(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029130
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】光散乱を用いて溶液中のリポタンパク質濃度を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240227BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240227BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N33/53 W
G01N21/49 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023220330
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2020530661の分割
【原出願日】2018-12-04
(31)【優先権主張番号】1720162.5
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】アンドレッカ,ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ククラ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ベネシュ,ジャスティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶液中の粒子の濃度を測定する方法であって、溶液を表面と接触させ、そして表面への前記の粒子の結合を光散乱を用いて検出することを含む方法を提供する。
【解決手段】既知の質量/濃度のリポタンパク質を用いたiSCAT測定の較正を示す。左のパネルは、インキュベーション時間(秒)に対する粒子の結合事象をプロットしている。右のパネルは、濃度に対する結合データから決定された初期結合率をプロットし、測定された初期結合率の試料中の粒子の濃度への変換を可能にする較正曲線を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の粒子の濃度を測定する方法であって、該溶液を表面と接触させ、光散乱を用いて該表面への前記の粒子の結合を検出することを含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記の表面が、不動態化、活性化、コーティング、処理または誘導体化されている、前記方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、該表面への該粒子の結合の検出が、1以上の時間間隔の後に繰り返される、前記方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、該繰り返される測定が、該表面への該粒子の初期結合率の計算を可能にする、前記方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、該粒子の初期結合率が、該粒子の既知の濃度に関する初期結合率に対して比較される、前記方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法であって、該測定が、該粒子の一定の結合率の計算を可能にし、そして、場合によりこれが、該粒子の既知の濃度に関する一定の結合率に対して比較される、前記方法。
【請求項7】
溶液中の粒子の濃度を測定するための請求項1に記載の方法であって、前記の方法が、以下の工程:
i)該溶液を表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された該表面への該粒子の結合を検出し;
iii)該検出工程を繰り返し、該表面に対する該粒子の結合率および/または初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
iv)既知の粒子濃度の溶液からのデータに基づいて濃度に対する初期結合率の較正曲線を提供し;
v)工程(iv)における該較正曲線を使用して、工程(iii)で該試料に関して記録された該初期結合率を溶液中の該粒子の濃度に変換する;
を含む、前記方法。
【請求項8】
いずれかの先行する請求項に記載の方法であって、該濃度が、絶対濃度である、前記方法。
【請求項9】
いずれかの先行する請求項に記載の方法であって、前記の粒子が測定溶液とも接触させられる、前記方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、前記の溶液が、較正物質の存在下で前記の表面と接触させられ、前記の較正物質の前記の表面への結合が、光散乱を用いて検出される、前記方法。
【請求項11】
試料中のリポタンパク質粒子の検出のための方法であって、前記の粒子を光散乱、場合により干渉散乱顕微鏡法により検出することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記の検出が、前記の粒子の大きさおよび/または数を決定することを含む、前記方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、前記の試料中の1より多くの異なるタイプ
のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を検出すること、ならびに場合により前記の試料中の異なるタイプのリポタンパク質粒子の比率を検出することを含む、前記方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項に記載の方法であって、高密度リポタンパク質(HDL)粒子および/または低密度リポタンパク質(LDL)粒子を検出することを含む、前記方法。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載の方法であって、前記の試料中のHDL粒子対LDL粒子の比率を決定することを含む、前記方法。
【請求項16】
個体においてリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を診断するための、または該個体が前記の疾患または状態を発症するであろうリスクを決定するための方法であって、前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を光散乱により、場合により干渉散乱顕微鏡法により検出することを含む、前記方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記の試料中の1より多くの異なるタイプのリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数、または異なるタイプのリポタンパク質粒子の比率を検出することを含む、前記方法。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の方法であって、前記の試料中の高密度リポタンパク質(HDL)粒子および/または低密度リポタンパク質(LDL)粒子を検出することを含み、場合によりHDL粒子対LDL粒子の比率を決定することを含む、前記方法。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の方法であって、対照試料または参照試料/レベルと比較して減少したHDL粒子の数が、該個体が前記の疾患または状態を有する、または前記の疾患または状態を発症する増大したリスクを有することを示している、前記方法。
【請求項20】
請求項17または請求項18に記載の方法であって、対照試料または参照試料/レベルと比較したLDL粒子の増大した数および/または低下した大きさが、該個体が前記の疾患または状態を有する、または前記の疾患または状態を発症する増大したリスクを有することを示している、前記方法。
【請求項21】
請求項16~19のいずれか1項に記載の方法であって、前記の疾患が、心血管疾患である、前記方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の方法であって、前記の溶液または試料が、場合によりヒト個体から得られた生物学的試料である、前記方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記の生物学的試料が、場合によりヒト個体から得られた血液、血漿または血清である、前記方法。
【請求項24】
物質または組成物が投与されるべき、または療法計画が処方されるべき個体を選択する方法であって、前記の物質または組成物または療法計画が、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防するのに適しており、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法によって前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を検出し、検出されたリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数が前記の疾患または状態の存在またはそのリスクを示している場合に前記の投与または前記の療法計画に関して前記の患者を選択することを含む、前記方法。
【請求項25】
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法であって、該方法が、前記の個体における前記の疾患または状態のリスクを診断または決定すること、または請求項16~23のいずれか1項に記載の方法によって前記の個体を選択すること、および該個体における前記の疾患または状態を処置または予防するために有効である物質または組成物を該個体に投与すること、または療法計画をそれに対して実施することを含む、前記方法。
【請求項26】
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法における使用のための物質または組成物であって、前記の個体が、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法によりリスクがあると診断または決定されるか、または選択される、前記物質または組成物。
【請求項27】
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態の予防の処置のための医薬品の製造における物質または組成物の使用であって、前記の個体が、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法によってリスクがあると診断または決定されるか、または選択される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための、単一粒子光散乱、好ましくは干渉散乱顕微鏡法(本明細書においてiSCATとも呼ばれる)の使用に関する。粒子は、単純または複雑な溶液、例えば生物学的試料または環境試料中にあることができる。本発明は、溶液中の粒子の絶対濃度を決定するために使用されることができ、この能力は、溶液中の異なる粒子間の化学量論的関係を研究するための手段を提供する。本発明者らが既に実証しているように、iSCATは、単一分子と同じくらい小さい粒子の堅牢(robust)かつ正確な検出、質量の定量化、撮像および特性付けのための手段も提供し、従って、同じ技法を濃度測定のためにも使用する能力は、非常に有益である。
【0002】
本発明はさらに、試料中のリポタンパク質粒子を検出するための光散乱、好ましくは干渉散乱顕微鏡法(本明細書においてiSCATとも呼ばれる)の使用に、そして関連する診断および処置法に関する。溶液中の様々なリポタンパク質の濃度を測定する本発明の方法の能力は、特に興味深い。
【背景技術】
【0003】
iSCATは、独特の時空間分解能を有する単一粒子追跡および単一分子レベルに至るまでの無標識感度の両方に対する強力なアプローチとして実現されてきた。
干渉散乱顕微鏡法は、標識を付加する必要なく溶液中の異なる質量の粒子の相対的な分布に関する情報を提供する。粒子の絶対濃度または相対濃度を加えることは、特に溶液が生物学的試料または環境試料である場合に、分析されている試料に関する貴重な追加の情報を提供する。
【0004】
本出願者らによるより早期の研究の前は、iSCATの広範囲にわたる適用は、特注の顕微鏡、従来にない(unconventional)カメラおよび複雑な試料照明に関する必要性により制限されており、それは、単一分子ほどの小さい粒子の堅牢かつ正確な検出、撮像および特性付けに関するiSCATの能力を制限している。しかし、装置に対する改良が進んでおり、その結果、この技術は、単一の対象を見るための強力な手段へと進化してきた。iSCAT装置の例示的な設計が、Cole et al ACS Photonics, 2017, 4 (2), pp 211-216およびArroyo et al. Nat Protocols 2016, 617-633において記載されており、それらは両方とも本明細書に参照により援用される。装置に関するさらなる詳細が、本出願者による先行する出願である国際公開第2018/011591号(本明細書に参照により援用される)において提供されている。
【0005】
iSCATは、精製された単一のタンパク質の検出に関して以前に記載されているが(Cole et al (ACS Photonics, 2017, 4(2), pp 211-216))、複雑な溶液中の粒子の検出は
実現可能であると考えられていなかったため、リポタンパク質の検出および定量化は、以前に探究されていなかった。
【0006】
心血管疾患に関する診断アッセイは、リポタンパク質(リポタンパク質粒子とも記載される)の検出を含み得る。リポタンパク質の検出に関する様々な方法が、Circulation. 2009 May 5; 119(17): 2396-2404; Curr Opin Lipidol. 2017 Jun;28(3):261-266において総説されている。これらの方法は、時間がかかる、高価である、リポタンパク質粒子に関する不完全な情報を提供する、および/または臨床設定への限定された適用を有するという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cole et al ACS Photonics, 2017, 4 (2), pp 211-216
【非特許文献2】Arroyo et al. Nat Protocols 2016, 617-633
【非特許文献3】Cole et al (ACS Photonics, 2017, 4(2), pp 211-216)
【非特許文献4】Circulation. 2009 May 5; 119(17): 2396-2404
【非特許文献5】Curr Opin Lipidol. 2017 Jun;28(3):261-266
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、単一粒子光散乱、好ましくは単一粒子干渉散乱顕微鏡法を用いて溶液中の粒子の濃度を決定することが可能であることを確認している。加えて、本発明者らは、意外にも、粒子の他の構成要素からの分離なしに、生物学的試料(例えば血液または血漿)から直接単一粒子光散乱によって(例えばiSCATを使用することによって)粒子の濃度を決定することが、これらの他の構成要素によって提供されるバックグラウンド信号にもかかわらず可能であることを例示している。これは、例えば生物学的試料中のリポタンパク質に関する特に有用な技法であることが証明されている。
