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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029307
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】レーダアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/22 20060101AFI20240228BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240228BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20240228BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01Q13/22
H01Q21/06
H01Q21/08
H01Q1/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131493
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】荒井 瞳子
(72)【発明者】
【氏名】野呂 祟徳
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 裕三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 庸平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊也
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA03
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB05
5J021GA05
5J021GA08
5J021HA04
5J045AA05
5J045AA26
5J045AA27
5J045CA02
5J045DA04
5J045FA02
5J045HA01
5J045LA01
5J045NA07
5J046AA04
5J046AB02
5J046AB03
5J046AB08
5J046UA03
(57)【要約】
【課題】フレアを備えずに垂直面指向性が得られ、かつ、所望のサイドローブレベル特性が得られるレーダアンテナを提供する。
【解決手段】断面が略四角形の筒状で前面部にスロット2aが形成された複数の導波管2と、複数の導波管2が略水平に延びて上下に配設された状態で、少なくとも最上位の導波管2の上縁側および最下位の導波管2の下縁側から略水平に前面側に突出し、導波管2の長手方向に沿って延びる帯板状の水平板部4と、を備え、最下位の水平板部4の略水平方向の長さは、他の水平板部4の略水平方向の長さよりも長く設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が略四角形の筒状で前面部にスロットが形成された複数の導波管と、
前記複数の導波管が略水平に延びて上下に配設された状態で、少なくとも最上位の前記導波管の上縁側および最下位の前記導波管の下縁側から略水平に前面側に突出し、前記導波管の長手方向に沿って延びる帯板状の水平板部と、
を備え、
前記最上位の水平板部または前記最下位の水平板部の略水平方向の長さは、他の前記水平板部の略水平方向の長さよりも長く設定されている、
ことを特徴とするレーダアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、陸上や船舶などで使用されるレーダアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
陸上や船舶などで使用されるレーダアンテナとして、水平面指向性を成形するためのスロット導波管と、垂直面指向性を成形するためのフレアとを組み合わせたものが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。このレーダアンテナは、導波管の前面に複数のスロット(長孔)が形成され、各スロットの傾斜角度、幅、切込み深さ、配置などを調整することで、所定の指向性特性あるいは周波数特性が得られるようになっている。また、複数のスロットが形成された導波管を挟むように、上フレアと下フレアで構成されるホーン状のフレアが配設され、複数の導波管押え金具によって導波管とフレアとが組み付けられている。
【0003】
このようなレーダアンテナでは、フレアを備えるため、レーダアンテナの奥行き寸法が大きくなる、という問題があった。このため、フレアを備えずに垂直面指向性を成形して、奥行き寸法を小さくできる、というレーダアンテナ・スロットアレイアンテナが知られている(例えば、特許文献2等参照。)。このレーダアンテナは、導波管の前面にスロットを水平方向および垂直方向に複数設けることで、導波管で水平面指向性と垂直面指向性を成形できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-79424号公報
【特許文献2】特開2012-19258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船舶に搭載するレーダアンテナにおいて、導波管の前面にスロットを水平方向および垂直方向に複数設けた場合、垂直面指向性の海側において、高いレベルのサイドローブが発生して虚像となるおそれがあり、さらに、仰角(EL)の所定角度以内に利得ヌル・ゼロが生じ、その角度内に入った物標を認識できないおそれがある、ということを本願発明者が確認した。
【0006】
