(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002906
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】認知機能低下推定システム及び認知機能低下推定方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20231228BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056511
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2022101333
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】荒井 良太
(72)【発明者】
【氏名】小田原 健雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】利用者の認知機能の低下の推定を好適に行うことができる認知機能低下推定システム及び認知機能低下推定方法を提供する。
【解決手段】建物(住宅H)の利用者Aの認知機能の低下を推定する認知機能低下推定システム1であって、利用者Aのエネルギー消費行動に伴って変化する建物(住宅H)内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得部(電力センサ10、ガスセンサ20、流量センサ30)と、利用者Aのエネルギー消費行動ごとに設定された配点を記憶している記憶部41と、予め設定された監視期間内においてデータ取得部が取得した消費量データと、配点と、に基づいて、利用者Aの行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出部(制御部42)と、監視期間ごとに得られたスコアに関するデータの推移を示す推移データを用いて、利用者Aの認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定部(制御部42)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の利用者の認知機能の低下を推定する認知機能低下推定システムであって、
前記利用者のエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得部と、
前記利用者のエネルギー消費行動ごとに設定された配点を記憶している記憶部と、
予め設定された監視期間内において前記データ取得部が取得した前記消費量データと、前記配点と、に基づいて、前記利用者の行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出部と、
前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データを用いて、前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定部と、
を具備する認知機能低下推定システム。
【請求項2】
前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコアの推移を示すスコア結果推移データが含まれる、
請求項1に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項3】
前記スコア算出部は、
前記消費量データの値が、前記利用者のエネルギー消費行動が正常であることを示す正常行動範囲内である場合は加点し、前記消費量データの値が前記正常行動範囲外である場合は減点して前記スコアの算出を行い、
前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部による加点の回数の推移と、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部による減点の回数の推移と、を示す配点別回数推移データが含まれる、
請求項2に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項4】
前記消費量データに基づいて、前記監視期間における前記利用者の異常行動の有無を判定する異常行動判定部を具備し、
前記認知機能推定部は、
前記異常行動判定部の判定結果と、前記推移データと、を用いて前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行う、
請求項3に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項5】
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間間隔が正常であることを示す第一の範囲が含まれ、
前記異常行動判定部は、
前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の時間を取得し、前記第一の範囲を超えた時間間隔のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判定する、
請求項4に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項6】
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の回数が正常であることを示す第二の範囲が含まれ、
前記異常行動判定部は、
前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の回数を取得し、前記第二の範囲を超えた回数のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判定する、
請求項4又は請求項5に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項7】
前記利用者の外出時間を取得する外出時間取得部を具備し、
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲が含まれ、
前記スコア算出部は、
前記第三の範囲を前記外出時間分延長させた許容範囲内に、前記エネルギー消費行動の時間が含まれる前記消費量データを許容対象データとして抽出し、前記許容対象データに対する前記スコアの減点を軽減する、
請求項3に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項8】
前記スコア算出部は、
前記許容対象データの前記エネルギー消費行動の時間が、所定時刻の前である場合は、前記許容対象データに対して前記スコアの減点を行わず、
前記許容対象データの前記エネルギー消費行動の時間が、前記所定時刻以降である場合は、前記許容対象データに対する前記スコアの減点の程度を所定の割合で減らす、
請求項7に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項9】
前記利用者の外出時間を取得する外出時間取得部を具備し、
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲が含まれ、
前記スコア算出部は、
前記第三の範囲が前記外出時間と重複している前記消費量データを、重複データとして特定し、
前記重複データの前記エネルギー消費行動の時間が、前記外出時間の前後一定時間の範囲内に含まれる場合は、前記重複データに対して前記スコアの減点を行わない、
請求項3に記載の認知機能低下推定システム。
【請求項10】
建物の利用者の認知機能の低下を推定する認知機能低下推定方法であって、
前記利用者のエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得工程と、
予め設定された監視期間内において取得された前記消費量データと、前記利用者のエネルギー消費行動ごとに設定された配点と、に基づいて前記利用者の行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出工程と、
前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データを用いて前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定処理と、
を具備する認知機能低下推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能低下推定システム及び認知機能低下推定方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の利用者の状態の良否を推定(判定)するシステムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、高齢者等の利用者の一日の行動に伴って変化する特徴量データを取得すると共に、上記特徴量データに基づいて利用者の一日の行動量を示すスコアを算出し、当該スコアを用いて利用者の状態の良否を判定するシステムが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された発明では、一日の特徴量データに基づく点を加点して行動量を算出している。このため、例えば認知機能の低下により利用者の行動が昼夜逆転している場合等、望ましくない行動に基づく点も加点して行動量を算出することになる。したがって、上記スコアだけでは、利用者の認知機能の低下の推定までは行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、利用者の認知機能の低下の推定を好適に行うことができる認知機能低下推定システム及び認知機能低下推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の利用者の認知機能の低下を推定する認知機能低下推定システムであって、前記利用者のエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得部と、前記利用者のエネルギー消費行動ごとに設定された配点を記憶している記憶部と、予め設定された監視期間内において前記データ取得部が取得した前記消費量データと、前記配点と、に基づいて、前記利用者の行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出部と、前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データを用いて、前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコアの推移を示すスコア結果推移データが含まれるものである。
【0010】
請求項3においては、前記スコア算出部は、前記消費量データの値が、前記利用者のエネルギー消費行動が正常であることを示す正常行動範囲内である場合は加点し、前記消費量データの値が前記正常行動範囲外である場合は減点して前記スコアの算出を行い、前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部による加点の回数の推移と、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部による減点の回数の推移と、を示す配点別回数推移データが含まれるものである。
【0011】
請求項4においては、前記消費量データに基づいて、前記監視期間における前記利用者の異常行動の有無を判定する異常行動判定部を具備し、前記認知機能推定部は、前記異常行動判定部の判定結果と、前記推移データと、を用いて前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行うものである。
【0012】
請求項5においては、前記正常行動範囲には、前記利用者のエネルギー消費行動の時間間隔が正常であることを示す第一の範囲が含まれ、前記異常行動判定部は、前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の時間を取得し、前記第一の範囲を超えた時間間隔のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判定するものである。
【0013】
請求項6においては、前記正常行動範囲には、前記利用者のエネルギー消費行動の回数が正常であることを示す第二の範囲が含まれ、前記異常行動判定部は、前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の回数を取得し、前記第二の範囲を超えた回数のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判定するものである。
