(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029342
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
B41F 23/08 20060101AFI20240228BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20240228BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B41F23/08
B41M3/00 Z
B41J2/01 129
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131543
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁人
(72)【発明者】
【氏名】埋金 紗綾
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA44
2H113AA01
2H113AA05
2H113BA00
2H113BA05
2H113BB22
2H113DA46
2H113DA64
2H113FA32
2H113FA43
2H113FA44
2H113FA46
(57)【要約】
【課題】シートに付着している付着物の厚みを減らすことと、付着物の表面が平滑になってシートの被処理部に光沢感を付与することが可能な処理装置を提供する。
【解決手段】
シート4を保持して搬送する印刷胴16(搬送装置)と、印刷胴16に保持されたシート4の処理面に処理を施す第1~第4のインクジェットヘッド22~25、インキ乾燥手段27(処理装置本体)とを備える。インキ乾燥手段27よりシート4の搬送方向下流側に設けられ、シート4の処理面を押圧する第1、第2の押圧胴41,48(押圧手段)とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを保持して搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に保持されたシートの処理面に処理を施す処理装置本体と、
前記処理装置本体よりシートの搬送方向下流側に設けられ、シートの処理面を押圧する押圧手段とを備えていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置において、
前記処理装置本体は、前記搬送装置に保持されたシートの処理面にインキを吐出する複数の印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドよりシートの搬送方向下流側に設けられ、シートに付着した前記インキを乾燥させるインキ乾燥装置とによって構成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の処理装置において、
シートの表裏両面がそれぞれ印刷面となる両面印刷と、シートの一方の面が印刷面となる片面印刷とを実施可能に構成され、
前記押圧手段は、
両面印刷時にシートの一方の印刷面を押圧する第1の押圧手段と、
両面印刷時にシートの他方の印刷面を押圧するとともに片面印刷時にシートの印刷面を押圧する第2の押圧手段とによって構成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の処理装置において、
さらに、
片面印刷と両面印刷とのいずれか一方の印刷モードに切替えられる制御装置と、
前記インキ乾燥装置よりシートの搬送方向下流側に位置して、前記制御装置の印刷モードに応じてシートの搬送先を切替える搬送経路切替手段とを備え、
前記搬送経路切替手段によるシートの搬送先は、
前記制御装置の印刷モードが両面印刷の印刷モードであってシートの片方の面のみに印刷が終了している場合にシートの表裏を反転させて前記搬送装置に戻す反転機構と、
片面印刷の印刷モードである場合、もしくは両面印刷の印刷モードでシートの両面に印刷が終了している場合に、シートを排紙する排紙機構とであることを特徴とする処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の処理装置において、
前記第1の押圧手段が前記反転機構に備えられ、
前記第2の押圧手段が前記排紙機構に備えられていることを特徴とする処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の処理装置において、
前記第1の押圧手段と前記第2の押圧手段とが前記排紙機構に備えられていることを特徴とする処理装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の処理装置において、
前記反転機構は、
前記搬送経路切替手段からシートを受け取る反転側渡胴と、
前記反転側渡胴からシートを受け取る反転前胴と、
前記反転前胴に搬送されるシートの紙尻をくわえて前記搬送装置に戻す反転手段と
から構成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の処理装置において、
前記排紙機構は、
前記搬送経路切替手段からシートを受け取る第1の排紙側渡胴と、
前記第1の排紙側渡胴からシートを受け取る第2の排紙側渡胴と、
前記第2の排紙側渡胴からシートを受け取り排紙する排紙手段と
から構成されていることを特徴とする処理装置。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載の処理装置において、
前記排紙機構は、
前記搬送経路切替手段からシートを受け取る第1の排紙側渡胴と、
前記第1の排紙側渡胴からシートを受け取る第2の排紙側渡胴と、
前記第2の排紙側渡胴からシートを受け取り排紙する排紙手段と
