(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029176
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】腫瘍治療を改善するための、腫瘍微小環境における代謝モジュレーターの発現
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240227BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20240227BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240227BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/65 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/62 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/525 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20240227BHJP
C07K 14/555 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/24 20060101ALI20240227BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20240227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N7/01 ZNA
C12N15/115 Z
C07K16/28
C07K16/18
C07K19/00
C07K14/65
C07K14/62
C07K14/54
C07K14/525
C07K14/46
C07K14/555
C12N15/19
C12N15/24
A61K35/768
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000160
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2020540432の分割
【原出願日】2019-01-28
(31)【優先権主張番号】62/622,547
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ エム. デルゴフ
(72)【発明者】
【氏名】ダヤナ リヴァデネイラ
(72)【発明者】
【氏名】パドマヴァティ サンパース
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エイチ. ソーン
(57)【要約】
【課題】腫瘍治療を改善するための、腫瘍微小環境における代謝モジュレーターの発現の提供。
【解決手段】1つまたは複数の代謝モジュレータータンパク質、例えば、アディポカイン(例えば、レプチンまたはケメリン)、インスリンおよび/またはIGF-1を発現する組換え腫瘍溶解性ウイルス(OV)、ならびに例えば免疫療法抗がん処置における、がんを処置するためのそれらの使用の方法。一部の例では、かかる組換えOVおよび方法は、腫瘍または腫瘍微小環境中へのT細胞浸潤を増加させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が本明細書で参照により組み込まれる、2018年1月26日出願の米国仮出願第62/622,547号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、1つまたは複数の代謝モジュレータータンパク質、例えばレプチンを発現する組換え腫瘍溶解性ウイルス(OV)、それを含むキット、およびがんを処置するためのそれらの使用の方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
がん処置としての免疫療法に関連する成功は、腫瘍部位における免疫活性を理解しそれをモジュレートすることを主要な焦点にした、がん研究および臨床実務の両方において大きな転換をもたらしている。しかし、単剤免疫療法の現実は、患者の大部分が長期の持続的な利益を経験しないということである。この抵抗性は、複数の理由で生じる可能性があるが、1つは、T細胞を腫瘍に動員できないことであり、他は、腫瘍微小環境におけるT細胞機能を制限する、より優勢な免疫抑制機構である(Sharma et al., Cell 2017; 168(4):707-23)。したがって、これらの抵抗性機構を克服できる新たな治療様式が必要とされている。
レプチンは、強力な代謝リプログラミング機能、例えば、グルコースおよび脂肪酸化ならびにミトコンドリア新生の促進を有するカノニカルなアディポカインである。しかし、今日まで、免疫におけるレプチンの研究は、治療的であることの確認に至ったことはなく、がん治療に関してはなおさらである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sharma et al., Cell 2017; 168(4):707-23
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによって誘導される高悪性度黒色腫の浸潤物が、本明細書で提供される。腫瘍溶解性ウイルスは、ロバストな腫瘍浸潤物の浸潤を促進するが、代謝不全に一部起因して、完全奏効を促進するにあたって最終的には無効であることが示されている。腫瘍浸潤性T細胞の代謝リプログラミングを促進することによって、観察された代謝不全を克服するためのツールとしてのレプチンの有用性が、本開示の一部の実施形態において実証される。レプチンを腫瘍微小環境において局所的に上昇させる新規黒色腫モデルを使用して、代謝リプログラミングに関連する強力なT細胞活性化および腫瘍制御が観察された。さらに、使用されるワクシニアウイルスは、レプチンを遺伝的に発現し、それを腫瘍微小環境に送達するように操作された。この治療は、野生型ウイルスと比較して、治療的完全奏効をもたらした。レプチン発現性ワクシニアウイルスは、腫瘍細胞を溶解させて新たなT細胞浸潤の刺激をもたらし、同時に、レプチンの局所的分泌を介してその浸潤物の活性を代謝的に支持もする。
【0006】
一部の実施形態では、腫瘍中へのT細胞の代謝リプログラミングを誘導することが可能な、例えば、腫瘍におけるT細胞の増強された浸潤を生じることが可能な、または腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答をモジュレートすることが可能な1つまたは複数のタンパク質をコードし得る核酸分子を含み得る組換え腫瘍溶解性ウイルス(OV)が、本明細書で提供される。例えば、一部の場合には、OVは、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質(metabolic modulating protein)(例えば、ホルモン、例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、アディポネクチン、アペリン、ケメリン(chemerin)、インターロイキン-6(IL-6)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、ビスファチン、オメンチン、バスピン(vaspin)、プログラニュリンまたはCTRP-4)、インスリンおよび/またはインスリン様成長因子1(IGF-1))をコードし得る1つまたは複数の核酸分子を含み得る。一部の例では、核酸は、プロモーターに作動可能に連結され得る。OVの例には、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えば、T-VEC)、ワクシニアウイルス(例えば、Western Reserve株)、アデノウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、セネカバレー(Seneca valley)ウイルス、ECHOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルスまたはパロウイルス(parovirus)が含まれる。一部の例では、組換えOVは、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する組換えタンパク質を発現する。一部の例では、組換えOVは、配列番号1、3、5または7に対して少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する、代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子を含む。一部の例では、組換えOVによって発現される代謝をモジュレートするタンパク質(複数可)は、融合タンパク質、例えば、2つの部分:(1)代謝をモジュレートするタンパク質、および(2)第2のタンパク質(例えば、サイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび/または腫瘍壊死因子)を含む融合タンパク質の一部である。一例では、融合タンパク質は、そのN末端に代謝をモジュレートするタンパク質を有し、そのC末端にサイトカインを有する。一部の例では、融合タンパク質の2つの部分は、リンカー(例えば、GSGペプチド)によって結合される。具体的な例では、組換えOVは、レプチン-リンカー-IL-2、レプチン-IL-2、レプチン-リンカー-IL-15またはレプチン-IL-15を含む融合タンパク質を発現する。
【0007】
腫瘍もしくは腫瘍微小環境、またはその両方中へのT細胞浸潤を増加させる、対象における腫瘍を処置する方法もまた提供される。一部の例では、かかる方法は、治療有効量の本明細書に開示される1つまたは複数の組換えOVを、対象に投与し、それによって、腫瘍を処置するステップを含む。一部の例では、かかる方法は、治療有効量の1つもしくは複数の代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよび/またはインスリン様成長因子1)またはタンパク質(複数可)をコードする核酸分子を、対象に投与し、それによって、腫瘍を処置するステップを含む。一部の例では、腫瘍は、がん、例えば、肺、乳房、前立腺、肝臓、膵臓、皮膚、結腸、頭頸部、腎臓、子宮頸部または卵巣のがんである。具体的な例では、がんは、黒色腫である。具体的な例では、がんは、乳がんである。かかる方法は、治療有効量の(therapeutically effect amount of)1つまたは複数のさらなる治療、例えば、さらなる抗がん剤、例えば、化学療法、放射線療法、生物製剤、手術、またはそれらの組合せを投与するステップをさらに含み得る。一例では、抗がん剤には、1つもしくは複数の免疫調節剤、例えば、PD-1のアンタゴニスト、PD-L1のアンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよびT細胞アゴニスト(例えば、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニスト、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子(TNF)受容体(GITR)のアゴニスト)、またはそれらの組合せが含まれる。一例では、抗がん剤には、T細胞アゴニスト、例えば、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニストまたはGITRのアゴニスト(例えば、免疫チェックポイントタンパク質、例えば、上に列挙したタンパク質のうちの1つに対して特異的なモノクローナル抗体(mAb)、これらのタンパク質のうちの1つのリガンド、またはこれらのタンパク質のうちの1つのアプタマー)が含まれる。
【0008】
(1)本明細書で提供される1つまたは複数の組換えOV、ならびに(2)免疫調節剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)、例えば、PD-1のアンタゴニスト、PD-L1のアンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよびT細胞アゴニスト(例えば、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニストまたはGITRのアゴニスト)のうちの1つまたは複数を含み得るキットおよび組成物もまた提供される。キットの成分は、別々のコンテナ中にあり得る。一部の例では、キットは、(1)本明細書で提供される1つまたは複数の組換えOV、および(2)T細胞アゴニスト(例えば、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニスト、GITRのアゴニスト、またはそれらの組合せ)を含む。一部の例では、組成物は、(1)本明細書で提供される1つまたは複数の組換えOV、および(2)1つまたは複数のT細胞アゴニスト(例えば、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニストまたはGITRのアゴニスト)を含む。かかる組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。一部の例では、かかる組成物(such as composition)は、凍結乾燥される。一部の例では、かかる組成物は、コンテナ、例えば、ガラスまたはプラスチックコンテナ中に存在する。
【0009】
本開示の上述のおよび他の目的および特色は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】
図1A~1Cは、Ptenf/fBrafLSL-V600ETyrCre.ERT2マウスからのクローン24の生成、およびCL24レプまたはCL24ハイグロ保有マウスからのCD8+T細胞の枯渇を示す図である。(A)C57BL/6Jマウスは、CL24を注射したマウス由来であった。LNおよびTIL由来のCD8+T細胞についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。(B)C57BL/6Jマウスは、CL24を注射したマウス由来であった。次いで、腫瘍を、一日おきに抗PD1で処置し、腫瘍成長をモニタリングした。LNおよびTILにおけるCD8およびCD4染色の代表的なフローサイトグラム。(C)C57BL/6Jマウスを、抗CD8(200ug)で一日おきに処置した。6日目に、マウスに、CL24ハイグロまたはCL24レプチンのいずれかを注射した。
【0011】
【
図2-1】
図2A~2Cは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、レプチン発現の操作を介して増強され得る強力な免疫刺激活性を有することを示す図である。(A)C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、2.5×10
6PFUの対照ワクシニアウイルス(VV
対照)で腫瘍内処置し、腫瘍成長をモニタリングした。各線は、個々のマウスを示す。(B)4000細胞の、(A)のように処置したCD45+選別された細胞についての単一細胞RNA-seqデータ。細胞を、7日目に抽出した。データを、Seuratプログラムを介した教師なしクラスタリングによって生成した。(C)PBSおよびVV
対照処置したマウスのt-SNE分析。データは、1条件当たりn=2を示す。
【0012】
【
図3-1】
図3A~3Cは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスで処置したTILからの単一細胞RNA配列決定分析を示す図である。(A、B)異なるリンパ球集団を規定する遺伝子のフィーチャプロット。紫色の強度は、遺伝子発現の正規化されたレベルを示した。(C)Seurat(SLMクラスタリング)を使用してクラスタリングされた、PBS、VV対照またはVV
レプチン処置後のCD45+TILからのトランスクリプトーム(1条件当たりn=2)。各欄は、各クラスター間で最も示差的に発現された所与の遺伝子(the give genes)を有する細胞を示す。
【0013】
【
図4-1】
図4A~4Dは、レプチン受容体が腫瘍浸潤性T細胞において上方調節されること、およびレプチンが代謝リプログラミングが可能であることを示す図である。C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、対照ワクシニアウイルス(VV
対照)で腫瘍内処置した。(A)(A)のように処置したマウスからのLNおよびTILに対するCD8およびCD4発現分析。LNおよびTILにおけるCD8およびCD4染色の代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータ。(B)(A)のように処置したマウスからの、阻害分子PD1およびTIM3の発現。LNおよびTILにおけるPD1およびTim3染色の代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータ。(C)CD8+T細胞上の代表的なヒストグラムPD1発現、および表形式のデータ。(D)(A)のように処置したマウス由来のCD8+T細胞におけるmitotracker染色によって分析したミトコンドリア含量。LNおよびTILにおける2NBDG染色に対するmitotrackerの代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。対応のあるt検定によって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0014】
【
図5-1】
図5A~5Eは、レプチン受容体が腫瘍浸潤性T細胞において上方調節されること、およびレプチンが代謝リプログラミング可能であることを示す図である。(A)抗CD28(2ug/mL)の存在下で24時間にわたり、3ug/mの固定化された抗CD3で活性化されたCD8+T細胞の代表的なOCRトレースならびに表形式のOCRおよび予備呼吸能(SRC)。細胞を、0.0、0.1および1.0nMのマウス組換えレプチンで24時間処理した。(B)(A)のように処理した細胞についての代表的なECARトレース。(C)(A)のように処置したマウス由来のCD8+T細胞における、mitotracker染色によって分析したミトコンドリア含量および2NBDG染色によるグルコース取込み。LNおよびTILにおける2NBDG染色に対するmitotrackerの代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータ。(D)腫瘍保有マウス由来の、マウスリンパ節(LN)由来のCD8+T細胞および腫瘍浸潤性CD8+T細胞(TIL)のレプチン受容体染色。(E)LNおよびTIL中のCD8+T細胞におけるPD1およびTim3の、レプチン受容体発現染色。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。対応のないt検定によって
*p<0.05。エラーバーは、s.e.m.を示す。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。対応のあるt検定によって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0015】
【
図6-1】
図6A~6Fは、腫瘍細胞におけるレプチン過剰発現の特徴付けおよび腫瘍微小環境における効果を示す図である。(A)対照プラスミド(CL24
ハイグロ)およびマウスレプチン遺伝子プラスミド(CL24
レプチン)で安定に形質導入されたCL24細胞系のマウスレプチンタンパク質発現のイムノブロット分析。(B)対照プラスミドおよびレプチン遺伝子で形質導入された細胞の培地中のレプチンのELISA分析。(C)CL24
ハイグロ細胞系とCL24
レプチン細胞系との間でのin vitro成長分析。(H)CL24
ハイグロおよびCL24
レプチンを注射したマウスからのLNおよびTILに対する、それぞれナチュラルキラー細胞およびB細胞についてのNK1.1およびB220分析。(D)C57BL/6Jマウスを、抗CD8(200ug)で一日おきに処置した。6日目に、マウスに、CL24
ハイグロまたはCL24
レプチンのいずれかを注射し、腫瘍成長をモニタリングした。リンパ節(LN)におけるCD8およびCD4発現分析。(E)LNおよびTILにおけるNK1.1およびB220染色についての代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータが示される。(F)pSTAT3、pAKTおよびpp38MAPK発現について分析した、CL24
ハイグロおよびCL24
レプチンを注射したマウスからのLNおよびTIL由来のCD8+T細胞についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。二元配置ANOVAによって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0016】
【
図7-1】
図7A~7Gは、がん細胞におけるレプチンの発現が、免疫媒介性腫瘍制御をもたらし、腫瘍浸潤性リンパ球の機能を代謝的に改善することを示す図である。(A)CL24ハイグロおよびCL24レプチンを、C57BL/6Jマウスに真皮下注射し、腫瘍成長をモニタリングした。各線は、個々のマウスを示す。(B)(A)のように処置したマウスの生存プロット。(C)C57BL/6Jマウスを、抗CD8(200ug)で一日おきに処置した。6日目に、マウスに、CL24ハイグロまたはCL24レプチンのいずれかを注射し、腫瘍成長をモニタリングした。(D)CL24ハイグロおよびCL24レプチンを注射したマウスからのLNおよびTILに対するCD8およびCD4発現分析。LNおよびTILにおけるCD8およびCD4染色の代表的なフローサイトグラム、ならびに表形式のフローサイトメトリーデータ。(E)CL24ハイグロおよびCL24レプチンを注射したマウスからのLNおよびTILの代表的なフローサイトグラム。細胞を、CD8+T細胞のIFNγおよびTNFαについての染色によるサイトカイン産生分析のために、PMAおよびイオノマイシンで一晩刺激した。表形式のフローサイトメトリーデータが示される。(F)Ki67発現ならびに代謝マーカーMitotracker FM染色および2NBDG取込み(G)について分析した、CL24ハイグロおよびCL24レプチンを注射したマウスからのLNおよびTIL由来のCD8+T細胞についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。対応のあるt検定によって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0017】
【
図8-1】
図8A~8Fは、レプチン操作された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが、感染力に影響を与えることなしにレプチン分泌をin vitroおよびin vivoで誘導することを示す図である。(A)2.5×10
6PFUのVVレプチンでin vitroで24時間および48時間処理したCL24細胞系のマウスレプチンタンパク質発現のイムノブロット分析。(B)VVレプチンで処理したCL24細胞の培地中のレプチンのELISA分析。(C)VV対照またはVVレプチンで処置した腫瘍の間質液中のレプチンのELISA分析。白色脂肪組織(WA)由来の間質液を対照として使用した。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。二元配置ANOVAによって
*p<0.05。エラーバーは、s.e.m.を示す。(D)C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、VV対照またはVVレプチンで腫瘍内処置した。24時間後、マウスにルシフェリン(30mg/ml)を10分間IP注射し、in vivo生物発光イメージングを実施した。(E)C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、VV対照またはVVレプチンで腫瘍内処置した。処置後10日目に、リンパ球を、TILから単離した。レプチン受容体(レプチンR)発現についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。エラーバーは、s.e.m.を示す。(F)PBS、VV対照またはVVレプチンを注射したマウスからのLNおよびTIL由来のCD4+Foxp3+T細胞(T調節性細胞)についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。二元配置ANOVAによって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0018】
【
図9-1】
図9A~9Eは、レプチン操作されたワクシニアウイルスが、メモリー様T細胞クローンの蓄積を促進することを示す図である。(A)C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、2.5×10
6PFUのVV対照またはVVレプチンで腫瘍内処置し、腫瘍成長をモニタリングした。各線は、個々のマウスを示す。処置後10日目に、リンパ球を、TILおよびLNから単離した。(B)CD8およびCD4発現についての代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。(C~D)PBS、2.5×10
6PFUのVV対照またはVVレプチンで腫瘍内処置したCL24保有マウスから抽出したゲノムDNAのTCR配列決定(各処置についてn=5)。(C)鋳型総数および生産的再編成。(D)試料のクローン性および平均頻度の分析。(E)マウスを、(A)のように処置した。CD127発現について染色したCD8+T細胞の代表的なヒストグラム(hystogram)および表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。二元配置ANOVAによって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【0019】
【
図10-1】
図10A~10Cは、レプチンが、代謝リプログラミングを介して、腫瘍溶解性ウイルス誘導されたT細胞浸潤を質的に改善することを示す図である。C57BL/6Jマウスに、CL24細胞を真皮下注射した。腫瘍細胞注射の5~7日後、腫瘍を、PBS、VV
対照またはVV
レプチンで腫瘍内処置した。処置後10日目に、リンパ球を、TILおよびLNから単離した。(A)LNおよびTILから単離したCD8+T細胞の代表的なヒストグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータを、ミトコンドリアタンパク質VDACについて分析した。(B)単離されたリンパ球を、PMAおよびイオノマイシンで一晩刺激した。IFNγおよびTNFαについての染色によるサイトカイン産生分析のための代表的なフローサイトグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。(C)Ki67発現について分析した、(A)のように処置したマウスからのLNおよびTIL由来のCD8+T細胞についての代表的なヒストグラムおよび表形式のフローサイトメトリーデータ。データは、少なくとも3回の独立した実験を示す。二元配置ANOVAによって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エラーバーは、s.e.m.を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表
