(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029012
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ペプチド交換蛋白質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240227BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240227BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20240227BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240227BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20240227BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K14/74
A61P37/02
A61P35/00
A61K38/17
A61K47/64
A61K39/145
A61K39/245
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/15
A61K35/17
A61P43/00 121
C12N5/0784
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213107
(22)【出願日】2023-12-18
(62)【分割の表示】P 2020560595の分割
【原出願日】2019-01-25
(31)【優先権主張番号】1801323.5
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1813737.2
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】500341551
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボイル ルイーズ ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ニーリンクックス アンドレアス ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】イルカ フローリン チューダー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペプチド交換触媒および哺乳類細胞の表面のMHCクラスI分子により提示されるペプチドレパートリーを調節する上におけるその使用を提供する。
【解決手段】本発明はTAP結合蛋白質関連(TAPBPR)の内腔ドメインを含むペプチド交換蛋白質に関するものであり、このTAPBPRは、可用性細胞外蛋白質あるいは膜結合性細胞表面蛋白質として哺乳類細胞に提示された際、MHCクラスIペプチド交換触媒として機能する。これは、例えば免疫原性ペプチドを腫瘍あるいは他の病的細胞に負荷し、T細胞による認識を誘導するというように、免疫反応を調節する上で有用な可能性がある。ペプチド交換蛋白質とその使用法を提示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TAP結合蛋白質関連(TAPBPR)のフラグメントを含む単離ペプチド交換蛋白質であって、TAPBPR内腔ドメインから成る前記フラグメント。
【請求項2】
SEQ ID NO: 2もしくはSEQ ID NO:22と少なくとも50%の配列同一性を持つアミノ酸配列から成るTAPBPRフラグメントである請求項1に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項3】
さらに標的ドメインを含む請求項1もしくは請求項2に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項4】
標的ドメインがリンカーを介してTAPBPRフラグメントと結合している請求項3に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項5】
標的ドメインが標的細胞に特異的に結合する請求項3もしくは請求項4に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項6】
標的細胞が癌細胞である請求項5に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項7】
標的ドメインが癌細胞表面の標的分子に特異的に結合する請求項6に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項8】
標的分子が、ErbB2, PDL1またはCD20である請求項7に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項9】
標的細胞が感染を受けた細胞である、請求項5に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項10】
病原体感染細胞がHIV、CMV、EBV、HPV、インフルエンザあるいは肝炎である、請求項9に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項11】
標的ドメインが、感染を受けた細胞表面の病原体抗原もしくは病原体感染により発現亢進した分子と特異的に結合する、請求項9もしくは請求項10に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項12】
病原体抗原がgp120およびgp41から選ばれたHIV抗原;UL11、UL142、UL9、UL1、UL5、UL16、UL55、UL74、UL75およびUL155 (gL)から選ばれたCMV抗原もしくはヘモアグルチニンお
よびノリラミニダーゼから選択されたインフルエンザ抗原である、請求項10に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項13】
標的細胞が抗原提示細胞である、請求項3もしくは請求項4に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項14】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項13に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項15】
標的ドメインが抗体分子、場合によりscFvあるいはナノボディである、請求項3から14のいずれかに記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項16】
標的ドメインが標的細胞の表面レセプターに対するリガンドである、請求項3から14までのいずれかに記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項17】
標的ドメインがCD4、CD20、PD1もしくは抗体のFcドメインである、請求項16に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項18】
SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 14、もしくは SEQ ID NO:16と少なくとも50%の配列同一性を持つアミノ酸配列から成る、請求項3から17のいずれかに記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項19】
ペプチド交換蛋白質であり、
(i)TAP結合蛋白質関連(TAPBPR)フラグメント、TAPBPR内腔ドメインを含む前記フラグメントおよびTAPBPR膜貫通性ドメイン;もしくは
(ii)TAPBPR内腔ドメインと非相同膜貫通性ドメインを含むTAP結合蛋白質関連(TAPBPR)
のフラグメントを含むペプチド交換蛋白質。
【請求項20】
前記フラグメントがTAPBPR細胞質ドメインを欠除している、請求項19に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項21】
さらに異種細胞の表面標的配列を含む、請求項19もしくは請求項20に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項22】
異種細胞表面の標的配列がCD8の細胞質ドメインを含む、請求項21に記載の単離ペプチ
ド交換蛋白質。
【請求項23】
SEQ ID NO:34と少なくとも50%の配列同一性を持つアミノ酸配列から成る、請求項2
2に記載の単離ペプチド交換蛋白質。
【請求項24】
請求項1から23のいずれかに記載の単離ペプチド交換蛋白質をコードする核酸。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸を含むベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸もしくは請求項25に記載のベクターを含む哺乳類細胞。
【請求項27】
その表面に請求項19から26のいずれかに記載のペプチド交換蛋白質を含む哺乳類細胞。
【請求項28】
哺乳類細胞の免疫原性を高める方法であり、表面MHCクラスI分子を持つ哺乳類細胞集団を提供し、前記哺乳類細胞集団を免疫原性ペプチドおよび請求項1から23のいずれかに記載のペプチド交換蛋白質もしくは請求項27に記載の哺乳類細胞と接触させ、ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを前記集団の細胞の表面MHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより哺乳類細胞の免疫原性を高めることを含む方法。
【請求項29】
抗原提示細胞を生成し、個体における免疫反応を刺激する方法であり、あらかじめ個体から得られた抗原提示細胞集団を提供し、in vitroで抗原提示細胞を請求項1から23のいずれかに記載のペプチド交換蛋白質もしくは請求項27に記載の哺乳類細胞および免疫原性ペプチドと接触させ、ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを抗原提示細胞の表面MHCクラスI分子に負荷するようにすることを含む方法。
【請求項30】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
さらに抗原提示細胞でT細胞集団を活性化することを含む請求項29から30のいずれか
に記載の方法。
【請求項32】
in vitroもしくはex vivoで行われる請求項29から31までのいずれかに記載の方法。
【請求項33】
さらに個体に哺乳類細胞、抗原提示細胞もしくは活性化T細胞を投与することを含む請求
項28から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
個体の標的細胞の免疫原性を高める方法であり、請求項3から18までのいずれかに記載の、個体の標的細胞と結合する標的ドメインを含むぺプチド交換蛋白質を個体に投与すること、個体に免疫原性ペプチドを投与することを含み、そうしてペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを標的細胞の表面MHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより、前記標的細胞の免疫原性を高める方法。
【請求項35】
請求項34に記載の個体の標的細胞の免疫原性を高める方法で使用するための、請求項3から18までのいずれかに記載のペプチド交換蛋白質。
【請求項36】
標的細胞が病的細胞である、請求項34もしくは35の記載のように使用される方法あるいは蛋白質。
【請求項37】
病的細胞が癌細胞あるいは病原体感染細胞である、請求項36の記載のように使用される方法あるいは蛋白質。
【請求項38】
個体の免疫反応を刺激する方法であり、個体に、請求項3から18までのいずれかに記載の、標的ドメインが個体の抗原提示細胞に結合するペプチド交換蛋白質を投与すること、個体に免疫原性ペプチドを投与することを含み、ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを抗原提示細胞の表面MHCクラスI分子に負荷するようにし、前記抗原提示細胞が個体の免疫反応を刺激するようにする方法。
【請求項39】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
免疫原性ペプチドがワクチンである、請求項26から39までのいずれかの記載のように使用される方法もしくは蛋白質。
【請求項41】
標的ペプチドを提示しているMHCクラスI分子を生成する方法であり、MHCクラスI分子を請求項1または請求項2のペプチド交換蛋白質および標的ペプチドと接触させることを含み、ペプチド交換蛋白質が標的ペプチドをMHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより標的ペプチドを提示するMHCクラスI分子を生成する方法。
【請求項42】
MHCクラスI分子が、ペプチド交換蛋白質との接触後に標的ペプチドに置換される初期ペプチドを提示する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
MHCクラスI分子が固体支持体に固定化される、請求項41もしくは42に記載の方法。
【請求項44】
MHCクラスI分子が、複数のMHCクラスI分子を含む多量体のサブユニットである請求項41もしくは42に記載の方法。
【請求項45】
前記多量体がストレプトアビジンで結合したビオチン化MHCクラスI分子を含む四両体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
標的ペプチドを提示するMHCクラスI分子をT細胞の集団と接触させること、およびMHCクラスI分子が前記集団内のT細胞への結合することを決定することをさらに含む請求項41から45までのいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ペプチド交換触媒および哺乳類細胞の表面のMHCクラスI分子により提示されるペプチドレパートリーを調節する上におけるその使用に関するものである。
【0002】
発明の背景
癌の免疫療法は最近大きな成長を見たが、現在の治療に対する腫瘍耐性の出現とともに、患者は新たな治療法を切実に必要としている1。抗PD1抗体や抗CTLA4抗体のような免疫チ
ェックポイント阻害剤の使用により、現在、Tリンパ球が腫瘍1、2を認識、破壊する機能
を活用できる可能性が出てきた。しかし、このような治療は、現在一部の患者、特に高い突然変異3-6荷重を持つ腫瘍患者にのみ有効である。腫瘍は自然の免疫コントロールある
いは免疫療法による免疫コントロールを数多くのメカニズムにより逃れており、例えば免疫編集プロセスが免疫原性7の低い腫瘍細胞を選択的に残す場合などである。従って、腫
瘍の免疫原性を増加させることができれば、より多くの患者集団に有効な治療が提供できる可能性があり、これには突然変異負荷の低い腫瘍も含まれる。
【0003】
細胞障害性T細胞は、MHCクラスI分子上に存在する免疫原性ペプチドを認識するため、こ
の分子上に提示される抗原を直接操作できることが、抗腫瘍および抗ウィルス免疫反応を亢進させる上での基本的な第一歩となるであろう。過去数年間、我々は、抗原処理および提示経路におけるIFN-γ誘導性MHCクラスI分子専用シャペロンであるTAPBPR機能を研究してきた7。TAPBPRはMHCクラスI分子8、9上のペプチドエディターとして機能し、細胞8表面に表現される最終的なペプチドレパートリーに影響を及ぼす。ER/シス-ゴルジ内でTAPBPRは、糖蛋白質のフォールディングをモニターするレジデント酵素であるUDP-グルコース 1
(UGT1):糖蛋白質グルコトランスフェラーゼとMHCクラスI分子の橋渡しを行い、品質管理チェックポイント10を提供する。TAPBPRは自然のレベルで表現されている場合には細胞内に存在するが、TAPBPRの過剰発現により、一部のTAPBPR蛋白質が細胞表面11に局在するようになることを我々は以前に観察した。
【0004】
概要
本発明の発明者は、TAPBPRの内腔ドメインは、可用性細胞外蛋白質あるいは膜結合性細胞表面蛋白質として哺乳類細胞に提示された場合、MHCクラスI分子交換触媒として機能する能力を保持していることを期せずして発見した。可溶性もしくは細胞外ペプチド交換触媒は、例えば免疫原性ペプチドを腫瘍細胞あるいは他の病的細胞に負荷し、T細胞による認
識を誘導するといったように、免疫反応の調節を介する多くの治療面での応用上有用である可能性がある。
【0005】
本発明の第一の態様は、TAP結合蛋白質関連(TAPBRP)のフラグメントを含むペプチド交
換蛋白質を提供し、上記フラグメントはTAPBPR内腔ドメインから成る。
【0006】
第一の態様のペプチド交換蛋白質は可溶性の場合も、あるいは表面結合性の場合もある。第一の態様の表面結合性ペプチド交換蛋白質はさらに異種の膜貫通性ドメインを含む場合がある。
【0007】
本発明の第二の態様では、TAPBPR内腔ドメインとTAPBPR膜貫通性ドメインから成るTAPBPRフラグメントを含むペプチド交換蛋白質を提供する。
【0008】
第一の態様の表面結合性ペプチド交換蛋白質あるいは第二の態様のペプチド交換蛋白質は
さらに異種細胞表面標的配列を含む場合がある。
【0009】
本発明の第三の態様では、TAPBPRフラグメントおよび標的ドメインを含むペプチド交換蛋白質を提供し、そのTAPBPRフラグメントは内腔ドメインを含んでいる。
【0010】
第三の態様のペプチド交換蛋白質は可溶性の場合がある。TAPBPRフラグメントは内腔ドメインから成る場合がある。
【0011】
本発明の第四の態様では、第一、第二、第三の態様のペプチド交換蛋白質をエンコードする核酸を提供する。
【0012】
本発明の第五の態様では、第四の態様の核酸を含むベクターを提供する。
【0013】
本発明の第六の態様では、その表面に第二の態様のペプチド交換蛋白質を含む哺乳類細胞を提供する。
【0014】
第七の態様では、哺乳類細胞の免疫原性を高めるin vitro、ex vivoもしくはin vivoの方法を提供し、表面MHCクラスI分子を有する哺乳類細胞集団を提供すること、前記哺乳類細胞集団を免疫原性ペプチドおよび第一、第二もしくは第三の態様のペプチド交換蛋白質と接触させることを含み、前記ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを前記細胞集団の細胞の表面のMHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより哺乳類細胞の免疫原性を高める。
【0015】
哺乳類細胞は、病的細胞、例えば癌細胞あるいは病原体の感染のある細胞の場合がある。
【0016】
第八の態様では、個体における標的細胞の免疫原性を高める方法を提供し、個体に第三の態様の、その標的ドメインが個体の標的細胞に結合するペプチド交換蛋白質を投与すること、個体に免疫原性ペプチドを投与することを含み、ペプチド交換蛋白質が標的細胞の表面のMHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷するようにし、これにより前記標的細胞の免疫原性を高める。
【0017】
標的細胞は、病的細胞、例えば癌細胞あるいは病原体の感染のある細胞の場合がある。
【0018】
第九の態様では、個体の免疫反応を刺激する、もしくは促進する方法を提供し、個体に第三の態様の、標的ドメインが個体の抗原提示細胞に結合するペプチド交換蛋白質を投与すること、個体に免疫原性ペプチドを投与することを含み、ペプチド交換蛋白質が抗原提示細胞の表面MHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷し、抗原提示細胞が個体における免疫反応を刺激するもしくは促進するようにする。
【0019】
第十の態様では、T細胞活性化のための抗原提示細胞を生成する方法を提供し、前もって
個体から得られた抗原提示細胞集団を提供すること、および抗原提示細胞を免疫原性ペプチドおよび第一、第二、第三の態様のペプチド交換蛋白質と接触させることを含み、ペプチド交換蛋白質が抗原提示細胞の表面のMHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷するようにする。
【0020】
第十の態様の方法は、in vitroもしくはex vivoの方法を含む場合がある。
【0021】
実施形態によっては、免疫原性ペプチドに対する個体のT細胞性免疫反応を刺激するため
にロードされた抗原提示細胞は個体に投与されることがある。
【0022】
他の実施形態では、抗原提示細胞は、免疫原性ペプチドに対してT細胞を活性化するため
に、T細胞集団と接触させられることがある。活性化されたT細胞は、免疫原性ペプチドに対する個体のT細胞性免疫反応を刺激するために個体に投与されることがある。
【0023】
第十一の態様では、個体における免疫反応を低減する方法を提供し、個体に第三の態様の、標的ドメインが個体の標的細胞に結合するペプチド交換蛋白質を投与すること、および個体に非免疫原性ペプチドを投与することを含み、ペプチド交換蛋白質が標的細胞の表面のMHCクラスI分子に非免疫原性ペプチドを負荷するようにし、標的細胞の免疫原性が個体において減少するようにする。
【0024】
好適な標的細胞としては抗原提示細胞もしくは免疫反応、例えば自己免疫反応を引き起こす組織または臓器と関連する細胞が含まれる。これは、例えばヒトの自己免疫性疾患、免疫介在性炎症性疾患もしくは臓器拒絶の治療に有用である可能性がある。
【0025】
本発明の第十二の態様では、標的ペプチドを提示するMHCクラスI分子を生成するin vitroの方法を提供し、MHCクラスI分子を第一もしくは第二の態様のペプチド交換蛋白質および標的ペプチドと接触させることを含み、ペプチド交換蛋白質がMHCクラスI分子に標的ペプチドを負荷するようにし、これにより標的ペプチドを提示するMHCクラスI分子を生成する。
【0026】
MHCクラスI分子はペプチド交換蛋白質との接触の後、標的ペプチドに置換される初期ペプチドを提示する可能性がある。
【0027】
実施形態によっては、標的ペプチドと特異的に結合するT細胞を同定および/または分離
を行うため、標的ペプチドを提示するMHCクラスI分子がT細胞集団と接触させられる場合
もある。
【0028】
本発明のその他の態様と実施形態は以下に詳述されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
図1はペプチド受容MHCクラスIが、表面TAPRBRを発現している細胞上にあることを示す。(a)TAPRBRが過剰発現すると細胞表面にTAPRBRが現れる。IFN-γ処理HeLaM細胞とHeLaM-TAPBPR
KO( -/+TAPBPR
WT形質導入)は、TAPBPR特異的mAb PeTe- 4で染色した。(b-e) TAPBPR
WTを過剰発現している細胞は、対照細胞に比べ外来性ペプチドとの結合増加を示す
。IFN-γ処理細胞は、HLA-A*68:02 特異的蛍光性ペプチド ETVSK*QSNVもしくはその非結
合型変異体EGVSK*QSNG (アンカー残基に突然変異を有している)とインキュベートし、
フローサイトメトリ―で分析した。(b、c)細胞を37℃で15分間10 nM (b) ETVSK*QSNV もしくは(c) EGVSK*QSNGとインキュベートした場合の典型的なペプチド結合の
ヒストグラム。細胞を(d) ETVSK*QSNV濃度を増加させ15分間処理した場合、または(e)10 nM ETVSK*QSNVで37℃、0-180分間処理した場合の(d)用量反応曲線およ
び(e)時間経過で、HeLaM、TAPBPR欠損(TAPBPR
KO)あるいはHLA-A、-B、-C 欠損(HLA-ABC
KO)変異型と比べTAPRBR
WTを過剰発現している細胞には外来性ペプチドの結合が増加
していることを示す。(e)において、10 nM EGVSK*QSNGで観察された結合は対照であ
る。線グラフは3つの異なる実験からの平均蛍光強度(MFI)-/+ s.e.mを示す。
【0030】
図2は、表面に発現したTAPBPRはMHCクラスI分子への外来性ペプチドの会合を増加させることを示す。(a、b)細胞膜(PM)を標的とするが小胞体(ER)を標的としないTAPBPRが細胞表面に検出され、そこのMHCクラスI分子と会合を示す。(a)PeTe-4を使用しIFN-γ
処理HeLaM-TAPBPR
KO 細胞( -/+ TAPBPR
WT、TAPBPR
PM、TAPBPR
ERもしくは TAPBPR
TN5で形
質導入)上での細胞表面TAPBPRの検出結果。注:HeLaMKO細胞へのTAPBPR
PMの形質導入は
、著しく高度のTAPBPRの表面発現を生じたため、形質導入レベルの低い細胞はその後TAPBPR
WT発現細胞と同様のTAPBPR表面発現を持つ細胞株を作るために使用された。(b)TAPBPRの細胞表面プールの免疫沈降は、PeTe-4で無傷の細胞を染色し、その後溶解しプロテイ