から構成されていることを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを押圧する押圧手段を備えた処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに何らかの物質を付着させる処理装置として、インクジェット印刷装置、オフセット印刷装置などの印刷装置や、ニスを塗布するコーティング装置などがある。インクジェット印刷装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
特許文献1に示すインクジェット印刷装置は、シートにインキを吐出する第1~第4のインクジェットヘッドと、これらの第1~第4のインクジェットヘッドよりシートの搬送方向下流側に設けられた乾燥装置とを備えている。
乾燥装置は、インキ乾燥ランプによって構成されている。インキは、インキ乾燥ランプから赤外線や紫外線が照射されることにより乾燥(硬化)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すインクジェット印刷装置においては、インキがシートに吐出された直後にインキ乾燥ランプから赤外線や紫外線が照射される。このため、インキがシートに染み込む以前に硬化してしまい、一般的なオフセット印刷と比べてインキ膜厚が厚くなるという問題があった。この不具合は、印刷にUV硬化インキを使用することにより顕著に現れる。この理由は二つある。第1の理由は、UV硬化インキは、油性インキ等の他のインキと比べて粘度が高く、紙からなるシートに染み込み難いからである。第2の理由は、UV硬化インキは、油性インキなどに比べて硬化速度が極めて速いからである。
【0005】
インキ膜厚が厚いと、後工程でシートに対して何らかの加工を行う場合に加工が妨げられる。すなわち、インキ膜厚が厚いと、後加工における加工性の低下につながる。また、絵柄が部分的に集中している場合には、この絵柄部分が部分的に盛り上がり、シートを平らに積層することができなくなるという問題も生じる。
さらに、インキ膜厚が厚くなるとインキ表面の平滑性が低くなり、光が乱反射してしまうため、オフセット印刷に比べて印刷部の光沢感が弱いという問題もある。特に、中間調部は、ベタ部に対してインキが点在することになって光が乱反射し易いから、光沢感が更に弱くなる。このような不具合は、シートの処理面に付着物を付着させる処理を行う点でインクジェット印刷装置と共通しているオフセット印刷装置やコーティング装置などでも同様に生じる。
【0006】
本発明の目的は、シートに付着している付着物の厚みを減らすことと、付着物の表面が平滑になってシートの被処理部に光沢感を付与することが可能な処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る処理装置は、シートを保持して搬送する搬送装置と、前記搬送装置に保持されたシートの処理面に処理を施す処理装置本体と、前記処理装置本体よりシートの搬送方向下流側に設けられ、シートの処理面を押圧する押圧手段とを備えているものである。ここでいう「処理」とは、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷や、ニス塗布等のコーティングなどを含む。
【0008】
本発明は、前記処理装置において、前記処理装置本体は、前記搬送装置に保持されたシートの処理面にインキを吐出する複数の印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドよりシートの搬送方向下流側に設けられ、シートに付着した前記インキを乾燥させるインキ乾燥装置とによって構成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記処理装置において、シートの表裏両面がそれぞれ印刷面となる両面印刷と、シートの一方の面が印刷面となる片面印刷とを実施可能に構成され、前記押圧手段は、両面印刷時にシートの一方の印刷面を押圧する第1の押圧手段と、両面印刷時にシートの他方の印刷面を押圧するとともに片面印刷時にシートの印刷面を押圧する第2の押圧手段とによって構成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記処理装置において、さらに、片面印刷と両面印刷とのいずれか一方の印刷モードに切替えられる制御装置と、前記インキ乾燥装置よりシートの搬送方向下流側に位置して、前記制御装置の印刷モードに応じてシートの搬送先を切替える搬送経路切替手段とを備え、前記搬送経路切替手段によるシートの搬送先は、前記制御装置の印刷モードが両面印刷の印刷モードであってシートの片方の面のみに印刷が終了している場合にシートの表裏を反転させて前記搬送装置に戻す反転機構と、片面印刷の印刷モードである場合、もしくは両面印刷の印刷モードでシートの両面に印刷が終了している場合に、シートを排紙する排紙機構とであってもよい。
【0011】
本発明は、前記処理装置において、前記第1の押圧手段が前記反転機構に備えられ、前記第2の押圧手段が前記排紙機構に備えられていてもよい。
【0012】
本発明は、前記処理装置において、前記第1の押圧手段と前記第2の押圧手段とが前記排紙機構に備えられていてもよい。
【0013】
本発明は、前記処理装置において、前記反転機構は、前記搬送経路切替手段からシートを受け取る反転側渡胴と、前記反転側渡胴からシートを受け取る反転前胴と、前記反転前胴に搬送されるシートの紙尻をくわえて前記搬送装置に戻す反転手段とから構成されていてもよい。
【0014】
本発明は、前記処理装置において、前記排紙機構は、前記搬送経路切替手段からシートを受け取る第1の排紙側渡胴と、前記第1の排紙側渡胴からシートを受け取る第2の排紙側渡胴と、前記第2の排紙側渡胴からシートを受け取り排紙する排紙手段とから構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シートの処理面で盛り上がった付着物が押圧手段によって押されてシートに押し込まれるから、付着物の厚みを減らすことができる。また、付着物の表面が平滑になるから、シートの被処理部に光沢感を付与することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態による印刷装置の側面図である。
