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特開2024-29153細胞巨大分子の発現を調節する化合物のハイスループットスクリーニング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029153
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】細胞巨大分子の発現を調節する化合物のハイスループットスクリーニング
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/542 20060101AFI20240227BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240227BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240227BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240227BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/542 A
G01N33/53 V
G01N33/53 W
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/53 Z
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/06
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222478
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2021152166の分割
【原出願日】2012-04-06
(31)【優先権主張番号】61/472,962
(32)【優先日】2011-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504440959
【氏名又は名称】ザ スクリップス リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】THE SCRIPPS RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラスメザス、コリンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン、チャールズ
(57)【要約】
【課題】特定の巨大分子である「標的」の発現を調節する化合物のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】特定の巨大分子である「標的」の発現を調節する化合物のスクリーニング方法は、標的結合リガンド及び過剰リガンドの分離を必要としない点で特に有用であり、限定するものではないが、発現した標的のレベル又は細胞による標的のレベルを増大若しくは低減する化合物のハイスループットスクリーニングを可能にする。本方法は細胞巨大分子の増加又は減少を招く状態をハイスループット診断することにも用いることができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法において、
第1の検出可能な標識を有する第1のリガンドと第2の検出可能な標識を有する第2のリガンドの標識リガンドペアを選択することであって、前記標識リガンドペアは、当該標識リガンドペアの第1のリガンド及び第2のリガンドがサンプル中の特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合したときに、特定の標的分子の濃度に応じた強度を有する標的特異的な検出可能シグナルを放出するものである、前記第1のリガンドと前記第2のリガンドの前記標識リガンドペアを、リガンドペア分析を介して選択し、
(i)選択された前記標識リガンドペアの前記第1の検出可能な標識を有する前記第1のリガンド及び前記第2の検出可能な標識を有する前記第2のリガンドをサンプルに添加するステップと、(ii)選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定の標的分子上の前記別々の特定の部位に結合するステップとを備えるが、(iii)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで前記特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングし、
選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定の標的分子の前記別々の特定の部位に特異的に結合したときに放出される前記標的特異的な検出可能シグナルである光または発光減衰時間の短縮を検出し、それによってサンプル中の前記特定の標的分子を同定及び定量することを備え、
前記特定の標的分子はタグ付けされていない内在性の細胞分子である、方法。
【請求項2】
前記検出可能な標識は、蛍光団、発光分子、酵素又は放射性核種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光が、蛍光、化学発光、又は生物発光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、抗体、抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、ヒト化抗体及び抗体フラグメント、ラクダ化抗体及び抗体フラグメント、ヒト抗体及び抗体フラグメント、単一特異性抗体若しくは二重特異性抗体、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((scFv)フラグメント)、ダイアボディ、トリボディ若しくはテトラボディ、ペプトイド、ペプチド若しくは核酸アプタマー、抗体模倣剤、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)又は蛍光偏光アッセイを備えるハイスループットスクリーニングアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記特定の標的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片、タンパク質、タンパク質断片群、ペプチド、ペプチド核酸、核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特定の標的分子はサンプル中に存在するものであり、当該サンプルが、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクト細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、抗体模倣剤、一本鎖抗体、核酸、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
サンプル中の特定タンパク質を定量する方法であって、前記方法は、
第1の検出可能な標識を有する第1のリガンドと第2の検出可能な標識を有する第2のリガンドの標識リガンドペアを選択することであって、前記標識リガンドペアは、当該標識リガンドペアの第1のリガンド及び第2のリガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合したときに、特定の標的分子の濃度に応じた強度を有する標的特異的な検出可能シグナルを放出するものである、前記第1のリガンドと前記第2のリガンドの前記標識リガンドペアを、リガンドペア分析を介して選択し、
ドナー蛍光団の励起に適した波長で前記サンプルが照射されることを可能にするとともにハイスループットアッセイによりアクセプター蛍光団の蛍光の測定を可能にする容器に、特定の標的分子を含有する前記サンプルを導入するステップと、
前記特定の標的分子上の特定の部位に結合する、選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である前記第1の検出可能な標識としての第1蛍光団に連結している前記第1のリガンドを添加するステップと、
前記第1のリガンドが結合するものとは別の同じ特定の標的分子上の特定の部位に結合する、選択された前記標識リガンドペアの前記第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である前記第2の検出可能な標識としての第2蛍光団に連結している前記第2のリガンドを添加するステップと、
選択された前記標識リガンドペアの前記第1リガンド及び前記第2リガンドに結合した前記特定の標的分子を含有する前記サンプルを前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された、前記標的特異的な検出可能シグナルである光の強度または発光減衰時間の短縮を測定し、それによって前記特定タンパク質を定量するステップと、
を備え、
前記特定の標的分子はタグ付けされていない内在性の細胞分子である、方法。
【請求項12】
前記放射された光の強度は時間分解蛍光測定によって測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記発光減衰時間の短縮は、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)によって測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記特定の標的分子は支持体表面に結合していない、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アクセプター蛍光団がフェルスター半径によって定義される距離以下の距離だけ前記ドナー蛍光団から離れた位置にあるとき、励起が前記アクセプター蛍光団に移動される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記容器は、前記ドナー蛍光団の波長での照射と前記アクセプター蛍光団の波長での測定とを可能にする、キュベット、マルチウェルプレート、チューブ、フラスコ、ディスク、ビーズ、バイアル、カセット、フローセル、カートリッジ、マイクロ流体チップ、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記特定の標的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片、タンパク質、ペプチド、ペプチド核酸、核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記特定の標的分子は、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクトな細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含むサンプル中に存在している、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記特定の標的分子上の異なる非オーバーラップ部位であるエピトープに特異的に結合する前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、抗体若しくはエピトープ結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、抗体模倣剤、ペプトイド、アプタマー、ポリペプチド又は核酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、ポリペプチド、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)又は蛍光偏光アッセイを含むハイスループットスクリーニングアッセイである、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
候補治療化合物をスクリーニングする方法において、前記方法は、
第1の検出可能な標識を有する第1のリガンドと第2の検出可能な標識を有する第2のリガンドの標識リガンドペアを選択することであって、前記標識リガンドペアは、当該標識リガンドペアの第1のリガンド及び第2のリガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合したときに、特定の標的分子の濃度に応じた強度を有する標的特異的な検出可能シグナルを放出するものである、前記第1のリガンドと前記第2のリガンドの前記標識リガンドペアを、リガンドペア分析を介して選択し、
(i)特定の標的分子を含有するサンプルを候補治療化合物に接触させるステップと、(ii)選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドを添加するステップと、(iii)選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定の標的分子上の前記別々の特定の部位に結合するステップとを含むが、(iv)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで前記サンプルをスクリーニングし、
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記サンプル中の前記特定の標的分子に特異的に結合したときに放出される前記標的特異的な検出可能シグナルである光または発光減衰時間の短縮を検出し、
対照に比べて前記特定の標的分子の量を調節する化合物を選択し、
それによって、候補治療化合物をスクリーニングすること
を備え、
前記特定の標的分子はタグ付けされていない内在性の細胞分子である、方法。
【請求項25】
前記候補治療化合物は、前記光または発光減衰時間の短縮によって測定されたときに、前記特定の標的分子の量、機能、活性又は発現を調節する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
候補治療化合物をスクリーニングする方法であって、前記方法は、
第1の検出可能な標識を有する第1のリガンドと第2の検出可能な標識を有する第2のリガンドの標識リガンドペアを選択することであって、前記標識リガンドペアは、当該標識リガンドペアの第1のリガンド及び第2のリガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合したときに、特定の標的分子の濃度に応じた強度を有する標的特異的な検出可能シグナルを放出するものである、前記第1のリガンドと前記第2のリガンドの前記標識リガンドペアを、リガンドペア分析を介して選択し、
ドナー蛍光団の励起に適した波長でのサンプルの照射とハイスループットアッセイによるアクセプター蛍光団の蛍光の測定とを可能にする容器に特定の標的分子を含有するサンプルを導入するステップと、
前記サンプルと前記候補治療化合物とを接触させるステップと、
前記特定の標的分子上の特定の部位に結合する、選択された前記標識リガンドペアの前記第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である前記第1の検出可能な標識としての第1蛍光団に連結している前記第1のリガンドを添加するステップと、
前記第1のリガンドが結合するものとは別の、同じ特定の標的分子上の特定の部位に結合する、選択された前記標識リガンドペアの前記第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である前記第2の検出可能な標識としての第2蛍光団に連結している前記第2のリガンドを添加するステップと、
前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で、選択された前記標識リガンドペアの前記第1リガンド及び前記第2リガンドに結合した前記特定の標的分子を含有するサンプルを前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された、前記標的特異的な検出可能シグナルである光の強度または前記ドナー蛍光団の発光減衰時間の短縮を測定するステップと、
対照に比べて前記特定の標的分子の量を調節する化合物を選択し、
それによって、候補治療化合物をスクリーニングするステップと
を備え、
前記特定の標的分子はタグ付けされていない内在性の細胞分子である、方法。
【請求項27】
前記候補治療化合物は、前記放射された光または発光減衰時間の短縮によって測定されたときに、前記特定の標的分子の量、機能、活性又は発現を調節する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記特定の標的分子は、インタクトな細胞によって内生的に産生されたものである、請求項1、11、24および26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、FRETに基づくアッセイによる特定の細胞成分(標的)の定量のための方法に関し、このアッセイは、標的と固相との結合も、過剰試薬からの標的の分離も必要としないことから、ハイスループットスクリーニングに好適である。
【背景技術】
【0002】
タンパク質混合物中、細胞ホモジネート中での特定の巨大分子(macromolecule)すなわち「標的」の定量、特に、他の成分、具体的には、細胞表面上の特定のタンパク質の存在下での定量は、一般に、標的を具体的に認識する抗体を用いて、実施されている。一般に、例えば、膜若しくはプラスチック表面への吸着若しくは共有結合によって支持体に、又は標的に特異的な抗体(固定化抗体)を結合させた支持体表面に、タンパク質混合物をまず固定化した後、標的特異的抗体(もし1つが用いられていれば、固定化用抗体とは異なる「一次抗体」)に暴露する。適切な反応時間の後、過剰な一次抗体を、洗浄を繰り返すことによって除去し、結合抗体の量を複数の方法のうちの1つによって決定する。例えば、蛍光タグに共有結合し得る一次抗体は、蛍光の強度を測定することによって検出することができるか、あるいは、一次抗体に対する「二次」抗体(蛍光染料又は酵素などのマーカーでタグ付けされている)を定量に用いてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一次抗体の定量のための多くの異なる手法が利用可能であるが、全てに共通しているのは、特異的に結合した抗体のシグナルから識別できないシグナルが増加することになるため、標的に結合していないあらゆる一次又は二次抗体は完全に除去しなければならないという要件である。ハイスループットスクリーニングでは、洗浄ステップが実施できないため、前述の手法は適用不可能である。
【0004】
特許請求の範囲又は意味を解釈若しくは限定するために用いられるわけではないという理解の下に、この概要は本発明の性質及び内容を簡単に示すために本発明の概要を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、特定の巨大分子である「標的」の発現を調節する化合物の均質溶液中での特にハイスループット様式でのスクリーニング方法に関する。このような巨大分子としては、限定するものではないが、特定のタンパク質若しくは核酸がある。好ましい実施形態では、少なくとも2つの標的特異的な、FRET用リガンド(FRET-enabling ligand)を、巨大分子上の少なくとも2つの特定の異なる部位に向けるが、一方のリガンドは、少なくとも1つのドナー蛍光団であり、他方は少なくとも1つのアクセプター蛍光団である。FRET用リガンドの例として、限定するものではないが、抗体、抗体疑似物、ペプトイド、ペプチド又は核酸アプタマーが挙げられる。これらの実施形態は、生物サンプル中の特定の巨大分子の量を改変することができる化合物のハイスループットスクリーニングを可能にする。
【0006】
その他の態様は後述する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)(B)は、96ウェルフォーマットでのPrP検出アッセイを用いた、生存LD9細胞の表面でのPrP検出を示すグラフである。PrPの発現が欠失したPrPノックアウト細胞(KO)を負の対照として用いる。PrPレベルは、[ΔF%]として表すが、これは、PrPの検出に対応するHTRFシグナルのレシオ測定から得られる値である。図1(A)は、細胞数に応じたPrP検出及びブレフェルジンA(BFA)による治療の効果。Z’は、アッセイの質を測定する統計的パラメータである(Z’>0.5を優れたアッセイとみなす)。20K又は40K LD9細胞を用いたとき、アッセイのZ’は、0.7であり、80K LD9細胞では、0.8であった。図1(B)は、24時間にわたりBFAの用量を増加してLD9細胞の治療後のPrP検出であり、4及び8μg/mlは、PrPシグナルをバックグラウンドまで低減する。3回の反復を示す。図1(C)は、試験したどの用量のBFAもLDC9細胞に対して毒性ではなかったことを示している。細胞生存能は、-GLO(登録商標)発光アッセイ(プロメガ(Promega))を用いて測定した。