【0010】
本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定する方法であって、溶液を表面と接触させ、そして表面への前記の粒子の結合を光散乱を用いて検出することを含む方法を提供する。
粒子結合の検出のための光散乱法は、好ましくはiSCATである。その方法は、好ましくは適当な顕微鏡を用いて実施されることができる。濃度は、好ましくは絶対濃度である。前記の表面への粒子の結合は、単一粒子光散乱を用いて検出または可視化されることができる。
【0011】
本発明は、溶液中の粒子の濃度を決定するための方法であって、前記の溶液を測定溶液および表面と接触させ、そして光散乱を用いて前記の表面への粒子の結合を検出することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明のこの特徴は、溶液が濃縮されていると考えられる状況に特に有用である。粒子を含有するある体積の溶液は、表面への粒子の結合の検出の前に、試料ホルダー中のある体積の測定溶液に含められる(included with)ことができる。この側面の利点は、測定された濃度が元のより濃縮された溶液中の粒子の状態を表すことを確実にすることである。
【0013】
本発明は、溶液中の粒子の濃度を決定するための方法であって、較正物質(calibrant)の存在下で溶液を表面と接触させ、光散乱を用いて表面への粒子の結合を検出することを含む方法を提供する。
【0014】
従って、本発明は、溶液中の粒子の濃度測定を、表面への前記の粒子の結合率を検出することにより可能にする。
さらに、本発明は、光散乱により検出された表面への粒子の結合率における経時的な変化または減衰の分析により、溶液中の粒子の絶対濃度測定を可能にする。
【0015】
溶液中の絶対濃度は、試料中の粒子および表面の間の結合事象を測定することによって決定されることができ、既知の濃度の粒子の試料を用いて観察された結合事象に対して較正されることができる。表面は、試料ホルダーの一部であることができる。高い表面積対体積比を有する試料ホルダーでは、表面への粒子の結合は、溶液中の粒子の残っている数および結合のための利用可能な部位の残っている数の関数として時間の経過と共に減少す
る。一連の濃度に関する初期結合率が、結合データから外挿されて標準曲線を生成するために用いられ、試料における測定された初期結合率の溶液中の粒子のそれぞれの絶対濃度への変換を可能にすることができる。
【0016】
表面に対する粒子の結合は、光散乱、好ましくはiSCATを使用して検出または可視化されることができる。
あるいは、溶液中の濃度は、粒子の結合率が表面および粒子の間の結合活性を制御することによって制御されることができるように、不動態化または活性化された表面の使用により決定されることができる。この設定では、表面の活性化または不動態化は、結合親和性を増大させ、従って測定範囲をより低い濃度へと増大させることができ、または結合親和性を低下させ、従ってより高い濃度で測定できるようにすることもできる。
【0017】
表面は、好ましくは、前記の溶液のための試料ホルダーの一部を形成する。前記の試料ホルダーは、光散乱顕微鏡の要素であることができる。試料ホルダーは、高表面積対体積のチャンバーであることができる。
【0018】
濃度を計算するためには、拡散速度に関する補正を含める必要がある可能性がある。拡散速度は、質量および形状のような粒子の既知の特性に基づいて容易に計算されることができる。
【0019】
従って、本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)溶液を表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)検出工程を繰り返し、表面に対する粒子の結合率および初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
iv)既知の粒子濃度の溶液からのデータに基づいて濃度に対する初期結合率の較正曲線を提供し;
v)工程(iv)における較正曲線を使用して、工程(iii)で試料に関して記録された初期結合率を溶液中の粒子の濃度に変換する。
【0020】
好ましくは、濃度は、絶対濃度である。
一部のバリエーションにおいて、溶液は、表面に接触する前に、または表面に接触すると同時に、例えば測定溶液または較正物質で前処理されることができる。
【0021】
溶液中の粒子は、測定溶液および表面と接触させられることができる。
この側面の利点は、測定された濃度が元のより濃縮された溶液中の粒子の状態を表すことを確実にすることである。
【0022】
測定溶液は、緩衝溶液であることができる。一般に、希釈作用の計算を可能にするために、測定溶液の体積は、既知である。
様々な技法が、濃度決定のための溶液を調製するために必要とされ得る。例えば、ある体積の溶液が、好ましくは既知の幾可学的形状を有する試料ホルダー中に入れられることができる。これは、ある体積の測定溶液の導入(または粒子溶液の測定溶液中への導入)を可能にし、希釈行動を使用して、これは、表面に対する粒子の検出された結合率が粒子の濃度に変換されることを可能にする。
【0023】
表面への粒子の結合の検出は、測定溶液の導入に続いて1以上の異なる時間間隔で行われることができる。検出工程が測定溶液の導入後に異なる時間間隔で繰り返される場合、これは、解離のような希釈作用に関する補正を可能にするであろう。測定が添加(従って
希釈)後に異なる時点で行われる場合、粒子がより低い濃度で解離またはクラスター化する場合の例えば種の分布における変化が、可視化されることができる。従って、このアプローチは、粒子のより詳細な観察(view)を可能にし、濃度測定の検証を可能にする。
【0024】
あるいは、または加えて、溶液(粒子または測定)の一方または両方の体積が、変化させられることができ、および/または試料ホルダーの幾何学的形状が、変化させられることができる。両方とも、希釈作用の補正を可能にする。検出工程が1以上の異なる溶液の体積において、および/または1以上の異なる幾何学的形状の試料ホルダーにおいて繰り返される場合、これは、解離のような希釈作用に関して補正することもできる。
【0025】
従って、本発明は、溶液中の粒子の濃度を決定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)溶液を、ある幾何学的形状を有する試料ホルダーにおいて表面およびある体積の測定溶液と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)検出工程を繰り返し、表面に対する粒子の結合率および初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
iv)既知の粒子濃度の溶液からのデータに基づいて濃度に対する初期結合率の較正曲線を提供し;
v)工程(iv)における較正曲線を使用して、工程(iii)で試料に関して記録された初期結合率を溶液中の粒子の絶対濃度に変換する。
【0026】
本方法は、決定された濃度を検証するために、異なる幾何学的形状の試料ホルダーの1以上を使用して、または異なる体積の測定溶液を使用して、工程(i)~(ii)を繰り返すことをさらに含むことができる。
【0027】
あるいは、溶液中の粒子は、較正物質の存在下で表面と接触させられることができる。
溶液中の較正物質は、予め決定された濃度および質量を有する。一度それが粒子溶液中に導入されると、前記の表面への較正物質および粒子の結合率の検出は、別々に、しかし同時に行われる。表面への粒子および較正物質の結合両方の繰り返される測定が、行われることができ、それは、粒子に関する初期結合率および較正物質に関する初期結合率の決定を可能にする。既知の濃度の較正物質の初期結合率は、粒子の初期結合率の前記の粒子の濃度への変換を可能にする。一態様において、較正物質は、粒子に表面への結合におけるその特徴に関して似るように選択される。例えば、類似した表面特性(例えば電荷、疎水性、親水性)を有する較正物質を選択することが、望ましい。そのような選択は、様々な粒子にわたるより正確な測定を可能にする。事実上、較正物質および粒子は、表面に対して同じ親和性を有するべきであり、従って既知の濃度の較正物質の結合率の決定は、粒子の結合率の濃度への変換を可能にする。
【0028】
従って、本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)溶液を較正物質の存在下で表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)同時に光散乱によって可視化された表面への較正物質結合を検出し;
iv)検出工程(ii)および(iii)を繰り返し、表面に対する粒子および較正物質の結合率および初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
v)較正物質に関する工程(iv)において計算された初期結合率を用いて工程(iv)において計算された粒子の初期結合率を溶液中の粒子の濃度に変換する。
【0029】
較正物質は、既知の濃度のものであり、特に表面への結合に関して粒子と類似の特徴を有することが、好ましい。
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、様々な非タンパク質構成要素を含む異なる生体分子の不均一な混合物に相当するリポタンパク質粒子を、光散乱により、特に干渉散乱顕微鏡法を用いて検出することが可能であることを確認している。単一のリポタンパク質粒子は、光学的に可視化されることができる。これは、リポタンパク質粒子の(そして異なるクラスのリポタンパク質粒子の)数および大きさが試料中で直接決定されることを可能にする。試料中の異なるリポタンパク質粒子の相対的な割合が、一回の測定で決定されることもできる。従って、本発明の検出の方法は、リポタンパク質粒子を検出する迅速かつ簡単な手段を提供し、試料中のリポタンパク質粒子の性質および分布に関する広範な情報を提供する。実施される光学的検出はまた、比較的安価であり、好都合には臨床設定に適しており、リポタンパク質の検出のための以前の方法と関係する複雑な処理プロトコルを回避する。
【0030】
加えて、本発明者らは、意外にも、粒子を精製して他の構成要素から離すことなく、生物学的試料(例えば血液または血漿)から直接光散乱によって(例えばiSCATを使用することによって)リポタンパク質粒子を検出することが、これらの他の構成要素によって提供されるバックグラウンド信号にもかかわらず可能であることを例示している。
【0031】
本発明の検出の方法は、患者試料からのリポタンパク質粒子の検出に関する臨床設定において、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患および状態の診断および処置を支援するために有利に用いられる。
【0032】
従って、本発明は、試料中のリポタンパク質粒子の検出のための方法であって、光散乱によって、好ましくは干渉散乱顕微鏡法によって前記の粒子を検出することを含む方法を提供する。本発明はさらに、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を診断するための、または個体が前記の疾患または状態を発現するであろうリスクを決定するための方法であって、前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を干渉散乱顕微鏡法によって検出することを含む方法を提供する。
【0033】
本発明は、さらに、物質または組成物が投与されるべき、または療法計画が処方されるべき個体を選択するための方法であって、前記の物質または組成物または療法計画がリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防するのに適しており、本発明の検出のための方法によって前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を検出し、検出されたリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数が前記の疾患または状態の存在またはそのリスクを示している場合に前記の投与または前記の療法計画に関して前記の患者を選択することを含む方法を提供する。
【0034】
本発明は、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法も提供し、その方法は、前記の個体における前記の疾患または状態のリスクを診断または決定すること、または本発明の方法により前記の個体を選択すること、およびその個体における前記の疾患または状態を処置または予防するために有効である物質または組成物をその個体に投与すること、または療法計画をそれに対して実施することを含む。
【0035】
本発明は、さらに、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法における使用のための物質または組成物を提供し、ここで、前記の個体は、本発明の方法によってリスクがあると診断または決定さ
れるか、または選択される。
【0036】
本発明は、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態の予防の処置のための医薬品の製造における物質または組成物の使用も提供し、ここで、前記の個体は、本発明の方法によってリスクがあると診断または決定されるか、または選択される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、ヒト血液中に存在する異なるタイプのリポタンパク質粒子ならびにそれらのそれぞれの直径(nm)および密度(g/ml)を描いた図表を提供する。その表は、各タイプの粒子中のタンパク質、コレステロール、リン脂質およびトリグリセリドの相対的な割合に関する情報も提供している。
【
図2】
図2は、血液試料からのiSCATによるリポタンパク質粒子の検出のための例示的なスキームを示す。
【
図3】
図3は、空間フィルターを組み込んだiSCAT顕微鏡の概略図である。
【
図4】
図4は、精製リポタンパク質試料からのHDLおよびLDLリポタンパク質粒子のキャプチャー画像を示しており、スケールバーは、(I
s-I
p)/I
sとして定義されるiSCAT信号を示しており、ここで、I
sは、粒子の非存在下でのガラス表面からの反射強度であり、I
pは、粒子の存在下での同じ尺度である。HDLおよびLDLリポタンパク質粒子の画像が、全てのHDLおよびLDL画像から得られた、検出された各粒子の数に対するiSCATシグナルをプロットしている単一粒子ヒストグラムと一緒に示されている。
【
図5】
図5は、血清試料からiSCATによって検出されたHDLおよびLDLリポタンパク質に関する
図4において示された画像および単一粒子ヒストグラムに対応する画像および単一粒子ヒストグラムを提供する。
【
図6-1】
図6は、全血試料からのiSCATによって検出されたHDL、LDLおよびVLDLリポタンパク質粒子に関する単一粒子ヒストグラムを提供する。
図6Aおよび6Bは、それぞれ非絶食試料および絶食試料からのヒストグラムを提供する。
【
図6-2】
図6は、全血試料からのiSCATによって検出されたHDL、LDLおよびVLDLリポタンパク質粒子に関する単一粒子ヒストグラムを提供する。
図6Aおよび6Bは、それぞれ非絶食試料および絶食試料からのヒストグラムを提供する。
【
図7】
図7は、既知の質量/濃度のリポタンパク質を用いたiSCAT測定の較正を示す。左のパネルは、インキュベーション時間(秒)に対する粒子の結合事象をプロットしている。右のパネルは、濃度に対する結合データから決定された初期結合率をプロットし、測定された初期結合率の試料中の粒子の濃度への変換を可能にする較正曲線を提供する。