ンAセファロース添加、また残存細胞内TAPBPRプールを染色、次いでTAPBPR、 MHCクラスI(HC10使用)とUGT1に対し免疫沈降物と溶解物で、示されたようにウェスタンブロッティングを行った。(c、d)表面にTAPBPRを発現している細胞は、細胞内TAPBPRを有する細胞と比してMHCクラスI分子と会合している外来性ペプチドの顕著な増加を示す。IFN-γ処理細胞は37℃で15分間10 nM ETVSK*QSNV, YVVPFVAK*VもしくはEGVSK*QSNGとインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。(e、f、g)PMにタパシン標的を発現して
いる細胞は、細胞内タパシンを持つ細胞と比しわずかに外来性ペプチド会合の増加を示す。IFN-γ処理されたHeLaMTAPBPR
KO (-/+ tapasin
WT もしくは tapasin
PM形質導入)は(e) Pasta1で染色、または(f、g)37℃、15分間10 nM ETVSK*QSNV、YVVPFVAK*Vもしくは EGVSK*QSNGとインキュベートし、次いでフローサイトメトリーで分析した。(c、f)観察された典型的蛍光性ペプチド結合のヒストグラム。(d、g)棒グラフは3つの独
立した実験の蛍光性ペプチド結合のMFI -/+ s.e.mを示す。*P ≦0.05、 **P≦0.01、n/s 有意差無し、対応のない両側t検定使用。
【0031】
図3はMHCクラスIペプチド交換触媒として機能する表面TAPBPRを示す。
標識されていない競合ペプチドYVVPFVAKV (YVV)、ETVSEQSNV(ETV) もしくは ETVSEQSNG (ETVΔ2/9)のある状態、あるいは無い状態でのIFN-γ処理HeLa
KOTAPBPR
WT細胞から
の蛍光性ペプチド(a、b) YVVPKVAK*V (YVV*) もしくは (c、d) ETVSK*QSNV(ETV*
)の解離。細胞は37℃、15分間10 nM蛍光性ペプチドとインキュベート後、洗浄し
、次いで未標識の競合ペプチドの濃度を上げ37℃で15分間インキュベートした。(a
、c)ヒストグラムは100 nM競合ペプチドとのインキュベーション後に観察された蛍光性ペプチドの典型的解離を示す。(b、d)線グラフは、未標識ペプチドの濃度を上げ処理した場合の残存蛍光性ペプチドのパーセンテージ-/+ s.e.mで、(b)4つの、(d)3つ
の独立した実験から得られた結果を示す。
【0032】
図4は、外来性可溶性TAPBPRがMHCクラスI表面への外来性ペプチドの会合を強化していることを示す。(a、b)外来性可溶性TAPBPRは表面のMHCクラスI分子に結合し、親和性に基づいて外来性ペプチドの結合を(c-f)強化している。IFN-γ処理(a、c)HeLaMおよび
(b、e)HeLaM HLA-ABC
KO 細胞( -/+ HLA-A*68:02再構成)を37℃、15分間100 nM 可溶性 TAPBPR
WT(sol WT)もしくはTAPBPR
TN5(sol TN5)のある状態、もしくはない状態でインキュベートし、次いでPeTe-4を使い表面結合TAPBPRの検出(a、b)、もしくは37℃、15分間10 nM ETVSK*QSNV (ETV*)、YVVPFVAK*V(YVV*)もしくはEGVSK*QSNG (ETVΔ2/9)の存在下あるいは不在下でインキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。(c、e)観察された典型的な蛍光性ペプチド結合(d、f)棒グラフは3つの独立した実験からの蛍光性ペプチド結合のMFI -/+ s.e.m を示す。(g)IFN-γ処理HeLaMおよびHeLaM-HLA-ABC
KO 細胞(-/+ 100 nM TAPBPR処理、37℃、15分間、ETVSK*QSNV濃度を段階的に上昇)の用量反応曲線。線グラフは3つの独立した実験からのMFI -/+ s.e.mを示す。(h & i)HLA-A*02:01で再構成されたIFN-γ処理HeLaM-HLA-ABC
KO細胞を37℃、15分間1 μM可溶性TAPBPR
WTの存在下、あるいは不在下でインキュベート後、37℃
、15分間10nMのHLA-A2結合ペプチドNLVPK*VATV (NLV*)、CLGGK*LTMV(CLG*)、YLLEK*LWRL(YLL*)および YVVPFVAK*V(YVV*)とともに、あるいはこれらなしにインキュベート、もしくは非-HLA-A2結合対照としてETVSK*QSNV(ETV*)(HLA―A*A68:02特異
的)およびSRYWK*IRTR(SRY*)(HLAB* 27特異的)を使用しインキュベート。(h)フ
ローサイトメトリーで観察された典型的蛍光性ペプチド結合のヒストグラム。(i) 棒グラフは2連ウェルで検査を行った2つの独立した実験からのHeLaM HLA-ABC
KO+A2への蛍光性ペプチド結合-/+ s.e.m を示す。***P ≦ 0.001、****P≦0.0001、n/s 有
意差なし、対応のない両側t検定使用。
【0033】
図5は、TAPBPRを介してMHCクラスIに負荷された抗原ペプチドをT細胞レセプターが利用
できることを示す。HLA-A*02:01で再構成されたIFN-γ処理HeLaM HLA-ABC
KO細胞を37℃、15分間1 μM可溶性TAPBPR
WT(sol WT)もしくはTAPBPR
TN5(sol TN5)の存在下、
あるいは不在下でインキュベート後、10 nM 非標HLA-A2結合ペプチド(a,b)YLLEMLWRL、(c,d)CLGGLLTMVもしくは(e) NLVPMVATVで、あるいはこれらなしに15分間処理し
た。洗浄後、細胞はYLLEMLWRL/HLA-A2 複合体を認識するTCR様 mAb(a,b)L1、CLGGLLTMV/HLA-A2複合体を認識する (c、d)L2 で染色され、あるいは (e)放射線照射を受け、
次いでHLA-A2 拘束性 NLVPMVATV特異的CD8+ T細胞株とインキュベートした。棒グラフ(b、d)は3つの独立した実験からのTCR様 mAb 結合MFI -/+ s.e.mもしくは(e)2つの独
立した実験の代表的3連ウェルのfluorospotアッセイにおけるIFN-γ分泌を検出することにより測定されたT細胞活性を示す。***P ≦ 0.001、****P≦0.0001、対応のない両側t検定使用。
【0034】
図6はTAPBPRが腫瘍細胞に抗原ペプチドを負荷し、T細胞による認識を誘導することがで
きることを示す。MCF-7細胞は37℃、15分間1 μM soluble TAPBPR
WT もしくはTAPBPR
TN5を用い、あるいは用いずに処理され、次いで60分間10 nM(6a)IMDQK*PFSV、ELAGK*GILTV、LLGRK*SFEVあるいはRLLQK*TELV、(6b) NLVPK*VATV もしくは YLLEK*LWRL
、もしくは(6c & d) YLLEMLWRL(YLL)とともに、あるいはこれらなしにインキュベートされ、その後YLLEMLWRL/HLA-A2 複合体特異的なTCR様 mAb L1で染色された。(6d)3つの独立した実験からのMCF-7細胞に対するL1結合のMFI -/+ SD 。(6e)棒グラフは、
図6bと同様に処理(100 pMの非蛍光NLVPMVATVペプチドが使用されたことを除く)さ
れたMCF-7標的細胞とインキュベートされた場合に、HLA-A2 拘束性NLVPMVATV特異的CD8+ T 細胞株のT細胞活性がfluorospotアッセイにおいてIFN-γで測定された結果を示す。結
果は2つの独立した実験を代表する3連ウェル検査から得られたものである。誤差範囲-/+ SD。注:
図6a、6b & 6eでは、 IFNγ処理細胞が使用された。6b-eと同様の実検がHLA-A*02:01を発現しているHeLaM-HLA-ABC
KOを使用して行われ、
図16に示されている。*P ≦0.05、***P ≦ 0.001、****P≦0.0001対応のない両側t検定使用。
【0035】
図7はキメラペプチド交換アプローチの概念実証に使用された構成モデル。(上)標的細胞に形質導入され細胞膜上にGFPを発現するpDisplay-eGFPベクター。(下)sTAPBPRリン
カーGFPNB。この構成モデルでは可溶性TAPBPRをGFPナノボディにリンクする。様々なリンカー領域を持つ3つの異なる変異型が作成されており、抗体標的とMHCクラスIの間の可動部を提供する。この挿入部はpiggyBacベクターにあり、蛋白質は293T細胞で生成される。収率=約5mg/L (接着細胞株から) 註: 非グリコシル化蛋白質におけるTAPBPR 。
【0036】
図8はHeLa細胞上のGFP特異的ナノボディ融合TAPBPRにより仲介されるTAPBPR結合とペプ
チド交換を示す。(A)はHeLaMおよび抗GFP抗体を使用してpDisplay-eGFP 構成体(pD-GFP)で核酸導入を受けたHeLaMのGFP表面表現を示す。(B)ヒストグラムおよび(C)棒グ
ラフは組み換え可溶性TAPBPR(TAPBPR)とGFP特異的ナノボディ融合組み換えTAPBPR(TAPBPR-GFP
NB)のHeLaM細胞(左)および HeLaM-pD-GFP細胞(右)への結合を比較したもの
である。ヒストグラムは2つの細胞株が100 nM蛋白質とインキュベートされた場合のTAPBPRのレベルを示し、白い棒グラフは種々の濃度の蛋白質(0.001-100 nM)を使用した場合の結果の要約である。(D & E)はHeLa 細胞上に表現されているHLA-A68 (MHC class I)への外来性新生抗原ペプチドETVSK*QSNV(ETV*)の蛍光性変異体の結合を
示しており、この場合、細胞はB & C のように処理され、示された組み換えTAPBPR 蛋白
質とインキュベート後15分間10 nMペプチドとインキュベートされた。各バーは3つ
の独立した実験の平均値と標準偏差を表す。
【0037】
図9はMCF-7細胞上のGFP 特異的ナノボディ融合TAPBPRにより仲介されるペプチド交換を
示す。(a)はMCF-7細胞(-/+ pDisplayeGFP構成体を用いたトランスフェクション)の表面のGFP発現を示す。(b)は10 nM組み換え蛋白質とインキュベートした場合におけ
る MCF-7 細胞( -/+ 表面 GFP)へのTAPBPRの結合を示す。(c)はMCF-7 上に発現し
ているHLA-A2(MHC class I)への蛍光性外来性ウィルスペプチドNLVPK*VATV (CMV か
らのNLVPMVATVの誘導体)の結合を示す。
【0038】
図10はHer2-特異的-scFvにリンクした可溶性TAPBPR を含むキメラ蛋白質を示す。抗体
標的とMHCクラスIの間の可動部を提供するため様々なリンカー領域を持つ3つの異なる変異型が作成された。この挿入部はpiggyBacベクターにあり、蛋白質は293T細胞で生成された。GFP NBと同様の収率が得られた = 約5mg/L(接着細胞株から)。
【0039】
図11は、抗Her2 scFvとリンクしたTAPBPRがTAPBPR結合の標的をHer2依存性に腫瘍細胞
株としていることを示す。(A)は抗Her2抗体を用い、HeLaMおよびHer2を過剰発現(+Her2)しているHeLaMにおけるHerの表面発現を示す。注意 HeLaには内在性Her2がある。(B)ヒストグラムおよび(C)棒グラフは組み換え可溶性TAPBPR(TAPBPR)とHer2特異的scFv融合組み換えTAPBPR(TAPBPR-Her2-scFv)のHeLaM細胞(左)および HeLaM+Her2(右)への結合を比較したものである。ヒストグラムは2つの細胞株が100 nM蛋白質とイン
キュベートされた場合のTAPBPRのレベルを示し、白い棒グラフは種々の濃度の蛋白質(0.001-100 nM)を使用した場合の結果の要約である。(D & E)はHeLa 細胞に表
現されているHLA-A68(MHC class I)への外来性新生抗原ペプチドETVSK*QSNV (ETV*)
の蛍光性変異体の結合を示しており、この場合、細胞はB & C のように処理され、示された組み換えTAPBPR 蛋白質とインキュベート後15分間10 nMペプチドとインキュベートされた。各バーは3つの独立した実験の平均値と標準偏差を表す。
【0040】
図12は抗Her2 scFvにリンクした可溶性TAPBPRがHer2 依存性にTAPBPR結合の的を腫瘍細胞株に絞っていることを示す。(A)はHeLaM およびHer2 がノックアウトされたHeLaM (HeLaM-
Her2-KO)におけるHer2の表面発現を示す。(B)ヒストグラムおよび(C)棒グラ
フは100 nM組み換え可溶性TAPBPR (TAPBPR)と100 nM Her2特異的scFv融合組み換えTAPBPR(TAPBPR-Her2-scFv)のHeLaM細胞(左)および HeLaM
Her2KO細胞(右)への結
合を比較したものである。(D & E)はHeLaM 細胞上に表現されているHLA-A68(MHC class I)への外来性新生抗原ペプチドETVSK*QSNV(ETV*)の蛍光性変異体の結合を示してお
り、この場合、細胞はB & C のように処理され、示された組み換えTAPBPR 蛋白質とイン
キュベート後15分間10 nMペプチドとインキュベートされている。各バーは3つの独
立した実験の平均値と標準偏差を表す。
【0041】
図13はTAPBPR-Her2scFvが、ウィルス特異的T細胞レセプターで認識される免疫原性ウィルスペプチドを負荷することができることを示す。(A-D)は、示されている組み換えTAPBPR蛋白質とのインキュベート後、15分間10 nMのペプチドとインキュベートした後の、CMVからのpp65蛋白質由来のウィルスペプチド(A&B)NLVPK*VATV (NLV*)またはEBVからの(C&D) YLLEK*LWRL (YLL*)の蛍光性ペプチド変異体のHLA-ABC(HeLaM-ABC
KO)発現を欠
除するHeLaM細胞(-/+ HLA-A2形質導入)への結合を示す。A & C のヒストグラムでは、
100 nMの示されている組み換えTAPBPR蛋白質が使用された。(E)はEBVからの非蛍光
性YLLEMLWRLペプチドでインキュベート後、上記のようにTAPBPRで処理された細胞へのT細胞レセプター様mAb LMP-1での染色を示す。TCRはHLA-A2 分子上に存在するYLLEMLWRLペプチドに特異的である。各バーは3つの独立した実験の平均値と標準偏差を表す。
【0042】
図14はTAPBPR-Her2-scFv融合蛋白質が、低MHC class I の細胞も含めHer2 を発現して
いるヒト乳腺細胞株に作用することを示す。(A)ヒト乳癌細胞株 MCF-7 & SKBR3におけ
るMHC class I(HLA-A2)および Her2発現のフローサイトメトリー分析。棒グラフは(B
)YLL* ペプチドおよび (C)HLA-A2のある状況下でEBV特異的ペプチドYLLを認識するTCR様mAb試薬LMP-1の結合を示し、この場合、SKBR3とMCF-7 はペプチドなし、ペプチドのみ
、あるいは100 nM 可溶性TAPBPRもしくは100 nM TAPBPR-Her2抗体融合蛋白質の存
在下でインキュベートされた。これらの結果が明らかに示すのは、MHC class I (SKBR3
)あるいは Her2(MCF-7)が低レベルであっても、TAPBPR-her 2 抗体融合蛋白質は、これらの乳癌細胞株双方に極めて効率的に作用すること、この融合蛋白質は可溶性TAPBPR結合蛋白質単独より優れているということである。
【0043】
図15は、外来性マウスTAPBPRは免疫原性ペプチドをヒトMHC class I に負荷できるということを示す。上のパネルは、マウスTAPBPRの存在下あるいは不在下で、蛍光性外来性新生抗原ペプチドETVSK*QSNV(ETV*)のHeLa 細胞上に発現しているHLA-A68(MHC class I
)への結合を示す。下のパネルは比較のためヒトTAPBPRで行った同じ実験を示す。
【0044】
図16は細胞質尾部への変化に伴うTAPBPRのペプチド編集機能の発現レベルを示す。(A
)はTAPBPRの表面検出を、(B)は蛍光性ペプチドETVSK*QSNV(ETV*)の結合を示してお
り、この場合、細胞はTAPBPR
WT、TAPBPRのTMDを有するが、細胞質尾部を欠くTAPBPR
tailless および細胞質尾部がCD8で置換されているTAPBPR
CD8tailで形質導入を受けている。対照として非形質導入細胞の染色が含まれている。
【0045】
図17は高親和性ペプチド結合で、細胞から可溶性TAPBPRが解離することを示す。IFN-γ処理HeLaM細胞およびHLA-A*68:02で再構成された HeLa-HLA-ABC
KOは、37℃、15分間-/+ 100 nM可溶性TAPBPR
WTの条件でインキュベートされ、次いで37℃15分間、-/+ 10 nM EGVSK*QSNG(非HLA結合ペプチド)、ETVSK*QSNV(HLA結合ペプチド) もしくは YVVPFVAK*V(高親和性HLA結合ペプチド)の条件下でインキュベートされた。次いで細胞
表面の残存TAPBPR量が、TAPBPR特異的mAb PeTe4で染色することにより検出された。
【0046】
図18はペプチド負荷とHeLaM 細胞表面に発現しているHLA-A2分子のTCRによる認識を示
す。HLA-A*02:01で再構成されたHeLaM-HLA-ABC
KO細胞は 37℃、15分間、-/+ 1 μM
可溶性TAPBPR
WTもしくはTAPBPR
TN5の条件下でインキュベートされ、次いで 60分間、-/+ 10 nM (16a) NLVPK*VATVまたはYLLEK*LWRLまたは(16b)YLLEMLWRL(YLL)の条
件下で処理され、次いでYLLEMLWRL/HLA-A2複合体特異的TCR様mAb L1で染色された。(1
6c)3つの独立した実験の HeLaM-HLA-ABC
KOへの L1結合のMFI -/+ SD。(16d)棒グ
ラフはHLA-A2拘束性NLVPMVATV特異的CD8+ T細胞株のfluorospotアッセイにおいてIFN-γ
分泌で測定したT細胞活性で、この場合、細胞は、100 pMで非蛍光NLVPMVATVペプチド
が使用されたことを除き で処理されたようにHeLaM-HLA-ABC
KO標的細胞とインキュベー
トされた。結果は2つの独立した実験を代表する3連ウェル検査から得られたものである。誤差範囲-/+ SD。注:18a & 18dでは IFNγ 処理細胞が使用された。***P ≦ 0.001、****P≦0.0001、対応のない両側t検定使用。
【0047】
図19は可溶性TAPBPRがT細胞による腫瘍細胞の殺滅を増強することを示す。EL4は37℃、15分間、- /+ 1 μM soluble TAPBPR
WT もしくはTAPBPR
TN5の条件下でインキュベートされ、次いで(19a)PeTe-4を用い表面結合TAPBPRの検出、37℃、30分間、 -/+ 1 nM SIINFEK*Lの条件下でインキュベート、もしくは(19c)30分間、-/+ 1 nM 非標識SIINFEKL ペプチドの条件下でインキュベートを行い、次いで25-D1.16 mAb (SIINFEKL/H-2Kb複合体を認識)で染色した。ヒストグラムは3つの独立した実験を代表する。(19d)棒グラフは3つの独立した実験の25-D1.16 のMFI -/+ SDを示す。 (19e) -/+ 1 μM可溶性TAPBPR
WTもしくは TAPBPR
TN5の条件下で処理後、1 nM SIINFEKLペプチ
ドでインキュベートしたEL4細胞のOT1による殺滅。3連ウェルを用いた誤差バー-/+ s.e.m 。データは3つの独立した実験を代表する。注:表面発現H-2K
bはヒトのMHC I分子に比して相対的によりペプチドを受け入れやすい。10 nM のSIINFEKLでは、一部の外来性ペ
プチドは可溶性TAPBPR
WT不在下で観察された。OT1 T 細胞は高度に効果的な細胞障害性細胞であり、1-4時間で標的細胞の80-100% を殺すため、TAPBPR 仲介性ペプチド
結合と背景のペプチド結合を区別する目的で、我々はこの実験で使用する SIINFEKL 濃度を1nM に減らしたが、そうでない場合、標的細胞殺滅に対する可溶性TAPBPRの相加効果
を観察できないであろう。
【0048】
図20はPD-L1 特異的ナノボディにリンクした可溶性TAPBPRが、PD-L1依存性にTAPBPR結
合の対象を腫瘍とし、免疫原性ペプチドを腫瘍細胞株に負荷するように機能することを示す。(A)は HeLaMおよびPD-L1を過剰発現しているHeLaM(+PDL1)のPD-L1 の表面発現を示す。(B)ヒストグラムおよび(C)棒グラフは組み換え可溶性TAPBPR (TAPBPR)とPD-L1特異的ナノボディ融合組み換えTAPBPR(TAPBPR- PD-L1
NB)のHeLaM細胞(左)および HeLaM+PDL1(右)への結合を比較したものである。ヒストグラムは2つの細胞株が100 nM蛋白質とインキュベートされた場合のTAPBPRのレベルを示し、一方、棒グラフは種々の濃度の蛋白質(0.001-100 nM)を使用した場合の結果を要約したものである。
(D & E) はHeLa 細胞上に表現されているHLA-A68 (MHC class I)への外来性新生抗原ペプチドETVSK*QSNV(ETV*)の蛍光性変異体の結合を示しており、この場合、細胞はB & C のように処理され、示された組み換えTAPBPR 蛋白質とインキュベート後15分間10 nMペプチドとインキュベートされた。各バーは3つの独立した実験の平均値と標準偏差を表す。
【0049】
図21はTAPBPR と抗体フラグメントの間の種々の長さのリンカーをもつTAPBPR融合蛋白
質がすべて効果的に機能することを示す。3つの異なるリンカー配列(配列は
図7参照)
が(A&C)TAPBPR-GFP
NB融合および(B&D)TAPBPR-Her2-scFv 融合それぞれのTAPBPRと抗体フラグメントの間に挿入されている。(A & B)は、抗体フラグメントリガンド発現細
胞へのTAPBPR融合の結合能力は短、長、あるいは超長リンカーの使用とは関係なく同様であることを示す。(C&D)は、TAPBPR融合がHeLaM上に発現しているHLA分子へのペプチド
負荷を仲介する能力は、短、長、あるいは超長リンカーの使用とは関係なく同様であることを示す。注意することとして、この使用状況では、長リンカーは特に指示のない場合、TAPBPR-抗体融合に対して選択されたものである。
【0050】
図22は、TAPBPRが様々なHLA 分子、特にHLA-Aに対しペプチド交換を仲介できることを
示す。個々のHLA I異形態を発現しているHeLa-HLA-ABC
KO細胞は、37℃、15分間 1
μM TAPBPR とインキュベートされ、その後それぞれ対応するHLA I 異形態に特異的な蛍
光標識されたペプチドが加えられ、これは対立遺伝子依存性の時間(A*68:02 と A*23:01は15分間、その他は60分間)および対立遺伝子依存性濃度(A*68:02、 A*02:01、A*23:01、A*32:01は 10 nM 、その他は 100 nM)で行った。ヒストグラムは各HLA I発現細胞株へ結合した蛍光性ペプチドのレベルを示し、この場合細胞はペプチド
のみ(黒線)、あるいは(ペプチドおよびTAPBPR青線)とインキュベートされた。ペプチド処理されなかった検体が陰性対照として含まれた(灰色実線)。TAPBPRはすべてのHLA
分子上でペプチド交換を促進することが見いだされた。
【0051】
詳細な説明
この発明は、TAP結合蛋白関連(TAPBPR)のフラグメントを含む組み換えペプチド交換蛋
白質に関するものである。TAPBPRの内腔ドメインは、ここにおいてペプチドエディターとして機能することが示され、このドメインを含むペプチド交換蛋白質は、外来性ペプチドを細胞表面のMHCクラスI分子に負荷することができる細胞外あるいは細胞表面MHCクラスIペプチド交換触媒として活動することが示される。
【0052】
ペプチド交換蛋白質はTAP結合蛋白質関連(TAPBPR)のフラグメントを含む場合がある。
フラグメントは短縮TAPBPR蛋白質で、全長性蛋白質からアミノ酸が1つまたはそれ以上欠
損しているが、ペプチド交換活性を保っている。例えば、全長性TAP結合蛋白質に対して
、フラグメントは10以上、あるいは20以上、あるいは50以上、あるいは100以上の連続するアミノ酸配列を欠損する場合がある。実施形態によっては、TAPBPRフラグメントは全長性TAP結合蛋白質の細胞外ドメインおよび/または膜貫通性ドメインを欠く場合
がある。好適なTAPBPRフラグメントは全長性TAP結合蛋白質の内腔ドメインを含み、ある
いは内腔ドメインからなる場合がある。
【0053】
TAPBPRは哺乳類のTAPBPR(例、マウス)あるいはヒトTAPBPRでもよいが、ヒトTAPBPRが望ましい。
【0054】
ヒトTAPBPR(遺伝子ID: 55080)は細胞内ペプチド交換触媒であり、主に小胞体(ER)に
存在する。ヒトTAPBPR はNCBI データベース登録の参照アミノ酸配列NP_060479.3, XP_005253757.1もしくはSEQ ID NO: 18 を有する場合があり、参照ヌクレオチド配列NM_018009.4 もしくはSEQ ID NO:17によりコードされている場合もある。17.TAPBPRの 31 の対立遺伝子がヒト集団で同定されており、集団によりこの蛋白質は異なっている。6つ は主
要なアイソフォームであり、異なる集団において15-30%の頻度で個々の変異が見いだされている。マウスTAPBPR(遺伝子ID: 213233)はNCBI データベース登録の参照アミノ酸配列NP_663366.2もしくはSEQ ID NO: を持つ場合がある。20 を有する場合があり、参
照ヌクレオチド配列NM_145391.2 もしくはSEQ ID NO:17によりコードされている場合もある。19.
