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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029283
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】連続成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/44 20060101AFI20240228BHJP
   B29C 43/22 20060101ALI20240228BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20240228BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20240228BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
B29C43/44
B29C43/22
B29C43/52
B29C70/50
B29K101:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131458
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 勲
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG28
4F204AJ08
4F204AK04
4F204AR06
4F204FA01
4F204FB02
4F204FF36
4F204FG09
4F204FH06
4F204FJ11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG28
4F205AJ08
4F205AK04
4F205HA08
4F205HA25
4F205HA34
4F205HA35
4F205HA45
4F205HB02
4F205HK04
4F205HK24
4F205HK28
(57)【要約】
【課題】
従来の連続成形機において生じる、成形される繊維強化複合材料の品質が低下する問題の発生を可及的に防ぐことのできる連続成形機を提供する。
【解決手段】
強化繊維材料に熱可塑性樹脂が含浸されて形成されたシート状の強化繊維基材を成形して繊維強化複合材料を製造する連続成形機であって、供給装置から供給されて重ねられた状態の複数の前記強化繊維基材を加圧して成形する成形動作を実行する成形装置を含む連続成形機において、前記供給装置と前記成形装置との間に設けられた非接触式の加熱器を含む加熱装置を備え、前記加熱器が、前記成形動作の時間に応じて予め定められた加熱時間内で、少なくとも直接の加熱対象の温度を前記熱可塑性樹脂の融点とすることが可能であるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維材料に熱可塑性樹脂が含浸されて形成されたシート状の強化繊維基材を成形して繊維強化複合材料を製造する連続成形機であって、供給装置から供給されて重ねられた状態の複数の前記強化繊維基材を加圧して成形する成形動作を実行する成形装置を含む連続成形機において、
前記供給装置と前記成形装置との間に設けられた非接触式の加熱器を含む加熱装置を備え、前記加熱器が、前記成形動作の時間に応じて予め定められた加熱時間内で、少なくとも直接の加熱対象の温度を前記熱可塑性樹脂の融点とすることが可能であるように構成されている
ことを特徴とする連続成形機。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記強化繊維基材の経路の側方に設けられた前記加熱器である側方加熱器を含むと共に、前記側方加熱器の取り付け位置を前記経路に対し接近及び離間させる方向に変更可能な位置変更構造を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の連続成形機。
【請求項3】
前記側方加熱器は、前記強化繊維基材の進行方向に沿って複数設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の連続成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維材料に熱可塑性樹脂が含浸されて形成されたシート状の強化繊維基材を成形して繊維強化複合材料を製造する連続成形機であって、供給装置から供給されて重ねられた状態の複数の前記強化繊維基材を加圧して成形する成形動作を実行する成形装置を含む連続成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機関連部品、自動車関連部品及びスポーツ・レジャー用品などを繊維強化複合材料によって形成することが行われている。その繊維強化複合材料は、プリプレグ等の強化繊維基材を積層した上で、その積層体に加圧及び加熱等を施して成形することで製造される。
【0003】
因みに、その強化繊維基材(プリプレグ)は、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維材料にマトリックス樹脂を含浸させてシート状に形成されたものである。また、そのマトリックス樹脂としては、熱硬化性の樹脂と熱可塑性の樹脂とが存在するが、熱硬化性樹脂に比べ、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いた強化繊維基材の方が、成形性の面で優れているということが知られている。
【0004】
そして、そのような繊維強化複合材料を連続的に製造する装置として、例えば、特許文献1に開示された連続成形機がある。その連続成形機は、シート状の強化繊維基材がロール状に巻かれて形成された材料ロールが複数仕掛けられる供給装置、及びその供給装置の下流側に設けられて強化繊維基材を成形する成形装置を備えている。そして、その連続成形機は、供給装置から供給された複数の強化繊維基材が重ね合わされた状態で下流側に引き出され、その重ね合わされた状態の複数の強化繊維基材が成形装置において加圧型(加熱型)によって加熱されると共に加圧されることで、繊維強化複合材料として成形されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64-004315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のような従来の連続成形機において、その成形される強化繊維基材が熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いた熱可塑性プリプレグによるシート材である場合には、成形装置において前記のような成形が行われる際には、重ね合わせた強化繊維基材同士を溶着させるために、成形装置におけるその成形のための加熱は、マトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)の融点以上の温度で行われることとなる。
