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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002903
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】振とう溶解装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61J3/00 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053949
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022101620
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】518226581
【氏名又は名称】株式会社サンプロシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 光昭
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047LL02
4C047LL20
(57)【要約】
【課題】コンパクトでありながら、粉末製剤に応じた振とう溶解を迅速にかつ効率良く行えるようにする。
【解決手段】密閉された容器100に収容された粉末製剤を容器100内の溶解液に振とう溶解させる振とう溶解装置1は、容器100を保持する容器保持部10と、容器保持部10が固定される回転軸20と、回転軸20を回転駆動する駆動部30とを備えている。容器保持部10に保持された容器100の中央部は、回転軸20の軸線の延長線上から径方向に所定量だけ偏心している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された容器に収容された粉末製剤を当該容器内の溶解液に振とう溶解させる振とう溶解装置であって、
前記容器を保持する容器保持部と、
前記容器保持部が固定される回転軸と、
前記回転軸を回転駆動する駆動部とを備え、
前記容器保持部に保持された前記容器の中央部は、前記回転軸の軸線の延長線上から径方向に所定量だけ偏心していることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振とう溶解装置において、
前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記回転軸が正回転及び逆回転を繰り返すように前記駆動部を制御することを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項3】
請求項1に記載の振とう溶解装置において、
前記容器保持部は、前記回転軸に固定されるとともに、前記容器の底部が載置される固定板部と、当該固定板部から前記容器の側方を通って前記軸線と平行な方向に突出するガイドシャフトと、当該ガイドシャフトに取り付けられた状態で当該ガイドシャフトによって前記軸線方向に案内されるとともに、前記容器における底部と反対側に当接する可動板部と、当該可動板部を前記ガイドシャフトに対して所望の位置で固定する固定機構とを備えていることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項4】
請求項3に記載の振とう溶解装置において、
前記固定機構は、ワンウェイクラッチを含んでおり、
前記ワンウェイクラッチは、前記可動板部が前記固定板部へ接近する方向への移動を許容する一方、前記可動板部が前記固定板部から離れる方向への移動を阻止するとともに、所定のロック解除操作により前記可動板部が前記固定板部から離れる方向への移動を許容するように構成されていることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項5】
請求項3に記載の振とう溶解装置において、
前記可動板部には、前記容器が有する首部が挿入される切り欠き部が形成されていることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項6】
請求項5に記載の振とう溶解装置において、
前記切り欠き部の内面は、前記固定板部に近い側へ行くほど当該切り欠き部の幅が拡大するように傾斜していることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項7】
請求項5に記載の振とう溶解装置において、
前記切り欠き部の周縁部は、前記容器が有する肩部の外面に接触する接触縁部を有し、
前記接触縁部は、前記軸線方向に沿ってみたとき、前記容器の中央部を中心とした180°を超える円弧状に延びていることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項8】
請求項3に記載の振とう溶解装置において、
前記可動板部は、前記容器が有するキャップが嵌合する凹部を有していることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項9】
請求項5に記載の振とう溶解装置において、
前記可動板部は、前記ガイドシャフトによって前記軸線方向に案内される本体板部と、前記本体板部に対して前記軸線方向と直交する方向に移動可能に取り付けられるとともに、前記切り欠き部を有するスライド板部とを有していることを特徴とする振とう溶解装置。
【請求項10】
請求項9に記載の振とう溶解装置において、
前記スライド板部を前記本体板部に位置決め固定する位置決め部が設けられていることを特徴とする振とう溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末製剤を溶解液に振とう溶解させる振とう溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばがん患者に投与される抗がん剤は液体のものと粉末のものとがあり、粉末の抗がん剤は、薬剤バイアル内に収容された状態で病院に供給され、使用する前に病院内で薬剤バイアル内に溶解液を注入した後、抗がん剤を振とう溶解してから患者に投与する。
