(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002944
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】複合円筒タンクの製造方法及びこの方法によって製造された複合タンク
(51)【国際特許分類】
F16J 12/00 20060101AFI20231228BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16J12/00 C
F16J12/00 B
F17C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023098955
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】22305909
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(71)【出願人】
【識別番号】523231015
【氏名又は名称】コフェス・エン・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・パパン
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ファンスベイゲンホーフェン
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB11
3E172AB15
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172CA13
3E172CA14
3E172DA36
3J046AA01
3J046AA14
3J046BA03
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合円筒タンクの製造方法及びこの方法によって製造された複合タンクを提供する。
【解決手段】繊維複合円筒タンク1を製造するための方法は、再使用可能で取り外し可能な工具キットを組み立てるステップと、端部取付具を工具キットに適用するステップと、前記端部取付具が開口911を有し、該開口が、工具キットを分解された後に開口を通じて取り外すのに十分に大きい、ステップと、組み立てられた工具キットをブリーザ片で包むことによってバリア層2を形成するステップと、繊維と樹脂とを混合した第1の複合材料から形成される第1の複合テープをバリア層上にわたって巻回することによって第1のシェル層3を形成するステップと、開口を通じて工具キットを分解して取り出すステップと、とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容するための繊維複合円筒タンク(1)を製造するための方法であって、
-再使用可能かつ取り外し可能な工具キット(5)を組み立てるステップ(S0)と、
-端部取付具(91、92)を工具キット(5)に取り付けるステップ(S1)であって、前記端部取付具(91、92)は開口(911、921)を有し、該開口は、工具キット(5)が分解された後に開口を通して取り外すのに十分に大きいステップ(S1)と、
-組み立てられた工具キット(5)をブリーザ片(11)で包むことによってバリア層(2)を形成するステップ(S2)であって、包むことは巻回を伴わないラッピングであり、ブリーザ片(11)は繊維製の不織材料であるステップ(S2)と、
-第1のシェル層(3)を形成するステップ(S3)であって、繊維と樹脂とを混合した第1の複合材料から形成される第1の複合テープ(12)をバリア層(2)上にわたって巻回することによって第1のシェル層(3)を形成するステップ(S3)と、
-開口(911、921)を通して工具キット(5)を分解して取り出すステップ(S4)と、
を備える方法。
【請求項2】
第2のシェル層(4)を形成するステップ(S10)であって、繊維と樹脂とを混合した第2の複合材料により形成される第2の複合テープ(13)を第1のシェル層(3)上及び端部取付具(91、92)の外周部(10)上にわたって巻回することによって第2のシェル層(4)を形成するステップ(S10)を更に備え、前記外周部(10)は開口(91、92)を取り囲む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブリーザ片(11)は、第1の複合材料及び第2の複合材料の樹脂と適合するポリエステル及び/又はポリアミドから形成されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブリーザ片(11)は110g/m2~600g/m2の単位面積当たりの質量を具備することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ブリーザ片(11)は2mm~3mmの厚さを具備することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ブリーザは50℃よりも高いガラス転移温度を具備する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ブリーザ片(11)と第1の複合材料とが化学的に適合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の複合材料は熱可塑性材料を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の複合材料は、炭素繊維、ガラス繊維、又は玄武岩繊維を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
流体を収容するための繊維複合円筒タンク(1)であって、繊維複合円筒タンク(1)は、ブリーザ、樹脂、及び繊維の混合物を含むシェル層を備えるとともに、端部取付具を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造され、シェル層及び端部取付具は、少なくとも2バールの過圧に耐えることができる一体剛性構造を形成することを特徴とする、繊維複合円筒タンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体貯蔵タンクに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、加圧流体を収容するための繊維複合円筒タンクの製造方法及び、この方法によって得られる繊維複合円筒タンクに関する。
【背景技術】
【0003】
高圧繊維複合タンクの使用は、特に水素輸送のために増加している。熱可塑性タイプのVタンクは、水素の使用に適合する興味深い複合タンク形態を構成する。
【0004】
通常、いわゆる熱可塑性タイプのVタンクは、タンクと同じ樹脂から形成される均質なライナを有する。用語「ライナ」は、ここでは、タンクの気密性を保証するタンクの内面上の部分を説明するために使用される。或いは、タイプVタンクがライナを有さない場合がある。
【0005】
ライナレスタイプVタンクは、この出願の共同出願人の一人による国際公開第2011/143723号に記載されているように、バリア層の役割を果たすとともにタンクに使用されるのと同じ樹脂を有する、タンクをより均質にする繊維複合フィルムを取り外し可能な工具キットの周囲に巻き付けることによって製造されることができる。
【0006】
タンク表面に適合するフィルムを取り外し可能な工具キットの表面全体にわたって巻き付けることは、時間がかかり、巻き取り機の使用を必要とする場合がある。更に、巻き取り中にフィルムが裂ける可能性があり、これにより、巻き取りプロセスを繰り返す必要性が増加する。また、タンクに用いられる樹脂と化学的に適合する材料から形成される膜を見出すことはしばしば困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、ライナレスタイプのV複合タンクを製造するために国際公開第2011/143723号に記載された方法の改善を提示する。
【0009】
タンクの気密性を保証する均質な壁を伴う加圧流体用の貯蔵タンク、並びに、そのような貯蔵タンクを製造するための簡便な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、流体を収容するための繊維複合円筒タンクを製造するための方法に関し、該方法は以下のステップ、
-再使用可能で取り外し可能な工具キットを組み立てるステップと、
-端部取付具を工具キットに取り付けるステップであって、前記端部取付具が開口を有し、該開口は、工具キットが分解された後に開口を通して取り外すのに十分に大きいステップと、
-組み立てられた工具キットをブリーザ片で包むことによってバリア層を形成するステップと、
-繊維と樹脂とを混合した第1の複合材料から形成される第1の複合テープをバリア層上にわたって巻回することによって第1のシェル層を形成するステップと、
-開口を通して工具キットを分解して取り出すステップと、
を備える。
【0011】
包むことは、巻回を伴わないラッピングである。ブリーザ片は、繊維製の不織材料である。
【0012】
本発明は、繊維複合タンクの製造方法においてフィルム巻回ステップを除去し、それによって製造時間を短縮する。また、ブリーザ材料の使用は、第1の複合テープと化学的に適合する材料の選択の幅を広げ、したがって製造方法を容易にする。
【0013】
