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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029245
(43)【公開日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ガスケット、及び円筒形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240227BHJP
【FI】
H01M50/184 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004559
(22)【出願日】2024-01-16
(62)【分割の表示】P 2020563043の分割
【原出願日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2018247177
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖本 良太
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 仰
(72)【発明者】
【氏名】原口 心
(57)【要約】
【課題】リード部の短絡を抑制でき、組立時の作業性も向上できるガスケット及び円筒形電池を提供すること。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る円筒形電池のガスケット28が、筒状部60と、筒状部60の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する円環部61とを備える。円環部61の軸方向の筒状部60側とは反対側の面67を、略平坦な面にする。円環部61の軸方向の筒状部60側に、筒状部60と円環部61の径方向の内端69の両方に対して径方向に間隔をおいて配置されると共に軸方向に突出する突起57を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形電池のガスケットであって、
筒状部と、
前記筒状部の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する円環部と、を備え、
前記円環部の前記軸方向の前記筒状部側に、前記軸方向に突出する突起を有し、
前記円環部は、前記突起を境に、前記軸方向の前記筒状部側と、前記軸方向の前記筒状部とは反対側とで肉厚が異なる、
ガスケット。
【請求項2】
前記円環部は、前記突起を境に前記軸方向の前記筒状部側の肉厚が前記軸方向の前記筒状部とは反対側の肉厚よりも大きい、
請求項1に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円筒形電池のガスケット、及び円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形電池としては、特許文献1に記載されているものがある。この円筒形電池は、正極と負極がセパレータを介して巻回された電極体、電解質、電極体及び電解質を収容する有底筒状の外装缶、封口体、並びに、外装缶と封口体の間に介在する環状のガスケットを備える。
【0003】
外装缶は、外周面に周方向に延在する溝を設けることで径方向の内方側に突出する突出部を内周側に有する。外装缶の開口側の端部を、内側に折り曲げて封口体側にかしめることで、封口体が、突出部と外装缶のかしめ部とでガスケットを介して挟持されて外装缶に固定される。電極体の正極から延出する正極リードは、封口体の底面に溶接により接続される。また、ガスケットは、軸方向に延在して突出部の一部を覆う筒状の被覆部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-320562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の円筒形電池では、ガスケットの被覆部で突出部の径方向の内側の一部を覆うことができるので、負極端子となる外装缶と、正極リードの短絡を確実に防止できる。しかし、次に示す課題が存在する。すなわち、円筒形電池を製造するにあたって、ガスケットを封口体に組み付けた後に外装缶内に嵌合する手法と、ガスケットを外装缶内に嵌合した後に、正極リードを介して一体となっている電極体と封口体の統合構造を外装缶内に嵌合する手法が存在する。そのような背景において、前者の手法では、ガスケットの筒状の被覆部が、封口体における正極リードの溶接面を覆うことになるので、被覆部が障害となって、正極リードを封口体に溶接しにくい。また、後者の手法では、電池組立時に、嵌合を2回実行する必要があるので作業性が低下し易く、更には、ガスケットで被覆されていない封口体と外装缶との短絡も起こり易くなる。
【0006】
そこで、本開示の目的は、封口体と電極体を電気的に接続するリード部と外装缶の短絡を抑制でき、組立時の作業性も向上できるガスケット及び円筒形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係るガスケットは、円筒形電池のガスケットであって、筒状部と、筒状部の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する円環部と、を備え、円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面が、略平坦な面となっており、円環部の軸方向の筒状部側に、筒状部と円環部の径方向の内端の両方に対して径方向に間隔をおいて配置されると共に軸方向に突出する突起を有する。
