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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029302
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電動操作機
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A01G25/00 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131487
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】392029384
【氏名又は名称】株式会社大和バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】青谷 健二
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電装部への浸水を適切に防止できる電動操作機を提供する。
【解決手段】電動操作機16は、側壁32よび天壁34が気密構造を有する本体ケース30と、本体ケース内に設けられる電装部(制御盤40等)とを備える。また、本体ケース内には、水と反応することで気体を発生させる気体発生体72,74と、気体発生体を保持する保持部76とを有する気体発生装置70が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される電動操作機であって、
筒状の側壁と前記側壁の上部を封止する天壁とを含み、前記側壁および前記天壁が気密構造を有する本体ケース、
前記本体ケース内に設けられる電装部、および
水と反応することで気体を発生させる気体発生体と前記気体発生体を保持する保持部とを有し、前記本体ケース内に設けられる気体発生装置を備える、電動操作機。
【請求項2】
前記気体発生体の少なくとも一部は、前記電装部よりも下方の高さ位置に配置される、請求項1記載の電動操作機。
【請求項3】
前記気体発生体は、上下方向に複数段に配置される、請求項1または2記載の電動操作機。
【請求項4】
前記保持部は、縦筒部を有し、
前記気体発生体は、前記縦筒部内に配置される、請求項1または2記載の電動操作機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動操作機に関し、特にたとえば、屋外に設置される電動操作機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動操作機(電動アクチュエータ)の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の電動操作機は、側壁および天壁が気密構造を有する本体ケース、電力によって駆動されるモータ、モータの駆動を制御する制御部、モータからの駆動力によって回転するギア、およびギアと共に回転する回転軸を備える。そして、少なくともモータおよび制御部は、洪水時における本体ケース内への最大浸水水位に基づいて求められる下限高さ位置よりも上方において、本体ケース内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-193914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、電動操作機が水没した場合でも、側壁および天壁を気密構造とした本体ケース内に残された空気によって、モータおよび制御部などの電装部(電気部品)が水に濡れてしまうことを防止できる。しかしながら、これだけでは電装部への浸水を確実に防止できるとは言えず、電装部への浸水をより適切に防止できる電動操作機が望まれる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、電動操作機を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、電装部への浸水を適切に防止できる、電動操作機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、屋外に設置される電動操作機であって、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含み、側壁および天壁が気密構造を有する本体ケース、本体ケース内に設けられる電装部、および水と反応することで気体を発生させる気体発生体と気体発生体を保持する保持部とを有し、本体ケース内に設けられる気体発生装置を備える、電動操作機である。
【0008】
第1の発明では、電動操作機は、弁装置などが有する変位機構を作動させる装置であって、屋外に設置される。電動操作機は、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含む本体ケースを備える。本体ケースの側壁および天壁は、気密構造を有している。この本体ケース内には、制御部などの電装部が設けられる。また、本体ケース内には、気体発生装置が設けられる。気体発生装置は、水と反応することで二酸化炭素などの気体を発生させる気体発生体と、気体発生体を保持する保持部とを備える。
