(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029321
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/02 20060101AFI20240228BHJP
H01H 50/36 20060101ALI20240228BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240228BHJP
H01F 7/126 20060101ALI20240228BHJP
H01H 50/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01H50/02 B
H01H50/36 B
H01F7/16 T
H01F7/16 K
H01H50/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131513
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】菊地 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充哉
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA09
5E048AB04
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】電磁コイルのガタつきを防止することで摩耗粉の発生を抑制し、接点機構の動作安定を図ることができる電磁接触器を提供する。
【解決手段】下部フレーム2A及び上部フレーム2Bからなる筐体と、上部フレームに内装された接点機構10と、下部フレームに内装されて接点機構をオン・オフ駆動する電磁石ユニット12とを備え、電磁石ユニットはボビン21及び巻線22を有する電磁コイル15を備えている。ボビンは、外周に巻線が巻かれる円筒部21aと、円筒部の下端に設けた下部フランジ21bと、円筒部の上端に設けた上部フランジ21c3とを備えている。下部フレーム及び上部フレームを連結した際に、下部フレームの内部に設けたコイル押上げ部23aが下部フランジに対して上部フレームに向う方向の押し付け力を作用し、上部フランジが上部フレームの内部に設けた内壁24a,24bに当接することで電磁コイルが固定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部フレーム及び上部フレームからなる筐体と、前記上部フレームに内装された接点機構と、前記下部フレームに内装されて前記接点機構をオン・オフ駆動する電磁石ユニットと、を備え、
前記電磁石ユニットはボビン及び巻線を有する電磁コイルを備え、前記ボビンは、外周に前記巻線が巻かれる円筒部と、前記円筒部の下端に設けた下部フランジと、前記円筒部の上端に設けた上部フランジと、を備えており、
前記下部フレーム及び前記上部フレームを連結した際に、
前記下部フレームの内部に設けたコイル押上げ部が前記下部フランジに対して前記上部フレームに向う方向の押し付け力を作用し、前記上部フランジが前記上部フレームの内部に設けた内壁に当接することで、前記電磁コイルが固定されていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記コイル押上げ部は突起部であり、前記突起部は、前記円筒部から離間した前記下部フランジの外周縁を弾性変形させた状態で前記押し付け力を作用していることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
複数の前記突起部が、前記下部フランジの略均等に離れた複数の位置で前記押し付け力を作用していることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関し、特に、電磁石ユニットを構成する電磁コイルの固定構造に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器として、例えば特許文献1の装置が知られている。特許文献1の電磁接触器は、上下分割形の本体ケースを構成する下部フレーム及び上部フレームと、上部フレームに内装された接点機構と、下部フレームに内装されて接点機構をオン・オフ駆動する電磁石ユニットと、を備えている。接点機構は、上部フレームに固定された固定接触子と、上部フレームの内部に移動自在に配置され、電磁石ユニットに連結される接点支えと、接点支えに支持され、固定接触子の固定接点に可動接点が接離する可動接触子と、を備えている。
【0003】