【0008】
なお、上記「円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面が、略平坦な面となっており」という要件は、円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面が、電池組立時の工程流動性を妨げないような(電池組立工程の作業性を低下させないような)1以上の微小な凹部と1以上の微小な凸部のうちの少なくとも一方を有する場合でも満たされる。また、深さが1mm以下の凹部は、上記微小な凹部に含まれ、高さが1mm以下の凸部は、上記微小な凸部に含まれる。したがって、円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面に、深さが1mm以下の凹部や高さが1mm以下の凸部が存在しても略平坦な面であるという要件は、満たされる。
【0009】
また、本開示に係る円筒形電池は、正極と負極がセパレータを介して巻回された電極体と、電解質と、電極体及び電解質を収容する有底筒状の外装缶と、封口体と、外装缶と封口体の間に介在する環状のガスケットと、を備える円筒形電池であって、外装缶は、外周面に周方向に延在すると共に径方向の内方側に突出する環状溝と、環状溝の径方向の内方側に突出する突出部を有し、ガスケットは、突出部の径方向の内側部の少なくとも一部を覆う被覆部と、封口体における軸方向の外装缶の底側の面を支持する支持部とを含み、被覆部は、軸方向の底側に行くにしたがって径方向の内方側に移動するように傾斜し、支持部は、先端部が封口体に接触する突起を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示のガスケット及び円筒形電池によれば、リード部の短絡を抑制でき、組立時の作業性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本開示の一実施形態に係る円筒形電池の軸方向の断面図である。
図2図2は上記円筒形電池の電極体の斜視図である。
図3図3は上記円筒形電池の封口体周辺部の拡大断面図である。
図4図4図1における外装缶の環状溝の周辺部の拡大断面図である。
図5図5は外装缶に組み込む前の環状のガスケットにおいて中心軸の片側に位置する片側部分の断面図である。
図6図6は外装缶内へのガスケットの組み込み動作について説明する図である。
図7図7は外装缶内へのガスケットの組み込み動作について説明する図である。
図8図8は参考例のガスケットにおける図5に対応する断面図である。
図9図9は変形例のガスケットにおける図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る円筒形電池の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示の円筒形電池は、一次電池でもよく、二次電池でもよい。また、水系電解質を用いた電池でもよく、非水系電解質を用いた電池でもよい。以下では、一実施形態である円筒形電池10として、非水電解質を用いた非水電解質二次電池(リチウムイオン電池)を例示するが、本開示の円筒形電池はこれに限定されない。
【0013】
以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。以下の実施形態では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の軸方向に沿った方向を高さ方向とし、高さ方向の封口体17側を「上」とし、高さ方向の外装缶16の底側を「下」とする。以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る円筒形電池10の軸方向の断面図であり、図2は、円筒形電池10の電極体14の斜視図である。図1に示すように、円筒形電池10は、巻回型の電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。図2に示すように、電極体14は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13を含み、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。再度、図1を参照して、電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17で構成される。また、円筒形電池10は、外装缶16と封口体17との間に介在する樹脂製のガスケット28を備える。
【0015】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有してもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF等のリチウム塩が使用される。
【0016】
図2に示すように、電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13とを有する。また、電極体14は、正極11に接合された正極リード20と、負極12に接合された負極リード21を有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、正極11より長手方向及び幅方向(短手方向)に長く形成される。また、2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される
