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特開2024-29054超音波顕微鏡、および超音波顕微鏡を操作する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029054
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】超音波顕微鏡、および超音波顕微鏡を操作する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20240227BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N29/06
G01N29/265
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215148
(22)【出願日】2023-12-20
(62)【分割の表示】P 2020566297の分割
【原出願日】2019-05-17
(31)【優先権主張番号】15/989,428
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510203083
【氏名又は名称】ピーヴィエー テプラ アナリティカル システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PVA TePla Analytical Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ホフロッジ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ベックラー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ローワック、マリオ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヒンダラー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ジュリック-リスナー、タティアナ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス、ズィズィ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象物を迅速に高精度で検査することができる超音波顕微鏡を提供する。
【解決手段】超音波顕微鏡は、対象物を対象領域に保持する対象物ホルダーと、走査ヘッドと、走査ヘッドによって支持される第1のトランスデューサを備え、第1のトランスデューサは、放出方向に沿って第1の音響パルスを放出し、第1の音響パルスを焦点に集束させ、対象物から出てくる第2の音響パルスを検出し、第2の音響パルスを表す第1の検出信号を出力するものであり、放出方向に平行である垂直方向に沿って、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを移動させる第1のアクチュエータと、第1の検出信号に基づいて、対象物の操作中に、対象物と第1のトランスデューサとの間の垂直距離が一定に保たれるように制御信号を生成する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を検査するための超音波顕微鏡であって、
前記対象物を対象領域に保持するように構成された対象物ホルダーと、
前記対象領域に対して移動可能な走査ヘッドと、
前記走査ヘッドによって支持される第1のトランスデューサと、を備え、
前記第1のトランスデューサは、放出方向に沿って第1の音響パルスを放出し、前記第1の音響パルスを焦点に集束させるように構成されており、
前記第1のトランスデューサはさらに、前記対象物から出てくる第2の音響パルスを検出し、前記第1のトランスデューサによって検出された前記第2の音響パルスを表す第1の検出信号を出力するように構成されており、
前記放出方向に基本的に平行である垂直方向に沿って、前記走査ヘッドに対して前記第1のトランスデューサを移動させるように構成された第1のアクチュエータと、
前記対象物を走査している間、前記第1のトランスデューサと前記対象物の表面との間に所定の作動距離が維持されるように、前記第1の検出信号に基づいて、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成された制御部とを備え、
前記制御部は、前記対象物の操作中に、前記対象物と前記第1のトランスデューサとの間の垂直距離が一定に保たれるように制御信号を生成するように構成されていることを特徴とする超音波顕微鏡。
【請求項2】
前記制御部はさらに、
前記第1のトランスデューサによる前記第1の音響パルスの放出を制御し、
前記第1の検出信号に基づいて、前記第1のトランスデューサと前記対象物との間の距離を表す距離の値を決定し、
決定された前記距離の値に基づいて、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項1に記載の超音波顕微鏡。
【請求項3】
前記制御部はさらに、前記第1のトランスデューサと前記対象物との間の前記距離が所定の作動距離に近づくように、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項2に記載の超音波顕微鏡。
【請求項4】
前記制御部はさらに、
決定された前記距離の値に基づいて、前記焦点と前記対象物の興味のある場所との間の距離を表すデフォーカス値を決定し、
前記デフォーカス値に基づいて、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項2に記載の超音波顕微鏡。
【請求項5】
前記垂直方向に基本的に直交する横方向平面内で、前記対象物ホルダーに対して前記走査ヘッドを移動させるように構成された走査ヘッド位置決め装置をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項6】
前記制御部はさらに、
前記走査ヘッドが複数の位置に配置されるように前記走査ヘッド位置決め装置を制御し、
前記走査ヘッドが前記複数の位置の1つに配置されるたびに、前記第1のトランスデューサに前記第1の音響パルスの少なくとも1つを放出させることと、前記第2の音響パルスの少なくとも1つを検出することと、前記第1の検出信号を出力することを実行し、
前記複数の位置に関連して、前記第1の検出信号または前記第1の検出信号から導出された値を記憶し、
1組の記憶した前記第1の検出信号または導出された値に基づいて、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項5に記載の超音波顕微鏡。
【請求項7】
前記対象領域が前記第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間に位置するように、前記走査ヘッドによって支持される第2のトランスデューサをさらに備え、
前記第2のトランスデューサは、前記対象物から出てくる前記第2の音響パルスを検出し、前記第2のトランスデューサによって検出された前記第2の音響パルスを表す第2の検出信号を出力するように構成される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項8】
前記垂直方向に基本的に直交する横方向に沿って、前記走査ヘッドに対して前記第1のトランスデューサを移動させるように構成された第2のアクチュエータをさらに備え、
前記制御部はさらに、前記第2の検出信号に基づいて、前記第2のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの横方向の動きを制御するように構成される、請求項7に記載の超音波顕微鏡。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のトランスデューサが前記横方向に沿って前記第2のトランスデューサと一直線になるように、前記第2のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記横方向の動きを制御するように構成される、請求項8に記載の超音波顕微鏡。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2の検出信号の強度が最大になるように、前記第2のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記横方向の動きを制御するように構成される、請求項9に記載の超音波顕微鏡。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2の検出信号の周波数領域表現を計算し、前記第2の検出信号の前記周波数領域表現に基づいて、前記第2のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記横方向の動きを制御するように構成される、請求項9または請求項10に記載の超音波顕微鏡。
【請求項12】
前記走査ヘッドに対して前記第2のトランスデューサを前記垂直方向に沿って移動させるように構成された第3のアクチュエータをさらに備える、請求項7から請求項11のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項13】
