(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029356
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B41J2/01 127
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131562
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】瀧元 光太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC06
2C056EC69
2C056FC01
2C056HA29
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷を行う際に、当該印刷による印刷物について、インクの滲みが抑制され、かつ、高い光沢感を得ることができるようにして、印刷物の光沢を向上する。
【解決手段】光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するインクジェットプリンタの印刷方法であって、全パスを前段部分のパスと後段部分のパスとに分割し、前段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、メディアに吐出された光硬化性インクのインク滴が滲まないように硬化させる第1の露光量とし、後段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、第1の露光量も小さな露光量であって、メディアに吐出された光硬化性インクのインク滴が硬化せずに広がるようにする第2の露光量とし、全パスの印刷終了後にメディアへ照射される光の露光量を、第2の露光量よりも大きな第3の露光量とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するインクジェットプリンタにおいて、
メディアを載置するテーブルと、
前記テーブルに載置された前記メディアに光硬化性インクを吐出するインクノズルと、
前記インクノズルと前記テーブルとを相対的に移動して、前記メディアを前記インクノズルに対して相対的に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって前記インクノズルに対して相対的に搬送される前記メディアの搬送方向における上流側から下流側に向けて、第1の領域と第2の領域と第3の領域との3箇所の領域に分割され、前記メディアへ吐出された前記光硬化性インクのインク滴に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段における前記第1の領域の露光量を、前記メディアに吐出された前記光硬化性インクのインク滴が滲まないように硬化させる第1の露光量に制御する第1の露光量制御手段と、
前記光照射手段における前記第2の領域の露光量を、前記第1の露光量も小さな露光量であって、前記メディアに吐出された前記光硬化性インクのインク滴を硬化させずに広がるようにする第2の露光量に制御する第2の露光量制御手段と、
前記光照射手段における前記第3の領域の露光量を、前記第2の露光量よりも大きな第3の露光量に制御する第3の露光量制御手段と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記光硬化性インクは、紫外線硬化インクであり、
前記光照射手段は、紫外線照射ランプである
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するインクジェットプリンタの印刷方法であって、
全パスを前段部分のパスと後段部分のパスとに分割し、
前記前段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、前記メディアに吐出された前記光硬化性インクのインク滴が滲まないように硬化させる第1の露光量とし、
前記後段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、前記第1の露光量も小さな露光量であって、前記メディアに吐出された前記光硬化性インクのインク滴が硬化せずに広がるようにする第2の露光量とし、
前記全パスの印刷終了後に前記メディアへ照射される光の露光量を、前記第2の露光量よりも大きな第3の露光量とする
ことを特徴とするインクジェットプリンタの印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタの印刷方法において、
前記光硬化性インクは、紫外線硬化インクであり、
前記光照射手段は、紫外線照射ランプである
ことを特徴とするインクジェットプリンタの印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法に関する。さらに詳細には、本発明は、メディア(媒体)に複数のパス(マルチパス)により印刷を行うインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法に関する。
【0002】
なお、本明細書ならびに特許請求の範囲において、「メディア」には、普通紙などの紙類よりなる各種の記録紙などの記録媒体は勿論のこと、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、アルミや鉄などから形成された金属板、ガラス板、木材板などの比較的厚みを有する板材などのように、各種材料により形成された種々のものが含まれるものとする。
【0003】
