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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028994
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】抗菌組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7012 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240227BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240227BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20240227BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K31/7012
A61K31/20
A61K31/19
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K47/04
A61K45/00
A61K47/42
A61P17/02
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/14
A61L29/16
A61L31/16
A61P31/04 171
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211779
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2021150725の分割
【原出願日】2017-02-21
(31)【優先権主張番号】62/298,082
(32)【優先日】2016-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ベルクロ
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブラット ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ラード イッサム
(57)【要約】
【課題】新規かつ改良された抗菌組成物を提供する。
【解決手段】特定の態様では、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸および特定の脂肪酸(例えば、カプリル酸)を含む抗菌組成物が提供され、また他の実施形態では、抗菌組成物は、感染(例えば、バイオフィルムを含む感染)を治療するためにヒト患者などの対象に、例えば、局所的にまたは経口的に投与され得る。さらに他の態様では、該抗菌組成物を含むカテーテルが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.5%~約3%(w / w)のポリガラクツロン酸混合物および0.1%より多く約5%(w / w)までのC6~12脂肪酸を含む抗菌組成物。
【請求項2】
前記C6~12脂肪酸がC6~12飽和脂肪酸またはC6~12アルカン酸である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
前記C6~12脂肪酸がC6~10飽和脂肪酸またはC6~10アルカン酸である、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
前記C6~12脂肪酸が、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、カプリル酸(オクタン酸)、カプロン酸、またはラウリン酸である、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
前記C6~12脂肪酸が、カプリル酸(オクタン酸)である、請求項4に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約0.2%~約5%の脂肪酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項7】
前記組成物が、約0.3%~約5%の脂肪酸を含む、請求項6に記載の抗菌組成物。
【請求項8】
前記組成物が、約0.4%~約5%の脂肪酸を含む、請求項7に記載の抗菌組成物。
【請求項9】
前記組成物が、約0.4%~約3%の脂肪酸を含む、請求項6に記載の抗菌組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸がプロトン化されているか、または遊離酸である、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項11】
前記抗菌組成物が、約4.8またはそれより小さいpHを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項12】
前記抗菌組成物が約3.7~4.8のpHを有する、請求項11に記載の抗菌組成物。
【請求項13】
前記抗菌組成物が約4~4.7のpHを有する、請求項12に記載の抗菌組成物。
【請求項14】
前記ポリガラクツロン酸混合物の比率が、少なくとも約50%の脱エステル化ポリガラクツロン酸の量でエステル化ポリガラクツロン酸および脱エステル化ポリガラクツロン酸からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
【請求項15】
前記量が少なくとも約70%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、該脱エステル化ポリガラクツロン酸が実質的に脱プロトン化されている、請求項14に記載の抗菌組成物。
【請求項16】
前記量が少なくとも約85%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、該脱エステル化ポリガラクツロン酸が実質的に脱プロトン化されている、請求項14に記載の抗菌組成物。
【請求項17】
前記抗菌組成物が過酸化物をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項18】
前記過酸化物が過酸化水素である、請求項17に記載の抗菌組成物。
【請求項19】
前記過酸化水素が、抗菌組成物中に約0.1%~約3%の量で存在する、請求項17に記載の抗菌組成物。
【請求項20】
前記過酸化水素が、抗菌組成物中に約0.1%~約1%の量で存在する、請求項17に記載の抗菌組成物。
【請求項21】
前記抗菌組成物が、1つまたは複数の追加の抗菌剤をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項22】
前記1つまたは複数の追加の抗菌剤が、抗生物質、消毒剤、クロルヘキシジン、ゲンジン(gendine)、ガーディン(gardine)、銀、ナノシルバー、スルファジアジン銀、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、キレート剤、C1~4アルコール、一酸化窒素供与体、第四級アンモニウム抗菌剤、またはそれらの混合物である、請求項21に記載の抗菌組成物。
【請求項23】
前記抗菌組成物が一酸化窒素供与体を含み、該一酸化窒素供与体が、グリセリルニトレート、ニトロプルシド、ニトロソグルタチオン、ニトロソ化合物、ニトロソチオール、ニトロソシステイン、ニトロソアルブミン、ニトロ化合物、ニトロアスピリリン(nitroaspiririn)、イソソルビド、ジアゼニウムジオラート、硝酸塩、または亜硝酸塩である、請求項22に記載の抗菌組成物。
【請求項24】
前記グリセリルニトレートが、グリセリルトリニトレート(GTN)である、請求項23に記載の抗菌組成物。
【請求項25】
前記抗菌組成物が、約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、請求項24に記載の抗菌組成物。
【請求項26】
前記抗生物質が、ミノサイクリン、リファンピン、アミノグリコシド、キノロン、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リポペプチド、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、ポリペプチド、スルホンアミド、テトラサイクリン、メトロニダゾール、ムシプロシン、抗マイコバクテリア化合物、またはクロラムフェニコールである、請求項22に記載の抗菌組成物。
【請求項27】
前記C1~4アルコールがエタノールである、請求項22に記載の抗菌組成物。
【請求項28】
前記キレート剤が、メルカプトエタンスルホネート(MeSNA)、クエン酸塩、EDTA、EDDS、またはN-アセチルシステインである、請求項22に記載の抗菌組成物。
【請求項29】
前記抗菌組成物がさらに抗生物質を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項30】
前記抗菌組成物が抗生物質を含まない、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項31】
前記抗菌組成物が、鎮痛剤、抗瘢痕化剤、抗炎症剤、抗凝固剤、香料、保湿剤、グリセロール、シリコーン化合物、ビタミン、湿潤剤、ポリマー、潤滑剤、触感剤、増粘剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、乳化剤、保湿剤、着色剤もしくは色付け剤、または香料をさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項32】
前記溶液が、薬学的に許容可能な生理食塩水希釈剤を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項33】
前記抗菌組成物が医薬組成物としてさらに定義されるか、または薬学的に許容可能な賦形剤を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項34】
前記抗菌組成物がタンパク質を含む、請求項33に記載の抗菌組成物。
【請求項35】
前記タンパク質が、ゼラチン、可塑化ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、またはプロテオグリカンである、請求項34に記載の抗菌組成物。
【請求項36】
前記可塑化ゼラチンがグリセロール-ゼラチンである、請求項35に記載の抗菌組成物。
【請求項37】
前記プロテオグリカンがヒアルロン酸である、請求項34に記載の抗菌組成物。
【請求項38】
前記抗菌組成物が、局所投与用または創傷への投与用に製剤化される、請求項1~37のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項39】
前記抗菌組成物が、軟膏、クリーム、スプレー、ローション、流体、エマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ナノ懸濁液、またはマイクロ懸濁液として製剤化される、請求項38に記載の抗菌組成物。
【請求項40】
前記抗菌組成物がセルロースおよびグリセロールを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項41】
前記セルロースがカルボキシメチルセルロースである、請求項40に記載の抗菌組成物。
【請求項42】
前記グリセロールがプロピレングリコールである、請求項40~41のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項43】
前記抗菌組成物が、約1~5%のカルボキシメチルセルロースおよび約10~30%のプロピレングリコールを含む、請求項40に記載の抗菌組成物。
【請求項44】
前記抗菌組成物が、約3%のカルボキシメチルセルロースおよび約20%のプロピレングリコールを含む、請求項40に記載の抗菌組成物。
【請求項45】
前記抗菌組成物が、約0.5~2%のペクチン酸、約0.3~0.5%のカプリル酸、および約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項46】
前記抗菌組成物が、約1%のペクチン酸、約0.4%のカプリル酸、および約0.03%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項47】
前記抗菌組成物が、約1~1000μg/ mlのグリセリルトリニトレートおよび約0.1~1%の過酸化水素を含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の抗菌組成物。
【請求項48】
前記抗菌組成物が、カテーテルロックまたはフラッシュ溶液としてさらに定義される、請求項1~34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物が、少なくとも0.75%または少なくとも1%のポリガラクツロン酸を含む、請求項1~48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むシリンジ。
【請求項51】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むバイアル。
【請求項52】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物、吸収性要素、スワブ、接着性包帯、および処分用バッグを含むキット。
【請求項53】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物を含む、またはそれからなる医療器具ロッキング溶液。
【請求項54】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物を含むカテーテル。
【請求項55】
前記カテーテルが尿道カテーテルである、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項56】
前記尿道カテーテルがダブルバルーンカテーテルである、請求項55に記載のカテーテル。
【請求項57】
前記尿道カテーテルが、フォーリーカテーテル、ダブルカフ付フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、請求項56に記載のカテーテル。
【請求項58】
前記カテーテルが、
第1の端部および第2の端部と、
該第1の端部および該第2の端部から延びる中央内腔部と、
該中央内腔部の周囲に配置されたカテーテル壁であって、外側表面を含むカテーテル壁と、
第1のリザーバおよび第2のリザーバと、
該第1のリザーバと流体連通する第1の導管と、
該第2のリザーバと流体連通する第2の導管と、
該第1のリザーバ内の複数の出口ポートと、
を含む、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項59】
第1の導管と流体連通する第1の入口ポートと、
第2の導管と流体連通する第2の入口ポートと、
をさらに含む、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項60】
前記第1の導管および前記第2の導管が、前記カテーテル壁内に位置する、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項61】
前記複数の出口ポートが、前記カテーテル壁の前記外側表面の周りに円周方向に配置される、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項62】
前記第1の導管内の流れを制御するように構成された第1の弁をさらに備える、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項63】
前記第2の導管内の流れを制御するように構成された第2の弁をさらに備える、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項64】
前記第1の導管と流体連通する灌注流体容器をさらに含む、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項65】
前記灌注流体容器が第1のシリンジである、請求項64に記載のカテーテル。
【請求項66】
前記灌注流体容器がポンプに連結される、請求項64に記載のカテーテル。
【請求項67】
前記灌注流体容器が、請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物を含む、請求項64に記載のカテーテル。
【請求項68】
前記灌注流体容器が、前記第1の導管および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成されている、請求項64に記載のカテーテル。
【請求項69】
前記第1の導管と流体連通する第1の入口ポートをさらに備え、該第1の入口ポートは、前記第1の端部の近位にある、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項70】
第1の入口ポート、第1の導管、および第1のリザーバ内の複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成された灌注流体容器をさらに含む、請求項69に記載のカテーテル。
【請求項71】
前記第2の導管と流体連通する圧力源をさらに備える、請求項54に記載のカテーテル。
【請求項72】
前記圧力源が第2のシリンジである、請求項71に記載のカテーテル。
【請求項73】
前記圧力源が、前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、請求項71に記載のカテーテル。
【請求項74】
前記第2の導管と流体連通する第2の入口ポートをさらに備え、前記第2の入口ポートは、前記第2の端部の近位にある、請求項71に記載のカテーテル。
【請求項75】
前記圧力源が、前記第2の入口ポートおよび前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、請求項74に記載のカテーテル。
【請求項76】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物をカテーテルに投与することを含む、対象においてカテーテルを消毒または洗浄する方法。
【請求項77】
前記カテーテルが、血管内カテーテル、尿道カテーテル、脳カテーテル、浸漬カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記カテーテルが、ダブルバルーンカテーテル、シングルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記カテーテルが尿道カテーテルであり、前記方法が、前記抗菌組成物を尿道とカテーテルの外面との間に流すことをさらに含む、請求項76~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記カテーテルが近位リザーバを含み、前記方法が、該近位リザーバを前記抗菌組成物で満たすことをさらに含む、請求項76~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記抗菌組成物が、前記近位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通って前記カテーテルシャフトの外部に沿って排出され得る、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記近位リザーバがカフである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記カテーテルが遠位リザーバを含む、請求項76~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記遠位リザーバがカフである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記方法が、前記遠位リザーバを前記抗菌溶液で満たすことをさらに含む、請求項76~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記抗菌組成物が、前記遠位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通って前記カテーテルシャフトの外側に沿って排出され得る、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記カテーテルが、3つまたはそれを超えるリザーバまたはカフを備える、請求項76~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記対象がヒトである、請求項76~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
対象におけるカテーテルのフラッシングまたはロッキングに用いるための組成物であって、該組成物は請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物であり、かつ、該抗菌組成物が、溶液、エマルジョン、または懸濁液としてさらに定義される、組成物。
【請求項90】
前記カテーテルが、血管内カテーテル、尿道カテーテル、脳カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルである、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記カテーテルが、ダブルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、請求項89に記載の組成物。
【請求項92】
前記対象がヒトである、請求項89~91のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項93】
対象において創傷治癒を促進し、または感染症を治療する方法であって、請求項1~48のいずれか1項に記載の抗菌性組成物を、対象上または対象内の創傷または感染に投与することを含む、方法。
【請求項94】
前記抗菌性組成物が、カテーテル、チューブ、カニューレ、シリンジ、または浸漬カテーテルを介して投与される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記抗菌組成物が局所投与のために製剤化される、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記対象が哺乳動物である、請求項93~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記対象が、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ロバ、ブタ、ヒツジ、またはウマである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記対象がヒトである、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
対象において創傷治癒を促進するのに用いるための組成物であって、請求項1~48のいずれか1項に記載の抗菌組成物である、組成物。
【請求項100】
請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物をバイオフィルムに接触させることを含む、バイオフィルムを処理する方法。
【請求項101】
前記バイオフィルムが、グラム陽性菌、グラム陰性菌、または真菌を含むかまたはそれらからなる、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
第1の端部および第2の端部と、
該第1の端部および該第2の端部から延びる中央内腔部と、
該中央内腔部の周囲に配置されたカテーテル壁であって、外側表面を含むカテーテル壁と、
第1のリザーバおよび第2のリザーバと、
