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特開2024-2919静的起動回路の地絡検出のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002919
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】静的起動回路の地絡検出のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/30 20060101AFI20231228BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H02P9/30 L
H02P9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085979
(22)【出願日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202211036196
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】デサバトラ、スリーダール
(72)【発明者】
【氏名】サンカル、マレパティ バヴァニ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド、ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】パタック、スディープ
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AB13
5H590CA08
5H590CD03
5H590CE01
5H590EA01
5H590FC23
5H590FC26
5H590JA19
5H590KK04
5H590KK06
(57)【要約】
【課題】静的起動回路の地絡検出のためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】
一実施形態では、システムは、地絡検出システム(36)を含むことができる。地絡検出システム(36)は、静的起動システム(16)の動作中に静的起動システム(16)から1つ以上の信号を受け取り、線形フィルタ出力を生成するように構成された線形フィルタ(72)を含む。地絡検出システム(36)は、更に、前記線形フィルタ出力を整流し、整流器出力を生成するように構成された整流器(74)と、前記整流器出力に係数を掛けてゲイン出力を生成するように構成されたゲインシステム(76)とを含む。地絡検出システム(36)は、更に、前記ゲイン出力に基づいて地絡が存在していることを示すように構成された地絡インジケータシステム(80)であって、前記地絡検出システム(36)は、前記地絡に基づいて処置を命令するように構成された、地絡インジケータシステム(80)を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地絡検出システム(36)であって、
静的起動システム(16)の動作中に静的起動システム(16)から1つ以上の信号を入力として受け取り、線形フィルタ出力を生成するように構成された線形フィルタ(72)、
前記線形フィルタ出力を整流し、整流器出力を生成するように構成された整流器(74)、
前記整流器出力に係数を掛けてゲイン出力を生成するように構成されたゲインシステム(76)、及び
前記ゲイン出力に基づいて地絡が存在していることを示すように構成された地絡インジケータシステム(80)であって、前記地絡検出システム(36)は、前記地絡に基づいて処置を命令するように構成された、地絡インジケータシステム(80)
を含む、地絡検出システム。
【請求項2】
前記線形フィルタ(72)は、前記入力から選択された周波数成分を通過させるように調整された極及び零点を含み、前記係数は、以下の式で表される、請求項1に記載の地絡検出システム(36)。
【数7】
【請求項3】
前記選択された周波数成分は負荷周波数の2倍から5倍の間の周波数成分であり、前記入力は疑似中性点電圧(FNV)信号を含む、又は前記線形フィルタ(72)がバイカッドフィルタを含む、請求項2に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項4】
前記線形フィルタ(72)は、連続時間伝達関数、離散時間伝達関数、又は前記連続時間伝達関数及び前記離散時間伝達関数の組合せを含む、請求項3に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項5】
