(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029079
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電場による転移性疾患患者における多発性腫瘍の治療のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20240227BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216199
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2021523197の分割
【原出願日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】16/177,913
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522239074
【氏名又は名称】ライフブリッジ イノベーションズ ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】トラヴァース ピーター エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス ケン
(72)【発明者】
【氏名】クライウィック スコット
(72)【発明者】
【氏名】トラヴァース マシュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】各々が独立してプログラム可能な複数の電極素子と、制御装置と、場発生器とを含む、複数の腫瘍治療電磁場を患者に送達するための電子装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、複数の電極素子の周波数範囲、ファイアリング構成、およびファイアリングシーケンスを動的にプログラムするように構成される。場発生器は、周波数範囲の電気信号を生成し、その電気信号は、複数の電極のうちの少なくとも2つに向けられる。マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む複数の電極素子。
【選択図】
図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に複数の腫瘍治療電磁場を送達するための電子装置であって、
それぞれが独立してプログラム可能な複数の電極素子と、
制御装置であって、複数の電極素子の周波数範囲と、ファイアリング構成と、ファイアリングシーケンスと、を動的にプログラムするように構成された制御装置と、
前記周波数範囲内で電気信号を生成する場発生器であって、電気信号は、前記複数の電極素子のうちの少なくとも2つに向けられ、前記複数の電極素子は、マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む、場発生器と、
を備える電子装置。
【請求項2】
請求項1の電子装置であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記スレーブ電極素子の少なくとも1つに接続される、電子装置。
【請求項3】
請求項2の電子装置であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、複数の前記スレーブ電極素子に接続される、電子装置。
【請求項4】
請求項2の電子装置であって、前記マスター電極素子は、前記マスター電極素子のそれぞれから前記スレーブ電極素子の対応するセットへのワイヤを介して、前記スレーブ電極素子の異なるセットにそれぞれ接続される、電子装置。
【請求項5】
請求項4の電子装置であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記ワイヤを介して、前記マスター電極素子に接続されるスレーブ電極のセット内の前記スレーブ電極素子のそれぞれを直接制御する、電子装置。
【請求項6】
請求項5の電子装置であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記制御装置と通信する、電子装置。
【請求項7】
請求項6の電子装置であって、前記ファイアリング構成は、前記制御装置から前記マスター電極素子の少なくとも1つに伝えられる、電子装置。
【請求項8】
請求項7の電子装置であって、前記マスター電極素子の少なくとも1つに結合された前記スレーブ電極素子のファイアリング構成は、前記場発生器からの電気信号を前記スレーブ電極素子のうちの選択されたものに向けることによって、前記マスター電極素子の少なくとも1つによって制御される、電子装置。
【請求項9】
請求項8の電子装置であって、前記少なくとも1つのマスター電極素子は、電気信号を前記患者に送ることができる、電子装置。
【請求項10】
請求項8の電子装置であって、前記マスター電極素子と前記スレーブ電極素子との組み合わせが、電気信号を前記患者に送る、電子装置。
【請求項11】
患者に腫瘍治療電場を送達するために電極アレイを使用する方法であって、
前記患者上の最適化された位置に複数の電極素子を配置するステップであって、前記電極素子のそれぞれが独立してプログラム可能である、配置するステップと、
制御装置を、複数の電極素子の周波数範囲と、ファイアリング構成と、ファイアリングシーケンスと、で動的にプログラムするステップと、
前記周波数範囲内で場発生器を用いて電気信号を生成するステップであって、電気信号は、前記複数の電極素子のうちの少なくとも2つに向けられ、前記複数の電極素子は、マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む、生成するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記スレーブ電極素子の少なくとも1つに接続される、方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、複数の前記スレーブ電極素子に接続される、方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、前記マスター電極素子は、前記マスター電極素子のそれぞれから前記スレーブ電極素子の対応するセットへのワイヤを介して、前記スレーブ電極素子の異なるセットにそれぞれ接続される、方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記ワイヤを介して、前記マスター電極素子に接続されるスレーブ電極のセット内の前記スレーブ電極素子のそれぞれを直接制御する、方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記マスター電極素子のそれぞれは、前記制御装置と通信する、方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、前記ファイアリング構成は、前記制御装置から前記マスター電極素子の少なくとも1つに伝えられる、方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記マスター電極素子の少なくとも1つに結合された前記スレーブ電極素子のファイアリング構成は、前記場発生器からの電気信号を前記スレーブ電極素子のうちの選択されたものに向けることによって、前記マスター電極素子の少なくとも1つによって制御される、方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、前記少なくとも1つのマスター電極素子は、電気信号を前記患者に送ることができる、方法。