【0055】
TAPBPRフラグメントはTAPBPRの内腔ドメインを含む場合がある。TAPBPRの内腔ドメインは全長性ヒトTAPBPR結合蛋白質の残基22-405に存在し(リーダーを含む:例SEQ ID NO: 18
) 、N末端特異領域、IgVドメイン、 IgC ドメインを含む。実施形態によっては、内腔ドメインは残基I261(TN5 パッチ)、残基 E205、R207、Q209,Q272(TN6 パッチ)、 H210、 K211 & R213 (TN7 パッチ)および残基335-339を含む場合があり、これらは全て MHC class I への結合に関係する(Hermann et al (2013) J Immunology 191: 5743-5750)。内
腔ドメインはさらに残基22-35を含む場合があり、これはループを形成し、MHC class I
のペプチド結合溝と相互作用する。好適なTAPBPR内腔ドメインは次のアミノ酸配列、SEQ ID NO: 2 または SEQ ID NO: 22またはこれらの配列の変異型を含む場合がある。TAPBPR
内腔ドメインは次のヌクレオチド配列によりコードされる場合がある。SEQ ID NO: 1 ま
たは SEQ ID NO: 21またはこれらの配列の変異型を含む場合がある。
【0056】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質は、可溶性で、哺乳類細胞の表面あるいは内部で膜に結合していない場合がある。特に、ペプチド交換蛋白質は、膜貫通性ドメイン、膜アンカー、あるいは細胞内膜あるいは発現中もしくは発現後に細胞膜に共有結合で結合する可能性のある他の構造を欠損する場合がある。
【0057】
ここに記載されている可溶性ペプチド交換蛋白質では、TAPBPRフラグメントはTAPBPRの内腔ドメインからなる場合がある。可溶性ペプチド交換蛋白質は内腔ドメイン外のTAPBPRの配列を欠損する場合があり、すなわちTAPBPRフラグメントはペプチド交換蛋白質の唯一のTAPBPR配列のこともある。例えば、ペプチド交換蛋白質はTAPBPR膜貫通性ドメイン、細胞外ドメイン、あるいは他の非内腔ドメインを欠損する場合がある。
【0058】
他の実施形態では、ここに記載されたようなペプチド交換蛋白質は哺乳類細胞の表面において細胞膜に結合している場合がある。例えば、ペプチド交換蛋白質は細胞膜へ蛋白質を付着させる膜貫通性ドメイン(TMD)を含む場合がある。TMDはTAPBPR TMDのことも、あるいは異種TMDのこともある。実施形態によっては、TMDは、発現後ペプチド交換蛋白質を細胞膜に局在させるのに十分である場合がある。他の実施形態では、表面結合ペプチド交換蛋白質はさらに、発現後ペプチド交換蛋白質を細胞膜に局在させる細胞表面標的配列を含
む場合がある。
【0059】
異種膜貫通性ドメインを含む表面結合ペプチド交換蛋白質においては、TAPBPRフラグメントがTAPBPRの内腔ドメインを含む場合がある。他の表面結合ペプチド交換蛋白質においては、TAPBPRフラグメントはTAPBPRの内腔ドメインとTMDの両者を含む場合がある。TAPBPR
のTMDはヒトTAPBPR配列の全長の407-426残基に局在しており(リーダーを含む)、SEQ ID
NO: 32 またはその変異体のアミノ酸配列を含む場合がある。好適なTAPBPRフラグメントは全長性ヒトTAPBPR配列の全長ヒトTAPBPRの427-468残基に局在している細胞質尾部を欠
如する場合がある。(SEQ ID NO: 18に示されている通り)。
【0060】
ペプチド交換蛋白質のTAPBPRフラグメントはペプチド交換活性を示し、外来性ペプチドを細胞表面MHCクラスI分子に負荷することができる。
【0061】
MHC class I分子を発現している細胞は、(i)ここに記載されているような可用性細胞外ペプチド交換蛋白質、(ii)ここに記載されているような表面結合ペプチド交換蛋白質を持つ細胞、あるいは(iii) MHC class I 分子を発現している細胞の表面に結合する、ここに記載されているようなキメラペプチド交換蛋白質に暴露される場合がある。
【0062】
ここに記載されているような細胞表面MHCクラスI分子の負荷は、ペプチド交換蛋白質で処理されない細胞に比べて外来性ペプチドを提示する細胞表面のMHCクラスI分子数を増加させる可能性がある。例えば、外来性ペプチドを提示する、細胞表面のMHCクラスI分子数はTAPBPRの不在下に比べ、TAPBPRの存在下では、30倍以上、40倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上,100倍以上、150倍以上、200倍以上増加する可能性がある。細胞は、ペプチド交換蛋白質による処理のない場合、外来性ペプチドをまったく、あるいは実際上提示しない可能性がある。
【0063】
実施形態によっては、MHCクラスI分子を発現している細胞により提示される外来性ペプチドは外来性ペプチドと同じアミノ酸配列を持たない可能性もある。他の実施形態では、細胞は外来性ペプチドと同じアミノ酸配列を持つ外来性ペプチドを低レベルに提示する可能性がある。ペプチド交換蛋白質は、外来性ペプチドを細胞表面のMHCクラスI分子に負荷することにより提示されるアミノ酸配列を持つペプチドの量を増加させる可能性がある。
【0064】
十分な外来性ペプチドが細胞表面のMHCクラスI分子に負荷され、個体における、ペプチドに対するT細胞反応を刺激する可能性がある。
【0065】
実施形態によっては、ペプチド交換蛋白質はTAPBPRフラグメントからなる場合がある。これは、例えば、in vitroあるいは ex vivoの哺乳類細胞の免疫原性を変化させるうえで有用である可能性がある。可溶性ペプチド交換蛋白質では、TAPBPRフラグメントはTAPBPR内腔ドメインを含む場合がある。例えば、TAPBPRフラグメントはTAPBPR TMDおよびTAPBPR細胞質尾部を欠損し、例えば、内腔ドメインからなる場合がある。表面結合ペプチド交換蛋白質では、TAPBPRフラグメントはTAPBPR内腔ドメインとTMDを含む場合がある。TAPBPRフ
ラグメントはTAPBPR細胞質尾部を欠損し、例えば、TAPBPR内腔ドメインとTMDからなる場
合がある。
【0066】
他の実施形態では、ペプチド交換蛋白質はさらにTAPBPRフラグメントに加え、1つまたはそれ以上のドメインを含む場合がある。追加の1つまたはそれ以上のドメインは、異種ドメインである可能性がある(すなわち、TAPBPR由来でないアミノ酸配列)。例えば、表面結合ペプチド交換蛋白質は異種TMDおよび/または細胞表面標的配列を含む場合がある。
実施形態によっては、ペプチド交換蛋白質はTAPBPRフラグメントおよび1つまたはそれ以上の異種ドメインを含む融合蛋白質の場合がある。
【0067】
TAPBPR細胞質尾部の欠損はTAPBPRもしくは異種TMDを含むペプチド交換蛋白質を細胞膜に
局在させるのに十分である可能性がある。適切な異種TMDは血小板由来増殖因子(PDGFR)TMD、インフルエンザヘモアグルチニンTMD,インフルエンザノイラミニダーゼTMDを含んでいる場合がある。他の実施形態では、ペプチド交換蛋白質はさらに異種細胞表面標的配列を含む場合がある。細胞表面標的配列は細胞内に発現している蛋白質を細胞膜に向かわせるアミノ酸配列である。適切な細胞表面標的配列はCD8、MHC class I分子、 Transferrinレセプター、 CD147、VSVG、NCAM、CD44もしくはE-cadherinの細胞質ドメインを含む場合がある。好適なペプチド交換蛋白質の例には、SEQ ID NO: 34またはその変異体のTAPBPR-CD8構成体を含む場合がある。SEQ ID NO: 34 またはその変異体のアミノ酸配列を含む場
合がある。
【0068】
「異種」という術語は、特定の生体系、例えば宿主細胞にとって異物であるポリペプチドあるいは核酸を指し、その系には自然に存在しないものである。異種ポリペプチドあるいは核酸は生体系に人工的に、例えば、組み換え技術を用いて導入される場合がある。例えば、ポリペプチドをコードする異種核酸は好適な発現構成体に挿入され、次いで宿主細胞を形質転換させ、ポリペプチドを生成するために使用される。異種ポリペプチドあるいは核酸は合成されたもの、もしくは人工的なものの場合も、異なる種や細胞の種類などの他の生体系に存在する場合もある。組み換えポリペプチドは、人工的手段により、例えば組み換え技術を用いて細胞内に導入された異種核酸により発現される場合もある。組み換えポリペプチドは細胞内に自然に存在するポリペプチドと同一の場合もあり、その細胞に自然に存在するポリペプチドとは異なる場合もある。
【0069】
「内在性」という術語は、宿主細胞のような生体系の中で自然の過程により生成されるペプチド、ポリペプチドあるいは核酸もしくは他の要因を指す。「外来性」という術語は、生体系の中で自然には生成されない、そして人工的手段、例えば、投与あるいは組み換え発現により生産および/または導入が行われるペプチド、ポリペプチドあるいは核酸を指す。外来性要因は固相合成などの従来の技術を用いて合成される場合がある。外来性要因は生体系に自然に存在する要因(すなわち、内在性要因)と同一の場合があり、あるいはその生体系に自然に存在する要因とは異なる場合もある。
【0070】
ペプチド交換蛋白質はさらに標的ドメインを含むことが望ましい。ここに記載されているペプチド交換蛋白質は標的ドメインを含むキメラ蛋白質あるいは融合蛋白質であり、TAPBPR内腔ドメインを含む、もしくはそれからなるTAPBPRフラグメントの場合がある。ここに記載されているキメラペプチド交換蛋白質は可溶性であることが望ましく、例えば、in vivoで哺乳類細胞の免疫原性を変化させる上で、またin vitro やex vivoでの応用に役立
つ可能性がある。
【0071】
実施形態によっては、TAPBPRフラグメントはペプチド交換蛋白質のN末端にある場合もあ
り、標的ドメインはペプチド交換蛋白質のC末端にある場合もある。他の実施形態では、TAPBPRフラグメントはペプチド交換蛋白質のC末端にある場合もあり、標的ドメインはペプチド交換蛋白質のN末端にある場合もある。
【0072】
標的ドメインはTAPBPRフラグメントに直接結合している場合もあり、リンカーを介して結合している場合もある。
好適なリンカーは当技術分野で周知のように、科学的、およびペプチジアルリンカーを含む。例えば、ペプチジアルリンカーはアミノ酸残基配列、例えば5から30もしくは5から22のアミノ酸残基を含む場合があり、10から20のアミノ酸残基を含むことが望ましく、約12のアミノ酸残基がより望ましい。どのようなリンカー配列も使用可能である。リンカー配列は異種配列であることが望ましい。好適なリンカーアミノ酸配列は、当技術分野
で周知のように、アミノ酸配列GGGGS、(GGGGS)3 もしくは GSTVAAPSTVAAPSTVAAPSGS、HVGGGGSGGGGSGGGGSTSもしくはその変異体を含む場合がある。
【0073】
標的ドメインにより、キメラペプチド交換蛋白質は個体の特定の標的細胞集団を選択的に標的とすることができる。キメラペプチド交換蛋白質の標的ドメインは標的細胞に特異的に結合する。キメラペプチド交換蛋白質の標的ドメインは非標的細胞に比して選択的に標的細胞に結合する、すなわち非標的細胞に比して標的細胞への結合増加を示すことが望ましい。標的ドメインの標的細胞への結合によりキメラ蛋白質のTAPBPRフラグメントが、非標的細胞(すなわち、標的ドメインが結合しない細胞)に比して標的細胞の表面に選択的に作用すること、例えば、標的細胞表面のMHCクラスI分子に外来性ペプチドを負荷することが可能となる。
【0074】
標的細胞は細胞表面のMHCクラスI分子を含む場合がある。MHCクラスI分子はα鎖と β2ミクログロブリンを含む二量体である。MHCクラスI分子はすべてのヒト有核細胞に発現している。個体は両親のそれぞれから一組のHLA-A、-B 、-Cを遺伝で受け継いでいる。これらの遺伝子は共優性に発現し、哺乳類の有核細胞は最高6つまでの異なる古典的MHCクラスI分子を発現している。MHCクラスI分子はα鎖内では高度に多型的であり、集団内で大きな変異がある。MHCクラスI分子はHLA-A分子、HLA-B51、HLA-B15、HLA-B38、HLA-B57のよう
なHLA-B分子、HLACw1 のようなHLA-C 分子を含む場合がある。望ましいMHCクラスI分子はHLA-Aを含む。
【0075】
実施形態によっては、標的細胞は癌細胞、病原体感染細胞、あるいは疾患を引き起こす他の細胞のような病的細胞である場合がある。キメラペプチド交換蛋白質を用いて個体において病的細胞の免疫原性を高めることにより、その個体の病的細胞に対する免疫反応を惹起しあるいはその強度を増加させる可能性がある。これは個体において病的細胞の減少あるいは根絶に通じる可能性があり、また治療効果を生み出す可能性がある。
【0076】
他の実施形態では、標的細胞が抗原提示細胞である場合がある。抗原提示細胞の表面のMHCクラスI分子に外来性免疫原性ペプチドを負荷することは、in vivoで病的細胞に対し免
疫反応、例えばT細胞免疫反応を増加する、あるいは惹起する上で有用であり、これによ
り治療効果を及ぼすことができる。
【0077】
他の実施形態では、標的細胞は、自己免疫あるいは自己炎症反応のような免疫反応を惹起する宿主細胞の場合がある。宿主細胞の表面のMHCクラスI分子に外来性非免疫原性ペプチドを負荷することは、in vivoで細胞に対する自己免疫性反応もしくは免疫仲介性炎症反
応を減少させ、あるいは予防する上で有用である可能性がある。
【0078】
標的ドメインが個体の標的細胞表面に存在するレセプターあるいは抗原のようなマーカーに特異的に結合する可能性がある。標的ドメインがその標的細胞マーカーに結合する親和性は、MHCクラスI分子に対するTAPBPRの結合親和性より高い場合がある。
【0079】
好適な標的ドメインには細胞マーカーに特異的に結合することのできる、どのような分子も含まれる。例えば、標的ドメインは標的細胞上のレセプターのリガンド、あるいは標的細胞上の抗原に特異的に結合する抗体分子である場合がある。
【0080】
一部の望ましい実施形態では、標的ドメインが結合する標的細胞マーカーが細胞表面に存在しなければ、標的ドメインを含むキメラペプチド交換蛋白質は、細胞表面のMHCクラスI分子に結合しない、あるいは実際上結合しない可能性がある。
【0081】
抗体分子は、抗原抗体結合部位を含むポリペプチドあるいは蛋白質である。この術語は自
然のものも、部分的あるいは全体的に合成されたものも含む。抗体分子は自然源から精製し単離もしくは得られたものである場合も、遺伝子組み換えで、あるいは化学的合成により得られたものである場合もあり、非天然のアミノ酸を含む場合がある。
【0082】
好適な抗体分子は、抗体全体およびそのフラグメントを含む場合がある。抗体全体のフラグメントは抗原に結合する機能を実行することができる。結合フラグメントの例には次のようなものがある。(i)VL、VH、CLおよび CH1 ドメイン; (ii)VH およびCH1ドメイ
ンからなるFdフラグメント;(iii)単一抗体のVLおよびVH ドメインから成るFv フラグ
メント; (iv)シングルドメイン抗体 (sdAb) (ナノボディ(Nb)とも呼ばれる)(Ward et al. (1989) Nature 341, 544-546; McCafferty et al., (1990) Nature, 348, 552-554; Holt et al.(2003) Trends in Biotechnology 21, 484-490), これは、単量体VHドメインあるいは単量体VLドメイン;(v)単離CDR領域;(vi)F(ab')2フラグメント、
すなわち2つのリンクしたFabフラグメントから成る二価フラグメント; (vii) 2つのドメインを会合させ抗原結合部を形成できるペプチドリンカーによってVHドメインとVLドメインがリンクしている単鎖Fv 分子 (scFv) (Bird et al.(1988) Science, 242, 423-426; Huston et al.(1988) PNAS USA, 85, 5879-5883); (viii) 2重特異性単鎖Fv 2量体(PCT/US92/09965)および(ix) 遺伝子融合により形成された多価もしくは多重特異性フラグメントである「2重特異性抗体」から成る (WO94/13804; Holliger et al.(1993a), Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448).
【0083】
Fv、 scFv、2重特異性抗体、 sdAbおよびその他の抗体分子は、例えばVHドメインとVLド
メインをリンクするといったようにジスルフィド架橋を組み込むことにより安定化する可能性がある (Reiter et al. (1996), Nature Biotech, 14, 1239-1245)。CH3ドメインに
結合したscFvを含むミニ抗体もまた作成できる可能性がある(Hu et al.(1996), Cancer Res., 56(13):3055-61)。結合フラグメントのその他の例は、Fab’でFabフラグメントとは、抗体のヒンジ領域の1つまたはそれ以上のシステインを含め、重鎖のCH1ドメインのカ
ルボキシル末端にいくつかの残基の追加がある点で異なっており、また定常領域のシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’フラグメントである Fab’-SHが挙げられる。
【0084】
一部の望ましい実施形態では、標的ドメインは腫瘍抗原のような癌細胞上の標的分子に特異的に結合する場合がある。例えば、標的ドメインは腫瘍抗原に結合する抗体の場合がある。
【0085】
1つまたはそれ以上の抗原(すなわち腫瘍抗原)の発現は個体における癌細胞と正常体細胞を区別できる可能性がある。個体の正常体細胞は、1つまたはそれ以上の抗原を発現する場合があり、あるいはそれらを異なる様式、例えば低レベルで、異なる組織および/または異なる発生段階で発現する場合がある。従って腫瘍抗原はキメラペプチド交換蛋白質の標的を特異的に癌細胞に絞るために使用されることがある。
【0086】
癌細胞が発現する腫瘍抗原には、例えば、癌-生殖細胞遺伝子がコードする癌-睾丸(CT)抗原、例えばMAGE-A1, MAGE-A2, MAGE- A3, MAGE-A4, MAGE-A5, MAGE-A6, MAGE-A7, MAGE-A8, MAGE-A9, MAGE-A10, MAGE-A11, MAGE-A12, GAGE-I, GAGE-2, GAGE-3, GAGE-4, GAGE-5, GAGE-6, GAGE-7, GAGE-8, BAGE-I, RAGE- 1, LB33/MUM-1, PRAME, NAG, MAGE-Xp2 (MAGE-B2), MAGE-Xp3 (MAGE-B3), MAGE-Xp4 (MAGE-B4), MAGE- C1/CT7, MAGEC2, NY-ESO-I, LAGE-I, SSX-I, SSX-2(HOM-MEL-40), SSX-3, SSX-4, SSX-5, SCP-I および XAGEとそ
の免疫原性フラグメント (Simpson et al.Nature Rev (2005) 5, 615-625, Gure et al.,
Clin Cancer Res (2005) 11, 8055-8062; Velazquez et al., Cancer Immun (2007) 7, 1 1 ; Andrade et al., Cancer Immun (2008) 8, 2; Tinguely et al., Cancer Science (2008); Napoletano et al., Am J of Obstet Gyn (2008) 198, 99 e91-97)が含まれる。
【0087】
その他の腫瘍抗原には、例えば、過剰発現している、上方制御された、あるいは突然変異を起こした蛋白質および分化抗原、特にメラノサイト分化抗原例えば、p53, ras, CEA, MUC1, PMSA, PSA, チロシナーゼ, Melan-A, MART-1, gp100, gp75, α-アクチニン-4, Bcr-Abl融合蛋白質, Casp-8, beta-カテニン, cdc27, cdk4, cdkn2a, coa-1, dek-can融合蛋白質, EF2, ETV6-AML1融合蛋白質, LDLRfucosyltransferaseAS 融合蛋白質, HLA-A2, HLA-A11, hsp70-2, KIAAO205, Mart2, Mum-2および 3, neo- PAP, ミオシンクラスI, OS-9, pml-RAR.alpha. 融合蛋白質, PTPRK, K-ras, N-ras, トリオースリン酸イソメラーゼ, GnTV, Herv-K-mel, NA-88, SP17, and TRP2-Int2, (MART-I), E2A-PRL, H4-RET, IGH-IGK, MYL-RAR, ErbB2/her2, エプスタイン・バー・ウイルス抗原, EBNA, ヒトパピローマウィ
ルス (HPV) 抗原 E6 および E7, TSP-180, MAGE-4, MAGE-5, MAGE-6, p185erbB2, p180erbB-3, c-met, nm-23H1, PSA, PDL1, CD20, TAG-72-4, CA 19-9, CA 72-4, CAM 17.1, NuMa, K-ras, alphaフェトプロテイン, 13HCG, BCA225, BTAA, CA 125, CA 15-3 (CA 27.29\BCAA), CA 195, CA 242, CA-50, CAM43, CD68\KP1, CO-029, FGF-5, G250, Ga733 (EpCAM), HTgp-175, M344, MA-50, MG7-Ag, MOV18, NB\170K, NY-CO-1, RCAS1, SDCCAG16, TA-90 (Mac-2 結合蛋白質 \シクロフィリンC-関連蛋白質), TAAL6, TAG72, TLP, TPS, チロシナーゼ関連蛋白質、例えばTRP-1, TRP-2および薬剤耐性のメディエイターである腫瘍表面に発現しているABC 輸送体、例えば、P-gp, BCRP およびMRP1, その他の腫瘍抗原には「
ストレスを受けた」癌細胞の使用する非AUG翻訳開始機構により生成されるout-of-frame
ペプチド-MHC 複合体が含まれる。(Malarkannan et al.Immunity (1999) 10(6):681-90)
。
【0088】
その他の腫瘍抗原は当技術分野では周知である(例えば、WO00/20581; Cancer Vaccines and Immunotherapy (2000) Eds Stern, Beverley and Carroll, Cambridge University Press, Cambridge参照)。これらの腫瘍抗原の配列は公開データベースから容易に入手可
能であるほか、WO1992/020356 A1、 WO1994/005304 A1、 WO1994/023031 A1、 WO1995/020974 A1、 WO1995/023874 A1 および WO1996/026214 A1でも見いだすことができる。
【0089】
好適な標的ドメイン、例えば腫瘍抗原に特異的に結合する抗体分子は当技術分野で周知であり、従来の技術を用い生成できる可能性がある。例えば、ErbB2(Her2)に特異的に結
合する好適な標的ドメインに含まれるのは、SEQ ID NOs:24 および 25(トラスツズマ
ブ)のVHおよび VL ドメイン、あるいはその中のCDRのセット、あるいはSEQ ID NO:23 のscFv; PD-L1と特異的に結合する好適な標的ドメインはPD-1、アテゾリズマブあるいはデュルバルマブもしくはSEQ ID NOs 25 to 31のいずれかのナノボディ配列の抗原抗体結合
ドメイン;およびCD20 に特異的に結合する好適な標的ドメインにはリツキシマブの抗原
抗体結合ドメインが含まれる可能性がある。その他の好適な標的ドメインは、例えば、ナノボディ標的ドメインは公式に入手可能である。(例えば Zuo et al. iCAN: Institute Collection and Analysis of Nanobodies参照)。
【0090】
その他の実施形態では、標的ドメインは、樹状細胞のような抗原提示細胞上のレセプターのようなマーカーに特異的に結合する可能性がある。例えば、標的ドメインは抗原提示細胞上のFcレセプターに結合するFc領域の場合がある。好適なFc領域は当技術分野では周知である。
【0091】
標的ドメインは抗原提示細胞の表面マーカーあるいはリガンドあるいは表面マーカーの結合蛋白に結合する抗体分子の場合がある。抗原提示細胞はいかなるサブタイプの樹状細胞をも含む場合がある。XCR1+ 樹状細胞は、エフェクターCD8+ T 細胞の活性化のための抗
原交差提示を仲介する。XCR1+樹状細胞の表面マーカーは XCR1、 DNGR1(CLEC9A)および
BDCA3(CD141としても知られる)を含む場合がある。CD172α+樹状細胞は Tヘルパー2(TH2)または TH17細胞を誘導し、体液性免疫反応を促進する。CD172α+樹状細胞上の表面マーカーはCD172α および BDCA1 (CD1cとしても知られる)を含む。 形質細胞様DCはI
型インターフェロン(IFN)をウィルス感染の間産生する。形質細胞様DC上の表面マーカー
はBDCA2および BDCA4を含む。単球由来DCは局所のT細胞反応を促進し、炎症とケモカイン産生を増強する。単球由来DC上の表面マーカーはFcεRIを含み、活性化に際しFcγRI の
発現は上方制御される。マクロファージは病原体を除去し、組織恒常性を促進する。マクロファージの表面マーカーはCD68を含む。FcγRIの発現も活性化に際して上方制御される。その他の樹状細胞の好適なマーカーはCD19, CD20、 CD38、 CD14および/ または ラ
ンゲリン/CD207を含む。
【0092】
他の好適な実施形態では、標的ドメインは病原体感染細胞上の抗原に特異的に結合する場合がある。例えば、標的ドメインは、病原体蛋白質もしくは表面発現が病原体感染により上方制御されている宿主細胞蛋白質に結合する場合がある。HIV 感染細胞では、標的ドメインはgp120 または gp41などの細胞表面のマーカーに特異的に結合する場合がある。好
適な標的ドメインは、抗体分子または表面gp120と特異的に結合するCD4を含む場合がある。CMV感染細胞では、標的ドメインはUL11、 UL142, UL9、 UL1、 UL5、 UL16、 UL55(gB)、 UL74(gO)、 UL75(gH)、 UL155(gL)などのウィルス蛋白質に特異的に結合す
る場合があり、これらは全て感染細胞の表面に見いだされている。(Weekes et al (2014) Cell 157:1460-1472)。その発現が上方制御されている、あるいは感染細胞の表面に誘導される宿主細胞蛋白質は抑制性NK レセプターKLRG-1を含み、これはE-cadherin (CDH1)標的ドメインを使い特異的に結合を受ける場合がある(Weekes et al (2014) Cell 157:1460-1472)。
【0093】