さらにまた、本明細書ならびに特許請求の範囲において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術による印刷方法を意味するものとし、「インクジェットプリンタ」とは、上記したインクジェット技術により印刷を行う装置を包括的に意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
一般に、コンピューターシステムによって全体の動作を制御され、記録紙などのメディアを載置するテーブル(載置台)を備え、当該テーブル上に載置された当該メディアの上方において当該テーブルに対して所定の方向に相対的に移動可能なキャリッジを配設するとともに、インクノズルからインクジェット方式により光硬化性インクを吐出するインクヘッドならびに当該光硬化性インクの硬化を促進する光を照射する光照射装置をこのキャリッジに搭載し、インクヘッドのインクノズルからインクジェット方式によりメディアに対して光硬化性インクを吐出するとともに、光照射装置により当該吐出された光硬化性インクに光を照射して当該光硬化性インクの硬化を促進することにより、メディアに所望の印刷を行うようにしたインクジェットプリンタが知られている。
【0005】
なお、こうしたインクジェットプリンタにおけるキャリッジの移動方向(搬送方向)を、本明細書ならびに特許請求の範囲においては、「主走査方向」と適宜に称することとする。
【0006】
そして、上記したようなインクジェットプリンタにおいては、メディアを載置するテーブルが、キャリッジに対して主走査方向と直交する方向に相対的に移動可能に構成されており、これによりテーブルに載置されたメディアの所望の箇所へ印刷することが可能となされている。
【0007】
なお、本明細書ならびに特許請求の範囲においては、「主走査方向」と直交するテーブルの移動方向(搬送方向)を「副走査方向」と適宜に称することとする。
【0008】
ところで、上記したようなインクジェットプリンタとしては、メディアに複数のパス(マルチパス)により印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。
【0009】
ここで、こうした複数のパス(マルチパス)により印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、光照射装置により光硬化性インクに光を照射するときの光量である露光量が大きいと、
図1(a)に示すように、メディアに吐出された光硬化性インクのインク滴(以下、「メディアに吐出された光硬化性インクのインク滴」を「ドット」と適宜に称する。)の硬化速度が速くなってドットの高さが高くなり、メディア上においてインクは滲み難くなる。
【0010】
このため、メディアに複数のパスにより印刷を行う際に全てのパスにおいて露光量が大きいと、当該印刷による印刷物(成果物)は、
図1(b)に示すように、メディア上においてインクが滲むことは抑制されるが、ドットにより形成される高さ方向の凹凸が大きくなってしまい、光沢感に劣るものとなっていたという問題点があった。
【0011】
一方、複数のパスにより印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、光照射装置により光硬化性インクに光を照射するときの光量である露光量が小さいと、
図2(a)に示すように、ドットの硬化速度が遅くなってドットの高さが低くなり、メディア上においてインクは滲み易くなる。
【0012】
このため、メディアに複数のパスにより印刷を行う際に全てのパスにおいて露光量が小さいと、当該印刷による印刷物(成果物)は、
図2(b)に示すように、ドットにより形成される高さ方向の凹凸が小さくなるので高い光沢感を得ることができるものであるが、メディア上においてインクが滲んでしまうという問題点があった。
【0013】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷を行う際に、当該印刷による印刷物(成果物)について、インクの滲みが抑制され、かつ、高い光沢感を得ることができるようにして、印刷物(成果物)の光沢を向上するようにしたインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法は、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷を行う際に、パスの進行に応じて露光量を変化するようにしたものである。
【0016】
具体的には、例えば、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するときに、全パスを前段部分(全パスにおける印刷開始側にあるパスであり、必ずしも全パスのうちの半分量のパスとは限らない。)のパスと後段部分(全パスにおける印刷終了側にあるパスであり、必ずしも全パスのうちの半分量のパスとは限らない。)のパスとに分割して、前段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、メディアに吐出されたドットが滲まないように硬化する第1の露光量とし、後段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、メディアに吐出されたドットが硬化せずに広がるようにする第2の露光量(第1の露光量>第2の露光量)とし、全パスの印刷終了後にメディアへ照射される光の露光量を、第2の露光量よりも大きな第3の露光量(第3の露光量>第2の露光量)とする。
【0017】
このように露光量を制御すると、印刷物(成果物)について、インクの滲みが抑制され、かつ、高い光沢感を得ることができるようになり、印刷物(成果物)の光沢を向上することができる。
【0018】
また、このように露光量を制御すると、印刷物(成果物)について、メディアのソリや皺の発生を抑制することができる。
【0019】
