(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029083
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】径方向皮質固定用のねじ山付き髄内釘
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20240227BHJP
A61B 17/72 20060101ALI20240227BHJP
A61F 2/42 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61B17/86
A61B17/72
A61F2/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216676
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2020534810の分割
【原出願日】2018-09-04
(31)【優先権主張番号】62/554,123
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520075627
【氏名又は名称】エクソームド コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EXSOMED CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャンペイン、ロイド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゾルドス、ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリガンティ、リチャード ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リーザー、アンドルー ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小骨およびその他の小骨断片の関節内および関節外の骨折部ならびに癒着不能部の固定のためのデバイスおよびシステムを提供する。
【解決手段】ねじ山付きの釘10は、頑丈な長さであり、切削先端および長手方向切削溝を含む遠位端、移行ポイントにある切削溝付き段差直径、ならびに釘の長手方向中心軸に沿った任意選択のカニューレ状部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削面を含む後端から長手方向軸に沿って間隔を置いて配置されたトルク伝動凹部を含む無頭の前終端を有するシャフトと、
近位終端から中間移行部まで延在し、内径と外径とを有し、当該内径または当該外径のどちらかが前記近位端から前記中間移行部まで第1の一定値にある、第1のねじ山付きセクションと、
前記中間移行部と遠位端との間に延在し、内径と外径とを有し、当該内径または当該外径のどちらかが前記近位端から前記中間移行部まで第2の一定値にあり、前記第1の一定値が前記第2の一定値より大きい、第2のねじ山付きセクションと、
を備える、髄内インプラント。
【請求項2】
前記第1のねじ山付きセクションのねじ山が、前記第2のねじ山付きセクションのねじ山と同じピッチを有する、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項3】
前記第1のねじ山付きセクションの前記ねじ山が、前記第2のねじ山付きセクションの前記ねじ山とつながっている、請求項2に記載の髄内インプラント。
【請求項4】
前記第1のセクションおよび前記第2のセクションの前記ねじ山が、鋸歯ねじ山である、請求項3に記載の髄内インプラント。
【請求項5】
前記中間移行部が、前記近位終端と前記遠位端との間の前記長手方向軸に沿った距離の25%から75%に存在する、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項6】
前記中間移行部が、前記近位終端と前記遠位端との間の前記長手方向軸に沿った距離の35%から45%に存在する、請求項5に記載の髄内インプラント。
【請求項7】
前記中間移行部が少なくとも1つの切削溝を含む、請求項5に記載の髄内インプラント。
【請求項8】
