(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029182
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】γcサイトカイン活性を調節するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240227BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240227BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240227BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240227BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240227BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240227BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240227BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240227BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240227BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240227BHJP
A61K 38/08 20190101ALN20240227BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/16
A61P35/02
A61P37/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P3/10
A61P17/06
A61P27/02
A61P37/06
A61P11/00
A61P17/00
A61P21/00
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P27/16
A61P43/00 105
A61P17/10
A61P17/14
A61P17/16
A61K8/64
A61Q3/00
C12N15/11 Z
A61K38/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000335
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2019152602の分割
【原出願日】2012-01-17
(31)【優先権主張番号】61/433,890
(32)【優先日】2011-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/527,049
(32)【優先日】2011-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523336941
【氏名又は名称】バイオニズ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 温
(72)【発明者】
【氏名】アジミ,ナズリ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AD411
4C083CC28
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
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4C084BA19
4C084BA20
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZA33
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4C084ZA59
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4C084ZB07
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4C084ZB27
4C084ZC35
4H045AA10
4H045BA17
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
【課題】本発明の種々の実施形態は、γcファミリーサイトカイン(インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン15(IL-15)、およびインターロイキン21(IL-21))のペプチドアンタゴニストに関する。
【解決手段】本発明は、D/E-F-L-E/Q/N-S/R-X-I/K-X-L/I-X-Q(配列番号2)(式中、Xは任意のアミノ酸を示す)で示されるアミノ酸配列を含み、かつIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21からなる群から選択される1種以上のγcサイトカインの活性を阻害することができる単離または精製されたペプチドである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2011年1月18日に出願された米国仮出願61/433,890号および2011年8月24日に出願された米国仮出願61/527,049号に基づく優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、主として上皮細胞、間質細胞、および免疫細胞から産生され、多様なリンパ球の正常な活性化および病的活性化を制御する哺乳動物サイトカイン群であるγcファミリーサイトカインのペプチドアンタゴニストに関する。さらに本発明の実施形態は、特定のヒト疾患の治療のための上記ペプチドの治療的使用に関する。さらに本発明の実施形態は、上記ペプチドの薬用美容目的の用途に関する。上記ペプチドの標的疾患および薬用化粧品用途、ならびにその投与、製造および商品化の方法について開示する。
【背景技術】
【0003】
サイトカインは、細胞の増殖、細胞の機能分化、およびプログラム細胞死(アポトーシス細胞死)の促進や予防などの様々な細胞機能を媒介する多様な可溶性因子群である。サイトカインは、特化した腺組織から産生されるホルモンとは異なり、上皮細胞、間質細胞、免疫細胞などの種々の細胞から産生される。
【0004】
100種を超えるサイトカインがこれまでに同定されており、これらは原始遺伝子プールにおける遺伝子重複によって発展したものと考えられている(Bazan, J.F. 1990, Immunol. Today 11:350-354参照)。この見解の裏付けとして、一般にサイトカイン群は自体のマルチサブユニット受容体システムにおいて構成分子を共有していることが知られている。サイトカインに共有されているT細胞上のサブユニットのうち最もよく研究されているものは、共通γサブユニット(γcサブユニット)である。γcサブユニットは、6種の既知のサイトカイン(インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-15(IL-15)およびインターロイキン-21(IL-21);「γcサイトカイン」または「γcファミリーサイトカイン」と総称される)によって共有されており、これらのサイトカインの細胞活性化シグナルの変換において不可欠な役割を果たしている。これに加えて、それぞれのγcサイトカインに固有のサイトカイン特異的受容体サブユニットが1つまたは2つ存在し、これらのサブユニットはγcサブユニットと複合体を形成してはじめて完全な機能を発揮する受容体となる(Rochmanら, 2009, Nat Rev Immunol. 9: 480-90参照)。
【0005】
γcファミリーサイトカインは、主として上皮細胞、間質細胞、および免疫細胞から産生され、多様なリンパ球の正常な活性化および病的活性化を制御する哺乳動物サイトカイン群である。これらのサイトカインは、胸腺におけるT細胞の初期発生や末梢におけるT細胞のホメオスタシスに必須である。たとえば、γcサブユニット欠損マウスにおいては、T細胞、B細胞、NK細胞は発生しない(Sugamuraら, 1996, Annu. Rev. Immunol.14:179-205参照)。
【0006】
γcサイトカインに関連する病理
最近の研究では、γcサイトカインの発現調節異常および機能異常によって、様々なヒトの免疫疾患および造血器疾患が引き起こされている可能性が示されている。
【0007】
IL-2
IL-2は、T細胞増殖因子のプロトタイプであると歴史的に考えられてきたが、IL-2の発現を欠くノックアウトマウスの作製によって、IL-2はインビボにおける通常のT細胞の増殖および発生には重要ではないことが明らかとなっている。しかしながら、IL-2の過剰発現は、T細胞のサブセットである制御性T細胞(Treg)の選択的増加につながる(Antonyら, 2006, J. Immunol. 176:5255-66参照)。Tregは、他の細胞の免疫応答を抑制することにより末梢性寛容を維持する作用を発揮している(Sakaguchiら, 2008, Cell 133:775-87における検討)。末梢性寛容の破綻はヒトにおいて自己免疫疾患を引き起こすと考えられている。したがって、Tregの免疫抑制能は自己免疫疾患の発症を防いでいると考えられている(Sakaguchiら, 2008, Cell 133:775-87参照)。また、Tregはがんにも関与しており、充実性腫瘍および血液悪性腫瘍はTreg数の増加を伴う(De Rezendeら, 2010, Arch. Immunol. Ther. Exp. 58:179-190参照)。
【0008】
IL-4
IL-4は、ヘルパーT細胞からTh2(ヘルパーT2型)サブセットへの分化に関与する非重複サイトカインであり、Th2は未熟B細胞からIgE産生形質細胞への分化を促進する。IgEレベルはアレルギー性喘息において上昇する。したがって、IL-4はアレルギー性喘息の発症に関連する。IL-4を標的とする抗体はアレルギー性喘息の治療、さらには発症の予防に使用することができる(Le Buanecら, 2007, Vaccine 25:7206-16参照)。
【0009】
IL-7
IL-7は、B細胞の発生および胸腺におけるT細胞の初期発生に必須である。マウスにおいては、IL-7の異常発現によってT細胞性白血病が引き起こされる(Fisherら, 1993, Leukemia 2:S66-68参照)。しかしながら、ヒトでは、IL-7の制御異常はT細胞性白血病を引き起こさないように思われる。ヒトにおいて、IL-7のアップレギュレーションは、単独でも別のγcサイトカインファミリーメンバーであるIL-15のアップレギュレーションとの組み合わせにおいても、大型顆粒リンパ球性(LGL)白血病と関連付けられている。
【0010】
IL-9
IL-9の役割は、γcサイトカインファミリーの他のメンバーと比べて未だ明らかになっていない点が多い。IL-9遺伝子欠失マウスは一見正常であり、リンパ球コンパートメントおよび造血コンパートメントにおける細胞サブセットの欠失も見られない。しかしながら、最近の研究では、IL-9がインビボにおいてTh17(インターロイキン17によって誘導されるヘルパーT)細胞の発生に関与していることが明らかとなっている(Littmanら, 2010, Cell 140(6):845-58;およびNowakら, 2009, J. Exp. Med. 206: 1653-60参照)。
【0011】
IL-15
IL-15は、NK細胞、NKT細胞、上皮内リンパ球(IEL)のサブセットのいくつか、γδ T細胞、およびメモリー型CD8T細胞の発生において極めて重要な役割を果たしている(Waldmann, 2007, J. Clin. Immunol. 27:1-18;およびTagayaら, 1996, EMBO J. 15:4928-39参照)。マウスにおけるIL-15の過剰発現は、NKT細胞型T細胞白血病およびCD8細胞型T細胞白血病を引き起こす(Fehnigerら, 2001, J. Exp. Med. 193:219-31;およびSatoら, 2011 Blood(近日中に刊行予定)参照)。いずれの文献においても白血病細胞がCD8抗原を発現していることから、これらの文献において実験的に誘導された白血病はヒトのLGL(大型顆粒リンパ球)白血病に類似していると考えられる。
