させるために、またはそれらの分散度を増大させるために、ならびにそれらの安定性を強化するために、ならびにそれらの加水分解を遅延させるために、ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート(またはポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ)、例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲート(またはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ)中に分散されて、薬物組成物に製剤化される。
【0053】
本発明の一形態では、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体を非経口投与するための新規医薬組成物が提供され、ここで、新規医薬組成物は、以下:
a)ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせの(例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせを含む)水溶液または混合物;
b)タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体;ならびに
c)ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせを含む(例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせを含む)溶解促進剤
を含む。
【0054】
本発明の一形態では、タウロリジンを非経口投与するための新規医薬組成物を作製するための方法は、以下のステップ:
・ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ(例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ)の水溶液を容器に添加するステップ;
・液体またはスラリーの形態のタウロリジンおよび/またはタウロリジンの誘導体を容器に添加するステップ;
・タウロリジンおよび/またはタウロリジンの誘導体が、ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ(例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ)の水溶液中に目で見て分散されるまで混合するステップ;
・予め溶解させた賦形剤(例えば、ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート、例えば、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲート)を容器に添加するステップ;ならびに
・均質な溶液が得られるまで混合するステップ
を含む。
【0055】
本発明は、静脈注射などの非経口製剤用の組成物を含む、難水溶性のタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の様々な水性およびポリマー-炭水化物-脂質ベース(例えば、PEG-炭水化物-脂質ベース)の製剤を含む。本発明の一態様は、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体と、水溶液へのタウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体の溶解度を強化するまたはそれらの分散度を増大させるためのPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートとの溶液を含む。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体と、オレオイル(oieoyl)トリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネート(OTL-PEG)またはオレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネート(ODL-PEG)とを含むがこれらに限定されない、注入用の水性医薬組成物を含むこともある。本発明の少なくとも1つの態様では、溶液は、タウロリジンを0.05mg/mL~50mg/mLの範囲の濃度で含み、PEG-炭水化物-脂質のタウロリジンに対する比率は、0.2~25(w/v)の範囲である。本発明の一形態では、タウロリジンの濃度は、0.5mg/mL~50mg/mLの範囲である。本発明の一形態では、タウロリジンの濃度は、0.5mg/mL~10mg/mLの範囲であり、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの割合(%)は、溶液全体の0.5~10(w/v)の範囲である。
【0057】
本発明のさらなる態様は、希釈剤が0.5~25パーセント(w/v)のPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートと75~99.5パーセント(v/v)の水または緩衝液または生理食塩水またはデキストロース溶液とからなる、注入用のタウロリジン水溶液を提供することもある。溶液全体の85~99パーセント(v/v)が水または緩衝液または生理食塩水またはデキストロース溶液である、注入用のタウロリジン水溶液も好ましい。
【0058】
本発明の一形態では、注入用のタウロリジン水溶液は、以下に限定されないが、OTL-PEGまたはODL-PEGに加えて水性媒体を含む脂質立方相(LCP)でタウロリジンを含み、濃度でタウロリジンを0.5mg/mL~50mg/mLの範囲で、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを0.5~25パーセント(w/v)で、および水を75~99.5パーセント(v/v)で含み、ここで、合わせた溶液中のタウロリジンの濃度は、0.5%~5%の範囲である。
【0059】
本発明の注入用のタウロリジン水溶液は、ボーラス注入によって、または点滴によって投与してもよい。タウロリジンの濃度が0.01mg/mLより大きいような溶液の場合、点滴が好ましいことがある。点滴の場合、点滴の長さは、好ましくは30分間~6時間でもよく、好ましくは24時間以内とし得る。
【0060】
本発明の態様は、1種または複数の両親媒性PEGコンジュゲートを使用することによって、タウロリジンを可溶化することを含むものもある。(i)LCPでのタウロリジン(および/またはタウロリジン誘導体)にPEG-炭水化物-脂質を加えたものと、(ii)ポリソルベートとの組み合わせは、アシル鎖が両親媒性PEGコンジュゲートの親油性部分を含む、好ましい可溶化剤とし得る。
【0061】
分枝PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートも、PEGポリマーがコンジュゲートのPEG鎖を複数含む、優れた可溶化剤とし得る。同様に、分枝PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートも、可溶化剤として使用してもよい。LCP可溶化剤と同様に、これらの化合物は、典型的には可溶化の温度でろう状固体または半固体であり、これらのPEG-炭水