平均値/積分器システムを含み、前記平均値/積分器システムは、前記ゲイン出力を受け取り、前記地絡インジケータシステム(80)に平均値出力を供給するように構成されている、及び/又は前記ゲイン出力を或る期間にわたって積分し、少なくとも2周期待って、前記地絡インジケータシステム(80)に地絡の存在を示す出力を供給するように構成された、請求項1に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項6】
前記静的起動システム(16)は、直流(DC)リンク・リアクトル(32)を含む電力モジュール(40)を含む、請求項1に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項7】
前記電力モジュール(40)は、1つ以上の電源側ブリッジ変換器(42、44)、1つ以上の負荷側ブリッジ(46)、又は少なくとも2つのバス(48)を含み、前記1つ以上の信号は、前記1つ以上の電源側ブリッジ変換器(42、44)、前記1つ以上の負荷側ブリッジ(46)、又は前記少なくとも2つのバス(48)から来る信号である、請求項6に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項8】
前記処置は、前記静的起動システム(16)、前記静的起動システム(16)に電気的に結合された外部システム、又は前記静的起動システム(16)と前記外部システムとの組合せをトリップすることを含む、請求項1に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項9】
前記静的起動システム(16)は発電機(14)に電気的に結合され、前記発電機(14)は前記タービンシステム(12)に機械的に結合され、前記静的起動システム(16)は前記発電機(14)を通じて前記タービンシステム(12)の起動に関与するように構成されている、請求項1に記載の地絡検出システム(36)。
【請求項10】
静的起動システム(16)の動作中に、前記静的起動システム(16)から1つ以上の信号を受け取ること(70)、
前記1つ以上の信号を線形フィルタ処理して、線形フィルタ出力を生成すること(72)、
前記線形フィルタ出力を整流して、整流された出力を生成すること(74)、
前記整流された出力にゲインを適用してゲイン出力を生成すること(76)、
前記ゲイン出力に基づいて地絡を検出すること(80)、及び
前記地絡の検出に基づいてシステムをトリップすること(78)
を含む方法。
【請求項11】
前記線形フィルタ処理すること(72)は、入力から選択された周波数成分を通過させるように調整された極及び零点を前記1つ以上の信号に適用して、線形フィルタ出力を生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記線形フィルタ処理すること(72)は、負荷周波数の2倍から5倍の間の周波数を通過させるように構成された、連続時間伝達関数、離散時間伝達関数、又は前記連続時間伝達関数と前記離散時間伝達関数との組合せを適用することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲイン出力から(78)平均値及び/又は積分値を得て、平均値出力又は積分値出力を生成することを含み、前記地絡を検出すること(80)は、前記平均値出力及び/又は前記積分値出力を使用することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記静的起動システム(16)は、タービン(12)の起動シーケンスが実行されている間に、発電機(14)又はモータ(14)を駆動するために、可変周波数AC信号を供給するように構成されている、請求項10に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年6月23日に出願された印度国出願番号202211036196(発明の名称「静的起動回路の地絡検出のためのシステム及び方法」)に対する優先権の利益を主張するものであり、その印度国出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に開示される対象は、一般に、静的起動回路に関し、より詳細には、静的起動回路の故障を判定するためのシステム及び方法に関する。
【0003】
一部のガスタービンシステムでは、ガスタービンを起動させ、所望の速度プロファイルまで加速させることができる。この速度プロファイルは、ガスタービンに所望の起動条件を提供する速度プロファイルとすることができる。速度プロファイルは、速度、電流対時間、電圧対時間、及び/又は電力対時間の詳細を含むことができ、システム(負荷転流インバータ(LCI)システムなど)は、これらの詳細を、発電機及びガスタービンシステムの起動に関連する他の詳細とともに、発電機に提供することができる。このような用途では、静的起動システムが、同期モータとして機能する発電機と一緒に使用される場合があり、発電機は、ガスタービンのシャフトに動作可能に結合することができる。