(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029210
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】物体に対する複数の製造作業を実施するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/12 20060101AFI20240227BHJP
B24B 53/053 20060101ALI20240227BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240227BHJP
【FI】
B24B5/12
B24B53/053
B24B41/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001758
(22)【出願日】2024-01-10
(62)【分割の表示】P 2020569983の分割
【原出願日】2019-06-11
(31)【優先権主張番号】62/683,921
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520487613
【氏名又は名称】コベントリー アソシエイツ, インク.
【氏名又は名称原語表記】COVENTRY ASSOCIATES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー クレイグ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ソッセン デイヴィッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】いかなる手動の介入もなしに、ツール間で被加工物を自動的に、迅速に、繰り返し可能に、かつ正確に移動させ、テーパローラ軸受コーンの内径、外径、およびリブの研削などを可能にする、マルチツール位置決めおよび製造システムを提供する。
【解決手段】マルチツール位置決めおよび製造システム200は、研削ホイール5、7などの数多くのツール間で被加工物を移動させ、そのそれぞれが被加工物の製造作業を実施する。機械工は、異なる作業のために機械と機械との間で被加工物を移動させる必要がないので、別個のツールを使用するよりも、製造プロセス全体的をより速く、かつより高い歩留まりとすることができる。また、システム200は、ドレッシングおよび調整するためにツール間で単一のドレッサ12を移動することもでき、別個のツール用の別個のドレッサの必要性を除去することによって、製造効率をさらに高めることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造工程を実施するためのシステムであって、
上部プレートと、
被加工物を保持するためのワークヘッドと、
前記被加工物に第1の機械加工作業を実施するための、前記上部プレートに連結された第1のツールと、
前記被加工物に第2の機械加工作業を実施するための、前記上部プレートに連結された第2のツールと、
前記上部プレートの下方に配置され、前記ワークヘッドを直接的に支持して、前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する平面内において3自由度で前記ワークヘッドおよび前記被加工物を移動させるための位置決めシステムであって、前記3自由度が前記ワークヘッドおよび前記被加工物の、前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面内における任意の方向の二次元平行移動と、前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する軸を中心とする前記ワークヘッドおよび前記被加工物の回転とを含み、前記上部プレート、前記第1のツールおよび前記第2のツールの真下で移動するように構成される、前記位置決めシステムと、
を備える、前記複数の製造工程を実施するためのシステム。
【請求項2】
前記第1のツールが第1の研削ホイールであり、かつ前記第2のツールが第2の研削ホイールである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記位置決めシステム上に据え付けられて、前記第1の研削ホイールおよび前記第2の研削ホイールをドレッシングする、研削ホイールドレッサ、をさらに備え、かつ
前記位置決めシステムが、前記研削ホイールドレッサを、前記第1の研削ホイールおよび前記第2の研削ホイールと交差する前記平面内で移動させるように構成される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記位置決めシステムが、前記被加工物が前記ワークヘッド上にある間に、前記被加工物を前記第1のツールから前記第2のツールへと移動させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する前記軸が、前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する第1の軸であり、前記位置決めシステムが、
前記第1の軸を中心として回転する第1の回転テーブルと、
前記第1の軸と平行で、かつ前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する第2の軸を中心として回転するように、前記第1の回転テーブルを支持する第2の回転テーブルと、
前記第1の軸および前記第2の軸と平行で、かつ前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する第3の軸を中心として回転するように、前記第2の回転テーブルを支持する第3の回転テーブルと、を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記位置決めシステムが、
前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面と直交する前記軸を中心として前記ワークヘッドを回転させるための回転テーブルと、
前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面内で第1の方向に前記ワークヘッドおよび前記回転テーブルを移動させるための、前記回転テーブルに動作可能に連結された第1のスライドと、
前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差する前記平面内で前記第1の方向とは異なる第2の方向に前記ワークヘッド、前記回転テーブル、および前記第1のスライドを移動させるための、前記第1のスライドに動作可能に連結された第2のスライドと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のツールに動作可能に連結される、前記第1のツールを前記被加工物に対して回転させるためのスピンドルをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記位置決めシステムに動作可能に連結される、前記位置決めシステムに、移動計画に従って、前記被加工物を前記第1のツールと前記第2のツールとの間で移動させるためのコントローラをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ワークヘッドが、前記被加工物の対称軸を中心として前記被加工物を回転させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のツールに動作可能に連結される、前記被加工物に対して前記平面内で前記第1のツールを平行移動させるためのスライドをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