なお、メディアの反りや印字物のしわの発生を抑制するためには、第3の露光のタイミングを遅くしすぎないようにすることが好ましい。なぜならば、メディアの反りや印字物のしわの発生の原因のひとつは、硬化したインクの上に未硬化のインクが長く乗っていることにあるからである。
【0020】
即ち、本発明によるインクジェットプリンタは、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するインクジェットプリンタにおいて、メディアを載置するテーブルと、上記テーブルに載置された上記メディアに光硬化性インクを吐出するインクノズルと、上記インクノズルと上記テーブルとを相対的に移動して、上記メディアを上記インクノズルに対して相対的に搬送する搬送手段と、上記搬送手段によって上記インクノズルに対して相対的に搬送される上記メディアの搬送方向における上流側から下流側に向けて、第1の領域と第2の領域と第3の領域との3箇所の領域に分割され、上記メディアへ吐出された上記光硬化性インクのインク滴に光を照射する光照射手段と、上記光照射手段における上記第1の領域の露光量を、上記メディアに吐出された上記光硬化性インクのインク滴が滲まないように硬化させる第1の露光量に制御する第1の露光量制御手段と、上記光照射手段における上記第2の領域の露光量を、上記第1の露光量も小さな露光量であって、上記メディアに吐出された上記光硬化性インクのインク滴を硬化させずに広がるようにする第2の露光量に制御する第2の露光量制御手段と、上記光照射手段における上記第3の領域の露光量を、上記第2の露光量よりも大きな第3の露光量に制御する第3の露光量制御手段とを有するようにしたものである。
【0021】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記光硬化性インクは、紫外線硬化インクであり、上記光照射手段は、紫外線照射ランプであるようにしたものである。
【0022】
また、本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法は、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷するインクジェットプリンタの印刷方法であって、全パスを前段部分のパスと後段部分のパスとに分割し、上記前段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、上記メディアに吐出された上記光硬化性インクのインク滴が滲まないように硬化させる第1の露光量とし、上記後段部分のパスを印刷する際に印刷直後に照射される光の露光量を、上記第1の露光量も小さな露光量であって、上記メディアに吐出された上記光硬化性インクのインク滴が硬化せずに広がるようにする第2の露光量とし、上記全パスの印刷終了後に上記メディアへ照射される光の露光量を、上記第2の露光量よりも大きな第3の露光量とするようにしたものである。
【0023】
また、本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法において、上記光硬化性インクは、紫外線硬化インクであり、上記光照射手段は、紫外線照射ランプであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上説明したように構成されているので、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷を行う際に、当該印刷による印刷物(成果物)について、インクの滲みが抑制され、かつ、高い光沢感を得ることができるようになり、印刷物(成果物)の光沢を向上することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(a)(b)は、従来のインクジェットプリンタの印刷方法を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2(a)(b)は、従来のインクジェットプリンタの印刷方法を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す斜視構成説明図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す平面図であり、テーブルが副走査方向の最も下流側に位置する状態を示している。
【
図6】
図6は、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す平面図であり、テーブルが副走査方向の最も上流側に位置する状態を示している。
【
図7】
図7は、
図3に示すインクジェットプリンタの平面視において、インクヘッドと光照射装置との配置を模式的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すインクジェットプリンタにおける制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成を示すブロック構成説明図である。
【
図9】
図9は、本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法による印刷結果を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0027】
(I) 本発明によるインクジェットプリンタの全体の構成の説明
【0028】
図3には、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0029】
また、
図4には、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す斜視構成説明図があらわされている。
【0030】
さらに、