【0014】
請求項7においては、前記利用者の外出時間を取得する外出時間取得部を具備し、前記正常行動範囲には、前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲が含まれ、前記スコア算出部は、前記第三の範囲を前記外出時間分延長させた許容範囲内に、前記エネルギー消費行動の時間が含まれる前記消費量データを許容対象データとして抽出し、前記許容対象データに対する前記スコアの減点を軽減するものである。
【0015】
請求項8においては、前記スコア算出部は、前記許容対象データの前記エネルギー消費行動の時間が、所定時刻の前である場合は、前記許容対象データに対して前記スコアの減点を行わず、前記許容対象データの前記エネルギー消費行動の時間が、前記所定時刻以降である場合は、前記許容対象データに対する前記スコアの減点の程度を所定の割合で減らすものである。
【0016】
請求項9においては、前記利用者の外出時間を取得する外出時間取得部を具備し、前記正常行動範囲には、前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲が含まれ、前記スコア算出部は、前記第三の範囲が前記外出時間と重複している前記消費量データを、重複データとして特定し、前記重複データの前記エネルギー消費行動の時間が、前記外出時間の前後一定時間の範囲内に含まれる場合は、前記重複データに対して前記スコアの減点を行わないものである。
【0017】
請求項10においては、建物の利用者の認知機能の低下を推定する認知機能低下推定方法であって、前記利用者のエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得工程と、予め設定された監視期間内において取得された前記消費量データと、前記利用者のエネルギー消費行動ごとに設定された配点と、に基づいて前記利用者の行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出工程と、前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データを用いて前記利用者の認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定処理と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、利用者の認知機能の低下の推定を好適に行うことができる。
【0020】
請求項2においては、スコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0021】
請求項3においては、スコア算出部による加点及び減点の回数の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0022】
請求項4においては、利用者による異常行動の有無を、利用者の認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0023】
請求項5においては、利用者のエネルギー消費行動の時間間隔を考慮した異常行動の有無を、利用者の認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0024】
請求項6においては、利用者のエネルギー消費行動の回数を考慮した異常行動の有無を、利用者の認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0025】
請求項7においては、利用者の外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0026】
請求項8においては、利用者の外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定をより好適に行うことができる。
【0027】
請求項9においては、利用者の外出に伴うスケジュールの変更を考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0028】
請求項10においては、利用者の認知機能の低下の推定を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る認知機能低下推定システムの構成を示した模式図。
【
図3】認知機能低下推定システムが実行する処理を示したフローチャート。
【
図4】行動評価処理の内容を示したフローチャート。
【
図5】(a)エネルギー消費量の経時変化の一例を示すグラフ。(b)利用者の行動を評価するための基準値を示す表。
【
図7】(a)スコアの合計の推移を説明する図。(b)配点別行動回数の推移を説明する図。(c)行動間隔及び行動回数の異常を説明する図。
【
図8】行動評価処理のおける計算パターンの一例を示す図。
【
図9】(a)推定レベルの分け方の一例を示す図。(b)「スコアの合計の推移」の判定結果が「変化なし」である場合の推定対象(例1~例3)における利用者の「推定レベル」を示す表。
【
図10】「スコアの合計の推移」の判定結果が「増加」である場合の推定対象(例1~例3)における利用者の「推定レベル」を示す表。
【
図11】「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」である場合の推定対象(例1~例3)における利用者の「推定レベル」を示す表。
【
図12】第一スコア管理処理の内容を示したフローチャート。
【
図13】(a)外出がない場合の行動分類の正常行動範囲及び減点対象を示した表。(b)外出があった場合の行動分類の許容範囲及び減点対象を示した表。(c)実際の行動分類の時間と正常行動範囲の時間帯とを示した表。
【
図14】第二スコア管理処理の内容を示したフローチャート。
【
図15】実際の行動分類の時間と正常行動範囲の時間帯とを示した表。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る認知機能低下推定システム1の構成について説明する。
【0031】
認知機能低下推定システム1は、住宅Hに居住する利用者Aの認知機能の低下を推定するものである。本実施形態では、一例として、高齢の独居者を利用者Aとした場合を想定している。
【0032】
図1に示すように、住宅Hは、寝室や書斎、風呂、ダイニングキッチン等の部屋を有している。また、住宅Hには、インターネット等の通信手段を利用して機器の通信に用いられる無線LANルータ2や、分電盤3が設置されている。
【0033】
認知機能低下推定システム1は、住宅Hにおける上記各部屋でのエネルギー消費量や、利用者Aの外出時間(不在時間)に基づいて算出されたスコアを用いて利用者Aの行動を評価する。また、認知機能低下推定システム1は、上記スコアに関するデータの推移(変化)に基づいて利用者Aの認知機能の低下を推定する。
【0034】
ここで、「行動を評価する」とは、利用者Aのエネルギー消費行動や外出行動等を通して、利用者Aの認知機能を考慮した行動を評価することを指す。また、「エネルギー」とは、住宅Hの各部屋に設置されたエネルギー消費機器(家電やガスコンロ、蛇口等)を使用することで消費されるものの総称であり、本実施形態では電気、ガス及び水道水が該当する。なお、電気、ガス及び水道水以外のエネルギー(例えば蒸気や冷媒等)が使用される建物であれば当該エネルギーの消費量も計測対象とすることになる。
【0035】
また、認知機能低下推定システム1は、通信手段を利用して、利用者Aの行動評価の結果や、認知機能の低下の推定結果を、利用者Aの監視(見守り)を行う者に通知することができる。本実施形態では、一例として、利用者Aの監視を行う者を親族Bとした場合を想定している。認知機能低下推定システム1は、主として電力センサ10、ガスセンサ20、流量センサ30、制御装置40、発信器50及び通信端末60を具備する。
【0036】
電力センサ10は、住宅Hでの消費電力を計測可能なものである。本実施形態では、分電盤3内において部屋別に分岐している電力経路のうち、寝室用の電力経路及び書斎用の電力経路にそれぞれ電力センサ10を設置している。これにより、電力センサ10は、寝室及び書斎での消費電力をそれぞれ計測することができる。なお、電力センサ10が設置される電力経路としては上述した例に限定されず、寝室及び書斎以外の部屋の電力経路にも電力センサ10を設置可能である。
【0037】
ガスセンサ20は、住宅Hでのガス消費量を計測可能なものである。本実施形態では、ダイニングキッチンのガスコンロに設けられたガス供給路に、ガスセンサ20を設置している。これにより、ガスセンサ20は、ダイニングキッチンでのガス消費量(単位時間当たりの消費量)を計測することができる。なお、ガスセンサ20が設置されるガス供給路としては上述した例に限定されず、ダイニングキッチン以外の部屋のガス供給路にもガスセンサ20を設置可能である。
【0038】
流量センサ30は、住宅Hでの水(水道水)の消費量を計測可能なものである。本実施形態では、風呂に設けられた水供給路及びダイニングキッチンに設けられた水供給路にそれぞれ流量センサ30を設置している。これにより、流量センサ30は、風呂及びダイニングキッチンでの水の消費量(単位時間当たりの消費量)をそれぞれ計測することができる。なお、流量センサ30が設置される水供給路としては上述した例に限定されず、風呂及びダイニングキッチン以外の部屋の水供給路にも流量センサ30を設置可能である。
【0039】
本実施形態においては、上記電力センサ10、ガスセンサ20及び流量センサ30を用いて、ダイニングキッチン、寝室、書斎及び風呂でのエネルギー消費量(消費電力、ガス消費量及び水消費量)を計測可能な構成とした例を示したが、エネルギー消費量の計測態様としては上述した例に限定されない。例えば、風呂でのエネルギー消費量としては、水消費量の他に、ガス消費量や消費電力を含めるようにしてもよい。また、ダイニングキッチンにおいて、ガスコンロに代えてIHコンロが設置されている場合には、ダイニングキッチンでのエネルギー消費量として、ガス消費量に代えて消費電力を計測するようにしてもよい。
【0040】
図1及び
図2に示す制御装置40は、各種の情報の処理を実行可能なものである。制御装置40としては、例えばゲートウェイ機能を有するコンピュータ(ホームサーバ等)を採用可能である。制御装置40は、記憶部41、制御部42及び通信部43を具備する。
【0041】
図2に示す記憶部41は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部41は、HDD、RAM、ROM等により構成される。記憶部41が記憶している情報(データ)には、配点テーブル、基準値テーブル、閾値テーブル及び過去スコアが含まれる。以下では、各データの概要について説明する。
【0042】
配点テーブルは、利用者Aの行動に伴って変化する特徴量(エネルギー消費行動や不在時間)に対するスコアの配点数を、当該特徴量の種類別に規定したものである(
図6を参照)。
【0043】
基準値テーブルは、後述する行動評価処理におけるスコアの算出結果(ステップS109)から利用者Aの状態の良否を評価するための基準値を、評価内容ごとに規定したものである(
図5(b)を参照)。
【0044】
閾値テーブルは、後述する行動評価処理において(ステップS102)、エネルギー消費行動の回数を判定するための基準となる閾値を規定したものである(
図5(a)を参照)。
【0045】
過去スコアは、後述する行動評価処理におけるスコアの算出結果(ステップS109)のうち、過去の任意の期間(例えば過去一週間)分のスコアである。
【0046】
なお、記憶部41に記憶される上記各データ(配点テーブル、基準値テーブル、閾値テーブル及び過去スコア)の詳細な説明については後述する。
【0047】
制御部42は、記憶部41に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部42は、CPUにより構成される。
【0048】
通信部43は、後述する通信端末60等の外部の機器との通信が可能なものである。通信部43は、無線LANルータ2を用いた通信により、他の機器との情報のやりとりを行うことができる。
【0049】
制御装置40は、通信部43を用いた通信を行うことで、電力センサ10、ガスセンサ20及び流量センサ30からの計測データを取得可能である。制御装置40は、上記各センサから、一定時間毎(例えば5分毎)に計測データを取得する。
【0050】
図1に示す発信器50は、所定の信号を発信可能なものである。発信器50は、利用者Aに携帯される。発信器50は、例えば利用者Aの首に掛けるようにして装着可能な形状(ペンダント等の形状)に形成される。発信器50により発信された信号は、無線LANルータ2を用いたWi‐Fi(登録商標)等の無線通信により、制御装置40に送信される。