前記制御部はさらに、前記第1の検出信号に基づいて、前記第3のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項12に記載の超音波顕微鏡。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1の検出信号に基づいて、前記第1のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第1のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するための制御信号を計算するように構成され、
前記制御部はさらに、前記制御信号に基づいて、前記第3のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項13に記載の超音波顕微鏡。
【請求項15】
前記制御部はさらに、前記第2の検出信号に基づいて、前記第3のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項12から請求項14のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項16】
前記制御部は、前記第2の検出信号の強度が最大になるように、前記第3のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第2のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項15に記載の超音波顕微鏡。
【請求項17】
前記制御部は、前記第2の検出信号の周波数領域表現を計算し、前記第2の検出信号の前記周波数領域表現に基づいて、前記第3のアクチュエータによって提供される前記走査ヘッドに対する前記第2のトランスデューサの前記垂直方向の動きを制御するように構成される、請求項15または請求項16に記載の超音波顕微鏡。
【請求項18】
前記走査ヘッドに対して前記対象物ホルダーを前記垂直方向に沿って移動させるように構成された第4のアクチュエータをさらに備え、
前記制御部はさらに、前記対象物を前記垂直方向に前記焦点に対して可変的に配置することができるように、前記第4のアクチュエータを制御するように構成される、請求項1から請求項17のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項19】
前記走査ヘッド位置決め装置は、前記走査ヘッドを最大で第1の変位値だけ変位させるように構成され、
前記第2のアクチュエータは、前記走査ヘッドに対して最大で第2の変位値だけ前記第1のトランスデューサを変位させるように構成され、
前記第1の変位値と前記第2の変位値との比は、少なくとも10、特に少なくとも100または少なくとも1000である、請求項5に関連する請求項8に記載の超音波顕微鏡。
【請求項20】
前記第1のトランスデューサは、前記対象領域の上方に配置される、請求項1から請求項19のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項21】
前記第1のトランスデューサは、前記第1の音響パルスが閾値周波数を超える音響周波数を有するように、前記第1の音響パルスを放出するように構成され、
前記閾値周波数は、複数の閾値周波数のグループから選択され、前記複数の閾値周波数のグループは、10MHzと15MHzで構成される、請求項1から請求項20のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項22】
対象物を検査するための超音波顕微鏡を操作する方法であって、
前記超音波顕微鏡が、請求項1~21のいずれかの記載にしたがって構成され、または操作されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を検査するための、特に半導体構造を検査するための超音波顕微鏡に関する。さらに、本発明は、超音波顕微鏡の音響パルストランスデューサを運ぶキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波顕微鏡は、材料やデバイスなどの対象物の非破壊検査に使用される。非破壊検査の能力により、このような超音波顕微鏡は、品質監視、信頼性研究、最適化、および故障分析の分野で有利に適用される。例えば、半導体製造では、完成した部分的に処理された半導体デバイスの検査に超音波顕微鏡が使用される。そのような超音波顕微鏡を使用することにより、対象物の層間剥離、隙間、亀裂、または介在物を検出し、それらの機械的特性を決定することができる。
【0003】
超音波顕微鏡を使用することによる対象物の検査は、音響パルス、特に超音波パルスを対象物に向け、対象物によって反射された、および/または対象物を透過した音響パルスを分析することによって実行することができる。この分析の基礎は、音響パルスが対象物の各音響インターフェースで部分的に反射され、部分的に透過するという物理現象である。したがって、複数の異なる材料層を含む対象物は、対象物に向けられた単一の音響パルスから複数の反射パルスを生成する。複数の反射音響パルスは、反射音響パルスの強度を表す時間領域の信号を出力する音響トランスデューサによって検出される。対象物に向けられたパルスに対する複数の反射パルスのそれぞれの時間遅延に基づいて、対象物内の材料層の深さを決定することができる。さらに、反射された音響パルスの強度に基づいて、材料の種類を推定することができ、それによって対象物の欠陥を決定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、対象物を可能な限り迅速に高精度で検査することができる超音波顕微鏡を提供することである。検査される対象は、材料およびデバイス、特に半導体材料を使用して作られたウェーハ、パッケージ、コンポーネントまたはデバイスであり得る。対象物の表面形状は、対象物の大きさに対してでこぼこがあってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、対象物を検査するための超音波顕微鏡は、対象物を対象領域に保持するように構成された対象物ホルダーと、対象領域に対して移動可能な走査ヘッドと、走査ヘッドによって支持される第1のトランスデューサとを備え、第1のトランスデューサは、放出方向に沿って第1の音響パルスを放出し、第1の音響パルスを焦点に集束させるように構成されており、第1のトランスデューサは、対象物から出てくる第2の音響パルスを検出し、第1のトランスデューサによって検出された第2の音響パルスを表す第1の検出信号を出力するように構成されている。
【0006】
この態様によれば、走査ヘッドは第1のトランスデューサを支持する。走査ヘッドを対象領域に対して移動させることにより、第1のトランスデューサも対象領域に対して移動する。
【0007】
第1のトランスデューサは、第1の音響パルス、特に超音波パルスを放出方向に沿って放出するように構成され、それにより、第1の音響パルスは、対象領域内の対象物に向けられる。第1の音響パルスは焦点に集束され、対象物は、対象物の興味のある場所が焦点と一致するように、焦点に対して配置することができる。
【0008】
第1のトランスデューサはさらに、第1の音響パルスが対象物に向けられると対象物から出てくる第2の音響パルスを検出するように構成される。第1のトランスデューサはさらに、検出された音響パルスから、第1のトランスデューサによって出力される第1の検出信号を生成するように構成される。例えば、第1の検出信号は、第2の音響パルスの時間依存強度を表す時間領域の信号であり得る。
【0009】
一実施形態によれば、超音波顕微鏡は、放出方向に基本的に平行である垂直方向に沿って、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを移動させるように構成された第1のアクチュエータと、第1の検出信号に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成された制御部と、を備える。
【0010】
第1のアクチュエータは、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを垂直方向に沿って移動させるように構成される。これにより、焦点も垂直方向に走査ヘッドに対して移動する。したがって、第1のアクチュエータが走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを垂直方向に沿って移動させるという点で、焦点は第1のアクチュエータによって垂直方向に沿って平行移動することができる。制御部は、第1の検出信号に基づいて、すなわち、第1の音響パルスが対象物に向けられたときに対象物から出てくる第2の音響パルスに基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される。したがって、焦点を、第1の検出信号に基づいて、対象物に対して、および走査ヘッドに対して配置することができる。
【0011】
一実施形態によれば、制御部はさらに、第1のトランスデューサによる第1の音響パルスの放出を制御し、第1の検出信号に基づいて、第1のトランスデューサと対象物との間の距離を表す距離の値を決定し、決定された距離の値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される。例えば、第1のトランスデューサと対象物との間の距離は、第1のトランスデューサから対象物までの第1の音響パルスの1つの飛行時間、およびその1つの第1の音響パルスによって生成した第2の音響パルスの対象物から第1のトランスデューサまでの飛行時間に基づいて、制御部によって計算することができる。その計算には、空気または浸漬液中の音速などのパラメータを利用することができる。