【0007】
なお、成形装置による成形においては、前記のように加圧型により加熱することで強化繊維基材におけるマトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)を半溶融状態(樹脂が溶融(液化)しない程度に軟化した状態)とし、その状態で強化繊維基材を加圧型により加圧することで、その成形が行われる。また、前記のように重ね合わされた複数の強化繊維基材を成形する場合、その加圧型による加熱においては、加圧型と直に接触する強化繊維基材は直接的に加熱されるが、加圧型と接触しない強化繊維基材は、重ね合わされることで自身が接触する強化繊維基材が加熱された上で、その熱が伝わることによって加熱されることとなる。
【0008】
したがって、加圧型と接触する強化繊維基材と、加圧型と接触しない強化繊維基材とでは、加圧型による加熱(加圧)が開始されてから、マトリックス樹脂(熱可塑性樹脂)が半溶融状態となるまでの時間に差が生じることとなる。そのため、加圧型と接触する強化繊維基材は、全ての強化繊維基材が半溶融状態となるまで、すなわち、自身が半溶融状態となるのに要する時間よりもかなり長い時間に亘って、加圧型により加熱され続けることとなる。その結果として、その加圧型と接触する強化繊維基材のマトリックス樹脂が加圧型に付着する等の状態が発生し、成形される繊維強化複合材料の表面部分の状態が悪化し、その繊維強化複合材料の品質が低下するといった問題が生じる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述のような従来の連続成形機において生じる、成形される繊維強化複合材料の品質が低下するという問題の発生を可及的に防ぐことのできる連続成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、強化繊維材料に熱可塑性樹脂が含浸されて形成されたシート状の強化繊維基材を成形して繊維強化複合材料を製造する連続成形機であって、供給装置から供給されて重ねられた状態の複数の前記強化繊維基材を加圧して成形する成形動作を実行する成形装置を含む連続成形機を前提とする。
【0011】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明は、その前提とする連続成形機において、前記供給装置と前記成形装置との間に設けられた非接触式の加熱器を含む加熱装置を備え、その加熱装置における前記加熱器が、前記成形動作の時間に応じて予め定められた加熱時間内で、少なくとも直接の加熱対象の温度を前記熱可塑性樹脂の融点とすることが可能であるように構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、加熱器の「直接の加熱対象」とは、その加熱器によって加熱される部材(対象)のうちの加熱器と対向して加熱器の熱を直接的に受ける部材の部分を指す。したがって、本発明の場合では、強化繊維基材が加熱装置(加熱器)による加熱対象であり、供給装置から供給された複数の強化繊維基材のうちの最も外側の強化繊維基材が加熱器と対向する強化繊維基材であり、その最も外側の強化繊維基材のうち加熱装置内において直接的に加熱器により加熱される部分がここで言う直接の加熱対象となる。
【0013】
また、本発明による連続成形機は、前記加熱装置が、前記強化繊維基材の経路の側方に設けられた前記加熱器である側方加熱器を含むと共に、前記側方加熱器の取り付け位置を前記経路に対し接近及び離間させる方向に変更可能な位置変更構造を有しているように構成されていても良い。さらに、その構成において、前記側方加熱器を、前記強化繊維基材の進行方向に沿って複数設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連続成形機は、非接触式の加熱器であって、前記加熱時間内で少なくとも直接の加熱対象の温度を熱可塑性樹脂の融点とすることが可能であるように構成された加熱器を含む加熱装置を、供給装置と成形装置との間に備えている。したがって、そのような本発明の連続成形機によれば、供給装置から供給される複数の強化繊維基材のうちの少なくとも加熱器で直接的に加熱される強化繊維基材の部分の熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)を、その部分が成形装置に導入される前に半溶融状態とすることができる。
【0015】
それにより、重ねられた状態の複数の強化繊維基材における成形装置により成形される部分(成形部分)を全て成形装置(加圧型)により成形可能な状態(半溶融状態)まで加熱する従来の装置と比べ、少なくとも一部が半溶融状態となっている分、成形に要する時間を短くすることができ、延いては、加圧型と強化繊維基材とが接触している時間を短くすることができる。その結果として、加圧型と強化繊維基材とが長い時間接触することにより発生する前記したような繊維強化複合材料の品質に関する問題の発生を可及的に防ぐことができる。
【0016】
その上で、その本発明による連続成形機において、加熱装置(加熱器)が、複数の強化繊維基材における全ての熱可塑性樹脂について、その温度を前記融点とするように構成されたものとすれば、成形装置(加圧型)において前記成形部分を半溶融状態とするように加熱する必要が無くなるため、加圧型の温度をより低い温度に設定することができる。そして、その場合には、加圧型にマトリックス樹脂が付着するのをより効果的に防ぐことができる。
【0017】
また、本発明が前提とする連続成形機において、成形される繊維強化複合材料が、平板状の部分だけでなく、その平板状の部分に対し角度を成す部分をも有するような形状(例えば、断面形状が所謂C形やL形)である場合には、加熱装置を、その平板状の部分だけでなくその角度を成す部分も加熱器で直接的に加熱できるように、強化繊維基材の経路の側方に設けられた加熱器である側方加熱器を含むように構成するのが望ましい。
【0018】