【
図8a】
図8aは、1kHzのフレームレート、有効フレームレート:25Hzで記録された、実施例4で記載されている希釈法を用いたガスケット中の300nMアクチンの着地(landing)動画の一例のフレームを示している。
【
図8b】
図8aとの比較のための
図8b、
図8bは、1kHzのフレームレート、有効フレームレート:25Hzで記録された、類似の条件下でのフローチャンバー中の300nMアクチンの着地動画の例示的なフレームを示している。
【
図9】
図9は、実施例4で記載された実験の4回の繰り返しから蓄積された、結果として得られた質量ヒストグラムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、光散乱を使用して表面への試料中の粒子の結合を検出することにより溶液中の粒子の濃度測定を可能にする。光散乱顕微鏡の使用が、好ましい。
本発明者らは、特に、光散乱により、特に干渉散乱顕微鏡法の使用により単一のリポタンパク質粒子を直接検出する能力を確認している。本発明は、試料中のリポタンパク質粒
子の異なる形態を含む、あらゆる形態のリポタンパク質粒子を検出するために使用されることができる。
【0039】
粒子
本発明の方法に従って検出され得る粒子は、単一分子から生物学的高分子を経てオリゴマー集合体まで、溶液内のあらゆる粒子であることができる。適切な粒子の例は、単一分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、単糖類、炭水化物、オリゴ糖、多糖類、糖ペプチド、糖タンパク質、脂質、脂肪酸、ワックス、ステロール類、脂溶性ビタミン類、モノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類、リン脂質、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、ポリケチド類、糖脂質、リポタンパク質、核酸、ヌクレオチド類、ポリ核酸、分子のクラスター、集合体、凝集体、タンパク質/タンパク質相互作用、タンパク質/小分子相互作用、タンパク質-核酸相互作用および/またはオリゴマー集合体である。
【0040】
溶液中の粒子の濃度の決定に関して、検出前に粒子を標識する必要はない。光散乱顕微鏡法は粒子の質量を決定することができるため、それは、単に質量により同定されることができる。
【0041】
リポタンパク質粒子
本発明に従って検出され得るリポタンパク質粒子は、試料中に存在するあらゆるリポタンパク質粒子であることができる。リポタンパク質粒子は、あらゆる大きさであることができ、またはあらゆる数で存在することができる。リポタンパク質粒子は、典型的にはヒトまたは動物の血液中に存在するリポタンパク質粒子から選択される。リポタンパク質粒子は、典型的にはトリグリセリド類、コレステロール、リン脂質および1以上のタンパク質、例えば1以上のアポリポタンパク質を含む。リポタンパク質粒子は、脂質およびタンパク質の変動する比率および/または密度を有し得る。アポリポタンパク質は、表在性(peripheral)アポリポタンパク質または内在性(integral)アポリポタンパク質であることができる。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質のあらゆるクラスまたはサブクラスから選択されることができる。アポリポタンパク質は、あらゆる遺伝的多型を有することができる。アポリポタンパク質(単数または複数)は、A、B、C、D、Eおよび/またはHクラスから選択されることができる。クラスAのアポリポタンパク質は、アポA-I、アポA-II、アポA-IVおよびアポA-Vから選択されることができ;クラスBのアポリポタンパク質は、アポB48およびアポB100から選択されることができ;クラスCのアポリポタンパク質は、アポC-I、アポC-II、アポC-IIIおよびアポC-IVから選択されることができる。クラスBのアポリポタンパク質は、LDLリポタンパク質粒子中に存在し、他のクラスのアポリポタンパク質は、典型的にはHDLリポタンパク質粒子と会合している。
【0042】
リポタンパク質粒子は、典型的には少なくとも1nmの直径を有し、1000nm以上に至るまでの直径を有することができる。本発明に従って検出され得るリポタンパク質粒子の特定のタイプは、カイロミクロン類(超低密度(ultra low density)リポタンパク質、ULDLとも記載される)、超低密度(very low-density)リポタンパク質(VLDL)、中程度低密度(intermediate low-density)リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)を含む。上記のリポタンパク質粒子に関する例示的な粒径、密度および脂質:タンパク質比が、
図1において提供されている。本発明に従って検出されるリポタンパク質粒子は、
図1に示されるあらゆる粒径、密度または脂質:タンパク質比を有することができる。従って、例えばHDLリポタンパク質粒子は、約5~約15nmの範囲の粒径を有することができる。LDLリポタンパク質粒子は、約18~約28nmの範囲の粒径を有することができる。IDLリポタンパク質粒子は、約25~
約50nmの粒径を有することができる。VLDLリポタンパク質粒子は、約30~約80nmの粒径を有することができる。カイロミクロンは、約100~約1000nmの粒径を有することができる。HDLリポタンパク質粒子は、約200~約500kDaの範囲の分子量を有することができる。LDLリポタンパク質は、約3MDAの分子量を有することができる。
【0043】
好ましくは、本発明の方法は、HDLおよび/またはLDLリポタンパク質粒子を検出する。本発明の方法は、VLDLリポタンパク質粒子の検出を含むことができる。本発明の方法は、HDLおよびLDL;HDLおよびVLDL;HDLおよびIDL;HDLおよびUDL;LDLおよびVLDL;LDLおよびIDL;またはLDLおよびUDLリポタンパク質粒子の検出を含むことができる。本発明の方法は、HDL、LDLおよびVLDL;HDL、LDLおよびIDL;またはHDL、LDLおよびUDLリポタンパク質粒子の検出を含むことができる。本発明の方法は、HDL、LDL、IDL、VLDLおよびULDLリポタンパク質粒子の検出を含むことができる。他のタイプのリポタンパク質粒子と重複する粒径を有するIDLおよびVLDL粒子の検出は、そのような粒子中に存在する特定のタンパク質を検出するための追加の工程(例えば蛍光標識抗体等)の使用を含むことができる。
【0044】
溶液中の粒子
溶液は、液体溶媒中の粒子のあらゆる溶液であることができる。溶液は、単純なもの、例えば水中で分散した粒子(粒子の水溶液)であることができ、またはそれは、複雑な溶液、例えば粒子と1種類以上の他の溶質であることができる。溶液は、試料であることができる。試料は、濃度に関して試験するために商業的に調製された溶液から採取されることができる。体液は、電解質、糖類および尿素を含む数多くの溶質が存在する複雑な溶液の例である。試料は、生物学的試料または環境試料を含むあらゆる源から採取されることができる。試料が生物学的試料である場合、それは、ヒトまたは動物の身体または個体から採取または取得されることができ、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、リンパ液、汗、羊水、脳脊髄液、母乳、涙、分泌物、滑液、精液、胆汁または粘液である。試料が環境試料である場合、それは、あらゆる源、例えば水(例えば井戸、小川、河川、湖、雨水、海水等)、食物および飲み物(例えば飲料)、農業試料または工場および製造プロセスからの液体試料から採取されることができる。
【0045】
表面と接触させる前に溶液または試料を調製する必要はないが、溶液が濃縮されていると考えられる場合、溶液は、本明細書で論じられているように測定溶液と接触させられることができる。
【0046】
表面
粒子の濃度を決定するために粒子を結合させるために使用される表面は、好ましくは検出器表面であり、光散乱顕微鏡のための試料ホルダーの一部を形成することができる。
【0047】
表面は、好ましくはガラス、サファイアであり、または透明なポリマーから作られている。試料は、濃度を決定するために表面と接触させられる。試料は、表面を含む試料ホルダー中に入れられることができる。前記のように、顕微鏡は、試料を試料位置に保持するための試料ホルダーを含む。試料は、撮像されるべき粒子を含む液体試料であることができ、それは、以下でより詳細に記載される。試料ホルダーは、試料を保持するのに適したあらゆる形態をとることができる。典型的には、試料ホルダーは、試料ホルダーおよび試料の間の界面を形成する表面上に試料を保持する。例えば、試料ホルダーは、カバーガラスであることができ、かつ/またはガラスから作られていることができる。試料は、例えばマイクロピペットまたは自動分注システムを使用して、簡単な方法で試料ホルダー上に提供されることができる。
【0048】
試料ホルダーは、あらゆる適切な形式を取ることができる。一部の形式では、試料ホルダーは、表面へのアクセスが溶液中の粒子の結合を制限しないような高い表面積対体積比を可能にするであろう。他の形式では、表面積および体積の間の比は、表面への粒子のアクセスを制限し得る低い表面積対体積比が存在するように、低下することができる。当業者には、試料ホルダーの表面積対体積の選択が、濃度が測定され得る方法を変化させるであろうことは、明らかであろう。試料ホルダーが低い表面積対体積比を有する場合、例えば粒子の結合率は、時間の経過と共に低下しないであろう。この状況では、光散乱を用いて検出されるあらゆる瞬間における結合率が、濃度を計算するために用いられることができる。
【0049】
本発明で使用される表面は、あらゆる適切な表面であることができる。例えば、表面は、不動態化された表面であることができる。不動態化は、化学反応性を増強または低減する、従って結合事象の数を増加または減少させるために表面を処理またはコーティングするプロセスである。
【0050】
あるいは、表面は、活性化された表面、コーティングされた表面、誘導体化された表面または処理された表面であることができる。表面は、シランのような実体を表面に固定化することによって誘導体化されることができる。実施例4では、表面は、APTESでコーティングされており、それは、アルコキシシラン分子による表面の官能化であるシラン化を可能にする。これは、それが正に荷電した表面をもたらすため、一部の粒子に関して有利である。APTESによるコーティングプロセスは、表面およびシランの間の共有結合の形成をもたらす。プロトン化されたアミン基は、それら自体を自由空間中で整列させ、粒子のあらゆる負に荷電した基(例えばシアル酸類、カルボキシルおよび硫酸エステル基)のための正のドッキング部位を作る。
【0051】
表面は、粒子のための特異的結合実体またはパートナーでコーティングされていることができる。そのような表面は、濃縮された、または複雑な混合物からの粒子の選択を可能にする。
【0052】
このシナリオにおける濃度の計算は、粒子および特異的結合実体に関する結合定数が既知であることを必要とする。
表面が修飾されている場合、これらの修正が光散乱によって検出されるべき粒子の結合の能力における変化を一切引き起こさないことが、重要である。
【0053】
試料を表面と接触させる
溶液は、前記の溶液中の粒子の濃度を決定するために、表面と接触させられる。粒子は、表面に結合し、この表面への結合は、光散乱、好ましくはiSCATを用いて、好ましくは顕微鏡を用いて可視化または検出される。
【0054】
表面への粒子の結合は、非特異的であることができ、あるいは、結合は、上記で論じられたように、使用される表面の性質に依存して特異的であることができる。表面がガラス(すなわちガラスカバースリップ)であれば、結合は、非特異的であろう。表面が処理されていれば、結合は、特異的であり得る。表面への結合率は、検出工程を1回以上繰り返すことによって計算されることができ、または1回の測定から得られることができる。
【0055】
表面に結合した粒子の結合および/または数は、光散乱を用いて検出されることができる。次いで、これは、表面への粒子の結合率および/または初期結合率における変化を決定するために1回以上繰り返されることができる。各時点での結合が、結合率を確立するためにプロットされることができる。
【0056】
溶液の体積に対する表面積の比が低い場合には、あらゆる所与の時点での結合率が粒子の数を表わすため、濃度を決定するためには1回の測定で十分であり得る。結合率は、一定である。
【0057】
ある場合には、結合率が一定であるかどうか、または時間の経過と共に変化していたかどうかを決定するために、結合した粒子の検出を繰り返すことが望ましい可能性がある。結合率に変化がない場合(一定率)、あらゆる時点で記録された結合率は、絶対濃度を表わす。結合率に変化がある場合、これらの変化が、プロットされることができ、データが、濃度を計算するためにゼロ時点に外挿されることができる。
【0058】
一定の結合率から、または初期結合率から結合率における変化がある場合、表面への粒子の結合率における減衰または低下が、計算されることができる。結合率における低下は、溶液中の粒子の濃度に相関している可能性がある。例えば、(iSCATによって可視化される)表面への粒子の結合は、溶液中の粒子の残っている数および結合のためのアクセス可能な部位の残っている数の関数として時間の経過と共に減少する。
【0059】
表面への粒子の結合の検出は、時間経過に伴なって繰り返されることができ、測定間の間隔は、測定を必要とする粒子および溶液の性質に依存すると考えられ、溶液ごとに変動するであろう。
【0060】
例示的には、測定は、試料が表面と接触した直後に、例えば接触して1秒または数分の1秒以内で有効に行われることができ、次いで測定は、その後数秒ごとに、例えば接触後1~60秒、1~30秒、1~5秒、5~10秒、10~15秒、15~20秒、20~25秒、25~30秒、30~35秒、35~40秒、45~50秒、55~60秒の測定間の間隔で行われることができる。測定は、初期結合率を決定するために必要とされる限り繰り返されることができる。
【0061】
測定間の間隔は、調査中の粒子に関連することができ、従って、より長いことができ、すなわち、測定間の時間は、数分間~数時間であることができるであろうことは、理解されるであろう。従って、測定は、最初の測定後数分ごとに、例えば接触後1~60分、1~30分、1~5分、5~10分、10~15分、15~20分、20~25分、25~30分、30~35分、35~40分、45~50分、55~60分の測定間の間隔で行われることができる。あるいは、または加えて、測定は、最初の測定後数時間ごとに、例えば接触後1~24時間、1~12時間、1~6時間、1~5時間、1~4時間、1~3時間、1~2時間または1時間の測定間の間隔で行われることができる。
【0062】
より長い間隔は、実際の測定の数分間以内に解離がないことのさらなる証拠を、それが起こるためにはるかに長い時間がかかることを示すことが可能であろうため、提供すると考えられる。
【0063】
加えて、時間間隔は、1つのアッセイ内で変動させられることができる。例えば、最初の数回の測定は、数秒ごとに行われることができ、さらなる測定は、数分というより長い時間間隔で行われることができる。検出の時間が記録されている限り、間隔は、変動させられることができる。
【0064】
結合は、最初の検出に続いて少なくとも1回検出されることが、好ましい。好ましくは、表面への粒子の結合は、2回以上、さらにもっと好ましくは3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、またはより多い回数検出される。表面への粒子の結合のそれぞれの独立した検出事象は、前に論じられたような時間間隔で隔てられており、それは、それぞれ
