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特開2024-29327三相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029327
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】三相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/257 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H02M5/257 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131525
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕彦
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750AA02
5H750AA10
5H750BA01
5H750BA05
5H750CC02
5H750CC06
5H750DD14
5H750DD17
5H750EE03
(57)【要約】
【課題】三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現する。
【解決手段】三相電力変換装置1は、三相交流電源2からコイル3に対して単相の電力を供給する。三相電力変換装置1は、三相交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、三相交流電源2及びコイル3に対して電気的に接続された複数のスイッチング素子SW1~SW6を有するスイッチング回路10と、複数のスイッチング素子SW1~SW6の駆動を制御する駆動制御部20と、を有する。駆動制御部20は、スイッチング回路10を力行動作または回生動作で動作させるように、三相交流電源2からコイル3に対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する三相電力変換装置において、
前記交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、
を有し、
前記駆動制御部は、前記スイッチング回路を力行動作または回生動作させるように、前記交流電源から前記コイルに対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち、各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する、
三相電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三相電力変換装置において、
前記駆動制御部は、前記スイッチング回路を還流動作で動作させるように、前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する、
三相電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三相電力変換装置において、
前記駆動制御部は、
入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、
前記スイッチング回路を力行動作または回生動作で動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記スイッチング回路を還流動作で動作させるように前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する、
三相電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三相電力変換装置において、
前記駆動制御部は、
前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を力行動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、
前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、
前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させるように前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する、
三相電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の三相電力変換装置と、
前記三相電力変換装置によって一方向に周期的な電流が供給される前記コイルと、
前記コイルへの通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部と、
を有する、
電磁振動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する三相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源からコイルに対して電力を供給する電力変換装置が知られている。このような電力変換装置として、例えば特許文献1に開示される電磁振動機用単相インバータ回路が知られている。
【0003】
前記電磁振動用単相インバータ回路は、2個のスイッチング手段及び2個のダイオードがブリッジ接続された逆変換回路を有する。前記逆変換回路の入力側は、直流電源に接続されていて、前記逆変換回路の出力側は、電磁振動機用励磁コイルの入力端子に接続されている。このような回路構成により、前記電磁振動用単相インバータ回路は、一方向のみに断続的に電流を供給する単相インバータを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-267608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に開示されている電磁振動用単相インバータ回路では、直流電源を用いている。前記直流電源は、例えば、交流電源とコンデンサを有する整流回路とによって、負荷に対して直流電力を供給するように構成されている。また、前記特許文献1に開示されている電磁振動用単相インバータ回路のように、誘導性負荷であるコイルに対して電力を供給する回路では、前記コイルに電力を供給する力行動作と、前記コイルから電源側に電力を戻す回生動作とを繰り返す。
【0006】
上述のようにコンデンサを有する整流回路を用いて、誘導性負荷であるコイルに電力を供給する場合、上述のような力行動作及び回生動作によって、前記コンデンサに流れる電流が変動するため、前記整流回路の電圧が変動する。この電圧変動を適正範囲内に抑えるためには、前記コンデンサの静電容量を大型化する必要があり、このような要件を満たすコンデンサとして電解コンデンサが用いられるのが一般的である。
【0007】
前記コンデンサは、単相インバータ回路の力行動作及び回生動作によって生じる電流変動により、発熱する。上述のように前記コンデンサとして電解コンデンサを用いた場合、前記電流変動や周囲温度による自己発熱によって劣化するため、他の部品に比べて寿命が短くなる可能性がある。
【0008】
このように、前記整流回路のコンデンサによって、電力変換装置全体のサイズが大きくなるとともに、電力変換装置の寿命が決まることになる。