被加工物から部品を製造するための方法であって、
前記被加工物をワークヘッドに固定することと、
前記被加工物および前記ワークヘッドを、位置決めシステムの3自由度を用いて平面内において第1のツールに対して位置付けることであって、前記3自由度が前記ワークヘッドおよび前記被加工物の、前記平面内における任意の方向の二次元平行移動と、前記平面と直交する軸を中心とする前記ワークヘッドおよび前記被加工物の回転とを含み、前記第1のツールが上部プレートに据え付けられている、前記位置付けることと、
前記被加工物が前記ワークヘッド内にある間に、前記第1のツールを用いて前記被加工物に第1の製造作業を実施することと、
前記被加工物および前記ワークヘッドを、前記位置決めシステムを用いて前記平面内において前記第1のツールから第2のツールへと移動することであって、前記平面が、前記第1のツールおよび前記第2のツールと交差し、前記第2のツールが前記上部プレートに据え付けられている、前記移動することと、
前記被加工物が前記ワークヘッド内にある間に、前記第2のツールを用いて前記被加工物に第2の製造作業を実施することと、
前記被加工物を前記ワークヘッドから取り外すことと、
を含み、
前記位置決めシステムが、前記被加工物および前記ワークヘッドを位置決めするときに、前記上部プレート、前記第1のツールおよび前記第2のツールの真下で移動するように構成される、前記方法。
【請求項12】
前記被加工物および前記ワークヘッドを、前記第1のツールから前記第2のツールへと移動することが、1分未満内に生じる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被加工物に前記第1の製造作業を実施することが、内径または外径のうちの一方を研削することを含み、前記被加工物に前記第2の製造作業を実施することが、前記内径または前記外径のうちのもう一方を研削することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記位置決めシステムに据え付けられたドレッサを用いて前記第1のツールをドレッシングすることと、
前記位置決めシステムを用いて、前記ドレッサを前記第1のツールから前記第2のツールへと移動させることと、
前記ドレッサを用いて前記第2のツールをドレッシングすることと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
マルチツール位置決めおよび製造システムであって、
上部プレートと、
前記上部プレートと平行な平面内で被加工物を支持するためのワークヘッドと、
前記上部プレートによって支持されて、前記上部プレートと平行な第1の軸を中心として第1の研削ホイールを回すための、第1のスピンドルと、
前記上部プレートによって支持されて、前記上部プレートと平行な第2の軸を中心として第2の研削ホイールを回すための、第2のスピンドルと、
前記上部プレートによって支持されて、前記上部プレートと平行な第3の軸を中心として第3の研削ホイールを回すための、第3のスピンドルと、
前記ワークヘッド、並びに第1の研削ホイール、第2の研削ホイールおよび第3の研削ホイールを成形するように構成された研削ホイールドレッサを支持して、前記ワークヘッド、前記被加工物および前記研削ホイールドレッサを、前記平面内で、前記第1の研削ホイールから、前記第2の研削ホイールへ、前記第3の研削ホイールへと平行に移動させるための、偏心位置決めシステムであって、前記研削ホイールドレッサが、前記偏心位置決めシステムに直接据え付けられ、前記ワークヘッドに対して位置が固定され、かつ前記ワークヘッドの近傍に位置する、前記偏心位置決めシステムと、
を備える前記マルチツール位置決めおよび製造システム。
【請求項16】
前記ワークヘッドが、前記被加工物の対称軸を中心として前記被加工物を回すように構成される、請求項15に記載のマルチツール位置決めおよび製造システム。
【請求項17】
前記偏心位置決めシステムが、前記上部プレートと平行な前記平面内で前記ワークヘッドを横方向に移動させ、かつ前記上部プレートと平行な前記平面と直交する軸を中心として前記ワークヘッドを回すように構成される、請求項15に記載のマルチツール位置決めおよび製造システム。
【請求項18】
前記上部プレートに据え付けられ、かつ前記第1のスピンドルおよび前記第2のスピンドルを支持する、前記上部プレートと平行な前記平面内で前記第1のスピンドルおよび前記第2のスピンドルを直線的に平行移動するための第1のスライドと、
前記上部プレートに据え付けられ、かつ前記第3のスピンドルを支持する、前記上部プレートと平行な前記平面内で前記第3のスピンドルを直線的に平行移動するための第2のスライドと、
をさらに備える、請求項15に記載のマルチツール位置決めおよび製造システム。
【請求項19】
前記偏心位置決めシステム上に据え付けられて、前記第1の研削ホイール、前記第2の研削ホイール、および前記第3の研削ホイールをドレッシングするための、研削ホイールドレッサ、をさらに備え、かつ
前記偏心位置決めシステムが、前記研削ホイールドレッサを前記上部プレートと平行な前記平面内で移動させるように構成される、請求項15に記載のマルチツール位置決めおよび製造システム。
【請求項20】
前記偏心位置決めシステムが、
第1の回転軸を有する第1の回転テーブルと、
前記第1の回転テーブル上に据え付けられ、前記第1の回転軸と平行な第2の回転軸を有する、第2の回転テーブルと、
前記第2の回転テーブル上に据え付けられ、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸と平行な第3の回転軸を有する、第3の回転テーブルと、を備える、請求項15に記載のマルチツール位置決めおよび製造システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、合衆国法典第35編第119条(e)項に基づき、2018年6月12日に出願された、「Mechanism for performing multiple
manufacturing operations on an object」と題する米国特許出願第62/683,921号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
典型的には、軸受などの部品を製造することは、複数の機械加工および/または製造作業を伴う。各作業は異なるツールを用いて実施され、部品は機械から機械へと移動される。機械へと移動されたとき、通常は機械を操作する機械工によって部品は正確に位置付けられ、そのため機械は製造作業を正確に実施することができる。その作業が完了したとき、機械工は、シューまたはチャックなどのツーリングから部品を取り外し、そしてこれを作業場の床を横切って次の機械へと移動し、そこで機械工は、別のツーリングで次の機械に対して部品を位置付ける。この位置決めおよび再位置決めプロセスは、特に複雑な部品の場合、コストと時間がかかる。加えて、各機械には、その独自の精密位置決めシステム、研削ホイールを高速回転させる研削スピンドル、ならびに研削ホイールドレッシングシステムおよびツーリングが必要とされる。
【0003】
例えば、