好適なキメラペプチド交換蛋白質の例はSEQ ID NO: 4のTAPBPR-LONG-FcIgG1 構成体、SEQ ID NO: 6のsTAPBPR-sPD1構成体, SEQ ID NO: 8のTAPBPR-Her2scFv構成体、および SEQ ID NO: 10のsTAPBPR-GFP sdAb構成体; SEQ ID NO: 12のsTAPBPRLONG- PD-L1-NB1構成体
; SEQ ID NO: 14のsTAPBPRLONG- PD-L1-NB1構成体; SEQ ID NO: 16のsTAPBPR-LONG-PD-L1-NB2構成体; およびこれらの参照配列のいずれかの変異体を含む場合がある。
【0094】
ここに記載されている参照配列の変異体である蛋白質、例えば上に記載されているペプチド交換蛋白質、は参照配列に比した場合、1つまたはそれ以上の変化を起こしたアミノ酸残基を有する場合がある。例えば、参照配列に比して50以下のアミノ酸残基が変化している場合があり、45以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、5以下、もしくは3以下、2あるいは1が望ましい。例えば、ここに記載されている変異体は50以下、45以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、5以下、3以下、2もしくは1アミノ酸残基が突然変異を起こした参照配列の配列を含む場合がある。例えば、ここに記載されているキメラ蛋白質は、SEQ ID NOs: 2、 4、 6、 8、 10、 12、 14、 16、 18、 20、 22 および 34のいずれに比べ、50以下、45以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、5以下、3以下、2もしくは1アミノ酸残基が変化を起こしたアミノ酸配列を含む場合がある。
【0095】
参照配列のアミノ酸残基は、挿入、欠失もしくは置換により変化を受け、あるいは突然変異を起こす場合があるが、異なるアミノ酸残基に対する置換が望ましい。そのような変化はコードしている核酸における1つ以上の付加、挿入、欠失、置換のうちの1つまたはそれ以上により生じる場合がある。
【0096】
ここに記載されている参照配列の変異体である蛋白質、例えば上に記載されているペプチド交換蛋白質配列は、参照アミノ酸配列と最低50%の同一性を共有する場合があり、最低55%、最低60%、最低65%、最低70%、最低約80%、最低90%、最低95%、最低98%もしくは最低99%の配列同一性を共有する場合がある。例えば、ここに記載されている蛋白質の変異体は参照アミノ酸配列と最低50%の配列同一性を持つアミノ酸配列を含む場合があり、参照アミノ酸配列、例えばSEQ ID NOS:2、 4、 6、 8、 10
、 12、 14, 16、 18、 20および 22の1つまたはそれ以上と最低55%、最低60%、最低65%、最低70%、最低約80%、最低90%、最低95%、最低98%もしくは最低99%の配列同一性を含む場合がある。
【0097】
配列同一は、一般にアルゴリズムGAPを基準にして定義されている(Wisconsin GCG package, Accelerys Inc, San Diego USA)。GAPはNeedleman- Wunschアルゴリズムを用い
、マッチ数を最大化し、ギャップ数を最小化する2つの完全な配列を 配置する。一般に
、デフォルト・パラメータが使われ、ギャプ・クリエーション・ペナルティ=12そしてギャプ・エクステンション・ペナルティ=4である。GAP の使用が望ましいが、他のアルゴリズム、例えばBLASTも使用できる (次の論文の方法を使用する。Altschul et al.(1990) J. Mol.Biol.215: 405-410), FASTA (これは次の論文の方法を使用する。Pearson and Lipman (1988) PNAS USA 85: 2444-2448)、もしくは the Smith-Waterman algorithm (Smith and Waterman (1981) J. Mol Biol.147: 195-197), or the TBLASTN program, of
Altschul et al.(1990) supra, generally employing default parameters。特にpsi-Blastアルゴリズムが使用される場合がある(Nucl.Acids Res.(1997) 25 3389-3402)。配
列同一性と類似性はGenomequestTM software (Gene-IT, Worcester MA USA)を使用して決定することもできる。
【0098】
配列比較はここに記載されている関連配列の全長にわたりなされることが望ましい。
【0099】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質はさらに、TAPBPRフラグメントおよび選択可能標的ドメインおよび/またはリンカーに加えて1つまたはそれ以上の異種アミノ酸配列を含む場合がある。例えば、ペプチド交換蛋白質はさらに、安定性、薬物動態、標的指向性、親和性、精製および/または量産性を改善する1つまたはそれ以上の付加ドメインを含む場合がある。
【0100】
実施形態によっては、ここに記載されているペプチド交換蛋白質はさらに、標的ドメインとTAPBPRフラグメントの間にあるプロテアーゼ認識部位を含む場合がある。これは例えば、必要な場合、標的細胞からTAPBPRを除去するうえで有用な可能性がある。好適なプロテアーゼはトリプシン、キモトリプシン、第Xa因子、タバコエッチウイルス(TEV)プロテ
アーゼ、トロンビンおよびパパインを含む場合がある。他の好適な部位特異的プロテアーゼは当技術分野で周知であり、いかなる部位特異的エンドプロテアーゼも使用可能である。
【0101】
実施形態によっては、ペプチド交換蛋白質はさらに、標的ドメインまたはその他のドメインとの接合のための「クリックケミストリー」使用を可能にするための反応性部分を含む場合がある。クリックケミストリーは例えば、トリアゾール環を作るための、2つの化合物(1つはアジド基、もう一つは末端アセチレン基)の間のCu(I)触媒カップリングに関
係する場合がある。アジド基とアルキン基は他のカップリング手順の条件に対して不活性であり、蛋白質に見いだされる他の官能基はクリックケミストリー条件に対して不活性であるため、クリックケミストリーにより、温和な条件下でほぼどのようなリンカーもしくは化学基もペプチド交換蛋白質へ制御可能な様式で結合させることができ、特に標的ドメインをTAPBPRフラグメントに化学的に結合することが可能になる。例えばペプチド交換蛋白質のシステイン残基は一端にチオール特異的反応基(例、ヨードアセトアミド、マレイミドまたはフェニルチオスルフォンサン塩)および他端にアジドもしくはアセチレンを含む2官能基性試薬と反応する場合がある。標識官能基がクリックケミストリーを使用して末端アジドもしくはアセチレンに付加される場合がある。例えば、アセチレンまたはアジド基の一方をリンカーの一端に持ち、キレート(金属アイソトープ用)もしくは脱離基(ハロゲン標識用)を他端に持つ第2リンカー(Baskin, J. (2007) PNAS 104(43)16793-97)が使用される場合がある。
【0102】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質は当技術分野において標準的な合成もしくは組み換え技術を用いて提供される場合がある。
【0103】
実施形態によっては、ここに記載されているペプチド交換蛋白質は親和性タグで製造される場合があり、これは例えば、精製に有用である可能性がある。親和性タグは異種ポリペプチド配列で、特異的結合ペアの一方を形成する。親和性タグを含むポリペプチドは、例えばアフィニティカラムにおけるように、ポリペプチドに対する特異的結合ペアの他方を結合することにより精製できる可能性がある。例えば、タグ配列は、抗体分子の結合を受けるエピトープを形成する場合がある。好適な親和性タグには、例えばグルタチオン‐S-トランスフェラーゼ、(GST),マルトース結合ドメイン(MBD)、 MRGS(H)6, DYKDDDDK (FLAGTM)、 T7-, S- (KETAAAKFERQHMDS)、 poly-Arg (R5-6)、 poly-His (H2- 10), poly-Cys (C4) poly-Phe(F11) poly-Asp(D5-16)、 SUMO タグ (Invitrogen Champion pET SUMO expression system)、 Strept-タグ II (WSHPQFEK)、 c-myc (EQKLISEEDL)、 Influenza-HA タグ (Murray, P. J. et al (1995) Anal Biochem 229, 170-9), Glu-Glu-Phe タグ (Stammers, D. K. et al (1991) FEBS Lett 283, 298-302)、 Tag.100 (Qiagen; 哺乳類MAPキナーゼ2由来 12 aa タグ)、 Cruz タグ 09TM (MKAEFRRQESDR、 Santa Cruz Biotechnology Inc.) および Cruz タグ 22TM (MRDALDRLDRLA, Santa Cruz Biotechnology
Inc.)を含む。既知のタグ配列は、次においてレビューされている;Terpe (2003) Appl.Microbiol.Biotechnol.60 523-533。望ましい実施形態においては、(H)6、 His-SUMO タグ (Invitrogen Champion pET SUMO 発現システム)または MRGS(H)6などのpoly-Hisタ
グが使用される場合がある。
【0104】
親和性タグ配列は、例えば部位特異的プロテアーゼを使用した精製後、ここに記載されているペプチド交換蛋白質から分離できる場合がある。
【0105】
実施形態によっては、ここに記載されているペプチド交換蛋白質はリーダーペプチドと結合し、細胞から培養培地中に前駆蛋白質としてペプチド交換蛋白質を分泌させることができる場合がある。様々な好適なリーダーペプチドが当技術分野で知られている。リーダーペプチドはここに記載されているTAPBPRフラグメントには異種であり、すなわち非TAPBPRリーダー配列である可能性がある。例えば、α因子分泌シグナルまたはBiPリーダー配列
が使用される場合がある。リーダーペプチドは前駆蛋白質のN末端に位置している。前駆
体の発現後、リーダーペプチドは前駆体発現後の翻訳後プロセシングにより除去され、成熟ペプチド交換蛋白質を生成する。
【0106】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質は、他のポリペプチドおよび/または細胞成分などの混入物質のないという意味において、単離される場合がある。
【0107】
ペプチド交換蛋白質は外来性ペプチドを細胞表面上のMHCクラスI分子に負荷する。外来性ペプチドは、MHCクラスI分子を持つ細胞により自然の状態で生成されないペプチドである。例えば、これは個体に投与されてきたものの場合がある。外来性ペプチドは細胞により自然に生成される内因性ペプチドと同じアミノ酸配列を持つ場合もあり、異なるアミノ酸配列を持つ場合もある。
【0108】
実施形態によっては、外因性ペプチドの免疫原性はMHCクラスI分子において発現している内因性ペプチドの免疫原性と異なっている場合もある(すなわち、高い場合も低い場合もある)。例えば、ここに記載されている外来性ペプチドは使用法により免疫原性のある場合もない場合もある。他の実施形態では、外来性ペプチドの免疫原性はMHCクラスI分子において発現している1つあるいはそれ以上の内因性ペプチドの免疫原性と同じである場合
もある。例えば、外来性ペプチドは1つあるいはそれ以上の内因性ペプチドと同じアミノ
酸配列を持つ場合もある。ここに記載されているようにMHCクラスI分子に前述の外来性ペプチドを負荷すると細胞に発現している、前述のアミノ酸配列を持つペプチドの総量は増加する場合もあり、このため細胞の免疫原性は増加する場合も減少する場合もある。
【0109】
MHCクラスI分子に発現しているペプチドは本技術分野では周知であり(例えば、オンライン免疫エピトープ・データベース および Analysis Resource (IEDB); Vita et al Nucl Acid Res 2014 Oct 9 piii:gku938を参照)、さらにペプチドは免疫ペプチドーム技術を
用いて同定される可能性がある。MHCクラスI分子へのペプチドの直接結合は、細胞アッセイで標識されたペプチドの結合を試験することにより、あるいはMHCビーズを用いて確認
できる場合がある。MHCクラスI分子への非標識ペプチドの結合は処理された細胞を前記ペプチドに対する特異的TCR四量体で染色することにより決定できる場合がある。
【0110】
免疫原性ペプチドは、MHCクラスI分子に負荷された場合、個体に免疫反応を惹起することのできる外来性ペプチドである。例えば、免疫原性ペプチド/MHCクラスI分子複合体はT
細胞により認識される場合がある。標的細胞表面にある免疫原性ペプチドで負荷されたMHCクラスI分子の存在は、前記標的細胞に対する免疫反応を誘導し、あるいは増強する場合がある。
【0111】
好適な免疫原性ペプチドは本技術分野では周知であり、例えば、癌あるいは感染に対するワクチンの候補となる場合がある。実施形態によっては、MHCクラスI分子への負荷のための免疫原性ペプチドは、患者自身の腫瘍に自然に発現している抗原のことも、新生抗原あるいは腫瘍由来の他のペプチドのことも、ウィルスなどの病原体由来のペプチドのこともある。
【0112】
実施形態によっては、免疫原性ペプチドは病的細胞に特徴的な抗原もしくはエピトープを含む場合がある。例えば、免疫原性ペプチドは癌細胞あるいは病原体感染細胞に特徴的な抗原もしくはエピトープを含む場合がある。
【0113】
癌細胞に特徴的なエピトープは本技術分野では周知であり、腫瘍抗原由来のエピトープを含む。好適な抗原およびエピトープはこの文書の他の個所に記載されている。免疫原性ペプチドが由来する場合のある望ましい腫瘍抗原は新生抗原、ErbB2/Her2 (例 RLLQETELV
), gp100 (例 IMDQVPFSV および YLEPGPVTA)、 NY-Eso-1 (例 SLLMWITQC)、 p53
(例 LLGRNSFEV)、 MART1 (例 ELAGIGILTV)、 MAGE-10 (例 GLYDGMEHL)、 ヒト AFP
(例 FMNKFIYEI)、 メソセリン (例 SLLFLLFSL)、 MAGE-A4 (例 GVYDGREHTV)、 MART-1 (例 EAAGIGILTV、 ELAGIGILTV) および 5T4 (例 FLTGNQLAV、 RLARLALVL)など
の腫瘍特異的および過剰発現蛋白質を含む。
【0114】
他の腫瘍抗原およびエピトープは、本技術分野では周知である(例えば、 Cancer Research Institute NY オンライン・ペプチド・データベース 参照; Tumor T cell antigen database, Olsen et al (2017) Cancer Immunol Immunother. doi: 10.1007/s00262-017-1978-y; Immune Epitope and Analysis Resource, Vita et al Nucleic Acids Res.2014 Oct 9. pii: gku938)。
【0115】
病原体感染細胞に特徴的なエピトープは本技術分野では周知であり、ウィルス蛋白質由来のエピトープを含む。好適なエピトープは本文書の他の個所で記載されており、インフルエンザ・エピトープ(例GILGFVFTL, AIMDKNIIL)、HIV エピトープ(例ILKEPVHGV, SLYNTVATL, KLTPLCVTL)、 B型肝炎エピトープ(例 FLPSDFFPSV, WLSLLVPFV)、ヒトサイトメ
ガロウィルス(CMV)エピトープ(例 NLVPMVATV, VLEETSVML)、エプスタイン・バー・ウィルス(EBV) エピトープ (例 YLLEMLWRL、 CLGGLLTMV)、水痘帯状疱疹ウイルス・ エピトープ(例 ILIEGIFFV)、麻疹エピトープ (例 ILPGQDLQYV)、ZIKA (例 FLVEDHGFGV
, KSYFVRAAK)、およびエボラウィルスエピトープを含む。その他のウィルスエピトープ
は本技術分野では周知である(例えば、Immune Epitope and Analysis Resource, Vita et al Nucleic Acids Res.を参照。2014 Oct 9. pii: gku938)。
【0116】
実施形態によっては、癌細胞上のMHCクラスI分子は1つまたはそれ以上のウィルスエピト
ープを含む免疫原性ペプチドを負荷される場合がある。これは癌細胞に対し抗ウィルス免疫反応を惹起する上で有用である可能性がある。
【0117】
他の実施形態では、免疫原性ペプチドは病的細胞に特徴的でない抗原あるいはエピトープを含む場合があるが、しかし依然として細胞表面にそれを発現している細胞に対し免疫反応を惹起することができる。例えば、免疫原性ペプチドは合成エピトープを含む場合がある。好適な合成エピトープは本技術分野では周知である。合成エピトープは、例えばMHC
クラスI分子上に発現しているペプチドの中のTCRに曝露されたアミノ酸一つを3-シクロヘキシルアラニン(CHA)などの人工アミノ酸一つで置換することにより生成される場合があ
る。
【0118】
非免疫原性ペプチドはMHCクラスI分子に負荷された場合に、個体に免疫反応を惹起しない外来性ペプチドである。標的細胞表面上の非免疫原性ペプチドで負荷されたMHCクラスI分子の存在は、前記標的細胞に対する免疫反応を阻止あるいは減弱する可能性がある。
【0119】
好適な外来性ペプチドは8-15量体、例えば8-11量体の場合があり、9量体であることが望ましい。外来性ペプチドは標的細胞表面上に存在する一部もしくは全部のMHCク
ラスI分子に適合する場合がある。例えば、外来性ペプチドの配列は標的細胞表面の一部
もしくは全部のMHCクラスI分子との会合に必要な好適なアンカー残基を含む場合がある。
【0120】
標的細胞表面上のMHCクラスI分子は、HLA-A68及びHLA-A2などのHLA-A分子を含む場合が
ある。MHCクラスI分子は組織適合試験あるいはフローサイトメトリーなどの従来技術を
用いて同定される場合がある。
【0121】
標的細胞表面のMHCクラスI分子による発現のための好適な配列は標準的技術を用い決定される場合がある。例えば、HLA-A2分子が標的細胞表面に存在する場合、外来性ペプチドはxLxxxxxxV/Lという配列を持つかもしれず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す;標的細胞表面にHLA-A*03:01分子が存在する場合、外来性ペプチドはxL/I/VxxxxxxK/Rという配列を持つかもしれず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す;標的細胞表面にHLA-A*68:02分子が存在する場合、外来性ペプチドはxL/I/VxxxxxxK/Rという配列を持つかもし
れず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す;標的細胞表面にHLA-B*27:05分子が存在する場合、外来性ペプチドはxRxxxxxxxという配列を持つかもしれず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す;標的細胞表面にHLA-B*51:01分子が存在する場合、外来性ペプチ
ドはxPxxxxxxI/Vという配列を持つかもしれず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す;標的細胞表面にHLA-B*15:03分子が存在する場合、外来性ペプチドはxQ/KxxxxxXF/YLと
いう配列を持つかもしれず、ここでXは独立した任意のアミノ酸を表す。
【0122】
本発明の他の態様は、上に記載されたように、ここに記載されているペプチド交換蛋白質をコードしている核酸およびそのような核酸を含むベクターを提供している。
【0123】
好適なベクターは必要に応じて選択または構築が可能であり、プロモーター配列、ターミネーター・フラグメント、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子およびその他の配列を含め、適切な調節配列を含む。ベクターは適切な調節配列を含み、哺乳類細胞で核酸発現を促進できることが望ましい。ベクターはまた、複製起点、プロモーター領域、E. coliなどの細菌性宿主内での選択、発現、複製を可能にする選択可能マーカ
ーなどの配列を含む場合がある。ベクターは、必要に応じて、プラスミッド、ウィルス、例えばファージ、もしくはファージミドである場合がある。さらに詳しくは、例えば、次を参照のことMolecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition, Russell et al.,
2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press。核酸の操作、例えば核酸構成体の調製、突然変異生成、配列決定、DNAの細胞への導入および遺伝子発現における多くの既知の技
術とプロトコールが次の文献に詳細に記載されているCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al. eds.John Wiley & Sons, 1992。
【0124】
ここに記載されている核酸またはベクターは宿主に導入される場合がある。本発明のもう一つの態様は、上記のようなペプチド交換蛋白質を表現する核酸またはベクターを含む組み換え細胞を提供する。組み換えペプチドを製造するのに好適な種々の宿主細胞が本技術分野では周知である。好適な宿主細胞は、原核細胞(特にEscherichia coli および Lactococcus lactisなどの細菌)、及びCHOと CHO由来細胞株(Lec 細胞)、 HeLa、 COS、 HEK293 そして HEKEBNA細胞などの哺乳類細胞、Xenopus卵母細胞などの両生類細胞、Trichoplusia ni、 Sf9 そして Sf21などの昆虫細胞、およびPichia pastorisなどの酵母細胞
を含む真核細胞を含む場合がある。
【0125】
細胞に核酸を導入する技術は本技術分野では周知であり、どのような好適な技術も特定の状況に応じて使用できる可能性がある。真核細胞に関しては、好適な技術は、リン酸カルシウム・トランスフェクション、DEAE-デキストラン、電気穿孔法、リポソーム仲介性ト
ランスフェクション、レトロウィルスあるいは例えば、アデノウィルス、AAV,レンチウィルスもしくは牛痘などのその他のウィルスを用いる形質導入を含む場合がある。細菌細胞に関しては、好適な技術は、塩化カルシウム形質転換、電気穿孔法、バクテリオファージを用いるトランスフェクションを含む場合がある。抗生物質抵抗性あるいは感受性遺伝子のようなマーカー遺伝子は、本技術分野では周知であるように、対象とする核酸を含むクローンを同定する際に使用できる場合がある。
【0126】
導入に続き、核酸の発現が起こり、コードされているペプチド交換蛋白質が生成される場合がある。実施形態によっては、宿主細胞(実際に形質転換した細胞を含む場合があるが、形質転換した細胞の子孫である可能性がより高い)は核酸の発現条件下でin vitro 誘
導可能なプロモーターが使用される場合、発現は誘導可能プロモーターの活性化が必要な場合がある。
【0127】
ペプチド交換蛋白質を含む、もしくはペプチド交換蛋白質から成る発現されたペプチドは、生成後単離および/または精製される場合がある。これは本技術分野で周知である、任意の簡便な方法を用いても達成できる場合がある。組み換えポリペプチドの精製技術は本技術分野では周知であり、例えば、HPLC、 FPLCもしくはアフィニティクロマトグラフィ
ーを含む。実施形態によっては、精製は上に記載されたようにポリペプチドの親和性タグを使用することにより行われる場合がある。
【0128】
本発明のもう一つの態様は、宿主細胞の中でペプチド交換蛋白質をコードしている異種核酸を発現すること、および場合によりこうして生成された上記ペプチド交換蛋白質を単離および/または精製することを含む、ここに記載されているペプチド交換蛋白質を生成する方法を提供する。生成後、ペプチド交換蛋白質はさらに研究される場合があり、例えば薬理学的特性および/または薬理学的活性が決定される場合がある。蛋白質分析の方法と手段は本技術分野では周知である。
【0129】
ここに記載されているようにここに記載されているペプチド交換蛋白質は治療に有用である可能性がある。例えば、ペプチド交換蛋白質は個体に投与し、標的細胞の免疫原性を調節する場合があり、あるいは上記ペプチド交換蛋白質はin vitroもしくは ex vivoで細胞
の免疫原性を調節するために使用され、次いで個体に投与される場合がある。個体へ投与するためのペプチド交換蛋白質は、標的ドメインを含むキメラペプチド交換蛋白質であることが望ましい。これにより個体の標的細胞の免疫原性が調節されることが可能となる。
【0130】
ペプチド交換蛋白質は単独で投与される場合もあるが、通常、医薬組成物の形で投与され、これはキメラペプチド交換蛋白質に加え、少なくとも1つの成分を含む場合がある。従
って医薬組成物は、ペプチド交換蛋白質自身に加え、薬学的に受け入れられる賦形剤、担体、緩衝液、安定剤あるいはその他の当業者によく知られている材料を含む場合がある。ここで使用されている「薬学的に受け入れられる」という言葉は、化合物、材料、成分および/または剤型に関係し、これらは適正な医学的判断の範囲内で、対象(例、人間)の組織に接触して使用するのに適しており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、あるいはその他の問題もしくは合併症なく、合理的な利益/リスク比に釣り合ったものである。
各担体、賦形剤などはまた製法の他の材料と適合するという意味において「受け入れら
れる」ものでなければならない。担体もしくは他の材料の正確な性質は投与経路に依存し、これは以下に論じられているように、急速静注、点滴、注射あるいは他の任意の適切な経路による場合がある。
【0131】
ペプチド交換蛋白質は外来性ペプチドと組み合わせて投与されることがあり、免疫原性ペプチドとの組み合わせが望ましい。実施形態によっては、ペプチド交換蛋白質と外来性ペプチドは同じ医薬組成物の中で配合される場合がある。他の実施形態では、ペプチド交換蛋白質と外来性ペプチドは別々の医薬組成物として配合される場合がある。
【0132】
実施形態によっては、ペプチド交換蛋白質および/または外来性ペプチドは投与前に水で元に戻すように凍結乾燥した形で提供される場合がある。例えば、凍結乾燥ペプチド交換蛋白質および/または外来性ペプチドは個体への投与前に滅菌水で元に戻され、食塩水と混ぜられる場合がある。
【0133】