添付の配列表に列挙された核酸およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822で規定される通り、ヌクレオチド塩基について標準的な文字略称を使用し、アミノ酸については3文字コードを使用して示される。各核酸配列の一方の鎖のみが示されるが、相補鎖は、示された鎖への任意の言及によって含まれると理解される。2018年1月28日に作成された、32kbを有する本明細書で提出された配列表は、本明細書で参照により組み込まれる。
【0021】
配列番号1および2:それぞれ、例示的なヒトレプチンの核酸およびタンパク質配列(それぞれ、GenBank(登録商標)受託番号NM_000230.2およびNP_000221.1を参照のこと)。コード配列は、配列番号1のnt58~561である。シグナルペプチドは、配列番号2のaa1~21であり、成熟ペプチドは、aa22~167である。
【0022】
配列番号3および4:それぞれ、例示的なヒトインスリンの核酸およびタンパク質配列(それぞれ、GenBank(登録商標)受託番号AH002844.2およびAAA59172.1を参照のこと)。コード配列は、配列番号3のnt2424..2610、3397..3542である。シグナルペプチドは、配列番号4のaa1~24であり、成熟ペプチドは、aa25~110である。
【0023】
配列番号5および6:それぞれ、例示的なヒトケメリン(レチノイン酸受容体レスポンダータンパク質2としても公知)の核酸およびタンパク質配列(それぞれ、GenBank(登録商標)受託番号NM_002889.3およびNP_002880.1を参照のこと)。コード配列は、配列番号5のnt118~609である。シグナルペプチドは、配列番号6のaa1~20であり、成熟ペプチドは、aa21~157である。
【0024】
配列番号7および8:それぞれ、例示的なヒトインスリン様成長因子1(IGF-1)の核酸およびタンパク質配列(それぞれ、GenBank(登録商標)受託番号NM_001111283.2およびNP_001104753.1を参照のこと)。コード配列は、配列番号7のnt265~741である。シグナルペプチドは、配列番号8のaa1~21であり、成熟ペプチドは、aa49~118である。
詳細な説明
【0025】
特記しない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes VII, published by Oxford University Press, 1999;Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994;およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995;ならびに他の同様の参考文献において見出され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明確に他を示さない限り、単数ならびに複数の両方を指し得る。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味し得る。したがって、「核酸分子を含む(comprising)」は、他の要素を排除することなく、「核酸分子を含む(including)」を意味し得る。核酸について与えられる任意のおよび全ての塩基サイズはおおよそであり、特記しない限り、説明目的で提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な多くの方法および材料が使用され得るが、特定の適切な方法および材料は、以下に記載される。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定は意図しない。特許出願および特許、ならびに列挙したGenBank(登録商標)受託番号(2018年1月26日現在)に関連する配列を含む全ての参考文献は、本明細書で参照により組み込まれる。
本開示の種々の実施形態の精査を促進するために、具体的な用語の以下の説明が提供される:
【0027】
投与:任意の有効な経路によって、開示される組換えOVまたは他の治療剤(例えば、抗がん剤)などの薬剤を、対象に提供することまたは与えること。投与の例示的な経路には、注射(例えば、皮下、真皮下、筋肉内、真皮内、腹腔内、腫瘍内および静脈内)、経皮、鼻腔内、経口、膣、直腸および吸入経路が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
がん:異常なまたは制御されない細胞成長によって特徴付けられる悪性腫瘍。がんにしばしば関連する他の特色には、転移、隣接する細胞の正常な機能の妨害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、および炎症性または免疫学的応答の抑制または悪化、周囲のまたは遠位の組織または臓器、例えば、リンパ節の浸潤などが含まれる。「転移性疾患」は、元の腫瘍部位を離れ、例えば血流またはリンパ系を介して身体の他の部分に遊走するがん細胞を指す。
【0029】
ケメリン:(例えば、OMIM 601973):レチノイン酸受容体レスポンダータンパク質2(RARRES2)としても公知。ケメリンは、Gタンパク質共役受容体CMKLR1に対するリガンドとして作用する化学誘引タンパク質である。脂肪細胞分化およびグルコース取込みにおけるその役割に起因して、ケメリンは、アディポカインとして分類される。ヒトケメリンは、第7染色体上のRARRES2遺伝子によってコードされ、ネイティブタンパク質は約14kDaであり、プロケメリン(prochemerin)として不活性形態で分泌され、炎症性および凝固セリンプロテアーゼによるC末端の切断を介して活性化される。ケメリン配列は、例えば、GenBank(登録商標)配列データベースから、公に入手可能である(例えば、受託番号NP_002880.1およびNP_001013445.1は、例示的なケメリンタンパク質配列を提供するが、受託番号NM_002889.3およびNM_001013427.1は、例示的なケメリン核酸配列を提供する)。当業者は、ケメリンバリアント、例えば、これらのGenBank(登録商標)配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するもの、例えば、配列番号6のペプチドaa21~157に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するものを含む、さらなるケメリンの核酸およびタンパク質配列を同定することができる。
【0030】
接触:固体または液体形態を含む、直接的な物理的関連状態にある配置。接触は、例えば、試薬を試料(例えば、腫瘍細胞を含有する試料)に添加することによってin vitroもしくはex vivoで生じ得、または対象に投与することによってin vivoで生じ得る。
【0031】
有効量(または治療有効量):有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な薬剤(例えば、本明細書に開示される組換えOV、ならびに他の抗がん剤)の量。
【0032】
有効量(治療有効量とも呼ばれる)は、以下のうちの1つまたは複数に依存して変動し得る:当業者によって容易に決定され得る、処置されている対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与の様式など。有益な治療効果には、診断的決定の実施可能性;疾患、症状、障害または病理学的状態の軽快;疾患、症状、障害もしくは状態を低減させることまたはそれらの開始を予防すること;および疾患、症状、障害または病理学的状態に広く対抗することが含まれ得る。
【0033】
一実施形態では、「有効量」(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1タンパク質の、かかるタンパク質を発現する本明細書に開示される組換えOVの)は、腫瘍の体積/サイズ、腫瘍の重量、転移の数/程度を、転移の体積/サイズ、転移の重量、またはそれらの組合せを、例えば、(治療剤の投与なしと比較して)少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%低減させるのに十分な量であり得る。一実施形態では、「有効量」(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンもしくはIGF-1の、またはかかるタンパク質を発現するOVの)は、例えば、腫瘍または腫瘍微小環境中へのT細胞浸潤を、(治療剤の投与なしと比較して)少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させるのに十分な量であり得る。
【0034】
融合(またはキメラ)タンパク質:少なくとも2つの異なる(異種)タンパク質またはペプチド由来のアミノ酸配列を含有するタンパク質。融合タンパク質は、例えば、2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部分をコードする核酸配列から操作された核酸配列の発現によって生成され得る。融合タンパク質を創出するために、核酸配列は、典型的には、同じリーディングフレーム中にあり、内部停止コドンを含有しない。一例では、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、アディポカイン(例えば、レプチンまたはケメリン)、インスリンまたはIGF-1)およびサイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)を含む融合タンパク質が、本明細書で提供されるOVによって発現され得る。
【0035】
融合タンパク質は、直接またはリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介して結合され得る第1の部分および第2の部分を含む。一部の例では、第1の部分は、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、アディポカイン(例えば、レプチンまたはケメリン)、インスリンまたはIGF-1)であり、第2の部分は、サイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)である。一部の例では、第1の部分はN末端であり、第2の部分はC末端である。一部の例では、第1の部分はC末端であり、第2の部分はN末端である。
【0036】
インスリン:(例えば、OMIM 176730):膵島細胞のベータ細胞によって産生されるホルモン。これは、例えば、血液から肝臓、脂肪および骨格筋細胞中への、炭水化物、特にグルコースの吸収を促進することによって、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝を調節した。ヒトインスリンは、第11染色体上のIns遺伝子によってコードされる。脊椎動物では、インスリンのアミノ酸配列は、強く保存されている。ウシインスリンは、3つのアミノ酸残基だけがヒトとは異なり、ブタインスリンは、1つのアミノ酸残基が異なる(porcine insulin in on)。インスリン配列は、例えば、GenBank(登録商標)配列データベースから、公に入手可能である(例えば、受託番号AAA59172.1およびAAA41439.1は、例示的なインスリンタンパク質配列を提供するが、受託番号AH002844.2およびV01242.1は、例示的なインスリン核酸配列を提供する)。当業者は、インスリンバリアント、例えば、これらのGenBank(登録商標)配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するもの、例えば、配列番号4のペプチドaa25~110に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するものを含む、さらなるインスリンの核酸およびタンパク質配列を同定することができる。
【0037】
インスリン様成長因子1(IGF-1):(例えば、OMIM 147440):ソマトメジンCとも呼ばれ、肝臓によって優勢に作製されるホルモンであり、成長ホルモンによって刺激される。ヒトIGF-1は、第12染色体上のIGF1遺伝子によってコードされ、ネイティブタンパク質は、70アミノ酸である。IGF-1配列は、例えば、GenBank(登録商標)配列データベースから、公に入手可能である(例えば、受託番号NP_001104753.1(成熟ペプチドaa49~118)およびNP_034642.2(成熟ペプチドaa49~116)は、例示的なIGF-1タンパク質配列を提供するが、受託番号NM_000618.4、NM_001111283.2およびNM_010512.5は、例示的なIGF-1核酸配列を提供する)。当業者は、IGF-1バリアント、例えば、これらのGenBank(登録商標)配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するもの、例えば、配列番号8のペプチドaa49~118に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するものを含む、さらなるIGF-1の核酸およびタンパク質配列を同定することができる。
【0038】
レプチン:(例えば、OMIM 164160):空腹を阻害することによってエネルギーバランスを調節することを助ける、脂肪細胞によって優勢に作製されるホルモン。ヒトレプチンは、第7染色体上のLep遺伝子によってコードされ、ネイティブタンパク質は、16kDaおよび167アミノ酸である。レプチン配列は、例えば、GenBank(登録商標)配列データベースから、公に入手可能である(例えば、受託番号NP_000221.1、NP_001003070.1、NP_999005.1、NP_037208.1、NP_032519.1およびNP_001036220.1は、例示的なレプチンタンパク質配列を提供するが、受託番号NM_000230.2、NM_001003070.1、NM_213840.1およびNM_013076.3は、例示的なレプチン核酸配列を提供する)。当業者は、レプチンバリアント、例えば、これらのGenBank(登録商標)配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するもの、例えば、配列番号2のペプチドaa22~167に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するものと含む、さらなるレプチンの核酸およびタンパク質配列を同定することができる。
【0039】
増加または減少:対照値(例えば、治療剤なしを示す値)からの、量における、それぞれ、統計的に有意な正または負の変化。増加は、正の変化、例えば、対照値と比較した、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%または少なくとも500%の増加である。減少は、負の変化、例えば、対照値と比較した、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも100%減少の減少である。一部の例では、減少は、100%未満、例えば、90%以下、95%以下または99%以下の減少である。
【0040】
単離された:「単離された」生物学的成分(例えば、OV、核酸分子またはタンパク質)は、その成分が存在する生物の細胞または組織中の他の生物学的成分、例えば、他の細胞(例えば、RBC)、染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質から実質的に分離された、それらとは離れて産生された、またはそれらから精製された成分である。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸およびタンパク質もまた包含する。単離された組換えOVは、一部の例では、少なくとも50%純粋、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも100%純粋である。
【0041】
リンカー:例えば、融合タンパク質を生成するために、2つまたはそれよりも多くの別個の別々のペプチドまたはタンパク質、例えば、モノマードメインを結合または接続する部分または部分の群。一例では、リンカーは、実質的に直鎖状の部分である。本明細書で提供される融合タンパク質を生成するために使用され得る例示的なリンカーには、以下が含まれるがこれらに限定されない:ペプチド、核酸分子、ペプチド核酸、および炭素骨格中に取り込まれた1つまたは複数の酸素原子を有する必要に応じて置換されたアルキレン部分。リンカーは、ネイティブ配列の一部分、そのバリアント、または合成配列であり得る。リンカーは、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、または両方の組合せを含み得る。一例では、リンカーは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20アミノ酸、例えば、5~10、5~20または5~50アミノ酸から構成される。一例では、リンカーは、ポリアラニンである。リンカーは、フレキシブルリンカー(例えば、(GGGGS)n)、剛性リンカー(rigid linker)(例えば、(EAAAK)n)または切断可能なリンカー(例えば、ジスルフィド、プロテアーゼ感受性)であり得る。
【0042】
代謝モジュレータータンパク質:細胞、例えば、T細胞、例えば、がんを有する対象におけるT細胞の代謝活性を増加または減少させることができるタンパク質。一例では、代謝モジュレータータンパク質は、T細胞、例えば、腫瘍浸潤性T細胞の代謝活性を増加させる。一部の例では、代謝モジュレータータンパク質は、細胞、例えば、T細胞、例えば、腫瘍浸潤性T細胞の代謝活性を、例えば、代謝モジュレータータンパク質の欠如(例えば、代謝モジュレータータンパク質を発現するOVを投与しないこと)と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させる。一部の例では、代謝モジュレータータンパク質は、細胞、例えば、T細胞、例えば、腫瘍浸潤性T細胞のミトコンドリア機能を、例えば、代謝モジュレータータンパク質の欠如(例えば、代謝モジュレータータンパク質を発現するOVを投与しないこと)と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させる。一部の例では、代謝モジュレータータンパク質は、細胞、例えば、T細胞、例えば、腫瘍浸潤性T細胞による酸化的リン酸化を、例えば、代謝モジュレータータンパク質の欠如(例えば、代謝モジュレータータンパク質を発現するOVを投与しないこと)と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させる。一部の例では、代謝モジュレータータンパク質は、メモリーT細胞を、例えば、代謝モジュレータータンパク質の欠如(例えば、代謝モジュレータータンパク質を発現するOVを投与しないこと)と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させる。一部の例では、代謝モジュレータータンパク質は、腫瘍(例えば、がん)におけるT細胞のクローン性増殖を、例えば、代謝モジュレータータンパク質の欠如(例えば、代謝モジュレータータンパク質を発現するOVを投与しないこと)と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させる。一部の例では、これらの効果(affect)のうちの1つまたは複数の組合せが達成され得る。
【0043】
一例では、代謝モジュレータータンパク質は、アディポカインである。アディポカインは、脂肪組織によって分泌されるサイトカインであり得る。アディポカインの例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:レプチン、アディポネクチン、アペリン、ケメリン、インターロイキン-6(IL-6)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよびCTRP-4。一例では、代謝モジュレータータンパク質は、インスリンである。一例では、代謝モジュレータータンパク質は、IGF-1である。
【0044】
腫瘍溶解性ウイルス(OV):がん細胞に優先的に感染しそれを死滅させるウイルス。OVは、それらの表面上の受容体への結合を介してまたは形質膜との融合を介して細胞に接近することができ、正常組織を本質的に無傷のままにしつつ、腫瘍において溶解サイクルを確立することができる。感染したがん細胞が腫瘍溶解によって破壊される際に、これらは、新たな感染性ウイルス粒子またはビリオンを放出して、残りの腫瘍を破壊するのを助ける。例示的な腫瘍溶解性ウイルスには、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、セネカバレーウイルス、ECHOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルスおよびパロウイルスが含まれるがこれらに限定されない。腫瘍溶解性ウイルスの具体的な例には、ECHO-7株エンテロウイルスRIGVIR、H101と命名された遺伝子改変されたアデノウイルス、およびタリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepvec)(T-VEC)が含まれる。
【0045】
組換えOVは、非ネイティブ配列、例えば、代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびインスリン様成長因子1のうちの1つまたは複数ならびにかかるサイトカイン(such and a cytokine)を含む融合タンパク質をコードする核酸分子を含むOVである。
【0046】
作動可能に連結した:第1の核酸配列は、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関連して配置される場合、第2の核酸配列に作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、プロモーターが、コード配列(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンまたはインスリン様成長因子1コード配列)の転写または発現に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結した配列は、連続しており、必要に応じて、2つのタンパク質コード領域を同じリーディングフレームで結合させる。
【0047】
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体は、従来の担体である。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、治療剤、例えば、本明細書に開示される組換えOVの医薬的送達に適切な組成物および製剤を記載している。
【0048】
一般に、担体の性質は、用いられている投与の特定の様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、薬学的および生理的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射可能な流体を含む。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、微量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有し得る。
【0049】
プロモーター:核酸の転写を指示する一群の核酸制御配列。プロモーターは、転写の開始部位の近傍の必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントを含む。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対ほど離れて位置し得る遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを必要に応じて含む。
【0050】
開示される組換えOVと共に使用され得るプロモーターの例には、ウイルスプロモーター、例えば、7.5プロモーター、SV40プロモーター、CMVエンハンサー-プロモーターおよびCMVエンハンサー/β-アクチンプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方が使用され得る(例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology 153:516-544, 1987を参照のこと)。プロモーター依存的遺伝子発現を、細胞型特異的、組織特異的、または外部シグナルもしくは薬剤によって誘導性なものとして制御可能にするのに十分なプロモーターエレメントもまた含まれる;かかるエレメントは、遺伝子の5’または3’領域に位置し得る。組換えDNAまたは合成技法によって産生されるプロモーターもまた、核酸配列の転写を提供するために使用され得る。
【0051】
組換え:組換え核酸分子は、天然に存在しない配列(例えば、非ネイティブ配列、例えば、哺乳動物レプチン、インスリン、ケメリンまたはインスリン様成長因子1コード配列を有するOV)を有する核酸分子、または他の方法で分離されていた2つの配列セグメントの人工的な組合せによって作製された配列を有する核酸分子である。この人工的な組合せは、化学的合成などの慣用的な方法によって、または例えば遺伝子操作技法による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、達成され得る。同様に、組換えタンパク質は、組換え核酸分子によってコードされるタンパク質である。同様に、組換えまたはトランスジェニック細胞は、組換え核酸分子(例えば、組換えOV)を含有し、組換えタンパク質を発現する細胞である。
【0052】
配列同一性:アミノ酸(またはヌクレオチド)配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表現され、別段配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性もしくは相同性)に関してしばしば測定される;パーセンテージが高いほど、2つの配列はより類似である。
【0053】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該分野で周知である。種々のプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、以下に記載されている:Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988;Higgins and
Sharp, CABIOS 5:151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad.
