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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029440
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240228BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652B
H01L29/78 653C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131700
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将和
(57)【要約】
【課題】トレンチゲートを備えた半導体装置では、トレンチの内面の表面ラフネスの増加を抑えるための技術が必要とされている。
【解決手段】半導体装置1の製造方法は、ソース領域形成工程を備えている。このソース領域形成工程では、ゲート絶縁膜32を介してゲート電極34に対向する深さに位置するソース領域17のトレンチTRの側面に直交する方向における不純物濃度の濃度プロファイルがトレンチTRの側面に向けて低下するようにソース領域17が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1)の製造方法であって、
半導体基板(10)の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部にソース領域(17)を形成するソース領域形成工程と、
前記半導体基板の前記上面にトレンチ(TR)を形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチの内面に犠牲酸化膜(46)を形成する犠牲酸化膜形成工程と、
前記犠牲酸化膜を除去する犠牲酸化膜除去工程と、
前記犠牲酸化膜除去工程の後に前記トレンチ内にトレンチゲート(30)を形成するトレンチゲート形成工程であって、前記トレンチゲートは、前記トレンチの前記内面を被覆するゲート絶縁膜(32)と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(34)と、を有している、トレンチゲート形成工程と、を備えており、
前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接しており、
前記ソース領域形成工程では、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの前記側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが前記トレンチの前記側面に向けて低下するように前記ソース領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が1×1019cm-3未満である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が1×1018cm-3未満である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ソース領域のうち前記半導体基板の前記上面に露出する部分の不純物濃度が1×1019cm-3以上である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ソース領域形成工程は、
高濃度ソース領域(15)と、前記高濃度ソース領域よりも不純物濃度が低い低濃度ソース領域(16)と、を形成すること、を有しており、
前記低濃度ソース領域が、前記トレンチの前記側面に接する位置に形成される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記高濃度ソース領域は、不純物イオンをイオン注入して形成される、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記高濃度ソース領域は、前記半導体基板の前記上面に露出する位置に形成され、前記低濃度ソース領域の上面全体を覆っている、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記高濃度ソース領域は、前記低濃度ソース領域の一部に溝を形成した後に、その溝内に結晶成長して形成される、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記高濃度ソース領域は、前記低濃度ソース領域の上面全体にも結晶成長して形成される、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体装置(1)であって、
半導体基板(10)の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部に形成されているソース領域(17)と、
前記半導体基板の前記上面に形成されているトレンチ(TR)内に設けられているトレンチゲート(30)であって、前記トレンチの内面を被覆するゲート絶縁膜(32)と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(34)と、を有している、トレンチゲートと、を備えており、