【0009】
第1の発明によれば、洪水などが発生して電動操作機が水没し、本体ケース内に浸水があったとしても、気体発生体が本体ケース内に浸入した水と反応して気体を発生させることで、本体ケース内の気圧(内圧)を高めることができるので、電装部への浸水を適切に防止できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、気体発生体の少なくとも一部は、電装部よりも下方の高さ位置に配置される。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、気体発生体は、上下方向に複数段に配置される。
【0012】
第3の発明によれば、本体ケース内への水の浸入速度が速い場合などにも適切に対応でき、気体発生による防水効果をさらに高めることができる。
【0013】
第4の発明は、第1または第2の発明に従属し、保持部は、縦筒部を有し、気体発生体は、縦筒部内に配置される。
【0014】
第4の発明によれば、気体発生体は縦筒部内を上昇してくる水と反応するので、本体ケース内に浸入した水の上面(水面)の上下変動の影響を抑えることができ、安定して気体を発生させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、簡単な構成で、電装部への浸水を適切に防止できる。
【0016】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施例である電動操作機を備える圃場水管理システムを示す図である。
図2】電動操作機の内部構造を示す図である。
図3】操作機本体を示す図である。
図4】取付台を示す図である。
図5】電動操作機の気体発生装置周辺部分を示す図である。
図6】この発明の他の実施例の電動操作機を備える弁装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、この発明の一実施例である電動操作機16は、弁装置などが有する変位機構を作動させる装置であって、屋外の水没する可能性のある場所に設置される。この実施例の電動操作機16は、圃場用の電動操作機(電動アクチュエータ)であって、圃場100に設置される給水栓12および落水口14などの送水制御装置に取り付けられて、送水制御装置が有する変位機構を作動させる。詳細は後述するように、電動操作機16は、制御盤40などの電装部が収容される本体ケース30を備え、この本体ケース30内には、さらに気体発生装置70が収容される。
【0019】
図1に示すように、電動操作機16は、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う圃場用設備である圃場水管理システム10に用いられる。圃場水管理システム10は、給水栓12と落水口14とを備え、給水栓12および落水口14のそれぞれに対して、電動操作機16が取り付けられる。
【0020】
図示は省略するが、圃場100には、圃場水位を検出する超音波センサ等の水位センサ、気温や水温を検出する各温度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ等のセンサ端末が適宜設けられる。センサ端末は、配線などを介して電動操作機16と接続される。
【0021】
また、この実施例では、圃場水管理システム10は、畦畔102によって区画された複数の耕作区を含むシステムとなっている。給水栓12および落水口14のそれぞれは、各耕作区に設置され、これらに取り付けられた各電動操作機16は、特定小電力無線規格(920MHz帯)に従った無線通信方法によって中継機(親機)と無線通信可能に接続される。そして、各電動操作機16は、この中継機およびネットワーク上に設けられた管理サーバ等を経由して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。ただし、電動操作機16は、中継機を介さずに、管理サーバまたは遠隔操作端末などの外部機器と無線通信を行うようにしてもよい。
【0022】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各電動操作機16で取得された情報(給水栓12のバルブ開度および落水口14の排水口高さなどの給水栓12および落水口14の状態に関する情報、およびセンサ端末から受信した圃場水位などのセンサ情報など)を管理サーバの一例であるクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末からクラウドサーバにアクセスすることで、各電動操作機16で取得された情報を確認し、遠隔操作端末を用いて各電動操作機16を遠隔操作することで、圃場100の水管理を行うことができる。
【0023】
