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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029305
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131490
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 晶
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】高野 賢一
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD00
(57)【要約】
【課題】汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる水洗大便器を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、ボウル部と、トラップ管路と、第1吐水口と、第1リム導水路と、第2吐水口と、第2リム導水路とを備える。ボウル部は、汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、汚物受け面の上縁部において上方へ延びているリム部とを有する。トラップ管路は、ボウル部の底部から延びており、汚物受け面で受けた汚物を排出する。第1吐水口は、汚物受け面上を旋回する洗浄水の第1の流れを形成する。第1リム導水路は、第1吐水口への洗浄水が流れる。第2吐水口は、第1の流れと合流する洗浄水の第2の流れを形成する。第2リム導水路は、第2吐水口への洗浄水が流れる。第2リム導水路は、洗浄水の流れ方向を逆方向へ変更する屈曲部と、屈曲部よりも下流側において第2リム導水路の底面が下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部とを有する。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、前記汚物受け面の上縁部において上方へ延びているリム部とを有するボウル部と、
前記ボウル部の底部と連通するとともに前記底部から延びており、前記汚物受け面で受けた汚物を排出するトラップ管路と、
前記リム部へ向けて洗浄水を吐水し、前記汚物受け面上を旋回する洗浄水の第1の流れを形成する第1吐水口と、
前記第1吐水口の上流側に位置し、前記第1吐水口へ供給される洗浄水が流れる第1リム導水路と、
前記リム部へ向けて洗浄水を吐水し、前記第1の流れと合流する洗浄水の第2の流れを形成する第2吐水口と、
前記第2吐水口の上流側に位置し、前記第2吐水口へ供給される洗浄水が流れる第2リム導水路と
を備え、
前記第2リム導水路は、前記第2吐水口へ供給される洗浄水の流れ方向を逆方向へ変更する屈曲部と、前記屈曲部よりも下流側において前記第2リム導水路の底面が下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部とを有する
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記屈曲部の下流側における直後に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記第2リム導水路は、前記傾斜部よりも下流側に、前記傾斜部よりも傾斜角度が水平に近い平坦部をさらに有する
ことを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記第2リム導水路は、前記第2リム導水路の天面のうち前記屈曲部の下流側の天面が前記屈曲部の上流側の天面よりも低い
ことを特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記汚物受け面および前記リム部の間を接合し、前記第2吐水口の前記第1の流れの流れ方向における直前において前記第1の流れの上流側から下流側へかけて小さくなる曲率で湾曲している凹面を有する接合部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、汚物受け面の上縁部において上方へ延びているリム部とを有するボウル部を備える水洗大便器において、汚物受け面上を旋回する第1旋回流を形成するよう洗浄水を吐水する第1吐水口と、第1吐水口へ供給される洗浄水が流れる第1リム導水路と、第1旋回流と合流する第2旋回流を形成するよう洗浄水を吐水する第2吐水口と、第2吐水口へ供給される洗浄水が流れる第2リム導水路とを備えるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-142100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の水洗大便器では、たとえば、一次水圧を便器本体へ供給する、いわゆるフラッシュバルブ便器のような第1吐水口から吐出される洗浄水の水勢が大きなものの場合、第2吐水口からの洗浄水も大きな水勢で吐水されるため、汚物受け面の第2吐水口の下方領域において洗浄水が下方へ流れにくいことがある。このため、洗浄水が下方へ流れにくい汚物受け面の第2吐水口の下方領域には洗い残しが発生する可能性がある。