前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接しており、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの前記側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが、前記トレンチの前記側面に向けて低下している、半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が1×1019cm-3未満である、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が1×1018cm-3未満である、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ソース領域のうち前記半導体基板の前記上面に露出する部分の不純物濃度が1×1019cm-3以上である、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、請求項11~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、トレンチゲートを備えた半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲートを備えたMOSFETおよびIGBT等の半導体装置の開発が進められている。このような半導体装置では、トレンチゲートのゲート絶縁膜に高電圧が印加されると、印加時間が経過するにつれてゲート絶縁膜の劣化が進行する。劣化の進行は、汚染、欠陥および表面ラフネス等に基づいてミクロ的には不均一に進行する。このため、ゲート絶縁膜の絶縁破壊は、劣化の進んだ箇所で局所的に起こり得る。
【0003】
特許文献1は、汚染の除去およびダメージ層の除去等を目的として、トレンチゲートを形成する前にトレンチの内面に対して犠牲酸化を行う技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-351895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレンチゲートを備えた半導体装置では、トレンチの側面に接するようにソース領域が形成されている。通常、ソース電極に対するコンタクト抵抗を小さくするために、ソース領域のn型不純物の濃度は高い。本発明者らの検討によると、ソース領域の不純物濃度が高いと、トレンチの内面のうちソース領域が露出する部分で犠牲酸化時に増速酸化が起こり、その部分の表面ラフネスが増加することが分かってきた。例えば半導体基板の材料が炭化珪素の場合、n型不純物である窒素の濃度が高いと、犠牲酸化時に増速酸化が起こり、トレンチの内面の表面ラフネスが増加することが分かってきた。このような表面ラフネスの増加は、ゲート絶縁膜の劣化を促進してしまう。したがって、トレンチゲートを備えた半導体装置では、トレンチの内面の表面ラフネスの増加を抑えるための技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1)の製造方法は、半導体基板(10)の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部にソース領域(17)を形成するソース領域形成工程と、前記半導体基板の前記上面にトレンチ(TR)を形成するトレンチ形成工程と、前記トレンチの内面に犠牲酸化膜(46)を形成する犠牲酸化膜形成工程と、前記犠牲酸化膜を除去する犠牲酸化膜除去工程と、前記犠牲酸化膜除去工程の後に前記トレンチ内にトレンチゲート(30)を形成するトレンチゲート形成工程であって、前記トレンチゲートは、前記トレンチの内面を被覆するゲート絶縁膜(32)と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(34)と、を有している、トレンチゲート形成工程と、を備えることができる。前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接している。前記ソース領域形成工程では、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの前記側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが前記トレンチの前記側面に向けて低下するように前記ソース領域が形成される。前記半導体基板の材料は、特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、酸化ガリウム(Ga23)等のワイドバンドギャップ半導体が例示される。この種のワイドバンドギャップ半導体では特に、前記犠牲酸化膜を成膜するときの増速酸化が問題となり得る。前記ソース領域形成工程は、前記トレンチゲート形成工程よりも前に実施されてもよく、前記トレンチゲート形成工程よりも後に実施されてもよい。
【0007】
上記製造方法では、前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が低く調整されている。このため、前記犠牲酸化膜成膜工程において増速酸化が抑えられるので、前記トレンチの前記内面の表面ラフネスの増加が抑えられる。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置(1)は、半導体基板(10)の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部に形成されているソース領域(17)と、前記半導体基板の前記上面に形成されているトレンチ(TR)内に設けられているトレンチゲート(30)であって、前記トレンチの内面を被覆するゲート絶縁膜(32)と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(34)と、を有している、トレンチゲートと、を備えることができる。前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接している。前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの前記側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが、前記トレンチの前記側面に向けて低下している。