【0012】
本実施形態によれば、制御部は、第1のトランスデューサに第1の音響パルスを放出させるように構成される。したがって、制御部は、第1のトランスデューサが第1の音響パルスを放出するタイミングを制御する。さらに、制御部は、第1の音響パルスが対象物に向けられた後、第1のトランスデューサから第1の検出信号を取得するように構成される。したがって、制御部は、対象物から出てくる第2の音響パルスが第1のトランスデューサに到達するタイミングを決定するように構成することができる。第1の音響パルスの放出および第2の音響パルスの受信のタイミングに基づいて、制御部は、第1のトランスデューサと対象物との間の距離を計算し、特に第1のトランスデューサと半導体構造の複数の材料層との間の距離を決定するように構成することができる。決定された距離の値に基づいて、制御部は、焦点が対象物に対して所望の位置に配置されるように、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御することができる。
【0013】
例えば、制御部は、第1のトランスデューサと対象物との間の距離が所定の作動距離に近づくように、決定された距離の値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。
【0014】
例えば、制御部は、走査ヘッドが第1のトランスデューサを対象領域に対して移動させる間、所定の作動距離が第1のトランスデューサと対象物との間で維持されるように、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。特定の例として、制御部は、走査ヘッドが第1のトランスデューサを対象領域に対して移動させる間、所定の作動距離が第1のトランスデューサと対象物の表面との間で維持されるように、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。
【0015】
別の実施形態によれば、制御部は、決定された距離の値に基づいて、焦点と対象物の興味のある場所との間の距離を表すデフォーカス値を決定し、デフォーカス値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。
【0016】
例えば、対象物の複数の興味のある場所は、対象物の表面の下の所定の距離に配置されるようにユーザによって定義することができる。上記のように、第1のトランスデューサと対象物の表面との間の距離は、制御部によって決定することができる。したがって、制御部は、ユーザ定義の事前定義された距離および距離の値に基づいて、第1のトランスデューサからの対象物の興味のある場所の距離を決定するように構成することができる。さらに、焦点距離、すなわち、第1のトランスデューサによって生成される焦点と第1のトランスデューサ自体との間の距離もまた利用可能である。これらのデータに基づいて、制御部は、焦点と対象物の興味のある場所との間の距離を表すデフォーカス値を決定するように構成することができる。したがって、制御部は、焦点が興味のある場所に近づく/一致するように、デフォーカス値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御することができる。
【0017】
さらなる実施形態によれば、超音波顕微鏡は、垂直方向に基本的に直交する横方向平面内で、対象物ホルダーに対して走査ヘッドを移動させるように構成された走査ヘッド位置決め装置をさらに備える。
【0018】
本実施形態によれば、走査ヘッドは、横方向平面内で走査ヘッド位置決め装置によって対象領域に対して移動することができる。これにより、制御部は、第1のトランスデューサを使用して対象物を分析しながら、走査ヘッドを対象領域に対して移動することにより、対象物を走査できる。
【0019】
別の実施形態によれば、制御部は、第1の検出信号に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成されたアナログ回路を備える。それにより、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直移動は、信号処理による遅延を最小限に抑え、高速で実行することができる。したがって、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを高速制御することにより、第1の音響パルスが適切に集束されたままの状態で、対象物を高速で走査することができる(すなわち、第1のトランスデューサが第1の検出信号を出力しながら、走査ヘッドは対象物に対して複数の位置に移動される)。
【0020】
別の実施形態によれば、制御部は、本明細書に開示される様々な動作を実行するためのデジタル回路を備える。
【0021】
別の実施形態によれば、制御部はさらに、第1の検出信号に基づいて対象物の高さプロファイルを決定するように構成され、「高さプロファイル」は、1つまたは複数の横方向に依存する垂直方向における対象物の範囲を示す。例えば、第1の検出信号に基づいて第1のトランスデューサと対象物との間の距離を表す距離の値を決定するように構成された超音波顕微鏡において、制御部は、距離の値に基づいて第1のトランスデューサの参照システムにおける高さプロファイルを決定するように構成することができる。第1のトランスデューサの参照システムにおける高さプロファイルを、別の参照システムにおける高さプロファイルにさらに変換することができる。例えば、第1のトランスデューサの参照システムにおける高さプロファイルは、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直位置に関する情報、すなわち走査ヘッドの参照システムにおける第1のトランスデューサの垂直位置に関する情報、をさらに使用することによって、走査ヘッドの参照システムに変換することができる。走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直位置に関する情報は、制御部によって第1のアクチュエータに提供される制御信号から取得することができ、制御信号は、第1のアクチュエータによって実行される垂直方向の動きを表す。代替的にまたは追加的に、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直位置に関する情報は、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直位置を測定し、対応する信号を出力する測定部によって取得することができる。
【0022】
第1の例として、制御部は、走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。したがって、走査ヘッド位置決め装置を使用して対象物を走査している間の走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直位置は、制御信号を介して制御部で利用可能である。さらに、走査ヘッド位置決め装置を使用して対象物を走査している間、第1のトランスデューサと対象物との間の垂直方向の距離は、上記のように決定することができる。走査ヘッドの垂直位置および第1のトランスデューサと対象物との間の垂直方向の距離に基づいて、制御部は、走査ヘッドの参照システムおよび走査ヘッド位置決め装置の参照システムにおける対象物の高さプロファイルを決定することができる。
【0023】
第2の例として、制御部は、対象物が横方向に走査されている間、事前定義された作動距離が第1のトランスデューサと対象物の表面との間に維持されるように、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。この例では、対象物の表面と第1のトランスデューサとの間の距離は(事前定義された作動距離のレベルで)基本的に一定のままであるため、高さプロファイルは制御信号から直接導出できる。
【0024】
別の実施形態によれば、制御部はさらに、走査ヘッドが複数の位置に配置されるように、走査ヘッド位置決め装置を制御するように構成される。走査ヘッドが複数の位置のうちの1つに配置されるたびに、制御部は、第1のトランスデューサに第1の音響パルスの少なくとも1つを放出させ、第2の音響パルスの少なくとも1つを検出させ、第1の検出信号を出力させる。制御部はさらに、複数の位置に関連して第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値を記憶し、1組の記憶した第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される。
【0025】
本実施形態によれば、制御部は、走査ヘッドが複数の位置に配置されるように走査ヘッド位置決め装置を制御するように構成される。すなわち、制御部は、走査ヘッド位置決め装置に走査ヘッドを移動させ、したがって第1のトランスデューサを複数の位置に配置させる。例えば、走査ヘッド位置決め装置は、対象領域に対して1つまたは複数の線などの経路に沿って移動させられ、その結果、対象物の複数の位置を経路に沿って分析することができる。
【0026】
走査ヘッドの複数の位置のそれぞれにおいて、制御部は、第1のトランスデューサに、第1の音響パルスの少なくとも1つを放出させ、第2の音響パルスの少なくとも1つを検出させ、第1の検出信号を出力させる。すなわち、走査ヘッドが複数の位置のうちの1つに配置されるたびに、対象物の位置は、第1の音響パルスの少なくとも1つを対象物に向け、対象物から出てくる第2の音響パルスを検出することによって分析され、それによって第1の検出信号は、走査ヘッドの複数の位置のそれぞれで少なくとも1回出力される。したがって、走査ヘッドを複数の位置に経路に沿って移動させながら、複数の第1の検出信号を得ることができる。