【0005】
このように、上記したような従来の水洗大便器は、汚物受け面の洗浄性能について改善の余地があった。
【0006】
実施形態の一態様は、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、汚物を受けるボウル形状の汚物受け面と、前記汚物受け面の上縁部において上方へ延びているリム部とを有するボウル部と、前記ボウル部の底部と連通するとともに前記底部から延びており、前記汚物受け面で受けた汚物を排出するトラップ管路と、前記リム部へ向けて洗浄水を吐水し、前記汚物受け面上を旋回する洗浄水の第1の流れを形成する第1吐水口と、前記第1吐水口の上流側に位置し、前記第1吐水口へ供給される洗浄水が流れる第1リム導水路と、前記リム部へ向けて洗浄水を吐水し、前記第1の流れと合流する洗浄水の第2の流れを形成する第2吐水口と、前記第2吐水口の上流側に位置し、前記第2吐水口へ供給される洗浄水が流れる第2リム導水路とを備え、前記第2リム導水路は、前記第2吐水口へ供給される洗浄水の流れ方向を逆方向へ変更する屈曲部と、前記屈曲部よりも下流側において前記第2リム導水路の底面が下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部とを有する。
【0008】
このような構成によれば、第2吐水口へ供給される洗浄水が流れる第2リム導水路の屈曲部よりも下流側に、第2リム導水路の底面が下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部を有することで、洗浄水が傾斜部を流れると、第2吐水口から吐水される洗浄水が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、たとえば、第1吐水口から大きな水勢で洗浄水が吐水されるような水洗大便器においても、第2吐水口の下方領域へ洗浄水を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面の第2吐水口の下方領域における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【0009】
また、上記した水洗大便器において、前記傾斜部は、前記屈曲部の下流側における直後に配置される。
【0010】
このような構成によれば、傾斜部が屈曲部の下流側における直後に配置されることで、第2吐水口から吐水される洗浄水がより下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、たとえば、第1吐水口から大きな水勢で洗浄水が吐水されるような水洗大便器においても、第2吐水口の下方領域へ洗浄水を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面の第2吐水口の下方領域における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【0011】
また、上記した水洗大便器において、前記第2リム導水路は、前記傾斜部よりも下流側に、前記傾斜部よりも傾斜角度が水平に近い平坦部をさらに有する。
【0012】
このような構成によれば、第2リム導水路が傾斜部よりも下流側に平坦部を有することで、第2吐水口から吐水される洗浄水が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有する構成としつつ、第2吐水口から吐水される直前に洗浄水を整流することができる。このため、たとえば、第1吐水口から大きな水勢で洗浄水が吐水されるような水洗大便器においても、第2吐水口の下方領域へ洗浄水を流下させることが可能となるとともに、整流された洗浄水による洗浄力の強化が可能となる。これにより、汚物受け面の第2吐水口の下方領域における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【0013】
また、上記した水洗大便器において、前記第2リム導水路は、前記第2リム導水路の天面のうち前記屈曲部の下流側の天面が前記屈曲部の上流側の天面よりも低い。
【0014】
このような構成によれば、第2リム導水路の天面のうち屈曲部の下流側の天面が屈曲部の上流側の天面よりも低いことで、第2リム導水路を流れる洗浄水が下流側へ向かうほど天面によって下向きのベクトルを有し、洗浄水が傾斜部の形状影響を受けやすくなり、洗浄水が傾斜部を流れると、第2吐水口から吐水される洗浄水が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、たとえば、第1吐水口から大きな水勢で洗浄水が吐水されるような水洗大便器においても、第2吐水口の下方領域へ洗浄水を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面の第2吐水口の下方領域における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【0015】