【0009】
上記半導体装置では、前記ソース領域のうち前記トレンチの前記側面に接する部分の不純物濃度が低く調整されている。このため、上記半導体装置を製造するときに、前記トレンチの内面に犠牲酸化膜を成膜しても増速酸化が抑えられるので、前記トレンチの前記内面の表面ラフネスの増加が抑えられている。上記半導体装置では、前記ゲート絶縁膜における劣化の進行の不均一さが抑えられている。このため、上記半導体装置は、高耐圧な特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
図2】本実施形態の半導体装置の要部拡大断面図を模式的に示す。
図3】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図4】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図5】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図6】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図7】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図8】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図9】本実施形態の半導体装置の第1の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図10】本実施形態の半導体装置の第2の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図11】本実施形態の半導体装置の第2の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
図12】本実施形態の半導体装置の第2の製造方法における製造過程の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示されるように、半導体装置1は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)と称される種類のパワーデバイスであり、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、特に限定されるものではないが、例えば炭化シリコン(SiC)で構成されていてもよい。この例に代えて、半導体基板10は、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、酸化ガリウム(Ga23)等のワイドバンドギャップ半導体材料で構成されていてもよい。ここで、半導体基板10の厚み方向がz方向であり、半導体基板10の上面10bに平行な一方向(即ち、z方向に直交する一方向)がx方向であり、z方向及びx方向に直交する方向がy方向である。
【0012】
半導体装置1はさらに、半導体基板10の下面10aを被覆するドレイン電極22と、半導体基板10の上面10bを被覆するソース電極24と、半導体基板10の上層部に設けられている複数のトレンチゲート30と、を備えている。複数のトレンチゲート30の各々は、半導体基板10の上面10bに形成されたトレンチTR内に設けられている。複数のトレンチゲート30の各々は、トレンチTRの内面を被覆するゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32によって半導体基板10から絶縁されているゲート電極34と、を有している。また、ゲート電極34は、層間絶縁膜36によってソース電極24から絶縁されている。複数のトレンチゲート30の各々は、半導体基板10の上面10bに対して直交する方向(即ち、z方向)から観測したときに、例えばy方向に沿って延びている。
【0013】
半導体基板10は、炭化珪素(SiC)を材料とする基板であり、n+型のドレイン領域11と、n型のドリフト領域12と、n+型の電流拡散領域13と、p型のボディ領域14と、n型のソース領域17と、を有している。
【0014】
ドレイン領域11は、半導体基板10の下層部に配置されており、半導体基板10の下面10aに露出する位置に設けられているn型領域である。ドレイン領域11は、半導体基板10の下面10aを被覆するドレイン電極22にオーミック接触している。
【0015】
ドリフト領域12は、ドレイン領域11と電流拡散領域13の間に設けられており、ドレイン領域11と電流拡散領域13を隔てているn型領域である。ドリフト領域12のn型不純物の濃度は、ドレイン領域11のn型不純物の濃度よりも低い。
【0016】
電流拡散領域13は、ドリフト領域12とボディ領域14の間に設けられており、ドリフト領域12とボディ領域14を隔てているn型領域である。電流拡散領域13のn型不純物の濃度は、ドリフト領域12のn型不純物の濃度よりも高い。電流拡散領域13は、ドリフト領域12の上面全体に接するように形成されている。電流拡散領域13はまた、トレンチゲート30の底面及び側面の下部に接触している。
【0017】
ボディ領域14は、電流拡散領域13とソース領域17の間に設けられており、電流拡散領域13とソース領域17を隔てているp型領域である。ボディ領域14は、トレンチTRの側面に接している。ボディ領域14は、半導体基板10の上面に露出する位置に形成されているp型不純物の濃度が高いボディコンタクト領域(図示省略)を介してソース電極24に電気的に接続されている。
【0018】
ソース領域17は、ボディ領域14上に設けられており、半導体基板10の上面10bに露出する位置を含む半導体基板10の上層部に設けられているn型領域である。ソース領域17は、半導体基板10の上面10bを被覆するソース電極24にオーミック接触している。ソース領域17は、n+型の高濃度ソース領域15と、n型の低濃度ソース領域16と、を有している。