ガスタービンシステムの起動シーケンスが実行されている間、静的起動システムは、可変周波数電流を供給して、(例えば、励磁界電圧及び/又は固定子電流を変調することによって)発電機を駆動及び制御し、発電機はガスタービンのメインシャフトを回転することができる。静的起動システムは、ガスタービンが通常の(例えば、自己持続)運転に入ると、発電機から切り離され、電気的に切断することができる。静的起動システムの故障検出(地絡検出を含む)を改善することが有益であると考えられる。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、システムは地絡検出システムを含む。地絡検出システムは、静的起動システムの動作中に静的起動システムから1つ以上の信号を入力として受け取り、線形フィルタ出力を生成するように構成された線形フィルタを含む。地絡検出システムは、前記線形フィルタ出力を整流し、整流器出力を生成するように構成された整流器と、前記整流器出力に係数を掛けてゲイン出力を生成するように構成されたゲインシステムとを更に含む。地絡検出システムは、前記ゲイン出力に基づいて地絡が存在していることを示すように構成された地絡インジケータシステムであって、前記地絡検出システムは、前記地絡に基づいて処置を命令するように構成されている、地絡インジケータシステムを含む。
【0005】
別の実施形態では、システムは、ガスタービンと、発電機と、静的起動システムとを含む。静的起動システムは、前記ガスタービンの起動シーケンスが実行されている間、発電機を駆動するために、可変周波数AC信号を供給するように構成されている。システムは、静的起動システムの動作中に静的起動システムから1つ以上の信号を受け取り、前記1つ以上の信号を線形フィルタ処理して線形フィルタ出力を生成するように構成された地絡検出システムを更に含む。地絡検出システムは、更に、前記線形フィルタ出力を整流して、整流された出力を生成し、前記整流された出力にゲインを適用してゲイン出力を生成するように構成されている。更に、地絡検出システムは、前記ゲイン出力から平均値を得て、平均値出力を生成し、前記平均値出力に基づいて地絡を検出するように構成されており、地絡検出システムは、前記地絡に基づいて処置を命令するように構成されている。
【0006】
さらなる実施形態において、方法は、静的起動システムの動作中に、前記静的起動システムから1つ以上の信号を受け取ることと、前記1つ以上の信号を線形フィルタ処理して、線形フィルタ出力を生成することとを含む。本方法は、前記線形フィルタ出力を整流して、整流された出力を生成することと、前記整流された出力にゲインを適用してゲイン出力を生成することとを更に含む。また、本方法は、前記ゲイン出力に基づいて地絡を検出することと、前記地絡の検出に基づいてシステムをトリップすることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の発明を実施するための形態を添付の図面を参照して読むことにより、更に理解される。図面において、類似の符号は図面全体にわたって類似の構成要素を表す。
図1】地絡検出システムを有する静的起動システムを含むタービン発電機システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2図1のタービン発電機システムを更に詳細に示すブロック図である。
図3】地絡を検出するために使用することができる図2の地絡検出システムのブロック図及び実施形態である。
図4】特定の機械の地絡を検知するのに適した処理の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の1つ以上の具体的な実施形態が記載される。これらの実施形態を簡潔に説明することを考えているので、実際の実装の全ての特徴を本明細書に記載しているわけではない。どのような実際の実装の開発でも、様々なエンジニアリングプロジェクト又はデザインプロジェクトのように、実装に固有の多数の決定を行って開発者の特定の目標(実装によって異なると考えられるシステム関連の制約及びビジネス関連の制約の順守など)を達成しなければならないことを理解すべきである。更に、このような開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、本開示の利益を有する当業者にとっては、日常的な、設計、製作、及び製造の業務であることを理解すべきである。
【0009】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介する場合、冠詞「a(1つ)」、「an(1つ)」、「the(この、その)」、及び「said(前記)」は、その要素が1つ以上存在することを意味することが意図されている。用語「comprising(含んでいる、有している)」、「including(含んでいる、有している)」、及び「having(含んでいる、有している)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する場合があることを意味する。