【0003】
また、例えば特許文献1には、液性の生物学的材料を処理する液体処理システムとして、胴部と、胴部に設けられた3自由度以上の腕部とを有するものが開示されており、ティーチングプレイバックにより生物学的材料を処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-9618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した抗がん剤のような粉末製剤は、溶解時に泡立ちやすい、溶解時間が長く溶解しにくい、粘度が異なるものなど、多種の製剤がある。また、粉末製剤を外来患者へ投与する際には、短時間に複数の患者が集中することがあるため、迅速にかつ効率良く薬剤調製する必要がある。
【0006】
そこで、特許文献1に開示されているような液体処理システムを用いて薬剤調製することが考えられるが、特許文献1の液体処理システムは3自由度以上の腕部を有しており、ティーチングプレイバックが可能に構成されているため、かなり大がかりな装置となり、設置スペースの確保が問題となる。
【0007】
また、複数の外来患者に同時に対応しようとすると、特許文献1の液体処理システムを複数用意して同時に運用する必要があり、設置スペースの問題がより一層顕著になる。さらに、特許文献1の場合、腕部の可動範囲を考慮して1台当たりに大きな設置スペースを確保しなればならないという問題もある。加えて、粉末製剤の性状に合わせて異なるティーチングプレイバックが必要で手間が掛かり、効率が良いとは言えない。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、コンパクトでありながら、粉末製剤に応じた振とう溶解を迅速にかつ効率良く行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、密閉された容器に収容された粉末製剤を当該容器内の溶解液に振とう溶解させる振とう溶解装置を前提とすることができる。振とう溶解装置は、前記容器を保持する容器保持部と、前記容器保持部が固定される回転軸と、前記回転軸を回転駆動する駆動部とを備えている。また、前記駆動部を制御する制御部を備えていてもよい。前記容器保持部に保持された前記容器の中央部は、前記回転軸の軸線の延長線上から径方向に所定量だけ偏心している。
【0010】
この構成によれば、制御部を備えている場合には、制御部によって回転軸を回転させると、回転軸に固定された容器保持部が回転する。また、外部の制御部によっても駆動部を同様に制御することが可能である。容器保持部には粉末製剤及び溶解液が収容された容器が保持されているので、この容器も一緒に回転することになる。このとき、容器の中央部が回転軸の回転中心である軸線の延長線上から所定量だけ偏心しているので、容器はその中央部を通る軸回りに回転する場合に比べて大きく振られながら回転することになる。これにより、容器内の溶解液が大きな渦を形成しながら複雑な流れで流動するので、溶けにくい粉末製剤であっても短時間で溶解する。また、回転速度や回転時間を任意に設定することができるので、例えば溶解時に泡立ちやすい粉末製剤に合わせた条件設定、溶解時間が長く溶解しにくい粉末製剤に合わせた条件設定、粘度が異なる粉末製剤に合わせた条件設定がそれぞれ容易に行える。
【0011】
また、従来例のような胴部及び3自由度の腕部を有する処理システムに比べてコンパクトに構成できるので、1台当たりの設置スペースが小さくて済み、例えば複数台を導入しても設置スペースの確保が容易になる。
【0012】
本開示の他の態様に係る制御部は、前記回転軸が正回転及び逆回転を繰り返すように前記駆動部を制御することができる。また、回転中に回転速度を変化させることも可能である。この構成によれば、例えば回転軸を正転方向に回転させて容器内で渦を形成した後、逆転方向に回転させることで、容器内では反対に巻く渦が形成される。渦の巻く方向が変化する際には容器内の流れがより一層複雑になって乱れるので、粉末製剤が溶けやすくなる。正回転及び逆回転は、複数回繰り返すこともでき、例えば正回転を所定時間継続した後、逆回転を所定時間継続させることもできる。
【0013】
本開示の他の態様に係る容器保持部は、前記回転軸に固定されるとともに、前記容器の底部が載置される固定板部と、当該固定板部から前記容器の側方を通って前記軸線と平行な方向に突出するガイドシャフトと、当該ガイドシャフトに取り付けられた状態で当該ガイドシャフトによって前記軸線方向に案内されるとともに、前記容器における底部と反対側に当接する可動板部と、当該可動板部を前記ガイドシャフトに対して所望の位置で固定する固定機構とを備えていてもよい。
【0014】
すなわち、粉末製剤を溶解させるための容器として、高さの異なる複数種の容器が医療現場に存在している。本構成では、高さの高い容器を容器保持部で保持する場合には、可動板部を固定板部から離れる方向に移動させることで、固定板部と可動板部との距離を長くし、高さの高い容器を固定板部と可動板部とで挟持できる。一方、高さの低い容器を容器保持部で保持する場合には、可動板部を固定板部に近づけることで、固定板部と可動板部との距離を短くし、高さの低い容器を固定板部と可動板部とで挟持できる。
【0015】
本開示の他の態様に係る固定機構は、ワンウェイクラッチを備えていてもよい。前記ワンウェイクラッチは、前記可動板部が前記固定板部へ接近する方向への移動を許容する一方、前記可動板部が前記固定板部から離れる方向への移動を阻止するとともに、所定のロック解除操作により前記可動板部が前記固定板部から離れる方向への移動を許容するように構成することができる。