【0009】
これに対し、前記コンデンサを用いずに、単相交流から単相交流を直接出力する単相電力変換装置が考えられている。例えば、前記単相電力変換装置は、電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を2組有し、この2組の一対のスイッチング素子がコイルに対して電気的に並列に接続されている。
【0010】
しかしながら、上述のようなコンデンサレスの単相電力変換装置では、コイルに対して印加される電圧が、単相電圧の入力の瞬時値に依存する。そのため、前記コイルに流れる電流を正弦波状の電流指令どおりに制御できず、前記コイルに流れる電流の波形が歪む期間が存在する。このような電流波形の歪みは、入力電力の周波数に対して出力電力の周波数が高くなるほど大きい。
【0011】
よって、コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置が望まれている。
【0012】
本発明の目的は、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る三相電力変換装置は、三相交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する三相電力変換装置である。この三相電力変換装置は、前記三相交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記三相交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を有する。前記駆動制御部は、前記スイッチング回路を力行動作または回生動作させるように、前記三相交流電源から前記コイルに対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち、各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する(第1の構成)。
【0014】
スイッチング回路によって、三相交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給できるとともに、前記三相交流電源から前記コイルに対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを抑制しつつ、前記スイッチング回路を力行動作または回生動作で動作させることができる。
【0015】
したがって、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現できる。
【0016】
前記第1の構成において、前記駆動制御部は、前記スイッチング回路を還流動作で動作させるように、前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する(第2の構成)。
【0017】
このように、スイッチング回路の還流動作を、各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動によって実現することにより、前記スイッチング回路の動作を力行動作または回生動作から前記還流動作に切り替える際のスイッチング素子のスイッチング回数を減らすことができる。よって、前記スイッチング回路で発生する損失を抑制しつつ、前記スイッチング回路の還流動作を容易に実現できる。
【0018】
前記第2の構成において、前記駆動制御部は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記スイッチング回路を力行動作または回生動作で動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記スイッチング回路を還流動作で動作させるように前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する(第3の構成)。
【0019】
電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、前記スイッチング回路を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させることができる。
【0020】
したがって、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現できる。
【0021】
前記第3の構成において、前記駆動制御部は、前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を力行動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が増加傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つ前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させるように前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する(第4の構成)。
【0022】
電流指令が増加していてコイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路を力行動作させることにより、三相交流電源から前記コイルに電力を供給することができる。一方、前記電流指令が減少していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、前記スイッチング回路を回生動作させることにより、前記コイルから前記三相交流電源に電力を戻すことができる。また、前記電流指令が増加していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少していて前記コイルに流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、前記スイッチング回路を還流動作させることにより、前記スイッチング回路で電流を還流させることができる。これにより、スイッチング回路を構成するスイッチング素子のスイッチング回数を減らしつつ、前記コイルに流れる電流を前記電流指令に近づけることができる。
【0023】
上述の構成により、第1の構成における駆動制御部の動作を実現することができる。よって、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現できる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る電磁振動機は、前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成を有する三相電力変換装置と、前記三相電力変換装置によって一方向に流れて周期的に変化する電流が供給される前記コイルと、前記コイルへの通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部と、を有する(第5の構成)。
【0025】