の検出事象の間で同じ時間間隔であることができ、または変動することもできる。
【0065】
結合率を検出するためには、実施例4において示されるように、表面への結合を記録/録画することが有用である可能性がある。
濃度の決定
溶液中の粒子の濃度を決定するために、一定の、または初期結合率が、溶液中の粒子の既知の濃度に関する一定の、または初期結合率に対して比較されることができる。これは、その方法が既知の濃度の粒子に関して予め実施されているため、方法が較正されることを可能にする。
【0066】
一連の既知の濃度の初期結合率は、結合データから外挿され、試料中の測定された初期結合率の粒子のそれぞれの絶対濃度への変換を可能にする標準曲線を生成するために使用されることができる。一態様において、既知の質量/濃度の粒子を使用することにより、光散乱顕微鏡法を使用して作成された濃度測定値を較正することが可能である。一例が、
図7において示されており、ここで、粒子は、リポタンパク質である。左のパネルは、インキュベーション時間(秒)に対する粒子の結合事象をプロットしている。右のパネルは、濃度に対する結合データから決定された初期結合率をプロットし、測定された初期結合率の試料中の粒子の濃度への変換を可能にする検量線を提供する。この場合、結合率は、表面への粒子の結合率である。この表面は、溶液が保持されているこの態様に関する試料ホルダー中に存在する。
【0067】
検出された表面への粒子の結合率における時間経過に伴う減衰または低下の分析は、濃度の測定を可能にするための基礎を提供することができる。方法を較正するために、粒子の既知の濃度の結合率を使用することが必要である可能性がある。
【0068】
濃度を計算するためには、拡散率に関する補正を含める必要がある可能性がある。拡散率は、質量および形状のような粒子の既知の特性に基づいて容易に計算されることができる。
【0069】
あるいは、アッセイは、内部較正物質を使用して較正されることができる。較正物質は、表面に結合する能力(例えば電荷、疎水性、親水性)に関して粒子と類似した特徴を有しており、従って、溶液中の粒子の性質に基づいて選択される。較正物質は、既知の質量および濃度を有する。較正物質は、溶液中の粒子および表面に実質的に同時に(simultaneously)(すなわち同時に(at the same time))導入される。光散乱を用いる表面への較正物質の結合の検出は、較正物質の初期結合率の決定を可能にする。同時に、表面への粒子の初期結合率が、光散乱を用いて決定される。粒子の初期結合率は、較正物質の既知の濃度の初期結合率に対して比較されることができ、それは、粒子の濃度の計算を可能にする。
【0070】
単一粒子光散乱は、先行する刊行物で論じられているように、粒子の質量を決定するために使用されることができ、従って、ある特定の粒子タイプの結合率を決定し、質量を使用して対象の粒子を同定することが可能である。対象の粒子または較正物質は、質量に関連する差異(contrast)を使用して選択されることができる。従って、粒子または較正物質のみの表面への結合を検出し、他の溶質の表面への結合を無視することが可能である。
【0071】
濃縮溶液
溶液が濃縮されていることが疑われる場合、これは、濃度の測定をより複雑にし得る。本発明の方法を用いて決定された測定値が正しいことを確実にするために、本発明者らは、測定溶液を用いる方法を開発した。これは、表面と実質的に同時に粒子溶液に導入され
る。
【0072】
測定溶液は、緩衝溶液であることができる。一般に、測定溶液の体積は、希釈作用の計算を可能にするために既知である。
粒子溶液の体積は、好ましくは既知の幾何学的形状を有する試料ホルダー中に入れられることができる。これは、ある体積の測定溶液の導入(または測定溶液中への粒子溶液の導入)を可能にし、希釈行動を使用して、これは、表面への粒子の検出された結合率が粒子の濃度に変換されることを可能にする。
【0073】
表面への粒子の結合の検出は、上記で詳述されたように、測定溶液の導入に続いて1以上の異なる時間間隔で行われることができる。検出工程が測定溶液の導入後に異なる時間間隔で繰り返される場合、これは、解離のような希釈作用に関する補正を可能にするであろう。測定が添加(従って希釈)後に異なる時点で行われる場合、粒子がより低い濃度で解離またはクラスター化する場合の例えば種の分布における変化が、可視化されることができる。従って、このアプローチは、粒子のより詳細な観察を可能にし、濃度測定の検証を可能にする。
【0074】
あるいは、または加えて、溶液(粒子または測定)の一方または両方の体積が、変化させられることができ、かつ/または試料ホルダーの幾何学的形状が、変化させられることができる。両方とも、希釈作用の補正を可能にする。検出工程が1以上の異なる溶液の体積において、および/または1以上の異なる幾何学的形状の試料ホルダーにおいて繰り返される場合、これは、解離のような希釈作用に関して補正することもできる。
【0075】
方法工程
本明細書で記載されたように、本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)溶液を表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)検出工程を繰り返し、表面に対する粒子の結合率および/または初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
iv)既知の粒子濃度の溶液からのデータに基づいて濃度に対する初期結合率の較正曲線を提供し;
v)工程(iv)における較正曲線を使用して、工程(iii)で試料に関して記録された初期結合率を溶液中の粒子の濃度に変換する。
【0076】
本方法は、決定された濃度を検証するために、異なる幾何学的形状の試料ホルダーの1以上を使用して、または異なる体積の測定溶液を使用して工程(i)~(ii)を繰り返すことを、さらに含むことができる。
【0077】
あるいは、本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)溶液を表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)検出工程を繰り返し、表面に対する粒子の結合率および/または一定の結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
iv)既知の粒子濃度の溶液からのデータに基づいて濃度に対する一定の結合率の較正曲線を提供し;
v)工程(iv)における較正曲線を使用して、工程(iii)で試料に関して記録された一定の結合率を溶液中の粒子の濃度に変換する。
【0078】
本方法は、さらに、決定された濃度を検証するために、異なる幾何学的形状の試料ホルダーの1以上を使用して、または異なる体積の測定溶液を使用して、工程(i)~(ii)を繰り返すことを含むことができる。
【0079】
本発明の方法において内部較正物質が使用される場合、本発明は、溶液中の粒子の濃度を測定するための方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
i)較正物質の存在下で溶液を表面と接触させ;
ii)光散乱によって可視化された表面への粒子結合を検出し;
iii)同時に光散乱によって可視化された表面への較正物質結合を検出し;
iv)検出工程(ii)および(iii)を繰り返し、表面に対する粒子および較正物質の結合率および/または初期結合率における時間経過に伴う変化を計算し;
v)較正物質に関する工程(iv)において計算された結合率を用いて工程(iv)において計算された粒子の初期結合率を溶液中の粒子の濃度に変換する。
【0080】
全てのバリエーションにおいて、溶液中の粒子の濃度の決定を可能にするのは、表面への粒子結合の検出である。表面への粒子の結合率は、一定である可能性があり、その場合、一定の結合率は、既知の濃度の同じ粒子に関する一定の結合率に対して比較されることができる。結合率は、変動する可能性があり、従って、初期結合率が、既知の濃度の同じ粒子に対する初期結合率との比較のために計算されることができる。前に論じられたように、表面積対体積比に関する試料ホルダーの性質は、濃度計算を変化させ得る。
【0081】
リポタンパク質の測定
上記で論じられたように、本発明の方法は、試料中の1以上のリポタンパク質粒子の大きさおよび数の、そして1以上の異なるリポタンパク質粒子の比率の直接的な測定を可能にする。その方法は、2以上の異なるタイプのリポタンパク質粒子の数、大きさまたは比率を同時に、または併行して決定することを含むことができる。方法は、試料中の特定のクラスのリポタンパク質粒子の総数、例えばHDLおよび/またはLDLリポタンパク質粒子の総数を決定することを含むことができる。方法は、試料中の特定の大きさのリポタンパク質粒子の数を決定することを含むことができる。方法は、試料中の特定のタイプのリポタンパク質粒子に関する大きさの分布を決定することを含むことができる。方法は、好ましくは試料中のLDLリポタンパク質粒子に対するHDLリポタンパク質粒子の比率を決定することを含む。試料中の1以上の他のリポタンパク質粒子、例えばVLDLリポタンパク質粒子に対するHDLおよび/またはLDLの比率も、決定されることができる。従って、検出されたそれぞれのリポタンパク質のタイプまたは画分の粒子の相対的な数が、決定されることができる。
【0082】
本発明の方法は、所与のタイプのリポタンパク質粒子に関して検出されたそれぞれの異なる大きさの粒子の数を含む、試料中の1以上のリポタンパク質粒子に関する単一粒子ヒストグラムを得ることを含むことができる。従って、バルクの(bulk)総リポタンパク質含有量を特性付ける以前の検出法とは対照的に、試料中のそれぞれの粒子が、別々に検出される。従って、アルゴリズムに頼る以前の検出法とは対照的に、集団内のリポタンパク質の分布が、直接検出されることができる。本方法は、好ましくは、HDLおよび/またはLDLリポタンパク質粒子の単一粒子ヒストグラムを得ることを含む。
【0083】
方法は、試料中のリポタンパク質の質量を決定することを含むことができる。方法は、試料中の1タイプ以上のリポタンパク質の絶対濃度を決定することを含むことができる。リポタンパク質の質量および/または濃度は、適切な標準に対する較正によって決定されることができる。従って、ある範囲の既知の質量のリポタンパク質(例えば脂質ナノディスク)が、光散乱によって、例えばiSCATによって検出されることができる。適切な精製リポタンパク質調製物は、例えば実施例において記載されているように、Lee B
iosolutionsから入手可能である。
【0084】
従って、リポタンパク質質量およびiSCAT信号の間の関係を有する較正曲線が、生成されることができる。次いで、対象の試料中で検出された粒子に関して得られたiSCAT信号が、較正曲線と関連付けられ、それらの質量を同定することができる。
【0085】
溶液中の絶対濃度は、既知の濃度のリポタンパク質の試料で観察された結合事象に対して較正された試料中のリポタンパク質粒子および表面の間の結合事象を測定することにより決定されることができる。例えば、(iSCATによって可視化された)表面への粒子の結合は、溶液中の粒子の残っている数および結合のためのアクセス可能な部位の残っている数の関数として、時間の経過と共に減少する。一連の濃度に関する初期結合率が、結合データから外挿されて、標準曲線を生成するために用いられ、試料における測定された初期結合率のリポタンパク質のそれぞれの絶対濃度への変換を可能にすることができる。あるいは、所与の濃度における一定の結合率は、フローチャンバー中での試料の一定の供給により、または粒子の一過性の結合のみが可能であるような不動態化された表面の使用により決定されることができる。
【0086】
試料中のHDLおよびLDLリポタンパク質の質量および濃度の決定のための例示的な較正が、実施例において記載されている。本発明の方法は、既知の標準による較正を一切含まないこともできることは、理解されるべきである。代わりに、粒径および分布の比較が、対象のリポタンパク質画分に関する代表的な粒径/分布を用いて行われることができる。
【0087】
方法は、試料中のリポタンパク質粒子の1以上の他のパラメータを決定することも含むことができる。方法は、試料中のコレステロール、トリグリセリドおよび/またはアポリポタンパク質レベルを検出することを含むことができる。これらのリポタンパク質構成要素のレベルは、下記で論じられるように、当該技術における既知の方法により決定されることができ、あるいは対象のリポタンパク質粒子中の所与のタイプの分子の平均数の知識から決定されることができる。従って、光散乱によって、例えばiSCATによって検出された所与のタイプのリポタンパク質粒子の数は、そのようなリポタンパク質粒子中の対象のリポタンパク質構成要素の分子の既知の平均数を掛けられ、その構成要素の合計レベルを計算することができる。例えば、LDLまたはVLDL粒子は、粒子あたり1個のアポBタンパク質のみを含む(アポBタンパク質は、HDL粒子中には存在しない)。
【0088】
試料中のリポタンパク質中の対象のタンパク質のレベルは、免疫アッセイ、例えばアポB100に関する免疫アッセイによって決定されることができる。検出されたリポタンパク質粒子中の特定のタンパク質の存在は、前記のタンパク質に特異的に結合する検出可能に標識された薬剤の使用によって決定されることができる。薬剤は、あらゆる適切な検出可能な標識を含むことができる。薬剤は、そのタンパク質に特異的に結合する抗体であることができる。好ましくは、検出可能な標識は、光散乱による、例えばiSCATによる粒子の検出と同時に、または併行してそのタンパク質の検出を可能にする。好ましくは、検出可能な標識は、蛍光標識であり(従って、例えば薬剤は、蛍光標識された抗体であり)、タンパク質を組み込んでいる粒子は、蛍光によって検出される。従って、本発明の方法は、光散乱による(例えばiSCATによる)リポタンパク質粒子の検出および蛍光によるリポタンパク質粒子の検出を含むことができる。
【0089】
本発明の方法は、1以上の他のリポタンパク質検出法を実施することを含むこともできる。他のリポタンパク質検出法は、ポリアクリルアミド勾配ゲル電気泳動(例えば米国特許第5925229A号を参照)、勾配密度超遠心(例えば米国特許出願公開第20140049775A1号を参照)、核磁気共鳴(例えば米国特許第5343389A号を参
照)、イオン移動度分析(例えば米国特許第7259018B2号を参照)を含む。方法は、さらに、総グリセリド(TG);総コレステロール(TC);HDL-コレステロール(HDL-C);およびLDL-コレステロール(LDL-C)レベルの1以上を決定するために、標準的なFriedewaldアッセイを実施することを含むことができる。Friedewaldアッセイは、VLDLおよびLDLを沈殿させてLDL-コレステロールレベルを測定することを必要とし、次の式により計算される:TC-(HDL-C+TG/5)。このアッセイの限界は、TG>400mg/mlの場合、またはVLDL TG/Chol比が5:1から逸脱している場合のその限られた正確さである。また、リポタンパク質測定のための試料が得られる個体の絶食が、必要とされる。
【0090】
光散乱によって(例えばiSCATによって)得られた結果は、他の方法(単数または複数)によって得られた結果と比較されることができ、または他の方法(単数または複数)が、追加の情報を提供するために用いられることができる。従って、例えばiSCATは、粒径および数に関する情報を提供するために使用されることができ、1以上のリポタンパク質構成要素の総濃度は、他の方法によって決定されることができる。