【0012】
IL-15媒介性オートクリンメカニズムがCD4Tリンパ球の白血病化に関連している可能性もまた疑われている(Azimiら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. 95:2452-7;Azimiら, 1999, J. Immunol. 163:4064-72;Azimiら, 2000, AIDS Res. Hum. Retroviruses 16:1717-22;およびAzimiら, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. 98:14559-64参照)。たとえば、ヒトにおいて成人T細胞性白血病を引き起こすCD4指向性HTLV-Iは、IL-15およびIL-15Rαを産生することにより、このウイルス自体によって形質転換されたT細胞の増殖をオートクリン的に誘導する(Azimiら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. 95:2452-7)。
【0013】
白血病化に加えて、IL-15は自己免疫疾患であるセリアック病(CD)の発症とも関連していることが最近の研究において示されている。IL-15は、細胞溶解酵素(すなわちグランザイムおよびパーフォリン)ならびにインターフェロンγの発現を誘導することにより、NK細胞、CD8細胞および腸管上皮内リンパ球(IEL)細胞からリンホカイン活性キラー(LAK)細胞への分化を刺激することが知られている。セリアック病(以降CDと称す)は、特定のHLA-DQアリルを発現する個体がグルテンを含む食物を摂取することがきっかけとなって発症する免疫媒介性腸疾患である。西洋人におけるこの疾患の罹患率は1%である。現在唯一のCD治療法は患者の食事からグルテンを完全に除去することである。CDの病理は、腸管粘膜固有層に浸潤した活性化CD8T細胞によって引き起こされる広範囲な腸管粘膜損傷を主な原因として起こる。このようなCD8T細胞は、IL-15に関連するメカニズムによって活性化されると考えられる。最近の刊行物のひとつでは、腸細胞による異所性IL-15の過剰発現によってマウスが腸疾患を発症することが実証されており、この腸疾患はCD患者の病変に酷似している。IL-15活性を中和することにより病変が劇的に縮小した。したがって、IL-15によるCD8T細胞の活性化をブロックするような介入は、従来のグルテン除去食に代わるCDの管理戦略になると考えられる。
【0014】
IL-21
IL-21はγcファミリーのメンバーのうち最も新しく発見されたサイトカインである。γcファミリーの他のメンバーとは異なり、IL-21は強力な成長促進効果を有するとは考えられていない。IL-21は細胞増殖制御因子としてよりも、むしろ分化因子として機能すると考えられている(Tagaya, 2010, J. Leuk. Biol. 87:13-15参照)。
【0015】
γcサイトカイン媒介性障害を治療するための現在の戦略
γcサイトカインは多くのヒト疾患に関連すると考えられており、このためγcサイトカインファミリーの活性を阻害してγcサイトカイン関連疾患を治療する方法が提案されている。このような方法として、インビボにおいてサイトカイン特異的モノクローナル抗体を使用して標的とするサイトカイン活性を中和する方法;特定のサイトカインに固有のサイトカイン特異的受容体サブユニット(共有γcサブユニット以外のサブユニット)を標的とするモノクローナル抗体を使用して選択的にサイトカイン活性を阻害する方法;および細胞内のサイトカイン信号伝達経路の下流をブロックする化学阻害剤を使用する方法が挙げられる。治療剤を設計する際には、サイトカイン特異的抗体が第一の選択肢となる場合が多い。しかしながら、受容体の構成成分を共有するサイトカインは重複した機能を示し(Paul, W.E., 1989, Cell 57:521-24参照)、2種以上のサイトカインが同時に作用して疾患を引き起こしていることもある(後述の例を参照のこと)。このことから、1種のサイトカインのみの中和を対象とする手法は、サイトカイン関連ヒト疾患の治療に効果的ではない可能性がある。
【0016】
共有されている受容体構成成分を認識する抗体を用いて、複数種のサイトカインの機能を阻害する治療剤を設計する戦略も提案されている。しかしながら、サイトカイン受容体システムはマルチサブユニットを特徴とすること、および1種のサイトカインに対する機能性受容体は種々の構成を有しうることから、この手法を採用することは困難である。たとえば、機能性IL-15受容体はIL-15Rβ/γcまたはIL-15Rα/β/γcのいずれかである(Duboisら, 2002, Immunity 17:537-47参照)。IL-15Rβ受容体(TMβ1)に対する抗体は、IL-15の機能を効率的に阻害するが、その阻害作用は受容体複合体がIL-15Rα分子を含まない場合に限られる(Tanakaら, 1991, J. Immunol. 147:2222-28参照)。したがって、共有サブユニットまたはサイトカイン固有のサブユニットに対して作製されたモノクローナル抗受容体抗体の有効性は状況に左右され、インビボにおいては予測不能である。
【0017】
疾患の病因に関連した生物学的活性因子や受容体に対してモノクローナル抗体を臨床適用することは、確立された手法ではあるが実際に成功した例は少ない。さらに、臨床に適したモノクローナル抗体療法の確立は時間がかかる困難な作業であり、運に大きく左右される中和抗体の作製を成功させなければならない。たとえば、γcサブユニットはγcファミリーサイトカインによるシグナル伝達を媒介するという非常に重要な役割を果たしていることから、γcサブユニットに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する試みが多数なされており、マウスおよびヒトのγcサブユニットを認識する抗体が多数市販されている。しかしながら、奇妙なことに、これらの抗γcサブユニット抗体においてγcサイトカインの機能をブロックできるものは存在しない。
【0018】
モノクローナル抗体の治療用途に関する別の問題は、モノクローナル抗体は通常ヒトタンパク質を用いてげっ歯類を免疫化することにより作製されるため、作製された抗体は異種タンパク質であり、したがって免疫原性が高いことである。この問題を回避するため、モノクローナル抗体のアミノ酸配列を分子修飾して抗体分子がヒト免疫グロブリンとして認識されるように処理(ヒト化と称される方法)を行うが、この方法は時間を要する上に費用がかかる。
【0019】
複数種のγcサイトカインを阻害するための既存の別法の一例としてのJAK3ターゲティング
γcサブユニットとγcサイトカインとの相互作用によって、ヤヌスキナーゼ3(Jak3)と称される細胞内タンパク質チロシンキナーゼが活性化される。次いで、Jak3は、STAT5やPI3キナーゼなどの複数種のシグナル伝達分子をリン酸化する。γcサブユニットとJak3との相互作用は非常に特異的である。実際に、シグナル伝達のためにJak3を必要とする受容体分子は他に存在しない(O'Shea, 2004, Ann. Rheum. Dis. 63:(suppl. II):ii67-7参照)。したがって、γcサブユニットを介したサイトカインシグナル伝達の阻害は、Jak3キナーゼの活性をブロックすることにより達成することができる。これに応じて、Jak3キナーゼ活性を標的とする複数種の化学阻害剤が市場に導入されている(Pesuら, 2008, Immunol. Rev. 223:132-142参照)。その一例としてCP690,550が挙げられる。
【0020】
上記のプロテインキナーゼ阻害剤の主な欠点は、Jak3キナーゼに対する特異性が欠如していることである。これらの薬剤は、多くのプロテインキナーゼに共通する生化学的反応であるATP(アデノシン3リン酸)分子とJak3キナーゼとの結合を妨害する。このため、様々な組織の正常細胞が健常に機能するために必須の、Jak3キナーゼと無関係な複数種の細胞内タンパク質キナーゼの作用をブロックしてしまう傾向がある。したがって、γcサブユニットのシグナル伝達をより特異的に阻害できる薬剤が必要とされている。
【0021】
したがって、γcサイトカイン関連疾患を治療するための代替戦略が強く求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される19merのアミノ酸配列(本明細書において「BNZ-γ」と呼ぶ)から実質的になる単離または精製されたペプチドに関する。
【0023】
別の一実施形態は、γcサイトカインファミリーの1以上のメンバーによるシグナル伝達をブロックする方法であって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列から実質的になる単離または精製されたペプチドと細胞とを接触させることを含む方法に関する。
【0024】
別の一実施形態は、γcサイトカインファミリーの1以上のメンバーによるシグナル伝達をブロックする方法であって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列から実質的になる単離または精製されたペプチドと細胞とを接触させることを含み、該細胞が免疫細胞であることを特徴とする方法に関する。
【0025】
別の一実施形態は、γcサイトカインファミリーの1以上のメンバーによるシグナル伝達をブロックする方法であって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列から実質的になる単離または精製されたペプチドと細胞とを接触させることを含み、γcサイトカインファミリーメンバーがIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21からなる群から選択されることを特徴とする方法に関する。
【0026】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドのペプチド誘導体であって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有することを特徴とするペプチド誘導体に関する。
【0027】
別の一実施形態は、カスタムペプチドであって、そのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列において1個以上のアミノ酸が保存的に置換されたアミノ酸配列であることを特徴とするカスタムペプチドに関する。
【0028】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される19merのアミノ酸配列から実質的になるカスタムペプチドに関する。
【0029】
別の一実施形態は、カスタムペプチドであって、そのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列において6位のグルタミン(Q)が別の極性アミノ酸で置換されたアミノ酸配列であることを特徴とするカスタムペプチドに関する。
【0030】
別の一実施形態は、カスタムペプチドであって、そのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列において1個以上のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列であり、かつI-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される配列を含むアミノ酸配列と類似した生化学的特性を有することを特徴とするカスタムペプチドに関する。
【0031】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-Sで示されるアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体であって、該カスタムペプチドのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有し、かつ、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列相同性を示すことを特徴とするカスタムペプチド誘導体に関する。
【0032】
