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特開2024-29310骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法
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  • 特開-骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法 図1
  • 特開-骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029310
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 17/08 20060101AFI20240228BHJP
   A47G 33/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61G17/08 G
A47G33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131497
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】522332892
【氏名又は名称】かじや本店株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】平野 清隆
(57)【要約】
【課題】 故人へのメッセージの表現が制限されることなく、故人へのメッセージが容易に短時間で表現できる骨壷、骨壷の製造歩法、および骨壷の提供システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 遺族等による故人へのメッセージMが手書きで描出される描出部130が、骨壷100における遺骨の収納部110または蓋部120の外側周面、あるいは遺骨の収納部110または蓋部120の内側周面に、微細な多孔構造による多孔質材料で形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
故人へのメッセージが表示される骨壷において、
微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、前記メッセージが手書きで描出される描出部、
を備えることを特徴とする骨壷。
【請求項2】
前記多孔質材料は、
素焼きであること、
を特徴とする請求項1記載の骨壷。
【請求項3】
前記手書きは、
油性着色料によって着色する油性筆記具で描出されること、
を特徴とする請求項1記載の骨壷。
【請求項4】
前記油性筆記具は、
油性ペン、油性色鉛筆、または油性クレヨンであること、
を特徴とする請求項3記載の骨壷。
【請求項5】
遺骨が収納される収納部と、
前記収納部に遺骨を収納するための開口部を覆い塞ぐための蓋部と、
を備え、
前記描出部は、
前記収納部、または前記蓋部の外側周面全体に設けられること、
を特徴とする請求項1記載の骨壷。
【請求項6】
前記描出部は、
前記収納部、または前記蓋部の内側周面全体に設けられること、
を特徴とする請求項5記載の骨壷。
【請求項7】
故人へのメッセージが表示される骨壷の製造方法において、
前記メッセージが筆記具を用いて手書きで描出される描出部が、微細な多孔構造による多孔質材料で形成される工程、
を備えることを特徴とする骨壷の製造方法。
【請求項8】
骨壷提供システムにおいて、
微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報を記録する骨壷特定情報記録手段と、
前記骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、前記依頼者が骨壷に前記メッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報を記録する描出者特定情報記録手段と、
描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、前記メッセージを手書きで描出する筆記具と、
を備えることを特徴とする骨壷提供システム。
【請求項9】
前記依頼者は、生前の故人であって、
前記骨壷は、
前記故人が生前に選択した骨壷であること、
を特徴とする請求項8記載の骨壷提供システム。
【請求項10】
骨壷提供方法において、
微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報を骨壷特定情報記録手段に記録する工程と、
前記骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、前記依頼者が骨壷に前記メッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報を描出者特定情報記録手段に記録する工程と、
描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、筆記具を用いて前記メッセージを手書きで描出する工程と、