また、上記した水洗大便器において、前記汚物受け面および前記リム部の間を接合し、前記第2吐水口の前記第1の流れの流れ方向における直前において前記第1の流れの上流側から下流側へかけて小さくなる曲率で湾曲している凹面を有する接合部をさらに備える。
【0016】
このような構成によれば、汚物受け面とリム部とを接合する接合部の凹面の曲率が第2吐水口の第1の流れの流れ方向における直前において上流側から下流側へかけて小さくなるため、このような接合部の形状によって、遠心力で汚物受け面上を旋回する洗浄水に対して下向きのベクトルを大きくすることができる。このため、たとえば、第1吐水口から大きな水勢で洗浄水が吐水されるような水洗大便器においても、第2吐水口の下方領域へ洗浄水を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面の第2吐水口の下方領域における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
実施形態の一態様に係る水洗大便器によれば、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る水洗大便器を示す概略側断面図である。
図2A図2Aは、図1におけるII-II線の断面図(その1)である。
図2B図2Bは、図1におけるII-II線の断面図(その2)である。
図3A図3Aは、図2BにおけるIII-III線の概略断面図(その1)である。
図3B図3Bは、図2BにおけるIII-III線の概略断面図(その2)である。
図4図4は、図2BにおけるV-V線の概略断面図である。
図5図5は、実施形態に係る水洗大便器における洗浄水の第1の流れ(第1旋回流)および第2の流れ(第2旋回流)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
<1.水洗大便器の全体構成>
図1、2Aおよび2Bを参照して実施形態に係る水洗大便器1の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る水洗大便器を示す概略側断面図である。図2Aおよび2Bは、図1におけるII-II線の断面図である。なお、図2Aには、便器洗浄時における洗浄水W12,W22の流れ(旋回流)を示している。また、図2Bには、第1吐水口31および第2吐水口32へ供給される洗浄水W11,W21の流れを示している。
【0021】
また、各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0022】
図1に示すように、水洗大便器1は、トイレ室TRの壁面WSに設置される、いわゆる壁掛け式のものである。なお、水洗大便器1は、トイレ室TRの床面FSに設置される、いわゆる床置き式のものであってもよい。
【0023】
また、水洗大便器1は、水道などの給水源からの一次水圧によって後述する便器本体20へ洗浄水を供給する、いわゆるフラッシュバルブ便器である。なお、水洗大便器1は、たとえば、壁面WSの裏側に取り付けられた給水源となる貯水タンクから便器本体20へ洗浄水を供給するものであってもよい。また、壁面WSの裏側には、汚物を排出するための排水管(図示せず)が設けられる。排水管は、たとえば、排水ソケット(図示せず)などを介して、便器本体20の後述するトラップ管路22に接続される。
【0024】
また、水洗大便器1(便器本体20)は、陶器製のものである。なお、水洗大便器1は、陶器製に限定されず、樹脂製のものであってもよいし、陶器および樹脂を組み合わせて製造されたものであってもよい。
【0025】
また、図示しないが、水洗大便器1には、便器本体20の上方に、便座(または、局部洗浄機能を有する便座装置)や便蓋などが取り付けられる。
【0026】
図1、2Aおよび2Bに示すように、水洗大便器1は、便器本体20を備える。便器本体20は、ボウル部21と、トラップ管路22と、スカート部23と、バック面24とを備える。また、水洗大便器1は、複数の吐水口(第1吐水口31、第2吐水口32)を備える。また、水洗大便器1は、主導水路40と、第1リム導水路41と、第2リム導水路42とを備える。
【0027】
ボウル部21は、汚物受け面211と、リム部222と、接合部223とを備える。汚物受け面211は、汚物を受ける部位であり、ボウル形状(凹形状)に形成される。リム部222は、汚物受け面211の上縁部において上方へ延伸するように設けられる。リム部222は、汚物受け面211の上縁部に沿って環状に形成される。
【0028】
接合部213は、汚物受け面211とリム部212との間を接合する。接合部213は、汚物受け面211とリム部212とをなめらかに接続するように、上面(表面)に後述する凹面213aを有する。接合部213については、図5などを用いて後述する。
【0029】