これにより、コンパクト且つ長寿命で、コイルに流れる電流波形の歪みが小さくて精度良く駆動可能な電磁振動機を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係る三相電力変換装置は、三相交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、前記三相交流電源及び前記コイルに対して電気的に接続された複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を有する。前記駆動制御部は、前記三相交流電源から前記コイルに対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧において各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のうち、少なくとも一つの相のスイッチング素子の駆動を制御することにより、前記スイッチング回路を力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させる。
【0027】
これにより、コンデンサを有する整流回路を用いることなく、前記三相交流電源から前記コイルに対して一方向に流れて周期的に変化し且つ電流波形の歪みが小さい電流を供給して、前記コイルを含む回路における力行動作、回生動作及び還流動作を実現できる。したがって、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能な電力変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態に係る三相電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図2図2は、三相の入力電圧の波形の一例を示す図である。
図3図3は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路が力行動作を行う場合の電流の流れを示す。
図4図4は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路が回生動作を行う場合の電流の流れを示す。
図5図5は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路が還流動作を行う場合の電流の流れを示す。
図6図6は、各周期期間におけるスイッチング回路のスイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示す図である。
図7図7は、各周期期間の移行時におけるスイッチング回路のスイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示す図である。
図8図8は、スイッチング回路が各動作を行った場合にコイルに流れる電流の波形の一例を示す図である。
図9図9は、単相の交流電源に接続されるスイッチング回路の一例を示す回路図である。
図10図10は、単相の交流電源からスイッチング回路に交流電力を供給した場合において、コイルの電圧及び電流を入力電源周波数に対して3倍以上の高周波で出力した波形を示す図である。
図11図11は、三相交流電源から本実施形態の構成のスイッチング回路に交流電力を供給した場合において、コイルの電圧及び電流を入力電源周波数に対して3倍以上の高周波で出力した波形を示す図である。
図12図12は、三相電力変換装置及びコイルを備えた電磁振動機の一例の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
(三相電力変換装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る三相電力変換装置1の概略構成を示す図である。この三相電力変換装置1は、三相交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する。すなわち、三相電力変換装置1は、コイル3に対して電流を一方向に流すとともに、コイル3に流れる電流を周期的に変化させる。コイル3は、例えば、電磁振動機で用いられる電磁振動機用コイルである。前記電磁振動機の構成は、後述する。
【0031】
三相電力変換装置1は、スイッチング回路10と、駆動制御部20とを有する。スイッチング回路10は、複数のスイッチング素子SW1~SW6と、ダイオードD1~D6とを有する。
【0032】
複数のスイッチング素子SW1~SW6のうちスイッチング素子SW1,SW2は、電気的に直列に接続されている。よって、スイッチング素子SW1,SW2は、第1スイッチングレグ11を構成する。なお、スイッチング素子SW1,SW2は、本発明における一対のスイッチング素子である。
【0033】
複数のスイッチング素子SW1~SW6のうちスイッチング素子SW3,SW4は、電気的に直列に接続されている。よって、スイッチング素子SW3,SW4は、第2スイッチングレグ12を構成する。なお、スイッチング素子SW3,SW4は、本発明における一対のスイッチング素子である。
【0034】
複数のスイッチング素子SW1~SW6のうちスイッチング素子SW5,SW6は、電気的に直列に接続されている。よって、スイッチング素子SW5,SW6は、第3スイッチングレグ13を構成する。なお、スイッチング素子SW5,SW6は、本発明における一対のスイッチング素子である。
【0035】
以上のように、スイッチング回路10は、第1スイッチングレグ11と、第2スイッチングレグ12と、第3スイッチングレグ13とを有する。すなわち、スイッチング回路10は、3組の一対のスイッチング素子を有する。
【0036】
第1スイッチングレグ11、第2スイッチングレグ12及び第3スイッチングレグ13は、コイル3に対して電気的に並列に接続されている。具体的には、第1スイッチングレグ11、第2スイッチングレグ12及び第3スイッチングレグ13の一端はコイル3の他端に電気的に接続され、第1スイッチングレグ11、第2スイッチングレグ12及び第3スイッチングレグ13の他端はコイル3の一端に電気的に接続されている。
【0037】
第1スイッチングレグ11におけるスイッチング素子SW1,SW2の中点、第2スイッチングレグ12におけるスイッチング素子SW3,SW4の中点、及び、第3スイッチングレグ13におけるスイッチング素子SW5,SW6の中点は、それぞれ、三相交流電源2における三相2a,2b,2cに電気的に接続されている。具体的には、第1スイッチングレグ11におけるスイッチング素子SW1,SW2の中点は、三相交流電源2のr相2aに電気的に接続され、第2スイッチングレグ12におけるスイッチング素子SW3,SW4の中点は、三相交流電源2のs相2bに電気的に接続され、第3スイッチングレグ13におけるスイッチング素子SW5,SW6の中点は、三相交流電源2のt相2cに電気的に接続されている。
【0038】
ダイオードD1~D6は、スイッチング素子SW1~SW6とコイル3との間で、スイッチング素子SW1~SW6に対して電気的に直列に接続されている。具体的には、ダイオードD1は、スイッチング素子SW1とコイル3との間に、コイル3からスイッチング素子SW1に電流が流れるように設けられている。ダイオードD2は、スイッチング素子SW2とコイル3との間に、スイッチング素子SW2からコイル3に電流が流れるように設けられている。ダイオードD3は、スイッチング素子SW3とコイル3との間に、コイル3からスイッチング素子SW3に電流が流れるように設けられている。ダイオードD4は、スイッチング素子SW4とコイル3との間に、スイッチング素子SW4からコイル3に電流が流れるように設けられている。ダイオードD5は、スイッチング素子SW5とコイル3との間に、コイル3からスイッチング素子SW5に電流が流れるように設けられている。ダイオードD6は、スイッチング素子SW6とコイル3との間に、スイッチング素子SW6からコイル3に電流が流れるように設けられている。