一実施形態において、方法は、繊維と樹脂とを混合した第2の複合材料により形成される第2の複合テープを第1のシェル層上及び端部取付具の外周部上にわたって巻回することによって第2のシェル層を形成するステップを更に備え、前記外周部は開口を取り囲む。第2のシェル層は、繊維複合タンクがより高い圧力値、一般に700バールの作動圧力に耐えることができるようにする。
【0014】
好適には、ブリーザ片は、ポリエステルもしくはポリアミド、又は第1の複合材料及び第2の複合材料の樹脂と化学的に適合する任意の他のポリマーから形成される。また、ブリーザは、例えばポリエステル及びポリアミドなどの異なるポリマーの組み合わせとすることができる。
【0015】
好適には、ブリーザ片は、110g/m2~600g/m2の単位面積当たりの質量を含有する。ブリーザ片の単位面積当たりの質量の選択は、繊維複合タンクの所望の気密性を調整できるようにする。
【0016】
好適には、ブリーザ片は2~3mmの厚さを具備する。
【0017】
好適には、ブリーザは、50℃よりも高いガラス転移温度を含む。ブリーザのガラス転移温度の選択は、既存の製造方法の条件下で本発明を実施できるようにする。
【0018】
好適には、ブリーザ片と第1の複合材料とが化学的に適合する。ブリーザ片及び第1の複合材料は共にモノリシック構造を形成する。これにより、繊維複合タンクの壁の均一性、したがって繊維複合タンクの気密性を改善することができる。
【0019】
好適には、第1の複合材料は熱可塑性材料である。
【0020】
好適には、第1の複合材料は、炭素繊維、ガラス繊維又は玄武岩繊維を含む。
【0021】
本発明の他の態様は、本発明に係る方法によって製造される、流体を収容するための繊維複合円筒タンクに関し、タンクは、ブリーザ、樹脂、及び繊維の混合物から構成されるシェル層を備えるとともに、端部取付具を備え、シェル層及び端部取付具は、少なくとも2バールの過圧に耐えることができる一体剛性構造を形成する。したがって、この方法によって得られる繊維複合円筒タンクは、過圧に耐えることができながら、従来技術からの繊維複合タンクよりも迅速に製造することができる。
【0022】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を説明する添付の図及び図の説明において更に明らかにされる。図は原寸に比例して描かれていないことに留意されたい。図は、本発明の原理を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る繊維複合タンクの概略断面図を表わす。
【
図2】本発明に係る繊維複合タンクの製造方法の主要なステップを示す。
【
図3】本発明に係る繊維複合タンクの製造方法を実施するのに適した組み立てられた工具キットを概略的に表わす。
【
図4】
図2の工具キットの部品のサブセットを概略的に表わす。
【
図5】2つの端部取付具を伴う
図2の組み立て工具キットを概略的に表わす。
【
図6】開口を伴う端部取付具の一実施形態を概略的に表わす。
【
図7】本発明に係る方法の第1の巻回ステップの初期段階における、本発明に係る繊維複合タンクを概略的に表わす。
【
図8】本発明に係る方法の第1の巻回ステップの後の段階における、本発明に係る繊維複合タンクを概略的に表わす。
【
図9】本発明に係る方法の第1の巻回ステップが完了した後の、本発明に係る繊維複合タンクを概略的に表わす。
【
図10】本発明の一実施形態に係る繊維複合タンクの概略断面図を表わす。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る繊維複合タンクの概略断面図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別段の記載がない限り、異なる図に現れる同じ要素は、単一の参照を提示する。
【0025】
更に、明細書及び特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的又は時系列的な順序を説明するためのものではない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維複合タンク1を示す。
図1において、タンク1は円筒形である。タンク1は、60リットル~2000リットル、又はそれ以上の範囲の内容積を有する。繊維複合タンク1は、内側バリア層2と、第1のシェル層3とを備える。任意選択的な第2のシェル層4を
図1で観察することができる。第2のシェル層4の存在は、繊維複合タンク1が耐えなければならない圧力の値に依存する。一般に、第2のシェル層4は、繊維複合タンク1が50バール以上程度の圧力に耐えなければならない場合に必要とされる。
【0027】
実施形態によれば、タンク1が1つ又は2つの開口を備える。
図1の実施形態では、タンクが1つの開口911のみを備える。タンク1が2つの開口を備える実施形態(例えば、