【
図4】
図4は、制御系の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第2の実施の形態による印刷装置の側面図である。
【
図7】
図7は、第3の実施の形態による印刷装置の一部を示す側面図である。
【
図8】
図8は、第4の実施の形態による印刷装置の側面図である。
【
図9】
図9は、第5の実施の形態による印刷装置の側面図である。
【
図10】
図10は、第6の実施の形態によるコーティング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る処理装置の一実施の形態を
図1~
図4を参照して詳細に説明する。ここでは本発明をインクジェット印刷装置に適用する場合の一実施の形態を説明する。
図1に示す印刷装置1は、
図1において最も右に位置するフィーダー部2から印刷ユニット3にシート4を搬送し、この印刷ユニット3においてシート4の片面または両面に印刷を施すものである。この実施の形態においてはシート4の片面に印刷する場合の印刷面と、シート4の両面に印刷する場合に最初に印刷する印刷面をシート4の「表面」といい、表面の反対側の面を「裏面」という。
印刷ユニット3による印刷が終了したシート4、すなわち表面のみが印刷されるシート4や、表裏両面が印刷されるシート4であって表裏両面に印刷が施されたシート4は、印刷ユニット3から後述する排出胴5を介してデリバリー部6に送られ、デリバリーパイル7に集積される。
【0018】
フィーダー部2は、シート4をフィーダーパイル11から図示していないサッカーによってフィーダーボード12に移し替える構造のものである。サッカーは、シート4が連続的に送られる形態と、シート4が間欠的に送られる形態とのうちいずれか一方の形態で動作する。シート4の表面のみに印刷が施される場合、すなわち片面印刷の場合は、サッカーがシート4を連続的にフィーダーボード12に送る。一方、シート4の表面と裏面とに印刷が施される場合、すなわち両面印刷の場合は、サッカーがシート4を間欠的にフィーダーボード12に送る。このようなサッカーの動作は、後述する制御装置13(
図4参照)によって制御される。
【0019】
(印刷ユニットの説明)
印刷ユニット3は、フィーダー部2から供給されたシート4がスイング装置14によって搬送される供給胴15と、この供給胴15からシート4が送られる印刷胴16と、印刷後のシート4を後述する反転機構17と排紙機構18とのいずれか一方に振り分ける搬送経路切替手段としての排出胴5とを備えている。
供給胴15は、シート4を保持する第1のくわえ爪装置21を有している。第1のくわえ爪装置21は、シート4の搬送方向下流側の端部4aをくわえて保持するものであり、スイング装置14から受け取ったシート4を供給位置P1において印刷胴16に供給する。
【0020】
印刷胴16は、本発明で言う「搬送装置」を構成するもので、シート4を吸着して後述する第1~第4のインクジェットヘッド22~25による印刷が施される位置に搬送する。この実施の形態による印刷胴16は、いわゆる3倍胴と呼ばれるもので、回転方向の3箇所にそれぞれ第2のくわえ爪装置26を備えている。第2のくわえ爪装置26は、供給胴15に設けられている第1のくわえ爪装置21と同等のものである。
【0021】
印刷胴16の周囲近傍であって、供給胴15よりシート4の搬送方向下流側には、複数の第1~第4のインクジェットヘッド22~25とインキ乾燥手段27とがこの順序で並べて配置されている。第1~第4のインクジェットヘッド22~25とインキ乾燥手段27は、本発明でいう「処理装置本体」を構成するものである。第1~第4のインクジェットヘッド22~25は、本発明でいう「複数の印刷ヘッド」を構成するものである。第1~第4のインクジェットヘッド22~25は、印刷胴16に保持されたシート4の印刷面(印刷胴に接する搬送面とは反対側の表面であって本発明でいう「処理面」)にインキを吐出して印刷を施す。第1~第4のインクジェットヘッド22~25の動作は、後述する制御装置13によって制御される。
【0022】
インキ乾燥手段27は、本発明でいう「インキ乾燥装置」に相当するもので、第4のインクジェットヘッド25よりシート4の搬送方向下流側に設けられ、シート4に付着したインキを乾燥させる。インキ乾燥手段27としては、例えばインキ乾燥ランプによって構成することができる。インキ乾燥ランプは、赤外線や紫外線をシート4に照射する。インキは、赤外線や紫外線が照射されることにより乾燥又は硬化する。この実施の形態による印刷装置1においては、シート4がインキ乾燥ランプの近傍を通過することによりインキが完全に乾燥又は硬化する。
【0023】
排出胴5は、インキ乾燥手段27よりシート4の搬送方向下流側に位置する受け取り位置P2で印刷後のシート4を印刷胴16から受け取り、このシート4の印刷状態に応じて後述する反転機構17と排紙機構18とのいずれか一方に振り分けて搬送する。印刷状態とは、シート4の片面に印刷が施された状態と、シート4の両面に印刷が施された状態である。
排出胴5による印刷胴16からのシート4の受け取り、反転機構17や排紙機構18とのシート4の受け渡しは、排出胴5に設けられている第3のくわえ爪装置31を使用して行われる、この第3のくわえ爪装置31は、受け取り位置P2でシート4の搬送方向下流側の端部4aを保持した後、制御装置13によって制御されて反転機構17と排紙機構18とのいずれか一方の搬送先にシート4が渡されるように動作する。排出胴5がシート4の搬送先を切替えるための構成は、例えば特許文献1に記載されている切替機構を用いて実現することができる。搬送先を切替える際の排出胴5の動作は、後述する制御装置13によって制御される。