Sci. U.S.A. 85:2444, 1988。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な検討事項を示している。
【0054】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連した使用のために、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)を含むいくつかの供給源から、およびインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の記述は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。
【0055】
ネイティブレプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1のタンパク質またはコード配列のバリアントは、典型的には、デフォルトパラメーターに設定したNCBI Blast 2.0、gapped blastpを使用してアミノ酸配列との全長アラインメントにわたって計数した、少なくとも約80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性の保有によって特徴付けられる。約30アミノ酸よりも長いアミノ酸配列の比較のために、Blast 2配列機能は、デフォルトパラメーター(ギャップ存在コスト11、残基1つ当たりのギャップコスト1)に設定したデフォルトBLOSUM62マトリックスを使用して用いられる。短いペプチド(おおよそ30アミノ酸よりも短い)をアラインする場合、アラインメントは、デフォルトパラメーター(オープンギャップ9、伸長ギャップ1のペナルティ)に設定したPAM30マトリックスを用いて、Blast 2配列機能を使用して実施すべきである。参照配列に対してさらに大きい類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合、増加するパーセンテージ同一性、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を示す。配列同一性について配列全体未満が比較されている場合、ホモログおよびバリアントは、典型的には、10~20アミノ酸の短いウインドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を保有し、参照配列に対するそれらの類似性に依存して、少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を保有し得る。かかる短いウインドウにわたって配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。当業者は、これらの配列同一性の範囲が、ガイダンスとして提供されているに過ぎないことを理解する;提供された範囲の外側に入る強く重要なホモログが取得され得る可能性も十分にある。
【0056】
したがって、バリアントレプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1のタンパク質または核酸配列は、本明細書で提供されるGenBank(登録商標)受託番号に示される配列(例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7または8)のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0057】
対象:脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト。哺乳動物には、マウス(murine)、サル(simian)、ヒト、家畜、スポーツ動物(sport animal)およびペットが含まれるがこれらに限定されない。一実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物対象、例えば、サル(monkey)もしくは他の非ヒト霊長類、マウス(mouse)、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマまたはウシである。一部の例では、対象は、本明細書に開示される組換えOVを使用して処置され得る、腫瘍、例えば、がんを有する。一部の例では、対象は、実験動物/生物、例えば、マウス、ウサギまたはラットである。
【0058】
T細胞:細胞媒介性免疫において役割を果たす、それらの細胞表面上にT細胞受容体を含有する白血球。
【0059】
治療剤:対象への投与の際にいくらかの有益な効果を付与する1つまたは複数の分子または化合物を指す。有益な治療効果には、診断的決定の実施可能性;疾患、症状、障害または病理学的状態の軽快;疾患、症状、障害もしくは状態を低減させることまたはそれらの開始を予防すること;および疾患、症状、障害または病理学的状態に広く対抗することが含まれ得る。
【0060】
形質導入されたおよび形質転換された:ウイルスまたはベクターは、それが核酸を細胞中に移行させる場合、細胞を「形質導入する」。細胞は、細胞ゲノム中への核酸の組入れまたはエピソーム複製のいずれかによって、核酸分子が細胞によって安定に複製されるようになる場合、細胞中に形質導入された核酸によって「形質転換され」ているまたは「トランスフェクトされ」ている。
【0061】
以下のようなトランスフェクションの多数の方法が、当業者に公知である:化学的方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、微粒子銃)、融合(例えば、リポソーム)、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、DNA-タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド-DNA複合体)および組換えウイルスなどのウイルスによる生物学的感染によるもの{Wolff, J. A., ed, Gene Therapeutics, Birkhauser, Boston, USA (1994)}。
【0062】
導入遺伝子:ベクター、例えば、組換えOVによって供給される外因性遺伝子。一例では、導入遺伝子には、1つまたは複数のレプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1コード配列が含まれる。
【0063】
処置すること、処置および治療:任意の客観的もしくは主観的パラメーター、例えば、症状の緩和、寛解、軽減、または状態を患者にとってより耐容できるものにすること、変性もしくは減退の速度における緩徐化、変性の最終点をあまり衰弱性でないものにすること、対象の肉体的もしくは精神的福祉を改善すること、または生存の長さを延長させることを含む、傷害、病状または状態の減弱または軽快における任意の成功または成功の兆候。処置は、身体検査、血液および他の臨床試験(例えば、イメージング)などの結果を含む、客観的または主観的パラメーターによって評価され得る。一部の例では、開示される方法による処置は、腫瘍および/または転移の数、体積および/または重量における減少を生じる。
【0064】
腫瘍、新形成、悪性疾患またはがん:新生物は、過剰な細胞分裂から生じる組織または細胞の異常な成長である。新生物成長は、腫瘍を生じ得る。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積または重量として測定され得る「腫瘍負荷」である。「非がん性組織」は、悪性新生物が形成したのと同じ臓器由来の組織であるが、新生物の特徴的病状を有さない。一般に、非がん性組織は、組織学的に正常に見える。「正常組織」は、臓器がその臓器のがんや別の疾患もしくは障害に冒されていない、臓器由来の組織である。「がんなしの」対象は、その臓器のがんと診断されておらず、検出可能ながんを有さない。
【0065】
開示される組換えOVを使用して処置され得る例示的な腫瘍、例えばがんには、固形腫瘍、例えば、乳癌(例えば、小葉癌および腺管癌、例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肉腫、肺の癌(例えば、非小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌および腺癌)、肺の中皮腫、結腸直腸腺癌、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌および胚細胞腫瘍、膵臓腺癌、胆道腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(例えば、移行上皮癌、腺癌および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(例えば、腺癌およびミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮頸外膜(ectocervix)および膣の癌(例えば、それらの各々の腺癌および扁平上皮癌)、皮膚の腫瘍(例えば、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、皮膚付属器(appendage)腫瘍、カポジ肉腫、皮膚リンパ腫、皮膚付属器(adnexal)腫瘍および種々の型の肉腫ならびにメルケル細胞癌)、食道癌、鼻咽頭および中咽頭の癌(それらの扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、グリア、ニューロンおよび髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟部組織肉腫ならびに骨および軟骨の肉腫、頭頸部扁平上皮細胞癌、ならびにリンパ性腫瘍(B細胞およびT細胞悪性リンパ腫を含む)が含まれる。一例では、腫瘍は腺癌である。
【0066】
開示される組換えOVは、液性腫瘍、例えば、リンパ性、白血球、または他の型の白血病を処置するためにも使用され得る。具体的な例では、処置される腫瘍は、血液の腫瘍、例えば、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病および成人T細胞白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)または骨髄腫である。
【0067】
~に十分な条件下:所望の活性を可能にする任意の環境を記述するために使用される語句。一例では、所望の活性は、例えば、タンパク質を発現する組換えOVに感染した腫瘍細胞における、レプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1のうちの1つまたは複数の、発現または活性の増加である。一例では、所望の活性は、例えば、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスを使用する、in vivoでの腫瘍の処置である。
【0068】
ベクター:宿主細胞(例えば、腫瘍細胞)中に導入されると、それによって、形質転換された宿主細胞を産生する、核酸分子。ベクターは、宿主細胞においてそれが複製することを可能にする核酸配列、例えば、複製起点を含み得る。ベクターは、例えば、他の配列と組み合わせて、1つまたは複数のレプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1コード配列もまた含み得る。ベクターは、細胞を形質導入すること、それを形質転換することまたはそれに感染することができ、それによって、細胞にとってネイティブなもの以外の核酸および/またはタンパク質を、細胞に発現させる。ベクターは、必要に応じて、細胞中への核酸の進入を達成することを補助する材料、例えば、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コーティングなどを含む。
概要
【0069】
免疫療法は、がんに対する休眠応答を活性化することができるが、奏効率は、免疫学的無視/除外および代謝的に厳しい微小環境を含むいくつかの抵抗性機構に起因して、低いままである。がん細胞において複製することができる腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、腫瘍溶解および免疫プライミングを誘導し得る。腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、エフェクターT細胞の流入によって支配される腫瘍微小環境の実質的なリモデリングを誘導することが、本明細書で実証されている。しかし、本発明者らは、腫瘍微小環境によって誘導される代謝不全に恐らくは起因して、腫瘍溶解性ウイルスに対する応答が不完全であったことを観察した。アディポカインであるレプチンが、抗腫瘍応答を支持する強力な代謝リプログラミング剤として同定される。レプチンは、T細胞をin vitroで代謝的にリプログラムし、レプチンを発現する黒色腫細胞は、in vivoで免疫学的に制御される。腫瘍細胞においてレプチンを発現するように腫瘍溶解性ウイルスを操作することで、腫瘍保有マウスにおいて完全奏効が誘導され、機能的に優れた腫瘍浸潤が促進された。腫瘍保有動物のレプチン処置は、T細胞浸潤および強力な代謝リプログラミングを増加させた。レプチンを過剰発現するように操作された腫瘍は、野生型腫瘍よりも、免疫系によって効果的に制御され、代謝的に十分である。したがって、レプチンは、腫瘍浸潤性T細胞の代謝活性を増加させることによって、抗腫瘍免疫を促進する軸を活用する。したがって、レプチンおよび他の代謝リプログラミング剤(例えば、他のアディポカイン、例えば、ケメリン、または他のタンパク質、例えば、インスリンもしくはIGF-1)は、腫瘍免疫に代謝的支持を提供することができ、腫瘍溶解性ウイルスは、代謝治療を送達するためのプラットフォームを提示する。
【0070】
多くの課題のうち、固形腫瘍における免疫応答が遭遇するのは、浸潤する能力の低さ、ならびに不利な微小環境においてそれらのエフェクター機能を適切に実行できることである。本明細書のデータは、両方の障壁が、代謝モジュレーション(例えば、アディポカインであるレプチン)を微小環境に直接送達することができるOVを操作により作製し、結果として治療有効性を改善することによって、克服され得ることを示している。最近の研究は、腫瘍におけるOVによって規定される遺伝的シグネチャーを調査しており、OVにおいて発現され得る標的を決定している(Zamarin et al., Nat Commun 2017; 8:14340)。本明細書のデータは、単一細胞RNA-seq分析を利用して腫瘍溶解性ウイルス処置後の免疫状況における変化の様相を初めて明らかにするものである。これらの知見は、腫瘍がいまだ退行していない初期の時点での、腫瘍浸潤物における目を引く変化を明らかにしている。これらのデータは、OVが単純に、腫瘍細胞の一部分を溶解させ、いくらかの免疫原性細胞死を促進するのではなく、むしろ、腫瘍免疫微小環境を完全にリモデルリングする能力を有することを示している。このデータは、観察された抗腫瘍免疫の中心である可能性があるT細胞コンパートメントにおける浸潤の増加を示すだけでなく、骨髄性集団における広範な変化を示す。これらの結果は、OVによって誘導される強力な免疫を新たに明らかにし、この免疫応答を、特定の方法で強化して、より永続的な応答を促進できることを実証している。
【0071】
腫瘍微小環境におけるT細胞代謝機能を改善することは、より良い治療応答を可能にし得る。本開示は、特にがんにおいてレプチン(または免疫応答の他の代謝モジュレーター、例えば、他のアディポカインもしくは他のホルモン、例えば、インスリン)を用いる新規方法を提供する。さらに、開示される方法は、腫瘍微小環境を特異的にモジュレートし、治療応答を改善することができる分子のための有効な送達系としてOVを利用する。
【0072】
以前の研究は、免疫細胞がレプチン受容体を発現すること、ならびにサイトカインとしてのレプチンが、自然および適応免疫応答において炎症促進機能を有し得ることを示している(Loffreda et al., FASEB J 1998;12(1):57-65;La Cava et al., Nat Rev Immunol 2004;4(5):371-9;Santos-Alvarez et al., Cell Immunol 1999;194(1):6-11)。適応免疫応答に関して、レプチンは、ヒトTリンパ球の増殖を活性化および増強することができる(Martin-Romero et al., Cell Immunol 2000; 199(1):15-24)。レプチンが調節性T細胞増殖を阻害し得、炎症および自己免疫のモデルにおいて機能し得るといういくつかの観察が存在するが(Feuerer et al.,
Nat Med 2009; 15(8):930-9)、腫瘍溶解剤を使用する本明細書のデータは、Treg細胞が、レプチンリッチな腫瘍環境中では刺激されないことを示している。
【0073】
がん、特に腫瘍微小環境におけるレプチンまたはレプチン受容体の役割については、ほとんど知られていない。本明細書の知見は、二次リンパ系臓器中のT細胞と比較して、腫瘍微小環境中のT細胞においてレプチン受容体発現の増加が存在することを実証している。レプチンは、ミトコンドリア機能の持続および酸化的リン酸化における増加を介して、腫瘍浸潤性T細胞のエフェクター機能を代謝的に増強することができる。以前の研究は、レプチンが骨格筋において脂肪酸酸化を促進できることを示した。レプチン欠損マウス由来のCD4+T細胞は、増殖の減少およびサイトカイン産生と共に、グルコース取込みにおける低減を示した。本明細書のデータは、レプチンが、STAT3およびPI3Kの活性化を介してシグナル伝達し、ミトコンドリアの含量および品質を増加させることができることを示している。レプチンは、PGC1α活性化を促進でき、酸化的リン酸化を促進できるだけでなく、マイトフュージン1の発現を介したミトコンドリア融合を促進することができる(Roman et al., Mol Cell Endocrinol 2010; 314(1):62-9;Hsu et al., Int J Obes
(Lond) 2015; 39(12):1750-6.)。腫瘍浸潤性T細胞は、PGC1αの発現を抑制するので(Scharping et al., Immunity 2016; 45(3):701-3)、レプチンは、その軸の維持を介してTIL機能を支持し得る。
【0074】
野生型およびレプチン操作された腫瘍溶解性ワクシニアの両方のT細胞浸潤物の開示される分析は、レプチン発現性ワクシニアウイルスで処置した腫瘍においてより優勢であった免疫集団を明らかにした。メモリーT細胞の割合における増加が観察されたが、これは、観察された持続性の治療応答を説明する。メモリーT細胞は、優れた抗腫瘍T細胞であり、より高いミトコンドリア含量および酸化的リン酸化能を有する(van der Windt et al., Immunity 2012; 36(1):68-78;Sukumar et al., Cell Metab 2016; 23(1):63-76)が、これは、ミトコンドリア含量における増加を示す本明細書のデータと一致している。TCR配列決定分析が、腫瘍浸潤性リンパ球に対するOVの効果をさらに実証した。腫瘍溶解剤は、腫瘍に浸潤するように新たなT細胞クローンを誘導したが、レプチン発現性ワクシニアウイルスで処置した腫瘍では、T細胞のクローン性増殖が観察された。
【0075】
腫瘍浸潤性リンパ球におけるミトコンドリア機能を代謝的に増強することには利益がある。本明細書で提供される方法は、腫瘍中に直接送達され得る代謝モジュレーターのレパートリーを増加させる。これらの代謝モジュレーターの治療的送達の1つの方法は、遺伝的にコードされたペイロードを腫瘍微小環境に直接送達することができるOVの利用である。今日まで、腫瘍溶解性送達遺伝子(oncolytic-delivered gene)の大部分は、性質が免疫性であった(例えば、サイトカイン、共刺激分子など)。しかし、開示される方法は、OVによって送達される最初の代謝モジュレーターを提供する。ワクシニアが有効であることが本明細書で実証されているが、他の腫瘍溶解剤、例えば、HSV、ニューカッスル病ウイルス、アデノウイルスおよびVSVもまた使用され得る。scRNA-seqにより、腫瘍溶解剤が感染後早期に強力な免疫刺激潜在力を有し、永続的な完全奏効を達成することが明らかになったが、代謝的支持は、ロバストな抗腫瘍効果を媒介することが可能な長寿命のメモリーに、強い早期エフェクター応答を提供し得る。
【0076】
これらの観察に基づいて、T細胞代謝を増加または増強し、それによって、抗腫瘍免疫を増加させる、免疫療法に対する腫瘍の応答を増加させる、またはその両方を行う組成物および方法(compositions methods)が、本明細書で提供される。例えば、組換えOVから代謝をモジュレートするタンパク質を発現させることによって、例えば、腫瘍微小環境中にかかるタンパク質を提供することによって、腫瘍微小環境代謝をモジュレートすることにより、抗腫瘍効果を増強する。かかる方法は、他の抗がん治療と、例えば、T細胞アゴニストと(例えば、4-1BB、OX40またはGITRの1つまたは複数のアゴニストと)組み合わせて使用され得る。
【0077】
一部の例では、レプチン(または他の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、別のアディポカイン(例えば、ケメリン)、インスリンもしくはIGF-1)は、例えば、他の抗がん治療、例えば、免疫療法、例えば、T細胞アゴニスト、例えば、4-1BB、OX40およびGITRの1つまたは複数のアゴニストと組み合わせて、治療量で投与される(例えば、タンパク質として、またはタンパク質をコードする核酸として、例えば、ベクター、例えば、ウイルスベクターを介して)。一部の例では、腫瘍細胞においてレプチン(または他の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、別のアディポカイン(例えば、ケメリン)、インスリンもしくはIGF-1)を発現または過剰発現する組換えOVが使用される。
【0078】
レプチン(または他の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、別のアディポカイン(例えば、ケメリン)、インスリンもしくはIGF-1)を発現するOVは、腫瘍細胞を死滅させ、免疫系を刺激することができるが、レプチン(または他の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、別のアディポカイン(例えば、ケメリン)、インスリンもしくはIGF-1)の放出もまた、腫瘍部位におけるT細胞代謝を改善する。したがって、これらの組換えOVは、強力なタイプの自己強化免疫療法になる。組換えレプチン(または他の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、別のアディポカイン(例えば、ケメリン)、インスリンもしくはIGF-1)は、T細胞浸潤を増加させる。