【0051】
無線LANルータ2が発信器50の信号を受信可能なエリア(対応エリア)は、住宅H内の空間に設定されている。このため、利用者Aが在宅であり、発信器50が対応エリア内に位置する場合には発信器50の信号が制御装置40に受信可能となる。この場合、制御装置40は利用者Aが在宅であると判定する。一方、利用者Aが外出し、発信器50が対応エリア外に位置する場合には発信器50の信号が制御装置40に受信不能となる。この場合、制御装置40は利用者Aが外出中であると判定する。
【0052】
制御部42は、発信器50により発信された信号を受信しなくなってから、再び受信するまでの間の経過時間を不在時間として取得する。また、制御部42は、取得した不在時間を、記憶部41に保存する。
【0053】
通信端末60は、制御装置40から送信された情報を受信可能なものである。通信端末60は、利用者Aの監視(見守り)を行う親族Bにより保有される。通信端末60としては、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ(ノートパソコン等)等を採用可能である。通信端末60は、制御装置40から取得した情報を、適宜の表示部に表示可能である。
【0054】
以上の如く構成された認知機能低下推定システム1を用いることで、利用者Aの認知機能の低下を推定するための処理を行うことができる。具体的には認知機能低下推定システム1は、
図3に示すように、行動評価処理(ステップS100)及び認知機能推定処理(ステップS200)を実行することができる。以下では、各処理の詳細を順番に説明する。
【0055】
まず、行動評価処理(ステップS100)について説明する。行動評価処理は、各種センサ(電力センサ10、ガスセンサ20及び流量センサ30)や発信器50から取得した情報に基づいて、利用者Aの宅内における行動を評価する処理である。
【0056】
行動評価処理は、1日ごとに実行される。認知機能低下推定システム1(制御装置40)は、予め設定された監視期間(例えば24時間)において、特徴量(エネルギー消費量や不在時間)のデータを取得すると共に、記憶部41に記憶させる。認知機能低下推定システム1は、上記監視期間の終了後(例えば監視期間の翌日)、取得したデータを用いて行動評価処理を実行する。
【0057】
以下では、
図4に示すフローチャートを用いて、認知機能低下推定システム1(制御装置40)が実行する処理について説明する。
【0058】
ステップS101において、制御装置40(制御部42)は、住宅Hにおけるある部屋(本実施形態では、ダイニングキッチン、寝室、書斎及び風呂)でのエネルギー消費量の経時変化をエネルギーの種類別に特定する。具体的には、制御部42は、利用者Aの行動評価を行う日(監視期間)の電力センサ10、ガスセンサ20及び流量センサ30の部屋別の計測データを、記憶部41から抽出し、各計測データの経時変化を特定する。
図5(a)では、住宅Hのある部屋における任意のエネルギー消費量の経時変化の一例を示すグラフを示している。制御部42は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102へ移行する。
【0059】
ステップS102において、制御部42は、エネルギー消費行動の各時間帯ごとの回数をカウントする。制御部42は、ステップS101において特定したエネルギー消費量の経時変化と、所定の閾値と、に基づいてエネルギー消費行動の各時間帯ごとの回数をカウントする。上記閾値は、エネルギー消費行動の回数を判定するための基準となる値である。閾値は、部屋別、及びエネルギーの種類別にそれぞれ設定されている。閾値は、記憶部41の閾値テーブルにおいて規定されている。
【0060】
図5(a)では、閾値を破線で示している。
図5(a)に示すように、エネルギー消費量が閾値を超えた後に、当該閾値を下回った区間があれば、その区間内でエネルギー消費行動が開始され、その後停止(中断)されたと考えられる。すなわち、上記の区間がエネルギー消費行動1回分に相当する。制御部42は、上記区間の数を特定することで、所定期間内に行われたエネルギー消費行動の回数をカウントする。
【0061】
上記閾値としては、任意の値を設定可能である。なお、上述した例では、エネルギー消費行動の開始を判定する閾値と、停止を判定する閾値を、同じ値とした例を示したが、このような態様に代えて、上記各閾値を異なる値に設定してもよい。制御部42は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103へ移行する。
【0062】
ステップS103において、制御部42は、配点表(
図6に示す記憶部41の配点テーブルの配点表)を用いて、利用者Aの行動時間帯(行動時間の時間分類)による配点の決定を行う。すなわち、制御部42は、ステップS102においてカウントしたエネルギー消費行動が、配点表におけるどの点数に対応するかを決定する。
【0063】
図6に示す配点表では、行動分類ごと(部屋別)に配点が設定されている。本実施形態における行動分類には、「キッチンでのガス使用」、「風呂での湯使用」及び「水回りの使用」が含まれる。また、各行動分類には、必要に応じて設定された時間や回数の区分ごとに、配点が設定されている。
【0064】
図6に示す配点表は、利用者Aのエネルギー消費行動(行動の時間帯や回数)が、正常な行動であることを示す範囲内(正常行動範囲内)である場合はスコアを加点し、正常行動範囲外である場合はスコアを減点するように設定されている。以下では、エネルギー消費行動の行動分類ごとに配点の詳細な説明を行う。
【0065】
「キッチンでのガス使用」は、ダイニングキッチンのガスコンロを使用する調理行動である。「キッチンでのガス使用」は、ガスセンサ20の計測データに基づいて、時間(調理時間)及び回数の判定が行われる。本実施形態では、予め設定された食事の時間の1~2時間前を、利用者Aの正常な調理時間と考え、「キッチンでのガス使用」の時間分類を設定している。具体的には、朝食調理時間を5~7時、昼食調理時間を11~13時、夕食調理時間を17~19時に設定している。
【0066】
本実施形態では、以下に示す時間区分ごとに、「キッチンでのガス使用」についてのスコアの配点が規定されている。すなわち、ガスセンサ20の計測データに基づく「キッチンでのガス使用」の時間が、上記各調理時間の時間分類の範囲内であれば回数(調理の回数)ごとに+4点を加点する。また、上記「キッチンでのガス使用」の時間が、上記時間分類の範囲外であり、かつ上記時間分類の範囲の±1時間内であれば、回数ごとに-1点、上記時間分類の範囲外であり、かつ上記時間分類の範囲の±2時間内であれば、回数ごとに-2点、上記時間分類の範囲外であり、かつ深夜時(例えば23時~2時)であれば、回数ごとに-10点を減点する。
【0067】
また、本実施形態では、以下に示す回数区分ごとに、「キッチンでのガス使用」についてのスコアの配点が規定されている。すなわち、本実施形態では、1日3回を正常な調理行動の回数と考え、ガスセンサ20の計測データに基づく「キッチンでのガス使用」の回数が、1日3回までであれば、+5点を加点する。また、上記「キッチンでのガス使用」の回数が、1日4回以上であれば、-10点を減点する。なお、上記-10点の減点は、回数ごとでなく一律の配点とする。
【0068】
「風呂での湯使用」は、風呂を使用する行動である。「風呂での湯使用」は、風呂の水供給路に設けられた流量センサ30の計測データに基づいて、時間(入浴時間)及び回数の判定が行われる。本実施形態では、正常と考えられる入浴時間の時間分類を18~21時に設定している。
【0069】
本実施形態では、以下に示す時間区分ごとに、「風呂での湯使用」についてのスコアの配点が規定されている。すなわち、流量センサ30の計測データに基づく「風呂での湯使用」の時間が、上記入浴時間の時間分類の範囲内であれば、+4点を加点する。また、上記「風呂での湯使用」の時間が、上記時間分類の範囲外であり、かつ上記時間分類の範囲の±1時間内であれば、-1点、上記時間分類の範囲外であり、かつ上記時間分類の範囲の±2時間内であれば、-2点、上記時間分類の範囲外であり、かつ深夜時であれば、-10点を減点する。本実施形態では、1日1回を正常な入浴行動の回数と考え、上記加点又は減点は、回数ごとでなく一律の配点とする。なお、このような態様に代えて、入浴の回数ごとに加点又は減点を行うようにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、以下に示す回数区分ごとに、「風呂での湯使用」についてのスコアの配点が規定されている。すなわち、本実施形態では、1日1回を正常な入浴行動の回数と考え、流量センサ30の計測データに基づく「風呂での湯使用」の回数が、1日1回までであれば、+5点を加点する。また、上記「風呂での湯使用」の回数が、1日2回以上であれば、-10点を減点する。なお、上記-10点の減点は、回数ごとでなく一律の配点とする。
【0071】
「水回りの使用」は、掃除や洗濯等の目的で(調理や入浴以外で)、水回りで水を使用する行動である。本実施形態では、「水回りの使用」は、例えばダイニングキッチンの水供給路に設けられた流量センサ30の計測データに基づいて、時間及び回数の判定が行われる。本実施形態では、正常と考えられる「水回りの使用」の時間分類(掃除・洗濯時間)を、上述した調理時間及び入浴時間以外の時間、かつ睡眠時間外に設定している。上記睡眠時間としては、例えば22時~6時の時間帯を採用可能である。なお、睡眠時間としては上記時間帯に限定されず、種々の時間帯を採用可能である。
【0072】
本実施形態では、以下に示す時間区分ごとに、「水回りの使用」についてのスコアの配点が規定されている。すなわち、流量センサ30の計測データに基づく「水回りの使用」の時間が、上記掃除・洗濯時間の時間分類の範囲内であれば回数(使用の回数)ごとに+4点を加点する。また、上記掃除・洗濯時間が、上記時間分類の範囲外、かつ睡眠時間外であれば、回数ごとに-1点、睡眠時間内であれば、回数ごとに-10点を減点する。制御部42は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104へ移行する。
【0073】
ステップS104において、制御部42は、ある部屋についてのエリア別スコアを算出する。ここで、エリア別スコアとは、住宅Hにおける部屋別、エネルギーの種類別のスコアである。制御部42は、ステップS102において特定したエネルギー消費行動の回数と、ステップS103において決定した配点と、に基づいて、エリア別スコアを算出する。具体的には、制御部42は、例えば、ダイニングキッチン、寝室、書斎及び風呂ごとに、エネルギーの種類別のスコアを算出する。制御部42は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105へ移行する。
【0074】
ステップS105において、制御部42は、全ての部屋について、ステップS104におけるスコアが算出済みであるか否かを判定する。制御部42は、全ての部屋についてスコアが算出済みであると判定した場合には、ステップS106へ移行する。一方、制御部42は、スコアが算出済みでない部屋があると判定した場合には、ステップS101へ移行する。
【0075】
ステップS106において、制御部42は、利用者Aの外出があったか否かを判定する。制御部42は、利用者Aの外出があったと判定した場合には、ステップS107へ移行する。一方、制御部42は、利用者Aの外出がなかったと判定した場合には、ステップS110へ移行する。
【0076】
ステップS107において、制御部42は、1日における利用者Aの不在時間を特定する。制御部42は、ステップS107の処理を行った後、ステップS108へ移行する。
【0077】
ステップS108において、制御部42は、外出分スコアを算出する。ここで、外出分スコアとは、利用者Aの外出時間(不在時間)に基づいて算出されたスコアである。制御部42は、
図6に示す配点表を参照すると共に、ステップS107において特定した不在時間に基づいて外出分スコアを算出する。
【0078】
図6に示すように、本実施形態では、不在時間(1時間)ごとに+10点を加点するようにスコアの配点が規定されている。制御部42は、ステップS108の処理を行った後、ステップS109へ移行する。
【0079】
ステップS109において、制御部42は、ステップS104において算出した全ての部屋のエリア別スコアと、ステップS108において算出した外出分スコアと、を合算する。制御部42は、上記合算されたスコアを記憶部41に記憶させる。制御部42は、ステップS109の処理を行った後、行動評価処理を終了する。
【0080】