【0016】
この構成によれば、容器を固定板部に載置した後、可動板部を固定板部へ接近する方向に移動させることで、容器を固定板部と可動板部とで容易に挟持でき、この状態で可動板部が固定板部から離れる方向に移動しないので、容器がしっかりと保持されたままになる。一方、容器を取り外す場合には、所定のロック解除操作を行うことで、可動板部を固定板部から離して容易に取り外すことができる。
【0017】
本開示の他の態様に係る可動板部には、前記容器が有する首部が挿入される切り欠き部が形成されていてもよい。この構成によれば、容器の首部を可動板部の切り欠き部に挿入することで、容器の底部とは反対側を簡単に保持できる。
【0018】
本開示の他の態様に係る切り欠き部の内面は、前記固定板部に近い側へ行くほど当該切り欠き部の幅が拡大するように傾斜していてもよい。すなわち、例えばバイアルのような容器の肩部は外側へ行くほど下に位置するように傾斜している。このような容器を保持する場合に、切り欠き部の内面を傾斜させていることで、切り欠き部の周縁部を容器の肩部の外面に確実に接触させることができ、容器をしっかりと保持できる。
【0019】
本開示の他の態様に係る切り欠き部の周縁部は、前記容器が有する肩部の外面に接触する接触縁部を有していてもよい。この場合、前記接触縁部は、前記軸線方向に沿ってみたとき、前記容器の中央部を中心とした180°を超える円弧状に延びているので、振とう時に作用する遠心力によって容器が切り欠き部から出てしまうのを抑制できる。
【0020】
本開示の他の態様に係る可動板部は、容器が有するキャップが嵌合する凹部を有していてもよい。これにより、回転時の容器が容器保持部から外れなくなる。
【0021】
また、粉末製剤が抗がん剤である場合、抗がん剤の溶解状態を確認する方法として調製者が目視で行っているが、振とう溶解装置に、カメラ等の光学機器やセンサ等を付加し、これらを利用することにより、未溶解の薬剤を検査・再溶解することも可能であり、特に溶解しにくい抗がん剤に有効である。
【0022】
前記可動板部は、前記ガイドシャフトによって前記軸線方向に案内される本体板部と、前記本体板部に対して前記軸線方向と直交する方向に移動可能に取り付けられるとともに、前記切り欠き部を有するスライド板部とを有していてもよい。スライド板部を奥行方向に移動させることにより、容器の偏心量を変更乃至調整することができる。また、スライド板部を奥行方向に移動させることにより、様々な径の容器を安定して保持することができる。また、前記スライド板部を前記本体板部に位置決め固定する位置決め部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、容器保持部に保持された容器の中央部が回転軸の軸線の延長線上から偏心しているので、コンパクトな振とう溶解装置としながら、粉末製剤に応じた振とう溶解を迅速にかつ効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る振とう溶解装置の側面図である。
図2】容器を保持した状態を示す図1相当図である。
図3】容器を保持した振とう溶解装置の上半部分を上方から見た斜視図である。
図4】容器を保持した振とう溶解装置の上半部分の断面図である。
図5】可動板部、第3ガイドシャフト等を下方から見た斜視図である。
図6】実施形態1の変形例に係る可動板部を下方から見た斜視図である。
図7】本発明の実施形態2に係る可動板部及びガイドシャフト近傍を示す斜視図である。
図8】実施形態2に係る可動板部の分解斜視図である。
図9図7におけるIX-IX線断面図である。
図10図7におけるX-X線断面図である。
図11】実施形態2の変形例に係る図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る振とう溶解装置1の側面図である。振とう溶解装置1は、密閉された容器100(図2図4に示す)に収容された粉末製剤を当該容器100内の溶解液に振とう溶解させるための装置である。容器100は、粉末製剤としての抗がん剤が収容された薬剤バイアルであり、例えばガラス等で構成されている。容器100は透光性を有していてもといし、遮光性を有していてもよい。また、容器100には、乾燥凍結剤等が収容されていてもよい。
【0027】
容器100内に溶解液を注入した後、粉末製剤及び溶解液が収容された容器100を後述するように振とうすることで粉末製剤を溶解液に溶解させることができる。溶解液は、例えば生理的食塩水等を挙げることができるが、これに限られるものではない。粉末製剤を溶解液に溶解させた後、患者への投与が行われる。尚、容器100は、バイアル以外の容器であってもよく、材質や形状は特に限定されない。また、容器100に収容されている粉末製剤は、抗がん剤以外の薬剤であってもよい。
【0028】
容器100は、底部101と、胴部102と、肩部103と、首部104と、キャップ105とを備えている。容器100がバイアルの場合には、図示しないが、キャップ105に注射針を穿刺可能な栓体が設けられており、注射器を利用して容器100内に溶解液を所定量注入することが可能になっている。
【0029】
底部101は底面視で円形に近い形状とされている。胴部102は、底部101の周縁部から上方へ立ち上がるように形成されており、概ね底部101の径と等しい外径を有する円筒状をなしている。肩部103は、胴部102の上端部から容器100の径方向中央部へ接近するように延びており、容器100の径方向中央部へ接近すればするほど上に位置するように傾斜している。首部104は、肩部103の径方向内側の端部から上方へ延びる円筒状をなしている。キャップ105は、首部104の上端部に嵌合しており、首部104の外径よりも大きな外径を有している。
【0030】