図1に示すもののような機械加工されたテーパローラ軸受100を考える。組み立てられたとき、テーパローラ軸受100は、カップまたは外側レースとも呼ばれる外輪102と、コーンまたは内側レースとも呼ばれる内輪104との間にケージ108によって保持されるテーパ転動要素106を有する。このテーパローラ軸受100のコーン104を製造するために必要な精密研削作業を実施するためには、内側/内径(ID)を研削するものと、外側/外径(OD)を研削するものと、リブを研削するものとの3つの別個の研削機が必要とされる。同様に、内燃機関用の燃料噴射器の精密研削には、入口ボアを研削するものと、1つは逆止弁の弁座を研削するものと、出口ボアを研削するものとの3つの別個の機械が使用される。
【発明の概要】
【0004】
発明の精密位置決めおよび製造システムは、作業と作業との間で部品を手動で調整する必要なしに、単一の部品の数多くの製造作業を実施することができる。これはまた、複数の機械用の別個の精密位置決めシステム、ならびに研削ホイールドレッシングシステムおよびツーリングの必要性も除去する。その代わりに、単一の精密位置決めシステムと単一の研削ホイールドレッサを使用して、数多くの異なる研削作業を実行することができる。例えば、発明の精密位置決めおよび製造システムは、3つの研削ホイールと、1つだけの精密位置決めシステムと、1つだけの研削ホイールドレッシングシステム、および1つのツーリングセットのみを用いて、3つの異なる研削作業(例えば、テーパローラ軸受のID、OD、およびリブを研削)を実施することができる。これにより、部品の生産に必要な資本設備のコストを大幅に低減する。資本コストの低減に加えて、すべての作業を同一のツーリングで実施することによって品質も向上する。またこれは、3つの異なる研削機械の間で部品を移動させる必要が除去されるため、部品の作製に伴う輸送時間およびコストを低減する。
【0005】
複数の製造工程を実施するためのシステムは、ワークヘッド、第1のツール、第2のツール、およびワークヘッドを支持する位置決めシステムを含んでもよい。作業中、ワークヘッドは被加工物を保持し、第1のツールは被加工物の第1の機械加工作業を実施し、第
2のツールは被加工物の第2の機械加工動作を実施し、そして位置決めシステムは第1のツールおよび第2のツールと交差する平面内でワークヘッドおよび被加工物を直線的に移動させる。位置決めシステムはまた、ワークヘッドおよび被加工物を、第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する軸を中心として回転させる。
【0006】
第1のツールおよび第2のツールは、それぞれ第1の研削ホイールおよび第2の研削ホイールとすることができる。システムはまた、位置決めシステム上に据え付けられた研削ホイールドレッサも含んでもよい。位置決めシステムは、第1の研削ホイールおよび第2の研削ホイールと交差する平面内で研削ホイールドレッサを移動させる。そして、研削ホイールドレッサは、第1の研削ホイールおよび第2の研削ホイールをドレッシングする。
【0007】
位置決めシステムは、被加工物がワークヘッド上にある間に、被加工物を第1のツールから第2のツールへと移動することができ、これは被加工物を被加工物の対称軸を中心として回転し得る。
【0008】
第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する軸を、第1の軸としてもよい。位置決めシステムは、第1の回転テーブル、第2の回転テーブル、および第3の回転テーブルを含んでもよい。作業中、第1の回転テーブルは、第1の軸を中心として回転する。第2の回転テーブルは、第1の回転テーブルを支持し、また第1の軸と平行で、かつ第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する第2の軸を中心として回転する。第2の回転テーブルは、第1の回転テーブルを支持し、また第1の軸と平行で、かつ第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する第2の軸を中心として回転する。そして第3の回転テーブルは、第2の回転テーブルを支持し、また第1の軸および第2の軸と平行で、かつ第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する第3の軸を中心として回転する。
【0009】
あるいは、位置決めシステムは、回転テーブル、回転テーブルを支持する第1のスライドと、第1のスライドを支持する第2のスライドとを含んでもよい。回転テーブルはまた、ワークヘッドを、第1のツールおよび第2のツールと交差する平面と直交する軸を中心として回転させる。第1のスライドは、ワークヘッドおよび回転テーブルを、第1のツールおよび第2のツールと交差する平面内の第1の方向に移動させる。そして第2のスライドは、ワークヘッド、回転テーブル、および第1のスライドを、第1のツールと第2のツールとが交差する平面内で第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる。
【0010】
システムは、被加工物に対して第1のツールを回転させるために、第1のツールに動作可能に連結されたスピンドルを含んでもよい。これはまた、位置決めシステムに動作可能に連結されて、位置決めシステムに、移動計画に従って、第1のツールと第2のツールとの間で被加工物を移動させるためのコントローラも含むことができる。そしてこれは、第1のツールに動作可能に連結された、被加工物に対して平面内で第1のツールを平行移動させるためのスライドを含むことができる。
【0011】
被加工物から部品を製造するための方法は、被加工物をワークヘッドに固定することを含む。被加工物が一旦固定されたら、偏心位置決めシステムはワークヘッド内の被加工物を第1のツールに移動させ、これは被加工物がワークヘッド内にある間に、被加工物に第1の製造作業を実施する。偏心位置決めシステムは、ワークヘッド内の被加工物を第1のツールから第2のツールに移動させ(例えば、1分以内で)、被加工物がワークヘッド内にある間に、被加工物に第2の製造作業を実施する。例えば、第1の製造作業および第2の製造作業は、軸受またはその他の部品の内径および外径の研削を含んでもよい。第2の製造作業が完了した後、被加工物をワークヘッドから取り外すことができる。
【0012】
一部の事例では、偏心位置決めシステム上に据え付けられたドレッサ(例えば、回転ダイヤモンドドレッサ)は、第1のツールをドレッシングする。偏心位置決めシステムは、ドレッサを第1のツールから第2のツールへと移動させ、そしてドレッサは第2のツールをドレッシングする。
【0013】
マルチツールの位置決めおよび製造システムはまた、上部プレート、ワークヘッド、第1のスピンドル、第2のスピンドル、第3のスピンドル、および偏心位置決めシステムも含んでもよい。ワークヘッドは、上部プレートと平行な平面内で被加工物を支持する。上部プレートによって支持される第1のスピンドル、第2のスピンドル、および第3のスピンドルは、上部プレートと平行な平面内で、それぞれ、第1の研削ホイール、第2の研削ホイール、および第3の研削ホイールを回す(spin)。また、ワークヘッドおよび研削ホイールドレッサを支持する偏心位置決めシステムは、第1の研削ホイールから第2の研削ホイールへ、そして第3の研削ホイールへと平行に、ワークヘッドおよび平面内のワークヘッドおよび被加工物を移動させる。
【0014】
ワークヘッドは、被加工物の対称軸を中心として被加工物を回すことができる。
【0015】
偏心位置決めシステムは、上部プレートと平行な平面内でワークヘッドを横方向に移動させ、かつ上部プレートと平行な平面と直交する軸を中心としてワークヘッドを回すことができる。
【0016】