そこで本発明は、フレアを備えずに垂直面指向性が得られ、かつ、所望のサイドローブレベル特性が得られるレーダアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、断面が略四角形の筒状で前面部にスロットが形成された複数の導波管と、前記複数の導波管が略水平に延びて上下に配設された状態で、少なくとも最上位の前記導波管の上縁側および最下位の前記導波管の下縁側から略水平に前面側に突出し、前記導波管の長手方向に沿って延びる帯板状の水平板部と、を備え、前記最上位の水平板部または前記最下位の水平板部の略水平方向の長さは、他の前記水平板部の略水平方向の長さよりも長く設定されている、ことを特徴とするレーダアンテナである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、スロットが形成された複数の導波管が、略水平に延びて上下に配設されているため、フレアを備えずに垂直面指向性が得られ、レーダアンテナの奥行き寸法を小さく抑えることが可能となる。
【0009】
また、最上位または最下位の水平板部の長さが、他の水平板部よりも長く設定されているため、水平板部が長い側(例えば、海側)への不要放射が抑制される。この結果、水平板部が長い側の垂直面指向性において、サイドローブや利得ヌル・ゼロの発生を抑制し、所望のサイドローブレベル特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態に係るレーダアンテナの概略構成を示す斜視図である。
図2図1のレーダアンテナの側面図である。
図3】すべての水平板部の長さが同じレーダアンテナにおける垂直面指向性を示す図である。
図4図1のレーダアンテナにおける垂直面指向性(電磁界解析結果)を示す図である。
図5】モードフィルタ構造を備えない従来のレーダアンテナにおけるXZ面の電界分布を示す図である。
図6図1のレーダアンテナにおけるXZ面の電界分布を示す図である。
図7】モードフィルタ構造を備えない従来のレーダアンテナにおける3次元指向性を示す図である。
図8図1のレーダアンテナにおける3次元指向性を示す図である。
図9】モードフィルタ構造を備えない従来のレーダアンテナにおける垂直面指向性を示す図である。
図10】モードフィルタ構造を備えるレーダアンテナにおける垂直面指向性を示す図である。
図11図1のレーダアンテナにおける水平板部の長さL1を規定する図(a)と、各長さL1における回り込み成分を示す図(b)~(g)であり、図(b)は長さL1が0の場合、図(c)は長さL1が0.22λの場合、図(d)は長さL1が0.30λの場合、図(e)は長さL1が0.38λの場合、図(f)は長さL1が0.53λの場合、図(g)は長さL1が0.69λの場合を示す。
図12】この発明の適用対象例のレーダアンテナを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は、この実施の形態に係るレーダアンテナ1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、図1のレーダアンテナ1の側面図である。このレーダアンテナ1は、スロット2aが形成された導波管2を複数備えるアレイアンテナであり、フレアが不要となっている。ここで、この実施の形態では、導波管2を3つ備える場合について主として以下に説明するが、2つまたは4つ以上備えてもよい。また、この実施の形態では、レーダアンテナ1が船舶に搭載され、図1図2におけるレーダアンテナ1の上側が空、下側が海であるとする。
【0013】
各導波管2は、断面が略四角形の筒状体で、前面部21にスロット2aが長手方向に沿って複数形成されている。このような導波管2が3つ、略水平に延び所定の間隔を隔てて上下に配設されている。この際、各導波管2の前面21aが同一面上に位置するように配設されている。
【0014】
このような配設状態において、各導波管2の上面部22と下面部23のスロット2a側から、略垂直に突出する帯板状(垂直板状)の垂直板部3が設けられている。この垂直板部3は、導波管2の長手方向に沿って延び、導波管2の前面21aよりも後退した位置(導波管2の背面部24側)に設けられている。
【0015】
このように垂直板部3が設けられることで、上下に隣接する導波管2同士が垂直板部3で連結されている。すなわち、上位の導波管2の下面部23からの垂直板部3と、隣接する下位の導波管2の上面部22からの垂直板部3とが一体・同体となり、上位の導波管2と下位の導波管2とが垂直板部3で連結されている。そして、最上位の導波管2の上面部22および最下位の導波管2の下面部23から、それぞれ垂直板部3が延びた状態となっている。
【0016】
また、各垂直板部3から導波管2の前面部21側に略水平に突出する水平板部(フィン)4が設けられている。この水平板部4は、帯板状(平板状)で導波管2から離隔し、導波管2の長手方向に沿って延びている。また、導波管2、2間の垂直板部3に設けられた水平板部4は、垂直板部3の中央部に位置し、最上位と最下位の垂直板部3に設けられた水平板部4は、垂直板部3の自由端(反導波管2側の端)に位置する。さらに、水平板部4から導波管2までの離隔距離がすべて同寸法になるように、垂直板部3および水平板部4が設けられている。
【0017】
このように、この実施の形態では、最上位の導波管2の上縁側および最下位の導波管2の下縁側のみならず、すべて導波管2の上下縁側に水平板部4が設けられている。
【0018】
このような垂直板部3と水平板部4で形成される角部34が、導波管2の前面21aよりも後退した位置(導波管2の背面部24側)に設けられ、垂直板部3と水平板部4によってモードをフィルタリングする構造(モードフィルタ構造)が、各導波管2に形成されている。そして、垂直板部3の位置や水平板部4と導波管2との隙間などは、スロット2aから放射される交差偏波成分・垂直偏波成分が、モードフィルタ構造によって導波管2の上下方向に回り込むのを抑制できるように設定されている。
【0019】
また、各水平板部4の略水平方向の長さは、その自由端が導波管2の前面21aよりも延び、不要放射を所定値まで抑制できるように設定されている。すなわち、後述するように、水平板部4が導波管2の前面21aよりも延び、長いほど交差偏波成分の上下方向への回り込みを抑制でき、かつ、垂直方向のビーム幅を狭幅化・狭域化すること、利得を増加させることが可能となる。
【0020】
