(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029449
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】スクライブヘッドおよびスクライブ装置
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20240228BHJP
F16C 32/06 20060101ALI20240228BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240228BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
F16C32/06 A
H01L21/78 G
C03B33/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131717
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】西尾 仁孝
【テーマコード(参考)】
3C069
3J102
4G015
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA04
3C069BB01
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA05
3C069CA11
3C069EA01
3J102AA02
3J102BA08
3J102BA13
3J102CA11
3J102EA02
3J102EA06
3J102GA07
4G015FA03
4G015FB01
4G015FC07
5F063AA02
5F063AA21
5F063BA38
5F063BA48
5F063CB10
5F063DD35
5F063DE02
5F063DE13
5F063DE17
5F063DE33
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】スクライブ時に被加工物に付与する荷重を安定させることが可能なスクライブヘッドおよびスクライブ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スクライブヘッド10は、ベース部材110と、カッターホイールを保持したホルダが下端に装着される支持部材210と、ベース部材110に対して上下動可能に支持部材210を案内するガイド部E1と、支持部材210を駆動してカッターホイールに荷重を付与する駆動部D1と、を備える。軸受140は、シャフト201の外側面との間に空気圧によるエアギャップを形成することにより、シャフト201を上下動可能に案内する。流路112を介して受け孔162aに空気圧が導入されると、ボール161と受け孔162aとの間にエアギャップが形成されるとともに、流路112からの空気圧によりボール161を介して支持部材210に下方向の駆動力が付与される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
カッターホイールを保持したホルダが下端に装着される支持部材と、
前記ベース部材に対して上下動可能に前記支持部材を案内するガイド部と、
前記支持部材を駆動して前記カッターホイールに荷重を付与する駆動部と、を備え、
前記ガイド部は、
前記支持部材に接続されたシャフトと、
前記シャフトの外側面との間に空気圧によるエアギャップを形成することにより前記シャフトを上下動可能に案内する軸受と、を備え、
前記駆動部は、
移動子と、
前記移動子が挿入される受け孔と、
前記受け孔に空気圧を導入するための流路と、を備え、
前記流路を介して前記受け孔に空気圧が導入されると、前記移動子と前記受け孔との間にエアギャップが形成されるとともに、前記流路からの空気圧により前記移動子を介して前記支持部材に下方向の駆動力が付与される、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記シャフトの上端に設置された板部材を備え、
前記駆動部は、
他の移動子と、
前記他の移動子が挿入される他の受け孔と、
前記他の受け孔に空気圧を導入するための他の流路と、を備え、
前記他の流路を介して前記他の受け孔に空気圧が導入されると、前記他の移動子と前記他の受け孔との間にエアギャップが形成されるとともに、前記他の流路からの空気圧により前記他の移動子を介して前記板部材に上方向の駆動力が付与される、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記受け孔および前記他の受け孔は、平面視において略真円の形状を有し、
前記移動子および前記他の移動子は、略真球の形状を有する、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記移動子の中心および前記他の移動子の中心は、平面視において略一致している、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項5】
請求項2に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記ベース部材に対して一体的に配置されたロードセルと、
ベース部材に対して上下動する前記シャフト、前記支持部材および前記板部材に対して一体的に配置された押込部材と、を備え、