【0024】
(反転機構の説明)
反転機構17は、
図2に示すように、排出胴5からシート4を第4のくわえ爪装置32によって受け取る反転側渡胴33と、この反転側渡胴33からシート4を第5のくわえ爪装置34によって受け取る反転前倍胴35と、反転前倍胴35によって搬送されるシート4の紙尻(搬送方向上流側の端部である後端4b)を第6のくわえ爪装置36によってくわえて印刷胴16に戻す、反転手段としての反転スイング装置37などによって構成されている。
反転スイング装置37は、印刷胴16や反転前倍胴35の軸線と平行な軸線を中心として揺動する構成が採られており、揺動端部に設けられた第6のくわえ爪装置36が反転前倍胴35に近接する位置と、印刷胴16に近接するシート戻し位置P3との間で往復するように揺動する。反転スイング装置37の第6のくわえ爪装置36が反転前倍胴35側のシート4の紙尻をくわえた状態で反転スイング装置37が印刷胴16に向けて揺動することにより、シート4の表裏が反転し、このシート4がシート戻し位置P3で印刷胴16に受け渡される。
【0025】
反転側渡胴33は、シート4の印刷領域の全域が密着する外周面33aを有している。外周面33aは、金属材料やその他の高剛性の材料によって形成されている。また、外周面33aの表面は、滑らかに形成されている。反転側渡胴33によって搬送されるシート4は、表裏両面に印刷が施されるものであって、表面に印刷が施された状態のもので、印刷面(表面)が露出する状態で反転側渡胴33に保持されている。
【0026】
反転側渡胴33によって搬送されるシート4と対向する位置には、本発明の第1の押圧手段を構成する第1の押圧胴41が配置されている。第1の押圧胴41は、反転側渡胴33によって搬送されているシート4を所定の押圧力で押圧する。この押圧力は、オフセット印刷における印圧の4~12倍の圧力である。この第1の押圧胴41は、外周面41aの全域が滑らかに形成された回転式の胴で、その軸線が反転側渡胴33の軸線と平行となり、かつ外周面41aが反転側渡胴33の外周面33aと接触する状態で、図示していない印刷装置用フレームに軸受構造42を介して回転自在に支持されている。軸受構造42は、第1の押圧胴41と反転側渡胴33との軸間距離を調整可能な構成が採られている。軸間距離を調整する構成としては、例えば偏心軸受が挙げられる。軸間距離を調整することによって、第1の押圧胴41がシート4を押圧する際の押圧力を調整することができる。この実施の形態による第1の押圧胴41の外径は、単胴である反転側渡胴33と略同径である。
【0027】
第1の押圧胴41は、シート4を押圧する状態でシート4が搬送されることによって回転する。なお、第1の押圧胴41は、このように連れ回りによって回転する構成に限定されることはない。第1の押圧胴41の駆動方法に制限はなく、例えば、第1の押圧胴41を単独で駆動して回転させたり、反転側渡胴33を駆動する動力を伝えて回転させる構成を採ることができる。
【0028】
第1の押圧胴41の外周面41aは、弾性体によって形成されている。この弾性体としては、例えばシリコンゴム、合成ゴム等のゴム材料、エラストマー、弾性を有するプラスチック材料などを用いることができる。なお、この外周面41aは、シート4をより一層強く押圧する為に金属材料によって形成することができる。
【0029】
(排紙機構の説明)
排紙機構18は、
図3に示すように、排出胴5からシート4を第7のくわえ爪装置43によって受け取る第1の排紙側渡胴44と、第1の排紙側渡胴44からシート4を第8のくわえ爪装置45によって受け取る第2の排紙側渡胴46と、第2の排紙側渡胴46から排出されたシート4をデリバリー部6に搬送する、排紙手段としての排出ベルト47などによって構成されている。
【0030】
第1の排紙側渡胴44は、シート4の印刷領域の全域が密着する外周面44aを有している。この外周面44aは、金属材料やその他の高剛性の材料によって形成されている。外周面44aの表面は滑らかに形成されている。第1の排紙側渡胴44によって搬送されるシート4は、片面のみに印刷が施された状態のものや、表裏両面に印刷が施された状態のもので、片面のみが印刷されるシート4の印刷面(表面)や、表裏両面が印刷されるシート4の2回目の印刷面(裏面)が露出する状態で第1の排紙側渡胴44に保持されている。
【0031】
第1の排紙側渡胴44によって搬送されるシート4と対向する位置には、本発明の第2の押圧手段を構成する第2の押圧胴48が配置されている。この実施の形態による第2の押圧胴48は、第1の排紙側渡胴44の直上に配置されている。第2の押圧胴48は、上述した第1の押圧胴41と同じ構成の胴で、第1の排紙側渡胴44によって搬送されているシート4を所定の押圧力で押圧する。この押圧力は、オフセット印刷における印圧の4~12倍の圧力である。
第2の押圧胴48は、第1の押圧胴41と同様に滑らかな外周面48aを有し、その軸線が第1の排紙側渡胴44の軸線と平行となりかつ第1の排紙側渡胴44の外周面44aと接触する状態で、図示していない印刷装置用フレームに軸受構造49を介して回転自在に支持されている。軸受構造49は、第2の押圧胴48と第1の排紙側渡胴44との軸間距離を調整可能な構成が採られている。軸間距離を調整する構成としては、例えば偏心軸受が揚げられる。軸間距離を調整することによって、第2の押圧胴48がシート4を押圧する際の押圧力を調整することができる。この実施の形態による第2の押圧胴48の外径は、単胴である第1の排紙側渡胴44と略同径である。
【0032】
第2の押圧胴48は、シート4を押圧する状態でシート4が搬送されることによって回転する。なお、第2の押圧胴48は、このように連れ回りによって回転する構成に限定されることはない。第2の押圧胴48の駆動方法に制限はなく、例えば、第2の押圧胴48を単独で駆動して回転させたり、第1の排紙側渡胴44を駆動する動力を伝えて回転させる構成を採ることができる。