【請求項20】
請求項18の方法であって、前記マスター電極素子と前記スレーブ電極素子との組み合わせが、電気信号を前記患者に送る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍および癌細胞の治療に関し、より具体的には、電磁場の適用を含む治療に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(TTF)とも称される交流電場は、低強度電磁場を使用することによって、癌処置療法の一種として採用することができる。これらの低強度場は、1秒間に数千回、急激に方向を変える。TTFは電場であるため、筋攣縮や電気的に活性化された他の組織に対する重度の有害な副作用を引き起こさない。転移性疾患の成長速度は、通常、正常で健康な細胞の成長速度よりも大きい。交流電場療法は、この高い成長速度特性を利用する。TTFは、細胞の分極性細胞内成分、すなわち、核内の遺伝物質を2つの姉妹細胞に引っ張る有糸分裂紡錘体を形成するチューブリンを操作することによって、癌細胞の有糸分裂過程および細胞質分裂を崩壊させる作用がある。TTFは、紡錘体微小管の形成を阻害し、細胞分裂を妨げる。TTFを用いて処置された転移性疾患細胞は、通常4-5時間以内にプログラムされた細胞死に至る。その結果、腫瘍サイズが有意に縮小し、固形腫瘍を完全に除去できる可能性がある。TTFは、特定の癌細胞を治療するために調整されており、従って正常な細胞に損傷を与えることはない。TTF療法は、単独の治療法として使用することができるか、または従来の薬物送達機構と組み合わせることができる。
【0003】
TTFは、医療用接着剤、衣料品などの使用を含む様々な方法によって、皮膚に接着された絶縁電極を使用して患者に適用される。絶縁電極には複数の構成があるが、いずれも一方の側に高誘電率の絶縁材料、他方に薄い金属コーティング、通常は銀、を有している。TTFを生成するのに使用される絶縁電極は、常に対になっており、両側は類似しているが、必ずしも同じである必要はない。
【0004】
当技術分野で必要とされているのは、アレイ素子の動的な再割り当てを可能にし、それによって必要とされる任意のアレイを定め、選択された電極素子からその場を適用する、TTFシステムである。
【0005】
当技術分野で必要とされているのは、アレイ素子を追加および除去するためのモジュラーシステムである。
【0006】
当技術分野で必要とされているのは、皮膚への電流リークまたは電極層の剥離によって引き起こされ得る電流の変動が検出された場合に、遮断信号を制御装置に送る電流監視センサである。
【0007】
当技術分野で必要とされているのは、アレイ素子の温度を下げながら、アレイ素子を材料に接着する方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改善された癌および腫瘍治療レジームを提供する。
【0009】
本発明は、一形態では、各々が独立してプログラム可能な複数の電極素子と、制御装置と、場発生器とを含む、複数の腫瘍治療電場を患者に送達するための電子装置を対象とする。制御装置は、複数の電極素子の周波数範囲、ファイアリング構成、およびファイアリングシーケンスを動的にプログラムするように構成される。場発生器は、周波数範囲の電気信号を生成し、その電気信号は、複数の電極素子のうちの少なくとも2つに向けられる。マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む複数の電極素子。
【0010】
本発明は、別の形態では、患者上の最適化された位置に複数の電極素子を配置するステップであって、電極素子のそれぞれが独立してプログラム可能である、配置するステップと、複数の電極素子の周波数範囲、ファイアリング構成およびファイアリングシーケンスを有する制御装置を動的にプログラムするステップと、周波数範囲内の場発生器で電気信号を生成するステップであって、電気信号は、複数の電極素子のうちの少なくとも2つに向けられ、複数の電極素子は、マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む、生成するステップと、を含む、電極アレイを使用して患者に腫瘍治療電場を送達する方法を対象とする。
【0011】
本発明の利点は、患者に取り付けられた選択された電極にプログラムされた電気信号を送達するために、マスター電極素子およびスレーブ電極素子の接続されたセットが使用されることである。この構成は、電極アレイのコストを低減する。
【0012】
本発明の別の利点は、個々の電極からの患者の皮膚の加温を少なくすることができることである。
【0013】
本発明の上記および他の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、添付図面と共に本発明の実施形態の以下の説明を参照することによって、より明らかになり、本発明はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】
図2Aは、従来技術のシステムの選択されたアレイ素子のファイアリングを示し、
図2Bは、従来技術のシステムによるアレイ素子の別の選択のファイアリングを示す。
【
図3】
図3Aは、
図1の方法を使用して、本発明の患者の腫瘍を治療するための素子の配列の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Bは、
図3Aの素子の配列の他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Cは、
図3Aおよび
図3Bの素子の配列のさらに他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Dは、
図3A-3Cの素子の配列のまたさらに他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Eは、個々のプログラム可能なアレイ素子のサブアレイを示す。
【
図4】本発明の治療プロセスの別の実施形態のステップのフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、本発明の選択されたアレイ素子を非活性化する方法の実施形態を示し、
図5Bは、本発明の選択されたアレイ素子を活性化する方法の実施形態を示す。
【
図6】本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図7A】選択された物理的位置に配置された電極素子の配列を示す。
【
図7B】電極素子を洗浄して接着剤を塗布するために使用される装置を示す。
【
図7D】保持ラックに保たれている電極素子を洗浄して接着剤を塗布するためのノズル誘導装置を示す。
【
図8】患者体験を修正するための本発明の別の方法を示す。