図2】384ウェルフォーマットで、既述のPrP検出アッセイを用いた、生存LD9細胞の表面でのPrP検出を示すグラフである。DMSOは、ほとんどの小分子スクリーニングライブラリーに用いられている溶剤であり、スクリーニングプレートにおいて対照として用いる。従って、最も高いPrPシグナルの対照としてLD9+DMSOを、また、最も低いPrPシグナルの対照としてLD9+BFAを用いて、Z’を計算する。アッセイのZ’は、10、5x10、10及び2x10個のLD9細胞について、それぞれ、0.4、0.6、0.8及び-2.7であった。各ポイントは3回反復した。
図3】一次スクリーニングアッセイを用いた米国医薬品コレクションの予備スクリーニングからの結果を示すグラフである。候補ヒットからのデータのみを示す(閾値として細胞表面PrP発現の50%低減を用いて、選択した)。上方のパネルは、横座標に表示する化合物による24時間の処理後のLD9細胞の表面でのPrP発現を示す。PrPレベルは、DMSO対照のパーセンテージとして表す。各スクリーニングプレートを個別のパネルとして示す。DMSO対照は、各プレートについてパープルで示す。BFA対照は、細胞表面PrPをバックグラウンド(0%PrP発現)まで低減した。4つのプレートすべてについて、Z’は、0.7であった。下方のパネルは、スクリーニング用量で、24時間にわたり化合物で処理したLD9細胞の生存能を示す。細胞生存能は、セルタイター-グロ(CELLTITER-GLO)キットを用いて、本発明のカウンタースクリーニングアッセイにより測定した。9つの化合物が、10%未満の毒性を呈示し、これらをヒットとして選択した。
図4】(A)~(D)は、N2a細胞での二次スクリーニングによって確認した、ヒットの1つ、タクロリムス(Tacrolimus)による細胞表面PrPの低減を示す。PrPは、生存細胞の表面に、+4℃にて、モノクローナル抗体D18で標識して、4%PFAで固定した後、アレキサ(Alexa)-488標識二次抗体を添加した。図4(A)、(B)は、DMSO(左の写真)及びタクロリムス(Tacrolimus)(右の写真)で処理したN2a細胞の顕微鏡分析を示す。定量は、フローサイトメトリー(図4(C))及びデベロッパー(Developer)ソフトウエアを用いたIN Cell analyzer 1000(図4(D))により実施した。図4(C)の色分けは、赤が負の対照のPrPシグナル(二次抗体のみ)、青が正の対照(DMSO処理細胞)のPrPシグナル、緑及びオレンジがパネルに表示する3つの異なる用量のタクロリムス(Tacrolimus)で処理した細胞のPrPシグナルの二重反復分析。
図5】(A)(B)は、N2a細胞での二次スクリーニングによって確認した、2つの他のヒット、ラサロシド(Lasalocid)ナトリウム及びアステミゾール(Astemizole)による細胞表面PrPの低減を示すグラフである。PrP標識及びIN Cell Analyzer定量は、図4(A)~(D)に記載のように実施した。
図6】細胞表面PrP発現を低減するヒットに優先順位を付けるために用いた二次アッセイを示す。グラフは、細胞数に応じた感染細胞の数(スクレイピー細胞アッセイ-SCAによるスポットとして検出される)を示す。青の線は非処理細胞、赤の線は1μg/mlのPIPLCで処理した細胞(各パネルに表示する時間にわたって)。「RI200」値は、200個のスポットを得るのに必要な細胞数の逆数として定義される。26時間での対照PK1[RML]のRI200は、3.3x10-3であり、PIPLC処理PK1[RML]では、5x10-4であった。従って、PIPLCは、感染の85%の阻害を引き起こした(1-[5x10-4/3.3x10-3]x100)。
図7】(A)(B)は、図4(A)~(D)及び図5(A)、(B)に示すように、細胞表面PrP量を低減する、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングした2つの化合物である、タクロリムス(Tac)及びアステミゾール(Ast)が、RML及び22LプリオンによるPK1神経芽細胞腫細胞の感染を阻止することを示す。PK1細胞は、表示した用量の薬剤で3日間前処理した後、RML又は22L感染マウスからの脳ホモジネートの10-4希釈物を用いて、RML(図7(A))又は22L(図7(B))プリオンに感染させた。感染後、処理を12日間継続した。感染から9及び18日後(即ち、処理停止の3日前及び停止から6日後)、プロテイナーゼK-耐性PrPSc(プリオン感染の特徴)について、ウェスタンブロットにより、細胞を分析した。プリオン感染を予防する薬剤である、PPS(ポリ硫酸ペントサン)を治療効果の正の対照として、10μm/mlの用量で用いた。CTRLは非処理細胞。アステミゾール及びタクロリムスはいずれも、プリオン感染を阻害し、処理停止後、感染性の反動はなかった。
図8】(A)~(E)は、PrPを発現するものに限定したヒト神経芽細胞腫細胞についてのAβオリゴマーの毒性を示す。図8(A)、(C)は、非処理細胞。図8(B)、(D)は、Aβ42オリゴマーに4日間(100μg/ml)暴露した細胞。図8(B)において、細胞の空胞形成及び喪失が観察された。図8(E)は、SK-NSH細胞においてのみPrP発現を示す、3回反復したウェスタンブロットによる分析である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態は、ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイに用いるための標的分子を含有するサンプルの効率的スクリーニング、同定、及び定量のための方法に関する。特に、本明細書に記載のアッセイは、洗浄ステップ又は標的分子の固体支持体への結合のいずれも必要としない。従って、標的は、それらの天然のin vivo立体配座を保持する条件下でアッセイすることができる。細胞巨大分子のレベルに作用する新規化合物又は既知化合物の新規な使用方法をみいだすことができる。
【0009】
添付の図面を参照しながら、本発明について説明するが、図面全体を通して、類似若しくは同等の要素を示すのに同様の参照番号を用いる。図面は、一定の比率で描かれたものではなく、これらは、あくまで本発明の説明のために提供される。説明のための適用例を参照にしながら、以下に本発明のいくつかの態様を記載する。多数の具体的詳細事項、関係、及び方法は、本発明の十分な理解をもたらすために記載していることを理解すべきである。しかし、当業者であれば、本発明が、具体的詳細事項の1つ以上がなくても、又は別の方法を用いて、実施可能であることを容易に認識されよう。本発明は、例示した行為又はイベントの順序に限定されるわけではなく、行為によっては、異なる順序でもよく、他の行為又はイベントと同時に行ってもよい。更に、本発明に従う方法を実施するために、例示した全ての行為又はイベントが必要なわけではない。
【0010】
本発明の実施形態は、提示する理論的側面なしに実施してもよい。更に、理論的側面は、出願人が、提示する理論に拘束されようとするものではないことを理解の下で、提示される。
【0011】
別途定義されていない限り、本明細書で用いる用語は全て(技術及び科学用語を含む)、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。更に、一般に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連分野に関する意味と一致する意味を有するものとして解釈すべきであり、本明細書にそのように明瞭に定義されていない限り、理想化された意味又は過剰に形式的な意味で解釈されないことを理解されたい。
【0012】
定義
本明細書に用いる用語は、あくまで特定の実施形態を説明することを目的とするものであり、本発明を限定しようとする意図はない。本明細書で用いる場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(a)」及び「その(the)」は、別途明示されていない限り、複数形も含むと見做される。更に、用語「含んでいる」、「含む」、「有している」、「有する」、「と一緒に」、又はこれらの変化形が、詳細な説明及び特許請求の範囲のいずれかで用いられている範囲まで、このような用語は、用語「備える」と同様の様式で、包括的であることを意味するものとする。
【0013】
本明細書において、ある項目、組成物、装置、方法、ステップ、システムなどの定義若しくは記載された要素に関して用いられる、用語「備える」及びこれらの変化形は、包括的又は制限がないことを意味し、別の要素を許容し、従って、定義若しくは記載された項目、組成物、装置、方法、ステップ、システムなどが、指定された要素(あるいは、必要に応じて、その同等物)を含むこと、更に、他の要素が含まれる場合もあり、これらもまた、定義された項目、組成物、装置、方法、ステップ、システムなどの範囲または定義に含まれることを示している。
【0014】
用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値の許容される誤差の範囲以内を意味し、これは、部分的に、この値がどのようにして測定若しくは決定されたか、即ち測定系の限界に左右される。例えば、「約」は、当分野での実施毎に、1若しくは1を超える標準偏差以内を意味しうる。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、更に好ましくは1%までの範囲を意味しうる。あるいは、特に生物学的システム又は方法に関して、この用語は、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味する。具体的値が本出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、別途記載のない限り、その具体的値について許容される誤差の範囲内を意味する用語「約」を想定すべきである。
【0015】
用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、タンパク質及び抗体又は別のタンパク質スカフォールド又はペプチド若しくはアプタマーの相互作用に関して用いられる場合、相互作用が、タンパク質上の特定の構造(即ち、抗原決定基若しくはエピトープ)の存在に左右されること、言い換えれば、抗体は、一般のタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識して、これと結合することを意味する。従って、特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド上のエピトープに「特異的に結合する」又は「特異的である」抗体は、他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープのどれにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体である。
【0016】
用語「リガンド」は、免疫認識の場合、エピトープを含む別の化合物又は分子と特異的に、若しくは実質的に特異的に(即ち、限定的な交差反応性で)結合することができるあらゆる化合物、組成物又は分子を含む。多くの場合、リガンドは、ポリクローナル又はモノクローナル抗体のような抗体である。「リガンド」はまた、抗体の誘導体又は類似体も含み、このようなものとして、限定するものではないが、以下が挙げられる。Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、ヒト化抗体及び抗体フラグメント、ラクダ化抗体及び抗体フラグメント、並びにこれらの多価形態。また、必要に応じて、多価結合試薬を用いてもよく、このようなものとして、限定するものではないが、単一特異性又は二重特異性抗体、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((scFv)フラグメント)、ダイアボディ、トリボディ又はテトラボディなどが挙げられ、これらは、典型的に、共有結合しているか、又はその他の方法で安定化した(即ち、ロイシンジッパー若しくはらせん安定化)scFvフラグメントである。「リガンド」はまた、ペプトイド、ペプチド若しくは核酸アプタマー、又はDARPinのような抗体模倣剤、アフィボディ分子、アフィリン、アフィティン、アンチカリン、アビマー、フィノマー、クニッツ(Kunitz)ドメインペプチド及びモノボディも含む。
【0017】
「標識」又は「検出可能な標識」は、分光法、光化学、生化学、免疫化学、又は化学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識として、放射線標識分子蛍光団、発光化合物、高電子密度試薬、酵素(例えば、一般に、ELISAで用いられているような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、若しくはハプテン、並びに、例えば、ペプチドに標識を組み込むことによって検出可能にすることができるか、又はペプチドと特異的に反応性である抗体を検出するのに用いられるタンパク質が挙げられる。
【0018】
用語「蛍光団」は、照射に応答して発光することができるあらゆる化合物、組成物若しくは分子を含む。多くの場合、蛍光団は、可視光線領域内の光線を放射することができる。別のケースでは、蛍光団は、非可視光線領域内の光線、例えば、紫外線、近紫外線、近赤外線、及び赤外線を放射することができる。例えば、限定するものではないが、蛍光団の例として、量子ドット、ナノ粒子、緑色蛍光タンパク質及び黄色蛍光タンパク質のような蛍光タンパク質、ヘムタンパク質若しくはその誘導体、IRDye800CW、Cy3、及びCy5のようなカルボシアニンベースの発色団、(7-ジエチルアミノ-3-(4’-マレイミジルフェニル)-4-メチルクマリン)(CPM)のようなクマリンベースの発色団、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)のようなフッ素ベースの発色団、並びに多種のアレキサ・フルオロ(ALEXA FLUOR)(商標)発色団及びアレキサ・フルオロ(ALEXA FLUOR)(商標)バイオコンジュゲートが挙げられ、これらは、可視及び近赤外スペクトル内で吸収する。蛍光団からの発光は、限定するものではないが、蛍光分光法、蛍光顕微鏡法、蛍光光度計、蛍光プレートリーダー、赤外線スキャナー分析、共焦点レーザ走査型顕微鏡、自動共焦点ナノ走査、レーザ分光光度計、蛍光活性化セルソータ(FACS)、画像分析装置及び蛍光スキャナー(例えば、ゲル/膜スキャナー)などを含む、あらゆる数の方法によって検出することができる。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「発色団」は、別の発色団と共に、エネルギー移動のために用いることができる置換基を指す(例えば、FRETアッセイ)。
用語「化学発光化合物」は、化学反応に応答して発光することができるあらゆる化合物、組成物又は分子を含む。「生物発光化合物」は、化学発光化合物の天然に存在する形態を指す。化学発光化合物の例として、ルシゲニン、ルミノールなどがある。生物発光化合物の例としては、ルシフェリン、コエレンテラジンなどがある。化学発光化合物からの発光は、ルミノメータ又は走査型分光計によって検出することができる。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「発光成分」又は「発光化合物」は、電気(例えば、電子-ルミネセンス)、化学(化学-ルミネセンス)又は音響エネルギーなどのエネルギーを吸収した後、時間経過と共に、そのエネルギーの少なくとも一部を光として発することができる成分を指す。本明細書で用いる場合、用語「成分」は、個別の化合物、分子、生物発光タンパク質、及び、発光を起こすように作用する、発光化合物-巨大分子複合体や発光化合物-非発光化合物又は分子混合物を含む。
【0021】
本明細書で用いる場合、「生物サンプル」は、固体サンプル及び体液サンプルを含む。本発明で用いられる生物サンプルは、細胞、タンパク質若しくは細胞の膜抽出物、血液、又は腹水若しくは脳漿(例えば脳脊髄液)のような生体体液を含みうる。固体生物サンプルの例として、限定するものではないが、中枢神経系、骨、乳房、腎臓、頸管、内膜、頭部または頸、胆嚢、耳下腺、前立腺、脳下垂体、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺、心臓、肺、膀胱、脂肪、リンパ節、子宮、卵巣、副腎、精巣、扁桃、胸腺及び皮膚の組織から得たサンプル、又は腫瘍から得たサンプルなどが挙げられる。「体液」の例としては、限定するものではないが、血液、血清、精液、前立腺液、精液、尿、糞便、唾液、痰、粘膜、骨髄、リンパ液、及び涙が挙げられる。
【0022】
用語「ハイスループットスクリーニング」又は「HTS」は、例えば、光学、化学、生物学又は画像分析などの様々な技術及び技法を用いて、迅速で、高度に同時進行の生物学的研究及び薬剤発見を可能にする方法を指す。HTS方法は、当分野では公知であり、一般に、自動液体処理及び検出装置を備えるマルチウェルプレートにおいて実施されるが、本発明の方法をマイクロアレイ上で、又はマイクロ流体系で実施することも考慮される。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「ライブラリー」又は「薬剤ライブラリー」は、複数の化学分子(試験化合物)、複数の核酸、複数のペプチド、又は複数のタンパク質、有機若しくは無機化合物、合成分子、天然分子、又はこれらの組合せを指す。
【0024】
本明細書で用いる場合、用語「標的」又は「標的分子」は、検出若しくは特性決定しようとするあらゆるタイプの分子、又は構造を指す。分子は、例えば、核酸配列、ペプチド、構造(例えば細胞内膜、リボソームなど)、表面分子(例えば受容体)、細胞外分子(例えばサイトカイン、酵母、ウイルス粒子、生物、生体サンプルなどのような細胞内の分子であってよい。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「キット」は、物質を送達するためのあらゆる送達システムを指す。反応アッセイに関する場合、このような送達システムとしては、1箇所から別の箇所への、反応試薬(例えば適切な容器中でのオリゴヌクレオチド、酵素など)や支持材料(例えばバッファー、アッセイを実施するための説明書など)の保存、輸送、若しくは送達を可能にするシステムが挙げられる。例えば、キットは、関連反応試薬や支持材料を収容する、1つ以上の閉鎖容器(例えば箱)を含む。本明細書で用いる場合、用語「フラグメント化キット」とは、各々が、全キット構成要素の小部分を収容する2つ以上の個別の容器を含む送達システムを指す。容器は、意図するレシピエントに一緒に、又は個別に送達してよい。例えば、第1容器が、アッセイで用いるための酵素を含み、第2容器が、オリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。用語「フラグメント化キット」は、米連邦食品・医薬品・化粧品法の第520(e)条に従い規制される分析専用試薬(ASR’s)を含むキットを包含するものとするが、これらに限定されない。実際、各々が、全キット構成要素の小部分を収容する2つ以上の個別の容器を含むあらゆる送達システムが、用語「フラグメント化キット」に含まれる。対照的に、「総合キット」は、単一容器(例えば、所望の構成要素の各々を収容する単一の箱)中に反応アッセイの成分の全てを含む送達システムを指す。用語「キット」は、フラグメント化及び総合キットの両方を含む。
【0026】
アッセイの説明
好ましい実施形態では、スクリーニングしようとするタンパク質若しくは所望の分子(「標的」)を含むサンプルを容器に導入する。一実施形態では、例えば、疾患若しくは障害の特徴を示す特定の分子をスクリーニングする、又は疾患若しくは障害を発症する危険性がある被検者を特定する場合、あるいは、疾患関連分子の量を改変する化合物をスクリーニングする場合、標的は既知の分子である。
【0027】
アッセイの例を記載するが、これは例示的なものであり、限定的なものとして解釈すべきではない。例えば、ドナー蛍光団に結合した第1リガンドと、アクセプター蛍光団に結合した第2リガンドを容器に添加する。リガンドの各々は、同じ標的分子上の特異的かつ異なる部位に結合する。リガンドに結合した標的を含むサンプルに、ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射する。ドナー蛍光団から移動したエネルギーによる励起の結果としてアクセプター蛍光団が発する光の強さ(フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET))を測定する。ドナー蛍光団とアクセプター蛍光団との間の距離は、フェルスター半径によって定義される距離と同じか、それより小さいものとして定義される。