【0091】
検出
特許請求される方法に従うリポタンパク質粒子を含む粒子の検出は、光散乱を用いて、好ましくは干渉散乱顕微鏡法(iSCAT)を用いて実施される。この技法は、例えばKukura et al ., Nature Methods 2009 6:923-935において、そしてOrtega-Arroyo et al, Physical Chemistry Chemical Physics 2012 14: 15625-15636において総説されている。
【0092】
iSCATは、試料中の物体によって散乱された光および試料の位置から反射された光の間の干渉を決定することを含む。干渉は、物体の散乱振幅(そして今度はその体積)に依存し、iSCAT信号として測定される。従って、リポタンパク質粒子によって生成されたiSCAT信号は、その体積および直径と関連付けられ、試料中に存在するリポタンパク質粒子のタイプを同定することができる。較正において、iSCAT信号は、下記のように粒子の質量/濃度を推定するために使用されることもできる。従って、本発明の方法は、典型的には、iSCAT信号を決定することを含む。iSCAT信号は、粒子の存在下および非存在下での検出される光の比率として記載されることができる。より詳細には、それは、(Is-Ip)/Isとして定義され、ここで、Isは、粒子の非存在下での試料位置(例えばガラス表面)からの反射強度であり、Ipは、粒子の存在下での同じ尺度である。
【0093】
方法は、以下:試料を試料位置に保持するための試料ホルダー;照明光を提供するように配置された照明光源;検出器;および照明光を試料位置上に向けるように配置されている、そして反射された出力光(出力光は、試料位置から散乱された光および試料位置から反射された照明光の両方を含む)を収集し、出力光を検出器に向けるように配置されている光学系を含む干渉散乱顕微鏡の使用を含むことができる。顕微鏡は、さらに、出力光をフィルタリングするように配置された空間フィルターを含むことができ、空間フィルターは、出力光を通過させるが強度が低下するように配置されており、それは、予め決定された開口数内でより大きい開口数におけるよりも大きい。そのような空間フィルターは、有利には、それぞれ参照により本明細書に援用されるPCT/GB2017/052070において、そしてCole et al (ACS Photonics, 2017, 4(2), pp 211-216)においても記載されているように、画像コントラストを最大化する。
【0094】
使用される光は、以下の光であることができる:紫外光(l0nm~380nmの範囲の波長を有するものとして本明細書で定義されることができる);可視光(380nm~740nmの範囲の波長を有するものとして本明細書で定義されることができる);赤外光(740nm~300μmの範囲の波長を有するものとして本明細書で定義されること
ができる)。光は、好ましくは可視光である。青色光が、リポタンパク質粒子の検出の高い感度のために好ましい。赤色光も、iSCATによる粒子の検出を蛍光による特定のリポタンパク質構成要素(例えば対象の特定のタンパク質)の検出、例えば対象のタンパク質に結合する蛍光標識抗体を使用する検出と組み合わせることを可能にするために、有利に使用されることができる。光は、波長の混合であることができる。照明光は、例えばレーザーによって提供されるコヒーレント光であることができる。
【0095】
図3は、下記のように配置された(そして上記で論じられたように空間フィルターを備えて構成された)本発明で利用され得るiSCAT顕微鏡1を図説している。空間フィルターは、論じられた理由のために、コントラストを向上させるために有利であるが、本発明の方法は、代わりに、空間フィルターを有しないiSCAT顕微鏡を利用することができる。
【0096】
顕微鏡1は、以下でより詳細に記載される空間フィルターを除いて、顕微鏡の分野で一般的に用いられる構成を有する以下の構成要素を含む。
顕微鏡1は、試料3を試料位置に保持するための試料ホルダー2を含む。試料3は、撮像されるべき対象を含む液体試料であることができ、それは、以下でより詳細に記載される。試料ホルダー2は、試料3を保持するのに適したあらゆる形態をとることができる。典型的には、試料ホルダー2は、試料ホルダー2および試料3の間の界面を形成する表面上に試料3を保持する。例えば、試料ホルダー2は、カバースリップであることができ、かつ/またはガラスから作られていることができる。試料3は、試料ホルダー2上に簡単な方法で、例えばマイクロピペットを使用して提供されることができる。
【0097】
顕微鏡1は、さらに、照明光源4および検出器5を含む。
照明光源4は、照明光を提供するように配置されている。照明光は、コヒーレント光であることができる。例えば、照明光源4は、レーザーであることができる。照明光の波長は、試料3の性質および/または調べられるべき特性に応じて選択されることができる。一例では、照明光は、405nmの波長を有する。
【0098】
場合により、照明光は、例えばKukura et al.,“High-speed nanoscopic tracking of the position and orientation of a single virus”, Nature Methods 2009 6:923-935
において詳述されているように、照明のコヒーレントな性質およびレーザーノイズから生じるスペックルパターンを除去するために、空間的に変調されることができる。
【0099】
検出器5は、試料位置から反射する出力光を受ける。典型的には、顕微鏡1は、広視野モードで動作することができ、この場合、検出器5は、試料3の画像をキャプチャーするイメージセンサーであることができる。あるいは、顕微鏡1は、共焦点モードで動作することができ、この場合、検出器5は、イメージセンサーであることができ、またはフォトダイオードのような点状の検出器であることができ、この場合、走査配置が、試料3の領域を走査して画像を構築するために使用されることができる。検出器5として利用され得るイメージセンサーの例は、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサーまたはCCD(電荷結合素子)を含む。
【0100】
顕微鏡1は、さらに、試料ホルダー2、照明光源4および検出器5の間に配置された光学系10を含む。光学系10は、以下のように、試料3を照明するために照明光を試料位置上に向けるように、そして試料位置から反射した出力光を集めて出力光を検出器5に向けるように配置されている。
【0101】
光学系10は、試料ホルダー2の前方に配置されたレンズ系である対物レンズ11を含む。光学系10は、集光レンズ12およびチューブレンズ13も含む。
集光レンズ12は、光源11からの照明光(
図1において実線で示されている)を対物レンズ11を通して試料位置の試料3上に集光する。
【0102】
対物レンズ11は、(a)試料位置から反射された照明光(
図1において実線で示されている)および(b)試料位置において試料3から散乱した光(
図1において点線で示されている)の両方を含む出力光を集める。反射光は、主に試料ホルダー2および試料3の間の界面から反射される。典型的には、これは、比較的弱い反射、例えばガラス-水反射である。例えば、反射した照明光の強度は、入射した照明光の強度の約0.5%であることができる。散乱光は、試料3中の物体によって散乱される。
【0103】
従来のiSCATと類似した方式で、試料の表面またはその付近にある物体からの散乱光は、構造的に(constructively)反射光と干渉し、従って検出器5によってキャプチャーされた画像において見ることができる。この作用は、検出器に到達した照明光が試料の深さを通って透過する、透過において動作する顕微鏡とは異なり、それは、遥かに小さい撮像コントラストをもたらす。
【0104】
図1において示されているように、反射した照明光および散乱光は、異なる指向性を有する。特に、反射した照明光は、光源4および光学系6によって出力される光のビームの幾何学的形状に起因する開口数を有する。散乱光は、大きい範囲の角度にわたって散乱され、従って反射される照明光よりも大きい開口数を満たす。
【0105】
チューブレンズ13は、対物レンズ11からの出力光を検出器5上に集中させる。
光学系6は、光源4からの照明光および検出器5に向けられた出力光のための光路を分割するように配置されているビームスプリッター14も含む。下記のような空間フィルターを備えていることを除いて、ビームスプリッター14は、その上に入射する光の部分的な反射および部分的な透過を提供する従来の構造を有することができる。例えば、ビームスプリッター14は、典型的にはフィルムを備えたプレートであることができ、それは、金属または誘電体であることができ、光路に対して45°で配置されていることができる。あるいは、ビームスプリッター14は、プリズムの間の界面において部分反射性フィルムを有する一致した(matched)一対のプリズムによって形成された立方体ビームスプリッターであることができる。あるいは、ビームスプリッター14は、偏光ビームスプリッターであることができ、ビームスプリッター14および試料3の間の1/4波長板との組み合わせで使用される。
【0106】
図1において示されている例では、光源4は、光源4からの照明光がビームスプリッター14によって対物レンズ11中に反射されるように対物レンズ11の光路からずらされており、逆に、検出器5は、試料位置からの出力光がビームスプリッター14を通って検出器5に向かって透過されるように対物レンズ11の光路と整列している。
【0107】
従来の構造であることができる上記の構成要素に加えて、顕微鏡1は、空間フィルター20を含む。
図1において示されている例では、空間フィルター20は、ビームスプリッター14上に形成され、それによって対物レンズ11の後方開口部の後ろ、従って対物レンズ11の後焦点面15の真後ろに位置付けられる。従って、空間フィルター20は、位相差顕微鏡におけるように対物レンズに入ることなく実施されることができる。(例えば下記のように)空間フィルターを共役平面中ではなく対物レンズの入口開口部の真後ろに配置することは、高開口数顕微鏡対物レンズ内の多数のレンズに起因する後方反射を強く抑制するという明確な利点を有する。これは、今度は、撮像ノイズを低減し、非干渉バックグラウンドを低下させ、実験の複雑さ、光学の数および光路長を低減し、光学的機構(optical setup)の高められた安定性、従って高められた画質をもたらす。
【0108】
しかし、この位置は、必須ではなく、下記のように、同等の機能を有する空間フィルターが、他の場所に提供されることができる。
空間フィルター20は、それによって検出器5へと通過する出力光をフィルタリングするように配置される。従って、検出器5が対物レンズ11の光路と整列している
図1において示されている例では、空間フィルター20は、透過型である。
【0109】
空間フィルター20は、部分的に透過性であり、従って反射された照明光を含む出力光を通過させるが、強度は低下する。空間フィルター20はまた、光軸と整列しており、それが予め決定された開口数内で強度の低下を提供するように、予め決定された開口を有する。本明細書において、開口数は、その通常の方法において、出力光が生じる試料位置に対する角度の範囲を特性付ける無次元量であると定義される。具体的には、開口数NAは、方程式NA=n・sin(θ)によって定義されることができ、ここで、θは、集光角の半分であり、nは、出力光が通過する材料(例えば光学系6の構成要素の材料)の屈折率である。
【0110】
空間フィルター20は、予め決定された開口数の範囲外では強度低下を提供しない。あるいは、原理的には、空間フィルター20は、その予め決定された開口の範囲外で強度における低下を提供し得る(予め決定された開口数の範囲内での強度における低下よりも小さい強度における低下であるが)が、これは、望ましくない。
【0111】
空間フィルター20は、あらゆる適切な方法で形成されることができ、典型的には、堆積した材料の層を含む。その材料は、例えば銀のような金属であることができる。堆積は、あらゆる適切な技法を用いて実施されることができる。
【0112】
界面付近のサブ回折サイズの(sub-diffraction sized)物体は、反射される照明光よりも大きい開口数に優先的に光を散乱させるため、空間フィルター20によって提供される強度における低下は、散乱光よりも反射される照明光の検出における強度を優先的に低下させる。従って、低い開口数における空間フィルター20による強度の低下は、主に反射される照明光に影響を及ぼし、散乱光には最小限の影響しか有さず、それにより、キャプチャー画像におけるコントラストを最大化する。増大した撮像コントラストは、弱い散乱体である物体の高コントラスト検出を可能にする。
【0113】
コントラストの増強は、以下のように理解されることができる。空間フィルター20が予め決定された開口数において出力光の一部を通過させる(すなわち、この例において部分的に透過性である)ため、照明光および散乱光の場(fields)の画分が、検出器に到達し、十分にコヒーレントな照明光源に干渉する。次いで、検出器に到達する光の強度Idetは、Idet=|Einc|2{r2t2+|s|2+2rt|s|cosΦ}により与えられ、ここで、Eincは、入射光の場であり、r2は、界面の反射率であり、t2は、空間フィルター20の透過率であり、sは、物体の散乱振幅であり、Φは、透過した照明光および散乱光の間の位相差である。従って、たとえ検出される光子の総数を犠牲にしても、散乱コントラストは、増強される。
【0114】
従って、コントラストは、従来のiSCATと類似の方法で提供されるが、さらに空間フィルターの透過率によって制御される。これは、標準的なiSCATにおけるようにガラス-水界面の反射率によって固定されるのとは対照的に、空間フィルター20の透過率t2の選択によって直接参照場の振幅を調整する能力を提供する。空間フィルター20が堆積した材料の層である場合、透過率t2は、材料および/または層の厚さの選択によって選択されることができる。そのような調整は、例えば対象の散乱させる物体、カメラのフルウェルキャパシティおよび倍率に応じて実施されることができる。
【0115】
iSCATに対するこれらの有益な作用を最大化するために、予め決定された開口数は、出力光内の反射された照明光の開口数であることができるが、それは必須ではない。例えば、予め決定された開口数が、反射された照明光の開口数よりもわずかに小さいか、またはわずかに大きい場合、類似の性質の利益が、達成され得る。
【0116】
リポタンパク質を含む試料
試料は、リポタンパク質粒子を含むあらゆる試料であることができる。粒子は、典型的には生体内で、例えばヒトまたは動物において産生されたリポタンパク質粒子である。従って、リポタンパク質粒子は、典型的には生物学的試料中に存在する。しかし、インビトロで産生されたリポタンパク質粒子および/または精製された形態で提供されたリポタンパク質粒子も、例えば上記で論じられたような較正目的のために検出されることができる。試料は、精製された形態の複数の異なるタイプのリポタンパク質を含むことができる。試料は、様々な構成要素の複雑な混合物または多分散溶液、例えば複数の異なるイオン、タンパク質およびリポタンパク質を含む溶液であることもできる。
【0117】
試料がヒトまたは動物から得られた生物学的試料である場合、それは、臨床試料であることができる。以下で本発明の処置および診断の方法の文脈で記載されるように、試料は、あらゆる対象からの臨床試料であることができる。それは、リポタンパク質粒子を含むあらゆる体液または組織の試料であることができる。典型的には、試料は、血液または血液の構成要素、例えば血漿または血清である。試料は、毛細血管、静脈血または動脈血、またはそれら由来の血漿または血清である。試料の収集は、指刺しによる手段または静脈穿刺による手段を含むあらゆる手段によって実施されることができる。