その上で、そのように加熱装置が側方加熱器を備えるように構成される場合において、その加熱装置を、側方加熱器の取り付け位置を前記経路に対し接近及び離間させる方向に変更可能とするための位置変更構造を有するように構成することで、例えば、成形する強化繊維基材を前記融点の異なる熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)が用いられたものに変更した場合や、成形される繊維強化複合材料の形状が変更された場合であっても、位置変更構造によって強化繊維基材と側方加熱器との距離を変更することで、強化繊維基材の加熱を可及的に適切なものとすることができる。
【0019】
さらに、加熱装置が側方加熱器を含むと共に位置変更構造を有するように構成されている場合において、側方加熱器を強化繊維基材の進行方向に沿って複数設けるような構成とすることにより、成形装置に向けて徐々に断面形状が変化する強化繊維基材に対し、前記進行方向に沿った前記経路の各位置において、その位置毎により適切に強化繊維基材を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明が適用される連続成形機を示す側面図である。
図2】本発明による加熱装置の説明図(図1のA-A断面図)である。
図3】本発明による加熱装置の説明図(図2のC-C断面図)である。
図4】予備成形装置の説明図(図1のB-B断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図1~4に基づき、本発明による連続成形機の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本発明で言う強化繊維基材は、前述したように炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維材料にマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂を含浸させてシート状に形成されたものである。そして、本実施例では、その強化繊維基材は、強化繊維材料としての炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた熱可塑性のプリプレグであるものとする。
【0022】
図1に示すように、連続成形機1は、複数個の材料ロール3、3、…が仕掛けられる供給装置4を備えている。但し、ここで言う材料ロール3は、シート状のプリプレグ(以下、「プリプレグシート」と称する。)2がロール状に巻かれて形成されたものである。また、連続成形機1は、その供給装置4から供給されて重ねられた状態の複数のプリプレグシート2、2、…を加圧して繊維強化複合材料5に成形する成形動作を実行する成形装置6、及びその成形装置6により成形された繊維強化複合材料5を引き出す引出動作を実行する引出装置7を備えている。そのような連続成形機1の各装置について、詳しくは以下の通りである。
【0023】
供給装置4は、フレーム11に支持されるかたちで設けられた複数本(図示の例では10本)の支持軸12を備え、その各支持軸12に材料ロール3が仕掛けられている。また、供給装置4は、各支持軸12に対応させるかたちでガイドローラ13を備えている。そして、その10個の材料ロール3から引き出されたプリプレグシート2は、それぞれが対応するガイドローラ13に巻き掛けられて下流側(成形装置6が設けられている側)へ向けて転向され、その10枚のプリプレグシート2が上下に並んだ状態で、供給装置4から引き出されるようになっている。
【0024】
また、その供給装置4と成形装置6との間には、供給装置4から引き出された10枚のプリプレグシート2を重ねた状態で下流側へ案内するためのシートガイド15が設けられている。そのシートガイド15は、上下方向に間隔を置いて設けられた2枚の板材と、それらを支持するスタンドとを含むように構成されている。その上で、その2枚の板材の間隔は、プリプレグシート(10枚)2の厚さ寸法の合計よりも僅かに大きい程度とされている。そして、供給装置4から引き出された(上下に並んだ状態の)10枚のプリプレグシート2は、そのシートガイド15に案内されることによって、重ねられた状態とされるようになっている。
【0025】
成形装置6は、その重ねられた状態のプリプレグシート2を加圧するための加圧型21を備えている。その加圧型21は、成形される繊維強化複合材料5の断面形状に応じた形状の上金型21a及び下金型21bで構成されている。なお、本実施例では、成形される繊維強化複合材料5は、各側縁を含む両側の部分(側部分)と両側部分の間の部分(中間部分)とからなり、各側部分が中間部分に対し角度を成すと共にその角度が略90°であるような形状、すなわち、所謂C形の断面形状を有する繊維強化複合材料である。したがって、上金型21aは、下面に開口する溝を有し、断面形状が略逆U字形を成すものとなっている。また、下金型21bは、断面形状が矩形状を成し、上金型21aの前記溝に若干の隙間を持って填まり込み得るものとなっている。そして、その上金型21a及び下金型21bは、供給されるプリプレグシート2の経路に対する上側及び下側となるような位置で、成形装置6内に設けられている。
【0026】
また、成形装置6は、上金型21aを上下方向に駆動させる油圧シリンダ等の駆動装置23を備えており、予め設定された圧力で上金型21aと下金型21bとの間に位置するプリプレグシート2を加圧することができるように構成されている。
【0027】
さらに、成形装置6は、加圧型21を加熱することによってその加圧型21で加圧しているプリプレグシート2を加熱する加熱機構25を備えている。その加熱機構25は、上金型21aに内蔵された上側加熱部25aと、下金型21bに内蔵された下側加熱部25bとを含んでいる。そして、加熱機構25は、その上側加熱部25aで上金型21aを加熱し、下側加熱部25bで下金型21bを加熱することで、加圧時にプリプレグシート2を加熱するものとなっている。なお、成形装置6は、連続成形機1の主制御装置(図示略)に接続されており、その主制御装置において上金型21a及び下金型21bが予め設定された温度でプリプレグシート2を加熱するように加熱機構25における上側加熱部25a及び下側加熱部25bの温度が制御されるものとなっている。
【0028】
引出装置7は、成形装置6により成形された繊維強化複合材料5を引き出すべく、成形装置6に対しプリプレグシート2の進行方向における下流側に設けられている。その引出装置7は、その成形された繊維強化複合材料5を把持する把持機構31と、その把持機構31を繊維強化複合材料5の経路に沿って往復動させる引出機構33とを備えている。
【0029】