マルチツールなどの位置決めおよび製造システムなどは、上部プレートに据え付けられた第1のスライドおよび第2のスライドも含んでもよい。第1のスライドは、第1のスピンドルおよび第2のスピンドルを支持し、かつこれらを上部プレートと平行な平面内で直線的に平行移動させる。そして第2のスライドは、第3のスピンドルを支持し、かつこれを上部プレートと平行な平面内で直線的に移動させる。
【0017】
マルチツールの位置決めおよび製造システムはまた、偏心位置決めシステム上に据え付けられた研削ホイールドレッサも含むことができる。偏心位置決めシステム、研削ホイールドレッサを上部プレートと平行な平面内で移動させる。そしてドレッサは、第1の研削ホイール、第2の研削ホイール、および第3の研削ホイールをドレッシングする。
【0018】
偏心位置決めシステムは、第1の回転テーブル(rotary table)、第2の回転テーブル、および第3の回転テーブルを含んでもよい。第1の回転テーブルは、第1の回転軸を有する。第2の回転テーブルは、第1の回転テーブル上に据え付けられ、かつ第1の回転軸と平行な第2の回転軸を有する。また第3の回転テーブルは、第2の回転テーブル上に据え付けられ、かつ第1の回転軸および第2の回転軸と平行な第3の回転軸を有する。
【0019】
一実施形態では、システムは、平面内での直線移動およびその平面と直交する軸を中心とした品目の回転(rotation)を提供する3自由度で物体を位置付けるために、偏心回転移動を使用する。この実施形態では、すべてのツールは固定された位置にある。
【0020】
別の実施形態では、システムは、平面内での直線移動およびその平面と直交する軸を中心とした品目の回転を提供する3自由度で物体を位置付けるために偏心回転移動を使用する。この実施形態では、1つ以上のツールを、1つ以上の直線移動軸に沿って対象となる方向(複数可)に移動させることができる。
【0021】
また別の実施形態では、システムは、平面内での直線移動およびその平面と直交する軸を中心とした品目の回転を提供する3自由度で物体を位置付けるために、互いに直角に位置する2つの直線位置決めシステムおよび回転テーブルを使用する。この実施形態では、
すべてのツールは固定された位置にある。
【0022】
なおさらに別の実施形態では、システムは、平面内での直線移動およびその平面と直交する軸を中心とした物体の回転を提供する3自由度で物体を位置付けるために、互いに直角に位置する2つの直線位置決めシステムおよび回転テーブルを使用する。この実施形態では、1つ以上のツールを、1つ以上の直線移動軸に沿って対象となる方向(複数可)に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明および添付の図面から、その他の目的、特徴、および利点が、当業者の頭に浮かぶであろう。
【0024】
【
図1】コーン(内側レース)が、3つの別個の研削作業、(1)内径(ID)の研削、(2)外径(OD)の研削、および(3)リブの研削を使用して作製される、テーパローラ軸受の分解組立図を示す。
【
図2】固定ツールを含み、かつ偏心回転移動を使用して、固定ツールを含む平面内で3自由度を有する、ワークヘッドによって回転するツーリングによって支持された被加工物などの物体を位置決めする、マルチツール精密位置決めおよび製造システムを示す。
【
図3A】
図2のマルチツール精密位置決めおよび製造システムにおける物体の移動のために好適な偏心位置決めシステムの斜視図である。
【
図3B】マルチツール精密位置決めおよび製造システムにおいてワークヘッド上の被加工物の位置決めおよび再位置決めを行うために好適な3つの回転偏心位置決めシステムの軸受の単純化された上面図である。
【
図3D】3つの回転偏心位置決めシステムが、ワークヘッド上の被加工物などの物体を、
図3Cに示す位置から
図3Dに示す位置まで概して直線状に約14インチ移動させることができる方法を図示する。
【
図3F】3つの回転偏心位置決めシステムが、ワークヘッド上の被加工物などの物体を、
図3Eに示す位置(これは
図3Dに示す位置と同じである)から「X」方向で
図3Fに示す位置まで、移動させることができる方法を図示する。
【
図4】
図2のマルチツール精密位置決めおよび製造システムを使用して部品を製造するためのフローチャートを示す。
【
図5】ワークヘッドが偏心位置決めシステムに据え付けられ、かつツールがリニアスライドに据え付けられた、マルチツール精密位置決めおよび製造システムを示す。
【
図6】固定ツールを含む平面内で3自由度でワークヘッド上の被加工物などの物体を位置決めするための、固定ツールと、リニアXスライドおよびリニアZスライドと、回転テーブルとを有する、マルチツール精密位置決めおよび製造システムを示す。
【
図7】
図6のリニアXスライドおよびリニアZスライド、ならびに回転テーブルを示す。
【
図8】固定ツールを含む平面内で3自由度でワークヘッド上の被加工物などの物体を位置決めするための、リニアスライドに据え付けられたツールと、リニアXスライドおよびリニアZスライドと、回転テーブルとを有する、マルチツール精密位置決めおよび製造システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
マルチツール精密位置決めおよび製造システムは単一の部品の複数の製造作業を行うことができる。例えば、これはボール軸受の内輪および外輪の内径および外径、テーパローラ軸受の内輪の内径、外径、およびリブ、または燃料噴射器を作製するための3つの研削作業を研削することができる。さらに、これは作業と作業との間に部品を手動で整列または位置決めするいかなる必要もなしに、連続的な作業を実施することができる。その精密位置決めシステムは、部品をツールからツールへと、0.05ミクロンの精度で60秒未
満で(例えば、30秒未満で、15秒未満で、10秒未満で、5秒未満で、1秒未満で、または0.5秒未満でさえ)移動する。各製造作業に約10秒かかる場合、3回の作業の合計時間は31秒未満である。対照的に、1つの研削機から別の研削機へと被加工物を単に移送するために数分かかる可能性があり、これは、マルチツール精密位置決めおよび製造システムを用いてすべての研削作業を実施するのにかかることになる時間より長い。
【0026】
多くのツールを単一のマルチツール精密位置決めおよび製造システムに置き換えることは、その他の利点も提供する。まず、単一のマルチツール精密位置決めおよび製造システムは、ツーリングからツーリングへと、または機械から機械へと部品が移動されないので、2つ以上の別個のツールよりも高い歩留まりを有し、位置ずれの機会が低減する。例えば、3つの研削作業を実施するためにマルチツール精密位置決めおよび製造システムを使用する場合、機械工は部品をシューの中に1回だけ定置し、シューに対する部品の位置ずれの可能性が1回だけある。3つの別個の研削機で3つの研削作業を実施するとき、機械工は、3つの別個のシューに部品を入れる必要があり、シューに対して部品が位置ずれになる可能性が3回ある。これらの機会のいずれかの間に状況で位置ずれが生じると、部品が台無しになる可能性がある。
【0027】
複数のツールの代わりに、単一のマルチツール精密位置決めおよび製造システムの使用は、またエネルギ消費量も低減する。システムおよびツールはそれぞれほぼ同じ量のベースラインアイドル電流を消費するため、従来のツールをより少ない数のマルチツール精密位置決めおよび製造システムに置き換えることは、ベースライン電流の総消費を低減する。加えて、単一のマルチツール精密位置決めおよび製造システムは、被加工物を移動および位置決めするうえで、被加工物を移動および位置決めするために別個の機械によって消費される総電力より少ない電力しか消費しない。