化物-脂質コンジュゲートは、典型的には約25℃を上回る融点を有する。そのような可溶化剤は、静脈注射製剤および経口または局所用液体を調製するのに使用してもよい。可溶化の第1のステップは、タウロリジンを、可溶化の温度で半固体または固体となり得る親媒性PEGコンジュゲート(複数可)と合わせることを含み得る。タウロリジン溶液を室温で製剤化する場合(好ましい場合もある)、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの濃縮溶液が望ましいこともある。そのような可溶化は、最初に液体形態のタウロリジンをPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの濃縮溶液に添加することによって行ってもよい。この水溶液は、水または緩衝液でさらに希釈してもよい。あるいは、タウロリジンは、少量の酸、塩基、またはアルコール中に予め溶解し、次いで水溶液中でPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートと混合してもよい。
【0062】
昇温で可溶化を実施することによって、より高い融解温度を有するPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを可溶化剤として使用することができる。水溶液を形成するとき、水溶液も昇温で添加し得ることが好ましい場合もある。
【0063】
末端基がPEG鎖に結合されるならば、それは多種多様な化学部分を含み得る。そのような部分は、650未満の分子量を有し得る。そのような部分として、-NH2、-COOH、-OCH2CH3、-OCH2CH2OH、-COCH=CH2、-OCH2CH2NH2、-OSO2CH3、-OCH2C6H6、-OCH2COCH2CH2COONC4H4O2、-CH2CH2=CH2、-C10Hi6N2O3S、および-OC6H6が挙げられる。末端基は、タウロリジンを脂質小胞集合体の表面に連結しやすくする官能基であってもよい。そのような連結には、アミノ酸、アミノアルキルエステル、ビオチン、マレイミド、ジグリシジルエーテル、マレインイミドプロピオネート、カルバミン酸メチル、トシルヒドラゾン塩、アジド、プロパルギル-アミン、プロパルギルアルコール、NHSエステル(例えば、プロパルギルNHSエステル、NHS-ビオチン、スルホ-NHS-LC-ビオチン、またはNHSカーボネート)、ヒドラジド、スクシンイミジルエステル、酒石酸スクシンイミジル、コハク酸スクシンイミジル、およびトルエンスルホン酸塩が有用となり得る。
【0064】
連結される治療剤および標的化剤には、Fab断片(抗原結合断片)、細胞表面結合剤などが含まれてもよい。加えて、末端基には、機能細胞標的化リガンド、例えば、葉酸、トランスフェリン、および;モノクローナル抗体、細胞受容体のリガンド、またはリポソームの表面に結合して特異的結合部位をもたらすことができる特異的なペプチド配列などの分子が含まれてもよい。末端基は、中性であってもよく、あるいは、陰性または陽性のいずれかに荷電した頭部基、例えば、デカノールアミン、オクタデシロールアミン(octadecylolamine)、オクタノールアミン、ブタノールアミン、ドデカノールアミン、ヘキサノールアミン、テトラデカノールアミン、ヘキサデカノールアミン、オレイルアミン、デカノールトリメチルアミニウム、オクタデシロールトリメチルアミニウム(octadecyloltrimethylaminium)、オクタノールトリメチル-アミニウム、ブタノールトリメチルアミニウム、ドデカノールトリメチルアミニウム、ヘキサノールトリメチルアミニウム、テトラデカノールトリメチルアミニウム、ヘキサデカノールトリメチルアミニウム、および/またはオレイルトリメチルアミニウムなどを含んでもよい。他の有用なR基には、アルコキシ部分などのアルキル基、アミノ酸、ならびに単糖、二糖、三糖、および1、2、3、および4以上の単糖単位をそれぞれ含有するオリゴ糖を含めた糖類が含まれる。加えて、抗体断片などの標的化部分およびビタミンもR基として使用してもよい。一般に、R基は、水に高度に可溶性となり得る。R基の分子量は、約650ダルトン(Da)未満であってもよく、ほとんどの用途に関して、標的部位でのタンパク質との結合および相互作用が増大するように、R基は容易に分極し得る。
【0065】
本発明で使用される、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせは、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの混合物を使用してもよく、脂質混合物の性質(例えば、融点またはPEG鎖の平均サイズ)は、公知の方法によって算出する、または経験的に求めることができる。
【0066】
非経口溶液の製造は、最初に、タウロリジンを濃縮PEG-炭水化物-脂質コンジュゲート溶液に添加し、均質になるまで混合することを含む場合もあり、これは室温で遂行してもよい。次に、予め混合した水性調製物を脂質-タウロリジン混合物に添加し、均質な溶液が得られるまで混合する場合もある。次いでこの溶液を滅菌するためにろ過する場合もあり、これは、滅菌ろ過された窒素のオーバーレイをこのプロセスの間維持しながら行われる。適正な容量の該溶液を、無菌操作を使用してアンプル内に充填し、密封する場合もある。滅菌条件は、注入用医薬品の標準製造手順に従って、ろ過、充填、および密封操作を通して維持される場合もある。製剤化された製品は室温で安定となり得るが、貯蔵寿命を延ばすために好ましくは冷蔵保存してもよい。
【0067】
高濃度のPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートによって滅菌ろ過プロセスができないときは、防腐剤が望ましいことがあり、可能な防腐剤は、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノール、エチレンジアミン四酢酸、およびm-クレゾールからなる抗菌剤の群から選択してもよい。
【0068】
本発明の一態様では、静脈注射によって投与するための新規医薬組成物が提供される。新規医薬組成物は、水溶液;PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ;および約0.05mg/mL~約50mg/mLの間の濃度でのタウロリジンを含む。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートのタウロリジンに対する比率は、約0.2~25(w/v)の間とし得る。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲート(またはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの混合物)におけるPEG鎖の平均分子量は、約1500ダルトン(Da)未満でもよい。タウロリジンの濃度は、好ましくは約0.2mg/ml~50mg/mlの間でもよい。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの濃度は、好ましくは溶液全体の約0.5~25パーセント(w/v)の間でもよい。
【0069】