【0028】
サンプルは、蛍光光度計、時間分解蛍光光度計、蛍光顕微鏡法、蛍光プレートリーダー、赤外線スキャナー分析、分光光度計、蛍光活性化セルソータ(FACS)、及び蛍光スキャナー(例えばゲル/膜スキャナー)などによる、あらゆる有効な蛍光検出方法によって同定、定量することができる。サンプルは、共焦点レーザ走査型顕微鏡、自動共焦点ナノスキャナー又はマイクロプレート分光光度計によって分析することができるが、本方法は、他の分野での用途のために他の装置(即ち、FACSセルソータ)に合わせて容易に改変することも可能である。FRETは、直接又は間接的に検出することができる。FRETの直接検出は、ドナー(CPM)を励起して、アクセプターが発するシグナルを検出することによって、実施する(FITC又はアレキサ(Alexa)488)。本明細書で用いる場合、用語「シグナル」は、FRETを示すあらゆる検出可能なイベント(直接又は間接的)を意味し、限定するものではないが、光子の放出を含む。FRETは、カーポバ(Karpova)らにより記載されている方法(T.S.カーポバ(T.S.Karpova)ら、顕微鏡ジャーナル(J Microsc)209、56~70、2003年)を用いて、間接的に検出する。
【0029】
本明細書で用いる用語「アッセイ」は、単数形若しくは複数形のいずれであっても、特定のステップを含むただ1つのアッセイに関すると誤解又は制限すべきではなく、限定するものではないが、やはり用いることができる任意の別のステップ、材料、様々な反復、別法も含み得る。従って、用語「アッセイ」が単数形で用いられている場合、これは、例示を目的にするに過ぎない。
【0030】
好ましい実施形態において、本アッセイでは、ステップ間の洗浄を省く。一態様では、洗浄ステップは、容器へのリガンドの添加前や添加後に省かれる。現在利用可能なアッセイの欠点は、標的が支持体にしっかりと結合されていなければならないという要件に、次の2つの大きな問題が生じることである。(a)結合は不完全となりうるか、結合の効率が、標的の個別の立体配座若しくは形態によって異なる可能性があるか、あるいは、標的と支持体の結合によって、一次抗体により認識される部位の接触性が、未知の程度まで、妨害されうる。(b)過剰な抗体(二次抗体及び一次抗体のどちらかまたは両方)を可能な限り完全に除去しなければならないという要件には、洗浄を繰り返し実施する必要があるが、これは、煩雑で時間がかかり、場合によっては、実行不可能である。特に、数万ないし数十万のサンプルを384又は1536ウェルプレートでスクリーニングするハイスループットアッセイでは、洗浄手順を実施することができない。
【0031】
本明細書で具体化するアッセイでは、標的を支持体に結合すること及び洗浄ステップの必要がなくなる。一実施形態では、本アッセイは、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を使用し、この方法では、蛍光団(「ドナー」)を光によって励起することができドナー及びアクセプターの両者が十分に近い、即ち、フェルスター半径によって定義される、約100Å以下の距離内にある場合に限り、上記励起を第2蛍光団(「アクセプター」)に移動することができる。FRETに関するさらなる詳細を以下に記載する。FRETは、説明のための例として用いるが、本明細書に記載するアッセイは、FRETに基づくアッセイに限定されない。例えば、近位蛍光団(BRET)、典型的には、蛍光タンパク質を励起するために、ルシフェラーゼのような生物蛍光タンパク質を用いるアッセイ(シャ(Xu)ら、(1999年)、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、96(1)、151~6)。別のアッセイ方法は、発光酸素チャネリング化学(ウルマン(Ullman)ら、(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.米国、91(12)、5426~30)であり、この方法では、光誘導一重項酸素生成系が、一重項酸素を近位の化学発光系に輸送する。
【0032】
一実施形態では、ドナー及びアクセプター蛍光団(検出可能な標識や検出可能な分子)を2つの個別のリガンド、例えば、1つの同じ標的の別々の部位に特異的に結合することができる抗体に結合する。ドナー及びアクセプター蛍光団を担持するリガンドは、それぞれ、同じ標的分子に結合し、これによって、互いに十分に接近すると、ドナーを励起可能な波長でサンプルの照射により、アクセプターによる輻射線の放射が起こる。同じ標的に結合していないリガンドは、FRETを起こさないため、放射された輻射線の測定前に除去する必要はない。標的は、支持体に吸着又は結合されないことから、リガンドとの相互作用に十分に利用可能である。
【0033】
一実施形態では、サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法は、(i)各々が第1及び第2の検出可能な標識を有する第1及び第2リガンドを添加するステップと、(ii)前記第1及び第2リガンドが特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを含むが、(iii)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングし、前記第1及び第2リガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときの発光を検出することを備える。好ましくは、検出可能な標識は、蛍光団、発光分子、酵素又は放射性核種を含む。いくつかの実施形態では、光は、蛍光、化学発光、又は生物発光を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本アッセイは、ハイスループットスクリーニングアッセイであり、ここで、ハイスループットスクリーニングアッセイは、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、又は蛍光偏光アッセイを含む。
【0035】
一実施形態では、リガンドは、エピトープ認識部位を有する抗体又は抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、抗体模倣剤(DARPin、アフィボディ分子、アフィリン、アフィティン、アンチカリン、アビマー、フィノマー、クニッツ(Kunitz)ドメインペプチド及びモノボディ等)、ペプトイド、アプタマーなどのポリペプチドを含む。一実施形態では、第1及び第2リガンドは、同じタイプの分子である。別の実施形態では、第1及び第2リガンドは、異なるタイプの分子である。いくつかの実施形態では、第1及び第2リガンドは、抗体、抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ヒト化抗体及び抗体フラグメント、ラクダ化抗体及び抗体フラグメント、ヒト抗体及び抗体フラグメント、単一特異性若しくは二重特異性抗体、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((scFv)フラグメント)、ダイアボディ、トリボディ又はテトラボディ、ペプトイド、ペプチド若しくは核酸アプタマー、抗体模倣剤又はこれらの組合せを含む。別の実施形態では、第1及び第2リガンドは、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、抗体模倣剤、一本鎖抗体、核酸、アプタマー、ペトイド、若しくは糖部分又はこれらの組合せを含む。特定の実施形態では、第1及び第2リガンドは、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである。別の実施形態では、第1及び第2リガンドは、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本方法は、サンプル中の特定の分子を同定及び定量するのに用いられる。このような実施形態では、サンプル中の特定の分子、例えば、タンパク質を定量する方法であって、この方法は、ドナー蛍光団の励起に適した波長で前記サンプルが照射されることを可能にしかつハイスループットアッセイによりアクセプター蛍光団の蛍光の測定とを可能にする容器に、特定の標的分子を含有する前記サンプルを導入するステップと、前記標的分子上の特定の部位に結合する第1リガンドであって、前記ドナー蛍光団である第1蛍光団に連結している第1リガンドを添加するステップと、前記第1リガンドが結合するものとは別の同じ標的分子上の特定の部位に結合する第2リガンドであって、前記アクセプター蛍光団である第2蛍光団に連結している第2リガンドを添加するステップと、各ステップ間の洗浄ステップを省略するステップと、両リガンドに結合した標的分子を含有するサンプルを前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された光の強度を測定するステップとを含む。
【0037】
一実施形態では、放射された光の強度は、時間分解蛍光測定によって測定する。いくつかの実施形態では、アクセプター蛍光団がフェルスター半径によって定義される距離以下の距離だけドナー蛍光団から離れた位置にあるとき、励起はアクセプター蛍光団に移動される。
【0038】
いくつかの実施形態では、標的は、液体、半液体、ゲル、生物サンプル、インタクトな細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含有するサンプル中に存在する。
【0039】
別の実施形態では、リガンドは、直接又は好適なリンカーを介して、検出可能な標識(検出可能な分子)に連結させる。本発明は、特定のリンカー基に限定されない。実際、様々なリンカー基が考慮され、好適なリンカーとして、限定するものではないが、アルキル基、エーテル、ポリエーテル、アルキルアミドリンカー、ペプチドリンカー、ポリペプチドリンカー、修飾ペプチド若しくはポリペプチドリンカー、ペプチド核酸(PNA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)リンカー、ストレプトアビジン-ビオチン若しくはアビジン-ビオチンリンカー、ポリアミノ酸(例えばポリリシン)、官能化PEG、多糖、グリコサミノグリカン、樹状ポリマーPEG-キレート剤(chelant)ポリマー、オリゴヌクレオチドリンカー、リン脂質誘導体、アケニル鎖、アルキニル鎖、ジスルフィド、又はこれらの組合せがある。
【0040】
別の好ましい実施形態では、検出可能な標識とリガンドとの連結は、化学的結合により、又は非共有結合により、イオン、ファンデルワールス(van der Waals)、静電、又は水素結合を介して行う。
【0041】
当業者が各種リガンド又はリガンドの組合せを特定するために実施することができる様々な方法がある。一例では、以下の「実施例」の項に記載するように、最良リガンドペア分析を実施した。手短には、一次スクリーニング中に発生するヒットから最良の化合物を選択するために、以下の戦略を用いることができる。(1)最も高い効果をもたらす化合物の選択。(2)最も低い濃度で効果をもたらし、かつ細胞に対して最も少ない毒性を含む化合物の選択。このために、当業者によってルーチンで用いられるアッセイのいずれかによって、EC50及びTC50を決定することができる。(3)ある分子に対する最も高い特異性を呈示する化合物の選択。化合物が優れた治療指数を達成するために、完全な特異性は要求されないが、これは、化合物選択の基準として用いることができる。(4)所望の特性又は治療能力の最も高いものを示す化合物の選択を決定することができる。「治療能力」(又は「治療」)は、治療しようとする状態に左右される。例えば、抗ウイルス剤は、複製の阻害、ウイルスの増殖の遅速化などのいずれかによってウイルス感染を阻害する。いずれの所望の出力パラメータを用いてもよい。「作用」は、当業者が化合物をスクリーニングするパラメータの類型である。これは、例えば、標的分子の活性、機能、発現などを含む。従って、例えば、当業者が、特定の標的分子への阻害作用について化合物をスクリーニングしようとする場合、用いるパラメータは、標的分子が核酸ペプチドなどであれば、発現プロフィールであってよい。別のケースでは、標的分子が、例えば、酵素であれば、パラメータは、活性であってよい。別のケースでは、パラメータは、受容体であってよく、その際、測定する作用は、シグナル伝達、又は表面発現、又は立体配座の変化の調節であってよい。別のケースでは、試験化合物又は候補治療薬は、標的分子とその結合パートナーの間の形成又は特性(例えば立体配座若しくは結合親和性)に対して作用を有しうる。別のケースでは、化合物又は試験薬剤は、標的分子の二次若しくは三次構造に対して作用を有しうる。別のケースでは、試験薬剤は、標的分子の機能を阻害しうる。従って、測定される作用は、ユーザの想像によってしか限定されない。
【0042】
特定の実施形態では、標的分子を調節する化合物の作用を特定する方法が提供され、この方法は、(a)第1位置で第1発色団により標識した標的分子を用意するステップ;(b)発色団を励起するステップ;及び(c)第1発色団の蛍光寿命を測定するステップを含み、ここで、試験化合物の存在下での蛍光寿命と、試験化合物の非存在下での蛍光寿命との差は、発色団の蛍光寿命が改変されるように、試験化合物が標的分子を調節することを示している。一実施形態では、第2位置で第2発色団により、標的分子を更に標識するが、ここで、第2位置は、第1位置とは異なり、発色団をエネルギー移動に用いることができる。
【0043】
特定の実施形態では、標的分子を調節する化合物の作用を特定する方法が提供され、この方法は、(a)第1位置で第1発色団により、また第2位置で第2発色団により、標識した標的分子を用意するが、第2位置は、第1位置とは異なり、第1及び第2発色団をエネルギー移動に用いることができる、ステップ;(b)第1及び第2発色団を励起するステップ;及び(c)発色団同士のFRETを測定するステップを含み、ここで、試験化合物の存在下でのFRETと、試験化合物の非存在下でのFRETとの差は、2つの発色団間でのエネルギー移動が改変されるように、試験化合物が所望の作用を生成することを示している。
【0044】
別の好ましい実施形態では、リガンドは、適切なドナー又はアクセプター蛍光団と共有結合、連結、結合、融合、そうでなければ接触している。
別の好ましい実施形態では、アッセイすることができる標的分子の種類は、その形状、構造、及びそれをアッセイするのに用いる媒質によって限定されない。例えば、標的分子は、溶液中で遊離状態であってもよいし、インタクトな細胞の部分、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、細胞小器官であってもよいし、ビーズに付着させても、ナノ粒子、脂質、カラム、ポリマー、プラスチック、ガラスなどに付着若しくは結合させもよい。いくつかの態様では、サンプルは、自由に浮動し、キュベット又は容器の表面に結合していない。分子の種類の例としては、限定するものではないが、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、糖タンパク質、炭水化物、有機若しくは無機分子、単離された天然分子、合成分子、小分子、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
別の好ましい実施形態では、脂質又は細胞膜に標的分子を結合させてもよい。本明細書に記載する方法及びキットに好適な脂質は、当分野では公知の膜を形成することができるあらゆる脂質、又は様々な割合のそれらの組合せであってよい。特定の実施形態では、脂質は天然に存在する。別の実施形態では、脂質は合成である。特定の実施形態では、脂質は、脂肪アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、ステロール脂質、プレノール脂質及びこれらの誘導体のうちの1つ以上である。特定の実施形態では、脂質は、コリンベースの脂質(例えばホスファチジルコリン(PC))、エタノールアミンベースの脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン(PE))、セリンベースの脂質(例えばホスファチジルセリン)、グリセロールベースの脂質(例えばホスファチジルグリセロール)、コレステロールベースの脂質、ドリコール、スフィンゴ脂質(例えばスフィンゴシン、ガングリオシド、若しくはフィトスフィンゴシン)、イノシトールベースの脂質(例えばホスファチジルイノシノール)、カルジオリピン、ホスファチジン酸、リソホスファチド(例えばリソホスファチド)、水素添加リン脂質、及びこれらの誘導体のうちの1つ以上である。
【0046】
特定の実施形態では、脂質は、PC、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル(DOSC)、PE、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルフィスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、スフィンゴミエリン(SM)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コレステロール(CHOL)、コレステロールヘミスクシネート(CHEMS)、コレステロール-(3-イミダゾール-1-イルプロピル)カルバメート(CHIM)、ジアシルグリセロールヘミスクシネート(DG-Succ)、硫酸コレステロール(Chol-SO)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)、1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド(DORI)、11,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル)-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジオレオイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)-プロピル)-N-(2-(スペルミネカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメト-イルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1-(2-(オレオイルオキシ)エチル)-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、N-(トリメチルアンモニオアセチル)-ジドデシル-D-グルタメートクロリド(TMAG)、N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N,Nジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DHMHAC)、N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド(DHDEAB)、N,N-ミリストイル-N-(1-ヒドロキシプロプ-2-イル)-N-メチルアンモニウムクロリド(DMHMAC)、1,2-ジオレオイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール(DOTB)、シンテティック・アンフィフィルス・インターディシプリナリー(Synthetic Amphiphiles Interdisciplinary)(SAINT脂質)、4,(2,3-ビス-アクリルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(DOIM)、2,3-ビス-パルミトイル-プロピル-ピリジン-4-イル-アミン(DPAPy)、3.β.-(N--(N9,N9-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、3.β.-(N--(N9,N9-トリメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(TC-Chol)、3.β.-(N--(N,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DAC-Chol)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、カチオン性カルジオリピン(例:(1,3-ビス-(1,2-ビス-テトラデシルオキシ-プロピル-3-ジメチルエトキシアンモニウムブロミド)-プロパン-2-オル)(ネオフェクチン(NEOPHECTIN)(商標))、N-ヒスチジニル-コレステロールヘミスクシネート(HistChol)、4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロールヘミスクシネート(MoChol)、ヒスタミニル-コレステロールヘミスクシネート(HisChol)、並びにこれらの誘導体、のうちの1つ以上である。