【0027】
上記の距離の値またはデフォーカス値などの複数の第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値は、走査ヘッドの複数の位置に関連して(または対象物の複数の位置に関連して)制御部によって記憶される。したがって、走査ヘッドの複数の位置のそれぞれに対して(または対象物の複数の位置のそれぞれに対して)、複数の検出信号または検出信号から導出された値のうちの1つが、第1のアクチュエータを制御するためのメモリで利用可能である。
【0028】
例えば、第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値は、上記の手順によって取得され、走査ヘッドの位置の第1セット(または対象物の位置の第1セット)のメモリに記憶することができる。走査ヘッドを、走査ヘッドの位置の第1セットの各位置とは異なる(または対象物の位置の第1セットの各位置とは異なる)第2の位置に移動する前に、制御部は、メモリに記憶された第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するための予測値を計算することができる。したがって、対象物が以前に分析されていない可能性がある第2の位置に走査ヘッドを移動する前であっても、第1のアクチュエータを、予測値に従ってすでに制御することができる。これにより、第1のトランスデューサを所定の作動距離に持っていくか、または近づけることができる、または走査ヘッドが第2の位置に移動される前または移動される間に、デフォーカス値がすでにかなり小さい可能性がある。これにより、対象物が走査されるときに、対象物に対して第1のトランスデューサを適切に配置するために必要な時間が短縮される。
【0029】
上記の実施形態におけるさらなる実施形態によれば、走査ヘッドの第2の位置について第1のアクチュエータを制御するための予測値を決定するために、メモリに記憶された検出信号または検出信号から導出された値のサブセットを使用することができる。サブセットは、第2の位置と、第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値の1つに関連する第1の位置のそれぞれとの間の距離に基づいて、制御部によって選択することができる。例えば、サブセットは、第1の位置に関連する第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値を含むように定義することができ、第1の位置のそれぞれは、事前定義された閾値距離値よりも小さい第2の位置までの距離を有する。事前定義された閾値距離値は、1μm未満、特に100nm未満、または10nm未満であり得る。本実施形態によれば、対象物が次に分析される第2の位置に近い走査ヘッドの位置で以前に得られた第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値が、第1のアクチュエータを制御するために使用される。予測値を決定するために、サブセットは、例えば、内挿、外挿などを使用して処理することができる。
【0030】
例えば、対象物は最初に粗く走査され、それによって対象物の粗い高さプロファイルを決定することができる。次に、対象物の粗い高さプロファイルを使用して、対象物が細かく走査されるときに、第1のアクチュエータによって提供される垂直方向の走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御することができる。例えば、対象物の表面上の特定の場所での対象物の高さの予測値は、例えば、内挿を使用して、粗い高さプロファイルに基づいて制御部によって決定することができる。続いて、走査ヘッドを動かして第1のトランスデューサを特定の場所に第1の音響パルスを放出する位置に配置すると、制御部は、走査ヘッドがその位置に到着したときに第1の音響パルスが適切に集束されるように、特定の場所の予測値に基づいて、垂直方向の適切な位置に第1のトランスデューサをすでに移動させることができる。したがって、対象物を迅速に走査することができる。
【0031】
垂直方向における第1のトランスデューサの動的挙動(すなわち、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの動き)を改善するために、第1のトランスデューサの重量を補償する重量補償装置を提供することができる。例えば、第1のトランスデューサの重量によって第1のアクチュエータに作用する力を補償する磁気ばねを提供することができる。重量補償装置によって、第1のアクチュエータによって動かされる有効質量が最小化され、その結果、第1のトランスデューサの動的挙動が改善される。特に、第1のトランスデューサは、重量補償装置が使用されない場合と比較して、より迅速に加速および減速することができる。重量補償装置の別の利点は、第1のトランスデューサの動的挙動が垂直方向の両方(上下)で基本的に同じであり、したがって第1のアクチュエータによる第1のトランスデューサの動的挙動の制御を簡略化できることである。
【0032】
別の実施形態によれば、超音波顕微鏡は、対象領域が第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間に位置するように、走査ヘッドによって支持される第2のトランスデューサをさらに備え、第2のトランスデューサは、対象物から出てくる第2の音響パルスを検出し、第2のトランスデューサによって検出された第2の音響パルスを表す第2の検出信号を出力するように構成される。
【0033】
本実施形態によれば、第1および第2のトランスデューサは超音波顕微鏡に設けられ、それにより、対象物から反射された第2の音響パルスは第1のトランスデューサによって検出することができ、一方、対象物を透過した第2の音響パルスは第2のトランスデューサによって検出することができる。これにより、対象物をより正確に検査できる。
【0034】
上記の実施形態における別の実施形態によれば、超音波顕微鏡は、垂直方向に基本的に直交する横方向に沿って、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを移動させるように構成された第2のアクチュエータをさらに備えることができ、制御部はさらに、第2の検出信号に基づいて、第2のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの横方向の動きを制御するように構成される。
【0035】
上記の第1のアクチュエータは、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを垂直方向に沿って移動させるように構成されるが、第2のアクチュエータは、基本的に垂直方向に直交し、特に垂直方向に直交する横方向に沿って走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを移動させるように構成される。横方向に沿って走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを移動させることにより、第1の音響パルスを放出する第1のトランスデューサと、対象物を透過した第2の音響パルスを検出する第2のトランスデューサとを、横方向に沿って互いに対して整列させることができる。例えば、制御部は、第2の検出信号の強度が最大になるように、第2の検出信号に基づいて、第2のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの横方向の動きを制御するように構成することができる。第2の検出信号の強度が最大化されるとき、第1のトランスデューサによって生成される第1の音響パルスの焦点は、横方向の第2の音響パルスを検出するための第2のトランスデューサの焦点と一致するとみなすことができる。これにより、2番目の検出信号の信号対雑音比が向上し、したがって対象物の検査の精度が向上する。
【0036】
追加的にまたは代替的に、制御部は、第2の検出信号の周波数領域表現を計算し、第2の検出信号の周波数領域表現に基づいて、第2のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの横方向の動きを制御するように構成することができる。特に、第2の検出信号の周波数領域振幅分布および第2の検出信号の帯域幅は、制御部が第2の検出信号の周波数領域振幅分布および/または第2の検出信号の帯域幅に基づいて、第2のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの横方向の動きを制御するように構成することができるように、整列のために適切な量とすることができる。具体的な例として、横方向の第2のトランスデューサに対する第1のトランスデューサの粗い整列は、時間領域における第2の検出信号の強度を使用することによって達成することができ、一方、細かい整列は、第2の検出信号の周波数領域表現、第2の検出信号の周波数領域振幅分布、および第2の検出信号の帯域幅のうちの少なくとも1つを使用することによって達成することができる。
【0037】