図10及び
図11の実施形態)では、開口は、好ましくは互いに面するタンク1の2つの対向する端部に配置される。
【0028】
繊維複合タンク1は、多様な種類の流体を収容することができる。「流体」とは、気体又は液体を意味する。繊維複合タンク1内に収容され得るガスの例は、水素、酸素又は窒素である。
【0029】
以下では、
図1に示される繊維複合タンク1を製造する方法について説明する。この方法は、国際公開第2011/143723号に記載される方法の改良であり、以下に説明する共通のステップを含む。これらの共通ステップのより詳細な説明は、上記の国際特許出願に見出すことができる。
【0030】
図2は、本発明に係る繊維複合タンク1の製造方法の主要なステップを概略的に示す。
【0031】
ステップS0では、再使用可能で取外可能な工具キットが組み立てられる。
【0032】
図3は、本明細書の方法で使用されることができる、取外可能な工具キット5の一例を示す。取り外し可能な工具キット5は、丸みを帯びた外面を形成するように並んで配置される複数の長尺セグメント6を備える。工具キット5は、対称軸線XXを中心として外径が変化する回転対称形状を有しており、フィルム巻回に適している。この形状は、製造すべき繊維複合タンク1の形状の選択に柔軟性を与える。繊維複合タンク1は、円筒形、球形、楕円形、又は任意の他の形状であってもよい。
【0033】
工具キット5の長尺セグメント6は、金属、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鋼又はステンレス鋼で作られる。
【0034】
工具キット5の組立時には、長尺セグメント6は、セグメントホルダ7と2つのスピンドル部分81、82とを用いて互いに保持される。長尺セグメント6は、スピンドル部分81、82を互いに引き離すことによって定位置に保持される。セグメントホルダ7は、長尺セグメント6の両端を係合させるためにスピンドル部分81、82に取り付けられる。
図4は、例示目的のために、2つのスピンドル部分81、82上に配置された2つのセグメントホルダ7によって保持される、長尺セグメント6のサブセットを示す。
【0035】
ステップS1では、組み立てられた工具キット5に2つの端部取付具が適用される。組み立てられた工具キット5に端部取付具91、92を適用するために、端部取付具91、92が第1の及び第2のスピンドル部分81、82上にわたって移動される。
図5は、2つの端部取付具91、92が取り付けられた、組み立てられた工具キットを示す。或いは、一方の端部取付具91のみが組み立てられた取外可能な工具キットにとりつけられてもよい。2つの端部取付具91、92のそれぞれは開口911、921を備え、該開口は、取外可能な工具キット5の開口911、921を通じた分解及び取り外しを可能にするのに十分な大きさである。開口911、912は、取り外し可能な工具キット5の部品が分解された時点で開口911、921を通過できるように寸法付けられる。
【0036】
端部取付具91、92は、繊維複合タンク1の製造後に所定の位置に留まる。
【0037】
幾つかの実施形態では、端部取付具91、92はプラスチック製である。この場合、これらの端部取付具は、例えば50バール未満の中程度の過圧に耐えることができる、小型軽量タンクを製造するのに適している。
【0038】
幾つかの実施形態において、端部取付具91、92は、内層2及び第1のシェル層3の材料に適合するポリマーを成す。この場合、端部取付具は、例えば50バールを超える高圧に耐えることができるタンクを製造するのに適している。
【0039】
端部取付具91、92の材料は、繊維複合タンク1の気密性を高めるために選択されてもよい。
【0040】
図6は、端部取付具91、92の一実施形態を示す。
図6では、開口911、921を取り囲む外周部10を観察することができる。開口911、921は、工具キット5の部品の取り外しを可能にするべくこれらの部品の形状に適合した形状を有してもよい。
図6の例では、開口911、921は円形である。
【0041】
ステップS0、S1の後、ステップS2において、組み付けられた工具キット5は端部取付具91、92と共にブリーザ片11で包まれる。「ブリーザ」とは、繊維で作られた不織材料を意味する。例えば、ブリーザは、ポリエステル又はポリアミドとすることができる。ブリーザは、第1のシェル層3を形成するポリマーと同一のポリマーから形成されることができる。一般に、ブリーザはフェルトである。フェルトは、繊維をマット加工して、凝縮し、プレス加工することによって製造される不織布材料である。
【0042】