【
図10A】電極のサブアレイへの場発生器の結合を示す。
【
図10B】電極のサブアレイへの場発生器の別の結合を示す。
【
図11】各電極素子が場/波発生器に結合される本発明の一実施形態を示す。
【
図12】場発生器からの信号が電極に結合されている別の実施形態を示す図である。
【
図13A】電極が患者の胴体上に配置される一様式を示す。
【
図13B】患者上に電極を有する衣類の位置決めを示す。
【
図15】それらの間に可撓性配線を有する本発明の一連の電極の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
対応する参照符号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載される例示は、本発明の実施形態を例示し、そのような例示は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
図面、特に
図1を参照すると、患者を治療する準備をするための本発明の治療方法100の実施形態が示されている。腫瘍治療電場(TTF)を施す際の1つの重要なステップは、人体内の複数の腫瘍を標的とするように電場を配置することである。本発明は、素子の配置を利用するために、アレイ素子のための最適なファイアリングシーケンスと同様に、身体上のアレイ素子の配置を最適化するためのプロセスを使用する。最初に、ステップ102で、患者の身体全体、または治療されるべき腫瘍を含む少なくとも一部の3Dスキャンが行われる。次に、この3Dスキャンは、ステップ104で、Sim4lifeのような医療シミュレータにインポートされる。これらの医療シミュレータは、大部分の人々の一般的な身体に合致するファントムまたはアバターを有する。ファントムは3D体で、全ての組織型および器官が人間の解剖学的構造をシミュレートしている。我々の患者のインポートされた3Dモデルに一致するように適切な3Dファントムが選択されて、ステップ106で、患者モデルがファントムにモーフィングされる。ステップ108で、PET走査やCT走査などの患者の医療走査を、我々の患者に一致するモーフィングされたファントムにインポートする。結果は、腫瘍が正しい位置にある我々の患者の医療用シミュレーションである。ステップ110で、医療シミュレータは、シミュレートされた3D患者にTTFアレイを追加するために使用される。ステップ112で、シミュレートされたファイアリングアルゴリズムが実行され、シミュレーションにおいて、アレイ素子のどのシーケンスまたは組み合わせが、最適に腫瘍を治療するかを分析する。TTFからの電場の挙動は、ステップ114で、印加された電磁場の有効性を評価し、ファイアリングシーケンスを最適化するために、身体組織および器官を通してシミュレートされる。次に、最適ファイアリングシーケンスの結果を波発生器にエクスポートする。ステップ116で、アレイは、適切な方法で患者上に配置され、治療は、ステップ118で、波発生器に送られたファイアリングシーケンスを使用して開始する。必要な場合には、重量の損失または増加および/または新たな腫瘍の進行による体形の変化のために、このプロセスが繰り返される(ステップ120)。
【0017】
TTFを施す場合の重大な問題は、治療の有効性を最小にすることがある電極部位での熱の生成である。TTFを通じて施される電磁場の強度が、腫瘍をどの程度良好に減少させるかに有意な効果を有することは、当業者に周知である。1V/cmで腫瘍を通過する適切な周波数の電界は、腫瘍増殖を減少させるが、腫瘍を除去しない可能性がある。2V/cmから3V/cmの同じ電場は、標的腫瘍中の細胞を完全に除去する可能性がはるかに高い。しかしながら、2V/cmから3V/cmの強度の電場は、患者の皮膚上のアレイ素子に、許容できない温熱を生じさせることがある。実際、FDA認可の装置の現在の形態は、アレイ素子が華氏105.8度に達したときに強度を低減するようにプログラムされている。この加熱およびそれに続く場強度の減少は、治療の効果を低下させる。
【0018】
本発明は、アレイ素子のデューティサイクルを最小にすることによって、この問題を部分的に克服する。これは、各アレイ素子を個別に制御することによって達成され、一般に、アレイ素子のグループのみを制御する従来技術の形態のTTFよりも多くのディスク/平方インチを身体上に配置する。例えば、加えて
図2Aおよび
図2Bを参照すると、従来技術のTTF装置は、腫瘍Tの治療のために、胸部の前部の中心に3インチ(アレイ202)、および後部に同じもの(アレイ204を介して)が配置された5列の4つのディスク(それぞれ1列のみ図示)から構成されるアレイ202、204、206、208を有し得る。これらの図は、単純化のために、真っすぐな列で素子の単一の列を示しているが、アレイは実際には身体の表面上に配置されていることを理解されたい。このアレイの対には、身体の左右の側部に同様の対206、208が付随している。典型的なファイアリングシーケンスは、前から後ろへ、次に側部から側部へである。これは、各アレイを50%デューティサイクルで配置し(
図2Aおよび2Bに示されているように)、電場強度レベルを下げることによって管理しなければならないアレイ素子のかなりの量の加温を生じる。
【0019】
さて、加えて
図3A-3Dを参照すると、従来技術とは対照的に、本発明は、同一領域の前部から後部および側部から側部にわたってほぼ2倍の数のアレイ素子を使用する。
図3A-3Dは、アレイ302、304、306、および308を含み、それぞれが素子A-Hへの個々の参照記号を有する。ここでも、単一の列の素子を有する2次元で概略的に示されているが、アレイ自体は、身体の表面輪郭上に配置される素子の横列および縦列を有し、素子の3次元位置決めを提供する。各素子を独立して動的に制御することができるので、所与の領域の交互アレイ素子を標的とするファイアリングシーケンスを生成することが可能である。マクロの観点から、これは、アレイ素子に25%のデューティサイクルを有する所望の場を生成することができ、望ましくない温度まで暖まる可能性を低くし、より高い場の強度を維持し、その中の細胞がうまく分裂するのを妨げることによって、腫瘍Tを除去する可能性をより高くすることを可能にする。これは、
図3A-3Dに、各特定の図において使用される選択された素子として、より暗い素子を示すことによって、示される。素子のデューティサイクルを低減するより広い視野を超えて、素子の個々の制御は、各アレイの各素子の相対位置を知ることによって、腫瘍Tにおける所望の電場強度を維持する能力を可能にし、その結果、波発生器は、腫瘍Tの標的領域において最適な電場強度を維持するために選択されたシーケンスで使用される素子を選択することができる。例えば、波発生器は、方法100のステップ102-114で得られた情報に基づいて、素子308Gおよび302Hを選択して、それらの間に電場を生成してよい。本発明は、腫瘍Tの位置および形状に関する3D情報を有するが、アレイ302、304、306、308の特定の素子の選択は、腫瘍T内および腫瘍Tのわずかに周りの電磁場強度が維持されることができる一方で、身体の他の部分における場強度が低減された大きさであり得ることを確実にするために、行われ得る。アレイ素子のデューティサイクルを最小にするのを助けるために、アレイ素子は、平行な列だけでなく、戦略的な配置で配置さてよい。例えば、