前記中間移行部が複数の径方向に間隔を置いた切削溝を含む、請求項7に記載の髄内インプラント。
【請求項9】
中間セクションが2つから5つの切削溝を含む、請求項8に記載の髄内インプラント。
【請求項10】
前記遠位端が少なくとも1つの切削溝を含む、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項11】
前記遠位端が複数の径方向に間隔を置いた切削溝を含む、請求項10に記載の髄内インプラント。
【請求項12】
前記遠位端が2つから5つの切削溝を含む、請求項11に記載の髄内インプラント。
【請求項13】
前記長手方向軸に沿ってカニューレをさらに備える、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項14】
前記カニューレが、前記近位端から切断端まで前記インプラント全体にわたって延在する、請求項13に記載の髄内インプラント。
【請求項15】
前記第1のねじ山付きセクションの前記ねじ山が、前記第2のねじ山付きセクションの前記ねじ山とは異なるピッチを有する、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項16】
前記第2のねじ山付きセクションの前記ねじ山のピッチが、前記第1のねじ山付きセクションの前記ピッチより細かいピッチである、請求項15に記載の髄内インプラント。
【請求項17】
前記ねじ山が2条リードねじ山である、請求項1に記載の髄内インプラント。
【請求項18】
前記2条リードねじ山が、第1のピッチ値を有する第1のねじ山と、第2のピッチ値を有する第2のねじ山とを含み、前記第1のピッチ値と前記第2のピッチ値が同じである、請求項17に記載の髄内インプラント。
【請求項19】
前記第1のねじ山が第1のねじ山高さを有し、前記第2のねじ山が第2のねじ山高さを有し、前記第2のねじ山高さが前記第1のねじ山高さの値の30%から75%である、請求項18に記載の髄内インプラント。
【請求項20】
軸周りの髄内管と頭とを有する、中手骨または中足骨である骨の固定方法であって、
前記骨を外科的に露出させるステップと、
皮質骨の内面を有する管を露出させるように、前記骨内に前記軸に沿って延在する孔を形成するステップと、
前記孔にガイド・ワイヤを挿入するステップと、
前記ガイド・ワイヤの上に、カニューレ状部を有するインプラントを配置し、前記インプラントを前記骨の前記孔にねじ込むステップと、を含み、前記インプラントが、第1の外径の第1の端部と、第2の外径の第2の端部とをさらに含み、近位端と遠位端との間の移行部が、少なくとも1つの切削溝を含み、前記遠位端が、少なくとも1つの切削溝を含み、前記近位端が、トルク伝動機能を含み、前記インプラントが、近位セクションおよび遠位セクションに0.1から0.2のピッチを有するねじ山を有し、前記インプラントの前記ねじ山によって、前記骨の内周面に対して前記インプラントが固定される、固定方法。
【請求項21】
前記骨が中手骨であり、前記インプラントが前記中手骨の峡部を通って延在する、請求項17に記載の固定方法。
【請求項22】
第1の部分が第1の長さに沿って一定の第1の短径を有し、第2の部分が第2の長さに沿って一定の第2の短径を有する、請求項17に記載の固定方法。
【請求項23】
前記第1の長さが前記第2の長さの40%を超える、請求項19に記載の固定方法。
【請求項24】
前記第1の長さが前記第2の長さの50%を超える、請求項20に記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小骨および他の小骨断片の骨折部および癒着不能部の固定のためのデバイスおよびシステムに関し、より詳細には、頑丈な長さ(robust length)であり、トルク伝動凹部(driving recess)を含む無頭前端、切削先端および長手方向切削溝を含む後端、移行ポイントにある切削溝付き中間段差直径を含む、ねじ山付きの釘に関する。任意選択で、デバイスは、釘の長手方向中心軸に沿ってカニューレ状部(cannulation)を含む。この髄内釘は、具体的には中手骨および中足骨での使用のために、骨幹全長にわたって内側からの周方向皮質固定を提供する。したがって、インプラントは、その全長の少なくとも80%+/-15%に沿った、貫入を補助するらせん状のねじ山による係合により、髄内管長さの少なくとも60%+/-15%にわたる、内側皮質との周方向の少なくとも1つの摩擦嵌合を実現する。