該第1のリザーバと流体連通する第1の導管と、
該第2のリザーバと流体連通する第2の導管と、
該第1のリザーバ内の複数の出口ポートと、
を含むカテーテル。
【請求項103】
第1の導管と流体連通する第1の入口ポートと、
第2の導管と流体連通する第2の入口ポートと、
をさらに含む、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項104】
前記第1の導管および前記第2の導管が前記カテーテル壁内に位置する、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項105】
前記複数の出口ポートが、前記カテーテル壁の前記外側表面の周りに円周方向に配置される、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項106】
前記第1の導管内の流れを制御するように構成された第1の弁をさらに備える、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項107】
前記第2の導管内の流れを制御するように構成された第2の弁をさらに備える、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項108】
前記第1の導管と流体連通する灌注流体容器をさらに備える、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項109】
前記灌注流体容器が第1のシリンジである、請求項108に記載のカテーテル。
【請求項110】
前記灌注流体容器がポンプに連結される、請求項108に記載のカテーテル。
【請求項111】
前記灌注流体容器が、請求項1~48のいずれか一項に記載の抗菌組成物を含む、請求項108に記載のカテーテル。
【請求項112】
前記灌注流体容器が、前記第1の導管および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成されている、請求項108に記載のカテーテル。
【請求項113】
前記第1の導管と流体連通する第1の入口ポートをさらに備え、該第1の入口ポートが、前記第1の端部の近位にある、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項114】
前記第1の入口ポート、前記第1の導管、および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成された灌注流体容器をさらに備える、請求項113に記載のカテーテル。
【請求項115】
前記第2の導管と流体連通する圧力源をさらに備える、請求項102に記載のカテーテル。
【請求項116】
前記圧力源が第2のシリンジである、請求項115に記載のカテーテル。
【請求項117】
前記圧力源が、前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、請求項115に記載のカテーテル。
【請求項118】
前記第2の導管と流体連通する第2の入口ポートをさらに備え、該第2の入口ポートが、前記第2の端部の近位にある、請求項115に記載のカテーテル。
【請求項119】
前記圧力源が、前記第2の入口ポートおよび前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、請求項118に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年2月22日に出願された米国仮出願第62 / 298,082号の利益を主張する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、広くは、分子生物学および医学の分野に関する。より詳しくは、抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
慢性創傷を有する患者、特に癌を有する患者のケアおよび管理は、患者および臨床医の両方にとって主要な課題である。この状況をさらに複雑にすることは、慢性創傷治療のためのエビデンスに基づく治療戦略の不足である。慢性創傷を有する患者の数の増加は、癌患者集団の増加の結果として、ならびに進行する年齢のものの結果として報告されている。人口の約1%が生涯にわたって下肢潰瘍を発症すると推定されている。米国だけでも、慢性創傷は毎年3~600万人の患者に影響を及ぼし、毎年50~100億ドルの推定治療費が発生する。特に免疫障害の癌患者におけるバイオフィルムの存在のために、創傷は治癒が困難であり得る。これは、抗生物質抵抗性バイオフィルムの出現の増加に伴って、抗生物質創傷療法の結果に悪影響を及ぼす。
【0004】
現在のプラクティスのレビューは、全身投与された抗生物質単独では肉芽創において細菌レベルを効果的に減少させなかったのに対し、局所適用された抗菌剤は患者の結果を改善するのに有効であり得ることを支持している。皮膚および創傷、特に微生物により汚染された創傷の局所的消毒は依然として、感染症を予防するための重要な医療上必要なことである。さらに、体内留置しているものを含む医療デバイスの消毒、および感染を予防するための移植部位(外科手術部位など)の消毒は依然として、重要な医療上必要なことである。明らかに、新規で改良された抗菌組成物、および表面を消毒し感染を治療する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
特定の態様では、本発明は、新規かつ改良された抗菌組成物を提供することにより先行技術の制限を克服する。本発明は、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸のようなポリガラクツロン酸混合物および脂肪酸(例えば、カプリル酸)が、相乗的に機能して菌組成物を増強することができるという発見に部分的に基づく。例えば、創傷の治療、ならびに手術器具、皮膚、創傷、手術部位、および表面の消毒を含む抗菌組成物の使用方法も供される。特定の実施形態では、本明細書で供される抗菌組成物は、局所的に、または哺乳動物もしくはヒトなどの対象の皮膚もしくは他の組織に適用し、治療効果を供することができる(例えば、創傷または外科部位の洗浄、微生物の消毒、治癒の促進、および/または痛みの軽減)。
【0006】
特定の態様では、バイオフィルムを処理または根絶することができる、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸(部分的にエステル化されたPGA)および脂肪酸(例えば、カプリル酸などのプロトン化飽和脂肪酸)を含む相乗的抗菌組成物が本明細書において供される。特定の実施形態では、部分的にエステル化されたPGAおよび脂肪酸の濃度は、抗微生物組成物がヒトに投与されたときに関連する毒性がほとんどまたは全く観察されないように、十分に低い。特定の実施形態では、抗菌作用を促進するために、ペルオキシド(例えば、過酸化水素)および一酸化窒素供与体(例えば、三硝酸グリセリンなどのグリセリル硝酸塩)などのエンハンサーを添加することができる。たとえば、抗菌活性を改善し、および/または所望の局所pHを維持するために、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸塩など)を本明細書に記載の抗菌組成物に含めることができる。さらに、例えば、特定の適用のためにハンドリング特性を改善するために、1つまたは複数の増粘剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、湿潤剤、保湿剤、抗炎症剤、着色剤もしくは色付け剤、および/または香料を、本明細書に記載されるような組成物に適用することができる。特定の実施形態では、本発明の消毒組成物は、(1)微生物によって汚染された創傷のような皮膚および創傷の局所消毒、ならびに(2)留置デバイスまたは移植デバイスを含む医療デバイスの消毒、および/または(3)手術部位の消毒のために用いることができる。特定の実施形態では、抗菌組成物は、抗生物質を含み得る。それにもかかわらず、特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物は、抗生物質を含まずに消毒特性を示し、抗菌組成物から抗生物質を排除することが望ましい場合がある。
【0007】
以下の例に示すように、特定の態様では、局所投与のために製剤化された部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸混合物およびカプリル酸を含む抗菌組成物が供され、ヒト患者に(例えば、創傷を治療するために)投与することができる。例に示されるように、抗菌組成物は、例えば、慢性創傷においてバイオフィルムを臨床的に治療するために、使用することができる非抗生物質の抗菌創傷軟膏として製剤化することができる。抗菌性軟膏は創傷治癒を促進し、痛みを軽減することが期待される。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、実施例に示されるデータは、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸の包含が、脂肪酸(例えば、カプリル酸)との相乗効果に寄与し得るという考えを支持する。これは、例えば、脂肪酸の溶解性の改善、乳化特性の提供、および/または抗菌組成物の酸含有量の維持または緩衝の補助への寄与に関連し得るカプリル酸との特定の相互作用による。
【0008】
本発明の1つの態様は、約0.5%~約3%(w / w)のポリガラクツロン酸混合物および0.1%超~約5%(w / w)のC6~12脂肪酸を含む抗菌組成物に関する。C6~12脂肪酸は、C6~12飽和脂肪酸またはC6~12アルカン酸であってもよい。C6~12脂肪酸はC6~10飽和脂肪酸またはC6~10アルカン酸であってもよい。C6~12脂肪酸は、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、カプリル酸(オクタン酸)、カプロン酸、またはラウリン酸であってもよい。特定の実施形態では、C6~12脂肪酸はカプリル酸(オクタン酸)である。特定の実施形態において、組成物は、約0.2%~約5%、約0.3%~約5%、約0.4%~約5%、または約0.4%~約3%の脂肪酸を含む。特定の実施形態では、組成物は、約0.5%、0.75%、1%、1.25%、1.5%、1.75%、2%、2.5%、3%、またはそれらの中から誘導可能ないずれかの範囲(たとえば、約1%~3%)のポリガラクツロン酸を含む。特定の実施形態では、脂肪酸はプロトン化されているか、または遊離酸である。抗菌組成物は、約4.8またはそれ未満、約3.7~4.8、または約4~4.7のpHを有し得る。特定の実施形態では、ポリガラクツロン酸混合物の比率は、少なくとも約50%の脱エステル化ポリガラクツロン酸の量でエステル化ポリガラクツロン酸および脱エステル化ポリガラクツロン酸からなる。特定の実施形態では、前記量は少なくとも約70%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、ここで、その脱エステル化ポリガラクツロン酸は実質的に脱プロトン化される。特定の実施形態では、前記量は少なくとも約85%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、ここで、その脱エステル化ポリガラクツロン酸は実質的に脱プロトン化される。抗菌組成物は、過酸化物をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、過酸化物は過酸化水素である。過酸化水素は、抗微生物組成物中に、約0.1%~約3%、または約0.1%~約1%の量で存在し得る。抗菌組成物は、1つまたは複数の追加の抗菌剤をさらに含み得る。1種または複数の追加の抗菌剤は、抗生物質、防腐剤、クロルヘキシジン、ゲンジン(gendine)、ガーディン(gardine)、銀、ナノ銀、スルファジアジン銀、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、キレート剤、C1~4アルコール、一酸化窒素供与体、第四級アンモニウム抗菌剤、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、抗菌組成物は、一酸化窒素供与体を含み、ここで、その一酸化窒素供与体は、硝酸グリセリル、ニトロプルシド、ニトロソグルタチオン、ニトロソ化合物、ニトロソチオール、ニトロソシステイン、ニトロソアルブミン、ニトロ化合物、ニトロアスピリリン(nitroaspiririn)、イソソルビド、ジアゼニウムジオラート、硝酸塩、または亜硝酸塩である。特定の実施形態において、硝酸グリセリルはグリセリルトリニトレート(GTN)である。特定の実施形態では、抗菌組成物は約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む。抗生物質は、ミノサイクリン、リファンピン、アミノグリコシド、キノロン、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リポペプチド、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、ポリペプチド、スルホンアミド、テトラサイクリン、メトロニダゾール、ムシプロシン、抗マイコバクテリア化合物、またはクロラムフェニコールである。特定の実施形態では、C1~4アルコールはエタノールである。特定の実施形態において、キレート剤は、メルカプトエタンスルホネート(MeSNA)、クエン酸塩、EDTA、EDDS、またはN-アセチルシステインである。特定の実施形態では、抗菌組成物は抗生物質をさらに含む。しかしながら、他の実施形態では、抗菌組成物は抗生物質を含まない。抗菌性組成物は、さらに、鎮痛薬、抗瘢痕化剤、抗炎症剤、抗凝固剤、香料、保湿剤、グリセロール、シリコーン化合物、ビタミン、湿潤剤、ポリマー、潤滑剤、触感剤、増粘剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、乳化剤、保湿剤、着色剤もしくは色付け剤、または香料を含み得る。溶液は、薬学的に許容可能な生理食塩水希釈剤を含み得る。特定の実施形態では、抗微生物組成物は、医薬組成物としてさらに定義されるか、または薬学的に許容可能な賦形剤を含む。抗菌組成物は、例えば、ゼラチン、可塑化ゼラチン(例えば、グリセロール-ゼラチン)、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、またはプロテオグリカン(例えば、ヒアルロン酸)などのタンパク質を含み得る。特定の実施形態では、抗菌組成物は、局所投与または創傷への投与のために製剤化される。抗菌組成物は、軟膏、クリーム、スプレー、ローション、流体、エマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ナノ懸濁液、またはマイクロ懸濁液として製剤化することができる。特定の実施形態において、抗菌組成物は、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)およびグリセロール(例えば、プロピレングリコール)を含む。特定の実施形態では、抗菌組成物は、約1~5%のカルボキシメチルセルロースおよび約10~30%のプロピレングリコールを含む。特定の実施形態において、抗菌組成物は、約3%のカルボキシメチルセルロースおよび約20%のプロピレングリコールを含む。特定の実施形態において、抗菌組成物は、約0.5~2%のペクチン酸、約0.3~0.5%のカプリル酸、および約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む。特定の実施形態において、抗菌組成物は、約1%のペクチン酸、約0.4%のカプリル酸、および約0.03%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む。特定の実施形態において、抗微生物組成物は、約1~1000マイクログラム/ mlのグリセリルトリニトレートおよび約0.1~1%の過酸化水素を含む。特定の実施形態では、抗菌組成物は、カテーテルロックまたはフラッシュ溶液としてさらに定義される。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも0.75%または少なくとも1%のポリガラクツロン酸を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、本発明のまたは上述のような抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むシリンジに関する。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、本発明のまたは上述のような抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むバイアルに関する。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明のまたは上述のような抗微生物組成物を含むか、またはそれからなる医療器具ロッキング溶液に関する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、本発明のまたは上述のような抗菌組成物を含むカテーテルに関する。カテーテルは、尿道カテーテルであってもよい。特定の実施形態では、尿道カテーテルはダブルバルーンカテーテルである。特定の実施形態では、尿道カテーテルは、フォーリー(Foley)カテーテル、ダブルカフ付(double cuffed)フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリー(Lerman Foley)カテーテルである。
【0013】
本発明の別の態様は、本発明のまたは上述のような抗菌組成物をカテーテルに投与することを含む、対象においてカテーテルを消毒または洗浄する方法に関する。カテーテルは、血管内カテーテル、尿カテーテル、脳カテーテル、浸漬(soaker)カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルであってもよい。特定の実施形態では、カテーテルは、ダブルバルーンカテーテル、シングルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである。特定の実施形態では、カテーテルは尿道カテーテルであり、その方法は、尿道とカテーテルの外面との間に抗菌組成物を流すことをさらに含む。特定の実施形態では、カテーテルは近位リザーバを含み、その方法は、近位リザーバに抗菌組成物を充填することをさらに含む。特定の実施形態では、抗菌組成物は、近位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通ってカテーテルシャフトの外側に沿って排出することができる。近位リザーバは、カフ(例えば、膨張可能なカフ)であってもよい。特定の実施形態では、カテーテルは遠位リザーバを含む。遠位リザーバは、カフ(例えば、膨張可能なカフ)であってもよい。特定の実施形態では、その方法は、遠位リザーバに抗菌溶液を充填することをさらに含む。特定の実施形態では、抗菌組成物は、遠位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通ってカテーテルシャフトの外側に沿って排出することができる。特定の実施形態では、カテーテルは3つまたはそれを超えるリザーバまたはカフを備える。対象は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば、哺乳動物、イヌ、ネコ、マウス、霊長類、サル、類人猿、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはウシであり得る。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、対象においてカテーテルのフラッシングまたはロッキングに使用するための組成物に関し、ここで、その組成物は本発明のまたは上述のような抗菌組成物であり、抗菌組成物は、溶液、エマルジョン、または懸濁液としてさらに定義される。カテーテルは、血管内カテーテル、尿道カテーテル、脳カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルであってもよい。特定の実施形態では、カテーテルは、ダブルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物および方法は、非ヒト動物の処置または消毒のために、例えば獣医学の環境で使用することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明のまたは上述の抗菌組成物を、対象上または対象内の創傷または感染に投与することを含む、対象において創傷治癒を促進または感染を治療する方法に関する。特定の実施形態では、抗菌性組成物は、カテーテル、チューブ、カニューレ、シリンジ、または浸漬カテーテルを介して投与される。抗菌組成物は、局所投与のために製剤化することができる。対象は、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ロバ、ブタ、ヒツジ、またはウマなどの哺乳動物であってもよい。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、対象における創傷治癒を促進するために用いるための組成物に関し、その組成物は、本発明のまたは上述の抗菌組成物である。
【0017】
本発明の別の態様は、本発明のまたは上述のような抗菌組成物にバイオフィルムを接触させることを含むバイオフィルムを処理する方法に関する。バイオフィルムは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、または真菌を含むか、またはそれらからなり得る。
【0018】
抗菌組成物のpHは、脂肪酸(例えば、カプリル酸)がプロトン化されるか、もしくは遊離酸状態にあるように、および/またはポリガラクツロン酸(PG)がイオン化(脱プロトン化)状態にあるように、あるpH(例えば、約4.8またはそれ未満のpH)で存在するか、またはそれに調整することができる。特定の実施形態では、抗菌組成物のpHは、約3.5~4.8、より好ましくは約3.7~4.8、もしくは3.5, 3.6, 3.7, 3.8, 3.9, 4, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0、またはそれに由来する任意の範囲である。特定の実施形態では、抗菌組成物をインビボで(例えば、消化管のようなより低いpH環境に)適用する場合に、より低いpH範囲(例えば、pH2.0~3.5、pH2.5~3.5)に抗菌製剤を調整することが可能であることが予想される。特定の場合において、pHは、より低いpH範囲からよりアルカリ性のpH範囲(例えば、pH 3.7~4.8)にその場でシフトすることができる。一般に、ポリガラクツロン酸(PG)は、約3.7のpKaを有する(Stoddart RW, Spires IP, Tipton KF., Biochem J. 1969 Oct; 114(4):863-70を参照)。したがって、3.5を超えるpHでは、PGはイオン化される(およびプロトン化されない)であろう。例えば、pH範囲3.7~4.8では、カプリル酸はプロトン化されるであろうが、PGはイオン化されない(すなわち、脱プロトン化される)であろう。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本明細書に供されるデータは、抗菌組成物がイオン化(または脱プロトン化)状態のPGを含む場合、これは、カプリル酸をその抗菌活性のために必要であり得るプロトン化状態に維持する助けとなり得るという考えを支持する。
【0019】