本発明の別の態様では、本発明は、静脈注射による投与に適した医薬組成物を作製する方法を提供する。該方法は、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせをタウロリジンと混合すること、および混合しながら水溶液を添加して懸濁液を作ることを含む。タウロリジンの最終濃度は、好ましくは約0.05mg/ml~約50mg/mlの間でもよい。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲート全体のタウロリジンに対する比率は、好ましくは約0.2~25(w/v)の間でもよい。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせにおけるPEG鎖の平均分子量(MW)は、好ましくは約1500ダルトン(Da)未満でもよい。該方法は、水性懸濁液を滅菌容器内に密封すること、または抗菌性防腐剤を添加することをさらに含んでもよい。
【0070】
本発明の別の態様では、哺乳動物における疾患を処置するための新規方法が提供される。該新規方法は、水溶液、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせ、および約0.05mg/mL~約50mg/mLの間の濃度でのタウロリジンを含む新規医薬組成物を調製することを含む。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートのタウロリジンに対する比率は、約0.2~25(w/v)の間であってもよい。新規医薬組成物は、哺乳動物に静脈内投与してもよい。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートまたはPEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの組み合わせにおける単一のPEG鎖の平均分子量(MW)は、好ましくは約1500ダルトン(Da)
未満である。タウロリジンの濃度は、約0.2mg/mL~25mg/mLの間であってもよい。PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートの濃度は、溶液全体の約0.5~25パーセント(w/v)の間であってもよい。新規医薬組成物は、防腐剤をさらに含んでもよく、ここで、防腐剤の濃度は約0.1~2%(w/v)の間でもよい。
【0071】
4.1 タウロリジンのPEG化
PEG化は、PEGポリマーの鎖をタウロリジンに結合するプロセスである。それは、立体配座、静電結合、疎水性などの変化を含めた、生理化学的性質の改変を生じる。これらの物理的および化学的変化によって、タウロリジンの全身保持率が増大する。また、それは、タウロリジンの治療部分の細胞受容体への結合親和性に影響を与えることができ、また吸収および分布パターンを改変することができる。
【0072】
PEG化は、タウロリジンの分子量を増大させることによって、例えば、以下のような、変更されていない形態に優る幾つかの著しい薬理学的利点を付与することができる:
・タウロリジンの溶解度の向上;
・投薬回数の低減(有効性を低減させることなく、毒性を潜在的に低減させる);
・循環寿命の延長;
・タウロリジンの安定性の増大;および
・タンパク質分解からの保護の強化。
【0073】
PEGは、タウロリジンとのコンジュゲーションに特に魅力的なポリマーである。タウロリジンへの適用に関するPEG部分の特異的な特性は、以下の通りである:
・水溶性;
・溶液中での高移動性;
・毒性の欠如および低免疫原性;
・体からの即座のクリアランス;および
・体内での分布の改変。
【0074】
4.2 タウロリジンのPEG化プロセス
タウロリジンのPEG化の第1のステップは、PEGポリマーの一方または両方の末端での適切な官能化である。各末端において同じ反応性部分で活性化されたPEGは「ホモ二官能性」として知られるのに対して、存在する官能基が異なるならば、そのPEG誘導体は、「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」と呼ばれる。PEGポリマーの化学的に活性なまたは活性化された誘導体は、PEGをタウロリジンに結合するために調製される。
【0075】
一般に、PEG化プロセスは、2つのタイプ、すなわち、溶液相バッチプロセスおよびオンカラム流加プロセスに大きく分類することができる。一般に採用される単純なバッチプロセスは、適切な緩衝液中で、好ましくは4℃~6℃の間の温度で試薬を共に混合し、続いて所望の生成物を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、および膜または水性二相系を含めた、その物理化学的性質に基づく適切な技法を使用して分離および精製するものである。
【0076】
PEG誘導体に適した官能基の選択は、PEGとカップリングさせようとする分子上の利用可能な反応性基のタイプに基づく。
第一世代のPEG誘導体を形成するのに使用される技法は、一般に、PEGポリマーを、ヒドロキシル基に対して反応性の基、典型的には、無水物、酸塩化物、クロロホルメートおよびカーボネートと反応させることである。第二世代のPEG化の化学反応では、より効率的な官能基、例えば、アルデヒド、エステル、アミドなどがコンジュゲーションに
利用可能となる。
【0077】
PEG化の適用はますます進み、巧妙になってきているので、ヘテロ二官能性PEGをコンジュゲートすることに対する必要性が増大している。これらのヘテロ二官能性PEGは、2つの実体を連結する際に、親水性で柔軟な生体適合性のスペーサが必要な場合に極めて有用である。ヘテロ二官能性PEGに好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、およびNHSエステルである。
【0078】
ポリマーの形状が分枝、Y形、または櫛形になった第三世代のPEG化剤が利用可能であり、これらは、粘度の低減および器官への蓄積の欠如を示す。
タウロリジンは、上述の技法のいずれかに従ってPEG化してもよい。
【0079】
5. 固体のタウロリジン含有および/またはタウロリジン誘導体含有粒子の懸濁液
本発明の別の形態では、タウロリジン含有粒子および/またはタウロリジン誘導体含有粒子の懸濁液を患者に静脈注射して、血流中のカンジダ症を処置することができる。本発明のこの形態では、懸濁液は、タウロリジン含有粒子および/またはタウロリジン誘導体含有粒子をヒアルロン酸ヒドロゲル中に混合することによって形成してもよい。
【0080】
6. タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体をもたらすプロドラッグ
本発明の別の形態では、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体をもたらすプロドラッグを患者に静脈注射して、血流中のカンジダ症を処置することができる。本発明のこの形態では、プロドラッグは、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体が化学的に結合され、「切り離された」ときにタウロリジンまたはタウロリジン誘導体を放出することになる分子を含んでもよい。
【0081】
7. タウロリジンの効果を延ばすことができるタウロリジン含有および/またはタウロリジン誘導体含有溶液
本発明の別の形態では、タウロリジンの効果を延ばすことができるタウロリジン含有および/またはタウロリジン誘導体含有溶液を、血流中のカンジダ症を処置するために患者に静脈注射することができる。本発明のこの形態では、該溶液は、タウロリジンおよび/またはタウロリジン誘導体と、ヒアルロン酸ヒドロゲルとを含んでもよい。
【0082】
好ましい実施形態の変更
本発明の本質を説明するために本明細書に記載および例示してきた細部、材料、ステップ、および部材の配置に、当業者であれば本発明の原理および範囲から外れることなく多くの追加的変更を加えることができることは、理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、血液中のCandida aurisの処置において用いるための医薬組成物。