【背景技術】
【0002】
中手部および中足部の外傷は、機能損失、後遺症、および長く負担になる治療プロトコルの結果、生活が一変するほどの影響を被害者に与えることがある。特に、その者が「その日暮らし」の生活している場合、足または手を使用できなければ暮らすことが困難、ときには不可能なこともある。
【0003】
現在の治療法としては、プレート固定システムおよびワイヤ固定のような外科術による内部固定、または、非転移骨折の場合、外科的介入なしに手または足をギプスで固定することが挙げられる。これらの治療には、かなりの期間、すなわち数週間または数か月間を要し、その間負傷した手または足を動かせない。しかし、これらの期間の間使わないために、癒着、筋肉の損失、自己受容および神経的な健康に関する深刻な問題が生じ得る。さらに、治療プロトコルの副作用以外にも、これらの長い期間の間に手または足が使えないことからくる日常生活のコンプライアンスおよび課題に関する問題がある。
【0004】
手および足の事故は、交通事故、小火器の暴発、および極限スポーツ活動を含む様々な活動の間に起こる可能性があるが、そうした外傷性事象のリスクと肉体労働および低賃金の仕事にはより高い相関性がある。したがって、そのような事故の発生率および影響は、賃金水準のより低い仕事に偏っており、しばしば、すでに経済的に危険な状態にある労働者を巻き込むことがある。こうして、手または足に外傷を負った者は、しばしば、負傷した手足の早期の使用を含む違反を犯すか、場合によっては、仕事をすべて失うことを含む所得損失を被ることになり、それが「生活の収支を合わせる」能力の急速な低下を引き起こし、この負傷から始まって家庭および家族の安定を失うことへとリスクが拡大していく。
【0005】
結局、手は、我々人類のあらゆる側面で最重要であり、我々と社会との関係を決定し定義する際に助けとなることに留意されたい。特に、手の負傷は、手の外見が損なわれてしまった、または身体障害のあるように見える場合、その社会での役割の関係および我々の認知の邪魔となる。我々の手は、常に自分からも世間からも見え、衰弱性の傷跡、または傷跡などの凹凸、さらには中手部における手術器具によるフランケンシュタインのような外郭線は、外傷事象およびその後遺症の目に見える痛みを思い起こさせるものである。
【0006】
腕および脚の小骨に使用される従来の整形外科用インプラントは、長い骨および大きな関節のものとは異なる基準セットを有する。これらの骨は、(一般に、肘および肘下(elbow and below)、ならびに膝および膝下において)直径がより小さくなる傾向があり、皮質と海綿骨の様々な比率が生じ、その上、手術手技を複雑にするような、覆っている軟組織の問題、比較的大きな腱のネクサス(nexus)の問題、靭帯および神経の問題をもたらす。本発明は、これらの問題を解決し、髄内固定を目的とした、最も重要には日常生活への素早い復帰を可能にし、身体の不自由さ、痛みおよびリハビリテーションを低減することを目的としたねじ山付きの釘により、折れたまたは骨折した小骨を外科的に固定する解決策を提供することを意図する。
【0007】
1つの典型的な小骨インプラント場所は、手または足であり、具体的には中手骨および中足骨である。手の構造は、手首関節で橈骨および尺骨と接する舟状骨および他の手根骨、中手骨、ならびに指骨からなる。手の甲は、中手骨を含む。中手骨は、各指および親指を手に連結し、一方、指および親指は、指骨と呼ばれる骨から形成される。指骨と中手骨の連結は、「指節」関節または中手指節関節(MCP関節)と呼ばれ、指または親指を曲げるときにヒンジのような役割を果たす。各指には、3つの指骨があり、それらは、指骨間関節(IP関節)と呼ばれる2つの関節によって分離されている。近位IP関節(PIP関節)は、MCP関節に最も近い関節である。指の先に最も近い他方の関節は、遠位IP関節(DIP関節)である。親指には、IP関節が1つしかない。関節は、端部が関節軟骨で覆われている。足は、類似の構造を有し、下肢の脛骨と腓骨の間をつなぐ距骨、および足の踵骨、楔状骨(すなわち、立方骨および舟状骨)を含む足根骨からなる足中部、中足骨および指骨を含む。
【0008】