また、ステップS106において利用者Aの外出がなかったと判定した場合に移行するステップS110において、制御部42は、ステップS104において算出した全ての部屋のエリア別スコアを合算する。制御部42は、上記合算されたスコアを記憶部41(過去スコア)に記憶させる。制御部42は、ステップS110の処理を行った後、行動評価処理を終了する。
【0081】
上述の如き行動評価処理を実行することで、利用者Aの行動評価を好適に行うことができる。すなわち、行動評価のスコアの算出において、行動の時間分類や行動の回数が正常であることを示す範囲(正常行動範囲)を設定し(
図6を参照)、利用者Aのエネルギー消費行動が正常行動範囲内であればスコアを加点し、エネルギー消費行動が正常行動範囲外であればスコアを減点して行動評価を行うことができる。このように、例えば利用者Aの認知機能の低下等に伴い行動時間がずれること(昼夜逆転等)や、行動回数が増加すること等の異常行動の判定を行うことで、異常行動と正常な行動を区別することができる。また、異常行動があった場合にはスコアを減点することで、利用者Aの認知機能の低下を行動評価に反映させることができる。これにより、利用者Aの認知機能を考慮した行動評価を行うことができる。
【0082】
また、エネルギー消費行動が正常行動範囲から大きく離れている場合、利用者Aの認知機能が大きく低下していることが推察される。本実施形態では、制御部42は、利用者Aのエネルギー消費行動が正常行動範囲外である場合、利用者Aのエネルギー消費行動が、正常行動範囲から離れる程スコアを大きく減点している。これにより、より好適に認知機能の低下を考慮した行動評価を行うことができる。
【0083】
また、制御部42は、行動評価処理を実行した後、算出されたスコアの合計点数(ステップS109、ステップS110のスコア)に基づいて利用者Aの状態の良否を判定可能である。具体的には、制御部42は、上記スコアの合計点数と、
図5(b)に示す基準値の表(記憶部41の基準値テーブルの表)と、に基づいて利用者Aの状態の良否を判定する。スコアの合計点数が高い程、利用者Aの心身の状態は良好であることが示される。
【0084】
図5(b)に示す例では、制御部42は、スコアの合計点数が0~25(25以下)の範囲ではスコアが「非常に低い」、合計点数が25~35(25超、35以下)の範囲ではスコアが「低い」、合計点数が35~45(25超、35以下)の範囲ではスコアが「高い」、合計点数が45~(45超)の範囲ではスコアが「非常に高い」と評価する。なお、
図5(b)に示す基準値は一例であり、上記基準値は任意の値を設定可能である。
【0085】
制御部42は、利用者Aの状態の評価を行った後、評価結果に対応する報知メールを生成すると共に、報知メールを通信端末60へ送信可能である。これにより、親族Bに対して利用者Aの状態に関する情報を報知することができる。
【0086】
また、制御部42は、記憶部41の過去スコアに基づいて、基準値の補正(更新)を行うことができる。具体的には、制御部42は、過去の任意の期間(例えば過去1週間分)の過去スコアの平均値及び標準偏差に基づいて基準値の補正量を算出し、当該補正量に基づいて基準値の補正(更新)を行うことができる。なお、上記補正量の算出方法は一例であり、補正量の算出方法としては種々の算出方法を採用可能である。
【0087】
次に、認知機能推定処理(ステップS200)について説明する。認知機能推定処理は、行動評価処理において、監視期間(1日)ごとに得られたスコアに関するデータの推移(変化)等に基づいて、利用者Aの認知機能の低下を推定する処理である。具体的には、認知機能推定処理においては、「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」及び「行動間隔及び行動回数の異常」に基づいて、利用者Aの認知機能の低下の推定が行われる。
【0088】
「スコアの合計の推移」は、行動評価処理で算出されたスコアの合計点数(1日のスコアの合計点数)の推移(変化)を示すものである(
図7(a)を参照)。以下では、認知機能の低下の推定対象となる日の前日のスコアの合計点数を「基準のスコア」とし、推定対象の日のスコアの合計点数の基準のスコアに対する変化を、スコアの合計点数の推移として説明する。本実施形態では、制御部42は、推定対象の日及び前日のスコアの合計点数のデータを、記憶部41から取得し、上記データに基づいて判定を行う。具体的には、制御部42は、「変化なし」、「増加」、「減少」の三段階で「スコアの合計の推移」の判定を行う。
【0089】
制御部42は、スコアの合計点数が、基準のスコアに対して概ね変化していない場合には、「変化なし」であると判定する。ここで、「概ね変化していない」とは、スコアの合計点数と、基準のスコアと、の差が所定の点数未満であることを指す。上記所定の点数としては、例えば5点程度を設定可能である。なお、上記所定の点数としては上述した例に限定されず、変化の有無を判定可能な種々の点数を設定可能である。
【0090】
また、制御部42は、スコアの合計点数が増加した場合には、「増加」であると判定する。ここで、「増加した」とは、スコアの合計点数が、基準のスコアに対して上記所定の点数以上増加したことを指す。
【0091】
また、制御部42は、スコアの合計点数が減少した場合には、「減少」であると判定する。ここで、「減少した」とは、スコアの合計点数が、基準のスコアに対して上記所定の点数以上減少したことを指す。
図7(a)に示す例では、スコアの合計点数が減少している例を示している。
【0092】
「配点別行動回数の推移」は、推定対象の日のスコアのうち、マイナス配点(減点)の行動回数、及びプラス配点(加点)の行動回数の推移(変化)を示すものである(
図6、
図7(b)を参照)。以下では、認知機能の低下の推定対象となる日の前日のマイナス配点の行動回数、及びプラス配点の行動回数を「基準の行動回数」とし、推定対象の日の各行動回数の基準の行動回数に対する変化を、配点別行動回数の推移として説明する。制御部42は、推定対象の日及び前日のスコアの各行動回数のデータを記憶部41から取得し、上記データに基づいて「配点別行動回数の推移」の判定を行う。具体的には、制御部42は、「変化なし」、「増加」、「減少」で「配点別行動回数の推移」の判定を行う。
【0093】
制御部42は、各行動回数(マイナス配点の行動回数及びプラス配点の行動回数)が、基準の行動回数に対して概ね変化していない場合には、「変化なし」であると判定する。ここで、「概ね変化していない」とは、各行動回数と、基準の行動回数と、の差が所定回数未満であることを指す。上記所定回数としては、例えば2回程度を設定可能である。なお、上記所定回数としては上述した例に限定されず、変化の有無を判定可能な種々の回数を設定可能である。
【0094】
また、制御部42は、各行動回数が増加した場合には、「増加」であると判定する。ここで、「増加した」とは、各行動回数が、基準の行動回数に対して上記所定回数以上増加したことを指す。なお、本実施形態では、各行動回数が所定の通常範囲(例えば5回程度)内で「増加した」場合の増加を「通常増加」と称し、各行動回数が通常範囲を超えて「増加した」場合の増加を「大幅増加」と称する。
【0095】
また、制御部42は、各行動回数が減少した場合には、「減少」であると判定する。ここで、「減少した」とは、各行動回数が、基準の行動回数に対して上記所定回数以上減少したことを指す。なお、本実施形態では、各行動回数が所定の通常範囲(例えば5回程度)内で「減少した」場合の減少を「通常減少」と称し、各行動回数が通常範囲を超えて「減少した」場合の減少を「大幅減少」と称する。
【0096】
このように、本実施形態では、「配点別行動回数の推移」の判定を、「変化なし」、「通常増加」、「大幅増加」、「通常減少」、「大幅減少」の五段階で行う。なお、上記通常範囲としては、任意の回数を設定可能である。また、
図7(b)に示す例では、マイナス配点の行動回数が増加し、プラス配点の行動回数が減少している例を示している。
【0097】
「行動間隔及び行動回数の異常」は、任意の期間におけるスコア(「スコアの合計の推移」の判定対象のスコア)において、「行動間隔の異常」及び「行動回数の異常」の有無を示すものである(
図6、
図7(c)を参照)。制御部42は、「スコアの合計の推移」の判定対象のスコアの配点のデータを記憶部41から取得し、上記データに基づいて「行動間隔及び行動回数の異常」の有無の判定を行う。
【0098】
ここで、「行動間隔の異常」とは、
図6の配点表に示される各行動のうち、同じ行動分類の行動の時間間隔が、正常な行動の時間間隔の範囲(以下では「正常間隔範囲」と称する)を超えたことを指す。上記正常間隔範囲は、行動分類ごとに設定される。制御部42は、各行動の時間帯のデータを取得すると共に、上記データに基づいて「行動間隔の異常」の有無を判定する。具体的には、制御部42は、ある時期の入浴と次の入浴までの間隔や、ある時期の調理と次の調理までの間隔が、正常間隔範囲よりも短い、又は長い場合には、「行動間隔の異常」があると判定する。
【0099】
また、「行動回数の異常」とは、
図6の配点表に示される各行動の回数が、正常な行動の回数の範囲(以下では「正常回数範囲」と称する)を超えたことを指す。上記正常回数範囲は、
図6の配点表に示された正常な(加点の範囲の)行動の回数区分に相当する。すなわち、本実施形態では、制御部42は、判定対象のスコアに、減点の回数区分によるスコアが含まれていれば、「行動回数の異常」があると判定する。
【0100】
図8に示す計算パターン例では、行動評価処理において計算されるスコア、「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」及び「行動間隔及び行動回数の異常」の関係を示している。
図8に示す例では、「キッチンでのガス使用」(朝食、昼食及び夕食)、「風呂での湯使用」(入浴)、「水回りの使用」(掃除洗濯)、及び「外出」の各行動の評価を、配点が高い順に「◎」、「○」、「△」、「×」の記号で示している。また、
図8に示す例では、各行動の評価(スコアの合計点)を、
図6において図示された配点に基づいて算出している。なお、以下の説明では、スコアの計算式の詳細な説明は省略する。
【0101】
計算パターン例のうち、パターン1は、「スコアの合計の推移」の判定の基準となるスコア(「基準のスコア」)である。すなわち、パターン1は、推定対象となる日の前日のスコアの一例を示すものである。パターン1のスコアの合計点は61点である。パターン1では、「キッチンでのガス使用」においてマイナス配点の行動が1つ存在する。
【0102】
パターン2は、推定対象となる日のスコアの一例を示すものである。パターン2のスコアの合計点は72点である。パターン2では、「キッチンでのガス使用」においてマイナス配点の行動が2つ存在する。
【0103】
パターン3は、推定対象となる日のスコアの一例であって、パターン2とは異なる例を示すものである。パターン3のスコアの合計点は63点である。パターン3では、「キッチンでのガス使用」においてマイナス配点の行動が3つ存在し、「風呂での湯使用」においてマイナス配点の行動が1つ存在する。また、「キッチンでのガス使用」でのマイナス配点には、行動回数の異常が含まれている。
【0104】
図8に示すように、各パターンのスコアの合計点のみに注目すれば、基準のスコアであるパターン1のスコアの合計点(61点)に対して、パターン2のスコアの合計点(72)は増加しているが、パターン2の方がマイナス配点の行動回数が多い。
【0105】
また、基準のスコアであるパターン1のスコアの合計点(61点)に対して、パターン3のスコアの合計点(63点)は概ね変化していない(変化なしである)が、パターン3の方がマイナス配点の行動回数の数が多い。また、パターン3では行動回数の異常が存在する。
【0106】
上記パターン2、3の例では、パターン1と比較してスコアの合計点は減少していないが、マイナス配点の行動回数の数が多いことや、行動回数の異常が存在していることから、パターン1に対して利用者Aの認知機能が低下していることが推定される。このように、スコアの合計点が減少していなくても、マイナス配点とプラス配点が同様に増加して相殺されている可能性や、マイナス配点よりもプラス配点が多くなっているために全体としてスコアが増加している可能性がある。このため、スコアの合計点の比較だけでは、マイナス配点となっている行動の存在を把握し難く、利用者Aの認知機能の低下の推定を行い難い。
【0107】
そこで、本実施形態に係る認知機能推定処理(ステップS200)では、スコアの合計点だけでなく、「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」及び「行動間隔及び行動回数の異常」に基づいて、利用者Aの認知機能の低下の推定を行う。以下では、
図9から
図11までを用いて、認知機能推定処理の詳細について説明する。