図5には、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す平面図であって、テーブルが副走査方向の最も下流側に位置する状態があらわされている。
【0031】
さらにまた、
図6には、
図3に示すインクジェットプリンタにおいて、本体ケースを取り外した状態を模式的に示す平面図であって、テーブルが副走査方向の最も上流側に位置する状態があらわされている。
【0032】
また、
図7には、
図3に示すインクジェットプリンタの平面視において、インクヘッドと光照射装置との配置を模式的に示す説明図があらわされている。
【0033】
なお、以下の説明において、XYZ直交座標系におけるY方向は、キャリッジ32(後述する。)の移動方向である主走査方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるX方向は、XY平面においてY方向(主走査方向)と直交する方向である副走査方向を示し、また、XYZ直交座標系におけるZ方向は、XY平面と直交する高さ方向を示す。
【0034】
さらに、以下の説明においては、説明の便宜上、Y方向(主査方向)については、
図3を記載した紙面における左方側を左方向とするとともに右方側を右方向とし、X方向(副走査方向)については、
図3を記載した紙面の下方側を前方向とするとともに上方側を後方向とし、Z方向(高さ方向)については、
図3を記載した紙面の下方側を下方向とするとともに上方側を上方向として説明する。
【0035】
また、副走査方向において、後方側を適宜に「上流側」と称するとともに、前方側を適宜に「下流側」と称する
【0036】
さらに、副走査方向において、上流側から下流側に向かう方向を「順方向」と称するとともに、下流側を上流側に向かう方向を「逆方向」と称する
【0037】
なお、上記した方向については、説明の便宜上定めた方向に過ぎないものであって、インクジェットプリンタの設置態様を何ら限定するものではないことは勿論であって、また、本発明を何ら限定するものでもないことも勿論である。
【0038】
符号10は、所謂、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタを示し、家庭用のインクジェットプリンタと比較すると主走査方向に長い大型のインクジェットプリンタであり、例えば、業務用に用いられるものである。
【0039】
こうしたインクジェットプリンタ10は、その全体の動作を、例えば、マイクロコンピューターなどにより構築されるコンピューターシステムにより構成された制御装置100により制御されるものであり、制御装置100は印刷データに従ってメディア5への印刷を実行する。
【0040】
こうした印刷データは、外部から供給されてインクジェットプリンタ10の制御装置100に取り込まれたものでもよいし、インクジェットプリンタ10の制御装置100により生成したものでもよい。
【0041】
なお、本実施の形態においては、制御装置100は本体ケース12内に配置されるものとして図示したが(
図3を参照する。)、制御装置100は本体ケース12の外部に配置されていてもよいことは勿論である。
【0042】
こうしたインクジェットプリンタ10は、ベース部材60と、ベース部材60に取り付けられた本体ケース12と、キャリッジ移動機構20と、テーブル移動機構38と、インクヘッドユニット30と、メンテナンス装置70とを有して構成されている。
【0043】
また、インクジェットプリンタ10は、キャリッジ移動機構20およびインクヘッドユニット30を支持する本体フレーム14を備えている。
【0044】
テーブル移動機構38は、テーブルユニット40(後述する。)を副走査方向に移動可能に支持する第1スライドレール51および第2スライドレール52と、メディア5が載置される載置台であるテーブル48を有するテーブルユニット40と、テーブルユニット40を副走査方向に移動させる移動装置41とを有している。
【0045】
ここで、インクヘッドユニット30は、本体ケース12の内方においてテーブルユニット40より上方に配置されている。
【0046】
こうしたインクヘッドユニット30は、インクヘッド34と、インクヘッド34が搭載されるキャリッジ32と、インクヘッド34の左方側においてキャリッジ32に取り付けられた光照射装置80とを有して構成されている。
【0047】
また、本体ケース12の前部の中央には、フロントカバー13Cが設けられており、本体ケース12の前部の左方には、左カバー13Lが設けられており、本体ケース12の前部の右方には、右カバー13Rが設けられている。
【0048】
これらフロントカバー13C、左カバー13Lおよび右カバー13Rは、本体ケース12に対して開閉可能に構成されているとともに、フロントカバー13Cには窓13Wが設けられている。
【0049】
この窓13Wは、例えば、透明のアクリル板によって形成されており、作業者は、窓13Wから本体ケース12の内部を視認することができる。
【0050】
ベース部材60は、本体ケース12の下部に取り付けられていて、本体ケース12を支持している。
【0051】
より詳細には、ベース部材60は、底面を構成する底壁61と、底壁61より左方かつ上方に位置する左壁62と、底壁61より右方かつ上方に位置する右壁63と、底壁61と左壁62とを接続し上下方向Zに延びる左側壁64と、底壁61と右壁63とを接続し上下方向Zに延びる右側壁65とを有して構成されている。
【0052】
上記したテーブルユニット40は、この底壁61上を副走査方向に移動するように構成されている。
【0053】
そして、本体フレーム14は、上記した左壁62および右壁63によって支持されてベース部材60に配設されている。
【0054】
こうした本体フレーム14は、ベース部材60の左壁62から上方に延びる左ベース壁15Lと、ベース部材60の右壁63から上方に延びる右ベース壁15Rと、左ベース壁15Lの上端と右ベース壁15Rの上端とを接続する支持壁16とを有する。