上記の実施形態における別の実施形態によれば、超音波顕微鏡は、走査ヘッドに対して第2のトランスデューサを垂直方向に沿って移動させるように構成された第3のアクチュエータをさらに備えることができる。したがって、第2のトランスデューサ、したがって第2のトランスデューサによって第2の音響パルスを検出するための焦点は、走査ヘッドに対して、したがって、第1のトランスデューサおよびその焦点に対して、第3のアクチュエータによって垂直方向に沿って移動させることができる。したがって、第1のトランスデューサによって生成された焦点と第2のトランスデューサによって生成された焦点は、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御する制御部によって、垂直方向に沿って一致させることができる。さらに、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間の垂直距離は、第1および第3のアクチュエータを制御するように構成された制御部によって制御することができる。
【0038】
上記の実施形態における一実施形態によれば、第3のアクチュエータは、第1の検出信号に基づいて、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成される。制御部が、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するようにも構成されていると仮定すると、制御部は、第1の検出信号に基づいて、第1のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するための制御信号を生成するように構成することができる。例えば、制御信号は、対象物と第1のトランスデューサとの間の垂直距離が、対象物の走査中に基本的に一定のままであるように生成することができる。第1の検出信号および/または第1の検出信号から導出された制御信号は、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するために、制御部によって使用することができる。例えば、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間の垂直距離は、対象物の走査中に所定の値に維持することができる。例えば、制御部は、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサ間の距離が、対象物の走査中に基本的に一定のままであるように、第1の検出信号(および/または制御信号)に基づいて、第1および第3のアクチュエータによってそれぞれ提供される第1および第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。これは、対象物が少なくとも1つのレイヤーで構成され、わずかに曲がっている場合に特に便利である。制御部が、対象物の走査中に第1の音響パルスが対象物の表面(またはそれに関連する別の事前定義された経路)に焦点を合わせたままであるように、第1のアクチュエータによって提供される第1のトランスデューサの垂直方向の動きを制御する間、対象物の走査中に第1および第2のトランスデューサの両方の焦点が基本的に一致するように、第1と第2のトランスデューサの間の距離は(第1の検出信号または制御信号に基づいて第3のトランスデューサを制御することによって)基本的に一定に維持される。
【0039】
追加的にまたは代替的に、制御部は、第2の検出信号に基づいて、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。例えば、制御部は、第2の検出信号の強度が最大化されるように第3のアクチュエータを制御するように構成することができる。第2の検出信号の強度が最大化されるとき、第1のトランスデューサによって生成される焦点および第2のトランスデューサによって生成される焦点は、垂直方向に関して一致すると想定することができる。したがって、第2の検出信号の信号対雑音比を向上することができ、これにより、対象物の検査の精度が向上する。
【0040】
追加的にまたは代替的に、制御部は、第2の検出信号の周波数領域表現を計算し、第2の検出信号の周波数領域表現に基づいて、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができる。特に、第2の検出信号の周波数領域振幅分布および第2の検出信号の帯域幅は、制御部が第2の検出信号の周波数領域振幅分布および/または第2の検出信号の帯域幅に基づいて、第3のアクチュエータによって提供される走査ヘッドに対する第2のトランスデューサの垂直方向の動きを制御するように構成することができるように、整列のために適切な量とすることができる。具体的な例として、垂直方向の第2のトランスデューサに対する第1のトランスデューサの粗い整列は、時間領域における第2の検出信号の強度を使用することによって達成することができ、一方、細かい整列は、第2の検出信号の周波数領域表現、第2の検出信号の周波数領域振幅分布、および第2の検出信号の帯域幅のうちの少なくとも1つを使用することによって達成することができる。
【0041】
別の実施形態によれば、超音波顕微鏡は、走査ヘッドに対して対象物ホルダーを垂直方向に沿って移動させるように構成された第4のアクチュエータをさらに備え、制御部はさらに、対象物を垂直方向に第1のアクチュエータによって生成された焦点に対して可変的に配置することができるように、第4のアクチュエータを制御するように構成される。
【0042】
本実施形態によれば、第4のアクチュエータは、走査ヘッドに対して、したがって、第1のトランスデューサによって生成された第1の音響パルスの焦点に対して、対象物ホルダーを移動させるために提供される。第1のトランスデューサと第2のトランスデューサの互いに対する位置、したがって、第1のトランスデューサによって生成された焦点および第2のトランスデューサによって生成された焦点の互いに対する位置が維持されている間、対象物に対して第1のトランスデューサによって生成される焦点の位置は、走査ヘッドに対して対象物ホルダーを垂直方向に沿って動かす第4のアクチュエータを使用して可変的に設定することができる。したがって、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの整列が維持されている間、分析される対象物の位置は、第4のアクチュエータを使用して容易に変更することができる。これにより、第1および第2のトランスデューサの制御に関して追加の経費なしに、垂直方向に沿って分析される対象物の位置を設定するための効果的な方法が提供される。なお、横方向に沿って分析される対象物の位置も、第1および第2のトランスデューサの両方を、横方向に沿って走査ヘッドに対して移動させるように構成された走査ヘッド位置決め装置によって、第1および第2のトランスデューサの相対的な位置を維持しながら、容易に変更することができる。
【0043】
別の実施形態によれば、走査ヘッド位置決め装置は、走査ヘッドを最大で第1の変位値だけ変位させるように構成され、第2のアクチュエータは、走査ヘッドに対して最大で第2の変位値だけ第1のトランスデューサを変位させるように構成され、第1の変位値と第2の変位値との比は、少なくとも10、特に少なくとも100または少なくとも1000である。
【0044】
本実施形態によれば、走査ヘッド位置決め装置および第2のアクチュエータの両方が、横方向の動きを実行するように構成される。特に、走査ヘッド位置決め装置は、横方向に走査ヘッドを対象領域に対して移動するように構成され、第2のアクチュエータは、走査ヘッドに対して第1のトランスデューサを横方向に移動させるように構成される。第1の変位値は、2番目の変位値よりもはるかに大きい。したがって、走査ヘッド位置決め装置は、対象物に対する走査ヘッド全体の大きな変位に使用され、一方第2のアクチュエータは、第1および第2のトランスデューサの整列などの小さな変位に使用される。
【0045】
別の実施形態によれば、超音波顕微鏡は、第1のトランスデューサと対象物との間に浸漬液の絶え間ない接続を提供するように構成された浸漬装置をさらに備えることができる。超音波顕微鏡が第2のトランスデューサも備える実施形態では、浸漬装置は、第2のトランスデューサと対象物との間に浸漬液の絶え間ない接続を提供するようにさらに構成することができる。
【0046】
浸漬液は、室温例えば20℃に近い液体であり得る。浸漬液は、水、油、液体金属および液体金属合金のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0047】
第1のトランスデューサと対象物との間および第2のトランスデューサと対象物との間の浸漬液の絶え間ない接続は、それぞれの焦点を生成するためのより大きな開口数を得ることを可能にし、したがって解像度を向上させる。
【0048】
異なる種類の浸漬装置を使用することができる。例えば、浸漬装置は、噴流発生装置を備えることができ、噴流発生装置は、第1のトランスデューサと対象物(対象領域)との間の浸漬液の第1の絶え間ない噴流および/または第2のトランスデューサと対象物(対象領域)との間の浸漬液の第2の絶え間ない噴流を発生させるように構成することができる。噴流発生装置は、走査ヘッドに取り付けることができる。噴流発生装置は超音波顕微鏡に複雑さを加えるが、関連技術で知られているように、第1のトランスデューサも第2のトランスデューサも浸漬液の浴槽内で動かしてはいけない。浸漬液の浴槽内で第1および/または第2のトランスデューサを動かすことは、一般に、第1および/または第2のトランスデューサを対象物に対して動かすことができる速度を低下させる。さらに、第1および/または第2のトランスデューサを浸漬液の浴槽内で動かす必要性を回避することにより、流体抵抗(抗力)の問題を回避することができる。
【0049】