【0047】
本明細書に記載する方法及びキットに好適な溶剤は、当分野で公知の液体可溶化を促進することができるあらゆる溶剤であってよい。特定の実施形態では、溶剤は、メタノール、エタノール、アセトニトリル及びクロロホルムの1つ以上である。一実施形態では、溶剤は、メタノールである。別の実施形態では、溶剤は、エタノールである。また別の実施形態では、溶剤は、アセトニトリルである。更に別の実施形態では、溶剤は、クロロホルムである。特定の実施形態では、溶剤は、1種以上の両親媒性洗剤を含む水溶液である。このような洗剤の例として、限定するものではないが、オキシグルコシド、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12)、ドデシルホスホコリン及びデオキシコール酸塩が挙げられる。
【0048】
標的分子:以下に、本明細書に記載の方法を用いたHTS薬発見のための、治療標的を代表する細胞巨大分子(本明細書では「標的分子」とも称する)の包括的でないリストを示す。標的は、その量の調節が、特定の疾患に関して、治療効果を有すること、また、それらが宿主にとって必須ではないか、又は宿主を障害することなく、その量を増減できるという基準を満たすものとする。限定するものではないが、以下に例を挙げる:アミロイド前駆体タンパク質(APP)(アルツハイマー病において同定される毒性Aβ凝集体の前駆体);家系性のアルツハイマー病の原因である変異型APP;BACE-1、β-部位APP切断酵素(毒性Aβ凝集体の形成を招く2つの酵素のうちの1つである);タウ(Tau)(アルツハイマー病の病理学及び遺伝型の前頭側頭型認知症に関与する別の重要な毒性タンパク質);α-シヌクレイン(これは、過剰発現したり凝集すると、パーキンソン病、並びに集合的にシヌクレイン病として知られる他の疾患を引き起こす);家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因となる突然変異SOD1;遺伝性神経障害であるハンチントン病の原因となる突然変異ハンチンチン;HIV共受容体CCR5のようなウイルス受容体又は共受容体(これは、HIV感染から自然に防御されるヒトにおいては非機能性であることがわかっている);腫瘍侵襲性及び転移の可能性につながる腫瘍細胞マーカー;インスリン受容体(その下方制御は、II型糖尿病を引き起こす);サイトカイン若しくはケモカイン受容体;ユビキチン経路の酵素;酵素マーカーなど。
【0049】
いくつかの実施形態では、所望の標的分子は核酸であり、まず、候補標的配列を用いて、例えば、コードされた産物の発現又は機能を調節する配列であるSNPなどを列挙する複数のデータベースを検索する。対象データベースとしては、NCBIのdbSNP、英国のHGBASE SNPデータベース、SNPコンソトリウムデータベース、及び日本のミレニウムプロジェクトのSNPデータベースがある。
【0050】
いくつかの実施形態では、dbSNP検索に続いて、遺伝子座データベース(例えば、ローカスリンク(Locus Link))を検索する。ローカスリンク(LocusLink)は、遺伝子座についての精選された配列及び記述的情報に対して単一のクエリーインターフェースを提供する。これは、正式名称、エイリアス、配列アクセッション、表現型、EC番号、MIM番号、UniGeneクラスター、相同性、マップ位置、タンパク質ドメイン、及び関連ウェブサイトに関する情報を提供する。ローカスリンクからの情報出力は、ローカスリンクアクセッション番号(LocusID)、NCBIゲノムコンティグ番号(NT#)、リフェレンスmRNA番号(NM#)、リフェレンスmRNAのスプライス部位変異体(XM#)、リフェレンスタンパク質番号(NF#)、OMIMアクセッション番号、及びユニジーン(Unigene)アクセッション番号(HS#)を含む。
【0051】
別の実施形態では、候補の標的分子を特定するために、疾患関連データベースを検索することができる。ローカスリンク検索に続いて、得られた情報を用いて、疾患関連データベースを検索する。いくつかの実施形態では、特定の疾患又は遺伝子についてのSNP/突然変異データベースへのリンクのコレクションを含む、ヒューゴ突然変異データベースイニシアティブ(HUGO Mutation Database Initiative)を検索する。
【0052】
いくつかの実施形態では、OMIMデータベースを検索する。OMIM(オンライン・メンデリアン・インヘリタンス・イン・マン(Online Mendelian Inheritance in Man))は、国立生物工学情報センター(NCBI)によってワールドワイドウェブのために作成されたヒト遺伝子及び遺伝性障害のカタログである。このデータベースはテキスト情報と参照文献を含む。OMIMからの出力は、複数のSNPが遺伝性障害と関連している、変更されたアクセッション番号を含む。この番号には、遺伝性障害と関連する複数のSNPの存在を示すために、注釈が付けられている。
【0053】
いくつかの実施形態では、dbSNP検索に続いて、ソフトウエア(例えば限定するものではないが、ユニジーンなど)を用いて、検索結果を遺伝子指向性クラスター(例えば遺伝子指向性クラスター分析)に区分する。ユニジーンは、ジェンバンク(GenBank)配列を遺伝子指向性クラスターの非重複セットに自動的に区分けするシステムである。各ユニジーンクラスターは、ユニーク遺伝子を表す配列、並びにその遺伝子が発現されている組織のタイプ及びマップ位置などの関連情報を含む。十分に特性決定された遺伝子の配列に加え、数十万の新しい発現配列タグ(EST)配列がユニジーンに含まれる。現在、ヒト、ラット、マウス、ゼブラフィッシュ及びウシ由来の配列が処理されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、標的配列を用いて、ゲノムデータベース(例えば、限定するものではないが、カリフォルニア大学サンタクルス校(UCSC)のゴールデン・パス・データベース(GoldenPath)及びジェンバンク)を検索する。ゴールデン・パスデータベースは、FASTAフォーマットの配列を用いるか、又はdbSNPから得たRS#を用いて、BLASTから検索する。ジェンバンクは、FASTAフォーマットのマスク配列を用いて、BLASTから検索する。いくつかの実施形態では、ゴールデン・パス及びジェンバンク検索は、TCS及びdbSNP検索と同時に実施する。いくつかの実施形態では、検索によって、対応する遺伝子が特定される。ジェンバンクからの出力は、ジェンバンクアクセッション番号を含む。両データベースからの出力は、コンティグアクセッション番号を含む。このように、当業者が、ユーザの所望する標的分子以外に、候補標的を特定することができる多数の方法がある。
【0055】
他の標的分子は、例えば、ステロイドホルモン療法において、選択することができる。このような場合、例えば、硫酸化は、哺乳動物腫瘍におけるエステロゲンレベルの調節、及び前立腺腫瘍におけるアンドロゲンレベルへの関与を含む。ステロイド硫酸化のための頑健HTSアッセイが利用可能であれば、ステロイドシグナル伝達に的を絞った医薬品(pharma)群に利用可能な分子ツールの蓄積に大きな追加が提供されうる。
【0056】
神経ステロイドの調節は、神経興奮性均衡を制御する新規の薬学的アプローチとして研究されている(マライェブ,A.(Malayev,A.)ら、Br J Pharmacol,2002,135:901~9;モーリス,T.(Maurice,T.)ら、Brain Res Brain Res Rev、2001年、37:116~32;パーク-チャン,M.(Park-Chung,M.)ら、Brain Res、1999年、830:72~87)。本発明に包含される方法は、硫酸抱合のための内在性及び合成神経ステロイドの容易なスクリーニングを可能にし、基礎生物学への理解を深めると共に、リード分子の検出及び最適化のためのツールを提供することによって、こうした取り組みを好適に加速しうる。加齢による老人斑及び記憶喪失を軽減することを意図する「抗老化」補助食品としてDHEAのためのかなり大きな店頭市場がすでに存在することから、更に優れた分子ツールの必要性が顕著になっている(サレク,F.S.(Salek,F.S.)ら、J Clin Pharmacol,2002,42)。
【0057】
別の例では、本発明で具体化される方法は、心臓血管病及び恐らくいくつかの形態の皮膚癌の治療に関するコレステロール流出、血小板凝集及び皮膚形成の調節における硫酸コレステロールに対する薬剤標的を好適に特定することができる。この場合、スルホトランスフェラーゼは薬剤標的となりうるが、このイソ型を選択的に阻害する分子を特定する必要があろう。
【0058】
別の実施形態では、標的分子は、1つの関連薬物代謝であってよい。毒性代謝物の生成及び不都合な薬物動態などの薬物代謝の問題は、臨床試験での全ての薬剤候補失敗のうち、ほぼ半分の原因である。主要な製薬会社の全てが、薬剤発見過程において早期に薬物動態及び薬理ゲノム学的結果を考慮する必要性を認識していたが、その結果、薬物代謝を評価するためのハイスループットin vitro方法の切迫した需要が生まれた。P450誘導酸化を除けば、グルクロン酸抱合が、恐らく、肝臓薬物代謝の最も重要な経路であろう。非常に多種の薬物が、グルクロン酸抱合によって排除又は活性化されるが、そのようなものとして、非ステロイド抗炎症剤、オピオイド、抗ヒスタミン剤、抗精神病薬及び抗鬱薬などが挙げられる(ミーチ,R.(Meech,R.)及びマッケンジー,P.I.(Mackenzie,P.I.)、Clin Exp Pharmacol Physiol,1997,24:907~15;ラドミンスカ-パンディヤ,A.(Radominska-Pandya,A.)ら、Drug Metab Rev、1999年、31:817~99)。その重要性にもかかわらず、グルクロン酸抱合を触媒する肝臓UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)の広範で、重複する基質特異性は、フレキシブルなin vitroアッセイ方法がないために、依然としてよくわかっていない。
【0059】
別の実施形態では、標的分子は、タンパク質キナーゼ又はその基質であってよい。ヒトゲノムにコードされた400個超の異なるキナーゼがあり、疾患におけるそれらの役割を解明し、選択的阻害物質を特定することが、主要な医薬品の新規構想である。キナーゼの機能不全は、癌、心臓血管病、炎症、神経変性疾患、及び代謝障害などの最も重要な治療分野の全てと関連付けられている。更に、薬剤標的としてのキナーゼの臨床評価は、乳癌及び白血病に寄与する異常チロシンキナーゼをそれぞれ阻害するハーセプチン(Herceptin)及びグリベック(Gleevec)のケースで近年証明されている。本方法の実施形態は、あらゆるキナーゼ及びあらゆるアクセプター基質と一緒に用いることができる普遍的触媒アッセイを提供することによって、キナーゼ基質特異性を明確にすると共に、新規の阻害剤を発見する取り組みを加速させるであろう。
【0060】
タンパク質キナーゼは、シグナル伝達において重要な役割を持つ大きな、多様性ファミリーである。ATP又はGTPから、アクセプタータンパク質のセリン、トレオニン若しくはチロシン残基への末端リン酸基の移動を触媒するタンパク質キナーゼは、ヒトゲノムにおける最大のタンパク質ファミリーの1つである。最も広義には、これらは、セリン/トレオニン又はチロシンキナーゼ及び可溶性酵素又は貫膜受容体に区分することができる。最新の包括的ゲノム分析において、428個のヒトキナーゼが同定されたが、これらは、基質特異性、構造/局在化や調節方式の相違も表す8つの異なる相同性群を含む(ハンクス,S.K.(Hanks,S.K.)Genome Biol、2003年、4:111)。例えば、EGFR及びPDGFRのような貫膜成長因子受容体と、Srcキナーゼのような可溶性酵素の両方を含むチロシンキナーゼ群の84のメンバー、環状ヌクレオチド依存性群の61のメンバー、脂質依存性キナーゼ(PKCイソ型)などのser/thrキナーゼ、及びマイトジェンMAPキナーゼシグナル伝達経路の成分を含む「STE」群の45のメンバーが、現在同定されている。
【0061】
キナーゼは、細胞内シグナル伝達経路の遍在性調節物質であり、それ自体で、多様な疾患及び障害のためのより選択的な療法を求める製薬会社による注目を集めており、医薬品優先順位に関しては、Gタンパク質結合受容体に次いで第2位である(コーヘン,P.(Cohen,P.)、(Nat Rev Drug Discov)、2002年、1:309~15)。リン酸化の細胞内標的には、他のキナーゼ、転写因子、アクチン及びチューブリンなどの構造タンパク質、DNA複製及び転写、及びタンパク質翻訳に関与する酵素、並びに代謝酵素が含まれる(コーヘン,P.(Cohen,P.)、Trends
Biochem Sci、2000年、25:596~601)。リン酸化は、タンパク質触媒活性、特異性、安定性、局在化及び他の生体分子との結合に変化を引き起こすことができる。様々な機能的帰結をもたらす、タンパク質の複数部位での同時リン酸化は、一般的であり、シグナル伝達経路の統合には好都合である。
【0062】
各キナーゼは、1つ以上の標的タンパク質を、場合によっては複数部位でリン酸化すると共に、触媒活性又は他の生体分子との相互作用を制御する1つ以上の調節ドメインを自己リン酸化しうる。正常及び疾患状態についての細胞リン酸化プロフィールの機能的帰結を明確化することは、主要なプロテオミクスの構想である。しかし、薬剤発見のためにターゲティングすべきキナーゼを決定するのに、この知識を使用するためには、アクセプター基質に対する特異性も明らかにしなければならない。キナーゼは、その標的タンパク質の特定の線状配列を認識するが、これはβベンドで起こることが多い。一般に、両側の3~5つの残基についてリン酸化残基とフランキングするアミノ酸は、リン酸化部位を画定する。既知のキナーゼリン酸化部位を収集するホスホベース(PhosphoBase)データベースは、133のヒトキナーゼのエントリーを含むが、これは、総キナーゼの1/3に満たない。更に、これら特異性プロフィールの全部ではないにしても、ほとんどが、各キナーゼの基質として同定された1又は2つのペプチドを示すに過ぎにないため、不完全である。関連キナーゼ同士の基質特異性には有意な重複があるものの、多数のキナーゼによってリン酸化される共通配列はない。
【0063】
癌に介入するためにキナーゼをターゲティングする生物学上の理論的根拠は、ここに概観を述べようとするにはあまりに範囲が広すぎる。しかし、主要なテーマの1つは、細胞分裂(細胞周期進行)、細胞増殖(質量)、及びプログラム化された細胞死(アポトーシス)の速度の間の崩れやすい均衡(全ての癌で攪乱される)の制御における、多数のキナーゼの関与である。増殖因子受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、増殖促進及び抗細胞死遺伝子の活性化を招く細胞内経路に、細胞外部からペプチド増殖因子シグナルを伝達する膜貫通タンパク質である。ヒトにおける58のRTKの大部分は、優性癌遺伝子であり、このことは、異常活性化又は過剰発現が、悪性細胞表現型を引き起こすことを意味する。当然のことながら、チロシンキナーゼは、抗癌薬標的として積極的に追求されており、小分子及びモノクローナル抗体阻害物質(それぞれ、グリベック(GLEEVEC)及びハーセプチン(HERCEPTIN))が臨床的に承認されている。増殖因子受容体からの下流のシグナル伝達は、ser/thr及びチロシンキナーゼの両方を含む複数の経路を介して起こる。優性キナーゼの1つは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路であり、これは、Raf及びMEKキナーゼを含み、これらキナーゼの全ての阻害物質が、現在、臨床試験で試験中である(ダンセイ,J.(Dancey,J.)及びソースビル,E.A.(Sausville,E.A.)、Nat Rev Drug
Dicov、2003年、2:296~313)。可溶性チロシンキナーゼ、特に、Srcファミリーを含む11の癌遺伝子もまた、RTKにより開始されるマイトジェンシグナルを伝達し、医薬品によってターゲティングされている(ワーマス,M,(Warmuth,M,)ら、現在の医薬品デザイン(Curr Pharm Des)、2003年、9:2043~59)。G1期への進入を開始するRTKを介したマイトジェンシグナルに続いて、細胞周期による進行が、サイクリンタンパク質に関連する相特異的キナーゼの逐次的活性化によって調節される。サイクリン依存性キナーゼは、医薬品が、悪性細胞増殖を阻害することを期待して追求している、キナーゼの別の重要な群も代表する(エルサエド,Y.A.(Elsayed,Y.A.)及びソースビル,E.A.(Sausville,E.A.)、Oncologist、2001年、6:517~37)。
【0064】
従って、本明細書で具体化するアッセイを用いて、タンパク質キナーゼの阻害物質又は活性化物質の薬剤ライブラリーをスクリーニングすることができる。また、これは、キナーゼのアクセプター基質としてのペプチド又はタンパク質をスクリーニングする上でも有用である。上記の用途において、これは、他の方法に対して、アッセイの普遍的性質、単純化された均一系によるアッセイ、放射能がないこと、及び酵素ターンオーバーを定量することができることなどの有意な利点を有する。
【0065】
標的分子によっては、本明細書で具体化される方法によって特定された試験化合物は、標的分子が特定の役割を果たす疾患若しくは障害の治療に有用であるか、又は疾患若しくは障害に直接寄与するものとなりうる。
【0066】
フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET):FRETは、励起したドナー分子からアクセプター分子にエネルギーを移動させる、無放射の方法である。無放射エネルギー移動は、実際の光子放出なしに、1つの蛍光団の励起状態のエネルギーを第2の蛍光団に移動させる、量子力学的方法である。量子物理学的原理については、ジョビン及びジョビン(Jovin and Jovin)、1989年、蛍光顕微分光法による細胞構造及び機能、E.コーヘン(E.Kohen)及びJ.G.ハーシュバーグ(J.G.Hirschberg)編、アカデミック・プレス(Academic Press)に記載されている。手短には、蛍光団は、特有の波長で光エネルギーを吸収する。この波長は、励起波長としても知られる。FRETでは、蛍光団によって吸収されたエネルギーを、無放射の方法によって第2蛍光団に移動させる。第1蛍光団は一般にドナー(D)と呼ばれ、アクセプター(A)と呼ばれる第2蛍光団より高いエネルギーの励起状態を有する。
【0067】
本方法の重要な特徴は、ドナー蛍光団の発光スペクトルが、アクセプターの励起スペクトルと重なり合うことと、ドナー及びアクセプターが、十分に接近していることである。D及びA間の距離は、蛍光団間のエネルギーの無放射移動が可能である程度に十分小さくなければならない。エネルギー移動の速度は、ドナー及びアクセプター間の距離の6乗に反比例するため、エネルギー移動の効率は、距離の変化に対して感受性が極めて高い。エネルギー移動は、1~10nmの距離範囲において検出可能な効率で起こると言われているが、最適な結果のためには典型的に4~6nmである。無放射エネルギー移動が有効である距離範囲は、他の多くの要因にも左右され、そのようなものとして、ドナーの蛍光量子効率、アクセプターの励起係数、それらの各スペクトルの重なりの度合い、媒質の屈折率、及び2つの蛍光団の遷移モーメントの相対配向などがある。
【0068】
蛍光団ドナー及び対応するアクセプター部分は、一般に、以下について選択する:(a)高効率フォースターエネルギー移動、(b)大きな最終ストークシフト(Stokes
shift)(>100nm)、(c)可視スペクトルの赤色部分への可能な限り長い放射のシフト(>600nm)、及び(d)ドナー励起波長での励起によって生成されるラマン(Raman)水蛍光放射より高い波長への放射のシフト。例えば、ドナー蛍光部分は、レーザ線に近いその励起最大値(例えば、ヘリウム-カドミウム442nm又はアルゴン488nm)、高い消衰係数、高い量子収量、並びにその蛍光放射と、対応するアクセプター蛍光部分の励起スペクトルとの良好な重なりを有するものを選択してよい。対応するアクセプター蛍光部分は、高い消衰係数、高い量子収量、その励起とドナー蛍光部分の放射との良好な重なり、並びに可視スペクトルの赤色部分への放射(>600nm)を有するものを選択してよい。
【0069】