前記押込部材は、前記ロードセルの上方において前記ロードセルに対向して配置されている、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項6】
請求項1に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記ガイド部は、2本の前記シャフトおよび2つの前記軸受を備える、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のスクライブヘッドにおいて、
一方の前記シャフトと前記移動子との距離、および、他方の前記シャフトと前記移動子との距離は、平面視において互いに略等しい、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項8】
請求項1に記載のスクライブヘッドにおいて、
前記シャフトの外側面に対向する前記軸受の内側面は、多孔質素材により構成されている、
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項9】
請求項2に記載のスクライブヘッドと、
前記受け孔および前記他の受け孔に空気圧を導入する圧力付与部と、
前記圧力付与部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記カッターホイールに付与する荷重に応じて、前記受け孔および前記他の受け孔の何れか一方に空気圧を導入する制御を実行する、
ことを特徴とするスクライブ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のスクライブ装置において、
前記制御部は、
前記受け孔および前記他の受け孔の両方に空気圧が導入されていない状態において前記カッターホイールに付与される所定荷重より大きい荷重を前記カッターホイールに付与する場合、前記受け孔および前記他の受け孔のうち前記受け孔のみに空気圧を導入し、
前記所定荷重以下の荷重を前記カッターホイールに付与する場合、前記受け孔および前記他の受け孔のうち前記他の受け孔のみに空気圧を導入する、
ことを特徴とするスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にスクライブラインを形成するためのスクライブヘッドおよび当該スクライブヘッドを備えたスクライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハー等の被加工物にスクライブラインを形成するスクライブヘッドが知られている。以下の特許文献1には、基部に対して上下方向にスライド可能に支持され、カッタ機構を保持するカッタホルダと、カッタホルダに対して基板側への荷重を付与する第1エアシリンダ機構と、カッタホルダに対して基板と反対側への荷重を付与する第2エアシリンダ機構とを備えるスクライブヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のスクライブヘッドでは、エアシリンダにおいて樹脂をシールしたピストンがガイド孔に摺動するため、摺動抵抗が生じる。このような摺動抵抗が生じると、スクライブ時に被加工物に付与する荷重を安定させることが困難になる。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、スクライブ時に被加工物に付与する荷重を安定させることが可能なスクライブヘッドおよびスクライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、スクライブヘッドに関する。本態様に係るスクライブヘッドは、ベース部材と、カッターホイールを保持したホルダが下端に装着される支持部材と、前記ベース部材に対して上下動可能に前記支持部材を案内するガイド部と、前記支持部材を駆動して前記カッターホイールに荷重を付与する駆動部と、を備える。前記ガイド部は、前記支持部材に接続されたシャフトと、前記シャフトの外側面との間に空気圧によるエアギャップを形成することにより前記シャフトを上下動可能に案内する軸受と、を備える。前記駆動部は、移動子と、前記移動子が挿入される受け孔と、前記受け孔に空気圧を導入するための流路と、を備える。前記流路を介して前記受け孔に空気圧が導入されると、前記移動子と前記受け孔との間にエアギャップが形成されるとともに、前記流路からの空気圧により前記移動子を介して前記支持部材に下方向の駆動力が付与される。
【0007】
本態様に係るスクライブヘッドによれば、ガイド部においてシャフトが軸受に接触することなく上下に移動し、駆動部において移動子が受け孔に接触することなく支持部材を押圧する。これにより、シャフトと軸受との間および移動子と受け孔との間に摩擦が生じることがないため、カッターホイールにより被加工物に付与する荷重を安定させることができる。
【0008】
本態様に係るスクライブヘッドは、前記シャフトの上端に設置された板部材を備える。前記駆動部は、他の移動子と、前記他の移動子が挿入される他の受け孔と、前記他の受け孔に空気圧を導入するための他の流路と、を備える。前記他の流路を介して前記他の受け孔に空気圧が導入されると、前記他の移動子と前記他の受け孔との間にエアギャップが形成されるとともに、前記他の流路からの空気圧により前記他の移動子を介して前記板部材に上方向の駆動力が付与される。
【0009】