非経口的には、例えば、注射による皮下、腫瘍内、筋肉内もしくは静脈内投与の場合、ここで記載されたペプチド交換蛋白質および/または外来性ペプチド、核酸、もしくは細胞を含む医薬組成物は、非経口的に受け入れられる水溶液の場合があり、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有するものである。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液そして乳酸リンゲル注射液などの等張性媒材を使うことによって、好適な溶液をうまく調製することができる。防腐剤、安定剤、緩衝液、酸化防止剤および/または他の添加剤が必要に応じて使用される場合があり、それらには例えば、次のようなものが含まれる;リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸、メチオニンなどの酸化防止剤;(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメソニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルあるいはベンジルアルコール;メチルあるいはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3’-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどの蛋白質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンあるいはリジンなどのアミノ酸;ブドウ糖、マンノースあるいはデクストリンなどの単糖類、二糖類およびその他の糖類;EDTAなどのキレート剤;初頭、マニトール、トレハロースあるいはソルビトールなどの糖質;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属錯体(例、亜鉛-蛋白質錯体);および/またはTWEENTM、 PLURONICSTMもしくはポリエチレングリコールなどの非イオン界面活性剤。
好適な担体、賦形剤等は標準的薬剤学の教科書に見いだすことができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990が挙げられる。
【0134】
医薬組成物および製法は単位用量の形で簡便に提示される場合があり、薬学の技術分野で周知の任意の方法で調製される場合がある。そうした方法にはここに記載されているキメラ蛋白質を1つまたはそれ以上の付属成分を構成する担体と会合させる段階を含む。一般
に、均一かつ密接に活性化合物を液状担体または微細固形担体あるいは両者と会合させることにより、次いで必要な場合、製品を成形することにより、組成物は調製される。
【0135】
ここに記載されているようなペプチド交換蛋白質および/または外来性ペプチドを含む医薬組成物は、治療の対象となる状態によって、単独で投与される場合もあり、あるいは他の治療薬と同時にもしくはその後に投与される場合もある。
【0136】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質はin vivo, in vitro もしくはex vivoで哺乳
類細胞の免疫原性を調整する上で有用である可能性がある。例えば、方法に含まれることがあるものとしては次が挙げられる;
表面MHCクラスI分子を持つ哺乳類細胞集団を提供する、
哺乳類細胞集団を、外来性ペプチドおよびTAPBPRの内腔ドメインから成るTAPBPRフラグメントを含むペプチド交換蛋白質と接触させる、
こうしてペプチド交換蛋白質が外来性ペプチドを集団の細胞上のMHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより哺乳類細胞の免疫原性を調整する。
【0137】
免疫原性外来性ペプチドを負荷された表面MHCクラスI分子は T 細胞レセプターにアクセ
ス可能である。表面MHCクラスI分子を免疫原性ペプチドで負荷することは、哺乳類細胞のT細胞認識を誘導あるいは増強する場合があり、哺乳類細胞の免疫原性を高める場合があ
る。
【0138】
実施形態によっては、哺乳類細胞は樹状細胞などの抗原提示細胞(APCs)の場合がある。表面MHCクラスI分子を免疫原性ペプチドで負荷することは、免疫反応、例えば、免疫原性ペプチドに含まれる抗原性エピトープに対する免疫反応を誘導するAPCsの能力を増強する場合がある。上に記載されたような免疫原性ペプチドを負荷されたAPCsはin vitroまたは
ex vivoでT細胞を刺激するために使用される場合があり、もしくはin vivoでT細胞を刺
激するために個体に投与される場合がある。
【0139】
個体において免疫反応を惹起する、もしくは増強するために抗原提示細胞を生成する方法は、次のものを含む場合がある;
前もって個体から得られた抗原提示細胞の集団を提供し、そして抗原提示細胞にペプチド交換蛋白質および免疫原性ペプチドを接触させ、ペプチド交換蛋白質が抗原提示細胞の表面MHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷するようにし、抗原提示細胞がT細胞を刺激
し免疫反応を惹起することができるようにする。
【0140】
前記方法はin vitro の方法の場合もあれば、ex vivoの方法の場合もある。
【0141】
免疫原性ペプチドは1つまたはそれ以上の抗原エピトープを含む場合がある。抗原提示細
胞は免疫原性ペプチドの抗原エピトープに対しT細胞を活性化する場合がある。例えば、
免疫原性ペプチドの抗原エピトープは個体の病的細胞に存在する場合がある。抗原提示細胞は個体の病的細胞に対して免疫反応を惹起することができるT細胞を活性化する場合が
ある。
【0142】
実施形態によっては、生成された後、抗原提示細胞は個体に投与され、T細胞を活性化さ
せ、前記個体におけるT細胞性免疫反応を惹起もしくは増強する場合がある。
【0143】
他の実施形態では、生成された後、抗原提示細胞はT細胞集団と接触させられ、in vivoも
しくはex vivoで免疫原性ペプチド1つあるいはそれ以上の抗原エピトープに対してT細胞
を活性化する場合がある。活性化されたT細胞は個体に投与され、前記個体にT細胞性免疫反応を惹起する場合がある個体は、T細胞集団が得られた(自家移植)の場合もあれば、
異なる個体(同種異系)の場合もある。
【0144】
好適な抗原提示細胞は免疫反応が向けられるMHCクラスI分子を発現しているどのような細胞も含む場合がある。実施形態によっては、樹状細胞が望ましい場合がある。
【0145】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質はin vivoで哺乳類細胞の免疫原性を調整する
上で有用である可能性がある。これは免疫療法での応用、例えば、免疫反応の惹起もしくは増強が治療効果を持つ可能性がある場合に有用である場合がある。好適な応用は個体における病的細胞集団の存在に伴う状態の治療を含む場合がある。こうした状態は癌もしくは細胞内病原体感染を含む場合がある。他の好適な実施形態は、細胞もしくは組織の免疫原性の減少が治療効果を持つ可能性のある自己免疫性もしくは自家炎症性病態の治療を含む場合がある。上に記載されたようなペプチド交換蛋白質の標的ドメインは、非標的細胞に比して優先的にあるいは選択的に蛋白質を個体の標的細胞に向ける可能性がある。
【0146】
ここに記載されているペプチド交換蛋白質はヒトあるいは動物の体の治療法で使用される場合があり、これには治療的あるいは予防的治療(例えば、個体に病態が生じるリスクを軽減するために個体に病態が発生する前に治療をする;その発生を遅らせる;もしくは発生後その重症度を減じる)が含まれる。予防的治療にはワクチン接種が含まれる場合がある。治療の方法はここに記載されているペプチド交換蛋白質および免疫原性ペプチドを、必要のある個体に投与することを含む場合がある。
【0147】
個体における標的細胞の免疫原性を高める方法には、次が含まれる場合がある;上に記載されたような、前記個体の標的細胞に結合する標的ドメインを含むペプチド交換蛋白質を前記個体に投与すること、および免疫原性ペプチドを前記個体に投与すること、これによりペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを標的細胞の表面MHCクラスI分子に付加し、これにより標的細胞の免疫原性を高めること。
【0148】
上に記載されたような治療が適切である個体は、齧歯類(例、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例、マウス)、イヌ科動物(例、イヌ)、ネコ科動物(例、ネコ)、ウマ科動物(例、ウマ)、霊長類、サル科動物(例、サルもしくは類人猿)、サル(例、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)あるいはヒトである場合がある。
【0149】
望ましい実施形態によっては、前記個体はヒトである。他の好適な実施形態では、非ヒト哺乳類、特にヒトにおける治療効果を証明するモデルとして従来使われる哺乳類(例えば
、ネズミ、霊長類、ブタ、イヌあるいはウサギ)が使用される場合がある。
【0150】
好適な標的細胞は、病的細胞、すなわち個体の病的状態と関連している細胞、例えばウィルスまたはその他の細胞内病原体感染細胞、もしくは癌あるいは腫瘍細胞などを含む場合がある。
【0151】
好適な実施形態によっては、標的細胞は癌細胞である。個体における癌の治療法は次のものを含む場合がある;
前記個体における癌細胞と結合する標的ドメインを含む上に記載されたペプチド交換蛋白質を個体に投与し、そして免疫原性ペプチドを個体に投与し、ペプチド交換蛋白質が、免疫原性ペプチドを前記個体の癌細胞の表面 MHCクラスI分子に負荷するようにし、これに
より前記個体における癌細胞に対する免疫反応を惹起もしくは増強する。
【0152】
癌は悪性癌細胞の異常増殖を特徴とし、AML、 CML、 ALL および CLLなどの白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫などのリンパ腫、および肉腫、皮膚癌、悪性黒色腫、膀胱癌、脳の癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝癌、頭頸部癌、食道癌、膵癌、腎癌、副腎癌、胃癌、睾丸の癌、胆嚢および胆管癌、甲状腺癌、胸腺癌、骨の癌、大脳の癌、また原発不明癌(CUP)を含む場合
がある。
【0153】
実施形態によっては、個体の中の癌細胞は、個体内の正常体細胞とは免疫学的に異なっている場合がある(すなわち、癌性腫瘍は免疫原性である場合がある。)例えば、癌細胞は個体内で、癌細胞により発現している1つあるいはそれ以上の抗原に対して全身的免疫反
応を惹起することができる可能性がある。免疫反応を惹起する腫瘍抗原は癌細胞に特異的な場合もあり、前記個体の1つあるいはそれ以上の正常細胞と共有されている場合もある
。他の実施形態では、個体内の癌細胞は、癌細胞の表面のMHCクラスI分子がここに記載されているペプチド交換蛋白質を使用して外来性免疫原性ペプチドを負荷されるまで、前記個体の正常体細胞と免疫学的に区別されない場合がある。
【0154】
実施形態によっては、個体には最初の癌治療後に、最小残存病変(MRD)がある場合があ
る。
【0155】
癌を持つ個体は、本技術分野では知られている臨床的基準に従って癌の診断をつけるのに十分な、同定可能な徴候、症状、または検査所見を最低1つ示す場合がある。こうした臨床的基準の例は医学教科書に見いだすことができ、例としてはHarrison’s Principles of Internal Medicine, 15th Ed., Fauci AS et al., eds., McGraw-Hill, New York, 2001がある。実施形態によっては、個体における癌の診断は特定の型の細胞(例、癌細胞)
を個体から得られた体液もしくは組織検体に見いだすことを含む場合がある。
【0156】
特に治療は癌の増殖を抑制することを含む場合があり、これには完全な癌の緩解および/または癌の転移の抑制を含む。癌の増殖は一般に、癌内においてより発展した形への変化を示す数多くの指標のいずれか1つに注目する。従って、癌の増殖抑制を計測する指標には、癌細胞の生存の減少、腫瘍の容積または形状の減少(例えば、コンピューター断層法(CT)、超音波検査、あるいはその他の画像法で決定される)腫瘍増殖の遅延、腫瘍血管系の破壊、遅延型過敏症皮膚試験の成績改善、T細胞活性増加および腫瘍特異抗原レベル
の低下を含む。ここに記載されているように修飾された T 細胞の投与は、癌増殖、特に
その個体に既に存在する癌の増殖に抵抗する個体の能力を改善および/または前記個体の癌増殖傾向を減少させる可能性がある。
【0157】
他の好適な実施形態では、標的細胞は病原体感染細胞である。
【0158】
個体における病原体感染の治療法は、次のものを含む場合がある;個体の病原体感染細胞に結合する標的ドメインを含む、上に記載されたペプチド交換蛋白質を前記個体に投与し、そして免疫原性ペプチドを前記個体に投与し、ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを前記個体の病原体感染細胞表面の MHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより前
記個体内で病原体感染細胞に対する免疫反応を惹起する、もしくは増強させる。
【0159】
病原体感染症にはウィルス感染、例えばHIV、 EBV、 CMVもしくは肝炎ウィルス感染が含
まれる場合がある。
【0160】
他の好適な実施形態では、標的細胞は樹状細胞のような抗原提示である。抗原提示細胞は、抗原エピトープをT細胞に提示し、抗原に対するT細胞反応を活性化する。個体の病的細
胞に関連する状態を治療する方法には、次が含まれる場合がある;個体の抗原提示細胞に結合する標的ドメインを含む、ここに記載されているペプチド交換蛋白質を前記個体に投与し、そして免疫原性ペプチドを個体に投与し、前記ペプチド交換蛋白質が免疫原性ペプチドを抗原提示細胞の表面 MHCクラスI分子に負荷するようにし、前記抗原提示細胞が個
体内で病的細胞に対する免疫反応を惹起する、もしくは増強させる。
【0161】
病的細胞は癌細胞の場合もあれば、あるいは病原体感染細胞の場合もある。例えば、これは、ペプチドワクチンが現在 CD8+ T細胞反応を誘導するのに使用されている HIV, EBV, CMV, 肝炎ウィルス、インフルエンザ、ポリオ、ヒトパピローマウィルス、麻疹、流行性
耳下腺炎、風疹、水痘、エボラもしくはジカなどの病原体感染症の治療上、あるいは例えば、特定の抗原を認識できる T細胞数を増加させることによる癌の治療上有用である可能性がある。
【0162】
他の実施形態では、ここに記載されている方法は免疫原性を減少させる上で有用である可能性がある。個体において免疫反応を減少させる方法は、次のものを含む場合がある;個体に標的ドメインが前記個体の標的細胞に結合するキメラペプチド交換蛋白質を投与し、前記個体に非免疫原性ペプチドを投与し、ペプチド交換蛋白質が表面 MHCクラスI分子の
免疫原性ペプチドを非免疫原性ペプチドで置換し、標的細胞の免疫原性が個体において減少するようにする。
【0163】
キメラペプチド交換蛋白質は、例えばドナー臓器および/または抗原提示細胞の免疫原性を減少し、免疫認識の標的となる自己/ドナーペプチド(例、同種抗原/副組織適合性抗原)の認識を排除する場合がある。
【0164】
望ましい実施形態によっては、個体は自己免疫疾患または免疫仲介性炎症性疾患を持つ場合がある。個体において自己免疫性あるいは免疫仲介性炎症疾患を治療する方法は、次のものを含む場合がある;免疫原性ペプチドを発現している表面 MHCクラスI分子をもつ個
体の細胞に結合する標的ドメインを含む、上に記載されたペプチド交換蛋白質を投与し、そして前記個体に非免疫原性ペプチドを投与し、ペプチド交換蛋白質が表面 MHCクラスI
分子の免疫原性ペプチドを非免疫原性ペプチドで置換するようにし、これにより前記個体において前記細胞に対する免疫反応を防ぎ、あるいは減少させる。
【0165】
他の望ましい実施形態では、ここに記載されている方法は、臓器もしくは組織移植において有用である可能性がある。個体において MHCクラスI分子に関連する疾患を治療する方
法は、次のものを含む場合がある;標的ドメインが疾患関連 MHCクラスI分子を表面に持
つ個体の標的細胞に結合する、ここに記載されているキメラペプチド交換蛋白質を個体に投与し、そして前記個体に外来性ペプチドを投与し、ペプチド交換蛋白質が表面 MHCクラスI分子に外来性ペプチドを負荷するようにし、 MHCクラスI分子が外来性ペプチドにより安定化するようにする。
【0166】
他の実施形態では、ここに記載されている方法は、 MHCクラスI分子関連疾患を治療する
上で有用である可能性がある。個体における MHCクラスI分子関連疾患を治療する方法は
、次のものを含む場合がある;標的ドメインが前記個体の、表面に疾患関連 MHCクラスI
分子を持つ標的細胞に結合する、ここに記載されているキメラペプチド交換蛋白質を個体に投与し、そして外来性ペプチドを前記個体に投与し、ペプチド交換蛋白質が表面 MHCクラスI分子に外来性ペプチドを負荷するようにし、 MHCクラスI分子が外来性ペプチドにより安定されるようにする。
【0167】
MHCクラスI分子関連疾患は脊椎関節症(HLA-B27と関連)、ベーチェット病(HLA-B51と関連)、バードショット脈絡網膜症(HLA-A29と関連)、乾癬および乾癬性関節炎(HLA-Cw6
と関連)を含む場合がある。
【0168】
投与は通常「治療上効果のある量」あるいは「予防上効果のある量」で行われ、これは患者にとって利点があることを示すのに十分である。こうした利点は、少なくとも最低1つの症状の改善である場合がある。投与される実際の量、投与の速さおよび時間経過は、治療されるものの性質と重症度、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に知られているその他の要因に依存する。
【0169】
組成物は単独であるいは他の治療薬と組み合わせて、同時にあるいは順次投与される場合があり、これは治療される個体の状況による。例えば、組成物はワクチン接種、免疫チェックポイント阻害、その他の免疫療法および可能性としては化学療法および放射線療法と組み合わせて投与される場合がある。
【0170】
治療の処方は、例えば、容量の決定などは、一般開業医およびその他の医師の責任の範囲内のことであり、治療されている疾患の症状のおよび/または進行の重症度に依存する場合がある。ポリペプチド製剤の適切な量は、本技術分野では周知である(Ledermann J.A. et al.(1991) Int. J. Cancer 47: 659-664; Bagshawe K.D. et al.(1991) Antibody, Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4: 915-922)。投与される薬剤のタイプに関
する特定の用量はここに示されるか、あるいは必要に応じてPhysician's Desk Reference
(2003)に示さる場合がある。ここに記載されているキメラ蛋白質の治療的に有効な量、
もしくは適切な用量は、動物モデルにおけるそのin vitro 活性とin vivo 活性を比較す
ることにより決定される場合がある。マウスや他の試験動物における有効な用量をヒトに外挿する方法は、よく知られている。正確な用量は多くの要因に依存し、その中にはここに記載されているキメラ蛋白質が予防のためのものであるか、あるいは治療のためのものであるか、治療対象となる領域の大きさおよび部位、ここに記載されているキメラ蛋白質の正確な性質および検出可能な標識あるいはここに記載されているキメラ蛋白質に結合される他の分子の性質が含まれる。
【0171】
ペプチド交換蛋白質の典型的な用量は0.1 mg/kgから 100 mg/kgまでの範囲であろ
う。例えば、100 μgから 1 gの範囲の用量は全身的な適用のために使用される場合
がある。最初のより大量の負荷用量に次いで、1回またはそれ以上の回数、低用量が投与される場合がある。これは成人患者の一回治療用の用量であり、小児と乳児に対しては相対的に調節される場合がある。治療薬は、毎日、週2回、週1回もしくは毎月の間隔で、医師の裁量により反復投与される場合がある。
【0172】
実施形態によっては、腫瘍/感染部位に送達するためのTAPBPR/ペプチドの組み合わせを投与する前に、腫瘍もしくはウィルス抗原で予備予防接種および/または再予防接種することが必要な場合がある。予防接種戦略はペプチドを負荷するTAPBPRを使用する場合もあり、あるいは標準的予防接種レジメンを使う場合もある。
【0173】
個体の治療スケジュールは、ここに記載されているペプチド交換蛋白質組成物の薬物動態的および薬力学的性質、投与経路および治療される病態の性質に依存する場合がある。
【0174】
治療は定期的に行う場合があり、投与間の期間は12時間以上、24時間以上、36時間以上、48時間以上、96時間以上、あるいは1週間以上の場合がある。好適な処方設計と投与経路は上に記載されている。
【0175】
治療はいかなる治療および療法でもある可能性があり、ヒトのものでも、あるいは動物(例えば獣医学的応用)のものでもあり得、この中において、何らかの望ましい治療効果が
達成され、例えば、病態の進行を抑制もしくは遅延させ、そして進行速度の減少、進行速度の停止、病態の改善、病態の治癒あるいは緩解(部分的であれ、全体的であれ)、病態の1つまたはそれ以上の症状および/または徴候の予防、遅延、減弱もしくは停止、もしくは治療しない場合に予想される以上に、対象あるいは患者の生存を延長することを含む。
【0176】
治療はまた、予防的(すなわち予防)である場合がある。例えば、疾患に罹りやすい、もしくは疾患の発生あるいは再発の危険のある個体は、ここに記載されているように治療される可能性がある。そうした治療は、前記個体において前記疾患の発生あるいは再発を予防しもしくは遅延させる場合がある。
【0177】
本発明の他の態様は、ここに記載されているような免疫原性を増強する、もしくは免疫反応を刺激する上で使用されるキットに関係する。キットは上に記載されているようなペプチド交換蛋白質および免疫原性ペプチドを含む。
【0178】
キットはさらに、追加の治療薬、例えば、ワクチンもしくは免疫チェックポイント阻害剤を含む。
【0179】
本発明の他の態様は、標的ペプチドを発現しているMHCクラスI分子を用い、in vitroあるいは ex vivoでT細胞を同定、特徴づけ、または単離するための方法と試薬に関係する。
【0180】
標的ペプチドを発現しているMHCクラスI分子を生成する方法は、次のものを含む場合がある;MHCクラスI分子に上に記載されているペプチド交換蛋白質と標的ペプチドを接触させ、前記ペプチド交換蛋白質が標的ペプチドをMHCクラスI分子に負荷するようにし、これにより標的ペプチドを発現しているMHCクラスI分子を生成する。
【0181】
MHCクラスI分子は可溶性ペプチド交換蛋白質と接触することが望ましい。可溶性ペプチド交換蛋白質は上に詳細に記載されている。
【0182】
標的ペプチドは、MHCクラスI分子により発現されたさい、T細胞と特異的に結合すること
のできるペプチドである場合がある。例えば、標的ペプチドはウィルス性、細菌性、癌もしくは自己免疫性抗原性エピトープを含む場合がある。標的ペプチドを発現しているMHC
クラスI分子は、特異的にMHCクラスI分子/標的ペプチド複合体と結合するT細胞集団内で、T細胞を同定、定量、特徴づけあるいは単離する上で有用である可能性がある。
【0183】
MHCクラスI分子はペプチド交換蛋白質との接触の後、標的ペプチドに置換される初期ペプチドを提示する可能性がある。初期ペプチドの配列は、使用される標的ペプチドとは独立しており、MHCクラスI分子により発現されうるいかなる簡便なペプチドも使用される場合がある。
【0184】
実施形態によっては、MHCクラスI分子はビーズのような固体担体に固定される場合がある。MHCクラスI分子は固体担体に固定されたMHCクラスI分子の集団の一員である場合がある。例えば、ペプチド交換蛋白質は固体担体に固定されたMHCクラスI分子の集団と接触する場合があり、標的ペプチドを固定された前記集団におけるMHCクラスI分子に負荷する場合がある。
【0185】
MHCクラスI分子はいかなる簡便な技術によっても固体担体上に固定される可能性がある。例えば、MHCクラスI分子はビオチン化される場合があり、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用を介して担体に結合する可能性がある。
【0186】
他の実施形態では、MHCクラスI分子は例えば、多量体のサブユニットとして、溶液状態の場合もある。ペプチド交換蛋白質は多数のMHCクラスI分子を含む多量体を有する溶液の中で接触を受ける場合がある。多量体には、ストレプトアビジンとリンクしたビオチン化したMHCクラスI分子の四量体を含むことが望ましい。ストレプトアビジンは、例えば、フィコエリトリンのような蛍光色素分子で標識される場合がある。ビオチン化されたMHCクラ
スI分子の四量体は本技術分野では周知である(Altman et al Science 1996, 274: 94-96)。
【0187】
実施形態によっては、標的ペプチドを発現しているMHCクラスI分子はT細胞集団、例えば
、個体からあらかじめ得られたT細胞集団と接触する場合がある。前記集団におけるT細胞のMHCクラスI分子の結合が決定される場合がある。結合は、フローサイトメトリーなどの簡便な技術により決定される場合がある。
【0188】
標的細胞に発現しているMHCクラスI分子へ結合する集団内のT細胞の頻度もしくは数が決
定される場合がある。これは研究、あるいは診断的もしくは予後への応用に有用である可能性がある。
【0189】
標的分子を発現しているMHCクラスI分子へ結合するT細胞は、例えば治療的応用へ用いる
ために、in vitroで単離され、および/または増殖される場合がある。
【0190】
本発明の他の態様および実施形態は、上に記載されている態様および実施形態で、「~を含む」という術語が「~から成る」で置換されたもの、および上に記載されている態様および実施形態で「~を含む」という術語が「本質的に~から成る」で置換されたものを提供している。
【0191】
出願は、文脈上他の解釈が必要な場合を除き、上に記載されている上記の態様と実施形態のすべてを相互に組み合わせたものを開示する。同様に、文脈上他の解釈が必要な場合を除き、出願は、望ましいおよび/または選択可能な要件のすべての組み合わせを、単独にもしくは他の態様とともに開示する。
【0192】
上記の実施形態の修飾、さらなる実施形態とその修飾は、この開示を読めば当業者には明らかであり、従ってこれらは本発明の範囲内にある。
【0193】
この明細書に述べられたすべての文書と配列データベース記載は、引用することによって全体があらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0194】
ここで使用される「および/または」は2つの特定の特徴または要素のそれぞれ一方を、他方を伴って、あるいは伴わないで開示することと理解される必要がある。例えば、“A
および/またはB”とは、(i) A、(ii) B および(iii) A と Bのそれぞれの特定の
開示と理解されるべきであり、それぞれが個々にここに提示されているように理解されるべきである。
