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特開2024-28995改善されたポリエチレンイミンポリエチレングリコールベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024028995
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】改善されたポリエチレンイミンポリエチレングリコールベクター
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240227BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240227BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240227BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C07K16/30
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
A61K35/17
A61K35/15
A61P13/08
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K31/713
A61K47/54
A61K47/64
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211790
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2020139643の分割
【原出願日】2015-05-14
(31)【優先権主張番号】61/993,110
(32)【優先日】2014-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517300143
【氏名又は名称】タルグルムーネ セラピウティクス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レビツキ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ジュブラン、サリム
(72)【発明者】
【氏名】シル、アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ジグラー、マヤ
(72)【発明者】
【氏名】タルハミ、アラー
(72)【発明者】
【氏名】ラングット、ヤエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】癌抗原に結合することができる標的部分に抱合された非ウイルス性ポリエチレンイミン系ポリプレックスを提供する。
【解決手段】2本鎖RNA(dsRNA)とポリマー抱合体とのポリプレックスであって、dsRNAが、ポリイノシン-ポリシチジル酸の2本鎖RNAであり、ポリマー抱合体が、1つのポリエチレングリコール(PEG)部分または3つのPEG部分に共有結合された直鎖ポリエチレンイミンからなり、各PEG部分が、癌抗原に結合することができる標的部分にリンカーを介して抱合されており、前記癌抗原は、上皮成長因子受容体、または前立腺表面膜抗原である、ポリプレックスであり、該ポリマー抱合体は、1つ以上のPEG部分に共有結合された直鎖ポリエチレンイミンからなり、各PEG部分は、癌抗原に結合することができる標的部分にリンカーを介して抱合されるポリプレックスが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本鎖RNA(dsRNA)とポリマー抱合体とのポリプレックスであって、前記dsRNAが、ポリイノシン-ポリシチジル酸の2本鎖RNA(ポリI:C)であり、前記ポリマー抱合体が、1つのポリエチレングリコール(PEG)部分(LPEI-PEG1:1)または3つのPEG部分(LPEI-PEG1:3)に共有結合された直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)からなり、各PEG部分が、癌抗原に結合することができる標的部分にリンカーを介して抱合されており、前記癌抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)、または前立腺表面膜抗原(PSMA)である、ポリプレックス。
【請求項2】
前記1つ以上のPEG部分が各々独立して、前記LPEIと-NH-CO-結合、および前記リンカーと、-NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、-S-S-、-O-CO-、または-CO-O-から選択される結合を形成する、請求項1に記載のポリプレックス。
【請求項3】
前記1つ以上のPEG部分の1つ1つが、前記LPEIおよび前記リンカーと-NH-CO-結合を形成する、請求項2に記載のポリプレックス。
【請求項4】
前記リンカーが、前記標的部分と-S-S-、NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、O-CO-、-CO-O-、または尿素(-NH-CO-NH)結合を形成する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリプレックス。
【請求項5】
前記リンカーが、-CO-R-R-R、または3~7個のアミノ酸残基からなるペプチド部分から選択され、
式中、
が、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、またはヘテロアリーレンジイルから選択され、
が、不在であるか、または-S-であり、
が、不在であるか、または式
【化1】
のものであり、
が、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルケニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルキニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、ヘテロアリーレンジイル、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリーレン-ジイル、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリーレンジイルから選択され、
前記(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、または(C-C)アルキニレンの1つ1つが、任意に、ハロゲン、-COR、-COOR、-OCOOR、-OCON(R、-CN、-NO、-SR、-OR、-N(R、-CON(R、-SO、-SOH、-S(=O)R、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-N(R)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、もしくはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される少なくとも1つの基によって中断され、
が、Hまたは(C-C)アルキルである、請求項4に記載のポリプレックス。
【請求項6】
が、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択され、任意に、ハロゲン、-COH、-COOH、-OCOOH、-OCONH、-CN、-NO、-SH、-OH、-NH、-CONH、-SOH、-SOH、-S(=O)H、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-NH-、-N(C-Cアルキル)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、もしくはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される少なくとも1つの基によって中断される、請求項5に記載のポリプレックス。
【請求項7】
が、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択される、請求項6に記載のポリプレックス。
【請求項8】
が、-S-である、請求項5に記載のポリプレックス。
【請求項9】
が、不在であるか、または
【化2】
であり、式中、
が、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、好ましくは(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレンである、請求項5に記載のポリプレックス。
【請求項10】
が、-CH-CH-であり、
が、-S-であり、
が、不在であるか、または
【化3】
であり、式中、Rが、
【化4】
である、請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のポリプレックス。
【請求項11】
前記ペプチド部分が、そのメルカプト基を介して前記標的部分に連結される、-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号2)または-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-(配列番号3)である、請求項5に記載のポリプレックス。
【請求項12】
前記ポリマー抱合体が、前記標的部分(単数/複数)に連結される、式(I)~(VIII)の二抱合体である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のポリプレックス:
(I)
【化5】

(II)
【化6】

(III)-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-PEG2k-LPEI、
(IV)-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k-LPEI、
(V)
【化7】

(VI)
【化8】

(VII)
【化9】
(式中、Rが、
【化10】
である)、または
(VIII)
【化11】
(式中、Rが、
【化12】
である)。
【請求項13】
(c)前記標的部分が、EGFRアフィボディであり、前記ポリマー抱合体が、前記式(I)のものであり、前記EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(d)前記標的部分が、EGFRアフィボディであり、前記ポリマー抱合体が、前記式(V)のものであり、前記EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(e)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、前記式(II)のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、前記式(VI)のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(g)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、前記式(III)のものである、
(h)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、前記式(VII)のものである、
(i)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、前記式(IV)のものである、あるいは
(j)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、前記式(VIII)のものである、請求項12に記載のポリプレックス。
【請求項14】
前記EGFRアフィボディが、配列番号4に記載されるアミノ酸配列のものである、請求項13に記載のポリプレックス。
【請求項15】
薬学的に許容される担体および請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のポリプレックスを含む、薬学的組成物。
【請求項16】
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、請求項13または請求項14に記載のポリプレックス。
【請求項17】
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌が、非小細胞肺癌、乳癌、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、腺癌、卵巣癌、膀胱癌、または前立腺癌、およびこれらの転移癌から選択される、請求項16に記載のポリプレックス。
【請求項19】
前記ポリプレックスが、下記(c)、(d)、(e)、または(f)において定義される通りである、請求項18に記載のポリプレックス:
(c)前記標的部分が、EGFRアフィボディであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(I)
(I)
【化13】
のものであり、前記EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(d)前記標的部分が、EGFRアフィボディであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(V)
(V)
【化14】
のものであり、前記EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(e)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(II)
(II)
【化15】
のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(VI)
(VI)
【化16】
のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される。
【請求項20】
前記ポリプレックスが、下記(e)、または(f)において定義される通りである、請求項16に記載のポリプレックス:
(e)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(II)
(II)
【化17】
のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)前記標的部分が、hEGFであり、前記ポリマー抱合体が、下記式(VI)
(VI)
【化18】
のものであり、前記hEGFが、そのアミノ基を介して連結される。
【請求項21】
前記癌が、前立腺癌であり、前記ポリプレックスが、下記(g)、(h)、(i)、または(j)において定義される通りである、請求項16に記載のポリプレックス:
(g)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、下記式(III)
(III)-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-PEG2k-LPEI
のものである、
(h)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、下記式(VII)
(VII)
【化19】
(式中、Rが、
【化20】
である)のものである、
(i)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、下記式(IV)
(IV)-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k-LPEI
のものである、
(j)前記標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、前記ポリマー抱合体が、下記式(VIII)
(VIII)
【化21】
(式中、Rが、
【化22】
である)のものである。
【請求項22】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のポリプレックスであって、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するために、必要とする対象に投与される、ポリプレックス。
【請求項23】
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌を治療するための、薬学的に許容される担体および請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のポリプレックスを含む、薬学的組成物。
【請求項24】
免疫細胞と組み合わせて使用するための、請求項16および請求項18から請求項21のいずれか一項に記載のポリプレックス。
【請求項25】
