(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028970
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】改良された鉛酸電池セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/463 20210101AFI20240227BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240227BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240227BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240227BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240227BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240227BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/434
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210369
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2020541708の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】62/624,278
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,エリック,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】パティル,ギリシュ,シバジー
(72)【発明者】
【氏名】ウィアー,ジェイ.,ケビン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸欠乏に対抗する電池及び鉛酸電池セパレータを提供する。
【解決手段】鉛酸電池セパレータ300は、その表面から延在している複数のリブ304を有する多孔質膜302を備えている。リブは、NAMを膨潤させることによって働く力に抵抗し、したがってNAM膨潤に関連する酸欠乏の影響を軽減するために、多孔質膜の弾性支持を提供するように配列された複数の不連続ピークを備えている。セパレータはまた、酸混合を容易にすることにより酸成層化の影響を軽減するために、かかるセパレータを収容する電池が経験する任意のモーションを利用することができるように提供される。提供されたセパレータを組み入れる鉛酸電池がさらに提供される。かかる鉛酸電池はフラデッド鉛酸電池、強化フラデッド鉛酸電池であってよく、部分充電状態において動作するように提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーとフィラーとを含む多孔質膜を含む鉛酸電池セパレータであって、
前記多孔質膜は、少なくとも第一表面と、前記第一表面から延びる少なくとも第一の複数のリブ又は突起とを有し、
前記第一の複数のリブは2.5mm~6.0mmの間隔で互いに平行に伸び、前記第一の複数のリブの高さは前記多孔質膜の表面から測定して10μm~500μmの高さを有し、前記第一の複数のリブは第一の複数のピークを含み、前記第一の複数のピークの各々は、最も近い隣接したピークから少なくとも1.5mmにあり、
前記第二の複数のリブが:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する 横断リブ、離散歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起、ナブ、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせのからなる群のうちの一つである、鉛酸電池セパレータ。
【請求項2】
前記第一の複数の不連続ピークがそこから延在している連続ベース部をさらに含み、前記連続ベース部が前記不連続ピークの幅よりも広い、請求項1に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項3】
前記第一の複数のリブが:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する 横断リブ、離散歯、歯状リブ、鋸歯状、鋸歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ 、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した 不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起 、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせからなる群の一つであり、かつ、
前記第一の複数のリブの少なくとも一部が、前記セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない角度によって規定されるか、
前記角度は、前記第一の複数のリブの前記少なくとも一部の間で異なるか、または
前記第一の複数のリブの少なくとも一部が前記多孔質膜の縦方向に対する角度によって規定され、前記角度が:0度(0°)超から180度(180°)未満、180度(18 0°)超から360度(360°)未満からなる群から選択される、請求項1に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項4】
前記第一の複数のリブの少なくとも一部が前記多孔質膜の縦方向に対する角度によって規定され、前記角度が:0度(0°)超から180度(180°)未満、180度(18 0°)超から360度(360°)未満からなる群から選択される、請求項3に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項5】
前記第一の複数のリブの少なくとも一部が600μm~800μmの高さを有する、請求項1に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項6】
前記第一の複数のリブの少なくとも一部が1.5mm~10mmの横方向離間ピッチを有する、請求項3に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項7】
前記第一の複数の不連続歯の少なくとも一部が、1.5mm~10mmの縦方向離間ピッチを有する、請求項3に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項8】
前記多孔質膜の第二表面から延在している第二の複数のリブをさらに含み、
前記第二の複数のリブが:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、離散歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起、ナブ、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせのからなる群のうちの一つである、請求項1に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項9】
前記第二の複数のリブが:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、離散歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起、ナブ、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせのからなる群のうちの一つであり、
前記第二の複数のリブの少なくとも一部が、前記セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない角度によって規定される、請求項8に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項10】
前記角度が前記第二の複数のリブの前記少なくとも一部の間で異なっている、請求項9に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項11】
前記第二の複数のリブが:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する 横断リブ、離散歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起、ナブ、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせのからなる群のうちの一つであり、
前記第二の複数のリブの少なくとも一部が、前記多孔質膜の縦方向に対する角度によって規定され、前記角度が:0度(0°)超から180度(180°)未満、180度(180°)超から360度(360°)未満からなる群から選択される、請求項8に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項12】
前記角度が前記第二の複数のリブの前記少なくとも一部の間で異なる、請求項11に記載の鉛酸電池セパレータ。
【請求項13】
前記第二の複数のリブの少なくとも一部が600μm~800μmの高さを有する 、請求項8に記載の鉛酸電池セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2018年1月31日に提出された米国特許仮出願第62/624,278号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、鉛酸電池、例えばフラデッド鉛酸電池、そして特に強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、並びに他の様々な鉛酸電池、例えばゲル及び吸収性ガラスマット(「AGM」)電池用の新規又は改良されたセパレータを対象とする。少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、EFBセパレータ、電池、セル、システム、それを含む方法、それを使用する車両、その製造方法、その使用、及びそれらの組み合わせを対象とする。さらに、本明細書では、電池電極酸欠乏を減少させることによって電池寿命を向上させ電池故障を低減するための方法、システム、及び電池セパレータを開示する。
【0003】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、電池、セル、及び/又は製造方法及び/又はかかるセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、セル、電池、システム、方法の使用、及び/又はこれを使用する車両を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良された電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、フラデッド鉛酸電池セパレータ、又は強化フラデッド鉛酸電池セパレータ、例えばディープサイクリング及び/又は部分充電状態(「PSoC」)用途に有用なものを対象とする。そのような用途には:電動マシン用途、例えばフォークリフト及びゴルフカート(ゴルフカーという場合がある)、電動リキシャ、電動自転車、電動三輪車など;自動車又はトラック用途、例えば始動点灯点火(SLI:starting lighting ignition)電池、例えば内燃エンジン車両に使用されるもの;アイドル・スタート・ストップ(idle-stop-start)(「ISS))車両電池;ハイブリッド車両用途、ハイブリッド-電気自動車用途;高所要動力、例えば無中断電力供給(「UPS」)若しくは制御弁式鉛酸(「VRLA」)を備えた電池、及び/又は高CCA要件を備えた電池;インバーター;並びにエネルギー貯蔵システム、例えば再生及び/又は代替エネルギーシステム、例えば太陽光及び風力発電システムでみられるものなどの非限定例が含まれ得る。
【0004】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、セパレータ、特に酸欠乏の低減若しくは軽減が可能であり;酸成層化を低減もしくは軽減させ;デンドライト成長を低減もしくは軽減させ;低減した電気抵抗を有し、及び/又は冷クラッキングアンプを増加させることが可能である、フラデッド鉛酸電池用のセパレータを対象とする。加えて、本明細書中で開示されているのは、少なくとも強化フラデッド鉛酸電池における、電池寿命の向上;酸欠乏の低減もしくは軽減;酸成層化の低減もしくは軽減;デンドライト成長の低減もしくは軽減;酸化効果の低減;水分損失の低減;内部抵抗の低減;ぬれ性の、増大;酸拡散の改良;冷クラッキングアンプの改良、均一性の改良、及びそれらの任意の組み合わせのための、方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、改良された新規リブデザインと、改良されたセパレータ弾性とを含むセパレータを対象とする。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、性能強化添加剤又はコーティング、
増大した耐酸化性、最適化空孔率、増大した空隙容積、非晶質シリカ、高吸油性シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Si比が21:100~35:100のシリカ、シシ・ケバブ構造又は形態、粒子状フィラーを膜及びポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)の40重量%以上の量で含み、拡大鎖状結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)及び1nm~150nmのケバブ形成の平均反復周期性でのシシ・ケバブ形成、減少したシート厚さ、減少したねじれ、低減された厚さ、低減された油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを有するポリオレフィン微多孔質膜、並びにそれらの任意の組み合わせを含む、改良されたセパレータを対象とする。
【背景技術】
【0005】
例示的鉛酸電池は陽端子と陰端子とを有する。電池内には、交互になった陽極板(又は陽極)及び陰極板(又は陰極)のアレイがあり、各電極の間にはセパレータが配置されている。陽極は、陽端子と電気的に通信し、陰極は陰端子と電気的に通信している。陽極は陽極活物質(「PAM」)でドープすることができ、陰極は陰極活物質(「NAM」)でドープすることができ、各々は、電極の機能性の増大に寄与する。陽極は実質的に二酸化鉛(PbO2)で作られていてもよく、陰極は実質的に鉛(Pb)で作られていてもよい。
【0006】
陽極、陰極、及びセパレータは、電解質水溶液中に実質的に浸漬されている。電解質は、例えば、硫酸(H2SO4)及び水(H2O)の溶液であってよい。電解質溶液は、例えば、約1.215~1.300の範囲で、約1.28の比重を有し得る。
【0007】
二酸化鉛(PbO2)陽(+)極での反応(「陽性半反応」)は電子を供給し、陽性となる。二酸化鉛(PbO2)陽(+)極での充電中のこの陽性半反応は硫酸鉛(PbSO4)と水(H2O)とを産生し、以下で式1に示される:
PbO2+SO4
-2+4H++2e-⇔PbSO4+2H2O(式1)
式中:
・PbO2は固体二酸化鉛陽(+)極であり;
・SO4
-2は水性であり;
・4H+は水性であり;
・2e-は固体二酸化鉛(PbO2)陽(+)極中にあり;
・PbSO4は水性電解質内の固体沈殿物であり;
・H2Oは液体である。
【0008】
陽性半反応は電池の充電に際して可逆的である。
【0009】
鉛(Pb)陰(-)極での陰性半反応(「陰性半反応」)は陽イオンを供給し、陰性となる。放電中の陰性半反応は硫酸鉛(PbSO4)と陰イオン(e-)とを産生し、以下で式2に示される:
Pb+SO4
-2⇔PbSO4+2e- (式2)
式中:
・Pbは固体鉛陰(-)極であり;
・SO4
-2は水性であり;
・PbSO4は水性電解質中の固体沈殿物であり;そして
・2e-は鉛(Pb)陰(-)極中にある;
陰性半反応は電池の充電に際して可逆的である。
【0010】
あわせると、これらの半反応は、以下で式3に示すように、鉛酸電池の全体的な化学反応に置き換えられる:
Pb+PbO2+2H2SO4⇔2PbSO4+2H2O (式3)
式中:
・Pbは固体陰(-)極であり;
・PbO2は固体陽(+)極であり;
・H2SO4は水性電解質中の液体であり;
・PbSO4は水性電解質中の固体沈殿物であり;そして
・H2Oは水性電解質中の液体である。
【0011】
全体的な化学反応は電池の充電に際して可逆的である。上記反応の各々について、放電は左から右へと移動し、放電は右から左へと移動する。なお、上記反応の効率を増大させるために、アンチモン(Sb)若しくは炭素(C)などの他の元素を電極板又はペースト材料(PAM若しくはNAM)中に添加してもよい。
【0012】
全体的な反応からわかるように、酸(H2SO4)は、電気化学反応に必要であり、またイオンが電極間を流れるための媒体を提供する。したがって、電極が常に酸と接触していることが必須であり、さもなければ電極は酸欠乏となり、電池は、性能、及び寿命の点で劣ることとなる。
【0013】
式2からわかるように、放電反応は、NAM中にも存在し得る鉛(Pb)の一部と、酸(H2SO4)とを、より大きな分子である硫酸鉛(PbSO4)に変換する。硫酸鉛は鉛よりも大きな分子であるので、より大きな体積を占め、本明細書中で後述するように、NAM膨潤に寄与すると考えられる。硫酸鉛は放電中に形成されるので、部分充電状態(すなわち、少なくとも部分的に放電)で動作する電池はNAM膨潤の影響をより受けやすい。
【0014】
酸欠乏は、NAM膨潤の存在下で起こることが確認されている。NAMは膨潤するにつれ、セパレータの陰極側を圧迫し、陽極側を陽極に向かって押しすすめる。程度が充分であるならば、この膨潤によりセパレータの一部が撓み、陽極及び/又はPAMと接触する可能性がある。次に、これにより、通常セパレータと陽極との間の体積を占める電解質又は酸がその体積から絞り出される。本発明は、本明細書中でより詳細に考察されるような酸欠乏に対処する。
【0015】
酸欠乏はまた、水より密度の高い酸が電池ケースの底部に沈降し、電解質中の水がケースの最上部へ上昇する場合に起こる、酸成層化の状態でも起こる。本発明は、本明細書中でより詳細に考察するような酸成層化に対処する。
【0016】
ディープサイクル電池、例えば、ゴルフカート(ゴルフカーとしても知られる)、フォークリフト、電動リキシャ、電動自転車、電気自動車、ハイブリッド車両、アイドル・ストップ・スタート(「ISS」)車両などで使用されるもの、及び据え置き用途、例えば、太陽光又は風力集電で使用されるものは、部分充電状態でほぼ定常的に動作する。かかる電池は、トラック、大型車両(「HD」)トラック、またはISS電池を除いて、充電される前に8~12時間以上放電されて使用される。さらに、これらの電池のオペレータは、電池を使用するためにリサイクルする前に過充電してはならない。ISS電池は、放電サイクルと短い間欠的充電サイクルとを経験し、通常、完全充電を達成することはほとんどないか、又は過去において過充電されている。それらの連続使用及び放電のために、これらの電池は使用中にそれらの最大限まで機能できることが必須である。これは、電極が酸欠乏である場合は不可能である。
【0017】
場合によっては、酸がゲル化した電解質及び/又は吸収性ガラスマット(「AGM」)電池セパレータシステムのいずれかにより固定化される制御弁式鉛酸(「VRLA」)技術を用いて酸欠乏を少なくとも部分的に回避することができる。フラデッド鉛酸電池、V
RLA及び/又はAGM電池中の自由流動性流体電解質とは対照的に、電解質は、繊維又は繊維状材料、例えばガラス繊維マット、ポリマー繊維マット、ゲル化した電解質などに吸収される。しかしながら、VRLA及び/又はAGM電池システムは、フラデッド電池システムよりも製造するのに実質的に費用がかかる。VRLA及び/又はAGM技術は、場合によっては、過充電に対してより感受性であり得、高熱で乾燥し得、容量が徐々に減少し得、より低い比エネルギーを有し得る。同様に、場合によっては、ゲルVRLA技術はより高い内部抵抗を有し得、低減した電荷受容性を有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
CO2や他の汚染物質の排出に対抗するために、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、ISS車両並びに再生及び代替エネルギー集積を使用することが多くなってきているとすると、強化フラデッド鉛酸電池がさらに普及するようになることが予想される。したがって、酸欠乏に対抗する電池及びセパレータが非常に必要とされる。
【0019】
少なくともある特定の用途又は電池に関して、改良されたサイクル寿命、低減された故障、部分充電状態における改良された性能、低減された水分損失、及び/又は低減された酸欠乏を提供する改良されたセパレータが依然として必要とされる。さらに詳細には、例えば、電池寿命の向上、電池故障の低減、酸化安定性の改良、浮遊電流の改良、維持、及び/又は低下、充電終止(「EOC」)電流の改良、ディープサイクル電池の充電及び/又は完全充電に必要な電流及び/又は電圧の減少、内部電気抵抗増加の最小化、電気抵抗の低下、アンチモン中毒の低減、酸成層化の低減、酸欠乏の低減、酸拡散の改良、水分損失の低減、及び/又は鉛酸電池における均一性の改良を提供する、改良されたセパレータを利用して、部分充電状態で動作するものなどの改良されたセパレータ、及び改良された電池が依然として必要とされる。
【0020】
一つ以上の実施形態の詳細を以下の説明で記載する。他の特徴、目的、及び利点は説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、前記課題又はニーズに対処し得る。少なくともある特定の実施形態、態様、又は目的によると、本開示または発明は、前述の問題を克服する前記セパレータを利用する改良されたセパレータ及び/又は電池を提供することができる。例えば、低減した酸欠乏;低減した酸成層化;改良されたセパレータ弾性を有し;デンドライトの形成を軽減し;増大した耐酸化性;低減した水分損失;低減した内部抵抗;増加したセパレータぬれ性;セパレータにわたる改良された酸拡散;改良された冷クラッキングアンプ、改良された均一性;及び/又は改良されたサイクル性能;及びそれらの任意の組み合わせを有する電池を提供することによるなど。
【課題を解決するための手段】
【0021】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、上記課題又はニーズに対処することができる、並びに/又は新規若しくは改良されたセパレータ及び/若しくは強化フラデッド電池を提供することができる。少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、電池、セル、及び/又はかかるセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用方法を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、自動車用途、トラック用、アイドル・スタート・ストップ(「ISS」)電池用、高所要動力を有する電池用、部分充電状態電池用、ディープサイクル電池、例えば無中断電力供給(「UPS」)若しくは制御弁式鉛酸(「VRLA」)用、及び/又は高CCA要件を有する電池用の、新規又は改良された電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、フラデッド鉛酸電池セパレータ、又は強化フラデッド電池セパレータ、及び/又はかかる改良されたセパレータ
、セル、電池、システムなどの作製及び/又は使用の改良法を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド電池用の改良されたセパレータ、及び/又はかかる改良されたセパレータを有するかかる電池の改良された使用方法を対象とする。さらに、本明細書中で開示されるのは、少なくとも強化フラデッド電池において、電池性能及び寿命の向上、酸成層化の低減、内部電気抵抗の低減、冷クラッキングアンプの増大、及び/又は均一性の改良のための方法、システム及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド電池用の改良されたセパレータであって、酸混合リブ若しくは突起、減少した電気抵抗、性能強化添加剤若しくはコーティング、改良されたフィラー、増大した空孔率、減少したねじれ、低減された厚さ、低減された油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを含むか又は提供するセパレータを対象とする。強化フラデッド電池、ISS電池、ディープサイクル電池、トラック電池、大型車両(HD)トラック電池、又は部分充電状態電池用の特定のおそらくは好ましい一つの新規又は改良されたセパレータは、酸混合リブ、陽極側鋸歯状リブ、陰極側クロスリブ(「NCR」)、減少した電気抵抗、性能強化添加剤若しくはコーティング、減少した水分損失、低ER、改良されたフィラー、増大した空孔率、減少したねじれ、低減された厚さ、低減された油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを含むか又は提供する。強化フラデッド電池、ISS電池、ディープサイクル電池、トラック電池、又は部分充電状態電池用のもう一つの特定のおそらくは好ましい新規又は改良されたセパレータは、酸混合リブ、陽極側鋸歯状リブ、陰極側クロスリブ、減少した電気抵抗、性能強化添加剤若しくはコーティング、低減した水分損失、低ER、及び/又は改良されたフィラーを含むかまたは提供する。