粉末製剤が収容されている容器100は、高さ方向の寸法や外径の異なる複数種のものがある。例えば容器100の容量が小さなものでは、胴部102の高さ方向の寸法が短くなって容器100の背が低くなる一方、容器100の容量が大きなものでは、胴部102の高さ方向の寸法が長くなって容器100の背が高くなる。胴部102の高さ方向の寸法が変わることで、肩部103の高さ方向の位置及び首部104の高さ方向の位置が変わる。また、胴部102の外径を小さくすることで容器100の容量を小さくすることや、胴部102の外径を大きくすることで容器100の容量を大きくすることもある。本実施形態1に係る振とう溶解装置1では、容器100の高さ方向の寸法や外径が異なっても、粉末製剤を振とう溶解可能に構成されている。以下、振とう溶解装置1の具体的な構造について説明する。
【0031】
図2に示すように、振とう溶解装置1は、容器100を保持する容器保持部10と、容器保持部10が固定される回転軸20と、回転軸20を回転駆動する駆動部30と、駆動部30を制御する制御部40と、操作部50とを備えている。尚、この実施形態1の説明では、図2に示すような姿勢で振とう溶解装置1を使用する場合について説明する。よって、振とう溶解装置1の上側部分に容器保持部10が設けられ、振とう溶解装置1の下側部分に駆動部30が設けられ、振とう溶解装置1の上下方向中間部に上下方向に延びるように回転軸20が設けられる構成となるが、これは説明の便宜を図るための定義であり、振とう溶解装置1の使用時の姿勢としては、例えば上下が反対であってもよいし、容器保持部10と駆動部30とが水平方向に並ぶ姿勢であってもよく、特に限定されるものではない。また、各図に示すように、振とう溶解装置1の左右方向を定義するが、これも説明の便宜を図るための定義である。
【0032】
図3にも示すように、容器保持部10は、固定板部11と、第1ガイドシャフト12と、第2ガイドシャフト13と、第3ガイドシャフト14と、可動板部15とを備えている。固定板部11は、回転軸20の上端部(軸方向一端部)に対して接続部材16を介して固定されている。接続部材16は、上下方向に延びる筒状をなしている。接続部材16の上端部は固定板部11の下面に固定されている。接続部材16の下端部は下方に向けて開放されており、この開放部分から回転軸20が接続部材16の内部に差し込まれている。接続部材16には、当該接続部材16を縮径方向に締め付けるためのネジ16aが設けられている。回転軸20を接続部材16の内部に差し込んだ状態でネジ16aを締め込むことで、回転軸20の接続部材16からの抜けが阻止されるとともに、回転軸20と接続部材16との相対的な回動が抑制され、固定板部11と一体化した状態になる。
【0033】
固定板部11は、回転軸20の径方向に延出している。この実施形態1では、上述したように回転軸20が上下方向に延びているので、固定板部11は水平方向に延びているが、水平に対して若干傾斜していても構わない。
【0034】
固定板部11の上面は平坦に形成されており、この上面に容器100の底部101が載置される。固定板部11の大きさは、振とう溶解で利用される容器100のうち、外径の最も大きなものよりも大きく設定されており、外径の最も大きな容器100を固定板部11の上面に載置した状態で、当該容器100の周縁部から延出した部分を有するように固定板部11の外形状が設定されている。
【0035】
第1ガイドシャフト12、第2ガイドシャフト13及び第3ガイドシャフト14は、固定板部11から容器100の側方を通って回転軸20の軸線と平行な方向に突出している。すなわち、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13の下部は、固定板部11における容器100よりも右側(回転軸20の径方向を基準としたときの径方向一方側)部分に固定されている。より具体的には、最も外径の大きな容器100を固定板部11に載置した時、その容器100の胴部102から径方向一方側に離れたところに第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13が位置するように、両ガイドシャフト12、13が配置されている。また、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13は、固定板部11の奥行方向に互いに離間しており、互いに平行である。第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13を構成する部材は特に限定されないが、例えば金属製の外面が滑らかな棒材等で構成することができ、本例では、断面が円形の丸棒材で構成している。また、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13の軸方向の寸法は、最も背の高い容器100の高さ方向の寸法よりも十分に長く設定されている。
【0036】
第3ガイドシャフト14の下部は、固定板部11における容器100よりも左側(回転軸20の径方向を基準としたときの径方向他方側)部分に固定されている。より具体的には、最も外径の大きな容器100を固定板部11に載置した時、その容器100の胴部102から径方向他方側に離れたところに第3ガイドシャフト14が位置するように、第3ガイドシャフト14が配置されている。つまり、図2に示すように、振とう溶解装置1を正面から見たとき、容器100の左側に第3ガイドシャフト14が配置され、右側に第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13が配置される。
【0037】