本明細書に記載の抗菌組成物中のポリガラクツロン酸(例えば、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸)は、ガラクツロン酸のホモポリマーであってもよいが、ガラクツロン酸、ラムノースおよび他の中性糖(例えばアラビノース、ガラクトース、およびキシロース)のヘテロポリマーであってもよい。しかしながら、ポリガラクツロン酸中のモノマー単位の大部分はガラクツロン酸である。ガラクツロン酸単位のいくつかは、エステル化されていてもよく、最も一般的にはメトキシル化されていてもよいが、エトキシル化(アシル化)、プロポキシル化、およびブトキシル化等されていてもよい。ガラクツロン酸単位のいくつかは遊離酸であるか、またはプロトン化されている。部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸のエステル化の程度は、約0.01~99.99%、より好ましくは約80%未満、さらにより好ましくは約50%未満の範囲であり得る。
【0020】
本発明の一部の態様は、部分的にエステル化されたポリガラクトン酸および脂肪酸を含む抗菌組成物に関する。特定の好ましい態様において、脂肪酸はプロトン化脂肪酸または遊離酸である。特定の実施形態では、脂肪酸はカプリル酸である。たとえば抗菌作用の速度を改善するために、過酸化物および/または一酸化窒素供与体(例えば、グリセリルニトレート、グリセリルトリニトレート(GTN))などの1つまたは複数のエンハンサーを抗菌組成物に含めることができる。たとえば抗菌活性を改善し、および/または所望の局所pH範囲を維持するために、抗菌組成物に1つまたは複数のキレーターを含めることもできる。キレーターは、たとえば、MeSNA、クエン酸塩、EDTA、および/またはEDDSであり得る。さらに、増粘剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、着色剤または色付け剤、および香料を本発明の組成物に添加して、特定の用途のハンドリング特性を改善することができる。
【0021】
本明細書に記載の抗菌組成物は、例えば、慢性創傷の治療を含む様々な目的のために使用することができる。例えば、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸および脂肪酸は、組成物を創傷内に保持するのを助けかつ/または滲出液を吸収するのを助けることができる1つまたは複数の増粘剤、たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/またはカルボキシメチルセルロースに添加することができる。軟膏は、プロピレングリコールなどの湿潤剤をさらに含んでもよい。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、湿潤剤は、創傷床に存在する微生物バイオフィルムとの接触を促進することができ、創傷治癒を助ける湿った環境を維持するのに役立ち得る。抗微生物組成物は、例えば、バイオフィルム根絶を促進するために、一酸化窒素供与体および/または過酸化物のようなエンハンサーをさらに含み得る。特定の実施形態では、抗微生物組成物は、1つまたは複数のニトロプルシド、ニトロソグルタチオン、他のニトロソ化合物、ニトロソチオール、ニトロソシステイン、ニトロソアルブミン、ニトロ化合物、ニトロアスピリリン(nitroaspiririns)、イソソルビド、ジアゼニウムジオラート、ニトレートおよびニトライト、グリセリルニトレート、たとえば、グリセリルトリニトレート、および/または過酸化水素をさらに含む(例えば、約1%未満、または0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9%、もしくはそれらに由来する任意の範囲)。
【0022】
本明細書に記載の抗菌組成物には、様々な追加の成分を含めることができる。例えば、皮膚消毒のために抗菌組成物を使用することが望まれる場合、ポリガラクツロン酸混合物および脂肪酸(例えば、カプリル酸)は、揮発性ビヒクル、例えば水、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、または皮膚への適用を可能にするが、後に蒸発して、抗微生物成分(例えば、ポリガラクツロン酸混合物および脂肪酸)を残渣として残すシリコーン中に懸濁することができる。特定の実施形態では、着色剤または色付け剤と同様に触感を改善するために、1つまたは複数の皮膚軟化剤(エモラント)および/または界面活性剤を含めることができる。特定の実施形態において、抗菌組成物は、(例えば、皮膚または他の表面への適用のために)噴霧することができる低粘度組成物として製剤化することができる。特定の実施形態では、抗菌組成物は、灌注カテーテル、浸漬カテーテル、カニューレ、チューブ、針、またはトロカールを通して、(例えば、アクセスが制限された外科手術部位または他の部位)に送達され得る。特定の実施形態では、抗菌組成物は、坐剤、親水コロイド、粒子、エマルジョン、懸濁液、クリーム、またはペーストとして製剤化することができる。特定の実施形態では、抗菌組成物は、留置医療器具または補綴医療器具の洗浄または消毒のために使用され得る。これらのデバイスは、カテーテル、チューブ、ステント、ドレイン、包帯、シャント、ピンなどを含む。特定の実施形態では、医療デバイスは、フォーリーカテーテルのような尿道カテーテルである。フォーリーカテーテルは、典型的には、尿が空になり得る開放された内腔と、1つまたは複数の膨張可能なカフとからなる。特定の場合、尿道括約筋の遠位に存在し、膨張したときに遠位先端部を膀胱内に保持する、膨張可能なカフが遠位先端部の近くに存在する。カフの膨張は、典型的には、カテーテル壁に存在する小さな内腔によって制御される。フォーリーカテーテルは、しばしば、数日間より長い長期間、内在することがあり、それは微生物の定着および尿路感染の可能性を高める。本発明の抗菌組成物は、尿道に接触するカテーテルのシャフトに沿って排出することができる排出カフまたはリザーバ内に、内腔を通じて注入することができる。増粘剤および加湿剤、例えばカルボキシメチルセルロースおよび/またはプロピレングリコールは、排水速度を制御するため、ならびに部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸および脂肪酸のカテーテルとの接触時間を長くするため、抗菌組成物に含まれてもよい。これらのアプローチは、例えば、カテーテルまたは医療デバイス上のバイオフィルムを処置、消毒、または根絶するために使用することができる。別の実施形態では、医療デバイスは、本発明の抗菌組成物が内腔を通して注入され、カテーテルの壁を通って外部表面または接触組織に排出され得る浸漬カテーテルである。さらに別の実施形態では、医療デバイスは、本発明の抗菌組成物を内腔を通して注入し、ソーカー細孔または排液リザーバを通って外面に沿って排液するように搬送することができる排液チューブである。
【0023】
本明細書に記載の抗菌組成物は、(例えば、皮膚または医療デバイス、カテーテルまたはプロテーゼのような表面上への適用または保持のために)固体スポンジまたはヒドロゲルマトリックスに予め添加することができる。抗菌組成物は、ポリビニルアルコール、親水性ポリウレタン、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、ペクチン、アルギン酸塩、および/またはセルロースのうちの1つまたは複数を含み得る。ヒドロゲルは、他の溶媒(例えば、グリコールなど)よりも水に対して高い親和性を有し得るが、水が吸収されるにつれてゆっくりと置換される低親和性溶媒を最初に充填することができる。ヒドロゲルマトリックスを含むヒドロゲル系は、水が環境からヒドロゲルマトリックス中に吸収されるときに、非水性溶媒中で本発明の抗菌組成物から抗菌成分を放出するために使用することができる。
【0024】
流体接触によって表面を消毒するために必要とされる接触の持続時間は、生物によって、および/またはバイオフィルムがどれほど十分に確立されて処理されているかによって異なり得る。以下の例に示すように、本発明者らは、バイオフィルムが、血管内デバイスでの使用に適しているほど十分に低い毒性の組成物との接触により2時間以内に根絶され得ることを見出した。
【0025】
開示される組成物で処置することができる他の生理学的表面には、例えば、皮膚および創傷床、歯、口腔咽頭および鼻咽頭、手術部位、器官、神経組織、腱、軟骨および骨が含まれる。特定の実施形態では、本発明の溶液は、創傷または組織を治療もしくは清浄化するため、または組織上の細菌もしくは真菌の増殖を減少させるために、肺、洞、または呼吸器組織に対象によってスプレー、噴霧、または吸入されてもよい。特定の実施形態において、本発明の溶液は、性感染症(STD)を治療または予防するために、ヒト患者などの対象に局所的に投与することができる。生理学的表面との接触のために、本発明の抗微生物組成物は、ゲル、クリームまたはフィルムに製剤化され得、組成物は、1つまたは複数の着色、芳香性、潤滑性、保湿、鎮痛および/または抗炎症性添加剤を含み得る。これらの組成物が適用され得る植込みされた医療デバイスの表面には、カテーテル、コード、チューブ、ドレイン、シャント、ステント、縫合糸、クリップ、ステープル、包帯、メッシュ、ケーシングなどが含まれるが、これらに限定されない。プラント、デバイス、ビルディングまたは機械の環境的に露出された表面は、シャワー、ロッカールーム、バスルームおよび医療施設の表面を含めて、これらの組成物で処理することができる。グローブ、マスク、レスピレーター、パッチ、フットカバー、シューライナー、フリップフロップ、耳栓、鼻栓などのパーソナルケアおよび/または保護用品の表面は、これらの組成物で実質的に消毒することができる。
【0026】
本発明の抗菌組成物は、微生物を殺すか、または微生物の増殖を減少させるために、様々な時間にわたって表面と接触させることができる。例えば、接触は、少なくとも1、2、3、4、5時間、または少なくとも1、2、3、4、5もしくはそれを超える日、または1、2、3、4、5もしくはそれを超える週等にわたって行うことができる。特定の実施形態では、接触は、5、4、3、2、もしくは1時間未満、または45、30、もしくは15分間未満で行うことができる。
【0027】
抗菌剤に加えて、鎮痛剤(例えば、リドカイン)、抗瘢痕化剤(例えば、MeSNA)、抗炎症剤(例えば、ステロイド、TNFアルファインヒビター、アスピリン、イブプロフェン、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ナプロキセン、非ステロイド性抗炎症剤)、麻酔薬(例えば、局所麻酔薬)、または痛みを和らげる薬を用いることができる。特定の実施形態では、抗菌組成物は、ロイコトリエン阻害剤、例えば、アシタザノラスト、イラルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト、ザフィルルカストおよびジロートンを含む。
【0028】
特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物は、抗生物質を含有しない。それにもかかわらず、特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物中に抗生物質を含むことが望ましい場合がある。例えば、本発明の抗菌組成物は、チゲサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、またはデメクロサイクリン、および/または類似体、たとえば、アンヒドロテトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、またはエピオキシテトラサイクリンのような抗生物質のテトラサイクリン群のメンバーを含み得る。特定の実施形態では、ミノサイクリンの誘導体を、本明細書に記載の様々な抗菌溶液またはカテーテルロック溶液中のミノサイクリンの代わりに用いることができると予想される。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗菌溶液またはカテーテルロック溶液は、1つまたは複数の追加の抗ウイルス剤および/または抗真菌剤を含み得る。
【0029】
抗菌組成物は、消毒剤をさらに含んでもよい。いくつかの消毒剤が当該技術分野で知られており、これらには、タウリンアミド誘導体、フェノール、第四級アンモニウム界面活性剤、塩素含有剤、キナルジニウム、ラクトン、染料、チオセミカルバゾン、キノン、カルバメート、尿素、サリチルアミド、カルバニリド、グアニド、アミジン、イミダゾリン殺生物剤、酢酸、安息香酸、ソルビン酸、プロピオン酸、ホウ酸、デヒドロ酢酸、亜硫酸、バニリン酸、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、イソプロパノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、ヨウ素(各種溶剤中)、ポビドンヨード、ヘキサメチレンテトラミン、ノキシチオリン、1-(3-クロロアリル)-3,5,7-トリアゾ-1-アゾニアアダマンタンクロライド、タウロリジン、タウルルタム、N(5-ニトロ-2-フルフリリデン)-1-アミノヒダントイン、5-ニトロ-2-フルアルデヒドセミカルバゾン、3,4,4'-トリクロロカルバニリド、3,4',5-トリブロモサリチルアニリド、3-トリフルオロメチ-4,4'-ジクロロカルバニリド、8-ヒドロキシキノリン、1-シクロプロピル-6-フルオロ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-7-(1-ピペラジニル)-3-キノリンカルボン酸、1,4-ジヒドロ-1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-(1-ピペラジニル)-3-キノリンカルボン酸、過酸化水素、過酢酸、フェノール、ナトリウムオキシクロロセン、パラクロロメタキシレノール、2,4,4'-トリクロ-2'-ヒドロキシジフェノール、チモール、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、スルファジアジン銀、または硝酸銀が含まれる。
【0030】
特定の実施形態では、抗菌組成物または組成物は、塩基性試薬および/または色素を含み得る。塩基性試薬は、グアニジウム化合物、ビグアニド、ビピリジン、フェノキシド消毒剤、アルキルオキシド、アリールオキシド、チオール、ハロゲン化物、脂肪族アミン、または芳香族アミンであってもよい。いくつかの特定の態様において、塩基性試薬はグアニジウム化合物である。グアニジウム化合物の非限定的な例には、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキサミジン、およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が含まれる。他の特定の実施形態では、塩基性試薬はビピリジンである。ビピリジンの一例はオクテニジンである。さらに他の態様において、塩基性試薬はフェノキシド消毒剤である。
【0031】
色素としては、トリアリールメタン系色素、モノアゾ系色素、ジアゾ系色素、インジゴイド系色素、キサンテン系色素、アントラキノン系色素、キノリン系色素、FD&C系色素を用いることができる。トリアリールメタン染料の非限定的な例としては、ゲンチアナバイオレット、クリスタルバイオレット、エチルバイオレット、またはブリリアントグリーンが挙げられる。例示的なモノアゾ染料には、FD&C黄色5号、またはFD&C黄色6号が含まれる。FD&C染料の他の非限定的な例は、青色1号または緑色3号を含む。ジアゾ染料の1つの非限定的な例は、D&C赤色17号である。インジゴイド染料の例は、FD&C青色2号である。キサンテン染料の例は、FD&C赤色3号である。アントラキノン染料の例はD&C緑色6号;キノリン色素の例はD&C黄色1号である。
【0032】
特定の実施形態において、抗菌剤は、1つまたは複数の消毒剤を含み得る。例えば、消毒剤は、フェノキシド消毒剤(例えば、クロフォクトール、クロロキシレノールまたはトリクロサン)、ゲンジン(gendine)、ゲンレノール(genlenol)、ゲンロサン(genlosan)、またはゲンホクトール(genfoctol)であり得る。
【0033】
本明細書に記載される抗菌組成物および方法は、例えば、カテーテル、ドレイン、気管内チューブ、腎瘻チューブ、心室カテーテルまたはシャント、胆管ステント、整形外科用デバイス、人工弁、医療用インプラント、歯科用デバイスまたは歯科用インプラント、心臓補助デバイス、血管グラフト、気管切開術、脳室切開術用デバイス、または髄腔内デバイスなどの医療デバイスの表面から微生物の作用体(例えば、細菌)を減少させるのに用いることができる。特定の態様では、カテーテルは、中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、動脈カテーテル、Swan-Ganzカテーテル、血液透析カテーテル、尿道カテーテル(例えば、フォーリーカテーテル、レーマンフォーリーカテーテル)、腹膜カテーテル、臍帯カテーテル、経皮非貫通型シリコーンカテーテル、カフ付きトンネル中央静脈カテーテルまたは皮下中心静脈ポートである。特定の実施形態では、医療デバイスは、気管内チューブ、血管カテーテル、尿道カテーテル、腎瘻チューブ、胆道ステント、腹膜カテーテル、硬膜外カテーテル、中枢神経系カテーテル、頭蓋内カテーテル、髄腔内カテーテル、硬膜外カテーテル、整形外科用デバイス、人工弁、または医療用インプラントである。カテーテルは、例えば、中心静脈カテーテル、動脈ライン、肺動脈カテーテル、および末梢静脈カテーテル、動脈内カテーテル、または静脈内(i.v.)チューブなどの血管カテーテルであってもよい。
【0034】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物またはカテーテルロック溶液は、薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。 「薬学的に許容可能」および「薬理学的に許容可能」という語句は、動物、例えば、ヒトに適切に投与された場合に、不都合な、アレルギー性の、または他の有害な反応を生じない分子実体および組成物を指す。本発明の抗菌組成物(例えば、カテーテルロック溶液、軟膏、ゲル、スプレー、局所投与または皮膚もしくは創傷への投与のために製剤化された組成物)および追加の活性成分を含有する医薬組成物の調製は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams and Wilkins、2005(本明細書中に参考として援用される)に例示されるように、本開示に照らして当業者に知られるであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、典型的には、FDA Office of Biological Standardsによって要求されるような、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度基準を満たすべきであることが理解される。特定の実施形態では、抗微生物組成物は、それら全体が引用により組み込まれる、米国特許第7,601,731号、第5,362,754号および第5,688,516号に記載されるような1つまたは複数の成分を含み得る。特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物またはカテーテルロック溶液は、1つまたは複数の追加の抗ウイルス剤または抗真菌剤を含み得る。
【0035】
特定の実施形態は、本明細書に開示される抗菌組成物(例えば、請求項1~48のいずれか1つを含む)、吸収性要素、スワブ、接着性包帯、および処分用(disposal)バッグを含むキットを含む。任意に、キットは、一対のグローブ(例えば、滅菌ニトリルまたはラテックスグローブ)を含み得る。特定の実施形態では、キットは、消毒液が点滴のための単位用量容器(例えば、1つまたは複数のシリンジ)にパッケージングされ、デバイスの近位出口部位で放出する任意の過剰な液体を吸収するためにキット内に吸収性要素(たとえば、本明細書に記載のスポンジまたはガーゼ)と組み合わされた、尿(または他の体内留置カテーテル)のためのケアおよびメンテナンスキットである。局所または創傷軟膏の場合、キットは、部位をきれいにするためのワイプ、軟膏を広げるためのスワブまたはブラシ、および部位を覆うための接着性ドレッシングを含み得る。特定の実施形態では、キットは、処分用バッグまたは容器(生物学的危険性の処分のために適切かつマークされたものを含む)も含むことができる。
【0036】
特定の実施形態は、第1の端部および第2の端部と、該第1の端部および該第2の端部から延びる中央内腔部と、該中央内腔部の周囲に配置されたカテーテル壁であって、外側表面を有するカテーテル壁と、第1のリザーバおよび第2のリザーバと、該第1のリザーバと流体連通する第1の導管と、該第2のリザーバと流体連通する第2の導管と、該第1のリザーバ内の複数の出口ポートと、を含むカテーテルを含む。
【0037】
特定の実施形態は、第1の導管と流体連通する第1の入口ポートと、第2の導管と流体連通する第2の入口ポートと、をさらに含む。特定の実施形態では、第1の導管および第2の導管は、カテーテル壁内に配置される。特定の実施形態では、複数の出口ポートは、カテーテル壁の外側表面の周りに円周方向に配置される。特定の実施形態は、第1の導管内の流れを制御するように構成された第1のバルブをさらに備え、特定の実施形態は、第2の導管内の流れを制御するように構成された第2のバルブをさらに備える。特定の実施形態は、第1の導管と流体連通する灌注流体容器をさらに備える。特定の実施形態では、灌注流体容器は第1のシリンジであり、特定の実施形態では、灌注流体容器はポンプに結合される。
【0038】
特定の実施形態では、灌注流体容器は、本明細書に開示されるような抗菌組成物を含む(例えば、請求項1~48のいずれか1つを含む)。特定の実施形態では、灌注流体容器は、第1の導管および第1のリザーバ内の複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成される。特定の実施形態は、第1の導管と流体連通する第1の入口ポートをさらに備え、ここで、第1の入口ポートは、第1の端部の近位にある。特定の実施形態は、灌注流体を、第1の入口ポート、第1の導管、および第1のリザーバ内の複数の出口ポートを通して導くように構成された灌注流体容器をさらに含む。
【0039】
特定の実施形態は、第2の導管と流体連通する圧力源をさらに備え、特定の実施形態では、圧力源は第2のシリンジである。特定の実施形態では、圧力源は、第2の導管を介して第2のリザーバを膨張させるように構成される。特定の実施形態は、第2の導管と流体連通する第2の入口ポートをさらに備え、ここで、第2の入口ポートは、第2の端部の近位にある。特定の実施形態では、圧力源は、第2の入口ポートおよび第2の導管を介して第2のリザーバを膨張させるように構成される。
【0040】
医療デバイスにおける微生物の削減/根絶以外に、本発明のフラッシュ溶液は、微生物が増殖することができる他の表面、例えばパイプ、パイプライン(例えば、油または水パイプライン)、アイスマシン等の表面の根絶にも有用である。特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物は、口腔衛生のために、例えば、マウスウォッシュとして、または局所的(皮膚)消毒のために使用され得る。特定の実施形態において、本発明の抗菌組成物は、バンデージ、包帯(ドレッシング)(例えば、創傷ドレッシング)、キャスト、縫合、またはステープルとともに、またはそれらの中もしくはそれらの上に含まれてもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載されるような抗菌組成物は、表面を洗浄または消毒するために使用され得るか、またはスポンジ、ガーゼ、タオル、もしくはワイプ上に含まれ得る。
【0041】