組換え腫瘍溶解性ウイルス(OV)
【0079】
細胞免疫療法、例えば、がん免疫療法を改善するために使用され得る組換えOVが、本明細書で提供される。例えば、本開示は、1つまたは複数の代謝調節性タンパク質(metabolic modulatory protein)、例えば、アディポカイン(例えば、レプチンまたはケメリン)、ケメリンまたはIGF-1をコードする核酸分子を含有する組換えOVを提供する。一部の例では、代謝調節性タンパク質(例えば、アディポカイン(例えば、レプチンまたはケメリン)、ケメリンまたはIGF-1)は、OVによって発現される融合タンパク質、例えば、代謝調節性タンパク質およびガンマ鎖サイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)を含む融合タンパク質の一部である。OVに感染した腫瘍細胞におけるタンパク質の発現は、これらのタンパク質のうちの1つまたは複数の発現の増加をもたらし得、したがって、これらのタンパク質の活性の増加をもたらし、それによって、抗腫瘍活性を増加させ得る。
【0080】
OVは、任意のOV、例えば、天然に存在するOVまたは遺伝子操作されたOVであり得る。例には、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、セネカバレーウイルス、ECHOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルスまたはパロウイルスが含まれる。具体的な例では、OVは、タリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)であり得る。具体的な例では、OVは、Western Reserve株のワクシニアウイルスであり得る。具体的な例では、OVは、ワクシニアであり得、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチンであり得る。具体的な例では、OVは、Western Reserve株のワクシニアウイルスであり得、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチンである。具体的な例では、OVは、Reserve株のワクシニアウイルスであり得、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチン-IL-2またはレプチン-IL-15融合タンパク質であり得る(レプチンおよびサイトカインは、リンカーによって結合され得る)。
【0081】
1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子は、一部の例では、プロモーター、例えば、構成的または調節可能なプロモーターに作動可能に連結されている。一例では、プロモーターは、タンパク質にとってネイティブではない場合がある。例えば、プロモーターは、ウイルス由来のプロモーター、例えば、7.5プロモーターであり得る。
【0082】
一例では、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を含み得る。一例では、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号1、3、5または7に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を含み得る。一例では、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、第1のタンパク質および第2のタンパク質を含む融合タンパク質であり得、第1のタンパク質は、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を含む。一例では、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子は、配列番号1、3、5または7に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を含み得る。一例では、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子は、代謝タンパク質を含む融合タンパク質をコードし得、融合タンパク質は、第1のタンパク質および第2のタンパク質を含み得、第1のタンパク質は、配列番号1、3、5または7に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を含む核酸分子によってコードされ得る。一部の例では、組換えOVは、1つまたは複数の免疫刺激タンパク質、例えば、共刺激分子、サイトカイン、ケモカイン、例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-α/β、TNF-αおよびGM-CSFのうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せをさらに発現し得る。
【0083】
一部の例では、開示される組換えOVによる腫瘍細胞の感染の際に、感染した腫瘍細胞におけるアディポカインの発現および/または活性は、例えば、OVを投与しないことと比較して、またはアディポカインを発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加し得る。一部の例では、開示される組換えOVによる腫瘍細胞の感染の際に、感染した腫瘍細胞におけるレプチンの発現および/または活性は、例えば、OVを投与しないことと比較して、またはレプチンを発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加し得る。一部の例では、開示される組換えOVによる腫瘍細胞の感染の際に、感染した腫瘍細胞におけるインスリンの発現および/または活性は、例えば、OVを投与しないことと比較して、またはインスリンを発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加し得る。一部の例では、開示される組換えOVによる腫瘍細胞の感染の際に、感染した腫瘍細胞におけるケメリンの発現および/または活性は、例えば、OVを投与しないことと比較して、またはケメリンを発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加し得る。一部の例では、開示される組換えOVによる腫瘍細胞の感染の際に、感染した腫瘍細胞におけるIGF-1の発現および/または活性は、例えば、OVを投与しないことと比較して、またはIGF-1を発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加され得る。
【0084】
一部の例では、腫瘍細胞においてOVからアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1を発現させることは、腫瘍または腫瘍微小環境中へのT細胞浸潤を、例えば、OVを投与しないことと比較して、または代謝調節性タンパク質を発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させ得る。一部の例では、腫瘍細胞においてOVからアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1を発現させることは、腫瘍の部位におけるT細胞におけるミトコンドリア活性を、例えば、OVを投与しないことと比較して、または代謝調節性タンパク質を発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させ得る。一部の例では、腫瘍細胞においてOVからアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1を発現させることは、T細胞酸化的リン酸化を、例えば、OVを投与しないことと比較して、または代謝調節性タンパク質を発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させ得る。一部の例では、腫瘍細胞においてOVからアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1を発現させることは、腫瘍におけるT細胞のクローン性増殖を、例えば、OVを投与しないことと比較して、または代謝調節性タンパク質を発現しないOVの投与と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%または少なくとも約600%増加させ得る。一部の例では、これらの効果の組合せが達成され得る。
1.代謝をモジュレートするタンパク質
【0085】
OV中の代謝をモジュレートするタンパク質、例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1コード配列(これは、融合タンパク質コード配列の一部であり得る)は、野生型(例えば、非変異)またはバリアント配列であり得る。具体的な例では、代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチンである。具体的な例では、代謝をモジュレートするタンパク質は、ケメリンである。具体的な例では、代謝をモジュレートするタンパク質は、インスリンである。具体的な例では、代謝をモジュレートするタンパク質は、IGF-1である。
【0086】
例えば、野生型レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1の配列は、GenBank(登録商標)受託番号を介して本明細書で提供される(配列は、配列番号1~8に提供される)。したがって、一部の例では、腫瘍細胞中に導入される組換えOVは、ネイティブレプチン、インスリン、ケメリン、および/またはIGF-1コード配列を含み得る。一部の例では、腫瘍細胞中に導入される組換えOVは、非ネイティブアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1コード配列を含むが、ネイティブアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質配列をコードする(例えば、縮重したコード配列)。一部の例では、組換えOVによって発現されるアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質は、シグナル配列を含む。
【0087】
GenBank(登録商標)受託番号を介して上に提供されるタンパク質配列のバリアントを含む、バリアントアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質は、1つまたは複数の変異、例えば、単一の挿入、単一の欠失、単一の置換を含有し得る。一部の例では、バリアントアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質は、1~20個の挿入、1~20個の欠失、1~20個の置換、および/またはそれらの任意の組合せ(例えば、1~19個の置換と一緒に単一の挿入)を含む。一部の例では、本開示は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のさらなるアミノ酸変化を有する任意のネイティブアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質のバリアントを提供し、タンパク質は、ネイティブまたは増加した生物活性を保持する。一部の例では、バリアントアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質は、1~8個の挿入、1~15個の欠失、1~10個の置換、および/またはそれらの任意の組合せ(例えば、1~10、1~5または1~7個のアミノ酸置換と一緒に、1~15、1~4または1~5個のアミノ酸欠失)を含む。一部の例では、バリアントアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のアミノ酸変化を有する。一例では、かかるバリアントペプチドは、標準手順、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRを使用して、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって産生される。
【0088】
改変の1つの型には、アミノ酸による、類似の生化学的特性を有するアミノ酸残基に代えての置換、即ち、保存的置換(例えば、1~4、1~8、1~10または1~20個の保存的置換)を含む。典型的には、保存的置換は、得られたペプチドの活性に対して、影響をほとんどまたは全く有さない。例えば、保存的置換は、タンパク質のネイティブ機能に実質的に影響を与えない、任意のネイティブアディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1タンパク質配列中のアミノ酸置換である。アラニンスキャンは、タンパク質中のどのアミノ酸残基がアミノ酸置換を許容し得るかを同定するために使用され得る。一例では、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1のネイティブ機能は、アラニンまたは他の保存的アミノ酸が1~4、1~8、1~10または1~20個のネイティブアミノ酸を置換する場合、25%よりも大きくは、例えば、20%よりも大きくは、例えば、10%よりも大きくは変更されない。タンパク質中の元のアミノ酸を置換し得る、保存的置換とみなされるアミノ酸の例には、以下が含まれる:Alaの代わりにSer;Argの代わりにLys、GlnまたはAsn;Asnの代わりにGlnまたはHis;Aspの代わりにGlu;Cysの代わりにSer;Glnの代わりにAsn;Gluの代わりにAsp;Glyの代わりにPro;Hisの代わりにAsnまたはGln;Ileの代わりにLeuまたはVal;Leuの代わりにIleまたはVal;Lysの代わりにArgまたはGln;Metの代わりにLeuまたはIle;Pheの代わりにMet、LeuまたはTyr;Serの代わりにThr;Thrの代わりにSer;Trpの代わりにTyr;Tyrの代わりにTrpまたはPhe;およびValの代わりにIleまたはLeu。
【0089】
より実質的な変化が、あまり保存的でない置換を使用すること、例えば、以下を維持することに対するそれらの影響がより顕著に異なる残基を選択することによって、行われ得る:(a)例えば、シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造;(b)標的部位におけるポリペプチドの電荷もしくは疎水性;または(c)側鎖の嵩。ポリペプチド機能において最大の変化を生じると一般に予測される置換は、以下の置換である:(a)親水性残基、例えば、セリンもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンを置換する(または親水性残基、例えば、セリンもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンによって置換される);(b)システインもしくはプロリンが、任意の他の残基を置換する(またはシステインもしくはプロリンが、任意の他の残基によって置換される);(c)電気陽性(electropositive)側鎖を有する残基、例えば、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンが、電気陰性(electronegative)残基、例えば、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸を置換する(または電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンが、電気陰性残基、例えば、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸によって置換される);あるいは(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有さない残基、例えば、グリシンを置換する(または嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有さない残基、例えば、グリシンによって置換される)。これらのアミノ酸置換(または他の欠失および/もしくは付加)の影響は、レプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1タンパク質のネイティブ機能を分析することにより、バリアントレプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1タンパク質の機能を分析することで、評価することができる。
【0090】
OVによって発現される代謝調節性タンパク質(複数可)は、融合タンパク質の一部であり得る。したがって、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1を含む融合タンパク質を発現するOVは、本開示によって包含され、腫瘍/がんを処置するための開示される方法において使用され得る。一部の実施形態では、OVによって発現される融合タンパク質は、少なくとも2つの部分、代謝調節性タンパク質およびさらなるタンパク質を含み得る。具体的な例では、融合タンパク質の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチン、ケメリン、インスリンおよび/またはIGF-1であり得る。一部の例では、さらなるタンパク質は、サイトカインタンパク質、例えば、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子、またはそれらの任意の組合せを含む融合タンパク質であり得る。融合タンパク質の代謝調節性タンパク質部分は、ネイティブまたは変異した代謝調節性タンパク質(例えば(such a)、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するタンパク質)であり得る。一例では、さらなるタンパク質は、サイトカインタンパク質、例えば、ネイティブもしくは変異したサイトカイン、例えば、ガンマ鎖サイトカイン、例えば、IL-2サブファミリーのサイトカインタンパク質(例えば、ネイティブIL-2またはSuper IL-2(例えば、Levin et al., Nature 484:529-33, 2012を参照のこと)、IL-1ファミリーのサイトカインタンパク質(例えば、IL-18)、IFNサブファミリーのサイトカインタンパク質、IL-17ファミリーのサイトカインタンパク質、TGFスーパーファミリーのサイトカインタンパク質(例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3)、IL-4、IL-10、IL-13、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、TNFα、IFN-γに属するネイティブもしくは変異したタンパク質、またはそれらの任意の組合せである。一部の場合には、サイトカインタンパク質は、ネイティブヒトタンパク質であり得る。具体的な例では、融合タンパク質のサイトカインタンパク質部分は、IL-2(例えば、GenBank(登録商標)受託番号AAB46883.1)、Super IL-2(例えば、Levin et al., Nature 484:529-33, 2012を参照のこと)またはIL-15(例えば、GenBank(登録商標)受託番号AAI00963.1、またはGenBank(登録商標)受託番号AAI00963.1のaa10~127)であり得る。具体的な例では、融合タンパク質は、レプチンおよびIL-2、またはレプチンおよびIL-15を含み得る。一部の例では、融合タンパク質の代謝調節性タンパク質は、例えば、N末端またはC末端のいずれかにおいて、サイトカインタンパク質に直接結合される。一部の例(例えば、代謝調節性タンパク質およびサイトカインを含む融合タンパク質をコードし得る核酸を含む腫瘍溶解性ウイルス)では、代謝調節性タンパク質部分をコードする核酸およびさらなる部分(例えば、サイトカイン)をコードする核酸は、リンカー、例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20アミノ酸、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸から構成されるペプチドリンカーをコードする核酸の使用を介して、間接的に連結され得る。一部の例では、リンカーは、柔軟性があり得る。一例では、リンカーは、ポリアラニンであり得る。一例では、リンカーは、フレキシブルリンカー、例えば、GlyおよびSer残基を含むリンカー(例えば、GSG、GSGSGSまたはGGSGGGGSGG)であり得る。具体的な例では、融合タンパク質は、レプチン-GSG-IL-2またはレプチン-GSG-IL-15である。
2.例示的な腫瘍溶解性ウイルス
【0091】
開示される組換えOVは、任意のOVから生成され得る。OVは、それらの正常カウンターパートを温存しながら、悪性細胞に感染し、それを死滅させることができる(腫瘍溶解)ウイルス株である。腫瘍溶解は、ウイルスの天然の特性(天然に存在するOV、例えば、レオウイルス)、またはウイルスゲノムの操作の結果(遺伝子操作されたOV、例えば、アデノウイルス)のいずれかであり得る。
【0092】
一例では、組換えOVは、DNAウイルス、例えば、二本鎖DNA(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えば、HSV-1)、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス)または一本鎖DNAウイルス(例えば、パロウイルスおよびニワトリ貧血ウイルス、例えば、H-1PV)である。例示的なHSV OVには、T-VEC(例えば、黒色腫を処置するため)、G207(例えば、神経膠腫を処置するため)、NV1020(例えば、CRCを処置するため)、HFA10(例えば、乳がん、頭頸部がんおよび膵臓がんを処置するため)が含まれる。例示的なワクシニアOVには、vvDD(TK変異体株)、JX-594(TK変異体/GM-CSF発現株)(例えば、HCC、CRCを処置するため)およびGL-ONC1(TK変異体/HA発現株)(例えば、固形腫瘍を処置するため)が含まれる。一例では、チミジンキナーゼ(TK)および成長因子遺伝子(VGF)の遺伝的欠失を含むワクシニアウイルス、例えば、Western Reserve実験室株のワクシニアウイルスが使用される(例えば、Zeh et al., Mol. Ther 23:202-14, 2015を参照のこと)。例示的なアデノウイルスOVには、ONYX(E1B55変異体)、Ad5-D24、CFAd、DNX-2401、Ad5/3 D24-GMCSFおよびCGTG-102、ColoAd1、ならびにAd5/d hTERTおよびCD40リガンド発現株(例えば、神経膠腫および固形腫瘍を処置するため)が含まれる。