【0028】
加えて、単一のマルチツール精密位置決めおよび製造システムは、このシステムが置き換える複数のツールよりもコンパクトである。結果として、このシステムはより小さい機械作業場でも使用することができ、または機械作業場をより小さくすることができる。これは、製造施設のための建設コスト、賃借料、冷暖房コスト等の低下につながる。また、これはより少ない構成要素(例えば、1つのツールにつき1つのコントローラに対して単一のコントローラ、1つのツールにつき1つのドレッシングシステムに対して単一のコントローラドレッシングシステム、など)しか使用せず、そのためこのシステムが置き換える複数のツールより安価である。これはすべて、マルチツール精密位置決めおよび製造システムが、このシステムが置き換える複数のツールよりも購入および操業をより安価にすることができることを意味している。
偏心位置決め付きマルチツール位置決めおよび製造システム
【0029】
図2は、偏心位置決めシステム2を有するマルチツール位置決めおよび製造システム200を示す。システム200は、偏心位置決めシステム2を収容し、かつ保護する基部1を含む。基部1はまた、上部プレート3も支持し、上部プレート3は次に2つ以上のツールを支持する。この実施例では、上部プレート3は、第1の電動研削スピンドル4上に据え付けられた第1のツール5、第2の電動研削スピンドル6上に据え付けられた第2のツール7、第3の電動研削スピンドル8上に据え付けられた第3のツール9、および非回転切削工具(turning tool)13を支持する。第1のツール5、第2のツール7、第3のツール9、および非回転切削工具13は、すべて、上部プレート3と平行な平面と交差する。
【0030】
上部プレート3はまた、偏心位置決めシステム2にアクセスするための穴または開口も画定する。偏心位置決めシステム2または偏心位置決めシステム2の上部に据え付けられたワークヘッド10は、この穴を通って突出し、偏心位置決めシステム2が、上部プレー
ト3に据え付けられた構成要素に対してワークヘッド10を移動させることを可能にする。ワークヘッド10は、第1のツール5、第2のツール7、第3のツール9、および非回転切削工具13と交差し、かつ上部プレート3と平行である同じ平面上のその対称軸を中心として、硬化鋼で作製されたテーパローラ軸受の内側レースなどの被加工物11を位置特定し、支持し、かつ回転する。偏心位置決めシステム2はまた、以下に説明するように、
図2に示す研削ホイール5、7、および9をドレッシングおよび/または成形するための回転ダイヤモンドドレッサ12もこの平面内で、支持し、かつ移動させる。
【0031】
被加工物11は、シューまたはチャックなどのツーリングを用いてワークヘッド10に固定されてもよい。作業中に、ワークヘッド10は、チャックまたは(磁気)裏当てプレートを回転することができ、結果としてこれが被加工物11を回転させる。ツーリング(例えば、シューおよび裏当てプレート)をワークヘッド10に据え付けるためには、典型的に30~60分かかる。ツーリングが適切に設置されると、被加工物11(例えば、研削される部品)を、機械オペレータ、ロボット、または専用の被加工物取り付け取り外し機構によって、ツーリングに固定することができる。また、機械オペレータ、ロボット、または専用の被加工物取り付け取り外し機構は、研削されたばかりの任意の部品も取り外すこともできる。研削された部品を未研削(「ブラック」)部品と交換するのにかかる時間の長さは、部品のサイズ、ツーリングの種類(例えば、3爪チャック、磁気チャック、またはシューツーリング)、および装填システム(例えば、手動、専用電気機械システム、または汎用ロボット)によって異なり、1秒~20分かかる。
【0032】
作業中に、偏心位置決めシステム2は、被加工物11およびワークヘッド10を、基部1と平行な平面内で3自由度で位置決めする。すなわち、偏心位置決めシステム2は、その平面内で被加工物11を直線的に移動させ(二次元平行移動)、かつその平面と直交する軸を中心として被加工物11を回転させる(一次元回転移動)ことができる。偏心位置決めシステム2は、被加工物11(およびワークヘッド10)を特定のツールへと移動させ、ツールが被加工物11から材料を除去する際に被加工物11を定位置に保持し、その後被加工物を次のツールに自動的に移動させる。被加工物11は、ツールによって実施されるすべての作業の間、ワークヘッド10上に留まり、異なるツールによる作業間のいかなる手動再配置の必要性も排除する。
【0033】
例えば、
図2のマルチツール位置決めおよび製造システム200を用いるテーパローラ軸受コーンの作製を考える。最初に、機械工は、被加工物11をワークヘッド10に固定する。次に、偏心位置決めシステム2は、被加工物11を第1の研削ホイール5へと移動させる。第1の電動研削スピンドル4は、第1の研削ホイール5を回転させて、テーパローラ軸受コーンのリブ表面を作り出す。第1の研削ホイール5がリブ表面の研削を完了すると、第1の電動研削スピンドル4は回転を停止し、そして偏心位置決めシステム2が被加工物11を、第2の研削ホイール7へと移動させ、これは、第2の電動研削スピンドル6によって回されて、テーパローラ軸受コーンの外側レースを研削する。そして第2の研削ホイール7が外側レース表面の研削を完了すると、第2の電動研削スピンドル6は回転を停止し、そして偏心位置決めシステム2が被加工物11を、第3の研削ホイール9へと移動させ、これは、第3の電動研削スピンドル8によって回されて、テーパローラ軸受コーンの内径を研削する。第3の電動研削スピンドル8は、内径が研削されると回転を停止する。次いで、偏心位置決めシステム2は、被加工物11を非回転切削工具13へと移動させ、これは被加工物11のレースウェイの内径および外径の両方から材料を除去する。(非回転切削工具13によって実施される作業は、超仕上げ作業またはホーニング作業を考慮することができる。)最終的に、機械工はワークヘッド10から被加工物11を取り外す。
【0034】
マルチツール位置決めおよび製造システムは、他のツールを有することができ、また他
の作業も同様に行うことができる。例えば、ツールは、回転しなくても、または回らなくてもよく、また電動研削スピンドル上に据え付けられる必要もない。例えば、旋盤によって実施される多くの動作、例えば、穴あけ、皿座ぐり、深座ぐり、または面取りは、ツールを固定チャックに据え付けて実施することが可能である。ツールに対して被加工物を回転することができ、または下記に記載されるようにツールおよびチャックを、上部プレート上に据え付けることができる。これらの旋盤作業のうちの1つ以上を、1つ以上の研削工程の前または後に、複雑な部品に対して実行することができる。その他の好適なツールとしては、穴あけ用レーザ、フライスカッタ、ならびにシングルおよびマルチポイント旋削(旋盤)ツールが挙げられる。極端なことを言えば、マルチツール位置決めおよび製造システムは、研削システムをと組み合わされた3軸の水平型コンピュータ数値制御(CNC)フライス盤の機能を複製する。
【0035】
偏心位置決めシステム2はまた、
図2に示す研削ホイール5、7、および9をドレッシングまたは成形するために回転ダイヤモンドドレッサ12も、位置決めする。回転ダイヤモンドドレッサ12は、金属、切れ味の悪くなった砥粒および変形した砥粒、および結合材料を、研削ホイール5、7、および9の研削表面上の研削材料から除去する。これは、研削ホイールを鋭利にする。回転ダイヤモンドドレッサ12はまた、研削表面をそれらの元の形状に戻す場合もある。また、生じる研削表面がいずれかの他の表面に対して正しく働くように、研削表面から材料を除去することができる。