【0039】
上述のようにスイッチング回路10にダイオードD1~D6を設けることにより、スイッチング素子SW1~SW6に逆方向に電流が流れるのを防止できる。よって、スイッチング素子SW1~SW6に、耐圧があまり高くないスイッチング素子を用いることができる。しかも、スイッチング回路10内での電流の流れを確保するために、スイッチング素子SW1~SW6をスイッチング動作させる際に全てオン状態にする場合でも、スイッチング素子SW1~SW6に逆方向に電流が流れるのをダイオードD1~D6によって防止できる。
【0040】
三相交流電源2からスイッチング回路10に入力される入力電圧は、位相が120度ずれた三相の交流電圧である。図2は、三相の入力電圧の波形の一例を示す図である。図2に示すように、三相の入力電圧の大小関係は、60度の周期間隔で変化している。すなわち、図2では、三相の入力電圧の大小関係は、期間a~fで変化している。前記周期間隔は、所定の位相範囲を意味しており、本実施形態の例では、60度の位相範囲である。
【0041】
駆動制御部20は、入力される電流指令に応じてスイッチング素子SW1~SW6の駆動を制御する。駆動制御部20は、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令とコイル3に流れる電流との差に基づいて、例えば図2に示す各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する駆動信号を生成する。前記電流指令の変化傾向は、例えば、前記電流指令の時間当たりの変化量が増加している場合には増加傾向であり、前記電流指令の時間当たりの変化量が減少している場合には減少傾向である。
【0042】
具体的には、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を後述する力行動作させるように、図2に示す各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。また、駆動制御部20は、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を後述する回生動作させるように、図2に示す各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。また、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を後述する還流動作させるように、図2に示す各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。
【0043】
詳しくは後述するが、前記力行動作は、スイッチング素子SW1~SW6の駆動により、スイッチング回路10が三相交流電源2からコイル3に対して電力を供給する動作である。前記回生動作は、スイッチング素子SW1~SW6の駆動により、スイッチング回路10がコイル3から三相交流電源2に電力を戻す動作である。前記還流動作は、スイッチング素子SW1~SW6の駆動により、スイッチング回路10及びコイル3によって構成される回路内で電流を還流させる動作である。
【0044】
以上のような構成を有するスイッチング回路10では、駆動制御部20によるスイッチング素子SW1~SW6の駆動により、三相交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給することができる。しかも、スイッチング素子SW1~SW6の駆動により、スイッチング回路10を、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作させることができる。以下で、スイッチング回路10の各動作について説明する。
【0045】
(力行動作)
まず、スイッチング回路10の力行動作について、図3を用いて説明する。スイッチング回路10の力行動作は、上述のとおり、電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合に行われる動作である。スイッチング回路10の力行動作では、図2に示す各周期期間において最大電圧及び最小電圧の相の組み合わせに応じて、スイッチング素子SW1~SW6のうち少なくとも2つのスイッチング素子がオン状態である。
【0046】
図3は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路10が力行動作を行う場合の電流の流れを示す。図2に示すように、期間aでは、入力電圧の三相において、最大電圧はr相であり、最小電圧はs相である。よって、期間aにおいてスイッチング回路10が力行動作を行う場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW2と、最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3とを駆動させる。
【0047】
前記力行動作において、r相のスイッチング素子SW2及びs相のスイッチング素子SW3は、それぞれオン状態であり、r相のスイッチング素子SW1及びs相のスイッチング素子SW4は、それぞれオフ状態である。この場合、図3に実線矢印で示すように、三相交流電源2のr相2aから、スイッチング素子SW2、ダイオードD2、コイル3、ダイオードD3及びスイッチング素子SW3の順に回路内に電流が流れる。
【0048】
特に図示しないが、図2に示す期間bの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW2と、最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5とを駆動させる。また、図2に示す期間cの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW4と、最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5とを駆動させる。また、図2に示す期間dの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW4と、最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1とを駆動させる。また、図2に示す期間eの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW6と、最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1とを駆動させる。また、図2に示す期間fの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW6と、最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3とを駆動させる。
【0049】
これにより、スイッチング回路10によって、三相交流電源2からコイル3に対して一方向に周期的な電流を供給することができる。すなわち、三相交流電源2からコイル3に対して電力が供給される。
【0050】
(回生動作)