【0118】
上記で論じられたように、本発明に従うリポタンパク質の検出は、有利には、試料の他の構成要素からのリポタンパク質の分離または精製なしで達成される。以前の検出法で必要とされたような分離および精製は、時間がかかり、リポタンパク質粒子の特定の特性を人為的に変化させる可能性もある。しかし、血液のような生物学的試料は、典型的には、粒子の密度を低減し、異なるタイプのリポタンパク質粒子の最適な分解を助けるために希釈されるであろうことは、理解されるべきである。試料は、あらゆる適切な緩衝液中で希釈されることができる。典型的には、適切な緩衝液は、生理的なpHおよび塩濃度を有する。非生理的緩衝条件も、リポタンパク質粒子に対するこれらの条件の作用を調べるために使用されることができる。
【0119】
当業者は、対象の特定のリポタンパク質粒子の検出のための所与の試料の適切な希釈度を、ルーチン的な実験操作により選択することができる。希釈は、検出装置の撮像速度および感度に応じて、単一粒子の検出を可能にする希釈度が同定されるまで経験的に行われることができる。次いで、希釈係数は、未希釈試料中のリポタンパク質粒子の数を外挿によって推定するために考慮に入れられるであろう。
【0120】
試料が血液または血漿である場合、それは、HDL(高濃度ではLDLと比較して相対的に密度が高い)の検出またはHDLおよびLDLの分解の同時の最適な検出を可能にするために、適当な緩衝液中で10000倍以上に希釈されることができる。より低い希釈度(1~5000倍)が、LDLの検出のために使用されることができる。
【0121】
iSCATによるリポタンパク質の検出に必要な試料の量は、最小限であり、試料のタイプおよび採取の手段に応じて、マイクロリットル程度の少量であることができる。指刺しは、非常に少量の血液が採取されることを可能にする。試料は、あらゆる適切な試料チャンバー中で提供されることができる。試料チャンバーは、例えば実施例において記載されるように、カバースリップ上のガスケットによって提供されることができる。あるいは、試料チャンバーは、フローチャンバーまたはマイクロ流体デバイスまたはチップ、例え
ばキャピラリーチップであることができる。
【0122】
診断またはリスク決定の方法
本発明は、異なるタイプのリポタンパク質粒子の大きさ、数、分布および比率と疾患の間の相関関係に基づいて、診断適用において特別な有用性を有する。従って、本発明は、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を診断するための方法、または個体が前記の疾患または状態を発症するリスクを決定するための方法であって、干渉散乱顕微鏡法によって前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を検出することを含む方法を提供する。検出は、上で本発明の検出法に関連して記載されたあらゆる方法で、上記のようなあらゆるタイプのリポタンパク質粒子(単数または複数)に関して実施されることができる。従って、方法は、前記の試料中の1より多くの異なるタイプのリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数、または異なるタイプのリポタンパク質粒子の比率を検出することを含むことができる。方法は、好ましくは、高密度リポタンパク質(HDL)粒子および/または低密度リポタンパク質(LDL)粒子を検出することを含む。方法は、特に、前記の試料中のHDL粒子対LDL粒子の比率を決定することを含むことができる。試料は、上記のあらゆる生物学的試料または臨床試料、好ましくは血液、血清または血漿であることができる。個体は、動物、哺乳類またはヒトであることができる。
【0123】
特定のリポタンパク質粒子のレベル、分布および大きさは、疾患と相関している可能性がある。当該技術において“善玉コレステロール”と記載されるHDLは、体の血液、組織および器官から肝臓に向かうコレステロールに関する通過点(transit)として機能する。従って、正常なHDLレベルは、血中コレステロールレベルの適切な制御を提供する。HDLレベルにおける変化/他のリポタンパク質粒子へのコレステロールの再分配は、疾患または増大した疾患のリスクと関係している可能性がある。例えば、男性に関して40mg/dL未満、女性に関して50mg/dL未満のHDLコレステロール(HDL粒子によって運ばれるコレステロールの濃度)レベルを有することは、心疾患に関する主要な危険因子である(Mayo Clinic, 2016)。HDL粒子は通常、血液中で最も頻度の
高いリポタンパク質画分である。
【0124】
正常な血液中で次に頻度の高いリポタンパク質画分であるLDLは、対照的に、体の組織および器官へのコレステロールの生体内分布におけるその役割のためにしばしば“悪玉コレステロール”とみなされる。高レベルのLDLを有することは、動脈におけるプラーク形成をもたらす可能性があり、それは、おそらく心臓病および卒中のリスクを増大させる(American Heart Association, 2014)。LDLの大きさも、心血管の健康に関連していることが示されている。正常なLDLコレステロール(LDL粒子によって運ばれるコレステロールの濃度)レベルは、100~129mg/dLの範囲である。LDL粒子が小さいほど、心血管事象への相関がより大きい(Foroutan, MS, RDN, 2015)。
【0125】
他のリポタンパク質画分(VLDL、IDL、UDL)は、LDLよりも10~100倍頻度が低い。
従って、本発明に従う検出によって得られるようなHDLおよび/またはLDLの数、大きさおよび比率の(および他のリポタンパク質粒子に関する類似のパラメータの)正確な測定は、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態に関する診断的価値のある情報を提供する。特にHDLおよびLDLの数/大きさの測定は、心血管疾患に関する診断的価値がある。本発明に従って提供される直接的な均質なアッセイは、Friedewald計算に基づいてLDL-C値を決定するのではなく、特に高脂血症を患っている患者に関してリポタンパク質分析を向上させ、より正確なLDL値を可能にすることもできる(Nauck, Wamick, & Rifai, 2002)。また、総血清コレステロールレベルの決定は、診断ツールとしてルーチン的に用いられるが、症候性冠動脈疾患を患っ
ている患者のおおよそ半数は、標準的な方法を用いて測定された正常なLDL-コレステロール濃度を有する。従って、コレステロールの従来の臨床検査室での測定によっては検出されない隠れたリスクがあるようであり、それは、本発明に従うリポタンパク質粒子の数および大きさの直接的な検出によって有利に回避される。
【0126】
診断されるべき、またはそれに関するリスクが決定されるべき疾患または状態は、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係するあらゆる疾患または状態であり得る。疾患または状態は、HDLおよび/またはLDLリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係している可能性がある。疾患または状態は、HDLリポタンパク質粒子対LDLリポタンパク質粒子の比率と関係している可能性がある。疾患または状態は、代わりに、または加えて、VLDL、IDLおよび/またはUDLリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数、またはHDLおよび/またはLDLに対するVLDL、IDLおよび/またはUDLの比率と関係している可能性がある。疾患または状態は、異常なリポタンパク質の分布または大きさと関係している可能性がある。
【0127】
疾患または状態は、正常な(対照または参照)レベルと比較して減少した数のHDL粒子が存在する疾患または状態であり得る。従って、対照試料または参照試料/レベルと比較して減少したHDL粒子の数は、個体が前記の疾患または状態を有すること、または前記の疾患または状態を発症する増大したリスクを有することを示している可能性がある。疾患または状態は、男性に関して40mg/dL未満または女性に関して50mg/dL未満の血中HDLコレステロール濃度を含み得る。男性に関して40~50mg/dL(1.0~1.3mmol/L)、女性に関して50~59mg/dL(1.3~1.5mmol/L)の血中HDLコレステロール濃度は、平均的な心疾患のリスクと関係している。多くの疫学研究に基づいて、60mg/dL(1.55mmol/L)以上の血中HDLコレステロール濃度は、平均未満の心疾患のリスクと関係している。正常なHDLコレステロールレベルは、より一般的には1mmol/Lより大きいレベルと定義され得る。
【0128】
疾患または状態は、代わりに、または加えて、正常なレベルと比較して増加した数のLDL粒子または増加した数のより小さい大きさのLDL粒子が存在する疾患または状態であり得る。従って、対照試料または参照試料/レベルと比較して増加したLDL粒子の数および/または大きさは、個体が前記の疾患または状態を有することまたは前記の疾患または状態を発症する増大したリスクを有することを示している。疾患または状態は、3mmol/Lより高い血中LDLコレステロール濃度を含み得る。ある人が心血管疾患に関する他の危険因子を有しない場合、100mg/dL(2.59mmol/L)未満の血中LDLコレステロールレベルは、最適とみなされることができ;100~129mg/dL(2.59~3.34mmol/L)のレベルは、最適付近/最適より高いレベルとみなされることができ、そして130~159mg/dL(3.37~4.12mmol/L)のレベルは、高境界値とみなされることができる。
【0129】
HDL:LDLの比率は、疾患または状態において低下している可能性がある。
所与のリポタンパク質粒子に関する正常な数および/または大きさは、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する状態、例えば下記で論じられる状態を一切有しない個体におけるこのタイプの粒子に関するベースラインの数および/または大きさへの参照により決定される。従って、そのような個体は、上記診断方法が実施される個体からの試料中のiSCATによって検出された1以上のリポタンパク質粒子(単数または複数)の数および/または大きさと比較されることができる1以上のリポタンパク質粒子(単数または複数)の対照または参照の数および/または大きさを提供する。対照または参照の大きさ/数は、複数の正常な個体からの値の平均であることができる。その個体は、上記で論じられたように、正常な総血中コレステロールレベル、好ましくは正常なHDL血
中コレステロールおよびLDL血中コレステロールレベルを有することができる。正常な(健康な)総血中コレステロールレベルは、5mmol/L未満である。
【0130】
従って、本発明のリスクを診断または決定する方法は、典型的には、個体からの試料中の1以上のリポタンパク質粒子(単数または複数)の数および/または大きさを前記のリポタンパク質粒子(単数または複数)の対照の数および/または大きさと比較する工程を含む。リポタンパク質粒子(単数または複数)に関する増大または減少した数および/または大きさは、下記でさらに論じられるように、疾患または状態またはそのリスクの存在を示している可能性がある。対照または参照レベルは、iSCATによって、またはリポタンパク質粒子を検出するあらゆる他の方法、例えば本明細書で記載されるあらゆる他の既知の検出法によって以前に決定されていることができることは、理解されるべきである。あるいは、リポタンパク質粒子の数および/または大きさは、対照試料においてiSCATによってコレステロールレベルまたは分布と同時に検出されることができる。個体は、あらゆるコレステロール関連の状態を有することができる。疾患または状態は、総血中コレステロール、HDLコレステロールおよび/またはLDLコレステロールの増大した、または高いレベルと関係していることができる。正常な総コレステロールならびにHDLおよびLDLコレステロールレベルは、上記で論じられている。疾患または状態は、トリグリセリド類の増大した、または高いレベルと関係していることができる。疾患または状態は、好ましくは心血管疾患である。疾患または状態は、血管疾患であることができる。
【0131】
心血管疾患(CVD)は、心臓または血管に関係する疾患のクラスを指す。血管に関係する心血管疾患は、血管疾患としても知られている。疾患または状態は、あらゆる血管疾患であることができる。疾患または状態は、冠動脈疾患、冠動脈性心疾患、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患、卒中、軽度の卒中(mini stroke)、腎動脈狭窄および大動脈瘤のいずれかから選択されることができる。疾患または状態は、心臓に関係するあらゆる心血管疾患であることができる。疾患または状態は、高血圧に続発する高血圧性心疾患、高血圧症、心不全、肺性心疾患、心不整脈、心臓リズムの異常、炎症性心疾患、心内膜炎、炎症性心肥大、心筋炎、弁膜性心疾患およびリウマチ性心疾患のいずれかから選択されることができる。疾患または状態は、高コレステロール血症、例えば家族性高コレステロール血症であることができる。疾患または状態は、リポタンパク質粒子の数および/または大きさの診断がその疾患または状態のこの側面の診断(および処置)を助けることができるような、増大したコレステロールまたはトリグリセリド類と関係するあらゆる非心血管系の疾患または状態であることができる。そのような疾患および状態の例は、糖尿病、腎臓病、甲状腺機能不全または炎症を起こした膵臓(膵炎)を含む。
【0132】
個体は、以前に心血管疾患のリスクを有すると特性付けられている、かつ/または血中コレステロールレベルの検査を推奨されていることができる。その個体は、以前に上記の疾患のいずれかを含む心血管疾患を有すると診断されていることができる。この側面において、本発明は、個体におけるリポタンパク質粒子の数および/または大きさのより正確な決定を提供する。
【0133】
個体は、あらゆるリスク因子、例えば性別、年齢、家族歴、体重、肥満度指数、食事またはライフスタイルに基づいて診断またはリスクの評価のために選択されることができる。個体は、40歳を超えていることができ;NHSガイドラインによると、40歳を超える人々は、彼らのCVDリスクの推定値を定期的に再吟味するべきである。個体は、初期の心血管疾患の家族歴を有することができ-例えば、55歳より前に心疾患を発症した、または心臓発作または卒中を有した父親または兄弟、または65歳より前にそのような状態を有した母親または姉妹を有することができる。個体は、コレステロール関連の状態、例えば家族性高コレステロール血症を有する家族、典型的には近親者を有することができ
る。個体は、過体重または肥満であることができる。個体は、高血圧または糖尿病を有することができる。
【0134】
本発明はさらに、物質または組成物が投与されるべき、または療法計画が処方されるべき個体を選択する方法であって、前記の物質または組成物または療法計画が、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防するのに適しており、前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を本発明の検出の方法に従って干渉散乱顕微鏡法によって検出すること、ならびに検出されたリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数が前記の疾患または状態の存在またはそのリスクを示している場合に前記の患者を前記の投与または前記の療法計画に関して選択することを含む方法を提供する。方法は、さらに上記のあらゆるリスク因子に基づいて個体を選択することを含むことができる。