【0195】
実験的
1.材料と方法
1.1 構成体
以前に記載されているように、全長性TAPBPRWTおよびTAPBPRTN5の生成は、レンチウィル
スベクターpHRSIN-C56W-UbEM を用いて行われ、これは脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターのコントロール下でTAPBPRを、そしてユビキチンプロモーターのコント
ロール下でGFP誘導体エメラルドを作り出す11,15。キメラ構成体TAPBPRPM および tapasinPMのクローニングは、同じレンチウィルスベクターで、二段階PCR 手順により行われ、
ここでTAPBPRもしくはタパシンのいずれかの細胞外ドメインおよび膜貫通性ドメインは増幅され、次いでCD8の細胞質尾部と融合させられた。TAPBPRERは同様の手順で作成され、
ここでTAPBPRの細胞外ドメインはタパシンの膜貫通性および細胞質ドメインと融合させられた。TAPBPRWTもしくはTAPBPRTN5の分泌型を作成するために、Li et al 22に記載されているように、両者の内腔ドメインがpiggyBacトランスポゾンに基づく哺乳類細胞発現系にクローニングされた。
【0196】
1.2 細胞培養
IFN 23に対してより反応性の高いHeLa細胞株の変異型 であるHeLaM細胞、修飾を受けたその変異型であるHEK-293T 細胞とMCF7細胞が10%ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco, Thermo Fisher Scientific)、100 U/ml ペニシリンおよび100 μg/ml ストレプトマイシン(Gibco, Thermo Fisher Scientific)を添加されたダルベッコ改変培地(DMEM; Sigma-Aldrich, UK)で37℃、5% CO2環境下で維持された。内因性に発現しているTAPBPRの発現
を誘導し、MHCクラスI抗原処理および提示経路の他の構成要素を上方制御するため、指定されているところでHeLaM および MCF7細胞が200 U/ml IFN-γ(Peprotech、UK)で
48-72時間処理された。
【0197】
1.3 抗体
次のTAPBPR特異抗体が使用された。TAPBPR の未変性コンフォーメーションに特異的なマ
ウスモノクローナル抗体(mAb)で、ヒトTAPBPR11のアミノ酸22-406に対して作成され、
タパシン15とは交差反応しないPeTe4および TAPBPRのアミノ酸23-122に対して作成され、変性TAPBPRに反応するマウスmAb、 ab57411 (Abcam、UK)。次のMHCクラスI特異的抗体
が使用された;MHC class I α2ドメイン上のコンフォーメーション特異的エピトープを
認識する汎MHC class I mAb で、β2mおよびペプチド24の存在からは独立しているW6/32;
α1ドメイン25,26のアミノ酸 57-62にPxxWDR モチーフを含むHLA-A、 -Bおよび-C 分子
を認識するMHC class I特異的mAb、HC10; HLA-A2 および - A68重鎖/β2mヘテロ二量体に特異的なビオチン化抗 HLA-A68反応性mAb(One Lambda, Thermo Fisher Scientific、 Canoga Park、 CA); HLA-A2重鎖/β2mヘテロ二量体特異的抗体、 BB7.2。使用された他の抗体には次のものがある:Pasta-1,タパシン特異的mAb (Dick et al., 2002); ウサギ抗カルネキシン抗体(Enzo Life Sciences、 UK); UGT1(ab124879, Abcam)に対する
ウサギmAb; 陰性対照としてIgG2aアイソタイプコントロール(Sigma-Aldrich)。
【0198】
1.4 レンチウィルス形質導入およびトランスフェクション
レンチウィルスはFugene(Promega、 UK)を使用して、HEK-293T細胞にレンチウィルスベクターを パッケージングベクターpCMVΔR8.91および エンベロープベクターpMD.Gとともにトランスフェクションすることにより作成された。ウィルス上清は48時間で収集され、以前に記載されたTAPBPR-ノックアウトHeLaM細胞株(HeLaM-TAPBPRKO) (Neerincx et
al., 2017)の形質導入に使用された。TAPBPRWT, TAPBPRTN5、 TAPBPRPPM、 TAPBPRER、
tapasinWTおよび tapasinPMがHeLaM-TAPBPRKO細胞株で再構成された。
【0199】
1.5 MHC class I結合ペプチド
次のMHCクラスI特異的ペプチドが使用された:HLA-A*68:02結合ペプチドETVSEQSNV、 そ
のアンカー残基(2位および9位アミノ酸)をグリシンで置換することによって得られたその誘導体EGVSEQSNG, また、その蛍光標識型ETVSKTAMRAQSNVおよびそれぞれ5位グルタミン酸塩をリジンで置換することにより得られたEGVSKTAMRAQSNG、 5-カルボキシルテトラメ
チルローダミン [TAMRA] (Peptide Synthetics、 UKより)で標識された標識型; HLA-A*02:01結合ペプチドNLVPMVATV、 YLLEMLWRL、 YLLEMLWRL、 CLGGLLTMV およびYVVPFVAKV、加えてこれらの蛍光標識変異型NLVPKTAMRAVATV、 FMVFKTAMRAQTHI、 CLGGKTAMRALTMV、 YLLEKTAMRALWRLおよびそれぞれYVVPFVAKTAMRAV(Peptide Synthetics、 UKから);HLA-B*27:05特異ペプチドSRYWAIRTRおよびその蛍光標識変異型SRYWKTAMRAIRTR (Peptide Synth
etics, UKより)。
【0200】
1.6 フローサイトメトリー
トリプシン処理後、細胞を1% 牛血清アルブミン(BSA)で洗い, 4℃ で1x PBSの中に浮遊させ、次いで次の抗体の一つを含む 1% BSA内で 30分間4℃で染色した。W6/32, pete4, pasta-1、 抗HLA-A68反応性mAb、 BB7.2もしくはアイソタイプコントロール抗体。
過剰の未結合の抗体を除くため細胞を洗浄した後、細胞と結合した1次抗体は、ビオチン化抗HLA-A68 mAbに対するヤギ抗マウスAlexa-Fluor 647 IgG (Invitrogen Molecular Probes、 Thermo Fisher Scientific)あるいはAlexa-Fluor 647結合 ストレプトアビジン (Invitrogen Molecular Probes、 Thermo Fisher Scientific) で4℃、25 分間インキュベートすることにより検出された。次いで3回洗浄後、蛍光標識はCytek 修正機能付きBD FACScanアナライザーを使い検出され、FlowJo(FlowJo、 LLC、 Ashland、 OR)を
用いて分析された。
【0201】
1.7 免疫沈降、ゲル電気泳動およびウェスタンブロッティング
細胞を採取し、次いでリン酸緩衝生食水(PBS)で洗浄した。表面TAPBPR免疫沈降実験の
ため、細胞を4℃で、回転をかけつつ1時間1x PBSに溶かした1% BSA中で2 μg Pete4抗体とインキュベートした。過剰の抗体は細胞を4℃の1x PBSで5回洗浄することによ
り除去した。次いで細胞を溶解し、全細胞溶解液からのTAPBPR免疫沈降と同様に細胞内TAPBPR免疫沈降がさらに行われた。
【0202】
全細胞溶解液からのTAPBPR免疫沈降実験のため、細胞を4℃、30分間、1 % トリトンX- 100 (VWR, Radnor, PN), 10 mM NEM, 1 mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)(Sigma-Aldrich)を添加したトリス緩衝生食水 (TBS)(20 mM Tris-HCl、 150 mM NaCl、 2.5 mM CaCl2)、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、 UK)で溶解し
た。核と細胞残屑は15分間13,000 × gで遠心してペレットとし上清を採取した
。免疫沈降は4℃で2時間、回転させながらプロテインAセファロース(GE Healthcare)と結合したPete4抗体で行った。免疫沈降後、ビーズを0.1% 界面活性剤-TBS中で十分洗浄し、未結合の抗体を除去した。ゲル電気泳動による分離のため、前記試料を100 mM β-メルカプトエタノールを添加した試料緩衝液(125 mM トリス-HCl pH 6.8、 4% SDS、 20% グリセロール, 0.04% ブロモフェノールブルー)で94℃、10分間加熱した。試料をウェスタンブロッティング法で分析するために、蛋白質をイモビロン転写膜(Merck Millipore)に転写した。膜は30分間、PBS 中の5% (w/v)粉乳および0.1% (v/v) Tween 20を使いブロックし、次いで指定された1次抗体で1-16時間イン
キュベートした。洗浄後、膜は種特異的HRP結合2次抗体でインキュベートし、洗浄、Western Lightning(Percepta Elmer、 UK) およびSuper RX film(Fujifilm、UK)を使用
し、増強化学発光により検出した。フィルムはMX Navigator Software (Canon、UK)を
用いCanoScan8800Fでスキャンした。
【0203】
1.8 TAPBPR蛋白質の発現と精製
TAPBPRWT もしくは TAPBPRTN5の一方の選択された形が、22に記載されているようにPiggyBac発現システムを用いて 293T細胞に発現された。このため、いずれかの蛋白質のC末端Hisタグ付き細胞外ドメインをNheI と NotI(Thermo Fisher Scientific)を用いプロテインAを欠くPB-T-PAFベクターの修飾版へ組み込ませた。簡潔に述べると、2x105 293T
細胞に100 ng PB-RNプラスミッド、100 ng PBaseプラスミッド、および800ng PB-T-TAPBPRあるいはPB-Tタパシンをトランスフェクトさせた。トランスフェクションの48時間後、細胞は10 %ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco, Thermo Fisher Scientific)、
1xP/S、 3 μg/ml ピューロマイシン(Invivogen)および700 μg G418 (Gibco, Thermo Scientific)を添加したダルベッコ改変培地 (DMEM; Sigma-Aldrich、 UK)を用
い7日間安定したトランスフェクションのために選択された。蛋白質生成のため、6x1
07の細胞が5% FCSと100U/mlペニシリンを添加した200 ml DMEMの中で5-7日間2 μg/mlドキシサイクリンで誘導を受けた。7日後、培養液を収集し、NiSepharoseTMexcelビーズ(GE Lifesciences)を用いてTAPBPRを精製した。蛋白質はPBS (Sigma)に溶
かした250 mMイミダゾールで溶出し、次いで48時間PBS(Sigma)で透析した。純度
の評価のため、溶出画分をSDSPAGEで分析し、次いでクマシー染色を行った。
【0204】
1.9 ペプチド結合
標的細胞株を25,000-30,000 細胞/ウェルで12ウェルプレートに播種し、IFN-γで刺激した。
刺激期間に続き、細胞は1x PBSで3回洗浄し、前もって温められた300 μL のopti-MEM (Thermo Fisher Scientific、 UK)でインキュベートした。ペプチド結合が組み換えTAPBPRの存在下でなされた場合、細胞は次いで組み換えTAPBPR (HLA-A*68:02は100 nM あるいは HLA-A* 02:01は1 μM)の存在下もしくは不在下で処理された。15分後、望みのTAMRA標識ペプチドが細胞に加えられ、37℃(HLA-A*68:02は15分間、あるいは
HLA-A*02:01は60分間)でインキュベートされた。ペプチドの結合が過剰発現したTAPBPRにより促進される場合には、標識ペプチドは組み換えTAPBPRを使用することなく、直接に細胞に加えられた。ペプチド処理に続き、細胞は3回1x PBSで洗浄し、収穫した。結
合ペプチド/細胞のレベルを、YelFL1 channel(Cytek)を用い、フローサイトメトリー
により決定した。
【0205】
1.10 ペプチド交換
細胞は25,000細胞/ウェルで播種し、48時間IFN-γで刺激後洗浄し、opti-MEMで希釈した関心の対象である10 nM TAMRA標識ペプチドで、上に記載されているように3
7℃で15分間処理した。結合ステップに続き、ペプチドを含む培養液を除去し、細胞を洗浄後、培養液単独、もしくは様々な濃度の非標識ペプチドで37℃、さらに15分間処理した。次いで細胞を洗浄、収穫、細胞当たりの結合ペプチドのレベルをYelFL1 channel(Cytek)を用い、フローサイトメトリーにより決定した。
【0206】
1.11 TCR様 mAb 染色
組み換えTAPBPRの存在下で、対応するペプチド10nMで処理後、HLA-A*02:01(Sim et al., 2013)と関連する エプスタイン・バー・ウィルス (EBV)潜伏感染遺伝子産物潜伏膜蛋白質 2A(LMP2A426-434: CLGGLLTMV)および潜伏膜蛋白質1(LMP1125-133: YLLEMLWRL
)由来のペプチドに特異的なTCR様mAb が標的細胞を染色するために使用された。洗浄後
、結合したTCR様mAbのレベルをヤギ抗マウスAlexa-Fluor 647 IgGを使用することにより
検出し、次いでフローサイトメトリーで測定した。
【0207】
1.12 FluoroSpot T 細胞アッセイ
標的細胞(MCF-7 細胞あるいはHLA heavy chain A、 B および Cを欠き、HLA-A*02:01 重鎖で再構成された HeLaM細胞)を6ウェルプレートに80,000細胞/ウェルに播種し、72時間、200単位の IFN-γ(Peprotech、 UK)で刺激した。次いで細胞を3回1x PBS(Sigma-Aldrich、UK)で洗浄し、組み換えWT TAPBPR、 TN5 TAPBPR 突然変異体のいず
れかを含む状態で、あるいはTAPBPRなしの状態で600 μLのあらかじめ温められたopti-MEMとインキュベートした。15分後、100 pM NLVPMVATVペプチドを望む試料に加え
、さらに60分間インキュベートした。ペプチド処理に続き、細胞を3回1x PBSで洗浄
し収穫した。各試料は次いで再度2回1x PBSで洗浄し、X-VIVO 15培養液に1 mil 細胞/ mLの濃度で再浮遊させた標的細胞には最初放射線照射を行い、次いで一晩あらかじめブロックされた96ウェルプレートに8,000 T細胞/ウェルとともに50,000細胞
/ウェル加えた。プレートは37℃で一晩インキュベートし、翌日展開した。
【0208】
2.結果
2.1 ペプチド受容性MHC class Iは表面 TAPBPRを発現している細胞上に存在する
表面TAPBPRが表面MHCクラスI分子上のペプチドエディターとして機能する可能性があるかどうかを探求するために、私たちはまず、蛍光性ペプチドETVSK*QSNV、すなわちHLA-A*68:02に高い親和性で結合する新生抗原ETVSEQSNVの変異型が、表面TAPBPRを欠損する細胞に比べて表面TAPBPRを発現している細胞へより多く結合するかどうかを検索した。IFN-γ
処理を受けた HeLaMTAPBPR
KO (HeLaM
KO)および HeLaM細胞は表面になんらTAPBPRを発現することはないが、HeLaM-TAPBPR
KOにおけるTAPBPR
WTの過剰発現の結果、表面発現したTAPBPRはかなりの量となった(図 1a)。表面TAPBPRを発現している細胞を10 nM外来性ペプチドと37℃で15分間インキュベートし、我々はこれら細胞へのペプチド結合を示す蛍光の大幅な増強を観察した(図 1 b)。対照的に、我々は同一の条件下で表面TAPBPRを欠如する細胞株へのETVSK*QSNV結合は観察できなかった(図 1 b)。観察された細胞性蛍光がMHCクラスIへのペプチド結合の直接の結果であることを確認するため、我々はまた、細胞を蛍光ペプチド(EGVSK*QSNG)の変異型とともにインキュベートした。ここでHLAA* 68:02に結合を許しているアンカー残基は突然変異を起こしたものである。これは細胞株
のいずれに対しても結合を起こさなかった(
図1c)。HeLaMもしくは HeLaM
KO細胞と比べてIFN-γ 処理を受けた HeLa
KOTAPBPR
WTへのペプチド結合の増加は広い範囲のペプチド濃度にわたり観察できた(
図1d)。ペプチド濃度がより高い場合、表面TAPBPRを欠如して
いる細胞への外来性ペプチド結合が観察された(
図1d)。しかし、このTAPBPR非依存性
の細胞へのペプチド結合は約120倍効率が低かった。それはTAPBPRで促進される様式で必要な10 nMのペプチドで観察されるのと同じ蛍光を得るためには約1.2 μMが必要
であったからである(
図1d)。HLA-A、B、C 欠損HeLaM細胞は、外来性ペプチド濃度が1
0 μMとなるまでペプチドを結合できなかったことを考えると、細胞へのペプチド結合はMHCクラスIに依存性であった。時間経過に伴うTAPBPR促進性ペプチド結合の動力学を探求した際、私たちは10 nMペプチドとインキュベートすると、TAPBPR非依存性条件の場合
に比べ、細胞が表面MHCクラスIへ外来性ペプチドを負荷する能力の顕著な増加を観察した(
図1e)。例えば、60分後、私たちはHeLaMおよび HeLaM
KO対照に比べてHeLa
KO-TAPBPR
WTに結合した蛍光ペプチドのレベルが21倍に増加したのを観察した
図1e)。これらの所見は、表面MHCクラスI分子に抗原ペプチドを負荷するうえでの表面TAPBPRの役割を支持している。さらに、私たちは4℃でHeLaM
KOTAPBPR
WT細胞への高レベルの外来性ペプチド
負荷を観察したが、この温度は膜輸送を阻害するため、さらに、ペプチド負荷はエンドサイト―シス小胞内というよりむしろ細胞表面で直接起きていることが示唆される。
【0209】
2.2 表面発現されたTAPBPRはMHCクラスI分子への外来性ペプチドの会合を増強する。
過剰発現した蛋白質というよりむしろTAPBPRの表面プールが外来性ペプチドのMHCクラスIへの負荷に責任があるという決定的証拠を提供するため、私たちは、TAPBPRの標的を異なる細胞内部位とするキメラTAPBPR構成体を2つ作成した。TAPBPRの内腔部分が細胞膜(PM)を標的とすることは、TAPBPRの細胞質尾部をCD8 (TAPBPR
PM)
12で置換することにより達成し、一方TAPBPRは、その膜貫通性ドメインおよび細胞質尾部をタパシンのそれらで置換(TAPBPR
ER)
13,14することにより小胞体(ER)内に保持された。非常に高レベルに細胞表面に発現しているTAPBPR
PMとは対照的に、TAPBPR
ERは細胞膜上には検出されなかった(
図2a)。TAPBPRの表面プールの免疫沈降が示すことは、MHCクラスIはTAPBPR
WTおよび TAPBPR
PM で形質導入された細胞上に表面発現したTAPBPRと会合したが、TAPBPR の突然変異型でMHCクラスI
15とは結合しないTAPBPR
TN5で形質導入された細胞からのTAPBPRとは会合
しなかったということである(
図2b)。単離された表面TAPBPRの量(図 2b)は、TAPBPR
ERを発現している細胞から単離されたかろうじて検出可能な量でフローサイトメトリー
を使用して観察された表面TAPBPR発現(図 2a)と密接な相関があり、UGT1は表面プルダウンでは検出されなかった(図 2b)ため、私たちはTAPBPRの表面プールのみを単離し、細胞内プールは単離しなかったたようであった。表面TAPBPRをあらかじめ除去した細胞からの細胞内TAPBPRプールの単離により、すべてのTAPBPR変異型が発現されており、またTAPBPR
WT, TAPBPR
PM およびTAPBPR
ER分子はMHCクラスIと強い会合を示したことが確認され
た(
図2b)。TAPBPR
PMとは対照的に, UGT1の TAPBPR
WTおよび TAPBPR
ER両者との強い会
合が観察され、
キメラ蛋白質の予想されていた細胞内局在が支持された(
図2b)。2つの外来性HLA-A*68:02特異的蛍光ペプチド、 ETVSK*QSNV およびYVVPFVAK*Vに結合する細胞株の能力が検査された際、表面TAPBPRを発現している細胞のみが、37℃で15分間、10 nMの外来性
ペプチド存在下で有意のペプチド会合を示した(
図2c & d)。TAPBPR
ERを発現している細胞上では蛍光ペプチド結合は観察されなかった(
図2c & d)。これらの結果は、TAPBPRの過剰発現というよりむしろ、表面TAPBPRが外来性ペプチドをMHCクラスIに負荷することに責任があることを示している。
【0210】
2.3 表面発現したタパシンもMHCクラスI分子への外来性ペプチド会合を増強するが、TAPBPRよりも程度は軽い
タパシンもまたMHCクラスI分子エディターであり、私たちは、この分子が細胞表面に発現した場合、同様に外来性ペプチドをMHCクラスIに負荷することができるのか検索した。TAPBPR
WTの過剰発現とは対照的に, タパシン
WTの過剰発現は、おそらくその細胞質尾部に見いだされるER保持モチーフのため、この蛋白質の細胞表面への発現を生じなかった(
図2e)
13, 14。従って、私たちはタパシンの細胞質尾部をCD8 (タパシン
PM)のそれで置換
し、細胞表面にその発現を見た(
図2e)。タパシンを過剰発現する細胞のETVSK*QSNV および YVVPFVAK*Vへの結合能力を検査した際、細胞表面にタパシンを発現している細胞で
、HLA-A*68:02に結合する外来性蛍光ペプチドのわずかながら有意の増加が認められた(
図 2f & g)。こうした結果は、表面タパシンも外来性ペプチドのMHCクラスIへの会合を増強することができるということを示す。しかし、タパシン
PMで観察された外来性ペプチドの結合は、TAPBPR
PMで観察されたそれよりも約10 倍少なかった。
【0211】
2.4 表面MHCクラスI分子上のペプチド交換触媒としての表面TAPBPR機能
表面発現したTAPBPRがMHCクラスIに外来性ペプチド負荷を促進し得るメカニズムとして考えられるものが2つある;TAPBPRがペプチド受容性MHCクラスI分子を一緒に分泌経路を通して細胞表面に移動させるか、および/またはそれがこの非典型的局在部位でペプチド交換触媒として機能する能力を保持するか、である。この問題をさらに探求するために、私たちは表面発現TAPBPRがMHCクラスI分子上でペプチド交換を促進することができるかどうかを決定するアッセイを開発した。まず、細胞を37℃で15分間、10 nM蛍光標識ペ
プチドでインキュベートし、表面MHCクラスI分子を標識ペプチドと結合させた。未結合の蛍光ペプチドを除去するために、十分洗浄後、標識ペプチドを交換する細胞の能力を、細胞を様々な非標識競合ペプチドと37℃で15分間インキュベートすることにより評価した。この方法を使用することにより、私たちは高親和性非標識競合ペプチド(ETVSEQSNV
もしくは YVVPFVAKV)のいずれかの存在下で、YVVPKVAK*V (
図3a & b) およびETVSK*QSNV(
図3c & d)両者の解離を認めた。HLA-A*68:02と結合できないEGVAK*QSNGの存在下
では、HeLa
KOTAPBPR
WT上におけるHLA-A*68:02からの蛍光ペプチドの解離は見られなかっ
た(図 3)。我々の結果は、表面TAPBPRは(YVVPFVAKV> ETVSEQSNV>EGVSEQSNQ)のペプ
チド親和性順で、またペプチド濃度依存性に、MHCクラスI分子上のペプチド交換を促進することができることを示す(図 3b & d)。これらの所見は、TAPBPRが、細胞表面に発現した場合でも依然としてペプチド交換触媒として機能する能力を保持しており、またMHC
クラスI分子上でペプチド交換を行うことができることを証明している。
【0212】
2.5 外来性可溶性TAPBPRペプチドは表面MHCクラスI分子に結合する
細胞膜結合TAPBPRはHLA-A*68:02上でペプチド交換触媒として機能するので、私たちは細
胞に加えられた外来性可溶性TAPBPRが同じ触媒として機能することができるかどうか、あるいは正しい方向性のために膜アンカーを必要とするかどうかに興味を持った。まず、私たちはN末端のIgVおよびIgCドメインからなり、膜貫通および細胞質尾部を欠如する外来
性TAPBPRが表面MHCクラスI分子と結合できるかどうかを検査した。HeLaM細胞を37℃で
15分間、100 nMの外来性TAPBPR
WTとインキュベートした際、TAPBPR特異的mAb PeTe-4を使用することにより、TAPBPRは明瞭に細胞表面に検出可能であった(
図4a)。以下の理由により、TAPBPRの細胞への結合は、そのMHCクラスI分子との会合に完全に依存していると思われた: 1)外来性TAPBPR
TN5 (MHC クラス I
15と結合できない突然変異型)は細
胞に結合しなかった(図 4a), 2)外来性TAPBPR
WTは古典的MHCクラスI発現を欠如するHeLaM (HeLaMHLA- ABC
KO)とはもはや結合できなかった(
図4b)および3) 外来性TAPBPR
WTのHeLaMHLA-ABC
KO細胞への結合は、 HLA-A*A68:02発現が再構成されると回復した(
図4b)。これらの結果は、外来性可溶性TAPBPRが細胞表面に発現しているHLA-A*68:02と結合できること証明している。
【0213】
2.6 外来性可溶性TAPBPRは表面MHCクラスIへのペプチド会合を増強する
私たちは次に、表面MHCクラスI分子に結合した外来性TAPBPRが細胞膜にアンカーしたそれと同様にペプチド交換を行うことができるかを調べた。100 nMの外来性TAPBPRの存在
下もしくは不在下で、37℃、15分間、細胞をインキュベート後、さらに15分間10
nM蛍光ペプチドとともに、あるいはこれなしで処理した。TAPBPR
WT不在下で、あるいはTAPBPR
TN5で処理された場合にHeLaM細胞上に観察された外来性ペプチド結合の著しく低い
レベルとは対照的に、細胞が外来性TAPBPR
WTで処理された場合、外来性蛍光性ペプチドETVSK*QSNV およびYVVPKVAK*VのHeLaMへの結合の有意の増強が観察された (
図4c &d)。EGVAK*QSNGとの会合は、検査したどの条件でも見られなかった(図 4c & d)。TAPBPRを
介する外来性ペプチドの細胞への結合はHLA-A*68:02を介して仲介されることが示された
と言え、これはMHCクラスI発現を欠く細胞にはETVSK*QSNV (
図4e & f) もしくはYVVPKVAK*Vの結合が見られず、またHLA-A*68:02 発現が再構成されるとペプチド会合の回復が見られたことによる(図 4e & f)。可溶性TAPBPR
WTは広い範囲のペプチド濃度にわたり
細胞への外来性ペプチド結合を増強した(
図4g)。こうした結果は、外来性TAPBPRがペ