スイッチング回路10の回生動作について、図4を用いて説明する。スイッチング回路10の回生動作は、上述のとおり、電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合に行われる動作である。スイッチング回路10の回生動作では、図2に示す各周期期間において最大電圧及び最小電圧の相の組み合わせに応じて、スイッチング素子SW1~SW6のうち少なくとも2つのスイッチング素子がオン状態である。
【0051】
図4は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路10が回生動作を行う場合の電流の流れを示す。期間aにおいてスイッチング回路10が回生動作を行う場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1と、最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW4とを駆動させる。
【0052】
前記回生動作において、r相のスイッチング素子SW1及びs相のスイッチング素子SW4は、それぞれオン状態であり、r相のスイッチング素子SW2及びs相のスイッチング素子SW3は、それぞれオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、図4に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD1、スイッチング素子SW1、三相交流電源2、スイッチング素子SW4及びダイオードD4の順に回路内に電流が流れる。すなわち、コイル3から三相交流電源2に向かって回路内に電流が流れる。
【0053】
特に図示しないが、図2に示す期間bの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1と、最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW6とを駆動させる。また、図2に示す期間cの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3と、最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW6とを駆動させる。また、図2に示す期間dの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3と、最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW2とを駆動させる。また、図2に示す期間eの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5と、最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW2とを駆動させる。また、図2に示す期間fの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5と、最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW4とを駆動させる。
【0054】
これにより、スイッチング回路10によって、コイル3から三相交流電源2に対して電流を流すことができる。すなわち、コイル3から三相交流電源2に対して電力が戻される。
【0055】
(還流動作)
スイッチング回路10の還流動作について、図5を用いて説明する。スイッチング回路10の還流動作は、上述のとおり、電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合に、行われる動作である。スイッチング回路10の還流動作では、図2に示す各周期期間において最大電圧及び最小電圧の相の組み合わせに応じて、スイッチング素子SW1~SW6のうち少なくとも2つのスイッチング素子がオン状態である。
【0056】
図5は、図2に示す各周期期間のうち期間aにおいてスイッチング回路10が還流動作を行う場合の電流の流れを示す。期間aにおいてスイッチング回路10が還流動作を行う場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1,SW2または最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3,SW4のうち一方の相のスイッチング素子を駆動させる。
【0057】
前記還流動作において、例えば、スイッチング素子SW3,SW4がオン状態の場合には、残りのスイッチング素子SW1,SW2,SW5,SW6はオフ状態である。この場合、誘導性負荷であるコイル3には電流が一方向に流れ続けるため、図5に実線矢印で示すように、コイル3から、ダイオードD3、スイッチング素子SW3、スイッチング素子SW4及びダイオードD4の順に回路内に電流が流れる。
【0058】
特に図示しないが、図2に示す期間bの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1,SW2または最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5,SW6の一方を駆動させる。また、図2に示す期間cの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3,SW4または最小電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5,SW6の一方を駆動させる。また、図2に示す期間dの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3,SW4または最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1,SW2の一方を駆動させる。また、図2に示す期間eの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5,SW6または最小電圧の相であるr相のスイッチング素子SW1,SW2の一方を駆動させる。また、図2に示す期間fの場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相であるt相のスイッチング素子SW5,SW6または最小電圧の相であるs相のスイッチング素子SW3,SW4の一方を駆動させる。
【0059】
次に、図6を用いて、スイッチング回路10の力行動作、回生動作及び還流動作を切り替える場合のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンについて説明する。図6は、スイッチング回路10の力行動作、回生動作及び還流動作を切り替える場合のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンの一例を示す図である。図6において、丸印は、スイッチング素子のオン状態を示していて、バツ印は、スイッチング素子のオフ状態を示している。
【0060】
以下では、一例として、図2に示す期間aにおいて、スイッチング回路10が図3に示す力行動作から図5に示す還流動作に切り替わって、その後、図4に示す回生動作に切り替わる場合について説明する。
【0061】