第2の押圧胴48の外周面48aは、弾性体によって形成されている。弾性体としては、例えばシリコンゴム、合成ゴム等のゴム材料、エラストマー、弾性を有するプラスチック材料などを用いることができる。
【0033】
排出ベルト47は、無端ベルトからなり、第2の排紙側渡胴46の下方近傍に位置する上流側スプロケット47aと、デリバリーパイル7の上方に位置する下流側スプロケット47bとに掛け渡されて第2の排紙側渡胴46の下方近傍から印刷胴16とは反対側へ略水平に延びている。この排出ベルト47は、上流側スプロケット47aと下流側スプロケット47bとが印刷胴16やその他の胴とともに駆動装置(図示せず)によって駆動されることにより回転する。シート4は、排出ベルト47の上に載せられ、排出ベルト47が移動(回転)走行することによってデリバリー部6に搬送される。
【0034】
(制御装置の説明)
制御装置13は、CPU(Central Processing Unit)によって構成されており、
図4に示すように、印刷モード選択スイッチ51と、位相検出装置としてのロータリーエンコーダ52とが接続されているとともに、第1~第4のインクジェットヘッド22~25と、フィーダー部2のサッカー動作切替用アクチュエータ53と、排出胴5の搬送経路切替用アクチュエータ54などが接続されている。印刷モード選択スイッチ51は、この印刷装置1において片面印刷が行われる片面印刷モードと、両面印刷が行われる両面印刷モードとの切替えを行うためのものである。
【0035】
印刷モード選択スイッチ51によって片面印刷モードが選択された場合は、制御装置13が片面印刷を行うようにフィーダー部2(サッカー動作切替用アクチュエータ53)、第1~第4のインクジェットヘッド22~25および排出胴5(搬送経路切替用アクチュエータ54)等の動作を制御する。また、印刷モード選択スイッチ51によって両面印刷モードが選択された場合は、制御装置13が両面印刷を行うようにフィーダー部2(サッカー動作切替用アクチュエータ53)、第1~第4のインクジェットヘッド22~25および排出胴5(搬送経路切替用アクチュエータ54)等の動作を制御する。
【0036】
(片面印刷時の動作説明)
次に、この実施の形態による印刷装置1の動作を説明する。
作業者(図示せず)が印刷モード選択スイッチ51を操作して片面印刷モードを選択すると、制御装置13が片面印刷モードに切替えられ、各種の装置の動作を制御する。片面印刷モードでは、フィーダー部2から印刷ユニット3にシート4が連続的に供給される。印刷ユニット3の印刷胴16に搬送されたシート4は、第1~第4のインクジェットヘッド22~25の近傍を通過することにより印刷が施される。印刷は、制御装置13がロータリーエンコーダ52の位相信号に基づいてシート4の位置を特定して行われる。
【0037】
シート4に印刷されたインキは、シート4がインキ乾燥手段27の近傍を搬送されることにより硬化される。
その後、シート4は、印刷胴16から排出胴5に送られる。片面印刷モードにおいては、排出胴5に保持されたシート4が反転機構17に送られることなく排紙機構18の第1の排紙側渡胴44に送られる。このシート4は、第1の排紙側渡胴44によって搬送される途中で第2の押圧胴48によって押圧される。
このとき、第2の押圧胴48は、シート4の印刷面(表面)を押圧する。シート4の印刷面には、硬化したインキがシート4の表面から盛り上がった状態で付着している。
【0038】
このインキは、第2の押圧胴48の外周面48aが押し付けられることによりシート4の内部に押し込まれる。このため、シート4の表面に露出するインキの膜厚を下げることができる。シート4の表面に露出するインキの膜厚は、押圧以前は5μm~10μmであるが、押圧後は約1μmになる。
また、インキが第2の押圧胴48によって押圧されることによりインキの表面が平滑になり、シート4の表面の印刷部に光沢感が付与される。
第1の排紙側渡胴44と第2の押圧胴48との間を通過したシート4は、第2の排紙側渡胴46に受け渡されて第2の排紙側渡胴46から排出ベルト47の上に排出され、排出ベルト47によってデリバリーパイル7の上方に排出されてデリバリーパイル7の上に積載される。
【0039】
(両面印刷時の動作説明)
作業者が印刷モード選択スイッチ51を操作して両面印刷モードを選択すると、制御装置13が両面印刷モードで各種の装置の動作を制御する。両面印刷モードでは、フィーダー部2から印刷ユニット3にシート4が間欠的に供給される。すなわち、供給胴15が2回転する毎にシート4が印刷胴16に搬送される。このように印刷胴16に搬送された新規のシート4は、片面印刷時と同様に、印刷胴16によって搬送されることによって表面に印刷が施されて排出胴5に送られる。
【0040】
両面印刷モードにおいては、表面に印刷が施された新規のシート4が排出胴5から反転側渡胴33に受け渡される。そして、この表面のみに印刷が施されたシート4は、反転側渡胴33によって搬送される途中で第1の押圧胴41によって押圧される。このとき、第1の押圧胴41は、シート4の印刷面である表面を押圧する。シート4の印刷面には、硬化したインキがシート4の表面から盛り上がった状態で付着している。このインキは、第1の押圧胴41の外周面が押し付けられることによりシート4の内部に押し込まれる。このため、片面印刷時に第2の押圧胴48でシート4が押圧されるときと同様に、シート4の表面に露出するインキの膜厚を下げることができ、また、インキの表面が平滑になり、シート4の表面の印刷部に光沢感が付与される。
【0041】
反転側渡胴33と第1の押圧胴41との間を通過したシート4は、反転側渡胴33から反転前倍胴35に受け渡され、さらに反転スイング装置37によって表裏が反転して裏面が露出する状態で印刷胴16に受け渡される。この裏面が露出する状態で印刷胴16に保持されたシート4は、第1~第4のインクジェットヘッド22~25の近傍を通過するときに裏面に印刷が施される。このとき、制御装置13は、ロータリーエンコーダ52の位相信号に基づいて新規のシート4と、裏面が露出したシート4との判別を行い、それぞれのシート4に応じた印刷を行う。