当業者であれば、多くの蛍光団分子が、FRETに適していることを認識されよう。蛍光団は、ある分子に結合した蛍光成分、又は官能基である。蛍光団は、蛍光分子、グロー(glowing)ビーズ、グローリポソーム、量子ドット(QD)、蛍光若しくはりん光ナノ粒子(NP)、蛍光ラテックス粒子又はマイクロビーズであってよい。蛍光分子は、フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン及びその他のフルオレセイン誘導体、ローダミン、及びそれらの誘導体、又はリガンドと共有結合を形成することができるその他のあらゆるグロー体であり得る。
【0070】
一実施形態では、蛍光タンパク質を蛍光団として用いる。非常に多様な蛍光団が入手可能であり、これらを本明細書に記載の方法に用いることができ、例えば、限定するものではないが、アレキサ・フルオロ(ALEXA Fluors)(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)/インビトロジェン(Invitrogen))及びディライト・フルオロ(DYLIGHT Fluors)(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific))がある。これらの蛍光団は、紫外線、近紫外線、可視光線、近赤外線、及び赤外線を含む広範囲にわたる発光スペクトルを有する。FRET技術で、様々なアクセプター蛍光部分と一緒に用いることができる代表的ドナー蛍光部分として、蛍光、ルシファー・イエロー(Lucifer Yellow)、B-フィコエリスリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファー・イエロー(Lucifer Yellow)VS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアナトスチルベン-2,2’-二スルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシニムジル1-ピレンブチレート、及び4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-二スルホン酸誘導体、ランタニドイオン(例えばユウロピウム、ジスプロシウム、サマリウム若しくはテルビウム)のキレートなどが挙げられる。代表的アクセプター蛍光部分は、用いるドナー蛍光部分に応じて変わり、例えば、LC-Red640、LC-Red705、Cy5、Cy5.5、リサミン(Lissamine)ローダミンBスルホニルクロリド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、ローダミンxイソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、フルオレセイン、ジエチレントリアミン5酢酸塩、アロフィコシアニン、XL665、d2がある。ドナー及びアクセプター蛍光部分は、例えば、モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)(ジャンクション・シティ、オレゴン)又はシグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.)(セントルイス、ミズーリ)から入手することができる。
【0071】
特定の天然に存在するアミノ酸、例えば、トリプトファンは蛍光である。例えば、蛍光基をアミノ酸に連結する(例えば、AEDANSをCysに連結する)ことによって、アミノ酸を誘導体化して、FRETの蛍光団ペアを形成してもよい。AEDANS-Cysペアは、タンパク質立体配置の変化及び相互作用を検出するのに、一般に用いられている。アミノ酸を改変して、タンパク質断片内にFRETを発生させるために、いくつかの他の形態の蛍光基も用いられている(例えばS--(N-[4-メチル-7-ジメチルアミノ-クマリン-3-イル]-カルボキサミドメチル)-システイン-e-による2.4-ジニトロフェニル-リシン)。
【0072】
肝細胞での使用に特に好適な別の実施形態では、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその様々な変異体を蛍光団として用いる。また、最大励起波長が558nmで、最大蛍光波長が583のDsRed(クロンテク(Clontech))などの赤色蛍光タンパク質を用いてもよい。蛍光タンパク質の例は、ジェンバンク(Genbank)及びスイスプロ(SwissPro)パブリック・データベースにみいだされる。
【0073】
2つの異なる蛍光団同士のFRETは、蛍光の色の変化を観察するか、ドナーの蛍光寿命を測定するか、ドナー又はアクセプターいずれかを光退色させた際の変化を調べるなどの、複数の方法によってアッセイすることができる。どのアプローチかにかかわらず、これらアッセイの大部分は、共通した特徴の計器を使用する。こうした計器の例として、以下がある:エンビジョン・プレート・リーダ(EnVision Plate Reader。モレキュラー・デバイシズ社)、ビューラックス・ウルトラHTSマイクロプレート・イメージャ(ViewLux ultraHTS Microplate Imager。パーキンエルマー社)、オプティマ・マイクロプレート・リーダーズ(OPTIMA Microplate Readers)、フルオロスター(FLUOstar)及びポーラスター(POLARstar。BGMラブテク社)。好ましい測定は、時間分解蛍光光度計によるものである。
【0074】
2つの異なる蛍光団同士のFRETは、細胞中の蛍光、特に、細胞下局在化の変化を検出する計器を用いた、ハイコンテントセルスクリーニングによってアッセイすることができる。こうした計器の例として、以下がある:INCell Analyzer(GEヘルスケア社)、ImageXpress Micro High Content Screening System(モレキュラー・デバイシズ社)、オペラ(Opera)、Operetta(パーキンエルマー社)、Cellomics ArrayScan
VTI HICS Reader(Thermo Scientific社)。
【0075】
ドナー蛍光団を照射することによってアクセプターへの無放射エネルギー移動を解明するのではなく、基質酸化後に、ドナー酵素から相補性アクセプター蛍光団へのエネルギーの無放射移動を達成することができる。このような方法は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)と呼ばれる。ドナー酵素の例として、ルシフェラーゼ又はエクオリンがあり、基質は、ルシフェリン又はコエレンテラジンであってよく、アクセプター蛍光団は、GFP、YFP、EGFP、GFP又はGFP10であってよい(プフレジャー K.(Pfleger K.)ら、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)、2006年、1、337~345)。BRETは、ルミノメータ又は走査型分光計を用いて検出することができる。
【0076】
本発明の実施形態は、様々なFRETアッセイ、例えば、定常状態FRET、蛍光寿命、時間分解FRET、分子内FRET又は分子間FRETにも関する。分子内FRETの例として、単一分子内で標識した2つの発色団同士のものがある(例えば、分子による立体配座の変化を特定するため)。特定の実施形態では、1分子の分子内FRETは、他の一切の分子の非存在下で測定することができる。特定の実施形態では、分子内FRETは、1つ以上の相互作用するタンパク質(例えば、いずれかのリガンド-受容体相互作用)の存在下で測定することができる。
【0077】
本明細書に記載するFRETは、分子間で、例えば、2つ以上の異なる分子内に標識された2つ以上の発色団同士の間で、検出することもできる。
開発全体を通じてアッセイの質を評価するために、Z’ファクターを用いる(チャン JH(Zhang JH)ら、J Biomol Screen、1999年、4(2):67~73)。Z’ファクターは、アッセイシグナルダイナミックレンジ(正の対照の平均と負の対照の平均との差)及びシグナルの統計的変動性を統合し、0(低評価の質)~1(高評価の質)の範囲である。Z’値が高いほど、アッセイの頑健性も高くなり、0.5以上の値は優れたアッセイを示している。Z’=1-[3x(SDC++SDC-)/平均C+-平均C-)](式中、SDC+=正の対照(最大シグナル)の標準偏差、SDC-=負の対照(最小シグナル)の標準偏差、平均C+=正の対照の平均値、平均C-=負の対照の平均値)。
【0078】
サンプル容器:前文ではキュベットとして説明したが、本発明の実施形態は、多数の受け器、容器若しくは器形状において有効である。従って、アッセイは、チューブ、バイアル、皿、フローセル、カセット、カートリッジ、マイクロ流体チップ、及びその他あらゆる類似タイプの容器中で実施することができる。別の実施形態では、容器は、あらゆるタイプのあらゆる形状で、多くの材料から構成することも可能である。従って、アッセイフォーマットは、外部磁石を用いて、チャネル若しくは経路に沿って、アッセイ成分を磁気により引き出すことができるような平板なプラスチック若しくはガラスカセット又はカートリッジに適用してもよい。従って、アッセイ容器についての複数の実施形態又は形状が考慮され、例えば、蛍光アッセイが実行できるように、励起波長での照射を透過させる半透明若しくは開放表面領域を有するキュベットなどがある。例えば、キュベット半透明表面領域は、正方形、長方形、円形、楕円形、若しくは平板な容器、ビーズ、バイアル、チューブ、円筒、カセット、若しくはカートリッジとして形成してもよい。好ましい実施形態は、多層マイクロタイタープレートである。
【0079】
いくつかの実施形態では、容器は、ドナー蛍光団の波長での照射及びアクセプター蛍光団の波長での測定が可能であるように、キュベット、マルチウェルプレート、チューブ、フラスコ、ディスク、ビーズ、バイアル、フローセル、カートリッジ、マイクロ流体チップ又はこれらの組合せを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法及びアッセイは、ハイスループットスクリーニングアッセイフォーマットで提供される。このようなフォーマットの利点は、例えば、診断又は予後判定を目的とする多量の患者サンプルのスクリーニング、新薬のスクリーニング、研究など、容易に検出可能であることである。
【0081】
候補/試験薬剤:候補薬剤は、多数の化学クラスを含むが、典型的に、小有機化合物などの有機化合物、オリゴヌクレオチドなどの核酸、及びペプチドである。小有機化合物は、好適には、分子量が、例えば、約40若しくは50超で、かつ約2,500未満のものであってよい。候補薬剤は、タンパク質やDNAと相互作用する化学官能基を含んでもよい。
【0082】
候補薬剤は、合成又は天然化合物のライブラリーを含む、非常に多種の供給源から取得してよい。例えば、非常に多種の有機化合物及び生体分子のランダム及び指定合成のための多数の手段が利用可能であり、ランダム化オリゴヌクレオチドの発現などがある。あるいは、例えば、細菌、真菌及び動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーが入手可能であり、あるいは、容易に生成される。
【0083】
化学ライブラリー:コンビナトリアル化学の発達により、数百から数千の個別化合物の高速かつ経済的合成が可能である。これらの化合物は、典型的に、効率的スクリーニングのために設計された小分子の中間サイズライブラリーに配置される。コンビナトリアル法は、新規化合物の発見に好適な不偏ライブラリーを作製するのに用いることができる。更に、事前に決定された生物活性を備える単一親化合物に由来する、より小さく、多様性の低いライブラリーを作製することもできる。いずれの場合も、重要な酵素の阻害物質など、コンビナトリアル化学によって生成される治療関連生体分子を特異的にターゲティングするための効率的スクリーニングシステムがないために、これら資源の最適な使用が妨げられている。
【0084】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学「ビルディングブロック」を組み合わせることによって、化学合成又は生物学的合成のいずれかにより作製される多様な化学化合物のコレクションである。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの線形コンビナトリアル化学ライブラリーは、1セットの化学ビルディングブロック(アミノ酸)を多数の組合せで、また潜在的にあらゆる可能な方法で、所与の化合物長さ(即ち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)について組み合わせることによって形成する。このような化学ビルディングブロックのコンビナトリアル混合によって、数百万の化学化合物を合成することができる。
【0085】
「ライブラリー」は、2~50,000,000の多様なメンバー化合物を含みうる。好ましくは、ライブラリーは、少なくとも48の多様な化合物、好ましくは96以上の多様な化合物、より好ましくは384以上の多様な化合物、更に好ましくは10,000以上の多様な化合物、好ましくは100,000以上の多様なメンバー、最も好ましくは1,000,000以上の多様なメンバー化合物を含む。「多様な」とは、ライブラリー中の化合物の50%超が、ライブラリーの他のどのメンバーとも同じではない化学的構造を有することを意味する。好ましくは、ライブラリー中の化合物の75%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは約99%超が、コレクションの他のどのメンバーとも同じではない化学的構造を有する。
【0086】
コンビナトリアル化学ライブラリーの作製は、当業者には公知である。再確認のためには、以下の文献を参照されたい:トンプソン(Thompson)ら、小分子ライブラリーの合成及び適用(Synthesis and application of small molecule libraries)、Chem Rev、96:555~600、1996年;ケナン(Kenan)ら、コンビナトリアル形状ライブラリーを用いた分子多様性の探究、Trends Biochem Sci、19:57~64、1994年;ジャンダ(Janda)、タグ付け及びタグなしライブラリー:コンビナトリアル化学ライブラリーの作製及びスクリーニング方法、Proc Natl Acad Sci、米国、91:10779~85、1994年:レベル(Lebl)ら、1ビーズ-1構造コンビナトリアルライブラリー、Biopolymers、37:177~98、1995年;アイヒラー(Eichler)ら、ペプチド、ペプチド模倣体、及び有機合成コンビナトリアルライブラリー、Med Rec Rev.、15:481~96、1995年;チャバラ(Chabala)、固相コンビナトリアル化学及びリード発見のための新規タグ付け方法、Curr Opin Biotechnol.、6:632~9、1995年;ドール(Dolle)、コンビナトリアル化学による酵素阻害物質の発見、Mol Divers.、2:223~36、1997年;フォーチャー(Fauchere)ら、ロボット合成可溶性ライブラリーを用いたペプチド及び非ペプチドリードの発見、Can J.Physiol Pharmacol.、75:683~9、1997年;アイヒラー(Eichler)ら、合成コンビナトリアルライブラリーの作製及び使用、Mol Med Today、1:174~80、1995年;及びケイ(Kay)ら、ファージ展示コンビナトリアルペプチドライブラリーからの酵素阻害物質の発見、Com Chem High Throughput Screen、4:535~43、2001年。
【0087】
また、化学多様性ライブラリーを作製する他の化学を用いてもよい。このような化学として、限定するものではないが、以下が挙げられる:ペプトイド(国際公開第91/19735号パンフレット);コード化ペプチド(国際公開第93/20242号パンフレット);ランダムバイオオリゴマー(国際公開第92/00091号パンフレット);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号明細書);ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチドなどのダイバーソマー(ホッブス(Hobbs)ら、Proc.Nat.Acad.Sci.、米国、90:6909~6913(1993年));ビニル性ポリペプチド(ハギハラ(Hagihara)ら、J.Amer.Chem.Soc.、114:6568(1992年));β-D-スカフォールディングを含む非ペプチド性ペプチド模倣体(nonpeptidal peptidomimetics with.beta.-D-glucose scaffolding)(ハーシュマン(Hirschman)ら、J.Amer.Chem.Soc.、114:9127~9218(1992年));小化合物ライブラリーの類似有機合成(チェン(Chen)ら、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994年));オリゴカルバメート(チョー(Cho)ら、Science、261:1303(1993年));ホスホン酸ペプチジル(キャンペル(Campell)ら、J.Org.Chem.、59:658(1994年));核酸ライブラリー(例えば、オースベル(Ausubel)、ベルガ―(Berger)及びサンブルック(Sambrook)を参照、全て前掲);ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号明細書を参照);抗体ライブラリー(例えば、ボーン(Vaughn)ら、Nature Biotechnology、14(3):309~314(1996年)及びPCT/US96/10287号明細書を参照);炭水化物ライブラリー(例えば、リャン(Liang)ら、Science、274:1520~1522(1996年)及び米国特許第5,593,853号明細書を参照);小有機分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&E News、1月18日、第33頁(1993年));イソプレノイド(米国特許第5,569,588号明細書);チアゾリジノン及びメタチアザノン(米国特許第5,549,974号明細書);ピロリジン(米国特許第5,525,735号明細書及び同第5,519,134号明細書);モルホリノ化合物(米国特許第5,506,337号明細書);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号明細書)など。
【0088】
コンビナトリアルライブラリーの作製のための装置は、市販のものが入手可能である(例えば、以下を参照:357MPS、390MPS、アドバンスドChem.Tech(Advanced Chem.Tech)、ルーイビル、ケンタッキー;シンホニー(Symphony)、レイニン(Rainin)、ウォバーン、マサチューセッツ;433A アプライド・バイオシステム(Applied Biosystems)、フォスターシティ、カリフォルニア;9050プラス(9050 Plus)、ミリポア(Millipore)、ベッドフォード、マサチューセッツ)。更に、多数のコンビナトリアルライブラリーが、それ自体で市販されている(例えば、以下を参照:コムジェネックス(ComGenex)、プリンストン、ニュージャージー;アシネックス(Asinex)、モスクワ、ロシア;トリポス社(Tripos,Inc.)、セントルイス、ミズーリ;ケムスター社(ChemStar,Ltd.)、モスクワ、ロシア;3Dファーマスーティカルズ(3D Pharmaceuticals)、エクストン、ペンシルバニア;マーテックバイオサイエンシーズ(Martek Bio sciences)、コロンビア、メリーランドなど)。
【0089】
本発明のスクリーニングアッセイは、好適には、動物モデル、セルベースシステム及び非セルベースシステムを含み、これらを実施する。発見された遺伝子、変異体、断片、又はそれらのオリゴペプチドを用いて、例えば、化合物のライブラリーをスクリーニングすることにより、治療目的の物質を特定するか、あるいは、様々な薬剤スクリーニング若しくは分析技術のいずれかによって目的の化合物を特定する。このようなスクリーニングに用いられる遺伝子、対立遺伝子、断片、又はそれらのオリゴペプチドは、溶液中で遊離状態であってもよいし、固体支持体に添加する、細胞表面に担持させる、又は細胞内に配置してもよい。測定は、以下の実施例の項に詳細に記載するように実施する。
【0090】
いくつかの実施形態では、候補治療薬を特定する方法は、(i)各々が第1及び第2検出可能標識を有する第1及び第2リガンドを添加するステップ、(ii)第1及び第2リガンドが、特定の標的分子上の別々の特定部位に結合するステップを含み、ここで、(iii)第1及び第2リガンドが特定の標的分子に特異的に結合したとき、洗浄及び発光の検出ステップが省略される、ハイスループットスクリーニングアッセイにおいて、特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングすることを含む。