【0022】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、鉛酸電池、例えばフラデッド鉛酸電池、及び特に強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、及び他の様々な鉛酸電池、例えばゲル及び吸収性ガラスマット(「AGM」)電池用の新規又は改良されたセパレータを対象とする。少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、EFBセパレータ、電池、セル、システム、それを含む方法、それを使用する車両、その製造方法、その使用、及びそれらの組み合わせを対象とする。さらに、本明細書中では、電池電極酸欠乏を低減することによって電池寿命を向上させ、電池故障を低減するための、方法、システム、及び電池セパレータを開示する。
【0023】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、電池、セル、及び/又は製造方法及び/又はかかるセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、セル、電池、システム、方法の使用、及び/又はこれを使用する車両を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良された電池セパレータ、フラデッド鉛酸電池セパレータ、又は強化フラデッド鉛酸電池セパレータ、例えば、ディープサイクリング及び/又は部分充電状態(「PSoC」)用途に有用なものを対象とする。そのような用途には:電動マシン用途、例えばフォークリフト及びゴルフカート(ゴルフカーという場合がある)、電動リキシャ、電動自転車、電動三輪車など;自動車又はトラック用途、例えば始動点灯点火(SLI)電池、例えば内燃エンジン車両に使用されるもの;アイドル・スタート・ストップ(「ISS))車両電池;ハイブリッド車両用途、ハイブリッド-電気自動車用途;高所要動力、例えば無中断電力供給(「UPS」)若しくは制御弁式鉛酸(「VRLA」)を備えた電池、及び/又は高CCA要件を備えた電池;インバーター;並びにエネルギー貯蔵システム、例えば再生及び/又は代替エネルギーシステム、例えば太陽光及び風力発電システムでみられるものなどの非限定例が含まれ得る。
【0024】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、セパレータ、特に酸欠
乏の低減若しくは軽減が可能であり;酸成層化を低減もしくは軽減させ;デンドライト成長を低減もしくは軽減させ;低減した電気抵抗を有し、及び/又は冷クラッキングアンプを増加させることが可能である、フラデッド鉛酸電池用のセパレータを対象とする。加えて、本明細書中で開示されているのは、少なくとも強化フラデッド鉛酸電池における、電池寿命の向上;酸欠乏の低減もしくは軽減;酸成層化の低減もしくは軽減;デンドライト成長の低減もしくは軽減;酸化効果の低減;水分損失の低減;内部抵抗の低減;ぬれ性の増大;酸拡散の改良;冷クラッキングアンプの改良、均一性の改良、及びそれらの任意の組み合わせのための、方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、改良された新規リブデザインと、改良されたセパレータ弾性とを含むセパレータを対象とする。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、性能強化添加剤又はコーティング、増大した耐酸化性、増大した空孔率、増大した空隙容積、非晶質シリカ、高吸油性シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Si比が21:100~35:100のシリカ、シシ・ケバブ構造又は形態、粒子状フィラーを膜及びポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)の40重量%以上の量で含み、拡大鎖状結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)及び1nm~150nmのケバブ形成の平均反復周期性を備えたシシ・ケバブ形成、減少したシート厚さ、減少したねじれ、低減した厚さ、低減した油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを有するポリオレフィン微多孔質膜、及びそれらの任意の組み合わせを含む、改良されたセパレータを対象とする。
【0025】
ある特定の選択された実施形態の少なくとも第一の態様によると、鉛酸電池セパレータはポリマーとフィラーとを有する多孔質膜を備えている。多孔質膜は、少なくとも第一表面を備え、その第一表面から少なくとも第一の複数のリブが延在している。第一の複数のリブは、第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を備え、第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起の各々は、セパレータに弾性を提供するように互いに近接している。かかる弾性は、活物質膨潤に起因する圧力下にある際の撓みに抵抗するセパレータの能力を指す場合がある。かかる近接は、歯、ピーク、又は突起同士間で少なくとも約1.5mmであり得る。セパレータは、ベース部から延在する第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を有する連続ベース部をさらに備えていてもよい。
【0026】
ある特定の実施形態において、セパレータは、ベース部から延在する第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を有する連続ベース部を備えていてもよい。ベース部は歯又は不連続ピーク又は突起の幅よりも広くてよい。加えて、ベース部は、歯又は不連続ピーク又は突起の各々の間で連続的に延在していてもよい。
【0027】
少なくともある特定の限定された実施形態によると、セパレータは、以下の一つ以上であるリブを備えていてもよい:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、その中に亀裂があるセパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ又はNCR、歯、歯状リブ、鋸歯状、鋸歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、突起、ナブ、エンボス、ディンプル、コーン、台形、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、バトルメント付、及びそれらの組み合わせ。
【0028】
第一の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない可能性がある角度によって規定することができる。さらに、角度は、多孔質膜の縦方向に対しての角度として規定することができ、角度は以下のうちの一つであり得る:0度(
0°)超から180度(180°)未満、180度(180°)超から360度(360°)未満。開示された実施形態のある特定の態様において、角度は複数のリブ全体にわたってさまざまであり得る。
【0029】
本発明のある特定の限定された態様では、第一の複数のリブは、約1.5mm~約10mmの横方向離間ピッチを有し得、複数の歯又は不連続ピーク又は突起は、約1.5mm~約10mmの縦方向離間ピッチを有し得る。
【0030】
ある特定の限定された実施形態では、セパレータは、多孔質膜の第二表面から延在する第二の複数のリブを備えていてもよい。第二の複数のリブは以下の一つ以上を有していてもよい:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、亀裂付きクロスミニリブ、及びそれらの組み合わせ。
【0031】
第二の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない可能性がある角度によって画定され得る。さらに、角度は、多孔質膜の縦方向に対する角度として規定することができ、角度は以下のうちの一つであり得る:0度(0°)超から180度(180°)未満、及び180度(180°)超から360度(360°)未満。開示された実施形態のある特定の態様において、角度は複数のリブ全体にわたってさまざまであり得る。
【0032】
第二の複数のリブは、約1.5mm~約10mmの横又は縦方向離間ピッチを有する。
【0033】
第一表面は、鉛酸電池セパレータの縁部に隣接して配置された第一の複数のリブとは異なる高さのものである一つ以上のリブを備えていてもよい。同様に、第二表面は、鉛酸電池セパレータの縁部に隣接した配置された第二の複数のリブとは異なる高さのものである一つ以上のリブを備えていてもよい。
【0034】
限定された実施形態では、ポリマーは、以下のうちの一つであってよい:ポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ゴム、合成木材パルプ(「SWP」)、リグニン、ガラス繊維、合成繊維、セルロース系繊維、及びそれらの組み合わせ。
【0035】
繊維状マットが提供されてもよい。マットは:ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも一つの性能強化添加剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの組み合わせのうちの一つであってよく、不織布、織物、メッシュ、フリース、ネット、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0036】
加えて、セパレータは、カットピース、リーフ、ポケット、スリーブ、ラップ、エンベロープ、及びハイブリッドエンベロープであってよい。
【0037】
少なくともある特定の限定された例示的実施形態において、セパレータは、セパレータの撓みを軽減するための弾性手段を備えていてもよい。
【0038】
少なくともある特定の限定された実施形態によると、鉛酸電池は、陽極と、膨潤した陰極活物質を備えた陰極とを備えていてもよい。セパレータは、セパレータの少なくとも一部が陽極と陰極との間に配置されるように設けられる。陽極の少なくとも一部、陰極の少なくとも一部、及びセパレータの少なくとも一部を実質的に沈める電解質が提供される。少なくともある特定の限定された実施形態では、セパレータは少なくともポリマーとフィラーとで作られた多孔質膜を有していてもよい。第一の複数のリブは、多孔質膜の表面から延在していてもよい。リブは、NAM膨潤の存在下での酸欠乏を防止するなどのために配列することができる。鉛酸電池は、以下の条件のいずれか一つ以上で動作することができる:運転中、静止、バックアップ電源用途、サイクリング用途、部分充電状態、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0039】
リブは、複数の歯、又は不連続ピーク若しくは突起を備えていてもよい。各歯、又は不連続ピーク若しくは突起は、複数の不連続ピーク内で互いに少なくとも約1.5mm離れていてもよい。連続ベース部は、そこから延在している複数の歯、又は不連続ピーク若しくは突起を備えていてもよい。
【0040】
第一の複数のリブはさらに、電池において、特に電池の動作中に酸混合を向上させるために提供することができる。セパレータを電池のスタート及びストップモーションに対して平行に配置することができる。セパレータは、陽極、陰極、又はセパレータに隣接したマットを備えていてもよい。マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも一つの性能強化添加剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に作られていてもよい。マットは、不織布、織物、メッシュ、フリース、ネット、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0041】
少なくとも本発明のある特定の限定された実施形態において、鉛酸電池は、平板電池、フラデッド鉛酸電池、強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、制御弁式鉛酸(「VRLA」)電池、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収性ガラスマット(「AGM」)電池、チューブ状電池、インバーター電池、車両電池、始動点灯点火(「SLI」:starting-lighting-ignition)車両電池、アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」:idling-start-stop)車両電池、自動車電池、トラック電池、オートバイ電池、全地形対応車電池、フォークリフト電池、ゴルフカート電池、ハイブリッド-電気自動車電池、電気自動車電池、電動リキシャ電池、若しくは電動自転車電池、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0042】
ある特定の実施形態において、電池は、約1%~約99%の放電深度で動作することができる。
【0043】
少なくとも一つの実施形態によると、ねじれが減少した微多孔質セパレータが提供される。ねじれとは、その長さにわたる湾曲/曲がりの程度を指す。したがって、ねじれが減少した微多孔質セパレータはイオンがセパレータを通って移動するためのより短い経路を提示し、それにより電気抵抗が減少する。そのような実施形態にかかる微多孔質セパレータは、減少した厚さ、増大した孔径、より多くの相互接続した孔、及び/又はより多くの開気孔を有し得る。
【0044】
少なくともある特定の選択された実施形態にしたがって、空孔率が増大した微多孔質セパレータ、又はその空孔率が公知セパレータとは大きく異なることはない、異なる孔構造、及び/又は減少した厚さを有するセパレータが提供される。イオンは、空孔率が増大し、空隙容積が増大し、ねじれが低減し、及び/又は厚さが減少した、微多孔質セパレータを通ってより迅速に移動し、それによって電気抵抗が減少する。このような厚さの減少の結果、電池セパレータの総重量が減少する可能性があり、これは次に、セパレータが使用
される強化フラデッド電池の重量を減少させ、これがひいては、強化フラデッド電池が使用される車両全体の重量を減少させる。そのような厚さの減少は、代替的に、セパレータが使用される強化フラデッド電池において陽極活物質(「PAM」)又は陰極活物質(「NAM」)の空間の増大をもたらす可能性がある。
【0045】
少なくともある特定の選択された実施形態によると、(水又は酸中での)ぬれ性が増大した微多孔質セパレータが提供される。ぬれ性が増大したセパレータは、電解質イオン種により接近しやすくなり、かくして、セパレータを越えるそれらの通過を促進し、電気抵抗を減少させる。
【0046】
少なくとも一つの実施形態によると、最終油分が減少した微多孔質セパレータが提供される。そのような微多孔質セパレータはまた、強化フラデッド電池又はシステムにおける低下したER(電気抵抗)を促進するであろう。
【0047】
セパレータは、増大した脆砕性を有し、空孔率、孔径、内部孔表面積、ぬれ性、及び/又はセパレータの表面積を増大させることができる、改良されたフィラーを含んでもよい。いくつかの実施形態において、改良されたフィラーは、高構造形態及び/又は低減された粒径及び/又は従来公知のフィラーとは異なる量のシラノール基を有する、及び/又は従来公知のフィラーよりもヒドロキシル化されている。改良されたフィラーは、より多くの油を吸収し得る、及び/又は押出後に油が除去される場合に、同時に収縮若しくは圧縮することなく、セパレータ形成の間により多量の加工油の組み込みを可能にし得る。フィラーは、電解質イオンのいわゆる水和球をさらに低減することができ、膜を越えてのそれらの輸送を増強し、それによって、電池、例えば強化フラデッド電池又はシステムの全体的電気抵抗又はERを再度低下させる。
【0048】
一つ又は複数のフィラーは、イオン拡散を増大させ、セパレータを越える電解質及びイオンの流れを促進する、様々な種(例えば、金属などの極性種)を含み得る。したがって、かかるセパレータがフラデッド電池、例えば強化フラデッド電池で用いられる場合に、全体的な電気抵抗の減少に至る。
【0049】
微多孔質セパレータは、新規かつ改良された孔形態及び/又は新規かつ改良されたフィブリル形態をさらに含むので、セパレータがフラデッド鉛酸電池で使用される場合に、かかるセパレータは、かかるフラデッド鉛酸電池における電気抵抗を有意に減少させるのに寄与する。そのような改良された孔形態及び/又はフィブリル形態は、その孔及び/又はフィブリルがシシ・ケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータをもたらし得る。新規かつ改良された孔形状及び構造を記述するための別の方法は、シリカノード、すなわちシリカのこぶが電池セパレータ内のポリマーフィブリル(フィブリルはシシと呼ばれる場合がある)上でケバブ型形成にて存在するテクスチャー付フィブリル形態である。更に、ある特定の実施形態において、本発明にかかるセパレータのシリカ構造及び孔構造は、骨格構造又は脊柱構造又は脊髄構造として記載することができ、ポリマーのケバブ上のシリカノードが、ポリマーのフィブリルに沿って、椎骨又は椎間板(「ケバブ」)のように見え、場合によっては、脊柱様形状(「シシ」)に近い細長い中心の脊椎又はフィブリル(拡大鎖状ポリマー結晶)に対して実質的に垂直に方向づけられている。
【0050】
場合によっては、改良された孔形態及び/又はフィブリル形態を有する改良されたセパレータを含む改良された電池は、20%低い電気抵抗、場合によっては、25%低い電気抵抗、場合によっては、30%低い電気抵抗、そして場合によっては、さらに30%を超える電気抵抗(「ER」)の降下を示す可能性がある(電池内部抵抗を低減する可能性がある)一方で、かかるセパレータは鉛酸電池セパレータの他の重要かつ望ましい機械的特性のバランスを保持し維持する。さらに、ある特定の実施形態において、本明細書中で記
載するセパレータは、既知セパレータと比較して、より多くの電解質が孔及び/又は空隙を通って流れるかまたは充填するような新規及び/又は改良された孔形状を有する。
【0051】
加えて、本開示は、強化フラデッド電池用の一つ以上の改良された電池セパレータを含む改良された強化フラデッド鉛酸電池を提供し、当該セパレータは、電池について、酸成層化の減少、電圧降下の低下(又は電圧降下永続性の増加)、及びCCAの増加、場合によっては、8%超、又は9%超、又はいくつかの実施形態では、10%超、又は15%超のCCAの増加の望ましい特徴を組み合わせる。そのような改良されたセパレータは、その性能が、AGM電池の性能と一致するか又はさらにはAGM電池の性能を超える強化フラデッド電池をもたらすことができる。そのような低電気抵抗セパレータはまた、水分損失が低減した強化フラデッド鉛酸電池をもたらすように処理することもできる。
【0052】
セパレータは、一つ以上の性能強化添加剤、例えば界面活性剤を、他の添加剤又は薬剤、残油、及びフィラーと共に含んでよい。そのような性能強化添加剤は、セパレータ酸化を低減することができる、及び/又はさらには膜を越えるイオンの輸送を促進して、本明細書中で記載する強化フラデッド電池の全体的な電気抵抗低下に寄与することができる。
【0053】
本明細書中で記載する鉛酸電池用セパレータはポリオレフィン微多孔質膜であって、ポリマー、例えばポリエチレン、例えば超高分子量ポリエチレン、粒子状フィラー、及び加工可塑剤(任意選択的に、一つ以上のさらなる添加剤もしくは薬剤を含んでもよい)を含むポリオレフィン微多孔質膜を含んでもよい。ポリオレフィン微多孔質膜は、膜の40重量%以上の量で粒子状フィラーを含んでもよい。また、超高分子量ポリエチレンは、複数の拡大鎖状結晶(シシ形成)と複数の折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)とを含むシシ・ケバブ形態のポリマーを含んでもよく、ケバブ形成の平均反復又は周期性は、(少なくともセパレータのリブ側の部分に関して)1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、さらに好ましくは20nm~100nmである。
【0054】
ケバブ形成の平均反復又は周期性は、以下の定義に従って算出する:
・ポリオレフィン微多孔質膜の表面は、金属蒸着に供した後に走査電子顕微鏡(「SEM」)を用いて観察し、次いで、表面の画像を、例えば、1.0kVの加速電圧で30,000又は50,000倍の倍率にて撮影する。
・SEM画像の同じ視覚野において、シシ・ケバブ形成が少なくとも0.5μm以上の長さで連続して伸長されている少なくとも三つの領域が表示されている。次いで、各々の表示された領域のケバブ周期性を算出する。
・ケバブ周期性を、各々の表示された領域におけるシシ・ケバブ形成のシシ形成に対して垂直方向に投影することによって得られる濃度プロフィール(コントラストプロフィール)のフーリエ変換によって特定して、反復周期の平均を算出する。
・画像を、一般的な分析ツール、例えば、MATLAB(登録商標)(R2013a)を使用して分析する。
・フーリエ変換後のスペクトルプロフィールのうち、短波長領域で検出されたスペクトルはノイズとみなす。そのようなノイズは、主にコントラストプロフィールの変形によって生じる。本発明に従ってセパレータについて得られたコントラストプロフィールは、方形波(正弦波ではなく)を生成するように見える。さらに、コントラストプロフィールが方形波である場合、フーリエ変換後のプロフィールは正弦関数となり、したがって、真のケバブ周期性を示す主なピークのほかに、短波長領域に複数のピークが生じる。短波長領域におけるそのようなピークは、ノイズとして検出することができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書中で記載する鉛酸電池用セパレータは、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び沈降非晶質シリカからなる群から選択されるフィラーを含み;29Si-NMRによって測定した、前記フィラー内のOH基対Si基の分
子比は、21:100~35:100の範囲内であり、いくつかの実施形態では、23:100~31:100、いくつかの実施形態では、25:100~29:100、そしてある特定の好ましい実施形態では、27:100またはそれ以上である。
【0056】
Si-Oの比較的堅い共有結合網状組織が部分的に消失してしまっているので、シラノール基は、シリカ構造を結晶構造から非晶構造へと変える。非晶様シリカ、例えば、Si(-O-Si)2(-OH)2及びSi(-O-Si)3(-OH)は、多くのねじれを有し、これは、様々な吸油点として機能し得る。したがって、シラノール基(Si-OH)の量をシリカについて増加させると、吸油性は高くなる。更に、本明細書中に記載するセパレータは、公知鉛酸電池セパレータで用いられるシリカよりも多量のシラノール基及び/又はヒドロキシル基を含むシリカを含む場合、親水性の増加を示す可能性がある、及び/又はより高い空隙容積を有する可能性がある、及び/又は大きな空隙によって取り囲まれたある特定の凝集体を有する可能性がある。
【0057】
微多孔質セパレータは、新規かつ改良された孔形態及び/又は新規かつ改良されたフィブリル形態をさらに含むので、セパレータがフラデッド鉛酸電池で使用される場合に、かかるセパレータは、かかるフラデッド鉛酸電池における電気抵抗を有意に減少させるのに寄与する。そのような改良された孔形態及び/又はフィブリル形態は、その孔及び/又はフィブリルがシシ・ケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータをもたらし得る。新規かつ改良された孔形状及び構造を記述するための別の方法は、シリカノード、すなわちシリカのこぶが電池セパレータ内のポリマーフィブリル(フィブリルはシシと呼ばれる場合がある)上でケバブ型形成にて存在するテクスチャー付フィブリル形態である。更に、ある特定の実施形態において、本発明にかかるセパレータのシリカ構造及び孔構造は、骨格構造又は脊柱構造又は脊髄構造として記載することができ、ポリマーのケバブ上のシリカノードが、ポリマーのフィブリルに沿って、椎骨又は椎間板(「ケバブ」)のように見え、場合によっては、脊柱様形状(「シシ」)に近い細長い中心の脊椎又はフィブリル(拡大鎖状ポリマー結晶)に対して実質的に垂直に方向づけられている。
【0058】