【0036】
回転ダイヤモンドドレッサ12は偏心位置決めシステム2に据え付けられるので、3つのすべての研削ホイール5、7、および9をドレッシングすることができ、各ホイールに対する別個のドレッサの必要性を排除する。したがって、マルチツール位置決めおよび製造システム200は、遂行されるべき4つの機械加工作業および3つのドレッシング作業を1つの偏心位置決めシステムで実行することができ、コストを低減し、かつ生産性を向上させ、そして製造精度を改善する。
偏心位置決めシステム
【0037】
図3Aは、偏心位置決めシステム2をより詳細に示すために構成要素3~9および13が省略された、マルチツール位置決めおよび製造システム200の切り欠き図である。偏心位置決めシステム2は、3つの円形偏心回転テーブル20、21、および22から成る。ワークヘッド10および回転ダイヤモンドドレッサ12は、上部偏心回転テーブル22上に据え付けられ、これは中間偏心回転テーブル21上に据え付けられ、これは次に下部偏心回転テーブル20上に据え付けられる。偏心回転テーブル20~22は、上方または下方から見たとき、同心になっていない。その代わりに、偏心回転テーブル20~22は、異なる平行軸を中心として回転する。これは、偏心位置決めシステム2が、ワークヘッド10、被加工物11、および回転ダイヤモンドドレッサ12を、これらの回転軸と直交する平面内で任意の方向に平行移動させることを可能にする。偏心位置決めシステム2はまた、ワークヘッド10、被加工物11、および回転ダイヤモンドドレッサ12を、偏心回転テーブル20~22の回転軸のうちのいずれか1つと平行なまたは一致する軸を中心として回転させることもできる。
【0038】
偏心位置決めシステム2は、コンピュータ化された制御システム(図示せず)によって制御することができる。この制御システムは、上部回転テーブル22の位置、回転の角度、ならびに直線および回転の速度および加速度を制御するために使用される。これは、下記により詳細に記述するように、被加工物11の軌道を設定する移動計画を用いてプログラムされてもよい。
【0039】
図3Bは、偏心位置決めシステム2の3つの入れ子になっている軸受の単純化された上面図である。最も大きい外側軸受312は、中間サイズの軸受314および最も小さい内
側軸受316を包含する。軸受は、上述のように異なるが平行な軸を中心として軸受が各々回転することができるように偏心して据え付けられていて、回転が行われると、これらの軸は一時的に一致し得る。軸受は、外側軸受312の内側レースが回転するとき、その他の軸受314および316(およびこうした軸受によって支持されている任意の構造または物体)も外側軸受312の回転軸を中心として移動されるように支持される。同様に、中間軸受314の内側レースが回転されたとき、内側軸受316(および内側軸受316によって支持された任意の構造または物体)も同様に移動する。被加工物11は、ワークヘッド10を介して内側軸受316の内側レースに直接的または間接的に連結され、そして内側軸受316の内側レースとともに移動される。
【0040】
実線の円313は、外側軸受312が回転するときの中間サイズの軸受314の中心の経路を示す。破線の円315は、中間サイズの軸受314が回転するときの内側軸受316の中心の経路を示す。外側軸受312および/または中間サイズの軸受314は、図の紙面と平行なX-Z平面内での被加工物11の移動を制御する。被加工物11は、被加工物11を内側軸受316の回転軸を中心として回転させるように、内側軸受316に連結される。したがって、内側軸受316は、XZ平面内での被加工物11の角度方向(シータ)を制御する。この図面から明らかであるように、内側軸受316は、XおよびZ位置だけでなく、角度方向に影響を有する。
【0041】
図3Cおよび
図3Dは、「Z」軸に沿って
図3Cに示す開始位置から
図3Dに示す終了位置へと、被加工物11を概して直線状に移動させる、方向および程度の一実施例を、軸受312、314、および316の回転移動の度数で図示する。被加工物11は、
図3Cおよび
図3Dに示すように、この移動の開始および終了において同じ角度方向を有する。移動は、同時または連続的に行うことができ、これはシステムコントローラによって適切に制御される。移動の経路が重要な状況では、例えば、被加工物11が別の物体にぶつかることを回避するために、直線的な、または他の意図的な方向性のある物体の移動を遂行することができる。
【0042】
この例では、外側軸受312は、43インチのODおよび33.75インチのIDを有する。中間サイズの軸受314は、25インチのODおよび21.25インチのIDを有する。そして、内側軸受316は、12.75インチのODおよび10インチのIDを有する。移動には、大きい軸受312の138.7度となる時計回りの移動、中間サイズの軸受314の277.2度の反時計回りの移動、および最も小さい軸受316の138.5度の時計回りの移動が含まれる。これらの寸法と回転により、被加工物はZ寸法に約13.93インチ移動する。
【0043】
図3Eおよび
図3Fは、被加工物11をX方向に移動させる移動を図示する。この場合、被加工物11は、
図3Eに示す開始位置(
図3Dに示すものと同じである)から
図3Fに示す終了位置へと平行移動する。軸受312、314、および316の内側レースの(絶対的な)総回転移動は、それぞれ、時計回りに173.5度、反時計回りに294度、および時計回りに120.4度である。上記で与えられた軸受寸法については、これは「X」方向の2.88インチの直線移動に相当する。
【0044】
単軸直線移動を維持するために、全体的な位置決めは、2つの工程、例えば、
図3Cおよび
図3Dに示すZ軸移動、次いで
図3Eおよび
図3Fに示すX軸移動をいずれかの順番で行うことができる。偏心位置決めシステム2は、被加工物11を単一の軸に沿って、または直線状でさえも移動させることに制約されず、被加工物を湾曲した経路または曲げられた経路に沿って移動させることができ、平面でも同様に移動させることができる。
【0045】
偏心位置決めシステム2に関するより多くの情報については、参照によりその全体が本
明細書に組み込まれる、米国特許第7,803,034号を参照のこと。
被加工物移動制御
【0046】
図4は、偏心位置決めシステム2のための制御システム700を図示する。制御システム700は、適切な移動制御ソフトウェアを実行するRockwell、ACS、Siemens、またはFANUCコントローラなどのコントローラ704を含む。コントローラ704は、偏心位置決めシステム2のサーボモータ706に連結される。これらのサーボモータ706は、次に偏心位置決めシステムの機械的システム708に連結される。
【0047】
制御システム700は、現在の作業が被加工物11を修正しているか、または研削ホイール5、7、および9を成形しているかに応じて、被加工物11または研削ホイールドレッサ12の移動を制御するために使用することができる。コントローラ704は、被加工物11に対する特定のオペレータによって入力された移動制御パラメータを含む移動計画702に従って、被加工物11または研削ホイールドレッサ12を移動させる。移動計画702における移動制御パラメータは、位置決めシステム2が被加工物11をツールからツールへと移動させ、そして各機械加工動作に対して被加工物11を定位置に保持するように選択される。コントローラ704は、これらの移動制御パラメータを使用して、適切な制御信号を生成し、そしてサーボモータ706へと送信し、サーボモータ706は機械システム708と相互作用して物体の移動710を引き起こす。