【0055】
なお、左ベース壁15Lは、テーブルユニット40よりも左方に位置し、右ベース壁15Rは、テーブルユニット40よりも右方に位置する。
【0056】
また、支持壁16は、主走査方向に延長して形成されていて、ベース部材60より上方に配置されている。
【0057】
さらに、インクジェットプリンタ10には、本体フレーム14の支持壁16とベース部材60とにより囲まれるようにして形成された開口である、副走査方向に貫通する開口14Hが形成されている。
【0058】
この開口14Hは、テーブルユニット40が副走査方向に移動した際に、テーブルユニット40が当該開口14Hを通過可能な大きさに設定されている。
【0059】
さらに、インクジェットプリンタ10には、主走査方向に延長するとともに、開口14Hより上方において、支持壁16の前面に沿って配置されたガイドレール18が設けられている。
【0060】
こうしたガイドレール18は、テーブルユニット40より上方に配置されることになるものである。
【0061】
また、ガイドレール18には、インクヘッドユニット30のキャリッジ32が摺動自在に設けられていて、ガイドレール18により、キャリッジ32の主走査方向への移動がガイドされる。
キャリッジ移動機構20は、テーブルユニット40のテーブル48に載置されたメディア5に対して、キャリッジ32を相対的に主走査方向に移動させる機構である。
【0062】
なお、キャリッジ移動機構20の構成は、特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、キャリッジ移動機構20は、左側のプーリ21と、右側のプーリ22と、無端状のベルト23と、キャリッジモータ24とを有して構成されている。
【0063】
ここで、左側のプーリ21は、ガイドレール18の左端より左方に設けられており、右側のプーリ22は、ガイドレール18の右端より右方に設けられている。
【0064】
これら左側のプーリ21および右側のプーリ22は、支持壁16に固定されており、ベルト23は、左側のプーリ21と右側のプーリ22とに巻き掛けられている。
【0065】
また、本実施の形態においては、右側のプーリ22にキャリッジモータ24が接続されているが、左側のプーリ21にキャリッジモータ24が接続されるようにしてもよい。
【0066】
本実施の形態においては、キャリッジモータ24が駆動して右側のプーリ22が回転することにより、左側のプーリ21と右側のプーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0067】
キャリッジ32は、ガイドレール18に摺動自在に係合するようにして、ベルト23に取り付けられている。
【0068】
こうしたキャリッジ32は、テーブル48より上方に配置されており、キャリッジモータ24の駆動によってベルト23が走行して、キャリッジ32が主走査方向に移動することに伴い、キャリッジ32に搭載されたインクヘッド34および光照射装置80は主走査方向に移動する。
【0069】
インクヘッド34は、プロセスカラーインク、ホワイトインクあるいはクリアーインクなどの各種のインクを吐出可能なインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4を備えている。
【0070】
これらのインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4は、それぞれ副走査方向に複数のノズルを配置したノズル列として構成されており、その内部は負圧(大気圧より低い圧力である。)に設定されている。
【0071】
なお、本実施の形態においては、プロセスカラーインク、クリアーインクならびにプライマーとして、光硬化性インクを用いるものとする。こうした光硬化性インクとしては、例えば、紫外線が照射されると硬化する性質を備えた紫外線硬化インクがある。
【0072】
ここで、プロセスカラーインクやホワイトインクは、メディア5に印刷画像を形成するために用いられる。こうしたプロセスカラーインクやホワイトインクは、顔料などの着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、樹脂、溶剤などを含んでいる。
【0073】
また、クリアーインクは、プロセスカラーインクやホワイトインクの表面に吐出され、プロセスカラーインクやホワイトインクを覆うオーバーコート層の役割を果たすトップコートを形成するものである。こうしたクリアーインクは、顔料などの着色剤を含まず、光重合性モノマーと光重合開始剤系とを含み、必要に応じてプロセスカラーインクと同様の各種添加剤等を含んでいる。
【0074】
なお、クリアーインクは、プライマーとして用いたり、あるいは、厚盛り印刷やテクスチャー印刷のために、メディア向けてに直接吐出されることもある。
光照射装置80は、メディア5に吐出された光硬化性インク(例えば、紫外線硬化インクである。)に光(例えば、紫外線である。)を照射する装置であり、キャリッジ32に固定されている。
【0075】
従って、光照射装置80は、キャリッジの移動に伴い、キャリッジ32を介してガイドレール18に沿って主走査方向に移動可能である。
【0076】
なお、本実施の形態においては、光硬化性インクとして紫外線が照射されると硬化する性質を備えた紫外線硬化インクを用いるものとし、また、光照射装置80として紫外線照射ランプを用いるものとする。
【0077】
ここで、光照射装置80は、副走査方向に沿って上流(後方)側から下流(前方)側に順に配置された第1領域80-1と第2領域80-2と第3領域80-3との3箇所の領域に分割されており、第1領域80-1と第2領域80-2と第3領域80-3とにおけるそれぞれの露光量(光照射強度)を制御可能に構成されている。