【0091】
別の好ましい実施形態では、治療薬を特定する方法は、(i)標的分子を候補治療薬と接触させるステップ、(i)この薬剤が、ペプチドの機能若しくはペプチドとパートナー分子との相互作用を調節するか否か、又は(ii)この薬剤が、本明細書で具体化する発光アッセイによって測定されるような標的の核酸配列の発現や機能を調節するか否かを決定するステップを含む。
【0092】
別の好ましい実施形態では、疾患の治療のための候補治療薬を発見する方法は、標的分子を発現する単離された細胞を培養するステップ、候補治療薬を培養細胞に投与するステップ、対照細胞と比較して、候補治療薬の存在又は非存在下で、標的分子の発現、活性及び/若しくは機能を相関させるステップを含み、望ましい治療成果に基づいて薬剤を特定する。例えば、その発現レベルが疾患状態の原因である標的分子の発現、又は標的分子を調節する薬剤は、経路の上流若しくは下流にかかわらず、別の分子の活性を調節する。別の例では、アッセイは、キナーゼ活性を測定する。他の例では、アッセイは、結合パートナーを測定する。
【0093】
診断及び候補薬発見のための別の好適な方法は、試験サンプルを、標的分子を発現する細胞と接触させるステップ、及び試験薬剤と、標的分子、対立遺伝子若しくはその断片との相互作用、又は標的分子、対立遺伝子若しくはその断片の発現産物を検出するステップを含む。
【0094】
別の好ましい実施形態では、患者からの細胞を単離して、候補治療分子と接触させる。遺伝子、その発現産物をモニターすることによって、どの遺伝子又は発現産物が薬剤によって調節されるかを決定する。
【0095】
ハイスループットスクリーニング
本明細書で具体化するアッセイは、目的のタンパク質に対する好適な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングでの薬剤スクリーニングに好適である(例えば、ゲイセン(Geysen)ら、1984年、国際公開第84/03564号パンフレット参照)。この方法では、多数の異なる試験小化合物を固体支持体上に合成する。試験化合物を、同定した遺伝子、又はその断片と反応させた後、洗浄する。次に、本明細書で具体化する方法によって、結合分子を検出する。あるいは、非中性化抗体を用いて、ペプチドを捕捉し、これを固体支持体上に固定化してもよい。
【0096】
本発明のスクリーニング方法は、スクリーニングアッセイを用いて、多様な分子のライブラリーから、所望の活性を有する1つ以上の化合物を特定することを含む。「スクリーニングアッセイ」は、予め選択した活性を有するコレクション内で、化合物を発見、単離、構造決定するように設計された選択的アッセイである。「発見する(特定する)」とは、望ましい活性を有する化合物を単離することを意味し、その化学構造を決定する(限定するものではないが、核酸及びポリペプチドのそれぞれヌクレオチド及びアミノ酸配列、構造の決定、及びこれに加えて又は代えて、スクリーニングされた活性を有する化合物の精製を含む)。生物化学及び生物学的アッセイは、タンパク質-タンパク質相互作用、酵素触媒、小分子-タンパク質結合から、細胞機能に到るまで、様々なシステムにおける活性を試験するために設計される。このようなアッセイとしては、自動化、半自動化アッセイ及びHTS(ハイスループットスクリーニング)アッセイがある。
【0097】
HTS法では、多数の試験化合物が、所望の活性について同時又はほぼ同時にスクリーニングされるように、好ましくは、多くの個別の化合物をロボット、自動若しくは半自動方法によって並行して試験する。本発明の統合システムを用いて、1日当たり約6,000~20,000まで、また、約100,000~1,000,000までの異なる化合物をアッセイ及びスクリーニングすることが可能である。
【0098】
典型的に、HTSでは、標的分子は、適切な対照などの、調節された受容体を含む単離細胞に投与するか、又はこれと一緒に培養する。
一実施形態では、スクリーニングは、標的とリガンドとの複合体が形成されうる条件下で、各細胞培養物を、メンバー化合物(そのいくつかは標的のリガンド)の多様性ライブラリーと接触させるステップ、及び、このような複合体中に、ライブラリーのどのメンバーが存在するかを決定するステップを含む。別の非制限的態様では、スクリーニングは、酵素によって触媒される反応の産物若しくは反応体が、検出可能なシグナルを生成する条件下で、標的酵素を、メンバー化合物(そのいくつかは標的の阻害物質(又は活性化物質)である)の多様性ライブラリーと接触させるステップを含む。後者の態様では、標的酵素の阻害物質は、検出可能な産物からのシグナルを減少させるか、若しくは検出可能な反応体からのシグナルを増加させる(又は活性化物質については、その反対)。
【0099】
本明細書に開示する方法は、複数の試験化合物をスクリーニングするために用いることができる。特定の実施形態では、複数の試験化合物は、1~200,000の試験化合物、1~100,000の試験化合物、1~1,000の試験化合物、1~100の試験化合物、又は1~10の試験化合物を含む。特定の実施形態では、試験化合物は、コンビナトリアル化学の技法を用いて、化合物ライブラリー(市販のもの又はそれ以外にかかわらず)により、提供される。特定の実施形態では、化合物ライブラリーは、固体支持体上に固定化する。
【0100】
前述したように、基質の各タイプについてアッセイパラメータを操作若しくは最適化することができるため、標的は、どんな基質に存在してもよい。例えば、標的が細胞の表面又は細胞内にある場合には、以下のパラメータを決定する:最適な細胞系、細胞密度、培地、血清濃度、最終試薬容量、化合物インキュベーション時間(例えば、12、24若しくは36時間)。標的が無細胞溶液の場合には、溶液の最適組成と、正の対照標準の濃度範囲とを決定する。決定することができる他のパラメータは、リガンド濃度、リガンドのインキュベーション温度及びインキュベーション時間(例えば、1~4時間)である。読取り計器、例えば、時間分解蛍光光度計の設定は、測定窓及び時間遅延、励起パラメータ(例えば、送達される閃光の回数)、利得調節、及び容器に対するリーダーヘッドの位置決めについて最適化する。もし利用可能であれば、適切な薬理学的調節を決定する必要がある。
【0101】
ハイスループットスクリーニングを用いて、複雑な分子イベント(例えば、シグナル伝達経路など)、及び、限定を意図していないが、細胞機能、細胞死、細胞分裂、細胞接着、運動、エキソサイトーシス、及び細胞-細胞連絡などの細胞機能に対する薬剤の作用を測定することができる。多色蛍光によって、複数の標的及び細胞プロセスを単一のスクリーンでアッセイすることが可能になる。細胞応答の相互相関によって、標的確認及びリード最適化に必要な豊富な情報が得られる。
【0102】
別の態様では、本発明は、細胞を分析する方法であって、細胞が1つ以上の蛍光リポーター分子を含有する、複数の細胞を含む位置のアレイを用意するステップ、細胞を含む位置の各々で複数の細胞を走査して、細胞中の蛍光リポーター分子から蛍光シグナルを得るステップ、蛍光シグナルを数値データに変換するステップ、及び、数値データを用いて、細胞内の蛍光リポーター分子の分布、環境若しくは活性を決定するステップを含む。
【0103】
マイクロアレイ:標的分子に結合することができる核酸配列の検出は、各ユニークな核酸が、規定位置に配置されて、アレイを形成するように、核酸のライブラリーを基質表面に固定化することによって、達成することができる。一般に、生体分子と核酸の結合を促進する条件下で、核酸の固定化ライブラリーを生体分子又は候補薬剤に暴露する。次に、本明細書で具体化する方法によって、核酸アレイを分析して、どの核酸配列が生体分子に結合したかを決定する。好ましくは、生体分子は、結合した核酸の位置の検出に用いるための、予め決定した標識を担持する。
【0104】
核酸配列の固定化アレイを用いたアッセイは、未知の核酸配列の決定、単一ヌクレオチド多形(SNP)分析、特定の種、組織、細胞型などからの遺伝子発現パターンの分析、遺伝子同定などに用いることができる。
【0105】
別の実施形態では、ポリヌクレオチド配列のいずれかに由来するオリゴヌクレオチド又はより長い断片をミクロアレイの標的として用いてもよい。ミクロアレイを用いて、多数の遺伝子又は遺伝子転写物の同一性や発現レベルをモニターすると同時に、標的遺伝子又はその産物が相互作用する遺伝子を特定すること、例えば、神経障害を媒介する遺伝子の発現産物の調節における候補治療薬の効果を評価することができる。この情報を用いて、遺伝子機能を決定すると共に、治療薬の活性を明らかにして、モニターすることができる。
【0106】
マイクロアレイは、当分野では公知の方法を用いて、作製、使用、及び分析してよい(例えば、以下の文献を参照されたい:ブレナン(Brenann)ら、1995年、米国特許第5,474,796号明細書;シェナ(Schena)ら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、93:10614~10619;バルデシュベイラー(Baldeschweiler)ら、1995年、国際公開第95/251116号パンフレット;シャロン(Shalon)ら、1995年、国際公開第95/35505号パンフレット;ヘラー(Heller)ら、1997年、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、94:2150~2155;及びヘラー(Heller)ら、1997年、米国特許第5,605,662号明細書)。別の実施形態では、マイクロアレイは、ペプチド、又は候補薬剤を特定するためにアッセイすることができる他の所望の分子を含む。
【0107】
有用性
特定の実施形態では、アッセイは、疾患若しくは障害を診断する方法を提供し、特定の疾患若しくは障害の特徴を示すマーカー若しくは分子を検出、定量するために、患者からの生体サンプルをスクリーニングするステップを含む。例えば、遺伝子マーカー、タンパク質マーカーなど。
【0108】
特定の実施形態では、スクリーニングは、同時に多数の被検者の同時診断を可能にするハイスループットスクリーニングを用いて、実施する。
別の好ましい実施形態では、患者からの生体サンプルをスクリーニングするステップ、特定の疾患若しくは障害の特徴を示すマーカー若しくは分子を検出するステップを含む、疾患若しくは障害を発症する危険性のある被検者を特定する方法。
【0109】
別の好ましい実施形態では、疾患若しくは障害の治療又は予防のための候補化合物をスクリーニングする方法は、サンプルを候補治療薬と接触させるステップと、化合物が標的に対して有する作用を測定するステップを含む。例えば、それが、受容体のような細胞産物であれば、化合物は、受容体発現を調節する可能性があり、その場合、考えられるあらゆる治療効果について、化合物を更に研究することができる(例えば、発現、酸化レベル、アポトーシスマーカなどのパラメータの増減をモニターする)。異常な発現状態は、疾患、癌、遺伝子欠陥、毒素などの病原によって起こりうる。
【0110】
キット及び方法
本発明は更に、本明細書に記載する方法のいずれかを実施するのに十分な、必要な、又は有用な1つ以上の、又は全ての成分を含むシステム及びキット(例えば、市販の治療、診断、若しくは研究用製品、反応混合物など)も提供する。これらのシステム及びキットは、バッファー、検出/画像化成分、正/負の対照試薬、説明書、ソフトウエア、ハードウエア、パッケージ、又はその他の所望の成分を含みうる。
【0111】
キットは、標的分子に対する化合物の作用を調節することができる試験化合物をスクリーニングするための有用な手段を提供する。キットは、使用説明書と一緒に、適切な容器中に、典型的には様々な部品と共に、研究、臨床、及び試験機関を補助するのにあらゆる好適な方法でパッケージすることができる。
【0112】
本明細書では、標的分子と試験薬剤との相互作用を調節する化合物を特定するためのキットが提供される。特定の実施形態では、キットは、(a)第1発色団で標識した標的分子と、(b)第2発色団で標識した試験薬剤を含む。特定の実施形態では、キットは、液体や溶剤を更に含んでもよい。特定の実施形態では、キットは、アッセイ手順に必要なバッファー及び試薬、並びにアッセイを実施するための説明書を更に含んでもよい。特定の実施形態では、キットは、必要に応じて、試験におけるバックグラウンド干渉を低減するための薬剤、正及び負の対照試薬、試験を実施するための装置などを更に含んでもよい。
【0113】
本明細書に記載する方法及びキットの特定の実施形態では、タンパク質の精製、サンプルの標識又は固体相アッセイの実施のために、固相支持体を用いる。本明細書に開示した方法を実施する上で好適な固相の例として、ビーズ、粒子、コロイド、単一表面、チューブ、マルチウェルプレート、マイクロタイタープレート、スライド、膜、ゲル及び電極が挙げられる。固相が特定の材料(例えば、ビーズ)のとき、一実施形態では、固相支持体の並行処理が可能になるように、これをマルチウェルプレートのウェルに配分する。
【0114】
本明細書に開示する方法及びキットは、当分野では公知の多数のフォーマットで実施することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、固相アッセイフォーマットを用いて実施する。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、マルチウェルプレート又はマルチドメインマルチウェルプレートなどの複数のウェルを含むプレートのウェル中で実施する。マルチウェルアッセイプレートを使用することによって、プレートの複数のウェル中に配分した多数のサンプルの並行処理及び分析が可能になる。マルチウェルアッセイプレート(マイクロプレート又はマイクロタイタープレートとしても知られる)は、多様な形態、サイズ及び形状(例えば、丸底若しくは平底マルチウェルプレート)をしていてよい。本明細書に記載する方法で用いることができるマルチウェルプレートフォーマットの例として、96ウェルプレート(12x8列のウェル)、384ウェルプレート(24x16列のウェル)、1536ウェルプレート(48x32列のウェル)、3456ウェルプレート及び9600ウェルプレートで特定されるものがある。本明細書に記載する方法で用いることができる他のフォーマットとして、限定するものではないが、複数のドメイン、キュベット、マイクロアレイなどを含む単一又はマルチウェルプレートがある。特定の実施形態では、プレートは、壁が黒色で、底が黒色のプレートである。特定の実施形態では、プレートは、壁が黒色で、底が白色のプレートである。特定の実施形態では、プレートは、底部から蛍光シグナルの読取りができるように、黒色の壁と、透明の底を有する。特定の実施形態では、プレートは、FRETシグナルによる干渉を回避するために、本方法で使用する範囲内の最小かつ均一の内部蛍光強度を有するものを選択する。
【0115】
本明細書に記載する方法は、標準化プレートフォーマットで実施する場合、これらのプレートを保存及び移動するための容易に入手可能な装置であり、しかも、プレートへ、及びプレートから液体を迅速に計量分配するための容易に入手可能な装置(例えば、ロボットディスペンサー、マルチウェル及びマルチチャネルピペット、プレート洗浄機など)である点で有利となりうる。
【0116】
好ましい実施形態を参照にしながら、本発明を詳しく説明してきた。しかし、当業者が、本発明の開示内容を考慮した上で、本発明の精神及び範囲内で変更及び改善を実施しうることは理解されよう。
【0117】
組成物の投与
本明細書で具体化する方法によって特定された薬剤は、製剤化することができ、本発明の組成物を1つ以上の別の活性成分、医薬組成物、又はその他の化合物と一緒に投与してもよい。本発明の治療薬は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに投与してよい。
【0118】
医薬製剤は、経口(固体若しくは液体)、非経口(筋内、腹腔内、静脈内(IV)若しくは皮下注射)、経皮(受動的か、又はイオン導入法若しくはエレクトロポレーションを用いて)、経粘膜及び全身(鼻、膣、直腸、若しくは舌下)、又は吸入投与経路による、あるいは、生体内分解性挿入物を用いた、投与用であってよく、各投与経路に適した投薬形態で製剤化することができる。
【0119】
薬剤は、生理的塩水若しくは緩衝食塩水などの薬学的に許容される担体又は希釈剤中に製剤化してもよい。好適な担体又は希釈剤は、投与方法及び経路、並びに標準的製剤実施に基づいて選択することができる。薬学的に許容される担体又は希釈剤、並びに医薬製剤の例についての記載は、この分野の標準的テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences及びUSP/NFにみいだすことができる。組成物を安定化したり保存するために、その他の物質を組成物に添加してもよい。
【0120】
本発明の組成物は、いずれかの従来の技術によって動物に投与してよい。組成物は、例えば、外科的送達によって内部若しくは外部標的部位に、又はカテーテルによって、血管に進入可能な部位に、標的部位に直接投与してよい。他の送達方法、例えば、リポソーム送達、又は組成物を含浸した装置からの拡散も、当分野では公知である。組成物は、単一ボーラス、複数回注射、又は連続的輸液(例えば、静脈内)によって投与してもよい。非経口投与の場合、組成物は、滅菌済の発熱性物質除去形態で製剤化するのが好ましい。
【0121】
本発明によって特定される組成物は、薬剤の濃度が、骨吸収を阻害する、又は本明細書に開示するその他のあらゆる治療適用を達成するのに十分であるように、患者に経口投与してもよい。典型的に、本化合物を含む医薬組成物は、患者の状態に合わせて、約0.1~約50mg/kgの経口用量で投与する。好ましくは、経口用量は、約0.5~約20mg/kgである。
【0122】
水若しくは通常の塩水中5%デキストロースにおける化合物の静脈内輸液、又は好適な賦形剤を含む同等の製剤が、最も有効であるが、筋内ボーラス注射も有用である。典型的に、非経口用量は、システインプロテアーゼを阻害するのに有効な濃度で血漿中の薬剤濃度を維持するように、約0.01~約100mg/kgであり、好ましくは0.1~20mg/kgである。化合物は、1日の合計用量が約0.4~約400mg/kg/日に達するようなレベルで、毎日1~4回投与してよい。治療に有効な本発明の化合物の正確な量、並びにこのような化合物を最も好適に投与する経路は、薬剤の血液レベルと、治療効果を得るのに必要な濃度を比較することによって、当業者により容易に決定される。本発明の化合物のプロドラッグは、いずれかの好適な方法で調製することができる。プロドラッグ部分がケトン官能基性、特にケタールやヘミアセタールである化合物の場合、従来の方法に従って変換を実施してよい。
【0123】
本発明の化合物、誘導体、塩類、組成物などを本発明に従って投与する場合、許容できない毒物学的作用は一切予想されない。優れた生体利用性を有しうる本発明の化合物は、所与の薬理学的効果を得るのに必要な化合物の濃度を決定するために、複数の生物学的アッセイの1つで試験してもよい。
【0124】
別の好ましい実施形態では、特定された1以上の化合物と、薬学的若しくは獣医学的に許容される担体を含む医薬又は動物用組成物が提供される。治療若しくは予防しようとする疾患又は状態に適切若しくは望ましいと考えられれば、他の活性物質が存在してもよい。
【0125】
担体、又は1以上が存在する場合、担体の各々は、製剤の他の成分と適合性であると言う意味で、許容されるものでなければならないと共に、レシピエントに対して有害であってはならない。
【0126】
本明細書に記載の方法によって特定された化合物は、前述した様々な薬剤送達システムでの使用に適している。更に、投与した化合物のin vivo血清半減期を増大するために、化合物をカプセル化する、リポソームの腔に導入する、コロイドとして調製するか、あるいは、化合物の血清半減期延長をもたらす他の従来の技術を用いてもよい。例えば、スゾカ(Szoka)ら、米国特許第4,235,871号明細書、同第4,501,728号明細書及び同第4,837,028号明細書(各々、参照として本明細書に組み込む)に記載されているように、リポソームを調製するのに様々な方法が利用可能である。更に、標的型薬剤送達システム、例えば、組織特異的抗体をコーティングしたリポソーム中で薬剤を投与してもよい。リポソームは、器官に向けてターゲティングされ、これによって選択的に取り込まれる。
【0127】
製剤は、直腸、鼻内、局所(口腔及び舌下など)、膣又は非経口(皮下、筋内、静脈内及び皮内など)投与に好適なものを含むが、好ましくは、製剤は、経口投与される製剤である。製剤は、好適には、単位投薬形態、例えば、錠剤及び徐放カプセルとして提供してよく、薬学の分野で公知のいずれの方法で製造してもよい。