【0108】
認知機能推定処理において、制御部42は、「低」、「中」、「高」の三段階の「推定レベル」で利用者Aの認知機能の低下の推定を行う。「高」は、認知機能の低下のレベルが最も高いことを示す。「中」は、「高」の次に認知機能の低下のレベルが高いことを示す。「低」は、認知機能の低下のレベルが最も低いことを示す。
【0109】
制御部42は、「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数(マイナス及びプラス配点の行動回数)の推移」及び「行動間隔及び行動回数の異常」の各判定結果に基づいて、推定対象となる日における利用者Aの「推定レベル」の判定を行う。
図9から
図11では、「スコアの合計の推移」の判定結果(「変化なし」、「増加」、「減少」)ごとに分類した表を用いて、認知機能の低下の推定対象となる日(例1、例2、例3等)における利用者Aの「推定レベル」を示している。
【0110】
また、上記各図の表では、「配点別行動回数の推移」の「増加」、「減少」の判定結果のうち、「通常増加」及び「通常減少」を「○」で示し、「大幅増加」及び「大幅減少」を「◎」で示している。
【0111】
制御部42は、「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」であれば利用者Aの認知機能が悪化している傾向にあり、「増加」であれば利用者Aの認知機能が改善している傾向にあると判定する。また、制御部42は、「スコアの合計の推移」の判定結果が「変化なし」であれば利用者Aの認知機能の程度が維持されている(概ね変化していない)と判定する。
【0112】
また、制御部42は、「配点別行動回数の推移」のマイナス配点の行動回数の判定結果が「増加」であれば利用者Aの認知機能が悪化している傾向にあり、「減少」であれば利用者Aの認知機能が改善している傾向にあると判定する。また、制御部42は、マイナス配点の行動回数の判定結果が「変化なし」であれば利用者Aの認知機能の程度が維持されている(概ね変化していない)と判定する。
【0113】
本実施形態では、上記「増加」の判定結果には、「通常増加(○)」及び「大幅増加(◎)」が含まれる。制御部42は、「増加」の判定結果が「大幅増加(◎)」であれば、「通常増加(○)」よりも利用者Aの認知機能の悪化が進んでいる傾向にあると判定する。また、上記「減少」の判定結果には、「通常減少(○)」及び「大幅減少(◎)」が含まれる。制御部42は、「減少」の判定結果が「大幅減少(◎)」であれば、「通常減少(○)」よりも利用者Aの認知機能の改善が進んでいる傾向にあると判定する。
【0114】
また、制御部42は、「配点別行動回数の推移」のプラス配点の行動回数の判定結果が「減少」であれば利用者Aの認知機能が悪化している傾向にあり、「増加」であれば利用者Aの認知機能が改善している傾向にあると判定する。また、制御部42は、プラス配点の行動回数の判定結果が「変化なし」であれば利用者Aの認知機能の程度が維持されている(概ね変化していない)と判定する。
【0115】
本実施形態では、上記「減少」の判定結果には、「通常減少(○)」及び「大幅減少(◎)」が含まれる。制御部42は、「減少」の判定結果が「大幅減少(◎)」であれば、「通常減少(○)」よりも利用者Aの認知機能の悪化が進んでいる傾向にあると判定する。また、上記「増加」の判定結果には、「通常増加(○)」及び「大幅増加(◎)」が含まれる。制御部42は、「増加」の判定結果が「大幅増加(◎)」であれば、「通常増加(○)」よりも利用者Aの認知機能の改善が進んでいる傾向にあると判定する。
【0116】
また、制御部42は、「行動間隔及び行動回数の異常」の判定結果が「有」であれば、利用者Aの認知機能が悪化している傾向にあると判定する。すなわち、行動間隔及び行動回数の異常のいずれか一方が「有」であれば、利用者Aの認知機能が悪化している傾向にあると判定する。また、行動間隔の異常及び行動回数の両方が「有」であれば、さらに利用者Aの認知機能の悪化が進んでいる傾向にあると判定する。なお、上記認知機能の低下のレベルの判定において、「行動間隔及び行動回数の異常」の判定結果の有無だけではなく、異常と判定された行動間隔の時間間隔や、異常と判定された行動の回数を考慮して、利用者Aの認知機能の程度を判定することも可能である。
【0117】
「推定レベル」の判定としては、「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数(マイナス及びプラス配点の行動回数)の推移」及び「行動間隔及び行動回数の異常」の各判定結果に対して優先順位を設定し、優先順位の高い判定結果が悪い(認知機能の悪化を示す結果である)ほど、推定レベルを高くするような判定を実行可能である。
【0118】
以下では、
図9から
図11までを用いて、「推定レベル」の判定の一例について説明する。
図9(a)では、上述した制御部42の判定結果に基づく「推定レベル」の分け方の一例を示している。
図9(a)に示す例では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」であり、かつマイナス配点の行動回数の判定結果が「大幅増加」であり、かつプラス配点の行動回数の判定結果が「変化なし」である場合、本例のうち最も推定レベルが高いと判定している。また、「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」であり、かつマイナス配点の行動回数の判定結果が「通常増加」であり、かつプラス配点の行動回数の判定結果が「変化なし」である場合、その次に推定レベルが高いと判定している。
【0119】
また、「スコアの合計の推移」の判定結果が「変化なし」であり、かつマイナス配点の行動回数の判定結果が「通常増加」であり、かつプラス配点の行動回数の判定結果が「通常増加」である場合、その次に推定レベルが高いと判定している。また、「スコアの合計の推移」の判定結果が「変化なし」であり、かつマイナス配点の行動回数の判定結果が「通常増加」であり、かつプラス配点の行動回数の判定結果が「大幅増加」である場合、その次に推定レベルが高いと判定している。
【0120】
本実施形態では、
図9(a)に示すように、推定レベルの判定において、「スコアの合計の推移」の判定結果の優先順位を高く設定している。すなわち、本実施形態では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」の場合に、比較的高い推定レベル(例えば「高」)の判定結果が多く得られる(
図11を参照)。また、本実施形態では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「増加」の場合に、比較的低い推定レベル(例えば「低」)の判定結果が多く得られる(
図10を参照)。
【0121】
また、本実施形態では、「スコアの合計の推移」及び「配点別行動回数の推移」に加えて、「行動間隔及び行動回数の異常」の判定結果を用いて、推定レベルの判定を実行可能である。例えば、「スコアの合計の推移」及び「配点別行動回数の推移」の判定結果が共に「変化なし」である場合(推定対象の日とその前日との間で、スコアの合計点や配点別行動回数が概ね同じである場合)、推定対象の日における「行動間隔及び行動回数の異常」が「有」であれば、比較的高い推定レベル(例えば「高」又は「中」)の判定結果が得られるような判定を実行可能である。また、例えば、推定対象の日とその前日との間で、スコアの合計点や配点別行動回数に加えて、「行動間隔及び行動回数の異常」の有無が同じである場合、異常と判定された行動間隔の時間間隔や、異常と判定された行動の回数を考慮して、推定レベルの判定を行うようにしてもよい。
【0122】
以下では、
図9(b)から
図11までの表を用いて、「推定レベル」の判定の具体例について説明する。なお、以下の説明では、主として「スコアの合計の推移」及び「配点別行動回数の推移」の判定結果に注目した例について説明する。
【0123】
図9(b)では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「変化なし」である場合の推定対象(例1~例3)における利用者Aの「推定レベル」を示している。例1では、マイナス配点の行動回数、及びプラス配点の行動回数が共に「変化なし(○)」である結果に対して「推定レベル」が「低」であると判定されている。例2では、マイナス配点の行動回数、及びプラス配点の行動回数が共に「通常増加(○)」である結果に対して「推定レベル」が「中」であると判定されている。例3では、マイナス配点の行動回数、及びプラス配点の行動回数が共に「大幅増加(◎)」である結果に対して「推定レベル」が「高」であると判定されている。
【0124】
図10では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「増加」である場合の推定対象(例1~例5)における利用者Aの「推定レベル」を示している。例1では、マイナス配点の行動回数が「変化なし(○)」であり、プラス配点の行動回数が「通常増加(○)」である結果に対して「推定レベル」が「低」であると判定されている。例2では、マイナス配点の行動回数が「変化なし(○)」であり、プラス配点の行動回数が「大幅増加(◎)」である結果に対して「推定レベル」が「低」であると判定されている。例3では、マイナス配点の行動回数が「増加(○)」であり、プラス配点の行動回数が「増加(◎)」である結果に対して「推定レベル」が「中」であると判定されている。例4では、マイナス配点の行動回数が「通常減少(○)」であり、プラス配点の行動回数が「通常増加(○)」である結果に対して「推定レベル」が「低」であると判定されている。例5では、マイナス配点の行動回数が「通常減少(○)」であり、プラス配点の行動回数が「大幅増加(◎)」である結果に対して「推定レベル」が「低」であると判定されている。
【0125】
図11では、「スコアの合計の推移」の判定結果が「減少」である場合の推定対象(例1~例5)における利用者Aの「推定レベル」を示している。例1では、マイナス配点の行動回数が「通常増加(○)」であり、プラス配点の行動回数が「変化なし(○)」である結果に対して「推定レベル」が「中」であると判定されている。例2では、マイナス配点の行動回数が「大幅増加(◎)」であり、プラス配点の行動回数が「変化なし(○)」である結果に対して「推定レベル」が「高」であると判定されている。例3では、マイナス配点の行動回数が「大幅増加(◎)」であり、プラス配点の行動回数が「通常増加(○)」である結果に対して「推定レベル」が「高」であると判定されている。例4では、マイナス配点の行動回数が「通常増加(○)」であり、プラス配点の行動回数が「通常減少(○)」である結果に対して「推定レベル」が「高」であると判定されている。例5では、マイナス配点の行動回数が「大幅増加(◎)」であり、プラス配点の行動回数が「通常減少(○)」である結果に対して「推定レベル」が「高」であると判定されている。
【0126】
制御部42は、上記「推定レベル」の判定結果を記憶部41(過去スコア)に記憶させた後、認知機能推定処理を終了する。また、制御部42は、「推定レベル」の判定を行った後、判定結果に対応する報知メールを生成すると共に、報知メールを通信端末60へ送信可能である。これにより、親族Bに対して利用者Aの認知機能の低下に関する情報を報知することができる。
【0127】
上述の如き認知機能推定処理を実行することで、「スコアの合計の推移」や「配点別行動回数の推移」の判定結果に基づいて「推定レベル」の判定を行い、利用者Aの認知機能の低下の推定を行うことができる。これによれば、スコアの合計点だけでは把握し難いマイナス配点の行動回数等を考慮して、利用者Aの認知機能の低下の推定を好適に行うことができる。
【0128】
また、本実施形態では、「行動間隔及び行動回数の異常」の判定結果を用いた判定を行うことで、行動間隔の異常や行動回数の異常の有無を考慮した利用者Aの認知機能の低下の推定が可能となる。これにより、利用者Aの認知機能の低下の推定をより好適に行うことができる。
【0129】
また、本実施形態に係る認知機能低下推定システム1は、利用者Aの不在時間(外出時間)を考慮した行動評価のスコアの算出を行う処理である第一スコア管理処理(ステップS300)及び第二スコア管理処理(ステップS400)を実行可能に形成されている。上記各スコア管理処理(第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理)は、行動評価処理(ステップS100)で算出した行動評価のスコアを、利用者Aの不在時間を考慮したスコアに補正するものである。上記各スコア管理処理は、行動評価処理(ステップS100)を実行した後、機能推定処理(ステップS200)を実行する前に行われる。
【0130】