第3ガイドシャフト14は、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13と平行である。第3ガイドシャフト14も、第1ガイドシャフト12等と同様に、例えば断面が円形の丸棒材で構成することができ、軸方向の寸法は第1ガイドシャフト12等と同様に設定される。また、第3ガイドシャフト14の径は、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13の径よりも大きく設定されている。尚、第3ガイドシャフト14の径は、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13の径と同じであってもよいし、第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13の径より小さくてもよい。
【0038】
可動板部15は、第1~第3ガイドシャフト12~14に取り付けられた状態で当該ガイドシャフト12~14によって回転軸20の軸線方向に案内されて固定板部11に対して接離する方向に移動可能になっている。すなわち、可動板部15は、固定板部11と同様な大きさとされていて、固定板部11に対して平行に配置される。図5にも示すように、可動板部15における第1ガイドシャフト12に対応する部分には、筒状の第1摺動部材15aが固定され、また、可動板部15における第2ガイドシャフト13に対応する部分には、筒状の第2摺動部材15bが固定されている。図3等に示すように、第1摺動部材15aに第1ガイドシャフト12が挿通され、また、第2摺動部材15bに第2ガイドシャフト13が挿通されている。第1摺動部材15aの内面が第1ガイドシャフト12の外面を摺動し、また、第2摺動部材15bの内面が第2ガイドシャフト13の外面を摺動する。尚、第1摺動部材15a及び第2摺動部材15bがそれぞれ第1ガイドシャフト12及び第2ガイドシャフト13に対して径方向に殆どがたつきがないように、第1摺動部材15a及び第2摺動部材15bの内径が設定されている。
【0039】
可動板部15における第3ガイドシャフト14に対応する部分には、筒状の第3摺動部材15cが固定されている。第3摺動部材15cに第3ガイドシャフト14が挿通され、第3摺動部材15cの内面が第3ガイドシャフト14の外面を摺動するようになっている。第3摺動部材15cの内径は、第3ガイドシャフト14の外径に対応しているため、第1摺動部材15a及び第2摺動部材15bの外径よりも大きく設定されている。第3摺動部材15cは第3ガイドシャフト14に対して径方向に殆どがたつきがないように形成されている。
【0040】
容器保持部10は、可動板部15を第3ガイドシャフト14に対して所望の位置で固定する固定機構17を備えている。固定機構17は、可動板部15の一方向への移動を許容するが、反対方向への移動を阻止するワンウェイクラッチを含んでおり、そのワンウェイクラッチを操作するための操作手段として操作プレート17aも含んでいる。ワンウェイクラッチ自体は従来から周知のものであり、具体的には、固定機構17の一部を構成しているワンウェイクラッチは、可動板部15が固定板部11へ接近する方向(下方)への移動を許容する一方、可動板部15が固定板部11から離れる方向への移動を阻止するとともに、所定のロック解除操作により可動板部15が固定板部11から離れる方向への移動を許容するように構成されている。
【0041】
操作プレート17aは、可動板部15の下方に配設され、可動板部15に沿う方向に延びており、可動板部15と共に移動する。操作プレート17aの一端部は、可動板部15の縁部から外方へ突出するように配置されている。この操作プレート17aは、図示しない付勢部材により、ロック位置に常時位置付けられるようになっており、操作プレート17aがロック位置にあることで、ワンウェイクラッチは、可動板部15が固定板部11から離れる方向への移動を阻止する。操作プレート17aの一端部を押圧することで、操作プレート17aは付勢部材の付勢力に抗してロック解除位置に位置付けられる。これは所定のロック解除操作である。操作プレート17aがロック解除位置に位置付けられると、可動板部15が固定板部11から離れる方向への移動が許容される。
【0042】
図3図4に示すように、可動板部15には、容器100が有する首部104が挿入される切り欠き部15dが形成されている。切り欠き部15dの幅は、首部104の外径よりも若干広めに設定されているが、キャップ105の外径よりも狭く設定されている。これにより、首部104を切り欠き部15dに挿入した状態で、キャップ105が切り欠き部15dの縁部に引っ掛かって下方へ落下しないようになる。
【0043】
図5に示すように、切り欠き部15dの内面は、首部104の挿入方向を基準とした時、挿入方向手前側における幅方向両側にそれぞれ形成された第1手前側内面15e及び第2手前側内面15fと、挿入方向奥側に形成された奥側内面15gとを有している。第1手前側内面15e及び第2手前側内面15fは、首部104の挿入方向に向かって互いに平行に延びているが、固定板部11に近い側へ行くほど、即ち、当該第1手前側内面15e及び第2手前側内面15fの下端部に近づけば近づくほど切り欠き部15dの幅が拡大するように傾斜している。これにより、切り欠き部15dの挿入方向手前側は、下へ向かって幅が次第に広くなる内面形状を有することになる。
【0044】
切り欠き部15dに挿入された首部104は、奥側内面15gに達するようになっている。奥側内面15gは、回転軸20の軸線方向に沿ってみたとき、容器100の中央部を中心とした180°を超える円弧状に延びており、奥側内面15gにおける上記挿入方向手前側の端部にそれぞれ第1手前側内面15e及び第2手前側内面15fが連なっている。また、奥側内面15gの下側の周縁部は、容器100が有する肩部103の外面に接触する接触縁部15hである。つまり、可動板部15は、容器100における底部101と反対側に当接する部材である。接触縁部15hは奥側内面15gの形状と対応しており、回転軸20の軸線方向に沿ってみたとき、容器100の中央部を中心とした180°を超える円弧状である。接触縁部15hは容器100の中央部を中心とした185°を超える円弧状または190°を超える円弧状としてもよいが、周方向の長さが長くなり過ぎると首部104の挿入が不可能になるので、首部104の外径を考慮して上限を設定する。上限は、例えば240゜とすることができる。尚、接触縁部15hは周方向に連続していてもよいし、断続していてもよく、接触縁部15hが形成される範囲を上記角度範囲とすればよい。