別の一実施形態は、インビボにおける効率的な送達および生物学的安定性の向上を目的とした、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列から実質的になるペプチドと、既存の生体タンパク質/ペプチドのN末端、C末端、および/または側鎖残基との共役に関する。このような共役としては、BSA、アルブミン、IgGのFc領域、スキャフォールドとして機能する他の生体タンパク質、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、および他の類似部分との共役が挙げられる。
【0033】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体と、既存の生体タンパク質/ペプチドのN末端、C末端、および/または側鎖残基との共役であって、該カスタムペプチドのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有し、かつ、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列相同性を示すことを特徴とする共役に関する。このような共役としては、アルブミン、IgGのFc領域、スキャフォールドとして機能する他の生体タンパク質、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、および他の類似部分との共役が挙げられる。
【0034】
別の一実施形態は、γcサイトカイン活性の阻害方法であって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列から実質的になるペプチドとγcサイトカインとを接触させることを含む方法に関する。
【0035】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列を含む免疫原性ペプチドに対して作製されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体に関する。
【0036】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体に対して作製されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体であって、該カスタムペプチドのアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有し、かつ、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列と少なくとも50%の配列相同性を示すことを特徴とする抗体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】ヒトγcサイトカインファミリーメンバーのDヘリックス領域のアライメントを示す。
【
図1B】γcサイトカインのDヘリックス領域付近にコンセンサス配列を有するγcボックスモチーフとIL-2/IL-15ボックスモチーフとを示す。
【
図3A】PT-18増殖アッセイにおける、BNZ-γによるIL-2活性、IL-15活性およびIL-9活性の阻害を示す。
【
図3B】IL-2またはIL-15と0μM、0.1μM、1μMまたは10μM BNZ-γとの存在下において増殖させたCTTL2細胞の増殖アッセイの結果を示す。
【
図3C】BNZ-γによるSTAT5のIL-15媒介性チロシンリン酸化の阻害を示す。
【
図4A】HAM/TSP患者末梢血を使用したエクスビボT細胞増殖アッセイの結果を示す。T細胞の増殖はBNZ-γの添加によって阻害される。
【
図4B】HAM/TSP患者末梢血を使用したエクスビボT細胞増殖アッセイにおけるCD4
+CD25
+細胞集団を示す。培養物へのBNZ-γの添加により減少する。
【
図4C】HAM/TSP患者末梢血を使用したエクスビボT細胞増殖アッセイにおけるCD4
+Ki67
+細胞集団を示す。培養物へのBNZ-γの添加により減少する。
【
図4D】HAM/TSP患者末梢血を使用したエクスビボT細胞増殖アッセイにおいてGuava染色した生細胞のパーセンテージを示す。培養物へのBNZ-γの添加による影響は見られない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
概要
γcサイトカインは、免疫系を構成するリンパ系細胞(特にT細胞、B細胞およびNK細胞)の発生において重要な役割を果たしている。さらに、γcサイトカインは様々なヒト疾患に関連している。したがって、γcサイトカイン活性を阻害する因子は、リンパ球サブセットの発生機序を解明し、かつ免疫障害およびγcサイトカイン媒介性疾患を治療するための有用なツールになると考えられる。
【0039】
マウスの生殖細胞系におけるγcサブユニットをコードする遺伝子の欠失またはヒトにおけるγcサブユニットの変異は、NK細胞、T細胞およびB細胞に形態異常をきたしたり、これら細胞の機能を破壊することによって、重症複合免疫不全症(SCID)を引き起こすことが知られている。このようなマウスおよびヒト患者から得られたリンパ球を用いてγcサイトカインに対する応答性を検証した研究において、γcサブユニットが、γcサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、およびIL-21)によるシグナル伝達に重要であることが示されている(Sugamuraら, 1995 Adv. Immunol. 59:225-277における検討)。このことは、γcサブユニットとγcサイトカインとの相互作用を破壊することによって、γcサイトカインファミリーメンバーによる細胞内シグナル伝達事象を効率的にブロックできることを示している。したがって、本発明の実施形態によるアンタゴニストペプチドは、γcサイトカインファミリーメンバーの制御異常を介した疾患に罹患したヒトにおける病原性変化を効果的にブロックできると期待される。
【0040】
個々のγcサイトカインの活性を調節するための抗体介在手法に代わるものとして、本出願人らは本明細書において「Simul-Block」と称される、複数種のγcサイトカインの活性を抑制する新規の低分子化合物を考案した。化学物質およびペプチドをいずれも含むこの低分子化合物は、抗体と比べて免疫原性が低い。このような特性を有することから、Simul-Blockは臨床的介入においてγcサイトカイン活性を調節するためのより効率的な戦略として優れている。
【0041】
γcボックスの発見
γcサイトカインのC末端(Dヘリックス)には、マルチユニットサイトカイン受容体の共通γcサブユニットと相互作用するとされている部位が含まれている(Bernardら, 2004 J. Biol. Chem. 279:24313-21)。マウスおよびヒトにおいて同定されたすべてのγcサイトカインのアミノ酸配列について生化学的特性を比較することによって、これらのアミノ酸配列の疎水性、親水性、塩基性/酸性などの化学的性質がγcサイトカインファミリーのメンバー間で保存されており、これらの化学的性質が全く同一でない場合でもDヘリックスの多くの位置において保存されていることが明らかとなっている。これとは対照的に、γcサイトカインであるIL-4と関連性を有しているがγcサブユニットとは結合しないIL-13の配列は、Dヘリックス領域においてγcサイトカインと有意な相同性を示さない。このことは、Dヘリックス領域における配列相同性がγcサブユニットに対する結合性と相関することを示唆している。
図1に示すように、ヒトγcサイトカインファミリーメンバーのDヘリックス領域のアミノ酸配列をアライメントすると、これらのサイトカインにおいて中程度の配列相同性を有するモチーフ(本明細書において「γcボックス」と呼ぶ)が存在することが分かる。
【0042】
γcボックスは、19個のアミノ酸を含み、19の位置のうち、4位、5位および13位が完全に保存されており、それぞれフェニルアラニン、ロイシンおよびアスパラギンである。γcボックスの6位、7位および11位においては保存性が低く、同じ生理化学的特性を有する2個または3個の関連アミノ酸のうちの1個がこれらの位置を占めている。すなわち、6位には極性アミノ酸であるグルタミン酸、アスパラギンまたはグルタミンが存在していてもよく;7位には無極性アミノ酸であるセリンまたはアルギニンが存在することができ;11位には無極性脂肪族アミノ酸であるロイシンまたはイソロイシンのいずれかが存在する。また、9位および16位には無極性アミノ酸であるイソロイシンまたは極性アミノ酸であるリシンのいずれかが存在していてもよい。
図1Bを参照されたい。γcサイトカインサブファミリー間では、γcボックスのアミノ酸組成の9位および6位において相違が見られる。種間でγcサイトカインを比較すると、IL-2/15サブファミリーにおいてはイソロイシンが9位および6位に存在するのに対し、他のγcファミリーメンバー(たとえばIL-4、IL-21)ではリシンがこれらの位置を占めることが分かる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、イソロイシンとリシンとは生化学的に異なるため、IL-2/15サブファミリーと他のγcサイトカインとの間の特定の立体構造の差異はこれらのアミノ酸に由来している可能性がある。
【0043】
γcサイトカイン間におけるγcボックスモチーフの保存性は、Dヘリックス領域に存在するアスパラギン(Asn、Q)残基がγcサイトカインのγcサブユニットへの結合に決定的に重要であるという知見に裏付けられている(Bernardら, 2004 J. Biol. Chem. 279: 24313-21)。
【0044】
γcサイトカイン活性のペプチド阻害剤
γcファミリーサイトカインの活性は、γcサイトカインとγcサブユニットとの相互作用を破壊することによりブロックしてもよい。たとえば、マルチサブユニットサイトカイン受容体のシグナル伝達を刺激することなく、γcサブユニットと相互作用することが可能な競合阻害剤を導入することにより上記のブロッキングを行ってもよい。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、γcファミリーサイトカインのγcサブユニットへの結合に関与する保存γcボックスモチーフは、γcサイトカインシグナル伝達のペプチド阻害剤の設計に利用することが可能な、コアとなる基本的なアミノ酸配列を提示するものである。
【0045】
コアとなるγcボックスのアミノ酸配列は、D/E-F-L-E/Q/N-S/R-X-I/K-X-L/I-X-Q(配列番号2)(式中、Xは任意のアミノ酸を示す)を含む。本明細書に記載の実施形態は、1種以上のγcサイトカインの活性を阻害することが可能なコアγcボックスアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体に関する。カスタムペプチド誘導体には、コアγcボックスアミノ酸配列と約50%、50~60%、60~70%、70~80%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.8%の相同性を示す部分アミノ酸配列を有する任意のペプチドが包含される。さらに、カスタムペプチド誘導体には、コアγcボックスに含まれるアミノ酸と類似した生理化学的特性を有するアミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有する任意のペプチドが包含される。たとえば、類似した生理化学的特性を有するアミノ酸としては、芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンを挙げることができる。
図2は、類似した生理化学的特性を有するアミノ酸を図示したものであり、コアγcボックスを含むアミノ酸配列のアミノ酸を置換するためにこれらのアミノ酸を用いてもよい。コアγcボックスのペプチド誘導体のアミノ酸長は、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25~30、30~35、35~40、40~45、または45~50アミノ酸残基であってもよく、50アミノ酸残基を超えていてもよい。実施形態のいくつかでは、カスタムペプチド誘導体は、既存の生体タンパク質/ペプチドのN末端、C末端、または側鎖残基と共役していてもよい。
【0046】