利用者Aが外出を行った場合、不在時間(外出時間)が発生した影響で利用者Aの住宅H内での行動時間帯に変化が生じることが想定される。
図4のフローチャートに示す行動評価処理(ステップS100)では、不在時間の影響で外出後の利用者Aの住宅H内での行動のスケジュールが変化した結果、当該行動の時間帯が正常行動範囲の時間帯から外れた場合でも、不在時間が発生していない場合と同様にスコアの減点の対象となる。このような場合、利用者Aの行動変化が認知機能の低下による行動変化(異常な行動)とは言い難いものであっても、行動評価のスコアを減点してしまう可能性がある。このため、スコアの算出結果に基づいた認知機能の低下の推定に影響を及ぼす可能性がある。
【0131】
本実施形態では、
図12から
図15までに示す第一スコア管理処理(ステップS300)及び第二スコア管理処理(ステップS400)を実行することで、行動評価処理(ステップS100)で算出した行動評価のスコアを、利用者Aの不在時間を考慮したスコアに補正することができる。また、上記補正されたスコアを用いて認知機能推定処理(ステップS200)を実行することで、利用者Aの不在時間を考慮した認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0132】
ここで、上述した行動評価処理(ステップS100)の説明では、利用者Aの住宅Hでの行動分類として、「キッチンでのガス使用」、「風呂での湯使用」及び「水回りの使用」を設定した例を示した。以下の説明では、上述したものに加えて、「食事」及び「睡眠」を行動分類に加えた例を用いて各処理の説明を行う。なお、以下での説明で示す行動分類の具体的な時間分類は、上述した行動評価処理(ステップS100)の説明とは異なる場合がある。
【0133】
制御部42は、上述した「キッチンでのガス使用」や「風呂での湯使用」等の各行動分類におけるスコアの算出と概ね同様に、住宅Hにおける各センサ(電力センサ10、ガスセンサ20及び流量センサ30)の部屋別の計測データに基づいて、「食事」及び「睡眠」についてのスコアの算出を行う。
【0134】
例えば、制御部42は、「キッチンでのガス使用」としての調理行動が行われた後に、「食事」が行われたと推定し、当該推定結果に基づいて「食事」の時間(食事時間)及び回数の判定を行うことができる。なお、上述した態様に代えて、ダイニング(ダイニングキッチン)における各センサの計測データを用いて、「食事」の時間及び回数の判定を行うようにしてもよい。「食事」の時間分類(正常行動範囲の時間帯)としての食事時間(朝食時間、昼食時間、夕食時間)は、予め設定可能である。以下では一例として、夕食時間の正常行動範囲の時間帯を17~19時に設定している(
図13(c)を参照)。本実施形態では、制御部42は、「キッチンでのガス使用」のスコアの配点(
図6を参照)と同様な配点で、「食事」の時間及び回数に基づいたスコア算出を行う。
【0135】
また、制御部42は、寝室での各センサの計測データを用いて、「睡眠」の時間の判定を行うことができる。「睡眠」の時間分類(正常行動範囲の時間帯)としての睡眠時間は、予め設定可能である。以下では一例として、睡眠時間の正常行動範囲の時間帯を22時以降に設定している(
図13(c)を参照)。本実施形態では、制御部42は、「キッチンでのガス使用」の時間区分のスコアの配点(
図6を参照)と同様な配点で、「睡眠」の時間に基づいたスコア算出を行う。
【0136】
以下では、
図12から
図15までを用いて、第一スコア管理処理(ステップS300)及び第二スコア管理処理(ステップS400)の説明を行う。上記スコア管理処理(第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理)を実行する場合には、各スコア管理処理の両方を実行してもよく、各スコア管理処理のうちの一方(例えば認知機能低下推定システム1を操作する者が選択した方)のみを実行してもよい。なお、各スコア管理処理の両方を実行する場合には、一方のスコア管理処理が実行された後に、当該スコア管理処理により算出された行動処理のスコアを用いて、他方のスコア管理処理が実行される。
【0137】
まず、
図12のフローチャート及び
図13を用いて、第一スコア管理処理(ステップS300)について説明する。第一スコア管理処理は、一定時間(後述する第一時間)以上の不在時間が発生した場合、その時間分の行動分類のスケジュールの後倒しを許容して、行動評価のスコアの算出を行う処理である。ここで、「行動分類のスケジュールの後倒しを許容する」とは、外出によってスケジュールが後ろ倒しされた行動分類について、行動評価のスコアの減点を軽減することを指す。なお、本実施形態において、「スコアの減点を軽減する」とは、スコアの減点を行わなかったり、スコアの減点の程度を所定の割合で減らすことを指す。
【0138】
ステップS301において、制御部42は、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコア(ステップS109又はステップS110のスコア)を取得する。制御部42は、上記スコアを記憶部41から取得することができる。制御部42は、ステップS301の処理を行った後、ステップS302へ移行する。
【0139】
ステップS302において、制御部42は、利用者Aの不在時間(外出時間)を算出(特定)する。ステップS302の処理は、行動評価処理(ステップS100)におけるステップS107の処理と概ね同様である。制御部42は、ステップS302の処理を行った後、ステップS303へ移行する。
【0140】
ステップS303において、制御部42は、第一時間以上の外出があるか(利用者Aの不在時間が第一時間以上であるか)否かを判定する。上記第一時間としては、例えば1時間等の種々の時間を採用可能である。制御部42は、第一時間以上の外出があると判定した場合には、ステップS304へ移行する。一方、制御部42は、第一時間以上の外出がないと判定した場合には、ステップS311へ移行する。ステップS303の処理を行うことで、不在時間が短時間(第一時間未満)の場合は、当該不在時間をスコアの算出に考慮しないことができる(後述するステップS311を参照)。
【0141】
ステップS304において、制御部42は、行動分類のうち、許容の対象となるものを抽出する。以下では、
図13を用いて、ステップS304の処理の内容について説明する。
【0142】
図13(a)は、外出がない場合の利用者Aの行動分類(この例では夕食)のスコアの減点対象を示している。本実施形態では、夕食の正常行動範囲の時間帯を17~19時に設定し、夕食の行動の時間が19時を超えた場合は正常行動範囲外と判定し、当該行動を
図6に示すスコアの配点に基づくスコアの減点対象としている。
【0143】
図13(b)は、第一時間以上の外出があった場合の利用者Aの行動分類の減点対象を示している。図例では、利用者Aの不在時間が4時間である例を示している。この場合、制御部42は、正常行動範囲の時間帯(17~19時)を不在時間分延長(後倒し)した許容範囲を設定する。図例では、17~23時の時間帯が許容範囲となる。この場合、制御部42は、利用者Aの夕食の行動の時間が許容範囲内である場合、当該行動をスコアの減点対象としない。
【0144】
図13(c)は、利用者Aの実際の行動分類の時間と、正常行動範囲の時間帯と、を比較した例を示している。図例では、利用者Aが14時~18時の4時間外出した例を示している。なお、以下では利用者Aの行動のうち、外出後の行動分類に注目して説明を行う。
【0145】
図13(c)に示す例では、各行動分類の正常行動範囲の各時間帯は、夕食調理時間(「キッチンでのガス使用」の時間)が15時~17時、夕食(「食事」の時間)の時間が17時~19時、入浴時間(「風呂での湯使用」の時間)が20時~21時、睡眠時間(「睡眠」の時間)が22時以降に設定されている。また、図例の実際の行動分類の時間では、夕食調理時間が18時~20時、夕食の時間が20時~22時、入浴時間が22時~23時、睡眠時間が1時以降となっている。今回の例では、利用者Aの外出による不在時間が4時間であるため、上記各行動分類の正常行動範囲の時間帯を4時間分延長した許容範囲内に、外出後の各行動分類の全てが含まれる。この場合、制御部42は、上記各行動分類(「食事」(夕食)や「睡眠」等)を、許容の対象となる行動分類(許容対象行動分類)として抽出する。制御部42は、ステップS304の処理を行った後、ステップS305へ移行する。
【0146】
ステップS305において、制御部42は、利用者Aが全ての許容対象行動分類を24時までに行ったか否かを判断する。
図13(c)に示す例では、「睡眠」の時間が1時以降である。この場合、制御部42は、利用者Aが24時までに「睡眠」の行動を行っていないと判断する。制御部42は、全ての許容対象行動分類を24時までに行ったと判定した場合には、ステップS306へ移行する。一方、制御部42は、24時以降に行われた許容対象行動分類があると判定した場合には、ステップS309へ移行する。
【0147】
ステップS306において、制御部42は、許容対象行動分類のうち、24時までに行われたものについて、行動評価処理(ステップS100)において減点されたスコアを算出する。
図13(c)に示す例では、例えば夕食の時間が正常行動範囲の時間帯に対して3時間遅れている。この場合、行動評価処理(ステップS100)においては、上記時間の遅れ分、
図6に示すスコアの配点に基づくスコアの減点が行われる。制御部42は、許容対象行動分類の全てについて、上述のように行動評価処理(ステップS100)において減点されたスコアを算出すると共に、各スコアを合算したスコアD1を算出する。制御部42は、ステップS306の処理を行った後、ステップS307へ移行する。
【0148】
また、ステップS305の処理(ステップS305:NO)から移行したステップS309において、制御部42は、24時以降に行われた許容対象行動分類についてのスコアの減点の程度を所定の割合で減らすための値の算出を行う。具体的には、制御部42は、上記24時以降に行われた許容対象行動分類(「睡眠」)について、行動評価処理において減点されたスコアを算出すると共に、当該スコアの(100-X)%の値のスコアを算出する。本実施形態では、上記Xの値を10に設定している。なお、Xとしては種々の値を採用可能である。例えば、行動評価処理(ステップS100)において減点された「睡眠」のスコアが-10であった場合、制御部42は、今回の処理で-9の値を算出する。ステップS309で得られた値(例えば-9)は、後述するステップS308において許容対象行動分類のスコアの減点の一部を相殺するための値である。なお、スコアの減点の相殺についての詳細な説明は後述する。制御部42は、24時以降に行われた許容対象行動分類が複数ある場合は、各行動分類について上記算出を行う。制御部42は、ステップS309の処理を行った後、ステップS310へ移行する。
【0149】
ステップS310において、制御部42は、ステップS309における各算出結果を合算したスコアD2を算出する。制御部42は、ステップS310の処理を行った後、ステップS306へ移行する。
【0150】
ステップS306から移行したステップS307において、制御部42は、ステップS306で算出したスコアD1と、ステップS310で算出したスコアD2と、を合算して減点分のスコアを算出する。なお、24時以降に行われた行動分類がない場合(ステップS305:YES)は、スコアD1を減点分のスコアとして算出する。制御部42は、ステップS307の処理を行った後、ステップS308へ移行する。
【0151】
ステップS308において、制御部42は、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコア(ステップS109又はステップS110のスコア)と、ステップS307で算出した減点分のスコア(絶対値)を合算し、第一スコア管理処理での行動評価のスコアの算出を行う。ステップS308の処理を行うことで、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコアの減点のうち、許容対象行動分類の減点分の全部又は一部が相殺される。具体的には、当該処理を行うことで、許容対象行動分類のうち、24時までに行われた行動分類については、減点分の全部が相殺され、スコアの減点が行われない。また、許容対象行動分類のうち、24時以降に行われた行動分類については、減点分の一部が相殺され、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコアの減点の10%(1割)に相当するスコアが減点される(スコアの減点の程度が所定の割合で減らされる)。例えば行動評価処理(ステップS100)で算出されたある行動分類のスコアの減点が「-10」であれば、当該スコアの減点にステップS309で算出された値(絶対値)である「9」の値を合算することで、上記スコアの減点の一部(9割)が相殺され、当該行動分類のスコアの減点は「-1」となる。制御部42は、ステップS308の処理を行った後、第一スコア管理処理を終了する。