【0019】
高濃度ソース領域15は、ソース電極24とのコンタクト抵抗を小さくするために、n型不純物を高濃度に含む領域であり、半導体基板10の上面10bに露出する位置を含むように形成されている。この例では、高濃度ソース領域15は、ソース領域17のうち半導体基板10の上面10bに露出する位置の全体に形成されている。高濃度ソース領域15のn型不純物の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1×1019cm-3以上であってもよい。高濃度ソース領域15のn型不純物の濃度が1×1019cm-3以上であると、高濃度ソース領域15とソース電極24の間には良好なオーミック性が得られる。
【0020】
低濃度ソース領域16は、高濃度ソース領域15よりもn型不純物の濃度が低い領域であり、後述するように、犠牲酸化時の増速酸化を抑えるためにn型不純物が低濃度に調整された領域である。図2に示すように、半導体基板10の深さ範囲のうちボディ領域14の上面から層間絶縁膜36の下面までの深さ範囲を「D1」とする。深さ範囲D1では、ゲート電極34がゲート絶縁膜32を介してソース領域17に対向している。低濃度ソース領域16は、深さ範囲D1においてトレンチTRの側面に接する位置に形成されている。この例では、低濃度ソース領域16は、深さ範囲D1の全体を含んでトレンチTRの側面に接する位置に形成されている。この例に代えて、低濃度ソース領域16は、深さ範囲D1の一部のみを含んでトレンチTRの側面に接する位置に形成されていてもよい。低濃度ソース領域16のn型不純物の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1×1019cm-3未満であってもよく、さらに1×1018cm-3未満であってもよい。
【0021】
このように、高濃度ソース領域15と低濃度ソース領域16を含むソース領域17の全体は、深さ範囲D1において、トレンチTRの側面に直交する方向(即ち、x方向)におけるn型不純物の濃度プロファイルがトレンチTRの側面に向けて低下するように構成されている。この例では、高濃度ソース領域15と低濃度ソース領域16の各々の面方向の濃度プロファイルが均一である。このため、トレンチTRの側面に直交する方向(即ち、x方向)におけるソース領域17の濃度プロファイルは、1つの段差を含むようにトレンチTRの側面に向けて低下する。この例に代えて、トレンチTRの側面に直交する方向(即ち、x方向)におけるソース領域17の濃度プロファイルは、複数の段差を有するようにトレンチTRの側面に向けて低下してもよく、トレンチTRの側面に向けて直線的にまたは曲線的に低下してもよい。
【0022】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、トレンチゲート30のゲート電極34にソース電極24よりも正となる閾値電圧以上の電圧が印加されていると、半導体装置1はオンである。このとき、ソース領域17と電流拡散領域13を隔てるボディ領域14のうちトレンチゲート30の側面に対向する部分に反転層が形成される。ソース領域17から供給される電子は、その反転層を経由して電流拡散領域13に達する。電流拡散領域13に達した電子は、面方向に広がってドリフト領域12に流れる。このように、電流拡散領域13が設けられていると、半導体装置1は低オン抵抗な特性を有することができる。
【0023】
ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、トレンチゲート30のゲート電極34が接地されていると、トレンチゲート30の側面には反転層が形成されず、半導体装置1はオフである。このように、半導体装置1は、スイッチング素子として動作することができる。
【0024】
次に、半導体装置1の製造方法を説明する。
【0025】
(第1の製造方法)
まず、図3に示されるように、ドレイン領域11とドリフト領域12と電流拡散領域13とボディ領域14と低濃度ソース層102が半導体基板10の深さ方向に沿ってこの順で並んでいる半導体基板10を準備する。この半導体基板10は、エピタキシャル成長技術を利用してドレイン領域11の上面からn型層を結晶成長した後に、イオン注入技術を利用して半導体基板10の上面からn型層の一部にn型不純物イオン及びp型不純物イオンをイオン注入し、電流拡散領域13とボディ領域14と低濃度ソース層102を形成することで準備される。
【0026】
次に、図4に示されるように、イオン注入技術を利用して半導体基板10の上面から低濃度ソース層102の一部に向けてn型不純物イオンをイオン注入し、高濃度ソース層104を形成する。低濃度ソース層102の一部にn型不純物イオンをイオン注入して高濃度ソース層104が形成されるので、高濃度ソース層104のn型不純物の濃度は、低濃度ソース層102のn型不純物の濃度よりも高くなる。高濃度ソース層104は、半導体基板10の上面全体を含む位置に形成される。これにより、半導体基板10の上層部には、低濃度ソース層102と高濃度ソース層104が積層した構造が形成される。
【0027】
次に、図5に示されるように、フォトリソグラフィー技術を利用して半導体基板10の上面にマスク42をパターニングする。次に、イオン注入技術を利用してマスク42の開口を介して半導体基板10の上面から低濃度ソース層102の一部に向けてn型不純物イオンをイオン注入し、高濃度ソース層106を形成する。低濃度ソース層102の一部にn型不純物イオンをイオン注入して高濃度ソース層106が形成されるので、高濃度ソース層106のn型不純物の濃度は、低濃度ソース層102のn型不純物の濃度よりも高くなる。なお、n型不純物イオンの一部は、高濃度ソース層104に導入されてもよい。これらイオン注入を実施することにより、高濃度ソース層104と高濃度ソース層106が高濃度ソース領域15となり、低濃度ソース層102が低濃度ソース領域16となる。なお、イオン注入によりソース領域を形成する方法は、後述のエピタキシャル成長を利用する方法よりもソース領域の不純物濃度の面内均一性が高く、素子の特性がばらつき難くなるという利点を有する。また、イオン注入によりソース領域を形成する方法は、後述のエピタキシャル成長を利用する方法よりも工程数が少なく、製造コストを低減できるという利点を有する。