本出願人らは、γcサブユニットに結合するサイトカインに保存されているγcボックスモチーフの同定に基づき、ヒトIL-2およびIL-15に存在するγcボックスのアミノ酸配列を組み込んだ人工複合ペプチドである19merの新規カスタムペプチド誘導体を考案した。この19merのペプチド(本明細書においてBNZ-γと称す)は、
で示されるアミノ酸配列からなり、太字で表記したアミノ酸はIL-2とIL-15との間で保存されており、下線を引いたアミノ酸は当該アミノ酸の生理化学的特性が保存されている位置を示している。
【0047】
本出願人らは、19merのBNZ-γがIL-15またはIL-19により誘導された細胞増殖を抑制するが、IL-2またはIL-4により誘導された細胞増殖は抑制しないことを見出した。
図3Aおよび実施例2を参照されたい。さらに本出願人らは、BNZ-γが、IL-15の媒介による細胞内サイトカインシグナル伝達分子(STAT-5)のリン酸化を阻害することを実証した。
図3Cおよび実施例5を参照されたい。これらの結果は、上記の保存γcボックスモチーフのカスタムペプチド誘導体が複数種のγcサイトカインの活性を阻害できることを実証している。
【0048】
実施形態のいくつかは、1種以上のγcサイトカインの活性を阻害可能な、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される19merのBNZ-γアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体に関する。19merのBNZ-γアミノ酸配列のカスタムペプチド誘導体には、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列と約50%、50~60%、60~70%、70~80%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.8%の相同性を示す部分アミノ酸配列を有する任意のペプチドが包含される。さらに、カスタムペプチド誘導体には、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される配列に含まれるアミノ酸と類似した生理化学的特性を有するアミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有する任意のペプチドが包含される。実施形態のいくつかでは、カスタムペプチド誘導体のアミノ酸残基はBNZ-γのアミノ酸残基と類似した生理化学的特性を有するが、6種のγcサイトカインファミリーメンバーに対するその生物学的阻害特異性は元の19merのペプチドのものとは異なる。BNZ-γのペプチド誘導体のアミノ酸長は、19、20、21、22、24、25~30、30~35、35~40、40~45、または45~50アミノ酸残基であってもよく、50アミノ酸残基を超えていてもよい。実施形態のいくつかでは、カスタムペプチド誘導体は、既存の生体タンパク質/ペプチドのN末端、C末端、または側鎖残基と共役していてもよい。
【0049】
実施形態のいくつかは、IL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9またはIL-7のγcボックスモチーフ(
図1Aに示す)のカスタムペプチド誘導体に関する。別の一実施形態は、ヒトIL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9およびIL-7のγcボックスモチーフのうち2以上のアミノ酸配列を組み合わせた人工複合ペプチドであるカスタムペプチド誘導体に関する。実施形態のいくつかは、IL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9またはIL-7のγcボックスモチーフのアミノ酸配列と約50%、50~60%、60~70%、70~80%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.8%の相同性を示す部分アミノ酸配列を有する、IL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9、またはIL-7のγcボックスモチーフのカスタムペプチド誘導体に関する。IL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9またはIL-7のγcボックスモチーフのカスタムペプチド誘導体には、IL-5、IL-2、IL-21、IL-4、IL-9またはIL-7のγcボックスモチーフ配列に含まれるアミノ酸と類似した生理化学的特性を有するアミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有する任意のペプチドがさらに包含される。
【0050】
実施形態のいくつかは、γcサイトカインの1メンバー、すべてのメンバー、または選択されたメンバーの機能を阻害するカスタムペプチド誘導体に関する。実施形態のいくつかにおいて、カスタムペプチド誘導体はγcサイトカインファミリーの個々のメンバーを選択的に標的とする。たとえば、カスタムペプチド誘導体の一態様は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15またはIL-21の機能を選択的に阻害することができる。別の一実施形態では、カスタムペプチド誘導体の一態様はγcサイトカインファミリーの2以上のメンバーを阻害することができる。たとえば、本発明の実施形態のカスタムペプチド誘導体は、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21の1以上の機能とIL-2の機能;IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21の1以上の機能とIL-4の機能;IL-9、IL-15およびIL-21の1以上の機能とIL-7の機能;IL-2、IL-4、IL-7、IL-15およびIL-21の1以上の機能とIL-9の機能;IL-2、IL-4、IL-7、IL-9およびIL-21の1以上の機能とIL-15の機能;または、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9およびIL-15の1以上の機能とIL-21の機能を選択的に阻害することができる。別の一実施形態では、カスタムペプチド誘導体は、γcサイトカインファミリーのすべてのメンバーを包括的に標的とすることができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、カスタムペプチド誘導体は、たとえば競合阻害剤などとして、γcサイトカインのγcサブユニットへの結合を抑制することにより、γcサイトカインのすべてメンバーまたは選択されたメンバーの機能を阻害することができる。このようなカスタムペプチド誘導体は、臨床薬剤を包含する様々な用途に使用してもよい。
【0051】
本発明の実施形態に従って提供されるカスタムペプチド誘導体について言及する場合、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は区別なく使用することができ、任意の長さの一連のアミノ酸残基を指すために使用することができる。本発明の実施形態によるペプチドは非天然アミノ酸を含んでいてもよい。ペプチド結合または化学的結合を介してリンカー成分を本発明の実施形態のペプチドに結合することができる。本発明の実施形態のペプチドは直鎖状でも環状でもよく、また、L-アミノ酸およびD-アミノ酸を含んでいてもよい。また、本発明の実施形態のペプチドは、希少アミノ酸(4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシンなど)、有機酸、もしくはアミド、および/または一般的なアミノ酸の誘導体の1以上を含んでいてもよい。一般的なアミノ酸の誘導体としては、たとえば、C末端カルボン酸のエステル化(たとえばベンジルエステル、メチルエステルもしくはエチルエステル)もしくはアミド化、および/またはN末端のアミノ基の修飾(たとえばアセチル化、もしくはアルコキシカルボニルアミノ)を有し、側鎖において様々な修飾および/または置換(たとえばメチル化、ベンジル化、t-ブチル化、もしくはトシル化、アルコキシカルボニルアミノなど)を有していてもよいアミノ酸が挙げられる。一般的なアミノ酸以外に含まれていてもよい残基としては、ペニシラミン、テトラメチレンシステイン、ペンタメチレンシステイン、メルカプトプロピオン酸、ペンタメチレン-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトベンゼン、2-メルカプトアニリン、2-メルカプトプロリン、オルニチン、ジアミノ酪酸、アミノアジピン酸、m-アミノメチル安息香酸、およびジアミノプロピオン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の実施形態のペプチドは当業者に公知の様々な製造方法により得ることができる。たとえば、本発明の実施形態のペプチドは、このペプチドをコードするヌクレオチド配列から遺伝子工学によって製造してもよく、ペプチド固相合成などを用いて化学的に合成してもよく、これらを組み合わせた製造方法により得てもよい。当業者は、本明細書で開示されている保存γcボックスモチーフおよび
図2に記載したようなアミノ酸の生化学的特性に関する知識に基づいて、本発明のカスタムペプチド誘導体を合成することができる。さらに、実施形態のいくつかは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は区別なく使用することができ、二本鎖DNA、一本鎖DNA、これらのDNAの転写産物(たとえばRNA分子)のいずれかを意味すると理解される。ペプチド自体を投与するのではなく、ポリヌクレオチドを細胞または対象に投与し、細胞または対象において発現させることができる。さらに、実施形態のいくつかは、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む遺伝的構築物に関する。遺伝的構築物は、プロモーターやエンハンサーなどのさらなる制御要素をさらに含むことができ、必要に応じて選択マーカーを含んでいてもよい。
【0053】
γcサイトカイン媒介性疾患の治療方法
実施形態のいくつかは、γcサイトカイン媒介性疾患の治療におけるγcアンタゴニストペプチドの使用に関する。本発明の実施形態によるカスタムペプチド誘導体を使用することにより、治療剤の設計(ペプチドのカスタム設計)を柔軟に行うことができ、抗サイトカイン抗体または抗サイトカイン受容体抗体を用いた従来の戦略では達成が不可能なより包括的な成果を上げることが可能となる。
【0054】
γcファミリーサイトカインの作用をブロックするための新規の方法を本明細書において説明する。この手法によって、γcサイトカインの調節異常または機能異常に関連する疾患を治療するのに効果的な臨床的介入方法を提供することができる。γcサイトカインとγcサブユニットとの相互作用を破壊することによって治療可能な疾患としては、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、セリアック病、橋本甲状腺炎または自己免疫性甲状腺炎などの自己免疫疾患;関節リウマチなどの膠原病;炎症性腸疾患;糖尿病;乾癬などの皮膚の自己免疫疾患;多発性硬化症などの変性性神経疾患;ブドウ膜炎または眼炎症、および交感性眼炎;移植片対宿主病(GvHD);ならびに重症筋無力症が挙げられる。
【0055】
実施形態のいくつかでは、本明細書に記載のγcアンタゴニストペプチドを、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型およびII型(HTLV-IおよびHTLV-II)に関連する疾患の治療に使用してもよく、このような疾患としては、成人T細胞性白血病(ATL);HTLV関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺(HAM/TSP);および、ブドウ膜炎(HU)、関節症、肺疾患、皮膚炎、外分泌腺症、筋炎などのHTLVに関連する他の非新生物性炎症性疾患が挙げられる。実施形態のいくつかでは、本明細書に記載のγcアンタゴニストペプチドを、インフルエンザ、AIDS、HBV、ヘルペスなどの他のウイルス症または寄生虫症の治療に使用してもよい。
【0056】
実施形態のいくつかでは、γcアンタゴニストペプチドを免疫抑制剤として様々な臓器の移植前、移植中、または移植後に投与してもよい。