を備えることを特徴とする骨壷提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法に関し、特に故人へのメッセージが表示される骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火葬した後に、その遺骨を納める容器として骨壷が使われている。一般に、骨壷の内部に火葬場で遺骨が収められると、蓋をして骨箱に収容され、その骨箱は骨箱カバーなどによって覆われる。この遺骨が収められる骨壷の多くは、白い無垢の磁器で形成されており、骨壷には特別な表示や装飾などは施されていないのが一般的である。
【0003】
ところが、他の骨壷と識別するための表示や装飾などが施されていない骨壷は、骨箱に収容される前に、他の骨壷と区別がつかなくなることで、骨壷を取り違えてしまうおそれがあった。
【0004】
そこで、個々の骨壷の識別を可能にするとともに、故人へのメッセージや故人の好きな言葉などを残せるようにした骨壷が提供されている。(たとえば、特許文献1参照)。
具体的に、特許文献1では、骨壷本体の外側面及または骨壷本体に被せる蓋の外表面に、文字、文章、符号、記号、マーク、模様、線、図形、絵、写真などのメッセージのうち少なくとも一つが彫刻されていることを特徴とする骨壷が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3149134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で開示された骨壷では、骨壷に彫刻されるメッセージの表現が制限されてしまう問題や、メッセージが彫刻された骨壷は製造に時間がかかってしまう問題があった。
【0007】
具体的には、特許文献1で開示された骨壷は、骨壷本体の外側面などに、文字や文章などの故人へのメッセージが彫刻されている。この骨壷本体への彫刻の具体例として、サンドブラストノズルからサンドブラスト粒子を吹き付けて加工するサンドブラスト加工や、レーザー発振ノズルからレーザー光線を照射して彫刻を行なうレーザー加工、砥石や、やすり、ドリルを使った彫刻、あるいは骨壷を製作する際の焼成前に、あらかじめ彫刻を施す例などが挙げられている。
【0008】
このサンドブラスト加工、レーザー加工、ドリルなどを使った彫刻、焼成前の骨壷への彫刻は、誰でも容易に行えるものではない。たとえばサンドブラスト加工やレーザー加工は、サンドブラスト加工装置やレーザー加工装置などの設備が必要であり、骨壷へ加工を施すための技術も必要である。つまり誰でも容易に骨壷へメッセージを表現できるものではない。
【0009】
ましてや幼児などの子どもがサンドブラスト加工やレーザー加工でメッセージを骨壷に表現することは大変危険であり、容易に行えるものではない。このように、骨壷に彫刻によってメッセージを表現することは、一定の技術や設備が必要なため、骨壷へのメッセージの表現が制限されてしまうことになる。
【0010】
また、一定の技術を習得すれば、骨壷への加工が可能ではあるが、サンドブラスト加工やレーザー加工などの技術を短時間で容易に習得することは難しい。つまり、メッセージが彫刻された骨壷は製造に時間がかかってしまう問題がある。
【0011】
ここで遺族等が表現したいメッセージを下書きし、それをサンドブラスト加工やレーザー加工などの技術者に依頼をすることで表現することも可能ではあるが、これもメッセージの下書き工程、下書きを読み取る工程、読み取った下書きに基づいて加工装置を設定する工程、加工装置によって加工する工程など、メッセージが彫刻された骨壷は製造に時間がかかってしまう。さらにこの場合、遺族等が直接的に骨壷にメッセージを残せるものではない。つまり、メッセージを表現する直接的な人物が制限されてしまう問題が生じる。
【0012】
また、骨壷にメッセージを彫刻で表現する場合においては、骨壷の多くが白い無垢の磁器で形成されており、その白い骨壷の表層をサンドブラスト加工やレーザー加工などで削るだけなので、表面の凹凸のみでメッセージを表現することになる。このため、骨壷へのメッセージを複数の色で表現することができない、つまりメッセージの表現色が制限されてしまう問題がある。
【0013】
たとえば彫刻が施された骨壷の凹部に色を載せることで、メッセージ部分を凹部に載せた色で着色することも考えられるが、凹部という限られた場所に色を着色するため、メッセージ部分を複数の色を重ねた色で表現することは困難である。
【0014】
そこで骨壷へメッセージ表現が制限されない方法として、所望色の色ペンや筆などで骨壷に直接的に遺族がメッセージを描く方法が考えられる。この場合、ペンや筆などで骨壷にメッセージを描くだけなので、幼児でも容易にメッセージを表現することができ、メッセージの表現色が制限されることもない。
【0015】
ところが、磁器で形成される骨壷は、耐水性の向上や、特有の光沢感を付与して審美性を向上させるために釉薬が釉掛けされており、骨壷の表面がガラス質で覆われていることで、ペンや筆などで表現されたメッセージが色落ちしてしまう問題ある。
【0016】
一般に骨壷は、お墓の下部分にあるカロートと呼ばれる部分を開け、カロート内の空洞部分に骨壷が収納される。カロートは地面の下にあるお墓もあり、カロート内に水が浸入したり、結露などによりカロート内に水分が発生したりする場合がある。
【0017】