【0028】
次に、図6に示されるように、マスク42を除去した後に、フォトリソグラフィー技術を利用して半導体基板10の上面にマスク44をパターニングする。次に、異方性ドライエッチング技術を利用してマスク44の開口に露出する半導体基板10の上面から低濃度ソース領域16とボディ領域14を貫通して電流拡散領域13に達するトレンチTRを形成する。トレンチTRは、両側面に低濃度ソース領域16の一部が残存するように形成される。
【0029】
次に、図7に示されるように、マスク44を除去した後に、トレンチTRの肩部の丸め処理を行う。次に、トレンチTRを形成したときの加工ダメージ等の除去を目的として、酸化技術を利用してトレンチTRの内面を含む半導体基板10の上面に犠牲酸化膜46を形成する。
【0030】
次に、図8に示されるように、ウェットエッチング技術を利用して犠牲酸化膜46を除去する。
【0031】
次に、図9に示されるように、CVD技術を利用してトレンチTRの内面を含む半導体基板10の上面にゲート絶縁膜32を成膜する。次に、CVD技術を利用してポリシリコンのポリシリコン層を成膜した後に、ポリシリコン層をパターニングすることによりゲート電極34を形成する。これにより、トレンチゲート30が形成される。次に、ゲート電極34を覆うように層間絶縁膜36をパターニングする。
【0032】
最後に、ドレイン電極22及びソース電極24を形成することで、図1に示す半導体装置1が完成する。
【0033】
上記したように、この製造方法では、加工ダメージ等の除去を目的として犠牲酸化膜46を形成する。犠牲酸化膜46を形成するとき、n型不純物である窒素を高濃度に含む部分では増速酸化によって表面ラフネスが増加することが知られている。上記製造方法では、トレンチTRの内面に露出する位置に低濃度ソース領域16が形成されている。低濃度ソース領域16は、ゲート絶縁膜32を介してゲート電極34に対向する深さに位置している。仮に、このような低濃度ソース領域16が設けられていないと、ソース領域17に対応した深さのトレンチTRの内面の表面ラフネスが増加する。このため、トレンチTRの内面を被覆するゲート絶縁膜32は、ソース領域17に対応した深さにおいて劣化が進行し易く、その部分の絶縁破壊が懸念される。一方、上記製造方法では、n型不純物の濃度が1×1019cm-3未満に調整された低濃度ソース領域16が形成されているので、トレンチTRの内面の表面ラフネスの増加が抑えられる。この結果、半導体装置1では、ソース領域17に対応した深さのゲート絶縁膜32の劣化の進行が抑えられるので、ゲート絶縁膜32の絶縁破壊が抑えられる。半導体装置1は、高耐圧な特性を有することができる。
【0034】
低濃度ソース領域16のn型不純物の濃度が1×1018cm-3未満に調整されていてもよい。この場合、トレンチTRの内面の表面ラフネスの増加がさらに抑えられる。また、ボディ領域14と低濃度ソース領域16の不純物の濃度差が小さくなるので、犠牲酸化時の酸化レートの差も小さくなる。仮に、低濃度ソース領域16が設けられていないと、犠牲酸化時の酸化レートの差によってボディ領域とソース領域に対応した犠牲酸化膜の厚みが異なり、犠牲酸化膜を除去したときにボディ領域とソース領域の間に段差が形成されてしまう。このような段差は、電界集中の原因となる。一方、n型不純物の濃度が1×1018cm-3未満に調整された低濃度ソース領域16が形成されていると、犠牲酸化時の酸化レートの差が小さいので、ボディ領域14とソース領域17の間の段差の形成が抑えられる。この結果、半導体装置1は、ゲート絶縁膜32の電界集中が抑えられるので、ゲート絶縁膜32の絶縁破壊が抑えられる。半導体装置1は、高耐圧な特性を有することができる。
【0035】
(第2の製造方法)
まず、図10に示されるように、ドレイン領域11とドリフト領域12と電流拡散領域13とボディ領域14と低濃度ソース層202が半導体基板10の深さ方向に沿ってこの順で並んでいる半導体基板10を準備する。この半導体基板10は、エピタキシャル成長技術を利用してドレイン領域11の上面からn型層を結晶成長した後に、イオン注入技術を利用して半導体基板10の上面からn型層の一部にn型不純物イオン及びp型不純物イオンをイオン注入し、電流拡散領域13とボディ領域14と低濃度ソース層202を形成することで準備される。
【0036】
次に、図11に示されるように、異方性ドライエッチング技術を利用して低濃度ソース層202の一部を除去することにより溝202aを形成する。この例では、溝202aの底面にボディ領域14が露出するように低濃度ソース層202の一部が除去される。この例に代えて、溝202aの底面に低濃度ソース層202の一部が残存してもよい。
【0037】
次に、図12に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して溝202aを充填するように高濃度ソース層204を形成する。高濃度ソース層204のn型不純物の濃度は、低濃度ソース層202のn型不純物の濃度よりも高い。高濃度ソース層204は、低濃度ソース層202の上面全体にも結晶成長して形成される。これにより、高濃度ソース層204が高濃度ソース領域15となり、低濃度ソース層202が低濃度ソース領域17となる。この後の工程は、第1の製造方法と同一である。これにより、図1に示す半導体装置1が完成する。
