(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029301
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】鶏卵カラザ由来添加剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20240228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240228BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240228BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240228BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q19/00
A23L33/18
A23L33/10
A23L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131485
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】522332869
【氏名又は名称】株式会社カンダ技工
(71)【出願人】
【識別番号】502015832
【氏名又は名称】日本ヘルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】中山 哉
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克翁
(72)【発明者】
【氏名】小杉 哲平
(72)【発明者】
【氏名】近 和也
【テーマコード(参考)】
4B018
4B042
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD72
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF10
4B018MF12
4B042AC04
4B042AD40
4B042AE01
4B042AG07
4B042AH09
4B042AP17
4B042AP27
4B042AP30
4C083AA071
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】分離されたカラザを有効利用すること。
【解決手段】 鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物であって、有効成分として含有させるための添加用途に用いられることを特徴とする添加剤である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物であって、有効成分として含有させるための添加用途に用いられることを特徴とする添加剤。
【請求項2】
皮膚の老化、肌荒れおよび/もしくは疾患の予防用の剤、または、皮膚の保湿用の剤、に含有させることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
食品添加用の組成物または経口剤に含有させることを特徴とする請求項1に記載の添加剤。
【請求項4】
鶏卵の卵殻成分、卵殻膜成分、卵白成分、または、卵黄成分も含ませた添加剤であって、当該成分も有効成分として含有させるものであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の添加剤。
【請求項5】
鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏卵のカラザ由来の添加剤に関し、特に、美容製品や健康関連製品等に有効成分として含有させる添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は、大きく、卵殻、卵殻膜、卵白、卵黄、および、カラザにより構成される。特に鶏卵は、一般消費者用に鶏卵としてそのまま流通するほか、食品製造業用などの業務用として割卵業者によって大量に割卵され、卵白のみ、卵黄のみといった荷姿でも流通する。
また、自社内で割卵装置を導入し、鶏卵を大量消費する場合もある。
【0003】
ここで、卵白、卵黄の他、卵殻や卵殻膜も適宜用途があり、自社で割卵し、卵黄しか使用しなくても、分離した卵白や卵殻は別途流通さるなどしている。すなわち、鶏卵は無駄なく使用されている。
【0004】
しかしながら、例えば、舌触りや食感が重視される食品分野などにおいては、カラザを分離するという要求仕様があり、この場合、カラザは特に単独での利用用途がなく、廃棄されてしまう、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-284935
【特許文献2】特開平02-069492
【特許文献3】特開2003-146895
【特許文献4】特開2013-316652
【特許文献5】特開2016-098206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、分離されたカラザを有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の添加剤は、鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物であって、有効成分として含有させるための添加用途に用いられることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の添加剤は、請求項1に記載の添加剤において、皮膚の老化、肌荒れおよび/もしくは疾患の予防用の剤、または、皮膚の保湿用の剤、に含有させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の添加剤は、請求項1に記載の添加剤において、食品添加用の組成物または経口剤用に含有させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の添加剤は、請求項1、2または3に記載の添加剤において、鶏卵の卵殻成分、卵殻膜成分、卵白成分、または、卵黄成分も含ませた添加剤であって、当該成分も有効成分として含有させるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物である。