【0057】
実施形態のいくつかでは、本明細書に記載のγcアンタゴニストペプチドを、喘息などの免疫性疾患および他の炎症性呼吸器疾患の治療に使用してもよく、このような疾患として、副鼻腔炎、花粉症、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、急性耳炎、慢性耳炎、肺線維症などが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態のいくつかでは、アレルゲン、化学薬剤、または急性呼吸器疾患を引き起こすものとして一般に知られている他の原因への暴露により引き起こされるアレルギー反応を治療または予防するために、γcアンタゴニストペプチドを投与してもよい。実施形態のいくつかでは、ウイルス、細菌、化学試薬、または生化学試薬によって引き起こされる炎症反応を治療または予防するために、γcアンタゴニストペプチドを投与してもよい。
【0058】
実施形態のいくつかでは、LGL白血病、上皮内リンパ腫、難治性セリアック病における白血病、NK白血病/リンパ腫、NKT白血病/リンパ腫などのいくつかのタイプの悪性腫瘍を治療するために、γcアンタゴニストペプチドを投与してもよい。
【0059】
本明細書に記載の実施形態によるカスタムペプチド誘導体は抗炎症特性を有することから、実施形態のいくつかでは、カスタムペプチド誘導体を抗老化成分として軟膏に配合し、たとえば、ざ瘡、脱毛、および日焼けの治療、爪のケアなどの美容目的に使用することができる。
【0060】
実施形態のいくつかは、γcサイトカインのすべてのメンバーまたは選択されたメンバーの機能を阻害する治療用アンタゴニストペプチドに関する。実施形態のいくつかでは、治療用アンタゴニストペプチドは、γcサイトカインファミリーの個々のメンバーを選択的に阻害する(カスタムペプチド)。別の一実施形態では、治療用アンタゴニストペプチドは、γcサイトカインファミリーのすべてのメンバーを包括的に阻害することができる(Simul-Block)。実施形態のいくつかでは、治療用アンタゴニストペプチドは、γcサイトカインに共有されているサブセットを選択的に阻害する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、ペプチドアンタゴニストは、たとえば競合阻害剤などとして、γcサイトカインのγcサブユニットへの結合を抑制することにより、γcサイトカインのすべてメンバーまたは選択されたメンバーの機能を阻害することができる。
【0061】
IL-4以外のγcサイトカインファミリーメンバーのいくつか、すなわち、IL-2、IL-7およびIL-15は、実験マウスモデルにおいて移植片対宿主病(GvHD)に関与するとされている(Miyagawaら, 2008 J. Immunol. 181:1109-19)。一実施形態は、ヒトのGvHDを治療することにより移植組織または移植骨髄細胞の生存を可能にするための、IL-2、IL-7およびIL-15の活性を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの使用に関する。別の一実施形態は、GvHDを治療するための、IL-2とIL-7との組み合わせ、IL-2とIL-15との組み合わせ、またはIL-7とIL-15との組み合わせを選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの使用に関する。別の一実施形態は、IL-2、IL-7またはIL-15を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの組み合わせの使用に関する。
【0062】
実施形態のいくつかは、Tregが関与するとされている自己免疫疾患の治療のための、IL-2の機能を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの使用に関する。実施形態のいくつかでは、ペプチドを用いたTregの阻害によってがんに対するヒトの自然免疫を増強することができ、このような阻害は新規の抗がん療法を提供するものである。
【0063】
実施形態のいくつかは、喘息を治療するための、IL-4を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの使用に関する。
【0064】
実施形態のいくつかは、LGL白血病の治療剤としての、IL-7を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの単独使用またはγcサイトカインファミリーメンバーであるIL-15を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドと組み合わせた使用に関する。実施形態のいくつかでは、IL-7活性とIL-15活性の両方を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドをLGL白血病の治療に使用することができる。実施形態のいくつかは、LGL白血病を治療するためのBNZ-γの使用に関する。実施形態のいくつかでは、HTLV-Iによって引き起こされる白血病を含むCD4/CD8Tリンパ球関連白血病の治療剤として、IL-15のみを選択的に阻害する特定のγcアンタゴニストペプチドまたはIL-15とIL-7の両方を選択的に阻害する特定のγcアンタゴニストペプチドが使用される。
【0065】
実施形態のいくつかは、Th17細胞の発生異常に関連するヒトの疾患の治療剤としての、IL-9の活性のみを選択的に阻害するγcアンタゴニストペプチドの使用または他のγcサイトカインファミリーメンバーおよびIL-9の活性を選択的に阻害するγcアンタゴニストペプチドの使用に関する。
【0066】
実施形態のいくつかは、セリアック病(CD)を治療するための治療剤としての、IL-15活性を選択的に阻害する治療用アンタゴニストペプチドの使用に関する。最近の刊行物のひとつでは、IL-15に加えてIL-21もCDの病因に関与している可能性が示唆されている(Boddら, 2010, Mucosal Immunol. 3:594-601参照)。このことは、従来の抗サイトカイン抗体または抗サイトカイン受容体抗体を用いたCDに最適な治療法において、IL-15システムおよびIL-21システムに属する成分を認識する少なくとも2種の抗体の組み合わせを用いると効果が上がることを示唆している。実施形態のいくつかでは、CDを治療するための治療剤として、IL-15活性とIL-21活性の両方を選択的に阻害するカスタムアンタゴニストペプチド誘導体が使用される。
【0067】
治療目的で使用するだけでなく、γcアンタゴニストペプチドを消費者製品に使用することもできる。実施形態のいくつかは、老化防止用、抗炎症用、抗ざ瘡用、他の関連する適用のスキンケア製品におけるγcアンタゴニストペプチドの使用に関する。実施形態のいくつかは、自己免疫疾患によって引き起こされる脱毛を治療するための、ヘアケア製品における抗脱毛成分としてのγcアンタゴニストペプチドの使用に関する。
【0068】
別の一実施形態は、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される19merのアミノ酸配列と類似した空間的構造を有し、γcサブユニットのポケットにはまり込むことによって、結合しようとするγcサイトカインのγcサブユニットへの接触を構造的に妨害することが可能な(非ペプチド性、非タンパク質性)化合物の開発に関する。実施形態のいくつかは、γcサイトカイン活性の阻害剤としての、類似構造を有する化合物の使用に関する。このような、既存の生体ペプチド/タンパク質と類似した構造を有する合成化合物の開発をさらに改善するための分子擬態戦略は、Orzaezら, 2009 Chem. Med. Chem. 4:146-160に記載されている。別の一実施形態は、γcサイトカイン媒介性疾患を治療するための、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示される19merのアミノ酸配列と類似した三次元構造を有する(非ペプチド性、非タンパク質性)化合物の投与に関する。
【0069】
実施形態のいくつかは、γcサイトカイン媒介性疾患を治療するための、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドの投与に関する。別の一実施形態は、γcサイトカイン媒介性疾患を治療するための、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチド誘導体の投与であって、該ペプチド誘導体のアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有することを特徴とする投与に関する。別の一実施形態は、γcサイトカイン媒介性疾患の治療のための、既存の生体タンパク質/ペプチドのN末端およびC末端、または側鎖残基と共役したI-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドの患者への投与に関する。
【0070】
実施形態のいくつかは、γcサイトカイン媒介性疾患を治療するための、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドに対して作製されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の免疫原としての患者への投与に関する。別の一実施形態は、γcサイトカイン媒介性疾患の治療のための、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチド誘導体に対して作製されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の免疫原としての患者への投与であって、該ペプチド誘導体のアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有することを特徴とする投与に関する。
【0071】
γcアンタゴニストペプチドの投与
本発明の実施形態はさらに、疾患治療剤を製造するためのγcアンタゴニストペプチドの使用を包含する。本発明の実施形態はさらに、γcアンタゴニストペプチドと薬学的に許容される担体とを組み合わせて含む医薬組成物を包含する。該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、および無毒性かつ治療に有効な量のγcアンタゴニストペプチド、または本発明の実施形態の別の組成物を含むことができる。
【0072】
本発明の実施形態は、適切な希釈剤または担体中に有効量のγcサイトカインアンタゴニストを含む医薬組成物の使用方法を提供する。本発明の実施形態のγcアンタゴニストは、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法により製剤化することができる。活性物質として単独使用または他の公知の活性物質と併用されるγcアンタゴニストは、薬学的に適切な希釈剤(たとえばリン酸塩、酢酸塩、トリス-HCl)、保存剤(たとえばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン類)、乳化作用を有する化合物、可溶化剤、アジュバントおよび/または担体(ウシ血清アルブミンなど)と組み合わせて混合物とすることができる。適切な担体およびそれらの処方は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed. 1980 Mack Publishing CO.に記載されている。さらに、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)もしくは金属イオンと複合体を形成させたγcアンタゴニスト;ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの高分子化合物に組み込まれたγcアンタゴニスト;または、リポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層小胞、多層小胞、赤血球ゴーストもしくはスフェロプラストに組み込まれたγcアンタゴニストを含有することができる。このような組成物形態にすることによって、γcアンタゴニストの物理的状態、溶解性、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度を変化させることができる。γcアンタゴニストは、細胞に特異的な抗原、受容体、またはリガンドに対する抗体と共役させることができ、あるいは、組織特異的受容体に対するリガンドとカップリングさせることができる。