【請求項2】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、ナノ粒子送達系内にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の固体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が粉末を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
液体コアが溶液または懸濁液を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ナノ粒子送達系が、多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングで密封された、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
液体コアが溶液または懸濁液を含み、多孔質体が多孔質球体またはナノチューブを含み、固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項4、6又は8に記載の組成物。
【請求項10】
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含み、ここで、前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含んでよい、請求項4、6又は8に記載の組成物。
【請求項11】
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含み、ここで、担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含んでよい、請求項3、5又は7に記載の組成物。
【請求項12】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体がポリマーに結合されており、ここで、ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)を含んでよい、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含むコア;ならびに
一時的に当該コアを遮蔽する加水分解性被覆物
を含むナノ粒子
を含む、医薬組成物。
【請求項15】
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン固体コアを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン液体コアを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ナノ粒子が、多孔質体によって担持され、後に固体加水分解性被覆物で密封されたタウロリジン液体コアを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項15、16又は17に記載の医薬組成物であって、
(i)固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、
(ii)固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含み、ここで、前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含んでよく、又は
(iii)当該組成物が担体をさらに含み、ここで、担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含んでよい、
前記医薬組成物。
【請求項19】
ポリマーに結合されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む医薬組成物であって、ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)を含んでよい、前記医薬組成物。
【請求項20】
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートが、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを含み、ここで、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルトリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネート又はオレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネートを含んでもよい、請求項13又は20に記載の医薬組成物。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
好ましい実施形態の変更
本発明の本質を説明するために本明細書に記載および例示してきた細部、材料、ステップ、および部材の配置に、当業者であれば本発明の原理および範囲から外れることなく多くの追加的変更を加えることができることは、理解されたい。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
血液中のCandida aurisを処置するための方法であって、血液中のC.aurisを処置するのに有効な濃度でタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を血液に投与するステップを含む、方法。
[請求項2]
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、ナノ粒子送達系内にある、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の固体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
[請求項4]
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が粉末を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項3に記載の方法。
[請求項5]
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項4に記載の方法。
[請求項6]
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項4に記載の方法。
[請求項7]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項6に記載の方法。
[請求項8]
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項3に記載の方法。
[請求項9]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項8に記載の方法。
[請求項10]
ナノ粒子送達系が、固体賦形剤コーティングによって覆われたタウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
[請求項11]