【0017】
正極11は、正極集電体と、集電体の両面に形成された正極合剤層とを有する。正極集電体には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含む。正極11は、例えば正極集電体上に正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0018】
正極活物質は、リチウム含有金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム含有金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好ましいリチウム含有金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含有する複合酸化物である。
【0019】
正極合剤層に含まれる導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合剤層に含まれる結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0020】
負極12は、負極集電体と、集電体の両面に形成された負極合剤層とを有する。負極集電体には、銅、銅合金など、負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及び結着剤を含む。負極12は、例えば負極集電体上に負極活物質、及び結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0021】
負極活物質には、一般的に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素材料が用いられる。好ましい炭素材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛である。負極合剤層には、負極活物質として、Si含有化合物が含まれていてもよい。また、負極活物質には、Si以外のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよい。
【0022】
負極合剤層に含まれる結着剤には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)又はその変性体を用いる。負極合剤層には、例えばSBR等に加えて、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0023】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、セルロースなどが好ましい。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれでもよい。セパレータ13の表面には、耐熱層などが形成されてもよい。なお、負極12は電極体14の巻き始め端を構成してもよいが、一般的にはセパレータ13が負極12の巻き始め側端を超えて延出し、セパレータ13の巻き始め側端が電極体14の巻き始め端となる。
【0024】
図1及び図2に示す例では、正極リード20は、正極芯体における巻回方向の中央部等の中間部に電気的に接続され、負極リード21は、負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続される。しかし、負極リードは、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続されてもよい。又は、電極体が2つの負極リードを有して、一方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続され、他方の負極リードが、負極芯体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続されてもよい。又は、負極芯体における巻回方向の巻き終わり側端部を外装缶の内面に当接させることで、負極と外装缶を電気的に接続してもよい。
【0025】
図1に示すように、円筒形電池10は、電極体14の上側に配置される絶縁板18と、電極体14の下側に配置される絶縁板19を更に有する。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って、外装缶16の底68側に延びる。正極リード20は封口体17の底板である端子板23の下面に溶接等で接続され、端子板23と電気的に接続された封口体17の天板である弁体27が正極端子となる。また、負極リード21は外装缶16の底68の内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0026】
外装缶16は、有底筒状部を有する金属製容器である。外装缶16と封口体17との間は、環状のガスケット28で密封され、その密封で電池ケース15の内部空間が密閉される。このように、ガスケット28は、電池内部の気密性を保つためのシール材としての役割を有する。また、ガスケット28は、外装缶16と封口体17とで挟持される挟持部32を含み、封口体17を外装缶16に対して絶縁する。このように、ガスケット28は、外装缶16と封口体17との短絡を防止する絶縁材としての役割も有する。
【0027】