四肢のこれらの骨の損傷は、捻挫、骨折または外傷の結果起こることがあり、一般に、その後、損傷した骨を再位置合わせする整復術を行い、それを定位置でその骨がその位置で癒着できるように安定化させなければならない。
【0009】
以前は、これらの折れた骨を安定させる外科処置は、パイロットホールを開けて、骨の長さに沿ってKワイヤまたは滑らかな釘を挿入し、骨が癒着する間それを定位置に保持することを伴っていた。まず、骨折部を通って延在する開口を中手骨に形成し、釘を骨折部の両側にある骨の諸部分に不動性をもたらすように軟質の海綿状中間骨を通って開口に押し込むことによって位置決めする。ある期間の後、骨から釘を除去する次の手術が必要となる。この処置に関する問題としては、釘は骨内に固定されず、実際は主に海綿状中央骨の髄質と相互接触するので、中手骨の中を通って周囲組織内へと移動してしまうことがある、という点が挙げられる。ときには、これが、腱または軟骨の断裂または損傷など、軟組織に損傷を与えることになり、および/または痛みを引き起こすこともある。釘に関する他の問題としては、釘が移動してしまうので、その後の手術でそれを除去することが必要となる、という点である。さらに、ピンおよび釘の近位端は、腱の刺激、腱の破断または皮膚の刺激および感染を引き起こすおそれがある。
【0010】
この問題に対する1つの理論的な解決策としては、骨にねじを挿入することが挙げられるが、ねじを(比較的細く、デリケートで脆い骨である)中手骨の全長に配置するには、高いトルクが必要となる。そのような処置は、長くかかり、骨の損傷の可能性があり、またはねじの推進頭部の破損により骨内に形成された開口への完全な挿入ができなくなるおそれがある。現在のねじは、髄内配置専用の設計ではない。例えば、現在のねじは、多くの場合、長さが十分でなく、さらには、中手骨または中足骨の狭窄したくびれを考慮していない。
【0011】
したがって、本発明は、舟状骨、および他の手根骨、中手骨、足根骨、中足骨、膝蓋骨、尺骨、茎状部(styloid)、小頭、橈骨頭、および橈骨茎状部を含む、例えば小関節の関節固定、腱膜瘤切除および骨切術を含む、小骨および小骨断片の関節内および関節外の骨折部ならびに癒着不能部の固定を意図し、好ましくは、中手骨および指骨の骨折部の髄内固定を意図し、外科医に単純なアプローチによる信頼性の高い解決策を提供する。長さと直径の比率が大きく(15:1超、好ましくは20:1超)、異なる直径の(前長では3~5mmのより小さな直径であり、釘頭部の方に向かう後長では0.4~2mmさらに小さく、良い例として3.2/3.6または4.0/4.5である)、(3.5センチメートル超、好ましくは4センチメートル超、または5センチメートル+/-1もしくは0.5センチメートル、または7.5センチメートルまでの)頑丈な長さの提供が、強く安定した固定および正確な整復をもたらすように天然の中手骨および指骨の位置に正確に適合する。さらに、本発明は、髄内管を、実質的にその全長(すなわち、45長さ%超、またはより好ましくは50長さ%超、より好ましくは60長さ%超または70長さ%、および80長さ%までまたは98長さ%まで)に沿って埋め尽くすことを意図する。設計は、前、つまり釘端から遠ざかっていく、セクションを含み、このセクションのところにおいて、より小さな外径の根部およびねじ山頂部を有するが、この前セクションが全長の40~60%からである場合、内側カニューレ状部は比較的一定である。より大きな直径セクションは、釘のトルク受容端の隣の領域を補強し、したがってより多くの材料により、デバイス内のトルク伝達が可能になり、2つの直径同士の間の移行セクションにある切削溝が、より小さな前部分自体が潰れることのないようにする。したがって、デバイスは、髄内管へのインプラントのねじ込みまたは抜き取りによる挿入および除去の両方を可能にするように設計される。
【0012】