電流指令の増加傾向においてスイッチング回路10が図3に示す力行動作を行っている場合、コイル3に流れる電流が電流指令値よりも大きくなると、駆動制御部20は、スイッチング回路10の動作を還流動作に変更する。具体的には、駆動制御部20は、s相のスイッチング素子SW4をオン状態にする。この状態でも、s相の入力電圧が最も低いため、スイッチング素子SW4には電流が流れない。その後、r相のスイッチング素子SW2をオフ状態にすることにより、s相のスイッチング素子SW3,SW4によって還流回路が形成される。これにより、スイッチング回路10の動作は、図5に示す還流動作になる。
【0062】
このように、スイッチング回路10の力行動作を還流動作に切り替える際には、還流動作のための前記還流回路を形成した後に、スイッチング素子SW2をオフ状態にする。これにより、前記還流回路に、より確実に電流を流すことができる。
【0063】
電流指令の減少傾向においてスイッチング回路10が図5に示す還流動作を行っている場合、コイル3に流れる電流が電流指令値よりも大きくなると、駆動制御部20は、スイッチング回路10の動作を回生動作に変更する。具体的には、駆動制御部20は、r相のスイッチング素子SW1をオン状態にする。この状態でも、s相のスイッチング素子SW3,SW4に電流が流れ続ける。その後、s相のスイッチング素子SW3をオフ状態にすることにより、r相のスイッチング素子SW1及びs相のスイッチング素子SW4によって回生回路が形成される。これにより、スイッチング回路10の動作は、図4に示す回生動作になる。
【0064】
このように、スイッチング回路10の還流動作を回生動作に切り替える際には、回生動作のための前記回生回路を形成した後に、スイッチング素子SW3をオフ状態にする。これにより、前記回生回路に、より確実に電流を流すことができる。
【0065】
なお、スイッチング回路10の動作を回生動作から還流動作を介して力行動作に切り替える場合には、上述のスイッチング回路10の動作とは逆の動作を行えばよい。
【0066】
図2に示す期間bから期間fの各周期期間においても、期間aと同様、スイッチング回路10の力行動作及び回生動作では、最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子を駆動させる。また、スイッチング回路10の還流動作では、最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子を駆動させる。よって、図2に示す期間bから期間fの各周期期間においても、期間aと同様、スイッチング回路10の動作を力行動作、回生動作及び還流動作で切り替えて各モードで動作させる場合には、その周期期間において最大電圧及び最小電圧の相のうち少なくとも一つの相のスイッチング素子を駆動させる。
【0067】
また、図2に示す期間bから期間fの各周期期間においても、期間aと同様、スイッチング回路10の動作を力行動作から還流動作に切り替える際には、還流回路を形成した後に、前記還流回路に電流を流す。また、スイッチング回路10の動作を還流動作から回生動作に切り替える際には、回生回路を形成した後に、前記回生回路に電流を流す。スイッチング回路10の動作を、回生動作から還流動作を介して力行動作に切り替える場合も同様である。
【0068】
次に、図7を用いて、図2に示す各周期期間の移行時におけるスイッチング回路10のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンについて説明する。図7は、各周期期間の移行時におけるスイッチング回路10のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンの一例を示す図である。図7において、丸印は、スイッチング素子のオン状態を示していて、バツ印は、スイッチング素子のオフ状態を示している。
【0069】
図7に示すように、本実施形態では、各周期期間の移行時には、スイッチング回路10の動作は、移行前の周期期間における還流動作から、移行後の周期期間における還流動作に切り替わる。例えば、期間aから期間bに移行する際には、スイッチング回路10の動作は、期間aにおける還流動作から、期間bにおける還流動作に切り替わる。
【0070】
以下では、一例として、図2に示す期間aから期間bへ移行する際のスイッチング回路10のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンについて、詳しく説明する。
【0071】
駆動制御部20は、入力電圧等に基づいて期間aから期間bへの移行を認識すると、スイッチング回路10の動作を期間aの還流動作に切り替える。期間aにおいてスイッチング回路10の動作を還流動作に切り替える方法は、既述のとおりであるため、詳しい説明を省略する。期間aにおけるスイッチング回路10の還流動作では、s相のスイッチング素子SW3,SW4がオン状態であり、それ以外のスイッチング素子SW1,SW2,SW5,SW6がオフ状態である。
【0072】
次に、駆動制御部20は、t相のスイッチング素子SW5,SW6をオン状態にする。これにより、s相のスイッチング素子SW3,SW4をオフ状態にした際に還流回路を確保できる。なお、期間bでは、s相の電圧がt相の電圧よりも高いため、スイッチング回路10は、三相交流電源2から、スイッチング素子SW4、コイル3及びスイッチング素子SW5に電流が流れる力行状態になる。しかしながら、期間aから期間bに移行する際には、s相の電圧とt相の電圧との差が小さく、力行状態の時間も短いため、コイル3に流れる電流は大きく変化しない。
【0073】
続いて、駆動制御部20は、s相のスイッチング素子SW3,SW4をオフ状態にするとともに、r相のスイッチング素子SW1をオン状態にする。そして、駆動制御部20は、t相のスイッチング素子SW5をオフ状態にするとともに、r相のスイッチング素子SW2をオン状態にする。これにより、r相のスイッチング素子SW1,SW2による還流回路を形成することができる。
【0074】
その後、t相のスイッチング素子SW6をオフ状態にすることにより、スイッチング回路10の動作を期間bの還流動作にする。すなわち、スイッチング回路10において、r相のスイッチング素子SW1,SW2がオン状態であり、残りのスイッチング素子SW3~SW6がオフ状態である。
【0075】
以上より、スイッチング回路10の動作を、期間aの還流動作から期間bの還流動作に切り替えることができる。周期期間を移行する際にも、電流が流れる経路を確保した状態で電流の流れを切り替えることにより、コイル3に流れる電流をより確実に確保できる。
【0076】
なお、各周期期間の移行時におけるスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンは、図7に示すスイッチングパターン以外であってもよい。
【0077】
次に、スイッチング回路10が上述の各動作を行った場合に、コイル3に流れる電流の一例を説明する。図8は、スイッチング回路10が上述の各動作を行った場合にコイル3に流れる電流(コイル電流)の波形の一例を示す図である。なお、図8には、説明のために、三相交流電源2から出力される入力交流電流(一相)の波形も細実線で示す。
【0078】
スイッチング回路10が上述の各動作を行うことにより、コイル3に流れる電流波形として、図8に示すように正弦波状の電流指令(破線)に近い電流波形(太実線)が得られる。
【0079】