「抗菌剤」は、本明細書では、細菌、真菌、ウイルスおよび他の病原体に対して抗菌特性を有する剤として定義され、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および消毒剤を含む。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「抗真菌剤」という用語は、化合物によって接触される真菌に対して殺真菌性または静真菌性の効果を有する化合物として定義される。本明細書中で使用される場合、「殺真菌性」という用語は、真菌に対して破壊的殺傷作用を有することを意味すると定義される。本明細書中で使用される場合、「静真菌性」という用語は、真菌の増殖に対して阻害作用を有することを意味すると定義される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗細菌剤」という用語は、化合物によって接触される細菌に対して殺細菌性または静細菌性の効果を有する化合物として定義される。本明細書で使用される場合、「殺細菌性」という用語は、細菌に対して破壊的殺傷作用を有することを意味すると定義される。本明細書で使用される場合、「静細菌性」という用語は、細菌の増殖に対して阻害作用を有することを意味すると定義される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗ウイルス剤」という用語は、ウイルス作用体を殺すことができる化合物、または化合物による接触時にウイルスの複製を停止させる化合物として定義される。
【0045】
本開示の目的では、「有効量」または「治療に有効な量」という語句は、表面上の組成物によって接触される微生物に殺菌性または静菌性の効果を誘導するのに十分な用量として定義される。
【0046】
本明細書で使用する、「接触」、「接触される」および「接触する」、または「曝露」および「露出」という用語は、本発明で開示された抗菌組成物のいずれかが、医療器具の表面、または微生物の増殖が減少もしくは根絶されるべきいずれかの他の表面と接触されるか、またはそれと直接的に並置されるプロセスを記載するために使用される。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。請求項において本明細書で使用される場合、「含む」という用語と併せて使用される場合、「a」または「an」という用語は1つまたは複数を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0048】
請求項において「または」という用語を使用することは、代替物のみを指すことを明示的に示す場合を除いて、または代替物が互いに排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。ただし、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を意味する定義を支持する。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0049】
本出願を通じて、「約」という用語は、値が、デバイスの誤差の固有の変動(その値を決定するために方法が使用される)、または研究対象の間に存在する変動を含むことを意味するのに使用される。
【0050】
[本発明1001]
約0.5%~約3%(w / w)のポリガラクツロン酸混合物および0.1%より多く約5%(w / w)までのC6~12脂肪酸を含む抗菌組成物。
[本発明1002]
前記C6~12脂肪酸がC6~12飽和脂肪酸またはC6~12アルカン酸である、本発明1001の抗菌組成物。
[本発明1003]
前記C6~12脂肪酸がC6~10飽和脂肪酸またはC6~10アルカン酸である、本発明1002の抗菌組成物。
[本発明1004]
前記C6~12脂肪酸が、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、カプリル酸(オクタン酸)、カプロン酸、またはラウリン酸である、本発明1002の抗菌組成物。
[本発明1005]
前記C6~12脂肪酸が、カプリル酸(オクタン酸)である、本発明1004の抗菌組成物。
[本発明1006]
前記組成物が、約0.2%~約5%の脂肪酸を含む、本発明1001~1005のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1007]
前記組成物が、約0.3%~約5%の脂肪酸を含む、本発明1006の抗菌組成物。
[本発明1008]
前記組成物が、約0.4%~約5%の脂肪酸を含む、本発明1007の抗菌組成物。
[本発明1009]
前記組成物が、約0.4%~約3%の脂肪酸を含む、本発明1006の抗菌組成物。
[本発明1010]
前記脂肪酸がプロトン化されているか、または遊離酸である、本発明1001~1009のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1011]
前記抗菌組成物が、約4.8またはそれより小さいpHを有する、本発明1001~1009のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1012]
前記抗菌組成物が約3.7~4.8のpHを有する、本発明1011の抗菌組成物。
[本発明1013]
前記抗菌組成物が約4~4.7のpHを有する、本発明1012の抗菌組成物。
[本発明1014]
前記ポリガラクツロン酸混合物の比率が、少なくとも約50%の脱エステル化ポリガラクツロン酸の量でエステル化ポリガラクツロン酸および脱エステル化ポリガラクツロン酸からなる、本発明1001~1011のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1015]
前記量が少なくとも約70%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、該脱エステル化ポリガラクツロン酸が実質的に脱プロトン化されている、本発明1014の抗菌組成物。
[本発明1016]
前記量が少なくとも約85%の脱エステル化ポリガラクツロン酸であり、該脱エステル化ポリガラクツロン酸が実質的に脱プロトン化されている、本発明1014の抗菌組成物。
[本発明1017]
前記抗菌組成物が過酸化物をさらに含む、本発明1001~1016のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1018]
前記過酸化物が過酸化水素である、本発明1017の抗菌組成物。
[本発明1019]
前記過酸化水素が、抗菌組成物中に約0.1%~約3%の量で存在する、本発明1017の抗菌組成物。
[本発明1020]
前記過酸化水素が、抗菌組成物中に約0.1%~約1%の量で存在する、本発明1017の抗菌組成物。
[本発明1021]
前記抗菌組成物が、1つまたは複数の追加の抗菌剤をさらに含む、本発明1001~1020のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1022]
前記1つまたは複数の追加の抗菌剤が、抗生物質、消毒剤、クロルヘキシジン、ゲンジン(gendine)、ガーディン(gardine)、銀、ナノシルバー、スルファジアジン銀、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、キレート剤、C1~4アルコール、一酸化窒素供与体、第四級アンモニウム抗菌剤、またはそれらの混合物である、本発明1021の抗菌組成物。
[本発明1023]
前記抗菌組成物が一酸化窒素供与体を含み、該一酸化窒素供与体が、グリセリルニトレート、ニトロプルシド、ニトロソグルタチオン、ニトロソ化合物、ニトロソチオール、ニトロソシステイン、ニトロソアルブミン、ニトロ化合物、ニトロアスピリリン(nitroaspiririn)、イソソルビド、ジアゼニウムジオラート、硝酸塩、または亜硝酸塩である、本発明1022の抗菌組成物。
[本発明1024]
前記グリセリルニトレートが、グリセリルトリニトレート(GTN)である、本発明1023の抗菌組成物。
[本発明1025]
前記抗菌組成物が、約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、本発明1024の抗菌組成物。
[本発明1026]
前記抗生物質が、ミノサイクリン、リファンピン、アミノグリコシド、キノロン、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リポペプチド、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、ポリペプチド、スルホンアミド、テトラサイクリン、メトロニダゾール、ムシプロシン、抗マイコバクテリア化合物、またはクロラムフェニコールである、本発明1022の抗菌組成物。
[本発明1027]
前記C1~4アルコールがエタノールである、本発明1022の抗菌組成物。
[本発明1028]
前記キレート剤が、メルカプトエタンスルホネート(MeSNA)、クエン酸塩、EDTA、EDDS、またはN-アセチルシステインである、本発明1022の抗菌組成物。
[本発明1029]
前記抗菌組成物がさらに抗生物質を含む、本発明1001~1028のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1030]
前記抗菌組成物が抗生物質を含まない、本発明1001~1028のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1031]
前記抗菌組成物が、鎮痛剤、抗瘢痕化剤、抗炎症剤、抗凝固剤、香料、保湿剤、グリセロール、シリコーン化合物、ビタミン、湿潤剤、ポリマー、潤滑剤、触感剤、増粘剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、乳化剤、保湿剤、着色剤もしくは色付け剤、または香料をさらに含む、本発明1001~1030のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1032]
前記溶液が、薬学的に許容可能な生理食塩水希釈剤を含む、本発明1001~1031のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1033]
前記抗菌組成物が医薬組成物としてさらに定義されるか、または薬学的に許容可能な賦形剤を含む、本発明1001~1031のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1034]
前記抗菌組成物がタンパク質を含む、本発明1033の抗菌組成物。
[本発明1035]
前記タンパク質が、ゼラチン、可塑化ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、コラーゲン、またはプロテオグリカンである、本発明1034の抗菌組成物。
[本発明1036]
前記可塑化ゼラチンがグリセロール-ゼラチンである、本発明1035の抗菌組成物。
[本発明1037]
前記プロテオグリカンがヒアルロン酸である、本発明1034の抗菌組成物。
[本発明1038]
前記抗菌組成物が、局所投与用または創傷への投与用に製剤化される、本発明1001~1037のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1039]
前記抗菌組成物が、軟膏、クリーム、スプレー、ローション、流体、エマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ナノ懸濁液、またはマイクロ懸濁液として製剤化される、本発明1038の抗菌組成物。
[本発明1040]
前記抗菌組成物がセルロースおよびグリセロールを含む、本発明1001~1039のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1041]
前記セルロースがカルボキシメチルセルロースである、本発明1040の抗菌組成物。
[本発明1042]
前記グリセロールがプロピレングリコールである、本発明1040~1041のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1043]
前記抗菌組成物が、約1~5%のカルボキシメチルセルロースおよび約10~30%のプロピレングリコールを含む、本発明1040の抗菌組成物。
[本発明1044]
前記抗菌組成物が、約3%のカルボキシメチルセルロースおよび約20%のプロピレングリコールを含む、本発明1040の抗菌組成物。
[本発明1045]
前記抗菌組成物が、約0.5~2%のペクチン酸、約0.3~0.5%のカプリル酸、および約0.01~1%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、本発明1001~1044のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1046]
前記抗菌組成物が、約1%のペクチン酸、約0.4%のカプリル酸、および約0.03%のグリセリルトリニトレート(GTN)を含む、本発明1001~1045のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1047]
前記抗菌組成物が、約1~1000μg/ mlのグリセリルトリニトレートおよび約0.1~1%の過酸化水素を含む、本発明1001~1045のいずれかの抗菌組成物。
[本発明1048]
前記抗菌組成物が、カテーテルロックまたはフラッシュ溶液としてさらに定義される、本発明1001~1034のいずれかの組成物。
[本発明1049]
前記組成物が、少なくとも0.75%または少なくとも1%のポリガラクツロン酸を含む、本発明1001~1048のいずれかの組成物。
[本発明1050]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むシリンジ。
[本発明1051]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物の薬理学的に有効な量の単位用量を含むバイアル。
[本発明1052]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物、吸収性要素、スワブ、接着性包帯、および処分用バッグを含むキット。
[本発明1053]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物を含む、またはそれからなる医療器具ロッキング溶液。
[本発明1054]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物を含むカテーテル。
[本発明1055]
前記カテーテルが尿道カテーテルである、本発明1054のカテーテル。
[本発明1056]
前記尿道カテーテルがダブルバルーンカテーテルである、本発明1055のカテーテル。
[本発明1057]
前記尿道カテーテルが、フォーリーカテーテル、ダブルカフ付フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、本発明1056のカテーテル。
[本発明1058]
前記カテーテルが、
第1の端部および第2の端部と、
該第1の端部および該第2の端部から延びる中央内腔部と、
該中央内腔部の周囲に配置されたカテーテル壁であって、外側表面を含むカテーテル壁と、
第1のリザーバおよび第2のリザーバと、
該第1のリザーバと流体連通する第1の導管と、
該第2のリザーバと流体連通する第2の導管と、
該第1のリザーバ内の複数の出口ポートと、
を含む、本発明1054のカテーテル。
[本発明1059]
第1の導管と流体連通する第1の入口ポートと、
第2の導管と流体連通する第2の入口ポートと、
をさらに含む、本発明1054のカテーテル。
[本発明1060]
前記第1の導管および前記第2の導管が、前記カテーテル壁内に位置する、本発明1054のカテーテル。
[本発明1061]
前記複数の出口ポートが、前記カテーテル壁の前記外側表面の周りに円周方向に配置される、本発明1054のカテーテル。
[本発明1062]
前記第1の導管内の流れを制御するように構成された第1の弁をさらに備える、本発明1054のカテーテル。
[本発明1063]
前記第2の導管内の流れを制御するように構成された第2の弁をさらに備える、本発明1054のカテーテル。
[本発明1064]
前記第1の導管と流体連通する灌注流体容器をさらに含む、本発明1054のカテーテル。
[本発明1065]
前記灌注流体容器が第1のシリンジである、本発明1064のカテーテル。
[本発明1066]
前記灌注流体容器がポンプに連結される、本発明1064のカテーテル。
[本発明1067]
前記灌注流体容器が、本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物を含む、本発明1064のカテーテル。
[本発明1068]
前記灌注流体容器が、前記第1の導管および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成されている、本発明1064のカテーテル。
[本発明1069]
前記第1の導管と流体連通する第1の入口ポートをさらに備え、該第1の入口ポートは、前記第1の端部の近位にある、本発明1054のカテーテル。
[本発明1070]
第1の入口ポート、第1の導管、および第1のリザーバ内の複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成された灌注流体容器をさらに含む、本発明1069のカテーテル。
[本発明1071]
前記第2の導管と流体連通する圧力源をさらに備える、本発明1054のカテーテル。
[本発明1072]
前記圧力源が第2のシリンジである、本発明1071のカテーテル。
[本発明1073]
前記圧力源が、前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、本発明1071のカテーテル。
[本発明1074]
前記第2の導管と流体連通する第2の入口ポートをさらに備え、前記第2の入口ポートは、前記第2の端部の近位にある、本発明1071のカテーテル。
[本発明1075]
前記圧力源が、前記第2の入口ポートおよび前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、本発明1074のカテーテル。
[本発明1076]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物をカテーテルに投与することを含む、対象においてカテーテルを消毒または洗浄する方法。
[本発明1077]
前記カテーテルが、血管内カテーテル、尿道カテーテル、脳カテーテル、浸漬カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルである、本発明1076の方法。
[本発明1078]
前記カテーテルが、ダブルバルーンカテーテル、シングルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、本発明1077の方法。
[本発明1079]
前記カテーテルが尿道カテーテルであり、前記方法が、前記抗菌組成物を尿道とカテーテルの外面との間に流すことをさらに含む、本発明1076~1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
前記カテーテルが近位リザーバを含み、前記方法が、該近位リザーバを前記抗菌組成物で満たすことをさらに含む、本発明1076~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
前記抗菌組成物が、前記近位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通って前記カテーテルシャフトの外部に沿って排出され得る、本発明1080の方法。
[本発明1082]
前記近位リザーバがカフである、本発明1081の方法。
[本発明1083]
前記カテーテルが遠位リザーバを含む、本発明1076~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
前記遠位リザーバがカフである、本発明1083の方法。
[本発明1085]
前記方法が、前記遠位リザーバを前記抗菌溶液で満たすことをさらに含む、本発明1076~1084のいずれかの方法。
[本発明1086]
前記抗菌組成物が、前記遠位リザーバ内の1つまたは複数の孔を通って前記カテーテルシャフトの外側に沿って排出され得る、本発明1085の方法。
[本発明1087]
前記カテーテルが、3つまたはそれを超えるリザーバまたはカフを備える、本発明1076~1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
前記対象がヒトである、本発明1076~1078のいずれかの方法。
[本発明1089]
対象におけるカテーテルのフラッシングまたはロッキングに用いるための組成物であって、該組成物は本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物であり、かつ、該抗菌組成物が、溶液、エマルジョン、または懸濁液としてさらに定義される、組成物。
[本発明1090]
前記カテーテルが、血管内カテーテル、尿道カテーテル、脳カテーテル、腎瘻チューブ、または排出もしくは排液カテーテルである、本発明1089の組成物。
[本発明1091]
前記カテーテルが、ダブルバルーンカテーテル、フォーリーカテーテル、またはレーマンフォーリーカテーテルである、本発明1089の組成物。
[本発明1092]
前記対象がヒトである、本発明1089~1091のいずれかの組成物。
[本発明1093]
対象において創傷治癒を促進し、または感染症を治療する方法であって、本発明1001~1048のいずれかの抗菌性組成物を、対象上または対象内の創傷または感染に投与することを含む、方法。
[本発明1094]
前記抗菌性組成物が、カテーテル、チューブ、カニューレ、シリンジ、または浸漬カテーテルを介して投与される、本発明1093の方法。
[本発明1095]
前記抗菌組成物が局所投与のために製剤化される、本発明1093の方法。
[本発明1096]
前記対象が哺乳動物である、本発明1093~1095のいずれかの方法。
[本発明1097]
前記対象が、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ロバ、ブタ、ヒツジ、またはウマである、本発明1096の方法。
[本発明1098]
前記対象がヒトである、本発明1096の方法。
[本発明1099]
対象において創傷治癒を促進するのに用いるための組成物であって、本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物である、組成物。
[本発明1100]
本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物をバイオフィルムに接触させることを含む、バイオフィルムを処理する方法。
[本発明1101]
前記バイオフィルムが、グラム陽性菌、グラム陰性菌、または真菌を含むかまたはそれらからなる、本発明1100の方法。
[本発明1102]
第1の端部および第2の端部と、
該第1の端部および該第2の端部から延びる中央内腔部と、
該中央内腔部の周囲に配置されたカテーテル壁であって、外側表面を含むカテーテル壁と、
第1のリザーバおよび第2のリザーバと、
該第1のリザーバと流体連通する第1の導管と、
該第2のリザーバと流体連通する第2の導管と、
該第1のリザーバ内の複数の出口ポートと、
を含むカテーテル。
[本発明1103]
第1の導管と流体連通する第1の入口ポートと、
第2の導管と流体連通する第2の入口ポートと、
をさらに含む、本発明1102のカテーテル。
[本発明1104]
前記第1の導管および前記第2の導管が前記カテーテル壁内に位置する、本発明1102のカテーテル。
[本発明1105]
前記複数の出口ポートが、前記カテーテル壁の前記外側表面の周りに円周方向に配置される、本発明1102のカテーテル。
[本発明1106]
前記第1の導管内の流れを制御するように構成された第1の弁をさらに備える、本発明1102のカテーテル。
[本発明1107]
前記第2の導管内の流れを制御するように構成された第2の弁をさらに備える、本発明1102のカテーテル。
[本発明1108]
前記第1の導管と流体連通する灌注流体容器をさらに備える、本発明1102のカテーテル。
[本発明1109]
前記灌注流体容器が第1のシリンジである、本発明1108のカテーテル。
[本発明1110]