【0042】
裏面に印刷が施されたシート4は、インキ乾燥手段27の近傍を通過してインキが硬化した状態で排出胴5に送られる。排出胴5は、両面印刷モードで両面に印刷が施されたシート4を第1の排紙側渡胴44に受け渡す。排出胴5によるシート4の搬送先はシート4の印刷状態に応じて異なる。すなわち、制御装置13の印刷モードが両面印刷の印刷モードであってシート4の片方の面のみに印刷が終了している場合、搬送先は反転機構17であり、その他の場合は排紙機構18である。その他の場合とは、制御装置13の印刷モードが片面印刷の印刷モードである場合、もしくは両面印刷の印刷モードでシート4の両面に印刷が終了している場合である。
【0043】
排出胴5から第1の排紙側渡胴44に送られたシート4は、第1の排紙側渡胴44によって搬送される途中で第2の押圧胴48によって押圧される。すなわち、このシート4の裏面に付着しているインキは、第2の押圧胴48が押し付けられ、片面印刷時と同様にシート4の内部に押し込まれる。このため、シート4の裏面に露出するインキの膜厚を下げることができ、また、インキの表面が平滑になり、シート4の裏面の印刷部に光沢感が付与される。
第1の排紙側渡胴44と第2の押圧胴48との間を通過したシート4は、片面印刷時と同様に第2の排紙側渡胴46と排出ベルト47とによってデリバリーパイル7に排出される。
【0044】
(実施の形態による効果の説明)
この実施の形態による印刷装置1は、シート4を保持して搬送する印刷胴16(搬送装置)と、印刷胴16に保持されたシート4の印刷面(処理面)に印刷(処理)を施す第1~第4のインクジェットヘッド22~25およびインキ乾燥手段27(処理装置本体)と、処理装置本体よりシート4の搬送方向下流側に設けられ、シート4の表面および裏面を押圧する第1、第2の押圧胴41,48(押圧手段)とを備えている。
このため、シート4の表裏両面で盛り上がったインキ(付着物)が第1、第2の押圧胴41,48によって押されてシート4に押し込まれるから、インキの厚みを減らすことができる。また、インキの表面が平滑になるから、シート4の印刷部(被処理部)に光沢感を付与することが可能になる。
【0045】
この実施の形態による処理装置本体は、印刷胴16に保持されたシート4の印刷面にインキを吐出する第1~第4のインクジェットヘッド22~25と、これらの第1~第4のインクジェットヘッド22~25よりシート4の搬送方向下流側に設けられ、シート4に付着したインキを乾燥させるインキ乾燥装置27とによって構成されている。
このため、一般的なオフセット印刷と比べてインキ膜厚が厚くなるとともに印刷部の光沢感が弱くなり易いインクジェット印刷を行うにもかかわらず、インキ膜厚を減らすことができるとともに、シート4の印刷部に光沢感を付与することが可能になる。
【0046】
この実施の形態による印刷装置1は、シート4の表裏両面がそれぞれ印刷面となる両面印刷と、シートの一方の面が印刷面となる片面印刷とを実施可能に構成されている。また、この印刷装置1は、両面印刷時にシート4の一方の印刷面(表面)を押圧する第1の押圧胴41(第1の押圧手段)と、両面印刷時にシート4の他方の印刷面(裏面)を押圧するとともに片面印刷時にシート4の印刷面(表面)を押圧する第2の押圧胴48(第2の押圧手段)とを備えている。このため、盛り上がったインキが第1、第2の押圧胴41,48によって押されてシート4に押し込まれるから、片面印刷時と両面印刷時との両方において、インキの膜厚を下げることができる。また、インキの表面が平滑になるから、片面印刷時と両面印刷との両方において、印刷部に光沢感を付与することが可能になる。
【0047】
この実施の形態による印刷装置1は、片面印刷と両面印刷とのいずれか一方の印刷モードに切替えられる制御装置13と、制御装置13の印刷モードに応じてシート4の搬送先を切替える排出胴5(搬送経路切替手段)とを備えている。排出胴5によるシート4の搬送先は、制御装置13の印刷モードが両面印刷の印刷モードであってシート4の片方の面のみに印刷が終了している場合にシート4の表裏を反転させて印刷胴16(搬送装置)に戻す反転機構17と、片面印刷の印刷モードである場合、もしくは両面印刷の印刷モードでシート4の両面に印刷が終了している場合に、シート4を排紙する排紙機構18とである。
このため、両面印刷を行うときにはシート4が反転して印刷胴16に戻されるから、片面印刷時の印刷と両面印刷時の印刷とを共通の第1~第4のインクジェットヘッド22~25を用いて実施することができる。したがって、片面印刷時と両面印刷時との両方において、インキの膜厚が薄くなるとともに、インキの表面が平坦になって印刷部に光沢感が付与される印刷装置をコンパクトに実現することができる。
【0048】
この実施の形態においては、第1の押圧胴41が反転機構17に設けられ、第2の押圧胴48が排紙機構18に設けられている。このため、シート4の裏面に印刷が施される以前にシート4の表面に付着したインキの膜厚が薄くなるとともにインキが平坦化されるから、表面のインキによる影響を受けることなく裏面の印刷を行うことができる。したがって、裏面の印刷品質が高くなる印刷装置を提供することができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
本発明に係る印刷装置は
図5および
図6に示すように構成することができる。
図5および
図6において、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図5に示す印刷装置61は、反転機構17と排紙機構18の構成が第1の実施の形態による印刷装置1とは異なり、その他の構成は、第1の実施の形態で示した印刷装置1と同一の構成が採られている。
