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  • 特開-洗濯乾燥機の排気システム 図1
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  • 特開-洗濯乾燥機の排気システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002929
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機の排気システム
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
D06F58/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092685
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022102278
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520438280
【氏名又は名称】株式会社松尾設計室
(74)【代理人】
【識別番号】100170449
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和也
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AA04
3B166AE02
3B166AE07
3B166BA22
3B166BA43
3B166BA45
3B166BA55
3B166EA12
3B166EB01
3B166EB18
3B166EE02
3B166EE04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】洗濯物の乾燥が早いことに加え、室内の乾燥が防止できる洗濯乾燥機の排気システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る洗濯乾燥機の排気システムは、熱量に余裕がある電気式ヒータを熱源とする洗濯乾燥機の筐体と、前記筐体内に設けられた洗濯槽と、前記洗濯槽に接続し、前記洗濯槽内の高温多湿の空気を前記筐体の外に排出する排出路とを備える洗濯乾燥機と、前記洗濯乾燥機の排出路に接続し、前記洗濯乾燥機が配置された住宅の屋外に前記高温多湿の空気を排出する排出経路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式ヒータを熱源とする洗濯乾燥機の筐体と、
前記筐体内に設けられた洗濯槽と、
前記洗濯槽に接続し、前記洗濯槽内の高温多湿の空気を前記筐体の外に排出する排出路とを備える洗濯乾燥機と、
前記洗濯乾燥機の排出路に接続し、前記洗濯乾燥機が配置された住宅の屋外に前記高温多湿の空気を排出する排出経路とを備える、洗濯乾燥機の排気システム。
【請求項2】
さらに、前記洗濯乾燥機の排出路に接続し、前記洗濯乾燥機が配置された部屋と異なる他の部屋へ前記高温多湿の空気を転送する転送経路とを備える、請求項1に記載の洗濯乾燥機の排気システム。
【請求項3】
前記転送経路はフィルターを備える、請求項2に記載の洗濯乾燥機の排気システム。
【請求項4】
前記排出経路および前記転送経路は、切替装置を介して前記排気路に接続されており、
前記切替装置は、前記排気路から排気される前記高温多湿の空気を屋外に排出するか、または、他の部屋に転送するかを切り替える、請求項2または請求項3に記載の洗濯乾燥機の排気システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機から排出される高温多湿空気の排気に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣類などの洗濯物を洗濯から乾燥まで行う洗濯乾燥機がある。このような洗濯乾燥機においては、乾燥の方法としてガス式と電気式がある。
【0003】
ガス式の洗濯乾燥機では、一般的に、ガスを利用して約80℃~100℃の高温で衣類を乾かす方式であり、一般的な電気式の乾燥方式に比べて、高出力でありながら、乾燥時間が短くなるためランニングコストが安価になるという特徴がある。ただし、ガス式の洗濯乾燥機は、二酸化炭素を含む排気を室内に排出するわけにはいかず、屋外に排出することになる。したがって、ガスの供給および排出のためのガス配管等の設置を含む大がかりな設置工事が必要となる。
【0004】
電気式の洗濯乾燥機では、電気を利用して約75℃の温度で衣類を乾かす方式であり、前述した一般的なガス式の洗濯乾燥機に比べて低出力で、乾燥までの時間が長時間となるためランニングコストも高額になりやすい。ただし、従来の家庭用電源(一般に100V電源)で稼働させることができ、排出される空気も人体には無害のため室内に排気できる。したがって、ガス配管等の設置工事は不要であり、設定が容易であるという特徴がある。