把持機構31は、繊維強化複合材料5の経路を挟んで設けられた上下一対の把持プレートを含み、上側の把持プレート31bをエアシリンダ等の駆動装置31aによって下方へ移動させて繊維強化複合材料5を把持するように構成されている。また、引出機構33は、サーボモータ33aを駆動源とすると共に把持機構31が連結されたボールネジ機構等の移動機構を含み、その移動機構をサーボモータ33aによって駆動して把持機構31をプリプレグシート2の進行方向へ移動させるように構成されている。なお、その引出機構33は、前記経路の方向における加圧型21の寸法よりも若干小さい距離(以下、「引出量」と称する。)だけ、把持機構31を移動させるように構成されている。
【0030】
以上で説明した供給装置4、成形装置6、及び引出装置7を含む連続成形機1においては、成形装置6において、駆動装置23が上金型21aを下方に移動させることで、前記のように上下に重ねられた状態で供給装置4側から引き出された10枚のプリプレグシート2に対し、加圧及び加熱を伴う成形動作が実行される。その後、その成形動作の終了に伴って上金型21aを上方に移動させて成形装置6において繊維強化複合材料5を解放すると共に、引出装置7における把持機構31において駆動装置31aが上側の把持プレート31bを下方へ移動させることで、繊維強化複合材料5が把持機構31により把持された状態とされる。
【0031】
次いで、引出装置7における引出機構33においてサーボモータ33aが駆動されて把持機構31を前記進行方向へ移動させることで、前記引出量だけ繊維強化複合材料5が引き出される引出動作が実行される。それにより、成形装置6においては、前記のように成形されて成された繊維強化複合材料5が前記引出量分だけ成形装置6から引き出され、成形装置6内にプリプレグシート2が新たに供給された状態となる。また、そのような引出動作に伴い、供給装置4に仕掛けられた各材料ロール3からも、前記引出量分のプリプレグシート2が引き出される。
【0032】
このようにして、成形装置6による成形動作及び引出装置7による引出動作を含む1回の成形動作が完了する。そして、その後に成形動作が再び実行され、以降、その成形動作及び引出動作が繰り返されることで繊維強化複合材料5が連続的に成形される。
【0033】
以上のように構成された連続成形機において、本発明では、その連続成形機が供給装置と成形装置との間に設けられた非接触式の加熱器を含む加熱装置を備え、その加熱器が成形動作の時間に応じて予め定められた加熱時間内で少なくとも直接の加熱対象の温度を熱可塑性樹脂の融点とすることが可能であるように構成される。その上で、本実施例の加熱装置は、強化繊維基材の経路の側方に設けられた加熱器である側方加熱器を含むと共に、その側方加熱器の取り付け位置を前記経路に対し接近及び離間させる方向に変更可能な位置変更構造を有しているものとする。そのような連続成形機の一実施例(本実施例)を以下で詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、加熱装置8は、供給装置4(シートガイド15)と成形装置6との間に設けられている。また、加熱装置8は、図2に示すように、プリプレグシート2の経路に対し上方に設けられた上方加熱器79、及び前記経路に対する両側方に設けられた側方加熱器53を備えている。また、本実施例の加熱装置8は、前記経路の下方(プリプレグシート2の内側)に設けられた下方加熱器67を備えている。さらに、加熱装置8は、上方加熱器79、側方加熱器53、及び下方加熱器67の各加熱器の温度を制御するための温度制御器43を備えている。そのような加熱装置8について、詳しくは、以下の通りである。なお、本実施例では、各加熱器は、赤外線により加熱対象を加熱する非接触式の赤外線ヒータであるものとする。但し、本発明では、加熱器は、赤外線ヒータに限らず、例えば、高周波誘導により加熱対象を加熱するものであっても良い。
【0035】
先ず、加熱装置8は、プリプレグシート2を案内するための案内構造61を備えている。その案内構造61は、図2、3に示すように、加熱装置8の基台41上に設置される取付台61bと、取付台61b上に取り付けられる逆U字形を成す複数のガイド部材61aとを含んでいる。そのうち、取付台61bは、板厚方向に見て長辺方向の大きさが短辺方向に対し十分に大きい矩形状を成す板材である。そして、その取付台61bは、その前記長辺方向を前記経路の方向に一致させた状態で、基台41上に設置されている。なお、取付台61bの基台41に対する取り付けは、取付台61bに挿通されたネジ部材を基台41に螺挿させるかたちで行われる。
【0036】
また、ガイド部材61aは、図2に示すように、棒材を逆U字形に屈曲させると共に、両屈曲部分の間の部分(中間部)及び屈曲部から端部側の部分が直線状を成すように形成された部材である。そして、各ガイド部材61aは、その両端部がそれぞれ取付台61bに固定(嵌挿)されるかたちで、取付台61b上に立設されている。また、複数のガイド部材61aは、図3に示すように、前記長辺方向において等間隔に並べられるかたちで、取付台61b上に設けられている。そして、その案内構造61は、各ガイド部材61aの前記中間部の上縁でプリプレグシート2を案内するように設けられている。したがって、そのガイド部材61aの上縁が前記経路となっている。
【0037】
上方加熱器79は、図2に示すように、前記経路を成す案内構造61(ガイド部材61a)の上方に位置するように設けられている。また、上方加熱器79は、基台41上に設置された支持フレーム70に支持されるかたちで、加熱装置8上に設けられている。なお、本実施例では、図1に示すように、その上方加熱器79は、前記経路の方向に並べられるかたちで3つ設けられている。
【0038】
その上方加熱器79を支持する支持フレーム70は、図2、3に示すように、上方加熱器79が取り付けられる支持プレート71と、その支持プレート71を支持する4本の支柱73とで構成されている。そのうち、支持プレート71は、板厚方向に見て矩形状を成す板材である。そして、その支持プレート71は、その端面の長辺方向に関し、前記のように3つ設けられる上方加熱器79をその長辺方向に並べて支持し得る寸法を有している。また、その支持プレート71は、その端面の短辺方向に関し、取付台61bの短辺方向の大きさよりも大きい寸法を有している。また、各支柱73は、取付台61bの各角部の近傍(4カ所)で基台41上に立設されるかたちで設けられている。
【0039】