【0050】
図5に示す印刷装置61の反転機構17は、第1の実施の形態を採る場合と較べて第1の押圧胴41を備えていない。この反転機構17は、第1の押圧胴41を有していないだけでその他の構成は第1の実施の形態を採る場合と同一の構成が採られている。
図5に示す印刷装置61の排紙機構18は、
図6に示すように、第2の排紙側渡胴46によって搬送されるシート4と対向する位置に第1の押圧胴41が備えられている。この実施の形態においては、第2の排紙側渡胴46の直下に第1の押圧胴41が配置されている。この第1の押圧胴41は、第2の排紙側渡胴46と軸線が平行になるとともに外周面41aが第2の排紙側渡胴46に接触する状態で図示していない印刷機用フレームに軸受構造42によって回転自在に支持されている。この軸受構造42は、第1の実施の形態で第1の押圧胴41を支持するものと同等のものである。
【0051】
このように第1の押圧胴41が排紙機構18に設けられた印刷装置61においては、片面印刷時においてシート4の表面のインキが第2の押圧胴48によって押圧される。第2の押圧胴48と第1の排紙側渡胴44との間を通過したシート4は、第2の排紙側渡胴46に受け渡されて搬送され、第2の排紙側渡胴46と第1の押圧胴41との間を通過する。このとき、シート4の裏面にはインキが付着していないため、シート4はほとんど押圧されることがない。なお、第1の押圧胴41を支持する軸受構造42には、片面印刷時に第1の押圧胴41をシート4から離れる方向に退避させる移動機構を設けることができる。この構成を採ることにより、片面印刷時に第1の押圧胴41がシート4に不必要に接触することを避けることが可能になる。
【0052】
一方、両面印刷時は、第2の押圧胴48がシート4の裏面のインキを押圧し、第1の押圧胴41がシート4の表面のインキを押圧するようになる。このため、この実施の形態を採る場合であっても、第1の実施の形態を採るときと同様に、片面印刷と両面印刷との両方において、インキ膜厚が小さくなるとともにインキの表面が平坦になって印刷部に光沢感を付与することが可能になる。
【0053】
この実施の形態による印刷装置61は、第1の押圧胴41と第2の押圧胴48とが排紙機構18に備えられている。このため、第1の押圧胴41と第2の押圧胴48とを支持するための強固な支持構造を排紙機構18に集めることができるから、剛性が高い部品が複数の場所に分散される場合と較べて印刷装置の製造が容易になる。
【0054】
上述した第1の実施の形態と第2の実施の形態で示した印刷装置1,61は、いずれも反転スイング装置37(反転手段)を用いる反転機構17を備えている。このため、反転機構17をコンパクトに実現することができ、第1および第2の押圧胴41,48を備えているにもかかわらずコンパクトで、しかも両面印刷が可能な印刷装置を提供することができる。
【0055】
上述した第1の実施の形態と第2の実施の形態で示した印刷装置1,61は、いずれも第1、第2の排紙側渡胴44,46と、第2の排紙側渡胴46からシート4を受け取り排出する排出ベルト47(排出手段)とを備えている。このため、第1の押圧胴41や第2の押圧胴48の押圧力を受けるための胴として第1、第2の排紙側渡胴44,46を使用することが可能になるから、第1、第2の押圧胴41,48の配置場所を設定するうえで自由度が高くなる。
【0056】
(第3の実施の形態)
反転機構は
図7に示すように構成することができる。
図7において、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図7に示す反転機構17は、反転前倍胴35と供給胴15との間に反転胴71を備えており、上述した反転スイング装置37は備えていない。なお、この実施の形態による反転機構17以外の構成は、一部は図示してあるが第1の実施の形態と同一の構成を採ることができる。
【0057】
反転胴71は、シート4を搬送する各胴と同期して回転し、反転前倍胴35からシート4を受け取るとともにシート4の表裏を反転させ、表裏を反転させたシート4を供給胴15に供給する。
図7に示す供給胴15は、2倍胴によって構成されている。
この反転胴71は、例えば特開平5-16330号公報に開示されている転向ドラムと同等のもので、反転前倍胴35によって搬送されているシート4の搬送方向上流側の端部である後端4bをくわえるグリップ部材72を有している。
【0058】
グリップ部材72がシート4の後端をくわえた状態で反転胴71が回転することにより、シート4の後端4bが搬送方向の下流側に位置する状態でシート4が供給胴15に向けて搬送される。このように搬送されたシート4は、グリップ部材72から供給胴15のくわえ爪装置21に受け渡される。このシート4が供給胴15によって搬送されるときには、シート4の表面が供給胴15の外に露出するようになる。このため、反転機構17を通って搬送されたシート4は、表裏が反転した状態で供給胴15から印刷胴16に搬送されることになる。
【0059】
反転機構17を
図7に示すように構成したとしても、第1の実施の形態を採るときと同様に、片面印刷と両面印刷との両方において、インキ膜厚が小さくなるとともにインキの表面が平坦になって印刷部に光沢感を付与することが可能になる。
【0060】
上述した第1~第3の実施の形態においては、本発明に係る押圧手段を第1の押圧胴41と第2の押圧胴48とによって構成する例を示した。しかし、押圧手段は、このような限定にとらわれることはなく、1本あるいは複数本のローラーによって構成することができる。
【0061】
(第4の実施の形態)
上述した各実施の形態ではシートの表裏両面に印刷を行うことが可能な印刷装置に本発明を適用する例を示したが、本発明は、シートの片面のみに印刷を行う印刷装置にも適用することができる。この構成を採る印刷装置の一例を
図8に示す。
図8において、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0062】