ブリーザ片11は、組み立てられた工具キット5の全面を覆うのに適した寸法を有する。一般に、ブリーザ片11は、組み立てられた工具キット5の寸法に切断され、組み立てられた工具キット5上に置かれる。ブリーザは、110g/m2~600g/m2の単位面積当たりの質量を含有する。ブリーザの表面当たりの質量は、タンクの気密性を適合させるように選択される。一般に、ブリーザ片11は2mm又は3mmの厚さを具備する。ブリーザ片11は、包まれた時点で、内側バリア層2を形成する。
【0043】
或る実施形態において、ブリーザは、更に説明される繊維複合タンク1を製造する方法の後続のステップの作業温度よりも高いガラス転移温度を含む。例えば、ブリーザは、60℃よりも高いガラス転移温度を具備する。ブリーザのガラス転移温度は、赤外線放射当たりの加熱に特に適している。
【0044】
例えば、
図6に示されるように、端部取付具91、92が開口911、921の周囲に外周部10を備える場合、ブリーザ片11は、開口911、921の外側の端部取付具91、92を外周部10まで覆う。
【0045】
したがって、国際公開第2011/143723号に開示される方法とは異なり、内側バリア層2は、フィルムを巻回することによって形成されるのではなく、組み立てられた工具キット5をブリーザ片11で単に包むことによって形成される。したがって、フィルム巻回に適した機器全体が不要であり、巻回ステップも不要である。したがって、ブリーザ材料の多様な選択が可能であり、繊維複合タンクの製造が容易となる。例えば、ブリーザ材料は、ポリエステル又はポリアミドとすることができる。ブリーザは、第1のシェル層3を形成するポリマーと同一のポリマーから形成されることができる。更に説明されるシェル層の樹脂と化学的に適合するブリーザ材料を見出すことは、それらの樹脂と適合するフィルムを見出すことよりも特に容易である。
【0046】
ステップS2の後、ステップS3が実行され、このステップでは、フィルム巻回機を用いて、熱及び圧力の下で第1の複合テープ12がブリーザ片11の周囲に巻回される。圧力条件は、巻回中に第1の複合テープ12に加えられる張力に由来する。熱条件は、例えば赤外線放射によって、又は任意の他の加熱手段によって実現される。赤外線放射による加熱の場合、放射線波長は、第1の複合テープ12の材料の性質にしたがって選択される。第1の複合テープ12は、繊維と樹脂とを混合した第1の複合材料から形成される。例えば、第1の複合材料は、熱可塑性樹脂によって含浸されたガラス繊維又は炭素繊維などの高強度繊維となり得る。他の例において、第1の複合材料の繊維は、金属繊維、鉱物繊維、又はそれらの繊維の組み合わせであってもよい。第1の複合材料のための樹脂の例は、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド66(PA66)、ポリフタルアミド(PPA)である。
【0047】
図7は、巻回ステップの初期段階においてブリーザ片11で包まれる、組み立てられた工具キット5を示す。明確にするために、スピンドル部分81、82は
図7には表わされない。
図7において、組み立てられた工具キット5は、その赤道におけるDmaxからその両端におけるDminまでの範囲の単調に減少する直径を有する。好ましくは、第1の複合テープ12は、単一の連続ストリップとして適用される。或いは、第1の複合テープ12は、一連の幾つかの断片として適用される。巻回プロセス及びパラメータの詳細な説明は、国際公開第2011/143723号に見出すことができる。
【0048】
ブリーザ材料は、第1の複合材料の樹脂と化学的に適合するように選択される。「化学的に適合する」とは、ステップS6中にブリーザ材料と第1の複合材料の樹脂との間に化学結合が形成されることを意味する。例えば、第1の複合テープ12を巻回しながら、ブリーザ片11に第1の複合材料の樹脂からの粒子が充填される。第1の複合材料は、タンク1の気密性を構築する。
【0049】
図8は、巻回ステップの後の段階でブリーザ片11で覆われる、組み立てられた工具キット5を示す。第1の複合テープ12のみが見え、包まれた工具キット5及び端部取付具91、92は、第1の複合テープによって隠されている。明確にするために、スピンドル部分81、82は
図8には表わされない。
【0050】
図9は、第1の複合テープ12が完全に巻回された後の、ブリーザ片11で包まれた組み立てられた工具キット5を示す。ここでも、明確にするために、スピンドル部分81、82は
図9には表わされない。開口911、921は、工具キット5を取り外すために第1の複合テープ12によって覆われないままである。第1の複合テープ12の被覆面積は、ブリーザ片11の被覆面積よりも大きくても小さくてもよいが、同じであることが好ましい。例えば、端部取付具91、92が
図6に示されるように開口911、921の周囲に外周部10を備える場合、第1の複合テープ12は、開口911、921の外側の端部取付具を外周部10まで覆う。巻回された第1の複合テープ12は、繊維複合タンク1の第1のシェル層3を形成する。