【0038】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0039】
(特徴1)
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部にソース領域を形成するソース領域形成工程と、
前記半導体基板の前記上面にトレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチの内面に犠牲酸化膜を形成する犠牲酸化膜形成工程と、
前記犠牲酸化膜を除去する犠牲酸化膜除去工程と、
前記犠牲酸化膜除去工程の後に前記トレンチ内にトレンチゲートを形成するトレンチゲート形成工程であって、前記トレンチゲートは、前記トレンチの内面を被覆するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極と、を有している、トレンチゲート形成工程と、を備えており、
前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接しており、
前記ソース領域形成工程では、前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが前記トレンチの側面に向けて低下するように前記ソース領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【0040】
(特徴2)
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの側面に接する部分の不純物濃度が1×1019cm-3未満である、特徴1に記載の半導体装置の製造方法。
【0041】
(特徴3)
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの側面に接する部分の不純物濃度が1×1018cm-3未満である、特徴2に記載の半導体装置の製造方法。
【0042】
(特徴4)
前記ソース領域のうち前記半導体基板の前記上面に露出する部分の不純物濃度が1×1019cm-3以上である、特徴1~3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0043】
(特徴5)
前記ソース領域形成工程は、
高濃度ソース領域と、前記高濃度ソース領域よりも不純物濃度が低い低濃度ソース領域と、を形成すること、を有しており、
前記低濃度ソース領域が、前記トレンチの側面に接する位置に形成される、特徴1~4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0044】
(特徴6)
前記高濃度ソース領域は、不純物イオンをイオン注入して形成される、特徴5に記載の半導体装置の製造方法。
【0045】
(特徴7)
前記高濃度ソース領域は、前記半導体基板の上面に露出する位置に形成され、前記低濃度ソース領域の上面全体を覆っている、特徴6に記載の半導体装置の製造方法。
【0046】
(特徴8)
前記高濃度ソース領域は、前記低濃度ソース領域の一部に溝を形成した後に、その溝内に結晶成長して形成される、特徴5に記載の半導体装置の製造方法。
【0047】
(特徴9)
前記高濃度ソース領域は、前記低濃度ソース領域の上面全体にも結晶成長して形成される、特徴8に記載の半導体装置の製造方法。
【0048】
(特徴10)
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、特徴1~9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0049】
(特徴11)
半導体装置であって、
半導体基板の上面に露出する位置を含む前記半導体基板の一部に形成されているソース領域と、
前記半導体基板の前記上面に形成されているトレンチ内に設けられているトレンチゲートであって、前記トレンチの内面を被覆するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極と、を有している、トレンチゲートと、を備えており、
前記ソース領域は、前記トレンチの側面に接しており、
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域の前記トレンチの側面に直交する方向における不純物の濃度プロファイルが、前記トレンチの側面に向けて低下している、半導体装置。
【0050】
(特徴12)
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの側面に接する部分の不純物濃度が1×1019cm-3未満である、特徴11に記載の半導体装置。
【0051】
(特徴13)
前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極に対向する深さに位置する前記ソース領域のうち前記トレンチの側面に接する部分の不純物濃度が1×1018cm-3未満である、特徴12に記載の半導体装置。
【0052】
(特徴14)
前記ソース領域のうち前記半導体基板の前記上面に露出する部分の不純物濃度が1×1019cm-3以上である、特徴11~13のいずれかに記載の半導体装置。
【0053】
(特徴15)
前記半導体基板の材料が炭化珪素である、特徴11~14のいずれかに記載の半導体装置。
【0054】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
1:半導体装置、 10:半導体基板、 11:ドレイン領域、 12:ドリフト領域、 13:電流拡散領域、 14:ボディ領域、 15:高濃度ソース領域、 16:低濃度ソース領域、 17:ソース領域、 22:ドレイン電極、 24:ソース電極、 30:トレンチゲート、 32:ゲート絶縁膜、 34:ゲート電極、 36:層間絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12