給水栓12は、用水パイプライン106から耕作区(圃場100)への給水を制御するための給水装置であって、弁軸および弁体などを含む変位機構を有する。この実施例では、一般的に広く普及している、弁軸の軸回転に伴い弁軸及び弁体が上下動する方式の給水栓12を用いている。このような給水栓12は、畦畔102に設けられた給水桝104内に配置され、畦畔102の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部に取り付けられる。そして、給水栓12には、電動操作機16が取り付けられ、電動操作機16によって給水栓12の変位機構(弁軸および弁体)が作動される。
【0024】
一方、落水口14は、圃場100からの排水を制御するための排水装置であって、仕切体などを含む変位機構を有する。この実施例では、水位設定機能を有する落水口14を用いている。簡単に説明すると、落水口14は、上端開口が排水口として機能する円筒状の仕切体18を備えており、この仕切体18が上下動することで、排水口を任意の高さに調整することが可能である。このような落水口14は、畦畔102に設けられた排水桝110内に配置され、排水路112まで延びる排水管114の上流側端部に取り付けられる。そして、落水口14には、電動操作機16が取り付けられ、電動操作機16によって落水口14の変位機構(仕切体)が上下動される。ただし、落水口14に電動操作機16を取り付ける際には、電動操作機16の回転軸58(図2参照)の回転力を上下方向(軸方向)の力に変換して仕切体に伝達可能なアダプタ20が用いられる。
【0025】
図1と共に図2を参照して、電動操作機16は、屋外に設置される電動操作機であって、操作機本体22と、送水制御装置に操作機本体22を取り付けるための取付台24とを備える。
【0026】
図3に示すように、操作機本体22は、本体ケース30を備える。本体ケース30は、円筒状の側壁32と、側壁32の上端部を封止する円板状の天壁34とを備え、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂またはアルミニウム等の金属によって形成される。本体ケース30の内径は、たとえば154[mm]である。この本体ケース30の上には、太陽電池パネル36が着脱可能に取り付けられる。太陽電池パネル36は、金属製の保持体38によって所定角度となるように支持される。
【0027】
また、本体ケース30の内部には、制御盤40、アンテナ42、蓄電池44、モータ46およびメインギア48等が収容される。つまり、本体ケース30内に収容されるコンポーネントには、制御盤40、蓄電池44およびモータ46等の電装部(電気部品)が含まれる。
【0028】
制御盤40には、図示は省略するが、CPUおよびメモリ等を含む制御部、および他の機器と無線通信を行うための無線通信部(図示せず)などが設けられる。制御部には、太陽電池パネル36、蓄電池44、モータ46、無線通信部、操作パネル62およびセンサ端末などが電気的に接続される。CPUは、電動操作機16の全体制御を司り、モータ46等の駆動を制御する。メモリは、ROM、RAMおよびHDDなどを包括的に示したものであり、電動操作機16の動作を制御する制御プログラムを記憶したり、CPUが動作する際のワークエリアとして機能したりする。また、無線通信部は、アンテナ42と接続され、アンテナ42を介して中継機などの外部機器と無線通信を行う。
【0029】
蓄電池44は、太陽電池パネル36によって発電された電力を蓄電する。モータ46は、蓄電池44に蓄えられた電力によって駆動される。このモータ46の出力軸の先端部には、小ギア50が設けられており、メインギア48は、この小ギア50と連結されることで、モータ46からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0030】
メインギア48は、両ボス型のギアであり、上下方向に延びる円筒状の軸部(ボス部)と、外周面にギア歯が形成される円板状のギア部とを有する。本体ケース30の側壁32の下端部には、本体ケース30の底壁にもなる円板状の第1軸受52が設けられる。また、第1軸受52の上方には、複数の支持部54によって支持される円板状の第2軸受56が設けられる。そして、メインギア48の軸部の両端部は、これら第1軸受52および第2軸受56によって回転可能に保持される。
【0031】
メインギア48の軸部には、略円柱状の回転軸58が挿通される。この回転軸58の下端部には、給水栓12の弁軸またはアダプタ20の連結軸などと回転不可に連結される連結部58aが形成される。また、メインギア48の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝が形成され、回転軸58の外周面には、キー溝と嵌合される滑りキー58bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸58は、メインギア48が回転すると共に回転し、かつメインギア48の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。また、回転軸58の上端部には、鍔状の抜け止め部58cが設けられる。さらに、メインギア48のギア部の上面と第2軸受56の下面との間、およびメインギア48のギア部の下面と第1軸受52の上面との間には、スラストベアリング60が設けられる。
【0032】