免疫細胞と組み合わせて使用するための、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記免疫細胞が、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的遺伝子操作T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である、請求項24に記載のポリプレックス。
【請求項27】
前記免疫細胞が、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的遺伝子操作T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である、請求項25に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌抗原に結合することができる標的部分に抱合された非ウイルス性ポリエチレンイミン系ポリプレックスに関する。
【背景技術】
【0002】
分子医学が直面する障害の1つは、DNAまたはRNA分子などの治療薬の標的送達である。新たな戦略は、核酸を結合および縮合するカチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質などの非ウイルス性ベクターの構築である。これらの非ウイルス性カチオン性ベクターは、非免疫原性、非発癌性であり、および合成が容易であるため、ウイルス遺伝子ベクターに勝る多くの利点を有する[1~4]。現在、いくつかの合成ポリカチオン性ポリマーが核酸送達用に開発されている。これらの中でも、ポリエチレンイミン(PEI)は、遺伝子送達の有望な薬剤と考えられている[5]。
【0003】
PEIは、直鎖構造および分枝状構造の両方として利用可能な水溶性の有機巨大分子である[6]。PEIは、それらの骨格鎖中の3つ目ごとの原子がアミノ窒素であり、これがプロトン化され得るため、広範囲のpHにわたってそれらのイオン化度を変更する。PEI中の約55%の窒素が生理学的pHでプロトン化される[7]。これらは、高いカチオン電荷密度を有し、したがって、核酸と非共有結合複合体を形成することができる。更に、それらの物理化学的および生物学的特性は、様々な化学修飾により変更することができる[8]。PEI系複合体(ポリプレックスとしても知られる)は、多くの細胞型によってエンドサイトーシスにより取り込まれ得る[9]。ポリプレックスの内在化後、エンドソーム放出および高効率遺伝子導入が「プロトンスポンジ効果」により駆動される[10]。PEIがDNAを縮合する能力は、大きいDNA構築物を多くの細胞型内に送達する際の重要な要因であるように思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送達担体としてPEIを利用する際の主な懸念は、非特異的結合につながる可能性があるそれらの高い表面正電荷に起因する毒性である[11]。最近、非ウイルス性ベクターの選択性および生体適合性を改善するという試みが行われてきた。これは、PEI粒子を保護するために、ポリエチレングリコール(PEG)でPEI分子を修飾することにつながった[12]。ヘテロ二機能性PEG基のPEIへの抱合は、同族受容体を保有する細胞内への効率的な遺伝子送達をもたらす、PEIの標的リガンドへの共役を容易にする[12]。我々は、以前に、標的ベクターの生成を説明し、分枝状PEI(brPEI-EGF)と標的ベクターとしてEGFに繋がれる直鎖PEI(LPEI)との間の相違を示した[13、国際公開第2004/045491号、国際公開第2010/073247号]。現在の合成方法は、十分に均質ではない製品をもたらすという点で不十分である。よって、癌を治療するための方法において確実に使用することができる均質な製品のバッチを製造する再現可能な方法で、標的部分のLPEI-PEGへの効率的な抱合をもたらすことができる方法が早急に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、2本鎖RNA(dsRNA)とポリマー抱合体とのポリプレックスに関し、該ポリマー抱合体は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分に共有結合された直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)からなり、各PEG部分は、癌抗原に結合することができる標的部分にリンカーを介して抱合されているが、但し、標的部分がマウスEGF(mEGF)または配列YHWYGYTPQNVI(GE11)(配列番号1)のペプチドでないことを条件とする。
【0006】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体および本明細書に定義される本発明のポリプレックスを含む薬学的組成物を提供する。
【0007】
また別の態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、本明細書で定義される本発明のポリプレックス、またはポリプレックスを含む薬学的組成物を提供する。
【0008】
更に別の態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための方法に関し、本方法は、本明細書に定義される本発明のポリプレックスを、必要とする対象に投与することを含む。
【0009】
更なる態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療のための、薬学的に許容される担体および本発明のポリプレックスを含む薬学的組成物に関する。
【0010】
本発明のポリプレックスは、免疫細胞と組み合わせて使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】PEG化の程度が異なる主に2つのコポリマーネットワークをもたらす、LPEI(約22kDa)とNHS-PEG-OPSS(約2kDa)との抱合を示す。コポリマーLPEI-(PEG2k-OPSS)(「二抱合体1:3」)は、平均して1モルのLPEIと3モルのPEGからなり、一方、コポリマーLPEI-PEG2k-OPSS(「二抱合体1:1」)は、平均して1モル比のLPEIと1モルのPEGからなった。(LPEI:PEGの割合は、H-NMR分析により決定された。)
図2】LPEI-PEG2k-OPSS(二抱合体1:1)およびLPEI-(PEG2k-OPSS)(二抱合体1:3)の2つの二抱合体のH-NMR分析を示す。PEG基のLPEIへの共役は、3.7ppmでエチレングリコールの水素(a)、約3.0ppmでエチレンイミンの水素(b)と相関する化学シフトの存在によって示された。これらのピークの積分値は、PEG対LPEIのモル比を提供し、それから二抱合体1:1(A)および二抱合体1:3(B)の図示される構造が推定された。
図3】2つの異なってPEG化された三抱合体の生成をもたらす、ジスルフィド交換によるコポリマーネットワーク(二抱合体1:1および二抱合体1:3)のアフィボディ(「Her-2」)への抱合のスキームを示す[20]。
図4】DTTの不在下および存在下の、精製されたアフィボディ、二抱合体、および三抱合体のSDS/PAGEを示す。DTTの存在下で、アフィボディは、三抱合体から放出され、精製されたアフィボディと並んで移動する(10kDaよりも若干上)。
図5】HBG緩衝液(pH7.4)中での、プラスミドpGreenfire1と複合体を形成するLPEI、二抱合体、および三抱合体のDLS測定を用いた粒子サイズ測定を示す。
図6】プラスミドpGreenfire1と複合体を形成したLPEI、二抱合体、および三抱合体のξ電位分布を示す。ゼータ電位は、DLSにより測定され、スモルコフスキー方程式により計算された。
図7A】両ポリプレックスに関してHBG緩衝液(pH7.4)中で実施された測定から得た原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。(A)三抱合体1:1ポリプレックス、(B)三抱合体1:3ポリプレックス。スケールバーは1μmである。
図7B】両ポリプレックスに関してHBG緩衝液(pH7.4)中で実施された測定から得た原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。(A)三抱合体1:1ポリプレックス、(B)三抱合体1:3ポリプレックス。スケールバーは1μmである。
図8】異なってPEG化されたポリプレックスがプラスミドpGreenFire1をDNase I分解から保護することを示す、寒天ゲルを示す。単独または三抱合体ポリプレックス:1:1および1:3中の1μgのプラスミド(pGreenFire1)を、DNase I(2IU)と共に、またはそれなしで処理した。超らせんプラスミド(s.c.)、開環状プラスミド(o.c.)。
図9A】それぞれ、1:1および1:3の割合のLPEI:PEGを含有する三抱合体1:1ポリプレックスおよび三抱合体1:3ポリプレックスを使用した、pGFP-LUCのHer-2媒介遺伝子導入を示す。2つのポリプレックスを生成するために、10000個のBT474およびMDA-MB-231乳癌細胞/ウェルを、pGFP-LUC(1μg/ml)と複合体を形成した三抱合体1:1および1:3で48時間処理した。PEI窒素/DNAリン酸比はHBS中において6(N/P=6)であった。(A)ルシフェラーゼ活性の測定は、BT474と比較して、MDA-MB-231細胞において大幅に減少したpGreenFire1送達、および三抱合体1:1と比較したとき、三抱合体1:3ポリプレックスにより媒介された遺伝子送達の減少を示した(p<0.001)。平均+標準偏差として相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として示されるルシフェラーゼ活性は、48時間後に3連で測定された。(B)ポリプレックスで処理された細胞の蛍光画像。画像は、X10倍率で示され、実施された3つの実験を代表する。(C)メチレンブルーアッセイは、未処置(UT)細胞と比較した細胞生存のパーセントを示す。
図9B】それぞれ、1:1および1:3の割合のLPEI:PEGを含有する三抱合体1:1ポリプレックスおよび三抱合体1:3ポリプレックスを使用した、pGFP-LUCのHer-2媒介遺伝子導入を示す。2つのポリプレックスを生成するために、10000個のBT474およびMDA-MB-231乳癌細胞/ウェルを、pGFP-LUC(1μg/ml)と複合体を形成した三抱合体1:1および1:3で48時間処理した。PEI窒素/DNAリン酸比はHBS中において6(N/P=6)であった。(A)ルシフェラーゼ活性の測定は、BT474と比較して、MDA-MB-231細胞において大幅に減少したpGreenFire1送達、および三抱合体1:1と比較したとき、三抱合体1:3ポリプレックスにより媒介された遺伝子送達の減少を示した(p<0.001)。平均+標準偏差として相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として示されるルシフェラーゼ活性は、48時間後に3連で測定された。(B)ポリプレックスで処理された細胞の蛍光画像。画像は、X10倍率で示され、実施された3つの実験を代表する。(C)メチレンブルーアッセイは、未処置(UT)細胞と比較した細胞生存のパーセントを示す。
図9C】それぞれ、1:1および1:3の割合のLPEI:PEGを含有する三抱合体1:1ポリプレックスおよび三抱合体1:3ポリプレックスを使用した、pGFP-LUCのHer-2媒介遺伝子導入を示す。2つのポリプレックスを生成するために、10000個のBT474およびMDA-MB-231乳癌細胞/ウェルを、pGFP-LUC(1μg/ml)と複合体を形成した三抱合体1:1および1:3で48時間処理した。PEI窒素/DNAリン酸比はHBS中において6(N/P=6)であった。(A)ルシフェラーゼ活性の測定は、BT474と比較して、MDA-MB-231細胞において大幅に減少したpGreenFire1送達、および三抱合体1:1と比較したとき、三抱合体1:3ポリプレックスにより媒介された遺伝子送達の減少を示した(p<0.001)。平均+標準偏差として相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として示されるルシフェラーゼ活性は、48時間後に3連で測定された。(B)ポリプレックスで処理された細胞の蛍光画像。画像は、X10倍率で示され、実施された3つの実験を代表する。(C)メチレンブルーアッセイは、未処置(UT)細胞と比較した細胞生存のパーセントを示す。
図10】PolyICと複合体を形成したPEI-PEG-Her2アフィボディ(PPHA)がHer2過剰発現乳癌細胞BT474を阻害することを示す。複合型ベクターは、ハーセプチン/トラスツズマブ耐性細胞を含む、Her2過剰発現細胞を阻害する。
図11】ヌードマウスに注入されたHer2を過剰発現するMCF7細胞の阻害を示す。
図12A】(B)PPEと比較した(A)PEI-PEG-EGFRアフィボディ(PPEアフィボディ)の有効性を示す。
図12B】(B)PPEと比較した(A)PEI-PEG-EGFRアフィボディ(PPEアフィボディ)の有効性を示す。
図13】未処置(UT)、pIC/PPE、pI/PPE、pI/PPEA、およびpIC/PPEA低(複合体において0.1μg/μl pIC)と比較したときのインビボにおけるPolyIC/PPEアフィボディの活性を示す。
図14】Schaffert D,Kiss M,Rоedl W,Shir A,Levitzki A,Ogris M,Wagner E.(2011) Poly(I:C)-mediated tumor growth suppression in EGF-receptor overexpressing tumors using EGF-polyethylene glycol-linear polyethylenimine as carrier.Pharm Res.28:731-41に記載される、PolyIC/mPPE(マウス)の適用と比較したときの、PolyIC/LPEI-PEG-hEGF複合体の異なる濃度の適用後のU87MG、U87MGwtEGFR細胞の生存を示す。
図15】PEI-PEG(PP)-DUPA(PPD)/PolyICがLNCaPおよびVCaP細胞に対して高度に有効であることを示す。生存率は曝露96時間後に測定された。
図16A】サイトカイン(A)IP-10、(B)PolyIC/PPDをトランスフェクトされたLNCaP細胞によるRANTESの生成を示す。
図16B】サイトカイン(A)IP-10、(B)PolyIC/PPDをトランスフェクトされたLNCaP細胞によるRANTESの生成を示す。
図17】LNCaP細胞で条件付けされた培地が、PBMCにおいてサイトカインの発現を刺激することを示す。発現は24時間のインキュベーション後に測定された。
図18】PolyIC/PPD処理されたLNCaP細胞とPSMAを発現しないPC3-ルシフェラーゼ細胞の同時インキュベーションが、バイスタンダー効果により、最大70%のPC3-ルシフェラーゼ細胞の死滅をもたらしたことを示す。健康なヒトPBMCの付加は、効果を強く増強し、90%のPC3細胞の死滅につながる。
図19】インビボでの皮下LNCaP腫瘍に対するPolyIC/PPDの効果を示す。UT、未処置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリカチオン、特にPEIは、遺伝子トランスフェクションの薬剤として集中的に研究されてきた。最適なトランスフェクションの有効性は、ポリマー性ナノ粒子複合体が、全体的に、細胞表面上の負に帯電しているヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合することを可能にする正電荷を有するときに得られる[28]。以前の研究は、直鎖PEI(LPEI)が遺伝子トランスフェクションにおいて分枝状PEI(brPEI)よりも有効であるが[29~31][32、33、国際公開第2010/073247号]、LPEIがより高い正電荷を有し、したがってより毒性であることを示した。正電荷、そして結果としての毒性を低下させようと、PEG[12]、ポリ-(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)[18、34]およびポリ(エチレンオキシド)[35]などの様々な保護実体がカチオン性ポリマーに抱合されてきた。実際、PEIを様々な長さのPEG基で保護することにより、トランスフェクションの効率を維持する一方で、毒性が大幅に低下した[12、13、36]。
【0013】