【0012】
なお、請求項1~4に記載の発明においては、添加が副次的であることに限定されず、鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物が主成分となることを妨げない。
【0013】
カラザの乾燥粉末化に際しては、熱変成しない温度で乾燥すればよく、たとえば、フリーズドライその他の方法を挙げることができる。粉砕も定法により微粉末化すれば良い。
粒径としては、5μm~0.5mm程度とする例を挙げることができる。
加水分解物化も、適宜酵素分解するなどすれば良い。その後、液状のままの添加剤としてもよく、上述の様に乾燥粉末化してもよい。
【0014】
添加対象は、化粧品、医薬部外品、医薬品、いわゆる健康食品を含む飲食品などを挙げることができる。
製品態様も限定されず、たとえば、保湿剤の場合はクリーム状とし、健康食品の場合は錠剤とする例を挙げることができる。
鶏卵の卵殻成分、卵殻膜成分、白身成分、または、黄身成分については、これらが主成分となった製品であることを妨げない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カラザを有効利用でき、皮膚の老化や肌荒れ対策品、皮膚疾患の予防品、皮膚の保湿品へ添加することができる。また、錠剤などとして健康食品とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】カラザのアミノ酸含有量、および、シアル酸の含有量について示した、卵殻膜との比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<カラザ含有微分末>
本実施の形態のカラザ由来の添加剤は、鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物である。
カラザは鶏卵(割卵前)のとがった方に2本、反対側(気室側)に1本備わり、分離方法にもよるが、鶏卵Mサイズ(58g~64g)1個につき0.8g~1.7g程度の重量である。
【0018】
乾燥粉末化は、特に限定されないが、例えば、カラザ1000gを温風乾燥機中で厚み3mm以内として平板上に広げ(このとき適宜前処理としてミキサーで攪拌細分化しておいてもよい)、50℃で18時間送風すると鱗片化し、これを適宜ミルや粉砕機で粉末化すれば得られる。
粉末の粒径は、添加対象にもよるが、平均粒径が5μm~0.5mm程度とすることができる。経口剤用や食品添加用組成物に添加する際には、消化吸収効率を考慮し、たとえば、平均粒径が6μm以下であり最大粒子径が20μm以下とすることができる。
なお、変質を避けるため、温度は60℃までとするのが好ましい。
このほか、冷風乾燥機にて乾燥粉砕しても良いし、定法のフリーズドライにより乾燥粉末化してもよい。
【0019】
加水分解も特に限定されないが、分散性や、溶解性を高める程度に分解する。例えば、当該分散液にアルカリを添加してアルカリ水溶液にし、加熱下に行う。水の量は、カラザ1質量部(乾物換算)に対して、5~9質量倍が好ましい。カラザの加水分解に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液を挙げることができる。カラザを加水分解する際のアルカリ水溶液のpHは、10~14が好ましい。
当該分散液にプロテアーゼを添加して酵素分解を行う。水の量は、カラザ1質量部(乾物換算)に対して、5~9質量倍が好ましい。カラザの加水分解に用いる酵素は、アルカリ性プロテアーゼや中性プロテアーゼなどのプロテアーゼが挙げられる。カラザを加水分解する際のpHは、6~9が好ましい。
【0020】
また、本実施の形態の添加剤には、鶏卵の卵殻成分、卵殻膜成分、卵白成分、または、卵黄成分が含まれていてもよい。すなわち、本実施形態の添加剤は、カラザ成分のみを含む形態(第一形態)であっても、卵殻成分、卵殻膜成分、卵白成分、または、卵黄成分も含む形態(第二形態)であってもよい。第一形態であっても第二形態であっても、美容製品や健康関連製品等、各種の用途に幅広く利用できる。なお、第一形態でも第二形態でも、製造過程等において混入する、製品品質に影響のない不純物成分が含まれることは許容される。
【0021】
本実施の形態の添加剤の添加先ないし用途としては特に限定されないが、経口摂取される用途、すなわち、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤などの経口剤用、あるいは、菓子類、健康食品、保存食品、加工食品などの食品添加用などに利用することが好ましい。
同様に、皮膚の老化、肌荒れ、皮膚や肌の疾患の予防薬ないしクリーム・乳液の類い、皮膚の保湿用クリームなどに利用することが好ましい。
また、必要に応じて、毛髪への塗布用、睫毛への塗布用および眉毛への塗布用などにも利用してもよい。
【0022】
なお、カラザのアミノ酸含有量、および、シアル酸の含有量について、卵殻膜との比較表を
図1に示す。
【0023】
図示したように、カラザは、必須アミノ酸であるリシン、フェニルアラニン、チロシンについて、卵殻膜より2倍~3倍多く、絶対量としても多く含有していることがわかる。
特に、リシンは、疲労回復や集中力を高めるのに効果があるとされ、フェニルアラニンは、気分の落ち込みや無気力を緩和し、記憶力を向上させるのに効果があるとされ、チロシンは、集中力・記憶力の向上、白髪予防に効果があるとされている。
いずれも、必須アミノ酸であって恒常的に摂取可能であり、健康食品等としての適用や食品添加物として好適であるといえる。
【0024】