また、本体ケース30の外側面には、使用者が電動操作機16を直接操作するための操作パネル62が設けられる。操作パネル62には、主電源スイッチ、上昇ボタン、下降ボタン、および電動操作機16の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が適宜設けられる。この操作パネル62には、センサ端末から延びる配線を接続するための接続端子なども設けられる。
【0033】
図4に示すように、取付台24は、円筒状の側壁部64と、側壁部64の下端部に設けられる底板部66とを含み、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂またはアルミニウム等の金属によって形成される。
【0034】
側壁部64には、回転軸58などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口64aが形成される。また、側壁部64の上端部には、周方向に所定間隔で並ぶ複数の孔64bが形成されており、この孔64bを用いて本体ケース30の下端部に取付台24がボルト止めされる(図2参照)。一方、底板部66の中央部には、給水栓12の弁軸などが挿通される通孔66aが形成される。また、底板部66には、通孔66aの周囲に、周方向および径方向に並ぶ複数の孔66bが形成されており、この孔66bを用いて給水栓12の上面などに取付台24(延いては電動操作機16)がボルト止めされる。
【0035】
図3に戻って、この実施例では、本体ケース30は、側壁32および天壁34が気密構造を有するように形成される。一方、本体ケース30の下面側(底壁側)は気密構造となっていない。これは、電動操作機16が給水栓12の弁軸などと連結される回転軸58を備えており、回転軸58のような駆動部分が本体ケース30から突出する部分(貫通部分)を長期間に亘って気密構造とすることは困難であるからである。また、本体ケース30内で発生した結露水などを排出するための孔を本体ケース30に形成しておくが好ましいからである。
【0036】
このように側壁32および天壁34を気密構造とすることにより、本体ケース30の下面側(底壁側)が気密構造となっていなくても、電動操作機16が水没したときに本体ケース30内の空気は抜けなくなるので、本体ケース30内への水の浸入をある程度は防ぐことができる。つまり、電動操作機16が水没しても本体ケース30内に空気を溜めておくことができるので、水圧と本体ケース30内の気圧(内圧)とが釣り合う一定の浸水レベルで浸水を止めることができる。したがって、水没すると故障する可能性の高い制御盤40、蓄電池44およびモータ46等の電装部(電気部品)については、その浸水レベルよりも上方に配置しておけば、洪水時などに電動操作機16が水没しても、電装部が水に濡れてしまうことを防止できる。
【0037】
ただし、この発明における「気密」とは、本体ケース30が水没しても、その部分から本体ケース30内の空気が漏れない程度に、耐用期間中は気密性および水密性が保たれることを言う。また、この発明における本体ケース30の下端Xとは、側壁32の気密構造を有する部分の下端を意味し、側壁32に気密性を有さない状態の連結部または孔などがある場合には、連結部または孔などの上縁位置が本体ケース30の下端Xとなる。この実施例では、側壁32の下端部に底壁(第1軸受52)をボルト止めするために形成された貫通孔32aの上縁位置が本体ケース30(側壁32)の下端Xとなる。この実施例の本体ケース30の下端Xから天壁34の下面までの長さ、つまり本体ケース30の内部空間の高さ寸法は、たとえば399[mm]である。
【0038】
ここで、上記のように側壁32および天壁34を気密構造とすることによって、仮に電動操作機16が水没しても、電装部への浸水を基本的には防止することができる。しかしながら、水没時に本体ケース30内の既存空気の一部が意図せず抜けてしまった場合や、水没時における電動操作機16の周囲の水面高さが想定していたよりも高い場合などには、本体ケース30内への浸水量が大きくなり電装部が浸水してしまう恐れがある。
【0039】
そこで、この実施例では、本体ケース30内に浸入した水と反応することで気体を発生させる気体発生体72,74を有する気体発生装置70を本体ケース30内の下部空間に設けるようにした。そして、本体ケース30内への浸水が生じた場合には、本体ケース30内で気体を発生させて本体ケース30の内圧を高めることで、電装部への浸水をより確実に防止できるようにした。以下、気体発生装置70の構成について説明する。
【0040】
図3と共に図5を参照して、気体発生装置70は、気体発生体72,74と、気体発生体72,74を保持する保持部76とを備え、本体ケース30内の下部空間に設置される。この実施例では、気体発生装置70は、第2軸受56の鍔状部の上面に取り付けられる。
【0041】
気体発生体72,74は、水と反応することで気体を発生させる物質であり、球状などの所定形状に成形したものが用いられる。ただし、気体発生体72,74は、粉体状のまま用いることもでき、この場合には、不織布などを用いて作成した通水性および通気性を有する収容袋内に気体発生体72,74を収容しておくとよい。