電磁石ユニットは、下部フレームに固定された固定鉄心と、接点支えに固定され、固定鉄心の接極面に自身の接極面を対向配置されている可動鉄心と、固定鉄心に設けた中央突出部の周囲に巻装されている電磁コイルと、電磁コイル及び可動鉄心の間に配置した復帰バネと、を備えている。電磁コイルは、ボビン及び巻線を有しており、ボビンは、固定鉄心の中央突出部が挿入され、巻線が巻き付けられる円筒部と、円筒部の軸方向両端に設けた上部フランジ及び下部フランジとで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1の電磁接触器は、接点機構の可動接触子及び固定接触子が頻繁にオン・オフ動作を繰り返すと、本体ケースの内部部品のガタつきや暴れにより摩耗粉が発生する。特に、電磁コイルがガタつくと、ボビンが本体ケースの内壁と接触することで摩耗粉が発生しやすくなり、摩耗粉が接点機構に侵入してしまうと、接点機構の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、電磁コイルのガタつきや暴れを防止することで摩耗粉の発生を抑制し、接点機構の動作安定を図ることができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、下部フレーム及び上部フレームからなる筐体と、上部フレームに内装された接点機構と、下部フレームに内装されて接点機構をオン・オフ駆動する電磁石ユニットと、を備え、電磁石ユニットはボビン及び巻線を有する電磁コイルを備え、ボビンは、外周に前記巻線が巻かれる円筒部と、円筒部の下端に設けた下部フランジと、円筒部の上端に設けた上部フランジと、を備えており、下部フレーム及び上部フレームを連結した際に、下部フレームの内部に設けたコイル押上げ部が下部フランジに対して上部フレームに向う方向の押し付け力を作用し、上部フランジが上部フレームの内部に設けた内壁に当接することで、電磁コイルが固定されるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁接触器によれば、電磁コイルのガタつきを防止することで摩耗粉の発生を抑制し、接点機構の動作安定を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る一実施形態の電磁接触器を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態の電磁接触器を前方から示した図である。
【
図4】一実施形態の電磁接触器において、第1フレームに電磁石ユニットを構成する電磁コイルを配置する前の状態を示す図である。
【
図6】第1フレーム及び第2フレームを連結したときに電磁コイルが固定されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0013】
本発明に係る一実施形態の電磁接触器1について、
図1から
図6を参照して説明する。
【0014】
図1に示す電磁接触器1は、電気絶縁性を有する合成樹脂で形成した第1フレーム(下部フレーム)2Aと第2フレーム(上部フレーム)2Bとで筐体が構成されている。第1フレーム2Aは有底角筒状体であり、後端四隅に取付板部3aが形成され、前端側に凸状係合部3bが形成されている。第2フレーム2Bは前後端が開口した角筒体であり、後端側に係合孔部4aが形成され、前端開口部に消弧カバー5が着脱自在に装着されている。そして、第1フレーム2Aの凸状係合部3bと第2フレーム2Bの係合孔部4aとをスナップフィット結合で係合させることで、第1フレーム2A及び第2フレーム2Bが着脱自在に連結されている。
【0015】
図2に示すように、第2フレーム2Bの上方には、電源側端子部6a、補助端子部6b及びコイル端子部8が形成され、第2フレーム2Bの下方には、負荷側端子部7a及び補助端子部7bが形成されている。
【0016】
図3は、電磁接触器1の内部構造を示すものであり、第2フレーム2Bに内装された接点機構10と、第1フレーム2Aに内装され、接点機構10をオン・オフ駆動する電磁石ユニット12と、を備えている。
【0017】
電磁石ユニット12は、第1フレーム2Aの底側に配置された固定鉄心13と、固定鉄心13の接極面13aに自身の接極面14aが対向して配置された可動鉄心14と、固定鉄心13の中央突出部13bに挿通されて配置された電磁コイル15と、電磁コイル15の上部と可動鉄心14との間に配置した復帰バネ16と、を備えている。
【0018】
接点機構10は、第2フレーム2Bに固定されて左右方向に並べて配置した複数組の電源側固定接触子18a及び負荷側固定接触子18bと、第2フレーム2Bの内部に前後方向に移動自在に装着されている接点支え19と、接点支え19に支持され、複数組の電源側固定接触子18aの固定接点18a1及び複数組の負荷側固定接触子18bの固定接点18b1に可動接点20a,20bが接離可能となるように前後方向に移動する複数の可動接触子20と、を備えている。
【0019】
電磁コイル15は、
図3及び
図4に示すように、ボビン21及び巻線22を有している。ボビン21は、電気絶縁性を有する合成樹脂で形成されており、巻線22を巻き付けている円筒部21a(
図3参照)と、円筒部21aの軸方向の一端(後端)に形成された四角形状のフランジ部21bと、円筒部21aの軸方向の他端に形成された端子・バネ支持部21cと、を備えている。端子・バネ支持部21cは、コイル端子部8と巻線22との接続部を支持する端子支持部21c1と、復帰バネ16の後端を載せて支持するバネ支持部21c2と、前方にブロック状に突出している複数の当接部21c3と、を備えている。
【0020】