【0005】
上記のような洗濯乾燥機の特徴から、現行の一般的な住宅では、100V電源を利用した電気式の洗濯乾燥機が多くの家庭で採用され、普及している。例えば、特許文献1に記載の電気式の洗濯乾燥機では、100Vの商用交流電源により動作する、乾燥性能の高い洗濯乾燥機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-52105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、100V電源を利用した電気式の洗濯乾燥機においては、ランニングコストを改善したい、といった要求に加え、乾燥時の高温多湿の空気が洗濯乾燥機を設置した部屋に排出されるため、電気式の洗濯乾燥機においては、100Vであるために熱量が足らず乾燥時間が長すぎる問題や、生乾きで終わってしまう問題があった。それに加え乾燥時に発生する高温多湿の空気が洗濯乾燥機を設置した部屋に排出されるため、その排出された湿気が再循環することで乾きにくいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような課題に対して、本発明の発明者は、電気式の洗濯乾燥機であっても、ガス式と変わらない温度と時間で乾燥でき、仕上がりも遜色のない洗濯物の乾燥を可能とするために電源を200Vとする着想をもった。ただし、電源を200Vとすることで、高温多湿の空気が排気されるという課題は、より一層問題となるが、冬は洗濯乾燥機を設置する部屋以外の部屋に排気をすることで、乾燥に時間がかかるという問題解決と居室の加湿を両立できるとの知見を得た。
【0009】
(1)これらの知見に基づき、本発明に係る洗濯乾燥機の排気システムは、電気式ヒータを熱源とする洗濯乾燥機の筐体と、前記筐体内に設けられた洗濯槽と、前記洗濯槽に接続し、前記洗濯槽内の高温多湿の空気を前記筐体の外に排出する排出路とを備える洗濯乾燥機と、前記洗濯乾燥機の排出路に接続し、前記洗濯乾燥機が配置された住宅の屋外に前記高温多湿の空気を排出する排出経路とを備える。
【0010】
このような洗濯乾燥機の排気システムによれば、電気式の洗濯乾燥機であっても、ガス式と変わらない温度と時間で乾燥できるためランニングコストを抑制し、仕上がりも遜色のない洗濯物の乾燥が可能となり、夏は高温多湿の空気が屋外に排出されるため洗濯物の乾燥が早く、冬は他室へ導入されるため、洗濯物の乾燥が早いことに加え、室内の乾燥が防止される。
【0011】
(2)前記した洗濯乾燥機の排気システムは、さらに、前記洗濯乾燥機の排出路に接続し、前記洗濯乾燥機が配置された部屋と異なる他の部屋へ前記高温多湿の空気を転送する転送経路とを備えてもよい。そのような洗濯乾燥機の排気システムによれば、洗濯乾燥機から排気される高温の空気を屋内の暖房加湿に利用できエネルギーの無駄を抑制できる。
【0012】
(3)前記した洗濯乾燥機の排気システムにおいて、前記転送経路はフィルターを備えていてもよい。そのような洗濯乾燥機の排気システムによれば、転送経路を通過する洗濯乾燥機からの排気に対して、除湿や消臭を行った後に部屋に放出するため、湿度やにおいにより放出される部屋の環境を悪化させることがない。
【0013】
(4)前記した洗濯乾燥機の排気システムにおいて、前記排出経路および前記転送経路は、切替装置を介して前記排気路に接続されており、前記切替装置は、前記排気路から排気される前記高温多湿の空気を屋外に排出するか、または、他の部屋に転送するかを切り替えるようにしてもよい。そのような洗濯乾燥機の排気システムによれば、例えば、冬には洗濯乾燥機からの排気を屋内に転送し部屋を暖め、夏には排気を屋外に排出し屋内に熱を持ち込まないといった切り替えが容易にできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気式の洗濯乾燥機でありながら、洗濯物をガス式の洗濯乾燥機と遜色のない乾燥条件を提供し、排気の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の洗濯乾燥機の排気システムを備える住宅の概略平面図である。
図2】本発明の洗濯乾燥機の排気システムを備える住宅の概略正面図である。