【0010】
以下に更に説明するように、特定の実施形態は、電気システム(静的起動システムなど)において、特定の故障(例えば、地絡)を検出するための技法を提供する。以下に更に説明する技術を使用して、静的起動システム(負荷転流インバータ(LCI)システムなど)は、仮想負荷側(例えば、発電機側)の中性点で信号を検出することができる接地検出システムを含むことができる。例えば、発電機中性点は、静的起動シーケンスが実行されている間に、接地設備に直列接続されたブレーカ/スイッチを開くことによってグランドから絶縁され、LCIで起こり得る直流(DC)リンクの地絡から中性点接地変圧器を保護することができる。
【0011】
ブレーカ/スイッチが閉じられ、発電機中性点がグランドに接続されていても、地絡が識別される改良されたシステム及び/又はプロセスが本明細書に記載されている。特定の実施形態では、DCリンクの地絡(例えば、ブレーカ/スイッチが閉じている場合)では、中性点接地変圧器(NGT)を通じて発電機中性点に流れる第3高調波電流が生じることがある。擬似中性点電圧(FNV)を使用して地絡を検出してもよい。負荷転流中、FNVの電圧信号は、3つの信号(例えば、3相線対地電圧信号)を用いて計算することができる。例えば、3相線対地電圧信号を平均してFNVを得ることができる。トリップが開始され、特定のブロックが、例えば、LCIの電源側ブリッジ及び/又は負荷側ブリッジに適用されて、グランドに流れる電流を制限することができる。これらの技術によって、数十ミリ秒以下で地絡を特定することができ、例えば、NGT又は電圧変圧器(VT)のコアが飽和する前にLCIをトリップし、この結果、コアの飽和が発生すると過剰な電流が流れる。したがって、特定の電気システム(例えば、静的起動システム)に対して、より効率的に地絡を検出することができる。
【0012】
図1を参照すると、図1は、ガスタービン12、発電機14、及び静的起動システム16を含むタービン発電機システム10の一実施形態を示す簡略化されたシステム図である。自立運転の前に、静的起動システムを使用してガスタービン12に電力を供給することができる。自立運転では、ガスタービン12における燃料の燃焼により、ガスタービン12の1つ以上のタービンブレードが、メインシャフト20Cを回転駆動させることができる。図示されるように、シャフト20は、シャフト20の回転によって動力が供給される負荷18に結合することができる。例として、負荷18は、タービン発電機システム10の回転出力によって電力を生成することができる任意の適切な装置(外部の機械負荷又は発電プラントなど)とすることができる。例えば、一部の実施形態では、負荷18として、電気発電機、飛行機のプロペラなどがある。
【0013】
タービン発電機システム10の起動シーケンスが実行されている間(例えば、タービン12が略静止位置から最初に起動されるとき)、静的起動システム16は、発電機14を同期モータとして駆動するAC可変速ドライブシステムとして機能することができる。例えば、静的起動システム16は、電力変換モジュールを含むことができ、電力変換モジュールは、ACバス22、スイッチ24、及び変圧器26を経由して電源(グリッド24など)からAC電力を受け取り(例えば、絶縁変圧器の二重巻線の二次デルタ又は二次ワイがコンジット27を経由して入力電力を提供する)、AC遮断器又はヒューズ28及びスイッチ30を経由して可変周波数AC電力を供給し、発電機14を駆動する。DCリンク・インダクタシステム(例えば、DCリンク・リアクトル)32も示されており、これは、以下に更に説明する誘導ブリッジとして使用することができる。任意でAC出力インダクタ34を使用することもできる。したがって、発電機14及び静的スタータ16は、全体として、所望の速度プロファイルに従ってタービン12を加速させるように動作することができる。例えば、一実施形態では、所望の起動条件は、タービン12が、タービン自体の燃焼プロセスによって発電機14及び静的起動システム16から独立して自立運転できるような速度に到達する条件とすることができる。所望の速度に到達すると、静的起動システム16は発電機14から分離し、タービン12は静的起動システム16から独立して動作し続けることができる。理解できるように、静的起動システム16及び発電機14を使用すると、以下の点で有益である:別個の起動装置(電気モータ又はディーゼルエンジンなど)の必要性が低下し、またそのような補助ハードウェアに関連するトルクコンバータの必要性も低下し、したがって、全体の部品コストを削減するだけではなく、タービンユニット12の近傍のスペースを使用できるようにしてタービンシステム10の全体のフォームファクタを小さくする。
【0014】