【0078】
本実施の形態においては、第1領域80-1と第2領域80-2と第3領域80-3とは、それぞれ同一の照射面積を備えるように構成されている。
【0079】
なお、第1領域80-1と第2領域80-2と第3領域80-3とは、同一の面積に限定されるものではない。例えば、第2領域80-2の面積が、第1領域80-1や第3領域80-3の面積よりも大きくてもよいし、あるいは、小さくてもよい。同様に、第3領域80-3の面積が、第1領域80-1や第2領域80-2の面積よりも大きくてもよいし、あるいは、小さくてもよい。
【0080】
そして、第1領域80-1の副走査方向後方に位置する後方縁部80aは、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4の副走査方向における最も後方に位置するノズル位置よりも、副走査方向において後方側に位置している。
【0081】
また、副走査方向において第2領域80-2と第3領域80-3と間に位置する境界縁部80bは、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4の副走査方向における最も前方に位置するノズル位置よりも、副走査方向において前方側に位置している。
【0082】
従って、光照射装置80は、メディア5に対してインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4から吐出されたインクに対して、テーブル48の搬送方向において重複する範囲に光を照射することができる。
【0083】
なお、光照射装置80における第1領域80-1、第2領域80-2、第3領域80-3の光源としては、例えば、LEDを用いることができる。
次に、テーブル移動機構38は、テーブルユニット40のテーブル48を副走査方向に移動させる機構である。
【0084】
テーブルユニット40は、テーブル48と、テーブル48を副走査方向に移動可能に支持するテーブルキャリッジ47とを備えている。
【0085】
このテーブルキャリッジ47は、第1スライドレール51および第2スライドレール52に支持されている。
【0086】
テーブル48は、副走査方向の長さが主走査方向の長さよりも短い矩形状に形成されていて、上面にメディア5が載置される。
【0087】
なお、テーブル48は、副走査方向の長さが主走査方向の長さよりも長くてもよいし、あるいは、副走査方向の長さと主走査方向の長さとが同一であってもよい。
【0088】
こうしたテーブル48は、支持壁16よりも下方に配置されているとともに、インクヘッドユニット30よりも下方に配置されていて、移動装置41によって副走査方向に移動可能に構成されている。
【0089】
移動装置41は、ベース部材60上に配置されていて、前側のプーリ42と、後側のプーリ43と、無端状のベルト44と、駆動モータ45とを有して構成されている。
【0090】
ここで、前側のプーリ42は、ベース部材60の底壁61の前側に設けられており、一方、後側のプーリ43は、底壁61の後側に設けられている。
【0091】
ベルト44は、前側のプーリ42と後側のプーリ43とに巻き掛けられていて、後側のプーリ43には、駆動モータ45が接続されている。但し、駆動モータ45は、前側のプーリ42に接続されていてもよい。
【0092】
本実施の形態においては、駆動モータ45が駆動して、後側のプーリ43が回転することにより、前側のプーリ42と後側のプーリ43との間においてベルト44が走行するように構成されている。
【0093】
テーブルユニット40のテーブルキャリッジ47は、ベルト44に取り付けられているため、駆動モータ45の駆動によってベルト44が走行すると、テーブルユニット40は第1スライドレール51および第2スライドレール52に沿って、副走査方向に移動することになる。
【0094】
即ち、移動装置41は、テーブル48を副走査方向(即ち、順方向および逆方向である。)において往復移動させることができる。
【0095】
ここで、
図5は、テーブル48が副走査方向の最も下流側、即ち、最も前方側に位置した状態を示し、また、
図6は、テーブル48が副走査方向の最も上流側、即ち、最も後方側に位置する状態を示している。
【0096】
つまり、テーブル48は、移動装置41によって副走査方向の最も上流側から最も下流側へ順方向に搬送可能であり、また、移動装置41によって副走査方向の最も下流側から最も上流側へ逆方向に引き戻すように搬送可能である。
【0097】
なお、
図5および
図6では、図面の視認性を向上させるため、キャリッジ移動機構20などの図示は省略している。
さらに、インクジェットプリンタ10は、インクを貯留するとともにインクヘッド34に接続されているインクカートリッジ(図示せず。)が収容される収容部として、インクカートリッジ収容部19を備えている。
【0098】
このインクカートリッジ収容部19は、本体フレーム14の後方において、ベース部材60の左壁62上に設けられている。
【0099】
なお、本実施の形態においては、3つのインクカートリッジ収容部19が主走査方向に並んで設けられている場合を示しているが、インクカートリッジ収容部19の数は、3つに限定されるものではない。
【0100】
また、インクカートリッジは、本体フレーム14の左ベース壁15Lに形成された開口19Hを介してインクカートリッジ収容部19に挿入されるように構成されている。
【0101】
次に、メンテナンス装置70は、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4が位置するノズル面をワイピングするワイピング装置と、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4から強制的にインクを吸引するクリーニング装置とを備えている。