【0042】
気体発生体72,74が発生させる気体は、水に溶け難い気体であれば特に限定されないが、安全性およびコストなどを考慮して、二酸化炭素(炭酸ガス)であることが好ましい。二酸化炭素を発生させる気体発生体72,74としては、ナトリウムおよびカリウム等のアルカリ金属の炭酸塩と、クエン酸およびリンゴ酸などの有機酸とを用いるとよい。この実施例では、気体発生体72,74として、炭酸水素ナトリウムとクエン酸とを混合させて球状に成形した錠剤状(タブレット状)の気体発生体が用いられる。
【0043】
また、この実施例では、気体発生体72,74は、上下方向の2段に分けて配置される。すなわち、気体発生体72,74は、下側に配置される第1気体発生体72と、上側に配置される第2気体発生体74とを含む。この実施例の第1気体発生体72は、本体ケース30内に浸入した水と最初に反応するメインの気体発生体である。一方、第2気体発生体74は、本体ケース30内への水の浸入速度が速い場合や、さらに大きな浸水に対応するために配置したサブの気体発生体である。このように、気体発生体72,74を上下方向に複数段(この実施例では2段)に配置しておくことで、気体発生による防水効果をさらに高めることができる。
【0044】
気体発生体72,74の配置高さは、特に限定されないが、気体発生体72,74の少なくとも一部は、電装部の下面位置Yよりも下方の高さ位置に配置されることが好ましい。この実施例では、モータ46の下面が電装部の下面位置Yとなり、第1気体発生体72がこの電装部の下面位置Yよりも下側に配置される。これにより、電装部に浸水が到達する前に、浸水を適切に止めることができる。ただし、第1気体発生体72および第2気体発生体74の双方を電装部の下面位置Yよりも下側に配置することもできる。
【0045】
保持部76は、気体発生体72,74を保持するための部材である。保持部76は、第1気体発生体72が収容される第1縦筒部78と、第1縦筒部78の上部に連結されて第2気体発生体74が収容される第2縦筒部80とを備える。これら第1縦筒部78および第2縦筒部80の上部には、第1通気口78aおよび第2通気口80aがそれぞれ形成される。また、第1縦筒部78の下端部には、第1気体発生体72が載置される第1支持板82が設けられ、第2縦筒部80の下端部には、第2気体発生体74が載置される第2支持板84が設けられる。さらに、第2縦筒部80の上端部には、天板86が設けられる。第1支持板82、第2支持板84および天板86のそれぞれは、メッシュ板などの通水性および通気性を有する材料によって形成される。
【0046】
また、第1縦筒部78の下端部には、外方に突出する鍔状の取付部88が形成される。この取付部88を第2軸受56の鍔状部にボルト止めすることで、本体ケース30内に気体発生装置70が設置される。また、第2軸受56の鍔状部には、第1縦筒部78の内部空間と連通する通水口56aが形成される。
【0047】
気体発生体72,74の量は、たとえば、予め設定した浸水許容高さ(本体ケース30内への許容可能な浸水高さ)に応じて調整するとよい。この際、浸水許容高さを電装部の下面位置Yに設定して、本体ケース30内の既存空気がこの浸水許容高さまで圧縮されたと仮定したときの内圧の気体で、本体ケース30内を満たすことのできる量とすることが好ましい。これにより、浸水許容高さ(電装部の下面位置Y)まで浸水があった場合でも、本体ケース30内に浸入した水を発生させた気体によって適切に押し出すことができるので、電装部への浸水を確実に防止できる。また、メインギア48、小ギア50およびスラストベアリング60等の動力伝達部の長時間の浸水を防止できる。
【0048】
この実施例では、メインの気体発生体である第1気体発生体72(炭酸水素ナトリウムおよびクエン酸)の量が浸水許容高さに応じた量に設定される。具体的に説明すると、この実施例では、本体ケース30の内部空間の高さ寸法は、たとえば39.9[cm]であり、本体ケース30の下端Xから電装部の下面位置Y(浸水許容高さ)までの高さ寸法は、たとえば5.8[cm]である。また、本体ケース30の内径は、本体ケース30の全長に亘ってほぼ一定であり、たとえば154[cm]である。したがって、本体ケース30内の既存空気が電装部の下面位置Yまで圧縮されたときの本体ケース30の内圧は、約1.17気圧となる。本体ケース30内の全体をこの気圧とするためには、大気圧下で約8700[cm]の気体が必要であるので、第1気体発生体72によって発生させるべき二酸化炭素の体積(必要体積-既存空気の体積)は、約1260[cm]と算出される。つまり、第1気体発生体72によって約0.06[mol]の二酸化炭素を発生させれば、本体ケース30内の全体を1.17気圧の気体で満たすことができる。
【0049】
ここで、クエン酸と炭酸水素ナトリウムとの反応式に基づくと、1[mol]の二酸化炭素を発生させるのには、1/3[mol]のクエン酸と1[mol]の炭酸水素ナトリウムとが必要である。したがって、0.06[mol]の二酸化炭素を発生させるためには、理論上は、0.02[mol](つまり約3.6[g])のクエン酸と、0.06[mol](つまり約4.8[g])の炭酸水素ナトリウムとが必要であると算出できる。