ある特定の選択された実施形態では、車両は、本明細書中でおおむね記載するような鉛酸電池を備えていてもよい。電池は、本明細書中で記載するようなセパレータをさらに備えていてもよい。車両は、自動車、トラック、オートバイ、全地形対応車、フォークリフト、ゴルフカート、ハイブリッド車両、ハイブリッド-電気自動車電池、電気自動車、アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」)車両、電動リキシャ、電動自転車、電動自転車電池、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0059】
ある特定の好ましい実施形態において、本開示または発明は、その成分及び物理的属性及び特徴が相乗的に組み合わされて、従来知られている柔軟性の性能を満たすか、またはある特定の実施形態では、当該性能を超える改良された電池セパレータ(ポリマー、例えばポリエチレンの多孔質膜を有するセパレータ、プラス、ある特定量の性能強化添加剤及びリブ)で、ディープサイクル電池産業における従来満たされていないニーズを、予期せぬ方法で対処する、柔軟性電池セパレータを提供する。特に、本明細書中で記載する発明のセパレータは、ディープサイクル電池で伝統的に使用されるセパレータよりも頑丈で、脆性が低く、壊れにくく、長時間にわたりより安定である(劣化しにくい)。本発明の柔軟性で、性能強化添加剤を含有し、リブを保有するセパレータは、ポリエチレン系セパレータの所望の頑丈な物理的及び機械的特性と従来型セパレータの能力とを兼ね備える一方で、当該セパレータを採用する電池システムの性能も向上させる。
【0060】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は上記課題又はニーズに対処することができる。少なくともある特定の目的にしたがって、本開示または発明は、例えば、酸欠乏が低減し、酸成層化が低減し、デンドライト成長が低減し、内部電気抵抗が
低減し、冷クラッキングアンプが増大した、強化フラデッド電池を提供することによって、前述の問題を克服する、改良されたセパレータ及び/又は電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1B】
図1Bは、交互になった電極とその間に挿入された電池セパレータの例示的アレイを示す。
【
図2】
図2は、膨潤する活物質のない、二つの電極間に配置された典型的な電池セパレータを示す。
【
図3】
図3は、典型的な鉛酸電池、特に部分充電状態であるもの、及び特にめったに過充電されないものでみられるような、膨潤した陰極活物質と共に二つの電極間に配置された典型的な電池セパレータを示す。
【
図4】
図4は、典型的な鉛酸電池でみられるように、陽極と陰極との間に配置された本発明の電池セパレータの例示的実施形態を示し;陰極は膨潤したNAMと共に示されている。
【
図5A】
図5Aは、本発明の酸混合又は弾性セパレータの例示的実施形態のリブプロフィールの例示的実施形態を示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の酸混合又は弾性セパレータの例示的実施形態のリブプロフィールの例示的実施形態を示す。
【
図5C】
図5Cは、本発明の酸混合又は弾性セパレータの例示的実施形態のリブプロフィールの例示的実施形態を示す。
【
図5D】
図5Dは、本発明の酸混合又は弾性セパレータの例示的実施形態のリブプロフィールの例示的実施形態を示す。
【
図6A】
図6Aは、電極表面及び発明のセパレータによって支持された部分を示す。
【
図6B】
図6Bは、電極表面及び発明のセパレータによって支持された部分を示す。
【
図7A】
図7Aは、デンドライト形成及びミグレーションを軽減すると考えられる様々な例示的ネガティブリブ構成を示す。
【
図7B】
図7Bは、デンドライト形成及びミグレーションを軽減すると考えられる様々な例示的ネガティブリブ構成を示す。
【
図7C】
図7Cは、デンドライト形成及びミグレーションを軽減すると考えられる様々な例示的ネガティブリブ構成を示す。
【
図8】
図8は、セパレータ弾力性を評価するためにNAM膨潤を模倣するための試験セットアップの図である。
【
図9】
図9は、セパレータ弾力性を評価するためにNAM膨潤を模倣するための試験セットアップの図である。
【
図10】
図10は、セパレータ弾力性についての写真評価である。
【
図11】
図11は、セパレータ酸混合についての写真評価である。
【
図12】
図12は、30秒の超音波処理前及び超音波処理後及び60秒の超音波処理後の新しいシリカ及び標準シリカの粒径分布を示す。
【
図13】
図13は、標準シリカのサイズを本発明の実施形態で使用されるシリカのサイズとともに示す。
【
図14】
図14は、超音波処理前後の新しいシリカのサイズを示す。
【
図15】
図15は、試験セパレータを穿刺するために使用したチップを示す。
【
図17B】
図17Bは、
図17Aに示され、しるしがつけられている三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)に関して実施したFTIRスペクトル試験から得られる結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定グラフを含み、ここで、
図17A~17D中のグラフのx軸は正規化周波数(xπrad/サンプル)であり、これらのグラフのy軸=電力/周波数(dB/rad/サンプル)である。
【
図17C】
図17Cは、
図17Aに示され、しるしがつけられている三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)に関して実施したFTIRスペクトル試験から得られる結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定グラフを含み、ここで、
図17A~17D中のグラフのx軸は正規化周波数(xπrad/サンプル)であり、これらのグラフのy軸=電力/周波数(dB/rad/サンプル)である。
【
図17D】
図17Dは、
図17Aに示され、しるしがつけられている三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)に関して実施したFTIRスペクトル試験から得られる結果を示すウェルチパワースペクトル密度推定グラフを含み、ここで、
図17A~17D中のグラフのx軸は正規化周波数(xπrad/サンプル)であり、これらのグラフのy軸=電力/周波数(dB/rad/サンプル)である。
【
図25】
図25は、それぞれ比較例4及び実施例1の
29Si-NMRスペクトルを含む。
【
図26】
図26は、それぞれ比較例4及び実施例1のセパレータサンプルについてQ
2:Q
3:Q
4比を決定するための
図25のスペクトルからの成分ピークの解析を含む。
【
図27】
図27は、セパレータサンプルがD2O中に浸漬された核磁気共鳴(「NMR」)管を示す。
【
図28】
図28は、H
2SO
4のみの溶液、参照セパレータ、発明の実施形態のセパレータ、及びAGMセパレータの-10℃、Δ=20msでの拡散係数を示す。
【
図29】
図29は、市販のセパレータと比較した、発明の実施形態の孔径分布を示す。
【
図30】
図30は、発明の実施形態のセパレータの孔径分布を示す。
【
図31】
図31は、発明の実施形態のセパレータ内の新しいシリカフィラー及び市販のセパレータ内の標準シリカの分散を説明するチャートである。
【
図32】
図32は、従来型セパレータと比較した、本発明の実施形態である低ERセパレータの孔径分布の描写を含む。
【
図33】
図33は、従来型セパレータと比較した、本発明の実施形態(場合によっては、「EFS」製品、Enhanced Flooded Separator(商標)と称する)の酸化安定性の描写を含む。電池過充電試験において、1,000時間後に、本発明によるセパレータは対照セパレータほど脆くなく、したがってより高い伸長を示す。
【
図34】
図34は、異なるシリカフィラーを用いて調製したセパレータの電気抵抗データの描写を含む。シリカフィラーは固有の吸油量が異なる。本発明のある特定の実施形態において、改良されたセパレータは、約175~350ml/100g、いくつかの実施形態では200~350ml/100g、いくつかの実施形態では250~350ml/100gm、そしていくつかのさらなる実施形態では260~320ml/100gの固有の吸油量値を有するシリカを用いて形成されるが、他の吸油量値も可能である。
【
図35】
図35は、異なるプロセス油を用いて調製したセパレータの電気抵抗データの描写を含む。油はアニリン点が異なる。
【
図36】
図36は、本発明によるセパレータの酸成層化(%)対Hg空孔率(%)の描写を含む。
【
図37】
図37は、ERボイル対バックウェブ厚さの描写を含む。
【
図38】
図38は、50,000×の倍率での本発明のセパレータの実施形態のSEM画像を含み、一方、
図39A及び39Bは10,000×の倍率での同じセパレータのSEM画像である。
図38のSEMでは、シシ・ケバブ型形態又はテクスチャー付フィブリル型構造が観察され、孔及びシリカ構造では、ポリマーウェビングがはるかに少なく(場合によってはポリマーウェビングがない)、疎水性ポリマーの太いフィブリル又はストランドがはるかに少ない(場合によっては、疎水性ポリマーの太いフィブリル又はストランドがほとんど又は全くない)、ある特定の空洞又は孔が残る。電解質及び/又は酸、したがってイオンは、
図38~39Bで示すこのセパレータで観察される孔構造をはるかに容易に通過する。セパレータの構造は、酸が自由に移動する自由空間を提供する。
【
図39A】
図39Aは10,000×の倍率での同じセパレータのSEM画像である。
【
図39B】
図39Bは10,000×の倍率での同じセパレータのSEM画像である。
【
図40B】
図40Bはセパレータ実施形態の孔径分布の描写を含む。
図40Bは本発明の一実施形態による所望の機械的特性を有する低ERセパレータについてである。なお、
図40Bは
図32の一部として見ることもできる。
【
図41】
図41は、本発明によるセパレータの様々な孔径測定値と従来型セパレータとの比較を含む。
図41において、気泡流量差は、セパレータの貫通孔(through-pore)を測定し、係る貫通孔がセパレータの全体にわたってイオンを機能的に輸送する能力を測定する点で、有意である。平均孔径と最小孔径とで有意差はないが、最大孔径は本発明によるセパレータの方が大きく、気泡流量は本発明によるセパレータの方が有意に高い。
【
図42A】
図42Aは、対照セパレータを通る液体の流れ(
図42B)と比較した、発明の実施形態によるセパレータを通る液体の流れ(
図42A)のポロメトリー(porometry)データと描写を示す。
【
図42B】
図42Bは、対照セパレータを通る液体の流れ(
図42B)と比較した、発明の実施形態によるセパレータを通る液体の流れ(
図42A)のポロメトリー(porometry)データと描写を示す。
【
図43A】
図43A及び43Bは、Daramic,LLC製の対照セパレータの2つの異なる倍率での2つのSEMを含む。これらのSEMでは、疎水性ポリマーの比較的太いフィブリル又はストランドが観察される。
【
図43B】
図43Bは、Daramic,LLC製の対照セパレータの2つの異なる倍率での2つのSEMを含む。これらのSEMでは、疎水性ポリマーの比較的太いフィブリル又はストランドが観察される。
【
図44A】
図44Aは、Daramic,LLC製の別の対照セパレータの2つの異なる倍率での2つのSEMを含む。これらのSEMでは、ポリマーウェビングのように見える区域が観察できる。
【
図44B】
図44Bは、Daramic,LLC製の別の対照セパレータの2つの異なる倍率での2つのSEMを含む。これらのSEMでは、ポリマーウェビングのように見える区域が観察できる。
【
図45A】
図45Aは、本発明の実施形態に従って形成されたセパレータのSEMを含み、シシ・ケバブポリマー形成(複数可)が観察される。
【
図45B】
図45Bは、フーリエ変換コントラストプロフィール(
図45Bの下のスペクトル)がセパレータにおけるシシ・ケバブ形成(
図45Bの上のシシ・ケバブ形成を参照)の反復又は周期性の決定でどのように役立つかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は上記課題又はニーズに対処することができる。少なくともある特定の目的、態様、又は実施形態によると、本開示または発明は、例えば、電池に、酸欠乏を低減する、及び/又は酸欠乏の効果を軽減するセパレータを提供することによって、前述の問題を克服する改良されたセパレータ及び/又は電池を提供することができる。
【0063】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、セル、電池、システム、及び/又は製造方法及び/又は係る新規セパレータ、セル、及び/又は電池の使用を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本
開示または発明は、平板電池、チューブ状電池、フラデッド鉛酸電池、強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収性ガラスマット(「AGM」)電池、インバーター電池、太陽光又は風力ストレージ電池、車両電池、始動点灯点火(「SLI」)車両電池、アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」)車両電池、自動車電池、トラック電池、オートバイ電池、全地形対応車電池、フォークリフト電池、ゴルフカート電池、ハイブリッド-電気自動車電池、電気自動車電池、電動リキシャ電池、電動自転車電池用の新規若しくは改良された電池セパレータ、及び/又はかかる改良されたセパレータ、セル、電池、システムなどの作製及び/または使用の改良法を対象とする。加えて、本明細書中で開示されるのは、電池性能及び寿命の向上、電池故障の低減、酸成層化の低減、デンドライト形成の軽減、酸化安定性の改良、浮遊電流の改良、維持、及び/又は低下、充電終止電流の改良、ディープサイクル電池の充電及び/又は完全充電に必要な電流及び/又は電圧の減少、内部電気抵抗の低減、アンチモン中毒の低減、ぬれ性の増加、酸拡散の改良、鉛酸電池における均一性の改良、及び/又はサイクル性能の改良のための方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、改良されたセパレータを対象とし、新規セパレータは、減少した電気抵抗、性能強化添加剤又はコーティング、改良されたフィラー、増加したぬれ性、増加した酸拡散、マイナスのクロスリブなどを含む。
【0064】
式2からわかるように、放電反応は、NAM中にも存在し得る鉛(Pb)の一部と、酸(H2SO4)とが、より大きな分子である硫酸鉛(PbSO4)に変換する。硫酸鉛は鉛よりも大きな分子であるので、より大きな体積を占め、本明細書中で後述するように、NAM膨潤に寄与すると考えられる。硫酸鉛は放電中に形成されるので、部分充電状態(すなわち、少なくとも部分的に放電)で動作する電池はNAM膨潤の影響をより受けやすい。かかる電池には、ハイブリッド車両;ハイブリッド-電気自動車;アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」)車両;電気自動車、例えばフォークリフト、ゴルフカート、電動リキシャ、電動三輪車、及び電動自転車;インバーター;並びに再生及び/又は代替エネルギーシステム、例えば太陽光発電システム及び風力発電システムで動作するものが含まれる。これらの用途における電池は部分充電状態で動作する可能性が高く、陰極活物質膨潤を経験し得る。
【0065】
ここで
図1Aを参照すると、例示的鉛酸電池100は、交互になった陽極200と陰極201とのアレイ102と、各陽極200及び陰極201間に挿入されたセパレータ300とを備えている。電極200、201及びセパレータ300は、硫酸(H
2SO
4)電解質104中に実質的に浸漬されている。陽極200は、陽端子106と電気的に通信しており、陰極201は、陰端子108と電気的に通信している。あるいは、セパレータは、陽極200又は陰極201のいずれかでポケット又はエンベロープ及びエンベロープとして形成されていてもよい。
【0066】
ここで
図2を参照すると、部分例示的アレイ102は、電池(図示せず)の上から下を見下ろして図示されている。セパレータ300は、多孔質膜302と、陽極200と接触している、そこから延在している一連のポジティブリブ304とを有して図示されている。図示されていないが、ネガティブミニリブが存在し、陰極201と接触していてもよい。
【0067】
電池が充電及び放電サイクルを繰り返すと、陰極201にドープされる陰極活物質(「NAM」)が膨張し始める。特定の理論に拘束されることを望まないが、バックウェブ302が陽極200と接触する時点までセパレータバックウェブ302に圧力を加える程度まで、NAM膨潤が起こり得ると考えられる。したがって、電解質104の陽極200及び陰極201を枯渇させる。これは酸欠乏として知られ、電池の性能及び/又は寿命に深刻な影響を及ぼす可能性がある。酸欠乏は、バックウェブ302が陽極200と接触しな
い場合でも依然として起こり得る。これは、NAMが、依然として電解質104を陰極201と接触しないようにスクイーズする点までさらに膨潤させることができ、またある電解質104を陽極200から離れてスクイーズするために充分にバックウェブ302をさらに撓ませることができるためである。
図3は、バックウェブ302が陽極200と接触する点までのセパレータバックウェブ302に対するこの作用の概略図である。
【0068】
ここで
図4を参照すると、本発明の特定の例示的セパレータ300の概略図が示されている。この実施形態例において、セパレータ300は、陰極と接触するセパレータの縦方向に延在するリブ106(すなわち、ネガティブリブ)を備えている。これは、NAMがセパレータバックウェブ302と接触さえもせず、したがって撓ませることができないように、NAMの支持と、NAMとバックウェブ302との間の間隔とを提供する。
図2~4は縮尺通りではないことに留意すべきである。
【0069】
本明細書中で議論するように、市販され、販売され、フラデッド鉛酸電池、特に部分充電状態で動作するかまたは動作することが意図される強化フラデッド鉛酸電池で使用される現行のセパレータは、上述のNAM膨潤、並びに酸のスクイージング及び置換を示し、このため最終的に、動作不可能な電池となる。したがって、フラデッド鉛酸電池、特に、部分充電状態で動作する強化フラデッド鉛酸電池(例えば、スタート/ストップ車両で使用されるもの)用の改良されたセパレータが必要とされる。
【0070】
物理的性質
例示的セパレータは、多孔質膜、例えば約5μm未満、好ましくは約1μm未満の孔を有する微多孔質膜、メソ多孔質膜、又は約1μm超の孔を有するマクロ多孔質膜のウェブを備えていてもよい。多孔質膜は、好ましくは、100μmまでの1ミクロン以下、ある特定の実施形態では約0.1μm~約10μmである孔径を有していてもよい。本明細書中で記載するセパレータ膜の空孔率は、ある特定の実施形態では50%超~60%であってよい。ある特定の限定された実施形態では、多孔質膜は、平坦であってもよいし、又はその表面から延在するリブを有していてもよい。
【0071】
リブ
本発明の特定の目標は、酸混合を最大化して酸成層化の影響を低減するために電池が受け得る任意の動きも利用しつつ、NAM膨潤(例えば、酸欠乏)の影響を最小化することを含む。これらはどちらも、部分充電状態で動作する電池でみられる問題である。
【0072】
本発明者らは、NAM膨潤の影響を最小化する一つの方法が、セパレータの弾性を最大化すること、例えば、NAMが多孔質バックウェブを陽極活物質(「PAM」)中に撓ませる可能性を低減することであることを見出した。セパレータ弾性を増加させる特定の方法は、多孔質膜バックウェブ厚さを増大させることである。しかしながら、これはまた、(より厚いバックウェブの唯一の欠点を挙げると)セパレータの電気抵抗を増大させ、これは電池の性能に悪影響を及ぼす。本発明者らは、セパレータと陽極との間の接触点を増加させることが、接触点間のバックウェブを強化するように作用することを見出した。リブの数を増加させて、この目標を達成することはまた、セパレータと陽極との間の接触面積の量を増加させる。接触面積を最小化することは、セパレータの電気抵抗を低下させ、また電池の機能性を提供する電気化学反応のために電極のさらに大きな表面積を電解質に開放すると考えられる。また、接触面積の低減により、セパレータを介してデンドライトが形成され、電気的短絡が起こる機会が低減すると考えられる。デンドライト形成の問題は以下で検討する。さらなる目標は、酸成層化の影響を最小化するために、運転中に用いられる電池の電解質又は酸混合を最大化することである。さらに、中実リブは、酸成層化を低減するために酸混合の目標を促進しない。
【0073】
本発明者らは、限定された好ましい例示的実施形態として、セパレータと隣接する電極との間の接触面積を同時に最小化しつつ、接触点の数を最大にすることによって、酸欠乏に至る、NAM膨潤によって加えられる力及び圧力の下でのバックウェブの撓みに抵抗又は軽減する弾性手段をセパレータが備えていてもよいことを見出した。本発明者らは、別の限定された例示的実施形態が、セパレータと隣接する電極との間の離散した接触点の数を最大化することによって、酸成層化の影響を低減、軽減、または逆転するための酸混合手段をセパレータに提供することができることを見出した。別の限定された例示的実施形態は、硫酸鉛(PbSO4)デンドライト成長を低減または軽減するためのデンドライト軽減手段をセパレータに提供することができる。本発明者らは、そのような弾性手段、酸混合手段、及びデンドライト軽減手段が、リブ構造のデザインによって対処、達成又は少なくとも部分的に対処及び若しくは達成することができると判断した。したがって、本明細書中で記載する限定された実施形態は、これらのパラメータのバランスをとって、所望の目標を達成するため、弾性手段、酸混合手段、及びデンドライト軽減手段を提供するため、並びに/又はこれらのパラメータ及び/又は所望の弾性手段、酸混合手段、及び/又はデンドライト軽減手段のバランスを少なくとも部分的に対処及び/または達成するために、リブ構造に依存する。
【0074】
リブ304、306は、固体、離散破断リブ、連続、不連続、角度付、線状、セパレータの縦方向(「MD」)に実質的に延在する縦リブ(すなわち、電池中のセパレータの最上部から底部まで伸びる)、セパレータの横方向CMDに実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向(「CMD」)に実質的に延在する横断リブ(すなわち、MDに対して直角の、電池中のセパレータの横方向)、セパレータの横方向に実質的に延在するクロスリブ、離散歯若しくは歯状リブ、鋸歯状、鋸歯状リブ、バトルメント若しくはバトルメント付リブ、湾曲又はシヌソイド、固体又は破断ジグザグ様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、エンボス、ディンプル、多孔質、非多孔質、ミニリブ若しくはクロスミニリブなど、及びそれらの組み合わせの均一なセット、交互セット、又はミックス若しくは組み合わせであってよい。さらに、リブ304、306のいずれかのセットは、陽極側、陰極側、若しくは両側から、又は陽極側、陰極側、若しくは両側へと延在していてもよい。
【0075】
次に
図5A~5Dを参照すると、例示的セパレータは、例示的電池における陽極と接触することが意図されるセパレータの縦方向(「MD」)に実質的に整列されたポジティブリブ304を備えている。セパレータはさらに、セパレータの縦方向に実質的に整列され、ポジティブリブに対して実質的に平行なネガティブリブ306を備える。ネガティブリブは、例示的電池中の陰極と接触することが意図されている。この図示された例におけるネガティブリブは、セパレータの縦方向に実質的に整列されているが、別法として、横方向に実質的に整列されていてもよく、典型的にはネガティブクロスリブとして知られる。
【0076】
引き続き
図5A~5Dを参照すると、発明のセパレータの限定された実施形態は、ポジティブリブのアレイを備えている。ポジティブリブは、縦方向にセパレータの長さを伸長させることができるベース部304aを備える。離間した歯、不連続ピーク、又は他の突起304bは、したがって、当該ベース部の表面から延在していてもよく、歯304bは多孔質膜バックウェブの基底表面より上に隆起している。さらに、ベース部は歯自体より広くてもよい。ポジティブリブは、約2.5mm~約6.0mmの典型的な間隔で互いに実質的に平行に伸び、典型的な間隔は約3.5mmである。多孔質膜バックウェブの表面から測定したポジティブリブの高さ(歯とベース部との組み合わせ)は、約10μm~約2.0mmであってよく、典型的な高さは約0.5mmである。隣接するリブの例示的リブ歯は、互いに実質的に一致していてもよい。しかしながら、
図5A~5Dで示すように、例示的歯は、隣接するリブから完全又は部分的に位相がずれて、一つのリブから隣接するリブへ互いにオフセットされていてもよい。図示するように、歯は一つのリブから隣接
するリブへ完全に位相がずれている。ポジティブリブの歯は、約3.0mm~約6.0mmのセパレータの縦方向のピッチで離間していてもよく、典型的な間隔は約4.5mmである。
【0077】
図5A~5Dに示すように、ネガティブリブ306は、セパレータのマシン方向に対して実質的に平行であるように図示されている。しかしながら、それらは別法として横方向に対して実質的に平行であってもよい。図示された例示的ネガティブリブは、中実であり、実質的に直線状であるように示されている。しかしながら、それらは別法として、図示されたポジティブリブ304と概して同様の方法で歯がつけられていてもよい。ネガティブリブ306は、約10μm~約10.0mmのピッチで離間していてもよく、好ましいピッチは約700μm~約800μmであり、さらに好ましい公称ピッチは約740μmである。バックウェブの表面から測定したネガティブリブの高さは約10μm~約2.0mmであってよい。