また、図8には、スイッチング回路10が還流動作を行うタイミングの一例も図示されている。図8に示すように、スイッチング回路10の還流動作は、電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合に行われる。
【0080】
図10は、単相の交流電源からスイッチング回路に交流電力を供給した場合において、コイルの電圧及び電流を入力電源周波数に対して3倍以上の高周波で出力した波形を示す図である。図11は、三相交流電源2から本実施形態の構成のスイッチング回路10に交流電力を供給した場合において、コイルの電圧及び電流を入力電源周波数に対して3倍以上の高周波で出力した波形を示す図である。図10及び図11において、それぞれ、(a)はコイル3の電圧(コイル電圧)の波形であり、(b)はコイル3に流れる電流(コイル電流)の波形である。
【0081】
なお、図10に示す電圧波形及び電流波形が得られるスイッチング回路1000は、図9に示すように、4つのスイッチング素子SW101~SW104を有する。一対のスイッチング素子SW101,SW102は、電気的に直列に接続されていて、第1スイッチングレグ1011を構成する。一対のスイッチング素子SW103,SW104は、電気的に直列に接続されていて、第2スイッチングレグ1012を構成する。これらの2組の一対のスイッチング素子の中点は、それぞれ交流電源2000に電気的に接続されている。また、2組の一対のスイッチング素子の一端がコイル3の他端に電気的に接続され、2組の一対のスイッチング素子の他端がコイル3の一端に電気的に接続されている。なお、4つのスイッチング素子SW101~SW104とコイル3との間には、それぞれ、ダイオードD101~D104が設けられている。
【0082】
図10に示すように、単相の交流電源2000に接続されたスイッチング回路1000の場合、コイル3の電流波形は、歪みが大きい。これに対し、図11に示すように、三相交流電源2に接続されたスイッチング回路10の場合、コイル3の電流波形は、歪みが小さい。よって、本実施形態の構成により、高周波出力でも、電流波形の歪みを抑制することができる。
【0083】
本実施形態の三相電力変換装置1は、三相交流電源2からコイル3に対して単相の電力を供給する。この三相電力変換装置1は、三相交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給するように、三相交流電源2及びコイル3に対して電気的に接続された複数のスイッチング素子SW1~SW6を有するスイッチング回路10と、複数のスイッチング素子SW1~SW6の駆動を制御する駆動制御部20と、を有する。駆動制御部20は、スイッチング回路10を力行動作または回生動作で動作させるように、三相交流電源2からコイル3に対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち、各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。
【0084】
複数のスイッチング素子SW1~SW6は、それぞれ電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を3組含む。前記3組の一対のスイッチング素子は、コイル3に対して電気的に並列に接続されているとともに、それぞれの中点が三相交流電源2の三相に電気的に接続されている。
【0085】
本実施形態のスイッチング回路10によって、三相交流電源2からコイル3に対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給できるとともに、三相交流電源2からコイル3に対して印加され且つ最大電圧の相が所定の周期間隔で変化する三相の電圧のうち各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御することにより、コイル3に流れる電流の歪みを抑制しつつ、スイッチング回路10を力行動作または回生動作で動作させることができる。
【0086】
したがって、三相交流電源2からコイル3に対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、コイル3に流れる電流の波形の歪みを低減可能な三相電力変換装置1を実現できる。
【0087】
しかも、本実施形態の三相電力変換装置1では、コンデンサが不要になることで、電源スイッチがオン状態になる際に前記コンデンサへの突入電流を考慮する必要がなくなる。よって、本実施形態の三相電力変換装置1では、突入電流防止回路が不要になる。
【0088】
さらに、前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子を駆動させることにより、前記各周期間隔において最大の電圧差を用いて、コイル3に流す電流を制御することができる。これにより、コイル3に流す電流をより広範囲で制御できる。
【0089】
また、本実施形態では、駆動制御部20は、スイッチング回路10を還流動作で動作させるように、前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。
【0090】
このように、スイッチング回路10の還流動作を、各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動によって実現することにより、スイッチング回路10の動作を力行動作または回生動作から前記還流動作に切り替える際のスイッチング素子のスイッチング回数を減らすことができる。よって、スイッチング回路10で発生する損失を抑制しつつ、スイッチング回路10の還流動作を容易に実現できる。
【0091】
また、本実施形態では、駆動制御部20は、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を力行動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を回生動作させるように前記各周期間隔で最大電圧及び最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御し、前記電流指令が増加傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少傾向であり且つコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を還流動作させるように前記各周期間隔で最大電圧または最小電圧の相のスイッチング素子の駆動を制御する。
【0092】
これにより、前記電流指令が増加していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を力行動作させることにより、三相交流電源2からコイル3に電力を供給することができる。一方、前記電流指令が減少していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合には、スイッチング回路10を回生動作させることにより、コイル3から三相交流電源2に電力を戻すことができる。また、前記電流指令が増加していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも大きい場合、または、前記電流指令が減少していてコイル3に流れる電流が前記電流指令よりも小さい場合には、スイッチング回路10を還流動作させることにより、スイッチング回路10で電流を還流させることができる。これにより、スイッチング回路10を構成するスイッチング素子SW1~SW6のスイッチング回数を減らしつつ、コイル3に流れる電流を前記電流指令に近づけることができる。