本発明によると、LPEIのPEG2kとの抱合は、様々な比率のLPEI対PEG2Kを含む二抱合体コポリマーをもたらすことが分かった。これらの二抱合体は、抱合された異なる数のPEG2k基を反映する電荷の相違により、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて互いに分離することができる。H-NMR分析は、二抱合体がLPEI単位当たりのPEG2k単位の平均数で互いに異なり、二抱合体1:1が1:1のLPEI:PEG2kの比率を有し、二抱合体1:3が1:3のLPEI:PEG2kの比率を有したことを裏付けた。Her-2標的アフィボディの精製された二抱合体の各々への抱合は、適切な分子量の三抱合体生成物をもたらした、すなわち、二抱合体1:1から、LPEI:PEG2k:Her-2が1:1:1に等しい「三抱合体1:1」を得、二抱合体1:3から、1:3:3の比率の「三抱合体1:3」を得た。このプロトコルは、再現可能な方法で、標的アフィボディのLPEI-PEGへの抱合がほぼ完了した状態で、均質な生成物を得ることを可能にした。
【0014】
PEG化が、二抱合体または三抱合体がプラスミドDNAと複合体を形成する時に得られるポリプレックス粒子のサイズに強く影響を及ぼすことが観察された。二抱合体1:3および三抱合体1:3のポリプレックスは、二抱合体1:1および三抱合体1:1のポリプレックスよりも大きい平均粒子サイズを有した。我々は、単一カチオン鎖上のPEG化の量を増加することにより、ポリマー鎖がプラスミドをより小さい粒子に縮合することを防止する立体障害をもたらすと考える。これは、裸LPEIポリプレックスが最小粒子を有した知見と一致する。更に、三抱合体1:1および1:3の両方はDNase Iから複合体を形成したプラスミドを保護し、3抱合された1:3ポリプレックスは、おそらく立体障害の増加により、より良い保護を提供した。
【0015】
以前の研究は、カチオン性ポリマーに抱合されたPEG単位の分子量を増加させることが、核酸と複合体を形成したときに得られるポリプレックスの表面電荷の減少につながることを示唆した[13]。我々のデータは、類似する分子量のPEG基の数の増加がξ電位分布により定義されるように、表面電荷の減少をもたらすことを示す。実際、最高表面電荷はプラスミドと複合体を形成した裸LPEIによって示された。これらの結果は、中性実体がより多く化学ベクターに存在するほど、表面電荷が低くなるという考えを支持する。驚くべきことに、アフィボディに抱合された三抱合体ポリプレックスが二抱合体ポリプレックスよりも低い表面電荷を有し、Her-2アフィボディ(それ自体がわずかに正電荷を有する)も粒子の表面電荷を減少させたことを示した。我々は、より多くの標的部分が表面上の電荷を覆うことで、Her-2アフィボディが粒子のトポグラフィーを変更し、表面電荷の減少をもたらすと考えた。
【0016】
ポリプレックスの形状は、薬物送達の候補としてのその性能に対して有意な効果を有するが[37、38]、どのポリプレックス形状が有効な薬物送達に望ましいかはまだ分かっていない。ポリプレックス形状に対するPEG化の作用は、我々の知る限りでは、今まで研究されなかった。AFM写真では、三抱合体1:1ポリプレックス(遺伝子送達においてより有効であった)は、形状均一性を示し、一方、三抱合体1:3はより不均一であり、多くの非対称の楕円形粒子を有した。
【0017】
カチオン性ポリマーを使用する選択的遺伝子導入は、主な課題のままである。以前の研究は、EGFまたはトランスフェリンでのLPEIおよびLPEI-PEG抱合体の標的がそれらの選択性を増加させ、インビトロおよびインビボ両方での非特異的相互作用を減少させたことを示した[39、40]。例えば、我々のHer-2標的三抱合体1:1および1:3ポリプレックスの選択性を検査するために、Her-2を差次的に発現する2つの乳癌細胞を利用した。ルシフェラーゼ活性およびGFP発現により示されるように、遺伝子送達は、細胞表面上に100倍低いHer-2受容体を発現するMDA-MB-231細胞よりも、Her-2受容体を高度に過剰発現するBT474細胞において有意に高かった。したがって、データは、三抱合体1:1および1:3の両方がHer-2過剰発現細胞に対して高度に選択的であることを示す(図10)。
【0018】
以前の研究は、高レベルのPEG化が遺伝子トランスフェクションの減少をもたらし得ることを示した[41]。これらの結果は、高度にPEG化された三抱合体1:3ポリプレックスが、あまりPEG化されない三抱合体1:1ポリプレックスと比較したとき、ルシフェラーゼ活性およびGFP発現によって示されるように、遺伝子送達において大幅な減少を示したという我々の観察と一致する。低PEG化三抱合体1:1ポリプレックスによる遺伝子送達の増加は、軽度の細胞毒性により達成されたが、その高い表面電荷による可能性が高い。
【0019】
この研究に従事する前の我々の作業仮説は、LPEI単位当たりの標的部分の数を増加させることにより、改善された遺伝子送達および/または選択性がもたらされるだろうということであった。我々は、1モルのLPEI当たりに3モルのHer-2アフィボディ分子を抱合させた三抱合体1:3が増加した受容体媒介粒子の内在化を示すだろうと推測した。しかしながら、三抱合体1:3ポリプレックスは、低いξ電位、大きな粒子サイズ、および不均一で非球形状を示し、その特徴のすべては、実際に観察されたトランスフェクション効率の減少の一因となった可能性がある。我々の結果は、Her-2過剰発現細胞への選択的かつ効率的な遺伝子送達の媒介において、あまりPEG化されない三抱合体1:1がより多くPEG化された三抱合体1:3よりも優れていることを示す。
【0020】
本発明によると、LPEI系ポリプレックスのPEG化は、表面電荷の減少、ポリプレックスサイズの増加、および形状不均一性の増加につながり、これらの特性が標的遺伝子送達に対して大きな作用を有し得ることが分かった。我々の簡略化された合成は、再現可能な方法で均質な生成物の精製を可能にし、これは、今や、様々な標的部分を使用して、異なる三抱合体の生成に拡大することができる。
【0021】
上記を考慮して、一態様では、本発明は、2本鎖RNA(dsRNA)およびポリマー抱合体のポリプレックスを提供し、該ポリマー抱合体は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分と共有結合された直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)からなり、各PEG部分は、リンカーを介して癌抗原に結合することができる標的部分に抱合されているが、但し、標的部分が、mEGFまたは配列YHWYGYTPQNVI(GE11)(配列番号1)のペプチドでないことを条件とする。
【0022】
ある特定の実施形態では、癌抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、前立腺表面膜抗原(PSMA)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、または線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)であってよいが、これらに限定されない。標的部分は、癌抗原のうちのいずれか1つに対して、天然、自然もしくは修飾されたリガンドもしくはそのパラログ、または抗体、単鎖可変断片(scFv)、もしくはアフィボディなどの抗体模倣物などの非天然リガンドであってよい。アフィボディは、タンパク質AのZドメイン(免疫グロブリンG結合ドメイン)に基づき、独特な結合特性は、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのアルファ-ヘリックスに位置する13個のアミノ酸の無作為化によって取得される。
【0023】
ある特定の実施形態では、dsRNAは、ポリイノシン-ポリシチジル酸の2本鎖RNA(poly I:C)であり、ポリマー抱合体は、1つのPEG部分(LPEI-PEG1:1)または3つのPEG部分(LPEI-PEG1:3)に共有結合されたLPEIからなり、癌抗原は、EGFR、HER2、またはPSMAである。
【0024】
PEGの分子量は、2~8kDaの範囲、特に2kDaであってよく、LPEIの分子量は、10~30kDaの範囲、特に22kDaであってよく、本発明のポリプレックスのpolyICは、各々少なくとも22、好ましくは少なくとも45リボヌククレオチドを含むRNA鎖から構成され得る。ある特定の実施形態では、各鎖は、20~300の範囲内のいくつかのリボヌククレオチドを有する。
【0025】
ある特定の実施形態では、1つ以上のPEG部分は各々独立して、LPEIと-NH-CO-結合、およびリンカーと、-NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、-S-S-、-O-CO-、または-CO-O-から選択される結合を形成する。特に、1つ以上のPEG部分の1つ1つは、LPEIおよびリンカーと-NH-CO-結合を形成する。
【0026】
ある特定の実施形態では、リンカーは、標的部分と-S-S-、NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、O-CO-、-CO-O-、または尿素(-NH-CO-NH)結合を形成する。リンカーは、-CO-R-R-Rまたは3~7個のアミノ酸残基からなるペプチド部分から選択されてよく、式中、
は、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、またはヘテロアリーレンジイルから選択され、
は、不在であるか、または-S-であり、
は、不在であるか、または式
【化1】
のものであり、
は、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルケニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルキニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、ヘテロアリーレンジイル、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリーレン-ジイル、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリーレンジイルから選択され、
該(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、または(C-C)アルキニレンの1つ1つは、任意に、ハロゲン、-COR、-COOR、-OCOOR、-OCON(R、-CN、-NO、-SR、-OR、-N(R、-CON(R、-SO、-SOH、-S(=O)R、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-N(R)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、またはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される、少なくとも1つの基によって中断され、
は、Hまたは(C-C)アルキルである。
【0027】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択され、任意に、ハロゲン、-COH、-COOH、-OCOOH、-OCONH、-CN、-NO、-SH、-OH、-NH、-CONH、-SOH、-SOH、-S(=O)H、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-NH-、-N(C-Cアルキル)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、もしくはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される少なくとも1つの基によって中断される。特に、Rは、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択される。
【0028】
ある特定の実施形態では、Rは-S-である。
【0029】
ある特定の実施形態では、Rは、不在であるか、または
【化2】
であり、式中、
は、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、好ましくは(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレンである。
【0030】
ある特定の実施形態では、上記に定義されるポリプレックスにおいて、Rは-CH-CH-であり、Rは-S-であり、Rは、不在であるか、または
【化3】
であり、式中、R
【化4】
である。
【0031】
ある特定の実施形態では、リンカーは、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、またはホモフェニルアラニンなどの、少なくとも1個、特に、2または3個の芳香族性アミノ酸残基を含むペプチド部分である。ある特定の実施形態では、ペプチド部分は、そのメルカプト基を介して標的部分に連結される、-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号2)または-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-(配列番号3)である。
【0032】
ある特定の実施形態では、ポリマー抱合体は、標的部分(単数/複数)に連結される、式(I)~(VIII)の二抱合体である:
(I)
【化5】

(II)
【化6】

(III)-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-PEG2k-LPEI、
(IV)-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k-LPEI、
(V)
【化7】

(VI)
【化8】

(VII)
【化9】

(式中、R
【化10】
である)、または
(VIII)
【化11】
(式中、R
【化12】
である)。
【0033】
特定の実施形態では、ポリプレックスは、
(a)標的部分がHER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が上記の式(I)のものであり、HER2アフィボディがそのメルカプト基を介して連結され、本明細書において、LPEI-PEG2k-HER2とも称される、ポリプレックス、
(b)標的部分がHER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が上記の式(V)のものであり、HER2アフィボディがそのメルカプト基を介して連結され、本明細書において、LPEI-(PEG2k-HER2)とも称される、ポリプレックス、
(c)標的部分がEGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が上記の式(I)のものであり、EGFRアフィボディがそのメルカプト基を介して連結され、本明細書において、LPEI-PEG2k-EGFRとも称される、ポリプレックス、
(d)標的部分がEGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が上記の式(V)のものであり、EGFRアフィボディがそのメルカプト基を介して連結され、本明細書において、LPEI-(PEG2k-EGFR)とも称される、ポリプレックス、
(e)標的部分がヒトEGF(hEGF)であり、ポリマー抱合体が上記の式(II)のものであり、hEGFがそのアミノ基を介して連結され、本明細書において、LPEI-PEG2k-hEGFとも称される、ポリプレックス、
(f)標的部分がhEGFであり、ポリマー抱合体が上記の式(VI)のものであり、hEGFがそのアミノ基を介して連結され、本明細書において、LPEI-(PEG2k-hEGF)とも称される、ポリプレックス、
(g)標的部分がHOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が上記の式(III)のものである、ポリプレックス、
(h)標的部分がHOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が上記の式(VII)のものである、ポリプレックス、
(i)標的部分がHOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が上記の式(IV)のものである、ポリプレックス、または
(j)標的部分がHOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が上記の式(VIII)のものである、ポリプレックスから選択される。
【0034】
本発明のポリプレックスにより形成されたナノ粒子のサイズは、120~150nmの範囲、特に135~148nm、または142nmであり得る。
【0035】
本発明に使用されるポリマー抱合体を調製するための手順の非限定的な方法は、以下の実施例に例示される。
【0036】
ある特定の実施形態では、EGFRアフィボディは、配列番号4に記載されるようなアミノ酸配列のものであり、HER2アフィボディは、配列番号5に記載されるようなアミノ酸配列のものであり、hEGFは、配列番号6に記載されるようなアミノ酸配列のものである。
【0037】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体および上記に定義されるポリプレックスを含む薬学的組成物に関する。