【0078】
別法として、ポジティブリブは、それらが陰極と接触するように代表的電池中に配置されていてもよいことに留意されたい。同様に、ネガティブリブは別法として、それらが陽極と接触するように代表的電池中に配置されていてもよい。
【0079】
下記表1は、162mm×162mm(262cm2)である四つのセパレータ(一つの例示的な発明のセパレータ及び三つの対照セパレータ)のリブ数と表面接触面積のパーセンテージを詳述する。図示するように、例示的な発明のセパレータは、セパレータの幅にわたって横方向に均一に離間された43の歯状リブを有する。例示的な発明のセパレータ上のポジティブリブの歯は、陽極上の262cm2の3.8%と接触する。対照セパレータの詳細を、表1でさらに詳述する。対照セパレータ#1、#2、及び#3が、一般的に現在市販されている、現在使用されているフラデッド鉛酸電池の市販のセパレータに典型的であることが理解される。
【0080】
【0081】
記載したように、本発明者らは、接触点の数を最大化しつつ、同時に接触面積を最小化することで、制御下で電気抵抗を保ちつつセパレータ弾性を増加させる目標を達成することを見出した。さらに、歯付きのデザインは、電池が受ける可能性がある任意の動作を利用することによって、酸混合の促進に役立つ。
図6A及び6Bを参照すると、セパレータリブの歯は、点A、B、及びCの周りを取り囲む円によって示されるように最も近い隣接する歯から約1.5mm~約6.0mm離れていてもよい。本発明者らは、好ましい非限定的距離が、隣接する歯間で約2.0mmであることを見出した。加えて、隣接する列からオフセットである歯が完全に位相がずれていることは、酸混合を促進するのに役立つ。本発明者らはまた、ベース部が、NAM膨潤に弾力性を提供するために充分バックウェブを強化するために役立つことも見出した。
【0082】
例示的な発明のリブは、ポジティブリブ304として本明細書では示され記載されているが、それでもセパレータの陰極側に提供することができ、図示し記載したネガティブリ
ブ306は、セパレータの陽極側に提供することができると理解される。
【0083】
ポジティブ又はネガティブリブは、さらに、中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、角度付リブ、線状リブ、前記多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、前記多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの前記横方向に実質的に延在する横断リブ、離散歯、歯状リブ、鋸歯状鋸歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせの任意の形態又は組み合わせであってよい。
【0084】
ポジティブ又はネガティブリブはさらに、セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない角度によって規定される任意の形態又は組み合わせであってよい。さらに、当該角度は、リブの歯又は列全体にわたってさまざまであり得る。角度付リブパターンは、ある特定の電池における酸成層化の低減または除去に役立ち得る、好ましい可能性のあるDaramic(登録商標)RipTide(商標)酸混合リブプロフィールであってよい。さらに、角度は、多孔質膜の縦方向に対するものとして規定することができ、角度は、約0度(0°)超~約180度(180°)未満、並びに約180度(180°)超~約360度(360°)未満であってよい。
【0085】
リブは、側稜から側稜までセパレータの幅全体にわたって均一に延在していてもよい。これは、ユニバーサルプロフィールとして知られる。別法として、セパレータは、側稜に隣接するサイドパネルを有していてもよく、サイドパネル中にマイナーリブが配置されていてもよい。これらのマイナーリブは、主リブよりも間隔が密であってよく、また小さくてもよい。例えば、マイナーリブは、主リブの高さの25%~50%であってよい。あるいはサイドパネルは平坦であってよい。サイドパネルは、セパレータを包囲する場合に行われるようにセパレータの縁部をセパレータの別の縁部に密封するのに役立つ可能性があり、これは本明細書で後述する。
【0086】
限定された例示的実施形態において、ネガティブリブの少なくとも一部は、好ましくは、ポジティブリブの高さの約5%~約100%の高さを有していてもよい。いくつかの例示的実施形態において、ネガティブリブ高さは、ポジティブリブ高さと比べて、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、95%、又は100%であってよい。他の例示的実施形態において、ネガティブリブ高さは、ポジティブリブ高さと比べて、約100%以下、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、又は約5%以下であってよい。
【0087】
いくつかの限定された実施形態において、多孔質膜の少なくとも一部は、縦又は横断又はクロスリブであるネガティブリブを有していてもよい。ネガティブリブは、セパレータの最上縁部と平行であってよいか、又はそれに対してある角度で配置されていてもよい。例えば、ネガティブリブは、最上縁部に対して約0°、5°、15°、25°、30°、45°、60°、70°、80°、又は90°で配向させることができる。クロスリブは最上縁部に対して約0°~約30°、約30°~約45°、約45°~約60°、約30°~約60°、約30°~約90°、又は約60°~約90°で配向させることができる。
【0088】
ある特定の例示的実施形態はベース部を有していてもよい。存在する場合、約5μm~
約200μmの平均ベース高さを有していてもよい。例えば、平均ベース高さは、約5μm以上、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、約50μm以上、約100μm以上、又は約200μm以上であってよい。さらに、存在する場合、歯幅よりも約0.0μm~約50μm広い平均ベース幅を有していてもよい。例えば、平均ベース幅は、歯幅よりも約0.0μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、又は約50μm以上広くてもよい。
【0089】
ある特定の例示的実施形態は歯又は歯状リブを有していてもよい。存在する場合、約50μm~約1.0mmの平均チップ長さを有していてもよい。例えば、平均チップ長さは、約50μm以上、約100μm以上、約200μm以上、約300μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約600μm以上、約700μm以上、約800μm以上、約900μm以上、又は約1.0mm以上であってよい。あるいは、それらは、1.0mm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0090】
歯又は歯状リブの少なくとも一部は、約50μm~約1.0mmの平均歯ベース長さを有していてもよい。例えば、平均歯ベース長さは、約50μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、又は約1.0mmであってよい。あるいは、約1.0mm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下であってよい。
【0091】
歯又は歯状リブの少なくとも一部は、約50μm~約1.0mmの平均高さ(ベース部高さ及び歯高さを統合)を有していてもよい。例えば、平均高さは、約50μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、又は約1.0mmであってよい。あるいは、約1.0mm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下であってよい。
【0092】
歯又は歯状リブの少なくとも一部は、約100μm~約50mmの縦方向の列内の平均中心間ピッチを有していてもよい。例えば、平均中心間ピッチは、約50μm以上、約100μm以上、約200μm以上、約300μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約600μm以上、約700μm以上、約800μm以上、約900μm以上、若しくは約1.0mm以上で、50mmまで同様の増分であってよい。あるいは、それらは、約50μm以下、約100μm以下、約200μm以下、約300μm以下、約400μm以下、約500μm以下、約600μm以下、約700μm以下、約800μm以下、約900μm以下、又は約1.0mm以下で、50mmまで同様の増分であってよい。加えて、歯又は歯状リブの隣接する列は、縦方向に同じ位置で同じように配置、すなわちオフセットであってよい。オフセット構成で、隣接する歯又は歯状リブは、縦方向において異なる位置で配置される。
【0093】
歯又は歯状リブの少なくとも一部は、約0.1:1.0~約500:1.0の平均高さ対ベース幅比を有いていてもよい。例えば、平均高さ対ベース幅比は、約0.1:1.0、約25:1.0、約50:1.0、約100:1.0、約150:1.0、約200:1.0、約250:1.0、約300:1.0、約350:1、約450:1.0、約又は500:1.0であってよい。あるいは、平均高さ対ベース幅比は、約500:1.0以下、約450:1.0以下、約400:1.0以下、約350:1.0以下、約300
:1.0以下、約250:1.0以下、約200:1.0以下、約150:1.0以下、約100:1.0以下、約50:1.0以下、約25:1.0以下、又は約0.1:1.0以下であってよい。
【0094】
歯又は歯状リブの少なくとも一部は、約1,000:1.0~約0.1:1.0の平均ベース幅対チップ幅比を有し得る。例えば、平均ベース幅対チップ幅比は、約0.1:1.0、約1.0:1.0、約2:1.0、約3:1.0、約4:1.0、約5:1.0、約6:1.0、約7:1.0、約8:1.0、約9:1.0、約10:1.0、約15:1.0、約20:1.0、約25:1.0、約50:1.0、約100:1.0、約150:1.0、約200:1.0、約250:1.0、300:1.0、約350:1.0、約450:1.0、約500:1.0、約550:1.0、約600:1.0、約650:1.0、約700:1.0、約750:1.0、約800:1.0、約850:1.0、約900:1.0、約950:1.0、又は約1,000:1.0であってよい。あるいは、平均ベース幅対チップ幅比は、約1,000:1.0以下、約950:1.0以下、約900:1.0以下、約850:1.0以下、約800:1.0以下、約750:1.0以下、約700:1.0以下、約650:1.0以下、約600:1.0以下、約550:1.0以下、約500:1.0以下、約450:1.0以下、約400:1.0以下、約350:1.0以下、約300:1.0以下、約250:1.0以下、約200:1.0以下、約150:1.0以下、約100:1.0以下、約50:1.0以下、約25:1.0以下、約20:1.0以下、約15:1.0以下、約10:1.0以下、約9:1.0以下、約8:1.0以下、約7:1.0以下、約6:1.0以下、約5:1.0以下、約4:1.0以下、約3:1.0以下、約2:1.0以下、約1.0:1.0以下、又は約0.1:1.0以下であってよい。
【0095】
図7A~7Cはデンドライト形成の様々なシナリオを示す。図面は、陽極200と陰極201との間に配置されたセパレータ300の様々な実施形態を示す。すべてのセパレータはポジティブリブ304を有するが、
図7B及び7Cだけは、陰極306を有するセパレータ300を示す。本発明者らは、セパレータ300が陰極201と接触するほど、デンドライト400がその多孔質構造内で形成され成長する可能性が高くなると考えている。
図7Aに示すように、バックウェブ302は陰極201に向いた平坦な表面を有する。そして、本発明者らの仮説によると、デンドライト400は、セパレータ300内の陰極201と陽極200との間で成長しブリッジを形成する多くの機会を有する。
図7Bは、マイナスのクロスリブ306を有するセパレータ300を示し、したがって、セパレータ300と陰極201との間の接触面積を低減し、デンドライト400がセパレータ300内で形成し成長し、二つの電極200、201間でブリッジを形成する機会を少なくする。
図7Cで示されるように、セパレータ300は
図7Bで示されるものよりも少ないマイナスのクロスリブ306を備え、それらはまた、
図7Bで示されるものよりも間隔が広く、高い。このように、セパレータ300と陰極201との間の接触がさらに少なくなり、したがって、デンドライト400が陰極201及び陽極200からブリッジを形成する機会がさらに少なくなる。本発明者らの仮説によると、リブ306と陰極201との間の接触を低減することによって、例えば、何らかの方法で不連続又は破断リブを提供することによって、デンドライト400成長の機会をさらに少なくすることが可能である。これは、リブ306が陰極201の表面と接触しない部分がある、不連続、破断、鋸歯状又は他の形態のリブを提供することによって達成することができる。これらの例はネガティブリブ306に集中しているが、同じ処理をポジティブリブ304に適用してもよい。
【0096】
セパレータの試験
ここで
図8および
図9を参照すると、セパレータの弾力性を評価するためにNAM膨潤をシミュレーションするための圧縮試験用のクランプ試験装置が示されている。図示するように、構造は以下の成分で形成されている:1)NAM膨潤又は拡張をシミュレートす
るための固体バッキングを備えたフォームバッキング;2)ネガティブリブがフォームバッキングに接触しているセパレータ;及び3)ポジティブリブと接触し、赤色塗料でコーティングされた固体プラスチックプレート。圧縮試験は以下のように実施した:
1)セパレータ、2枚の固体プラスチックプレート、およびフォームバッキングをすべて5インチ(12.7cm)×5インチ(12.7cm)の正方形片に切断または他の方法で成形する;
2)塗料アプリケータを以下のように形成する:
a)フェルトシートをプラスチックの正方形にテープで貼る;
b)3mLのスポイトを使用して、9mLの赤色塗料と3mLの水とを長方形皿中で混合し;そして
c)塗料アプリケータを、フェルト側を下にして皿に入れ、塗布するまで放置する;
3)すべての断片に矢印でしるしをつけ、すべての部分が同じ順序で同じ方向に添加されることを確実にする。積層セルを、下から上の順で提供する:
a)第一固体プラスチックプレート(ここに塗料を塗布する)、
b)セパレータ(第一固体プラスチックプレートと接触しているポジティブリブを有する)、
c)約7.6mmの厚さのフォームバッキング、及び
d)第二固体プラスチックプレート;
4)NAM膨潤をシミュレートするためにスタックに約11kPa、約16.5kPa、約22kPa、および約27.5kPaの試験圧力を加える際に、フォームバッキングに所望の圧力を適用するために適切な空気圧を加える;
5)上向きの強固な固体表面上に第一固体プラスチック片を置くことにより、第一固体プラスチック片に塗料を塗布し;塗料から塗料アプリケータを取り出し、皿の最上部を越えて引きずって、塗料の一部を除去し;塗料アプリケータを固体プラスチック片の最上面上に置き、プラスチックを横切って第一方向に第一固体プラスチック片の表面に対して平行に動かし、次いで塗料アプリケータを第一方向に対して垂直な第二方向に動かし;その間、塗料のコーティングが均一であり、気泡ができるだけ少ないことを確実にする;
6)ポジティブリブが塗装面に接触するセパレータと残りの部品とを上記の順序で添加し、塗料が実質的に乾燥する前に圧縮装置に入れる;
7)クランプ装置を係合させて、スタックを所望の圧力でクランプし、スタックをクランプされた状態で1分間保持する;
8)圧縮を解除し、装置からスタックを取り出し;第一固体プラスチック片からセパレータを取り出し、放置して乾燥させる;
9)次の試験のために、第一プラスチック片から残存する塗料を水とペーパータオルとで拭き取る;そして
10)各試験後のフォームバッキングの厚さを測定して、フォームバッキングが依然として損なわれていないことを確認し;反復使用後に本来の厚さに戻らない場合はフォームを交換する。
【0097】
図9に示すように、スタックに対して圧力を均等に加えた。具体的には、11kPa、16.5kPa、22kPa、および27.5kPaの圧力を、所定のセパレータサンプルの異なるテストで加えた。このテストでセパレータのリブは構造内の赤色塗料を有する固体プレートに接触することになり(つまり、構造に圧力が加えられる前)、リブのチップには必然的に赤い塗料が付着することになる。しかしながら、セパレータのバックウェブへの赤色塗料の転写は、赤色塗料がコーティングされた固体プレートに向かってバックウェブが変形したことを示している。この圧縮試験の結果を表2に詳述し、
図42に写真で示す。写真はセパレータの代表的な部分のものであり、セパレータ全体のものではないことが理解される。
【0098】
以下の表2を参照すると、NAM膨潤の存在下での性能(すなわち、酸の利用可能性)
が、1つの例示的な発明のセパレータサンプルおよび3つの対照セパレータのサンプルについて示されている。セパレータサンプルは、以前に表1で示したものと同じである。新しいセパレータサンプルが様々な圧力で各試験に使用されたと理解される。すべてのセパレータは同じ組成のポリエチレン、シリカ、残留未抽出油で作製される。さらに、すべてのセパレータは、約250μmの平均バックウェブ厚と、約800μm~約1.0mmの合計厚さとを備えている。
【0099】
【0100】
図10に示す写真結果から、全ての印加圧力において、本発明のセパレータサンプルのバックウェブ表面の転写された赤色塗料は0%であり、リブのチップにのみ塗料が転写されていることが明らかになった。11kPaの印加圧力で、赤色塗料は、コントロールセパレータ#1のバックウェブ面の0%、コントロールセパレータ#2のバックウェブ面の約20%、コントロールセパレータ#3のバックウェブ面の50%に転写された。
【0101】
これらの試験結果は、本発明によるセパレータを使用する場合に圧縮下での酸利用可能性が影響を受けないことを示す。低圧力下での対照セパレータ#1について同じことが示される。しかしながら、圧縮下での酸利用可能性は、対照セパレータ#2及び#3を使用する場合に影響を受ける。対照セパレータサンプルは概して、部分充電状態で動作するか又は動作することが意図されるフラデッド鉛酸電池の市場で現在市販されている典型的なセパレータの代表である。
【0102】
酸成層化の影響を最小化するための有効性を判定するために、発明のセパレータを運動試験に供した。この試験のために、フォームバッキングの両側にセパレータが形成されているフォームバッキングを含む構造を組み立てる。フォームを両方のセパレータの陰極側(リブの反対側)に配置して、陰極活物質膨潤をシミュレートする。次に、構造をモーションデバイスに入れた。硫酸及び水をデバイスに添加した。メチルオレンジを硫酸に添加するとアシッドレッドと上部の透明な水が生じ、成層化セルを作製した。酸は1.28の比重を有していた。構造を0、30、及び60の運動に供して、スタート/ストップカーのモーションをシミュレートした。
図11は、発明のセパレータサンプル及び対照セパレータ#3のサンプルのこのモーション試験の写真による証拠を示す。示されるように、酸は、混合しながらこれらのモーション全体を通して発明のセパレータにとって利用可能なままであった。対照セパレータ#3に関して、酸のほとんどが置換され、リブ間からスクイーズされ、酸混合は観察されなかった。
【0103】
バックウェブ厚さ
いくつかの実施形態では、多孔質セパレータ膜は、約50μm~約1.0mmのバックウェブ厚さを有し得る。例えば、バックウェブ厚さは、約50μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、又は約1.0mmであり得る。他の例示的実施形態では、バックウェブ厚さTBACKは、約1.0mm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約3
00μm以下、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下であり得る。ある特定の実施形態では、50μm以下の非常に薄い平坦なバックウェブ厚さ、例えば、約10μm~約50μmの厚さが提供される。
【0104】
例示的セパレータの全厚さ(バックウェブ302厚さ並びにポジティブリブ304及びネガティブリブ306の高さ)は、典型的には約250μm~約4.0mmの範囲である。自動車スタート/ストップ電池で使用されるセパレータの全厚さは、典型的には約250μm~約1.0mmである。産業用牽引型スタート/ストップ電池で使用されるセパレータの全厚さは、典型的には約1.0mm~約4.0mmである。
【0105】
形態/エンベロープ
セパレータ300は、平坦シート、一つ若しくは複数のリーフ、ラップ、スリーブ、又はエンベロープ若しくはポケットセパレータとして提供することができる。例示的エンベロープセパレータは、陽極を包囲してもよく(「ポジティブ包囲セパレータ」)、したがってセパレータは、陽極に面した二つの内側面と、隣接する陰極に面する二つの外側面とを有する。あるいは、別の例示的エンベロープセパレータは、陰極を包囲してもよく(「ネガティブ包囲セパレータ」)、したがって、セパレータは、陰極に面する二つの内側面と、隣接する陽極に面する二つの外側面とを有する。そのような包囲されたセパレータにおいて、底縁部103は折り畳まれた、又は密封された折目縁部であってよい。さらに、側稜105a、105bは、連続的又は断続的に密封されたシーム縁部であってよい。縁部は、接着剤、熱、超音波溶接など、又はこれらの任意の組み合わせによって接着又は密封することができる。
【0106】
ある特定の例示的セパレータを加工して、ハイブリッドエンベロープを形成することができる。セパレータシートを半分に折って、セパレータシートの端部をあわせて接着してエンベロープを形成する前、最中、又は後に一つ以上のスリット又は開口部を形成することによって、ハイブリッドエンベロープを提供することができる。開口部の長さは、縁部全体の長さの少なくとも1/50、1/25、1/20、1/15、1/10、1/8、1/5、1/4、1/3、又は1/2であってよい。開口部の長さは、縁部全体の長さの1/50~1/3、1/25~1/3、1/20~1/3、1/20~1/4、1/15~1/4、1/15~1/5、又は1/10~1/5であってよい。ハイブリッドエンベロープは、1~5、1~4、2~4、2~3、又は2個の開口部を有し得、これらは、底縁部の長さに沿って均等に配置されていても、されていなくてもよい。エンベロープの隅に開口部がないのが好ましい。セパレータを折り畳み、密封してエンベロープを得た後にスリットをカットしてもよいし、又は多孔質膜をエンベロープに成型する前にスリットを形成してもよい。
【0107】
セパレータアセンブリ構成のいくつかの他の例示的実施形態には:陽極に面したリブ104;陰極に面したリブ104;陰極又は陽極エンベロープ;陰極又は陽極スリーブ、陰極又は陽極ハイブリッドエンベロープが含まれ;両電極は、包囲、又は袖付き、及びそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0108】
組成物
ある特定の実施形態において、改良されたセパレータには:天然又は合成基材;加工可塑剤;フィラー;天然又は合成ゴム(複数可)又はラテックス、及び一つ以上の他の添加剤及び/又はコーティングなどから作られていてもよい多孔質膜が含まれていてもよい。
【0109】
基材
ある特定の実施形態において、例示的天然又は合成基材には:ポリマー;熱可塑性ポリマー;フェノール樹脂;天然又は合成ゴム;合成木材パルプ;リグニン;ガラス繊維;合
成繊維;セルロース系繊維;及びそれらの任意の組み合わせが含まれていてもよい。ある特定の好ましい実施形態では、例示的セパレータは、熱可塑性ポリマーから作られた多孔質膜であってよい。例示的熱可塑性ポリマーには、原則として、鉛酸電池での使用に適したすべての耐酸性熱可塑性材料が含まれ得る。ある特定の好ましい実施形態において、例示的熱可塑性ポリマーには、ポリビニル及びポリオレフィンが含まれ得る。ある特定の実施形態において、ポリビニルには、例えば、ポリ塩化ビニル(「PVC」)が含まれ得る。ある特定の好ましい実施形態において、ポリオレフィンには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、好ましくはポリエチレンである。ある特定の実施形態において、例示的天然又は合成ゴムには、例えば、ラテックス、未架橋又は架橋ゴム、クラムラバー又は粉砕ゴム、及びそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0110】
加えて、アンチモン(Sb)がNAM及び/又は陰極中に存在する場合、NAM膨潤が低減されることが観察された。したがって、セパレータ上にアンチモンコーティング又はセパレータ組成物中にアンチモン添加剤があってよい。
【0111】
ポリオレフィン