【0073】
本発明の実施形態のγcアンタゴニストの投与方法は、疾患の種類、対象の病態、および/または標的部位などの要因に応じて適宜選択してもよい。γcアンタゴニストは、局所投与、経口投与、非経口投与、直腸投与または吸入投与することができる。「非経口」は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、大槽内注射、および点滴を含む。このような組成物は、通常、有効量のγcアンタゴニストを単独で含有するか、または有効量の他の活性物質と組み合わせて含有する。本発明の実施形態の医薬組成物におけるペプチドの含有量、医薬組成物の剤形、投与頻度などは、疾患の種類、対象の病態、および/または標的部位などの要因に応じて適宜選択してもよい。医薬組成物中のこのような薬剤用量および所望の薬剤濃度は、用途、患者の体重および年齢、ならびに投与経路を含む多くのパラメータに応じて変化しうる。最初に動物を使用した予備試験を行い、ヒトに投与を行う次の段階への移行は当該技術分野において許容される慣行に従って実施されるであろう。
【0074】
一実施形態においては、少なくとも1種のγcアンタゴニストペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて遺伝子組換えした宿主細胞を対象に投与することにより、増殖障害を治療しかつ/または悪性細胞の増殖を低下させる。宿主細胞においてポリヌクレオチドが発現されることにより、対象においてペプチドが産生される。宿主細胞は対象と同種異系または対象由来であることが好ましい。
【0075】
さらなる態様では、γcアンタゴニストペプチドを他の療法(たとえば、がん細胞の増殖および成長を阻害する療法)と組み合わせて使用することができる。「併用療法」には、さらなる治療剤とともにγcアンタゴニストペプチドを投与して、これらの治療剤の相互作用による有益な効果を提供することを意図した特異的療法のレジメンの一部とすることが包含される。これらの治療剤の併用投与は、通常、定められた期間内(選択された組み合わせに応じて、通常、数分間、数時間、数日または数週間)に実施される。
【0076】
併用療法は、これらの治療剤の連続投与すなわち異なる時間における投与のみならず、これらの治療剤のすべてまたはこれらの治療剤の少なくとも2つの実質的に同時の投与を包含することが意図される。実質的に同時の投与は、たとえば、それぞれの治療剤を一定割合で含む単一のカプセルを対象に投与することによって、または治療剤ごとの単一のカプセルを複数併せて対象に投与することによって達成することができる。各治療剤の連続投与または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、粘膜組織からの直接吸収などの(ただしこれらに限定されない)適切な経路を介して達成することができる。上記の投与において治療剤は同じ経路または異なる経路で投与することができる。治療剤が投与される順序はあまり重要ではない。
【0077】
さらに、併用療法には、上記の治療剤の組み合わせに、他の生物学的に活性な成分(たとえば、第2の異なる治療剤などが挙げられるが、これに限定されない)および非薬物療法(たとえば、手術または放射線療法などが挙げられるが、これらに限定されない)をさらに組み合わせた投与が包含される。併用療法が放射線療法をさらに含む場合、治療剤と放射線療法の組み合わせによる相互作用によって有益な効果がもたらされる限り、放射線療法は任意の適切なタイミングに行ってもよい。たとえば、適切に実施された場合、治療剤の投与と併用される放射線療法をたとえば数日または数週間にわたって一時的に中断したとしても有益な効果を得ることができる。
【0078】
特定の実施形態では、γcアンタゴニストペプチドは、化学療法剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍剤、抗分裂剤、抗ウイルス剤、抗新生物剤、免疫療法剤、および放射線療法剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗増殖剤と組み合わせて投与することができる。
【0079】
特定の実施形態では、γcアンタゴニストペプチドは、ステロイド、コルチコステロイド、および非ステロイド系抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗炎症剤と組み合わせて投与することができる。
【0080】
さらに上記の方法を実施するためのキットが提供される。キットは本発明の実施形態のγcアンタゴニストを含んでいてもよい。実施形態のいくつかでは、キットは説明書を含んでいてもよい。説明書は文章でも図でもよく、録音テープ、録音CD、ビデオテープ、DVD、CD-ROMなどの記録媒体に記録してあってもよい。キットは包装を含んでいてもよい。
【0081】
用語の定義
本明細書において「患者」は治療処置のレシピエントを指し、動物界の生物すべてを含む。好ましい実施形態では、上記の動物は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネコ、スイギュウ、イヌ、ヤギ、ウマ、ロバ、シカ、霊長類などの哺乳動物科の動物である。動物としてはヒトが最も好ましい。
【0082】
本明細書において「治療する(treat)」またはこの用語の任意の変形(たとえば、治療(treatment)、治療すること(treating)など)は、生物学的病態を有すると診断された患者のあらゆる治療を指し、生物学的病態としては、CD4白血病、CD8白血病、LGL白血病、自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、セリアック病、橋本甲状腺炎、膠原病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、糖尿病、乾癬、変性性神経疾患、多発性硬化症、ブドウ膜炎、眼炎症、移植片対宿主病(GvHD)、重症筋無力症、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型およびII型(HTLV-IおよびHTLV-II)関連疾患、成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺(HAM/TSP)、ブドウ膜炎(HU)、関節症、肺疾患、皮膚炎、外分泌腺症、筋炎、インフルエンザ、AIDS、HBV、ヘルペス、喘息、副鼻腔炎、花粉症、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、急性耳炎、慢性耳炎、肺線維症、NK白血病/リンパ腫、NKT白血病/リンパ腫などが挙げられる。本明細書において、「治療」は、
(i)標的とする生物学的病態に関連する症状をまだ示していないが、その恐れのある患者における、該生物学的病態に関連する症状の発生の予防もしくは遅延;
(ii)標的とする生物学的病態を有すると診断された患者における、該生物学的病態に関連する症状の改善;
(iii)標的とする生物学的病態を有すると診断された患者またはその恐れのある患者における、該生物学的病態に関連する合併症、病態もしくは疾患に関連した症状の発生の予防、遅延もしくは改善;
(iv)標的とする生物学的病態の進行速度の遅延、進行の遅延、もしくは進行の阻止;または
(v)細胞における炎症の予防、炎症の遅延、炎症の拡大の遅延、炎症の阻止、もしくは炎症の改善
を包含する。
【0083】
本明細書において「症状」は、患者が罹患している特定の病態または疾患の一般的な徴候または指標を指す。
【0084】
本明細書において「有効量」は、所望の生体応答を惹起するのに必要な量を指す。本発明の実施形態によれば、γcアンタゴニストの有効量は、生物学的病態の治療おいて使用される少なくとも1つの生物学的因子について観察可能な効果が得られるのに必要な量である。
【0085】
「組換えDNA技術」または「組換え」は、クローン化DNA配列または合成DNA配列を用いて形質転換またはトランスフェクトした微生物(たとえば、細菌、酵母)細胞、無脊椎動物(昆虫)細胞、哺乳動物細胞、または生物(たとえば、トランスジェニック動物、もしくはトランスジェニック植物)から特定のポリペプチドを製造することによって異種ペプチドを生合成することが可能な技術および方法の使用を指す。天然のグリコシル化パターンは哺乳動物細胞発現系においてのみ達成されるであろう。原核生物の発現系は、合成タンパク質をグリコシル化する能力を欠く。酵母細胞および昆虫細胞は、天然のグリコシル化パターンとは異なりうる特有のグリコシル化パターンを示す。
【0086】
「ヌクレオチド配列」は、個別のフラグメントの形態のポリヌクレオチドまたはこれよりも大きなDNA構築物の一成分としてのポリヌクレオチドであって、内因性物質による汚染のない実質的に純粋な形態でDNAまたはRNAから少なくとも一度単離され、かつ(Current Protocols in Molecular Biologyに概説されているような)標準的な分子生物学的方法によって当該ヌクレオチド配列成分の同定、遺伝子操作、および回収が可能な量または濃度のポリヌクレオチドを指す。
【0087】
「組換え発現ベクター」は、
(1)プロモーターおよびエンハンサーなどの、遺伝子発現を制御する単一または複数の遺伝学的要素、
(2)本発明の実施形態のポリペプチドをコードする構造またはコード配列、ならびに
(3)適切な転写開始配列および翻訳開始配列、および所望に応じて終止配列
からなるアセンブリを含む転写単位を含むプラスミドを指す。酵母系および哺乳動物系における使用を意図した構成要素として、酵母宿主細胞または哺乳動物宿主細胞において翻訳されたポリペプチドを細胞外分泌させることが可能なシグナル配列が含まれていることが好ましい。
【0088】
「組換え微生物発現系」は、染色体DNAに安定して組み込まれた組換え転写単位を保有する、または残存プラスミドの構成成分としての組換え転写単位を保有する適切な宿主微生物(たとえば、大腸菌などの細菌、S.セレビシエなどの酵母を包含する)の実質的に均質な単一培養を指す。通常、組換え微生物発現系を構成する宿主細胞は、形質転換された単一の祖先細胞の子孫である。組換え微生物の発現系では、発現される構造ヌクレオチド配列に結合された制御要素の誘導によって異種ポリペプチドが発現される。
【0089】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例0090】
実施例1
γcアンタゴニストペプチドの阻害活性の評価方法
哺乳動物細胞アッセイを使用してγcサイトカインファミリーメンバーに対する哺乳動物細胞の増殖応答を測定することにより、本発明の実施形態に従って調製した、γcサイトカインファミリーの1メンバーの作用を阻害するカスタムペプチド誘導体の能力を測定する。
【0091】
6種のγcサイトカインの評価のために、指標細胞株(American Type Culture Collectionより入手可能なマウスCD8T細胞株CTLL-2、ならびにマウス肥満細胞株PT-18およびそのサブクローンPT-18β)をヒトIL-2Rβ遺伝子でトランスフェクトし、IL-2およびIL-15に対する応答性を細胞に付与し(Tagayaら, 1996, EMBO J. 15:4928-39)、γcサイトカインの増殖促進活性の定量に用いる(方法論についてはWiley and Sonsから出版されているCurrent protocols in Immunology参照)。広範囲の濃度にわたり比色定量WST-1アッセイを用いて測定すると、指標細胞は半線形な用量依存的応答を示す(試薬および方法の詳細については、クロンテックPT3946-1および関連するユーザーマニュアルを参照;これらは参照により本明細書に組み込まれる)。指標細胞株において最大応答値の50%および95%の応答を惹起するのに適切なサイトカイン用量を決定してから、サイトカインと指標細胞とを含む各ウェルに様々な濃度(1pM~10μM)の精製または合成カスタムペプチド誘導体を添加する。サイトカイン刺激性細胞増殖に対する阻害作用の指標として450nmにおける光吸収度の低下を使用する。通常、サイトカインで刺激した指標細胞株とサイトカインとを含むウェルは2.0~3.0の吸光度を示すが、阻害ペプチドを添加するとその吸光度は0.1~0.5まで低下する。
