(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029409
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】グラフェン金属複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/10 20060101AFI20240228BHJP
C22C 1/05 20230101ALI20240228BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240228BHJP
B22F 3/18 20060101ALI20240228BHJP
C22C 1/10 20230101ALI20240228BHJP
【FI】
B22F3/10 G
C22C1/05
B22F1/00 L
B22F1/00 N
B22F3/18
C22C1/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131642
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】522333202
【氏名又は名称】鉅樹晶▲し▼股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519244810
【氏名又は名称】曾 為霖
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】曾 為霖
【テーマコード(参考)】
4K018
4K020
【Fターム(参考)】
4K018AA04
4K018AA14
4K018AB07
4K018AC01
4K018BA02
4K018BA08
4K018BC12
4K018CA02
4K018CA23
4K018CA50
4K018DA11
4K020AA24
4K020AC01
4K020AC04
4K020BB29
(57)【要約】
【課題】本発明は、グラフェン金属複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法は、後述する工程を含む。粉末原料を提供し、粉末原料は金属粉末及びグラフェン粉末を少なくとも含む。金属粉末は複数の金属粒子を含み、各金属粒子は樹枝状を呈し、グラフェン粉末は複数のグラフェンナノプレートレットを含む。粉末原料を繰り返し拡散させて集め、金属粉末及びグラフェン粉末を均等に混合する。均等に混合した粉末原料をモールドに充填し、粉末原料を圧縮して固め、グリーン体とする。グリーン体を焼結させてこれらの金属粒子を融合させ、金属原子はグラフェン分子と結合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)粉末原料を提供し、前記粉末原料が金属粉末及びグラフェン粉末を少なくとも含み、前記金属粉末が複数の金属粒子を含み、各前記金属粒子が樹枝状を呈し、前記グラフェン粉末が複数のグラフェンナノプレートレットを含む工程と、
b)前記粉末原料を繰り返し拡散させて集め、前記金属粉末及び前記グラフェン粉末を均等に混合する工程と、
c)均等に混合した前記粉末原料をモールドに充填し、前記粉末原料を圧縮して固め、グリーン体とする工程と、
d)前記グリーン体を焼結させて複数の前記金属粒子を融合させ、金属原子がグラフェン分子と結合する工程と、
を含む、グラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項2】
工程cにおいて、冷間等方圧加圧方式で前記モールドを加圧し、前記粉末原料を固めて前記グリーン体とする、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項3】
工程cにおいて、23℃から28℃の温度下、2000Barから3000Barの圧力で前記モールドを加圧する、請求項2に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項4】
工程cにおいて、ローラーで前記モールド中の前記粉末原料に対して200MPaから300MPaの圧力を付加し、繰り返しローラー圧縮する、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項5】
工程cにおいて、前記粉末原料を見掛け粉末密度が7.3~7.8になるまで圧縮する、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項6】
工程dにおいて、前記グリーン体を950℃から1050℃の温度下で焼結させる、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記粉末原料中の前記グラフェン粉末の重量パーセントが500ppmから5000ppmである、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記金属粉末がアルミニウム粉末又は銅粉末である、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項9】
工程cにおいて、前記粉末原料を繰り返し複数に等しく分散させて集める、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【請求項10】
工程aにおいて、金属原材料を電解還元して前記金属粉末にし、前記金属粒子を樹枝状にする、請求項1に記載のグラフェン金属複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラフェン金属複合材料に関し、特にグラフェンを均等に混合したグラフェン金属複合材料の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
現在、炭化ケイ素、酸化アルミニウム強化銅複合材料の作製及び応用は、すでに確立に向かっているが、その総合的性能及び実際の需要はまだ隔たりがある。グラフェンは非常に優れた機械的性質、熱的特性及び電気的特性を備え、熱伝導複合材料の作製で最も理想的な補強体の1つである。しかしながら、現在、グラフェン強化銅アルミニウム複合材料に関する研究はまだ初期段階にあり、関連する研究が待たれている。いかにしてグラフェンを銅アルミニウム基体中に均等に分散させるか、さらにグラフェン及び金属間に良好な接触界面を形成させるかは、研究における重要な難題である。