【0045】
駆動部30は、例えばサーボモータ等で構成されており、本体部31と、本体部31の上部から上方へ突出する出力軸32とを有している。本体部31は、例えば振とう溶解装置1が固定される台(図示せず)などに取り付けられるようになっている。出力軸32の上部には、回転軸20の下部が相対回転不能に固定されている。
【0046】
回転軸20の軸線と、出力軸32の軸線とは同軸上に位置しており、その軸線及び当該軸線の延長線を一点鎖線L1で示している。一方、容器100の中央部を通って当該容器100の高さ方向(上下方向)に延びる直線を一点鎖線L2で示す。回転軸20の軸線の延長線を示す一点鎖線L1と、容器保持部10に保持された容器100の中央部を通る一点鎖線L2とは、径方向に所定量だけずれている。要するに、容器保持部10に保持された容器100の中央部は、回転軸20の軸線の延長線上から径方向に所定量だけ偏心している。偏心量は、一点鎖線L1と一点鎖線L2の離間寸法で定義することができ、本例では、1mm以上30mm以下の範囲で設定されている。また、偏心量は、例えば2mm以上20mm以下の範囲で設定することもできる。
【0047】
偏心量を1mm未満の小さな量にすると、容器保持部10に保持されている容器100内に大きな渦流が形成されにくくなり、粉末製剤の溶解性が悪化するので、偏心量は1mm以上とするのが好ましい。一方、偏心量を大きくしていくと、容器保持部10の回転半径が大きくなり、その結果、振とう溶解装置1の設置スペースを広く確保しなければならなくなるので、偏心量を30mm以下とするのが好ましい。また、偏心量を30mmより大きくしても、粉末製剤の溶解性は殆ど向上しないという点においても、偏心量を30mm以下とするのが好ましい。例えば、容器100の外径が23mmである場合、偏心量は5mm以上10mm以下の範囲とするのが好ましい。また、容器100の外径が30mmである場合、及び、容器100の外径が42.7mmである場合も、偏心量は5mm以上10mm以下の範囲とするのが好ましい。
【0048】
制御部40は、駆動部30を制御する部分であり、例えばマイクロコンピュータ等で構成されている。尚、制御部40は、振とう溶解装置1の一部を構成するものであってもよいし、振とう溶解装置1に含まれないものであってもよい。制御部40が振とう溶解装置1に含まれない場合、振とう溶解装置1の外部に設けられた制御部40によって駆動部30が制御されることになる。
【0049】
制御部40には、スイッチやボタン等からなる操作部50が接続されている。制御部40は、操作部50が操作されたことを検出すると駆動部30に制御信号を出力して出力軸32を回転させる。制御部40は、回転軸20が正回転及び逆回転を繰り返すように駆動部30を制御すること、及び、回転軸20が正回転のみするように駆動部30を制御することが可能に構成されている。回転方向の切り替えは、操作部50の操作によって行うことができ、例えば正回転及び逆回転を繰り返すモードの選択が可能となるように、操作部50が構成されている場合、操作部50によって当該モードが選択されたことを制御部40が検出すると、正回転及び逆回転を繰り返す。正回転の時間と、逆回転の時間とは同じであってもよいし、一方が他方に比べて長く設定されていてもよい。また、所定時間だけ正回転した後、瞬時に逆回転に切り替えてもよいし、しばらく時間が経過した後に逆回転に切り替えてもよい。正回転及び逆回転時の回転数(単位時間あたりの回転数)も任意に設定することができ、正回転及び逆回転が同じ回転数であってもよいし、一方が他方よりも高速に回転してもよい。正回転及び逆回転の回転数や回転時間は、薬剤の粘度に応じて変更することや、溶解のし易さに応じて変更することができ、薬剤ごとに事前のテスト結果に基づいて設定されていてもよい。
【0050】
(使用要領)
次に、上記のように構成された振とう溶解装置1の使用要領について説明する。まず、粉末製剤及び溶解液が収容された容器100を容器保持部10に保持させる。このとき、固定機構17の操作プレート17aを指によりロック解除操作してから、可動板部15を上方へ移動させる。その後、容器100の首部104を切り欠き部15dに奥側まで挿入する。容器100の首部104を切り欠き部15dに挿入すると、キャップ105の外径が切り欠き部15dの幅よりも大きいので、キャップ105の縁部が切り欠き部15dの縁部に対して上方から当接して容器100がぶら下がった状態になる。
【0051】
次いで、操作プレート17aから指を離してロック位置にした後、可動板部15を下方へ移動させる。すると、容器100の底部101が固定板部11の上面に当接し、容器100がそれ以上、下方へ移動しなくなる。この容器100の肩部103には、可動板部15の切り欠き部15dの接触縁部15hが接触しているので、可動板部15もそれ以上、下方へ移動しなくなる。可動板部15は固定機構17によって上方へも移動しないので、容器100は固定板部11と可動板部15とで上下方向に挟持された状態になる。容器100の高さ方向の寸法が異なる場合、可動板部15の上下方向の位置が変わるだけであり、容器100を固定板部11と可動板部15とで上下方向に挟持する動作は同じなので、背の高い容器100であっても背の低い容器100であっても同様に容器保持部10で保持できる。
【0052】
また、切り欠き部15dの接触縁部15hは肩部103の外面に接触するものなので、胴部102の外径が多少異なっていても、接触縁部15hを肩部103の外面に接触させて同様に容器保持部10で保持できる。
【0053】