さらに、本発明は、釘が骨幹の実質的に全長距離(峡部を越えた貫入を含めて少なくとも60%)に延在するだけでなく、管内での「径方向」または「周方向」固定を実現、好ましくは360°の周方向内側皮質固定を実現することにも使用されるように、内側皮質骨を捕捉するように設計されることが特徴的である。これは、中手骨(および中足骨)が狭窄したくびれ領域である、中手骨(および中足骨)の「峡部」を含むので、中手骨適用例にとって新奇である。従来のねじおよび髄内インプラントは、十分な長さに係合するまたは実質的な全長距離にわたって周方向に管の内壁を捕らえるような設計になっていないが、本設計は、前切削先端と中間切削機能を含む段差のある直径を含み、それによって本発明は、それが管内に前進できるようなサイズまで管をリーミングすることができる。こうして、管は、周方向皮質固定に向けた準備処置を受け、それが、本発明に特有であり、内側皮質壁に固定される表面を含むインプラントの使用、または具体的には中足骨の中手骨の髄内シャフトの使用に関係している。釘は、釘の全長に沿った圧縮力の適用を回避することを意図し、骨内に空隙がある場合または骨断片が欠けている場合に使用することができ、中手骨の長さを回復させるように隙間のある残りの骨断片を安定化させる。釘は、2つの直径があり、前直径セクションおよび後直径セクションともに実質的に円筒形であり、重要には、デバイスの除去中の管内の孔との接触の維持および釘を抜き取ることによる簡単な除去を可能にするようなテーパ状または円錐形にはなっていない。
【0013】
本発明は、肉体労働者から介護人、プロの音楽家、アーティストおよびプロの運動選手に至る仕事を含めて、2週間から翌日という短期間で患者を復職させる処置において使用することができる。便利な暮らしへの復帰、ならびに休職期間、リハビリテーションおよび日常生活のリスクの低減は、非常に大きな社会的救済となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、中手骨または中足骨の骨折または脱臼の修復に関する問題を、釘とねじの独特な組み合わせのデバイスであって、このデバイスは、周方向の髄内皮質固定を実現し、(損傷した中手骨の長さに沿って0から2、2.5またはさらには3cmまでの骨間隙がある場合でも)内側から骨を支持し、少なくとも1つの段差直径および直径同士の間に溝付き移行部を設けることで骨の狭窄部分に適合するような、寸法および形状になっているので、骨に損傷を与えることなく骨に挿入することができる、デバイスを提供することによって、ならびに、圧縮を回避し、隆起部分から生じ得る刺激を回避するように骨の表面下に位置させることができる、均等なリードの無頭設計を提供することによって、ならびに、挿入のときの軟組織、軟骨および脈管の損傷を最低限に抑え、癒着の加速およびより早期の復職のための早期に活発に動かす術後プロトコルを促進するように設計された髄内インプラントを用いたカニューレ外科技法(cannulated surgical technique)を施すことによって、解決する。
【0015】
さらに、デバイスは、径方向内側固定を実現するように、骨内に固定されるので、移動がなくなり、デバイスを除去するためのそれに次ぐ手術の必要もなくなる。したがって、デバイスは、外径(長径)を画定するねじ山付き部分の外側縁に対して内径(短径)を画定する外側の外面をその長さに(35から75、またはさらに120までもしくは130mmまでの長さに)沿って有するカニューレ状の円筒形コアをもたらす。設計は、後部分において、少なくとも外径または内径、より好ましくは外径と内径両方の増加を可能にする、1つまたは複数の段状部分を含む。さらに、移行領域は、骨の狭窄したまたは「くびれた」部分のクリアランスを見込んで、釘のある長さ(すなわち、後端からの全長の距離の25%から75%、好ましくは35%から60%)のところでのこの増加を構成するように、長手方向切削溝(3から10mmの長さのものを2~5つ)を含む。カニューレ状部は、一般に、(製造しやすくするために)釘の全長にわたって直径が一定であるが、2つの直径を含んでもよく、その場合、2つの直径は、釘のより大きな直径または後端のところに、内側または外側の六角形またはヘックスローブ(hexalobe)などの形態のトルク伝動機能を含む過切削部(over grind)を含んでもよい。
【0016】
デバイスは、ベベル付き前先端に2~5つの切削歯を有し、さらに長辺に沿って追加の長手方向溝を含む、前部分を含む。これらの長手方向溝は、他の溝と同様に、海綿状の髄内材料をリーミングし、髄内路の内面ならびに外科術の間に存在する追加の海綿状材料のための場所をスコアリング(scoring)することを意図する。
【0017】