【0093】
よって、上述の構成により、三相交流電源2からコイル3に対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、コイル3に流れる電流の波形の歪みを低減可能な三相電力変換装置1を実現できる。
【0094】
(電磁振動機)
図12は、上述の構成を有する三相電力変換装置1及びコイル3を備えた電磁振動機100の一例の概略構成を示す模式図である。電磁振動機100は、パーツフィーダ、リニアフィーダ、ボウルフィーダ、振動搬送機などのように、コイル3に生じる磁気吸引力を利用して振動可能な構成であれば、どのような装置であってもよい。
【0095】
図12に示すように、電磁振動機100は、三相電力変換装置1と、コイル3と、弾性変形部101と、可動コア102と、トラフ103と、ベース部104とを備える。
【0096】
電磁振動機100は、三相電力変換装置1によって、三相交流電源2からコイル3に対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する。コイル3は、三相電力変換装置1を介して三相交流電源2から供給される電流によって、磁気吸引力を生じる。
【0097】
弾性変形部101は、ベース部104とトラフ103とを接続する。本実施形態では、電磁振動機100は、一対の弾性変形部101を有する。弾性変形部101は、弾性変形可能な板状部材である。弾性変形部101は、例えば、一方向に延びる金属製の板バネである。なお、弾性変形部101は、例えば、共振周波数がコイル3の駆動周波数(磁気吸引力が発生する周波数)と一致している。
【0098】
可動コア102は、トラフ103に接続されている。可動コア102は、コイル3の近傍に位置し、コイルに生じた磁気吸引力によってコイル3に引き寄せられる。
【0099】
上述の構成により、コイル3に対して電流が一方向に流れて周期的に変化すると、コイル3に生じる磁気吸引力が変化して、可動コア102がコイル3に対して近づく方向と離れる方向とに移動する。すなわち、コイル3に流れる電流が大きくなると、コイル3に生じる磁気吸引力が増大してコイル3に可動コア102が引き寄せられる一方、コイル3に流れる電流が小さくなると、コイル3に生じる磁気吸引力が減少して可動コア102がコイル3から離れる。
【0100】
これにより、可動コア102が接続されるトラフ103も、コイル3に対して近づく方向と離れる方向に移動する。トラフ103は、一対の弾性変形部101によってベース部104に弾性支持されているため、上下方向及び左右方向に振動を生じる。
【0101】
本実施形態では、電磁振動機100は、三相電力変換装置1と、三相電力変換装置1によって一方向に周期的な電流が供給されるコイル3と、コイル3への通電によって弾性変形を生じて振動を発生する弾性変形部101と、を有する。
【0102】
既述のとおり、三相電力変換装置1は、三相交流電源からコイルに対してコンデンサを用いずに単相の電力を供給し、前記コイルに流れる電流の波形の歪みを低減可能である。電磁振動機100はコンデンサ不要で且つ電流波形の歪みを低減可能な三相電力変換装置1を有するため、コンパクト且つ長寿命で、精度良く駆動可能な電磁振動機100を実現することができる。
【0103】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0104】
前記実施形態では、スイッチング回路10は、スイッチング素子SW1~SW6とコイル3との間で、スイッチング素子SW1~SW6に対して電気的に直列に接続されたダイオードD1~D6を有する。しかしながら、スイッチング回路は、一部のスイッチング素子とコイルとの間に、前記一部のスイッチング素子に対して電気的に直列に接続されたダイオードを有していてもよい。また、スイッチング回路は、ダイオードを有していなくてもよい。
【0105】
前記実施形態では、ダイオードD1~D6は、スイッチング回路10において、スイッチング素子SW1~SW6とコイル3との間に位置する。しかしながら、スイッチング素子が、ダイオードとコイルとの間に位置していてもよい。
【0106】
前記実施形態では、複数のスイッチング素子SW1~SW6は、それぞれ電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子を3組含む。前記3組の一対のスイッチング素子は、コイル3に対して電気的に並列に接続されているとともに、それぞれの中点が三相交流電源2の三相に電気的に接続されている。しかしながら、スイッチング回路は、三相交流電源からコイルに対して一方向に流れて周期的に変化する電流を供給することができ、入力される電流指令の変化傾向及び前記電流指令と前記コイルに流れる電流との差に基づいて、力行動作、回生動作及び還流動作のいずれかで動作可能な構成を有していれば、他の構成であってもよい。
【0107】
前記実施形態では、スイッチング回路10が還流動作を行う場合には、駆動制御部20は、最大電圧の相のスイッチング素子または最小電圧の相のスイッチング素子を駆動させる。しかしながら、駆動制御部は、スイッチング回路において還流動作を実現可能なスイッチング素子の組み合わせであれば、他の組み合わせのスイッチング素子を駆動させてもよい。
【0108】
前記実施形態では、各周期期間の移行時には、スイッチング回路10の動作は、移行前の周期期間における還流動作から、移行後の周期期間における還流動作に切り替わる。しかしながら、各周期期間の移行時において、スイッチング回路の動作は、移行前の周期期間における力行動作から、移行後の周期期間における力行動作に切り替わってもよいし、移行前の周期期間における回生動作から、移行後の周期期間における回生動作に切り替わってもよい。また、各周期期間の移行時において、移行前の周期期間におけるスイッチング回路の動作と移行後の周期期間におけるスイッチング回路の動作とが異なっていてもよい。
【0109】
前記実施形態では、三相電力変換装置1は、電磁振動機100に用いられている。しかしながら、三相電力変換装置は、コイルに対して、一方向に流れて周期的に変化する電流を供給する構成であれば、電磁振動機以外の構成に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、三相交流電源からコイルに対して単相の電力を供給する三相電力変換装置及びそれを備えた電磁振動機に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 三相電力変換装置
2 三相交流電源
2a r相
2b s相
2c t相
3 コイル
10、1000 スイッチング回路
11、1011 第1スイッチングレグ
12、1012 第2スイッチングレグ
13 第3スイッチングレグ
20 駆動制御部
100 電磁振動機
101 弾性変形部
102 可動コア
103 トラフ
104 ベース部
2000 単相交流電源
SW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6 スイッチング素子
SW101、SW102、SW103、SW104 スイッチング素子
D1、D2、D3、D4、D5、D6 ダイオード
D101,D102、D103、D104 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12