【0038】
また別の態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、本明細書で定義される、本発明のポリプレックス、またはポリプレックスを含む薬学的組成物を提供する。
【0039】
ある特定の実施形態では、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌は、非小細胞肺癌、乳癌、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、腺癌、卵巣癌、膀胱癌、または前立腺癌、およびこれらの転移癌から選択される。ある特定の実施形態では、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌の治療に使用されるポリプレックスは、上記に定義される(c)、(d)、(e)、または(f)のポリプレックスから選択される。
【0040】
ある特定の実施形態では、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌は、乳癌、卵巣癌、胃癌、および子宮の漿液性子宮内膜癌などの侵攻性形態の子宮癌から選択される。ある特定の実施形態では、Her2過剰発現細胞は、ハーセプチン/トラスツズマブ耐性細胞である。よって、本発明のポリプレックスは、ハーセプチン/トラスツズマブ耐性癌、すなわち、ハーセプチン/トラスツズマブへの曝露に応答しない、または応答の程度が低い細胞を含む癌の治療に使用するためであり得る。
【0041】
特に、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌の治療に使用されるポリプレックスは、上記に定義されるポリプレックス(a)、(b)、(e)、または(f)から選択される。
【0042】
ある特定の実施形態では、癌は前立腺癌であり、前立腺癌の治療に使用されるポリプレックスは、上記に定義される(g)、(h)、(i)、または(j)から選択される。
【0043】
更に別の態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための方法に関し、本方法は、本明細書に定義される本発明のポリプレックスを、必要とする対象に投与することを含む。
【0044】
更なる態様では、本発明は、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療のための、薬学的に許容される担体および本発明のポリプレックスを含む薬学的組成物に関する。
【0045】
また更なる態様では、本発明は、免疫細胞と組み合わせて使用するための、本発明のポリプレックス、方法、または薬学的組成物を目的とする。
【0046】
また更なる態様では、本発明は、本明細書において上記に定義されるポリプレックスを目的とし、dsRNAは、適切なプロモーターおよびターミネーターなどの要素を制御するように動作可能に連結されたタンパク質コードされた核酸配列を含むプラスミドなどのDNA分子で置換される。
【0047】
ある特定の実施形態では、免疫細胞は、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的遺伝子操作T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリプレックス」は、核酸とポリマーとの間の複合体を指す。核酸は、非共有結合または共有結合、特に、静電結合を介してポリマーに結合される。用語「ポリプレックス」は、核酸を細胞に輸送および送達するのに有用なベクター、すなわち、非ウイルス性ベクターを指す。
【0049】
用語「患者」、「対象」、または「個人」は、互換的に使用され、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを指す。
【0050】
本明細書で使用されるとき、用語「(C-C)アルキル」は典型的には、1~8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状炭化水素ラジカルを意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどを含む。
【0051】
用語「(C-C)アルキレン」は、1~8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状の二価の炭化水素ラジカルを指し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタニレン(pentanylene)、ヘキサニレン(hexanylene)、ヘプタニレン(heptanylene)、オクタニレン(octanylene)などを含む。用語「(C-C)アルケニレン」および「(C-C)アルキニレン」は典型的には、2~8個の炭素原子およびそれぞれ1つ以上の2重もしくは3重結合を有する直鎖または分枝状の二価の炭化水素ラジカルを意味する。このようなラジカルの非限定的な例としては、エテニレン、プロペニレン、1-および2-ブテニレン、1-および2-ペンテニレン、1-、2-、および3-ヘキセニレン、1-、2-、および3-ヘプテニレン、1-、2-、3-、および4-オクテニレン、エチニレン、プロピニレン、1-および2-ブチニレン、2-メチルプロピレン、1-および2-ペンチニレン、2-メチルブチレン、1-、2-、および3-ヘキシニレン、1-、2-、および3-ヘプチニレン、1-、2-、3-、および4-オクチニレンなどが挙げられる。
【0052】
用語「(C-C10)アリール」は、限定されないが、フェニルおよびナフチルなどの単環または縮合された複数の環からなる、6~10個の炭素原子を有する芳香族炭素環式基を表し、用語「(C-C10)アリーレン-ジイル」は、限定されないが、フェニレンおよびナフチレンなどの単環または縮合された複数の環のいずれかからなる、6~10個の炭素原子を有する二価の芳香族炭素環式基を表す。
【0053】
用語「ヘテロアリール」は、N、O、またはSから選択される1~3個、好ましくは1~2個のヘテロ原子を含有する5~10員の単環式もしくは多環式芳香族複素環に由来するラジカルを指す。単環式ヘテロアリールの例としては、ピロリル、フリル、チエニル、チアジニル、ピラゾリル、ピラジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、1,2,3-トリアジニル、1,3,4-トリアジニル、および1,3,5-トリアジニルが挙げられるが、これらに限定されない。多環式ヘテロアリールラジカルは、好ましくは、限定されないが、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ピリド[1,2-a]ピリミジニル、および1,3-ベンゾジオキシニルなどの2つの環から構成される。ヘテロアリールは、任意に、ハロゲン、-OH、-COOH、-CN、-NO、-SH、または-CONHから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され得る。多環式ヘテロアリールが置換される場合、置換は、炭素環式環および/または複素環式環のいずれにあってもよいことも理解する。用語「ヘテロアリーレンジイル」は、環原子のいずれかから2個の水素原子を除去することによる、本明細書において定義される「ヘテロアリール」に由来する二価のラジカルを表す。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。
【0055】
用語「(C-C)シクロアルキレン」は、3~8個の炭素を含有する単環式または2環式の飽和二価環式炭化水素ラジカルを表す。このようなラジカルの非限定的な例としては、1,2-シクロプロパン-ジイル、1,2-シクロブタン-ジイル、1,3-シクロブタン-ジイル、1,2-シクロペンタン-ジイル、1,3-シクロペンタン-ジイル、1,2-シクロヘキサン-ジイル、1,3-シクロヘキサン-ジイル、1,4-シクロヘキサン-ジイル、1,2-シクロヘプタン-ジイル、1,3-シクロヘプタン-ジイル、1,4-シクロヘプタン-ジイル、1,2-シクロオクタン-ジイル、1,3-シクロオクタン-ジイル、1,4-シクロオクタン-ジイル、1,5-シクロオクタン-ジイルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「アミノ酸残基」は、そのL-およびD-両方の立体異性体において、任意の自然の、または合成の、すなわち、非自然のアミノ酸残基を指す。自然のアミノ酸は、典型的にはタンパク質において生じる20個のアミノ酸残基のうちのいずれか1つであるが、用語合成/非自然アミノ酸は、20個の自然のアミノ酸のうちの1つではない、任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、および/またはそれらの類似体を指す。自然アミノ酸の非限定的な例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、メチオニン、スレオニン、およびトリプトファンが挙げられる。非自然アミノ酸の例としては、オルニチン、ホモリジン、2,4-ジアミノ酪酸(DABA)、2,3-ジアミノプロピオン酸(DAP)、8-アミノオクタン酸(EAO)、ホモフェニルアラニン、ホモバリン、ホモロイシンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明による薬学的組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体および/または賦形剤を使用して、従来の方法で製剤化され得る。担体(複数可)は、組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0058】
担体、投与様式、剤形などの以下の例示は、担体、投与様式、剤形などが本発明と共に使用するために選択され得る既知の可能性として列記される。しかしながら、当業者は、任意の所与の製剤および選択される投与様式が所望の結果を達成することを決定するために最初に試験されるべきであることを理解するだろう。
【0059】
投与方法は、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、粘膜(例えば、口腔、鼻孔内、頬側、膣、直腸、眼内)、くも膜下腔内、局所、および皮内経路を含むが、これらに限定されない。投与は全身または局所であり得る。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、脳内投与用に適応される。
【0060】
用語「担体」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または活性剤が投与されるビヒクルを指す。薬学的組成物中の担体は、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドンまたはポビドン)、トラガントガム、ゼラチン、デンプン、ラクトースもしくはラクトース一水和物などの結合剤、アルギン酸、トウモロコシデンプンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤または界面活性剤、およびコロイド状の二酸化ケイ素などの滑剤を含み得る。
【0061】
組成物は、注射により、例えば、ボーラス注射または連続注入により非経口的投与用に製剤化され得る。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは多投与容器で提示され得、防腐剤が添加される。組成物は、懸濁液、油中溶液もしくはエマルジョン、または水生ビヒクルなどの形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤用作用物質を含有し得る。別の方法としては、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、減菌発熱性物質除去蒸留水と構成する粉末形態であり得る。
【0062】
吸入による投与に関して、例えば、鼻投与に関して、本発明による組成物は、便宜上、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガスの使用により、加圧パックまたはネブライザからのエアロゾルスプレー供給の形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量した量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物の粉末ミックスおよびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基材を含有する、吸入器または注入器において使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジが製剤化され得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、上述の任意の既知の方法による投与用に製剤化される。本明細書において想定される特定の投与方法は、静脈内および脳内(脳内(intracerebral))投与である。
【0064】
上記に定義される実施形態のうちのいずれか1つによる薬学的組成物は、静脈内、脳内(脳内)、口腔、皮内、筋肉内、皮下、経皮、経粘膜、鼻孔内、または眼内投与用に製剤化され得る。
【0065】
本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例により図示される。
【実施例0066】
材料および方法(M&M)
化学物質
PDP-PEG-NHS(PDP:ピリジルジチオプロピオン酸塩)とも称される、NHS-PEG-OPSS(オルト-ピリジルジスルフィド-ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシルスクシンイミドエステル)(約2kDaの分子量)は、Creative PEGworks(Winston,USA)から購入した。ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)(約50kDaの平均分子量(Mn))、および無水ジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma Aldrich(Israel)から購入した。無水エタノールは、Romical(Israel)から購入した。すべての溶媒は、更に精製することなく使用された。
【0067】
約22kDaのLPEI(遊離塩基形態)の合成
カチオン性ポリマーの直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)は、前述のように合成された[16]。簡潔に、8.0g(0.16mmols)のポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)を、100mlの濃縮HCl(37%)で加水分解し、48時間還流して、白色の沈殿物を得た。減圧下で過剰のHClを除去し、残りの固体を50mlの水に溶解し、凍結乾燥させた(5g、78%、H-NMR、DO-d6、400MHz:一重項3.5ppm)。水性NaOH(3M)を添加することによって、得られたLPEI塩酸塩(4.5g)をアルカリ性にし、得られた白色の沈殿物を濾過し、中性になるまで水で洗浄した。次に、固体を水に溶解し、更に凍結乾燥して、白色の固体(2g、81%)を得た。
【0068】
LPEI-PEG2k-OPSS二抱合体の合成
174mg(8μmol)のLPEIを2.7mlの無水EtOHに溶解し、室温で15分間撹拌した。5倍のモル過剰のOPPS-PEG2k-CONHS(79mg、39.5μmol)を500μLの無水DMSOに溶解し、少しずつLPEI混合物に導入した。反応ミックスを、室温で3時間、ボルテックス撹拌機で、約800rpmで撹拌した。MacroPrep High S樹脂(BioRad)で充填されたHR10/10カラムを使用して、陽イオン交換クロマトグラフィーにより、異なるPEG置換LPEIを分離した。二抱合体の溶出画分の純度は、1ml/分の流量で25分にわたって5%~95%アセトニトリルの直線勾配を用いて、分析用Vydac C-8モノマー5μmカラム(300Å、4.6×150mm)を装備した逆相HPLCを使用して評価された。95%以上の純度の画分を組み合わせた。組み合わせた画分を20mMのHEPES(pH7.4)に対して更に透析した。二抱合体においてLPEIに抱合されたPEG2k基の比率は、H-NMRにより決定された。ポリエチレン-(CH-CH-O)-およびLPEI-(CH-CH-NH)-からの水素の積分値は、2つの抱合されたコポリマー間の比率を決定するために使用された。陽イオン交換から得られた様々な生成物のうち、LPEI-PEG2k-OPSS(二抱合体1:1、LPEI対PEGのモル比は約1:1)およびLPEI-(PEG2k-(OPSS)(二抱合体1:3、モル比は約1:3)の2つの生成物が三抱合体の生成用に選択された。コポリマーの濃度を評価するために、銅アッセイを使用した[17]。簡潔に、コポリマーをCuSO(23mgを100mlのアセテート緩衝液に溶解した)と20分間インキュベートし、285nmでのそれらの吸光度を測定した。