このカロート内に発生した水分が骨壷の表面に付着すると、釉薬によってガラス質に形成された骨壷の表面にペンや筆などで描かれたメッセージが載せられているだけなので、
せっかく描いてもらったメッセージが色落ちして消えてしまう、つまり遺族等による故人へのメッセージが消失してしまうおそれがある。
【0018】
それだけでなく、カロート内で色落ちしたペンや筆などで表現されたメッセージの着色料により、カロート内を汚してしまったり、他の骨壷を染めてしまったり、骨壷内部に収納された遺骨を染めてしまうおそれがある。このため、骨壷にペンや筆などで遺族等が直接的にメッセージを表現することは困難であった。
【0019】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、故人へのメッセージの表現が制限されることなく、故人へのメッセージが容易に短時間で表現できる骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では上記問題を解決するために、故人へのメッセージが表示される骨壷において、微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、前記メッセージが手書きで描出される描出部を備えることを特徴とする骨壷が提供される。
これにより、メッセージが手書きで描出される描出部が、微細な多孔構造による多孔質材料で形成される。
【0021】
また、本発明では、故人へのメッセージが表示される骨壷の製造方法において、前記メッセージが筆記具を用いて手書きで描出される描出部が、微細な多孔構造による多孔質材料で形成される工程を備えることを特徴とする骨壷の製造方法が提供される。
これにより、メッセージが手書きで描出される描出部が、微細な多孔構造による多孔質材料で形成される。
【0022】
また、本発明では、骨壷提供システムにおいて、微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報を記録する骨壷特定情報記録手段と、前記骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、前記依頼者が骨壷に前記メッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報を記録する描出者特定情報記録手段と、描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、前記メッセージを手書きで描出する筆記具とを備えることを特徴とする骨壷提供システムが提供される。
【0023】
これにより、微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報が骨壷特定情報記録手段に記録され、骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、依頼者が骨壷にメッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報が描出者特定情報記録手段に記録され、筆記具を用いて描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、メッセージを手書きで描出する。
【0024】
また、本発明では、骨壷提供方法において、微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報を骨壷特定情報記録手段に記録する工程と、前記骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、前記依頼者が骨壷に前記メッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報を描出者特定情報記録手段に記録する工程と、描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、筆記具を用いて前記メッセージを手書きで描出する工程とを備えることを特徴とする骨壷提供方法が提供される。
【0025】
これにより、微細な多孔構造による多孔質材料で形成され、故人へのメッセージが手書きで描出される描出部を具備する骨壷のうち、依頼者が選択した骨壷を特定する特定情報である骨壷特定情報が骨壷特定情報記録手段に記録され、骨壷特定情報記録手段に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷に対して、依頼者が骨壷にメッセージを描出してもらいたい人物である描出者を特定する特定情報である描出者特定情報が描出者特定情報記録手段に記録され、筆記具を用いて描出者特定情報記録手段に記録された描出者が、メッセージを手書きで描出する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の骨壷、骨壷の製造方法、骨壷提供システム、および骨壷提供方法によれば、メッセージが手書きで描出される描出部が、微細な多孔構造による多孔質材料で形成されるので、故人へのメッセージの表現が年齢や技術などによって制限されることなく、故人へのメッセージが容易に短時間で表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施の形態に係る骨壷全体を示す正面図である。