容器100を容器保持部10に保持した後、操作部50を操作すると、制御部40は駆動部30を制御して回転軸20を回転させる。回転軸20を回転させると、回転軸20に固定された容器保持部10が回転する。容器保持部10には粉末製剤及び溶解液が収容された容器100が保持されているので、この容器100も一緒に回転することになる。このとき、容器100の中央部が回転軸20の回転中心である軸線の延長線上から所定量だけ偏心しているので、容器100はその中央部を通る軸回りに回転する場合に比べて大きく振られながら回転することになる。これにより、容器100内の溶解液が大きな渦を形成しながら複雑な流れで流動するので、溶けにくい粉末製剤であっても短時間で溶解する。また、回転速度や回転時間を任意に設定することができるので、例えば溶解時に泡立ちやすい粉末製剤に合わせた条件設定、溶解時間が長く溶解しにくい粉末製剤に合わせた条件設定、粘度が異なる粉末製剤に合わせた条件設定が容易に行える。尚、容器100が透光性を有していて内部を視認可能な場合には、溶解状態を見ながら回転時間や回転数等を設定してもよく、事前に設定された回転時間を経過する前に完全に溶解したと判断される場合には、回転を途中で停止させてもよい。この停止操作も操作部50によって行うことができる。
【0054】
回転軸20を正転方向に回転させて容器100内で渦を形成した後、逆転方向に回転させることで、容器100内では反対に巻く渦が形成される。渦の巻く方向が変化する際には容器100内の流れがより一層複雑になって乱れるので、粉末製剤が溶けやすくなる。正回転及び逆回転は、複数回繰り返す。
【0055】
容器100を回転させて振とうする際には遠心力が作用するので、切り欠き部15dから出てしまうことが考えられるが、肩部103に接触する接触縁部15hは、容器100の中央部を中心とした180°を超える円弧状に延びているので、振とう時の遠心力によって容器100が切り欠き部15dから出てしまうのを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態1では、容器保持部10を駆動部30で回転させるだけという、極めてシンプルな構成なので、従来例のような胴部及び3自由度の腕部を有するシステムに比べてコンパクトに構成できる。よって、振とう溶解装置1の1台当たりの設置スペースが小さくて済み、例えば複数台を導入しても設置スペースの確保が容易になるので、複数の外来患者が集中する病院等であっても、容易に対応可能である。
【0057】
また、粉末製剤に応じた振とう溶解を迅速に行うことができるので、例えば薬剤師が長い時間、単純な溶解作業を行う必要はなく、薬剤師をより高度な調剤業務に当たらせることができる点でも、本実施形態の振とう溶解装置1は有用である。
【0058】
(変形例)
図6は実施形態1に係る変形例を示している。この変形例に係る可動板部150の下面に凹部151を形成してもよい。凹部151は、容器100のキャップ105の少なくとも上部が嵌合する形状とされている。これにより、可動板部150を上方に移動させた状態で容器100を固定板部11の上面に載置してから、可動板部150を下方へ移動させながら、キャップ105を凹部151に嵌合させることで、容器100を容器保持部10で保持できる。変形例の凹部151は、上記切り欠き部15dのように回転時の周方向の一部が開放していないので、容器100が容器保持部10から外れるおそれはない。
【0059】
(実施形態2)
図7図10は、本発明の実施形態2に係る振とう溶解装置1の一部を示すものである。この実施形態2では、可動板部15が複数の部材によって構成されている点で実施形態1のものとは相違しており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0060】
図8に示すように、実施形態2の可動板部15は、本体板部25とスライド板部26とボールプランジャー27(図9に示す)とを有している。本体板部25には、第1摺動部材15a、第2摺動部材15b及び第3摺動部材15cが固定されており、本体板部25が第1~第3ガイドシャフト12~14によって前記軸線方向に案内される。
【0061】
スライド板部26は、本体板部25に対して奥行方向(前記軸線と直交する方向)に移動可能に取り付けられている。すなわち、本体板部25には、スライド板部26が挿入される挿入部28が当該本体板部25を切り欠くようにして形成されている。挿入部28は、本体板部25の手前側に開放されており、挿入部28の幅方向両側には、第1レール部28aと第2レール部28bとがそれぞれ形成されている。第1レール部28aは、奥行方向に延びるとともに右側に開放された凹条部で構成されている。第2レール部28bは、奥行方向に延びるとともに左側に開放された凹条部で構成されている。第1レール部28aと第2レール部28bとは平行であり、かつ、同じ高さに配置されている。第1レール部28a及び第2レール部28bの手前側が開放されていて、この手前側の開放部分からスライド板部26を挿入部28へ挿入することができる。
【0062】
スライド板部26の幅方向中間部には、容器100の首部104が挿入される切り欠き部15dが形成されている。スライド板部26の幅方向両側には、本体板部25の第1レール部28a及び第2レール部28bにそれぞれ差し込まれる第1差込部26a及び第2差込部26bが設けられている。第1差込部26aは左側へ延出して奥行方向に延びている。第2差込部26bは右側へ延出して奥行方向に延びている。第1差込部26a及び第2差込部26bは互いに平行であり、かつ、同じ高さに配置されている。
【0063】
第1差込部26a及び第2差込部26bを第1レール部28a及び第2レール部28bにそれぞれ差し込んだ状態で、第1差込部26a及び第2差込部26bの外面が第1レール部28a及び第2レール部28bの内面を摺動可能になっている。これにより、スライド板部26を本体板部25に対して奥行方向に移動させることができる。
【0064】