【0093】
一例では、組換えOVは、RNAウイルス、例えば、二本鎖RNA(例えば、レオウイルス)または一本鎖RNAウイルス(例えば、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、セネカバレーウイルスまたはECHO)である。
【0094】
本明細書で提供される組成物および方法において使用され得る他の例示的なOVには、Fountzilas et al. (Oncotarget, 8:102617-39, 2017)、Jhawar et al. (Front. Oncol., 7:202, 2017)およびGuo et al. (Front. Oncol., 8:555, 2017)(全てそれらの全体が本明細書で参照により組み込まれる)において提供されるOVが含まれる。一部の例では、組換えOVは、レンチウイルス、メンゴウイルスまたは粘液腫ウイルス(myxomavir)であり得る。
組換え腫瘍溶解性ウイルスを使用する方法
【0095】
例えば、開示される方法を使用して生成される、本明細書で提供される組換えOVは、例えば、腫瘍をin vivoで処置するために、がん免疫療法において使用され得る。一部の例では、がんは、黒色腫、肝細胞癌、乳がん、肺がん、腹膜がん、前立腺がん、膀胱がん、卵巣がん、白血病、リンパ腫、腎癌、膵臓がん、上皮癌、胃がん、結腸癌、十二指腸がん、膵臓腺癌、中皮腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiform)、星状細胞腫、多発性骨髄腫、前立腺癌、肝細胞癌、胆管肉腫、膵臓腺癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、結腸直腸がん、腸管型胃腺癌、子宮頸部扁平上皮細胞癌、骨肉腫、上皮卵巣癌、急性リンパ芽球性リンパ腫、骨髄増殖性新生物または肉腫を含み得る。一部の例では、がん細胞は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌または子宮からなる群から選択される対象の臓器中に存在し得る。一部の例では、がんは、転移性であり得る。
【0096】
固形および液性腫瘍は、開示される方法で処置され得る。処置され得る腫瘍の具体的な例には、白血病、リンパ腫、膵臓がん、結腸直腸がん、黒色腫、子宮頸がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、前立腺がん、HCC、RCCまたは頭頸部がんが含まれるがこれらに限定されない。一例では、がんは黒色腫である。一例では、がんは乳がんである。一例では、がんは腺癌である。他の例は、本明細書で提供される。
【0097】
対象(例えば、哺乳動物対象、例えば、ヒトまたは獣医学対象)における腫瘍(例えば、がん)を処置する方法、腫瘍(または腫瘍微小環境)中へのT細胞浸潤を増加させる方法、腫瘍もしくは腫瘍微小環境におけるT細胞の代謝活性を増加させる方法、またはそれらの組合せが、本明細書で提供される。かかる方法は、治療有効量の本明細書に開示される1つまたは複数の組換えOVを、対象に(例えば、全身または腫瘍内)投与し、それによって、腫瘍を処置するステップを含み得る。例えば、組換えOVが感染した腫瘍細胞におけるOVによる代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)の発現は、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍の近傍におけるT細胞活性を増加させることができる。一部の例では、組換えOVを使用する代わりに、これらの方法は、治療有効量の1つもしくは複数の代謝をモジュレートするタンパク質またはタンパク質(複数可)をコードする核酸分子を、対象に(例えば、全身または腫瘍内)投与し、それによって、腫瘍を処置するステップを含み得る。例えば、腫瘍細胞の近傍における代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)の発現は、例えば、腫瘍の近傍におけるT細胞活性を増加させることによって、抗腫瘍効果を有し得る。
【0098】
一部の例では、かかる方法は、治療有効量(therapeutically effect amount)の1つまたは複数のさらなる抗がん剤、例えば、化学療法(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗薬、ホルモンまたはホルモンアンタゴニスト)、放射線療法、生物製剤(例えば、モノクローナル抗体、例えば、PD-1もしくはPD-L1に特異的に結合し、それをアンタゴナイズする抗体、またはT細胞アゴニスト、例えば、4-1BB、OX40もしくはGITRのmAbアゴニスト)、手術、またはそれらの組合せを投与するステップをさらに含む。一部の例では、かかる対象には、開示される組換えOV(または代謝をモジュレートするタンパク質、もしくはそのタンパク質をコードする核酸分子)を投与する前、後、または前および後の両方に、対象への有効量のIL-2(例えば、10,000~100,000単位/kg体重)もまた投与される。
【0099】
例えば、有効量の開示される組換えOV(例えば、少なくとも1×106pfuの組換えOV、少なくとも2×106pfuの組換えOV、少なくとも5×106pfuの組換えOVまたは少なくとも1×107pfuの組換えOV)が対象に投与され、それによって、対象における腫瘍(例えば、原発性腫瘍および/または転移)を処置する。一部の実施形態では、対象に投与される有効量の本開示の組換えOVは、約1×103~約1×1012PFUの組換えOV、または約1×105~1×1010(from about
1 x 105 and 1 x 1010)PFUの組換えOV、または約1×105~1×108PFUの組換えOV、または約1×108~1×1010PFUの組換えOV、約1×1011PFUの組換えOV、1×1012PFUの組換えOV、1×1013PFUの組換えOV、1×1014PFUの組換えOV、または1×1015PFUの組換えOVを含み得る。
【0100】
一部の例では、組換えOVは、静脈内投与される。一部の例では、組換えOVは、腫瘍内投与される。一部の例では、組換えOVは、真皮下投与される。一部の例では、組換えOVは、直腸、尿道内、膣内、鼻腔内、髄腔内または腹腔内などの経路を介して投与される。
【0101】
一部の例では、開示される組換えOVが投与される対象は、化学療法、放射線治療、生物製剤治療、またはそれらの組合せによる処置が以前に成功しなかった(例えば、対象中の腫瘍は、サイズが有意には減少しなかった、またはさらにはサイズが増加したおよび/もしくは転移した)。一部の例では、対象は、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニスト、例えば、PD-1またはPD-L1に特異的に結合し、それをアンタゴナイズする抗体、例えば、アテゾリズマブ、MPDL3280A、BNS-936558(ニボルマブ)、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、CT011、AMP-224、AMP-514、MEDI-0680、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、MSB-0010718C、MGA-271、インドキシモド(Indoximod)、エパカドスタット、BMS-986016、MEDI-4736、MEDI-4737、MK-4166、BMS-663513、PF-05082566(PF-2566)、リリルマブ(Lirilumab)およびデュルバルマブに対して応答性でなかった腫瘍を有する(例えば、対象中の腫瘍は、サイズが有意には減少しなかった、またはさらにはサイズが増加したおよび/もしくは転移した)。一部の例では、対象は、T細胞アゴニスト、例えば、4-1BB、OX40またはGITRのアゴニストに対して応答性でなかった腫瘍を有する(例えば、対象中の腫瘍は、サイズが有意には減少しなかった、またはさらにはサイズが増加したおよび/もしくは転移した)(かかる試薬の特定の例は、本明細書で提供される)。
【0102】
一部の例では、この方法は、腫瘍微小環境中のT細胞をモニタリングするステップ、例えば、細胞の数を決定するステップ、ミトコンドリア活性(例えば、酸化的代謝)を決定または測定するステップ、およびTILのミトコンドリア量を決定または測定するステップを含む。
【0103】
一部の例では、この方法は、処置に応答した腫瘍成長をモニタリングするステップを含む。
コード配列
【0104】
組換えOVを含むベクターが、腫瘍の領域において(またはさらには腫瘍細胞において)代謝をモジュレートするタンパク質を発現させるために使用され得、ベクターは、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)をコードする核酸分子を含む。使用され得るベクターの例には、プラスミド、ウイルスベクター、例えば、OVが含まれる。
【0105】
核酸分子には、ペプチドをコードするDNA、cDNAおよびRNA配列が含まれる。コード配列におけるサイレント変異は、1つよりも多くのコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る、遺伝コードの縮重(即ち、重複性)から生じる。したがって、例えば、ロイシンは、CTT、CTC、CTA、CTG、TTAまたはTTGによってコードされ得;セリンは、TCT、TCC、TCA、TCG、AGTまたはAGCによってコードされ得;アスパラギンは、AATまたはAACによってコードされ得;アスパラギン酸は、GATまたはGACによってコードされ得;システインは、TGTまたはTGCによってコードされ得;アラニンは、GCT、GCC、GCAまたはGCGによってコードされ得;グルタミンは、CAAまたはCAGによってコードされ得;チロシンは、TATまたはTACによってコードされ得;イソロイシンは、ATT、ATCまたはATAによってコードされ得る。
【0106】
特定の種についてのコドン優先性およびコドン使用表は、その特定の種のコドン使用優先性を利用する、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1;一例では、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)をコードする単離された核酸分子を操作により作製するために使用され得る。例えば、ベクター(複数可)から発現される代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)は、目的の特定の生物によって(例えば、治療が導入される生物において)優先的に使用されるコドンを有するように設計され得る。
【0107】
代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸は、in vitro方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅系(TAS)、自家持続配列複製系(3SR)およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)によって、クローニングまたは増幅され得る。広範な種々のクローニングおよびin vitro増幅方法論が公知である。さらに、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸コード配列は、クローニング技法によって調製され得る。適切なクローニングおよび配列決定技法ならびに指示の例は、Sambrook et al. (ed.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring, Harbor, N.Y., 1989およびAusubel
et al., (1987) in ”Current Protocols in
Molecular Biology,” John Wiley and Sons, New York, N.Y.において見出される。
【0108】
代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸配列は、例えば、適切な配列のクローニングを含む任意の適切な方法によって、またはNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979のホスホトリエステル方法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979のホスホジエステル方法;Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862, 1981のジエチルホスホロアミダイト方法;例えば、例えばNeedham-VanDevanter et al., Nucl. Acids Res. 12:6159-6168, 1984に記載される自動合成機を使用する、Beaucage & Caruthers, Tetra. Letts. 22(20):1859-1862, 1981によって記載される固相ホスホロアミダイトトリエステル方法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体方法などの方法による直接的な化学的合成によって、調製され得る。化学的合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。これは、相補配列とのハイブリダイゼーションによって、または鋳型として一本鎖を使用するDNAポリメラーゼを用いた重合によって、二本鎖DNAに変換され得る。DNAの化学的合成は、一般に、約100塩基の配列に限定されるが、より長い配列が、より短い配列のライゲーションによって取得され得る。
【0109】
一例では、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])は、タンパク質をコードするcDNAをベクター中に挿入することによって調製される。挿入は、タンパク質(複数可)が産生されるようにタンパク質(複数可)がインフレームで読まれるように、行われ得る。タンパク質をコードする異種核酸配列を含有する組換えベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)を調製するための技法は、公知である。
【0110】
代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、さらなるタンパク質、例えばサイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)の核酸コード配列は、配列の挿入または組入れを可能にするように操作され得、(例えば、腫瘍細胞において)発現され得るプラスミド、ウイルスまたは他のビヒクルが含まれるがこれらに限定されない発現ベクター中に挿入され得る。ベクターからコード配列を発現させる方法は、公知である。発現ベクターは、細胞における代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)コード配列を含有する発現ベクターの移行および引き続く複製に必要なさらなるエレメントを含有し得る。かかるエレメントの例には、複製起点および選択マーカー、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子または抗生物質抵抗性マーカーが含まれるがこれらに限定されない。
【0111】
代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸配列は、発現制御配列に作用的に連結され得る。代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数)コード配列に作用的に連結した発現制御配列は、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])のタンパク質コード配列の発現が、発現制御配列と適合性の条件下で達成されるように、ライゲーションされる。例示的な発現制御配列には、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])コード遺伝子の前の開始コドン(即ち、ATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、および停止コドンが含まれるがこれらに限定されない。使用され得る発現制御エレメントの例には、lac系、ファージラムダのオペレーターおよびプロモーター領域、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルスまたはSV40に由来するプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。さらなる機能性エレメント(operational element)には、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに細胞における代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])のタンパク質をコードする核酸配列の適切な転写および引き続く翻訳に必要な任意の他の配列が含まれるがこれらに限定されない。一例では、プロモーターは、7.5プロモーターである。一例では、IRESが、発現を駆動するために使用される。一部の例では、2つのプロモーターが使用される。
【0112】
代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])タンパク質をコードするウイルスベクターが調製され得る。使用され得る例示的なウイルスベクターには、トリ、マウスおよびヒト起源の、ポリオーマ、SV40、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、アルファウイルスならびにレトロウイルスが含まれるがこれらに限定されない。バキュロウイルス(Autographa californica多核多角体病ウイルス(multinuclear polyhedrosis virus);AcMNPV)ベクターもまた使用され得る。他の適切なベクターには、オルソポックスベクター、トリポックス(avipox)ベクター、鶏痘ベクター、カプリポックス(capripox)ベクター、スイポックス(suipox)ベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクターおよびポリオウイルスベクターが含まれる。特定の例示的なベクターは、ポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルスおよび高度に弱毒化されたワクシニアウイルス(MVA)、アデノウイルス、バキュロウイルスなどである。使用されるポックスウイルスには、オルソポックス、スイポックス、トリポックスおよびカプリポックスウイルスが含まれる。オルソポックスには、ワクシニア、エクトロメリアおよびアライグマポックス(raccoon pox)が含まれる。使用されるオルソポックスの一例は、ワクシニアである。トリポックスには、鶏痘、カナリアポックスおよびハトポックス(pigeon pox)が含まれる。カプリポックスには、山羊痘および羊痘が含まれる。一例では、スイポックスは、ブタポックスである。使用され得る他のウイルスベクターには、他のDNAウイルス、例えば、ヘルペスウイルスおよびアデノウイルス、ならびにRNAウイルス、例えば、レトロウイルスおよびポリオが含まれる。
代謝をモジュレートするタンパク質の投与
【0113】
一部の例では、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])を発現させるために組換えOVを使用する代わりに、代謝をモジュレートするタンパク質、またはそのタンパク質をコードする核酸分子が、対象に投与される。
【0114】
一例では、ベクターは、腫瘍の領域において代謝をモジュレートするタンパク質を発現させるために使用され、ベクターは、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸分子を含む。使用され得るベクターの例には、プラスミド、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスが含まれ得る。別の例では、代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする裸の核酸分子が投与される。
【0115】
ネイティブまたはバリアント代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])をコードする核酸分子は、ベクター中に組み入れられ得る。ネイティブまたはバリアント代謝をモジュレートするタンパク質(例えば、サイトカインを含む融合タンパク質の一部であり得る、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数]、およびIGF-1)をコードする核酸配列、例えば、本明細書で提供されるGenBank(登録商標)受託番号に示される核酸配列(例えば、配列番号1、3、5または7)に対して少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列が、生成され得る。さらに、当業者は、機能的に等価な核酸、例えば、配列が異なるが同じタンパク質配列をコードする核酸を含有する種々のクローンを容易に構築することができる。一部の例では、かかる配列は、宿主細胞、例えば、所望のタンパク質(複数可)を発現させるために使用される宿主腫瘍における発現のために最適化される。
さらなる治療
【0116】
開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスで処置される対象は、1つまたは複数のさらなる治療、例えば、有効量の化学療法、有効量の放射線療法(例えば、腫瘍を根絶することまたはそれを収縮させることを助けるための、腫瘍部位への放射活性材料またはエネルギー(例えば、外部照射治療(external beam therapy))の投与)、有効量の生物製剤(例えば、治療的モノクローナル抗体、リガンドまたはアプタマー)、および手術(例えば、がんまたはその一部分の外科的切除)のうちの1つまたは複数を受けることができる。したがって、一部の例では、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスおよび1つまたは複数の抗がん剤(例えば、化学療法薬または生物製剤)のうちの1つまたは複数を含むキットが提供される。