外装缶16は、外装缶16の円筒外周面の高さ方向の一部に環状溝35を設けることで径方向の内方側に突出する突出部36を内周側に有する。環状溝35は、例えば、円筒外周面の一部を、径方向内側にスピニング加工して径方向内方側に窪ませることで形成できる。外装缶16は、突出部36を含む有底筒状部30と、環状の肩部33を有する。有底筒状部30は、電極体14と非水電解質とを収容し、肩部33は、有底筒状部30の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて該内方側に延びる。肩部33は、外装缶16の上端部を内側に折り曲げて封口体17の周縁部31にかしめる際に形成される。封口体17は、そのかしめによって肩部33と突出部36の上側とでガスケット28を介して外装缶16に固定される。
【0028】
次に、封口体17について説明する。図3は、円筒形電池10の封口体周辺部の拡大断面図である。図3に示すように、封口体17は、電極体14側から順に、端子板23、環状の絶縁板25、弁体27が積層された構造を有する。弁体27は、平面視で円形をなしている。弁体27は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をプレス加工することで作製できる。アルミニウム及びアルミニウム合金は可撓性に優れるため弁体27の材料として好ましい。
【0029】
弁体27は、平面視で円形をなし、その中央部27aと外周部27bをつなぐ中間部に薄肉部27cが形成されている。電池内圧が上昇したときに薄肉部27cが反転し、破断することで弁体27が防爆弁として機能する。中央部27aを端子板23に向けて突出するように形成することで、弁体27と端子板23との接続を容易にしている。
【0030】
絶縁板25は、平面視で円環状に形成され、中央に貫通孔25aを有する。絶縁板25は、弁体27の外周部27bにおいて下側に突出するように形成された突起部27dに嵌め込み固定される。絶縁板25は絶縁性を確保するために設けられ、電池特性に影響を与
えない材料で構成されると好ましい。絶縁板25の材料としては、ポリマー樹脂が挙げられ、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を例示できる。絶縁板25は、それを高さ方向に貫通する通気孔25bを外周側に有する。また、絶縁板25は、下側に延びる環状のスカート部25cを外周縁部に有する。
【0031】
端子板23は、平面視で絶縁板25より小径の円形の外形を有し、中央部23aが薄肉部となっている。端子板23は、絶縁板25を挟んで弁体27に対向配置される。端子板23は、その外周面を絶縁板25のスカート部25cの内周面に内嵌して固定することで、絶縁板25に取り付けられる。弁体27と端子板23は、絶縁板25の貫通孔25aを介して、中心部同士が接続される。
【0032】
端子板23は、弁体27と同様にアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されると好ましく、そのようにすると、弁体27と端子板23の中央部同士の接続を容易に実行できる。接続方法としては、冶金的接合を用いることが好ましく、冶金的接合としてレーザー溶接が例示される。端子板23の外周側には、端子板23を高さ方向に貫通する通気孔23bが形成されている。通気孔23bは、絶縁板25の通気孔25bに連通している。なお、図3に示すように、スカート部25cの内周面は、下側に行くにしたがって内径が小さくなる円錐台形状でもよく、端子板23の外周面が、その内周面に対応する円錐台形状でもよい。そのような場合、端子板23を、スカート部25cに圧入固定することで、弁体27に対する端子板23の位置ズレを確実に防止できる。
【0033】
次に、ガスケット28における正極リード20の短絡防止構造と封口体17の支持構造について説明する。図4は、図1における外装缶16の環状溝35の周辺部の拡大断面図である。図4に示すように、ガスケット28は、上述の挟持部32の他に、被覆部41を含む。被覆部41は、挟持部32の下側端部から高さ方向下側に行くにしたがって径方向の内方側に移動するように傾斜する。被覆部41は、突出部36の径方向の内側部の少なくとも一部を覆う。被覆部41は、突出部36の上端から突出部36において最も内径が小さい最小内径部39よりも下側に位置する箇所まで延出している。これにより、正極リード20(図1参照)が突出部36に短絡することを確実に防止できる。
【0034】
また、ガスケット28は、封口体17の高さ方向下側の下面45(高さ方向の外装缶16の底68(図1参照)側の面)を支持する支持部42を含む。支持部42の少なくとも一部は、挟持部32に含まれる。また、支持部42における径方向の内方側の内周面55は、高さ方向の下側に行くにしたがって径方向の外方側に移動する傾斜面部55aを含む。また、支持部42は、先端部57aが封口体17の下面45に接触する突起57を有し、支持部42と封口体17の下面45との間には、突起57の径方向外側に窪み59が存在する。支持部42の内周面55が傾斜面部55aを有することで、支持部42における封口体17の支持面積を大きくでき、支持部42をガスケット28で確実に支持できる。なお、図4に示すように、ガスケット28の下端29は、絶縁板18に対して高さ方向に間隔をおいて位置していると好ましく、ガスケット28の下端29と絶縁板18の高さ方向の距離が、1mm以上であることがより好ましい。
【0035】
次に、円筒形電池10の外装缶16内に上記の構造のガスケット28を形成する手法について説明する。図5は、外装缶16に組み込む前の環状のガスケット28において中心軸よりも片側に位置する片側部分の断面図である。先ず、図5を用いて外装缶16に組み込む前のガスケット28の構造について説明する。