図3Eは、オフセット列(310-312)でのアレイ配置を示し、これは、1つの列から次の列に切り替わるときに、TTFフィールドの配置の変化を最小にする可能性がより高い。アレイ素子のそのような戦略的配置は、本明細書で論じられるシミュレーションアルゴリズムに含まれる。
【0020】
さて、加えて
図4を参照すると、方法400を具現化するフローチャートが示されている。方法400は、温熱および場強度を管理するための最良のファイアリングシーケンスを決定する。3Dシミュレーションプロセスは、患者の腫瘍を標的とするのに必要とされる同じ本質的な電場カバレッジを生成するために、複数の交互のファイアリングシーケンスを含むように実行される(ステップ116参照)。ステップ402で、この情報は、波発生器にダウンロードされる。次に、ステップ404で、TTFアレイ302、304、306、308が患者に配置される。各アレイ素子上の熱センサは、リアルタイムフィードバックおよび場強度モニタリングを提供する。ステップ406で、様々なファイアリングシーケンスが実行および監視される。温度パラメータ内で最高の場強度を提供するシーケンスは、治療のために選択され、他のシーケンスは、ステップ408でドロップされる。それによって、使用時間当たりの腫瘍の減少が最も大きくなり、変化が必要な場合(ステップ410)、方法400が繰り返される。
【0021】
患者の身体にTTFのためのアレイ素子を位置決めする際の3Dシミュレーションによって提供されるガイダンスにかかわらず、実際の適用は、調整を必要とする。これは、3Dシミュレーションの再実行によってまだ補償されていない患者の体重の変化、腹部の孤立した場所における末梢神経刺激の発生、または医療用接着剤による配置の誤差の修正が困難であることなどの、多くの理由で起こり得る。本発明は、アレイ全体を調整する必要なしに、そのような発生を調整するために、個々のアレイ素子がオンおよびオフされることを提供する。これは、アレイ素子のアドレスを識別し、アレイ素子を選択的にオフおよびオンにするためのコンピュータエントリを作成することによって達成され、それは、多少面倒なタスクであり得る。このプロセスを合理化するために、本発明は、アレイ素子の頂部上を近接して掃引される磁気ツールMTの使用を提供する。磁気ツールMTは、アレイ素子に内蔵されたセンサと相互作用し、必要に応じてアクティブデューティ(
図5A参照)から素子を除去するか、アクティブデューティ(
図5B参照)に素子を入れる。磁気ツールMTは、
図5Aの方向D1のように、一方向、例えば左から右への掃引が、素子をアクティブデューティから除去し、
図5Bの方向D2のように、右から左への掃引が、要素をアクティブデューティに素子を入れるという点で、方向性がある。また、特定の素子が患者に問題があるように見える場合、この方法を使用していくつかの素子を有効/無効にするように患者に教えることも、考えられている。波発生器は、有効/無効素子を補償し、再構成された素子の観点から有効な治療が継続するようにすることが、考えられている。
【0022】
アレイ素子の配置の調整の必要性を最小限に抑える最良の方法は、各治療についてそれらを正確に配置することである(各日の治療の前に初回)。驚くべきことに、これは、適用中の姿勢の変化、またはアレイ素子が配置されている間になされる動きのために、問題となり得る。これらは、誤った開始位置を引き起こす可能性があり、それは、その後アレイ全体に広がる。これらの種類の問題の可能性を最小限に抑えるために、本発明は、小型プロジェクタ、床マーカー、および永続的または一時的なタトゥーからなる画像マーカーシステムを含む。
図6に示すように、方法600は、ステップ602で患者の治療姿勢を決定するステップ、ステップ604でアレイを最適位置に配置するステップ、ステップ606で患者の身体に少なくとも6つのタトゥードットを適用するステップ、例えば、肩の高さで2つ、前部の下腹部で1つ、後部で3つを適用するステップを、含む。ステップ608で、患者は精密写真用に位置決めされる。床マーキングは、足の位置を記録するために行われる。カメラが遠く、レンズの種類や強度などを全て記録した状態で、精密な画像を作成する。次に、プロジェクタが、足のマークから正しい位置に取り付けられる(ステップ610)。毎日、患者は、アレイの画像を身体に投影するプロジェクタ(ステップ614)の前で歩く(ステップ612)。患者は、投影された画像によるタトゥードットが身体上の実際のタトゥードットとぴったり合うまで、繰り返し位置を変える(ステップ616)。これは、アレイの画像を、患者の身体上の配置されるべきところにそろえる。次に、アレイが、画像を配置ガイドとして使用して配置される(ステップ618)。
【0023】
ここで、加えて
図7A-7Dを参照すると、長期TTF治療の課題の1つは、患者のコンプライアンスである。装置を毎日着用する必要性に加えて、毎日の洗浄、乾燥、および医療用接着剤の塗布が必要である。このタスクの負担を最小限に抑えるために、我々の技術者は、3つ全てを達成する装置700を発明した。装置の主要な構成要素は、半可撓性の携帯型保持ラック704であり、それは、メンテナンスの準備に使用されるだけでなく、新しい日の治療のためにアレイ素子706を患者の身体に再固定するのにも使用される(図示せず)。アレイ702を再適用するために、携帯型半可撓性ラック704は、適切な位置で患者の身体に対して保持され、次に、各側で引き出すことによって、内側に徐々に湾曲する(図示せず)。次に、アレイ素子706は、携帯型ラック704から飛び出し、医療用接着剤を介して患者の皮膚に接着する(図示せず)。装置710は、可撓性ラック720を保持する取り外し可能な固定ラック718と、洗浄用の水および皮膚接着用の医療用接着剤の両方を適用する可動塗布ノズル734と、乾燥ファン712、714および716と、水を除去するための排水管と、を有するチャンバから構成される。装置710は、配管された給水および電源(図示せず)を有して永久的に取り付けられることができる。おそらく、水も排水も、および電気が利用可能である家庭用洗浄機の近くである。各日の治療の終わりに、アレイは携帯型ラック722に配置される。次に、携帯型ラック722は固定ラックに配置される。固定ラックは、TTFメンテナンスが行われる領域に運ばれる。次に、アレイを有する固定ラックを718で装置内に配置し、ドアを閉じて密閉する。システム710は、最後の治療セッションから医療用接着剤を除去するために、十分な温水でアレイ素子702上を移動するように制御およびプログラムされた可動ノズル734を用いて、作動される。アレイ素子706が清浄になり、装置が排水されると、埋め込みファン712、714、716を使用して乾燥シーケンスが開始される。乾燥したら、アレイを静置して室温に戻す。次に、精密ノズル734は円盤706上を移動し、それらに医療用接着剤を噴霧する。乾燥ファン712、714、716を作動させて、医療用接着剤を乾燥させる。次に、アレイを含むラック720を取り外し、患者が翌日の治療のためにアレイを着ける場所に都合よく配置することができる。いくつかの構成では、装置は、医療用接着剤、清浄水、および排水を保つためのタンク732を備える。いくつかの構成では、排水ラインおよび供給ラインが装置710の外側に形成される。