この構成によれば、シャフト、支持部材および板部材等の自重に抗する上向きの力を板部材に付与できるため、シャフト、支持部材および板部材等の自重よりも小さい荷重をカッターホイールに付与できる。よって、カッターホイールに付与できる荷重のレンジを広げることができる。
【0010】
この場合に、前記受け孔および前記他の受け孔は、平面視において略真円の形状を有し、前記移動子および前記他の移動子は、略真球の形状を有する。
【0011】
この構成によれば、移動子の受圧面積を広く確保できるため、移動子に効率的に空気圧を付与できる。また、球の最大径の部分が受け孔に最も接近するため、この部分に空気を効率的に流すことができ、空気の流れによるエアギャップを円滑に生成できる。
【0012】
この場合に、前記移動子の中心および前記他の移動子の中心は、平面視において略一致している。
【0013】
この構成によれば、振動子を介して支持部材に付与される駆動力の方向と、他の振動子を介して板部材に付与される駆動力の方向とが、互いに逆向きで且つ平面視において一致する。これにより、支持部材および板部材に接続されたシャフトを、上下方向に円滑に移動させることができる。
【0014】
本態様に係るスクライブヘッドは、前記ベース部材に対して一体的に配置されたロードセルと、ベース部材に対して上下動する前記シャフト、前記支持部材および前記板部材に対して一体的に配置された押込部材と、を備える。前記押込部材は、前記ロードセルの上方において前記ロードセルに対向して配置されている。
【0015】
この構成によれば、移動子を介して支持部材に下方向の駆動力が付与された場合、および、他の移動子を介して板部材に上方向の駆動力が付与された場合のいずれにおいても、ロードセルを用いてカッターホイールに付与される荷重を検出できる。
【0016】
本態様に係るスクライブヘッドにおいて、前記ガイド部は、2本の前記シャフトおよび2つの前記軸受を備える。この構成によれば、シャフトが1本の場合に比べて、支持部材を安定して上下方向に移動させることができる。
【0017】
この場合に、一方の前記シャフトと前記移動子との距離、および、他方の前記シャフトと前記移動子との距離は、平面視において互いに略等しい。
【0018】
この構成によれば、振動子の位置を中心として2本のシャフトにかかる力が略等しくなるため、2つの距離が異なる場合に比べて、支持部材を安定して上下方向に移動させることができる。
【0019】
本態様に係るスクライブヘッドにおいて、前記シャフトの外側面に対向する前記軸受の内側面は、多孔質素材により構成されている。
【0020】
この構成によれば、軸受に導入された空気を軸受の内側面全体から吹き出させることができる。これにより、シャフトの外側面と軸受の内側面との間に円滑にエアギャップを形成できる。
【0021】
本発明の第2の態様は、スクライブ装置に関する。本態様に係るスクライブ装置は、上記第1の態様に係るスクライブヘッドと、前記受け孔および前記他の受け孔に空気圧を導入する圧力付与部と、前記圧力付与部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記カッターホイールに付与する荷重に応じて、前記受け孔および前記他の受け孔の何れか一方に空気圧を導入する制御を実行する。
【0022】
本態様に係るスクライブ装置によれば、上記第1の態様と同様の効果に加えて、受け孔および他の受け孔に同時に空気圧が導入される場合に比べて、カッターホイールに高精度な荷重を付与できる。
【0023】
本態様に係るスクライブ装置において、前記制御部は、前記受け孔および前記他の受け孔の両方に空気圧が導入されていない状態において前記カッターホイールに付与される所定荷重より大きい荷重を前記カッターホイールに付与する場合、前記受け孔および前記他の受け孔のうち前記受け孔のみに空気圧を導入し、前記所定荷重以下の荷重を前記カッターホイールに付与する場合、前記受け孔および前記他の受け孔のうち前記他の受け孔のみに空気圧を導入する。
【0024】
この構成によれば、所定荷重を境界として受け孔および他の受け孔の何れか一方に空気圧が導入されるため、カッターホイールに精度良く荷重を付与できる。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、スクライブ時に被加工物に付与する荷重を安定させることが可能なスクライブヘッドおよびスクライブ装置を提供できる。
【0026】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の1つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、スクライブ装置の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態に係る、スクライブテーブルの載置面にフレームユニットが載置された状態を示す平面図である。
図2(b)は、実施形態に係る、