移動スライドを有するマルチツール位置決めおよび製造システム
【0048】
図5は、ツールのための移動スライドを有するマルチツール位置決めおよび製造システム500を示す。この場合も、偏心位置決めシステム2は、上部プレート3と平行な平面内で、3自由度(2つの直線自由度および1つの回転自由度)で、被加工物11を位置決めする。第1の電動研削スピンドル4および第2の電動研削スピンドル6は、上部プレート3に据え付けられた第1の基部34上にある第1のスライドテーブル33上に据え付けられる。そして、第3の電動研削スピンドル8および非回転切削工具13は、上部プレート3に据え付けられた第2の基部32上にある第2のスライドテーブル31に据え付けられる。
【0049】
スライド31および33は、被加工物11および回転ダイヤモンドドレッサ12とは無関係にスピンドルをX方向に移動させることができ、また偏心位置決めシステム2を制御する同じコントローラ(例えば、
図4のコントローラ704)によって制御することができる。(この実施例では、第1のスライド33は、第1の電動研削スピンドル4および第2の電動研削スピンドル6を一緒に、すなわち、単一ユニットとして移動させる。)スライド31および33は、直径が数フィートである場合があるガスタービンエンジンの軸受などの偏心位置決めシステムの範囲を超えるツールを位置付けるために使用することができる。スライドの長さに事実上制限がないため、単一の長いスライドは、いくつかのスピンドルを支持することが可能である。位置決めシステムが研削のために微細な位置決めを実施する前に、スライドは、被加工物をワークヘッドと大まかに整列させるために、これらのスピンドルを前後に移動させることが可能である。
【0050】
また、スライド31および33は、異なる方向に移動するために異なる方法で据え付けることもでき、かつ/または追加的な方向で移動するように修正することもできる。例えば、いずれかのスライドを90°だけ回転させて、対応するツールをZ方向に移動させることが可能である。これは単なる一例であり、他のスライドの向き(例えば、30°、45°、60°など)も可能である。同様に、いずれかのスライドは、対応するツール(複数可)をY方向に、上部プレート3に向かって、または上部プレート3から離れるように移動させ得る。また、スライドは2次元で横方向(例えば、X方向およびZ方向)に移動させるようにも作製されている。Y移動は、被加工物11が対称軸を有していなかった適
用、平面研磨、および異なる直径の歯車に適合するための歯車の歯の研削において特に有用である。
回転移動および直線移動を有するマルチツール位置決めおよび製造システム
【0051】
図6および
図7は、偏心位置決めシステムの代わりに、回転位置決めおよび直線位置決めシステム602を有する、マルチツール位置決めおよび製造システム600を示す。回転位置決めおよび直線位置決めシステム602は、基部1の内側にあり、かつ上部プレート3によって覆われた、回転テーブル622、Zリニアスライド621、およびXリニアスライド620を含む。上部プレート3は、スピンドル4、6、および8、ならびに回転ツール13を支持する。ワークヘッド10および回転ダイヤモンドドレッサ12は、回転テーブル622上に据え付けられ、かつ上部プレート3の穴を通して突出する(または回転テーブル622の少なくとも一部分が、上部プレート3の穴を通して突出する)。
【0052】
回転テーブル622、Zリニアスライド621、およびXリニアスライド620は一緒に、ワークヘッド10(およびワークヘッド10上にある被加工物11)および回転ダイヤモンドドレッサ12を、上部プレート3の上部と平行な平面内で移動させる。Xリニアスライド620およびZリニアスライド621は、ワークヘッド10、被加工物11、および回転ダイヤモンドドレッサ12をそれぞれX方向およびZ方向に移動させる。回転テーブル622は、ワークヘッド10、被加工物11、および回転ダイヤモンドドレッサ12を、Y方向に延びる軸を中心として回転させる。この回転軸は、Xリニアスライド620およびZリニアスライド621を使用して回転テーブル622を移動させることによって再配置することができる。
【0053】
Xリニアスライド620、Zリニアスライド621、および回転テーブル622は、好適にプログラムされる制御システム(例えば、
図4の制御システム700)によって実行される移動計画に従って、同時に、連続的に、および無関係に移動させることができる。この制御システムは、ワークヘッド10および回転ダイヤモンドドレッサ12が据え付けられている回転テーブル622の位置、回転の角度、ならびに直線および回転速度および加速度を制御するために使用される。上記で説明したように、回転ダイヤモンドドレッサ12は、研削ホイール5、7、および9をドレッシングまたは成形するために使用される。またワークヘッド10は、被加工物11をその対称軸を中心として位置特定、支持、および回転する。
【0054】
例えば、被加工物11が、硬化鋼で作製されたテーパローラ軸受の内側レースである場合を考える。ワークヘッド10は、その対称軸を中心として内側レースを位置特定、支持、および回転するために使用される。回転および直線位置決めシステム602は、内側レースを第1の電動研削スピンドル4へと移動させ、これは第1の研削ホイール5を回転させて、内側レースのリブ表面を研削する。次に、回転および直線位置決めシステム602は、内側レースを第2の電動研削スピンドル6へと移動させ、これは第2の研削ホイール7を回転させて内側レースの外径を研削する。次に、回転および直線位置決めシステム602は、内側レースを第3の電動研削スピンドル8へと移動させ、これは第3の研削ホイール9を回転させて内側レースの内径を研削する。最終的に、回転および直線位置決めシステム602は、内側レースを非回転切削工具13へと移動させ、これは内側レースの内径および外径の両方から材料を除去する。
【0055】
図8は、ツール用のスライドを有する回転および直線位置決めシステム602を有する、マルチツール位置決めおよび製造システム800を示す。これは、
図6に示す実施形態と同様であるが、ツールは、X方向でツールの独立した動きを供給する2つのスライドに据え付けられる。
図8は、2つのX方向スライド(スライドテーブル31および33)を示しており、これらは、
図5にあるように、それぞれ基部32および34に据え付けられ
、そして
図5に関して上述したのと同じ自由度を提供する。
スピンドルおよびワークヘッドの位置
【0056】
所望する場合、ツールを位置決めシステムに位置付け、そしてワークヘッドおよび回転ダイヤモンドドレッサを上部プレート上に直接、または上部プレートに据え付けられたスライドに据え付けることができる。次いで、位置決めシステムは、被加工物および/または回転ダイヤモンドドレッサをツールへと移動させる代わりに、ツールを被加工物および/または回転ダイヤモンドドレッサへと移動させることになる。偏心位置決めシステム上の3つの異なるグラインダを用いてテーパローラ軸受コーンを作製するとき、例えば、偏心位置決めシステムは、上述のものと同様のプロセスで、第1のグラインダを被加工物へと、次に第2のグラインダを被加工物へと、等々と移動させることになる。位置決めシステムの上部回転テーブルは、グラインダ、スピンドルなどに適合するためにより大きくてもよい(例えば、直径1メートル)。スピンドルは、ホイールのスポークのように、研削面および切断面を外向きの放射状で回転テーブル上に位置付けられてもよい。
結論
【0057】