【0024】
患者がTTFを使うにつれて、質的研究を通してケアを改善するのに使用することができる挙動パターンが現れる。本出願人は、プロセス800を開発し、それによって、波発生器制御装置(またはコンピュータ)は、開始および停止時間、真夜中の中断、温度読み取り、ファイアリング構成などの、日常活動を記録する(ステップ802)。波発生器内のコンピュータは、毎日および毎週のレポートを生成する(ステップ804)。十分なデータが収集されると、中断のパターンを強調するマスターレポートが生成される(ステップ806)。次に、このデータを使用して、患者とのインタビューをガイドするのに使用される定性調査を作成する(ステップ808)。次のようなインタビュー質問を作成することができる。「レポートは、ほとんどの夜に午前4時から午前7時までの間に治療を繰り返し中断することを示しています。お尋ねします。治療を休止させる期間中に、何が問題ですか、いら立ちますか、不快ですか?」次に、患者からの入力を使用することができ、問題を解決し、望ましくは治療を改善する(ステップ810)。
【0025】
前述のように、TTF治療の送達の課題の1つは、アレイ素子上の温熱を管理することである。目標は、アレイをできる限り自然な皮膚温度に近く保つことである。本出願人の進歩した形態のTTFは、外気にさらされず、代わりに非皮膚側にプリント回路基板またはフレックス回路を有する、アレイ素子706を有するが、そのどちらもアレイ素子の動的再割当てに必要な電子機器を保持する。次に、プリント回路基板またはフレックス回路は、熱伝導材料で封入される。アレイ素子706の層は、その場合、以下の通りである。セラミックディスクまたは片側に導電層を有する材料、回路基板、素子の頂部全体および側部の周りの熱伝導性ポッティング材であるが、患者の皮膚に接着する側にはない。問題は、ディスクからの温熱が、熱伝導性でない回路基板によって捕捉されることである。ディスクからの温熱は、回路基板の側部および周りに出ることしかできず、ゆっくりとした放出または温熱の放出の障害を引き起こす。本出願人は、この問題に講じるために、超熱伝導性の薄いシート材料であるユニークな解決策を開発した。これらの材料の中には、銅の2から5倍の熱伝導率を有するものがある。この薄いシートは、星形ドーナツ形状904に切断され、ドーナツの本体が、穴の直径よりもさらに外側に延びる。熱伝導シート材料の穴の直径は、その伝導層908およびセラミック層910を有するTTFアレイ素子の直径よりも小さい。次に、ドーナツ型は、その円周の周りで三角形の形が取り除かれる。それぞれ取り除かれた三角形の先端は、三角形の穴に向いているが、穴の端には到達しない。その結果は、中央に穴906を有する熱伝導シートの星形シートのようなものである。アレイ素子706の構築中、星形熱シート908は、セラミックアレイ素子910の下で穴906内でフレックス回路基板を中心とする。中央の穴は、電流がセラミックの非皮膚側に通電して、TTFのための電場を形成することを可能にする。一旦接着されると、プリント回路基板またはフレックス回路は、ディスク902に搭載および固定される。次に、熱伝導ポッティング材の薄いコートを使用して、アレイ素子を封入する(図示せず)。星形の熱シートの延伸点は、下に折り畳まれ、回路基板頂部上で集まってアレイ素子を完全に覆う(
図9B-9D)。次に、熱伝導ポッティング材の最終層を使用して、アレイ素子706全体を覆う(図示せず)。その結果、温熱が、分散され得るプリント回路基板の周りを移動する、埋め込まれた熱伝導経路が得られる。
【0026】
装置のさらに別の実施形態では、アレイ素子706は、
図10Aに示すように、スレーブ電極1002と完全動的電極1004との両方を含む。これにより、アレイ全体のコストを下げることができる。この実施形態では、各アレイ素子706は、マイクロプロセッサと、本明細書に記載された全ての追加された電子機器と、を完全に備えている。本実施形態では、センサ、LED、マイクロプロセッサなどを含むが、これらに限定されない電子機器は、マスター要素1004上にのみ配置される。次に、これらのマスター素子1004は、電力および感覚データを供給する直接ワイヤ1006を通して、スレーブ要素1002を制御する。マスター1004は、任意の数のスレーブ1002アレイ素子を制御し、例えば、7つのディスクの列は、1つのマスターディスク1004を有し、そして6つのスレーブディスク1002に延びる十分なワイヤ1006を有することができる。マイクロプロセッサを備えたマスターアレイ素子1004は、6つのスレーブ1002を制御して、それらをアクティブにさせるか、またはリターンにする。スレーブ1002は、マスターディスク1004から任意の方向に延びることができる。スレーブ1002は、マスター1004にワイヤによって接続された熱センサのような制限されたセンサを収容し得る。
図10Bは、電極ディスクでなくてもよいマスター1008がスレーブ1002を制御する、別の分散システムを示す。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、上述したマスター素子に関連し、本特許に記載された、各ディスク上の、制御部1106は、個々の素子ではなくアレイ素子の列1104を動的に制御するために(
図11に示すように)、波発生器(本明細書では波発生器とも称される)1102内に配置される。この実施形態は、波発生器1102内で保護される制御がより長い寿命を有するはずであるので、個々の素子のより細かい制御が必要とされない場合に、経済的な利点を提供する。
【0028】
最も有効かつ安全な強度でTTFの最も治療的な部分を送達することに関する潜在的な問題は、末梢神経刺激(PNS)の偶発的な発生である。これは、いかなる電流によっても引き起こされるのではなく、より高いレベルの強度でのTT場自体によって引き起こされる。PNSの発生は、各人がTT場の自身の耐性を有するので、予測不可能であり得る。大型の男性は、より高い強度でPNSを体験し得ないが、小柄な女性は、かなり有し得る。この問題に対する現在の解決策は、TT場の強度を抑制してPNSを排除することであるが、これは、TTF治療の最も治療的なレベルを犠牲にすることがある。本出願人の解決策は、PNSが、敏感な神経が見られる特定の箇所においてのみ時折発生し得るので、本発明が、キーアレイ素子をオフにすることである。別の解決策に関し、本出願人は、より小さいアレイ素子を用いて同じ皮膚領域カバレッジを維持することは、強度を犠牲にすることなくPNSを生じさせる可能性が低いことに注目した。この発見により、本出願人は、さらに別の実施形態を作り出すことになった。上記のマスタースレーブ構成が、大きいディスク1204から合計で同じ表面積となるより小さいディスク1206に必要なTT場を施すのに、使用される。
図12に示すように、マスター素子1202は、本出願および以前の出願で説明されているようにマスター素子1202とスレーブ素子1204との間で無線方法によって達成されると理解されるべきであるように、スレーブディスク1204を制御する。
【0029】