【0036】
図5に示すように、ガスケット28は、筒状部60と、円環部61を備え、円環部61は、筒状部60の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する。円環部61の軸方向の筒状部60側とは反対側の面67は、略平坦な面となっている。また、円環部61の軸方
向の筒状部60側に、筒状部60と円環部61の径方向の内端69の両方に対して径方向に間隔をおいて配置されると共に軸方向に突出する突起57が設けられている。更には、円環部61において、突起57よりも径方向の外方側に位置する外方側部分70の軸方向の肉厚t1が、円環部61において突起57よりも径方向の内方側に位置する内方側部分71の軸方向の肉厚t2よりも大きくなっている。もちろん、円環部61において、突起57よりも径方向の外方側に位置する外方側部分70の軸方向の肉厚t1と、円環部61において突起57よりも径方向の内方側に位置する内方側部分71の軸方向の肉厚t2が、t1≦t2の関係を満たしていてもよい。
【0037】
次に、外装缶16内へのガスケット28の組み込み動作(嵌め込み動作)について説明する。図6図7は、その動作を行っている最中のガスケット28の状態を示す円筒形電池10の一部の軸方向の拡大断面図である。また、図8は、参考例のガスケット228における図5に対応する拡大断面図である。
【0038】
円筒形電池10を組み立てる際には、先ず、ガスケット28を封口体17の径方向外側に外嵌して固定することが好ましい。このようにして、外装缶16にガスケット28と封口体17を互いに独立に嵌合させる場合との比較で、外装缶16への嵌合作業を一回で終了できるようにすると共に、封口体17をガスケット28で覆うことで、封口体17と外装缶16の短絡を確実に防止する。その後、電極体14から延出している正極リード20(図1参照)を封口体17の下面に溶接で電気的に接続する。本実施例のガスケット28では、円環部61の下側の面67が、略平坦な面となっている。したがって、図8に示す参考例のガスケット228、すなわち、円環部261が径方向内方側の端部に高さ方向下側に突出する環状の鍔部250を有するガスケット228との比較において、封口体17の下側が鍔部250で覆われることがなく、正極リード20の封口体17への溶接作業を円滑に実行できる。なお、封口体17を正極リード20に溶接した後に、予め外装缶16に嵌合させたガスケット28に封口体17を嵌合してもよい。
【0039】
次に、電極体14及び封口体17と一体となったガスケット28をかしめ前の外装缶16の内周面に内嵌し、その後、肩部33を形成するように、外装缶16の上端部を径方向内方側に変形させる。すると、図6に示すように、ガスケット28の筒状部60の上側75が径方向の内方側に折り曲げられると共に、ガスケット28が軸方向(高さ方向)に圧縮され、その結果、ガスケット28において封口体17の下面45よりも下側に位置する下側部分74が矢印Aで示す径方向内方側に引き伸ばされる。
【0040】
その後、更に、外装缶16のかしめが進んで、図7に示すように、肩部33が下側に変形すると、下側部分74が高さ方向に更に圧縮されることで、突起57が、高さ方向上側に行くにしたがって径方向内方側に移動するように変形する。このとき、突起57の径方向内方側の内周面55に傾斜面部55aが形成される。
【0041】
また、突起57が封口体17から受ける下側の力で、下側部分74において突起57よりも径方向内方側に位置する内方側部分74aが、突起57が起点となって矢印Bで示す斜め下側に変形する。その結果、高さ方向に関して、突出部36の上端から突出部36において最も内径が小さい最小内径部39よりも下側に位置する箇所まで、突出部36の径方向の内側が、内方側部分74aの屈曲によって形成された被覆部41で覆われる。
【0042】
以上、本開示のガスケット28は、外装缶16に嵌め込む前の状態で円環部61における軸方向の筒状部60側とは反対側の面67が略平坦な面となっている。また、筒状部60と円環部61の内端69に径方向に間隔をおいて軸方向に突出する突起57が、円環部61の筒状部60側に設けられる。
【0043】
したがって、円環部61における軸方向の筒状部60側とは反対側の面67が、略平坦な面となっているので、ガスケット28を封口体17に固定しても、封口体17への正極リード20の溶接を容易に実行できる。
【0044】
また、円環部61における軸方向の筒状部60側とは反対側の面67が、略平坦な面となっているので、ガスケット28を取り扱っている最中に円環部61の当該下側の面67が他の部材や部位に引っかかることがなく、ガスケット28に関連する作業を円滑に実行できる。
【0045】
更には、ガスケット28に上述の突起57が存在するので、封口体17と一体となったガスケット28を外装缶16に嵌め込むときに、外装缶16のかしめを行うだけで、ガスケット28の円環部61の先端側を、突起57を起点として斜め下側に容易に変形させることができる。よって、外装缶16の突出部36の少なくとも一部の径方向内側を覆う被覆部41を容易に形成できる。
【0046】
よって、正極リード20の外装缶16との短絡を確実に防止でき、円筒形電池10の組立時の作業性(工程流動性)も各段に向上させることができる。
【0047】
また、円環部61において突起57よりも径方向の外方側に位置する外方側部分70の前方向の肉厚t1が、円環部61において突起57よりも径方向の内方側に位置する内方側部分71の軸方向の肉厚t2よりも大きくてもよい。