ある特定の実施形態において、多孔質膜層には、好ましくはポリオレフィン、特にポリエチレンが含まれる。好ましくは、ポリエチレンは、高分子量ポリエチレン(「HMWPE」)、(例えば、少なくとも600,000の分子量を有するポリエチレン)である。なお一層好ましくは、ポリエチレンは超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)である。例示的UHMWPEは、粘度測定法によって測定し、Margolieの式によって算出して、少なくとも1,000,000超、特に4,000,000超、最も好ましくは5,000,000~8,000,000の分子量を有し得る。さらに、例示的UHMWPEは、2,160gの標準負荷を使用してASTM D1238(条件E)で明記されたように測定して、実質的にゼロ(0)の標準負荷メルトインデックスを有し得る。さらに、例示的UHMWPEは、130℃にて100gのデカリン中0.02gのポリオレフィンの溶液中で測定して、600ml/g以上、好ましくは1,000ml/g以上、さらに好ましくは2,000ml/g以上、そして最も好ましくは3,000ml/g以上の粘度数を有し得る。
【0112】
ゴム
本明細書中で開示する新規セパレータは、ラテックス及び/又はゴムを含んでもよい。本明細書中で記載する場合、ゴムとは、ゴム、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、架橋若しくは未架橋ゴム、硬化若しくは未硬化ゴム、クラムラバー若しくは粉砕ゴム、又はそれらの混合物を表す。例示的天然ゴムは、様々な供給業者から市販されている、ポリイソプレンの一つ以上のブレンドを含んでもよい。例示的合成ゴムとしては、メチルゴム、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ブロモブチルゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリスルフィドゴム、クロロスルホニルポリエチレン、ポリノルボルネンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム及びシリコーンゴム及びコポリマーゴム、例えば、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム(「EPM」及び「EPDM」)及びエチレン/酢酸ビニルゴムが挙げられる。ゴムは架橋ゴム又は未架橋ゴムであってよく;ある特定の好ましい実施形態では、ゴムは未架橋ゴムである。ある特定の実施形態において、ゴムは、架橋及び未架橋ゴムのブレンドであってよい。
【0113】
可塑剤
ある特定の実施形態において、例示的加工可塑剤には、加工油、石油、パラフィン系鉱油、鉱油、及びそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0114】
フィラー
セパレータは、高構造形態を有するフィラーを含み得る。例示的フィラーは、シリカ、乾燥微粉化シリカ;沈降シリカ;非晶質シリカ;高脆性シリカ;アルミナ;タルク;魚粉;魚骨粉;炭素;カーボンブラックなど、及びそれらの組み合わせを含み得る。ある特定の好ましい実施形態において、フィラーは一つ以上のシリカである。高構造形態とは、増大した表面積を指す。フィラーは、例えば、約100m2/g超、約110m2/g超、約120m2/g超、約130m2/g超、約140m2/g超、約150m2/g超、約160m2/g超、約170m2/g超、約180m2/g超、約190m2/g超、約200m2/g超、約210m2/g超、約220m2/g超、約230m2/g超、約240m2/g超、又は約250m2/g超の高い表面積を有し得る。いくつかの実施形態において、フィラー(例えば、シリカ)は、約100m2/g~約300m2/g、約125m2/g~約275m2/g、約150m2/g~約250m2/g、又は好ましくは約170m2/g~約220m2/gの表面積を有し得る。表面積は、マルチポイントBET窒素表面積用のTriStar 3000TMを使用して評価することができる。高構造形態により、フィラーが製造プロセスの間により多くの油を保持することが可能になる。例えば、高構造形態を有するフィラーは、例えば約150ml/100g超、約175ml/100g超、約200ml/100g超、約225ml/100g超、約250ml/100g超、約275ml/100g超、約300ml/100g超、約325ml/100g超、又は約350ml/100g超の高レベルの吸油量を有する。いくつかの実施形態において、フィラー(例えば、シリカ)は、200~500ml/100g、200~400ml/100g、225~375ml/100g、225~350ml/100g、225~325ml/100g、好ましくは250~300ml/100gの吸油量を有し得る。場合によっては、266ml/100gの吸油量を有するシリカフィラーを使用する。かかるシリカフィラーは、5.1%の水分含量、178m2/gのBET表面積、23μmの平均粒径、0.1%の230メッシュ篩残分値、及び135g/Lの嵩密度を有する。
【0115】
比較的高レベルの吸油量と、可塑剤(例えば、鉱油)に対して比較的高レベルの親和性とを有するシリカは、本明細書中で示すタイプの例示的鉛酸電池セパレータを形成する場合、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)と可塑剤との混合物中に望ましくは分散可能になる。過去において、そのようなセパレータ又は膜を作製するために大量のシリカを使用する場合、一部のセパレータはシリカ凝集に起因する不十分な分散性という不利益を被っていた。本明細書中で示され記載された発明のセパレータの少なくともいくつかでは、溶融ポリオレフィンを冷却する時点でポリオレフィンの分子運動を阻害するシリカ凝集体又は集塊がほとんどないので、ポリオレフィン、例えばポリエチレンはシシ・ケバブ構造を形成する。これはすべて、結果として得られるセパレータ膜を通したイオンの透過性の改良に寄与し、シシ・ケバブ構造又は形態の形成とは、より低い全体的ERセパレータを産生する間、機械的強度が維持されるか又はさらに改良されることを意味する。
【0116】
いくつかの限定された実施形態において、フィラー(例えば、シリカ)は、25μm以下、場合によっては、22μm以下、20μm以下、18μm以下、15μm以下、又は10μm以下の平均粒径を有する。場合によっては、フィラー粒子の平均粒径は15~25μmである。シリカフィラーの粒径及び/又はシリカフィラーの表面積はシリカフィラーの油吸収に寄与する。最終製品すなわちセパレータ中のシリカ粒子は前述のサイズの範囲内に含まれる可能性がある。しかしながら、原料として使用される最初のシリカは、一つ以上の集塊及び/又は凝集体として入手される可能性があり、約200μm以上のサイズを有し得る。
【0117】
いくつかの好ましい実施形態において、発明のセパレータを作製するために使用されるシリカは、鉛酸電池セパレータを作製するために以前に使用されていたシリカフィラーと
比較して、表面シラノール基(表面ヒドロキシル基)の量又は数が増加している。例えば、本明細書中のある特定の好ましい実施形態で使用され得るシリカフィラーは、公知ポリオレフィン鉛酸電池セパレータを作製するために使用される公知シリカフィラーと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%多いシラノール及び/又はヒドロキシル表面基を有するシリカフィラーであってよい。
【0118】
元素ケイ素(Si)に対する比(Si-OH)/Siは、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0119】
1.ポリオレフィン多孔質膜(ある特定の発明の膜は、本発明によるある特定の様々な吸油性シリカを含む)を凍結粉砕し、固体状態核磁気共鳴分光法(29Si-NMR)用の粉末様サンプルを調製する。
【0120】
2.粉末様サンプルに対して29Si-NMRを実施し、ヒドロキシル基に直接結合するSiスペクトル強度(スペクトル:Q2及びQ3)並びに酸素原子のみと直接結合するSiスペクトル強度(スペクトル:Q4)を含むスペクトルを観察し、各NMRピークスペクトルの分子構造は以下のように表すことができる:
Q2:(SiO)2-Si*-(OH)2:二つのヒドロキシル基を有する
Q3:(SiO)3-Si*-(OH):一つのヒドロキシル基を有する
Q4:(SiO)4-Si*:すべてのSi結合はSiOである
ここで、Si*はNMR観察によって証明された元素である。
【0121】
3.観察のために使用される29Si-NMRの条件は以下のとおりである:
・装置:Bruker BioSpin Avance500
・共鳴周波数:99.36MHz
・サンプル量:250mg
・NMR管:7mφ
・観察方法:DD/MAS
・パルス幅:45°
・反復時間:100秒
・スキャン:800
・マジック角回転:5,000Hz
・化学シフト基準:-22.43ppmのシリコーンゴム
【0122】
4.数値的に、スペクトルのピークを分離し、Q2、Q3、及びQ4に属する各ピークの面積比を算出する。その後、この比に基づいて、Siに直接結合するヒドロキシル基(-OH)のモル比を算出する。数値的ピーク分離のための条件は以下の方法で実施する:
・フィッティング領域:-80~-130ppm
・初期ピークトップ:それぞれ、Q2について-93ppm、Q3について-101ppm、Q4について-111ppm。
・初期半値全幅:それぞれ、Q2について400Hz、Q3について350Hz、Q4について450Hz。
・ガウス関数比:初期で80%、フィッティング中は70~100%。
【0123】
5.Q2、Q3、及びQ4のピーク面積比(合計は100である)をフィッティングによって得られた各ピークに基づいて算出する。NMRピーク面積は、各シリケート結合構造の分子数に対応する(したがって、Q4NMRピークでは、四つのSi-O-Si結合がそのシリケート構造内に存在し;Q3NMRピークでは、三つのSi-O-Si結合がそのシリケート構造内に存在する一方で、一つのSi-OH結合が存在し;Q2NMRピ
ークでは、二つのSi-O-Si結合がそのシリケート構造内に存在する一方で、二つのSi-OH結合が存在する)。したがって、Q2、Q3、及びQ4のヒドロキシル基(-OH)の各々の数にそれぞれ2、1、及び0をかける。これら三つの結果を合計する。合計値はSiに直接結合するヒドロキシル基(-OH)のモル比を示す。
【0124】
ある特定の実施形態において、シリカは、29Si-NMRによって測定して、約21:100~35:100の範囲内、いくつかの好ましい実施形態では、約23:100~約31:100、ある特定の好ましい実施形態では、約25:100~約29:100、そして他の好ましい実施形態では、少なくとも約27:100又はそれ以上であり得るOH基対Si基の分子比を有し得る。
【0125】
いくつかの限定された実施形態において、上述のフィラーの使用により、押出ステップ中により高い割合の加工油の使用が可能になる。セパレータ中の多孔質構造は、一つには、押出後に油の除去により形成されるので、最初に吸収された脂の量が多いほど、空孔率が高くなるか又は空隙容積が高くなる。押出ステップの不可欠な構成要素であるが、油はセパレータの非導電性成分である。セパレータ中の残油は、陽極と接触した場合にセパレータを酸化から保護する。従来型セパレータの製造では、加工ステップでの油の正確な量を制御することができる。一般的に言えば、従来型セパレータは、50~70%の加工油、いくつかの実施形態では、55~65%、いくつかの実施形態では、60~65%、そしていくつかの実施形態では、約62重量%の加工油を用いて製造される。油を約59%未満に減らすと、押出機成分に対する摩擦が増加するために燃焼が起こることが知られている。しかしながら、規定量をかなり上回って油を増加させると、乾燥段階で収縮が起こり、寸法が不安定になる可能性がある。油分を増加させることを以前試みた結果、油除去の際に孔収縮または凝縮が起こったが、本明細書中で開示したようにして調製したセパレータは、油除去の際に、あったとしても最小の収縮及び凝縮を示す。したがって、孔径及び寸法安定性を損なうことなく空孔率を増加させることができ、それによって電気抵抗を減少させることができる。
【0126】
ある特定の限定された実施形態において、上述のフィラーの使用により、最終的なセパレータにおける最終油濃度の低減が可能になる。油は非伝導体であるので、油分を低減することにより、セパレータのイオン伝導性を増加させることができ、セパレータのERの低下に役立つことができる。したがって、最終油分が低下したセパレータは、増大した効率を有し得る。ある特定の限定された実施形態では、20%未満、例えば、約14%~20%、いくつかの特定の実施形態では、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、又は5%未満の最終加工油分(重量基準)を有するセパレータが提供される。
【0127】
フィラーは、電解質イオンのいわゆる水和球をさらに低減することができ、膜を越えてのそれらの輸送を増強し、それによって、電池、例えば強化フラデッド電池又はシステムの全体的電気抵抗又はERを再度低下させる。
【0128】
一つ又は複数のフィラーは、セパレータを超える電解質及びイオンの流れを促進する、様々な種(例えば、金属などの極性種)を含み得る。したがって、かかるセパレータがフラデッド電池、例えば強化フラデッド電池で用いられる場合に、全体的な電気抵抗の減少に至る。
【0129】
脆砕性
ある特定の限定された実施形態では、フィラーは、アルミナ、タルク、シリカ、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、フィラーは沈降シリカであ
り得、いくつかの実施形態において、沈降シリカは非晶質シリカである。いくつかの実施形態において、セパレータ全体にわたるフィラーの微細分散を可能にするシリカ又は脆砕性シリカの凝集体及び/又は集塊を使用し、それによってねじれ及び電気抵抗を減少させることが好ましい。ある特定の好ましい実施形態において、フィラー(例えば、シリカ)は高レベルの脆砕性によって特徴づけられる。良好な脆砕性は、多孔質膜の押出の際にポリマー全体にわたるフィラーの分散を増強し、空孔率を増強し、そしてひいてはセパレータによる全体的なイオン伝導性を増強する。
【0130】
脆砕性は、シリカ粒子又は材料(凝集体又は集塊)が、より小さなサイズであって、より分散性の粒子、ピース又は成分に分解される能力、傾向又は性向として測定することができる。
図12の左側に示すように、新しいシリカは、標準シリカよりも脆砕性である(30秒及び60秒の超音波処理により小さなピースに分解される)。例えば、新しいシリカは、超音波処理0秒で24.90um、30秒で5.17um、60秒で0.49umの50%体積粒子径を有していた。したがって、30秒の超音波処理ではサイズ(直径)が50%を超えて減少し、60秒はで50%体積シリカ粒子のサイズ(直径)が75%を超えて減少した。したがって、「高脆砕性」の一つの可能な好ましい定義は、30秒の超音波処理で平均サイズ(直径)が少なくとも50%低減し、シリカ粒子の60秒の超音波処理(又は樹脂シリカ混合物を加工して膜を形成する際)で平均サイズ(直径)が少なくとも75%低減することであり得る。少なくともある特定の実施形態において、より脆砕性のシリカを使用することが好ましい可能性があり、脆砕性であり、その脆砕性が、多峰性、例えば二峰性又は三峰性であるシリカを使用することがなお一層好ましい可能性がある。
図12を参照すると、標準シリカはその脆砕性又は粒径分布において単峰性のようであり、その一方で、新しいシリカはより脆砕性であり、30秒の超音波処理で二峰性(二つのピーク)及び60秒の超音波処理で三峰性(三つのピーク)のようである。一つ又は複数のそのような脆砕性及び多峰性粒径は、強化膜及びセパレータ特性を提供し得る。
図12は、標準シリカ及び新しいシリカを比較するSEM画像である。
図14は超音波処理前後の新しいシリカのSEM画像である。
【0131】
前記特性の一つ以上を有するフィラーの使用は、より高い最終空孔率を有するセパレータの製造を可能にする。本明細書中で開示されるセパレータは、60%超、61%超、62%超、63%超、64%超、65%超、66%超、67%超、68%超、69%超、又は70%超の最終空孔率を有し得る。空孔率は、ガス吸着法を使用して測定することができる。空孔率はBS-TE-2060によって測定することができる。
【0132】
いくつかの限定された実施形態において、多孔質セパレータは、約1μm以下、約0.9μm以下、約0.8μm以下、約0.7μm以下、約0.6μm以下、約0.5μm以下、又は約0.1μm以下の平均孔径を維持しつつ、より高い割合のより大きな孔を有し得る。
【0133】
少なくとも一つの実施形態によると、セパレータは、加工油及びフィラー並びに任意の所望の添加剤と混合された超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)などのポリエチレンから作られている。少なくとも一つの他の実施形態によると、セパレータは、加工油及びタルクと混合された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から構成される。少なくとも一つの他の実施形態によると、セパレータは、加工油及びシリカ、例えば、沈降シリカ、例えば非晶質沈降シリカと混合されたUHMWPEから構成される。添加剤を次に、一つ以上の上述の技術によりセパレータに塗布することができる。
【0134】
電気抵抗を低減し、冷クラッキングアンプを増加することに加えて、好ましいセパレータはまた、他の利点をもたらすように設計される。アセンブリに関して、セパレータは加工装置をより容易に通過し、したがって、より効率的に製造される。高速アセンブリ及び
寿命の後期での短絡を防止するために、セパレータは、標準的PEセパレータと比較した場合、優れた穿刺強度及び耐酸化性を有する。低減した電気抵抗及び増加した冷クラッキングアンプと相まって、電池製造業者らはこれらの新しいセパレータでそれらの電池において改良され持続した電気性能を見出す可能性が高い。
【0135】
電気抵抗
ある特定の選択された実施形態では、開示されたセパレータは、減少した電気抵抗、例えば、約200mΩ・cm2以下、約180mΩ・cm2以下、約160mΩ・cm2以下、約140mΩ・cm2以下、約120mΩ・cm2以下、約100mΩ・cm2以下、約80mΩ・cm2以下、約60mΩ・cm2以下、約50mΩ・cm2以下、約40mΩ・cm2以下、約30mΩ・cm2以下、又は約20mΩ・cm2以下の電気抵抗を示す。様々な実施形態において、本明細書中で記載するセパレータは、同じ厚さの公知セパレータと比較して、ERにおいて約20%以上の低減を示す。例えば、公知セパレータは60mΩ・cm2のER値を有し得る;したがって、同じ厚さでの本発明によるセパレータは約48mΩ・cm2未満のER値を有する。
【0136】
本発明によるER試験評価用のサンプルセパレータを試験するためには、まずサンプルセパレータを準備しなければならない。そうするためには、サンプルセパレータを、好ましくは脱塩水の浴中に沈め、次に水を沸騰させ、次いでセパレータを沸騰塩水浴中で10分後に取り出す。取り出した後、過剰の水をセパレータから振り落とし、次いで27℃±1℃で1.280の比重を有する硫酸浴中に入れる。セパレータを硫酸浴中に20分間浸す。これでセパレータは電気抵抗について試験するための準備ができている。
【0137】
穿刺抵抗
ある特定の選択された実施形態では、例示的セパレータは穿刺抵抗の増加を特徴とし得る。例えば、約9N以上、9.5N以上、10N以上、10.5N以上、11N以上、11.5N以上、12N以上、12.5N以上、13N以上、13.5N以上、14N以上、14.5N以上、15N以上、15.5N以上、16N以上、16.5N以上、17N以上、17.5N以上、18N以上、18.5N以上、19N以上、19.5N以上、又は20N以上の穿刺抵抗。ある特定の実施形態において、例示的セパレータは、約9N~20N以上、又はさらに好ましくは約12N~20N以上の穿刺抵抗で規定され得る。
【0138】
穿刺抵抗は、概して
図25に図示されているチップ500を利用して、多孔質膜を穿刺するために必要な力として測定することができる。チップ500が膜を穿刺する間、多孔質膜が支持される穿刺基板(puncture base)は、概して、深さ10mmを有する直径6.5mmの直線状孔を有する基板として記載することができる。チップの移動量限界は、穿刺基板表面の下約4mm~8mmであり得る。穿刺チップ100は約5mm/sの速度で膜中に直線状に移動する。
【0139】
酸化安定性
ある特定の限定された実施形態では、例示的セパレータは、改良されたより高い耐酸化性によって特徴づけることができる。耐酸化性は、鉛酸電池電解質に長時間曝露した後の、サンプルセパレータ試験片の横方向の伸長で測定される。例えば、例示的セパレータは、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、350%以上、400%以上、450%以上、又は500%以上の40時間における伸長を有し得る。ある特定の実施形態において、例示的セパレータは、好ましい耐酸化性、すなわち約200%以上の40時間における伸長を有し得る。
【0140】
耐酸化性についてサンプルを試験するために、例示的セパレータのサンプル試験片600をまず、概して
図16Aに示すような形状に切断する。試験片600を次いで
図16B
及び16Cに概して示すようなサンプルホルダー650に入れる。
【0141】
最初のサンプルセットは、破断するまでの伸長パーセンテージについて、乾燥状態で、時間=0(0)時にて試験する。伸長は、
図16A中のA点及びB点から測定して50mmの距離に基づく。例えば、A点及びB点が300%の距離まで伸長されるならば、AとBとの間の最終距離は150mmとなる。
【0142】
伸長試験は、サイクリング電池中の電解質への長時間の曝露を短時間でシミュレートするように設計される。サンプル600をまずイソプロパノール中に完全に沈め、排液し、次いで水中に1~2秒間沈める。次にサンプルを電解質溶液中に沈める。360mlの比重1.28の硫酸、35mlの比重1.84の硫酸、次いで105mlの35%過酸化水素を順に添加することによって溶液を調製する。溶液を80℃で保持し、サンプルを溶液中に長時間沈める。サンプルは、20時間、40時間、60時間、80時間などの一定間隔で伸長のために試験することができる。これらの間隔で試験するために、サンプル600を80℃電解質浴から取り出し、酸が除去されるまで微温の流水下に置く。その後、伸長を試験することができる。
【0143】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、改良された電池セパレータ、低ER又は高コンダクタンスセパレータ、改良された鉛酸電池、例えばフラデッド鉛酸電池、高コンダクタンス電池、及び/又は、かかる電池を含む改良された車両、及び/又はかかるセパレータ若しくは電池、及び/又はそれらの組み合わせの製造若しくは使用の方法を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、改良されたセパレータを組み入れた改良された鉛酸電池であって、コンダクタンスの増加を示す改良された鉛酸電池を対象とする。
【0144】
添加剤/界面活性剤
ある特定の実施形態において、例示的セパレータは、セパレータ又は多孔質膜に添加される一つ以上の性能強化添加剤を含んでもよい。性能強化添加剤は、界面活性剤、湿潤剤、着色剤、帯電防止添加剤、アンチモン抑制添加剤、UV保護添加剤、抗酸化剤など、及びそれらの任意の組み合わせであってよい。ある特定の実施形態において、追加の界面活性剤は、イオン性、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤であってよい。
【0145】
本明細書中で記載するある特定の実施形態では、低減した量のアニオン性又は非イオン性界面活性剤が発明の多孔質膜又はセパレータに添加される。界面活性剤の量がより少ないために、望ましい特徴には、全有機炭素(「TOC」)の低下及び/又は揮発性有機化合物(「VOC」)の低下が含まれ得る。
【0146】
ある特定の好適な界面活性剤は非イオン性であり、その一方で、他の好適な界面活性剤はアニオン性である。添加剤は、単一の界面活性剤であってもよいし、又は二つ以上の界面活性剤、例えば二つ以上のアニオン性界面活性剤、二つ以上の非イオン性界面活性剤、又は少なくとも一つのイオン性界面活性剤及び少なくとも一つの非イオン性界面活性剤の混合物であってよい。ある特定の好適な界面活性剤は、6未満、好ましくは3未満のHLB値を有し得る。これらのある特定の好適な界面活性剤と本明細書中で記載する発明のセパレータとの併用は、鉛酸電池において使用した場合に、当該鉛酸電池について、水分損失の低減、アンチモン中毒の低減、サイクリングの改良、浮遊電流の低減、浮遊電位の低減など、又はこれらの任意の組み合わせをもたらす、なお一層改良されたセパレータを得ることができる。好適な界面活性剤としては、界面活性剤、例えば、アルキル硫酸塩;アルキルアリールスルホン酸塩;アルキルフェノール-アルキレンオキサイド付加産物;石鹸;アルキル-ナフタレン-スルホン酸塩;一つ以上のスルホ-コハク酸塩、例えば、アニオン性スルホ-コハク酸塩;スルホ-コハク酸塩のジアルキルエステル;アミノ化合物