【0152】
また、ステップS303の処理(ステップS303:NO)から移行したステップS311において、制御部42は、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコア(ステップS109又はステップS110のスコア)を、第一スコア管理処理での行動評価のスコアとして算出する。制御部42は、ステップS311の処理を行った後、第一スコア管理処理を終了する。
【0153】
上述の如き第一スコア管理処理(ステップS300)によれば、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコアの減点のうち、許容対象行動分類の減点分を軽減する(スコアの減点を行わない、又はスコアの減点の程度を減らす)ことで、利用者Aの不在時間(外出時間)の発生に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができる。
【0154】
次に、
図14のフローチャート及び
図15を用いて、第二スコア管理処理(ステップS400)について説明する。第二スコア管理処理は、不在時間が発生した場合、上記不在時間と重複している行動分類が、不在時間の前後の一定時間(後述する第二時間)の範囲内に行われている場合は、当該行動分類のスコアの減点を行わずに行動評価のスコアの算出を行う処理である。なお、以下の説明では、第一スコア管理処理(ステップS300)の内容と重複する点については適宜省略する。
【0155】
ステップS401において、制御部42は、行動評価のスコアを取得する。ここで、「行動評価のスコア」としては、第一スコア管理処理(ステップS300)において算出された行動評価のスコア(ステップS308又はステップS311のスコア)を採用してもよく、行動評価処理(ステップS100)において算出されたスコア(ステップS109又はステップS110のスコア)を採用してもよい。制御部42は、ステップS401の処理を行った後、ステップS402へ移行する。
【0156】
ステップS402及びステップS403の処理は、第一スコア管理処理のステップS302及びステップS303の処理と同様であるので、説明を省略する。制御部42は、ステップS403において、第一時間以上の外出があると判定した場合には、ステップS404へ移行する。一方、制御部42は、第一時間以上の外出がないと判定した場合には、ステップS408へ移行する。なお、ステップS403において、ステップS303の基準となる時間(第一時間)とは異なる時間を基準として、判定を行うようにしてもよい。
【0157】
ステップS404において、制御部42は、正常行動範囲の時間帯が、外出時間(不在時間)と重複している行動分類を特定する。
図15は、利用者Aの実際の行動分類の時間と、正常行動範囲の時間帯と、を比較した例を示している。図例では、利用者Aが17時~21時の4時間外出した例を示している。また、図例では、正常行動範囲の時間帯のうち、夕食(「食事」の時間)の時間と、入浴時間(「風呂での湯使用」の時間)と、が利用者Aの不在時間と重複している例を示している。この場合、制御部42は、正常行動範囲の時間帯が、不在時間と重複している行動分類(重複行動分類)として、夕食(「食事」)及び「風呂での湯使用」を特定する。制御部42は、ステップS404の処理を行った後、ステップS405へ移行する。
【0158】
ステップS405において、制御部42は、ステップS404において特定した重複行動分類が、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれるか否かを判定する。上記第二時間としては、例えば1~2時間等の種々の時間を採用可能である。制御部42は、重複行動分類が、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれると判定した場合には、ステップS406へ移行する。一方、制御部42は、重複行動分類が、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれないと判定した場合には、ステップS408へ移行する。
【0159】
ステップS406において、制御部42は、ステップS405で不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれると判定された重複行動分類について、ステップS401で取得した行動評価のスコアにおいて減点されたスコアを算出する。
図15に示す例では、夕食の時間が正常行動範囲の時間帯に対して2時間早く、入浴時間が正常行動範囲の時間帯に対して2時間遅れているため、上記行動評価のスコアでは、
図6に示すスコアの配点に基づくスコアの減点が行われている場合がある。制御部42は、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれると判定された重複行動分類の全てについて、減点されたスコアを算出すると共に、各スコアを合算したスコアD3を算出する。制御部42は、ステップS406の処理を行った後、ステップS407へ移行する。
【0160】
ステップS407において、制御部42は、ステップS401で取得した行動評価のスコアと、ステップS406で算出したスコアD3(絶対値)を合算し、第二スコア管理処理での行動評価のスコアの算出を行う。制御部42は、ステップS407の処理を行った後、第二スコア管理処理を終了する。
【0161】
また、ステップS403の処理、又はステップS404の処理(ステップS403:NO、ステップS404:NO)から移行したステップS408において、制御部42は、ステップS401で取得した行動評価のスコアを、第二スコア管理処理での行動評価のスコアとして算出する。制御部42は、ステップS408の処理を行った後、第二スコア管理処理を終了する。
【0162】
上述の如き第二スコア管理処理(ステップS400)によれば、行動評価処理(又は第一スコア管理処理)において算出されたスコアの減点のうち、不在時間の前後第二時間の範囲内にスケジュールが変更された重複行動分類の減点分が相殺される。具体的には、第二スコア管理処理を行うことで、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれると判定された重複行動分類については、スコアの減点が行われない。第二スコア管理処理によれば、上述のように、利用者Aの不在時間(外出時間)の発生に伴うスケジュールの変更を考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができる。
【0163】
なお、第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理の両方を実行する場合には、各処理同士を整合させる観点から、各処理の内容を適宜変更するようにしてもよい。例えば、第二スコア管理処理において、第一スコア管理処理で算出されたスコアを用いて算出を行う場合は、重複行動分類のうち、第一スコア管理処理でスコアの減点が所定の割合で減らされた行動分類(24時以降に行われた行動分類)については、スコアの減点分を相殺しないようにしてもよい。
【0164】
以上、認知機能低下推定システム1が実行する第一スコア管理処理(ステップS300)及び第二スコア管理処理(ステップS400)の制御について説明した。上記各処理によれば、利用者Aの不在時間(外出時間)に起因する利用者Aの行動変化を考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができる。上記スコアの算出結果の推移に基づいて認知機能推定処理(ステップS200)を実行することで、認知機能の低下の推定をより好適に行うことができる。
【0165】
なお、本実施形態に係る各制御の説明は一例であり、上記各処理の制御は上述した例に限定されるものではなく、任意の処理を追加又は変更してもよい。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0166】
例えば、上述した例では、第二スコア管理処理において、正常行動範囲の時間帯が不在時間と重複している重複行動分類(ステップS404)のみについて、スコアの減点を行わないものとしたが、このような態様に限定されない。例えば、重複行動分類だけでなく、重複行動分類のスケジュールの変更に伴い、前倒しや後倒し、又はスケジュールの組み換え(入れ替え)が行われた行動分類についても、ステップS404において特定し、スコアの減点を行わない(又は減点を軽減する)ようにしてもよい。
【0167】
また、上述した例では、第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理の両方の処理を行う例を示したが、このような態様に限定されず、第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理のうちの一方のみを実行するようにしてもよい。
【0168】
以上の如く、本実施形態に係る認知機能低下推定システム1は、
建物(住宅H)の利用者Aの認知機能の低下を推定する認知機能低下推定システム1であって、
前記利用者Aのエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物(住宅H)内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得部(電力センサ10、ガスセンサ20、流量センサ30)と、
前記利用者Aのエネルギー消費行動ごとに設定された配点を記憶している記憶部41と、
予め設定された監視期間(24時間)内において前記データ取得部(電力センサ10、ガスセンサ20、流量センサ30)が取得した前記消費量データと、前記配点と、に基づいて、前記利用者Aの行動の評価を示すスコアを算出する(ステップS100、ステップS104)スコア算出部(制御部42)と、
前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データ(「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」)を用いて、前記利用者Aの認知機能の低下の推定レベルの判定を行う(ステップS200)認知機能推定部(制御部42)と、
を具備するものである。
【0169】
このように構成することにより、利用者Aの認知機能の低下の推定を好適に行うことができる。すなわち、推移データ(「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」)に基づいて認知機能の低下の推定レベルの判定を行うことで、単なるスコアだけでは把握し難い利用者Aの認知機能の低下を好適に推定することができる。
【0170】
また、前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコアの推移を示すスコア結果推移データ(「スコアの合計の推移」)が含まれるものである。
【0171】
このように構成することにより、スコアの算出結果(スコアの合計点数)の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0172】
また、前記スコア算出部(制御部42)は、
前記消費量データの値が、前記利用者Aのエネルギー消費行動が正常であることを示す正常行動範囲内である場合は加点し、前記消費量データの値が前記正常行動範囲外である場合は減点して前記スコアの算出を行い、
前記推移データには、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部(制御部42)による加点の回数の推移と、前記監視期間ごとに得られた前記スコア算出部(制御部42)による減点の回数の推移と、を示す配点別回数推移データ(「配点別行動回数の推移」)が含まれるものである。
【0173】
このように構成することにより、スコア算出部(制御部42)による加点及び減点の回数の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0174】
また、本実施形態に係る認知機能低下推定システム1は、
前記消費量データに基づいて、前記監視期間における前記利用者Aの異常行動の有無を判定する異常行動判定部(制御部42)を具備し、
前記認知機能推定部(制御部42)は、
前記異常行動判定部(制御部42)の判定結果と、前記推移データ(「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」)と、を用いて前記利用者Aの認知機能の低下の推定レベルの判定を行うものである。