プチドをHLA-A*68:02に負荷することができ、またTAPBPRの内腔ドメインがMHCクラスI分
子へのTAPBPR負荷の場として十分であることを明瞭に証明している。
観察された結果はHLA-A*68:02の異常でないことを確認するため、私たちは分析をさらに
広げ、TAPBPRが他のヒトMHCクラスI分子、HLA-A*02:01へ種々の外来性ペプチドを負荷す
る能力を検査した。外来性TAPBPR
WTは、NLVPMVATV(CMV蛋白質pp6516由来免疫原性ペプチド)、 YVVPFVAKV (ヒトCCR4-NOT転写複合体サブユニット18)およびYLLEMLWRL (EBV
潜伏膜蛋白質1 (LMP1)17由来免疫原性ペプチド17(図 4h & i)の蛍光性変異型の結合
を有意に促進した。TAPBPRが促進するこれらの外来性ペプチドの負荷はHLA-A2に依存しており、これはHLA-A2 陰性細胞には蛍光性ペプチドの結合が観察されないことによる。外
来性TAPBPR
WTはまたCLGGLLTMV (EBV蛋白質潜伏膜蛋白質1由来の免疫原性ペプチド)の蛍光性変異型の結合を有意なレベルではないが、わずかに促進するように思われたが、(
図4h
& i) 他のMHCクラスI分子に特異的な他のペプチドのHLA-A2への結合は促進しなかった (図 4i)。MHCクラスIに結合できない外来性TAPBPR
TN5はどのペプチドにおいてもHLA-A2への結合を促進することはなかった (
図4i)。総合すると、私たちのデータは、外来性TAPBPRが親和性に基づく様式で、表面MHCクラスIに対し外来性ペプチドの負荷を促進でき
ることを強く示唆している。
【0214】
TAPBPRは様々な異なるHLA分子、特に A*68:02、 A*23:01、 A*02:01、 A*32:01、 A*03:01、A*68:01およびA*11:01などのHLA-A分子(
図22)上でペプチド交換を促進することが見出された。
【0215】
2.7 TAPBPRを介してMHCクラスIに負荷された抗原ペプチドは、T細胞レセプターが利用可能である
私たちは次いで、TAPBPRを介して負荷されたペプチドがT細胞レセプター(TCR)検出に利用可能であるか決定した。希望の持てることに、可溶性TAPBPRは高親和性ペプチドが表面MHCクラスI分子に結合すると細胞から解離することが見いだされており(図 17)、TAPBP
R負荷されたペプチド:MHC複合体はT細胞レセプター(TCR)による検出のために完全にアクセス可能である可能性があった。
【0216】
この探求のため、私たちはまず、HLA-A* 02:01 上に提示されたLMP1125-133およびLMP2426-434 由来ペプチドにそれぞれ特異的な2つの抗EBV TCR様mAb L1 および L2 17が、外来
性TAPBPRにより表面HLA-A2に負荷されたYLLEMLWRLおよびCLGGLLTMVを認識できるか検索した。 ペプチドのみと、もしくは外来性TAPBPR
TN5で処理後に ペプチドとインキュベート
した細胞と比べ、外来性TAPBPR
WT存在下では、HeLa-HLA-ABC
KOA2+上において、それぞれ
のペプチドのTCR検出の有意な増加が観察された(図 5a-d)。TCR様 mAb が、TAPBPR を
介してHLA-A2に負荷されたペプチドを認識する能力は、ペプチド結合のレベルを強く反映し(
図4h&i)、最大の認識の増加はYLLEMLWRLのL1-TCR認識で観察された(
図5a&b)。次
いで私たちは、サイトメガロウィルス(CMV) 蛋白質pp65
16 ()由来の免疫原性ペプチドNLVPMVATVに特異的なHLA-A2拘束性CD8+ T細胞株からのIFN-γ生成を測定するFluoroSpotアッセイを使用することにより、TAPBPRを負荷されたペプチドがT細胞を刺激する能力を測
定した。私たちは、ペプチドのみ、もしくは外来性 TAPBPR
TN5 で処理後ペプチドとイン
キュベートした細胞に比べて、外来性TAPBPR
WTで処理後、NLVPMVATVでインキュベートし
たT細胞の刺激の有意な増加を観察した(図 5e)。こうした結果は、TAPBPRを介してMHC
クラスIに負荷されたペプチドが細胞表面に存在することのみならず、これはまたCD8+ T 細胞による認識のためにアクセスできることをも証明している。
【0217】
2.8 TAPBPRは腫瘍細胞に抗原ペプチドを負荷すること、そしてT細胞によるそれらの認識を誘導することができる
腫瘍細胞に免疫原性ペプチドを負荷する能力は癌免疫療法に非常に有益であると思われるため、私たちは、腫瘍またはウィルスペプチドを乳癌細胞株MCF-7に負荷するTAPBPRの能
力を検査した。
【0218】
可溶性TAPBPR
WTは、腫瘍抗原IMDQVPFSV (gp100由来)
28, ELAGIGILTV(Melan-A/MART-1
由来)
29、 LLGRNSFEV (p53由来)
30およびRLLQETELV (HER-2/neu由来)
31 (図 6a)の蛍光性誘導体の、 乳癌細胞株MCF-7上に自然発現しているHLA-A*02:01への負荷を有意
に増強することを、私たちは見出した。 外来性可溶性TAPBPR
WTはまた、ペプチドのみと、もしくは外来性 TAPBPR
TN5 で処理後ペプチドとインキュベートした細胞に比べて、YLLEK*LWRL (EBV LMP1由来)およびNLVPK*VATV(CMV由来)両者の、MCF-7上に発現しているHLA-A2分子への会合をも増強した(
図6b)。
【0219】
私たちは、TAPBPRによりMCF-7細胞上に負荷されたYLLEMLWRLが、HLA-A*02:01 (17)上に存在するLMP1125-133に特異的な抗EBV TCR様 mAb L1により強く検出されることを見出した
(図 6c & 6d)。さらに、可溶性TAPBPRによりMCF-7上に負荷されたNLVPMVATVは、非標識ペプチドとインキュベートした場合、ペプチドのみと、もしくは外来性 TAPBPRTN5 を
伴うペプチドとインキュベートしたMCF細胞に比べて、HLA-A2 (16)上に存在するpp65495-503に特異的なヒトCD8+ T細胞の刺激(IFNγ分泌で測定)を有意に増加した(図. 6e)
。私たちはさらに、これらの所見をHeLaM-HLAABCKO- A2+ を用い、検証した(図 18)
。こうした結果は、可溶性TAPBPRが効果的に抗原ペプチドをCD8+ Tによる認識のため腫瘍細胞株に負荷することができること、そして腫瘍に対するT細胞反応を増強することがで
きるかもしれないことを証明している。
【0220】
2.9 キメラ TAPBPR
TAPBPRリンカー-GFPナノボディ融合産物(種々のリンカーと)が生成された(
図7)。これらの産物は、TAPBPR-抗体融合産物が完全な機能を保持していることを証明するために
使用された。TAPBPRと抗体フラグメントの間に様々な長さのリンカーを持つTAPBPR融合蛋白質が効果的に機能することが示された(
図21)。
【0221】
2.10 頸癌細胞へのペプチド負荷
私たちは、GFP特異的ナノボディと融合したTAPBPRが表面にGFPを発現しているHeLaM細胞
に結合するが、表面GFP,すなわちバイスタンダー細胞なしにはペプチドと結合、もしくはペプチドをHeLaM細胞上に負荷できないことを見出した(図 8)。組み換え蛋白質100
nMで、HLA-A*68:02との相互作用のため、可溶性TAPBPRのみでも低レベルのHeLaM細胞へ
の結合が見られたが、TAPBPR-GFP
NB融合蛋白質は表面GFPを発現しているHeLaM 細胞への
著しく高レベルの結合を示した(
図8B & 8C)。しかし、100 nMでも、TAPBPR-GFPNB融合蛋白質はGFP を欠如するHeLaM細胞には結合を示さなかった(図 8Bおよび8C)。組み換え蛋白質10 nMでは、可溶性TAPBPR単独ではHeLaM細胞株のいずれにも結合を示さなかったが(
図8C)、TAPBPR-GFP
NB融合蛋白質は高レベルの結合を、特にGFPを発現している細胞に結合を示した(
図8C)。これは、このTAPBPR融合蛋白質の結合の大部分が抗体
タグから由来することの証明である。
TAPBPR-GFP融合蛋白質は、表面GFPの不在下では、HeLaM 細胞上に外来性ペプチドを効果
的に負荷できなかったが、表面GFP 陽性細胞にペプチドを負荷するのは極めて効率的であった(図 8D &8E)。1 nMでもTAPBPR-GFP
NB融合は外来性ペプチドを抗体-標的発現細胞
に負荷することができた(図 8E)。可溶性TAPBPRは同様の蛋白質濃度を使用した場合、ペプチド負荷は示さなかった(図 8E)。示されたデータは長リンカーを持つTAPBPR融合産物に関するものであるが、3つの異なるリンカーすべて(短リンカー、長リンカー、お
よび極長リンカー)に対して同様の結果が見いだされた。総合すると、これらの結果はTAPBPRのMHCI結合部位は、非表面結合状態では抗体フラグメントによりマスクされていることを示唆する。しかし、抗体フラグメントがその標的に結合すると、TAPBPR上のMHCクラ
スI結合部位が露出し、TAPBPRは細胞表面に発現したMHCクラスI分子上でペプチド交換触
媒として機能することができるようになる。これはTAPBPRの機能が特異的マーカーを発現している望みの細胞型に向けられ得るという本質的な概念実証データを提供する。
【0222】
2.11 乳癌細胞へのペプチド負荷
GFPナノボディと融合させたTAPBPRの乳癌細胞株MCF-7への効果を決定した。MCF-7は極め
て一般的なMHCクラスI分子であるHLA-A2を発現している。その細胞表面にGFPを発現させ
(
図9a)、TAPBPR-GFPナノボディ融合の前記細胞への結合能力を検査した(
図9b)。繰
り返しになるが、これは、TAPBPR-GFPナノボディ融合が表面にGFPを発現している細胞と
結合するが、GFP陰性細胞とは結合しない(
図9b)ことを明らかにし、TAPBPRの標的を、
特定の細胞表面マーカーを発現している特異的細胞集団に絞る能力を証明した。次いでTAPBPR-GFP-ナノボディ融合が免疫原性ウィルスペプチド(CMV 由来NLVPMVATVペプチド)をMCF-7細胞に負荷する能力を検査した (図 9c)。これは、TAPBPR融合産物が的を絞ったやり方で(結合している抗体の特性に依存)、乳癌細胞株上にウィルスペプチドを負荷することができることを証明した。
【0223】
2.12 腫瘍特異性を伴うキメラ蛋白質
TAPBPR-GFP-ナノボディに関する上記データは、選択的にTAPBPRを標的に向ける能力に関
係する概念実証データを提供するが、私たちは、次にTAPBPRが腫瘍細胞株に自然に見いだされるマーカーを標的にすることができるTAPBPR-抗体結合物を設計した。従って、私た
ちは腫瘍細胞マーカーErbB2 (Her2)に対する特異性を有するscFvにリンクしたTAPBPRを作成した (図 10)。
【0224】
抗Her2 scFvとリンクした可溶性TAPBPRはHer2依存性に、腫瘍細胞株に結合したことが示
され、免疫原性ペプチドを細胞株に負荷するように機能した(
図11 & 12)。TAPBPR-Her2-scFvの極めて強い結合がHer2を過剰発現している細胞に観察された(図 11B & 11C)。さらに、私たちは、可溶性TAPBPR単独の場合と比べ、自然にHer2 (HeLaM上 の内因性Her2レベルに関しては図 11A 参照)を発現しているHeLaM細胞に対するTAPBPR-Her
2-scFvの結合が増加したことを観察した(図 11B および11C)。示されたデータは長リンカーを持つTAPBPR融合産物に関するものであるが、短リンカーおよび極長リンカーを持つ変異型に対しても同様の結果が見いだされた。
【0225】
TAPBPR-Her2-scFvの HeLaMに対する結合は、MHCIに結合するTAPBPRとは異なり、主にHer2対して結合するscFvを介するものであることを確認するため、私たちは、Her2がノックアウトされたHeLaM細胞株を作成した(図 12A)。組み換えTAPBPR蛋白質で処理後、私た
ちは、TAPBPR-Her2-scFv蛋白質はHer2欠損HeLaM細胞には全く結合しないことを観察した
(
図12B および12C)。対照的に、可溶性TAPBPR単独の場合、まだHer2欠損HeLaM細胞に結合することができた(図 12B & 12C)。総合すると、これらの結果は、TAPBPR-Her2-scFv融合はHer2依存性に細胞に結合し、この融合蛋白質は表面Her2発現のない細胞、すなわちMHCクラスI陽性のバイスタンダー細胞には結合できないことを証明した。従って、TAPBPR-Her2-scFvはHer2特異性を示し、これは健康な細胞に影響することなくHer2陽性腫瘍細胞株に対しTAPBPRの標的を絞る、治療上有用な方法である可能性がある。
【0226】
次いで私たちは、TAPBPR-Her2-scFvがHer2依存性に外来性ペプチドを細胞に負荷することを促進できるかどうかを検査した。私たちの結果は、TAPBPR-Her2-scFv蛋白質は、Her2依存性に外来性ペプチドをHeLaM細胞表面に負荷する上で非常に効率的であったことを示し
ている(
図11D、11E、12D &12E)。私たちは、これがHer2依存性に新生抗原ETVSEQSNV (ETV*)の蛍光性変異型を、表面発現しているHLA-A*68:02分子に効率的に負荷す
ることを見出した(図 11D、11E、12D &12E)。さらに、私たちは、TAPBPR-Her2-scFvがウィルスペプチドを別のMHCクラスI分子であるHLA-A2に負荷できるかを検査した
。私たちは、TAPBPR-Her2-scFVがCMV由来 ペプチド NLVPMVATV(NLV)(図 13A & 13B) および EBV 由来ペプチドYLLEMLWRL(YLL)(図 13C &13D)の蛍光性変異型を表面発現しているHLA-A2分子に負荷できることを見出した。HLA-A、 -B および -Cを欠損する細胞上にはペプチド負荷は観察されなかったため、このペプチド負荷はHLA-A2発現依存性であった(図 13)。さらに、TAPBPR-Her2-scFvは可溶性TAPBPR単独の場合より、よ
り効率的にこれらのペプチドを負荷した(
図13A-D)。
【0227】
MHCクラスIにペプチドを負荷後、細胞から解離する可溶性TAPBPRとは対照的に、TAPBPR-
抗体融合蛋白質は、抗体:標的相互作用を介し細胞表面に結合したままとなる可能性が高かった。従って、私たちは次にT細胞レセプターが、TAPBPR-Her2-scFv融合蛋白質で処理
された細胞上のペプチド:MHCI複合体にアクセスできるかどうかを検査した。 これは
、TCR様mAb LMP-1がTAPBPR-Her2-scFvで処理された細胞上のYLLEMLWRL /HLA-A2複合体を
認識することができることを明らかにした(図 13E)。事実、TCR様mAb LMP-1は可溶性TAPBPR + ペプチドで処理された細胞に対するより、TAPBPR -Her2-scFv 融合 +ペプチド
で処理された細胞に良く結合した(
図13E)。これは、これら細胞上にYLLペプチドを負荷する際、TAPBPR-Her2-scFvが可溶性TAPBPRよりもより効率的であることを反映している可能性が高い。
【0228】
TAPBPR-Her2-scFvがHer2を発現している細胞に対してのみ特異性を示すことが示された後、私たちはTAPBPR-Her2-scFvがHer2陽性細胞株を標的とする治療上有用であるかどうかを探索した。私たちは、TAPBPR-Her2-scFvが免疫原性ペプチドを次の2つの乳癌細胞株 に負荷する能力を検査した; MCF-7 cells (低レベルのHer2と高レベルのMHC class Iを発現)および SKBR3(高レベルのHer2 と低レベルの MHC class Iを発現) (図 14)。私
たちの結果は、TAPBPR-Her2-scFvが効率的に抗原ペプチドを両乳癌細胞株に負荷すること、これは可溶性TAPBPRより効率的であること、観察されたペプチド負荷のレベルは細胞株上のHer2発現に比例することを証明している(図 14B)。
【0229】
多くの腫瘍がMHCIを下方制御することを考えると、TAPBPR-Her2-scFV蛋白質を使い、MHC
I発現レベルが低いことが知られている SKBR3細胞株に効率的にペプチド負荷が行われる
ことが観察されたのは非常に有望であるといえる。 これは、MHCクラスI発現が低レベルでも、TAPBPR-抗体融合蛋白質を治療的に使用することに対する障壁とはならない可能性を示唆する。最後に、私たちは、TCRがTAPBPR負荷を受けたペプチド:MHCI複合体を検出
する能力を検査した。これは、TCR様特異的 mAb LMP-1がTAPBPR-Her2-scFVとペプチドで
処理された細胞に極めてよく結合することを明らかにした(図 14C)。事実、細胞がTAPBPR-Her2-scFv +ペプチドで処理された場合、可溶性TAPBPR+ペプチドもしくはペプチドのみで処理された細胞と比べ、有意により多くのYLL/HLA-A2複合体がTCR結合のためにア
クセス可能であった(図 14C)。 総合すると、このデータは、TAPBPR-Her2-scFV
融合蛋白質は外来性の免疫原性ペプチドをHer-2陽性腫瘍細胞株表面に負荷する上で極め
て効率がよく、また結果として生じるペプチド: MHC I 複合体はTCR結合のためにアクセス可能であることを証明している。このデータは、TAPBPR-Her2-scFv蛋白質はHer2陽性腫瘍細胞の免疫原性を選択的に高める翻訳可能性を持ち、MHCクラスI発現レベルの低い腫瘍においても、ウィルス特異的T細胞によるそうした腫瘍の 認識を誘導する可能性があることを支持している。
【0230】
私たちはまた、PD-L1特異的ナノボディにリンクした組み換えTAPBPRも作成した(図 20)。これはまたPD-L1依存性に(図 20B & 20C)、TAPBPR結合の標的を腫瘍に向ける
こと、免疫原性ペプチドを腫瘍細胞株に負荷することを示した (図 20D & 20E)。
【0231】
2.13 TAPBPR-抗体融合フラグメント使用に伴う立体障害
私たちは、TAPBPR-抗体融合蛋白質がMHCクラスIに結合することができず、その結果、抗
体に対するリガンド不在下では、ペプチド交換を仲介できないように見えることを観察した。私たちの所見は、TAPBPR上のMHCクラスI結合部位は細胞膜に結合していない状態の抗体フラグメント(ナノボディあるいはscFV)によりマスクされているが、その後、抗体が細胞表面のそのリガンドに結合すると露出することを示唆している。非結合状態の抗体融合フラグメントによる立体障害を支持するデータは、
図8のTAPBPR-GFPナノボディ融合蛋白質(HeLa細胞上、すなわち表面GFPを発現していない)および
図12のTAPBPR-Her2-scFv(Her2がノックアウトされたHeLa細胞上)に関して見いだされる。
図8および
図12の
両者において、私たちは、可溶性TAPBPR単独でもHeLa/HeLa-Her2KO細胞上に発現しているMHCクラスIによく結合するが、TAPBPR-抗体融合はこれら細胞(HeLa上は
図8B & C、 HeLa-Her2KO上は
図12B & C)上に発現しているHLA分子に結合できないことを観察した。しか
し、抗体に対するリガンドが細胞上に存在する場合、TAPBPR融合蛋白質は極めてよく細胞に結合できた(HeLa+GFP上は
図8B & C、 HeLa上は
図12B & C)。同様に、私たちがTAPBPR-抗体融合蛋白質の外来性ペプチド負荷仲介能力を検査したとき、
図8および
図12の両者において可溶性TAPBPRが単独で効率よくHeLa/HeLa- Her2KO細胞上に発現しているMHCクラスIに外来性ペプチドを負荷することができ、TAPBPR-抗体融合はこれら細胞にペプチドを負荷することができないことを観察した(HeLa細胞は
図8B & C、 HeLa-Her2KO細胞は
図12B & C)。繰り返しになるが、抗体に対するリガンドが細胞上に存在している場合、TAPBPR融合蛋白質は効率的に外来性ペプチド負荷を仲介することができた(HeLa+GFPは
図8B &
C、 HeLaは
図12B & C)。この興味ある観察結果は、こうした生成物は選ばれた標的に対し高度に選択的であり、MHCクラスIのみを発現している健常細胞に対する効果が限定的であろうと思われることより、TAPBPR融合蛋白質の治療的応用を考える場合、有望であるといえる。
【0232】
2.14 腫瘍細胞に負荷されたウィルスペプチド
TAPBPR-Her2-svFcは、HLA-A2 を発現しているHeLa細胞上にウィルスペプチドを負荷する
ことが示された(図 13a-d)。さらに、T細胞レセプター(TCR)は負荷を受けた細胞を認識することが示された(図 13e)。これはTAPBPR-Her2-svFcが機能し、生じるペプチド/MHCクラスI複合体がT細胞結合のためにアクセス可能であることを示している。
【0233】
2.15 外来性マウスTAPBPRは、ヒトMHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷するた
めに使用することもできる 。
マウスTAPBPRの内腔ドメインはHeLa細胞上に発現しているHLA-A68(MHCクラスI)に蛍光
性ヒト新生抗原ETVSK*QSNV(ETV*)を負荷することが示された。こうした結果は、外来性マウスTAPBPRをヒトTAPBPRと同様の方法で、ヒトMHCクラスI分子に免疫原性ペプチドを負荷するために使用することもできることを証明している。ヒトTAPBPRよりも効率は落ちるが、マウスTAPBPRは依然としてT細胞反応を惹起する十分な免疫原性ペプチドを負荷する
ことができる。
【0234】
2.16 細胞質尾部の除去はTAPBPRの標的を細胞表面とする
TAPBPR
WT、TAPBPRのTMDを有するが細胞質尾部を欠く TAPBPR
tailless および細胞質尾部
がCD8で置換されたTAPBPR
CD8tailで形質導入された細胞は、TAPBPRで形質導入されていない細胞に比べた場合、細胞表面にTAPBPRを発現すること(図 16A) および蛍光性ペプ
チドETVSK*QSNV (ETV*)を結合すること (
図16B)が示された。
図16の結果は、細
胞質尾部を欠くTAPBPRは効率的に細胞表面に発現されることを証明している。TAPBPR
CD8tailを発現している細胞の形質導入は低レベルであるが、CD8細胞質尾部をTAPBPRに追加すると低い形質導入効率でより効率的な細胞発現が可能である。TAPBPR発現細胞が同様の細胞集団でゲーティングされると(Aのゲート参照)、すべてのTAPBPR変異型は同程度のペ
プチド編集が可能である(B)。
【0235】
2.17 可溶性TAPBPRは CD8+ T リンパ球による腫瘍細胞殺滅を誘導する
上記の結果は、可溶性TAPBPRは標的細胞に免疫原性ペプチドを結合させ、腫瘍に対するT
細胞反応を増強するために使用できることを示すが、私たちは次に、これが腫瘍細胞の殺滅を増強するかどうかを決定した。私たちは、ヒトTAPBPRおよび極めて低い濃度のSIINFEKLペプチド存在下で、OT1T細胞によるマウスEL4細胞の殺滅を評価した。可溶性ヒトTAPBPR
WTはEL4細胞に結合し、(
図19a) EL4上に発現しているH-2K
b へのSIINFEKL の負荷を有意に増強した(
図19b, 19c & 19d)。私たちがH-2K
bの存在下で SIINFEKLを認識する OT1細胞傷害性T細胞の、ペプチドをパルスされた EL4標的細胞を溶解する能力を検
査したとき、私たちは可溶性ヒト TAPBPR
WT 存在下で殺滅の有意な増強を観察したが、TAPBPR
TN5の存在下では、これは見られなかった(図 19e)。こうした結果は、TAPBPRが
ペプチド-特異的CD8+ Tリンパ球による腫瘍の殺滅増強に使用可能であることを証明している。
【0236】
TAPBPRは通常細胞内で細胞内ペプチドエディターとして機能するが、私たちは、膜結合性TAPBPRの標的を細胞膜とすることを通じ、もしくは細胞に外来性可溶性TAPBPRを加えることによりMHCクラスI分子の表面プールへのアクセスが与えられれば、TAPBPRはペプチド交換触媒としての機能を保持していることを明らかにした。細胞膜を標的とするタパシンもまた外来性ペプチド負荷を補助するように思われるが、達成されるペプチド負荷のレベルはTAPBPRより有意に低かった。従って、これはタパシンが細胞表面でそのペプチド編集能力を保持しているというよりむしろ、分泌経路を通して少量のペプチド受容分子を伴って移動するためである可能性がある。細胞外性TAPBPRが表面MHCクラスIより優れたペプチドエディターである理由を説明できる可能性がある要因がいくつか知られている。第一にタパシンと異なり18、19、TAPBPRは他の補助因子もしくはロイシンジッパー8, 9なしにMHC
クラスIに結合できる、ということであり、これはTAPBPR:MHCクラスI複合体の最近の結
晶構造で確認された知見である20、21。第二にTAPBPRはタパシン9よりMHCクラスIに対す
る親和性がより高い。第三に、TAPBPRはグリシン非依存性にMHCクラスIと相互作用することもでき、従って、細胞表面のものを含め、タパシンと比較して広い範囲のMHCクラスI種と結合できる。
【0237】
表面発現したTAPBPRの人工的発現を最初に探索することによって、すでに確立されていたアッセイに加え18、19、私たちは新しい細胞ベースのペプチド交換アッセイを開発したが、これはペプチド編集機構とTAPBPRにより行われるペプチド選択基準の両者をより良く確定する助けとなる可能性がある。しかし、私たちの発見の示唆する最も興味深い点は、TAPBPRを使用し、細胞上に免疫原性ペプチドを負荷し、免疫系による細胞の認識を標的とする方法を転換できる可能性と関係する。
【0238】
外来性ペプチド単独のみでも受動的にMHCクラスIに結合は可能であるが、細胞外TAPBPRの存在により能動機構によりペプチド負荷が可能となり、この過程が促進され、ほとんど瞬間的にかつ極めて低いペプチド濃度でペプチド負荷が起こるようになる。従って、細胞外TAPBPRにより私たちは、MHCクラスIの抗原処理と経路を介して細胞内で起こる自然のペプチド選択過程を超越できる可能性がある。これはT細胞反応を誘導することが望ましい数
多くの臨床的状況で有益である可能性がある。第一に、TAPBPRの標的を樹状細胞などの抗原処理専門細胞の表面に絞ることは、ペプチドベースの予防接種戦略と組み合わせて、循環血中の病原体あるいは腫瘍特異的リンパ球プールを増加させる上で有益である可能性がある。第二に、TAPBPRの的を腫瘍に絞ることは、腫瘍上に直接発現される新生抗原を含め、腫瘍抗原のレベルを高め、これにより既存の腫瘍特異的リンパ球による腫瘍認識を改善するために使用可能であろう。第三に、TAPBPRはウィルスなどの病原体由来の免疫原性ペプチドを腫瘍表面に負荷し、これにより病原体特異的T細胞が抗腫瘍免疫反応を仲介でき
るようにするために使用可能であろう。第四に、免疫原性ペプチドを潜伏性/持続性病原体を有している細胞にTAPBPRを介して負荷することは感染コントロール上有益である可能性がある。
【0239】
TAPBPRはまたCD8+ T細胞免疫仲介炎症性疾患の標的となっているペプチドを除去する可能性もある。免疫編集あるいは免疫回避にさらされている細胞の表面に提示されている外来性免疫原性ペプチドを交換する能力は、免疫療法の将来にとって大きな進歩となる可能性がある。