【0117】
一例では、対象は、1つまたは複数の化学療法剤でさらに処置される。化学療法剤には、異常な細胞成長によって特徴付けられる疾患、例えばがんの処置において治療的有用性を有する任意の化学的薬剤が含まれる。当業者は、使用される化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison’s Principles of Internal Medicine, 14th edition;Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., (C) 2000 Churchill Livingstone, Inc;Baltzer, L., Berkery, R. (eds): Oncology
Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995;Fischer,
D.S., Knobf, M.F., Durivage, H.J. (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993;Chabner and Longo, Cancer Chemotherapy and Biotherapy: Principles and Practice (4th
ed.). Philadelphia: Lippincott Willians
& Wilkins, 2005;Skeel, Handbook of Cancer Chemotherapy (6th ed.). Lippincott Williams & Wilkins, 2003を参照のこと)。組合せ化学療法は、がんを処置するための1つよりも多い薬剤の投与である。
【0118】
使用され得る化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然産物、またはホルモンおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。アルキル化剤の例には、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタードまたはクロラムブシル)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンまたはダカルバジン)が含まれる。アルキル化剤の特定の非限定的な例は、テモゾロミドおよびダカルバジンである。代謝拮抗薬の例には、葉酸アナログ(例えば、メソトレキセート)、ピリミジンアナログ(例えば、5-FUまたはシタラビン)、およびプリンアナログ、例えば、メルカプトプリンまたはチオグアニンが含まれる。天然産物の例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンまたはビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドまたはテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンまたはマイトマイシンC(mitocycin C))および酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)が含まれる。種々雑多な薬剤の例には、白金配位錯体(例えば、シスプラチンとしても公知のシス-ジアミン-ジクロロ白金II)、置換されたウレア(例えば、ヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質(adrenocrotical)抑制薬(例えば、ミトタンおよびアミノグルテチミド)が含まれる。ホルモンおよびアンタゴニストの例には、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール(magestrol acetate))、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)およびアンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロン(testerone proprionate)およびフルオキシメステロン)が含まれる。
【0119】
1つまたは複数の代謝調節性タンパク質を発現する開示されるOVと組み合わせて使用され得る一般に使用される化学療法薬の例には、アドリアマイシン、アルケラン、アラ-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン(Carboplatinum)、シスプラチン(Cisplatinum)、サイトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-フルオロウラシル(5-fluoruracil)(5-FU)、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メソトレキセート、ミスラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(または他のタキサン、例えば、ドセタキセル)、ベルバン(Velban)、ビンクリスチン、VP-16が含まれるが、いくつかのより新たな薬物には、ゲムシタビン(ジェムザール)、ハーセプチン、イリノテカン(カンプトサール(Camptosar)、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼヴァリン(Zevelin)およびカルシトリオールが含まれる。使用され得る免疫調節薬の非限定的な例には、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(Imreg、New Orleans、La.から)、SK&F 106528およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)が含まれる。
【0120】
1つまたは複数の代謝調節性タンパク質を発現する開示されるOVと組み合わせて使用され得るさらなる治療剤には、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたはクロスリンカー、DNA合成阻害剤、DNAおよび/またはRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、遺伝子調節剤、血管新生阻害剤が含まれる。これらの薬剤(これらは、治療有効量で投与される)および処置は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。方法およびかかる薬剤の治療的投薬量は、公知であり、熟練した臨床医によって決定され得る。
【0121】
微小管結合剤は、チューブリンと相互作用して微小管形成を安定化または不安定化し、それによって、細胞分裂を阻害する、薬剤を指す。開示される治療と併せて使用され得る微小管結合剤の例には、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン(ナベルビン)、エポチロン、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、ポドフィロトキシンおよびリゾキシンが含まれるがこれらに限定されない。かかる化合物のアナログおよび誘導体もまた使用され得る。例えば、適切なエポチロンおよびエポチロンアナログは、国際公開第WO2004/018478号に記載されている。タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ならびに米国特許第6,610,860号;同第5,530,020号;および同第5,912,264号によって教示されるパクリタキセルのアナログが使用され得る。
【0122】
アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシンならびにそれらの誘導体およびアナログが含まれるがこれらに限定されない、適切なDNAおよび/またはRNA転写調節剤もまた、開示される治療と組み合わせた使用に適切である。対象に投与され得るDNAインターカレーターおよび架橋剤には、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、クロラムブシル、シクロホスファミドならびにそれらの誘導体およびアナログが含まれるがこれらに限定されない。治療剤としての使用に適切なDNA合成阻害剤には、メソトレキセート、5-フルオロ-5’-デオキシウリジン、5-フルオロウラシル(5-FU)およびそれらのアナログが含まれるがこれらに限定されない。適切な酵素阻害剤の例には、カンプトテシン、エトポシド、ホルメスタン、トリコスタチンならびにそれらの誘導体およびアナログが含まれるがこれらに限定されない。遺伝子調節に影響を与える適切な化合物には、1つまたは複数の遺伝子の発現の増加または減少をもたらす薬剤、例えば、ラロキシフェン、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ミフェプリストンならびにそれらの誘導体およびアナログが含まれる。
【0123】
開示される方法は、治療有効量の免疫療法を対象に投与するステップをさらに含み得る。使用され得る免疫調節薬の非限定的な例には、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(Imreg、New Orleans、La.から)、SK&F 106528およびTNF(腫瘍壊死因子;Genentech)が含まれる。免疫療法剤(immunotherpautic agent)は、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニスト、例えば、PD-1またはPD-L1に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)、例えば、アテゾリズマブ、MPDL3280A、BNS-936558(ニボルマブ)、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、デュルバルマブ、CT011、AMP-224、AMP-514、MEDI-0680、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280A、MSB-0010718Cであり得る。免疫療法剤はまた、CTLA-4、LAG-3またはB7-H3アンタゴニスト、例えば、トレメリムマブ、BMS-986016およびMGA271であり得る。
【0124】
一部の例では、投与されるさらなる治療剤は、T細胞アゴニスト、例えば、4-1BB(CD137)、OX40および/またはGITRのアゴニストである。OX40は、1型膜貫通糖タンパク質である。ヒトOX40配列は、191aaの細胞外N末端部分および36aaの細胞内領域を含む。OX40Lは、II型膜貫通糖タンパク質である。一例では、OX40アゴニストは、抗OX40抗体、例えば、モノクローナル抗体(mAb)(例えば、PF-04518600、MEDI-6469、MEDI-0562、MEDI-6383、MOXR-0916、BMS986178またはGSK3174998)である。天然のOX40リガンド(OX40L)を模倣することで、抗OX40モノクローナル抗体は、OX40受容体に選択的に結合し、それを活性化する。一例では、OX40アゴニストは、OX40リガンド、OX40L、例えば、天然のリガンド(例えば、ヒトOX40L)である。一例では、OX40アゴニストは、OX40アプタマーである。4-1BB(CD137/TNFSF9)は、複数のT細胞共刺激受容体を含むTNF受容体ファミリーに属する。これは、CD8およびCD4 T細胞を含むT細胞上で見出される。活性化されたT細胞の生存、拡大増殖(expansion)および増強されたエフェクター機能を促進するその能力と併せて、T細胞および抗原提示細胞の両方上での4-1BBの発現が、4-1BBを腫瘍免疫療法の標的にしている。一例では、4-1BBアゴニストは、4-1BBアゴニスト抗体、例えば、mAbである。開示される方法とともに使用され得る特異的なアゴニストmAbには、PF-05082566(ウトミルマブ(utomilumab))およびBMS-663513(ウレルマブ)が含まれる。一例では、4-1BBアゴニストは、4-1BBリガンド(4-1BBL)、例えば、天然の4-1BBL(例えば、ヒト4-1IBBL)またはストレプトアビジン化4-1BBL(SA-4-1BBL)複合体である。一例では、4-1BBアゴニストは、4-1BBアプタマーである。GITR(グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子(TNF)受容体またはTNFRSF18)は、他のTNF受容体ファミリーメンバー、例えば、OX40、CD27および4-1BBに対して相同性を有するI型膜貫通タンパク質である。GITRは通常、静止CD4+foxp3-およびCD8+T細胞上で低いレベルで発現されるが、CD4+CD25+foxp3+調節性T細胞(Treg)上では高いレベルで構成的に発現される。そのリガンドであるGITRL(TNFSF18)もまた、TNFスーパーファミリーのメンバーであり、DC、マクロファージおよび活性化されたB細胞を含む活性化された抗原提示細胞(APC)によって優勢に発現される。一例では、GITRアゴニストは、GITRアゴニスト抗体、例えば、mAbである。開示される方法とともに使用され得る特異的なGITRアゴニストmAbには、DTA-1、TRX518、MK-4166、MK-1248、AMG 228、INCAGN01876、GWN323(Novartisから)、CK-302(Checkpoint Therapeuticsから)およびBMS-986156が含まれる。一例では、GITRアゴニストは、GITRリガンド(GITRL)、例えば、天然のGITRLまたは多価GITRリガンド融合タンパク質である。一例では、GITRアゴニストは、ヒトIgG1 Fcドメインを有するヘキサマーGITRL分子であるMEDI1873である。一例では、GITRアゴニストは、GITRアプタマーである。
【0125】
抗血管新生剤の非限定的な例には、分子、例えば、タンパク質、酵素、多糖、オリゴヌクレオチド、DNA、RNAおよび組換えベクター、ならびに血管成長を低減させるまたはさらには阻害するように機能する小分子が含まれる。開示される方法とともに使用され得る適切な血管新生阻害剤の例には、アンジオスタチンK1-3、スタウロスポリン、ゲニステイン、フマギリン、メドロキシプロゲステロン、スラミン、インターフェロン-アルファ、メタロプロテイナーゼ阻害剤、血小板第4因子、ソマトスタチン、トロンボスポンジン(thromobospondin)、エンドスタチン、サリドマイドならびにそれらの誘導体およびアナログが含まれるがこれらに限定されない。例えば、一部の実施形態では、抗血管新生剤は、VEGFに特異的に結合する抗体(例えば、アバスチン、Roche)またはVEGF受容体に特異的に結合する抗体(例えば、VEGFR2抗体)である。一例では、抗血管新生剤には、VEGFR2抗体もしくはDMXAA(バジメザンまたはASA404としても公知;例えば、Sigma Corp.、St.Louis、MOから市販される)またはそれら両方が含まれる。抗血管新生剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、抗血管新生チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えば、スニチニブ、アキシチニブ(xitinib)およびダサチニブであり得る。これらは、個々にまたは任意の組合せで使用され得る。
【0126】
開示される方法とともに使用され得る例示的なキナーゼ阻害剤には、成長因子のリン酸化および活性化を防止する、グリベック(Gleevac)、イレッサおよびタルセバ、スニチニブ、ソラフェニブ、アニチニブ(anitinib)ならびにダサチニブが含まれる。使用され得る抗体には、成長因子および血管新生経路を遮断するハーセプチンおよびアバスチンが含まれる。これらは、個々にまたは組み合わせて使用され得る。
【0127】
一部の例では、投与されるさらなる治療剤は、生物製剤、例えば、モノクローナル抗体、例えば、3F8、アバゴボマブ(Abagovomab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、アフツズマブ、アラシズマブ(Alacizumab)、アレムツズマブ、ペンテト酸アルツモマブ(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトクス(Anatumomab mafenatox)、アポリズマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、CC49、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クリバツズマブテトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コナツムマブ、ダセツズマブ、デツモマブ(Detumomab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、ファルレツズマブ、フィギツムマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ(Imciromab)、インテツムマブ(Intetumumab)、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ(Iratumumab)、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ、マパツムマブ(Mapatumumab)、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ、ミツモマブ(Mitumomab)、モロリムマブ(Morolimumab)、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オファツムマブ、オララツマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、パニツムマブ、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペルツズマブ、ピンツモマブ(Pintumomab)、プリツムマブ(Pritumumab)、ラムシルマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomab paptox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、TGN1412、チシリムマブ(Ticilimumab)(トレメリムマブ)、ティガツズマブ、TNX-650、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ベルツズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ(Votumumab)、ザルツムマブ、またはそれらの組合せである。一部の例では、治療的抗体は、PD-1またはPDL-1に対して特異的である。
【0128】
一部の例では、対象には、有効量の骨髄非破壊的化学療法または放射線療法もまた投与される。例えば、対象は、有効量の骨髄非破壊的化学療法、例えば、シスプラチン、フルダラビン、イダルビシン、メルファラン、アラ-C、2-クロロデオキシアデノシン、抗胸腺細胞グロブリンおよびシクロホスファミドのうちの1つまたは複数の投与(例えば、10~50mg/kg体重)を受け得る。一部の例では、対象は、有効量の固形腫瘍照射、胸腺照射もしくは全身照射(例えば、2Gy)、またはそれらの組合せを受ける。
【0129】
一部の例では、組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与後、対象には、有効量のタクロリムス、シクロスポリンおよび/またはメソトレキセートのうちの1つまたは複数が投与される。
【0130】
一部の例では、組換えOVおよび1つまたは複数のさらなる治療は、例えば、かつ限定ではなく、処置されている対象に併せて投与され得るか、または同じ時点で、もしくは任意の順序で逐次的に、または異なる時点で投与され得る。
【0131】
さらなる治療は、種々の例では、液体剤形、固体剤形、坐剤、吸入用剤形、鼻腔内剤形、リポソーム製剤中、ナノ粒子を含む剤形、マイクロ粒子を含む剤形、ポリマー剤形、またはそれらの任意の組合せで投与され得る。ある特定の場合には、さらなる治療は、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間、またはそれよりも長い期間にわたって投与され得る。さらなる治療の投与の頻度は、ある特定の例では、毎日1回、毎日2回、1週間毎に1回、3週間毎に一回、4週間毎に1回(または1ヶ月に1回)、8週間毎に1回(または2ヶ月毎に1回)、12週間毎に一回(または3ヶ月毎に1回)、または24週間毎に一回(6ヶ月毎に1回)であり得る。ある特定の場合には、がんを有する対象を処置する方法は、有効量の、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードし得る1つまたは複数の核酸を含む本開示の組換えOV、例えば、組換えワクシニアウイルスを対象に投与するステップを含み得る。
臨床応答
【0132】