【0003】
このことを考慮して、本発明者は上記既存技術に対して鋭意研究を行い、さらに学理的な利用を組み合わせ、上記問題点を尽力して解決することは、本発明者の改良の目標となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、グラフェンを均等に混合したグラフェン金属複合材料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、グラフェン金属複合材料の製造方法を提供し、後述する工程を含む。粉末原料を提供し、粉末原料は金属粉末及びグラフェン粉末を少なくとも含む。金属粉末は複数の金属粒子を含み、各金属粒子は樹枝状を呈し、グラフェン粉末は複数のグラフェンナノプレートレットを含む。粉末原料を繰り返し拡散させて集め、金属粉末及びグラフェン粉末を均等に混合する。均等に混合した粉末材料をモールドに充填し、粉末原料を圧縮して固め、グリーン体とする。グリーン体を焼結させてこれらの金属粒子を融合させ、金属原子はグラフェン分子と結合する。
【0006】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、冷間等方圧加圧方式でモールドを加圧し、粉末原料を固めてグリーン体とする。23℃から28℃の温度下、2000Barから3000Barの圧力でモールドを加圧する。
【0007】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、ローラーでモールド中の粉末原料に対して200MPaから300MPaの圧力を付加し、繰り返しローラー圧縮する。
【0008】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、粉末原料を見掛け粉末密度が7.3~7.8になるまで圧縮する。
【0009】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、グリーン体を950℃から1050℃の温度下で焼結させる。
【0010】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、粉末原料中のグラフェン粉末の重量パーセントは、500ppmから5000ppmである。
【0011】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、金属粉末はアルミニウム粉末又は銅粉末である。
【0012】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、粉末原料を繰り返し複数に等しく分散させて集める。
【0013】
本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法において、金属原材料を電解還元して金属粉末にし、金属粒子を樹枝状にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の粉末原料の概要図である。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の混合工程に関する概要図である。
【
図4】
図4は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の混合工程に関する概要図である。
【
図5】
図5は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の圧縮工程に関する概要図である。
【
図6】
図6は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の圧縮工程に関する概要図である。
【
図7】
図7は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の圧縮工程に関する別の態様の概要図である。
【
図8】
図8は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の製造方法の圧縮工程に関する別の態様の概要図である。
【
図9】
図9は、グラフェンナノプレートレットの分子構造の概要図である。
【
図10】
図10は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の成分に関する分子構造の概要図である。
【
図11】
図11は、本発明の好ましい実施例におけるグラフェン金属複合材料の成分に関する分子構造の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施例は、グラフェン金属複合材料の製造方法を提供する。本実施例において、本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法は以下の工程を少なくとも含む。
【0016】
図1及び
図2を参照すると、まず工程aで粉末原料10(raw material powder)を提供する。粉末原料10は混合物であり、粉末原料10中に金属粉末(metal powder)及びグラフェン粉末(graphene powder)を少なくとも含み、粉末原料10中のグラフェン粉末の重量パーセントは5%より低く、金属粉末はアルミニウム粉末又は銅粉末である。金属粉末は複数の金属粒子100(すなわちアルミニウム粒子又は銅粒子)を含み、グラフェン粉末は複数のグラフェンナノプレートレット200を含む。各グラフェンナノプレートレット200は
図9に示すように、つながった複数のグラフェン分子210を含む。各グラフェン分子210はいずれも6個の炭素原子211が構成する環状構造のグラフェン分子210であり、グラフェン分子210は結合して互いに接続され、同一平面に配列してグラフェンナノプレートレット200を構成し、一部のグラフェン分子210のうちの1つの炭素原子211に官能基220が結合することができる。官能基220は炭素鎖を有し、例えばステアリン酸であるが、本発明はこれに制限されない。金属粉末は電解還元で製造される複数の金属粒子100を含み、金属粒子100は金属原子110(すなわちアルミニウム原子又は銅原子)からなる結晶である。本実施例において、金属粉末は電解銅粉末であり、従ってこれらの金属粒子100は樹枝状の結晶である。