ボウル部21(汚物受け面211)の底部には、所定量の溜水Wが貯留される。また、ボウル部21の底部には、トラップ管路22が接続される。
【0030】
トラップ管路22は、ボウル部21の底部と連通している。また、トラップ管路22は、ボウル部21の底部から後方へ延びている管路である。トラップ管路22は、ボウル部21の汚物受け面211で受けた汚物を、外部配管である排水管へと排出する。また、トラップ管路22は、後方へ向かうにつれて上昇するように傾斜している上昇部221の頂部によって、ボウル部21の底部に形成される溜水Wの水位を規定する。
【0031】
スカート部23は、ボウル部21の左右一方の側部から前部を経て左右他方の側面までを覆うように設けられる。スカート部23は、水洗大便器1の外観を構成している。
【0032】
バック面24は、ボウル部21の後方に設けられる。バック面24は、たとえば、取付孔(図示せず)に取付具(図示せず)が取り付けられることで、トイレ室TRの壁面WSに対して固定される。このように、バック面24が壁面WSに固定されることで、水洗大便器1が壁面WSに固定される。
【0033】
図2Aおよび2Bに示すように、水洗大便器1は、ボウル部21(汚物受け面211)を洗浄するために、ボウル部21へ洗浄水Wを吐水する複数の吐水口を備える。水洗大便器1は、第1吐水口31と、第2吐水口32とを備える。第1吐水口31は、ボウル部21の後部に配置され、リム部212へ向けて洗浄水Wを吐水する。第1吐水口31は、汚物受け面211に対して左右一方(たとえば、右方)側の後方から洗浄水W12を吐水する。
【0034】
第1吐水口31は、汚物受け面211上を旋回する洗浄水W12の第1の流れ(第1旋回流)を形成する。すなわち、第1吐水口31から吐水された洗浄水Wは、遠心力で汚物受け面211および接合部213上を旋回する第1旋回流(洗浄水W12)となる。
【0035】
第2吐水口32は、ボウル部21の後部に配置され、リム部212へ向けて洗浄水Wを吐水する。第2吐水口32は、汚物受け面211に対して左右他方(たとえば、左方)側の後方から洗浄水W22を吐水する。
【0036】
第2吐水口32は、第1旋回流(洗浄水W12)と合流し、第1旋回流(洗浄水W12)と共に汚物受け面211上を旋回する洗浄水W22の第2の流れ(第2旋回流)を形成する。すなわち、第2吐水口32から吐水された洗浄水W22は、第1旋回流(洗浄水W12)と同様に、遠心力で汚物受け面211および接合部213上を旋回する第2旋回流(洗浄水W22)となる。なお、第1旋回流(洗浄水W12)および第2旋回流(洗浄水W22)は、リム部212上の一部を含み旋回する場合もある。
【0037】
このように、第1吐水口31および第2吐水口32から吐水された洗浄水W(W12,W22)は、それぞれ旋回しながらトラップ管路22へと流れ込む第1旋回流(洗浄水W12)および第2旋回流(洗浄水W22)となる。水洗大便器1では、このような第1旋回流(洗浄水W12)および第2旋回流(洗浄水W22)によって、汚物受け面211を洗浄(トルネード洗浄)する。
【0038】
図2Bに示すように、水洗大便器1は、主導水路40と、第1リム導水路41と、第2リム導水路42とを備える。主導水路40は、水洗大便器1における洗浄水Wの供給口43から前方へと延びている。主導水路40には、ボウル部21へ供給するための洗浄水Wが流れる。主導水路40を流れる洗浄水Wは、下流側において左右方向へ分岐して、一方が後述する第1リム導水路41へ供給され、他方が後述する第2リム導水路42へ供給される。
【0039】
第1リム導水路41は、第1吐水口31の上流側に配置される。第1リム導水路41には、主導水路40から分岐してきた洗浄水W11が流れる。第1リム導水路41の下流端部には第1吐水口31が形成される。すなわち、第1リム導水路41には、第1吐水口31へ供給される洗浄水W11が流れる。
【0040】
第2リム導水路42は、第2吐水口32の上流側に配置される。第2リム導水路42には、主導水路40から分岐してきた洗浄水W21が流れる。第2リム導水路42の下流端部には第2吐水口32が形成される。すなわち、第2リム導水路42には、第2吐水口32へ供給される洗浄水W21が流れる。
【0041】
また、第2リム導水路42は、上流側導水路421と、下流側導水路422と、屈曲部423とを備える。上流側導水路421は、主導水路40から分岐してきた洗浄水W21が、たとえば、左方へ流れるように、左方へ向けて延びている。下流側導水路422は、上流側導水路421が延びている方向とは逆方向へ向けて(たとえば、右方へ向けて)延びている。下流側導水路422の下流端部には、第2吐水口32が形成される。
【0042】
屈曲部423は、上流側導水路421の下流端部、かつ、下流側導水路422の上流端部において、上流側導水路421と下流側導水路422とを接合するように設けられる。このような屈曲部423は、第2リム導水路42において、第2吐水口32へ供給される洗浄水W21の流れ方向を逆方向へ変更する。
【0043】