【0048】
上記の構成によれば、外装缶16へのガスケット28の組み込み時に変形させる内方側部分71の剛性を下げることができる。したがって、外装缶16へのガスケット28の組み込み時に内方側部分71を斜め下側に確実に折り曲げることができて、内方側部分71を斜め折り曲げることで形成される被覆部41で突出部36の少なくとも一部を確実に覆うことができる。
【0049】
また、本開示の円筒形電池10によれば、ガスケット28が、封口体17の高さ方向(軸方向)における外装缶16の底68(図1参照)側の面45(図4参照)を支持する支持部42(図4参照)を含み、支持部42における径方向の内方側の内周面55が、高さ方向の下側に行くにしたがって径方向の外方側に移動する傾斜面部55aを含む。
【0050】
したがって、支持部42において封口体17の下側の面45を支持する領域を大きくでき、封口体17を安定に支えることができる。
【0051】
また、支持部42が、先端部57aが封口体17に接触する突起57を有してもよい。
【0052】
上記の構成によれば、突起57が封口体17から受ける力で突起57を起点として被覆部41を確実に下側に向けることができる。よって、正極リード20を突出部36に対して確実にガードでき、突出部36との正極リード20の短絡をより確実に防止できる。
【0053】
また、被覆部41が、突出部36において最も内径が小さい最小内径部39における径方向の内側を被覆してもよい。
【0054】
上記の構成によれば、突出部36において最も中央に近い部分がガスケット28で覆われる。したがって、正極リード20の短絡を確実に防止できる。
【0055】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能で
ある。
【0056】
例えば、外装缶に嵌め込む前のガスケットに関し、円環部において突起よりも径方向の外方側に位置する外方側部分の軸方向の肉厚は、円環部において突起よりも径方向の内方側に位置する内方側部分の軸方向の肉厚以下の長さでもよい。
【0057】
また、図5に示すように、ガスケット28が、軸方向の断面において略矩形の突起57を有する場合について説明した。しかし、図9、すなわち、変形例のガスケット128における図5に対応する断面図に示すように、突起157の径方向内側の内周面157aが、軸方向の略平坦な面167側に行くにしたがって径方向内方側に移動するテーパ面等でもよい。
【0058】
要は、本開示のガスケットは、筒状部と、筒状部の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する円環部と、を備え、円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面が、略平坦な面となっており、円環部の軸方向の筒状部側に、筒状部と円環部の径方向の内端の両方に対して径方向に間隔をおいて配置されると共に軸方向に突出する突起が設けられていれば、如何なる構造でもよい。
【0059】
また、円筒形電池10に関し、被覆部41が、突出部36において最も内径が小さい最小内径部39における径方向の内側を被覆する場合について説明した。しかし、被覆部は、突出部において最も内径が小さい最小内径部における径方向の内側を被覆していなくてもよい。
【0060】
なお、円筒形電池に用いられるガスケットが、次の構成を備えていると仮定する。すなわち、ガスケットが、筒状部と、筒状部の軸方向の一端部から径方向の内方側に延在する円環部と、を有する。また、円環部の軸方向の筒状部側に、筒状部と円環部の径方向の内端の両方に対して径方向に間隔をおいて配置されると共に軸方向に突出する突起が設けられている。さらに、円環部において突起よりも径方向の外方側に位置する外方側部分の軸方向の肉厚が、円環部において突起よりも径方向の内方側に位置する内方側部分の軸方向の肉厚よりも大きい。
【0061】
上記の構成を備えるガスケットでは、上記外方側部分の肉厚が、内方側部分の肉厚よりも大きいため、内方側部分の剛性が外方側部分の剛性よりも小さくなる。したがって、このような構成を備えていれば、たとえ、円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面が、略平坦な面でなくて、電池組立時の工程流動性(取扱性)を低下させる1以上の凹部と1以上の凸部のうちの少なくとも一方を有していたとしても、内方側部分が外装缶に対するガスケットの嵌め込み時に突起を起点に下側に屈曲し易くなる。よって、内方側部分が屈曲することで形成される被覆部で突出部の少なくとも一部を被覆し易い。
【符号の説明】
【0062】
10 円筒形電池、 11 正極、 12 負極、 13 セパレータ、 14 電極体、 16 外装缶、 17 封口体、 28,128 ガスケット、 32 ガスケットの挟持部、 35 環状溝、 36 突出部、 39 最小内径部、 41 被覆部、 42 支持部、 45 封口体の軸方向における外装缶の底側の面、 55 支持部の内周面、 55a 傾斜面部、 57,157 突起、 57a 突起の先端部、 60 筒状部、 61 円環部、 67,167 円環部の軸方向の筒状部側とは反対側の面、 68 外装缶の底、 69 円環部の径方向の内端、 70 外方側部分、 71 内方側部分、 t1 外方側部分の軸方向の肉厚、 t2 内方側部分の軸方向の肉厚。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9