その上で、支持フレーム70は、支持プレート71の長辺方向を前記経路の方向(取付台61bの長辺方向)に一致させた状態で、各支柱73の上端に支持プレート71を取り付けるかたちで構成されている。なお、上下方向における支持プレート71の配置(支柱73の長さ寸法)は、その支持プレート71と案内構造61(ガイド部材61aの上縁)との間に、案内構造61と所定の間隔を空けて上方加熱器79を配置し得るものとなっている。また、その支持プレート71の各支柱73に対する取り付けは、支柱73の上端から突出する雄ネジ部が支持プレート71に挿通されると共に、その雄ネジ部にナットを螺合させることで行われている。
【0040】
上方加熱器79は、厚い板状である略直方体形状の部分を主体部79aとし、その厚さ方向における一方の端面にヒータ部79a1が露出するように構成されている。また、上方加熱器79は、支持フレーム70に取り付けられる部分である取付部79bを有し、その取付部79bが主体部79aの厚さ方向における他方の端面から突出するように構成されている。
【0041】
そして、各上方加熱器79は、その取付部79bにおいて、支持フレーム70に対し吊り下げられるかたちで取り付けられている。なお、その支持フレーム70における支持プレート71に対する取り付けは、支持プレート71に対し形成された孔に対し上方加熱器79における取付部79bが挿通されると共に、その取付部79bに留め具(図示略)を取り付けるかたちで行われている。そして、そのようにして支持フレーム70(支持プレート71)に対し上方加熱器79が取り付けられることで、3つの上方加熱器79が、前記経路の方向に並ぶと共に、案内構造61(各ガイド部材61a)の上方においてヒータ部79a1を下方に向けて配置された状態となっている。
【0042】
側方加熱器53は、図2、3に示すように、案内構造61(ガイド部材61a)に対する両側方のそれぞれに配置されるようなかたちで設けられている。また、側方加熱器53は、前記両側方においてそれぞれ3つずつ(合計6つ)が、前記経路の方向(取付台61bの長辺方向)に並べられるかたちで設けられている。そして、各側方加熱器53は、その側方加熱器53に対し1対1で対応させるかたちで設けられた支持台45により、基台41上において支持されている。
【0043】
その側方加熱器53を支持する各支持台45は、図2、3に示すように、矩形状の板材を略L字形に屈曲させて形成された部材を主体としている。そして、その支持台45は、屈曲部45cよりも一端側の部分が側方加熱器53の取り付けられる支持部45aとなり、他端側の部分が基台41に対し取り付けられる設置部45bとなる。また、支持台45は、支持部45aと設置部45bとに跨がるかたちで設けられた略三角形状の補強部45dを有している。なお、その補強部45dは、支持部45a(設置部45b)の端縁と平行な方向に離間するかたちで2つ設けられている。
【0044】
そして、各支持台45は、支持部45aを案内構造61(ガイド部材61a)と対向させると共に、支持部45aに対し設置部45bが案内構造61側とは反対側となるような向きで、基台41上に設置される。その上で、各支持台45は、支持部45aの端面が前記経路の方向と平行を成すようなかたちで配置される。なお、各支持台45の基台41に対する取り付けは、設置部45bに形成された2つの孔45e、45eのそれぞれに蝶ネジ46を挿通させると共に、その挿通させた各蝶ネジ46を基台41に穿設されたネジ孔(図示略)に螺挿させることによって行われる。
【0045】
そして、本実施例では、その設置部45bに形成された2つの孔45e、45eが、設置部45bの側縁と平行な方向、すなわち、前記のように支持台45が配置された状態での加熱装置8(連続成形機1)の幅方向と平行な方向に長い長孔となっている。したがって、その支持台45の基台41に対する取り付け位置は、前記幅方向に変更可能となっている。このように、加熱装置8は、前記幅方向に、すなわち、前記経路に対し接近及び離間させる方向に、支持台45(側方加熱器53)の基台41に対する取り付け位置を変更可能であるように構成されており、そのような変更を可能とする位置変更構造を有している。
【0046】
側方加熱器53は、上方加熱器79と同じ加熱器であって、主体部53a、ヒータ部53a1、及び取付部53bを備えるように構成されている。そして、側方加熱器53は、その取付部53bにおいて、支持台45における支持部45aに対し取り付けられている。なお、その支持台45に対する取り付けは、支持部45aに対する案内構造61側において、支持部45aに形成された孔に対し取付部53bを挿通させると共に、その挿通させた取付部53bに留め具(図示略)を取り付けることによって行われている。
【0047】
そして、そのようにして各支持台45に対し側方加熱器53が取り付けられることで、、各側方加熱器53は、前記幅方向に関し、ヒータ部53a1を前記経路に向けて配置された状態となっている。また、各側方加熱器53は、上下方向に関しては、ヒータ部53a1がガイド部材61aと重複すると共に、プリプレグシート2を案内するガイド部材61aの上縁がヒータ部53a1の存在範囲に位置するような配置となっている。そして、各側方加熱器53は、対応する支持台45に対しそのように支持された状態で、前述のように前記両側方において前記経路の方向に沿って3つずつ並べられるかたちで基台41上に設けられている。
【0048】
下方加熱器67は、図2、3に示すように、上方加熱器79や側方加熱器53とは異なる形式の加熱器であり、図示の例では、電熱線を円筒形状の金属パイプで覆うかたちで構成された所謂シーズヒータが採用されている。また、その下方加熱器67は、2つのシーズヒータ67a、67aを有しており、各シーズヒータ67aは、その長さ方向に関し、側方加熱器53(上方加熱器79)による加熱範囲、すなわち、側方加熱器53(上方加熱器79)を3つ並べた大きさと略同じ大きさを有している。その上で、各シーズヒータ67aは、前記経路の下方(案内構造61におけるガイド部材61aの前記中間部と取付台61bとの間)においてその長さ方向を前記経路の方向に一致させるようなかたちで設けられている。なお、各シーズヒータ67aは、取付台61b上に設置された一対のホルダ63、63により、その両端部において支持されるかたちで設けられている。そして、2つのシーズヒータ67a、67aは、上下方向に並べられるかたちで設けられている。
【0049】
なお、そのシーズヒータ67aを支持するホルダ63は、矩形状の板材を略L字形に屈曲させて形成された部材である。そして、そのホルダ63は、その屈曲部よりも一端側において取付台61b上に設置されると共に、他端側において各シーズヒータ67aを支持するものとなっている。また、シーズヒータ67aは、その両端に取付部を有しており、その両取付部がホルダ63、63に嵌挿されるかたちで、ホルダ63、63によって支持されている。
【0050】