図2(a)のA-A位置におけるフレームユニット、スクライブテーブルおよびテスト基板の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、スクライブヘッドの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、スクライブヘッドを、カッターホイールの中央位置でY-Z平面に平行な平面により切断した断面を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る、スクライブヘッドを、シャフトの中央位置でX-Z平面に平行な平面により切断した断面を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、ベース部材およびベース部材に収容される各部の構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、支持部材、ホルダおよび押圧部材の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、押圧部材を支持部材に設置するための構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、カッターホイールの位置でX-Z平面に平行な面によりスクライブヘッドを切断したときの断面の一部を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、実施形態に係る、ボールによってピンが上下に押し出されることを模式的に示す側面図である。
図10(b)は、実施形態に係る、シャフトが軸受に対して上下に移動することを模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る、スクライブ装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、実施形態に係る、被加工物に対するスクライブ動作を模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、実施形態に係る、被加工物に対するスクライブ動作を模式的に示す側面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る、スクライブ処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。便宜上、各図には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が付記されている。Z軸正方向およびZ軸負方向は、それぞれ、鉛直上方向および鉛直下方向であり、X軸正方向は、スクライブ動作時にスクライブヘッドが移送される方向である。
【0029】
図1は、スクライブ装置1の構成を模式的に示す側面図である。
【0030】
図1に示すように、スクライブ装置1は、Y軸方向に移動可能な移動台2を備える。移動台2は、Y軸方向に延びるボールネジ3と螺合している。また、移動台2は、Y軸方向に延びる一対の案内レール4によってY軸方向に移動可能に支持されている。モータ(図示せず)の駆動によりボールネジ3が回転することで、移動台2が、一対の案内レール4に沿ってY軸方向に移動する。
【0031】
移動台2には、回転機構5を介して、スクライブテーブル6が設置されている。回転機構5は、モータを備え、Z軸に平行な回転軸についてスクライブテーブル6を回転させる。スクライブテーブル6の上面(載置面61)には、フレームユニット20を吸着するための吸着構造が設けられている。フレームユニット20および吸着構造の構成は、追って、
図2(a)、(b)を参照して説明する。
【0032】
さらに、スクライブ装置1は、一対の支柱7a、7bと、支柱7a、7bに支持された移送機構8と、を備える。移送機構8は、昇降機構9とともにスクライブヘッド10およびカメラ11をX軸方向に移送する。移送機構8は、X軸方向に延びるボールネジおよびガイドレールと、ボールネジを駆動するモータと、支持板とを備える。支持板は、ボールネジと螺合するとともに、ガイドレールによってX軸方向に案内される。昇降機構9は、支持板に装着される。移送機構8のモータが駆動されると、支持板とともに昇降機構9がX軸方向に移送される。移送機構8は、支持板および昇降機構9をX軸方向に略揺らぎなく精緻に直線移送可能に構成されている。
【0033】
昇降機構9は、スクライブヘッド10およびカメラ11をZ軸方向に昇降させる。昇降機構9は、Z軸方向に延びるボールネジおよびガイドレールと、ボールネジを駆動するモータと、支持板9aと、を備える。支持板9aは、ボールネジに螺合するとともに、ガイドレールによってZ軸方向に案内される。スクライブヘッド10およびカメラ11は、支持板9aの前面に装着されている。昇降機構9のモータが駆動されると、支持板9aとともにスクライブヘッド10およびカメラ11がZ軸方向に昇降される。
【0034】
スクライブヘッド10の下端には、カッターホイール251aを保持したホルダユニット251が装着される。カメラ11は、撮像方向が下向きとなるように支持板9aに設置される。カメラ11は、移送機構8および昇降機構9により所定の撮像位置に位置づけられた状態で、スクライブテーブル6の上面(載置面61)に保持されたフレームユニット20を撮像する。カメラ11によって撮像された画像は、Z軸方向に平行な回転軸周りの回転方向およびY軸方向におけるフレームユニット20の位置調整(アラインメント)に用いられる。
【0035】
図2(a)は、スクライブテーブル6の載置面61にフレームユニット20が載置された状態を示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のA-A位置におけるフレームユニット20、スクライブテーブル6およびテスト基板66の断面図である。便宜上、
図2(a)には、フレームリング21、被加工物23およびテスト基板66にハッチングが付されており、隙間20aにおいてテープの奥が透視された状態が示されている。