(第一級、第二級、第三級アミン、又は第四級アミン);エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー;様々なポリエチレンオキサイド;並びにモノ及びジアルキルリン酸エステルの塩が挙げられる。添加剤には、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシ化エステル、ポリエトキシ化アルコール、アルキルポリサッカリド、例えばアルキルポリグリコシド及びそれらのブレンド、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、有機シリコーン系界面活性剤、エチレン酢酸ビニルターポリマー、エトキシ化アルキルアリールリン酸エステル及び脂肪酸のスクロースエステルが含まれ得る。
【0147】
ある特定の実施形態において、添加剤は、式(I)の化合物によって表すことができ
R(OR1)n(COOMx+
1/x)m (I)
式中:
・Rは、10~4200個の炭素原子、好ましくは13~4200個の炭素原子を有する線状又は非芳香族炭化水素ラジカルであって、酸素原子によって中断されていてもよい、線状又は非芳香族炭化水素ラジカルある;
・R1=H、-(CH2)COOMx+
1/x又は-(CH2)k-SO3Mx+1/x、好ましくはHであり、式中、k=1又は2である;で
・Mは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4+であって、変数Mのすべてが同時にH+を意味するわけではない;
・n=0又は1;
・m=0又は10~1400の整数である;そして
・x=1又は2である。
【0148】
式(I)による化合物における酸素原子対炭素原子の比は1:1.5~1:30の範囲であり、m及びnは同時に0となり得ない。しかしながら、好ましくは変数n及びmのうちの一つだけが0ではない。
【0149】
非芳香族炭化水素ラジカルとは、芳香族基を含まないラジカル、又はそれ自体が一つのラジカルを表すラジカルを意味する。炭化水素ラジカルは酸素原子で中断されていてもよい(すなわち、一つ以上のエーテル基を含んでもよい)。
【0150】
Rは、好ましくは、酸素原子により中断されていてもよい直鎖若しくは分枝脂肪族炭化水素ラジカルである。飽和未架橋炭化水素ラジカルが特に非常に好ましい。しかしながら、上述のように、Rは、ある特定の実施形態では、芳香環を含有していてもよい。
【0151】
電池セパレータを製造するために式(I)の化合物を使用することによって、それらを酸化破壊から効果的に保護することができる。
【0152】
式(I)による化合物を含む電池セパレータが好ましく、式中:
Rは、10~180、好ましくは12~75、特に好ましくは14~40個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであって、1~60、好ましくは1~20、特に好ましくは1~8個の酸素原子によって中断されていてもよく、特に好ましくは式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-の炭化水素ラジカルであり、式中:
〇R2は、10~30個の炭素原子、好ましくは12~25、特に好ましくは14~20個の炭素原子を有するアルキルラジカルであって、R2は線状又は芳香環を含むなどの非線状であり得る;
〇Pは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である;そして
〇qは、0~30、好ましくは0~10、特に好ましくは0~4の整数である;
〇pとqとの合計が0~10、特に0~4である化合物が特に好ましい;
・n=1;そして
・m=0。
【0153】
式R2-[(OC2H4)p(OC3H6)q]-は、角括弧中の基の並びが示したものとは異なる化合物も含むと理解されるべきである。例えば、本発明によると、括弧中のラジカルが交互になった(OC2H4)基及び(OC3H6)基によって形成される化合物が好適である。
【0154】
R2が、10~20、好ましくは14~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝アルキルラジカルである添加剤が特に有利であることがわかった。OC2H4は、好ましくはOCH2CH2を表し、OC3H6はOCH(CH3)2及び/又はOCH2CH2CH3を表す。
【0155】
好ましい添加剤として、特に、アルコール(p=q=0;m=0)が挙げられ、第一級アルコールが特に好ましく、脂肪アルコールエトキシレート(p=1~4、q=0)、脂肪アルコールプロポキシレート(p=0;q=1~4)及び脂肪アルコールアルコキシレート(p=1~2;q=1~4)が挙げられ、第一級アルコールのエトキシレートが好ましい。脂肪アルコールアルコキシレートは、例えば、対応するアルコールとエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドとの反応から入手可能である。
【0156】
水及び硫酸中に不溶性であるか又は難溶性であるタイプm=0の添加剤は、特に有益であることが判明している。
【0157】
式(I)による化合物を含む添加剤も好ましく、式中:
・Rは、20~4200、好ましくは50~750、特に好ましくは80~225個の炭素原子を有するアルカンラジカルである;
・Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン、H+又はNH4
+、特にアルカリ金属イオン、例えば、Li+、Na+及びK+又はH+であり、変数Mはすべて同時にH+を意味するものではない;
・n=0;
・mは10~1400の整数である;そして
・x=1又は2である。
【0158】
塩添加剤
ある特定の実施形態において、好適な添加剤としては、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びアクリル酸-メタクリル酸コポリマーを挙げることができ、その酸基は、好ましくは40%、特に好ましくは80%など、少なくとも部分的に中和されている。パーセンテージは、酸基の数を指す。特に好ましいのは、完全に塩の形態で存在するポリ(メタ)アクリル酸である。好適な塩としては、Li、Na、K、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Zn、及びアンモニウム(NR4、ここで、Rは水素又は炭素官能基のいずれかである)が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸-メタクリル酸コポリマーを挙げることができる。1,000~100,000g/mol、特に好ましくは1,000~15,000g/mol、及び非常に好ましくは1,000~4,000g/molの平均モル質量Mwを有するポリ(メタ)アクリル酸、特に、ポリアクリル酸が好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー及びコポリマーの分子量は、ポリマーの水酸化ナトリウム溶液で中和した1%水溶液の粘度(Fikentscher定数)を測定することによって確認される。
【0159】
(メタ)アクリル酸のコポリマー、特に、(メタ)アクリル酸のほかに、エチレン、マレイン酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及び/又はエチルヘキシルアクリレートをコモノマーとして含むコポリマーも好適である。少なくとも
40重量%、好ましくは少なくとも80重量%の(メタ)アクリル酸モノマーを含むコポリマーが好ましく;パーセンテージは、モノマー又はポリマーの酸形態に基づく。
【0160】
ポリアクリル酸ポリマー及びコポリマーを中和するために、水酸化カリウム、特に水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物が特に好適である。加えて、セパレータを増強するためのコーティング及び/又は添加剤は、例えば、金属アルコキシドが含んでもよく、金属は、一例として(限定されることを意図するものではない)、Zn、Na、又はAlであってよく、一例としてナトリウムエトキシドであってよい。
【0161】
いくつかの実施形態において、多孔質ポリオレフィン多孔質膜は、かかる層の片側又は両側の上にコーティングを含んでもよい。そのようなコーティングは、界面活性剤又は他の材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、例えば、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第9,876,209号に記載されている一つ以上の材料を含んでもよい。そのようなコーティングは、例えば、電池システムの過充電電圧を低下させ、それによって、格子腐食が少なく電池寿命を延長し、乾燥及び/又は水分損失を防止することができる。
【0162】
比
ある特定の限定された実施形態では、膜は、重量基準で、約5~15%のポリマー、場合によっては、約10%のポリマー(例えば、ポリエチレン)、約10~75%のフィラー(例えば、シリカ)、場合によっては、約30%のフィラー、及び約10~85%の加工油、場合によっては、約60%の加工油を組み合わせることによって調製することができる。他の実施形態では、フィラー含有量を低減させ、油分を高くし、例えば、約61重量%超、62重量%超、63重量%超、64重量%超、65重量%超、66重量%超、67重量%超、68重量%超、69重量%超又は70重量%超である。フィラー:ポリマー比(重量基準)は、ほぼ(又はほぼこれらの特定された範囲内であり得る)2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4.0:1.4.5:1、5.0:1、5.5:1又は6:1などであり得る。フィラー:ポリマー比(重量基準)は、約1.5:1~約6:1、場合によっては、2:1~6:1、約2:1~5:1、約2:1~4:1、場合によっては、約2:1~約3:1であり得る。フィラー、油、及びポリマーの量は、すべて、実行可能性(runnability)及び所望のセパレータ特性、例えば電気抵抗、坪量、穿刺抵抗、曲げ剛性、耐酸化性、空孔率、物理的強度、ねじれなどについてバランスが取れている。
【0163】
少なくとも一つの実施形態によると、多孔質膜は、加工油及び沈降シリカと混合されたUHMWPEを含み得る。少なくとも一つの実施形態によると、多孔質膜は、加工油及び沈降シリカと混合されたUHMWPEを含み得る。混合物はまた、セパレータ技術において一般的な他の添加剤又は薬剤(例えば、界面活性剤、湿潤剤、着色剤、帯電防止添加剤、抗酸化剤など、及びそれらの任意の組み合わせ)を少量含んでもよい。ある特定の例では、多孔質ポリマー層は、8~100体積%のポリオレフィン、0~40体積%の可塑剤及び0~92体積%の不活性フィラー材料の均一な混合物であってよい。好ましい可塑剤は石油である。可塑剤は溶媒抽出及び乾燥によって、ポリマー-フィラー-可塑剤組成物から容易に除去される成分であるので、電池セパレータに空孔率を付与するのに有用である。
【0164】
ある特定の実施形態において、本明細書中で開示する多孔質膜は、天然ゴム、合成ゴム、又はそれらの混合物であり得るラテックス及び/又はゴムを含んでもよい。天然ゴムは、様々な供給業者から市販されている、ポリイソプレンの一つ以上のブレンドを含んでもよい。例示的合成ゴムとしては、メチルゴム、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ブロモブチルゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリスルフィ
ドゴム、クロロスルホニルポリエチレン、ポリノルボルネンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム及びシリコーンゴム及びコポリマーゴム、例えば、スチレン/ブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム(EPM及びEPDM)及びエチレン/酢酸ビニルゴムが挙げられる。ゴムは架橋ゴム又は未架橋ゴムであってよく;ある特定の好ましい実施形態では、ゴムは未架橋ゴムである。ある特定の実施形態において、ゴムは、架橋及び未架橋ゴムのブレンドであってよい。ゴムは、セパレータにおいて、最終セパレータ重量(ゴム及び/又はラテックスを含むポリオレフィンセパレータシート又は層の重量)に対して少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10重量%である量で存在し得る。ある特定の実施形態において、ゴムは、約1~6%、約3~6重量%、約3重量%、及び約6重量%の量で存在し得る。多孔質膜は、約2.6:1.0のフィラー対ポリマー及びゴム(フィラー:ポリマー及びゴム)重量比を有し得る。ゴム、フィラー、油、及びポリマーの量は、すべて、実行可能性及び所望のセパレータ特性、例えば電気抵抗、坪量、穿刺抵抗、曲げ剛性、耐酸化性、空孔率、物理的強度、ねじれなどについてバランスが取れている。
【0165】
本発明に従って作製した、ポリエチレンとフィラー(例えば、シリカ)とを含む多孔質膜は、典型的には残油分を有し;いくつかの実施形態では、かかる残油分は、セパレータ膜の全重量の約0.5%から約40%まで(場合によっては、セパレータ膜の全重量の約10~40%、場合によっては、全重量の約20~40%)である。本明細書中のある特定の限定された実施形態において、セパレータ中の残油分の一部から全部を、より多くの性能強化添加剤、例えば界面活性剤、例えば6未満の親水性親油性バランス(「HLB」)を有する界面活性剤、又は例えば非イオン性界面活性剤を添加することによって置換してもよい。例えば、性能強化添加剤、例えば界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤は、多孔質セパレータ膜の全重量の残油分の0.5%までから全量まで(例えば、20%又は30%又はさらには40%まで)を構成し、それによってセパレータ膜中の残油を部分的又は完全に置換することができる。
【0166】
製造
いくつかの実施形態において、例示的多孔質膜は押出機中で構成部品を混合することによって作製することができる。例えば、約30重量%のフィラーと約10重量%のUHMWPE、及び約60%の加工油を押出機中で混合してもよい。例示的多孔質膜は、加熱された押出機に構成部品を通過させ、押出機によって生成された押出物をダイから、二つの加熱されたプレス又はカレンダースタック又はロールによって形成されたニップに通して、連続ウェブを形成することによって作製することができる。ウェブから実質的な量の加工油を、溶媒の使用により抽出し、それによって乾燥により溶媒を除去することができる。次に、ウェブを所定の幅のレーンに切断し、次にロールに巻き取ることができる。更に、プレス又はカレンダーロールに、様々な溝パターンを刻んで、本明細書中で実質的に記載されるようなリブ、溝、テクスチャー付区域、エンボスなどを付与することができる。
【0167】
ゴムを用いた製造
いくつかの実施形態において、例示的多孔質膜は押出機中で構成部品を混合することによって作製することができる。例えば、約5~15重量%のポリマー(例えば、ポリエチレン)、約10~75重量%のフィラー(例えば、シリカ)、約1~50重量%のゴム及び/又はラテックス、及び約10~85%の加工油を押出機中で混合することができる。例示的多孔質膜は、加熱された押出機に構成部品を通過させ、押出機によって生成された押出物をダイから、二つの加熱されたプレス又はカレンダースタック又はロールによって形成されたニップに通して、連続ウェブを形成することによって作製することができる。ウェブから実質的な量の加工油を、溶媒の使用により抽出することができる。次に、ウェブを乾燥し、切り込みを入れて所定の幅のレーンにし、次にロールに巻き取ることができる。更に、プレス又はカレンダーロールに、様々な溝パターンを刻んで、本明細書中で実
質的に記載されるようなリブ、溝、テクスチャー付区域、エンボスなどを付与することができる。ゴム、フィラー、油、及びポリマーの量は、すべて、実行可能性及び所望のセパレータ特性、例えば電気抵抗、坪量、穿刺抵抗、曲げ剛性、耐酸化性、空孔率、物理的強度、ねじれなどについてバランスが取れている。
【0168】
押出機の構成部品に添加することに加えて、ある特定の実施形態は、押出後にゴムを多孔質膜に組み合わせる。例えば、ゴムは、片側又は両側、好ましくは陰極に面する側に、ゴム及び/又はラテックス、任意選択的に、シリカ、及び水を含む液体スラリーでコーティングしてもよく、次に、例示的多孔質膜の表面上にこの材料のフィルムが形成されるように乾燥させる。この層のより良好なぬれ性のために、公知湿潤剤を鉛酸電池における使用のためにスラリーに添加することができる。ある特定の実施形態において、スラリーはまた、一つ以上の本明細書中で記載するような性能強化添加剤も含み得る。乾燥後、多孔質層及び/又はフィルムはセパレータの表面上に形成され、これは多孔質膜に非常によく接着し、仮にあったとしてごくわずかに電気抵抗を増加させる。ゴムを添加した後、マシンプレス又はカレンダースタック又はロールのいずれかを使用してさらに圧縮することができる。ゴム及び/又はラテックスを塗布するための他の可能な方法は、セパレータの一つ以上の表面のディップコート、ローラーコート、スプレーコート、若しくはカーテンコート、又はこれらの任意の組み合わせによって、ゴム及び/又はラテックススラリーを塗布することである。これらのプロセスは、加工油を抽出する前若しくは後、又は切り込みを入れてレーンにする前若しくは後に行うことができる。
【0169】
本発明のさらなる実施形態は、含浸及び乾燥によって膜上にゴムを堆積させることを含む。
【0170】
性能強化添加剤を用いた製造
ある特定の実施形態において、性能強化添加剤又は薬剤(例えば、界面活性剤、湿潤剤、着色剤、帯電防止添加剤、抗酸化剤など、及びそれらの任意の組み合わせ)はまた、押出機内で他の構成部品とあわせて混合してもよい。本開示による多孔質膜を次いで、シート又はウェブの形状に押出し、上述したのと実質的に同じ方法で仕上げ処理することができる。
【0171】
ある特定の実施形態において、そして押出機に添加することに加えて又は代替的に、一つ又は複数の添加剤を、例えば、セパレータ多孔質膜に、仕上げ処理する時(例えば、加工油の大部分を抽出した後、及びゴム導入の前又は後)に塗布することができる。ある特定の好ましい実施形態によると、添加剤又は添加剤の溶液(例えば、水溶液)をセパレータの一つ以上の表面に塗布する。この変形例は、特に、非耐熱性添加剤及び加工油の抽出のために使用される溶媒中で安定な添加剤の塗布で好適である。発明による添加剤用の溶媒として特に好適なのは、低分子量アルコール、例えばメタノール及びエタノール、並びにこれらのアルコールと水との混合物である。塗布は、セパレータの、陰極に面する側、陽極に面する側、又は両側で行うことができる。塗布はまた、溶媒浴中で、孔形成剤(例えば、加工油)の抽出の間に行うこともできる。ある特定の限定された実施形態において、性能強化添加剤のある部分、例えば、セパレータが作製される前に押出機に添加される界面活性剤コーティング若しくは性能強化添加剤(又は両者)は、電池システム中のアンチモンと組み合わせることができ、アンチモンを不活化する、及び/又はアンチモンと化合物を形成する、及び/又は電池のマッドレスト(mud rest)中にアンチモンを落下させる、及び/又はアンチモンが陰極上に堆積するのを防止することができる。界面活性剤又は添加剤はまた、電解質、ガラスマット、電池ケース、ペースト紙(pasting paper)、ペーストマットなど、又はそれらの組み合わせに添加することもできる。
【0172】
ある特定の実施形態において、添加剤(例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又はそれらの混合物)は、少なくとも0.5g/m2、1.0g/m2、1.5g/m2、2.0g/m2、2.5g/m2、3.0g/m2、3.5g/m2、4.0g/m2、4.5g/m2、5.0g/m2、5.5g/m2、6.0g/m2、6.5g/m2、7.0g/m2、7.5g/m2、8.0g/m2、8.5g/m2、9.0g/m2、9.5g/m2又は10.0g/m2又はさらに約25.0g/m2までの密度又はアドオンレベルで存在してもよい。添加剤は、0.5~15g/m2、0.5~10g/m2、1.0~10.0g/m2、1.5~10.0g/m2、2.0~10.0g/m2、2.5~10.0g/m2、3.0~10.0g/m2、3.5~10.0g/m2、4.0~10.0g/m2、4.5~10.0g/m2、5.0~10.0g/m2、5.5~10.0g/m2、6.0~10.0g/m2、6.5~10.0g/m2、7.0~10.0g/m2、7.5~10.0g/m2、4.5~7.5g/m2、5.0~10.5g/m2、5.0~11.0g/m2、5.0~12.0g/m2、5.0~15.0g/m2、5.0~16.0g/m2、5.0~17.0g/m2、5.0~18.0g/m2、5.0~19.0g/m2、5.0~20.0g/m2、5.0~21.0g/m2、5.0~22.0g/m2、5.0~23.0g/m2、5.0~24.0g/m2、又は5.0~25.0g/m2の密度又はアドオンレベルでセパレータ上に存在してもよい。
【0173】
塗布はまた、電池セパレータを添加剤又は添加剤の溶液中に浸し(溶媒浴添加)、必要ならば(例えば、乾燥により)溶媒を除去することによって、行うこともできる。このようにして、添加剤の塗布を、例えば、膜製造中にしばしば適用される抽出と組み合わせることができる。他の好ましい方法は、表面に添加剤をスプレーすること、一つ以上の添加剤をセパレータの表面上にディップコート、ローラーコート、又はカーテンコートすることである。
【0174】
本明細書中で記載するある特定の実施形態では、低減した量のイオン性、カチオン性、アニオン性又は非イオン性界面活性剤が発明のセパレータに添加される。そのような場合、望ましい特徴は、全有機炭素の低下を含み得、及び/又は揮発性有機化合物の低下(より少量の界面活性剤に起因する)により、そのような実施形態による望ましい発明のセパレータを製造することができる。
【0175】
繊維状マットと組み合わせる
ある特定の実施形態において、本開示による例示的セパレータは、ウィッキング特性(wicking properties)が向上した、及び/又はぬれ性若しくは電解質特性の保持が向上した、繊維層若しくは繊維状マットなどの別の層と組み合わせる(積層その他)ことができる。繊維状マットは、織物、不織布、フリース、メッシュ、ネット、単層、多層(各層は、他の層と同一、類似、又は異なる特性を有していてもよい)、ガラス繊維、若しくは合成繊維から構成されるもの、合成繊維から作製されたフリース若しくは織物又はガラス繊維及び合成繊維若しくは紙との混合物、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0176】
ある特定の実施形態において、繊維状マット(積層若しくはその他)又はマットは、さらなる材料の担体として使用することができる。付加材料としては、例えば、ゴム及び/又はラテックス、任意選択的にシリカ、水、及び/又は一つ以上の性能強化添加剤、例えば本明細書中に記載する様々な添加剤、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。一例として、さらなる材料を、スラリーの形態で送達することができ、これを次に繊維状マットの一つ以上の表面上にコーティングしてフィルムを形成してもよいし、又は浸して繊維状マットに含浸させてもよい。
【0177】
繊維層が存在する場合、繊維層よりも大きな表面積を有することが好ましい。したがって、多孔質膜と繊維層とを組み合わせると、繊維層は多孔質層を完全には被覆しない。膜層の少なくとも二つの相対する縁部領域が覆われていないままであって、ポケット若しくはエンベロープ及び/又は同種のものの任意の形成を容易にするヒートシール用の縁部を提供することが好ましい。そのような繊維状マットは、少なくとも100μm、いくつかの実施形態では、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1mm、少なくとも約2mmなどである厚さを有し得る。その後の積層セパレータを細断してもよい。ある特定の実施形態では、繊維状マットを多孔質膜のリブ付き表面に積層する。ある特定の実施形態では、改良された本明細書中に記載するセパレータは、ロール形態及び/又は切断片形態で供給することができるので、これを使用すると、電池メーカーには取り扱い及び/又はアセンブリの利点がもたらされる。また、すでに述べたように、改良されたセパレータは、独立型セパレータシート又は一つ以上の繊維状マットなどを添加しない層であり得る。
【0178】
繊維状マットが多孔質膜に積層される場合、それらを接着剤、熱、超音波溶接、圧縮など、又はこれらの任意の組み合わせによってあわせて接着することができる。また、繊維状マットは、PAM又はNAM保持マットであってよい。
【0179】
実施例
以下の実施例は、本発明の少なくとも選択されたセパレータ実施形態をさらに説明する。
【0180】
ある特定の実施形態では、以下の沈降シリカを用いて発明によるセパレータを得ることができる:
メジアン粒径20.48μm、平均粒径24.87μm(Coulter LS230を使用して測定)
以下の特性を有する表3に示すシリカサンプルをセパレータの調製で用いた:
【0181】
【0182】
上記シリカを使用して作製したポリエチレンセパレータは、表4及び5で示すような以下の特性を有していた:
【表4】
【0183】
【0184】
更に、さらなる実施形態では、表6で後述するような以下のシリカフィラーを、以下の表7で記載するセパレータで使用した:
【0185】
【0186】
【0187】
さらなる実施例:
以下の一連の実施例では、発明の強化フラデッドセパレータを本発明の様々な実施形態にしたがって作製し、対照セパレータと比較して試験した。結果を以下の表8に示す。
【0188】
【0189】
上記の表8の結果から、実施例Aのセパレータが対照セパレータAと比較してほぼ20%低いERを示したことが分かる。同様に、実施例Bのセパレータは、対照セパレータAと比較して20%低いERを示した。発明のセパレータA及びBの空孔率パーセンテージが、かかるセパレータの空孔率の許容範囲(60%±7.5%)内であったという事実にも関わらず、これらの望ましいER結果が得られた。したがって、セパレータの新規かつ予期しない孔構造は、公知セパレータの空孔率と一致する(あまり変わらない)セパレータの空孔率パーセンテージと相まって低いERに寄与する。
【0190】
さらなる実施例:
いくつかのセパレータを本発明にしたがって形成した。これらのセパレータを比較セパレータと比較した。発明のセパレータのSEMを撮影して、発明のセパレータのシシ・ケバブ形成を画像化した。
【0191】
実施例1:
実施例1では、250μmのバックウェブ厚さを有する強化フラデッドセパレータを、
本発明に従い、UHMWPE、シリカ、及び油を使用して作製し、使用したシリカは高吸油性シリカであった。発明の低ERセパレータのSEMを撮影した。
図17を参照。
【0192】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つのシシ・ケバブ領域を、実施例1のセパレータのSEMである
図17AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールを三つのシシ・ケバブ領域のそれぞれについて取得した。
図17B~17Dを参照。実施例1のセパレータの
図17AのSEMの三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表9に示される、シシ・ケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0193】
【0194】
最終的に、シシ・ケバブ形態又は構造の平均反復又は周期性が得られ、63nmであった。
【0195】
実施例2:
さらに、実施例2に関して、200μmのバックウェブ厚さを有する強化フラデッドセパレータを、前記実施例1と同じ方法で、UHMWPE、シリカ、及び油を使用して作製し、使用したシリカは高吸油性シリカであった。発明の低ERセパレータのSEMを撮影した。
図18Aを参照。
【0196】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つのシシ・ケバブ領域を、実施例2のセパレータのSEMである
図18AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールを三つのシシ・ケバブ領域のそれぞれについて取得した。
図18B~18Dを参照。実施例2のセパレータの
図18AのSEMの三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表10に示される、シシ・ケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0197】
【0198】
最終的に、シシ・ケバブ形態又は構造の平均反復又は周期性が得られ、63nmであった。
【0199】
実施例3:
実施例3に関して、250μmのバックウェブ厚さを有する強化フラデッドセパレータを、本発明に従い、前記実施例1と同じ方法で、UHMWPE、シリカ、及び油を使用して作製し、使用したシリカは高吸油性シリカであった。発明の低ERセパレータのSEMを撮影した。
図19Aを参照。
【0200】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つのシシ・ケバブ領域を、実施例3のセパレータのSEMである
図19AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールを三つのシシ・ケバブ領域のそれぞれについて取得した。
図19B~19Dを参照。実施例3のセパレータの
図19AのSEMの三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表11に示される、シシ・ケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0201】
【0202】
最終的に、シシ・ケバブ形態又は構造の平均反復又は周期性が得られ、74nmであった。
【0203】
実施例4:
実施例4に関して、250μmのバックウェブ厚さを有する強化フラデッドセパレータを、本発明に従い、前記実施例1と同じ方法で、UHMWPE、シリカ、及び油を使用して作製し、使用したシリカは高吸油性シリカであった(前記実施例1~3で使用したシリカとは異なる高吸油性シリカ;実施例1~5のセパレータを作製するために使用した高吸油性シリカの各々は約230~約280ml/100gの範囲である)。発明の低ERセパレータのSEMを撮影した。
図20Aを参照。
【0204】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つのシシ・ケバブ領域を、実施例4のセパレータのSEMである
図20AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールを三つのシシ・ケバブ領域のそれぞれについて取得した。
図20B~20Dを参照。実施例4のセパレータの
図20AのSEMの三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表12に示される、シシ・ケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0205】
【0206】
最終的に、シシ・ケバブ形態又は構造の平均反復又は周期性が得られ、55nmであった。
【0207】
実施例5:
この実施例、実施例5に関して、250μmのバックウェブ厚さを有する強化フラデッドセパレータを、本発明に従い、前記実施例1と同じ方法で、UHMWPE、シリカ、及び油を使用して作製し、使用したシリカは高吸油性シリカであった(前記実施例1~3で使用したシリカ及び前記実施例4で使用したシリカとは異なる高吸油性シリカ)。発明の低ERセパレータのSEMを撮影した。
図21Aを参照。
【0208】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つのシシ・ケバブ領域を、実施例5のセパレータのSEMである
図21AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールを三つのシシ・ケバブ領域のそれぞれについて取得した。
図21B~21Dを参照。実施例5のセパレータの
図21AのSEMの三つのシシ・ケバブ領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表13に示される、シシ・ケバブ形成又は形態の以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0209】
【0210】
最終的に、シシ・ケバブ形態又は構造の平均反復又は周期性が得られ、61nmであった。
【0211】
比較例1:
比較ポリエチレン鉛酸電池セパレータであって、250μmのバックウェブ厚さを有するセパレータを得た。比較例1のセパレータのSEMを撮影した。
図22Aを参照。
【0212】
それぞれNo.1、2及び3と附番された三つの領域を、比較例1のセパレータのSEMである
図22AのSEMで確認した。次に、FTIRスペクトルプロフィールをそれら三つの領域のそれぞれについて取得した。
図22B~22Dを参照。比較例1のセパレータの
図22AのSEMの三つの附番領域(No.1、2、及び3)のそれぞれの取得したFTIRスペクトルによって、下記表14に示される、それら三つの領域の結晶構造又は形態に関する以下のピーク位置情報及び周期性又は反復情報が明らかになった。
【0213】
【0214】
最終的に、特定された領域の結晶構造又は形態の平均反復又は周期性は170nmであった。
【0215】
比較例2:
別の比較ポリエチレン鉛酸電池セパレータであって、250μmのバックウェブ厚さを有するセパレータを得た。比較例2のセパレータのSEMを撮影した。
図23Aを参照。
【0216】
No.1と附番されたセパレータSEM画像の領域を、比較例2のセパレータのSEMである
図23AのSEMで確認した。次に、その領域のFTIRスペクトルプロフィールを取得した。
図23Bを参照。比較例2のセパレータの
図23Aの領域(No.1)の取得したFTIRスペクトルによって、下記表15に示される、その領域の結晶構造及び/又は形態に関する以下のピーク位置情報及び周期性又は反復が明らかになった。
【0217】
【0218】
したがって、特定された領域の形態の結晶構造の反復又は周期性は212nmであった。
【0219】
比較例3:
Daramic、LLCから市販されている、更に別の比較ポリエチレン鉛酸電池セパレータを入手した。セパレータは250μmのバックウェブ厚さを有していた。このセパレータを前記実施例1~5に記載されているセパレータと同様に作製したが、このセパレータを作製するために使用したシリカは高吸油量値を有するものではなかった。
【0220】
比較例3のセパレータのSEMを撮影した。
図24を参照。
図25を観察すると、ポリオレフィン微多孔質膜のこのSEM画像において少なくとも0.5μm以上の長さで連続的に延在するシシ・ケバブ形成はなかった。したがって、SEM上でマークされるか又はさらに分析される領域はなかった。
【0221】
以下の表16は、実施例1~5のシシ・ケバブ領域の周期性又は反復について得られた結果を比較例1~3について得られた結果に対して比較する。
【0222】
【0223】
実施例1~5に関して、シシ・ケバブ形成及び/又は結晶構造及び/または形態の平均反復若しくは周期性は、1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、なお一層好ましくは20nm~100nmであった。そのようなタイプの構造は、比較例1~3のセパレータについては観察されなかった。
【0224】
実施例1~2及び4~5のセパレータのさらなる特性及び特徴を下記表17に示す(その一方で、上記表3は実施例3のセパレータの特性を含む)。
【0225】
【0226】
固体状態NMR例:
二つのセパレータサンプルについて、シラノール基(Si-OH)の元素ケイ素(Si)に対する比(Si-OH)/Siは、上記で極めて詳細に記載した29Si固体状態NMR技術を用いて測定した。Daramic、LLCから市販のポリエチレンセパレータであって、250μmのバックウェブ厚さを有し、比較例3として上述されたセパレータと同じタイプのポリエチレンポリマー及びシリカを用いて作製された比較例4の比較セパレータのサンプルと同様に、実施例1のセパレータのサンプルを、このNMR試験のために調製した。
【0227】
各サンプルの
29Si-NMRスペクトルを入手し、これらのスペクトルは
図26に含まれている。Q
2シグナルは約-93ppmで観察され、その一方で、Q
3シグナルは約-103ppmで観察され、Q
4シグナルは約-111ppmで観察された。各成分ピークを
図24で示すように解析し、Q
2:Q
3:Q
4分子比は
図24からの情報を用いて算出し、結果を以下の表18に示す:
【0228】
【0229】
上記結果において、実施例1のセパレータのOH/Si比は比較例4のセパレータのOH/Si比よりも35%高く、発明のセパレータのシリカについて存在するさらなるヒドロキシル及び/又はシラノール基が、発明のセパレータの改良された特徴、例えばその望ましい孔構造及び/又は形態及びその低ERに寄与し得ることを意味する。
【0230】
結論
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、セパレータ、特に酸欠乏の低減若しくは軽減が可能であり;酸成層化を低減もしくは軽減させ;デンドライト成長を低減もしくは軽減させ;低減した電気抵抗を有し、及び/又は冷クラッキングアンプを増加させることが可能である、フラデッド鉛酸電池用のセパレータを対象とする。加えて、本明細書中で開示されているのは、少なくとも強化フラデッド鉛酸電池における、電池寿命の向上;酸欠乏の低減もしくは軽減;酸成層化の低減もしくは軽減;デンドライト成長の低減もしくは軽減;酸化効果の低減;水分損失の低減;内部抵抗の低減;ぬれ性の増大;酸拡散の改良;冷クラッキングアンプの改良、均一性の改良、及びそれらの任意の組み合わせのための、方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、改良された新規リブデザインと、改良されたセパレータ弾性とを含むセパレータを対象とする。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、性能強化添加剤又はコーティング、増大した耐酸化性、増大した空孔率、増大した空隙容積、非晶質シリカ、高吸油性シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Si比が21:100~35:100のシリカ、シシ・ケバブ構造又は形態、粒子状フィラーを膜及びポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)の40重量%以上の量で含み、拡大鎖状結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)及び1nm~150nmのケバブ形成の平均反復周期性を備えたシシ・ケバブ形成、減少したシート厚さ、減少したねじれ、低減した厚さ、低減した油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを有するポリオレフィン微多孔質膜、及びそ
れらの任意の組み合わせを含む、改良されたセパレータを対象とする。
【0231】
ある特定の選択された実施形態の少なくとも第一の態様によると、鉛酸電池セパレータはポリマーとフィラーとを有する多孔質膜を備えている。多孔質膜は、少なくとも、第一表面から延在する第一の複数のリブを有する、少なくとも第一表面を備えている。第一の複数のリブは、第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を備え、第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起の各々は、セパレータに弾性を提供するように互いに近接している。かかる弾性は、NAM膨潤に起因する圧力下にある際の撓みに抵抗するセパレータの能力を指す場合がある。かかる近接は、歯、ピーク、又は突起同士間で少なくとも約1.5mmであり得る。セパレータは、ベース部から延在する第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を有する連続ベース部をさらに備えていてもよい。
【0232】
ある特定の実施形態において、セパレータは、ベース部から延在する第一の複数の歯又は不連続ピーク又は突起を有する連続ベース部を備えていてもよい。ベース部は歯又は不連続ピーク又は突起の幅よりも広くてよい。加えて、ベース部は、歯又は不連続ピーク又は突起の各々の間で連続的に延在していてもよい。
【0233】
少なくともある特定の限定された実施形態によると、セパレータは、以下の一つ以上であるリブを備えていてもよい:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、その中に亀裂があるセパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、歯、歯状リブ、鋸歯状、鋸歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせ。
【0234】
第一の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない可能性がある角度によって規定することができる。さらに、角度は、多孔質膜の縦方向に対しての角度として規定することができ、角度は以下のうちの一つであり得る:0度(0°)超から180度(180°)未満、180度(180°)超から360度(360°)未満。開示された実施形態のある特定の態様において、角度は複数のリブ全体にわたってさまざまであり得る。
【0235】
本発明のある特定の限定された態様では、第一の複数のリブは、約1.5mm~約10mmの横方向離間ピッチを有し得、複数の歯又は不連続ピーク又は突起は、約1.5mm~約10mmの縦方向離間ピッチを有し得る。
【0236】
ある特定の限定された実施形態では、セパレータは、多孔質膜の第二表面から延在する第二の複数のリブを備えていてもよい。
第二の複数のリブは以下の一つ以上を有していてもよい:中実リブ、離散破断リブ、連続リブ、不連続リブ、不連続ピーク、不連続突起、角度付リブ、線状リブ、多孔質膜の縦方向に実質的に延在する縦リブ、多孔質膜の横方向に実質的に延在する横リブ、セパレータの横方向に実質的に延在する横断リブ、歯、歯状リブ、バトルメント、バトルメント付リブ、湾曲リブ、シヌソイドリブ、連続したジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、破断した不連続ジグザグ鋸歯様方式で配置されたもの、溝、チャネル、テクスチャー付区域、エンボス、ディンプル、カラム、ミニカラム、多孔質、非多孔質、ミニリブ、クロスミニリブ、及びそれらの組み合わせ。
【0237】
第二の複数のリブの少なくとも一部は、セパレータの縁部に対して平行でも直角でもない可能性がある角度によって規定することができる。さらに、角度は、多孔質膜の縦方向に対しての角度として規定することができ、角度は以下のうちの一つであり得る:0度(0°)超から180度(180°)未満、180度(180°)超から360度(360°)未満。開示された実施形態のある特定の態様において、角度は複数のリブ全体にわたってさまざまであり得る。
【0238】
第二の複数のリブは、約1.5mm~約10mmの横又は縦方向離間ピッチを有する。
【0239】
第一表面は、鉛酸電池セパレータの縁部に隣接して配置された第一の複数のリブとは異なる高さのものである一つ以上のリブを備えていてもよい。同様に、第二表面は、鉛酸電池セパレータの縁部に隣接した配置された第二の複数のリブとは異なる高さのものである一つ以上のリブを備えていてもよい。
【0240】
限定された実施形態では、ポリマーは、以下のうちの一つであってよい:ポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ゴム、合成木材パルプ(「SWP」)、リグニン、ガラス繊維、合成繊維、セルロース系繊維、及びそれらの組み合わせ。
【0241】
繊維状マットを提供してもよい。マットは:ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも一つの性能強化添加剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの組み合わせのうちの一つであってよく、不織布、織物、メッシュ、フリース、ネット、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0242】
加えて、セパレータは、カットピース、リーフ、ポケット、スリーブ、ラップ、エンベロープ、及びハイブリッドエンベロープであってよい。
【0243】
少なくともある特定の限定された例示的実施形態において、セパレータは、セパレータの撓みを軽減するための弾性手段を備えていてもよい。
【0244】
少なくともある特定の限定された実施形態によると、鉛酸電池は、陽極と、膨潤した陰極活物質を備えた陰極とを備えていてもよい。セパレータは、セパレータの少なくとも一部が陽極と陰極との間に配置されるように設けられる。陽極の少なくとも一部、陰極の少なくとも一部、及びセパレータの少なくとも一部を実質的に沈める電解質が提供される。少なくともある特定の限定された実施形態では、セパレータは少なくともポリマーとフィラーとで作られた多孔質膜を有していてもよい。第一の複数のリブは、多孔質膜の表面から延在していてもよい。リブは、NAM膨潤の存在下での酸欠乏を防止するなどのために配列することができる。鉛酸電池は、以下の条件のいずれか一つ以上で動作することができる:運転中、静止、バックアップ電源用途、サイクリング用途、部分充電状態、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0245】
リブは、複数の歯、又は不連続ピーク若しくは突起を備えていてもよい。各歯、又は不連続ピーク若しくは突起は、複数の不連続ピーク内で互いに少なくとも約1.5mm離れていてもよい。連続ベース部は、そこから延在している複数の歯、又は不連続ピーク若しくは突起を備えていてもよい。
【0246】
第一の複数のリブはさらに、電池において、特に電池の動作中に酸混合を増強するために提供することができる。セパレータを電池のスタート及びストップモーションに対して平行に配置することができる。セパレータは、陽極、陰極、又はセパレータに隣接したマ
ットを備えていてもよい。マットは、ガラス繊維、合成繊維、シリカ、少なくとも一つの性能強化添加剤、ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、及びそれらの任意の組み合わせで少なくとも部分的に作られていてもよい。マットは、不織布、織物、メッシュ、フリース、ネット、及びそれらの組み合わせであってよい。
【0247】
少なくとも本発明のある特定の限定された実施形態において、鉛酸電池は、平板電池、フラデッド鉛酸電池、強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、制御弁式鉛酸(「VRLA」)電池、ディープサイクル電池、ゲル電池、吸収性ガラスマット(「AGM」)電池、チューブ状電池、インバーター電池、車両電池、始動点灯点火(「SLI」)車両電池、アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」:idling-start-stop)車両電池、自動車電池、トラック電池、オートバイ電池、全地形対応車電池、フォークリフト電池、ゴルフカート電池、ハイブリッド-電気自動車電池、電気自動車電池、電動リキシャ電池、若しくは電動自転車電池、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0248】
ある特定の実施形態において、電池は、約1%~約99%の放電深度で動作することができる。
【0249】
少なくとも一つの実施形態によると、ねじれが減少した微多孔質セパレータが提供される。ねじれとは、その長さにわたる湾曲/曲がりの程度を指す。したがって、ねじれが減少した微多孔質セパレータはイオンがセパレータを通って移動するためのより短い経路を提示し、それにより電気抵抗が減少する。そのような実施形態にかかる微多孔質セパレータは、減少した厚さ、増大した孔径、より多くの相互接続した孔、及び/又はより多くの開気孔を有し得る。
【0250】
少なくともある特定の選択された実施形態にしたがって、空孔率が増大した微多孔質セパレータ、又はその空孔率が公知セパレータとは大きく異なることはない、異なる孔構造、及び/又は減少した厚さを有するセパレータが提供される。イオンは、空孔率が増大し、空隙容積が増大し、ねじれが低減し、及び/又は厚さが減少した、微多孔質セパレータを通ってより迅速に移動し、それによって電気抵抗が減少する。このような厚さの減少の結果、電池セパレータの総重量が減少する可能性があり、これは次に、セパレータが使用される強化フラデッド電池の重量を減少させ、これがひいては、強化フラデッド電池が使用される車両全体の重量を減少させる。そのような厚さの減少は、代替的に、セパレータが使用される強化フラデッド電池において陽極活物質(「PAM」)又は陰極活物質(「NAM」)の空間の増大をもたらす可能性がある。
【0251】
少なくともある特定の選択された実施形態によると、(水又は酸中での)ぬれ性が増大した微多孔質セパレータが提供される。ぬれ性が増大したセパレータは、電解質イオン種により接近しやすくなり、かくして、セパレータを越えるそれらの通過を促進し、電気抵抗を減少させる。
【0252】
少なくとも一つの実施形態によると、最終油分が減少した微多孔質セパレータが提供される。そのような微多孔質セパレータはまた、強化フラデッド電池又はシステムにおける低下したER(電気抵抗)を促進するであろう。
【0253】
セパレータは、増大した脆砕性を有し、空孔率、孔径、内部孔表面積、ぬれ性、及び/又はセパレータの表面積を増大させることができる、改良されたフィラーを含んでもよい。いくつかの実施形態において、改良されたフィラーは、高構造形態及び/又は低減された粒径及び/又は従来公知のフィラーとは異なる量のシラノール基を有する、及び/又は従来公知のフィラーよりもヒドロキシル化されている。改良されたフィラーは、より多く
の油を吸収し得る、及び/又は押出後に油が除去される場合に、同時に収縮若しくは圧縮することなく、セパレータ形成の間により多量の加工油の組み込みを可能にし得る。フィラーは、電解質イオンのいわゆる水和球をさらに低減することができ、膜を越えてのそれらの輸送を増強し、それによって、電池、例えば強化フラデッド電池又はシステムの全体的電気抵抗又はERを再度低下させる。
【0254】