【0135】
投与に関する適切な物質および組成物が、以下に記載されている。適切な処置計画は、ライフスタイルにおける変更、食事療法または運動を含み得る。
本発明はさらに、本発明に従うリポタンパク質粒子の検出の方法またはリスクを診断または決定する方法における使用に適した手段を提供するキットを提供する。キットは、干渉散乱顕微鏡法によるリポタンパク質粒子の検出に適した構成要素を含むことができる。キットは、本発明の方法に従うキットの使用のための説明書を含むことができる。説明書は、1以上のリポタンパク質粒子の数および大きさに関する参照レベルならびに1以上のリポタンパク質粒子に関する参照単一粒子ヒストグラムを提供することができる。キットは、方法がどの個体に対して実施されることができるかに関する詳細を含むこともできる。キットは、試料チャンバーの1以上の構成要素、例えばカバースリップおよびガスケット、フローセル、マイクロ流体デバイスまたはチップ、例えばキャピラリーチップを含むことができる。キットは、個体から試料(典型的には血液試料)を得るための手段、例えば毛細管式採血デバイス、指刺し式採血デバイスまたは針を含むあらゆる器具を含むことができる。キットは、本発明に従ってリポタンパク質粒子の測定値の較正を提供する1以上の標準リポタンパク質試料(例えば本明細書で記載されているナノディスク)を含むことができる。キットはさらに、他の実験室パラメーターまたは臨床パラメーターの測定のための手段を含むことができる。これらのキットを使用する手順は、臨床実験室、実験室、医療従事者または私人によって実施されることができる。本発明はさらに、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態の診断またはリスク決定のための試験キットの製造における、干渉散乱顕微鏡法によるリポタンパク質粒子の検出に適した構成要素の使用を提供する。構成要素は、上記のような試料チャンバーの構成要素であることができる。試験キットは、上記のような説明書、手段、または標準試料を含むことができる。
【0136】
処置の方法および医学的使用
本発明はさらに、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法を提供し、その方法は、前記の個体を選択すること、または前記の個体における前記の疾患または状態のリスクを上記の方法により診断または決定すること、およびその個体に物質または組成物を投与すること、またはそれに対して療法計画を実施することを含み、それは、その個体における前記の疾患または状態を処置または予防するために有効である。
【0137】
本発明は、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法における使用のための物質または組成物も提供し、ここで、前記の個体は、上記の本発明の方法により、リスクがあると診断または決定されるか、または選択される。
【0138】
本発明は、さらに、個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態の予防の処置のための医薬品の製造における物質または組成物の使用を提供し、ここで、前記の個体は、上記の本発明の方法によりリスクがあると診断または決定されるか、または選択される。
【0139】
個体は、上記のあらゆる個体、好ましくはヒトの個体であることができる。個体は、上記のあらゆる疾患または状態を有することができ、またはそのリスクがあることができ、上記のあらゆるリスク因子を有することができる。好ましくは、個体は、心血管疾患を有する、またはそのリスクがあることができ、それは、上記のあらゆる特定の心血管疾患であることができる。
【0140】
物質または組成物は、前記の疾患の予防または処置に有効な量で投与される。療法計画(例えばライフスタイルにおける変更、食事療法または運動)は、典型的には前記の疾患の予防または処置に有効な期間の間実施される。適切な療法計画は、体重減少、喫煙またはアルコール摂取の低減または中止、運動の増加および/または健康的な食事を含むことができる。療法計画は、手術、例えば冠動脈形成術または冠動脈バイパス術を含むこともできる。手術は、ステントの導入を含むことができる。疾患の予防または処置は、疾患の発症の予防または遅延への参照により、または疾患の1以上の症状の低減または排除により決定されることができる。予防または処置は、疾患または状態の寛解を誘導または延長する、または再発を遅らせることができる。有効量の投与または有効な療法計画の実施は、投与または療法計画後の個体からの試料中の正常なリポタンパク質粒子の数、大きさまたは比率の測定(または正常なリポタンパク質粒子の数、大きさまたは比率へのシフト)によって決定されることができる。
【0141】
物質または組成物は、あらゆる手段により、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防するのに適したあらゆる物質または組成物であることができる。物質または組成物は、LDL濃度を低下させるか、またはLDLリポタンパク質粒子の大きさを低下させることができる。物質または組成物は、HDL濃度を増大させることができる。物質または組成物は、総血中コレステロールレベルまたは総LDL血中コレステロールレベルを含む血中コレステロールレベルを低下させることができる。物質または組成物は、血圧を低下させる、または動脈を広げることができる。薬剤は、血管拡張薬であることができる。物質または組成物は、心血管疾患の予防または処置または血圧の低下のためのあらゆる既知の薬剤を含むことができる。薬剤は、スタチンであることができる。スタチン類(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤としても知られている)は、血中のLDLコレステロールのレベルを低下させることができ、高リスクである人において心血管疾患および死亡率を低減することが見出されている薬の群である。薬剤は、β遮断薬、ニトレート、ACE(アンジオテンシン変換酵素)またはアンジオテンシン受容体II阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬または利尿薬であることができる。
【0142】
物質または組成物は、低分子阻害剤、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、低分子干渉RNA(siRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA)であることができる。
【0143】
ポリヌクレオチド、例えば核酸は、2以上のヌクレオチドを含むポリマーである。ヌクレオチドは、天然に存在するものであることも人工的なものであることもできる。ヌクレオチドは、典型的にはヌクレオ塩基、糖および少なくとも1つの連結基、例えばホスフェート、2’O-メチル、2’メトキシ-エチル、ホスホロアミデート、メチルホスホネートまたはホスホロチオエート基を含有する。ヌクレオ塩基は、典型的には複素環式である。ヌクレオ塩基は、プリン類およびピリミジン類、より具体的にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)およびシトシン(C)を含むが、それらに限
定されない。糖は、典型的にはペントース糖である。ヌクレオチド糖は、リボースおよびデオキシリボースを含むが、それらに限定されない。ヌクレオチドは、あらゆるヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチド、典型的にはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはそれらの修飾されたバージョンであることができる。ヌクレオチドは、典型的にはモノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートを含有する。ホスフェートは、ヌクレオチドの5’または3’側に結合していることができる。ポリヌクレオチドは、核酸、例えばデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であることができる。当該技術で既知のあらゆる合成核酸、例えばペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ核酸またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーであることができる。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であることができる。
【0144】
ポリヌクレオチド配列は、あらゆる適当な発現ベクター中にクローニングされることができる。発現ベクターにおいて、コンストラクトをコードするポリヌクレオチド配列は、典型的には宿主細胞によるコード配列の発現を提供することができる制御配列に作動可能に(operably)連結されている。そのような発現ベクターは、コンストラクトを発現させるために使用されることができる。タンパク質発現をノックダウンするためのアンチセンスおよびRNA干渉(RNAi)技術は、当該技術で周知であり、標準的な方法が、対象の分子の発現をノックダウンするために利用されることができる。アンチセンス技術およびsiRNA技術は、両方ともmRNAに干渉する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAのある区間に結合する(それとハイブリダイズする)ことによりmRNAに干渉する。RNAiは、二本鎖RNA、例えば低分子干渉RNA(siRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA)の使用を含み、それは、mRNAに結合し、タンパク質発現を阻害することができる。
【0145】
オリゴヌクレオチドは、ある標的配列に、それが標的配列に優先的または高い親和性でハイブリダイズするが他の配列には実質的にハイブリダイズしない、ハイブリダイズしない、または低い親和性でのみハイブリダイズする場合、“特異的にハイブリダイズする”。ハイブリダイゼーションを可能にする条件は、当該技術で周知である(例えば、Sambrook et al, 2001, Molecular Cloning: a laboratory manual, 第3版, Cold Spring Harbour Laboratory Press;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Ausubel et al., Eds., Greene Publishing and Wiley-lnterscience, New York (1995))
。ハイブリダイゼーション条件は、当該技術で記載されているようなストリンジェントな条件であることができる。
【0146】
抗体は、あらゆる標的分子(典型的にはタンパク質)に特異的に結合することができる。標的分子は、リポタンパク質粒子、例えばアポリポタンパク質の構成要素であることができる。抗体は、あるタンパク質に、それがそのタンパク質に優先的または高い親和性で結合するが他のタンパク質には実質的に結合しない、結合しない、または低い親和性でのみ結合する場合、“特異的に結合する”。例えば、抗体は、ある標的分子に、それがその標的に優先的または高い親和性で結合するが他のヒトタンパク質には実質的に結合しない、結合しない、または低い親和性でのみ結合する場合、“特異的に結合する”。
【0147】
抗体は、それが1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、またはより好ましくは5×10-9M以下のKdで結合する場合、優先的または高い親和性で結合する。抗体は、それが1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、さらにもっと好ましくは1×10-2M以上のKdで結合する場合、低い親和性で結合する。
【0148】
抗体は、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、CDR移植抗体またはヒト化抗体であることができる。抗体は、完全な免疫グロブリン分子またはそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2またはFvフラグメントであることができる。
【0149】
本明細書で記載される療法剤の特定の投与経路、投与量および投与法は、医療従事者によってルーチン的に決定されることができる。
本明細書で記載された処置の方法における使用のための薬剤は、医薬組成物中に配合されることができる。これらの組成物は、療法上有効な成分(単数または複数)に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、キャリヤー、希釈剤、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は、非毒性であるべきであり、有効成分の有効性に干渉するべきでない。医薬的キャリヤーまたは希釈剤は、例えば等張性溶液であることができる。
【0150】
キャリヤーまたは他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮膚または皮下、経鼻、筋肉内および腹腔内経路に依存し得る。適切な組成物および投与法の例が、Esseku and Adeyeye (2011)およびVan den Mooter G. (2006)において提供されている
。例えば、固体経口形態は、有効物質と一緒に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール類;結合剤;例えばデンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギネート類またはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡性混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート類、ラウリルサルフェート類;ならびに一般に医薬配合物において用いられる非毒性かつ薬理学的に不活性な物質を含有することができる。そのような医薬製剤は、既知の方法で、例えば混合、造粒、打錠、糖衣化またはフィルムコーティングプロセスによって製造されることができる。
【0151】
経口配合物は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような通常利用される賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出配合物または粉末の形態をとり、10%~95%、好ましくは25%~70%の有効成分を含有する。医薬組成物が凍結乾燥されている場合、凍結乾燥された材料は、投与前に再構成されることができる(例えば懸濁液)。再構成は、好ましくは緩衝液中で達成される。
【0152】
個体への経口投与のためのカプセル、錠剤および丸剤は、例えばEudragit“S”、Eudragit“L”、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶性コーティングと共に提供されることができる。
【0153】