そして、以上で説明した上方加熱器79、側方加熱器53、及び下方加熱器67のそれぞれは、各加熱器の温度を制御するための温度制御器43に接続されている。なお、本実施例では、温度制御器43は、各加熱器の加熱温度を個別に設定できるように構成されているものとする。すなわち、例えば前記のように3つ設けられる上方加熱器79においても、その各加熱器に対し異なる加熱温度を設定できるようになっている。
【0051】
また、本実施例においては、前記のように10枚の重ねられた状態とされるプリプレグシート2は、加熱装置8を通過した時点でその全てが半溶融状態にされるものとする。すなわち、加熱装置8においては、各加熱器がそのような加熱を実現するような加熱温度に設定されている。
【0052】
なお、プリプレグシート2に対する加熱の程度は、その加熱温度と加熱時間とに応じたものとなる。また、加熱時間は、プリプレグシート2が加熱器の存在範囲(加熱範囲)を通過する時間(加熱範囲に存在する時間)に相当する。そして、その通過時間は、その加熱範囲(前記経路の方向における大きさ)、成形装置6による成形動作が実行される時間(プリプレグシート2が加熱範囲内で停止する時間)、並びに引出装置7による引出動作におけるプリプレグシート2の移動量及びその時間によって求められる。
【0053】
その上で、各加熱器の前記経路の方向における大きさは、装置として予め把握されており、且つ、成形動作が実行される時間、並びに引出動作におけるプリプレグシート2の移動量及びその時間も装置において予め定められていることから、加熱時間は、予め求められている。そこで、加熱温度については、その求められた加熱時間を踏まえ、最終的に前記経路の方向における3つ目の加熱器を通過した時点で前記のように重ねられたプリプレグシート2の10枚全てが半溶融状態となるように、各加熱器に対する温度が適宜に設定される。
【0054】
なお、プリプレグシート2は、成形装置6において前記した所謂C形の断面形状(前記中間部分に対し各前記側部分の成す角度が90°である形状)となるように成形される。それにより、成形装置6に向けて連続しているプリプレグシート2は、成形装置6の上流側においては、成形装置6に近い部分ほどそのC形に近い形となっている。したがって、加熱装置8の位置においても、そのプリプレグシート2は、下流側の部分ほど前記中間部分に対する各前記側部分の成す角度が小さくなる。そして、その結果として、その加熱装置8内に位置するプリプレグシート2の両側縁の位置は、下流側ほど案内構造61に近付くようになっている。
【0055】
そこで、本実施例の加熱装置8においては、案内構造61に対する両側にそれぞれ3つずつ設けられている各側方加熱器53は、下流側のものほど案内構造61に近い配置となるように設置されている。より詳しくは、加熱装置8は、前記のように位置変更構造を有しており、側方加熱器53を支持する支持台45の基台41に対する取り付け位置を前記幅方向(前記経路に対し接近、離間する方向)に変更可能であるように構成されている。具体的には、前記幅方向における基台41に対する支持台45の配置は、支持台45の設置部45bに形成されて蝶ネジ46が挿通される孔45eが前記のように長孔に形成されていることから、その長孔の範囲において任意に設定可能となっている。そこで、各側方加熱器53は、下流側のものが案内構造61に近い位置に配置されるように、支持台45に対し取り付けられている。
【0056】
また、本実施例における連続成形機1は、以上で説明した本発明を構成する装置に加え、予備成形装置9を備えている。なお、その予備成形装置9は、成形装置6でプリプレグシート2を加圧(成形)した際にプリプレグシート2に裂け目や皺が生じることを可及的に防ぐために、成形装置6で成形(本成形)する前に、プリプレグシート2をその繊維強化複合材料5の断面形状に近い形状に予め成形(予備成形)するものである。そして、その予備成形装置9は、図1に示すように、供給装置4(シートガイド15)と、加熱装置8との間に設けられている。すなわち、その予備成形は、加熱装置8で加熱されるプリプレグシート2に対し施される。
【0057】
その予備成形装置9は、基本的には成形装置6と同様の構成であって、図4に示すように、下面に開口する溝を有する上金型91、その溝に対し若干の隙間を持って填まり込む得る下金型92、及び上金型91を上下方向に駆動させることでプリプレグシート2を加圧するエアシリンダ93を備えている。さらに、予備成形装置9は、その加圧されているプリプレグシート2を加熱するための加熱機構94であって、上金型91及び下金型92に内蔵された加熱機構94を備えている。
【0058】
なお、成形装置6では、上金型21a及び下金型21bは、前述のように成形された繊維強化複合材料5の断面形状が所謂C形(前記中間部分と各前記側部分との間の角度が90°である形状)となるように構成されている。それに対し、予備成形装置9による予備成形は、前記のように本成形による繊維強化複合材料5(プリプレグシート2)の断面形状に近い形状に予め成形するものであることから、本成形のように前記中間部分と各前記側部分との成す角度が90°となるようにプリプレグシート2を成形するものではなく、前記中間部分と各前記側部分との成す角度が120°となるように成形するものである。そこで、その上金型91は、前記溝が下方に向かって拡がるような断面形状となるように構成されている。また、下金型92は、上辺が下辺よりも短い台形状の断面形状となるように構成されている。
【0059】
また、予備成形装置9は、前記した連続成形機1における主制御装置に接続されており、エアシリンダ93が上金型91を介してプリプレグシート2に加える圧力は、その主制御装置によって制御されるようになっている。但し、その圧力は、成形装置6において上金型21aによりプリプレグシート2に対し加えられる圧力よりも低い圧力に設定されている。さらに、加熱機構94がプリプレグシート2を加熱する温度も、その主制御装置により制御されるようになっている。但し、その温度は、プリプレグシート2に含浸された熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度(プリプレグシート2が若干軟化する程度の温度)に設定されている。なお、本実施例では、成形装置6がプリプレグシート2を加熱する温度も、前記融点より低い温度が設定されている。その上で、加熱機構94がプリプレグシート2を加熱する温度は、その成形装置6がプリプレグシート2を加熱する温度よりも高い温度に設定されている。
【0060】
以上のように構成された加熱装置8及び予備成形装置9を備えた本実施例による連続成形機1について、その作用は以下の通りである。