【0240】
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【0241】
Sequences
Aagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggaga
SEQ ID NO: 1 -nucleotide sequence encoding TAPBPR luminal domain (mature sequence without 21 aa leader sequence)
KPHPAEGQWRAVDVVLDCFLVKDGAHRGALASSEDRARASLVLKQVPVLDDGSLEDFTDFQGGTLAQDDPPIIFEASVDLVQIPQAEALLHADCSGKEVTCEISRYFLQMTETTVKTAAWFMANVQVSGGGPSISLVMKTPRVAKNEVLWHPTLNLPLSPQGTVRTAVEFQVMTQTQSLSFLLGSSASLDCGFSMAPGLDLISVEWRLQHKGRGQLVYSWTAGQGQAVRKGATLEPAQLGMARDASLTLPGLTIQDEGTYICQITTSLYRAQQIIQLNIQASPKVRLSLANEALLPTLICDIAGYYPLDVVVTWTREELGGSPAQVSGASFSSLRQSVAGTYSISSSLTAEPGSAGATYTCQVTHISLEEPLGASTQVVPPERR
25 SEQ ID NO: 2 -TAPBPR luminal domain (mature sequence without 21 aa leader sequence)


atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtgactccccagacaggccctggaacccccccaccttcttcccagccctgctcgtggtgaccgaaggggacaacgccaccttcacctgcagcttctccaacacatcggagagcttccacgtgatctggcaccgcgagagccccagcggccagacggacaccctggccgccttccccgaggaccgcagccagcccggccaggactgccgcttccgtgtcacacaactgcccaacgggcgtgacttccacat
gagcgtggtcagggcccggcgcaatgacagcggcacctacgtgtgtggggtgatctccctggcccccaagatccagatcaaagagagcctg
SEQ ID NO: 5 nucleotide sequence encoding sTAPBPR-sPD1

atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtgcggatcttggatcccgggccatggcccaggtgcagctggtgcagtctggggcagaggtgaaaaagcccggggagtctctgaagatctcctgtaagggttctggatacagctttaccagctactggatcgcctgggtgcgccagatgcccgggaaaggcctggagtacatggggctcatctatcctggtgactctgacaccaaatacagcccgtccttccaaggccaggtcaccatctcagtcgacaagtccgtcagcactgcctacttgcaatggagcagtctgaagccctcggacagcgccgtgtatttttgtgcgagacatgacgtgggatattgcagtagttccaactgcgcaaagtggcctgaatacttccagcattggggccagggcaccctggtcaccgtctcctcaggtggaggcggttcaggcggaggtggctctggcggtggcggatcgcagtctgtgttgacgcagccgccctcagtgtctgcggccccaggacagaaggtcaccatctcctgctctggaagcagctccaacattgggaataattatgtatcctggtaccagcagctcccaggaacagcccccaaactcctcatctatgatcacaccaatcggcccgcaggggtccctgaccgattctctggctccaagtctggcacctcagcctccctggccatcagtgggttccggtccgaggatgaggctgattattactgtgcctcctgggactacaccctctcgggctgggtgttcggcggaggaaccaagctgaccgtcctaggtgcggccgccggcggaggaggatct
SEQ ID NO: 7 nucleotide sequence encoding TAPBPR-Her2scFv

atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtcaggttcagctggttgaaagcggtggtgcactggttcagcctggtggtagcctgcgtctgagctgtgcagcaagcggttttccggttaatcgttatagcatgcgttggtatcgtcaggcaccgggtaaagaacgtgaatgggttgcaggtatgagcagtgccggtgatcgtagcagctatgaagatagcgttaaaggtcgttttaccatcagccgtgatgatgcacgtaataccgtttatctgcaaatgaatagcctgaaaccggaagataccgcagtgtattattgcaatgttaacgtgggctttgaatattggggtcagggcacccaggttaccgttagcagcaaa
SEQ ID NO: 9 nucleotide sequence encoding TAPBPR-GFP-NB

atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtgaggtgcagctggtggagagcggcggcggcctggtgcagcccggcggcagcctgagactgagctgcgccgccagcggcttcaccctgg
actactacgccatcggctggttcagacaggcccccggcaaggagagagagtgggccagcagcatcagcagcagcgacggcagcacctactacgccgacagcgtgaagggcagattcaccatcagcagagacaacgccaagaacaccgtgttcctgcagatgaacagcctgaagcccgaggacaccgccgtgtacagctgcgccgccagccaggcccccatcaccatcgccaccatgatgaagcccttctacgactactggggccagggcacccaggtgaccgtgagcagcggcggaggaggatct
SEQ ID NO: 11 nucleotide sequence encoding sTAPBPR-LONG-PD-L1-NB1

atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtgaggtgcagctggtggagagcggcggcggcctggtgcagcccggcggcagcctgagactgagctgcgccgccagcggcttcaccctggactactacgccaagtgctggttcagacaggcccccggcaaggagagagagtgggtgagctgcatcagcagcagcgacggcagcacctactacgccgacagcgtgaagggcagattcaccatcagcagagacaacgccaagaacaccgtgtacctgcagatgaacagcctgaagcccgaggacaccgccgtgtacttctgcgccgccagacacggcggccccctgaccgtggagtacttcttcgactactggggccagggcacccaggtgaccgtgagcagcggcggaggaggatct
SEQ ID NO: 13 nucleotide sequence encoding sTAPBPR-LONG-PD-L1-NB2
atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgat
ttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagacacgtgggtggcggtggctccggtggcggtggctccggtggcggtggctccactagtgaggtgcagctggtggagagcggcggcggcctggtgcaggccggcggcagcctgagactgagctgcgccgccagcggcagcaccttcagccagtacgacgtgggctggtacagacaggcccccggcaagcagagagagctggtggccttcagcagcagcggcggcagaaccatctaccccgacagcgtgaagggcagattcaccttcagcagagacaacaccaagaacaccgtgtacctgcagatgaccagcctgaagcccgaggacaccgccgtgtactactgcaagatcgactggtacctgaacagctactggggccagggcacccaggtgaccgtgagcagcggcggaggaggatct
SEQ ID NO: 15 nucleotide sequence encoding sTAPBPR-LONG-PD-L1-NB4

atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagaacagccttgggagtcatctttgccagcagtctcttccttcttgcactgatgttcctggggcttcagagacggcaagcacctacaggacttgggctgcttcaggctgaacgctgggagaccacttcctgtgctgacacacagagctcccatctccatgaagaccgcacagcgcgtgtaagccagcccagctga
SEQ ID NO: 17 nucleotide sequence encoding hTAPBPR full length (with TMD and cytoplasmic tail)
(V41_G151_V169 polymorphisms as used in our studies)

atgggcttggagcccagctggtatctgctgctctgtttggctgtctctggggcagcagggactgaccctcccacagcgcccaccacagcagaaagacagcggcagcccacggacatcatcttagactgcttcttggtgacagaagacaggcaccgcggggcttttgccagcagtggggacagggagagggccttgcttgtgctgaagcaggtaccagtgctggatgatggctccctggaaggcatcacagatttccaggggagcactgagaccaaacaggattcacctgttatctttgaggcctcagtggacttggtacagattccccaggcagaggcgttgctccatgctgactgcagcgggaaggcagtgacctgcgagatctccaagtatttcctccaggccagacaagaggccacttttgagaaagcacattggttcatcagcaacatgcaggtttctagaggtggccccagtgtctccatggtgatgaagactctaagagatgctgaagttggagctgtccggcaccctacactgaacctacctctgagtgcccagggcacagtgaagactcaagtggagttccaggtgacatcagagacccaaaccctgaaccacctgctggggtcctctgtctccctgcactgcagtttctccatggcaccagacctggacctcactggcgtggagtggcggctgcagcataaaggcagcggccagctggtgtacagctggaagacagggcaggggcaggccaagcgcaagggcgctacactggagcctgaggagctactcagggctggaaacgcctctctcaccttacccaacctcactctaaaggatgaggggacctacatctgccagatctccacctctctgtatcaagctcaacagatcatgccacttaacatcctggctccccccaaagtacaactgcacttggcaaacaaggaccctctgccttccctcgtctgcagcattgccggctactatcctctggatgtgggagtgacgtggattcgagaggagctgggtggaattccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcagagcacgatgggaacctacagcatttcttccacggtgatggctgacccaggccccacaggtgccacttatacctgccaagtcgcccacgtctccctggaggagccccttacaaccagcatgagggttttgccaaatccagagcagagaggaaccttgggagtcatctttgccagcatcatcttcctttctgcgctgttgttgtttctgggacttcacagacagcaagcttcttcgtcaaggtccaccaggcctatgaggcattctgggtga
SEQ ID NO: 19 nucleotide sequence encoding mouse TAPBPR full length
MGLEPSWYLLLCLAVSGAAGTDPPTAPTTAERQRQPTDIILDCFLVTEDRHRGAFASSGDRERALLVLKQVPVLDDGSLEGITDFQGSTETKQDSPVIFEASVDLVQIPQAEALLHADCSGKAVTCEISKYFLQARQEATFEKAHWFISNMQVSRGGPSVSMVMKTLRDAEVGAVRHPTLNLPLSAQGTVKTQVEFQVTSETQTLNHLLGSSVSLHCSFSMAPDLDLTGVEWRLQHKGSGQLVYSWKTGQGQAKRKGATLEPEELLRAGNASLTLPNLTLKDEGTYICQISTSLYQAQQIMPLNILAPPKVQLHLANKDPLPSLVCSIAGYYPLDVGVTWIREELGGIPAQVSGASFSSLRQSTMGTYSISSTVMADPGPTGATYTCQVAHVSLEEPLTTSMRVLPNPEQRGTLGVIFASIIFLSALLLFLGLHRQQASSSRSTRPMRHSG*
SEQ ID NO: 20 mouse TAPBPR full length
gaccctcccacagcgcccaccacagcagaaagacagcggcagcccacggacatcatcttagactgcttcttggtgacagaagacaggcaccgcggggcttttgccagcagtggggacagggagagggccttgcttgtgctgaagcaggtaccagtgctggatgatggctccctggaaggcatcacagatttccaggggagcactgagaccaaacaggattcacctgttatctttgaggcctcagtggacttggtacagattccccaggcagaggcgttgctccatgctgactgcagcgggaaggcagtgacctgcgagatctccaagtatttcctccaggccagacaagaggccacttttgagaaagcacattggttcatcagcaacatgcaggtttctagaggtggccccagtgtctccatggtgatgaagactctaagagatgctgaagttggagctgtccggcaccctacactgaacctacctctgagtgcccagggcacagtgaagactcaagtggagttccaggtgacatcagagacccaaaccctgaaccacctgctggggtcctctgtctccctgcactgcagtttctccatggcaccagacctggacctcactggcgtggagtggcggctgcagcataaaggcagcggccagctggtgtacagctggaagacagggcaggggcaggccaagcgcaagggcgctacactggagcctgaggagctactcagggctggaaacgcctctctcaccttacccaacctcactctaaaggatgaggggacctacatctgccagatctccacctctctgtatcaagctcaacagatcatgccacttaacatcctggctccccccaaagtacaactgcacttggcaaacaaggaccctctgccttccctcgtctgcagcattgccggctactatcctctggatgtgggagtgacgtggattcgagaggagctgggtggaattccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcagagcacgatgggaaccta
cagcatttcttccacggtgatggctgacccaggccccacaggtgccacttatacctgccaagtcgcccacgtctccctggaggagccccttacaaccagcatgagggttttgccaaatccagagcagagaggaacc
SEQ ID NO: 21 nucleotide sequence encoding luminal domains of mouse TAPBPR
DPPTAPTTAERQRQPTDIILDCFLVTEDRHRGAFASSGDRERALLVLKQVPVLDDGSLEGITDFQGSTETKQDSPVIFEASVDLVQIPQAEALLHADCSGKAVTCEISKYFLQARQEATFEKAHWFISNMQVSRGGPSVSMVMKTLRDAEVGAVRHPTLNLPLSAQGTVKTQVEFQVTSETQTLNHLLGSSVSLHCSFSMAPDLDLTGVEWRLQHKGSGQLVYSWKTGQGQAKRKGATLEPEELLRAGNASLTLPNLTLKDEGTYICQISTSLYQAQQIMPLNILAPPKVQLHLANKDPLPSLVCSIAGYYPLDVGVTWIREELGGIPAQVSGASFSSLRQSTMGTYSISSTVMADPGPTGATYTCQVAHVSLEEPLTTSMRVLPNPEQRGT*
SEQ ID NO: 22 luminal domains of mouse TAPBPR
ADLGSRAMAQVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWIAWVRQMPGKGLEYMGLIYPGDSDTKYSPSFQGQVTISVDKSVSTAYLQWSSLKPSDSAVYFCARHDVGYCSSSNCAKWPEYFQHWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQSVLTQPPSVSAAPGQKVTISCSGSSSNIGNNYVSWYQQLPGTAPKLLIYDHTNRPAGVPDRFSGSKSGTSASLAISGFRSEDEADYYCASWDYTLSGWVFGGGTKLTVLGAAA
SEQ ID NO: 23 Anti-HER2 svFc
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO: 24 Anti-HER2 (trastuzumab) Light chain
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO: 25 Anti-HER2 (trastuzumab) Heavy chain
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAIGWFRQAPGKEREWASSISSSDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVFLQMNSLKPEDTAVYSCAASQAPITIATMMKPFYDYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 26 Anti-PDL1 nanobody
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAKCWFRQAPGKEREWVSCISSSDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYFCAARHGGPLTVEYFFDYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 27 Anti-PDL1 nanobody
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDYYAIGWFRQAPGKAREGVSCISGGDNSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCATGGWKYCSGYDPEYIYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 28 Anti-PDL1 nanobody
EVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSTFSQYDVGWYRQAPGKQRELVAFSSSGGRTIYPDSVKGRFTFSRDNTKNTVYLQMTSLKPEDTAVYYCKIDWYLNSYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 29 Anti-PDL1 nanobody
EVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGVDASNSAMGWYRQAPGKQREWVARITGGGLIAYTDSVKGRFTISRDNAKSTVYLQMWSLEPEDTAVYYCNTINSRDGWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 30 Anti-PDL1 nanobody
EVQLVESGGGLVQAGGSLTISCAASGITFSDSIVSWYRRARGKQREWVAGISNGGTTKYAESVLGRFTISRDNAKNMVYLQMWGLNPEDTAVYLCKVRQYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO: 31 Anti-PDL1 nanobody
TALGVIFASSLFLLALMFLGL
SEQ ID NO: 32 Human TAPBPR TMD
atgggcacacaggagggctggtgcctgctgctctgcctggctctatctggagcagcagaaaccaagccccacccagcagaggggcagtggcgggcagtggacgtggtcctagactgtttcctggtgaaggacggtgcgcaccgtggagctctcgccagcagtgaggacagggcaagggcctcccttgtgctgaagcaggtgccagtgctggacgatggctccctggaggacttcaccgatttccaagggggcacactggcccaagatgacccacctattatctttgaggcctcagtggacctggtccagattccccaggccgaggccttgctccatgctgactgcagtgggaaggaggtgacctgtgagatctcccgctactttctccagatgacagagaccactgttaagacagcagcttggttcatggccaacgtgcaggtctctggagggggacctagcatctccttggtgatgaagactcccagggtcgccaagaatgaggtgctctggcacccaacgctgaacttgccactgagcccccaggggactgtgcgaactgcagtggagttccaggtgatgacacagacccaatccctgagcttcctgctggggtcctcagcctccttggactgtggcttctccatggcaccgggcttggacctcatcagtgtggagtggcgactgcagcacaagggcaggggtcagttggtgtacagctggaccgcagggcaggggcaggctgtgcggaagggcgctaccctggagcctgcacaactgggcatggccagggatgcctccctcaccctgcccggcctcactatacaggacgaggggacctacatttgccagatcaccacctctctgtaccgagctcagcagatcatccagctcaacatccaagcttcccctaaagtacgactgagcttggcaaacgaagctctgctgcccaccctcatctgcgacattgctggctattaccctctggatgtggtggtgacgtggacccgagaggagctgggtgggtccccagcccaagtctctggtgcctccttctccagcctcaggcaaagcgtggcaggcacctacagcatctcctcctctctcaccgcagaacctggctctgcaggtgccacttacacctgccaggtcacacacatctctctggaggagccccttggggccagcacccaggttgtcccaccagagcggagaacagccttgggagtcatctttgccagcagtctcttccttcttgcactgatgttcctggggcttcagagacgaagacgtgtttgcaaatgtccccggcctgtggtcaaatcgggagacaagcccagcctttcggcgagatacgtctaa
SEQ ID NO: 33 nucleotide sequence encoding hTAPBPR-CD8 cytoplasmic tail
MGTQEGWCLLLCLALSGAAETKPHPAEGQWRAVDVVLDCFLVKDGAHRGALASSEDRARASLVLKQVPVLDDGSLEDFTDFQGGTLAQDDPPIIFEASVDLVQIPQAEALLHADCSGKEVTCEISRYFLQMTETTVKTAAWFMANVQVSGGGPSISLVMKTPRVAKNEVLWHPTLNLPLSPQGTVRTAVEFQVMTQTQSLSFLLGSSASLDCGFSMAPGLDLISVEWRLQHKGRGQLVYSWTAGQGQAVRKGATLEPAQLGMARDASLTLPGLTIQDEGTYICQITTSLYRAQQIIQLNIQASPKVRLSLANEALLPTLICDIAGYYPLDVVVTWTREELGGSPAQVSGASFSSLRQSVAGTYSISSSLTAEPGSAGATYTCQVTHISLEEPLGASTQVVPPERRTALGVIFASSLFLLALMFLGLQRRRRVCKCPRPVVKSGDKPSLSARYV*
SEQ ID NO: 34 TAPBPR-CD8 cytoplasmic tail
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】