【0128】
このような方法は、上に定義した活性薬剤を担体と結合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性薬剤を液体担体若しくは微粉砕した固体担体と均一かつ緊密に結合させ、次いで、必要であれば、生成物を造形することによって、製造する。
【0129】
これらの方法を用いて特定された化合物は、薬学的に有用な組成物を製造する公知の方法に従い、化合物を薬学的に許容される担体ビヒクルと混合させて、製剤化することができる。所望の純度を有する活性成分を任意の生理学的に許容される担体、賦形剤若しくは安定剤と混合することにより(Remington’s Pharmaceutical
Sciences、第16版、オソール,A.編、(1980年))、凍結乾燥製剤若しくは水溶液の形態で、貯蔵用の治療製剤を製造する。許容される担体、賦形剤若しくは安定剤は、使用する用量及び濃度で、レシピエントに対して無毒であり、以下のものを含む:リン酸、クエン酸及びその他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリシンのようなアミノ酸;単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンなどの他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;トゥイーン(TWEEN)(商標)(ICIアメリカズ社(ICI Americas Inc.)、ブリッジウォーター、ニュージャージー)、プルロニクス(PLURONICS)(商標)(BASF社(BASF Corporation)、マウント・オリーブ、ニュージャージー)若しくはPEGのような非イオン界面活性剤。
【0130】
in vivo投与に用いる製剤は、無菌かつ発熱物質が除去されたものでなければならない。これは、凍結乾燥及び再形成前又は後に、無菌化濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。
【0131】
本発明の医薬組成物の用量及び所望の薬剤濃度は、該当する具体的の用途に応じて変動しうる。適切な用量及び投与経路の決定は、通常の医師によって容易に実施されうる。動物実験によって、ヒトの治療に有効な量を決定するための信頼できる指標が提供される。種間の有効用量のスケーリングは、モーデンティ,J.(Mordenti,J.)及びチャペル,W.(Chapell,W.)、「トキシコキネティクスにおける種間スケーリングの使用(The use of interspecies scaling in toxicokinetics)」、Toxicokinetics and New Drug Development、ヤコビ(Yacobi)ら編、パーガモン・プレス(Pergamon Press)、ニューヨーク、1989年、pp.42~96に規定されている原理に従って実施することができる。
【0132】
本発明の経口投与用の製剤は、各々が予め定めた量の活性薬剤を含有するカプセル、カシェ若しくは錠剤などの個別の単位として、粉末若しくは顆粒として、水性液体若しくは非水性液体中の活性薬剤の溶液若しくは懸濁液として、又は、水中油形液体エマルション若しくは油中水形液体エマルションとして、あるいは、ボーラスなどとして提供してよい。
【0133】
経口投与用の組成物(例えば、錠剤及びカプセル)の場合、用語「許容される担体」は、一般的賦形剤などのビヒクル、例えば、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカンス、ポリビニルピロリドン(ボビドン(Povidone)、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース及びデンプン;充填剤及び担体、例えば、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸;並びに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及びその他の金属ステアリン酸塩、ステアリン酸グリセロールステアリン酸、シリコーン流体、タルクワックス、油及びコロイド状シリカなどの潤滑剤を含む。また、ペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー風味などの香味料も用いることができる。投薬形態を容易に識別できるように、着色料を添加することが望ましい場合もある。また、錠剤は、当分野では公知の方法によってコーティングしてもよい。
【0134】
錠剤は、任意選択で、1つ以上の補助成分と一緒に、圧縮又は成形によって製造してもよい。圧縮錠剤は、好適な機械において、粉末若しくは顆粒のようなさらさらの形態である活性薬剤を、任意選択で、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤若しくは分散剤と混合して、圧縮することによって、製造することができる。成形錠剤は、好適な機械で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を成形することによって製造することができる。錠剤は、任意選択で、コーティングしてもよいし、又は刻みを付けてもよく、活性薬剤の徐放又は制御放出を達成するように製剤化してもよい。
【0135】
経口投与に好適なその他の製剤としては、好ましい基剤、通常、スクロース及びアラビアゴム若しくはトラガカンスに活性薬剤を含有するロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムなどの不活性基材に活性薬剤を含有する香錠;並びに好適な液体担体に活性薬剤を含有するうがい薬がある。
【0136】
非経口製剤は、一般に無菌である。
用量:本明細書に開示する組成物の有効用量を、これを必要とする被検者に投与する。「治療に有効な量」又は「治療量」とは、測定可能な応答(例えば、治療中の被検者における生物学的又は臨床的に関連する応答)を起こすのに十分な治療組成物の量である。応答は、前述のように、例えば、サイトカインプロフィール、細胞型、細胞表面分子など、様々な方法で測定することができる。本明細書に開示する主題の組成物中の活性成分の実際投与レベルは、特定の被検者について所望の治療応答を達成するのに有効な活性化合物の量を投与するために変動しうる。選択した投与レベルは、治療組成物の活性、投与経路、他の薬剤若しくは治療との併用、治療しようとする状態の重症度、並びに治療しようとする被検者の状態及び以前の病歴に応じて変わりうる。しかし、所望の治療効果を達成するのに必要なレベルより低いレベルで、化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで、用量を徐々に増加することは、当業者によって容易に実施されることである。組成物の効力は、変動する可能性があり、従って、「治療有効量」も変動しうる。しかし、当業者であれば、本明細書に記載するアッセイを用いて、本明細書に記載する主題の候補化合物の効力及び効果を容易に評価し、それに応じて治療計画を調節することができる。
【0137】
本明細書に記載する文献は、全て、参照として本明細書に組み込むものとする。本出願に引用した刊行物及び特許文献は、全て、あたかも各個別の刊行物及び特許文献が、そのように個別に明示しているのと同じ程度まで、あらゆる目的のために参照として本明細書に組み込むものとする。本明細書における様々な参照文献の引用によって、出願人が、いずれの参照文献も本発明に対する「先行技術」であると認めることはない。
【実施例0138】
本発明の様々な実施形態を上に説明してきたが、これらは、例として提示したに過ぎず、限定するものではないことを理解すべきである。以下の非制限的実施例は、本発明を例示するものである。
【0139】
材料及び方法
最良のリガンドペア分析。蛍光発色団に結合させたリガンドの1団を、細胞表面又は溶液中の標的に結合するそれらの能力について試験した。頑健な標的特異的シグナルを取得するリガンドを選択した。次に、リガンドを同時に添加した際、標的への結合に対する干渉の非存在を、体系的ペア形成(1つの標識「結合」リガンドを1つの非標識「干渉」リガンドと混合する)時に確認した。最後に、最良ペア分析を次のように実施した。すなわち、いずれか所与のリガンドペア組合せ(一方のリガンドは、ドナー発色団で標識し、他方は、アクセプター発色団で標識する、並びにその逆)によって発生したシグナルを、標的の濃度増加について測定し、最も強いシグナルを発生する標識リガンドペアを保持した。
【0140】
溶液中の組換えPrP(rPrP)の定量:組換えPrPを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中のマイクロタイタープレートのウェルに添加する。ドナー及びアクセプター蛍光団でそれぞれ標識されたPrP特異的抗体SAF32(aa53~93)及びD18(aa133~157)を用いて、PrPを直ちに検出する。シグナルバックグラウンド用の対照として、PBSを単独で用いる。データ分析のために、665nm(アクセプター発光):620nm(ドナー発光)測定値の比(R)を計算する。
【0141】
細胞表面でのPrPの決定:マイクロタイタープレートのウェルに細胞を添加する。スクリーニングライブラリーの化合物を添加するか、又は溶剤対照(通常、DMSO)と細胞を24時間インキュベートする。次に、細胞表面に存在するPrPの量を生存細胞上で検出する。細胞表面PrPを検出するために、抗体をリガンドとして用いる。最良の抗体ペアは、aa53~93に対するSAF32(ケイマン・ケミカル(Cayman Chemical))とaa133~157に対するD18(ウィリアムソン R.A.(Williamson R.A.)、J.Virol、1998年、72(11)、9413~18)(それぞれ、ドナー及びアクセプター蛍光団で標識されている)である。この具体例では、ドナー蛍光団としてのテルビウムクリプテート及びアクセプター蛍光団としてのd2と共に、HTRF(登録商標)を用いた。抗体は、シスビオ(Cisbio)によって標識した。PrP遺伝子欠損マウスの初代海馬神経細胞に由来するPrP0/0細胞系(KO)をPrP発現の負の対照として用いる。ブランクは、細胞の非存在下の培地とする。データ分析のために、665nm(アクセプター発光):620nm(ドナー発光)測定値の比(R)を計算して、アッセイ混合物による620nm光の非特異的吸光について補正する。サンプル又は正の対照の特異的シグナルの値は、ΔF%=[(RC+-RC-)/RC]x100(式中、RC+及びRC-は、正及び負の対照の比である665/620である。このレシオ測定(ratiometric measurement)によって、アッセイマトリックス若しくはスクリーニング化合物によって誘導される蛍光干渉を補正することができる。
【0142】
細胞系:線維芽細胞系である、LD9細胞(マハール S.(Mahal S.)ら、Proc Natl Acad Sci、米国、2007年、104(52):20908~13)。この細胞系は、培地へのPrPの排出が少なく、従って、神経芽細胞腫細胞と比較して、低いPrPのバックグランドシグナルを呈示する。
【0143】
薬理学的対照:ERからゴルジ体へのタンパク質の輸送を阻害する化合物である、ブレフェルジンA(ネベンフール A.(Nebenfuhr A.)ら、Plant physiology、2002年、130:1102~8)。
【0144】
その他のアッセイ条件:最適インキュベーション時間は、化合物については24時間、抗体について3時間である。最適な抗体濃度(1Xと称する)は0.33μg/ml(D18-d2)及び0.036μg/ml(SAF32-Tb)である。
【0145】
実施例1:化合物のスクリーニング
384ウェルフォーマットにおけるアッセイを用いて、主にFDA承認薬を含む1280化合物のライブラリーである、米国医薬品コレクションをスクリーニングした。このライブラリーを20μM濃度でスクリーニングした。38の化合物が、スクリーニング閾値として選択した50%超のPrP発現低減を示した。次に、細胞生存能アッセイを用いて、ライブラリーをカウンタースクリーニングすることにより、毒性化合物を明らかにした。38の候補ヒットのうち9つが、10%未満毒性を呈示し、これらをヒットと見なした(図3)。従って、ヒット率は、0.7%であった。
【0146】
上記のヒットを確認するために、細胞表面PrPレベルを独立の方法によって測定した。細胞を化合物に暴露し、PBSで洗浄し、モノクローナル抗体D18で、+4℃にて1時間標識してから、4%PFAで固定した後、アレキサ(Alexa)-488標識二次抗体を添加することにより、PrP抗体を明らかにした。次に、細胞表面PrPの減少は、落射蛍光顕微鏡下で視覚化して、フローサイトメトリー又はイIN Cell Analyzer1000若しくは2000(GEライフサイエンシズ社)などのハイコンテント細胞下分析システムのいずれかによって定量することができる。9ヒットのうち6つを確認したが、これは、一次アッセイが、細胞表面でのPrPレベルを再現可能に低減するヒットをもたらすことを示している。更に、生存生物におけるプリオンの最終標的は脳であるため、神経細胞付近の細胞型に対する化合物の活性を証明することが重要である。6つの化合物は全て、神経芽細胞腫細胞(N2a)上のPrPレベルを低減した。タクロリムス(Tacrolimus)の活性を1例として図4(A)~(D)に示す。タクロリムス(Tacrolimus)は、フローサイトメトリー及びイン・セル・アナライザー(IN Cell analyzer)定量によって、それぞれ、一次アッセイ(LD9細胞上)において、20μMで70%PrPを低減し、また、二次アッセイ(N2a細胞上)において、30μMで75及び73%低減した。
【0147】
他の活性化合物は、アステミゾール(Astemizole)、ラサロシドナトリウム、モネンシン(Monensin)、エメチン(Emetine)及びセトリモニウムであった。アステミゾール(Astemizole)及びラサロシドナトリウムによるPrP低減の定量を図5(A)(B)に示す。
【0148】
カウンター-スクリーニング:毒性化合物は、細胞表面PrPシグナルの強度の人為的低下を引き起こすため、排除する。この目的のために、図3に示すように、ハイスループット発光細胞生存能アッセイであるセルタイター-グロ(登録商標)(プロメガ)を用いることができる。セルタイター-グロ(登録商標)試薬の添加によって、細胞溶解が起こり、ATPの量に比例する、610nmでの発光シグナルが発生したが、これは、培養中の生存細胞の数を表している。
【0149】
化合物優先順位付け:一次スクリーニングで得られたヒットから最良の化合物を選択するために、以下の戦略を用いることができる:(1)最も高いPrP低減効果をもたらす化合物の選択。(2)最も低い濃度でPrP低減効果をもたらし、かつ神経細胞に対して最少の毒性を有する化合物の選択。このために、例えば、既述したアッセイ(IF及びセルタイター-グロ)を用いて、N2a細胞について、EC50及びTC50を決定しなければならない。(3)PrPについて最も高い特異性を呈示する化合物の選択。ある化合物が優れた治療指数を達成するのに、PrPに対する完全な特異性は要求されないが、これは、化合物選択の基準として用いることができる。ニューロンの表面に発現される他のマーカー、例えば、限定されないが、アミロイド前駆体タンパク質(APP)及びCD24(熱安定性抗原若しくはネクタドリンとも呼ばれる)は、細胞表面PrPの検出に用いたものと同じ方法を用いて、IFにより検出する。細胞を化合物で処理した後、他のタンパク質の低減の程度とPrPのそれを比較する。(4)プリオン感染細胞を治癒すると共に、プリオンによる細胞感染を予防する最も高い能力を示す化合物の選択。選択した化合物は、ウェスタンブロット又はスクレイピー細胞アッセイ(Scrapie Cell Assay)(SCA)(クロエーン P.C.(Kloehn P.C.)ら、Proc Natl Acad Sci、米国、2003年、100(20):11666~71)を用いて、プリオン感染細胞におけるプリオン複製を阻害するそれらの能力について試験することができる。これらのアッセイでは、そのPrPSc含量によって、感染細胞を検出する。細胞培養物の総PrPSc含量を細胞溶解物のウェスタンブロットによって測定することができ、感染細胞は、SCA中の「スポット」として記録することができる)。図6は、細胞表面PrPの約50%を除去する濃度である、1μm/mlで、酵素ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PIPLC)(細胞表面から、GPIアンカータンパク質、従って、PrPを切断する酵素)によるRMLスクレイピー感染PK1細胞の治癒効果を示す。図7(A)(B)は、図4(A)~(D)及び図5(A)(B)に示すように細胞表面PrPを低減する、本明細書に記載の方法を用いてスクリーニングした2つの化合物である、タクロリムス(Tac)及びアステミゾール(Ast)が、RML及び22LプリオンによるPK1神経芽細胞腫細胞の感染を阻止することを示している。PK1細胞は、表示用量の薬剤で3日間前処理した後、PML又は22L感染マウスからの脳ホモジネートの10-4希釈物を用いて、PML(図7(A))又は22L(図7(B))に感染させた。処理は、感染後12日間継続した。感染から9及び18日後(即ち、処理停止の3日前及び停止から6日後)、プロテイナーゼK-耐性PrPSc(プリオン感染の特徴)について、ウェスタンブロットにより、細胞を分析した。プリオン感染を予防する薬剤である、PPS(ポリ硫酸ペントサン)を治療効果の正の対照として、10μm/mlの用量で用いた。CTRLは、非処理細胞。アステミゾール及びタクロリムスはいずれも、プリオン感染を阻害し、処理停止後、感染性の反動はなかった。
【0150】
細胞表面PrP発現を阻害する分子をスクリーニングするこれらの方法は、プリオン病の分野を超えて意味がある。実際に、PrPは、トランスジェニックアルツハイマーマウスにおいて、Aβオリゴマー誘導神経毒性及び記憶障害を媒介することが証明されている(ローレン(Lauren)ら、Nature、2009年、457(7233):1128~32)。従って、PrP量を低減する化合物は、アルツハイマー病におけるAβ誘導神経変性を予防しうる。図8(A)~(E)は、Aβオリゴマーが、SK-KSH細胞については毒性であるが、PrPを発現しないSK-NSH誘導細胞系である、SH-SY5Yについては毒性ではないことを示している。
【0151】
1つ以上の実施に関して、本発明を例示し、説明してきたが、本明細書及び添付の図面を読み、理解すれば、同等の改変及び変更は当業者によって容易に実施されるであろう。更に、本発明の具体的特徴を複数の実施のただ1つについて開示した場合もあるが、こうした特徴は、いずれか所与の、又は具体的用途について所望され、また有利であれば、他の実施の1つ以上の別の特徴と組み合わせてもよい。
【0152】
要約は、読者が技術的開示内容の性質をすぐに認識できるように提供されるものであり、以下の特許請求の範囲又は意味を解釈若しくは限定するのに用いられるものではないという理解の下に提供される。
【0153】
本開示には以下が包含される。
[付記1]サンプル中の特定の標的分子を同定及び定量する方法において、標的分子との結合用に、検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを試験及び選択するか、あるいは、標的分子との結合用に、検出可能な標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを選択し、(i)第1の検出可能な標識を有する第1のリガンド及び第2の検出可能な標識を有する第2のリガンドを添加するステップと、(ii)前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドの各々が特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを備えるが、(iii)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで前記特定の標的分子を含有するサンプルをスクリーニングし、前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときに放出される光を検出し、それによってサンプル中の前記特定の標的分子を同定及び定量することを備える、方法。
【0154】
[付記2]前記検出可能な標識は、蛍光団、発光分子、酵素又は放射性核種を含む、付記1に記載の方法。
[付記3]前記光が、蛍光、化学発光、又は生物発光を含む、付記1に記載の方法。
【0155】