【0069】
タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
サンプル(30μL)を、100mMのDTTと共に、またはそれなしでSDSタンパク質サンプル緩衝液中に希釈し、次に、トリシンゲル(13%ポリアクリルアミド)に適用した。カソード緩衝液(0.1Mのトリス、0.1Mのトリシン、および0.1%のSDS(pH8.25))およびアノード緩衝液(0.21Mのトリス(pH8.9))を用いて電気泳動を実施し、InstantBlue(商標)で染色することによって、タンパク質バンドを可視化した。
【0070】
アフィボディ発現および精製
Her-2アフィボディ遺伝子をプラスミドpET28aにクローン化し、N末端ヘキサヒスチジル(His6)タグに融合されたZ:2891アフィボディおよびC末端にCys残基をコードするベクターを生成した。アフィボディを、以下のように大腸菌BL21(DE3)中に発現させた:37℃で、細胞を約0.7のOD600に成長させた。0.5mMの最終濃度にIPTGを添加し、続いて30℃で4時間インキュベートした。細胞ペレットを-80℃で保管した。アフィボディを精製するために、細胞ペレットを緩衝液A(20mM HEPES(pH7.4)、500mM NaCl、10%グリセロール、10mM イミダゾール、および2mM β-メルカプトエタノール)に再懸濁し、製造者の指示に従いマイクロ流動化装置プロセッサM-110EHIを用いて破砕した。4℃で10分間、12,000Xgで遠心分離することにより、可溶性画分を回収した。得られた画分をNi親和性カラム(Clontech,Mountain View,CA)に充填した。カラムを14カラム容量(cv)の緩衝液Aで洗浄した。その後、緩衝液B(20mM HEPES(pH7.4)、500mM NaCl、10%グリセロール、500mM イミダゾール、および2mM β-メルカプトエタノール)、5cvの6%緩衝液B、1.5cvの10%緩衝液B、2cvの30%緩衝液Bの増加濃度を用いて、段階的勾配溶離を実施した。結合タンパク質を5cvの100%緩衝液Bで溶出した(タンパク質精製施設Wolfson centre,Israel)。次に、溶出した画分をAmiconフィルタ(3kDaカットオフ)で濃縮し、ゲル濾過カラムSuperdex 30 prepグレード(120ml)(GE healthcare)上に充填した。精製したタンパク質をSDS-PAGEで更に分析し、抗アフィボディ抗体(Abcam)を用いて、ウエスタンブロット解析を使用して確認した。前述の逆相HPLC(Merck-HitachiモデルL-7100)により、純度を更に評価した。
【0071】
PEI-PEG-リガンドアフィボディ(三抱合体1:1および1:3)の合成
4.97mgの各二抱合体(1:1および1:3)を940μlの20mM HEPES(pH7.4)に溶解した。次に、HBS中の3.4mgのHer-2アフィボディを反応物に滴下して添加した。溶解度を増加させるために、4mlの20mM HEPESと700μLのアセトニトリル(HPLCグレード)を反応ミックスに導入した。A343が完全なターンオーバーを示すまで、反応物を、室温で更にボルテックスにかけた(800rpm)。得られた三抱合体を、MacroPrep High S樹脂(BioRad)で充填したHR10/10カラム上で陽イオン交換クロマトグラフィーにより(3M NaClを含む、20mM HEPES(pH7.4)~20mM HEPESの3段階勾配溶離を使用して)精製した。溶出した画分を分析用RP-HPLCに導入して、三抱合体の純度を評価し、95%以上の純度の画分は組み合わされ、-80°Cに維持された。三抱合体の濃度は銅アッセイ(上記の通り)により決定された。抱合したタンパク質の量は、Nano-Drop 2000を使用して、A280により決定された。
【0072】
標的タンパク質に抱合された化学ベクターの検証および純度
三抱合体をSDS-PAGEで電気泳動し、InstantBlue(商標)で染色して、アフィボディのLPEI-PEG2kへの抱合を確認した。三抱合体の純度は、220nmで監視しながら、1ml/分で、分析用Vydac C-8モノマー5μmカラム(300Å、4.6×150mm)を使用して、逆相HPLCにより確認された。移動相として0.1%TFAを含有する3回蒸留した水(TDW)で25分間、アセトニトリル5%~95%での勾配溶離がHPLC分析に使用された。
【0073】
ポリプレックスの形成
ホタルのルシフェラーゼおよびGFP(System Biosciences,Inc)をコードするプラスミドpGreenFire1を、大腸菌において増幅し、製造者のプロトコルに従い、Qiagen Plasmid Maxi Kits(Qiagen,Valencia,CA,USA)により精製した。三抱合体1:1または三抱合体1:3は、HEPES緩衝液グルコース中N/P=6の比率で(N=LPEIからの窒素、P=DNAからのリン酸)プラスミドと複合体を形成し、2つのポリプレックスを生成した。ポリプレックス粒子の完全な形成を可能にするために、サンプルを室温で30分間インキュベートした。ポリプレックスサンプルにおける最終プラスミド濃度は100μg/mlであり、一方、DNase保護アッセイおよびルシフェラーゼアッセイに関しては、プラスミドの最終濃度は10μg/mlであった。
【0074】
ξ電位およびサイズ測定
HBG緩衝液中への分散後に得たポリプレックス粒子のサイズは、容量分布計算を用いて、Nano-ZSゼータ電位測定装置(Malvern,UK)を使用して、動的光散乱により、25℃で測定された。装置は633nmレーザーを装備し、光散乱は、後方散乱技術(NIBS,Non-Invasive Back-Scatter)により173°で検出された。各サンプルは3連で行われた。ζ電位測定もNano-ZSゼータ電位測定装置(Malvern,UK)を使用して、25℃で実施された。ζ電位は、HBG緩衝液(pH7.4)中でポリプレックスをインキュベートした後に評価された。移動粒子からの光散乱は17°で検出され、スモルコフスキーモデルはヘンリー関数の値を決定するために使用された。
【0075】
原子間力顕微鏡
AFM測定に関して、ポリプレックスを、新しく切断したMicaディスク(V1 12mm,Ted Pella USA)上に設置した。撮像は、QI(商標)モードで、商業用AFMのNanoWizard(登録商標)3(JPK instrument,Berlin,Germany)を使用して、25℃のHBG緩衝液において実行された。10~30pN nm-1の範囲のバネ定数のSi(MSNL-10シリーズ、Bruker)カンチレバーは、約10%の絶対誤差の上限で熱揺動方法(AFMソフトウェアに含まれる)により較正された。QI(商標)設定は次の通りである:Z長:0.1μm;加えた力:0.5nN;速度:50μm/秒。
【0076】
DNase保護アッセイ
DNase I保護アッセイは前述のように行われた[18]。簡潔に、単独、ポリプレックス1:1、またはポリプレックス1:3を伴う1μgのpGreenFire1 DNAを、HBS溶液中50μlの最終容量に混合した。室温で30分間インキュベートした後、2μLのDNase I(2単位)またはPBSを10μLの各サンプルに添加し、37℃で15分間インキュベートした。DNase I活性は、室温で10分間、5μLの100mM EDTAを添加することにより停止された。三抱合体からプラスミドを解離するために、10μLの5mg/mLヘパリン(Sigma,St.Louis,MO)を添加し、チューブを室温で2時間インキュベートした。サンプルを0.8%アガロースゲル上で電気泳動し、臭化エチジウムで染色した。Gel Doc EZ Imager(Bio Rad Laboratories,Inc)を使用して、画像を取得した。
【0077】
細胞培養
Her-2過剰発現BT474細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、10U/Lペニシリン、および10mg/Lのストレプトマイシンで補足したRPMI培地中で、37℃で、5%CO下で培養した。MDA-MB-231ヒト乳癌細胞を、10%FBS、10U/Lペニシリン、および10mg/Lストレプトマイシンを有するLeibovitz L-15培地中で、COなしで37℃で培養した。細胞系はATCCからであり、細胞培養試薬はBiological Industries,Bet Ha'emek,Israelからであった。
【0078】
ルシフェラーゼアッセイおよび共焦点顕微鏡
10000個のBT474およびMDA-MB-231細胞を、3連で、96ウェルプレートで平板培養した。処理の48時間後、細胞を、プラスミドと複合体を形成した三抱合体1:1および三抱合体1:3で処理し、細胞をPBSで洗浄し、ウェル当たり30μlの細胞溶解緩衝液(Promega,Mannheim,Germany)で溶解した。製造者の推奨に従い、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega)を用いて、ルシフェラーゼ活性を25μlの溶解物のサンプルにおいて測定した。Luminoskan(商標)AscentMicroplateLuminometer(Thermo Scientific)を用いて、測定を実施した。相対的光単位(RLU)における値は、3連サンプルからのルシフェラーゼ活性の平均および標準偏差として表される。GFPを可視化するために、共焦点顕微鏡(FV-1200 Olympus)を使用し、これはプラスミドpGreenFire1の内在化を反映するためにとられた。写真は×10倍率で撮られた。
【0079】
細胞生存率の定量化
細胞生存率は、前述のメチレンブルーを用いた比色分析アッセイにより測定された[19]。簡潔に、10000個のBT474およびMDA-MB-231細胞を、3連で、96ウェルプレートで平板培養した。細胞を、1μg/mlのpGreenFire1を含有するポリプレックス1:1および1:3で処理した。処理の48時間後、細胞をPBS(pH7.4)中1%ホルムアルデヒドで固定し、DDWで洗浄し、次に、ホウ酸塩緩衝液中1%(wt/vol)溶液のメチレンブルーで1時間染色した。その後、染色を0.1M HClで抽出し、染色溶液の光学密度を、マイクロプレートリーダー(ELx800 BIO-TEX instruments Inc.)において、630nmで読み取った。
【0080】
実施例1-チオール反応性コポリマーの合成
3.1.以前の研究は、LPEIのPEG化およびEGFR標的部分へのその抱合を示した[13]。しかしながら、単一LPEI鎖上のPEG化の量は完全に特徴付けされていない。差次的にPEG化されたコポリマーを生成するために、LPEI上の二級アミンをPEG上の保護基に直交する末端NHSエステルに抱合した。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、LPEIの二次骨格アミンと自然発生的に反応性であり、LPEIの効率的なPEG化を提供する。更に、PEIのアミンとのNHS-PEG OPSSの反応は、安定した不可逆的なアミド結合の形成をもたらす(図1)。
【0081】
PEG化された生成物は、陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製された。1つは120mS/cmで、もう1つは132mS/cmでの(データ示さず)、2つのピークが高濃度のNaClで溶出された。2つの生成物は、それらのLPEI:PEGの比率において、およびその結果としてそれらの正味の正電荷において異なると推定された。H-NMRスペクトルは、PEG(-CH-CH-O-)上の水素原子の相対的な積分値(図2)、およびLPEI(-CH-CH-NH-)上の水素原子の積分値(図2)を使用して分析された。この分析は、第1ピークにおいて溶出された材料が、LPEIの各モルがPEGの約3モルに抱合されたコポリマーからなったことを示した。この生成物は、LPEI-(PEG2k-(OPSS)(「二抱合体1:3」)と命名された。第2のピークは、等モルのPEGがLPEIに抱合されたコポリマーからなり、LPEI-PEG2k-OPSS(「二抱合体1:1」)と命名された(図2)。
【0082】
実施例2.三抱合体LPEI-PEG2k-Her2アフィボディ(三抱合体1:1)およびLPEI-(PEG2k)-(Her2)アフィボディ(三抱合体1:3)の合成
この研究の主な目的は、Her-2過剰発現腫瘍細胞を標的とするであろうカチオン性ポリマーを開発することであった。Her-2は「オーファン受容体」であるため、Her-2受容体を標的とするアフィボディ分子(リガンドではなく)は、Her-2標的三抱合体を生成するために使用された。我々は、更なる抱合を可能にするために、C-末端にCys残基を有するHer-2アフィボディを発現および精製した。チオール反応性コポリマーの二抱合体1:1および1:3は、その端末Cys残基を通してHer-2アフィボディに抱合され、それぞれ、三抱合体1:1および1:3を生成した(図3)。三抱合体を生成するために、反応は、低濃度のアフィボディで(凝集を阻止するため)、および溶解度増加のために有機極性溶媒として10%アセトニトリル(ACN)の存在下で実施されなければならなかった。両三抱合体反応の反応物収率は、銅アッセイにより決定されたとき、約33%であった。アフィボディの二抱合体への抱合を確認するために、三抱合体生成物をDTTで還元し、SDS-PAGE上で分離した。クマシーブルー染色は、還元した三抱合体がアフィボディを放出したことを確認した(図4)。三抱合体中に存在するHer-2アフィボディの量は、A280を測定することにより決定された。銅アッセイを使用して、我々はLPEIを定量化した。上述のように、H-NMR分析は、精製した二抱合体のLPEI:PEGの比率が1:1または1:3であったことを示した。Her-2アフィボディおよびLPEIのモル比を比較することにより、我々は、三抱合体1:1におけるHer-2アフィボディ対LPEIの平均比率が1:1であり、三抱合体1:3では、平均比率が3:1であったと決定した。よって、我々は、アフィボディのLPEI-PEGへのほぼ完全な抱合が達成されたと結論付けた。
【0083】
ポリプレックスを生成するために、材料および方法において記載されるように、純粋な二抱合体および三抱合体(1:1および1:3)はプラスミドDNAと複合体を形成した(図3)。
【0084】
実施例3.ポリプレックスのξ電位およびサイズ測定
我々は、次に、動的光散乱(DLS)を使用して、サイズおよび表面電荷に関してポリプレックスを特徴付けた。ポリプレックスのサイズは、その送達特性に大きな影響を有する[21]。ポリプレックスのサイズに対する標的リガンドの作用を検証するために、我々は、二抱合体1:1および1:3の両方をプラスミドと複合体を形成させ、それらのサイズを測定することに決めた。二抱合体1:1は、115.2±8.2nmの平均粒子サイズを有し、二抱合体1:3は、253.1±9.5nmの平均粒子サイズを有した。プラスミドを有する三抱合体1:1から生成されたポリプレックスは、141±5.8nmの平均粒子サイズをもたらし、一方、プラスミドと複合体を形成した三抱合体1:3は、256±24.2nmの平均粒子サイズを有した(図5)。最小粒子(73.9±3.0nm)は、プラスミドをLPEI単独と複合体を形成することにより生成されたポリプレックスにおいて得られた。アフィボディの二抱合体への抱合は、粒子サイズに対して少ししか影響がなかった。しかしながら、PEG基の数は、粒子サイズに影響を及ぼし、PEG基が立体障害をもたらし、プラスミド縮合に干渉することを示唆した。
【0085】
表面正電荷は負に帯電している細胞表面へのポリプレックス結合を容易にするが、過剰な正電荷は非特異的結合および顕著な毒性につながる可能性がある[12]。図6に示される様々な複合体のξ電位は、PEG単位の数の増加に伴いξ電位の減少を示した以前の研究と一致した[13]。我々の化学ベクターの表面電荷に対するPEG基の作用を評価するために、我々は、プラスミドDNAの、前駆体である二抱合体1:1および1:3、ならびに三抱合体1:1および1:3との複合体形成により形成されたポリプレックスのξ電位を測定した。二抱合体ポリプレックス1:1は27.0±0.1mVの平均ξ電位を有し、二抱合体ポリプレックス1:3は20.0±1.0mVの平均ξ電位を有した。三抱合体ポリプレックス1:1は平均17.1±0.7mVのξ電位を示し、一方、三抱合体ポリプレックス1:3は平均10.2±0.44mVを示した(図6)。サイズと違い、ポリプレックスのξ電位は、PEG基の数およびHer-2アフィボディの抱合の両方により影響を受けた。最小で、最も正に帯電しているポリプレックスが裸LPEIで得られたが、これらの粒子は極めて毒性である[22]。我々は、PEG基および標的部分の付加が毒性を低減するだろうと予測したが、ポリプレックスはそれでもサイズが比較的小さいため、核酸送達ベクターとしてのそれらの効率は損なわれないだろうと期待した。
【0086】
実施例4.原子間力顕微鏡を使用したポリプレックス形状の評価.