図2】第2の実施の形態の骨壷を提供する骨壷提供システムによる、生前の故人である依頼者に骨壷が案内されてから、依頼者の遺骨が骨壷に収納されるまでの処理を示すフローチャート、およびブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る骨壷全体を示す正面図である。
【0029】
図1に示すように、骨壷100は、遺骨が収納される収納部110、収納部110に遺骨を収納するために設けられた開口部を覆い塞ぐための蓋部120、および故人へのメッセージを描出するための描出部130を備えている。
【0030】
収納部110は、内側に遺骨を収納するための空間を備えた円筒形状をした容器であって、粘土で円筒の容器形状に形成したものに、釉薬をかけない状態かつ低い温度で軽く焼き固めた磁器であって、いわゆる素焼きと呼ばれる容器である。収納部110の形状は、円筒形状のほか、任意の形状で形成することもできる。
【0031】
蓋部120は、収納部110の内側に設けられた空間に遺骨を収納するための開口部を覆い塞ぐためのものであって、収納部110と同じ素焼きによる磁器が、円筒状に形成されたものである。蓋部120の形状は、収納部110に設けられた開口部を覆い塞ぐことができれば、任意の形状で形成してもよい。
【0032】
描出部130は、遺族、故人の友人や知人、あるいは生前の故人自身など(以後、遺族等と称する)から故人へのメッセージMを描出するためのものであって、収納部110の外側周面または内側周面、あるいは蓋部120の外側周面または内側周面のうち、少なくとも一部に設けられている。
【0033】
なお、本実施の形態では、骨壷100を素焼きのみで形成することで、収納部110の外側周面と内側周面、および蓋部120の外側周面と内側周面すべてに描出部130を設けることができる。ここでいう外側周面とは収納部110の底面も含んでいる。
【0034】
遺族等が描出するメッセージMの例としては、故人への思いを文字や絵で遺族等が表現したもの、故人の名前や戒名、故人の好きな言葉や模様など、骨壷100に描出可能なあらゆるものが挙げられる。
【0035】
さらに具体的には、たとえばメッセージMは、メッセージM1のように幼児が描出部130に描く故人の絵や、メッセージM2のように個人に対する感謝の気持ちを文字で表現したものや、メッセージM3のように骨壷100の装飾効果を高めるために花のような装飾物を描出することができる。
【0036】
描出部130が設けられる本実施の形態の骨壷100は、微細な多孔構造による多孔質材料である素焼きで形成されているため、描出部130も微細な多孔構造による多孔質材料で形成される。
【0037】
このため釉薬によってガラス質に形成された従来の骨壷の表面にペンや筆などの筆記具でメッセージMを描出する場合とは異なり、描出した筆記具によるメッセージMの着色料を、微細な多孔構造に染み込ませることができる。このため、描出部130に描出されたメッセージMが色落ちすることがない。
【0038】
さらに遺族等が描出部130に描出する筆記具は、油性ペン、油性色鉛筆、または油性クレヨンなどの油性筆記具が好ましく、特に油性ペンが好ましい。油性筆記具である油性ペンの原材料には、アルコールなどの溶剤、顔料や染料などの着色料、バインダーとしての樹脂、これらの原材料を定着させるための定着剤が含まれている。
【0039】
油性ペンなどの油性筆記具によって描出部130に描出されたメッセージMの油性着色料は、描出部130による多孔構造に染み込んだ状態で定着剤によって描出部130に定着させることができる。
【0040】
このため、カロート内に水が浸入したり、結露などによりカロート内に水分が発生したりしても、多孔構造に染み込んで定着したメッセージMは、色落ちして消えてしまうことがない、つまり遺族等による故人へのメッセージMが消失してしまうことがない。
【0041】
また、カロート内でメッセージMの着色料が色落ちすることがないので、カロート内を汚してしまったり、他の骨壷100を染めてしまったり、骨壷100の内部に収納された遺骨を染めてしまうことがない。
【0042】
前述のように、従来の骨壷は釉薬によってガラス質に形成されていたため、色ペンや筆などでメッセージMを描出したとしても、その描出したメッセージMが消失してしまうおそれがあった。
【0043】
また、従来の釉薬によってガラス質に形成された骨壷に、たとえ油性ペンなどの油性筆記具で描出したとしても、ガラス質の表層に着色料が載せられているだけなので、骨壷と骨壷との接触により着色料が剥離してしまったり、雨季や乾季による湿気と乾気の繰り返しによりガラス質の表層から着色料が剥離してしまったりするおそれがある。
【0044】
これに対して、本実施の形態の骨壷100では、多孔構造に染み込んで定着したメッセージMは、色落ちして消えてしまうことがない。このため筆記具で容易にメッセージMを描出部130に描出することができる。
【0045】
つまり、筆記具を手にすることができれば、幼児であっても遺骨に一番近い骨壷100にメッセージMを容易に描出することができる。よって、遺族等が直接的にメッセージMを骨壷100に表現することができ、さらに彫刻によるメッセージの表現と比較して技術や年齢によって表現が制限されることがなく、故人へのメッセージMが容易に短時間で表現できる。