【0175】
このように構成することにより、利用者Aによる異常行動の有無を、利用者Aの認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0176】
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間間隔が正常であることを示す第一の範囲(正常間隔範囲)が含まれ、
前記異常行動判断部(制御部42)は、
前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の時間を取得し、前記第一の範囲(正常間隔範囲)を超えた時間間隔のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判断するものである。
【0177】
このように構成することにより、利用者Aのエネルギー消費行動の時間間隔を考慮した異常行動の有無を、利用者Aの認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0178】
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の回数が正常であることを示す第二の範囲(正常回数範囲)が含まれ、
前記異常行動判断部(制御部42)は、
前記消費量データに基づいて前記エネルギー消費行動の回数を取得し、前記第二の範囲(正常回数範囲)を超えた回数のエネルギー消費行動があった場合に、異常行動があったと判断するものである。
【0179】
このように構成することにより、利用者Aのエネルギー消費行動の回数を考慮した異常行動の有無を、利用者Aの認知機能の低下の推定に反映させることができる。
【0180】
また、認知機能低下推定システム1は、
前記利用者の外出時間(不在時間)を取得する外出時間取得部(発信器50)を具備し、
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲(正常行動範囲の時間帯)が含まれ、
前記スコア算出部(制御部42)は、
前記第三の範囲(正常行動範囲の時間帯)を前記不在時間分延長させた許容範囲内に、前記エネルギー消費行動の時間が含まれる前記消費量データを許容対象データ(許容対象行動分類)として抽出し(ステップS304)、前記許容対象データに対する前記スコアの減点を軽減するものである(ステップS306~ステップS310)。
【0181】
このように構成することにより、利用者Aの外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。すなわち、許容対象行動分類に対して行動評価のスコアの減点を軽減することで、利用者Aの外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができ、上記スコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0182】
また、前記スコア算出部(制御部42)は、
前記許容対象データ(許容対象行動分類)の前記エネルギー消費行動の時間が、所定時刻(24時)の前である場合は、前記許容対象データ(許容対象行動分類)に対して前記スコアの減点を行わず(ステップS306~ステップS308)、
前記許容対象データ(許容対象行動分類)の前記エネルギー消費行動の時間が、前記所定時刻(24時)以降である場合は(ステップS305:NO)、前記許容対象データ(許容対象行動分類)に対するスコアの減点の程度を所定の割合で減らすものである(ステップS309、ステップS310)。
【0183】
このように構成することにより、利用者Aの外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定をより好適に行うことができる。すなわち、所定時刻(24時)の前に行われた許容対象行動分類に対して行動評価のスコアの減点を行わず、外出の影響で所定時刻(24時)以降に行われた許容対象行動分類に対しては、行動評価のスコアの減点は行うものの、減点の程度を所定の割合で減らすことで、利用者Aの外出に伴う行動の遅れを考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができ、上記スコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定をより好適に行うことができる。
【0184】
また、認知機能低下推定システム1は、
前記利用者Aの不在時間を取得する外出時間取得部(発信器50)を具備し、
前記正常行動範囲には、
前記利用者のエネルギー消費行動の時間が正常であることを示す第三の範囲が含まれ、
前記スコア算出部(制御部42)は、
前記第三の範囲(正常行動範囲の時間帯)が前記不在時間と重複している前記消費量データを、重複データ(重複行動分類)として特定し(ステップS404)、
前記重複データ(重複行動分類)の前記エネルギー消費行動の時間が、前記不在時間の前後一定時間(第二時間)の範囲内に含まれる場合は(ステップS405:YES)、前記重複データ(重複行動分類)に対してスコアの減点を行わないものである(ステップS406、ステップS407)。
【0185】
このように構成することにより、利用者Aの外出に伴うスケジュールの変更を考慮した行動評価のスコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。すなわち、重複行動分類のエネルギー消費行動の時間が、不在時間の前後第二時間の範囲内に含まれる場合は、重複行動分類に対してスコアの減点を行わないことで、利用者Aの外出に伴うスケジュールの前倒し、又は後倒しを考慮した行動評価のスコアの算出を行うことができ、上記スコアの算出結果の推移に基づいた認知機能の低下の推定を行うことができる。
【0186】
また、本実施形態に係る認知機能低下推定方法は、
建物(住宅H)の利用者Aの認知機能の低下を推定する認知機能低下推定方法であって、
前記利用者Aのエネルギー消費行動に伴って変化する前記建物(住宅H)内でのエネルギー消費量を示す消費量データを取得するデータ取得工程と、
予め設定された監視期間内において取得された前記消費量データと、前記利用者Aのエネルギー消費行動ごとに設定された配点と、に基づいて前記利用者Aの行動の評価を示すスコアを算出するスコア算出工程(ステップS100、ステップS104)と、
前記監視期間ごとに得られた前記スコアに関するデータの推移を示す推移データ(「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」)を用いて前記利用者Aの認知機能の低下の推定レベルの判定を行う認知機能推定処理(ステップS200)と、
を具備するものである。
【0187】
このように構成することにより、利用者Aの認知機能の低下の推定を好適に行うことができる。すなわち、推移データ(「スコアの合計の推移」、「配点別行動回数の推移」)に基づいて認知機能の低下の推定レベルの判定を行うことで、単なるスコアだけでは把握し難い利用者Aの認知機能を好適に推定することができる。
【0188】
なお、本実施形態に係る電力センサ10、ガスセンサ20、流量センサ30は、本発明に係るデータ取得部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る住宅Hは、本発明に係る建物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部42は、本発明に係るスコア算出部、認知機能推定部及び異常行動判定部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る発信器50は、本発明に係る外出時間取得部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る「スコアの合計の推移」及び「配点別行動回数の推移」は、本発明に係る推移データの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る「スコアの合計の推移」は、本発明に係るスコア結果推移データの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る「配点別行動回数の推移」は、本発明に係る配点別回数推移データの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る正常間隔範囲は、本発明に係る第一の範囲の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る正常回数範囲は、本発明に係る第二の範囲の実施の一形態である。
【0189】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0190】
例えば、本実施形態では、ゲートウェイ機能を有するコンピュータ(ホームサーバ等)である制御装置40が各種処理を行う例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、各種処理を実行する主体は任意に変更することが可能である。例えば、制御装置40として、パソコンや携帯型端末等を採用してもよい。
【0191】
また、本実施形態では、発信器50を用いて利用者Aの外出(不在)を判定する例を示したが、上述した例に限定されない。例えば、住宅H内に防犯システムが構築されている場合には、当該防犯システムが起動している間は利用者Aが外出していると判定し、当該防犯システムが休止している間は利用者Aが在宅であると判定するようにしてもよい。
【0192】
また、本実施形態では、利用者Aによる異常行動の有無を、認知機能の低下の推定に反映させた例を示したが、上述した例に限定されない。例えば、異常行動の有無の判定を用いずに、認知機能の低下の推定を行うようにしてもよい。
【0193】
また、本実施形態では、監視期間を24時間(1日)とした例を示したが、このような例に限定されない。監視期間としては、例えば1週間や1ヶ月等、任意の期間を設定可能である。
【0194】
また、本実施形態では、推定対象の日の前日のスコアの合計点数や配点別の行動回数を基準として「スコアの合計の推移」や「配点別行動回数の推移」の判定を行った例を示したが、このような例に限定されない。基準となるスコアや行動回数としては、推定対象の日の以前の種々のスコアや行動回数を採用可能である。
【0195】
また、本実施形態では、推定レベルの判定において、「スコアの合計の推移」の判定結果の優先順位を高く設定した例を示したが、このような例に限定されない。推定レベルの判定における優先順位は任意に設定可能であり、他の判定結果(「配点別行動回数の推移」等)の優先順位を高く設定してもよい。
【0196】
また、本実施形態では、第一スコア管理処理(ステップS300)及び第二スコア管理処理(ステップS400)を実行する例を示したが、このような例に限定されず、第一スコア管理処理及び第二スコア管理処理を実行しないようにしてもよい。この場合は、行動評価処理(ステップS100)で算出した行動評価のスコアをそのまま用いて、認知機能推定処理(ステップS200)を実行することができる。
【0197】
また、本実施形態では、建物の一例として、高齢者である利用者Aが居住する住宅Hを挙げたが、このような例に限定されない。例えば、建物として老人ホーム等の養護施設や病院等を採用可能である。
【0198】
また、本実施形態では、高齢の独居者を利用者Aとした例を示したが、本発明は高齢者に限定されるものではなく、様々な人を利用者Aとすることができる。例えば、単身赴任中の労働者や親元を離れた学生等、高齢者以外の独居者を利用者Aとしてもよい。このような場合は、認知機能低下推定システム1を利用者Aの安否確認等に利用してもよい。具体的には、単身赴任者を利用者Aとした場合には、平日の予定(出社又はテレワーク等)の情報と、利用者Aが在宅又は不在であることを示す計測データと、の間の乖離の有無や、計測データを用いて利用者Aが適切な時間に食事がとれているかを確認すること等に利用してもよい。また、学生を利用者Aとした場合には、平日の予定(オンライン授業、通学、アルバイト等)と、利用者Aが在宅又は不在であることを示す計測データと、の間の乖離の有無や、計測データを用いて利用者Aが適切な時間に食事がとれているかを確認すること等に利用してもよい。
【0199】
また、本実施形態では、利用者Aの監視を行う者を親族Bとした例を示したが、このような例に限定されない。監視を行う者としては、例えば、見守りサービスを営む民間会社等であってもよい。
【符号の説明】
【0200】
1 認知機能低下推定システム
10 電力センサ
20 ガスセンサ
30 流量センサ
40 制御装置