かかる方法は、腫瘍の体積もしくは重量を低減させること、転移の数を低減させること、転移のサイズもしくは重量を低減させること、またはそれらの組合せによって、対象における腫瘍を処置することができる。一部の例では、転移は、皮膚または皮下である。したがって、一部の例では、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与(単独でまたは別の抗がん治療と組み合わせて)は、腫瘍のサイズまたは体積を、例えば、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与なしまたは代謝をモジュレートするタンパク質コード配列(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])を含有しない組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%低減させることによって、対象における腫瘍を処置する。一部の例では、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与は、腫瘍の重量を、例えば、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与なしまたは代謝をモジュレートするタンパク質コード配列(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])を含有しない組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%低減させることによって、対象における腫瘍を処置する。一部の例では、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与は、転移のサイズまたは体積を、例えば、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与なしまたは代謝をモジュレートするタンパク質コード配列(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])を含有しない組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%低減させることによって、対象における腫瘍を処置する。一部の例では、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与は、転移の数を、例えば、開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与なしまたは代謝をモジュレートするタンパク質コード配列(例えば、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)、インスリンおよび/またはIGF-1[例えば、レプチン、インスリン、ケメリンおよびIGF-1のうちの1つまたは複数])を含有しない組換え腫瘍溶解性ウイルスの投与と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%低減させることによって、対象における腫瘍を処置する。一部の例では、これらの効果の組合せが達成される。
組成物およびキット
【0133】
開示される方法とともに使用され得る組成物およびキットもまた提供される。一部の例では、組成物またはキットは、例えば、薬学的に許容される担体と共に、代謝をモジュレートするタンパク質を発現する1つまたは複数の開示される組換え腫瘍溶解性ウイルスを含む。一例では、OVは、アディポカイン(例えば、レプチン、ケメリン、アディポネクチン、アペリン、IL-6、MCP-1、PAI-1、RBP4、TNFα、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンおよび/またはCTRP-4)を発現する。一例では、OVは、インスリンおよび/またはIGF-1を発現する。一例では、OVは、レプチンを発現する。アディポカイン、インスリンおよび/またはIGF-1は、第2のタンパク質、例えば、ガンマ鎖サイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)をさらに含む融合タンパク質の一部であり得る。一部の例では、第2のタンパク質は、サイトカインタンパク質、例えば、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子、またはそれらの任意の組合せを含む融合タンパク質であり得る。他の例は上に提供される。
【0134】
一例では、OVは、レプチン、インスリン、ケメリンまたはIGF-1(これらは、ガンマ鎖サイトカイン、例えば、IL-2またはIL-15をさらに含む融合タンパク質の一部であり得る)を発現する。具体的な例では、OVは、タリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)である。具体的な例では、OVは、Western Reserve株のワクシニアウイルスである。具体的な例では、OVは、ワクシニアであり、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチンである。具体的な例では、OVは、Western Reserve株のワクシニアウイルスであり、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチンである。具体的な例では、OVは、Western Reserve株のワクシニアウイルスであり、1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質は、レプチン-IL-2またはレプチン-IL-15融合タンパク質である(レプチンおよびサイトカインは、リンカーによって結合され得る)。
【0135】
キットは、さらなる試薬、例えば、1つまたは複数の抗がん試薬、例えば、化学療法薬、生物製剤、またはそれらの組合せを含み得る。一部の例では、キット中で、OVおよび抗がん試薬は、別々のコンテナ中に存在する。
【0136】
一例では、キットは、生物製剤、例えば、PD-1アンタゴニスト;PD-L1アンタゴニスト;CTLA4アンタゴニスト;T細胞アゴニスト;またはそれらの組合せをさらに含む。一例では、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストおよびT細胞アゴニストは、mAbである。例示的なT細胞アゴニストには、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニストおよびGITRのアゴニスト(agonists GITR)、例えば、mAb、アプタマー、またはこれらの受容体に対するリガンドが含まれる。キット中に含まれ得る4-1BBの例示的なアゴニストには、mAb、例えば、PF-05082566(ウトミルマブ)もしくはBMS-663513(ウレルマブ)、またはリガンド(例えば、4-1BBLまたはSA-4-1BBL)が含まれる。キット中に含まれ得るOX40の例示的なアゴニストには、mAb(例えば、PF-04518600、MEDI6469、MEDI0562、MEDI6383、MOXR0916、BMS986178またはGSK3174998)またはリガンド(例えば、OX40L)が含まれる。キット中に含まれ得るGITRの例示的なアゴニスト(exemplary agonists of agonists GITR)には、GITRアゴニストmAb、例えば、DTA-1、TRX518、MK-4166、MK-1248、AMG228、INCAGN01876、GWN323(Novartisから)、CK-302(Checkpoint Therapeuticsから)またはBMS-986156が含まれる。キット中に含まれ得るGITRの例示的なアゴニストには、GITRリガンド(GITRL)、例えば、天然のGITRLまたは多価GITRリガンド融合タンパク質、例えば、MEDI1873が含まれる。
【0137】
本明細書に開示される組成物、例えば、本明細書で提供されるOVを含むコンテナもまた提供される。一部の実施形態では、コンテナは、シリンジである。一部の例では、シリンジは、針を含む。シリンジ中のプランジャーは、吸引の間にプランジャーが偶然に外れるのを防止するためのストッパーを有し得る。使い捨てシリンジは、一般に、単一用量のワクチンを含有する。シリンジは、針の取り付け前には、先端を密封するための先端キャップを有し得る。非限定的な例では、先端キャップは、ゴム、例えば、ブチルゴムで作製される。
【0138】
他の実施形態では、コンテナは、バイアルである。一部の例では、バイアルは、ガラス、例えば、無色ガラス、例えば、ホウケイ酸塩で作製される。他の例では、バイアルは、プラスチックで作製される。バイアルは、ストッパー、例えば、ゴムストッパー、またはキャップ、例えば、シリンジの挿入を可能にするように適応されたキャップ含み得る。一部の例では、バイアルは、単一用量の組成物を含む。他の例では、バイアルは、複数用量の組成物、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10またはそれよりも多くの用量の組成物を含む。一般に、バイアルは、組成物を添加する前に無菌化される。
【0139】
本明細書に開示されるコンテナを含むキットもまた提供される。一部の実施形態では、キットは、バイアル(例えば、組成物を含有するバイアル)、シリンジ(例えば、空のシリンジ、または組成物を含有するシリンジ)、針、またはそれらの任意の組合せを含む。組成物は、懸濁物中、例えば、PBSまたは他の薬学的に許容される担体中にあり得る。あるいは、組成物は、エンドユーザーによって(例えば、PBSまたは他の薬学的に許容される担体を用いて)次いで復元され得る、乾燥または粉末化された形態、例えば、凍結乾燥またはフリーズドライされた形態であり得る。一部の例では、コンテナは、薬学的に許容される担体、例えば、PBSを含み得、または薬学的に許容される担体、例えば、PBSは、別々のコンテナ中にあり得る(例えば、組成物がフリーズドライまたは凍結乾燥される場合)。一部の例では、キット中のコンテナは、1つまたは複数の安定剤をさらに含む。一部の例では、キットは、対象への組成物の投与を可能にするデバイスもまた含む。かかるデバイスの例には、シリンジが含まれる。キットは、組成物の詳細を含む小冊子、例えば、組成物内のOVの投与および/または詳細についての指示と共に、(例えば、同じ箱中に)包装され得る。
【実施例0140】
(実施例1)
材料および方法
この実施例は、以下の実施例に記載される結果を生成するために使用した材料および方法を記載する。
マウス
【0141】
C57/BL6マウスおよびPtenf/fBrafV600ETyrCre.ERマウスは、Jackson Laboratoriesから取得し、組織内で繁殖させた。
腫瘍系
【0142】
腫瘍実験を、タモキシフェンを塗布したPtenf/fBrafV600ETyrCre.ERから形成された黒色腫腫瘍に由来する単一細胞クローン(クローン24)を使用して実施した。レプチンのcDNAを、OriGeneから取得し、クローン24中にトランスフェクトし、その後ハイグロマイシン選択した(空のベクタープラスミドを対照として使用した)。単一細胞クローンを選択し、対照プラスミドについては細胞系CL24ハイグロとして、レプチン発現性細胞系についてはCL24レプチンとして成長させた。
腫瘍モデル
【0143】
C57BL/6Jマウスに、0日目に、CL24ハイグロまたはCL24レプチン黒色腫細胞系(真皮内で250,000細胞)を注射し、腫瘍がいずれかの方向で15mmに達するまで追跡した。腫瘍を、デジタルキャリパーを用いて一日おきに測定し、腫瘍サイズを、L×Wによって計算した。腫瘍を、腫瘍がおよそ20mm2に達した時点で、PBS、VV対照またはVVレプチン(2.5×106PFU)で腫瘍内処置し、腫瘍成長を、PBSで処置した腫瘍がいずれかの方向で15mmに達するまでモニタリングした。CD8枯渇実験のために、マウスに、マウス1匹当たり200ugの抗CD8(YTS)を、0日目に開始して一日おきに注射した。7日目に、マウスに、CL24ハイグロまたはCL24レプチン黒色腫細胞系(真皮内で250,000細胞)を注射し、腫瘍がいずれかの方向で15mmに達するまで追跡した。
腫瘍溶解性ウイルス産生
【0144】
野生型ワクシニアウイルスWestern Reserve(WR)株は、American Type Culture Collection(BEI Resources)から取得した。WR.TK-.Luc+は以前に記載されており(Kirn et al., PLoS Med 2007; 4(12):e353)、ウイルスpSE/Lプロモーターからホタルルシフェラーゼを発現させ、p7.5プロモーターからマウスレプチン(Lep)を発現させるように、クローニングされたpSC65プラスミド(Bernie Moss教授、NIHから)を用いて、本研究のために構築した。これを、ウイルスTK遺伝子中に組み換えた。レプチンを発現するワクシニアウイルスを、Gibson Cloning(New England BioLabs)を使用してレプチン遺伝子をワクシニアプラスミド中にクローニングすることによって生成した。レプチン遺伝子は、マウスレプチンORF哺乳動物発現プラスミド(Sino Biological Inc.)からクローニングした。
リンパ節および腫瘍からのT細胞単離
【0145】
脾臓およびリンパ節のCD8+T細胞を、野生型マウスから単離した。組織を収集し、機械的に破壊し、B220、CD11b、CD11c、CD16/32、CD19、CD25、CD105、NK1.1、TCRγδおよびCD4に対する抗体からなるビオチン化抗体カクテル(BioLegend)と共にインキュベートした。洗浄ステップの後、細胞を、ストレプトアビジンコーティングした磁性ナノ粒子(BioLegend)と共にインキュベートした。洗浄後、磁場を適用し、接触していない細胞を除去することによって、CD8+細胞を単離した。
【0146】
腫瘍浸潤性リンパ球の単一細胞懸濁物を取得するために、腫瘍保有マウスを屠殺し、腫瘍を収集した。切除した腫瘍全体に、10%FBSを有する緩衝化RPMI中2mg/mLのVI型コラゲナーゼ、2U/mLのヒアルロニダーゼ(hyluronidase)(Dispase)および10U/mLのDNAse I(Sigma)を、20Gの針を使用して反復注射し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、腫瘍を、すりガラススライドの間で機械的に破壊し、濾過して粒状物を除去し、次いで、2分間ボルテックスした。多くの実験(特に選別の前の)では、腫瘍ホモジネートから、CD105-ビオチン媒介性磁気枯渇を使用して、腫瘍細胞を減量させた。
代謝アッセイ
【0147】
T細胞代謝出力を、Seahorseテクノロジーによって、以前に記載されたように測定した(Scharping et al., Cancer Immunol. Res. 2017; 5:9-16)。簡潔に述べると、100,000個のT細胞を、25mMのグルコース、2mMのグルタミンおよび1mMのピルビン酸ナトリウムを含有する最小非緩衝化アッセイ培地中で、Cell-TakコーティングしたXFe96プレート中に播種した。細胞は、2μMのオリゴマイシン、2μMのFCCP、10mMの2-デオキシグルコースおよび0.5μMのロテノン/アンチマイシンAの逐次注入を受けた。
【0148】
単一細胞代謝能を、フローサイトメトリーによってアッセイした。具体的には、2-NBD-グルコース(Cayman Chemical)およびMitoTracker FM色素(ThermoFisher)を使用して、細胞がグルコースを取り込む性向またはそれらのミトコンドリアを介して中間体を生成する性向についてアッセイした。非流入領域および流入領域リンパ節または腫瘍の調製物を、5%FBS含有培地中20μMの2-NBDGで、37℃で30分間パルスした。細胞を、表面染色し、MitoTracker FM色素をロードして、ミトコンドリアの量および機能を測定した。
イムノブロッティング
【0149】
イムノブロッティングを、以前に記載されたように実施した(Delgoffe et
al., Mol. Immunol. 2009; 46(13):2694-8)。レプチン抗体は、マウスレプチン/OB抗体(R&D system BAF498)から取得した。
ELISA
【0150】
ELISAプレートを、50uLの捕捉抗体(PBS中1:1000)でコーティングし、4℃で一晩置いた。次の日、プレートを、洗浄緩衝液(1LのPBS+0.05%Tween 20)で3回洗浄した。プレートを、200uLのブロッキング緩衝液(200mLのPBS+1%BSA)で室温で1時間ブロッキングした。試料を、検量線試料と一緒に、ブロッキング緩衝液中でウェルに添加した(50μl)。プレートを室温で2時間インキュベートした。二次抗体を添加し(ブロッキング緩衝液中1:2000)、室温で1時間インキュベートした。1時間後、HRPストレプトアビジン(ブロッキング緩衝液中1:2000)を添加し、室温で30分間インキュベートした。40μLのTMB基質Aおよび40μLのTMB基質Bを添加して、試料を発色させた。プレートを、450nmにおいてプレートリーダーで読み取った。レプチンElisa実験に使用した抗体:捕捉マウスレプチン/OB抗体(R&D systems AF498)および検出抗体マウスレプチン/OB抗体(R&D system BAF498)。
TCR配列決定
【0151】
異なる処置を行ったCL24腫瘍を切除し、ゲノムDNA抽出(DNeasy QIAGENキット)のために処理した。次いで、TCR配列決定を、immunoSEQアッセイ(Adaptive Biotechnologies)に従って実施した(Robins et al., Blood 2009; 114(19):4099-107)。
単一細胞RNA配列決定分析
【0152】
CL24腫瘍を、PBS、VV対照またはVVレプチン(2.5×106PFU)で7日間腫瘍内処置した。腫瘍浸潤性リンパ球を単離し、CD45+リンパ球について選別した。CD45+細胞を、Chromium機器(10X Genomics、Pleasanton、CA)中にロードし、得られたバーコード化cDNAを使用して、ライブラリーを構築した。次いで、各試料由来のライブラリーを、RNA-配列決定した。細胞-遺伝子ユニーク分子識別子計数マトリックスを、Seurat(Satija et al., Nat Biotechnol 2015;33(5):495-502)を使用して生成および分析し、Cluster 3.0(de Hoon et al., Bioinformatics 2004; 20(9):1453-4)を使用して階層的にクラスタリングした。
(実施例2)
腫瘍の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス処置は、腫瘍免疫微小環境をリモデリングする
【0153】
腫瘍溶解性ウイルス様T-vecは、がん処置のためのFDA承認された免疫療法であるが(例えば、Andtbacka et al., J Clin Oncol 2015; 33(25):2780-8を参照のこと)、これらの薬剤の免疫的帰結は、不明瞭である。腫瘍溶解性ウイルス感染によって誘導された免疫浸潤物を、体系的にプロファイリングした。腫瘍溶解性ウイルス治療の1つの主要な制限は、T-VECを含む多くのウイルスが、低酸素中では効率的に複製しないということである(Friedman et al., Transl Oncol 2012; 5(3):200-7;Pipiya et al., Gene Ther 2005; 12(11):911-7)。したがって、容易に操作され、その独自のポリメラーゼをコードし、低酸素性腫瘍細胞において複製機能を維持する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを使用した。Western Reserve実験室株のワクシニアウイルスを使用した。このウイルスは、強力な腫瘍溶解性ウイルス剤を生成する、チミジンキナーゼおよびワクシニア成長因子遺伝子の遺伝的欠失を保有する(Buller et al., Nature 1985; 317(6040):813-5;Whitman et al., Surgery 1994; 116(2):183-8;Puhlmann et al., Cancer Gene Ther 2000; 7(1):66-73)。タモキシフェン投与後に黒色腫を発達させたPten
f/fBraf
LSL.V600ETyr2
Cre.ERマウスの単一細胞から生成した、クローン24(CL24)と命名された黒色腫細胞系(Dankort et al., Nat Genet 2009; 41(5):544-52)を使用した(
図1A)。この細胞系は、C57/BL6マウスと同系であり、(しばしば使用されるB16とは対照的に)ヒト黒色腫に共通するドライバー変異を有する。さらに、このCL24細胞系は、浸潤性が低く(
図1B)、抗PD1単剤療法に対して完全に非感受性である(
図1C)。
【0154】
ワクシニアウイルスを、腫瘍のサイズが4mmに達した時点で腫瘍内注射したところ、それにより、実質的な腫瘍退行をもたらしたが、完全奏効をもたらさなかった(
図2A)。腫瘍溶解性ウイルスによって誘導された腫瘍浸潤物の特徴を決定するために、PBSまたはワクシニア感染したクローン24腫瘍のCD45
+腫瘍浸潤性白血球の単一細胞RNA-配列決定を、10X Genomicsプロファイリングによって決定した。教師なしクラスタリングデータ分析を使用して、CD45+細胞を、別個の群の免疫集団へと分離した(
図2B)。次いで、これらの免疫集団を、各集団について公知のマーカーの発現に基づいて分類した(
図3A~3C)。重要なことに、これらの分析は、腫瘍がいまだ退行していなかったときに実施された。このデータは、総体として分析した場合に公知の免疫細胞集団を同定したが、処置群に基づくサブセット化により、ワクシニアウイルス腫瘍溶解性免疫療法が腫瘍免疫微小環境における著しい変化を誘導したことが明らかになった(
図2C)。ワクシニア感染した腫瘍は、新たなエフェクターおよびエフェクター様CD8
+T細胞、M1マクロファージの大量流入、ならびに機能障害性または抑制性細胞、例えば、MDSC、M2マクロファージ、疲弊したT細胞および調節性T細胞の喪失を示した(
図2C)。したがって、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、腫瘍免疫微小環境の劇的なリモデリングを誘導するが、これは、腫瘍誘導性免疫抑制および最終的な増生に最終的には屈する(
図2A)。
(実施例3)
腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、重症の代謝欠損を有する疲弊していないT細胞浸潤を促進する
【0155】
腫瘍溶解性ウイルス処置したマウス由来のTILのフローサイトメトリー分析により、新たな免疫細胞の流入はCD8
+T細胞が優勢であるようであることが確認され、一方、本発明者らは、T調節性T細胞の減少を観察している(
図4A)。これらの細胞の共阻害マーカー発現の分析は、Tim3単独の発現(
図4B)ならびにPD1の低い~中間の発現(
図C)を有するCD8
+T細胞の流入を示し、これは、これらの細胞が、再活性化された腫瘍常在細胞ではなく、むしろ新たな移住細胞であり、いまだ完全には疲弊していないT細胞であることを示している。共阻害分子発現は、T細胞機能障害に関連するが、代謝不全もまた、T細胞機能を予測することができる。ミトコンドリア含量を、代謝充足についてのマーカーとして分析したところ、発現の「疲弊していない」共阻害分子パターンにもかかわらず、腫瘍溶解性ウイルス処置された腫瘍からのTILが、代謝疲弊になおも屈したことが明らかになった(
図4D)。