発明に関する様々な実施形態を本明細書に記述しかつ例示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施するための、ならびに/または結果および/もしくは1つ以上の利点を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形および/または修正のそれぞれは、本明細書に記載される発明に関する実施形態の範囲内であるものと見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味すること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が使用される特定の用途(複数可)によるものとなることを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載する特定の発明に関する実施形態の多くの同等物を認識し、またはただ通常の実験を用いて確認することができる。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内では、発明に関する実施形態は、具体的に記述および特許請求される以外の形で実践され得ることが理解される。本開示の発明に関する実施形態は、本明細書に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0058】
また、様々な発明の概念が、1つ以上の方法として具現化されてもよく、その例を提供してきた。方法の一部として行われる行為は、任意の好適なやり方で順序付けられ得る。その結果、行為が例示するものとは異なる順序で実施される実施形態を構築してもよく、それは、例示的実施形態に連続する行為として示されている場合であってさえも、一部の行為を同時に実施することを含んでもよい。
【0059】
本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を統制するものと理解されるべきである。
【0060】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「a(1つの)」および「an(1つの)」は、明確にそうでないと示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されるべきである。
【0061】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「および/または」という語句は、結合された要素の「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち、一部の場合には接続的に
存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で挙げられる複数の要素は、同じ方式、すなわち、等位接続される要素のうちの「1つ以上」と解釈されるべきである。具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に識別される要素以外に、他の要素が随意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「備える」などの制限のない語法と連動して使われるときに、一実施形態では、Aのみ(随意にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(随意にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AとBと両方(随意に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0062】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的なもの、すなわち、多数の要素または要素のリスト、および随意にリストに無い追加の項目のうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含むと解釈されるものとする。それとは反対であると明確に指示される用語のみ、例えば、「のうちの1つのみ」もしくは「のうちのまさに1つ」、または特許請求の範囲において使用するときの「から成る」は、多数のまたは列挙された要素のうちのまさに1つの要素を包含することを指す。概して、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちのまさに1つ」など、排他的な用語が先行するときには、排他的な選択肢(すなわち「両方ではなく一方または他方」)を示すとのみ解釈されるものとする。「から本質的に成る」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0063】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストの中の要素のいずれか1つ以上から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に列挙されたありとあらゆる要素のうちの、少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストのいかなる要素の組み合わせも除外するものではない、と理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す、要素のリスト内で具体的に識別される以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、随意に存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ」(または、等価的に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、もしくは、等価的に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、Bは存在せず、任意選択的に2つ以上のAを含む、少なくとも1つのA(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態においては、Aは存在せず、任意選択的に2つ以上のBを含む、少なくとも1つのB(任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態においては、任意選択的に2つ以上のAを含む、少なくとも1つのA、および任意選択的に2つ以上のBを含む、少なくとも1つのB(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0064】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書で、すべての移行句、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「包含する(containing)」、「伴う(involving)」、「保つ(holding)」、「から構成される(composed of)」、および類似のものは制約のないと理解され、すなわち、含むがそれに限定はされないということを意味する。「から成る(consisting of)」および「から本質的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、米国特許局の特許審査手続便覧、セクション2111.03に記載されている、それぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。