【0061】
先ず、前述のように上下に重ねられた状態で供給装置4側から引き出された10枚のプリプレグシート2は、予備成形装置9内に案内される。そして、予備成形装置9においてプリプレグシート2に対し、前記した予備成形が実行され、プリプレグシート2は、前記中間部分と各前記側部分との成す角度が120°となるように成形されることで繊維強化複合材料5の断面形状に近い形状とされる。なお、その予備成形は、成形装置6において実行される成形動作(本成形)と略同時に実行される。その後、予備成形(本成形)が終了した時点で、引出装置7による引出動作が開始され、プリプレグシート2がその引出動作に応じた量だけ進行する。それにより、その予備成形されたプリプレグシート2の部分が、予備成形装置9から引き出されると共に、加熱装置8内へ導入される。
【0062】
そして、加熱装置8内においては、プリプレグシート2は、図2に示すように、案内構造61におけるガイド部材61aの上縁(前記経路)で前記中間部分が案内され、その状態で各加熱器によって加熱される。なお、加熱装置8内においては、各上方加熱器79によってプリプレグシート2の前記中間部分が主に加熱され、各側方加熱器53によって各側部分が主に加熱される。また、下方加熱器67により、プリプレグシート2の内側の部分が加熱される。それにより、加熱装置8を通過した時点で、重ねられたプリプレグシート2の10枚全てが半溶融状態となる。そして、半溶融状態となったプリプレグシート2は、前記進行に伴い、加熱装置8内から引き出されて成形装置6内へ導入され、成形装置6によって成形(本成形)される。
【0063】
以上のように構成された本実施例における連続成形機1によれば、成形装置6内に案内される前に、重ねられたプリプレグシート2の10枚全てが半溶融状態とされ、その状態で成形装置6による本成形が行われることから、成形装置において全てのプリプレグシートを半溶融状態としつつ本成形が行われる従来の連続成形機と比べ、その本成形に要する時間を短くすることができる。そして、そのように本成形に要する時間を短くすることで、加圧型21とプリプレグシート2(繊維強化複合材料5)とが接触する時間を短くすることができる。その結果として、加圧型21とプリプレグシート2(繊維強化複合材料5)とが長い時間接触することにより発生する繊維強化複合材料5の品質に関する問題の発生を可及的に防ぐことができる。
【0064】
しかも、加熱装置8において全てのプリプレグシート2を半溶融状態とすることから、成形装置6においてプリプレグシート2を半溶融状態とする必要が無く、加圧型21の温度を前記融点よりも低い温度とすることができるため、成形装置6は、加圧型21の温度がその低い温度に設定されたものとなっている。それにより、加圧型21に熱可塑性樹脂が付着するのをより効果的に防ぐことができる。
【0065】
また、加熱装置8は、上方加熱器79に加えて側方加熱器53を備え、且つその側方加熱器53を前記経路に沿って並べるかたちで複数備えている。その上で、加熱装置8は、各側方加熱器53の取り付け位置を前記幅方向(前記経路に対し接近及び離間する方向)に変更可能な位置変更構造を有し、成形装置6に向けて前記中間部分に対する各前記側部分の成す角度が徐々に小さくなるプリプレグシート2に対し、各側方加熱器53を前記経路の下流側のものほど案内構造61に近い位置に配置している。それにより、各側方加熱器53が配置された位置で、より適切に前記側部分を加熱することができる。
【0066】
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下の(1)~(6)のような変形した実施形態でも実施が可能である。
【0067】
(1)前記実施例では、重ねられた状態の10枚のプリプレグシート2を全て半溶融状態とするものとし、加熱装置8における加熱温度は、そのような加熱が可能な温度に設定されている。言い換えれば、加熱装置8は、そのような加熱温度が設定可能に構成されている。しかし、本発明においては、加熱装置は、少なくとも直接の加熱対象を半溶融状態とする(熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する)ように構成されていれば良い。
【0068】
具体的には、複数枚(前記実施例では10枚)が重ねられた強化繊維基材に対し、各加熱器による直接の加熱対象である強化繊維基材(上方加熱器及び側方加熱器の直接の加熱対象は最も外側の強化繊維基材、下方加熱器の直接の加熱対象は最も内側の強化繊維基材)のみ、もしくはその直接の加熱対象を含む全枚数の半数(5枚)よりも少ない数の強化繊維基材が半溶融状態となるような加熱温度で加熱を行うように、加熱装置が構成されていても良い。
【0069】
なお、そのように加熱装置が構成されている場合、加熱装置で半溶融状態とされなかった強化繊維基材は、成形装置で半溶融状態とされる。そのため、成形装置における加圧型の温度は、その強化繊維基材が半溶融状態となる温度に設定されることとなる。しかし、その場合であっても、成形装置に導入された時点で一部の強化繊維基材が半溶融状態となっていることから、加圧型のみで全ての強化繊維基材を半溶融状態とする従来の連続成形機と比べ、重ねられた全ての強化繊維基材が半溶融状態となるまでの時間が短くなる分、加圧型と強化繊維基材とが接触している時間を短くすることができる。したがって、その場合であっても、加圧型と強化繊維基材とが長い時間接触することにより発生する繊維強化複合材料の品質に関する問題の発生を可及的に防ぐことができる。
【0070】
(2)各加熱器の数について、前記実施例では、加熱装置8は、上方加熱器79を3つ、側方加熱器53を案内構造61の両側方にそれぞれ3つずつ、下方加熱器67を1つ備えている。しかし、本発明においては、各加熱器の数は、前記実施例の数に限定されるものではない。
【0071】
詳しくは、重ねられた複数枚の強化繊維基材をどの程度まで(前記実施例では全て)半溶融状態とするかの加熱の程度(加熱状態)は、前述のように加熱温度と加熱時間とに応じたものとなる。すなわち、その加熱温度と加熱時間とが、所望の加熱状態を実現する条件となる。なお、加熱温度は、その加熱器によって加熱が可能な範囲において設定され、温度制御器によって制御される。また、加熱時間は、各加熱器の前記経路の方向における大きさ、成形動作が実行される時間、並びに引出動作における強化繊維基材の移動量及びその時間とによって決定される。そこで、加熱状態をどの程度とするかを予め定めた上で、その所望の加熱状態を実現するための加熱条件(加熱温度、加熱時間)を求め、その求めた加熱条件と設置される加熱器の構成(加熱可能温度、大きさ等)を踏まえ、各加熱器の数を適宜に決定すれば良い。