ここで、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から吐出される洗浄水Wの水勢が大きなものの場合、遠心力でボウル部21を旋回する洗浄水W12がボウル部21(汚物受け面211)の後部領域A2においても旋回力を維持するため、汚物受け面211の後部領域A2において洗浄水Wが下方へ流れにくいことがある。このため、洗浄水W12が下方へ流れにくい汚物受け面211における第2吐水口32の下方領域、すなわち、汚物受け面211の後部領域A2には洗い残しが発生する可能性がある。
【0044】
第2リム導水路42の下流側導水路422の底面422bが平坦である場合は、第2吐水口32から洗浄水W22が略水平に吐水されるようになり、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面の後部領域A2)へ洗浄水W22が流れにくいと考えられる。このため、本実施形態では、第2リム導水路42の下流側導水路422の底面422bが下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部422b1を有し、これにより、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面の後部領域A2)へ向かうような洗浄水W22の下方への流れを形成する。
【0045】
<2.第2リム導水路>
次に、図3A、3Bおよび4を参照して第2リム導水路42について説明する。図3Aおよび3Bは、図2BにおけるIII-III線の概略断面図である。なお、図3Aには、第2リム導水路42の下流側導水路422の概略斜視(断面)を示している。また、図3Bには、第2リム導水路42の下流側導水路422の概略正面断面を示している。図4は、図2BにおけるV-V線の概略断面図である。なお、図4には、第2リム導水路42の上流側導水路421および下流側導水路422の概略側断面を示している。
【0046】
第2リム導水路42は、上記したように、上流側導水路421と、下流側導水路422と、屈曲部423とを備える。なお、上流側導水路421と下流側導水路422とは、前後方向においては隔離壁424によって区画される。
【0047】
図3Aおよび3Bに示すように、下流側導水路422は、天面422aと、底面422bとを備える。下流側導水路422は、天面422aおよび底面422bによって上下方向の長さ(高さ)が規定される。
【0048】
図3Bに示すように、底面422bは、傾斜部422b1と、平坦部422b2とを備える。傾斜部422b1は、底面422bが下流側へ向けて下り傾斜していることで形成される傾斜面である。このため、底面422bは、傾斜部422b1によって下流側へ広がるように形成される。また、傾斜部422b1は、屈曲部423よりも下流側に配置される。傾斜部422b1は、屈曲部423の下流側における直後に配置されること好ましい。
【0049】
このような傾斜部422b1は、下流側導水路422を流れる洗浄水W21に対して、洗浄水W12が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するように作用する。
【0050】
平坦部422b2は、底面422bが略平坦となって形成される面(平坦面)である。平坦部422b2は、傾斜部422b1よりも傾斜角度が水平に近い面である。平坦部422b2は、傾斜部422b1よりも下流側に配置される。平坦部422b2は、傾斜部422b1の下流側における直後に配置されることが好ましい。
【0051】
このような平坦部422b2は、下流側導水路422を流れる洗浄水W21に対して、洗浄水W12が整流されるように作用する。
【0052】
図4に示すように、下流側導水路422の天面422aは、屈曲部423を挟んで下流側導水路422よりも上流側にある上流側導水路421の天面421aよりも高さが低くなるように形成される。このように、下流側導水路422の天面422aが上流側導水路421の天面421aよりも低いことで、第2リム導水路42を流れる洗浄水W21が下流側へ向かうほど下向きのベクトルを有するようになる。
【0053】
また、図4に示すように、下流側導水路422の底面422bは、上流側導水路421の底面421bよりも高さが低くなるように形成される。下流側導水路422の底面422bが上流側導水路421の底面421bよりも低いことでも、第2リム導水路42を流れる洗浄水W21が下流側へ向かうほど下向きのベクトルを有するようになる。
【0054】
図3Bに示すように、第2リム導水路42においては、下流側導水路422を流れる洗浄水W21が下流側へ向かうほど下向きのベクトルを有するようになり、下流側導水路422の下流端部に形成された第2吐水口32から吐水される洗浄水W22が下方へ向けた流れ(洗浄水W221)を含むようになる。
【0055】
<3.第2の流れ(第2旋回流)の態様>
次に、図5を参照して洗浄水W22(W221)の第2の流れ(第2旋回流)の態様について説明する。図5は、実施形態に係る水洗大便器1における洗浄水Wの第1の流れ(第1旋回流)および第2の流れ(第2旋回流)の説明図である。