前記灌注流体容器がポンプに連結される、本発明1108のカテーテル。
[本発明1111]
前記灌注流体容器が、本発明1001~1048のいずれかの抗菌組成物を含む、本発明1108のカテーテル。
[本発明1112]
前記灌注流体容器が、前記第1の導管および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成されている、本発明1108のカテーテル。
[本発明1113]
前記第1の導管と流体連通する第1の入口ポートをさらに備え、該第1の入口ポートが、前記第1の端部の近位にある、本発明1102のカテーテル。
[本発明1114]
前記第1の入口ポート、前記第1の導管、および前記第1のリザーバ内の前記複数の出口ポートを通して灌注流体を導くように構成された灌注流体容器をさらに備える、本発明1113のカテーテル。
[本発明1115]
前記第2の導管と流体連通する圧力源をさらに備える、本発明1102のカテーテル。
[本発明1116]
前記圧力源が第2のシリンジである、本発明1115のカテーテル。
[本発明1117]
前記圧力源が、前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、本発明1115のカテーテル。
[本発明1118]
前記第2の導管と流体連通する第2の入口ポートをさらに備え、該第2の入口ポートが、前記第2の端部の近位にある、本発明1115のカテーテル。
[本発明1119]
前記圧力源が、前記第2の入口ポートおよび前記第2の導管を介して前記第2のリザーバを膨張させるように構成されている、本発明1118のカテーテル。
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しており、説明の目的のみに供される。なぜなら、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者には明らかであろうからである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、よりよく理解され得る。
図1図1A~C:MRSA(図1A)、多剤耐性緑膿菌(MDR-Ps. aerugoinosa)(図1B)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(図1C)に対して試験したポリガラクツロン酸およびカプリル酸の相乗作用。
図2A】改良されたKuhn'sモデル、定量的時間対殺滅バイオフィルム根絶モデルを用いた、MRSA(図2A)に対して試験したポリガラクツロン酸およびカプリル酸の相乗作用。
図2B】改良されたKuhn'sモデル、定量的時間対殺滅バイオフィルム根絶モデルを用いた、緑膿菌(Pseudomonas aerugoinosa)(図2B)に対して試験したポリガラクツロン酸およびカプリル酸の相乗作用。
図2C】改良されたKuhn'sモデル、定量的時間対殺滅バイオフィルム根絶モデルを用いた、カンジダ・アルビカンス(図2C)に対して試験したポリガラクツロン酸およびカプリル酸の相乗作用。
図3】インビトロ細胞毒性代謝活性アッセイの結果。
図4】哺乳動物線維芽細胞モデルを用いたインビトロ細胞毒性アッセイの結果。
図5】本開示の例示的な実施形態によるカテーテルの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
例示的な実施形態の説明
本発明は、改良された抗菌組成物を供することによって従来技術の限界を克服する。特定の態様において、本発明は、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸およびカプリル酸が改善された細菌死滅および抗菌特性を相乗的にもたらすことができるという観察に部分的に基づく。以下の例に示すように、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸またはカプリル酸は、単独で投与された場合、極めて弱い抗菌活性を示す。しかしながら、これらの化合物を一緒に投与すると、相乗的かつ極めて強い抗菌活性が観察された。抗菌組成物は、例えば、医療デバイス(例えば、カテーテル)、人工装具、表面、皮膚、創傷(例えば、洗浄時)、または手術部位の洗浄または消毒を含む方法において使用することができる。
【0053】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、例えばバイオフィルムを含む感染症を治療するために、対象(例えば、ヒト患者)の皮膚に局所適用することができる。微生物汚染された環境での創傷は、バイオフィルムの存在のために治癒するのが困難であり得る。バイオフィルムはしばしば慢性の皮膚創傷に存在し、治癒におけるそれらの不応性に寄与する(James et al, 2008)。ブドウ球菌バイオフィルムは、皮膚の創傷の再上皮化を遅らせることによって治癒を妨害することが報告されている(Schierle et al, 2009)。抗生物質耐性バイオフィルムの有病率の増加(米国保健福祉省CfDCaP、Antibiotic Resistance Threats in the United States, 2013)は、抗生物質の創傷療法の有効性を損なう。我々は、皮膚上に局所的に使用される場合に安全であることが知られている剤の組み合わせから構成される新規の非抗生物質の抗菌性の創傷軟膏を開発した。インビトロ試験は、耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌の病原体を迅速に根絶するために軟膏が極めて有効であることを示している。
【0054】
I.定義
本明細書で使用される「抗菌医療デバイス」および「医療デバイス」という用語は、構成部品またはアクセサリを含む機器、装置、器具、機械、仕掛け物、インプラント、または他の同様のもしくは関連する物品を指し、上記のような逐次抗菌接触を受け、対象における疾患または他の健康関連状態の診断、治療、および/または予防における使用が意図される。対象は、哺乳動物またはヒトのようないずれかの脊椎動物であり得る。抗菌医療デバイスの非限定的な例には、血管カテーテル、たとえば、末梢に挿入可能な中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期トンネル中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、単一内腔および多内腔短期中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺動脈Swan-Ganzカテーテルなど;尿道カテーテル、他の長期尿道デバイス、組織結合尿道デバイス、腎臓ステント、陰茎プロテーゼ、血管移植片、血管アクセスポート、創傷ドレイン、水頭症シャント、心室排液カテーテル、神経および硬膜外カテーテル、神経刺激器、腹膜透析カテーテル、ペースメーカーカプセル、人工尿道括約筋、小型もしくは一時的な関節置換物、拡張物質、心臓弁、整形外科プロテーゼ、脊髄ハードウエア、外科部位修復メッシュ(例えば、ヘルニアメッシュ)、気管内チューブ、胆管ステント、胃腸管、手袋(ラテックス、非ラテックスおよびニトリルを含む)、他の医療用ガーベット、チャート、ベッドレール、コンドーム、結腸直腸管インプラント、男性および女性生殖インプラント、化粧もしくは再建インプラント(例えば乳房、顎、頬、臀部、鼻)、医療デバイスエンベロープおよびポーチ、たとえば、聴診器、ドラム、整形外科インプラント(例えば、関節(膝、股関節、肘、肩、足首)、人工器官、外部固着ピン、髄内ロッドおよびネイル、脊椎インプラント、微生物侵襲および/または活性を受ける可能性のある他の医療および留置デバイス;金属デバイス、たとえば、心臓ペースメーカー、除細動器、電子デバイスリード、アダプター、リード伸長部、インプラント可能な注入デバイス、インプラント可能なパルス発生器、埋め込み可能な生理学的モニタリングデバイス、皮膚の下に埋め込み可能なパルス発生器または埋め込み可能な注入デバイスを配置するためのデバイス、ならびにインプラント可能な注入デバイスを補充するためのデバイス(例えば、詰め替え用針およびポートアクセス用カニューレ)を含む。特定の実施形態において、本発明の抗菌組成物または溶液は、血管カテーテルの内腔表面上の微生物(例えば、真菌の細菌)の増殖を実質的に消毒または減少させるために使用され得る。例えば、抗菌組成物または溶液は、カテーテルを流すためにおよび/またはロッキング溶液として使用することができる。
【0055】
本明細書で使用される「抗菌剤」という用語は、細菌または真菌の微生物などの微生物の増殖または複製を防止もしくは低減する、または微生物を殺すことができる抗生物質または消毒剤などの剤を指す。
【0056】
本発明において使用される「細菌および真菌生物」という用語は、これらに限らないが、すべての球菌、棒状菌(桿菌)およびらせん菌を含む、細菌および真菌のすべての属および種を意味する。細菌の非限定的な例には、ブドウ球菌(例えば、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterrococcus faecalis)、緑膿菌、大腸菌(Escherichia coli)、他のグラム陽性菌およびグラム陰性桿菌が含まれる。真菌生物の非限定的な例としては、カンジダ・アルビカンスおよびカンジダ・クルーセイ(Candida krusei)が挙げられる。
【0057】
II.抗菌組成物
特定の態様において、本開示は、ポリガラクツロン酸およびカプリル酸を含む組成物を供する。その組成物(例えば、水性組成物、軟膏など)は、酸性のpH、例えば、約5未満のpHを有し得る。特定の実施形態において、組成物のpHは、約2~約5である。特定の実施形態では、pHは5未満である。特定の実施形態では、組成物のpHは約4~約4.5である。特定の実施形態では、組成物は、緩衝液、例えば、水性緩衝液中に製剤化される。特定の実施形態では、組成物は生理食塩水中に製剤化される。この水溶液は、等張性の0.9% w / v塩類溶液であってもよい。使用することができる生理食塩水(塩類溶液)の他の非限定的な例は、約0.18%、0.22%、0.45%、0.65%、3%、5%、7%、または約23.4%の生理食塩水の濃度である。特定の実施形態では、水性組成物は、滅菌されている生理食塩水または緩衝液を含む。
【0058】
特定の態様では、改良された抗菌組成物は、創傷軟膏として製剤化され、ポリガラクツロン酸およびカプリル酸を含み、任意に一酸化窒素供与体(例えば、グリセリルトリニトレート)をさらに含む。以下の例に示すように、これらの組成物はインビトロでの抗菌相乗作用を示すことができ、これらの活性成分はヒトに対して毒性が低いことが周知である環境にやさしいグリーン薬剤であると考えられる。以前に、本発明者らは、グリセリルトリニトレート(ニトログリセリン)、および中鎖脂肪酸カプリル酸との組み合わせが、有意なグラム陽性、グラム陰性および真菌バイオフィルムのバイオフィルムを迅速に(2時間以内に)根絶することができることを示した(Rosenblatt et al., 2015)。いずれの理論にも縛られないが、(ニトログリセリンにより供与された)酸化窒素は、血管新生、線維芽細胞マイグレーションおよびコラーゲン沈着を促進することによって創傷治癒を促進し得る(Han et al., 2012)。ニトログリセリンは、創傷治療のために本明細書に列挙した用量よりもかなり高い用量で高血圧を治療するために広く使用され、ニトログリセリンは皮膚を通して(経皮的に)投与され得る。中鎖脂肪酸(カプリル酸を含む)は、南米において創傷を治療するために使用されている(Pieper and Caliri 2003)。それらはスキンクリームおよび完全非経口栄養製剤に含まれる成分であり、FDAによってGRAS(一般に安全と認められる)の状態で承認されている。グリセリルトリニトレート(GTN)は、慢性の感染した胃腸(GI)創傷の治療に使用することができる。GI管の創傷は、上皮病変を容易に汚染し得る微生物叢の高い含量を自然に含むので、治癒するのが複雑である。2011年に、FDAはペトロラタムベースで0.4%GTNを含むRectiv(商標)軟膏(Actavis, Parsippany, NJ)を承認した。臨床試験は、GTN軟膏がより迅速な治癒および痛みの軽減をもたらすことを示した(Karanlik et al., 2009 および Fenton et al., 2006)。第一の副作用は、一過性の用量関連の頭痛であった。以下の例に提示されるニトログリセリン-カプリル酸の組合せ組成物は、GTN用量を、Rectiv(商標)軟膏のそれの1/10未満に減少させ、それゆえ、本明細書において提供されるこれらの低減された用量は、これらの用量関連の副作用を優位に削減し、または除去し得ることが期待される。
【0059】
本明細書および以下の実施例に示されるように、本発明者らは、カプリル酸(CAP)とペクチン酸(PG)との組み合わせが、バイオフィルムの迅速な消滅において高い相乗効果を示し得ることを見出した。ペクチン(pectinic)酸(また、ペクチン(pectic)酸またはポリガラクツロン酸)は、果実ペクチンから天然に得られ、局所クリームおよび他の皮膚用途に広く使用されている。それはFDAによってGRAS [21CFR184.1588, April 1, 2014]として正式に指定されており、創傷治癒に有益な創傷床に酸性pH(4~4.5)を維持するのに役立ち得る。
【0060】
A.部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸
特定の態様において、本開示は、ポリガラクツロン酸(PG)を含む組成物を供する。一般に、エステル化されたポリガラクツロン酸はエステル化カルボン酸基(例えば、アルキル(C1~6)基またはシクロアルキル(C3~6)基でエステル化されている)を有し、脱エステル化ポリガラクツロン酸は、脱プロトン化形態またはプロトン化形態のいずれかのカルボン酸を有する。特定の好ましい実施形態では、抗菌組成物は、そのイオン化形態または脱プロトン化形態の部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸を含む。
【0061】
ポリガラクツロン酸(PG)は、果物および野菜の細胞壁に存在する構造的なバイオポリマー(多糖類)であるペクチンから天然に誘導することができる。天然に誘導されたPGは部分的にエステル化されており(通常はメトキシル化されている)、通常は柑橘類の皮やリンゴの搾りかすから得られ、その主鎖に他の糖分子の微量成分を含み得る(Sriamornsak 2013)。PGのpKは、エステル化の程度によって変化するが、約3.5~4.1の範囲である。pKより上のpHでは、PGは通常、可溶性である。しかしながら、そのpKより低いpHでは、ゲルを形成することができる。天然由来のPGの分子量は、典型的には、50~150KDaである(Sriamornsak 2013)。PGは食品中で広く使用されており、アラントインとの複合体として(Becker et al., 2010)、および創傷治癒製品において(Munarin et al., 2012)、医薬品打錠、コーティング、局所スキンケア製品に使用されている。PGはFDAにより一般的に安全と認められている(GRAS)とみなされている(Adminstration USFaD. Part 184, Section 1588, Pectins. In: Adminstration USFaD, ed. Code of Federal Regulations Title 21; 2015)。
【0062】
特定の実施形態では、ポリガラクツロン酸(例えば、脱エステル化PGAまたは部分エステル化PGA)は、構造:
(式中、R1は、水素、アルキル(C1~6)、置換アルキル(C1~6)、シクロアルキル(C3~6)、または置換シクロアルキル(C3~6)である)
によりさらに定義される。本明細書に記載の組成物中で使用することができるポリガラクツロン酸は、3~1000の反復単位(n)のポリマー長を有し得る。特定の実施形態において、反復単位の数は、10~750、50~750、50~500から、100~500の繰り返し単位である。特定の実施形態では、様々なポリマー長(例えば、3~1000の繰り返し単位の範囲)を有するポリガラクツロン酸の組み合わせを、本明細書に記載の抗菌組成物に含めることができる。様々な実施形態では、ポリガラクツロン酸は、脱エステル化ポリガラクツロン酸の量を増加させて製造するように処理することができる。ポリガラクツロン酸の長さは、約50~約750の繰り返し単位、または約100~約500の繰り返し単位であり得る。特定の実施形態では、組成物は、アルキル(C1~6)または置換アルキル(C1~6)でR1においてエステル化されたポリガラクツロン酸を含み得る。特定の好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、もしくは90パーセント、またはそれを超える、またはそれらから得られるいずれかの範囲の脱エステル化ポリガラクツロン酸の、(脱エステル化ポリガラクツロン酸/エステル化ポリガラクツロン酸)%の比率を含む。特定の実施形態において、R1におけるアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはブチルである。特定の態様では、本開示は、R1位置の特定割合でエステル化されているポリガラクツロン酸を供し、例えば、少なくとも約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90パーセントもしくはそれより高いか、またはこれらのグループの中で誘導可能ないずれかの範囲が、脱エステル化またはプロトン化された形態であり、残りのカルボン酸基がエステル化されている(例えば、メチルエステルとしてエステル化される)。特定の実施形態では、エステル化カルボン酸のパーセンテージは、約0.1%~約75%、0.5%~約50%、約0.5%~約25%、または約1%~約15%である。
【0063】
本明細書で使用される「脱エステル化ポリガラクツロン酸」という用語は、プロトン化または遊離酸の形態のカルボン酸を有するポリガラクツロン酸を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸」または「ポリガラクツロン酸混合物」という用語は、エステル化されたポリガラクツロン酸および脱エステル化されたポリガラクツロン酸の両方の組み合わせを指す。例えば、脱エステル化PGAの量は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%もしくはそれを超える割合、またはそれらから誘導可能な任意の範囲であり得る。
【0065】
特定の態様では、本開示の組成物は、0.5%~10%のポリガラクツロン酸混合物(例えば、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸)を含む。組成物は、ポリガラクツロン酸を0.5%~5%、0.5%~3%、0.5%~2%、または約1%含むことができる。特定の実施形態において、組成物は、約0.25%、0.5%、0.75%、1%、1.25%、1.5%、1.75%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%から、約10%まで、またはその中で誘導可能な任意の範囲である。特定の好ましい態様において、ポリガラクツロン酸(例えば、部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸)は、イオン性または脱プロトン化された状態にある。
【0066】
B.中鎖脂肪酸およびモノグリセリド
以前に、本発明者らは、カプリル酸およびグリセリルトリニトレート(GTN)の抗菌活性を、新規な非抗生物質の抗菌の組み合わせとして観察した(Rosenblatt et al., 2013)。カプリル酸(CAP)は、ヒト母乳中に天然に存在する中鎖脂肪酸である。CAPはいくつかの完全非経口栄養製剤において静脈内で使用されている(Wanten and Calder, 2007およびRayyan et al., 2012)。また、経口投与後に直ちに吸収され、有意な血中濃度を生じる(Haidukewych et al., 1982)。プロトン化されたCAPは、抗菌特性を有することが報告されている(Skrivanova and Marounek, 2007およびYang et al., 2010)。CAPのpKは約4.8と報告されている(CRC, Handbook of Chemistry and Physics. 85 ed. New York、New York: CRC Press; 2004-2005)。
【0067】
特定の態様では、本明細書に記載の組成物は、1つまたは複数の中鎖脂肪酸またはモノグリセリドを含む。特定の実施形態では、脂肪酸は飽和脂肪酸である。中鎖脂肪酸またはモノグリセリドは、C6~C12アルカン酸またはC6~C12アルカン酸のグリセロールエステルである。中鎖脂肪酸のいくつかの非限定的な例としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、またはラウリン酸が挙げられる。特定の実施形態では、組成物はカプリル酸を含む。特定の実施形態では、中鎖脂肪酸(例えば、カプリル酸)は、そのプロトン化形態または遊離酸形態で抗菌組成物中に存在する。
【0068】
特定の態様では、本明細書に記載の組成物は、少なくとも0.1%の中鎖脂肪酸またはモノグリセリドを含む。本開示において使用され得る組成物は、約0.1%~約5%、約0.1%~約1%、または約0.1%~約0.5%の中鎖脂肪酸またはモノグリセリドを含む。特定の実施形態では、中鎖脂肪酸またはモノグリセリドの量は、約0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%から、約0.5%まで、またはそれらに由来する任意の範囲である。使用できる中鎖脂肪酸またはモノグリセリドの量は、約0.1%または0.4%である。
【0069】
特定の態様では、組成物は、中鎖脂肪酸またはモノグリセリドおよびポリガラクツロン酸の両方を含む。特定の実施形態では、組成物中に共に配合される場合の各成分の量は、それぞれ上記の量を含む。非限定的な例において、組成物は、約0.5%~10%、0.5%~5%、0.5%~3%、0.5%~2%、または約1%のポリガラクツロン酸、および約0.1%~約5%、約0.1%~約1%、または約0.1%~約0.5%の中鎖脂肪酸またはモノグリセリドを含む。
【0070】
抗菌組成物のpHは、脂肪酸(例えば、カプリル酸)がプロトン化されるかまたは遊離酸の状態になるように、pH(例えば、約4.8またはそれ未満のpH)で存在してもよく、または調整されてもよい。特定の実施形態では、抗菌組成物のpHは、約3.5~4.8、より好ましくは、約3.7~4.8、もしくは3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、またはそれに由来する任意の範囲である。
【0071】
C.追加の抗菌成分
特定の態様では、本組成物は、追加の抗菌成分、たとえば、一酸化窒素供与体、アルコール、および/または過酸化物をさらに含む。これらの抗菌成分の特定の非限定的な例は、過酸化水素、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、カリウム、過酸化ナトリウム、グリセリルトリニトレート、イソソルビドモノニトレート、ペンタエリスリチルテトラニトレート、S-ニトロソグルタチオン、S-ニトロソ-N-アセチルペニシルアミン、S-ニトロソ-カプトプリル、ニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソ-N-バレリルペニシルアミン、スペルミンNONOate、精油、またはエタノールを含む。
【0072】