【0050】
また、第1気体発生体72の必要量を算出する際には、第1気体発生体72の反応効率を考慮することが好ましい。この発明者らによる検証実験の結果、本体ケース30内に浸入した水と炭酸水素ナトリウムおよびクエン酸とを反応させたときの反応効率は、約70%であることが分かった。このため、この実施例では、算出した理論値に反応効率を加味し、第1気体発生体72として、5.2[g]のクエン酸と6.8[g]の炭酸水素ナトリウムとを混合したものを用いている。なお、第2気体発生体74の量は、第1気体発生体72の量と同程度にしておくとよい。
【0051】
ただし、気体発生体72,74の量は、電装部への浸水を防止できる量であれば、特に限定されるものではない。たとえば、電動操作機16の周囲の水面高さ(水没高さ)が、本体ケース30の上面位置となったとき、或いは洪水時に想定される最大水位になったときに生じる本体ケース30内へ浸水高さまで既存空気が圧縮されたと仮定したときの内圧の空気で、本体ケース30内を満たすことのできる量とすることもできる。
【0052】
このような気体発生装置70を備える電動操作機16では、洪水などが発生して電動操作機16が水没し、本体ケース30内に下面側から浸水があったとしても、第1気体発生体72が本体ケース30内に浸入した水と反応して気体(二酸化炭素)を発生させて、本体ケース30内の気圧(内圧)を高めることで、電装部への浸水が適切に防止される。また、本体ケース30の下部に配置されるメインギア48等の動力伝達部が一旦浸水しても、発生させた気体によって本体ケース30外に水を押し出すことができるので、動力伝達部が長時間水に浸かってしまうことが防止される。
【0053】
また、気体発生体を第1気体発生体72および第2気体発生体74の2段に配置しているので、本体ケース30内への水の浸入速度(浸水速度)が速い場合などにも適切に対応でき、気体発生による防水効果をさらに高めることができる。さらに、第1気体発生体72および第2気体発生体74を第1縦筒部78および第2縦筒部80に配置し、第1縦筒部78および第2縦筒部80内を上昇してくる水と、第1気体発生体72および第2気体発生体74とを反応させる構造としたので、本体ケース30内に浸入した水の上面(水面)の上下変動の影響を抑えることができ、安定して気体を発生させることができる。
【0054】
以上のように、この実施例によれば、水と反応することで気体を発生させる気体発生体72,74を有する気体発生装置70を本体ケース30内に設けるという簡単かつ安価な構成で、電装部への浸水を適切に防止できる。また、本体ケース30内に一旦水が浸入しても、浸入した水を本体ケース30外に直ちに押し出すことができるので、本体ケース30内の装置ないし部品が長時間水に浸かってしまうことを防止できる。
【0055】
なお、上述した気体発生装置70の具体的構造は、単なる一例であり、気体発生体72,74の配置態様および保持部76の形状などは、適宜変更可能である。
【0056】
たとえば、上述の実施例では、気体発生体を第1気体発生体および第2気体発生体の2段に配置しているが、気体発生体は、1段配置でもよい。つまり、第2気体発生体は、必ずしも必要ではない。また、気体発生体は、3段以上の複数段に配置することもできる。さらに、気体発生体は、横方向に分けて配置することもできるし、複数の気体発生装置を電動操作機の本体ケース内に設けることもできる。
【0057】
また、上述の実施例では、圃場で用いられる電動操作機を一例として挙げたが、電動操作機は、圃場用に限定されず、電動操作機の具体的構成も適宜変更可能である。すなわち、この発明に係る気体発生装置が適用される電動操作機は、本体ケース内に電装部(電気部品)を有し、屋外に設置される電動操作機であればよい。たとえば、図6に示すように、電動操作機150は、工業用の回転弁152(バタフライバルブ)に取り付けられる電動操作機であってもよい。
【0058】
簡単に説明すると、この発明の他の実施例である電動操作機150は、連結部材154を介して回転弁152に取り付けられる。電動操作機150は、側壁および天壁が気密構造を有する本体ケース160を備え、この本体ケース160内には、制御部およびリミットスイッチ等を含む電装部162が設けられる。また、電動操作機150は、本体ケース160の下面から下方に突出ように設けられる回転軸164を備える。この回転軸164は、回転弁152のシャフトと連結される。そして、本体ケース160の内部には、第1気体発生体72および第2気体発生体74を含む気体発生体72,74と、気体発生体72,74を保持する保持部76とを備える気体発生装置70が設けられる。
【0059】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 …圃場水管理システム
12 …給水栓
14 …落水口
16,150 …電動操作機
30,160 …本体ケース
40 …制御盤
44 …蓄電池
46 …モータ
48 …メインギア
58 …回転軸
70 …気体発生装置
72,74 …気体発生体
76 …保持部
78,80 …縦筒部
100 …圃場
図1
図2
図3
図4
図5
図6