さらに別の実施形態では、アレイ素子の加温を管理するために、さらなる方法が採用される。微細なマイクロチューブが、セラミックディスクとプリント回路基板との間に取り付けられ、そのチューブの各端部が螺旋状に上昇し、次に、1つの連続ループを作るように接続される。螺旋は、プリント回路基板の上方に上昇し、熱伝導性ポッティング材内に封入される。マイクロチューブ内には、そのチューブ内の流体のみが一方向に流れることを可能にする一方向弁がある。ディスク近傍の流体が温まるにつれて、それは、熱伝導性ポッティング材に埋め込まれた螺旋の部分を通過するにつれて、螺旋冷却を通って上方に流れ始める。必要であれば、小さなファンをディスクの頂部に取り付けて、温熱を消散させることもできる。代替的に、マイクロチューブは、システム全体にわたって張られ得る。各ディスク上で閉ループである代わりである。チューブがディスクからディスクにシステム全体にわたって張られている場合、システム内の流体は、冷却装置を通って送り出され、アレイ上の複数の位置からそうされ得る。
【0030】
全ての実施形態において、電場形成を妨害せず、患者にとって快適であるように、アレイ素子を患者の皮膚上に直接保持する必要がある。本出願人は、
図13Aに示すような課題に対する解決策1300を有する。最初に、導電性医療用接着剤1302(Tac-Gelなど)が、アレイ素子1304の患者側に配置される。これは、銀層から絶縁された側である。これは、アレイ1306全体の全ての素子に対して行われる。次に、アレイ1306は、塗布された医療用接着剤1302を介して患者の皮膚に配置される。次に、特別に作られた伸縮性シャツ1310(通常、背中にジッパーを有する)(
図13B参照)が、患者上のアレイ1306の上にしっかりと配置される。シャツ1310は、ひとたびジッパーで閉められると、アレイを患者の胴体1308上の適所に快適に保持する。シャツの生地を通る空気孔が、冷却を可能にするように設けられている。アレイを適所にさらに固定するために、および睡眠中の移動を防ぐために、電場と相互作用しない材料で作られた特殊クリップ1312が、シャツを通じてアレイ間の接続ワイヤ/回路の周りに配置される。
【0031】
全ての実施形態において、直流が患者の皮膚に触れることを防止する重要性は、最も重要である。重大なショック事象の最も高いリスクは、反対の極性用にプログラムされた2つのアレイ素子が同時に故障した場合、電流の切れ目が皮膚を通じて回路をオンに完成することである。二重絶縁は、そのような切れ目を防ぐはずであるが、本出願人は、治療が始まる前に切れ目を発見するように設計された手順1400(
図14参照)を作成した。本発明の装置では、各アレイ素子は、アクティブまたはリターンのいずれかになるようにプログラムすることができる。極性の一方の側のみが開いている間に皮膚への電流の切れ目が生じた場合、結果として生じる回路は、微小であり、すぐ近くの領域の皮膚とのみ接続する。電流は非常に小さく、皮膚上で暖かく感じられるだけである。本発明は、そのような小さい切れ目さえも検出することができる。極性の半分のみが開いている間に起こり得る切れ目について全てのアレイ素子を試験することにより、それらが電場形成のためにアクティブおよびリターンと関連して使用される前に、悪化したアレイ素子が発見および交換されることが可能になる。手順1400では、ステップ1402でアレイ素子が患者に配置される。次に、アレイ素子は、ステップ1404でリターンが選択されない状態で電圧を加えられるようにプログラムされ、次に、ステップ1406でアレイ素子は順次電圧を加えられ、ステップ1408で漏れ電流の検出が行われ、漏れの結果として、その素子が場発生器によって無効にされる。ステップ1410で、問題の電極上のLEDが作動して、故障したユニットを示す。次に、ステップ1412で、故障したユニットを取り外し、機能電極と交換する。
【0032】
腫瘍治療電場装置が有効であるために、それらを長時間装着しなければならないことは、周知である。従って、動きを制限して不快感を引き起こすアレイは、望ましくないだけでなく、処方された治療に対する患者のコンプライアンスを低下させる可能性がある。アレイが動きを制限する程度を最小限に抑えるために、本出願人は、
図15に示すように、フレックス回路で作られた素子間にS字型コネクタ1502、1504を配置することによって、伸縮性アレイ1500を開発した。例えば、アレイが人の背中に置かれて曲がるときに、または右手で左耳に到達するときに、背中の表面積が広がる。これにより、従来のアレイ接続が引っ張られる。S字形のフレックス回路コネクタ1502、1504は、必要とされる全てのワイヤを担持し、不快感を引き起こす可能性のある領域の引っ張りを軽減するのにちょうど十分に拡張する。このように接続されたアレイ素子ディスクの列は、伸張位置にあるときに、25mm(1506で示すように)以上の余分な長さを提供することができ、患者の快適さを増加させる。
【0033】
本明細書における「アレイ」という用語の使用は、文脈によって、異なる意味をとる。ある意味では、身体上の電極のグループ化について話すとき、それは、電極の物理的な横列および縦列、または少なくともそれらの配置を、横列および縦列であろうとなかろうと、広く指す。電磁場を形成する際に使用されるアレイは、所望の場が生成され得るように動的に選択され、これは、隣接していてもいなくてもよい電極のサブセットが選択および使用されることを、意味する。
【0034】
本発明を少なくとも1つの実施形態に関して説明したが、本発明は、本開示の趣旨および範囲内でさらに修正することができる。本出願は、従って、その一般的な原理を使用して、本発明の任意の変形、使用、または適応を包含することが意図される。さらに、本出願は、本発明が関係し、特許請求の範囲に記載されている、当技術分野における既知のまたは慣例の実施の範囲内にあるような本開示からの逸脱を包含することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の身体に複数の腫瘍治療電磁場を送達するための装置であって、
前記個人の前記身体に置くための、独立して制御可能な複数の電極素子と、
前記電極素子に印加される電気信号の周波数範囲と、前記複数の電極素子のファイアリング構成と、ファイアリングシーケンスとを動的にプログラムするように構成されている制御装置と、
前記個人の前記身体に適用するための前記電極素子を保持するように構成された可撓性ラックと、
を備える装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記複数の電極素子の温度を検出し、前記電極素子に印加される電気信号の電極素子の周波数範囲、前記複数の電極素子のファイアリング構成、およびファイアリングシーケンスを動的にプログラムすることにより、検出時の温度と比較して前記複数の電極素子の温度を下げるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数範囲内で電気信号を生成する場発生器であって、電気信号は、前記複数の電極素子のうちの少なくとも2つに向けられる、場発生器を、さらに備える請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の電極素子は、マスター電極素子およびスレーブ電極素子の両方を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置は、各電極素子のデューティサイクルを最適化するために、各電極素子を個々に制御するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記複数の電極素子と結合した複数の熱センサをさらに含み、各熱センサは、それぞれの電極素子の温度を検知するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の電極素子の温度を検出するために前記複数の電極素子の検知された温度を、前記複数の熱センサから、受け取るように構成され、前記制御装置は、前記複数の電極素子の検知された温度に応えて前記複数の電極素子のオルタネートファイアリングシーケンスを決定するようにさらに構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置は、ファイアリングシーケンスを監視し、前記複数の電極素子に最適なデューティサイクルを有する最適な場強度を提供するファイアリングシーケンスを選択するように、構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