更に、静的起動システム16は、地絡システム36を含むことができる。地絡システム36は、例えば、DCリンク・インダクタシステム32の電源側(例えば、静的起動システム16にACを供給する電源部)及び/又は負荷側(例えば、静的起動システム16の出力側)の地絡を検出することができる。地絡システム36は、更に静的起動システム16を「トリップ」して、静的起動システム16又は静的起動システム16の下流のシステム(例えば、変圧器、負荷回路など)における地絡の望ましくない影響を阻止することができる。タービン発電機システム10は制御ロジック又は制御システム26を含むこともでき、制御ロジック又は制御システム26は、タービン12、発電機14、及び静的起動システム16の各々に様々な制御パラメータを提供することができる。例えば、制御ロジック26は、静的起動システム16の電力変換モジュールに含まれる固体半導体スイッチングデバイス(サイリスタなど)用のファイヤリングコマンドを提供又は生成することができる。以下で更に説明されるように、本開示の態様による制御ロジック26は、一部の実施形態において、地絡を検出し、地絡に応答するために、静的起動システム16と協働する及び/又は静的起動システム16を含む。
【0015】
ここで図2を参照すると、図1に示すタービン発電機システム10の実施形態が更に詳細に図示されている。特に、図2は、図1に示された静的起動システム16の一実施形態に存在している特定の構成要素を更に詳細に図示している。静的起動システム16又はLCIは、SFC(静止形周波数変換器)としても知られている。図1を参照して上述したように、タービン発電機システム10の起動シーケンスが実行されている間、静的起動システム16は、発電機14に可変AC電力が供給されるように、可変速度AC駆動システムとして動作することができる。本実施形態では、静的起動システム16は、直列接続された2つの電源側ブリッジ変換器(例えば、整流器)42、44と、負荷側ブリッジ変換器(例えば、インバータ)46と、DCリンク・リアクトル32とを有する電力変換モジュール40を含むことができる。図示のように、電源側ブリッジ42、44は、正のDC電圧をDCリンク・リアクトル32を通じて負荷側ブリッジ46に供給し、負のDC電圧は、バス48を経由して供給される。本技術は、静的起動システム16の電源側が単一整流器ブリッジを有する場合にも同様に適用可能である。電源側が単一の整流器ブリッジの場合、絶縁変圧器26は、図2に示すような2つのデルタ-ワイ二次巻線の代わりに、単一の二次巻線を有することができる。
【0016】
ACバス22から電力変換モジュール40に供給される主入力電力は、絶縁変圧器26によって供給され、電源側ブリッジ42、44の各々に三相AC入力電力を送ることができる。絶縁変圧器26は、遮断器によってACバス22に接続することができ、電源側ブリッジ整流器42、44の入力端子に正しい電圧及び位相を供給するとともに、ACバス22から絶縁することができる。図示のように、三相交流電力(例えば、図1のグリッド24からの電力)が、ACバス22によって絶縁変圧器26の一次巻線52に供給される。また、絶縁変圧器26は2つの二次巻線を含んでおり、2つの二次巻線は、電源側ブリッジ42に供給する二次巻線54と、電源側ブリッジ44に供給する二次巻線56とを含む。本実施形態では、この構成によって、電源側ブリッジ変換器44に入力される三相AC入力を30度ずらし、電力変換モジュール40における望ましくない高調波を低減することもできる。整流ブリッジに供給される電圧を30度ずらすと、静的起動システムの上流における高調波を低減することもできる。
【0017】
電源側ブリッジ42、44は、ライン転流型及び位相制御型のサイリスタブリッジとすることができ、このサイリスタブリッジは、絶縁変圧器26の二次巻線54、56からそれぞれ入力を受けると、DCリンク・リアクトル32に供給される可変DC電圧出力を生成する。DCリンク・リアクトル32は、電源側ブリッジ42、44によって供給される電流を平滑化し、高調波を低減しながらシステムの動作範囲にわたって電流を連続的に維持するインダクタンスを実現することができる。一実施形態では、DCリンク・リアクトル32は、空芯インダクタを含むことができる。DCリンク・リアクトル32の出力は、負荷側ブリッジ46に供給することができ、この負荷ブリッジは、可変周波数AC出力を供給するように構成された負荷転流型サイリスタブリッジ又は強制転流型サイリスタブリッジ(ここでは、符号58で表される)とすることができる。したがって、静的起動システム16は、タービンシステム12を起動するときに使用するのに適した負荷転流型インバータ(LCI)システム16とすることができる。
【0018】