液体コアが溶液または懸濁液を含み、さらに固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項11に記載の方法。
[請求項13]
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項11に記載の方法。
[請求項14]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項10に記載の方法。
[請求項16]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
ナノ粒子送達系が、多孔質体によって担持され、後に固体賦形剤コーティングで密封された、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体の液体コアを含むナノ粒子を含む、請求項2に記載の方法。
[請求項18]
液体コアが溶液または懸濁液を含み、多孔質体が多孔質球体またはナノチューブを含み、固体賦形剤コーティングが固体ポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
[請求項19]
固体ポリマーが、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項18に記載の方法。
[請求項20]
固体ポリマーが、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項18に記載の方法。
[請求項21]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項20に記載の方法。
[請求項22]
ナノ粒子送達系が、担体をさらに含む、請求項17に記載の方法。
[請求項23]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項22に記載の方法。
[請求項24]
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、治療部位へ送達するためのポリマーに結合されている、請求項1に記載の方法。
[請求項25]
ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項24に記載の方法。
[請求項26]
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体が、1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、請求項1に記載の方法。
[請求項27]
1種または複数ポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートが、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを含む、請求項26に記載の方法。
[請求項28]
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルトリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項30]
タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含むコア;ならびに
一時的に当該コアを遮蔽する加水分解性被覆物
を含むナノ粒子
を含む、医薬組成物。
[請求項31]
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン固体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
[請求項32]
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
[請求項33]
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
[請求項34]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項33に記載の医薬組成物。
[請求項35]
担体をさらに含む、請求項31に記載の医薬組成物。
[請求項36]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項35に記載の医薬組成物。
[請求項37]
ナノ粒子が、固体加水分解性被覆物によって覆われたタウロリジン液体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
[請求項38]
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
[請求項39]
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
[請求項40]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項39に記載の医薬組成物。
[請求項41]
担体をさらに含む、請求項37に記載の医薬組成物。
[請求項42]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項41に記載の医薬組成物。
[請求項43]
ナノ粒子が、多孔質体によって担持され、後に固体加水分解性被覆物で密封されたタウロリジン液体コアを含む、請求項30に記載の医薬組成物。
[請求項44]
固体加水分解性被覆物が、ポリラクチドおよびポリラクテートからなる群からの1種を含む、請求項43に記載の医薬組成物。
[請求項45]
固体加水分解性被覆物が、真菌のマンノプロテインに特異的に結合する多糖を含む、請求項43に記載の医薬組成物。
[請求項46]
前記多糖が、キトサン、デンプン、またはアルギネートを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
[請求項47]
担体をさらに含む、請求項43に記載の医薬組成物。
[請求項48]
担体が、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む、請求項47に記載の医薬組成物。
[請求項49]
ポリマーに結合されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物。
[請求項50]
ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項49に記載の医薬組成物。
[請求項51]
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲート中に分散されている、タウロリジンおよび/または1種もしくは複数のタウロリジン誘導体を含む、医薬組成物。
[請求項52]
1種または複数のポリマー-炭水化物-脂質コンジュゲートが、PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートを含む、請求項51に記載の医薬組成物。
[請求項53]
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルトリエチレンテトラミン-ポリエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項52に記載の医薬組成物。
[請求項54]
PEG-炭水化物-脂質コンジュゲートが、オレオイルジエチレンテトラミン-ドデカエチレングリコールラクトビオネートを含む、請求項52に記載の医薬組成物。
【外国語明細書】