【0046】
また、様々な色の着色料による筆記具を選択することができるので、メッセージを複数の色で表現することができる。また、彫刻による凹部という限られた場所に色を着色するわけではないので、骨壷100に設けられた描出部130の範囲で色を重ねたりして自在にメッセージMを表現することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、収納部110の外側周面全体と内側周面全体、および蓋部120の外側周面全体と内側周面全体に描出部130を設ける例で説明したが、遺族等に描出してもらいたい部位を限定し、骨壷100の任意の場所に描出部130を設けることができ、描出部130を除いた場所に釉薬を釉掛けした磁器による骨壷100を形成してもよい。
【0048】
また、骨壷100の内部に水が浸入してしまうことを防止するために、比較的にメッセージMが描出されにくい内側周面にのみ、釉薬を釉掛けすることでガラス質の表層にすることで防水処理をし、外側周面全体を素焼きによる多孔構造の描出部130とすることもできる。
【0049】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の骨壷提供システムは、第1の実施の形態で示した骨壷を提供するために必要な情報を記憶するための情報記録手段を備えること以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0050】
図2は、第2の実施の形態の骨壷を提供する骨壷提供システムによる、生前の故人である依頼者に骨壷が案内されてから、依頼者の遺骨が骨壷に収納されるまでの処理を示すフローチャート、およびブロック図である。
【0051】
第1の実施の形態の骨壷100は、前述のように故人へのメッセージの表現が制限されることなく、故人へのメッセージが容易に短時間で表現できるものである。このため幼児でも容易に短時間で骨壷100にメッセージMを描出することができる。これにより、故人は生前に、たとえば自分の幼い子供にでも、生前にメッセージMを描出してもらうことを選択することができる。
【0052】
本実施の形態の骨壷提供システム1000は、生前の故人である依頼者200が、生前に選択した骨壷100に対して、あらかじめメッセージMを描出してもらいたい人で後に遺族等となる描出者300からメッセージMを描出してもらい、依頼者200が選択し遺族等となる描出者300に描出してもらった骨壷100を確認することができる骨壷100の提供システムである。
【0053】
骨壷提供システム1000は、骨壷100、依頼者200が選択した骨壷100を特定する特定情報である骨壷特定情報を記録する骨壷特定情報記録手段400、骨壷特定情報記録手段400に記録された骨壷特定情報に関連付けられた骨壷100に対して、依頼者200が骨壷100にメッセージMを描出してもらいたい人物である描出者300を特定する特定情報である描出者特定情報を記録する描出者特定情報記録手段500、および描出者特定情報記録手段500に記録された描出者300が、メッセージMを手書きで描出する筆記具600を備えている。
【0054】
以下、図2に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
〔ステップS11〕
生前の故人である依頼者200に骨壷100が案内される。
具体的には、依頼者200が死去する前に、たとえば人生の終わりのための活動のひとつとして、骨壷100の提供者である葬儀屋や終活イベント業者などから、自分が死去後に自分の遺骨を収納して欲しい単数または複数種類の骨壷100が案内される。
【0055】
依頼者200に案内される骨壷100は、微細な多孔構造による多孔質材料で形成されるメッセージが手書きで描出される描出部130を備えていればよく、様々な形状や材質の骨壷100が案内される。
【0056】
〔ステップS12〕
依頼者200は骨壷100を選択する。
具体的には、ステップS11で案内された骨壷100の中から、自分が死去後に自分の遺骨を収納して欲しい任意の骨壷100を依頼者200が選択する。
【0057】
ステップS12で選択された特定の骨壷100は、その選択された骨壷100を特定する特定情報である骨壷特定情報として、その骨壷特定情報が骨壷特定情報記録手段400に記録される。
【0058】
骨壷特定情報が記録される骨壷特定情報記録手段400の例としては、たとえばデータやプログラムを保存したり記憶したりするための装置で、コンピュータの構成要素の一つである情報記憶装置が挙げられる。
【0059】
また、骨壷100を提供する葬儀屋や終活イベント業者などが、依頼者200から骨壷100の受注する受注書や発注書等を骨壷特定情報記録手段400として、その骨壷特定情報記録手段400の一部に骨壷特定情報である骨壷100の商品番号などを記録してもよい。
【0060】
〔ステップS13〕
依頼者200は描出者300を特定する。
具体的には、ステップS12で選択された骨壷100に対して、あらかじめメッセージMを描出してもらいたい人で後に遺族等となる描出者300を依頼者200が選択する。ステップS13で特定される描出者300は一人でも複数であってもよい。また、依頼者200が描出者300の一部となることもできる。