粒子形状およびその送達特性に対する影響の重要性は重要視されている[23]。我々は、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、溶液中の三抱合体で得たポリプレックスの形態を分析した。三抱合体1:1および1:3ポリプレックスの直径は両方ともナノサイズ範囲(図7A図7B)であり、DLSにより得られた結果と一致した。三抱合体1:1ポリプレックスは、主に楕円形の粒子を示した。大半の粒子は直径が101nm~178nmの範囲であり、平均粒子直径は142nmであった。少数の粒子は格別に大きく、一部は>250nmにも達した(図7A)。三抱合体1:3ポリプレックスは、形状がより不均一であり、更に、未定義の粒子形状を有する大きな凝集体をもたらした(図7B)。これらは、長さが150nm~650nmの範囲であり、平均粒子長は312nmであり、その幅は85nm~400nmの範囲であり、平均幅は175nmであった。
【0087】
実施例5.DNAse保護アッセイ.
成功裏のインビボ遺伝子送達は、ヌクレアーゼからの効率的な保護に依存する。分解からプラスミドを保護し、効率的な遺伝子送達を可能にする三抱合体の能力を決定するために、ポリプレックスをDNase Iで処理し、ゲル電気泳動を使用して分析した。図8に示されるように、裸プラスミドpGreenFire1 DNAは、2単位のDNase Iと共に10分間インキュベートした後、完全に分解された。対照的に、ポリプレックスがプラスミドと三抱合体を混合することによって生成された場合、プラスミドはDNase Iによる分解から保護された。プラスミドの完全な保護は三抱合体ポリプレックス1:3において観察されたが、プラスミドの超らせん(s.c.)から開環(o.c.)形態へのシフトにより示されるように、ある程度のニッキングが三抱合体ポリプレックス1:1において生じた。三抱合体ポリプレックス1:3によって付与されたDNase Iからの強い保護は、これらの複合体における追加のPEG-タンパク質単位により提供された立体障害の増加に起因し得る。実際、以前の研究は、酵素および血清因子とのそれらの相互作用を妨げることにより、PEIのPEG化がポリプレックスを安定させ、血中におけるそれらの循環を増加させることができることを示した[24,25]。
【0088】
実施例6.標的三抱合体ポリプレックスの生物活性
ポリプレックスのサイズおよびξ電位は、標的DNA送達および遺伝子発現の効率に影響を及ぼすが、サイズの作用は、特定の抱合体に依存するように思われる[2][21]。三抱合体ポリプレックス1:1および1:3のトランスフェクションの特異性および効率を評価するために、Her-2を差示的に発現する2つの乳癌細胞系が利用された。三抱合体1:1および1:3のポリプレックスは、pGreenFire1を用いて形成され、MDA-MB-231細胞(約9×10Her-2受容体/細胞を発現する[26])およびBT474細胞(約1×10Her-2受容体/細胞を発現する[27])にトランスフェクトされた。異なるルシフェラーゼ活性がトランスフェクションの48時間後に観察された。三抱合体ポリプレックス1:1および1:3の両方は、BT474細胞において、MDA-MB-231よりも300倍を超える高いルシフェラーゼ活性をもたらした(p<0.001)(図9A)。BT474へのより効率的な遺伝子送達は、共焦点顕微鏡により見られるように、GFP発現によって確認された(図9B)。これらの結果は、ポリプレックスの選択性がHer-2発現に依存することを示す。
【0089】
三抱合体ポリプレックス1:1によるBT474細胞への標的送達は、三抱合体1:3がより多くの標的部分を有したにも関わらず、三抱合体ポリプレックス1:3による送達よりも10倍効率的であった(図9A、B)。これは、三抱合体ポリプレックス1:1のより高いξ電位およびより下位サイズを反映し得る。
【0090】
正に帯電しているLPEI系化学ベクターは顕著な毒性と関係する。したがって、我々は、次に、三抱合体ポリプレックス1:1および1:3での処理後のMDA-MB-231およびBT474細胞の生存を試験した。メチレンブルーアッセイにおいて、いずれのポリプレックスもMDA-MB-231細胞において細胞毒性作用を示さなかった。類似する結果が三抱合体ポリプレックス1:3で処理したBT474細胞において観察された。しかしながら、細胞の細胞毒性において、わずかな増加が三抱合体ポリプレックス1:1で処理したBT474において観察された(図9C)。まとめると、これらの結果は、サイズが小さく、ξ電位が高い三抱合体ポリプレックス1:1が、毒性のわずかな増加を伴って、効率的な標的送達特性を付与することを示す。よって、三抱合体1:1のポリプレックスは、遺伝子送達において、より保護された三抱合体ポリプレックス1:3よりも優れている。
【0091】
実施例7.PEI-PEG-Her2アフィボディの抗腫瘍活性
ポリイノシン-ポリシトシン(PolyIC)と複合体を形成するPEI-PEG-Her2アフィボディ(PPHA)は強い抗腫瘍活性を有する。Her-2を過剰発現する乳癌細胞系は、PolyICとのPEI-PEG-Her2アフィボディの複合体により強く阻害されることが分かった。強い阻害は、トラスツズマブ耐性Her2過剰発現乳癌細胞系のものでも観察された。
【0092】
図10は、ベクター/ポリプレックスがハーセプチン/トラスツズマブ耐性細胞を含む、Her2過剰発現細胞を阻害することを示す。
【0093】
0.5×10MCF-7 HER-2細胞をヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が平均100mmに達した後、処置を開始した。1mg/kgのpIC/PPHAを24時間ごとに静脈内注射した。2つのマウス群に、週に1回(矢印で示される)、トラスツズマブを静脈内投与した。腫瘍成長は週に2回測定された。複合体PolyIC/PPHAは、図11に例示されるように、これらの細胞系がヌードマウスに移植されたマウスモデルにおいて、強い抗腫瘍活性を有することが分かった。
【0094】
実施例8.LPEI-PEG-EGFRアフィボディの合成
5mg(2×10-4mmol)のLPEI-PEG2k-OPSS(二抱合体1:1)を、1mlの20mM HEPES(pH7.4)に溶解した。次に、HBS中の3.4mg(3.8×10-4mmol、約2当量)のEGFRアフィボディを滴下して反応物に添加した。溶解度を増加させるために、4mlの20mM HEPESと700μLのアセトニトリル(HPLCグレード)を反応ミックスに導入した。A343が完全なターンオーバーを示すまで、反応物を室温および暗条件で更にボルテックスにかけた(800rpm)。MacroPrep High S樹脂(BioRad)で充填されたHR10/10カラム上で、陽イオン交換クロマトグラフィーにより(20mM HEPES(pH7.4)から3M NaClを含有する20mM HEPESの3段階勾配溶離を使用する)、得られた三抱合体を精製した。溶出した画分を分析用RP-HPLCに導入して、LPEI-PEG-EGFR三抱合体の純度を評価し、95%以上の純度の画分は組み合わされ、-80°Cに維持された。三抱合体の濃度は銅アッセイにより決定された。抱合したタンパク質の量は、Nano-Drop 2000を使用して、A280により決定された。
【0095】
実施例9.PEI-PEG-EGFRアフィボディの抗腫瘍活性
PolyICと複合体を形成するPEI-PEG-EGFRアフィボディ(PPEA)は強い抗腫瘍活性を有する。EGFRを過剰発現する様々な細胞系は、ポリイノシン/ポリシトシン(PolyIC)と複合体を形成するPEI-PEG-EGFRアフィボディ(PPEA)の複合体によって強く阻害されることが分かった。PPEAの有効性はPPEよりも高いことが分かる(図12A図12B)。
【0096】
複合体PolyIC/PPEAは、これらの細胞系がヌードマウスに移植されたマウスモデルにおいて、強い抗腫瘍活性を有することが分かった。
【0097】
5周齢の65匹の雌のヌードマウスに、200万個のA431細胞を皮下注射した。7日後、平均体積が136mmの腫瘍が成長し、以下のようにマウスを6つの群(7~8匹のマウス/群)に分けた:UT;pIC/PPEA、25グラムのマウスに関して0.75mg/kg=250μlのpIC、IC、6/週;pI/PPEA、0.75mg/kg IV、6/週;pIC/PPEA低、25グラムのマウスに関して0.1mg/kg=250μlの0.01μg/μl pf pIC、IC、6/週。pIC、pIならびにPPEおよびPPEAは、複合体において通常(0.1μg/μl)よりも低い濃度のpICを得るために、混合前に希釈された。図13は、インビボにおけるPolyIC/PPEffibodyの活性を示す。同じく、PPEA/PolyICの有効性はPolyIC/PPEよりも高い。
【0098】
実施例10.LPEI-PEG-h/mEGFの合成
10.1.LPEI-PEG-SH中間体の合成
【化13】
5mlの20mM HEPES(pH7.4)緩衝液中の5mgのLPEI-PEG-OPSS(0.2μmol、24000g/molにより)に、50倍モル過剰のジチオスレイトール(DTT;0.1mmol,1.5mg)を添加し、15mlのプラスチック製遠心分離チューブ中で、室温で20分間、ボルテックスにより混合した。還元したニ抱合体を、5mlのサンプルループを使用して、Sephadex G-25カラム(20ml,4×5ml)上で分離し、溶出を、1.0ml/分の流量で、20mM HEPES(pH7.4)を用いて実施し、上述と同じ条件および方法を用いてHPLCにより分析した。
【0099】
エルマンアッセイは、LPEI-PEG-SH中間体におけるスルフヒドリル基濃度を評価するために使用された。SH基の濃度は、エルマン試薬と定量的に反応する遊離チオールにより放出される、発色団6-ニトロ-3-チオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-カルボン酸の濃度と正比例する。発色団は、サンプルまたはエルマン試薬からいずれの干渉もなく、412nmでの吸光度を介して測定された。
【0100】
10.2 m/hEGF-MCC 中間体の合成
【化14】
合成概要.h/mEGF(ヒト/マウス上皮成長因子)をh/mEGF-MCC(EGF-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸;MCC)に修飾し、後にLPEI-PEG-SHとの抱合に使用するために精製した。MCC基を付加することによってh/mEGFを活性化することにより、DTTによるタンパク質の減少を回避し、h/mEGFの過酷な条件への曝露を回避することを可能にする。このように、抱合反応の効率は改善され、更に、-EGF-MCCは、数週間、-80℃で保管することができる安定した材料である。
【0101】
hEGF-MCCの合成:1mgのhEGF(160nmol)を0.5mlの水中で再構築し、次にアルゴンで脱気した。hEGFの量は、nano-drop 2000を使用して、280nmで決定された。激しく混合しながら、溶液を0.5mlの200mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)および60%エタノールに添加した。アルゴン下で、溶液を、0.5mlの100%エタノール中の10当量の4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸3-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルナトリウム塩(スルホ-SMCC)と混合した。わずかに酸性pHの反応混合物(pH6)は、hEGFのN末端アミノ基を選択的に修飾するために必要であった。室温で4時間後、官能化されたペプチドを、1時間1Lで3回、次いで一晩にわたって1Lで、HBS(100mM)に対して透析バック(3.5kカットオフ)により精製した。HPLC-質量スペクトル(MS)を使用して、hEGF-MCCを分析し、スルホ-SMCCのhEGFへの抱合が1つ存在することを示す、6435.7g/molの分子量を有した。HPLC-MS分析は、逆相C-18カラム(phenomenex,Aeris,3.6μm,2.1mm×50mm,100A)を装備したThermo SCIENTIFIC/LCQ FLEETを使用して実施された。