個人の身体に対して前記複数の電極素子を保持するように構成されたシャツをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記マスター電極素子のそれぞれは、前記スレーブ電極素子の少なくとも1つに接続される、請求項4に記載の装置。
【請求項11】
前記マスター電極素子のそれぞれは、前記マスター電極素子を前記スレーブ電極素子に接続する直接ワイヤを介して電力および感覚データを供給することにより、前記マスター電極素子に接続された前記スレーブ電極素子のそれぞれを直接制御する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電極素子は、前記電極素子の身体対向側に導電性接着剤を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記制御装置は、個々の電極素子を、独立してオンまたはオフにするように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記電極素子の漏れ電流を検出するように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記電極素子の漏れ電流が検出されると、前記電極素子がオフにされる、請求項14に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
【
図1】本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】
図2Aは、従来技術のシステムの選択されたアレイ素子のファイアリングを示し、
図2Bは、従来技術のシステムによるアレイ素子の別の選択のファイアリングを示す。
【
図3】
図3Aは、
図1の方法を使用して、本発明の患者の腫瘍を治療するための素子の配列の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Bは、
図3Aの素子の配列の他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Cは、
図3Aおよび
図3Bの素子の配列のさらに他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Dは、
図3A-3Cの素子の配列のまたさらに他の個々のプログラム可能なアレイ素子のファイアリングを示し、
図3Eは、個々のプログラム可能なアレイ素子のサブアレイを示す。
【
図4】本発明の治療プロセスの別の実施形態のステップのフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、本発明の選択されたアレイ素子を非活性化する方法の実施形態を示し、
図5Bは、本発明の選択されたアレイ素子を活性化する方法の実施形態を示す。
【
図6】本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図7A】選択された物理的位置に配置された電極素子の配列を示す。
【
図7B】電極素子を洗浄して接着剤を塗布するために使用される装置を示す。
【
図7D】保持ラックに保たれている電極素子を洗浄して接着剤を塗布するためのノズル誘導装置を示す。
【
図8】患者体験を修正するための本発明の別の方法を示す。
【
図10A】電極のサブアレイへの場発生器の結合を示す。
【
図10B】電極のサブアレイへの場発生器の別の結合を示す。
【
図11】各電極素子が
場発生器に結合される本発明の一実施形態を示す。
【
図12】場発生器からの信号が電極に結合されている別の実施形態を示す図である。
【
図13A】電極が患者の胴体上に配置される一様式を示す。
【
図13B】患者上に電極を有する衣類の位置決めを示す。
【
図15】それらの間に可撓性配線を有する本発明の一連の電極の実施形態を示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図面、特に
図1を参照すると、患者を治療する準備をするための本発明の治療方法100の実施形態が示されている。腫瘍治療電場(TTF)を施す際の1つの重要なステップは、人体内の複数の腫瘍を標的とするように電場を配置することである。本発明は、素子の配置を利用するために、アレイ素子のための最適なファイアリングシーケンスと同様に、身体上のアレイ素子の配置を最適化するためのプロセスを使用する。最初に、ステップ102で、患者の身体全体、または治療されるべき腫瘍を含む少なくとも一部の3Dスキャンが行われる。次に、この3Dスキャンは、ステップ104で、Sim4lifeのような医療シミュレータにインポートされる。これらの医療シミュレータは、大部分の人々の一般的な身体に合致するファントムまたはアバターを有する。ファントムは3D体で、全ての組織型および器官が人間の解剖学的構造をシミュレートしている。我々の患者のインポートされた3Dモデルに一致するように適切な3Dファントムが選択されて、ステップ106で、患者モデルがファントムにモーフィングされる。ステップ108で、PET走査やCT走査などの患者の医療走査を、我々の患者に一致するモーフィングされたファントムにインポートする。結果は、腫瘍が正しい位置にある我々の患者の医療用シミュレーションである。ステップ110で、医療シミュレータは、シミュレートされた3D患者にTTFアレイを追加するために使用される。ステップ112で、シミュレートされたファイアリングアルゴリズムが実行され、シミュレーションにおいて、アレイ素子のどのシーケンスまたは組み合わせが、最適に腫瘍を治療するかを分析する。TTFからの電場の挙動は、ステップ114で、印加された電磁場の有効性を評価し、ファイアリングシーケンスを最適化するために、身体組織および器官を通してシミュレートされる。次に、最適ファイアリングシーケンスの結果を
場発生器にエクスポートする。ステップ116で、アレイは、適切な方法で患者上に配置され、治療は、ステップ118で、
場発生器に送られたファイアリングシーケンスを使用して開始する。必要な場合には、重量の損失または増加および/または新たな腫瘍の進行による体形の変化のために、このプロセスが繰り返される(ステップ120)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