(実施例4)
レプチンは、活性化されたT細胞を代謝的にリプログラムする
【0156】
腫瘍溶解性ウイルスが、代謝不全になおも屈した新たな免疫浸潤物を刺激したことを考慮して、それらが腫瘍微小環境中でより競合的であるように新たなT細胞を強化する方法を同定した。かかる薬剤がウイルスベクター中でコードされ得るように、遺伝的にコードされたペイロードを利用することが目的であった。レプチンは、エネルギー恒常性をモジュレートするだけでなく、炎症性応答を促進するサイトカインである。T細胞に対するレプチンの代謝リプログラミング機能を決定するために、末梢リンパ節(LN)から単離された活性化されたCD8+T細胞を、漸増濃度のレプチン中で培養した。
【0157】
レプチンは、CD8
+T細胞の基底酸素消費率ならびに予備呼吸能(長寿命のメモリーT細胞を規定するミトコンドリア予備量の尺度(20))の両方における増加を誘導したが(
図5A)、細胞外酸性化によって測定されるように、活性化されたT細胞が解糖を実施する能力に対してはほとんど影響を有さなかった(
図5B)。フローサイトメトリー分析は、このデータを補強し、より高い酸化的リン酸化を示す、レプチン曝露下でのミトコンドリア量における増加を示すが、グルコース取込みにおける変化は観察されない(
図5C)。したがって、レプチンは、それらの酸化活性および能力を増加させるようにT細胞を刺激することができ、これは、腫瘍微小環境における高度に望ましい代謝リプログラミング事象である。
【0158】
レプチン受容体の発現を、以前に観察されたように(18)、マウスT細胞において確認した(
図5D)。さらに、黒色腫腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)は、リンパ節中のT細胞と比較して、より高いレベルのレプチン受容体を発現する(
図5D)。共阻害分子の発現レベルに従ってTILをカテゴライズすると、レプチン受容体のより高い発現が、PD1およびTim3の高い発現と共に、活性化されたまたは疲弊したT細胞において観察された(
図5E)。したがって、レプチンは、T細胞において代謝リプログラミングを促進することができ、腫瘍浸潤性T細胞は、その受容体を保有する。
(実施例5)
腫瘍微小環境における局所的レプチンレベルを上昇させると、抗腫瘍免疫が可能になる
【0159】
腫瘍浸潤性リンパ球との関係におけるレプチンの治療効果は、以前には調査されていない。レプチンは、腫瘍浸潤性リンパ球の代謝能を増強することができ、結果的に、腫瘍におけるそれらの機能を増強するという仮説が立てられた。
【0160】
組換えレプチンで腫瘍保有マウスを処置する初期の研究は、全身送達が、比較的高い用量であっても、腫瘍間質液中のレプチンレベルを実質的に改善することができないことを示した。そこで、レプチンの代謝リプログラミング機能を分離して(腫瘍溶解性ウイルス感染を除いて)最初に試験するために、CL24は、空のベクター(CL24
ハイグロ)またはレプチン(CL24
レプチン)を発現するように操作された細胞であった。CL24
レプチン細胞は、レプチンを細胞内発現し(
図6A)、それを培養物上清中に放出した(
図6B)。in vitroでは、CL24
レプチンは、対照プラスミドを発現するCL24(CL24
ハイグロ)と匹敵する成長動態を示した(
図6C)。しかし、CL24
レプチン細胞をC57BL/6Jマウス中に真皮下注射した場合、これらは、CL24
ハイグロ対照と比較して実質的により緩徐な速度で成長し(
図7A)、有意に延長された生存を有し(
図7B)、これは、レプチンが宿主免疫を刺激し得ることを示している。実際、CD8
+T細胞の枯渇(
図6D)により、CL24
レプチン腫瘍において観察された制御された腫瘍成長が、機能的免疫を必要としたことが明らかになった(
図7C)。したがって、腫瘍微小環境中のレプチンを局所的に上昇させることは、免疫媒介性腫瘍成長制御を誘導した。10日目(この時点で、腫瘍は、群間で同等なサイズのものであった)における腫瘍浸潤性リンパ球の分析は、対照腫瘍と比較して、レプチンを発現する腫瘍において、CD8
+T細胞の浸潤の増加を示した(
図7D)。B細胞などの他の免疫集団ではなく、ナチュラルキラー細胞の浸潤の増加が観察された(
図6E)。
(実施例6)
レプチンは、腫瘍浸潤性リンパ球の機能を代謝的に改善する
【0161】
レプチンがT細胞を機能的に改善したことが観察された。レプチン過剰発現性腫瘍に浸潤するCD8
+T細胞は、PMAおよびイオノマイシンによる再刺激の際に、上昇したレベルのIFNγおよびTNFαを合成した(
図7E)。さらに、レプチン発現性腫瘍に浸潤するCD8
+T細胞は、Ki67染色によって測定されるように、in situでより増殖性である(
図7F)。レプチンは、JAK-Stat3およびMAPK経路を介してレプチン受容体を介して下流シグナルを活性化することができ、実際、レプチン過剰発現性腫瘍に浸潤するT細胞は、AKT、STAT3およびp38-MAPKのより高い定常状態リン酸化を有した(
図6F)。したがって、これらの細胞は、より表現型的に「疲弊」しているように見えるかもしれないが、レプチン誘導性代謝的支持により、細胞は、多機能性、増殖性になることができ、腫瘍制御を媒介することができた。
(実施例7)
レプチン発現性腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、優れた抗腫瘍応答を誘導する
【0162】
レプチン発現性ワクシニアウイルスを生成するために、レプチン遺伝子(Lep)を、ワクシニアp7.5プロモーターの制御下で、ルシフェラーゼ発現性pSC65ベクター中にクローニングした。レプチン含有組換えワクシニアウイルス(VV
レプチン)および対照ルシフェラーゼ発現性ウイルス(VV
対照)を生成し、CL24細胞を感染させるために使用した。CL24細胞におけるレプチンの発現を、感染の24時間後および48時間後に分析し(
図8A)、培地中のレプチンの放出も分析した(
図8B)。CL24腫瘍を保有するマウスを、2.5×10
6PFUの用量でVV
対照またはVV
レプチンで腫瘍内処置したが、これは、腫瘍において特異的にルシフェラーゼ発現を誘導し(
図8D)、腫瘍間質液中の遊離レプチンを検出するのに十分であった;白色脂肪(WA)組織間質液は、陽性対照として機能した(
図8C)。さらに、TILにおけるレプチン受容体(レプチンR)発現の分析は、3つの処置条件間で変化を示さない(
図8E)。
【0163】
以前の結果と一致して、対照ウイルスを注射した全てのマウスが、最終的な腫瘍増生をもたらす部分奏効を経験した。この高悪性度黒色腫系は、抗PD1免疫療法に対して完全に抵抗性であるので(
図1C)、対照ウイルスに対し部分奏効が得られたことは、特に素晴らしかった。VV
対照で処置したマウスとは対照的に、同じ用量のVV
レプチンを注射したマウスは、かなりの割合の完全奏効をを含め、より大きい退行を有した(
図9A)。
【0164】
トランスクリプトームプロファイルを、腫瘍浸潤物の分析で確認した。scRNAseqデータと一致して、VV
対照およびVV
レプチンで処置した腫瘍における免疫浸潤物の分析は、両方の腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍部位においてT細胞浸潤における増加を誘導したことを示した(
図9B)。腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスおよび腫瘍抗原に対する新たなT細胞プライミングを誘導すると主張されてきたので(Brown et al., Sci Transl Med 2017; 9(408);Russell et
al., Cancer Cell 2018;33(4):599-605)、腫瘍部位におけるT細胞レパートリーに対する処置の効果を試験した。TCR配列決定により、PBS処置した腫瘍は浸潤性T細胞をほとんど有さず、それらの浸潤性T細胞ではオリゴクローン性集団が優勢であったが、ワクシニアによる処置は、ポリクローン性レパートリーを有する新たなT細胞の実質的な流入を生じた(
図9C)ことが明らかになった。レプチン操作されたワクシニアは、わずかにクローン性が低い集団を有し、これは、この時点(ウイルス処置の7日後)において、一部のクローンが優先的に増えていたことを示唆している(
図9D)。クローン性増殖は、一部のメモリー前駆体の拡大増殖を示し得、実際に、レプチン操作されたVVは、より高いパーセンテージのCD127
hiメモリー前駆体を誘導した(
図9E)。
【0165】
レプチンは、調節性T細胞(T
reg)を阻害し、自己免疫疾患における炎症性応答をモジュレートする。さらに、腫瘍溶解性ウイルス治療は、T
reg細胞の浸潤を低減させ得る(Barve et al., J Clin Oncol 2008; 26(27):4418-25;Ricca J et al., Mol Ther 2018; 26(4):1008-19)。一貫して、VV
対照およびVV
レプチンの腫瘍溶解性ウイルス処置後に、PBS処置と比較したT
reg集団のパーセンテージにおける減少が、VV
対照とVV
レプチンとの間で同等のレベルで観察され(
図8F)、このことは、レプチンが、T
reg細胞モジュレーションのレベルで必ずしも作用していなかったことを示している。
【0166】
メモリーT細胞は、ミトコンドリア予備量の増加を有し、それらのメモリー機能についてその予備量(reserve)に依存する(van der Windt et al., PNAS 2013; 110(35):14336-41)。このように、レプチンは、CD8
+T細胞を代謝的に支持し得る。VV
レプチンで処置した腫瘍中のCD8
+T細胞は、VDAC染色によって測定されるように、ミトコンドリア量における増加を示した(
図10A)。さらに、CD8
+T細胞浸潤処置した腫瘍の分析により、VV
レプチンが、以下のように質的に優れた腫瘍浸潤物を誘導したことが明らかになった:サイトカインコンピテンシーにおける増加(
図10B)、ならびに増殖能の増加(
図10C)によって示される、腫瘍部位におけるT細胞活性の増加。
【0167】
まとめると、これらのデータは、腫瘍溶解性ウイルス処置によって誘導された新たに浸潤したT細胞に代謝的支持を提供することによって、優れた抗腫瘍能を有するメモリー前駆体集団が、優先的に増え、完全奏効を媒介することができることを実証している。
【0168】
開示される発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は、本発明の例に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでないことを認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神の内に入る全てを、本発明者らの発明として特許請求する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする核酸分子
を含む組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目2)
前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結されている、項目1に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目3)
単純ヘルペスウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、セネカバレーウイルス、ECHOウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルスまたはパロウイルスである、項目1または2に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目4)
単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポックスウイルスまたはワクシニアウイルスである、項目1から3のいずれか一項に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目5)
HSVである、項目4に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目6)
前記HSVがタリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)である、項目5に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目7)
ポックスウイルスである、項目4に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目8)
前記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、項目7に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目9)
前記ワクシニアウイルスが、Western Reserve株のワクシニアウイルスである、項目8に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目10)
前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質が、アディポカイン、インスリン、インスリン様成長因子1、またはそれらの任意の組合せを含む、項目1から9のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目11)
前記アディポカインが、レプチン、アディポネクチン、アペリン、ケメリン、インターロイキン-6(IL-6)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、ビスファチン、オメンチン、バスピン、プログラニュリンまたはCTRP-4である、項目10に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目12)
前記アディポカインがレプチンである、項目11に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目13)
前記腫瘍溶解性ウイルスが前記ワクシニアウイルスであり、前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質がレプチンを含む、項目8から12のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目14)
前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質が融合タンパク質を含み、前記融合タンパク質が、第1のタンパク質および第2のタンパク質を含み、前記第1のタンパク質が、前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質のうちの1つを含む、項目1から13のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目15)
前記第2のタンパク質が、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび/または腫瘍壊死因子である、項目14に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目16)
前記第2のタンパク質がサイトカインである、項目14または15に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目17)
前記サイトカインが、IL-1、IL-2、IL-17、IL-18、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、IL-4、IL-10、IL-13、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、TNFα、IFN-γ、またはそれらの任意の組合せである、項目15または16に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目18)
前記第1のタンパク質が、レプチン、インスリン、ケメリンまたはインスリン様成長因子1であり、前記第2のタンパク質が、インターロイキン(IL)-2またはIL-15である、項目14から17のいずれか一項に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目19)
前記融合タンパク質が、前記第1のタンパク質と前記第2のタンパク質との間にリンカーを含む、項目14から18のいずれか一項に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目20)
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアであり、前記第1のタンパク質がN末端レプチンであり、前記第2のタンパク質が、C末端IL-2またはIL-15であり、前記第1のタンパク質および第2のタンパク質が、前記リンカーによって結合される、項目19に記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目21)
前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質が、配列番号2、4、6または8に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の配列同一性を含む、項目1から20のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目22)
前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質をコードする前記核酸分子が、配列番号1、3、5または7に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の配列同一性を含む、項目1から21のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目23)
前記プロモーターが、前記1つまたは複数の代謝をモジュレートするタンパク質にとってネイティブではない、項目2から22のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目24)
前記プロモーターが構成的プロモーターである、項目2から23のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス。
(項目25)
対象における腫瘍を処置する方法であって、
治療有効量の項目1から24のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルスを、前記対象に投与し、それによって、前記腫瘍を処置するステップ;あるいは
治療有効量の1つもしくは複数の代謝をモジュレートするタンパク質または前記タンパク質(複数可)をコードする核酸分子を、前記対象に投与し、それによって、前記腫瘍を処置するステップ
を含む、方法。
(項目26)
腫瘍中へのT細胞浸潤を増加させる方法であって、
治療有効量の項目1から24のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルスを、前記腫瘍を有する対象に投与し、それによって、前記腫瘍中へのT細胞浸潤を増加させるステップ;あるいは
治療有効量の1つもしくは複数の代謝をモジュレートするタンパク質または前記タンパク質(複数可)をコードする核酸分子を、前記腫瘍を有する前記対象に投与し、それによって、前記腫瘍中へのT細胞浸潤を増加させるステップ
を含む、方法。
(項目27)
前記腫瘍ががんである、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記がんが、肺、乳房、前立腺、肝臓、膵臓、皮膚、結腸、頭頸部、腎臓、子宮頸部または卵巣のがんである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記がんが黒色腫である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記投与するステップが全身投与を含む、項目25から29のいずれかに記載の方法。(項目31)
前記投与するステップが腫瘍内投与を含む、項目25から29のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記対象が哺乳動物対象である、項目22から31のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記哺乳動物対象がヒトである、項目32に記載の方法。
(項目34)
治療有効量の1つまたは複数のさらなる治療を投与するステップをさらに含む、項目25から33のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記1つまたは複数のさらなる治療が、1つまたは複数のさらなる抗がん剤を投与することを含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記1つまたは複数のさらなる抗がん剤が、化学療法、放射線療法、生物製剤、手術、またはそれらの組合せを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記化学療法が、アルキル化剤、代謝拮抗薬、ホルモンまたはホルモンアンタゴニストのうちの1つまたは複数を含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記生物製剤が、
PD-1アンタゴニスト;
PD-L1アンタゴニスト;
CTLA4アンタゴニスト;
T細胞アゴニスト;または
それらの組合せ
を含む、項目36または37に記載の方法。
(項目39)
(a)項目1から24のいずれかに記載の組換え腫瘍溶解性ウイルス;および
(b)PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、T細胞アゴニスト;またはそれらの組合せを含む、組成物またはキット。
(項目40)
前記T細胞アゴニストが、4-1BBのアゴニスト、OX40のアゴニスト、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子(TNF)受容体(GITR)のアゴニスト、またはそれらの組合せである、項目38に記載の方法または項目39に記載の組成物もしくはキット。
(項目41)
前記T細胞アゴニストが、モノクローナル抗体、アプタマーまたはリガンドである、項目40に記載の方法または組成物もしくはキット。