【0092】
実施例2
BNZ-γペプチドによるIL-9およびIL-15の増殖促進活性の特異的阻害
上記のPT-18β細胞を使用して、選択したγcサイトカインの増殖促進活性に対するBNZ-γペプチドの特異的阻害能を測定した(
図3A)。PT-18β細胞の増殖を補助する非γcサイトカインであるIL-3をネガティブコントロールとして使用した。簡潔に述べると、HEK293T細胞により産生されたBNZ-γペプチドを異なる希釈倍率で希釈し(BNZ-γ発現構築物でトランスフェクトしたHEK293T細胞の上清の1:20または1:50希釈液)、これらの希釈液のいずれかとともにまたはBNZ-γペプチドを使用せずにIL-3、IL-9、IL-15またはIL-4(培養物中の各サイトカインの濃度:1nM)の存在下でPT-18β細胞をインキュベートした。BNZ-γペプチドおよびサイトカインを導入した2日後に、WST-1アッセイを用いて細胞の増殖応答を測定した。IL-3(非γcサイトカイン)の増殖促進活性はBNZ-γによって阻害されなかった。これに対して、IL-15およびIL-9の活性は、BNZ-γペプチドによって顕著に低下した(p<0.01、スチューデントt検定)。別のγcサイトカインであるIL-4によって刺激された細胞増殖は、BNZ-γペプチドの添加による影響を受けなかった。IL-3、IL-9、IL-15およびIL-4についての結果を
図3Aに示す。
【0093】
同様のアッセイにおいてマウス細胞株CTTL2を使用した。このアッセイでは、10%ウシ胎仔血清を含むRPMIにおいて0.5nM組換えIL-2とともに細胞を培養した。増殖アッセイは以下のように構築した。細胞を3回洗浄してサイトカインを洗い流した。終濃度を50pMとしたIL-2またはIL-15を含む96ウェルプレートの各ウェルに1×10
5個の細胞を播種した。様々な濃度のBNZ-γペプチド(0.1μg/ml、1μg/mlおよび10μg/ml)を各ウェルに添加した。細胞を20時間培養し、培養終了の4時間前に
3Hチミジンをプレートに添加した。プレートリーダーを使用して細胞を回収した。データを
図3Bに示す。
【0094】
実施例3
細胞増殖マーカーとしての
3
Hチミジンの取り込みを分析することによる、γcサイトカイン活性の阻害の測定方法
3Hチミジン取り込みアッセイを用いて、γcサイトカインにより誘導された指標細胞集団の増殖に対するアンタゴニストカスタムペプチド誘導体による阻害を測定する。簡潔に述べると、サイトカイン存在下において増殖中の20~50,000個の細胞に、放射性同位体で標識したチミジン(1μCi)を添加する。慣用のハーベスター装置(たとえば、パーキンエルマー社製Filtermateユニバーサルハーベスター)を使用して、細胞に結合した放射能をガラス繊維フィルターで捕捉し、次いで、βカウンター(たとえば、1450Triluxマイクロプレートシンチレーションカウンター)を使用して放射能を測定することにより、細胞に取り込まれた放射能を測定する。
【0095】
実施例4
細胞増殖マーカーとしての細胞追跡色素の取り込みを分析することによる、γcサイトカイン活性の阻害の測定方法
選択したγcサイトカインの存在下、または選択したγcサイトカインおよび選択したカスタムペプチド誘導体の存在下で指標細胞をインキュベートする。次いで、インビトロにおいて、たとえばCMFDA(インビトロジェン社製C2925)などの細胞追跡色素を使用して細胞集団を標識し、細胞分裂ごとの細胞内緑色蛍光の減衰をフローサイトメーター(たとえばベクトン・ディッキンソン社製FACScalibur)を使用してモニターする。通常、γcサイトカインによる刺激に応答して、細胞分裂回数に対応する7~10個の異なるピークが緑色蛍光チャネルに現われる。選択したγcサイトカインおよびアンタゴニストカスタムペプチド誘導体とともにインキュベートした細胞では、ピークの数は1~3個にまで低減され、その数は阻害の程度によって決まる。
【0096】
実施例5
アンタゴニスト(BNZ-γおよびその誘導体)による細胞内シグナル伝達の阻害
γcサイトカインとその受容体との結合は、細胞増殖を刺激するだけでなく、多様な細胞内事象を引き起こす(Rochmanら, 2009 Nat. Rev. Immunol. 9:480-90およびPesuら, 2005 Immunol. Rev. 203:127-142)。γcサイトカインがその受容体に結合すると、即座にJak3(ヤヌスキナーゼ3)と称されるチロシンキナーゼが形質膜上の受容体に動員される。このキナーゼは、γcサブユニット、STAT5(シグナル伝達兼転写活性化因子5)、PI3(ホスファチジルイノシトール3)キナーゼのサブユニットなどの多種類のタンパク質のチロシン残基をリン酸化する。これらのタンパク質のリン酸化のうち、STAT5のリン酸化は、γcサイトカインによって引き起こされる細胞増殖と関連することが多くの研究において示唆されている(HennighausenおよびRobinson, 2008 Genes Dev. 22:711-21における検討)。公表されているこれらの資料に従って、BNZ-γペプチドが、IL-15によって刺激されたPT-18β細胞におけるSTAT5分子のチロシンリン酸化を阻害するかどうかを試験した(
図3Cに結果を示す)。
【0097】
BNZ-γペプチドの存在下または非存在下において、IL-15でPT-18β細胞を刺激した。細胞質タンパク質は、Tagayaら, 1996 EMBO J. 15:4928-39に記載されているような慣用の方法で細胞から抽出した。抽出した細胞質タンパク質を標準SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)を使用して分画し、抗リン酸化STAT5抗体(Cell Signaling Technology、カタログNo.9354、ダンヴァーズ、マサチューセッツ州)を用いた免疫ブロット法によりリン酸化状態を確認した(
図3C、上部参照)。次いで、各レーンの総タンパク質量がほぼ同じであることを確認するために、膜を剥離し、抗STAT5抗体(Cell Signaling Technology、カタログNo.9358)を用いて再度試験を行った(
図3C、下部参照)。
【0098】
これらの結果により、シグナル伝達の指標となるSTAT5のチロシンリン酸化はPT-18β細胞においてIL-15により誘導されること、およびSTAT5のチロシンリン酸化はBNZ-γペプチドによって顕著に低下することが実証された。
【0099】
実施例6
BNZ-γから誘導されるアンタゴニストペプチドの論理的設計
ペプチド誘導体は、D/E-F-L-E/Q/N-S/R-X-I/K-X-L/I-X-Q(配列番号2)(式中、Xは任意のアミノ酸を示す)で示されるコア配列の特定のアミノ酸を、
図2に示したような同一の生理化学的特性を有するアミノ酸で置換することにより調製する。
【0100】
実施例7
アンタゴニストカスタムペプチド誘導体の阻害特異性を同定する方法
6種のγcサイトカインに応答したサイトカイン応答性細胞株の増殖に対するカスタムペプチド誘導体の阻害能を分析することによって、アンタゴニストカスタムペプチド誘導体のγcサイトカイン阻害特異性を決定する。たとえば、マウス細胞株CTLL-2は、候補ペプチドがIL-2およびIL-15の機能を阻害するかどうかを判断するために使用される。PT-18(β)細胞は、候補ペプチドがIL-4およびIL-9の機能を阻害するかどうかを判断するために使用される。PT-18(7α)細胞は、候補ペプチドがIL-7の機能を阻害するかどうかを判断するために使用される。PT-18(21α)細胞は、候補ペプチドがIL-21の機能を阻害するかどうかを判断するために使用される。PT-18(β)は、遺伝子導入によりヒトIL-2Rβを外因的に発現するPT-18細胞のサブクローンである(Tagayaら, 1996参照)。PT-18(7α)は、遺伝子導入によりヒトIL-7Rαを発現するサブクローンである。PT-18(21Rα)細胞はヒトIL-21Rαを発現する。
【0101】
別の方法においては、様々なサイトカインに応答する別の細胞株が使用される。このような細胞株として、ATCCより市販されているヒトNK細胞株NK92(カタログNo.CRL-2407)が挙げられる。この細胞株はIL-2依存性細胞株であり、IL-9、IL-7、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21などの他のサイトカインにも応答性を示す(Gongら, 1994 Leukemia 8: 652-658、Kingemannら, 1996, Biol Blood Marrow Transplant 2:68;75、およびHodge DLら, 2002 J. Immunol. 168:9090-8)。
【0102】
実施例8
γcアンタゴニストペプチドの調製
カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体は、手動の工程および自動の工程によって化学的に合成される。
【0103】
手動合成:
1つのアミノ酸のカルボキシル基またはC末端を、別のアミノ酸のアミノ基またはN末端とカップリングすることを含む古典的な液相合成を使用する。別の方法においては、固相ペプチド合成(SPPS)が使用される。
【0104】
自動合成:
多数の民間企業が有償で自動ペプチド合成を提供している。このような会社では、アプライドバイオシステムズ(ABI)より提供されている合成機などの様々な市販のペプチド合成機が使用されている。カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体は自動ペプチド合成機で合成される。
【0105】
実施例9
組換え技術を使用したカスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の生物学的製造
カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体は、BNZ-γペプチドの構造を強化もしくは安定化させ、その生物学的活性を向上させる公知のヒトタンパク質由来ペプチド、適切なタグペプチド、およびシグナルペプチドを含むペプチド前駆体として生物学的に合成される。所望に応じて、ペプチドのN末端の前に適切な酵素切断配列を設計し、最終的に得られるタンパク質からタグペプチドまたは任意のペプチド部分を取り除いてもよい。
【0106】
カスタムペプチド誘導体をコードし、3’末端に終止コドンを有するヌクレオチド配列を、市販のベクターに挿入する。この市販のベクターは、カスタムペプチド誘導体および終止コドンをコードするヌクレオチド配列とタグ部分との間を切断する適切なタンパク質分解酵素(たとえばエンテロキナーゼ)によって認識されかつ消化される特殊なペプチド配列と、大腸菌のチオレドキシンに由来するタグ部分とを有する。適切なベクターの一例として、インビトロジェン社(カリフォルニア州)より入手可能なpThioHisプラスミドが挙げられる。他の発現ベクターを使用してもよい。
【0107】
実施例10
免疫化を目的としたBNZ-γおよびその誘導体の担体タンパク質との共役ならびに抗BNZ-γ抗体の作製
BNZ-γおよび他のカスタムペプチド誘導体は、動物を免疫化してポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を得るために用いられる。グルタルアルデヒドまたはm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを使用した慣用の方法によって、適切な担体タンパク質(たとえば、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)など)のN末端またはC末端にペプチドを共役させる。次いで、適切なアジュバントとともに共役ペプチドを用いて、ウサギ、げっ歯類、ロバなどの動物を免疫化する。慣用の方法を用いて、得られた抗体の特異性を試験する。得られた抗体が免疫原性ペプチドと反応する場合、実施例1~3に記載の細胞増殖アッセイを用いて各γcサイトカイン活性に対する阻害能を試験する。ペプチド誘導体が複合体であることから、2種の異なるサイトカインを同時に認識する単一の抗体を作製することが可能である。
【0108】
実施例11
カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の大量生産方法