外径と内径との間に画定されるねじ山は、適当には、ピッチが3から5mm、好ましくは少なくとも4.0mm+/-0.25の右巻きの1条ねじ山、または、リード値が同じであり、ピッチ値がリード値の半分であり、二次ねじ山が一次ねじ山の高さよりも低い高さ、すなわち一次ねじ山の高さの40%から75%もしくは50%+/-5%の高さを有する、2条リードねじ(lead thread)を含むことができる。ねじ山の進み側および追い側のフランクは、一緒に5°から60°、好ましくは15°±10°の角度を形成し、0.2mmから0.8mmのねじ深さ分だけ谷径から離れた、0.05から0.2mmの長さのねじ山頂部によって連結されている。
【0018】
その第1の端部、すなわち後端において、デバイスは、皮質骨内へと突き刺すのに十分なトルクを生成し、一方で釘のより少ない材料のより細い前端への損害を回避するように、ヘックスローブまたはT10伝動凹部のような、開口内へと適当なドライバにより進められ得る伝動凹部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】線A-Aに沿った
図1のデバイスの断面図である。
【
図4】ねじ山の特徴およびねじ山の形状の詳細を示す
図3の詳細図である。
【
図7】
図1の中間切削溝を示す、本発明を形成する素材片の移行セクションの詳細な側面図である。
【
図8】
図1の遠位切削溝を示す、本発明を形成する素材片の遠位端の詳細な側面図である。
【
図9】骨折した中手骨内の定位置にある本発明のインプラントを示す手の骨格の上面図である。
【
図10】本発明による技法で使用する、中手骨を測定するステップの図である。
【
図11】本発明の技法に従って骨折断片を解剖学的に整復するように逆行式にガイド・ワイヤを挿入するステップの図である。
【
図12】中手骨頭の背側3分の1にある
図11のガイド・ワイヤの進入口の図である。
【
図13】ガイド・ワイヤの上にカニューレ状(cannulated)ドリルを通すことによって穿孔するステップの図である。
【
図14】本発明の外科技法に従って中手骨にインプラントを挿入するステップの図である。
【
図15】
図1のデバイスの第2の実施形態の側面図である。
【
図17】ねじ山の特徴およびねじ山の形状の詳細を示す
図16の詳細図である。
【
図18】
図15の移行セクション、中間切削溝および遠位切削溝を示す、本発明を形成する素材片の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明のねじ山付き髄内釘の例示的な一実施形態10を示している。釘10は、外科グレードのステンレス鋼、チタン、ニッケル・クロム合金、ニチノール、PEEK、ヒドロキシアパタイト、バイオ・ガラス、他の生体適合性材料、またはこれらの材料の組み合わせなど、任意の適当な生体適合性材料から形成することができる。釘10は、第1の端部または近位端12と、第2の端部または遠位端14と、外面17を含むシャフト16と、第1の端部12と第2の端部14との間の中央部分18とを有する。ベベルと2つ、3つまたは4つの歯19aを含む切削端19は、(トルク伝動凹部に対して遠位にあり、中手骨の近位部分内に植え込まれる)後端14に設けられ、伝動凹部22内の伝動面20は、第1の端部12の頂部内に形成される。
【0021】
刃部19は、デバイス10の受容のために骨を穿孔したときに残る任意の骨内の切削を助け、さらに、外面に釘10のねじ山を通って縦方向に延在する、径方向に等間隔に配置された2~5つの長手方向切削溝23を含む。この実施形態では、伝動面20は、ヘックスローブの伝動形態を有するが、任意の適当な伝動形態を使用することができる。使用できる他の伝動形態としては、マイナスねじ(Slotted)、ポジドライブ、ロバートソン、トライ・ウイング、トルク・セット(Torq-Set)、スパナ・ヘッド、トリプル・スクエア(Triple Square)および六角ヘッドが挙げられる。
【0022】
外面17には、好ましくはシャフト16の長手方向軸に沿って、グルーブまたは切削溝24が縦方向に延在する。本明細書で使用されるような「縦方向に延在」とは、各グルーブ24が、細長く、その一方の端部が第1の端部12により近く、反対の端部が第2の端部14により近いかたちで、シャフトに沿って延在することを意味するが、グルーブ24は、斜めに形成されてもよく、必ずしも長手方向軸シャフト16に沿って形成される必要はないが、それが好ましい。グルーブ24は、好ましくは、骨内へのデバイス10の中ぐりおよび骨の開口内でのデバイス10の固定を助ける刃を有する。グルーブ24は、さらに、デバイス10が開口内に位置決めされるときに生じる、開口を作り出す骨穿孔プロセス後に残るいくつかの破片を捕捉することができる。