【0051】
図10は、繊維複合タンク1の実施形態を示し、タンク1は、端部取付具91、92がブリーザ片11によって形成された内側バリア層2の内側に位置される。両方の開口911、921が覆われていないままであることが観察され得る。
【0052】
他の実施形態では、ステップS2はステップS1の前に行なわれる。換言すれば、組み立てられた工具キット5に両方の端部取付具91、92が取り付けられる前に、組み立てられた工具キット5がブリーザ片11で覆われる。第1の複合テープ12は、両方の端部取付具91、92が取り付けられた後に巻回される。
図11は対応する繊維複合タンク1を示し、この場合、端部取付具91、92は、ブリーザ片11によって形成された内側バリア層2と、巻回された第1の複合テープ12によって形成された第1のシェル層3との間に位置される。
【0053】
第1の複合テープ12が巻回された時点で、次のステップS4において、工具キットは分解され、その異なる部分が開口911、921のうちの少なくとも1つを通じて繊維複合タンク1から取り外される。分解は以下のように実行されることができる。すなわち、スピンドル部分81、82をタンク1の内部に押し込み、スピンドル部分81、82からセグメントホルダ7を取り外し(例えば、中空スピンドル部分81、82の内側に手を挿入することによって)、スピンドル部分81、82をタンク1から引き抜き、端部取付具91、92を所定の位置に残したままにしつつ、セグメントホルダ7及び長尺セグメント6を開口911、921を通じてタンク1から取り外す。
【0054】
取り外し可能な工具キット5が完全に分解されてタンク1から取り外された後、開口911、921はエンドキャップで閉じられる。エンドキャップは、開口911、921に溶接されるオーバーモールドボスである。好ましくは、エンドキャップはオーバーモールドされた金属部品であるが、50バール未満の作業圧力の場合、エンドキャップをポリマー又は強化ポリマーのみで作製することができる。
【0055】
内側バリア層2、第1のシェル層3、及び端部取付具91、92は、少なくとも2バールの過圧に耐えることができる一体剛性構造を形成する。一体剛性構造の容積は、60リットル~2000リットル、又はそれ以上の範囲とすることができる。
【0056】
或る実施形態では、更なるステップS5が、工具キット5の分解及び取り外しに続いて実行される。工具キット5を取り外した後、オーバーモールドされた金属ボスを端部取付具91、92に溶接することによって開口が閉じられる。次に、ステップS5において、巻回された第1の複合テープ12の周囲に第2の複合テープ13が巻回される。第2の複合テープ13は、繊維と樹脂とを混合した第2の複合材料から作られる。例えば、第2の複合材料は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維、又は任意の他の繊維などの、熱可塑性樹脂によって含浸された高強度繊維とすることができる。他の例において、第2の複合材料の繊維は、金属繊維、鉱物繊維、又はこれらの繊維の組み合わせであってもよい。第2の複合材料の樹脂は、好ましくは、それが巻回される構成要素の材料、すなわち第1の複合材料と化学的に適合する。好ましくは、第2の複合テープ13は、単一の連続ストリップとして適用される。或いは、第2の複合テープ13は、一連の幾つかの破片として適用される。更なるステップS5の終わりに、巻回された第2の複合テープ13が第2のシェル層4を形成する。
【0057】
内側バリア層2、第1のシェル層3、端部取付具91、92、及び第2のシェル層4は、少なくとも50バール以上の過圧に耐えることができる一体剛性構造を形成する。過圧限界値は、内側バリア層2、第1のシェル層3、端部取付具91、92、及び第2のシェル層4によって形成される組成、すなわち材料のアセンブリに依存する。より高い圧力値は、第2のシェル層4のおかげで達成可能である。
【0058】
本発明は、例えば水素、ヘリウム、窒素、水、アルカリ、液体酸などの貯蔵用の容器など、様々な用途のための多種多様な繊維複合タンクを製造するために使用することができる。繊維複合タンク1の寸法は、60L~2000L、又はそれ以上の範囲とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 繊維複合タンク
2 内層、内側バリア層
3 第1のシェル層
4 第2のシェル層
5 工具キット
6 長尺セグメント
7 セグメントホルダ
10 外周部
11 ブリーザ片
12 第1の複合テープ
13 第2の複合テープ
81 スピンドル部分
82 スピンドル部分
91 端部取付具
92 端部取付具
911 開口
912 開口
921 開口
XX 対称軸線
【外国語明細書】