組換えタンパク質の大量生産は、他の文献に記載されているような無細胞系を使用して行う(Takaiら, 2010 Curr. Pharm. Biotechnol. 11(3):272-8参照)。簡潔に述べると、γcアンタゴニストペプチドとタグとをコードするcDNAを適切なベクターにサブクローン化し(Takaiら, 2010 Curr. Pharm. Biotechnol. 11(3):272-8参照)、インビトロ転写を行った後、直ちにインビトロ翻訳を行うことによって、タグ付加ペプチドを産生させる。次いで、タグ付加エピトープを認識する固相化抗体を使用して、得られたプロポリペプチドを精製し、タンパク質分解酵素で処理する。慣用の18%トリシンSDS-PAGE(インビトロジェン)および慣用のクマシー染色を使用して、溶離物(目的のカスタムペプチド誘導体がそのほとんどを占める)の純度を試験する。ペプチドの純度が所望の数値(>98%)に達していない場合、混合物を慣用のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)でさらに精製する。
【0109】
実施例12
HAM/TSPにおけるサイトカインの機能をブロックするための、カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の使用
HTLV-1関連脊髄症(HAM)/熱帯性痙性不全対麻痺(TSP)は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-I)に感染した患者の一部に見られる慢性進行性脊髄症である。脊髄におけるリンパ球の浸潤は、HTLV-Iに対する免疫応答に関連しており、特定のサイトカインの放出をもたらす。これらのサイトカインのうちいくつかは神経をさらに損傷させる。
【0110】
HAM/TSP患者は、自己免疫疾患に類似した免疫亢進状態を示す(Ohら, 2008 Neurol Clin. 26:781-785)。HAM/TSP患者がこのような亢進状態を有することは、HAM/TSP患者のT細胞を外因性サイトカインの非存在下において約1週間にわたりエクスビボ培養し、その自発的増殖能を確認することによって証明できる。HAM/TSP患者におけるT細胞の自発的増殖は、IL-2、IL-9およびIL-15のオートクリンループ/パラクリンループに少なくとも部分的に起因する。IL-2受容体またはIL-15受容体に対するブロッキング抗体を添加することによって、HAM/TSPエクスビボ培養系におけるT細胞の自発的増殖を阻害できることが示されている。これらの観察結果およびエクスビボ研究より得られた他のデータは、HAM/TSPの臨床的治療のために2種のモノクローナル抗体(抗IL-2受容体αまたは抗Tacと抗IL-15受容体β鎖)を用いることの論理的根拠となるものである(Azimiら, 2001 Proc. Natl. Acad. Sci. 98:14559-64およびAzimiら, 1999 J. Immunol 163:4064-72)。本明細書に記載の実施形態による抗サイトカイン受容体アンタゴニストは、HAM/TSPの治療のための治療用免疫調節剤として有益なだけではない。本発明の実施形態による抗サイトカイン受容体アンタゴニストがHAM/TSPにおいて免疫応答を調節できることは、この抗サイトカイン受容体アンタゴニストを他の自己免疫疾患の治療においても使用できるという概念を裏付けるものである。
【0111】
本明細書に記載の実施形態によるカスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の有効性を実証するために、HAM/TSPエクスビボ培養系を使用したT細胞自発的増殖アッセイにおいて、BNZ-γペプチドがHTLV-Iに対する免疫応答をブロックする能力を試験した。増殖アッセイは、BNZ-γ添加または非添加のHAM/TSP患者血液サンプルを用いて実施した。このアッセイにより、BNZ-γが、エクスビボのHAM/TSP患者血液培養物中に存在するIL-2およびIL-15などのサイトカインの機能をブロックして、これらのサンプルにおけるT細胞の自発的増殖を抑制する能力を評価した。
【0112】
エクスビボのT細胞自発的増殖アッセイにおいて、HAM/TSP患者から得られたPBMCを96ウェルプレート1ウェルあたり1×10
6個播種し、RPMI-10%FCS中で培養した。BNZ-γペプチドの濃度を段階的に増加させて各ウェルに添加した。コントロールとして、関連性がないペプチドを同様の方法で使用した。細胞はCO
2インキュベーターにおいて37℃で3日間、4日間および6日間でインキュベートした。
3Hチミジン1μCiを細胞に添加した。さらに6時間インキュベートした後、細胞を回収し、増殖率を測定した。代表的なHAM/TSP患者におけるデータを
図4A~Dに示す。
図4に示すように、BNZ-γペプチドは約1μg/mlの濃度においてHAM/TSP培養物中のT細胞の自発的増殖を阻害する。
【0113】
他の免疫学的マーカーについてもこのアッセイにおいて測定した。四量体のウイルスタンパク質を使用したエクスビボ培養において、ウイルスに特異的なCD8細胞のパーセンテージを測定した。T細胞活性化の指標であるCD4+CD25+細胞集団、およびT細胞増殖の指標であるKi67染色をフローサイトメトリーアッセイでモニターした。
【0114】
同様のさらなるアッセイにおいて、他の形態の共役BNZ-γペプチド誘導体を使用することもできる。このようなペプチド誘導体は、化学合成後に共役可能なアルブミン、BSA、およびPEGを含むものである。BNZ-γペプチド共役体の他の生物学的形態は、BNZ-γペプチド誘導体に融合される公知のタンパク質領域(ヒトIgGのFc領域が挙げられるがこれに限定されない)を含むものである。
【0115】
実施例13
カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の投与によりヒト患者の成人T細胞性白血病(ATL)を治療する方法
成人T細胞性白血病に罹患しているヒト患者を特定する。カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体、たとえば、BNZ-γを医師によって決定された有効量で、医師によって決定された期間にわたり患者に投与する。患者が寛解に入れば治療が有効であると判断する。
【0116】
実施例14
カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体の投与によりヒト患者のHAM/TSPを治療する方法
HAM/TSPに罹患しているヒト患者を特定する。カスタムγcアンタゴニストペプチド誘導体、たとえば、BNZ-γを医師によって決定された有効量で、医師によって決定された期間にわたり患者に投与する。患者の症状が改善した場合、または疾患の進行が停止もしくは遅延した場合に、治療が有効であると判断する。
【0117】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]D/E-F-L-E/Q/N-S/R-X-I/K-X-L/I-X-Q(配列番号2)(式中、Xは任意のアミノ酸を示す)で示されるアミノ酸配列を含み、かつIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21からなる群から選択される1種以上のγcサイトカインの活性を阻害することができる単離または精製されたペプチド。
[2]I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列(BNZ-γ)を含む上記[1]に記載の単離または精製されたペプチド。
[3]I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列(BNZ-γ)から実質的になる上記[1]に記載の単離または精製されたペプチド。
[4]IL-15およびIL-19の活性を阻害することを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の単離または精製されたペプチド。
[5]単離または精製されたペプチドであって、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチド誘導体を含み、該ペプチド誘導体のアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと類似した生理化学的特性を有しているが、異なる生物学的活性を有し、該生物学的活性がIL-15およびIL-9の活性の阻害であることを特徴とする単離または精製されたペプチド。
[6]前記誘導体のアミノ酸配列が、I-K-E-F-L-Q-R-F-I-H-I-V-Q-S-I-I-N-T-S(配列番号1)で示されるアミノ酸配列のペプチドと少なくとも約50%の相同性を有することを特徴とする上記[5]に記載のペプチド。
[7]上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離または精製されたペプチドと細胞とを接触させることを含む、γcサイトカインファミリーの1以上のメンバーによるシグナル伝達をブロックする方法。
[8]上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離または精製されたペプチドとγcサブユニットとを接触させることを含む、γcサイトカインのγcサブユニットへの結合を阻害する方法。
[9]治療有効量の上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離もしくは精製されたペプチドまたはその誘導体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはこれらの組み合わせとを含む医薬組成物。
[10]γcサイトカイン媒介性疾患の改善剤または治療剤を調製するための、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離もしくは精製されたペプチドまたはその誘導体または上記[9]に記載の医薬組成物の使用。
[11]前記γcサイトカイン媒介性疾患が、CD4白血病、CD8白血病、LGL白血病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、セリアック病、橋本甲状腺炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、ブドウ膜炎、眼炎症、および移植片対宿主病(GvHD)からなる群から選択されることを特徴とする上記[10]に記載の使用。
[12]HTLV-1関連脊髄症(HAM)/熱帯性痙性不全対麻痺(TSP)に関連する疾患の改善剤または治療剤を調製するための、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離もしくは精製されたペプチドまたはその誘導体または上記[9]に記載の医薬組成物の使用。
[13]前記HAM/TSPに関連する疾患が、成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV関連脊髄症/熱帯性痙性不全対麻痺(HAM/TSP)、ならびにHTLVに関連する他の非新生物性炎症性疾患(ブドウ膜炎(HU)、関節症、肺疾患、皮膚炎、外分泌腺症および筋炎)からなる群から選択されることを特徴とする上記[12]に記載の使用。
[14]炎症性呼吸器疾患の改善剤または治療剤を調製するための、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の単離もしくは精製されたペプチドまたはその誘導体または上記[9]に記載の医薬組成物の使用。
[15]前記炎症性呼吸器疾患が、喘息、副鼻腔炎、花粉症、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、急性耳炎、慢性耳炎、および肺線維症からなる群から選択されることを特徴とする上記[12]に記載の使用。
[16]上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のペプチドもしくはその誘導体または上記[9]に記載の医薬組成物を、ざ瘡の治療、脱毛の治療、日焼けの治療、爪のケア、および外見の老化の軽減からなる群から選択される美容目的で使用する方法。
【0118】
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