別の例によれば、浸漬装置は、浸漬液を収容するための容器を備えることができる。対象領域が部分的に浸漬液内に位置するように、容器を浸漬液で満たすことができる。すなわち、対象領域内の対象物が部分的に浸漬液内に位置するように、容器を浸漬液で満たすことができる。
【0050】
この例では、第1のトランスデューサが対象領域の上方の垂直方向に配置され、第2のトランスデューサが対象領域の下方の垂直方向に配置されていると仮定すると、第2のトランスデューサによって検出された第2の検出パルスは、容器によって規定された浸漬液の浴槽中を伝播する。この例は、第1のトランスデューサと対象物との間に浸漬液の第1の絶え間ない噴流を発生させるように構成された上記の噴流発生装置を提供することによって改善することができる。この例のさらなる改善は、第2のトランスデューサと対象物との間に浸漬液の第2の絶え間ない噴流を発生させるように構成された上記の噴流発生装置をさらに提供することによって達成することができ、それにより、第2のトランスデューサと対象物との間の微小(空気)気泡を除去することができる。
【0051】
さらに別の例によれば、対象領域の上方の第1のトランスデューサが少なくとも部分的に浸漬液内、すなわち容器によって提供される浸漬液の浴槽内に位置するように、容器を浸漬液で満たすことができる。この例によれば、第1および第2のトランスデューサの両方が、容器に含まれる浸漬液内に少なくとも部分的に配置されているため、噴流発生装置は必要ではない。しかしながら、浸漬装置は、第1および/または第2のトランスデューサと対象物との間の浸漬液内の微小(空気)気泡を除去するための上記の噴流発生装置を依然として備えることができる。
【0052】
別の実施形態によれば、第1のトランスデューサは、対象領域の上方に配置される。この実施形態の例では、第1のトランスデューサは、垂直方向に、対象領域の上方に、したがって、対象領域内に置くことができる対象物の上方に配置される。垂直方向は、第1の音響パルスの放出方向に基本的に平行な方向として定義される。しかしながら、垂直方向はまた、超音波顕微鏡の重力の方向に基本的に逆平行である方向として定義することもできる。
【0053】
別の実施形態によれば、第1のトランスデューサは、第1の音響パルスが閾値周波数を超える音響周波数を有するように、第1の音響パルスを放出するように構成され、閾値周波数は、複数の閾値周波数のグループから選択され、複数の閾値周波数のグループは、10MHzと15MHzで構成される。
【0054】
本発明の別の態様によれば、超音波顕微鏡の音響パルストランスデューサを浸漬液内で運ぶキャリアが提供され、キャリアは浸漬液内に配置される第1の部分と、浸漬液の外側に配置される第2の部分とを備え、第1の部分は、浸漬液が第1の部分を通って流れることを可能にする開口部を有する固体構造を含み、第1の値は、第1の部分の断面における開口部の総面積を表し、第2の値は、第1の部分の断面における固体構造の総面積を表し、第1の値と第2の値との比は5より大きく、特に10より大きく、より特に20より大きい。
【0055】
上記のキャリアは、上記で定義された超音波顕微鏡の1つの音響パルストランスデューサを運ぶために使用することができる。例えば、上記の超音波顕微鏡の実施形態では、第1のトランスデューサが対象領域の上方の垂直方向に配置され、第2のトランスデューサが対象領域の下方の垂直方向に配置され、容器が提供され対象領域まで浸漬液で満たされ、走査ヘッドが対象領域に対して移動すると、第2のトランスデューサは浸漬液中で移動する。したがって、抗力は第2のトランスデューサと第2のトランスデューサを運ぶキャリアに作用する。つまり、第2のトランスデューサはキャリアを介して走査ヘッドによって支持される。上記のキャリアは、キャリアの第1の部分の固体構造の開口部によって最小化された抗力を提供する。これらの開口部は、浸漬液がキャリアを通って、特にキャリアの第1の部分を通って流れることを可能にする。したがって、浸漬液内でキャリアを移動させるときにキャリアに作用する抗力は、キャリアの上記の構造によって最小限に抑えられる。したがって、第2のトランスデューサおよびキャリアは、浸漬液を通って迅速に移動することができ、これにより、対象物の迅速な検査が可能になる。
【0056】
キャリアの第1の部分は、断面において少なくとも10cm、特に少なくとも30cmの長さを有することができ、断面において1m以下、特に60cm以下の長さを有することができる。つまり、キャリアのかなり長い側が断面で表される。特に、断面は、対象領域に対して走査ヘッドを移動させるために使用される方向に直交して配置することができる。たとえば、対象物をライン毎に走査して対象物を検査すると仮定すると、断面はラインの方向に直交するように選択される。したがって、断面は、キャリアが浸漬液を通って移動するときに抗力が作用するキャリアの面を表す。
【0057】
一実施形態によれば、キャリアの固体構造は、第1の部分が浸漬液中で移動するときに基本的に揚力および/または抗力が発生しないように形作られている。超音波顕微鏡の説明の用語では、固体構造は、走査ヘッドが横方向に移動したときの揚力によって、垂直方向に沿った力がキャリアおよび第2のトランスデューサに作用しないように形作られている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本開示の前述のおよび他の有利な特徴は、添付の図面を参照する例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。なお、すべての可能な実施形態が、本明細書で特定される利点のそれぞれおよびすべて、またはいずれかを必ずしも示すわけではない。
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波顕微鏡を模式的に示す。
図2図2は、超音波顕微鏡と対象物の相互作用を模式的に示す。
図3図3は、第1の実施形態に係る超音波顕微鏡の構成要素のブロック図を示す。
図4図4は、超音波顕微鏡の構成要素によって発生した焦点の整列を模式的に示す。
図5図5は、焦点の整列に使用される時間領域と周波数領域の信号の例を示す。
図6図6は、超音波顕微鏡の第1のアクチュエータを制御する例を示す。
図7図7は、第2の実施形態に係る超音波顕微鏡を模式的に示す。
図8図8は、第3の実施形態に係る超音波顕微鏡を模式的に示す。
図9図9は、超音波顕微鏡用のキャリアの斜視図を示す。
図10図10は、図9のキャリアの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に説明する例示的な実施形態では、機能および構造が同様の構成要素は、可能な限り同様の参照番号を付している。したがって、特定の実施形態の個々の構成要素の特徴を理解するために、他の実施形態の説明および本開示の要約を参照する必要がある。
【0060】
図1は、対象物3を検査するための超音波顕微鏡1の第1の実施形態を示す。超音波顕微鏡1は、対象物3を対象領域7に保持するように構成された対象物ホルダー5を備える。超音波顕微鏡1は、対象領域7に対して移動可能な走査ヘッド9をさらに備える。超音波顕微鏡1は、第1のアクチュエータ13および第2のアクチュエータ15を介して走査ヘッド9によって支持される第1のトランスデューサ11をさらに備える。第1のトランスデューサ11は、図2を参照してより詳細に説明される。
【0061】
図2は、超音波顕微鏡1と対象物3との相互作用を模式的に示す。第1のトランスデューサ11は、第1の音響パルス17(矢印で模式的に示されている)を放出するように構成される。第1のトランスデューサ11は、第1の音響パルスを表す矢印の方向によって表される放出方向に沿って第1の音響パルス17を放出する。さらに、第1のトランスデューサ11は、三角形の先端によって示される焦点20に第1の音響パルス17を集束させる。
【0062】
第1の音響パルスが対象物3に向けられると、第2の音響パルスが対象物3から出てくる。対象物から第1のトランスデューサに向かって出てくる第2の音響パルスの例は、矢印21によって表される。そのような第2の音響パルスは、(部分的に)対象物によって反射され得る。
【0063】
第1のトランスデューサ11はさらに、対象物3から出てくる第2の音響パルスを検出するように構成される。さらに、第1のトランスデューサ11は、第1のトランスデューサ11によって検出された第2の音響パルスを表す第1の検出信号S1を出力するように構成される。焦点20は、第1のトランスデューサの検出部にも適用される。
【0064】
再び図1を参照すると、第1のアクチュエータ13は、矢印で示される垂直方向23に沿って走査ヘッド9に対して第1のトランスデューサ11を移動させるように構成される。垂直方向は、第1の音響パルスの放出方向に基本的に平行である。特に、本例では、垂直方向は、第1の音響パルスの放出方向に平行である。
【0065】
第2のアクチュエータ15は、矢印で示される横方向25に沿って、走査ヘッド9に対して第1のトランスデューサ11を移動させるように構成される。横方向は基本的に垂直方向に直交する。
【0066】
超音波顕微鏡1は、対象領域7が第1のトランスデューサ11と第2のトランスデューサ27との間に位置するように、走査ヘッド9によって支持される第2のトランスデューサ27をさらに備える。再び図2を参照すると、第2のトランスデューサ27は、対象物3から第2のトランスデューサ27に向かって出てくる第2の音響パルスを検出するように構成される。対象物3を透過し第2のトランスデューサ27に向かう第2の音響パルスの例は、矢印29によって表される。第2のトランスデューサ27はさらに、第2のトランスデューサ27によって検出された第2の音響パルスを表す第2の検出信号S2を出力するように構成される。第2のトランスデューサは、三角形の先端28によって表される検出のための焦点28を提供する。