図4に示すように、第1フレーム2Aには、内底から前方に立ち上がる内壁23が形成されており、この内壁23の前端に、前側から見てL字形状で突出するコイル押上げ部である突起部23aが形成されている。内壁23は、
図5に示すように、第1フレーム2Aの内底の上下方向及び左右方向に離間した4箇所の位置において立ち上がっている。そして、4箇所の内壁23の前端に設けた突起部23aが四角形状のフランジ部21bの角部に当接するように、第1フレーム2A内に電磁コイル15が配置される。
【0021】
次に、第1フレーム2A及び第2フレーム2Bの内部に配置されている電磁コイル15の固定構造について説明する。
【0022】
図6に示すように、第1フレーム2Aの凸状係合部3bと第2フレーム2Bの係合孔部4aとのスナップフィット結合により第2フレーム2B及び第1フレーム2Aを連結すると、電磁コイル15の当接部21c3が、第2フレーム2Bの後側を向く内壁24a,24bに当接するとともに、第1フレーム2Aの内底に設けた複数の内壁23の前端に設けた突起部23aから電磁コイル15のフランジ部21bに対して第2フレーム2Bに向う方向に押し付け力Fが作用する。これにより、電磁コイル15は、第1フレーム2A側から第2フレーム2B側に押し付けられた状態で固定され、接点機構10の可動接触子20が電源側固定接触子18a及び負荷側固定接触子18bが頻繁にオン・オフ動作を繰り返しても、電磁コイル15はガタつきや暴れが発生しない。
【0023】
また、電磁コイル15の四角形状のフランジ部21bの角部は撓みやすい部位であり、第1フレーム2Aの突起部23aから押し付け力Fが作用することで、フランジ部21bの角部は前側に弾性変形している。
【0024】
また、四角形状のフランジ部21bの上下方向及び左右方向に離間した4箇所の角部に、第1フレーム2Aの4箇所の突起部23aから押し付け力Fが作用しているので、電磁コイル15のフランジ部21bの全域に均等な押し付け力Fが作用する。
【0025】
また、電磁コイル15のフランジ部21bに押し付け力を作用する突起部23aは、剛性が大きいL字形状に形成されているので、長期に渡ってフランジ部21bに押し付け力Fを作用することが可能である。
【0026】
次に、本実施形態の電磁接触器1の効果について説明する。
【0027】
本実施形態の電磁接触器1によると、電磁石ユニット12を構成する電磁コイル15は、第1フレーム2A側から第2フレーム2B側に押し付けられた状態で固定されているので、接点機構10が頻繁にオン・オフ動作を繰り返しても、電磁コイル15のガタつきや暴れが発生せず、電磁コイル15と第1フレーム2A及び第2フレーム2Bの内壁との接触による摩耗粉の発生を抑制することができるので、接点機構10の動作安定を図ることができる。
【0028】
また、第1フレーム2Aの突起部23aから押し付け力Fが作用しているフランジ部21bの角部は弾性変形した状態とされており、この角部から弾性復帰力が働くことで、第1フレーム2Aの突起部23a及びフランジ部21bの角部が常に密着した状態となり、安定した押し付け力Fをフランジ部21bに作用することができる。
【0029】
また、第1フレーム2Aの4箇所の突起部23aからフランジ部21bの全域に均等な押し付け力Fが作用しているので、電磁コイル15のガタつきや暴れを確実に防止することができる。
【0030】
さらに、第1フレーム2Aの4箇所の突起部23aは、剛性が大きいL字形状に形成されているので、長期に渡ってフランジ部21bに押し付け力Fを作用することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、第1フレーム2Aの突起部23aをL字形状に形成したが、本発明の要旨がこれに限定されるものではなく、剛性が大きい形状、円筒形状、多角形状などであってもよい。
【0032】
また、本実施形態では、電磁コイル15のフランジ部21bを四角形状の部材とし、このフランジ部21bの角部に、第1フレーム2Aの突起部23aが当接する構造として説明したが、本発明の要旨がこれに限定されるものではなく、例えば、円板形状のフランジ部とし、この円板形状のフランジ部の撓みやすい外縁側に第1フレーム2Aの突起部23aが当接する構造としても、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電磁接触器
2A 第1フレーム(下部フレーム)
2B 第2フレーム(上部フレーム)
3a 取付板部
3b 凸状係合部
4a 係合孔部
5 消弧カバー
6a 電源側端子部
6b 負荷側端子部
7a 補助端子部
7b 補助端子部
8 コイル端子部
10 接点機構
12 電磁石ユニット
13 固定鉄心
13a 接極面
13b 中央突出部
14 可動鉄心
14a 接極面
15 電磁コイル
16 復帰バネ
18a 電源側固定接触子
18a1 固定接点
18b 負荷側固定接触子
18b1 固定接点
19 接点支え
20 可動接触子
20a,20b 可動接点
21 ボビン
21a 円筒部
21b フランジ部(下部フランジ)
21c 端子・バネ支持部
21c1 端子支持部
21c2 バネ支持部
21c3 当接部(上部フランジ)
22 巻線
23 内壁
23a 突起部
24a,24b 内壁(上部フレームの内部に設けた内壁)
F 押し付け力