図示された実施形態では、発電機14は、出力部58に接続され、接地されたコンデンサ60及び抵抗器62を含んでいる。同様に、発電機14は、接地された中性点接地抵抗器64及びコンデンサ66も含むことができる。一部の実施形態では、中性点接地変圧器(NGT)も使用することができる。静的起動システム16は、地絡検出システム36に通信可能に結合することができる1つ以上のセンサ68を含むことができる。センサ68は、インダクタンス、抵抗、キャパシタンス、電圧、アンペア数、周波数、又はそれらの組合せを感知することができる。一実施形態では、地絡検出システム36は、以下に更に説明するように、線形フィルタ(再帰型線形フィルタなど)を使用して、静的起動システム16の使用中に特定の信号を解析して地絡条件が発生しているかどうかを判定することができる。
【0019】
図3は、DCリンク・インダクタシステム32において、電源側(例えば、静的起動システム16に供給する電源側AC27)及び/又は負荷側(例えば、静的起動システム16の出力側58)の地絡を検出するために使用することができる地絡検出システム36のブロック図及び実施形態の図である。図示された実施形態では、入力70としては電圧信号(異なる複数の周波数成分を含むことができる電圧信号を有する擬似中性点電圧(FNV)など)がある。FNVを構成する電圧信号は、3つの信号(例えば、3相線対地電圧信号)を用いて計算することができる。例えば、3相線対地電圧信号を平均してFNVを得ることができる。入力70は、線形フィルタ72(再帰型フィルタなど)によって処理することができる。一部の実施形態では、線形フィルタ72は、負荷周波数の約2倍から約4倍の間の周波数を通過させるように調整されたフィルタである。例示的な実施形態では、バイカッドフィルタは、負荷周波数の3倍の周波数を通過させる。線形フィルタ72の出力は全周期整流器74によって処理することができ、全周期整流器74は、線形フィルタの出力の絶対値を取り、その絶対値をゲインシステム76に渡す。ゲインシステム76は、ゲインKを使用する(例えば、システム74の絶対値にゲインKを乗算する)。ゲインKは、1と5の間の値とすることができ、例示的な実施形態では、ゲインKは、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0020】
ゲインシステム76の出力は、あるサンプル数に基づいて平均値(例えば、統計的平均値)を得るために、平均値/積分器システム78によって使用することができる。すなわち、システム76の2つ以上の出力がメモリに記憶され、記憶された出力の平均値をシステム78で計算することができる。計算された平均値は、地絡インジケータ80によって故障の徴候を検知するために使用することができる。例えば、計算された平均値(ブロック78)は、ある値(又は、ある範囲内の値)と比較され、計算された平均値がその値(又は、その範囲内の値)を超える場合、故障の徴候があることを示すことができる。一部の実施形態では、計算された平均値を使用する代わりに、ブロック78は、ある期間(例えば、基本周波数)にわたってシステム78の出力を積分し、複数の周期を待って(例えば、2、3、4、5、6、又はそれ以上の数の周期を待って)、故障又はトリップ状態が始まるとすることができる。したがって、図示の実施形態では、ゲインK76を使用した後に、地絡インジケータ(FI)値を計算することができる。地絡が検出された場合、例えば、電力変換モジュール40が分離される、電力変換モジュール40の構成要素が分離される、電力変換モジュール40の入力電力が停止される、電力変換モジュール40の出力電力が停止される、又はそれらの組み合わせを実行するように、地絡を使用することができる。また、オペレータに地絡を通知することもできる。
【0021】
前述したように、一部の実施形態では、線形フィルタ72はバイカッドフィルタとすることができる。バイカッドフィルタを使用する場合、連続時間伝達関数及び/又は離散時間伝達関数を使用することができる。例示的な実施形態では、連続時間伝達関数は、以下のように表すことができる。
【数2】
ここでd=0.05、ω=2π×3finvであり、Tは、入力70をサンプリングするために使用される回路のサンプリングレートである。例示的な実施形態では、離散時間伝達関数は、以下のように表すことができる。
【数3】
zはZ領域(例えば、一連の実数又は複素数である離散時間信号を複素周波数領域の表現に変換するZ変換であって、ラプラス変換の離散時間と等価なものと考えることができる)である。バイカッドフィルタの伝達関数の変数「d」は、フィルタ72によって導入される遅延量を制御する機能を有する。dが増加すると、フィルタ72の選択性が低下し、また、フィルタ72によって導入される遅延が減少する。逆に、dが減少すると、フィルタ72の選択性が増加し、また、フィルタ72によって導入される遅延が増加する。以下の記号
【数4】
で表される信号の平均値を計算するために、あるウィンドウサイズbの移動平均を使用することができる。一実施形態では、移動平均ブロックの、より最適なウィンドウサイズb、即ち、boptは、バイカッドフィルタの出力における信号の周波数に依存し、次式で与えられる。