【0072】
例えば、前記実施例と同じ加熱状態を実現する上で、上方加熱器及び側方加熱器の各加熱器の加熱温度が前記実施例よりも高い場合や、各加熱器の前記経路の方向における大きさが前記実施例よりも大きい場合には、それぞれの数を前記実施例よりも少ない数(2つ或いは1つ)とすることも可能である。一方で、各加熱器の加熱温度が前記実施例よりも低い場合や前記経路の方向における大きさが小さい場合には、加熱器は、前記実施例よりも多い数のものが設けられることとなる。
【0073】
また、下方加熱器について、その下方加熱器は、上方加熱器による加熱範囲(上方加熱器が設けられる範囲)に亘って存在するように設けられるが、その数も、前記実施例のような1つに限らず、その構成(加熱可能温度、大きさ等)に応じて適宜に設定される。なお、前記実施例における下方加熱器67は、シーズヒータ67aを用いたものとなっているが、そのように構成されたものに限らず、例えば、上方加熱器と同様の構成のものや、前記実施例と同じように構成されたものであっても、前記経路の方向における大きさが前記実施例とは異なるものであっても良い。
【0074】
(3)前記実施例では、加熱装置8は、加熱器として上方加熱器79、側方加熱器53、及び下方加熱器67を備えている。しかし、本発明による加熱装置は、強化繊維基材の経路の上方に位置するように設けられた加熱器(上方加熱器)を備えていれば良く、側方加熱器、下方加熱器は、成形される繊維強化複合材料の断面形状等に応じて適宜に設けられるようにすれば良い。
【0075】
例えば、成形される繊維強化複合材料の断面形状が所謂I形の場合には、加熱装置内の強化繊維基材には、前記実施例のプリプレグシート2における前記側部分に相当する部分が存在していないことから、加熱装置は、上方加熱器及び下方加熱器のみを備えるようにしても良い。また、その場合、上方加熱器のみで加熱装置内を通過する強化繊維基材を半溶融状態とすることが可能ならば、下方加熱器を省略することも可能である。
【0076】
(4)前記実施例では、加熱装置8は、各側方加熱器53の取り付け位置を前記幅方向(前記経路に対し接近及び離間させる方向)に変更可能とする位置変更構造を有している。しかし、加熱装置が側方加熱器を備えている場合であっても、その加熱装置は、必ずしも位置変更構造を有していなくても良い。例えば、連続成形機が所定の断面形状の繊維強化複合材料のみを製造するためのものであって、且つ、成形される強化繊維基材に含浸された熱可塑性樹脂が融点の異なるものに変更されることが無い場合、各側方加熱器の取り付け位置を前記幅方向において変更することが無いため、加熱装置は、前記のような位置変更構造を有していなくても良い。
【0077】
(5)前記実施例では、側方加熱器53を支持する支持台45は、支持部45aの端面が前記経路の方向に対し略平行を成すように設けられている。それにより、その支持部45aに支持された側方加熱器53は、ヒータ部53a1が前記経路の方向と略平行を成すようなかたちで設けられたものとなっている。しかし、加熱装置が側方加熱器を備える場合において、その側方加熱器の設け方は、そのようにヒータ部が前記経路の方向に対し略平行を成すように設けられるものには限らない。
【0078】
詳しくは、加熱装置が側方加熱器を備えるのは、繊維強化複合材料が前記実施例の繊維強化複合材料5における前記側部分に相当する部分を有するように強化繊維基材を成形する場合である。そして、強化繊維基材をそのように成形する場合、その強化繊維基材は、前述のようにその側縁の位置が前記経路の下流側ほど強化繊維基材の内側に近付くようになる。その結果として、強化繊維基材の側縁は、平面視において前記経路の方向に対し角度を成した状態となっている。そこで、その場合には、ヒータ部が強化繊維基材の側縁と略平行を成すように、側方加熱器を前記経路の方向に傾斜した状態で設けるようにしても良い。
【0079】
また、前記実施例では、支持台45が略L字形を成すと共にその屈曲部よりも他端側で基台41に対し取り付けられ、側方加熱器53がその支持台45における屈曲部45cよりも一端側に取り付けられることから、側方加熱器53は、そのヒータ部53a1が上下方向に対し略平行を成すかたちで設けられている。しかし、側方加熱器の設け方は、ヒータ部が上下方向に対し略平行を成すように設けられるものにも限られない。
【0080】
詳しくは、前記のように強化繊維基材を成形する場合、その強化繊維基材は、前記経路の方向における加熱装置が存在する範囲においては、前述のように前記側部分に相当する部分が前記中間部分に相当する部分に対し90°よりも大きい角度を成す状態となっている。言い換えると、強化繊維基材は、前記範囲においては、その前記側部分に相当する部分が上下方向に対し角度を成した状態となっている。そこで、その場合には、側方加熱器が配置された(各)位置において、ヒータ部が若干斜め下方を向くように側方加熱器を上下方向に対し傾斜させた状態で設けるようにしても良い。
【0081】
(6)前記実施例では、加熱装置8における上方加熱器79は、前記経路(案内構造61におけるガイド部材61a)の上方において、支持フレーム70に固定された状態で設けられている。しかし、加熱装置は、上方加熱器の取り付け位置が上下方向において変更可能に構成されていても良い。それにより、上方加熱器と強化繊維基材との間の距離を変更することによっても、上方加熱器による強化繊維基材に対する加熱の程度を変えることが可能となる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 連続成形機 2 プリプレグシート
3 材料ロール 4 供給装置
5 繊維強化複合材料 6 成形装置
7 引出装置 8 加熱装置
9 予備成形装置
11 フレーム 12 支持軸
13 ガイドローラ 15 シートガイド
21 加圧型 21a、91 上金型
21b、92 下金型 23 駆動装置
25、94 加熱機構 25a 上側加熱部
25b 下側加熱部
31 把持機構 31a 駆動装置
31b 把持プレート 33 引出機構
33a サーボモータ
41 基台 43 温度制御器
45 支持台 45a 支持部
45b 設置部 45c 屈曲部
45d 補強部 45e 孔
46 蝶ネジ 53 側方加熱器
53a、79a 主体部 53a1、79a1 ヒータ部
53b、79b 取付部
61 案内構造 61a ガイド部材
61b 取付台 63 ホルダ
67 下方加熱器 70 支持フレーム
71 支持プレート 73 支柱
79 上方加熱器 93 エアシリンダ
図1
図2
図3
図4