抗菌組成物は、約0.01%~10%、約0.1%~10%、約0.1%~約5%、約0.01%~0.1%、約0.01%~約0.05%、約0.1%~約1%、約0.1%~約0.5%、または約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.75%、1%、2%、3%、4%、5%、もしくはそれらから誘導可能ないずれかの範囲の追加の抗菌成分、たとえば、過酸化物および/または一酸化窒素供与体を含む。例えば、ポリガラクツロン酸および脂肪酸を含む抗菌組成物は、約0.1~2%(例えば、0.3%)の過酸化水素、グリセリルトリニトレート(例えば、約0.05~1500、1~1000、または10~500マイクログラム/mLの濃度)、および/またはキレート剤(例えば、クエン酸塩、MeSNA、EDTA、ジスルフィラム;例えば、約0.1~10%、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、もしくは7%(v/v)またはそこで誘導可能な任意の範囲)をさらに含み得る。
【0073】
特定の実施形態では、グリセリルニトレート(例えば、グリセリルトリニトレート、グリセリルジニトレート、グリセリルモノニトレート)は、本発明の抗微生物組成物または溶液中に、約0.05~2000、0.1~2000、0.1~1750、0.1~1500、0.1~1250、0.1~1000、1~1000、10~500、25~500、25~250、50~500、75~150、または約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200マイクログラム/mL、またはその中で誘導可能な任意の範囲の量で存在し得る。特定の実施形態では、例えば11、12.5などの中間濃度が考慮される。例えば、グリセリルニトレートの濃度は、約10、11、12、13、14、15、20、または25マイクログラム/ mlより大きくてもよい。特定の実施形態において、グリセリルニトレートは、約2000、1750、1500マイクログラム/ ml未満の濃度であり得る。特定の実施形態では、抗菌組成物(例えば、カテーテルロッキング溶液、スプレー、クリーム、軟膏、皮膚または創傷への局所適用のための調製物など)に約50~125または約100マイクログラム/ mlのグリセリルニトレートを含めることができる。なぜなら、これらの濃度は臨床的に安全に使用することができるからである。特定の好ましい態様において、グリセリルニトレートはGTNである。
【0074】
グリセリルニトレートは、モノ-、ジ-、またはトリニトレート(例えば、グリセリルモノニトレート、グリセリルジニトレート、またはグリセリルトリニトレート)を含む。グリセリルモノニトレート、グリセリルジニトレート、および/またはグリセリルトリニトレートの混合物は、本発明の様々な実施形態において使用することができる。 GTNは、ニトログリセリン(nitroglycerin)、ニトログリセリン(nitroglycerine)、トリニトログリセリン(trinitroglycerin)、トリニトログリセリン(trinitroglycerine)、1,2,3-トリニトロキシプロパン、およびグリセリルトリニトレートとも呼ばれる。
【0075】
本発明では、様々なキレート剤を使用することができる。例えば、キレート剤は、シトレート、テトラ酢酸、EDTA、チオスルフェート、N-アセチルシステイン、ジスルフィラム、ヒドロキシ酸、ヒドロキサム酸、エチレンジアミンジスクシネート(EDDS)、テトラキス(Tetrakis)ヒドロキシメチルホスホニウムスルフェート(THPF)、またはMesNAであり得る。キレーターはクエン酸塩であってもよい。キレーターは、エチレンジアミンジスクシネート(EDDS)またはテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムスルフェート(THPF)であり得る。特定の実施形態において、キレーターは、α-ヒドロキシ酸のようなヒドロキシ酸である。ヒドロキシ酸は、乳酸、グルコン酸、グリコール酸、ガラクツロン酸、サリチル酸、またはグルカロン酸であってもよい。特定の実施形態では、キレーターはヒドロキサム酸である。ヒドロキサム酸は、ヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、またはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)であり得る。キレート剤は、例えば、EDTA遊離酸、EDTA 2Na、EDTA 3Na、EDTA 4Na、EDTA 2K、EDTA 2Li、EDTA 2NH4、EDTA 3K、Ba(II)-EDTA、Ca(II)-EDTA、Co(II)-EDTA、Cu(II)-EDTA、Dy(III)-EDTA、Eu(III)-EDTA、Fe(III)-EDTA、In(III)-EDTA、La(III)-EDTA、CyDTA、DHEG、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、DTPA-OH、EDDA、EDDP、EDDPO、EDTA-OH、EDTPO、EGTA、HBED、HDTA、HIDA、IDA、メチル-EDTA、NTA、NTP、NTPO、O-Bistren、TTHA、EGTA、DMSA、デフェロキサミン、ジメルカプロール、クエン酸亜鉛、ビスマスとクエン酸の組み合わせ、ペニシラミン、スクシマーまたはエチドロネートであり得る。バリウム、カルシウム、セリウム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、または亜鉛に結合するキレーターを、本発明の様々な実施形態に含めることができることが考慮される。
【0076】
抗菌組成物はアルコールを含んでいてもよい。例えば、抗菌組成物は、(例えば、カテーテルフラッシュまたはロック溶液、軟膏、クリーム、スプレー、溶液等の中に)約1~30%、2.5~25%、5~25%、5~15%、10~15%、5~10%、10~30%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%またはそれに由来する任意の範囲の濃度でC1~4アルコールを含み得る。C1~4アルコールは、エタノール、イソプロパノール、メタノール、またはブタノールであってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、C1~4アルコールはエタノールまたはイソプロパノールである。いくつかの実施形態において、アルコールは、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、またはフェニルエチルアルコールであり得る。いくつかの実施形態では、より高濃度のアルコール(例えば、50%超)を様々な実施形態において用いることができる。例えばデバイスまたは人工器官の表面上、またはアルコールが対象によって合理的に許容され得る場合(例えば、皮膚への適用に用いる場合)である。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、低濃度のアルコールによる刺激はほとんどまたは全くないため、(例えば、カテーテルロックまたはフラッシュ溶液として使用される場合)より低濃度のアルコールが好ましい場合がある。
【0077】
特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物は、抗生物質を含まない。例えば、抗生物質耐性は、臨床状況において問題として浮かび上がっており、特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物から抗生物質を排除することが有益であり得る。それにもかかわらず、特定の実施形態では、本発明の抗菌組成物に1種または複数の抗生物質を含めることが望ましい場合がある。様々な抗生物質を本発明と共に使用することができる。特定の実施形態では、抗生物質はトリメトプリムおよび/またはミノサイクリンである。例えば、1つまたは複数の抗菌剤を本発明の抗菌組成物に含めることができる。たとえば、アミノグリコシド、ベータラクタム、キノロンまたはフルオロキノロン、マクロライド、スルホンアミド、スルファメタキサゾール、テトラサイクリン、ストレプトグラミン、オキサゾリジノン(例えば、リネゾリド)、クリンダマイシン、リンコマイシン、リファマイシン、グリコペプチド、ポリムキシン(polymxin)、リポペプチド抗生物質、ならびに薬理学的に許容可能なナトリウム塩、薬理学的に許容可能なカルシウム塩、薬理学的に許容可能なカリウム塩、脂質製剤、これらの誘導体および/または類似体である。抗生物質は、抗生物質のペニシリン群のメンバー、たとえば、アモキシシリン、アンピシリン、ベンザチンペニシリンG、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ピペラシリンまたはチカルシリンなどであってもよい。セファロスポリンの例には、セフチオフル、セフチオフルナトリウム、セファゾリン、セファクロル、セフチブテン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフロキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフォタキシム、セファドロキシル、セファレキシン、セファマンドール、セフェピム、セフジニル、セフリアキソン、セフィキシム、セフポドキシムプロセチル、セファピリン、セフォキシチン、セフォテタン等を含む。ベータラクタマーゼ阻害剤の例には、クラブラネート、スルバクタム、またはタゾバクタムが含まれる。抗生物質は、マクロライド、例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、またはクラリスロマイシンであってもよい。キノロンおよびフルオロキノロンの例には、ナリジクス酸、シノキサシン、トロバフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、グレパフロキサシン、トロバフロキサシン、スパルフロキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシンおよびガチフロキサシンが含まれる。使用可能なスルホンアミドの例には、マフェニド、スルフェソキサゾール、スルファメトキサゾールおよびスルファジアジンが含まれる。ストレプトグラミンクラスの抗菌剤は、キヌプリスチン、ダルホプリスチンまたは2種のストレプトグラミンの組み合わせによって例示される。リファマイシンクラスの薬物は、典型的には、DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、RNA合成の抑制をもたらし、緑膿菌およびマイコバクテリウム種を含むほとんどのグラム陽性およびグラム陰性菌に対して極めて広いスペクトルの活性を有する。典型的なリファマイシンはリファンピシンである。他の抗菌薬は、バンコマイシン、テイコプラニンおよびその誘導体などの糖ペプチドである。さらに他の抗菌薬は、コリスチンによって例示されるポリミキシンである。これらに加えて、いくつかの他の抗菌剤、たとえば、プレスチノマイシン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、フシジン酸、メトロニダゾール、バシトラシン、スペクチノマイシン、ニトロフランチオン、ダプトマイシンまたは他のレプトペプチド、オリタバンシン、ダルババンシン、ラムプラミン、ケトライドなどを、本明細書に記載される組成物を調製するのに用いることができる。
【0078】
いずれかの追加の薬理学的に活性な成分または滅菌剤が、本発明の抗菌組成物に含まれてもよく、または病原性微生物およびウイルスをさらに低減または排除するために本発明の抗菌組成物と組み合わせて使用されてもよいことが考慮される。典型的な薬理学的活性成分には、抗繊維素剤、抗血栓剤、および抗炎症剤が含まれる。抗炎症剤には、ステロイド、および非ステロイド性抗炎症剤、およびサリチル酸塩が含まれる。抗血栓薬には、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、ヘパリン、イブプロフェン、インドメタシン、プロスタグランジン、スルフィンピラゾン、ワルファリン、血栓溶解酵素、たとえば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼまたはプラスミノーゲンアクチベーターが含まれる。アンモニウム-1-ピロリジンジチオカルバメートのような錯化剤を使用することもできる。しかしながら、上記の例は限定を意味するものではない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗微生物組成物は、1つまたは複数の追加の抗凝固剤および/または抗炎症剤を含み得る。
【0079】
本明細書に記載される本発明の抗菌組成物(例えば、抗菌溶液、軟膏、クリーム、スプレー、溶液、カテーテルロックまたはフラッシュ溶液)は、薬学的に許容可能な担体に溶解または分散された追加の剤を含み得る。「薬学的または薬理学的に許容可能」という表現は、動物、例えば、ヒトに適切に投与された場合に、不都合な、アレルギー性のまたは他の有害な反応を生じない分子実体および組成物を指す。本明細書に記載の抗菌組成物は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams and Wilkins, 2005に例示されるようなさらなる有効成分を含み得る。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物は、典型的には、FDA Office of Biological Standardsによって要求されるように、無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0080】
III.医療デバイスの洗浄または消毒
(例えば、カテーテルロック溶液またはカテーテルフラッシュ溶液としての)カテーテルでの使用に加えて、本発明の抗菌組成物または溶液は、医療デバイスに適用されるか、または医療デバイスとともに使用され得る。特定の実施形態において、抗菌組成物は、例えば、フォーリーカテーテル、レーマンフォーリーカテーテル、またはダブルバルーンカテーテルとともにカテーテルロック溶液として使用される。
【0081】
医療デバイスは、例えば、気管内チューブ、腎瘻チューブ、栄養(補給)チューブ、胃チューブ、鼻腔チューブ、胆管ステント、整形外科用デバイス、バルブ(弁)、人工弁、排液チューブ、ドレイン、シャント、ステープル、クリップ、メッシュ、フィルム、血液交換デバイス、ポート、心臓血管デバイス、除細動器、ペースメーカーリード、ワイヤコーティング、眼内インプラント、聴覚インプラント、人工内耳、人工歯根、刺激装置、薬剤デリバリーデポ、フィルター、膜、血管アクセスポート、ステント、エンベロープ、バッグ、スリーブ、静脈内または他の管組織、バッグ、ドレッシング(包帯)、パッチ、繊維、ピン、血管移植片、縫合糸、心血管縫合糸、または移植可能なプロテーゼであり得る。特定の実施形態では、医療デバイスは、カテーテル、例えば、血管カテーテル、尿道カテーテル、頭蓋内カテーテル、髄腔内カテーテル、腹膜カテーテル、中枢神経系カテーテル、心臓血管カテーテル、排液カテーテル、浸漬カテーテル、吸引カテーテル、くも膜下腔カテーテル、神経カテーテル、膣カテーテルまたはチューブ、子宮カテーテルまたはチューブ、刺激カテーテル、または硬膜外カテーテルである。カテーテルは、血管カテーテル、例えば、中心静脈カテーテル、動脈ライン、肺動脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、静脈内カテーテル、または動脈内カテーテルであってもよい。
【0082】
本発明の方法に従う治療に適した医療デバイスは、一般に、非金属材料、たとえば、ゴム、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、ニトリル、および他のポリマーおよびエラストマー材料(例えば、コラーゲン、ゼラチン、架橋コラーゲン、架橋ゼラチン、ヒアルロン酸塩、キトサム、アルギン酸塩、同種移植片、異種移植片、自家移植片)、ならびに金属、たとえば、チタン、および金属合金、たとえば、ステンレススチールおよびニチノールを含む。当業者であれば、本明細書に記載された非金属、金属および金属合金のリストは例示的なものに過ぎず、排他的なものではないことを理解するであろう。本明細書に記載されているような治療が適用できる他の物質も本発明の範囲内である。
【0083】
一部の実施形態では、医療デバイスを洗浄またはすすぐために抗菌組成物が使用される。それにもかかわらず、特定の実施形態では、抗菌組成物との接触後に医療デバイスを洗浄することができる。
【0084】
抗菌剤と本明細書に具体的に列挙されていない医療デバイスとの接触に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第5,217,493号、第5,624,704号、第5,902,283号、および第7,651,661号ならびに米国特許出願公報2005/0197634号、2003/0078242号、2007/0154621号、2008/0183152号、2010/0055086号、2011/0201692号および2012/0064372号に記載されている。これらは、それら全てが引用により組み込まれる。
【0085】
図5を参照すると、本明細書に開示される抗菌組成物と共に使用することができる排液デバイスの例示的な実施形態が示されている。この例において、排液デバイスはカテーテル100として構成されている。特定の実施形態では、カテーテル100は、第1の端部101(例えば、尿収集容器に近い近位端)および第2の端部102(例えば、膀胱に伸びる遠位端)を含む尿カテーテルとして構成することができる。カテーテル100は、近位端101と遠位端102との間に延在し、流体が膀胱(または体内の他の位置)から収集容器に排出されることを可能にする中央内腔部105を含む。
【0086】
示される実施形態において、カテーテル100は近位リザーバ110および遠位リザーバ120を含む。特定の実施形態では、近位リザーバ110は灌注カフであってもよく、遠位リザーバ120は保持カフであってもよい。第1導管111および入口ポート112は、近位リザーバ110と流体連通し、第2導管121および入口ポート122は、遠位リザーバ120と流体連通する。この実施形態では、入口ポート112および122は、ユーザが第1および第2導管111および121を通して(液体またはガス、たとえば空気を含む)流体を導くことができるように、第1の端部101の近位に位置する。特定の実施形態では、入口ポート112および122は、それぞれ、流れを制御するように開閉可能な弁を備えることができる。
【0087】
例えば、ユーザは、カテーテル100の挿入中または挿入後に、灌注流体容器113(例えば、シリンジ)を入口ポート112に接続し、入口ポート112を開くことができる。灌注流体は、導管111を通って、第2の端部102に向かって、カテーテル100の近位リザーバ110に誘導させることができる。近位リザーバ110は、近位リザーバ110から灌注流体を分配するように構成された出口ポート115(例えば、孔またはスリットなどのリザーバの開口部)を備える。
【0088】
カテーテル100が所望の深さに挿入されると、ユーザは、圧力源123(例えば、シリンジまたは他の適切なデバイス)を入口ポート122に結合することができ、その後、これを開いて導管121を介して遠位リザーバ120を膨張させることができる。特定の実施形態では、入口ポート122は、遠位リザーバ120の膨張を制御するために開閉可能な弁を備えることができる。膨張されると、遠位リザーバ120は、カテーテル100の第2の端部102を膀胱内に保持することができる。
【0089】
例示的な実施形態では、導管121を通って導かれる灌注流体は、本明細書に開示されるような抗菌組成物を含み得る。特定の実施形態では、灌注流体は、組織またはカテーテル100の表面を消毒するために適用することができる部分的にエステル化されたポリガラクツロン酸および脂肪酸を含む低毒性の相乗的抗菌組成物を含むことができる。特定の実施形態において、灌注流体は、カテーテル100の外面を尿道147と接触させて灌注するように、その場で断続的に適用することができよう。
【0090】
他の実施形態では、例えば、外科用ドレインを含む排液デバイス、腎瘻チューブなどの排液カテーテル、シャント、および尿道カテーテルなどのカテーテルを含む、異なる種類のデバイスを灌注流体と共に使用することができる。例示的な排液デバイスは、体内の空洞、器官または組織から体外の採取容器へ流体を導くことができる少なくとも1つの内腔を備える。収集容器は、バッグまたは容器、吸収性媒体、または身体の別の部分に戻すことができる。
【0091】
一般に、中央内腔部105を通る排液は受動的に(圧力または吸引を加えずに)起こるが、能動的な排液は圧力、圧迫または他の力を加えることによって、または吸引によって行うことができる。カテーテル100は、1つまたは複数の内腔を有することに加えて、外側表面140を有する(中央内腔部105の周囲に配置された)少なくとも1つの壁145も有する。外側表面140は、中央内腔部105を通して排液流体に直接接触しないであろう。
【0092】
しかしながら、外側表面140は、典型的には、バッグ、リザーバ、または吸収性媒体に接続する身体の外側へ皮膚を通り抜けるまで、組織または導管と接触している。外側表面140は、それが通過する組織に対してこすれた場合に刺激を引き起こし得る。外側表面140は、病原性微生物によってコロニー形成されることもあり、したがって、感染源となり得る。従って、出口ポート115を介して外側表面140を薬用、潤滑性または接着性流体で灌注する能力は有益であり得る。特定の場合には、薬用流体は消毒することができ、さらに(例えば狭窄症を治療するため)鎮痛剤、抗線維化剤もしくは粘液溶解剤、またはコラーゲン分解剤などの他の薬剤を含むことができ、特定の場合には、薬用流体は、任意に、悪臭を隠すために1つまたは複数の香料を含み得る。特に興味深いのは、本明細書に開示される抗菌組成物である。
【0093】
カテーテル100が尿道カテーテルである場合、外側表面140は尿道147の表面組織に接触する。次に、灌注流体は外側表面140と尿道147との間に存在する。潤滑流体は尿道の機械的な外傷を軽減するのに役立ち、抗菌性流体は、微生物が尿道カテーテルの外面を膀胱内およびそれを超えてコロニー形成するのを防ぐことができる。
【0094】
尿道は、圧力が加えられたときに膨張可能であるが、典型的には、つぶれた休止状態にある。排尿カテーテルが挿入されると、尿道は通常、カテーテルの外面の周りでつぶれる。尿道を灌注するために、尿道-膀胱149接合部から道管148に向けて方向付けられた圧力勾配が好ましい。次に、灌注流体は、それが道管148で出て行くまで、尿道147とカテーテル105の外部表面140との間に圧力勾配を流れる。一方、排尿機能は、中央内腔部105によって行われ、その中央内腔部105は、膀胱から体の外側への導管を提供する。
【0095】
図5に示す実施形態において、遠位リザーバ120は、挿入後にカテーテル100を排液入口箇所近くに固定するために保持カフまたはバルーンとして構成することができる。排液入口箇所の近くの身体の中にある他の固定手段も可能であり、クリップ、スプリング、ストリング、バンド、プロング、ステープル、糊、接着剤などを含む。排液カテーテルは、出口部位においても固定することができる。ただし、排液入口箇所においても固定されないなら、排液カテーテルの先端が移動する危険が存在する。本明細書に記載の外面灌注デバイスは、任意の適切な固定手段とともに動作させることができる。
【0096】
特定の実施形態では、カテーテル105は、遠位リザーバ120が固定バルーンとして構成されているフォーリーカテーテルと同様に構成することができる。この構成では、固定バルーンは先端の下にあり、中央内腔部105が影響を受けないように膨張させることができる。膨張したバルーンの表面は外側表面140から外側に延びることができる。特定の実施形態において、内腔121は、カテーテル105の壁145内に埋め込むことができる。カテーテル105は、収縮した状態で挿入することができ、遠位端102が膀胱内に挿入されているときにのみ膨張される。遠位リザーバ120の直径は、尿道膀胱接合部149における膨張した遠位リザーバ120(例えば、カフ)の物理的なエントラップメントによって遠位端102が膀胱内に維持されるように、尿道膀胱接合部の直径よりも大きい。特定の実施形態において、カテーテル100は、先端から膀胱壁までの外傷を軽減するために、膀胱の先端に追加のバルーンまたはカフを有することができる。