【数5】
【0022】
地絡検出システム36は、ハードウェア(例えば、適切に構成された回路)、ソフトウェア(例えば、1つ以上の有形のコンピュータ可読媒体上に記憶された実行可能コードを含むコンピュータプログラムによって)、又はハードウェア要素とソフトウェア要素との両方の組み合わせを使用して実装することができる。例えば、地絡検出システム36は、制御システム26と動作可能に及び/又は通信可能に接続された又は含まれる回路として実装することができる。同様に、地絡検出システム36は、制御システム26によって実行可能なソフトウェアで実装されてもよい。更に又は代替的に、地絡検出システム36は、制御システム26に動作可能に及び/又は通信可能に接続された回路とソフトウェアとの組合せとして実装されてもよい。
【0023】
図4は、特定の機械の(例えば、静的起動システム16の)地絡を検知するのに適したプロセス100の一実施形態のフローチャートである。プロセス100は、例えば、地絡検出システム36によって、回路及び/又はコンピュータコードとして実装することができる。図示された実施形態では、プロセス100は、機械の動作(静的起動システム16の動作など)を表す信号を受け取ることができる(ブロック102)。上述のように、この信号はとしては、入力部27からの信号、DCリンク・リアクトル32からの信号、ブリッジ変換器(例えば、整流器)42、44からの信号、負荷側ブリッジコンバータ(例えば、インバータ)46からの信号、バス48からの信号、出力部58からの信号、又はそれらの組み合わせからの信号がある。信号は、インダクタンス、抵抗、キャパシタンス、電圧、アンペア数、周波数、又はそれらの組み合わせを表すセンサ68の信号とすることもできる。
【0024】
次に、プロセス100は、信号に対してフィルタリング解析を適用する(ブロック104)ことができる。例えば、線形フィルタ72(例えば、バイカッドフィルタ)を使用して、信号をフィルタ処理することができる。フィルタリングの結果(ブロック104)として、例えば、フィルタ処理された周波数信号(フィルタ処理された負荷周波数信号など)を得ることができる。特定の実施形態において、このフィルタリングでは、負荷周波数の3倍の周波数を通過させることができる。次に、プロセス100は、フィルタリング解析の結果を処理する(ブロック106)、ことができる。一実施形態では、フィルタリングでは、例えば、フィルタリングにより得られた出力の絶対値を取り、次に、絶対値に上記のようなゲインkを適用し、更に、2つ以上の絶対値の平均を求めることによって、更に処理することができる(ブロック106)。
【0025】
次に、プロセス100は、地絡の存在を検知する(ブロック108)。特定の実施形態では、地絡は、ゲインkを適用することで得られる地絡インジケータ(FI)値を使用することによって検知することができる(ブロック108)。FIが閾値を超える場合、地絡が見つかったと考えることができる。次に、プロセス100は、例えば、入力部27及び/又は出力部58をオフにするためにスイッチを開くなど、特定の機器をトリップする(スイッチを開いて、入力部27及び/又は出力部58をオフにするなど)ことによって(ブロック110)、地絡の検知に基づいて動作することができる。フィルタリングの解析及び処理を適用することによって、本明細書で説明される技術は、より迅速に地絡を見つけ、偽陽性/偽陰性を最小にする又は排除することができる。
【0026】
理解されるように、固体半導体スイッチの導電状態の監視及び検出に関連する上記の様々な技術は、例示のみによって本明細書に記載されている。従って、本開示は、上記で説明された例のみに限定されると解釈されるべきではないことが理解されるべきである。実際、上記の検出ロジック及び検出技術の複数の変形例が存在する。更に、上述した技法は、任意の適切な方法で実施できることを理解されたい。例えば、検出システム36は、ハードウェア(例えば、好適に構成された回路)、ソフトウェア(例えば、1つ以上の有形コンピュータ可読媒体に記憶された実行可能コードを含むコンピュータプログラムによって)、又はハードウェア要素とソフトウェア要素との両方の組合せを使用して実装してもよい。
【0027】
ここに記載された説明では、実施例を使用して、最良の態様を含む本発明を開示し、また、当業者は本発明を実施(任意の装置又はシステムを製造及び使用すること、ならびに組み込まれた任意の方法を実行することを含む)することができる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって画定され、当業者に思い浮かぶ他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的な差異ではない均等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0028】