【0102】
メンテナンス装置70は、ベース部材60の右壁63上において、本体フレーム14よりも前方に設けられている。
【0103】
さらに、メンテナンス装置70は、テーブルユニット40よりも右方において、インクヘッドユニット30より下方に配置されている。
【0104】
メンテナンス装置70の前端70Fは、テーブル48が副走査方向の最も下流側に位置するときのテーブル48の副走査方向の上流側の端部48Bよりも副走査方向の下流側、即ち、前方側に位置する。
【0105】
インクジェットプリンタ10は、テーブル48の移動空間外(例えば、ベース部材60の左壁62上である。)からテーブル48の移動空間内(例えば、ベース部材60の底壁61である。)へのアクセスを抑制するための区画壁90を備えている。
【0106】
この区画壁90は、板状の部材で構成され、支持壁16の下方位置であって、主走査方向においてテーブル48の側方(本実施の形態においては、左方側である。)に配置されている。
【0107】
また、インクジェットプリンタ10には、上記したように制御装置100が搭載されており、作業者は操作パネル200に設けられた各種の操作子を操作することによって、当該制御装置100によりインクジェットプリンタ10の動作を制御することができる。
【0108】
即ち、操作パネル200には、詳細な図示は省略するが、メディア5へ印刷を行う際の印刷データを選択する操作子などを含む各種の操作を行うための操作子や当該操作子の操作状況などを表示する表示部などが設けられている。
【0109】
(II) 本発明によるインクジェットプリンタにおける制御装置の機能的構成の説明
【0110】
図8には、
図3に示すインクジェットプリンタにおける制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成を示すブロック構成説明図があらわされている。
【0111】
制御装置100は、本発明の実施に関連する機能的構成として、照明装置80における第1領域80-1の露光量を制御する第1露光量制御部102と、照明装置80における第2領域80-2の露光量を制御する第2露光量制御部104と、照明装置80における第3領域80-3の露光量を制御する第3露光量制御部106とを有して構成されている。
【0112】
より詳細には、第1露光量制御部102は、メディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量が、メディア5に吐出されたドットが滲まないように硬化する第1露光量となるように、第1領域80-1の露光量を制御する。
【0113】
次に、第2露光量制御部104は、メディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量が、メディア5に吐出されたドットが硬化せずに広がるようにする第2露光量(第2露光量は、第1露光量より小さい。即ち、「第1露光量>第2露光量」である。)となるように、第2領域80-2の露光量を制御する。
【0114】
さらに、第3露光量制御部106は、メディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量が、第2露光量よりも大きな第3露光量(第3露光量は、第2露光量より大きい。即ち、「第3露光量>第2露光量」である。)となるように、第3領域80-3の露光量を制御する。
【0115】
(III) 本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法の説明
【0116】
以上の構成において、インクジェットプリンタ10は、その全体的な動作を制御装置100により制御されるものであるが、インクジェットプリンタ10がメディア5に印刷する際の一般的な動作については従来の技術を用いればよいので、その詳細な説明は省略するものとして、以下においては、
図9を参照しながら本発明の実施に関連する事項についてのみ説明する。
【0117】
なお、
図9には、本発明によるインクジェットプリンタの印刷方法を模式的に示す説明図があらわされている。
【0118】
ここで、
図9に示すように、メディア5を副走査方向(X方向)の上流側(後方側)から下流側(前方側)へ向かう順方向で搬送する場合に、副走査方向(X方向)において、メディア5の搬送方向の範囲X1~X2については、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4について、使用するノズルのうち副走査方向における最も上流側(後方側)に位置するノズル位置を0(X=0)とし、インクヘッド34のインクノズル34-1、34-2、34-3、34-4について、使用するノズルのうち副走査方向における最も下流側(前方側)に位置するノズル位置を100(X=100)とすると、X1<0、0<X2<100となる。
【0119】
また、X3は、境界縁部80bの副走査方向(X方向)における位置であり、100<X3となる。
【0120】
さらに、X4は、光照射装置80の第3領域80-3の副走査方向の最も上流側(前方側)の位置を示す。
【0121】
ここで、インクジェットプリンタ10によりメディア5に複数のパスにより印刷するときに、X=0からX2までの領域が全パスの前段部分(全パスにおける印刷開始側にあるパスであり、必ずしも全パスのうちの半分量のパスとは限らない。)であり、X2からX=100までの領域が全パスのうちの後段部分(全パスにおける印刷終了側にあるパスであり、必ずしも全パスのうちの半分量のパスとは限らない。)であるとする。
【0122】
このとき、インクジェットプリンタ10により前段部分のパスを印刷する場合には、制御装置100の第1露光量制御部102により、光照射装置80の第1領域80-1からメディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量を、メディア5に吐出されたドットが滲まないように硬化する第1露光量(例えば、100mJ/cm2)とする。