【0097】
カテーテル105の特定の実施形態では、近位リザーバ110は、尿道膀胱接合部149の真下のバルーンとして構成される。一実施形態では、バルーンはエラストマー材料から構成される。シリコーン、ラテックス、ニトリル、ウレタンまたはフルオロエラストマーは、近位リザーバ110を作製することができる材料の例である。特定の実施形態では、近位基部の出口ポート115(例えば、ホールまたはスリット)は、尿道口に向かってシャフトを下げる。
【0098】
出口ポート115は、灌注流体をカテーテル105の外側表面140の周りに均一に分配するように、近位リザーバ110の基部に円周方向に配置することができる。前述のように、灌注流体は、流体を陽圧下でポンプすることができる灌注流体容器113(例えば、シリンジ)を用いて、入口ポート112を通して近位リザーバ110に注射することができる。近位リザーバ110を加圧流体で膨張させると、一時的に膨張する。特定の実施形態では、逆流を防止する入口ポート112と灌注流体容器113との間に一方向弁が存在する。拡張された近位リザーバ(例えば、灌注カフ)は、カフの基部の出口ポート115を通って強制的に流体を押す。経時的に、灌注流体が尿道147を介して尿道口148の方に押し出されるので、圧力は緩和される。
【0099】
例示的な実施形態では、第1のリザーバ110(例えば、灌注カフ)は、出口ポート115がカテーテル壁145を外側表面140に出るところの上下のカテーテル100のシャフトに成形して結合することができる。特定の実施形態において、ホールまたはスリットは、シャフトに接着する前に予め形成することができ、またはカフを流体で膨らませ、温度を変えて流体を凍結または固体にゲル化し、固化した膨張流体で孔を穿孔し、次に膨張している流体が液化してシステムから出るまで加温することによって、形成することができる。このような膨張流体の例は、ゼラチン溶液であり、流体を摂氏40度超の温度で注入して灌注カフを膨張させ、摂氏4度に冷凍して流体が凝固し、固化した状態の灌水カフの基部に孔を突き刺し、アセンブリを40℃近くまで再加熱し、ゼラチン溶液を排出し、洗い流す。
【0100】
灌注カフおよび/または出口ポートは、圧力下で灌注溶液の噴霧または指向性排出を容易にするノズルまたは指向性要素を取り付けることができる。灌注カフには、尿道と排液カテーテルの外壁との間の空間に灌流流体を遅延または脈動的に排出するために遠隔操作することができる小型弁が取り付けられていてもよい。プログラムされた断続的または連続的な尿道灌流を提供するために、灌流の膨張弁にポンプを接続することができる。
【0101】
使い捨ての吸収性要素を、カテーテル100の外側表面140に沿って尿道口で排出される灌注流体を収集するために尿道口148に固定することができる。吸収性要素の例は、スポンジ、超吸収性親水性ポリマー、フリース、ファブリック、またはガーゼである。ガーゼのリボンは、尿道口148の近位にある外部カテーテル表面の周りに結び付けられ、尿道口148に接触するよう滑動させることができる。ガーゼは、尿道口においてカテーテルの外部表面の周りにそれを固定するために使用することができる接着性バッキングまたは接着性タブも有し得る。接着性バッキングまたはタブは、除去のために引き裂きを容易にするプレカット穿孔を有し得る。同様に、吸収性スポンジ(天然、ウレタンまたはポリビニルアルコール系スポンジなど)は、接着性タブまたはバッキングを用いて、またはカテーテル100の外側表面140の周りに圧縮嵌合を形成することができる環状の形状に予備成形することによって、外側表面140の周囲に固定することができる。吸収性要素は、超吸収性ポリマーから製造されたストリップまたはフィルムであってもよく、または顆粒形態であってもよい。単一ピースの環状吸収性要素は、それらをカテーテルの外面上に滑動させるスリットを含むことができる。
【0102】
特定の実施形態では、ファブリック、フィルムまたはスポンジのいずれかを、一緒にまたカテーテル100に保持することができる磁石を使用して固定することもできる。カテーテルは、例えば、吸収性要素の固定または接着を補助することができる、尿道口148に磁気バンドを有することができ、または、2つの半ドーナツ形状の要素はカテーテルシャフトの周りに磁気的に固定することができる。ベルクロまたはクリップを使用して、吸収性要素を固定することもできる。ベルクロのタブまたはクリップは、吸収性要素に組み込むことができ、または吸収要素の周りに巻き付け、次いで圧縮して固定することができる。固定は、「ケーブルタイ」型コネクタ、ハープン/レシーバおよび類似のクランプ、ラッチおよびレシーバを備えたプロング、フックコード、ランヤード、ファスナー、ツイストロック、タイおよびタイダウンの単方向ラチェット動作によっても達成することができる。固定クリップまたはタイは、除去のために所望されるときに容易に分解されるように事前にスコアリングすることができる。
【0103】
特定の実施形態では、エラストマーまたは堅いカップ形状の凹型コレクタも、カップ収集空間内に含まれる吸収性材料でカテーテル100の外側表面140の周囲に固定することができる。吸収性要素はまた、特定の解剖学的構造に有用であり得る外側に面する凸状突出部を有することができる。使い捨ての吸収性要素は、シングルユースの使い捨てのカテーテル外面ケアおよびメンテナンスキットの注射器のような灌注容器と一緒にパッケージングし、販売することができる。灌注は、必要に応じて頻度を変えて、毎日、または毎日複数回行うことができる。
【0104】
1つのタイプの灌注流体は、本明細書に記載のカプリル酸およびポリガラクツロン酸の抗菌性化合物を含有する。それはまた、過酸化水素または一酸化窒素供与体(ニトロプルシドまたはニトログリセリン等)のようなエンハンサーを含み得る。灌注流体はまた、増粘剤のような粘度調整化合物を含有してもよい。灌注流体は、尿道組織を保護する成分を含むことができる。1つの組み合わせは、カルボキシメチルセルロースおよびプロピレングリコールである。灌注流体は、水性系、脂質系、ポリマー系、または無機系のいずれかであり得る。潅注流体は、拡張カテーテル法において形成され得る狭窄を緩和するために、MeSNA、N-アセチルシステイン、またはコラーゲン分解剤を送達することもできる。同様に、破れた尿道のための凝固剤、およびアスピリンまたはリドカインのような痛みを緩和する剤を灌注流体に含めることができる。
【0105】
IV.抗菌剤および微生物
本発明の抗菌組成物は、様々な微生物の殺滅、破壊、またはその増殖を減少させるために使用され得る。本発明の組成物および方法によって低減または根絶され得る特定の非限定的な例示的な細菌および真菌微生物には、ブドウ球菌属の種(例えば、表皮ブドウ球菌)、黄色ブドウ球菌、アスペルギルス属の種(アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)など)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、およびカンジダ属の種(カンジダ・クルーセイ、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・アルビカンスおよびカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)など)が挙げられる。
【実施例0106】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように発明者によって発見された技術を表し、したがってその実施のための好ましい態様を構成すると考えることができることが当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態において多くの変更がなされ得、なお同様のまたは類似の結果が得られることを認識すべきである。
【0107】
実施例1
バイオフィルムの根絶のための相乗的カプリル酸およびポリガラクツロン酸の組合せ
生体適合性の非抗生物質の抗菌組成物を用いた病原性バイオフィルムの広範な根絶のために、汚染された真皮および上皮環境が必要とされる。この実施例では、本発明者らは、耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌のバイオフィルムに対するカプリル酸およびポリガラクツロン酸の相乗的組み合わせを用いて、インビトロモデルにおいて迅速かつ完全なバイオフィルム根絶を観察した。
【0108】
この実施例において、本発明者らは、医学用途における潜在的な使用のための医療用ポリガラクツロン酸およびカプリル酸(PG + CAP)の使用によるバイオフィルム根絶を研究した。PG + CAPのインビトロでの抗菌効力は、異なる持続時間の抗菌剤曝露の後にバイオフィルムの根絶をテストする、十分に確立されたバイオフィルムコロニー形成モデルで評価した。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(PS)、およびカンジダ・アルビカンス(CA)の臨床分離株について、代表的な重要なグラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌の感染性病原体として、バイオフィルム根絶を評価した。簡単に述べると、1cmのシリコーンディスクを1mLのヒト血漿に入れ、37℃で一晩インキュベートした。血漿を攻撃菌(challenge organism)の接種材料5.5x105 CFU / mLの1mLで置き換え、37℃で24時間インキュベートした。その後、接種材料を除去し、ディスクを洗浄して、0.9%滅菌生理食塩水中で30分間、振盪することによって浮遊生物を除去した。洗浄後、ディスクを試験溶液1mLに37℃で15、30、60または120分間曝露した。次いで、ディスクを取り出し、0.9%滅菌生理食塩水5mLに入れ、残りのバイオフィルムを破壊するために15分間超音波処理した。次に、得られた溶液を培養し、トリプチケースソイ5%ヒツジ血液寒天培地(細菌)またはサブローデキストロース寒天培地(酵母)上にプレーティングした。このアッセイの定量の上限は100コロニーであり、100コロニーを超える任意のプレートは「> 100」であると考えられ、これは希釈係数を組み込むものであり、最終コロニー数で5000と表される。
【0109】
1%PG(Sigma-Aldrich St Louis、MO。<15%エステル化)+ 0.1%または0.4%CAP(Sigma-Aldrich、St Louis、MO)を含有する抗菌溶液を調製した。pHを4.0~4.5に調整した。ミューラーヒントンブロス(Muller Hinton Broth)、1%PG、0.1%CAPおよび0.4%CAPを対照溶液として含めた。全ての溶液のpHを4.0~4.5に調整した(ミューラーヒントンブロス対照を除く)。バイオフィルムを完全に根絶するには、処理後に生存可能なコロニーの回復がないことが必要である。対照より少ない生存生物の回復は、バイオフィルムの部分的な根絶を示す。各消毒溶液の各生物についての各時点を3回試験した。結果を図1A~Cに示す。完全なバイオフィルム根絶は、試験溶液への特定の期間の曝露後に生存コロニーが回収されないことを要求する。
【0110】
図1A~Cに見られるように、プロトン化されたCAPは弱い抗菌活性が報告されており(Skrivanova and Marounek, 2007 and Yang et al., 2010)、またPGも弱い抗菌活性が報告されている(Thakur et al., 1997)。この研究では、CAおよびPSに対する1%PG + 0.1%CAP溶液、ならびにMRSA、PSおよびCAに対する1%PG + 0.4%CAP溶液について、バイオフィルム根絶の時間の相乗的減少が見られる。0.1%CAPの組み合わせとの相乗作用に関する1つの仮説は、PGが重要な金属イオンおよびペプチドなどの陽イオン分子に結合し、CAPが細胞膜を破壊するということである。CAP(0.1%)のこの濃度は、報告された水溶性の限界に近い。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、0.4%CAPで見られる相乗効果の向上は、部分的には、PG + CAPの組合せにおけるCAPの見掛けの溶解度の向上によるものであると考えられる。0.4%濃度で、CAP単独(PGなし)は、相分離または不混和性の目に見える兆候を示した。いずれの理論にも縛られることを意図しないが、ポリガラクツロン酸の部分的エステル化は、重要なカチオンを同時に結合しながらCAPの見掛けの溶解度を高めるという2つの効果のバランスをとるために重要であるかまたは必要であると本発明者らは予想する。
【0111】
バイオフィルムを根絶する1%PG + 0.1%CAPの有効性は、1時間の曝露でMRSAについて1%PG単独(p = 0.0034)および0.1%CAP単独(p = 0.0034)の両方と比較して、統計的に有意であった。バイオフィルムを根絶する1%PG + 0.4%CAPの有効性は、MRSA(1時間)、PS(30分)、およびCA(1時間)では、1%PG単独(それぞれp = 0.0021、p = 0.0078、p < 0.001)および0.4%のCAP単独(それぞれp = 0.0462、p = 0.0109およびp = 0.0297)と比較して、統計的に有意であった。
【0112】
CAPは天然に存在する脂肪酸であり;脱プロトン化状態(中性pH)において、カプリレートイオンは、哺乳動物において栄養素として十分に確立された代謝プロファイルを有する(Hirabara et al., 2006)。CAPの脱プロトン化は、4.8を超えるまでpHを上げることによって達成することができる(CRC, Handbook of Chemistry and Physics. 85ed, New York: CRC Press; 2004-2005)。したがって、ほとんどの生理学的環境において、CAPは、いったん局所的なpHが上昇すると、急速に脱プロトン化して良性栄養素になる。医薬製剤において、抗菌性プロトン化CAP状態は、4.8未満のpHで維持することができる。このpHは、ヒトに見られる自然の皮膚pHの範囲内にある(Lambers et al., 2006)。膣管(Lang 1955)および消化管(Evans et al., 1988)のようなさらなる上皮環境は酸性pHを維持する。カプリル酸は創傷治癒を助けると報告されている(Srivastava and Durgaprasad, 2008およびPieper and Caliri, 2003)。PGは、湿潤な酸性環境を維持し、細菌バリアを提供する利益があると報告されている親水コロイド創傷ドレッシングに広く使用されており、いくつかの商業的創傷治癒シートおよびペースト製品(Munarin et al。、2012)内にある。
【0113】
次に、PG + CAP組み合わせについて、PG、CAPおよびPG + CAP溶液についてのバイオフィルム根絶の定量評価を用いて試験した。PGの潜在的な抗菌活性を評価するために、最小阻害濃度(MIC)アッセイを行った。MICは、CSLI M07ガイドライン((CLSI)CaLSI M07-A10 - Methods for Dilution Antimicrobial Suseptibilty Tested for Bacteria that Grow Aerobically; Approved Standard - Tenth Edition. Volume 35. Wayne, PA2015)に従って、マイクロブロス希釈によって決定した。MRSA、緑膿菌およびカンジダ・アルビカンスをPGの希釈液(0%、0.25%、0.5%、0.75%および1%)に曝露した。増殖のための視覚的スコアリングによってMICを決定した。濁りが観察されない最低濃度の薬物を含むウェルは、試験した生物のMICと一致した。
【0114】
MRSAについては、0.5%を超えるPG濃度で阻害が起こった。緑膿菌については、0.75%を超えるPG濃度で阻害が生じ、カンジダ・アルビカンスの増殖については、PG濃度が1%以下では阻害されなかった。
【0115】
PG、CAPおよびPG + CAP溶液のインビトロの抗菌評価は、改良されたKuhn'sモデルである、確立された殺菌時間バイオフィルム根絶モデル(time-to-kill biofilm eradication model)(Kuhnら、2002)を用いて行った。簡潔には、直径1cmのシリコーンディスクを24ウェル組織培養プレートに入れ、ドナーヒト血漿と共に37℃で24時間、インキュベートした。次いで、血漿を除去し、5.5x105 CFUの細菌(MRSA、緑膿菌)または酵母(カンジダ・アルビカンス)接種物1mLで置き換え、37℃でさらに24時間インキュベートした。接種物を除去し、浮遊生物を除去するために、ディスクを0.9%滅菌生理食塩水中で100rpmで30分間、振盪洗浄した。洗浄後、ディスクを様々な消毒液1mLに曝露し、37℃で30分または60分間インキュベートした。生理食塩水フラッシュ溶液を陰性対照として使用した。続いて、ディスクを取り出し、0.9%滅菌生理食塩水5mLに入れ、残りのバイオフィルムを破壊するために15分間、超音波処理した(60Hzおよび150W)。得られた溶液を、100μLをMuller-Hinton(細菌用)またはSabouraud dextrose(酵母用)寒天上にプレーティングすることによって、定量的に培養した。1%PG(Sigma-Aldrich St Louis, MO.<15%エステル化)+ 0.1%または0.4%のいずれかのCAP(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を含有する抗菌溶液を調製した。pHを4.0~4.5に調整した。ミューラーヒントンブロス、1%PG、0.1%CAPおよび0.4%CAPを対照溶液として含めた。全ての溶液のpHを4.0~4.5に調整した(ミューラーヒントンブロス対照を除く)。バイオフィルムを完全に根絶するには、処理後に生存可能なコロニーが回復しないことが必要である。対照より少ない生存生物の回復は、バイオフィルムの部分的な根絶を示す。すべてのバイオフィルム根絶実験を6回反復して行い、結果を図2A~Cに示す。
【0116】
図2A~Cに示すように、1%PG + 0.4%CAPは、MRSAバイオフィルムを60分で完全に消滅させることができ、緑膿菌バイオフィルムを30分で、カンジダ・アルビカンスバイオフィルムを60分で完全に消滅させた。他の溶液のどれも、これらの時間枠でバイオフィルムを完全に根絶することはできなかった。
【0117】
統計学的分析:Kruskal-Wallis試験を用いて、試験したロック溶液のいずれかにおいて中央値に有意差があるか否かを判定した。一対比較は、指定された時点でのPG + CAPおよびCAPロック溶液のcm性能に対するMann-Whitney U検定を用いて評価した。全ての試験はαレベル0.5の両側であった。0.05未満のP値(p <0.05)を統計的有意性を決定するために利用した。
【0118】
(表1)統計的結果
【0119】
MRSAの60分で、1%PG + 0.4%CAP処置サンプルについての生存細胞の減少は対照および1%PGと比較して有意であった。0.4%CAPは、この曝露でバイオフィルム中の生存可能なMRSA生物を減少させることができたが完全には根絶しなかった。緑膿菌の30分で、1%PG + 0.4%CAP処理サンプルの生存細胞の減少は、対照、1%PGおよび0.4%CAPと比較して有意であり、緑膿菌バイオフィルムを根絶する上で相乗効果を実証する。カンジダ・アルビカンスの60分で、1%PG + 0.4%CAP処理サンプルの生存細胞の減少は、対照、1%PG、および0.4%CAPと比較して有意であり、カンジダ・アルビカンスバイオフィルムの根絶において相乗効果を実証する。
【0120】
結論において、本発明者らは、PG-CAPの組み合わせがグラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌バイオフィルムを1時間以内に迅速に根絶することができることを観察した。この相乗的で非抗生物質である抗菌性の組み合わせは、汚染された創傷などの医療用途において病原性バイオフィルムを治療および/または根絶するために使用することができる。
【0121】
実施例2
慢性創傷治療のための非抗生物質の創傷軟膏
ニトログリセリン、カプリル酸、およびペクチン酸を含む剤の組み合わせからなる軟膏を、ヒト患者の皮膚に局所的に適用することができ、臨床試験に関する詳細を以下に示す。個々の成分の既知の特性に基づいて、ニトログリセリン、カプリル酸およびペクチン酸の組み合わせの使用は、臨床的に皮膚への局所適用に使用される場合に安全であろうことが予想される。さらに、上記の実施例に示すように、インビトロ試験は、この混合物が、バイオフィルムに包埋された耐性グラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌病原体を迅速に根絶するのに相乗的、かつ極めて有効であることを示している。
【0122】
ニトログリセリン、カプリル酸、およびペクチン酸を含有する創傷軟膏は、静脈、動脈、糖尿病および褥瘡を含む慢性創傷の局所治療に使用することができる。この抗菌性創傷軟膏は、細菌の死滅および慢性創傷の血流増加に効果があり、重要な要素を標的とし、慢性創傷を有する患者の管理において効果的かつ長く持続する結果を達成することができる。オープンラベルのランダム化試験が実施される。以下の静脈、動脈、糖尿病、および褥瘡のいずれかを含む慢性創傷を有する患者は、2つの等しいグループに無作為化される:グループ1は抗菌創傷軟膏を受容し、グループ2は商業的に入手可能なMEDIHONEY(商標)軟膏を比較として受容する。これらのグループは、創傷閉鎖の程度、微生物の負荷、疼痛および治療関連の有害事象について治療の12週間の間に比較される。この臨床研究は、がん患者の慢性創傷の管理のための後の将来的な大規模な多施設臨床試験を支持するために使用することができる予備的な確固としたなデータを生成する。
【0123】
微生物に汚染された創傷の治癒における臨床的有用性をさらに評価するために、我々はパイロット臨床試験において以下の具体的な目的を達成することを提案する:
(1)創傷床における微生物負荷の減少、蜂蜜を含む標準治療の創傷処置に対する新規の抗菌性創傷軟膏の使用での6週間および12週間での疼痛の軽減および創傷閉鎖の改善(創傷領域中の> 50%の減少など)を臨床的に実証すること。
(2)新規の抗菌性創傷軟膏が、標準治療の軟膏と比較して創傷に対して良好な耐容性および安全性を有することを臨床的に実証すること。
【0124】
傷害または疾患の結果として獲得された創傷の微生物汚染は、治癒を遅らせる(SiddiquiおよびBernstein, 2010およびRobson 1997)。感染した創傷の治癒を複雑にする追加の要因には、全身投与された剤の感染部位への送達を制限する血管の破壊、および慢性的に感染した創傷における細菌のバイオフィルムの発達が含まれる。バイオフィルムは、宿主免疫細胞、抗体および抗生物質から微生物を保護し、また抗菌治療に対する耐性を促進する、三次元構造およびエキソポリサッカライドマトリックスからなる微生物の必須の防御機構である。バイオフィルム関連の感染を排除するためには、バイオフィルムの保護構造に、犯人である生物を根絶することができる抗菌剤を浸透させることが必要である。
【0125】
蜂蜜は、慢性的な創傷の治癒を助けるために何千年も使用されてきた。蜂蜜は、有機酸の存在によって酸性pH(約4)を維持すること、表面の水和を維持すること、およびその高い糖含量によって創傷を浸透圧的に創傷清拭すること、ならびに過酸化水素の放出および他の抗菌剤(例えば、マヌカハニーのメチルグリオキサール)の存在によって微生物を阻害することを含む、創傷においていくつかの有益な効果を発揮する(6、7)。蜂蜜ベースの創傷治療の26のヒト臨床試験が最近レビューされ(8)、一様でない結果を示した。蜂蜜は、部分的な厚い熱傷および感染した外科的創傷において効果的に治癒を促進したが、慢性創傷、圧迫および静脈潰瘍ならびに糖尿病性足潰瘍の治癒に有益な証拠は限られた。MEDIHONEY(商標)(DermaSciences Inc., Princeton, NJ)は、標準的な創傷被覆材処理と比較して臨床試験を受けているFDAが承認した創傷軟膏である(9,10)。MEDIHONEY(商標)は痛みや壊死を軽減すると報告されている。しかしながら、混合慢性創傷の治癒を加速するための有意ではない傾向を示している。標準的な包帯での治療と比較した改善点としての蜂蜜に関するいくつかの有望な研究にもかかわらず、微生物に汚染された慢性創傷の結果を有意に改善することができる改良型の抗菌性創傷軟膏の必要性が依然として存在する。