【0102】
mEGF-MCCの合成:0.5mg(0.088μmol総量)のマウスEGF(PeproTech)を、2100μLの20mM HEPES緩衝液に溶解し、透明で粘稠な溶液を形成した。1mgのスルホ-SMCC(30当量,Ornat,IL)を、0.9mLの無水EtOHに溶解し、合計3.0mlの容量中30%EtOHの最終濃度を達成するように、EGF溶液とゆっくり混合した。短時間の混合は透明な溶液をもたらした。反応槽を周囲温度で4時間振盪させた。その期間後、溶液は透明のままであった。mEGF-MCCを、Sephadex G-25カラム(4×5ml)上で最初に分離し、溶出を、1.0ml/分の流量で、20mM HEPES(pH7.4)を用いて実施し、更に精製し、LPEI-PEG-OPSSに関して上述した同じ条件および標準方法を用いてHPLCにより分析した。
【0103】
10.3 LPEI-PEG-h/mEGFの合成
【化15】
hEGF-MCCまたはmEGF-MCCの当量の1.5を、1.0当量のLPEI-PEG-SHと混合した。反応混合物を、最初に室温で2時間撹拌し、次に、ゆっくり振盪させながら、+4℃で4日間インキュベートした。0.5ml/分の流量で、A18緩衝液注入口を介して勾配ポンプを使用して、ならびに溶媒A:20mM HEPES(pH7.4)および溶媒B:20mM HEPES(pH7.4)NaCl 3.0Mを使用して、陽イオン交換クロマトグラフィー(10/1cm Tricorn GE Healthcareカラムにおいて7.8cm MacroPrep High S樹脂(BioRad))により、反応生成物(LPEI-PEG-hEGFまたはLPEI-PEG-mEGF)を分離した。精製したLPEI-PEG-hEGFまたはLPEI-PEG-mEGF三抱合体をHPLCにより分析し、「銅アッセイ」およびEGF光度アッセイにより定量化して、それぞれ、[LPEI]および[EGF]濃度を測定した。
【0104】
10.4 LPEI-PEG-hEGFの生物活性.
我々が通常利用する細胞アッセイを使用して、PolyIC/LPEI-PEG-hEGF複合体(PPEm)の活性を、Schaffert D,Kiss M,Rоedl W,Shir A,Levitzki A,Ogris M,Wagner E.,2011(Poly(I:C)-mediated tumor growth suppression in EGF-receptor overexpressing tumors using EGF-polyethylene glycol-linear polyethylenimine as carrier.Pharm Res.28:731-41)に記載されるPolyIC/mPPE(マウス)と比較した。新しいHEGF抱合体はEGFR過剰発現細胞の死滅においてより有効であることが分かった(図14)。適量のEGFR分子をそれらの表面上に発現する細胞(U87MG細胞は80,000個のEGFR/細胞を発現する)は、莫大な量を過剰発現する細胞(U87MGwtEGFR細胞は1,000,000個のEGFR/細胞を発現する)よりも治療にあまり感受性ではない。
【0105】
実施例11.DUPA類似体-DyLight 680の合成
固体支持体としてのFmoc-Cys(trt)ワング樹脂に対して標準的なFmoc固相ペプチド合成(SPPS)手順を使用して、ペプチドを合成した。膨潤:ジクロロメタン中で少なくとも2時間、樹脂を膨潤させた。Fmocの除去:ジメチルホルムアミド(DMF)中20%ピペリジンの溶液で樹脂を最初に処理し(2×20分)、次に、DMF(5×2分)で洗浄した。Fmoc-Asp(OtBu)-OHのカップリング:3当量のFmoc-Asp(OtBu)-OH、3当量の(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)(HATU)を15mlのDMFに溶解し、8当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEAまたはDIPEA)を混合物に添加した。1時間、樹脂に添加する前に、溶液を室温で10分間混合した(事前活性化)。アスパラギン酸の完全なカップリングを確実にするために、新しい混合物でカップリングを2回繰り返した。完全なカップリングを確実にするために、カイザー試験を実施した。樹脂を、DMF(3×2分)およびジクロロメタン(DCM)(2×2分)で洗浄した。キャッピング:樹脂を無水酢酸(10当量)およびDMF中のDIPEA(8当量)の溶液で20分間処理し、DMF(3×2分)で洗浄した。Fmocの除去:DMF中20%ピペリジンの溶液で樹脂を最初に処理し(2×20分)、次に、DMFで洗浄した(5×2分)。Fmoc-ジアミノプロピオン(DAP)酸のカップリング:3当量のFmoc-ジアミノプロピオン(DAP)酸、3当量のHATU、および8当量のDIEAを、15mlのDMFに溶解した。1時間、樹脂に添加する前に、溶液を室温で10分間混合した(事前活性化)。完全なカップリングを確実にするために、カイザー試験を実施した。樹脂を、DMF(3×2分)およびDCM(2×2分)で洗浄した。ペプチド伸長:次の化合物を以下の順序で樹脂にカップリングした:(1)Fmoc-Phe-OH、(2)Fmoc-Phe-OH、(3)Fmoc-8-アミノオクタン(EAO)酸、および(4)OtBu-Glu(Fmoc)-OH。Fmocの除去:DMF中20%ピペリジンの溶液で樹脂を処理し(2×20分)、次に、DMF(5×2分)およびDCM(3×2分)で洗浄した。DUPAリガンドのカップリング:0.9mLのトリエチルアミン(6.6mmol)を、15mLのDCM中の0.9グラム(3mmol)のL-グルタミン酸ジ-tertブチルエステル塩酸塩と組み合わせた。この溶液を、45分にわたって0℃の5mLのDCMおよびトリホスゲン(0.35g、1.1mmol)の溶液に滴下して添加した。更に50分間撹拌した後、混合物を追加の0.9mLのトリエチルアミンと共に樹脂に添加した。樹脂を含む反応混合物を3時間振盪し、DMF(3×2分)で洗浄した。完全な切断:樹脂をDCMで洗浄し(3×2分)、真空下で乾燥させた。0℃のトリフルオロ酢酸(TFA)中の2.5%TDWおよび2.5%トリイソプロピルシランの溶液を添加した。反応を室温で4時間進ませ、濾過し、エーテル/ヘキサン1:1の冷却した溶液で処理し、遠心分離によりペプチドを沈殿させた。粗ペプチドをアセトニトリル/TDW1:1溶液に溶解し、凍結乾燥させた。分取逆相(RP)HPLCにより、粗生成物を精製した。DyLight 680カップリング:アルゴン雰囲気下で、1mgのDyLight(商標)680(Life Technologies,カタログ番号46418)を、50当量の無水ジイソプロピルエチルアミンを含有する無水ジメチルスルホキシド(DMSO;100μL)に溶解した。無水DMSO(100μL)に溶解された2倍モル過剰のDUPAペプチドリンカーを上記の混合物に添加し、室温で撹拌した。生成物の形成は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)により確認された。次に、粗DUPA近赤外(NIR)プローブを分取RP-HPLCにより精製した。
【0106】
実施例12.Dupa類似体-薬物リードの合成
固体支持体としてのFmoc-Cys(trt)ワング樹脂に対して標準的なFmoc SPPS手順を使用して、ペプチドを合成した。膨潤:ジクロロメタン中で少なくとも2時間、樹脂を膨潤させた。Fmocの除去:DMF中20%ピペリジンの溶液で樹脂を処理し(2×20分)、次に、DMFで洗浄した(5×2分)。Fmoc-Gly-OHのカップリング:3当量のFmoc-Gly-OHおよび3当量のHATUを15mlのDMFに溶解し、続いて8当量のDIEAを添加した。1時間、樹脂に添加する前に、溶液を室温で10分間混合した(事前活性化)。新しい混合物でカップリングを2回繰り返した。完全なカップリングを確実にするために、カイザー試験を実施した。樹脂を、DMF(3×2分)およびDCM(2×2分)で洗浄した。キャッピング:樹脂を無水酢酸(10当量)およびDMF中のDIPEA(8当量)の溶液で20分間処理し、DMF(3×2分)で洗浄した。Fmocの除去:DMF中20%ピペリジンの溶液で樹脂を処理し(2×20分)、次に、DMFで洗浄した(5×2分)。Fmoc-Trp(Boc)-OHのカップリング:3当量のFmoc-Trp(Boc)-OH、3当量のHATU、および8当量のDIEAを15mlのDMFに溶解した。1時間、樹脂に添加する前に、溶液を室温で10分間混合した(事前活性化)。完全なカップリングを確実にするために、カイザー試験を実施した。樹脂を、DMF(3×2分)およびDCM(2×2分)で洗浄した。ペプチド伸長:次の化合物を以下の順序で樹脂にカップリングした:(1)Fmoc-Trp(Boc)-OH、(2)Fmoc-Gly-OH、(3)Fmoc-Phe-OH、(4)Fmoc-8-アミノオクタン(EAO)酸、および(5)OtBu-Glu(Fmoc)-OH。Fmocの除去:DMF中20%ピペリジンの溶液で樹脂を処理し(2×20分)、次に、DMF(5×2分)およびDCM(3×2分)で洗浄した。DUPAリガンドのカップリング:0.9mLのトリエチルアミン(6.6mmol)を、15mLのDCM中の0.9グラム(3mmol)のL-グルタミン酸ジ-tertブチルエステル塩酸塩と組み合わせた。この溶液を、45分にわたって0℃の5mLのDCMおよびトリホスゲン(0.35g、1.1mmol)の溶液に滴下して添加した。更に50分間撹拌した後、混合物を追加の0.9mLのトリエチルアミンと共に樹脂に添加した。樹脂を含む反応混合物を3時間振盪し、DMF(3×2分)で洗浄した。完全な切断:樹脂をDCMで洗浄し(3×2分)、真空下で乾燥させた。0℃のトリフルオロ酢酸(TFA)中の2.5%TDWおよび2.5%トリイソプロピルシランの溶液を添加した。反応を室温で4時間進ませ、濾過し、エーテル/ヘキサン1:1の冷却した溶液で処理し、遠心分離によりDUPA類似体を含有するペプチドを沈殿させた。粗ペプチドをアセトニトリル/TDW1:1溶液に溶解し、凍結乾燥させた。粗生成物を分取RP-HPLCにより精製した。PEI-PEG-DUPA類似体の合成:4.37mg(1.2×10-4mmol)の二抱合体1:1または1:3(上記の本明細書の実施例1に説明されるように調製された)を、940μlの20mM HEPES(pH7.4)に溶解した。次に、1:1の比率の2mlのアセトニトリル(ACN;HPLCグレード)/(20mM HEPES(pH7.4))に溶解した、1mg(9.1×10-4mmol、約5当量)のDUPA類似体を、反応物に滴下して添加した。次に、反応物中概算約10%全濃度のACNに達するように、追加の4mLの20mMを反応混合物に導入した。波長343(A343)での吸収が完全なターンオーバーを示すまで、室温の暗所で、反応物を更にボルテックスにかけた(800rpm)。MacroPrep High S樹脂(BioRad)で充填されたHR10/10カラム上で、陽イオン交換クロマトグラフィーにより(20mM HEPES(pH7.4)から3M NaClを含有する20mM HEPESの3段階勾配溶離を使用する)、得られた三抱合体を精製した。溶出した画分を分析用RP-HPLCに導入して、三抱合体の純度を評価した。95%以上の純度を有する画分は組み合わされ、-80°Cで維持された。三抱合体の濃度は銅アッセイにより決定された。抱合されたDUPA類似体の量は、発色団(Trpアミノ酸)吸収により決定された。
【0107】
実施例13.PolyIC/LPEI-PEG-DUPAは前立腺癌を標的とする.