【0056】
第2リム導水路42(下流側導水路422)が傾斜部422b1(図3B参照)などを有することで、第2吐水口32から吐水される洗浄水W221が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。
【0057】
このため、図5に示すように、第2吐水口32の下方領域、すなわち、汚物受け面211の後部領域A2へ洗浄水W221が流れ込む。そして、汚物受け面211の後部領域A2へ流れ込んだ洗浄水W221は、汚物受け面211の後部領域A2を洗浄する。
【0058】
また、図5に示すように、第1吐水口31(図2Aおよび2B参照)から吐水される洗浄水W12の第1の流れ(第1旋回流)についても、汚物受け面211の後部領域A2へ向けて流れることが好ましい。
【0059】
<4.接合部の凹面>
ここで、第1吐水口31から吐水される洗浄水W12が汚物受け面211の後部領域A2へ向かうような流れを形成するための接合部213の凹面213aについて説明する。
【0060】
汚物受け面211とリム部212とを接合する接合部213は、上面(表面)に所定の曲率で下方へ湾曲している凹面213aを有する。また、接合部213の凹面213aは、第2吐水口32(図2Aおよび2B参照)の第1旋回流における洗浄水W12の流れ方向の直前において、上流側から下流側へかけて小さくなる曲率で湾曲している。
【0061】
また、接合部213の凹面213aは、第1旋回流における洗浄水W12の流れ方向の上流側から下流側へかけて上下方向の長さが徐々に長くなるように形成される。言い換えると、接合部213の凹面213aは、ボウル部21(図2Aおよび2B参照)の上下方向における占める割合が、第1旋回流における洗浄水W12の流れ方向の上流側から下流側へかけて大きくなる。
【0062】
また、接合部213は、凹面213aの曲率が小さくなり始める、第1旋回流の洗浄水W12の流れ方向における始点が、ボウル部21における前後方向の中心よりも後方に位置するように形成される。
【0063】
<5.第1の流れ(第1旋回流)の態様>
接合部213の凹面213aの曲率が第2吐水口32の第1旋回流(洗浄水W12)(図2A参照)の流れ方向における直前において上流側から下流側へかけて小さくなるため、第1吐水口31(図2A参照)から吐水された洗浄水W12は、第2吐水口32の直前に位置する接合部213の凹面213aにおいて下向きのベクトルが大きくなる。
【0064】
このため、図5に示すように、第2吐水口32の直前において、第1旋回流(洗浄水W12)は、下方への流れ(洗浄水W121)を含むようになる。そして、このような洗浄水W121は、汚物受け面211の後部領域A2へ向かう流れとなり、汚物受け面211の後部領域A2を洗浄する。
【0065】
上記したような実施形態に係る水洗大便器1によれば、第2吐水口32へ供給される洗浄水W21が流れる第2リム導水路42の屈曲部423よりも下流側に、第2リム導水路42(下流側導水路422)の底面422bが下流側へ向けて下り傾斜している傾斜部422b1を有することで、洗浄水W21が傾斜部422b1を流れると、第2吐水口32から吐水される洗浄水W221が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面211の後部領域A2)へ洗浄水W221を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の後部領域A2における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0066】
また、傾斜部422b1が屈曲部423の下流側における直後に配置されることで、第2吐水口32から吐水される洗浄水W221がより下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面211の後部領域A2)へ洗浄水W221を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の後部領域A2における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0067】
また、第2リム導水路42(下流側導水路422)が傾斜部422b1よりも下流側に平坦部422b2を有することで、第2吐水口32から吐水される洗浄水W221が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有する構成としつつ、第2吐水口32から吐水される直前に洗浄水W21を整流することができる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面211の後部領域A2)へ洗浄水W221を流下させることが可能となるとともに、整流された洗浄水W221による洗浄力の強化が可能となる。これにより、汚物受け面211の後部領域A2における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0068】