一方、水平板部4が長いとレーダアンテナ1が大きくなるため、不要放射レベルを所望の特性に抑制できるまで水平板部4が長く設定されている。具体的にこの実施の形態では、図2に示すアンテナ高さHが約2.6λ(λ:波長)の場合において、導波管2の前面21aからの長さ(突出量)L1が、約0.5λに設定されている。
【0021】
さらに、最下位の水平板部4の略水平方向の長さが、他の水平板部4の略水平方向の長さよりも長く設定されている。すなわち、海側での垂直面指向性において、サイドローブや利得ヌル・ゼロの発生を抑制するために、最下位の水平板部4が、他の水平板部4よりも前面側に突出している。
【0022】
例えば、他の水平板部4では、上記のように、導波管2の前面21aからの長さL1が0.5λであるのに対して、最下位の水平板部4の長さは、他の水平板部4よりも延長寸法L2だけ長く設定されている。そして、延長寸法L2は、海側でのサイドローブや利得ヌルを効果的に抑制できる長さであり、例えば、約0.5λ(λ:波長)に設定されている。ここで、導波管2が3段積層されている場合、L2>0.3λでサイドローブや利得ヌルを抑制可能である。
【0023】
このような複数の導波管2と垂直板部3と水平板部4を備えるレーダアンテナ1は、押出成形によって一体的に形成されている。
【0024】
このような構成のレーダアンテナ1によれば、スロット2aが形成された複数の導波管2が、略水平に延びて上下に配設されているため、フレアを備えずに垂直面指向性が得られ、レーダアンテナ1の奥行き寸法を小さく抑えることが可能となる。
【0025】
また、最下位の水平板部4の長さが、他の水平板部4よりも長く設定されているため、水平板部4が長い側つまり海側への不要放射が抑制される。この結果、海側の垂直面指向性において、サイドローブや利得ヌル・ゼロの発生を抑制し、所望のサイドローブレベル特性を得ることが可能となる。すなわち、すべての水平板部4の長さが同じ場合、図3に示すように、垂直面指向性の海側において、高いレベルのサイドローブが発生して虚像となるおそれがあり、また、仰角(EL)-30度以内に利得ヌルが生じ、その角度内に入った物標を認識できないおそれがある。
【0026】
これに対して、本レーダアンテナ1では、図4に示すように、垂直面指向性の海側において、サイドローブレベルが仰角-30度以遠で低減され、仰角-30度以内での利得ヌルも解消されて、所望のサイドローブレベル特性が得られる。ここで、図4において、反海面側(空側)ではサイドローブが高いところが発生するが、船舶レーダにおいては、反海面側でのサイドローブは一般に許容されるため、運用上の問題はない。また、図3図4における振幅比は、各導波管2の振幅比を意味する。
【0027】
また、上記のように、各導波管2に対して垂直板部3と水平板部4によってモードフィルタ構造が形成されているため、スロット2aから放射される交差偏波成分が打ち消され、導波管2の上下方向に回り込むことによるサイドローブを抑制することが可能となる。すなわち、モードフィルタ構造を備えない場合には、図5に示すように、スロット2aから放射される交差偏波成分(図中の矢印)がレーダアンテナの上下方向に回り込んでしまうのに対して、モードフィルタ構造を備る場合には、図6に示すように、交差偏波成分の上下方向への回り込みが抑制される。この結果、モードフィルタ構造を備えない場合には、図7に示すように、高いレベルのサイドローブ・不要放射が発生するのに対して、モードフィルタ構造を備る場合には、図8に示すように、サイドローブが抑制される。
【0028】
さらに、各垂直板部3から水平板部4が導波管2の前面部21側に突出して設けられ、モードフィルタ構造が形成されているため、垂直方向に対してビームを狭幅化・狭域化すること、利得を増加させることが可能となる。すなわち、モードフィルタ構造を備えない場合には、図9に示すように、垂直方向のビーム幅が広い(例えば、22.99deg.)のに対して、モードフィルタ構造を備る場合には、図10に示すように、垂直方向のビーム幅が狭く(例えば、16.91deg.)、利得が増加(例えば、1.3dB増加)する。
【0029】
しかも、各水平板部4の自由端が導波管2の前面21aよりも延び、不要放射を所定値まで抑制できるように各水平板部4の長さが設定されているため、水平板部4の長さを調整するだけで不要放射レベルを所望の特性にすることが可能となる。すなわち、図11(a)に示すように、導波管2の前面21aからの水平板部4の突出量を長さL1とし、長さL1を0(図11(b))、0.22λ(図11(c))、0.30λ(図11(d))、0.38λ(図11(e))、0.53λ(図11(f))、0.69λ(図11(g))と順次延ばすと、長さL1が長いほど交差偏波成分の上下方向への回り込みを抑制でき、かつ、垂直方向のビーム幅を狭幅化・狭域化することが可能となる。そして、不要放射を所定値まで抑制できる長さL1に水平板部4の長さを調整するだけで、不要放射レベルを所望の特性にすることが可能となる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、最下位の水平板部4の長さを他の水平板部4よりも長く設定しているが、最上位または最下位の水平板部4のうち、サイドローブや利得ヌルを抑制したい側の水平板部4を他よりも長くすればよい。
【0031】
また、上記の実施の形態では、すべての導波管2の上下縁側に水平板部4が設けられている場合について説明したが、その他の場合にも本願発明を適用可能である。例えば、図12に示すように、複数の導波管2が上下に隙間なく積層され、最上位の導波管2の上縁側と最下位の導波管2の下縁側のみに水平板部4が設けられている場合にも、適用可能である。このような場合にも、サイドローブや利得ヌルを抑制したい一方側(例えば、海側)の水平板部4を、他方側よりも長くすればよい。
【符号の説明】
【0032】
1、10 レーダアンテナ
2 導波管
2a スロット
21 前面部
21a 前面
22 上面部
23 下面部
24 背面部
3 垂直板部
4 水平板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12