【0061】
ステップS13で特定された描出者300は、その描出者300を特定する特定情報である描出者特定情報として、その描出者特定情報がステップS12で特定された骨壷100に関連付けられて描出者特定情報記録手段500に記録される。
【0062】
描出者特定情報が記録される描出者特定情報記録手段500の例としては、たとえばデータやプログラムを保存したり記憶したりするための装置で、コンピュータの構成要素の一つである情報記憶装置が挙げられる。
【0063】
また、骨壷100を提供する葬儀屋や終活イベント業者などが、依頼者200から骨壷100の受注する受注書や発注書等を描出者特定情報記録手段500として、その描出者特定情報記録手段500の一部に描出者特定情報である描出者300の名前などの個人情報を記録してもよい。
【0064】
この描出者特定情報がステップS12で特定された骨壷100に関連付けられて描出者特定情報記録手段500に記録されることで、骨壷100に描出されたメッセージMを誰が描出したかという情報を、依頼者200の死去後でも遺族等が知ることができる。
【0065】
〔ステップS14〕
描出者300が描出部130にメッセージMを描出する。
具体的には、ステップS13で特定された描出者300が、骨壷100に設けられた微細な多孔構造による多孔質材料で形成され描出部130に、筆記具600を用いた手書きでメッセージMを描出する。
【0066】
〔ステップS15〕
依頼者200または描出者300が骨壷100を確認し、依頼者200または描出者300が以下を判断する。
まず、依頼者200または描出者300は、ステップS14でメッセージMが描出された骨壷100を見て、骨壷100や骨壷100に描出されたメッセージMを確認する。
【0067】
依頼者200または描出者300が、骨壷100にメッセージMを追記したいと判断したときは、処理をステップS14に進める。
具体的には、骨壷100に設けられた描出部130の余白部分などに、追記したいメッセージがあると依頼者200または描出者300が判断した場合は、処理をステップS14に進めて、描出部130にメッセージMを描出する。
【0068】
また、依頼者200が、骨壷100にメッセージMを描出する人物をさらに特定したいと判断したときは、処理をステップS13に進める。
具体的には、骨壷100に設けられた描出部130の余白部分などに、ステップS13で特定された描出者300とは異なる人にメッセージMを描出してほしいと依頼者200が判断した場合は、処理をステップS13に進めて、描出者300を依頼者200が特定する。
【0069】
また、依頼者200が、骨壷100を選択したいと判断したときは、処理をステップS12に進める。
具体的には、メッセージMが描出された骨壷100を交換したい、またはメッセージMが描出された骨壷100が複数欲しいなどと依頼者200が判断したときは、処理をステップS12に進める。
【0070】
なお、ステップS15は、依頼者200または描出者300が可能な限り繰り返し行うことができる。また、ステップS15で、依頼者200または描出者300が骨壷100を確認し、依頼者200または描出者300が上記の判断を不要とした場合は、処理をステップS16に進める。
【0071】
〔ステップS16〕
収骨のタイミングであるかどうかを判断する。
具体的には、依頼者200が死去したのちに、依頼者200の遺骨が骨壷100に収納されるタイミングであるかどうかを、遺族等や骨壷100の提供者である葬儀屋や終活イベント業者などが判断する。
【0072】
依頼者200の遺骨が骨壷100に収納されるタイミングでないと判断した場合は、処理をステップS15に進め、依頼者200の遺骨が骨壷100に収納されるタイミングであると判断した場合は、処理をステップS16に進める。
【0073】
〔ステップS17〕
依頼者200の遺骨が収納される。
ステップS16で、骨壷100に収納されるタイミングであると判断された依頼者200の遺骨が、骨壷100に収納される。
【0074】
これにより、ステップS11で案内された骨壷100の中から、任意の骨壷100をステップS12で依頼者200が選択し、ステップS13で依頼者200が描出者300を特定し、依頼者200に特定された描出者300が、ステップS14で骨壷100の描出部130にメッセージMを描出し、ステップS15でメッセージが描出された骨壷100を依頼者200が確認できるので、描出されるメッセージMの表現が制限されることなく、依頼者200が望んだ描出者300によってメッセージMが描出された世界に一つだけの骨壷100に、依頼者200の遺骨を収納することができる。
【0075】
なお、本実施の形態の骨壷提供システム1000では、依頼者200の遺骨が骨壷100に収納される前にメッセージMが骨壷100の描出部130に描出される例で説明したが、依頼者200の遺骨が収納された後の骨壷100の描出部130に、描出者300がメッセージMを描出することもできる。
【符号の説明】
【0076】
100 骨壷
110 収納部
120 蓋部
130 描出部
200 依頼者
300 描出者
400 骨壷特定情報記録手段
500 描出者特定情報記録手段
600 筆記具
1000 骨壷提供システム
M メッセージ
図1
図2