さて、加えて
図3A-3Dを参照すると、従来技術とは対照的に、本発明は、同一領域の前部から後部および側部から側部にわたってほぼ2倍の数のアレイ素子を使用する。
図3A-3Dは、アレイ302、304、306、および308を含み、それぞれが素子A-Hへの個々の参照記号を有する。ここでも、単一の列の素子を有する2次元で概略的に示されているが、アレイ自体は、身体の表面輪郭上に配置される素子の横列および縦列を有し、素子の3次元位置決めを提供する。各素子を独立して動的に制御することができるので、所与の領域の交互アレイ素子を標的とするファイアリングシーケンスを生成することが可能である。マクロの観点から、これは、アレイ素子に25%のデューティサイクルを有する所望の場を生成することができ、望ましくない温度まで暖まる可能性を低くし、より高い場の強度を維持し、その中の細胞がうまく分裂するのを妨げることによって、腫瘍Tを除去する可能性をより高くすることを可能にする。これは、
図3A-3Dに、各特定の図において使用される選択された素子として、より暗い素子を示すことによって、示される。素子のデューティサイクルを低減するより広い視野を超えて、素子の個々の制御は、各アレイの各素子の相対位置を知ることによって、腫瘍Tにおける所望の電場強度を維持する能力を可能にし、その結果、
場発生器は、腫瘍Tの標的領域において最適な電場強度を維持するために選択されたシーケンスで使用される素子を選択することができる。例えば、
場発生器は、方法100のステップ102-114で得られた情報に基づいて、素子308Gおよび302Hを選択して、それらの間に電場を生成してよい。本発明は、腫瘍Tの位置および形状に関する3D情報を有するが、アレイ302、304、306、308の特定の素子の選択は、腫瘍T内および腫瘍Tのわずかに周りの電磁場強度が維持されることができる一方で、身体の他の部分における場強度が低減された大きさであり得ることを確実にするために、行われ得る。アレイ素子のデューティサイクルを最小にするのを助けるために、アレイ素子は、平行な列だけでなく、戦略的な配置で配置さてよい。例えば、
図3Eは、オフセット列(310-312)でのアレイ配置を示し、これは、1つの列から次の列に切り替わるときに、TTFフィールドの配置の変化を最小にする可能性がより高い。アレイ素子のそのような戦略的配置は、本明細書で論じられるシミュレーションアルゴリズムに含まれる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
さて、加えて
図4を参照すると、方法400を具現化するフローチャートが示されている。方法400は、温熱および場強度を管理するための最良のファイアリングシーケンスを決定する。3Dシミュレーションプロセスは、患者の腫瘍を標的とするのに必要とされる同じ本質的な電場カバレッジを生成するために、複数の交互のファイアリングシーケンスを含むように実行される(ステップ116参照)。ステップ402で、この情報は、
場発生器にダウンロードされる。次に、ステップ404で、TTFアレイ302、304、306、308が患者に配置される。各アレイ素子上の熱センサは、リアルタイムフィードバックおよび場強度モニタリングを提供する。ステップ406で、様々なファイアリングシーケンスが実行および監視される。温度パラメータ内で最高の場強度を提供するシーケンスは、治療のために選択され、他のシーケンスは、ステップ408でドロップされる。それによって、使用時間当たりの腫瘍の減少が最も大きくなり、変化が必要な場合(ステップ410)、方法400が繰り返される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
患者の身体にTTFのためのアレイ素子を位置決めする際の3Dシミュレーションによって提供されるガイダンスにかかわらず、実際の適用は、調整を必要とする。これは、3Dシミュレーションの再実行によってまだ補償されていない患者の体重の変化、腹部の孤立した場所における末梢神経刺激の発生、または医療用接着剤による配置の誤差の修正が困難であることなどの、多くの理由で起こり得る。本発明は、アレイ全体を調整する必要なしに、そのような発生を調整するために、個々のアレイ素子がオンおよびオフされることを提供する。これは、アレイ素子のアドレスを識別し、アレイ素子を選択的にオフおよびオンにするためのコンピュータエントリを作成することによって達成され、それは、多少面倒なタスクであり得る。このプロセスを合理化するために、本発明は、アレイ素子の頂部上を近接して掃引される磁気ツールMTの使用を提供する。磁気ツールMTは、アレイ素子に内蔵されたセンサと相互作用し、必要に応じてアクティブデューティ(
図5A参照)から素子を除去するか、アクティブデューティ(
図5B参照)に素子を入れる。磁気ツールMTは、
図5Aの方向D1のように、一方向、例えば左から右への掃引が、素子をアクティブデューティから除去し、
図5Bの方向D2のように、右から左への掃引が、要素をアクティブデューティに素子を入れるという点で、方向性がある。また、特定の素子が患者に問題があるように見える場合、この方法を使用していくつかの素子を有効/無効にするように患者に教えることも、考えられている。
場発生器は、有効/無効素子を補償し、再構成された素子の観点から有効な治療が継続するようにすることが、考えられている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
患者がTTFを使うにつれて、質的研究を通してケアを改善するのに使用することができる挙動パターンが現れる。本出願人は、プロセス800を開発し、それによって、場発生器制御装置(またはコンピュータ)は、開始および停止時間、真夜中の中断、温度読み取り、ファイアリング構成などの、日常活動を記録する(ステップ802)。場発生器内のコンピュータは、毎日および毎週のレポートを生成する(ステップ804)。十分なデータが収集されると、中断のパターンを強調するマスターレポートが生成される(ステップ806)。次に、このデータを使用して、患者とのインタビューをガイドするのに使用される定性調査を作成する(ステップ808)。次のようなインタビュー質問を作成することができる。「レポートは、ほとんどの夜に午前4時から午前7時までの間に治療を繰り返し中断することを示しています。お尋ねします。治療を休止させる期間中に、何が問題ですか、いら立ちますか、不快ですか?」次に、患者からの入力を使用することができ、問題を解決し、望ましくは治療を改善する(ステップ810)。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本発明のさらに別の実施形態では、上述したマスター素子に関連し、本特許に記載された、各ディスク上の、制御部1106は、個々の素子ではなくアレイ素子の列1104を動的に制御するために(
図11に示すように)、
場発生器(本明細書では
場発生器とも称される)1102内に配置される。この実施形態は、
場発生器1102内で保護される制御がより長い寿命を有するはずであるので、個々の素子のより細かい制御が必要とされない場合に、経済的な利点を提供する。
【外国語明細書】