【0023】
本発明の釘10のシャフト18は、直径が異なる少なくとも2つのセクションを含み、例えば、近位セクションはデバイスの全長の約15%から30%の長さにわたって延在し、デバイス10の遠位端から、全長の距離の25%から75%、好ましくは55~65%に位置する。さらに、デバイスは、外径を画定するねじ山付き部分の外側縁に対して内径を画定する(35から75mmに5mm刻みで設けられる)外側の外面17をその長さに沿って有する、カニューレ状の円筒形コアまたはシャフト18をもたらす。設計は、近位部分において少なくとも外径または内径の、より好ましくは外径と内径両方の0.25~1.0mmの増加を可能にする、1つまたは複数の段状部分を含む。さらに、移行領域は、骨の狭窄したまたは「くびれた」部分のクリアランスを見込んで、釘のある長さ(すなわち、近位端から全長の距離の25%から75%、好ましくは50%から60%)のところでのこの増加を構成するように、長手方向切削溝(3~10mmの長さのものを2~5つ)を含む。
【0024】
デバイスは、外径と内径との間で画定されるねじ山25を含み、適当には、同じリード値の、3から5mm、好ましくは少なくとも4.0+/-0.25mmのピッチの右巻きの1条ねじ山を含むことができる。あるいは、
図15、
図16および
図17に示されるように、デバイスは、第2のねじ山127が第1のねじ山126の高さの約50%の高さを有する、同じリード値の第1のねじ山126と第2のねじ山127とを有する2条リードねじ山125を含むこともできる。
【0025】
ねじ山の進み側および追い側のフランクは、一緒に5°から60°、好ましくは15±10°の角度を形成し、0.2mmから0.8mmのねじ深さ分だけ谷径から離れた、0.05から0.2mmの長さのねじ山頂部によって連結されている。
【0026】
図9は、四番目の中手骨内の定位置にあり整復される骨折部を固定している、本発明による釘10を示している。
【0027】
図10にある本発明による外科技法の第1のステップでは、インプラントの寸法設定のために、当該中手骨30の寸法を決定する。
【0028】
図11において、骨の骨折部を位置合わせし、次いでガイド・ワイヤ32を逆行式に髄内管に挿入する。
【0029】
図12は、ガイド・ワイヤ挿入の最適位置34を示している。
【0030】
図13において、ガイドとしてガイド・ワイヤを用いて、カニューレ状ドリル33で、中手骨に、骨折部を通って延在しデバイス10の適切な位置決めのために骨折部の両側に十分なスペースをもたらす開口を穿孔する。
【0031】
図14において、伝動凹部を用いて、デバイス10を中手骨の開口内へと進める。ねじ山28の外径は、骨の開口の内径より若干大きい。それによって、ねじ山28のところの骨材料がねじ切りされ、デバイス10の締り嵌めが実現する。
【0032】
こうして本発明のいくつかの実施形態を述べたが、本発明の趣旨を逸脱しない他の変形形態および実施形態が、当業者には明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、任意の特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲およびその法的な均等物において示される。記載の説明または特許請求の範囲で明確に記載されない限り、特許請求の範囲に列挙される任意の方法のステップは、所望の結果を得ることができる任意の順序で実施することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削面を含む後端から長手方向軸に沿って間隔を置いて配置されたトルク伝動凹部を含む無頭の前終端を有するシャフトと、
近位終端から中間移行部まで延在し、内径と外径とを有し、当該内径または当該外径のどちらかが前記近位端から前記中間移行部まで第1の一定値にある、第1のねじ山付きセクションと、
前記中間移行部と遠位端との間に延在し、内径と外径とを有し、当該内径または当該外径のどちらかが前記近位端から前記中間移行部まで第2の一定値にあり、前記第1の一定値が前記第2の一定値より大きい、第2のねじ山付きセクションと、
を備える、髄内インプラント。