図9及び図10に示すように、本体板部25における第2レール部28bが形成されている部分には、ボールプランジャー27が設けられている。具体的には、本体板部25における第2レール部28bが形成されている部分の下側には、上下方向に貫通する下側貫通孔28cが形成されている。この下側貫通孔28cの上側は第2レール部28b内に達している。下側貫通孔28cにボールプランジャー27が差し込まれた状態で取り付けられている。ボールプランジャー27は、従来から周知の機械要素部品であるため、詳細な説明は省略するが、筒状のボディ内にコイルスプリングが内蔵されており、ボディの先端部に保持されたボールまたはピンからなる突起部27aをコイルスプリングによって常時押圧する構造となっている。突起部27aに対してボディへの押し込み方向へ外力が作用すると、コイルスプリングの付勢力に抗して突起部27aがその方向に変位可能になっている。この実施形態では、突起部27aが第2レール部28b内に向けて上へ突出するように、ボールプランジャー27が配置されている。
【0065】
一方、スライド板部26の第2差込部26bを第2レール部28bに差し込むと、第2差込部26bの下面がボールプランジャー27の突起部27aに対応するように配置される。第2差込部26bの下面には、複数の凹部26cが奥行方向に互いに間隔をあけて形成されている。各凹部26cは下方に開放されており、ボールプランジャー27の突起部27aが入り込むように形成されている。
【0066】
ボールプランジャー27の突起部27aが任意の一の凹部26cに入り込むように、スライド板部26を奥行方向にスライドさせることが可能になっている。突起部27aが凹部26cに入り込むと、突起部27aが凹部26cに係合した状態になり、スライド板部26が本体板部25に対して動かないようになる。この状態にあるスライド板部26に対して奥行方向に力を加え、その力が所定以上になると、突起部27aが凹部26cの内面によって押し込み方向(下方向)に押されて下に変位する。これにより、突起部27aが凹部26cから抜け出るので、スライド板部26が本体板部25に対してスライド可能になる。
【0067】
このように、ボールプランジャー27と、複数の凹部26cとを設けることで、スライド板部26の位置を奥行方向に複数段階に設定することができる。例えば容器100の径が小さい場合のように、首部104が奥側に位置するような場合には、スライド板部26を奥へ移動させてボールプランジャー27によって固定しておき、容器100の径が大きい場合のように、首部104が手前側に位置するような場合には、スライド板部26を手前へ移動させてボールプランジャー27によって固定しておくことができる。これにより、容器100の径に対して広範囲に対応できる。また、容器100の偏心量を変えることもできる。ボールプランジャー27及び凹部26cにより、スライド板部26を本体板部25に位置決め固定する位置決め部が構成されている。
【0068】
尚、図示しないが、ボールプランジャー及び凹部は左側に設けてもよい。また、凹部26cの数は2以上の任意の数に設定できる。凹部26cの代わりに切欠部や孔部を設けてもよい。
【0069】
図11は、実施形態2の変形例に係るものである。この変形例では、ボールプランジャー27の代わりに位置決めピン29を設けてスライド板部26を本体板部25に対して固定可能にしている。具体的には、本体板部25における第2レール部28bが形成されている部分の上側には、上下方向に貫通する上側貫通孔28dが形成されている。この上側貫通孔28dに位置決めピン29が上下方向に変位可能に挿通されている。
【0070】
一方、スライド板部26の第2差込部26bには、複数の孔部26dが奥行方向に互いに間隔をあけて形成されている。各孔部26dは上下方向に貫通しており、位置決めピン29が上方から入り込むようになっている。スライド板部26を移動させる際には、位置決めピン29を上方へ移動させて孔部26dから抜いた状態にしておけばよく、これにより、スライド板部26を奥行方向に自由にスライドさせることができる。スライド板部26を所望の位置までスライドさせた後、位置決めピン29を下へ移動させて一の孔部26dに入れると、スライド板部26が本体板部25に対して動かないようになる。位置決めピン29及び孔部26dにより、スライド板部26を本体板部25に位置決め固定する位置決め部が構成されている。
【0071】
この実施形態2によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができるのに加えて、スライド板部26、即ち切り欠き部15dを奥行方向に移動させることにより、容器100の偏心量を変更乃至調整することができる。また、切り欠き部15dを奥行方向に移動させることにより、様々な径の容器100を安定して保持することができる。
【0072】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0073】
例えば、粉末製剤が抗がん剤である場合、振とう溶解装置1に、カメラ等の光学機器やセンサ等のような、未溶解の薬剤を検出可能な検出部(図示せず)を付加してもよい。検出部は制御部40に接続されており、検出部を利用して未溶解の薬剤を検出した場合には、制御部40によって駆動部30を動作させて残りの薬剤を溶解させることも可能である。これは、特に溶解しにくい抗がん剤に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本開示に係る振とう溶解装置は、例えば各種粉末製剤を振とう溶解する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 振とう溶解装置
10 容器保持部
11 固定板部
12~14 第1~第3ガイドシャフト
15 可動板部
15d 切り欠き部
15h 接触縁部
17 固定機構
20 回転軸
30 駆動部
40 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11