[付記4]前記第1及び第2リガンドが、抗体、抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、ヒト化抗体及び抗体フラグメント、ラクダ化抗体及び抗体フラグメント、ヒト抗体及び抗体フラグメント、単一特異性抗体若しくは二重特異性抗体、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((scFv)フラグメント)、ダイアボディ、トリボディ若しくはテトラボディ、ペプトイド、ペプチド若しくは核酸アプタマー、抗体模倣剤、又はこれらの組合せを含む、付記1に記載の方法。
【0156】
[付記5]前記方法が、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)又は蛍光偏光アッセイを備えるハイスループットスクリーニングアッセイである、付記1に記載の方法。
【0157】
[付記6]前記特定の標的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片、タンパク質、タンパク質断片群、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、付記1に記載の方法。
【0158】
[付記7]前記特定の標的分子はサンプル中に存在するものであり、当該サンプルが、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクト細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含む、付記1に記載の方法。
【0159】
[付記8]前記第1及び第2リガンドが、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、抗体模倣剤、一本鎖抗体、核酸、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、付記1に記載の方法。
【0160】
[付記9]前記第1及び第2リガンドが、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、付記8に記載の方法。
[付記10]前記第1及び第2リガンドが、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、付記8に記載の方法。
【0161】
[付記11]サンプル中の特定タンパク質を定量する方法であって、ドナー蛍光団の励起に適した波長で前記サンプルが照射されることを可能にするとともにハイスループットアッセイによりアクセプター蛍光団の蛍光の測定を可能にする容器に、特定の標的分子を含有する前記サンプルを導入するステップと、前記標的分子上の特定の部位に結合する第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である第1蛍光団に連結している第1のリガンドを添加するステップと、前記第1のリガンドが結合するものとは別の同じ標的分子上の特定の部位に結合する第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である第2蛍光団に連結している第2のリガンドを添加するステップと、両リガンドに結合した標的分子を含有するサンプルを前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された光の強度を測定し、それによって前記特定タンパク質を定量するステップとを備える、方法。
【0162】
[付記12]前記放射された光の強度は時間分解蛍光測定によって測定される、付記11に記載の方法。
[付記13]前記標的分子は支持体表面に結合していない、付記11に記載の方法。
【0163】
[付記14]前記標的分子は支持体表面に結合している、付記11に記載の方法。
[付記15]前記アクセプター蛍光団がフェルスター半径によって定義される距離以下の距離だけ前記ドナー蛍光団から離れた位置にあるとき、励起が前記アクセプター蛍光団に移動される、付記11に記載の方法。
【0164】
[付記16]前記容器は、前記ドナー蛍光団の波長での照射と前記アクセプター蛍光団の波長での測定とを可能にする、キュベット、マルチウェルプレート、チューブ、フラスコ、ディスク、ビーズ、バイアル、カセット、フローセル、カートリッジ、マイクロ流体チップ、又はこれらの組合せを含む、付記11に記載の方法。
【0165】
[付記17]前記標的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、付記11に記載の方法。
【0166】
[付記18]標的は、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクトな細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含むサンプル中に存在している、付記11に記載の方法。
【0167】
[付記19]標的上の異なる非オーバーラップ部位であるエピトープに特異的に結合する前記第1及び第2リガンドは、抗体若しくはエピトープ結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、抗体模倣剤、ペプトイド、アプタマー、ポリペプチド又は核酸を含む、付記11に記載の方法。
【0168】
[付記20]前記第1及び第2リガンドは、ポリペプチド、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、付記11に記載の方法。
[付記21]前記第1及び第2リガンドは、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、付記20に記載の方法。
【0169】
[付記22]前記第1及び第2リガンドは、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、付記20に記載の方法。
[付記23]前記方法は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、又は蛍光偏光アッセイを含むハイスループットスクリーニングアッセイである、付記11に記載の方法。
【0170】
[付記24]候補治療化合物をスクリーニングする方法において、(i)特定の標的分子を含有するサンプルを候補治療化合物に接触させるステップと、(ii)各々が第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識を有する第1のリガンド及び第2のリガンドを添加するステップと、(iii)前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドの各々が特定の標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを含むが、(iv)洗浄ステップが省略されているハイスループットスクリーニングアッセイで前記サンプルをスクリーニングし、前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定の標的分子に特異的に結合したときに発する光を検出し、対照に比べて前記標的分子の量を調節する化合物を選択し、それによって、候補治療化合物をスクリーニングすることを備える、方法。
【0171】
[付記25]候補治療薬は、発光によって測定されるような、標的分子の機能、活性又は発現を調節する、付記24に記載の方法。
[付記26]候補治療化合物をスクリーニングする方法であって、ドナー蛍光団の励起に適した波長でのサンプルの照射とハイスループットアッセイによるアクセプター蛍光団の蛍光の測定とを可能にする容器に特定の標的分子を含有するサンプルを導入するステップと、前記サンプルと前記候補治療化合物とを接触させるステップと、前記標的分子上の特定の部位に結合する第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である第1蛍光団に連結している第1のリガンドを添加するステップと、前記第1のリガンドが結合するものとは別の、同じ標的分子上の特定の部位に結合する第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である第2蛍光団に連結している第2のリガンドを添加するステップと、前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で、両リガンドに結合した標的分子を含有するサンプルを照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された光の強度を測定するステップと、対照に比べて前記標的分子の量を調節する化合物を選択し、それによって、候補化合物をスクリーニングするステップとを備える、方法。
【0172】
[付記27]候補治療薬は、発光によって測定されるような、標的分子の機能、活性又は発現を調節する、付記26に記載の方法。
[付記28]付記24又は26に記載の方法によって同定される化合物であって、標的分子の量を調節する化合物。
【0173】
[付記29]前記化合物が、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、糖タンパク質、炭水化物、有機若しくは無機分子、単離された天然分子、合成分子、小分子、又はこれらの組合せを含む、付記28に記載の化合物。
【0174】
[付記30]付記24又は26に記載の方法によって同定される化合物を含む医薬組成物。
[付記31]疾患又は障害を診断する方法であって、付記1又は11に記載の方法によって、患者からの生体サンプルをスクリーニングするステップと、特定の疾患又は障害の特徴を示すマーカー若しくは分子を同定することおよび定量することのうちの少なくとも1つを含むステップと、前記疾患又は障害を診断するステップと、を備える、方法。
【0175】
[付記32]疾患又は障害を発症する危険性がある被検者を特定する方法であって、付記1又は11に記載の方法に従って患者からの生体サンプルをスクリーニングするステップと、特定の疾患又は障害の特徴を示すマーカー若しくは分子を同定することおよび定量することのうちの少なくとも1つを含むステップと、前記疾患又は障害を発症する危険性がある被検者を特定するステップとを備える、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の特定標的分子を同定及び定量する方法において、
標的分子との結合用の、検出可能標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを試験及び選択すること、または、標的分子との結合用の、検出可能標識に結合された1つの第1のリガンド又は複数の第1のリガンド及び1つの第2のリガンド又は複数の第2のリガンドを選択することと、
(i)第1の検出可能標識を有する1のリガンド及び第2の検出可能標識を有する第2のリガンドを添加するステップと、(ii)前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが特定標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを備えるが、(iii)洗浄ステップを必要としないハイスループットスクリーニングアッセイで前記特定標的分子を含有するサンプルをスクリーニングすることと、
記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定標的分子に特異的に結合したときの光の放出を検出することを備え
上記のことによってサンプル中の前記特定標的分子を同定及び定量する、方法。
【請求項2】
前記検出可能標識は、蛍光団、発光分子、酵素又は放射性核種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光が、蛍光、化学発光、又は生物発光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のリガンドまたは前記第2のリガンドが、抗体、抗体フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、ヒト化抗体及び抗体フラグメント、ラクダ化抗体及び抗体フラグメント、ヒト抗体及び抗体フラグメント、単一特異性抗体若しくは二重特異性抗体、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((scFv)フラグメント)、ダイアボディ、トリボディ若しくはテトラボディ、ペプトイド、ペプチド若しくは核酸アプタマー、抗体模倣剤、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)又は蛍光偏光アッセイを備えるハイスループットスクリーニングアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記特定標的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片、タンパク質、タンパク質断片群、ペプチド、ペプチド核酸、核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特定標的分子はサンプル中に存在するものであり、当該サンプルが、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクト細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、抗体模倣剤、一本鎖抗体、核酸、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
サンプル中の特定タンパク質を定量する方法であって、
ハイスループットアッセイによる前記ドナー蛍光団の励起に適した波長での前記サンプルの照射と前記アクセプター蛍光団の蛍光の測定とを可能にする容器に前記特定タンパク質を含有する前記サンプルを導入するステップと、
前記標的分子上の特定部位に結合する第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である第1蛍光団に連結している第1のリガンドを添加するステップと、
同じ標的分子上の、前記第1のリガンドが結合するものとは別の特定部位に結合する第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である第2蛍光団に連結している第2のリガンドを添加するステップと、
両リガンドに連結した前記標的分子を含有する前記サンプルを前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された光の強度を測定するステップとを備え
上記のことによって前記特定タンパク質を定量する、方法。
【請求項12】
前記放射された光の強度は時間分解蛍光測定によって測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記的分子は支持体表面に付着していない、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記標的分子は支持体表面に付着している、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アクセプター蛍光団がフェルスター半径によって定義される距離以下の距離だけ前記ドナー蛍光団から離れた位置にあるとき、励起が前記アクセプター蛍光団に移動される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記容器は、前記ドナー蛍光団の波長での照射と前記アクセプター蛍光団の波長での測定とを可能にする、キュベット、マルチウェルプレート、チューブ、フラスコ、ディスク、ビーズ、バイアル、カセット、フローセル、カートリッジ、マイクロ流体チップ、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記的分子が、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、タンパク質断片、タンパク質、ペプチド、ペプチド核酸、核酸、合成巨大分子または天然巨大分子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
記標的は、液体、半液体、ゲル、生体サンプル、インタクトな細胞、透過処理済細胞、破砕細胞、細胞ホモジネート、膜、又は細胞小器官を含むサンプル中に存在している、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
記標的上複数の異なる非オーバーラップ部位である複数のエピトープに特異的に結合する前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、抗体若しくはエピトープ結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、抗体模倣剤、ペプトイド、アプタマー、ポリペプチド又は核酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、ポリペプチド、アプタマー、ペプトイド若しくは糖部分、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、ペプチドアプタマー又は核酸アプタマーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸又はコンドロイチン硫酸を含む糖部分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)又は蛍光偏光アッセイを含むハイスループットスクリーニングアッセイである、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
候補治療化合物をスクリーニングする方法において
特定標的分子を含有するサンプルをハイスループットスクリーニングアッセイでスクリーニングすることであって、(i)前記サンプルを前記候補治療化合物に接触させるステップと、(ii)第1の検出可能標識を有する第1のリガンド及び第2の検出可能標識を有する第2のリガンドを添加するステップと、(iii)前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが特定標的分子上の別々の特定の部位に結合するステップとを含むが、(iv)洗浄ステップを必要としない前記ハイスループットスクリーニングアッセイで前記特定標的分子を含有する前記サンプルをスクリーニングすることと
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドが前記特定標的分子に特異的に結合したときの光の放出検出することと、
対照に比べて前記標的分子の量を調節する化合物を選択することを備え
上記のことによって候補治療化合物をスクリーニングする、方法。
【請求項25】
前記候補治療化合物は、前記光の放出によって測定され記標的分子の量、機能、活性又は発現を調節するものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
候補治療化合物をスクリーニングする方法であって、
ハイスループットアッセイによる前記ドナー蛍光団の励起に適した波長での前記サンプルの照射と前記アクセプター蛍光団の蛍光の測定とを可能にする容器に、特定標的化合物を含有する前記サンプルを導入するステップと、
前記サンプル前記候補治療化合物接触させるステップと、
記標的分子上の特定部位に結合する第1のリガンドであって、前記ドナー蛍光団である第1蛍光団に連結している前記第1のリガンドを添加するステップと、
同じ標的分子上の、前記第1のリガンドが結合するものとは別の特定部位に結合する第2のリガンドであって、前記アクセプター蛍光団である第2蛍光団に連結している前記第2のリガンドを添加するステップと、
前記ドナー蛍光団を励起するのに最適な波長で、リガンドに結合した前記標的分子を含有する前記サンプルを照射し、前記アクセプター蛍光団によって放射された光の強度を測定するステップと、
対照に比べて前記標的分子の量を調節する化合物を選択するステップとを備え
上記のことによって候補化合物をスクリーニングする、方法。
【請求項27】
前記候補治療化合物は、前記放射された光によって測定される標的分子の量、機能、活性又は発現を調節するものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
記標的分子はプリオンタンパク質(PrP)またはその断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標的分子はタウタンパク質またはその断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
候補治療化合物は、アステミゾール、タクロリムス、ラサロシドナトリウム、モネンシンナトリウム、エメチン、またはセトリモニウムを含む、請求項28に記載の方法。