【0017】
図1、
図3及び
図4を参照すると、工程bでは、工程aに続いて、粉末原料10を繰り返し拡散させて集め、金属粉末及びグラフェン粉末を均等に混合する。一定量の官能基220がグラフェンナノプレートレット200に進入し、これらのグラフェンナノプレートレット200に同種の電荷を保持させる。グラフェンナノプレートレット200が官能基220を含むとき、同種の電荷の間に静電反発力が生成され、これによりグラフェンナノプレートレット200は相互に反発して分離し、均等に分散することができる。具体的に、粉末原料10を繰り返し複数に等しく分散させて集め、粉末原料10中の金属粉末及びグラフェン粉末を均等に混合し、本実施例では、V型混合機で粉末原料10を混合する。V型混合機は回転軸310を有し、回転軸310は水平に配置され、回転軸310に混合タンク320が設けられる。混合タンク320は第1タンク321及び複数の第2タンク322を含み、各第2タンク322はそれぞれ第1タンク321に通じる。第1タンク321は回転軸310の一側に配置され、第2タンク322は回転軸310における第1タンク321と相対するもう一側に配置され、第2タンク322は回転軸310の縦方向に平行に配列される。混合するとき、粉末原料10を混合タンク320に入れてから、回転軸310で混合タンク320を回転させる。これらの第2タンク322が、第1タンク321の下方に位置するまで回転するとき、粉末原料10は各第2タンク322内に分散して落ちる。第1タンク321がこれらの第2タンク322の下方に位置するまで回転するとき、粉末原料10は第1タンク321内に集まって落ちる。混合タンク320を連続して回転させ、粉末原料10を繰り返し拡散させて集め、均等に混合することができる。さらに、ローラー又は撹拌式の混合方式を使用するのを防止することで、金属粒子100が付勢力により摩擦され、金属粒子100の樹枝状の結晶が損傷するのを防止することができる。
【0018】
工程cでは、工程bに続いて、粉末原料10をモールド400a/400b中に充填して粉末原料10を圧縮し、これを固めてグリーン体20(green part)とする。グリーン体20は均等に混合されて分布する金属粒子100及びグラフェンナノプレートレット200を含む。本発明では、粉末原料10を圧縮する方式は限定されない。
【0019】
例えば
図5から
図6に示すように、冷間等方圧加圧方式でモールド400aを加圧し、モールド400aを加圧流体中に置く。23℃から28℃の温度下で、2000Barから3000Barの圧力でモールド400aを均等に加圧するため、粉末原料10を圧縮して固め、グリーン体20とすることができる。
【0020】
例えば
図7から
図8に示すように、ローラー410bでモールド400b中の粉末原料10に対して200MPaから300MPaの圧力を付加し、見掛け粉末密度が7.3~7.8になるまで繰り返しローラー圧縮する。モールド400bは鋼材で製造するか又はゴムで製造することができ、さらにそれぞれ対応して鋼材で製造したローラー410b、又は硬度が70から90度のゴムで製造したローラー410bを使用する。
【0021】
工程dでは、工程cに続いて、グリーン体20を焼結させ、金属粒子100を溶融して相互に結合させる。金属粒子100が銅のとき、周囲の動作温度を950℃から1050℃まで加熱して1時間焼結させ、金属粒子100がアルミニウムのとき、周囲の動作温度を600℃まで加熱して1時間焼結させる。これによりグラフェン金属複合材料の完成品を製造する。グラフェンナノプレートレット200及び樹枝状の金属粒子100を焼結させると、その完成品中の金属原子及びグラフェン分子の間は、π結合によりsp3混成軌道で結合して新たな分子になり、
図10に示す通りである。具体的に、焼結させるとき、アンモニアを添加し、アンモニアが分解すると、その窒素原子がグラフェン分子210におけるステアリン酸官能基220の炭素鎖と結合し、1つの窒素原子及び4つの炭素を含むピロール複素環220aを形成する。金属原子は複素環220a中の窒素原子と結合し、これはπ結合によりsp3混成軌道で結合する。これにより、金属原子110は官能基220及び窒素原子が合成する複素環220aにより、グラフェン分子210と接続して新たな分子を形成することができる。
図11に示すように、4つの複素環220aが接続して環状の共役構造を形成することができ、共役構造は外に延伸して、その他のグラフェン分子210と結合することができ、各共役構造は1つの金属原子110と結合することができる。金属原子110は環状の共役構造内に位置し、共役構造中の4つの窒素原子とそれぞれ結合する。従って、一部の金属原子110は4つのπ結合によりグラフェン分子210と結合して、新たに修飾された分子を形成することができる。本実施例において、その完成品は焼結させて柱状の基材を形成し、販売することができる。
【0022】
上記をまとめると、本発明のグラフェン金属複合材料の製造方法は、金属粉をグラフェン粉末に混合し、形成される粉末原料10は金属粒子100及びグラフェンナノプレートレット200の混合物である。冷間等方圧加圧を経過した後、焼結段階で完成品中のグラフェンナノプレートレット200は金属原子に結合し、完成品の熱伝導係数を高める。グラフェンが金属要素の熱伝導係数を増加させることにより、純金属を熱伝導媒体とすることと比較して、熱伝導の総量が同じ状況で、本発明は比較的小さなグラフェン金属複合材料を熱伝導媒体として配置することができる。
【0023】
以上の記載は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の特許の主旨を利用したその他の同等の変更は、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するべきである。
【符号の説明】
【0024】
10 粉末原料
20 グリーン体
100 金属粒子
110 金属原子
200 グラフェンナノプレートレット
210 グラフェン分子
211 炭素原子
220 官能基
220a 複素環
310 回転軸
320 混合タンク
321 第1タンク
322 第2タンク
400a モールド
400b モールド
410b ローラー
a 工程
b 工程
c 工程
d 工程