また、アラニンは卵殻膜に比して2倍程度含まれる非必須アミノ酸であり、アセトアルデヒドの分解を促進させる作用がある。したがって、肝機能を補助する観点から、こちらも健康食品等としての適用や食品添加物として好適であるといえる。
【0025】
また、シアル酸(n-アセチルノイライミン酸)は、カラザ中には、卵殻膜中に比して10倍以上も多く含有している。そしてシアル酸は、シミ、しわ、たるみなどを予防し、いわゆる美肌効果があるため、保湿剤やスキンケア用品への添加剤として好適であるといえる。
【0026】
すなわち、従来、卵殻膜を利用した美容製品や健康関連製品等が存在するが、本発明品は、同量含有(同量添加)にて、同等以上の作用効果が期待できるといえる。
【0027】
(錠剤)
以下に、本実施の形態の添加剤を用いた錠剤について説明する。
錠剤に含まれるカラザの乾燥微粉(上述の第一形態)、または、カラザの乾燥微粉と他の成分(上述の第二形態)の含有量は特に制限されない。しかしながら、造粒および打錠が円滑に行われ、錠剤を経口で摂取(服用)した際の有効成分の吸収の観点から、錠剤の全質量に対して、10質量%~40質量%の割合で含有することが好ましい。
【0028】
含有量を10質量%以上とすることにより、多量の錠剤を摂取する必要がなくなり、40質量%以下とすることにより、造粒および打錠が容易となる。
【0029】
錠剤には、各種の添加剤として、たとえば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を適宜添加できる。
【0030】
賦形剤は、有効成分が少ない場合に取扱いに適当な量となるように添加する。賦形剤としては、公知の賦形剤を適宜利用できるが、化工澱粉および乳糖の少なくとも1種が用いられることが好ましい。賦形剤の含有量は、賦形性の観点から第一又は第二形態の質量に対して0.5倍~3倍であることが好ましい。
化工澱粉としては、焙焼デキストリン(白色デキストリン、黄色デキストリンなど)などのデキストリン類、酸化澱粉(次亜塩素酸酸化澱粉など)、低粘性変性澱粉(酸浸漬澱粉、酵素処理澱粉など)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、化工澱粉としては、デキストリンが好ましく用いられる。
【0031】
また、賦形剤として、化工澱粉と乳糖とを併用する場合は、化工澱粉:乳糖の使用割合(質量比)が、1:5~5:1であることが好ましい。
【0032】
結合剤は、錠剤原料を構成する粉体同士を結着させる目的で用いられる添加剤である。結合剤としては、公知の結合剤が適宜利用できるが、たとえば、デンプン糊、アラビアゴム糊、ヒドロキシプロピルセルロースなどを挙げることができる。
【0033】
崩壊剤は、唾液などの水分を吸収することで膨張するなどして錠剤を崩壊させることで、第一形態または第二形態の有効成分の放出を容易にするために添加される添加剤である。崩壊剤としては、公知の崩壊剤が適宜利用できるが、たとえば、セルロース類などを用いることができる。なお、デンプンは崩壊剤としての機能も有する。
【0034】
滑沢剤は、錠剤原料を構成する粉体の流動性を高めて、打錠時の圧縮成形を容易とする目的で用いられる添加剤である。滑沢剤としては、公知の滑沢剤が適宜利用できるが、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステルなどのワックス類やタルク、ビタミンCなどを挙げることができる。
【0035】
錠剤には、カラザその他の有効成分の体内での吸収を速め、健康食品等としての利用のために、または、皮膚の老化や肌荒れをより効果的に防止して皮膚を滑らかで、柔らかく、シットリとした状態にするために(また、湿疹、炎症、ヤケドなどの皮膚疾患の予防および/または治癒効果をより高めるために)、ベータカロチン、ビタミン類およびローヤルゼリーのうちの少なくも1種を含有させてもよい。
【0036】
錠剤中に含有させるビタミンの種類は特に制限されず、人が摂取可能なビタミンであればいずれでもよく、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン類、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンH、ビタミンLなどの水溶性ビタミン類などを挙げることができる。
ベータ-カロチンおよびビタミン類の含有量は、ヒトが摂取するのに適するそれぞれのビタミンの量に応じて適宜決めることができる。
【0037】
また、ローヤルゼリーの含有量は、本実施形態の錠剤の上記した作用効果を十分に発揮させ得る点、コストなどの点から、カラザ乾燥質量に対して0.1~1.5質量倍であることが好ましい。
【0038】
また錠剤は、変質や分解を防止し、表面の耐傷つき性の向上などの目的で、コーティング皮膜で覆われていることが好ましい。コーティング皮膜は、錠剤のコーティング皮膜として従来から用いられているのと同様の皮膜形成材料から形成することができる。
【0039】
このほか、経口での摂取をし易くするために、糖衣で覆われていることが好ましい。その際の糖衣としては、錠剤に従来から用いられている糖衣であればいずれでもよい。必要に応じて、適当な色に着色してあってもよい。また、着色後に、艶だし処理を行ってもよい。
【0040】
錠剤の大きさは特に制限されず、適宜決めることができるが、一般には、直径が平面視において約7~10mm程度の円形や楕円形の錠剤とするのが、取り扱い性、服用のし易さなどの点から好ましい。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、従来は廃棄されていた、卵黄や卵白から分離されたカラザを有効活用でき、卵殻由来のサプリメントその他健康食品、食品添加物、保湿クリームその他のスキンケア用品に代替ないし追加添加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
なお、鶏卵のカラザの乾燥粉末または加水分解物は、鶏卵由来であって人体との親和性も高く、上述の用途に限定されず適宜用途を拡大して利用することができる。