【0067】
再び図1を参照すると、第2のトランスデューサ27は、第3のアクチュエータ31およびキャリア33を介して走査ヘッド9によって支持される。特に、第2のトランスデューサ27は、それ自体が第3のアクチュエータ31を介して走査ヘッド9によって支持されるキャリア33にしっかりと接続されている。第3のアクチュエータ31は、走査ヘッド9に対して第2のトランスデューサ27を垂直方向23に沿って移動させるように構成される。
【0068】
超音波顕微鏡1は、第1のトランスデューサ11と対象物3との間に浸漬液37の絶え間ない接続を提供するように構成された浸漬装置35をさらに備える。さらに、浸漬装置35は、第2のトランスデューサ27と対象物3との間に浸漬液37の絶え間ない接続を提供するように構成される。
【0069】
浸漬装置35は、浸漬液37を収容するための容器39を備える。容器39は、浸漬液37が保持される容積を提供する。さらに、容器39は、対象領域7および第2のトランスデューサ27が上記容積内に配置され、第1のトランスデューサ11が少なくとも部分的に上記容積内に配置されるように構成され配置される。上記容積は浸漬液37で満たすことができるので、容器39は、対象物3と第1のトランスデューサ11との間の絶え間ない接続、および対象物3と第2のトランスデューサ27との間の絶え間ない接続を提供する。
【0070】
超音波顕微鏡1は、走査ヘッド9に対して対象物ホルダー5を垂直方向23に沿って移動させるように構成された第4のアクチュエータ41をさらに備える。第4のアクチュエータ41により、対象物3を、第1のトランスデューサ11および第2のトランスデューサ27に対して同時に変位させることができ、これにより、対象物内の焦点を垂直方向23に容易に設定/変更することができる。
【0071】
図3は、超音波顕微鏡1の構成要素のブロック図を示す。特に、図3は、超音波顕微鏡1の制御部43に接続された第1のアクチュエータ13、第2のアクチュエータ15、第3のアクチュエータ31、および第4のアクチュエータ41を示す。さらに、第1のトランスデューサ11および第2のトランスデューサ27は、制御部43に接続されている。制御部は、メモリ51を備える。
【0072】
超音波顕微鏡1は、制御部43に接続された走査ヘッド位置決め装置45をさらに備える。走査ヘッド位置決め装置は、垂直方向23に基本的に直交する横方向平面内で、走査ヘッド9を対象物ホルダー5に対して、したがって、対象物3に対して移動させるように構成される。したがって、横方向平面はまた、図1において数字25によって示される。図1の図面を簡略化するために、走査ヘッド位置決め装置45は図示されていない。しかしながら、走査ヘッド位置決め装置45は、走査ヘッド9、したがって、第1のトランスデューサ11および第2のトランスデューサ27を横方向平面25内で移動させるように構成される。
【0073】
再び図1を参照すると、走査ヘッド位置決め装置45は、最大で距離D1によって示される第1の変位値だけ走査ヘッド9を変位させるように構成される。第2のアクチュエータ15は、走査ヘッド9に対して、最大で距離D2によって示される第2の変位値だけ第1のトランスデューサ11を変位させるように構成される。第1の変位値D1と第2の変位値D2との比は、例えば、少なくとも10であり得る。すなわち、走査ヘッド位置決め装置45を使用して、対象物3に対して第1のトランスデューサ11を大幅に変位させることができ、一方、第2のアクチュエータ15を使用して、対象物3に対して第1のトランスデューサ11をわずかに変位させることができる。
【0074】
以下に、制御部43の構成をより詳細に説明する。制御部43は、第1の検出信号S1に基づいて第1のアクチュエータ13を制御するように構成される。特に、図2を参照すると、制御部43は、第1のトランスデューサ11に第1の音響パルス17を放出させるように構成することができる。第1のトランスデューサ11と対象物3、特に対象物3の表面47との間の距離Hは、第1のトランスデューサ11から表面47への第1の音響パルスの伝播時間、および表面47から第1のトランスデューサ11への(反射された)第2の音響パルスの伝播時間に基づいて決定することができる。すなわち、距離Hは、第1のトランスデューサ11から放出され、表面47で反射され、第1のトランスデューサ11によって検出される音響パルスの飛行時間を使用して決定することができる。音速などのさらなるパラメータ、音速に対する第1のトランスデューサ11と対象物3との間の媒体(例えば、空気または浸漬液37)の影響を説明するパラメータ、音速に対する対象物3の材料の影響を説明するパラメータ等をメモリ51に記憶し、距離Hを決定するために使用することができる。したがって、制御部43は、距離Hを表す距離の値を決定し、決定された距離の値に基づいて第1のアクチュエータ13を制御するように構成することができる。
【0075】
特に、制御部43は、第1のトランスデューサ11と対象物3との間の距離H、特に第1のトランスデューサ11と対象物3の表面47との間の距離が事前定義された作動距離H0に近づくように第1のアクチュエータ13を制御するように構成することができる。図2に示される例では、事前定義された作動距離H0は、第1のトランスデューサ11の焦点距離に等しい、すなわち、第1のトランスデューサ11と焦点20との間の距離に等しい。この設定は、特定の分析対象49が配置され得る場所で、対象物3の表面47が検査される場合に使用することができる。
【0076】
制御部43は、距離Hを表す距離の値を決定するように構成されるので、制御部はまた、第1のアクチュエータ13を制御して、第1のトランスデューサ11を走査ヘッド9に対して、したがって対象物3に対して移動させるように構成することができ、距離Hが事前定義された作動距離H0に近づく。
【0077】
距離Hが事前定義された作動距離H0に近づくように制御する代わりに、制御部は、決定された距離の値Hに基づいて、焦点20と対象物3の興味のある場所との間の距離Oを表すデフォーカス値を決定するように構成することができる。図2に示される例では、興味のある場所は、対象物3の表面47と一致する。しかしながら、対象物3内の他の場所もまた、興味のある場所であり得る。
【0078】
例えば、制御部43は、第1のトランスデューサ11の焦点距離、すなわち、第1のトランスデューサ11と焦点20との間の距離を表す値をメモリ51に記憶することができる。この値および事前に決定された距離の値Hに基づいて、制御部は、距離Oを表すデフォーカス値を決定し、デフォーカス値に基づいて第1のアクチュエータ13を制御するように構成することができる。
【0079】
制御部43の構成の詳細は、図4を参照して説明される。図4に示される状況では、第1のトランスデューサ11によって生成された焦点20および第2のトランスデューサ27の焦点28は、横方向25および垂直方向23において互いに対して変位している。対象物3を検査するための最高の精度は、両方の焦点が一致するときに得られる。両方の焦点を一致させるために、制御部43は、第2のトランスデューサ27によって出力された第2の検出信号S2に基づいて第2のアクチュエータ15を制御するように構成することができる。上記のように、第2のアクチュエータ15は、第1のトランスデューサ11を走査ヘッド9に対して横方向25に移動させるように構成される。したがって、第2のアクチュエータ15は、横方向に沿った焦点20と28との間の変位が最小化されるように、第1のトランスデューサ11、したがって第1のトランスデューサ11の焦点20を横方向25に移動させることができる。したがって、制御部43は、第1のトランスデューサ11が横方向25に沿って第2のトランスデューサ27と整列するように、第2のアクチュエータ15を制御するように構成することができる。特に、これは、第2の検出信号S2の強度が最大化されるように、制御部43が第2のアクチュエータ15を制御するように構成されるという点で達成することができる。第2の検出信号S2の強度を最大化することにより、横方向25における焦点20と28との間の変位が最小化される。
【0080】
さらに、制御部43は、垂直方向23における焦点20と28との間の変位を最小化するために、第2の検出信号S2に基づいて第3のアクチュエータ31を制御するように構成することができる。例えば、これは、第2の検出信号S2の強度が最大化されるように、制御部43が第3のアクチュエータ31を制御するように構成されるという点で達成することができる。第2の検出信号S2の強度を最大化することにより、焦点20と28との間の垂直方向の変位が最小化される。
【0081】
図5を参照して、第2の検出信号S2に基づいて制御部によって実行される、第1のトランスデューサ11および第2のトランスデューサ27の互いに対する整列、および焦点20および28の互いに対する整列がより詳細に説明される。
【0082】
グラフG1Tは、第1のトランスデューサ11と第2のトランスデューサ27が正しく整列されていないとき、すなわち焦点20と28が決して一致していないときの時間領域における第2の検出信号S2の例示的な表現を示す。グラフG1Fは、グラフG1Tに示されている信号の周波数領域表現を示す。
【0083】
グラフG2Tは、第1のトランスデューサ11と第2のトランスデューサ27が普通に整列しているとき、すなわち焦点20および28が互いに近接しているとき、例えば、100μm離れているときの時間領域における第2の検出信号S2の例示的な表現を示す。グラフG2Fは、グラフG2Tに示されている信号の周波数領域表現を示す。