一つ又は複数のフィラーは、イオン拡散を増大させ、セパレータを越える電解質及びイオンの流れを促進する、様々な種(例えば、金属などの極性種)を含み得る。したがって、かかるセパレータがフラデッド電池、例えば強化フラデッド電池で用いられる場合に、全体的な電気抵抗の減少に至る。
【0255】
微多孔質セパレータは、新規かつ改良された孔形態及び/又は新規かつ改良されたフィブリル形態をさらに含むので、セパレータがフラデッド鉛酸電池で使用される場合に、かかるセパレータは、かかるフラデッド鉛酸電池における電気抵抗を有意に減少させるのに寄与する。そのような改良された孔形態及び/又はフィブリル形態は、その孔及び/又はフィブリルがシシ・ケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータをもたらし得る。新規かつ改良された孔形状及び構造を記述するための別の方法は、シリカノード、すなわちシリカのこぶが電池セパレータ内のポリマーフィブリル(フィブリルはシシと呼ばれる場合がある)上でケバブ型形成にて存在するテクスチャー付フィブリル形態である。更に、ある特定の実施形態において、本発明にかかるセパレータのシリカ構造及び孔構造は、骨格構造又は脊柱構造又は脊髄構造として記載することができ、ポリマーのケバブ上のシリカノードが、ポリマーのフィブリルに沿って、椎骨又は椎間板(「ケバブ」)のように見え、場合によっては、脊柱様形状(「シシ」)に近い細長い中心の脊椎又はフィブリル(拡大鎖状ポリマー結晶)に対して実質的に垂直に方向づけられている。
【0256】
場合によっては、改良された孔形態及び/又はフィブリル形態を有する改良されたセパレータを含む改良された電池は、20%低い電気抵抗、場合によっては、25%低い電気的孔、場合によっては、30%低い電気抵抗、そして場合によっては、さらに30%を超える電気抵抗(「ER」)の低下(電池内部抵抗を低減する可能性がある)を示す可能性がある一方で、かかるセパレータは鉛酸電池セパレータの他の重要かつ望ましい機械的特性のバランスを保持し維持する。さらに、ある特定の実施形態において、本明細書中で記載するセパレータは、既知セパレータと比較して、より多くの電解質が孔及び/又は空隙を通って流れるかまたは充填するような新規及び/又は改良された孔形状を有する。
【0257】
加えて、本開示は、強化フラデッド電池用の一つ以上の改良された電池セパレータを含む改良された強化フラデッド鉛酸電池を提供し、当該セパレータは、電池について、酸成層化の減少、電圧降下の低下(又は電圧降下永続性の増加)、及びCCAの増加、場合によっては、8%超、又は9%超、又はいくつかの実施形態では、10%超、又は15%超のCCAの増加の望ましい特徴を組み合わせる。そのような改良されたセパレータは、その性能が、AGM電池の性能と一致するか又はさらにはAGM電池の性能を超える強化フラデッド電池をもたらすことができる。そのような低電気抵抗セパレータはまた、水分損失が低減した強化フラデッド鉛酸電池をもたらすように処理することもできる。
【0258】
セパレータは、一つ以上の性能強化添加剤、例えば界面活性剤を、他の添加剤又は薬剤、残油、及びフィラーと共に含んでよい。そのような性能強化添加剤は、セパレータ酸化を低減することができる、及び/又はさらには膜を越えるイオンの輸送を促進して、本明細書中で記載する強化フラデッド電池の全体的な電気抵抗低下に寄与することができる。
【0259】
本明細書中で記載する鉛酸電池用セパレータはポリオレフィン微多孔質膜であって、ポリマー、例えばポリエチレン、例えば超高分子量ポリエチレン、粒子状フィラー、及び加
工可塑剤(任意選択的に、一つ以上のさらなる添加剤もしくは薬剤を含んでもよい)を含むポリオレフィン微多孔質膜を含んでもよい。ポリオレフィン微多孔質膜は、膜の40重量%以上の量で粒子状フィラーを含んでもよい。また、超高分子量ポリエチレンは、複数の拡大鎖状結晶(シシ形成)と複数の折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)とを含むシシ・ケバブ形態のポリマーを含んでもよく、ケバブ形成の平均反復又は周期性は、(少なくともセパレータのリブ側の部分に関して)1nm~150nm、好ましくは10nm~120nm、さらに好ましくは20nm~100nmである。
【0260】
ケバブ形成の平均反復又は周期性は、以下の定義に従って算出する:
・ポリオレフィン微多孔質膜の表面は、金属蒸着に供した後に走査電子顕微鏡(「SEM」)を用いて観察し、次いで、表面の画像を、例えば、1.0kVの加速電圧で30,000又は50,000倍の倍率にて撮影する。
・SEM画像の同じ視覚野において、シシ・ケバブ形成が少なくとも0.5μm以上の長さで連続して伸長されている少なくとも三つの領域が表示されている。
次いで、各々の表示された領域のケバブ周期性を算出する。
・ケバブ周期性は、各々の表示された領域におけるシシ・ケバブ形成のシシ形成に対して垂直方向に投影することによって得られる濃度プロフィール(コントラストプロフィール)のフーリエ変換によって特定して、反復周期の平均を算出する。
・画像は、一般的な分析ツール、例えば、MATLAB(R2013a)を使用して分析する。
・フーリエ変換後のスペクトルプロフィールのうち、短波長領域で検出されたスペクトルはノイズとみなす。
そのようなノイズは、主にコントラストプロフィールの変形によって生じる。
本発明に従ってセパレータについて得られたコントラストプロフィールは、方形波(正弦波ではなく)を生成するように見える。さらに、コントラストプロフィールが方形波である場合、フーリエ変換後のプロフィールは正弦関数となり、したがって、真のケバブ周期性を示す主なピークのほかに、短波長領域に複数のピークが生じる。短波長領域におけるそのようなピークは、ノイズとして検出することができる。
【0261】
いくつかの実施形態において、本明細書中で記載する鉛酸電池用セパレータは、シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及び沈降非晶質シリカからなる群から選択されるフィラーを含み;29Si-NMRによって測定した、前記フィラー内のOH基対Si基の分子比は、21:100~35:100の範囲内であり、いくつかの実施形態では、23:100~31:100、いくつかの実施形態では、25:100~29:100、そしてある特定の好ましい実施形態では、27:100またはそれ以上である。
【0262】
Si-Oの比較的堅い共有結合網状組織が部分的に消失してしまっているので、シラノール基は、シリカ構造を結晶構造から非晶構造へと変える。非晶様シリカ、例えば、Si(-O-Si)2(-OH)2及びSi(-O-Si)3(-OH)は、多くのねじれを有し、これは、様々な吸油点として機能し得る。したがって、シラノール基(Si-OH)の量をシリカについて増加させると、吸油性は高くなる。更に、本明細書中に記載するセパレータは、公知鉛酸電池セパレータで用いられるシリカよりも多量のシラノール基及び/又はヒドロキシル基を含むシリカを含む場合、親水性の増加を示す可能性がある、及び/又はより高い空隙容積を有する可能性がある、及び/又は大きな空隙によって取り囲まれたある特定の凝集体を有する可能性がある。
【0263】
微多孔質セパレータは、新規かつ改良された孔形態及び/又は新規かつ改良されたフィブリル形態をさらに含むので、セパレータがフラデッド鉛酸電池で使用される場合に、かかるセパレータは、かかるフラデッド鉛酸電池における電気抵抗を有意に減少させるのに寄与する。そのような改良された孔形態及び/又はフィブリル形態は、その孔及び/又は
フィブリルがシシ・ケバブ(又はシシカバブ)型形態に近いセパレータをもたらし得る。新規かつ改良された孔形状及び構造を記述するための別の方法は、シリカノード、すなわちシリカのこぶが電池セパレータ内のポリマーフィブリル(フィブリルはシシと呼ばれる場合がある)上でケバブ型形成にて存在するテクスチャー付フィブリル形態である。更に、ある特定の実施形態において、本発明にかかるセパレータのシリカ構造及び孔構造は、骨格構造又は脊柱構造又は脊髄構造として記載することができ、ポリマーのケバブ上のシリカノードが、ポリマーのフィブリルに沿って、椎骨又は椎間板(「ケバブ」)のように見え、場合によっては、脊柱様形状(「シシ」)に近い細長い中心の脊椎又はフィブリル(拡大鎖状ポリマー結晶)に対して実質的に垂直に方向づけられている。
【0264】
ある特定の選択された実施形態では、車両は、本明細書中でおおむね記載するような鉛酸電池を備えていてもよい。電池は、本明細書中で記載するようなセパレータをさらに備えていてもよい。車両は、自動車、トラック、オートバイ、全地形対応車、フォークリフト、ゴルフカート、ハイブリッド車両、ハイブリッド-電気自動車電池、電気自動車、アイドリング・スタート・ストップ(「ISS」)車両、電動リキシャ、電動自転車、電動自転車電池、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0265】
ある特定の好ましい実施形態において、本開示または発明は、その成分及び物理的属性及び特徴が相乗的に組み合わされて、従来知られている柔軟性の性能を満たすか、またはある特定の実施形態では、当該性能を超える改良された電池セパレータ(ポリマー、例えばポリエチレンの多孔質膜を有するセパレータ、プラス、ある特定量の性能強化添加剤及びリブ)で、ディープサイクル電池産業における従来満たされていないニーズを、予期せぬ方法で対処する、柔軟性電池セパレータを提供する。特に、本明細書中で記載する発明のセパレータは、ディープサイクル電池で伝統的に使用されるセパレータよりも頑丈で、脆性が低く、壊れにくく、長時間にわたりより安定である(劣化しにくい)。本発明の柔軟性で、性能強化添加剤を含有し、リブを保有するセパレータは、ポリエチレン系セパレータの所望の頑丈な物理的及び機械的特性と従来型セパレータの能力とを組み合わせる一方で、当該セパレータを採用する電池システムの性能も向上させる。
【0266】
少なくとも限定された実施形態によると、本明細書中で開示又は提供される態様又は目的は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、電池、セル、及び/又はかかるセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、セル、及び/又は電池の製造及び/又は使用方法である。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド電池用の新規又は改良された電池セパレータを対象とする。加えて、本明細書中では、低減されたER、改良された穿刺強度、改良されたセパレータCMD剛性、改良された耐酸化性、低減されたセパレータ厚さ、低減された坪量、及びそれらの任意の組み合わせを有する方法、システム、及び電池セパレータが開示される。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド電池用の改良されたセパレータであって、低減されたER、改良された穿刺強度、改良されたセパレータCMD剛性、改良された耐酸化性、低減されたセパレータ厚さ、低減された坪量、又はこれらの任意の組み合わせを有する改良されたセパレータを対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、低減されたER、改良された穿刺強度、改良されたセパレータCMD剛性、改良された耐酸化性、低減されたセパレータ厚さ、低減された坪量、及びそれらの任意の組み合わせを含むか又は示すセパレータが提供される。少なくともある特定の実施形態によると、電池用途において、平板電池、チューブ状電池、車両SLI、及びHEV ISS用途、ディープサイクル用途、ゴルフカー又はゴルフカート及び電動リキシャ電池、部分充電状態(「PSOC」)で動作する電池、インバーター電池;及び再生エネルギー源用ストレージ電池、及びそれらの任意の組み合わせのためのセパレータが提供される。
【0267】
少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、鉛酸電池、例えばフラデッド鉛酸電池、及び特に強化フラデッド鉛酸電池(「EFB」)、及び他の様々な鉛酸電池、例えばゲル及び吸収性ガラスマット(「AGM」)電池用の新規又は改良されたセパレータを対象とする。少なくとも限定された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、EFBセパレータ、電池、セル、システム、それを含む方法、それを使用する車両、その製造方法、その使用、及びそれらの組み合わせを対象とする。さらに、本明細書では、電池電極酸欠乏を低減することによって電池寿命を向上させ電池故障を低減するための方法、システム、及び電池セパレータを開示する。
【0268】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良されたセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、電池、セル、及び/又は製造方法及び/又はかかるセパレータ、電池セパレータ、強化フラデッド電池セパレータ、セル、電池、システム、方法の使用、及び/又はこれを使用する車両を対象とする。少なくともある特定の実施形態によると、本開示または発明は、新規又は改良された電池セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、フラデッド鉛酸電池セパレータ、又は強化フラデッド鉛酸電池セパレータ、例えばディープサイクリング及び/又は部分充電状態(「PSOC」)用途に有用なものを対象とする。かかる用途としては:電動マシン用途、例えば、フォークリフト及びゴルフカート(ゴルフカーと称する場合もある)、電動リキシャ、電動自転車、電動三輪車など;自動車又はトラック(又はHDトラック)用途、例えば、始動点灯点火(「SLI」)電池、例えば内燃エンジン車両用に使用されるもの;アイドル・スタート・ストップ(「ISS」)車両電池;ハイブリッド車両用途、ハイブリッド-電気自動車用途;高所要動力、例えば無中断電力供給(「UPS」)又は制御弁式鉛酸(「VRLA」)を備えた電池、及び/又は高CCA要件を有する電池用;インバーター;及びエネルギー貯蔵システム、例えば再生及び/又は代替エネルギーシステム、例えば、太陽光及び風力発電システムでみられるもののような非限定例を挙げることができる。
【0269】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、セパレータ、特に酸欠乏の低減若しくは軽減が可能であり;酸成層化を低減もしくは軽減させ;デンドライト成長を低減もしくは軽減させ;低減した電気抵抗を有し、及び/又は冷クラッキングアンプを増加させることが可能である、フラデッド鉛酸電池用のセパレータを対象とする。加えて、本明細書中で開示されているのは、少なくとも強化フラデッド鉛酸電池における、電池寿命の向上;酸欠乏の低減もしくは軽減;酸成層化の低減もしくは軽減;デンドライト成長の低減もしくは軽減;酸化効果の低減;水分損失の低減;内部抵抗の低減;ぬれ性の増大;酸拡散の改良;冷クラッキングアンプの改良、均一性の改良、及びそれらの任意の組み合わせのための、方法、システム、及び電池セパレータである。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、改良された新規リブデザインと、改良されたセパレータ弾性とを含むセパレータを対象とする。少なくとも特定の実施形態によると、本開示または発明は、強化フラデッド鉛酸電池用の改良されたセパレータであって、性能強化添加剤又はコーティング、増大した耐酸化性、増大した空孔率、増大した空隙容積、非晶質シリカ、高吸油性シリカ、高シラノール基シリカ、OH対Si比が21:100~35:100のシリカ、シシ・ケバブ構造又は形態、粒子状フィラーを膜及びポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)の40重量%以上の量で含み、拡大鎖状結晶(シシ形成)及び折り畳み鎖状結晶(ケバブ形成)及び1nm~150nmのケバブ形成の平均反復周期性を備えたシシ・ケバブ形成、減少したシート厚さ、減少したねじれ、低減した厚さ、低減した油分、増大したぬれ性、増大した酸拡散などを有するポリオレフィン微多孔質膜、及びそれらの任意の組み合わせを含む、改良されたセパレータを対象とする。
【0270】
少なくとも選択された実施形態によると、本開示または発明は、セパレータ、弾性セパレータ、平衡セパレータ、特に、酸欠乏の低減若しくは軽減が可能であり;酸成層化を低減若しくは軽減させ;デンドライト成長を低減若しくは軽減させ;低減した電気抵抗を有し、及び/又は冷クラッキングアンプを増加させることが可能であり;低減した電気抵抗及びマイナスのクロスリブを有し;低い水分損失、低減した電気抵抗及び/又はマイナスのクロスリブを有し;デンドライトブロッキング若しくは防止性能、特性及び/又は構造を有し;酸混合防止性能、特性及び/又は構造を有し;強化されたマイナスのクロスリブを有し;PE膜、ピース、スリーブ、フォールド,ラップ、Zラップ、Sラップ、ポケット、エンベロープなどの陽極及び/又は陰極側にガラスマットを有し;PE膜に積層されたガラスマットを有する;及び/又はそれらの組み合わせ若しくは副組み合わせのフラデッド鉛酸電池用セパレータを対象とする。
【0271】
添付の特許請求の範囲の組成物及び方法は、特許請求の範囲並びに特許請求の範囲内に含まれることが意図される、機能的に均等な任意の組成物及び方法のいくつかの態様の例示であることを意図される、本明細書中に記載された特定の組成物及び方法によって範囲が限定されない。組成物及び方法の様々な修飾が、本明細書中で示され記載されたものに加えて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本明細書中で開示されたある特定の代表的な組成物及び方法ステップのみが具体的に記載されているが、組成物及び方法ステップの他の組み合わせも、具体的に記載されていなくても、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。したがって、ステップ、要素、成分、または構成要素の組み合わせは、本明細書中で明確に記載されているが、ステップ、要素、成分、及び構成要素の他の組み合わせが明確に記載されていなくても含まれる。本明細書中で使用される「含む(comprising)」という語及びその変化形は、本明細書中で使用される場合、「包含する(including)」という語及びその変形と同義で用いられ、オープンで非限定的な語である。「含む」及び「包含する」という語が本明細書中で様々な実施形態を記載するために使用されているが、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」という語は、「含む」及び「包含する」の代わりに使用して、発明のさらに具体的な実施形態を提供することができ、これもまた開示されている。実施例を除いて、又は特に記載しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、少なくとも、また特許請求の範囲に均等論の適用を限定しようとするのではないが、有効数字及び通常の丸め方の観点から解釈されると理解すべきである。
【0272】
本発明は、その主旨及び本質的属性から逸脱することなく、他の形態で具体化することができ、したがって発明の範囲を示すものとして、前記明細書ではなく、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。開示されているのは、開示された方法及びシステムを実施するために使用することができる成分である。これらや他の成分が本明細書中で開示され、これらの成分の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの様々な個別の各々及び集合的な組み合わせの具体的な言及は明確に開示されていない場合があるが、各々がすべての方法及びシステムについて具体的に想定され、本明細書中で記載されていると理解される。これは、限定されるものではないが、開示された方法におけるステップを含む、本願のすべての態様に当てはまる。したがって、実施することができる様々なさらなるステップがある場合、開示された方法の任意の具体的な実施形態又は実施形態の組み合わせで実施することができると理解される。
【0273】
構造及び方法の前述の記載は、例示のみの目的で提示されている。実施例は、最良の形態を含む例示的実施形態を開示するため、また任意の当業者が、デバイス又はシステムの作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実施を含む、本発明を実施することを可能にするために使用される。これらの例は、網羅的であること、又は本発明を開示されたま
さにそのステップ及び/又は形態に限定することを意図せず、多くの修飾及び変形が前記教示の観点から可能である。本明細書中に記載する特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書中で記載する方法のステップは、物理的に可能な任意の順で実施することができる。発明の特許可能な範囲は添付の特許請求の範囲によって規定され、当業者が思いつく他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の語句と異ならない構造要素を有するか、又は特許請求の範囲の語句と実質的に異なる均等な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0274】
添付の特許請求の範囲の組成物及び方法は、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示として意図される、本明細書中に記載された特定の組成物及び方法により範囲を限定されない。機能的に均等な任意の組成物及び方法は、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。組成物及び方法の様々な修飾が、本明細書中で示され記載されたものに加えて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本明細書中で開示されたある特定の代表的な組成物及び方法ステップのみが具体的に記載されているが、組成物及び方法ステップの他の組み合わせも、具体的に記載されていなくても、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。したがって、ステップ、要素、成分、又は構成要素の組み合わせが本明細書中で明確に記載されている場合があるが、ステップ、要素、成分、及び構成要素の他の組み合わせは、明示されていなくても、含まれる。
【0275】
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈で明らかに別段の記載が明示されていない限り、複数の支持対象を含む。範囲は、「約」又は「およそ」一つの特定の値から、及び/又は「約」又は「およそ」別の特定の値までとして本明細書中で表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成すると理解される。範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、また他の端点とは無関係の両方で重要であることがさらに理解される。「任意の」又は「任意選択的に」とは、次に記載する事象若しくは状況が起こり得るか又は起こり得ないこと、及び説明は、前記事象若しくは状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。
【0276】
本明細書の記載及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」という語及びこの語の変化形、例えば、「comprising及びcomprises」は、「限定されるものではないが、~を包含する」ことを意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数、又はステップを排除することを意図しない。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」及び「~からなる(consisting of)」という語は、「含んでいる(comprising)」及び「包含している(including)」の代わりに使用して、本発明のさらに具体的な実施形態を提供することができ、これもまた開示されている。「例示的(Exemplary)」又は「例えば(for example)」は、「~の一例」を意味し、好ましい又は理想的な実施形態の表示することを意図しない。同様に、「など(such as)」は、制限的な意味ではなく、説明的又は例示的な目的で用いられる。
【0277】
記載されている場合を除き、明細書及び特許請求の範囲で使用されている形状、寸法などを表す全ての数字は、特許請求の範囲に均等論の適用を限定する試みとしてではなく、有効数字および通常の丸め法の観点から解釈されると理解すべきである。
【0278】
別段の記載がある場合を除き、本明細書中で使用するすべての科学技術用語は、開示された発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で言及する刊行物及びそこで引用される資料は参照により具体的に組み込まれる。
【0279】
更に、本明細書中で実例として開示した発明は、好適には、本明細書中で具体的に開示されていない任意の要素の非存在下で実施することができる。