【0123】
そして、インクジェットプリンタ10により後段部分のパスを印刷する場合には、制御装置100の第2露光量制御部104により、光照射装置80の第2領域80-2からメディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量を、メディア5に吐出されたドットが硬化せずに広がるように、第1露光量よりも低い光量である第2露光量(第1露光量>第2露光量)とする。
【0124】
さらに、インクジェットプリンタ10により全てのパスの印刷を終了した後には、制御装置100の第3露光量制御部106により、光照射装置80の第3領域80-3からメディア5へ照射される1パス当たりの光の露光量を、第2露光量よりも大きい第3露光量(第3露光量>第2露光量)とする。
【0125】
(IV) 本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法の作用効果の説明
【0126】
以上において説明したように、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法によれば、光硬化性インクを用いてメディアに複数のパスにより印刷を行う際に、パスの進行に応じて露光量を相対的に大(高)→小(低)→大(高)と変化するようにしたので、印刷物(成果物)について、
図10に示すように、インクの滲みが抑制され、かつ、高い光沢感を得ることができるようになり、印刷物(成果物)の光沢を向上することができる。
【0127】
また、このように露光量を制御すると、印刷物(成果物)について、メディアのソリや皺の発生を抑制することができる。
【0128】
なお、メディアの反りや印字物のしわの発生を抑制するためには、第3の露光のタイミングを遅くしすぎないようにすること、即ち、X3の範囲を限定することが好ましい。なぜならば、メディアの反りや印字物のしわの発生の原因のひとつは、硬化したインクの上に未硬化のインクが長く乗っていることにあるからである。
【0129】
例えば、最後に吐出されるノズル(X=100)と第3領域80-3の上流側端部(X3)との副走査方向(X方向)における差が、0以上2.54cm以下とすることが好ましい。
(V) その他の実施の形態および変形例の説明
【0130】
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0131】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-5)に示すように変形するようにしてもよい。
【0132】
(V-1) 上記した実施の形態においては、X1<0の場合について説明したが、X1≦0であってもよいことは勿論である。
【0133】
(V-2) 上記した実施の形態においては、100<X3の場合について説明したが、100≦X3であってもよいことは勿論である。
【0134】
(V-3) 上記した実施の形態においては、光硬化性として紫外線硬化性を利用した場合について説明したが、光硬化性にとして利用する光の波長は紫外線に限られるものではなく、インクと照明装置との関係において適宜の波長の光を用いてもよいことは勿論である。
【0135】
(V-4) 上記した実施の形態においては、詳細な説明は省略したが、X3<100の場合においても、使用するノズルを限定することにより、上記した実施の形態と同様の効果を得ることができる。例えば、X1≦0、X2=30、X3=70の場合には、インクヘッド34の使用するノズルをX=0からX=70の範囲に限定することで、上記した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0136】
(V-5) 上記した実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-4)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、メディア(媒体)に複数のパス(マルチパス)により印刷を行うインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの印刷方法に用いて好適である。
【符号の説明】
【0138】
5 メディア
10 インクジェットプリンタ
12 本体ケース
13C フロントカバー
13L 左カバー
13R 右カバー
13W 窓
14 本体フレーム
14H 開口
15L 左ベース壁
15R 右ベース壁
16 支持壁
18 ガイドレール
19 インクカートリッジ収容部
19H 開口
20 キャリッジ移動機構
21,22 プーリ
23 ベルト
24 キャリッジモータ
30 インクヘッドユニット
32 キャリッジ
34 インクヘッド
34a-1,34a-2,34a-3,34a-4 インクノズル
38 テーブル移動機構(搬送手段)
40 テーブルユニット
41 移動装置
42,43 プーリ
44 ベルト
45 駆動モータ
47 テーブルキャリッジ
48 テーブル
48B 端部
51 第1スライドレール
52 第2スライドレール
60 ベース部材
61 底壁
62 左壁
63 右壁
64 左側壁
65 右側壁
70 メンテナンス装置
70F 前端
80 光照射装置(光照射手段、紫外線照射ランプ)
80-1 第1領域(第1の領域)
80-2 第2領域(第2の領域)
80-3 第3領域(第3の領域)
80a 後方縁部
80b 境界縁部
90 区画壁
100 制御装置
102 第1露光量制御部(第1の露光量制御手段)
104 第2露光量制御部(第2の露光量制御手段)
106 第3露光量制御部(第3の露光量制御手段)
200 操作パネル