図3】本発明の洗濯乾燥機の排気システムに利用される洗濯乾燥機の一例であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機10の排気システムS(以下、単に「排気システムS」とも称する。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る排気システムSは、住宅1に適用される。排気システムSが適用される住宅1は、住宅1の洗面所のような1つの部屋に洗濯乾燥機10が設置される。洗面所のような部屋は、一般的に風呂場に隣接して設けられることが多く、リビングやキッチン等の居室とは区切られて建築されている。本実施形態において、洗面所は廊下を隔ててリビングやキッチンと区切られている。なお、本実施形態に係る洗濯乾燥機10が設置される住宅1は、100Vの一般電源に加え200Vの高圧電源が供給可能とされている。
【0018】
本実施形態に係る排気システムSは、洗面所のような部屋に設置された洗濯乾燥機10から排出される高温多湿空気を、住宅1の外に排出するための排出経路20と、居室などの他の部屋に送るための転送経路30とを備える。
【0019】
具体的には、排気システムSは、後述する洗濯乾燥機10の排気路13が排出経路20と転送経路30とに接続されており、洗濯乾燥機10からの高温多湿空気を排出経路20により住宅1の外に排出するか、転送経路30により居室などの他の部屋に送るかは、切替装置40により切り替えることができる。
【0020】
排出経路20および転送経路30は、従来よく知られる空気用の配管により構築することができる。切替装置40は、従来よく知られるエアーバルブのような切替弁により、経路を切り替えることができる。切替弁は、手動で経路を切り替えるものでもよく、または、室内温度や外気温度に応じて自動で経路を切り替えるものであってもよい。
【0021】
排出経路20は、住宅1の壁に穴を穿ち配管を通すことで形成される。転送経路30は、天井裏や屋根裏に配管を通して形成される。
【0022】
また、転送経路30は、高温多湿空気の湿度を除去したり、におい成分を除去するためのフィルター50を備えていてもよい。これにより、洗濯乾燥機10から排出された空気を清らかな高温の空気として、他の部屋に送ることができる。フィルター50は、従来よく知られる、除湿フィルターや消臭フィルターなどを適用される。
【0023】
図3に示すように、洗濯乾燥機10は、筐体11と、筐体11に設けられた洗濯槽12と、洗濯槽12から高温多湿の空気を排気する排気路13と、電気式ヒータ14から乾燥用の高温の空気を洗濯槽12に供給する乾燥空気供給路15とを備える。電気式ヒータ14はヒートポンプとは異なり、電気エネルギーを熱に変換するものである。
【0024】
また、洗濯乾燥機10は、洗面所のような部屋に設けられた200V電源に接続される。洗濯乾燥機10は、乾燥時に、200V電源により電気式ヒータ14から熱風を発生させ、洗濯槽12に供給する。洗濯槽12では、洗濯により水分を含んだ衣類に熱風が供給されることで衣類が乾燥される。
【0025】
洗濯乾燥機10は、洗濯槽12に洗濯が完了した洗濯物がおかれた状態で乾燥空気供給路15から乾燥した高温の空気が供給され、洗濯物を乾燥させた高温多湿の空気が排気路13を介して排気される。
【0026】
衣類が乾燥する時間は、熱風の温度と風量に依存し、200V電源の電気式ヒータ14から生じる熱風は、80℃~100℃の温度で、洗濯槽12の容量に応じて、洗濯物が20分程度で乾燥するように設計される。
【0027】
洗濯槽12に供給された熱風は、水分を含んだ洗濯物を乾燥させ、洗濯乾燥機10の外部に排出される。このとき、熱風は水分を含んだ洗濯物を乾燥させることにより温度が低下し、湿度が上昇する。洗濯槽12から排出される熱風は、温度が40℃~60℃程度に低下し、湿度は80%以上となる。
【0028】
本実施形態において、住宅1の室内の温度が低い場合は、洗濯乾燥機10からの排気を、転送経路30を利用して洗面所以外の他の部屋に転送することで、室内を暖めることができる。このとき、転送経路30は、フィルター50を備えており、洗濯乾燥機10からの排気は除湿された後に室内に転送される。
【0029】
または、住宅1の室内の温度が高い場合は、洗濯乾燥機10からの排気を、排気経路20を利用して屋外に排出する。排気経路20と転送経路30のどちらを利用するかは、切替装置40により選択できる。
【0030】
本発明の実施形態において、排気システムSは、電気式ヒータ14から乾燥空気を洗濯槽12に供給する、いわゆる電気式ヒータ式の洗濯乾燥機10について説明した。しかし、排気システムSは、ヒートポンプ式の洗濯乾燥機10に適用されてもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、排気システムに利用できる。B64G5/00
【符号の説明】
【0033】
S 洗濯乾燥機の排気システム
10 洗濯乾燥機
11 筐体
12 洗濯槽
13 排気路
14 熱源
15 乾燥空気供給路
20 排気経路
30 転送経路
40 切替装置
50 フィルター

図1
図2
図3