図8に示す印刷装置81は、第1の実施の形態で示した印刷装置1から反転機構17を取り除いた構成が採られている。このため、この印刷装置81に設けられている排出胴5は、シート4の搬送先を切替える切替機構を備えていない。
この実施の形態による印刷装置81においては、シート4の一方の面のみに印刷が施され、印刷後のシート4は、全て排出胴5から第1の排紙側渡胴44に送られる。そして、このシート4は、第1の排紙側渡胴44によって搬送されている途中で第2の押圧胴48によって押圧される。したがって、片面印刷のみを行う構成の印刷装置81において、印刷後のインキの膜厚を下げることができるとともに、シート4の表面の印刷部に光沢感が付与されるようになる。
【0063】
(第5の実施の形態)
本発明に係る処理装置は、
図9に示すようにオフセット印刷装置に適用することができる。
図9において、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示すオフセット印刷装置91の印刷ユニット3は、第1の実施の形態で示した印刷装置1から反転機構17を取り除くとともに、第1~第4のインクジェットヘッド22~25の代わりにオフセット印刷部92を設けた構成が採られている。このため、この印刷装置91に設けられている排出胴5は、シート4の搬送先を切替える切替機構を備えていない。
【0064】
オフセット印刷部92は、インキを版胴93に供給するインキ供給装置94と、版胴93からインキが供給されるとともにシート4を印刷胴16との間に挟み込み、インキをシート4に転写するゴム胴95などを備えている。
この実施の形態による印刷装置91においては、シート4の一方の面のみにオフセット印刷によって印刷が施され、印刷後のシート4は、インキ乾燥手段27の近傍を通ってインキが乾燥した状態で排出胴5から第1の排紙側渡胴44に送られる。そして、このシート4は、第1の排紙側渡胴44によって搬送されている途中で第2の押圧胴48によって押圧される。したがって、オフセット印刷によって片面印刷を行う構成の印刷装置91において、印刷後のインキの膜厚を下げることができるとともに、シート4の表面の印刷部に光沢感が付与されるようになる。
【0065】
(第6の実施の形態)
本発明に係る処理装置は、
図10に示すようにコーティング装置に適用することができる。
図10おいて、
図1~
図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図10に示すコーティング装置101は、第1の実施の形態で示した印刷装置1から反転機構17を取り除くとともに、第1~第4のインクジェットヘッド22~25の代わりにコーティング部102を設けた構成が採られている。このため、このコーティング装置101に設けられている排出胴5は、シート4の搬送先を切替える切替機構を備えていない。
【0066】
コーティング部102は、印刷胴16に対接するコーター胴103と、コーター胴103にニスを供給するニス供給胴104とを備えている。
このコーティング装置101においては、印刷胴16によって搬送されているシート4がコーター胴103と印刷胴16との間を通るときにシート4の表面にニスがコーター胴103から転写され、シート4の表面がニスによってコーティングされる。このコーティング後のシート4は、インキ乾燥手段27の近傍を通ることによりニスが乾燥した状態で排出胴5から第1の排紙側渡胴44に送られる。そして、このシート4は、第1の排紙側渡胴44によって搬送されている途中で第2の押圧胴48によって押圧される。したがって、ニスによるコーティングを行うコーティング装置101において、コーティング後のニスの膜厚を下げることができるとともに、シート4の表面のコーティング部に光沢感が付与されるようになる。
【0067】
(押圧力を調整する他の例)
上述した各実施の形態おいては、第1、第2の押圧胴41,48がシート4を押圧する際の押圧力を第1、第2の押圧胴41,48と反転側渡胴33、第1の排紙側渡胴44、第2の排紙側渡胴46などとの軸間距離を変えて調整する例を示した。この押圧力は、上述した軸間距離を図示していないアクチュエータを使用して変えることにより自動で調整することができるようになる。この場合、シート4を構成する印刷基材(紙等)の厚みや、印刷された絵柄の濃さに応じてアクチュエータの動作を制御する。アクチュエータの動作は、制御装置によって制御することができ、印刷設定時に入力された印刷基材の厚さや絵柄情報に基づいて自動で制御することができる。例えば、印刷基材の厚さが厚い場合や、絵柄が濃くてインキの膜厚が厚い場合には、上述した軸間距離が短くなるようにアクチュエータを動作させることによって、押圧力を高くすることができる。
【符号の説明】
【0068】
1,61,81…印刷装置、4…シート、5…排出胴(搬送経路切替手段)、13…制御装置、16…印刷胴(搬送装置)、17…反転機構、18…排紙機構、22…第1のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)、23…第2のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)、24…第3のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)、25…第4のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)、27…インキ乾燥手段(インキ乾燥装置)、33…反転側渡胴、35…反転前倍胴(反転前胴)、37…反転スイング装置(反転手段)、41…第1の押圧胴(第1の押圧手段)、44…第1の排紙側渡胴、46…第2の排紙側渡胴、47…排出ベルト(排紙手段)、48…第2の押圧胴(第2の押圧手段)、71…反転胴(反転手段)、91…オフセット印刷装置、101…コーティング装置。