【0126】
GTNの抗菌性相乗作用に関するデータ
カプリル酸-ペクチン酸の組み合わせに対するバイオフィルム根絶実験を、改良Kuhnsバイオフィルム根絶モデル(Rosenblatt et al., 2015)を用いて行った。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus: MRSA)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:PS)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans:CA)およびカンジダ・グラバラタ(Candida glabarata: CG)を、試験のために創傷感染を引き起こす代表的な悪性のグラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌病原体として選択した。この実験で試験した消毒溶液は、1%ペクチン酸、0.4%カプリル酸、0.03%GTNであった。すべての消毒液のpHを4.0~4.5(蜂蜜と同じpH範囲)に調整した。報告された結果は、上記のバイオフィルム根絶手順を使用してバイオフィルム根絶を完了する時間(分)である。消毒溶液への120分の曝露以内に完全に根絶されなかったバイオフィルムについては、結果は120分より大きい(>)と報告される。
【0127】
(表2)
【0128】
CAP / PGおよび過酸化水素を含むカテーテル消毒溶液に関するデータ
1.5%CMCビヒクル中の0.3%過酸化水素(H2O2)、1%PG + 0.4%CAP + 0.3%H2O2からなる消毒溶液を上部外面の周りに適用し、数分間、一時的な接触曝露のために尿道カテーテルの外部シャフトを流下させた。その外面を、24時間以内に、コロニー形成生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、大腸菌(E.coli)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)またはカンジダ・アルビカンス(C. albicans)のいずれかに曝露させた。1.5%カルボキシメチルセルロース(CMC溶液)を対照として使用した。3つの1cmカテーテルセグメントからの回収中央値(CFU /カテーテルのcm)を以下に示す。
【0129】
(表3)
【0130】
全ての攻撃菌のための消毒溶液との一時的な接触の後、1%PG + 0.4%CAP + 0.3%H2O2溶液のみがカテーテルシャフトを完全に消毒することができた。
【0131】
GTN / CAP / PGを含む創傷軟膏に関するデータ:
Intrasite(商標)ゲル軟膏(Smith and Nephew, Andover, MA)は、3%カルボキシメチルセルロース(CMC)および20%プロピレングリコール(PPG)からなり、慢性創傷の治療に長年使用されている(16)。この軟膏は、水和を維持し、慢性創傷を創傷清拭する上で有益であることを示している。蜂蜜とIntrasite(商標)Gelを比較する創傷治癒臨床試験では、治癒効果に有意差は認められなかった(17)。1%PG、0.4%CAP、0.03%GTN、3%CMCおよび20%PPGの水溶液を混合することによって、抗菌創傷軟膏を調製した。これを上記のバイオフィルム根絶モデルにおける消毒溶液として適用し、3つの抵抗性の細菌創傷汚染に対して試験した。対照はCMC-PPG軟膏基剤およびMEDIHONEY(商標)であった。生物活性軟膏は、MRSA、PS、CAおよびCGについて、PG + CAP + GTNの組み合わせと同様の根絶時間で迅速なバイオフィルム根絶を示した(下記の表参照)。追加の創傷病原体に対する軟膏のバイオフィルム根絶までの時間(分)も、以下の表に報告する。
【0132】
(表4)
【0133】
臨床試験材料:
抗菌創傷軟膏。抗菌創傷軟膏(CMC-PPG軟膏ベース中の1%PG + 0.4%CAP + 0.03%GTN)は、汚染された創傷の治癒における有効性について臨床的に試験することができる。提案される試験では、軟膏は、使用時に混合することができる水性+非水性の2成分キットとして運搬および輸送のために包装されるであろう。水性成分は、製造業者(Baxter, Deerfield, IL)から受領した滅菌容器に入れて輸送することができる0.04%滅菌GTN静脈内溶液からなる。非水性成分は、CAP + PPG液体中に懸濁したPGおよびCMCからなる。非水性懸濁液はガンマ線照射によって滅菌されるであろう。次いで、その2つの滅菌液体を、最終濃度が3%CMC-20%PPG軟膏基剤中1%PG + 0.4%CAP + 0.03%GTNになるように(約3:1の体積比で)滅菌ルアーコネクタを使用してシリンジ間の簡単な交換によって使用時点で混合することができる。この抗菌軟膏は調製され、次に使用のために研究現場に出荷される。
【0134】
市販のMEDIHONEY(登録商標):蜂蜜は、本質的に、砂糖と少量の酵素およびアミノ酸、ビタミン、ミネラル、有機酸、ならびに芳香および臭気の原因となる芳香物質との混合物を主に含む超飽和溶液である。MEDIHONEY(商標)は広く普及している標準的な医療用蜂蜜である。この蜂蜜は、通常の蜂蜜中に存在することが知られている細菌の胞子を除去するためにガンマ線照射により滅菌される。
【0135】
臨床試験集団:
臨床試験は、姉妹機関の間でのオープンラベルランダム化試験であってもよい。以下の静脈、動脈、糖尿病、および褥瘡のいずれかを含む慢性創傷を有する患者は、2つの等しいグループに無作為化されよう:第1グループは、創傷床に直接適用され、適切な包帯で覆われる、抗菌創傷軟膏を受容する。第2グループは市販のMEDIHONEY(登録商標)軟膏を比較として受容する。
【0136】
ベースラインデータ収集には、性別、年齢、創傷のタイプ、サイズ(面積および深さ)および持続時間、潰瘍の位置および再発の病歴、段階(褥瘡についてI~IV)、壊死の存在、顆粒化および感染、深部静脈血栓症、高血圧、影響を受けた手足への外傷または外科手術、糖尿病、免疫抑制および現在の薬物療法を含む病歴が含まれよう。患者は、地方および国内で受け入れられているガイドラインに準拠して評価および管理されよう。創傷の再評価は、あらゆるドレッシングの変更時に実施され、少なくとも1週間に1回または臨床的判断を用いて創傷の提示に応じてより頻繁に文書化されるべきである。 患者は創傷治癒まで、または最大12週間まで治療されよう。
【0137】
創傷ケア
必要であれば、通常の適切なデブリードメントを行うべきである。グループ1の抗菌創傷軟膏またはグループ2のMEDIHONEY(商標)のいずれかからなる局所用軟膏を1日2回使用する。VACドレッシングは、適用可能な場合には良好な造粒で創傷に適用することができる。すべての参加者は標準的な背景療法として圧迫包帯を受けるであろう。湿った創傷治癒環境を維持するドレッシングが使用されよう。ドレッシングは適所にとどまり、せん断や摩擦を最小限に抑え、さらなる組織損傷が推奨されないからである。細菌の負担をコントロールする客観的な証拠を提供し、問題の病原体の認定および種特定を補助するために、定量的な組織生検および検証された定量スワブ技術を入手することによって創傷感染の徴候が明らかであれば、創傷は綿棒で消毒される。痛みは0から10までの尺度で評価し、毎週評価し、記録する必要がある。創傷閉鎖は、毎週の間隔で創傷の測定値を記録する治癒チャートで測定し、記録するべきである。有害事象は、試験薬剤に関連していると考えられる場合には記録すべきである。全身傷害評価は毎週行うべきであり、創傷治癒の比率は治験療法終了時に+/-7日間、評価するべきである。
【0138】
定義
慢性創傷とは、秩序あるかつタイムリーな修復過程を経ずに3ヶ月間にわたり解剖学的および機能的完全性を生じることができなかった創傷であると定義される。慢性創傷は、隆起した、過剰増殖性であるが、進展していない創傷マージンの存在によってしばしば同定される。褥瘡は、通常、皮膚およびその下の組織への毛細血管の血流を阻害する骨の突出部に表面圧が持続的に加えられることによって引き起こされる。もし圧力が緩和されなければ、通常は最終的に細胞死をもたらし、続いて組織壊死および破壊が起こる。
【0139】
脚または足の潰瘍は、静脈、虚血、混合病因または外傷を起点とし得る。感染した創傷は、蜂巣炎、膿瘍/膿、痛みの増加、滲出液の増加、悪臭、治癒の遅延/悪化、砕けやすい顆粒組織/容易な/出血、追跡および温度の証拠のいずれかの存在によって定義される。
【0140】
患者の適格性
選択基準:試験に加入する適格のために、患者が以下の基準を満たさなければならない:(1)18歳以上、(2)次の慢性傷害カテゴリー:静脈、動脈、糖尿病、または褥瘡、のいずれかと診断された癌または糖尿病患者、および(3)プロトコルを理解しインフォームドコンセントを提供することができる。
【0141】
除外基準:(1)ニトログリセリン、ペクチン酸、カプリル酸、およびMEDIHONEY(商標)に対するアレルギーを有する患者、(2)妊婦または授乳中の母親、および/または(3)骨髄炎による創傷(第IV期の褥瘡)。
【0142】
結果
この試験の第1の目的は、標準治療の創傷処置と対比した、新規抗菌創傷軟膏の使用による感染創傷への細菌負荷の定量的微生物学的評価に加えて、6週間および12週間の創傷閉鎖の改善によって測定される創傷治癒における有効性である。
【0143】
第2の目的は、両方のグループにおける疼痛および研究創傷療法関連有害事象の割合を評価することによって、標準治療の軟膏と比較して新規な抗菌創傷軟膏の安全性および忍容性を評価することである。
【0144】
臨床モニタリング。各姉妹施設の主任研究者は、患者を追跡し、治験療法に関連する有害事象を含むすべての関連する臨床データを収集する責任があるであろう。
【0145】
統計解析とサンプルサイズ
提案された研究の目的1(有効性)は、蜂蜜治療グループおよび抗菌創傷軟膏グループについて、12週間の創傷治癒の母集団比率が等しいという帰無仮説を試験することである。これを試験するために、本発明者らは、0.050に設定された有意性(α)、および0.80に設定された検出力(1-β)の基準で、両側二成分ロジスティック回帰分析を行うことができる。欠落しているデータの割合は10%と仮定できよう。効果量についての我々の仮定は、12週間の蜂蜜治療群で治癒した創傷の割合が50%(前の研究を引用)であり、相対リスク推定値が1.5であるということである。これらの前提で、我々の要求されるサンプルサイズは98人である。サンプルサイズの計算は、"Sample size and optimal design for logistic regression with binary interaction", Demidenko, Statistics in Medicine, 27: 36-46に基づく。
【0146】
慢性創傷に対する我々の選択は挑戦的である。これらの創傷は、根底にある全身性疾患の結果であり、したがって、根本的な健康問題の成功した管理は、使用される包帯治療のタイプよりもより大きな程度の治癒に寄与し得る。対照的に、根底にある健康問題が難治性の根底にある免疫抑制、制御不能な糖尿病、または血管再建不能な末梢血管疾患のような容易に制御できないものである場合は、局所創傷治療に対する応答が低下する可能性がある。しかしながら、我々のランダム化では、各カテゴリーのケースが両方のグループに均等に分配されるであろうことが期待される。別の可能性のある落とし穴は、特定の患者がスワブ培養または追跡評価をし損なうことがあるということである。これらの患者は、分析を扱う意図に含まれるであろう。さらに、治療終了時にすべての患者を評価するためにあらゆる努力がなされよう。このバイアスを最小限にするために、盲検の研究者が、目的の結果を表す創傷サイズの測定の分析を行い得る。
【0147】
この試験は強力な予備的データを提供すると予想され、その試験に続いて、この抗菌性軟膏と標準治療とを比較する多施設ランダム化二重盲検対照試験を行うことができる。これらの治療アプローチは、創傷感染および合併症を打ち負かすことにおいて、高リスクの癌および糖尿病患者に使用することができる。本発明者らは、これらのアプローチが臨床的環境において創傷治癒を実質的に改善し得ると予想する。
【0148】
実施例3
PG、CAPおよびPG + CAP溶液の哺乳動物細胞毒性試験
哺乳動物の細胞毒性試験は、de Gomes et al.(2011)の間接的方法に従って実施された。ここでは、L929マウス線維芽細胞が、2%~0.5%の濃度範囲にわたり、24時間、負荷組成物の抽出物に曝露される(de Gomes et al., 2011)。曝露後、Alamar Blueアッセイ(O'Brien et al., 2000)およびトリパンブルー排除アッセイ(Strober W., 2015)を用いて生存率を試験した。L929線維芽細胞(ATCC#CCL-1; ATCC, Manassas, VA)を、37℃で、5%CO2中で、10%熱不活性化胎児ウシ血清(FBS; Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM; Corning Cell Grow, Manassas, VA)中に維持した。Alamar Blueアッセイのために96ウェル培養プレートに4.5×10 3細胞/ウェルの密度で、および生死染色のために25cm 2培養フラスコ中に2.8×10 5細胞で、細胞を播種した。(de Gomes et al., 2011)の間接的曝露方法に従って、増殖が約60%コンフルエンスに達したとき、24時間、DMEM + 10%FBS中の1%PG + 0.4%CAPの2%、1%、および0.5%抽出物に細胞を曝露した。対照、未処理細胞をDMEM + 10%FBS中でインキュベートした。曝露後、細胞生存率および毒性を評価した。すべての実験は3回実施した。
【0149】
Alamar Blueアッセイ(Life Technologies, Corp., Carlsbad CA)を用いて、PG + CAPへの曝露後の線維芽細胞の代謝活性の感受性を評価した。このアッセイは、細胞内の還元酵素活性に応答して、レサズリンが高蛍光レゾルフィンに還元されることに基づいて全体の代謝活性を測定する。細胞毒性化合物は、線維芽細胞に、レサズリンをレゾルフィンに代謝的に還元する能力を失わせ、これにより蛍光シグナルを生成しない。PG + CAP溶液に24時間曝露した後、培地を100μLのハンクス平衡塩溶液(HBSS; Corning Cell Grow, Manassas, VA)+ 10%アラマーブルー試薬で置き換え、37℃で5%CO 2中で4時間インキュベートした。吸光度は、マイクロプレートリーダー分光光度計を用いて570nmで測定した。処理および未処理の対照細胞の間で細胞生存率(吸光度)を比較した。対照、未処理細胞をDMEM + 10%FBS中でインキュベートした。すべての実験は3回実施した。結果は、未処理対照に対して標準化された蛍光シグナルのパーセンテージとして表される。
【0150】
トリパンブルー排除試験を用いて、細胞懸濁液中に存在する生存細胞の数を決定した。完全な膜を有する生きた細胞は、染料トリパンブルーを排除する能力を有するが、死んだ細胞はそうでない。したがって、生存細胞は透明な細胞質を有し、一方、死んだ細胞は青色の細胞質を提示した。PG + CAPに24時間曝露した後、細胞をHBSSで洗浄して、抗トリプシン血清タンパク質を除去し、0.05%トリプシンEDTA(Corning Cell Grow, Manassas, VA)を含む培養フラスコから回収した。分離したら、DMEM + 10%FBSを添加し、細胞を200×gで7分間ペレット化した。上清をデカントし、細胞を2mLのHBSSに再懸濁した。10μLの細胞懸濁液のアリコートを10uLの0.4%トリパンブルー(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)で染色した。血球計数器で生きた細胞と死んだ細胞を数えた。対照、未処理細胞をDMEM + 10%FBS中でインキュベートした。すべての実験は3回実施した。結果を懸濁液中の生存細胞のパーセントとして表した。
【0151】
スチューデントのT検定、両側(two tailed)、不等分散を用いて、溶液の比較のために統計学的分析を行った。αレベルを0.05に設定し、これはP値<0.05が有意であることを示す。結果を図3に示す。
【0152】
インビトロでの細胞毒性代謝活性アッセイの結果を図3に示す。 L-929線維芽細胞をPG + CAP抽出物で24時間、処理した。細胞の代謝活性を、Alamar Blueアッセイで評価した。結果は、未処理の対照細胞に対する代謝活性のパーセンテージとして表される。(スチューデントt検定による)未処理対照細胞と比較して、いずれのグループ間の代謝活性においても有意差(p> 0.31)はなく、認識できる細胞毒性がないことを示した。
【0153】
インビトロの細胞毒性細胞生存度アッセイ結果を以下の表に示す。L-929線維芽細胞をPG + CAP抽出物で24時間処理した。トリパンブルー排除アッセイを用いて細胞生存率を評価した。結果は、未処理対照細胞に対する生存細胞のパーセンテージとして表す。グループ(p = 0.41)間の細胞生存率に有意差(スチューデントt検定)はなく、細胞毒性が認められなかった。
【0154】
(表5)細胞毒性細胞生存率アッセイ結果
【0155】
実施例4
哺乳動物線維芽細胞モデルにおけるポリガラクツロン酸+カプリル酸+ニトログリセリン創傷軟膏の細胞毒性の評価
0.1%ポリガラクツロン酸(PG)+ 0.4%カプリル酸(CAP)+ 0.03%ニトログリセリン(GTN)創傷軟膏は、微生物バイオフィルムの根絶に極めて有効であることが実施例3において示されている。前の実験は、PG + CAPが哺乳動物線維芽細胞モデルにおいて細胞毒性でないことを実証した。この実験では、不活性カルボキシメチルセルロース+プロピレングリコール軟膏基剤中のPG + CAP + GTNの細胞毒性を、Alamar Blue試験およびトリパン排除アッセイの哺乳動物線維芽細胞(L929)モデルを用いて評価した。
【0156】
マウス繊維芽細胞株L929は、これまでに哺乳類の細胞毒性試験(Sousa de Gomes, et al., Cytotoxicity of denture adhesives. Clin Oral Invest. (2011) 15: 885-893)で使用されていたので、選択した。線維芽細胞を、37℃で5%CO 2中10%熱不活性化胎児ウシ血清(FBS)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。Alamar Blueアッセイのために96ウェル培養プレート中に4.5×10 3細胞/ウェルの密度で、生死染色のために25cm 2培養フラスコ中に2.8×10 5細胞で、細胞を播種した。増殖が約60%コンフルエンスに達したら、細胞をDMEM + 10%FBS中の1%PG + 0.4%CAP + 0.03%GTN創傷軟膏の2%、1%、および0.5%溶液に24時間曝露した(以下のプロットにおいて、創傷2%、創傷1%、および創傷0.5%で示す)。DMEM + 10%FBSを対照、未処理細胞に用いた。曝露後、薬物誘発細胞生存率および毒性を、生存/死滅細胞排除のための、Alamar Blueおよびトリパン染色で評価した。すべての実験は3回実施した。
【0157】
Alamar Blueアッセイ(Life Technologies, Corp., Carlsbad CA)を用いて、PG + CAPに対する線維芽細胞の感受性を評価した。このアッセイは、細胞における還元酵素活性に応答してレサズリンが高蛍光レゾルフィンに還元されることに基づいて、細胞の全代謝活性を測定した(2)。実験薬物に敏感な細胞は、レサズリンを代謝的にレゾルフィンに還元する能力を迅速に喪失し、これにより蛍光シグナルを作り出さない。PG + CAP溶液に24時間曝露した後、培地を100μLのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)+ 10%アラマーブルー試薬と交換し、37℃で5%CO 2で4時間インキュベートした。吸光度は、マイクロプレートリーダー分光光度計を用いて570nmで測定した。処理および未処理の対照細胞の間で細胞生存度(吸光度)を比較した。結果は、未処理の対照に対して標準化された生存のパーセンテージとして表した。
【0158】
細胞生存度のトリパンブルー排除試験を用いて、細胞懸濁液中に存在する生存細胞の数を視覚的に決定する。無傷の膜を有する生きた細胞は、トリパンブルーなどの特定の色素を排除する能力を有するが、死んだ細胞はそうでない。懸濁液中の細胞を0.4%トリパンブルーで染色し、血球計で計数する。生存細胞は透明な細胞質を有し、死んだ細胞は青色の細胞質を有する(3)。創傷軟膏に24時間曝露した後、細胞をHBSSで洗浄して抗トリプシン血清タンパク質を除去し、培養フラスコから0.05%トリプシンEDTAで回収した。分離したら、DMEM + 10%FBSを添加し、細胞を200xgで7分間ペレット化した。上清をデカントし、細胞を2mLのHBSSに再懸濁した。10μLの細胞懸濁液のアリコートを10μLの0.4%トリパンブルーで染色し、生存細胞および死亡細胞を血球計で計数した。結果は、懸濁液中の生存細胞のパーセントとして表される。
【0159】
スチューデントのT検定、両側(two tailed)、不等分散を用いて、溶液の比較のために統計分析を行った。αレベルを0.05に設定し、これはP値<0.05が有意であることを示す。
【0160】
Alamar Blueアッセイおよびトリパン排除試験の両方で、PG + CAP + GTN創傷軟膏の溶液からの毒性作用は検出されなかった。以下の図は、PG + CAP + GTN創傷軟膏の溶液に曝露された細胞の代謝活性と、DMEM + 10%FBSで増殖した細胞との間に有意差がないことを示している(試験した全ての溶液についてp> 0.09)。さらに、PG + CAP + GTN創傷軟膏に曝露された線維芽細胞の生存率は、未処理対照細胞と比較して、有意差は検出されなかった。(生存率96.43%対生存率96.8%; p = 0.79;下表)
【0161】
(表6)細胞毒性結果
【0162】
インビトロ細胞毒性アッセイの結果を図4に示す。L-929線維芽細胞をPG + CAP + GTN創傷軟膏溶液で24時間処理した。Alamar Blueアッセイを用いて細胞生存率を評価した。結果は、対照の未処理細胞に対する生存細胞のパーセンテージとして表す。
【0163】
本明細書に開示されクレームされる方法の全ては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製され実行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、その方法および工程、または本明細書に記載された方法の工程の順序に変更を適用することができることは明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の剤を、本明細書に記載の剤と置き換えて、同じまたは類似の結果を達成することができることは明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換および修飾はすべて、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0164】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されたものに補足的な例示的な手順または他の詳細を提供する限り、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および/または図面に記載の発明。