経口投与用の液状分散物は、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液であることができる。シロップは、キャリヤーとして、例えばサッカロースを含有することができ、またはサッカロースをグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールと共に含有することができる。
【0154】
懸濁液およびエマルジョンは、キャリヤーとして、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含有することができる。筋肉内注射用の懸濁液または溶液は、有効物質と一緒に、薬剤学的に許容可能なキャリヤー、例えば滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸
エチル、グリコール類、例えばプロピレングリコール、および所望であれば適切な量のリドカイン塩酸塩を含有することができる。
【0155】
静脈内投与または注入用の溶液は、キャリヤーとして、例えば滅菌水を含有することができ、または好ましくは、それらは、滅菌、水性、等張性生理食塩水溶液の形態であることができる。
【0156】
坐剤に関して、伝統的な結合剤およびキャリヤーは、例えばポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類を含むことができ;そのような坐剤は、0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成されることができる。
【0157】
用量は、様々なパラメーターに応じて、特に使用される物質;処置されるべき個体の年齢、体重および状態;投与経路;および必要とされる療法計画に応じて決定されることができる。医師は、あらゆる特定の個体に関する必要とされる投与経路および投与量を決定することができるであろう。典型的な一日量は、上記の状態に応じて約0.1~50mg/kg体重である。用量は、単回量として提供されることができ、または複数回用量として提供されることができ、例えば規則的な間隔で、例えば1時間ごとに投与される2、3または4用量で摂取されることができる。
【0158】
上記の技法およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20
版, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsにおいて見付けられることができる。
上記の方法および医学的用途で使用される物質または組成物は、単独で、または他の療法的物質、組成物または処置と組み合わせて、例えば補助療法として投与されることができる。他の療法用組成物または処置は、本発明の物質または組成物または処置と同時に、または順次にのどちらで投与されることもできる。
【実施例0159】
実施例1-iSCATによる精製リポタンパク質粒子の検出
材料/方法
支持体の準備および測定
ホウケイ酸ガラスカバースリップ(No1.5、24×50mm、VWR)を、MilliQ水、続いてエタノール、再度MilliQ水で順次すすぐことにより洗浄した。次いで、それらを乾燥窒素の流れの下で乾燥させた。CultureWellシリコンガスケット(Grace Bio-Labs)を切断し、新しく洗浄したカバースリップ上に置き、同じ支持体上に4つの独立した30~50μlの試料チャンバーを提供した。
【0160】
精製されたHDLおよびLDL試料は、Lee Biosystemsから得られ(LDLカタログ番号360-10;HDLカタログ番号361-10)、それらは、例えば以下:https://www.leebio.com/product/984/low-density-lipoprotein-ldl-human-serum-360-10において記載されている。HDLおよびLDLを、超遠心分離により分離した。
試料を、それぞれ500000および50000倍に希釈した。
【0161】
次いで、データの取得および分析を、iSCATによって実施し、ガラス支持体へのリポタンパク質の非特異的結合を、撮像および記録した。実験設定は、上記のCole et alにより
図4において記載された実験設定と同一であった。画像は、30秒間にわたって(100フレーム/sで)取得され、23.4nmのピクセルサイズを有する512×512ピクセルで構成されていた。画像は、保存の前に3×3でピクセルビニングされ、70.2nmの最終的なピクセルサイズを与えた。
【0162】
レシオメトリック画像スタックを、Cole et alにおいて記載されたように、生の動画か
ら生成した。ガラス表面上に着地した粒子を、点広がり関数の2Dガウスフィッティングに基づく自動化されたスポット検出ルーチンによってレシオメトリック画像において同定した。
【0163】
結果が、iSCATによって検出されたHDLおよびLDLの画像ならびに画像の完全なシリーズから得られた対応するヒストグラムを提供する
図4において示されている。
実施例2-iSCATによる血液および血清由来の精製されたリポタンパク質粒子の検出
実施例1で記載されたiSCAT法を、ヒト個体からの血清および血液試料に対して実施した。血清を得るために、血液を少なくとも30分間直立位置で凝固させた後、遠心分離した(30分間、1500×g)。血清をプラスチック製のスクリューキャップバイアルに移した。血液および血清試料を、以下のように調製した:1μlの指刺し血液または血清試料を、(凝固を防ぐため)5mM EDTAを含有するHEPES/KCl緩衝液中で2000倍希釈した(下記参照)。10μlの希釈された試料を、100mM KClを含有する40μlの25mM HEPES緩衝液(pH7.4)中に添加し、結果として血液の最終的な10000倍希釈をもたらした。
【0164】
図5は、血漿試料中のHDLおよびLDLの検出を示している。血漿試料の撮像は、HDLおよびLDLに対応する信号両方を同時に明らかにした。予想されるように、HDL粒子は、LDLよりも頻度が高かった(下記のヒストグラムを参照)。
【0165】
図6Aおよび6Bは、全血中のHDLおよびLDLの検出を示しており、
図5と類似の結果である。我々はまた、“絶食時試料”および食後に採取された試料の両方を用いた。絶食/非絶食条件の間の違いは、より大きなリポタンパク質、例えばVLDLに対応するより高いiSCAT信号のレジーム(regime)(インサート(inserts))において気付かれ得る。予想されるように、これらは、食後に現れる。前に論じられたように、VLDL画分の存在は、患者が標準的なコレステロール検査の前に絶食しなければならない主な理由である。VLDLは、コレステロールを含有するが、主にトリグリセリド類(TG)であり、TGレベルが高すぎる場合、標準的な(Friedewald)方法は、用いられることができない。従って、試料を提供する個体において絶食を一切必要としないリポタンパク質(HDL、LDLおよびVLDLを含む)の検出が、本発明によれば可能である。
【0166】
実施例3-HDLおよびLDL濃度を計算するための較正
実施例2の血液試料中のHDLおよびLDLの質量/濃度の計算を可能にするため、我々は、較正曲線を確立し、ここで、既知の質量/濃度のタンパク質が測定され、分子量およびiSCATコントラストの間の線形関係を与えた。
【0167】
濃度の較正のため、我々は、既知の濃度のMSP1D1 DMPC脂質ナノディスクを使用した。そのナノディスクは、2つの両親媒性タンパク質によりスクリーニングされた疎水性の端を有するリン脂質の脂質二重層で構成される合成モデル膜系である。これらのタンパク質は、膜骨格タンパク質(MSP)と呼ばれ、二重ベルト(double belt)形態で整列している。ナノディスク試料をnMの範囲まで希釈し、緩衝液に添加した。ナノディスクのガラスへの非特異的な結合が、iSCATを使用して記録され、結果が、
図7において示されている。結合の頻度は、溶液中の粒子の数ならびに結合のためのアクセス可能な部位の数が減少するにつれて低下する(左の図において示されているように:4つの異なる濃度に関する時間の関数としての結合事象数)。我々は、指数関数的減衰を当てはめ、いつ試料が添加されたか(t=0)を知り、初期結合率を外挿によって推定した。
【0168】
次いで、初期結合率を、濃度の関数としてプロットした(右の図)。線形当てはめの傾きは、変換係数であり、それは、次の関係を用いて試料の絶対濃度を決定するために使用されることができる:
[試料濃度]=[測定された初期率]/[変換係数]×[試料の希釈度]
この較正曲線を用いて、HDLおよびLDLリポタンパク質粒子濃度を、予備実験で全血試料から計算し、期待値と相関していることが分かった。
【0169】
実施例4-アクチン溶液に関する濃度測定
この実施例に関して濃度の計算において行われた一般的な工程:
1.試料を(高表面積対体積チャンバーである)試料ホルダーに入れる。
【0170】
2.
図7において示されているように、試料を適用した後、一定の十分に制御された時間遅延で個々の結合事象の記録を開始する。
3.結合の頻度を試料の添加後の時間の関数としてコンピューターで計算する。
【0171】
4.観測された結合頻度における減衰を時間の関数として単一の指数的減衰関数に当てはめる。
5.時間ゼロの切片を引き出して試料の添加時の結合頻度を決定する。
【0172】
6.その手順を、試料濃度の関数として繰り返す。
7.観測された初期結合頻度対試料濃度を当てはめて線形相関を得る。
一度その相関関係が確立されると、あらゆる所与の試料に関して、濃度が、工程1~5を繰り返して初期結合頻度を確立することにより推定されることができ、それは、工程7における関係から試料濃度に変換されることができる。
【0173】
線形当てはめの傾きは、変換係数であり、それは、次の関係を用いて試料の絶対濃度を決定するために使用されることができる。
[試料濃度]=[測定された初期率]/[変換係数]×[試料の希釈度]
アクチンに対する滴下希釈法に関するプロトコル:
・他の箇所で記載されているように(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)でコーティングされたカバースリップを調製した(これらのカバースリップは、アクチンに特異的であり、他のタンパク質は、単純な未処理の洗浄されたガラスを使用するであろう)。
【0174】
・直径3mmのPDMSガスケット(Grace Bio-Labs GBL103250、Sigma Aldrichから入手可能)の2×2の穴をきれいなメスで切り取った。
【0175】
・ガスケットをmilliQ(MQ)水、イソプロパノール、MQ水、イソプロパノール、MQ水ですすぎ、窒素の流れでブローして乾燥させた。
・APTESコーティングされたカバースリップの中心部にガスケットを取り付けた(PDMSのガラス表面との接触は、それが取り付けられるために十分である)。
【0176】
・顕微鏡上で、F-アクチン緩衝液の37ulの液滴をAPTESカバースリップ上のガスケットの1つに入れ、焦点位置をその緩衝液を充填されたガスケット中のガラス表面に調整した。
【0177】
・アクチン(重合してフィラメントになる42kDaのタンパク質)の11.4uMのストック溶液をG-アクチン緩衝液中で333.33nMに希釈した。
・90ulの333.33nMアクチンストックを10ulのF-アクチン緩衝液の1
0×濃縮液と混合した(アクチン実験に特有の重合を開始することを意味する)→300nMの最終的なアクチン濃度。
【0178】
・重合の15分後、300nMアクチン溶液から3ulの分割量をピペットで取り出し、それを押し出してピペットの先端に小液滴を作り、次いでアクチン液滴をガスケット中の緩衝液の液滴と融合させた。
【0179】
・撹乱(perturbations)が1分間続けられた直後に、着地する分子の記録を開始した。
この方法は、試料を希釈して動画を記録するためにかかる時間と比較してオリゴマー化の平衡がゆっくりと変化する系に関してうまく作動する。
【0180】
緩衝液
G-アクチン緩衝液
2mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス塩基)
0.2mM CaCl2
0.2mM アデノシン三リン酸(ATP)
2mM ジチオスレイトール(DTT)
HClでpH8.0に調節した。
【0181】
F-アクチン緩衝液
10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)
100mM KCl
2mM MgCl2
1mM エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)
KOHでpH7.5に調節した。
【0182】
結果が、
図8Aおよび
図8Bにおいて示されている。8Aは、1kHzのフレームレート、有効フレームレート:25Hzで記録された、上記の希釈法によるガスケット中の300nMアクチンの着地動画の一例のフレームを示している。比較のために、1kHzのフレームレート、有効フレームレート:25Hzで記録された、類似の条件下でのフローチャンバー中の300nMアクチンの着地動画の一例のフレームが、8Bとして示されている。
【0183】
実験は、4回繰り返され、結果として得られた蓄積した質量ヒストグラムが、
図9として示されている。
個体においてリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を診断するための、または該個体が前記の疾患または状態を発症するであろうリスクを決定するための方法であって、前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を干渉散乱顕微鏡法により検出することを含む、前記方法。
物質または組成物が投与されるべき、または療法計画が処方されるべき個体を選択する方法であって、前記の物質または組成物または療法計画が、リポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防するのに適しており、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法によって前記の個体からの試料中のリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数を検出し、検出されたリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数が前記の疾患または状態の存在またはそのリスクを示している場合に前記の投与または前記の療法計画に関して前記の患者を選択することを含む、前記方法。
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法であって、該方法が、前記の個体における前記の疾患または状態のリスクを診断または決定すること、または請求項7~15のいずれか1項に記載の方法によって前記の個体を選択すること、および該個体における前記の疾患または状態を処置または予防するために有効である物質または組成物を該個体に投与すること、または療法計画をそれに対して実施することを含む、前記方法。
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態を処置または予防する方法における使用のための物質または組成物であって、前記の個体が、請求項7~15のいずれか1項に記載の方法によりリスクがあると診断または決定されるか、または選択される、前記物質または組成物。
個体におけるリポタンパク質粒子の大きさおよび/または数と関係する疾患または状態の予防の処置のための医薬品の製造における物質または組成物の使用であって、前記の個体が、請求項7~15のいずれか1項に記載の方法によってリスクがあると診断または決定されるか、または選択される、前記使用。