前立腺表面膜抗原(PSMA)は、転移性前立腺癌において過剰発現される。これは大半の固形腫瘍の新生血管系においても見られる。PSMAはリガンド結合時に内在化されるため、我々は、これを標的として選択し、PolyIC PSMA標的ベクターを設計および合成する。実際、DUPA-Daylight680は、PSMA過剰発現細胞(LNCaP)に内在化されるが、MCF7(過剰発現Her2)(図示せず)には内在化されない。
【0108】
図15は、PEI-PEG-DUPA(PPD)/PolyICがLNCaPおよびVCaP細胞に対して高度に有効であることを示す。生存率は曝露の96時間後に測定された。PPDはサイトカインの生成も誘導する(図16A図16B)。図17において、LNCaP細胞により条件付けされた培地が、条件付けされた倍中で成長したPBMCにおいて、サイトカインINF-γ、IL-2、およびTNF-αの発現を刺激することを示す。その後、PolyIC/PPD処理されたLNCaP細胞と、PSMAを発現しないPC3-ルシフェラーゼ細胞の同時インキュベーションが、バイスタンダー効果により、最大70%のPC3-ルシフェラーゼ細胞の死滅をもたらしたことを示した。健康なヒトPBMCの付加は、効果を強く増強し、90%のPC3細胞の死滅につながる(図18)。
【0109】
実施例14.インビボでの癌治療.
PolyIC/PPDは、SCIDマウスで試験された際、顕著な抗腫瘍作用を有する(図19)。腫瘍阻害は、実験マウスにおける免疫系の欠如により完了していない。
【0110】
参考文献
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【0111】
[項目1]
2本鎖RNA(dsRNA)とポリマー抱合体とのポリプレックスであって、ポリマー抱合体が、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分に共有結合された直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)からなり、各PEG部分が、癌抗原に結合することができる標的部分にリンカーを介して抱合されているが、但し、標的部分が、マウスEGFまたは配列YHWYGYTPQNVI(GE11)(配列番号1)のペプチドでないことを条件とする、ポリプレックス。
[項目2]
dsRNAが、ポリイノシン-ポリシチジル酸の2本鎖RNA(ポリI:C)であり、ポリマー抱合体が、1つのPEG部分(LPEI-PEG1:1)または3つのPEG部分(LPEI-PEG1:3)に共有結合されたLPEIからなり、癌抗原が、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、または前立腺表面膜抗原(PSMA)である、項目1に記載のポリプレックス。
[項目3]
1つ以上のPEG部分が各々独立して、LPEIと-NH-CO-結合、およびリンカーと、-NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、-S-S-、-O-CO-、または-CO-O-から選択される結合を形成する、項目1に記載のポリプレックス。
[項目4]
1つ以上のPEG部分の1つ1つが、LPEIおよびリンカーと-NH-CO-結合を形成する、項目3に記載のポリプレックス。
[項目5]
リンカーが、標的部分と-S-S-、NH-CO-、-CO-NH-、-S-C-、O-CO-、-CO-O-、または尿素(-NH-CO-NH)結合を形成する、項目1から項目4のいずれか一項に記載のポリプレックス。
[項目6]
リンカーが、-CO-R-R-R、または3~7個のアミノ酸残基からなるペプチド部分から選択され、
式中、
が、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、またはヘテロアリーレンジイルから選択され、
が、不在であるか、または-S-であり、
が、不在であるか、または式
[化1]
のものであり、
が、(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、(C-C)アルキニレン、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルケニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C)アルキニレン-(C-C)シクロアルキレン、(C-C10)アリーレン-ジイル、ヘテロアリーレンジイル、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリーレン-ジイル、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリーレンジイルから選択され、
(C-C)アルキレン、(C-C)アルケニレン、または(C-C)アルキニレンの1つ1つが、任意に、ハロゲン、-COR、-COOR、-OCOOR、-OCON(R、-CN、-NO、-SR、-OR、-N(R、-CON(R、-SO、-SOH、-S(=O)R、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-N(R)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、もしくはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される少なくとも1つの基によって中断され、
が、Hまたは(C-C)アルキルである、項目5に記載のポリプレックス。
[項目7]
が、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択され、任意に、ハロゲン、-COH、-COOH、-OCOOH、-OCONH、-CN、-NO、-SH、-OH、-NH、-CONH、-SOH、-SOH、-S(=O)H、(C-C10)アリール、(C-C)アルキレン-(C-C10)アリール、ヘテロアリール、または(C-C)アルキレン-ヘテロアリールから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換され、更に任意に、S、O、もしくはNから選択される1つ以上の同一もしくは異なるヘテロ原子、および/または-NH-CO-、-CO-NH-、-NH-、-N(C-Cアルキル)-、-N(C-C10アリール)-、(C-C10)アリーレン-ジイル、もしくはヘテロアリーレンジイルから各々独立して選択される少なくとも1つの基によって中断される、項目6に記載のポリプレックス。
[項目8]
が、(C-C)アルキレン、好ましくは(C-C)アルキレンから選択される、項目7に記載のポリプレックス。
[項目9]
が、-S-である、項目6に記載のポリプレックス。
[項目10]
が、不在であるか、または
[化2]
であり、式中、
が、(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレン、好ましくは(C-C)アルキレン-(C-C)シクロアルキレンである、項目6に記載のポリプレックス。
[項目11]
が、-CH-CH-であり、
が、-S-であり、
が、不在であるか、または
[化3]
であり、式中、Rが、
[化4]
である、項目6から項目10のいずれか一項に記載のポリプレックス。
[項目12]
ペプチド部分が、そのメルカプト基を介して標的部分に連結される、-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-(配列番号2)または-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-(配列番号3)である、項目6に記載のポリプレックス。
[項目13]
ポリマー抱合体が、標的部分(単数/複数)に連結される、式(I)~(VIII)の二抱合体である、項目1から項目12のいずれか一項に記載のポリプレックス:
(I)
[化5]

(II)
[化6]

(III)-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-PEG2k-LPEI、
(IV)-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k-LPEI、
(V)
[化7]

(VI)
[化8]

(VII)
[化9]
(式中、Rが、
[化10]
である)、または
(VIII)
[化11]
(式中、Rが、
[化12]
である)。
[項目14]
(a)標的部分が、HER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が、式(I)のものであり、HER2アフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(b)標的部分が、HER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が、式(V)のものであり、HER2アフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(c)標的部分が、EGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が、式(I)のものであり、EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(d)標的部分が、EGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が、式(V)のものであり、EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(e)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、式(II)のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、式(VI)のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(g)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、式(III)のものである、
(h)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、式(VII)のものである、
(i)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、式(IV)のものである、あるいは
(j)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、式(VIII)のものである、項目13に記載のポリプレックス。
[項目15]
EGFRアフィボディが、配列番号4に記載されるアミノ酸配列のものであり、HER2アフィボディが、配列番号5に記載されるアミノ酸配列のものである、項目14に記載のポリプレックス。
[項目16]
薬学的に許容される担体および項目1から項目15のいずれか一項に記載のポリプレックスを含む、薬学的組成物。
[項目17]
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、項目14または項目15に記載のポリプレックス。
[項目18]
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌の治療に使用するための、項目16に記載の薬学的組成物。
[項目19]
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌が、非小細胞肺癌、乳癌、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、腺癌、卵巣癌、膀胱癌、または前立腺癌、およびこれらの転移癌から選択される、項目17に記載のポリプレックス。
[項目20]
ポリプレックスが、下記(c)、(d)、(e)、または(f)において定義される通りである、項目19に記載のポリプレックス:
(c)標的部分が、EGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が、下記式(I)
(I)
[化13]
のものであり、EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(d)標的部分が、EGFRアフィボディであり、ポリマー抱合体が、下記式(V)
(V)
[化14]
のものであり、EGFRアフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(e)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、下記式(II)
(II)
[化15]
のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、下記式(VI)
(VI)
[化16]
のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される。
[項目21]
HER2過剰発現細胞を特徴とする癌が、乳癌、卵巣癌、胃癌、および子宮の漿液性子宮内膜癌などの侵攻性形態の子宮癌から選択される、項目17に記載のポリプレックス。
[項目22]
HER2過剰発現細胞を特徴とする癌が、ハーセプチン/トラスツズマブ耐性癌である、項目21に記載のポリプレックス。
[項目23]
ポリプレックスが、下記(a)、(b)、(e)、または(f)において定義される通りである、項目21または項目22に記載のポリプレックス:
(a)標的部分が、HER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が、下記式(I)
(I)
[化17]
のものであり、HER2アフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(b)標的部分が、HER2アフィボディであり、ポリマー抱合体が、下記式(V)
(V)
[化18]
のものであり、HER2アフィボディが、そのメルカプト基を介して連結される、
(e)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、下記式(II)
(II)
[化19]
のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される、
(f)標的部分が、hEGFであり、ポリマー抱合体が、下記式(VI)
(VI)
[化20]
のものであり、hEGFが、そのアミノ基を介して連結される。
[項目24]
癌が、前立腺癌であり、ポリプレックスが、下記(g)、(h)、(i)、または(j)において定義される通りである、項目17に記載のポリプレックス:
(g)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、下記式(III)
(III)-(NH-(CH-CO)-Phe-Phe-(NH-CH-CH(NH)-CO)-Asp-Cys-PEG2k-LPEI
のものである、
(h)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、下記式(VII)
(VII)
[化21]
(式中、Rが、
[化22]
である)のものである、
(i)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、下記式(IV)
(IV)-(NH-(CH-CO)-Phe-Gly-Trp-Trp-Gly-Cys-PEG2k-LPEI
のものである、
(j)標的部分が、HOOC(CH-CH(COOH)-NH-CO-NH-CH(COOH)-(CH-CO-(DUPA残基)であり、ポリマー抱合体が、下記式(VIII)
(VIII)
[化23]
(式中、Rが、
[化24]
である)のものである。
[項目25]
項目2から項目15のいずれか一項に記載のポリプレックスであって、EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するために、必要とする対象に投与される、ポリプレックス。
[項目26]
EGFR過剰発現細胞を特徴とする癌、HER2過剰発現細胞を特徴とする癌、および前立腺癌から選択される癌を治療するための、薬学的に許容される担体および項目2から項目15のいずれか一項に記載のポリプレックスを含む、薬学的組成物。
[項目27]
免疫細胞と組み合わせて使用するための、項目17および項目19から項目24のいずれか一項に記載のポリプレックス。
[項目28]
免疫細胞と組み合わせて使用するための、項目26に記載の薬学的組成物。
[項目29]
免疫細胞が、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的遺伝子操作T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である、項目27に記載のポリプレックス。
[項目30]
免疫細胞が、腫瘍浸潤T細胞(T-TIL)、腫瘍特異的遺伝子操作T細胞、または末梢血単核球(PBMC)である、項目28に記載の薬学的組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
【配列表】
2024028995000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【外国語明細書】