【0084】
グラフG3Tは、第1のトランスデューサ11と第2のトランスデューサ27が良く整列しているとき、すなわち焦点20および28が基本的に一致しているときの時間領域における第2の検出信号S2の例示的な表現を示す。グラフG3Fは、グラフG3Tに示されている信号の周波数領域表現を示す。
【0085】
時間領域における第2の検出信号S2(グラフG1T、G2T、G3T)、特にその最大値、強度の値などは、焦点20および28の整列の品質を表す量として使用することができる。ただし、量の定量化された解釈を実現するのは難しい場合があるため、時間領域の信号は粗い整列に最適に使用される。周波数領域(グラフG1F、G2F、G3F)における第2の検出信号S2、特にその振幅スペクトル(たとえば、30から80MHzの成分)と帯域幅により、より正確でより簡単な解釈が可能になる。グラフG1F、G2F、G3Fから理解できるように、周波数領域における第2の検出信号S2の帯域幅は、整列が改善するにつれて増加する。また、周波数領域の第2の検出信号S2のより高い周波数成分(例えば、30から80MHzの成分)の振幅は、整列が改善するにつれて増加する。したがって、周波数領域の信号は、細かい整列に最適に使用される。
【0086】
再び図1を参照すると、制御部43は、対象物3を焦点20に対して垂直方向23に可変的に配置することができるように、第4のアクチュエータ41を制御するようにさらに構成することができる。したがって、対象物3を、第4のアクチュエータ41を制御することによって、焦点20に対して変位させることができる。
【0087】
図6は、超音波顕微鏡1の第1のアクチュエータ13を制御する別の例を示す。上記のように、走査ヘッド位置決め装置45は、走査ヘッド9を対象物ホルダー5に対して横方向平面内で、横方向25に移動させるように構成されている。したがって、制御部43は、走査ヘッド位置決め装置45を制御して、走査ヘッド9、したがって第1のトランスデューサ11を複数の位置x1、x2、およびx3に次々に移動させるように構成される。図6に示されるように、対象物3の表面47は、横方向25に平行に向けられていない可能性がある。対象物3の表面47を分析する場合、対象物3の走査中、すなわち、第1のトランスデューサ11が複数の位置x1、x2、およびx3への移動する間、第1のトランスデューサ11の焦点20は、所望の精度を達成するために、対象物3の表面47と一致するように制御されなければならない。
【0088】
図6に示される例として、第1のトランスデューサ11は、最初に位置x1で横方向25に配置され、第1のアクチュエータ13は、焦点20が対象物3の表面47と一致するように制御される。走査ヘッド9が、第1のトランスデューサ11が位置x1で横方向25に配置されるように配置されると、制御部43は、第1のトランスデューサ11に第1の音響パルスの少なくとも1つを放出させ、第2の音響パルスの少なくとも1つを検出し、第1の検出信号S1を出力する。制御部43はさらに、第1の検出信号S1または第1の検出信号S1から導出された値を、メモリ51内の位置x1に関連して記憶するように構成される。
【0089】
走査を進めるとき、例えば、走査ヘッド9を横方向25に動かして第1のトランスデューサ11を位置x2に動かすことによって、メモリ51に記憶された第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値を使用して、第1のアクチュエータ13を制御することができる。例えば、第1のトランスデューサ11が位置x2にあるとき、第1のアクチュエータ13は、第1のトランスデューサ11が位置x1にある場合と比較してわずかに異なるように、制御されなければならないと仮定することができる。メモリ51に記憶された第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値に基づいて、第1のトランスデューサ11を位置x2に移動する前であっても、次の位置x2で第1のアクチュエータ13を制御するための予測値を制御部によって決定することができる。
【0090】
第1のトランスデューサ11が位置x2に移動した後、制御部43は、第1のトランスデューサ11にさらに別の第1の音響パルスを放出させ、さらに別の第2の音響パルスを検出し、さらに別の第1の検出信号S1を出力する。この検出信号またはこの検出信号から導出された値は、位置x2に関連してメモリ51に記憶される。
【0091】
メモリ51に記憶された第1の検出信号または第1の検出信号から導出された値に基づいて、第1のトランスデューサ11を位置x3に移動する前であっても、次の位置x3で第1のアクチュエータ13を制御するための新しい予測値を制御部によって決定することができる。予測値は、第1のトランスデューサ11が位置x3に配置されたときに、第1のアクチュエータ13を制御するための実際の値に近づく値を表す。しかしながら、予測値は、事前に、すなわち、第1のトランスデューサ11が位置x3に配置される前に計算される。
【0092】
図7は、超音波顕微鏡101の第2の実施形態を示す。超音波顕微鏡101は、浸漬装置の構成のみが超音波顕微鏡1と異なる。したがって、第1の実施形態のものと同一である超音波顕微鏡101の構成要素に関して、第1の実施形態の説明が参照される。超音波顕微鏡101は、浸漬装置135を備える。浸漬装置135は、第1の実施形態の容器39と同様の容器139を備える。しかしながら、容器139は、対象領域7が容器139によって規定された容積内に部分的に配置され、浸漬液37で満たされるように構成され配置される。
【0093】
浸漬装置135は、第1のトランスデューサ11と対象物3との間に浸漬液の第1の絶え間ない噴流143を発生させるように構成された噴流発生装置141をさらに備える。したがって、第1の実施形態について提示されたものと同じ効果が、第2の実施形態でも達成される。
【0094】
図8は、本発明の第3の実施形態を示す。図8は、浸漬装置の構成のみが第1の実施形態の超音波顕微鏡1と異なる超音波顕微鏡201を示す。したがって、第1の実施形態のものと同一である超音波顕微鏡201の構成要素に関して、第1の実施形態の説明が参照される。超音波顕微鏡201は、第1のトランスデューサ11と対象物3との間に浸漬液の第1の絶え間ない噴流243を発生させ、対象物3と第2のトランスデューサ27との間に浸漬液の第2の絶え間ない噴流245を発生させるように構成された噴流発生装置241を含む浸漬装置235を備える。浸漬装置235は、噴流発生装置241によって出力された浸漬液37を保持するように構成され配置された容器239をさらに備える。したがって、第1の実施形態について提示されたものと同じ効果が、第3の実施形態でも達成される。
【0095】
図9は、超音波顕微鏡の音響パルストランスデューサを浸漬液内で運ぶためのキャリア301の斜視図を示す。キャリア301は、図1、6および7に示されるキャリア33として使用することができる。したがって、キャリア301は、走査ヘッド9によって第2のトランスデューサ27を支持するため第2のトランスデューサ27を運ぶように構成することができる。
【0096】
図10は、キャリア301の断面を示す。その断面は、走査ヘッド9が対象物ホルダー5に対して移動するときに、キャリア301が浸漬液37を通って移動する方向に直交するように定義することができる。
【0097】
キャリア301は、浸漬液37内に配置される第1の部分303と、浸漬液37の外側に配置される第2の部分305とを備える。
【0098】
第1の部分303は、浸漬液37が第1の部分303を通って流れることを可能にする開口309を有する固体構造307を備える。第1の部分303の面は、その面に作用する抗力の観点から特徴付けることができる。例えば、図10に示される断面における開口部309の総面積は、第1の値によって表すことができ、同じ断面における固体構造307の総面積は、第2の値によって表すことができる。キャリア301の第1の部分303、特に固体構造307は、第1の値と第2の値との比が特定の閾値よりも大きくなるように構築することができる。特定の閾値が大きいほど、浸漬液37を通って移動するときにキャリア301に作用する抗力は少なくなる。特定の閾値は5より大きく、特に10より大きく、特に20より大きくてもよい。したがって、第1の部分に作用する抗力は、固体構造307の構成によって最小化される。
【0099】
断面における第1の部分303の長さLは、10cmから1mの間、特に30cmから60cmの間であり得る。
【0100】
さらに、固体構造307は、第1の部分303が浸漬液37中を図10に示される断面に直交する方向に移動するときに、固体構造307に基本的に揚力が作用しないように形作ることができる。したがって、第2のトランスデューサ27の焦点28の位置は、キャリア301が浸漬液37中の対象物3に対して移動するとき、垂直方向23において変更されない。
【0101】
本開示は、その特定の例示的な実施形態に関して説明してきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には容易に理解されることは明白である。したがって、本明細書に記載の本開示の例示的な実施形態は、例示を意図するものであり、決して限定するものではない。以下の特許請求の範囲で定義される本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
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図10