[実施形態1]
地絡検出システムであって、
静的起動システムの動作中に静的起動システムから1つ以上の信号を入力として受け取り、線形フィルタ出力を生成するように構成された線形フィルタ、
前記線形フィルタ出力を整流し、整流器出力を生成するように構成された整流器、
前記整流器出力に係数を掛けてゲイン出力を生成するように構成されたゲインシステム、及び
前記ゲイン出力に基づいて地絡が存在していることを示すように構成された地絡インジケータシステムであって、前記地絡検出システムは、前記地絡に基づいて処置を命令するように構成された、地絡インジケータシステム
を含む、地絡検出システム。
[実施形態2]
前記線形フィルタは、前記入力から選択された周波数成分を通過させるように調整された極及び零点を含み、前記係数は、以下の式で表される、実施形態1に記載の地絡検出システム。
【数6】
[実施形態3]
前記選択された周波数成分は負荷周波数の2倍から5倍の間の周波数成分であり、前記入力は疑似中性点電圧(FNV)信号を含む、又は前記線形フィルタがバイカッドフィルタを含む、実施形態2に記載の地絡検出システム。
[実施形態4]
前記線形フィルタは、連続時間伝達関数、離散時間伝達関数、又は前記連続時間伝達関数及び前記離散時間伝達関数の組合せを含む、実施形態3に記載の地絡検出システム。
[実施形態5]
平均値/積分器システムを含み、前記平均値/積分器システムは、前記ゲイン出力を受け取り、前記地絡インジケータシステムに平均値出力を供給するように構成されている、及び/又は前記ゲイン出力を或る期間にわたって積分し、少なくとも2周期待って、前記地絡インジケータシステムに地絡の存在を示す出力を供給するように構成された、実施形態1に記載の地絡検出システム。
[実施形態6]
前記静的起動システムは、直流(DC)リンク・リアクトルを含む電力モジュールを含む、実施形態1に記載の地絡検出システム。
[実施形態7]
前記電力モジュールは、1つ以上の電源側ブリッジ変換器、1つ以上の負荷側ブリッジ、又は少なくとも2つのバスを含み、前記1つ以上の信号は、前記1つ以上の電源側ブリッジ変換器、前記1つ以上の負荷側ブリッジ、又は前記少なくとも2つのバスから来る信号である、実施形態6に記載の地絡検出システム。
[実施形態8]
前記処置は、前記静的起動システム、前記静的起動システムに電気的に結合された外部システム、又は前記静的起動システムと前記外部システムとの組合せをトリップすることを含む、実施形態1に記載の地絡検出システム。
[実施形態9]
前記静的起動システムは発電機に電気的に結合され、前記発電機は前記タービンシステムに機械的に結合され、前記静的起動システムは前記発電機を通じて前記タービンシステムの起動に関与するように構成されている、実施形態1に記載の地絡検出システム。
[実施形態10]
静的起動システムの動作中に、前記静的起動システムから1つ以上の信号を受け取ること、
前記1つ以上の信号を線形フィルタ処理して、線形フィルタ出力を生成すること、
前記線形フィルタ出力を整流して、整流された出力を生成すること、
前記整流された出力にゲインを適用してゲイン出力を生成すること、
前記ゲイン出力に基づいて地絡を検出すること、及び
前記地絡の検出に基づいてシステムをトリップすること
を含む方法。
[実施形態11]
前記線形フィルタ処理することは、入力から選択された周波数成分を通過させるように調整された極及び零点を前記1つ以上の信号に適用して、線形フィルタ出力を生成することを含む、実施形態10に記載の方法。
[実施形態12]
前記線形フィルタ処理することは、負荷周波数の2倍から5倍の間の周波数を通過させるように構成された、連続時間伝達関数、離散時間伝達関数、又は前記連続時間伝達関数と前記離散時間伝達関数との組合せを適用することを含む、実施形態11に記載の方法。
[実施形態13]
前記ゲイン出力から平均値及び/又は積分値を得て、平均値出力又は積分値出力を生成することを含み、前記地絡を検出することは、前記平均値出力及び/又は前記積分値出力を使用することを含む、実施形態10に記載の方法。
[実施形態14]
前記静的起動システムは、タービンの起動シーケンスが実行されている間に、発電機又はモータを駆動するために、可変周波数AC信号を供給するように構成されている、実施形態10に記載の方法。
【符号の説明】
【0029】
12 ガスタービン
14 発電機
16 静的起動システム
32 DCリンク・リアクトル
36 地絡システム
40 電力変換モジュール
42、44 ソースブリッジ変換器
46 負荷ブリッジ変換器
48 バス
70 入力
72 線形フィルタ
74 全周期整流器
76 ゲインシステム
78 平均値/積分器システム
80 地絡インジケータ

図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】