また、下流側導水路422の天面422aが上流側導水路421の天面421aよりも低いことで、第2リム導水路42を流れる洗浄水W21が下流側へ向かうほど天面422aによって下向きのベクトルを有し、洗浄水W21が傾斜部422b1の形状影響を受けやすくなり、洗浄水W21が傾斜部422b1を流れると、第2吐水口32から吐水される洗浄水W221が下方へ向けて流れるような下向きのベクトルを有するようになる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面211の後部領域A2)へ洗浄水W221を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の後部領域A2における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0069】
また、接合部213の凹面213aの曲率が第2吐水口32の第1旋回流(洗浄水W12)流れ方向における直前において上流側から下流側へかけて小さくなるため、このような接合部213の形状によって、遠心力で汚物受け面211上を旋回する洗浄水W121に対して下向きのベクトルを大きくすることができるとともに、集中して流れた洗浄水W121の水束を汚物受け面211の後部へ向けて扇状に広げることができる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、第2吐水口32の下方領域(汚物受け面211の後部領域A2)へ洗浄水W121を流下させつつボウル部21の後部(汚物受け面211の後部)を広い範囲で洗浄することが可能となる。これにより、汚物受け面211の後部領域A2における洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0070】
また、上下方向における接合部213の占める割合が第1旋回流(洗浄水W12)の流れ方向における上流側から下流側へかけて大きくなることで、遠心力で汚物受け面211上を旋回する洗浄水W12(W121)に対して下向きのベクトルをより大きくすることができる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、汚物受け面211において上部から底部へ洗浄水を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0071】
また、接合部213の凹面213aの曲率が小さくなる始点がボウル部21における前後方向の中心よりも後方に位置することで、ボウル部21(汚物受け面211)の前部領域A1(図2A参照)においては洗浄水W12の水勢を落とさず、一方で、ボウル部21(汚物受け面211)の後部領域A2においては洗浄水W12(W121)を流下させることができる。このため、フラッシュバルブ便器のような第1吐水口31から大きな水勢で洗浄水W12が吐水されるような水洗大便器1においても、汚物受け面211において上部から底部へ洗浄水W12(W121)を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の洗い残しの発生を抑えることができ、汚物受け面211の洗浄性能を向上させることができる。
【0072】
また、接合部213の凹面213aの曲率が小さくなる始点がボウル部21における前後方向の中心よりも後方に位置することで、洗浄水121の水束が下方へ広がり過ぎずにこの洗浄水121を流下させることが可能となる。これにより、汚物受け面211の上端部において不洗が発生するのを抑えることができる。
【0073】
なお、上記した実施形態では、接合部213の凹面213aの曲率は、第2吐水口32の第1旋回流(洗浄水W12)の流れ方向における直前において上流側から下流側へかけて小さくなる構成であるが、第1吐水口31の第1旋回流(洗浄水W12)の流れ方向における直前において上流側から下流側へかけて小さくなる構成であってもよい。
【0074】
また、上記した実施形態では、第1吐水口31および第2吐水口32の2つの吐水口から洗浄水W12,W22を吐水してボウル部21を洗浄する構成であるが、第1吐水口31および第2吐水口32を含む3つ以上の吐水口から洗浄水Wを吐水してボウル部21を洗浄する構成であってもよい。
【0075】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 水洗大便器
21 ボウル部
22 トラップ管路
31 第1吐水口
32 第2吐水口
41 第1リム導水路
42 第2リム導水路
211 汚物受け面
212 リム部
213 接合部
213a 凹面
421a 天面
422a 天面
422b 底面
422b1 傾斜部
422b2 平坦部
423 屈曲部
W12 洗浄水
W22 洗浄水
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5