【0036】
図2(a)、(b)に示すように、フレームユニット20は、フレームリング21と、テープ22と、被加工物23と、を備える。フレームリング21は、金属材料により構成された一定厚みの板状の部材である。フレームリング21は、平面視において、中央に円形の開口21aを有するリング状の形状を有する。
【0037】
テープ22は、フレームリング21の下面に貼り付けられ、フレームリング21の開口21aを下側から覆う。テープ22は、たとえば樹脂材料により構成される。被加工物23は、フレームリング21の開口21aから露出したテープ22の上面に貼り付けられる。
【0038】
被加工物23は、たとえば、ウエハーである、被加工物23が、ガラス基板等の他の部材であってもよい。被加工物23は、平面視において、開口21aより径が小さい円板状の形状を有する。被加工物23は、開口21aと略同心になるように、テープ22の上面に貼り付けられる。これにより、被加工物23は、テープ22によってフレームリング21の開口21aに固定される。この状態において、開口21aの内周と被加工物23の外周との間に、リング状の隙間20aが生じる。隙間20aの径方向の幅は、全周に亘って略一定である。
【0039】
スクライブテーブル6は、平面視において、略正方形の形状を有する。スクライブテーブル6は、SUS等の金属材料からなっている。載置面61には、中心に対して対称な位置に、4つの円形の凹部62が形成されている。フレームユニット20は、フレームリング21が4つの凹部62に略均等に掛かるように、載置面61に載置される。この状態において、フレームユニット20の隙間20aの下方に、スクライブテーブル6の載置面61に沿って形成された溝63が位置づけられる。溝63のY軸正側の端部には、スクライブテーブル6を貫通する孔64が形成されており、孔64のZ軸負側の端部は、図示しない配管を介して圧力付与部305(
図11参照)に接続されている。溝63のY軸負側の端部には、溝63がない隙間65が形成されている。
【0040】
被加工物23に対するスクライブラインの形成工程では、スクライブ動作に先立ち、溝63内の空気が、孔64を介して圧力付与部305により吸引される。これにより、溝63内部に位置づけられたテープ22にテンションが加えられ、被加工物23の下側のテープ22が、スクライブテーブル6の載置面61に密着する。このとき、テープ22は、孔64から隙間65に向かって順に密着していくため、被加工物23下側のテープ22と載置面61との間に生じた空気が、隙間65から円滑に脱気される。こうして、フレームユニット20が、スクライブテーブル6の載置面61に吸着固定される。
【0041】
載置面61においてフレームユニット20の外側には、2つのテスト基板66が配置されている。
図2(a)に示すように、Y軸負側のテスト基板66はX軸方向に延びた形状であり、X軸負側のテスト基板66は、Y軸方向に延びた形状である。
図2(b)に示すように、テスト基板66は、上面が載置面61の上面に一致するよう、載置面61に形成された凹部に設置されている。2つのテスト基板66は、スクライブテーブル6がZ軸まわりに回転することに合わせて回転する。
【0042】
テスト基板66は、後述するホルダ240の回転位置調整の際に用いられる。ホルダ240の回転位置調整の際には、2つのテスト基板66のうち、フレームユニット20のY軸負側に位置づけられたテスト基板66が用いられる。回転位置調整については、追って
図9を参照して説明する。
【0043】
次に、スクライブヘッド10の構成について説明する。
【0044】
図3は、スクライブヘッド10の構成を示す斜視図である。
【0045】
板部材101は、X-Z平面に平行な平板形状を有しており、昇降機構9の支持板9a(
図1参照)に設置されている。ブラケット102は、水平面(X-Y平面)に平行な平板形状を有している。ブラケット102のY軸負側の端部は、板部材101に設置されており、ブラケット102のY軸正側近傍の端部は、軸部材103を介してベース部材110の上面に設置されている。
【0046】
ブラケット102の上面にはロードセル104が設置されている。ロードセル104は、ロードセル104の上面に設けられた受け部104aに対して荷重が付与されると、付与された荷重を電気信号に変換し、荷重に応じた電気信号を出力する。ブラケット102のY軸正側の端部には、管105、106が設置されている。管105の一方の端部は、図示しない配管を介して圧力付与部305(
図11参照)に接続されており、管105の他方の端部は、管106の一方の端部に接続されている。管106の他方の端部は、図示しない配管を介して管132に接続される。
【0047】
ベース部材110は、ブロック形状を有しており、上面および下面は水平面に平行であり、側面はX-Z平面またはY-Z平面に平行である。ベース部材110のY軸負側の面は、板部材101に設置されている。ベース部材110は、板部材101を介して、スクライブ装置1側の昇降機構9により昇降される。
【0048】
ベース部材110のY軸正側の面には、管121~124が設置されている。管121、122の一方の端部は、それぞれ、図示しない配管を介して圧力付与部305(
図11参照)に接続されており、他方の端部は、それぞれ、ベース部材110の2つの孔116(
図6参照)に接続されている。管123、124の一方の端部は、圧力付与部305(
図11参照)に接続されており、他方の端部は、それぞれ、ベース部材110の2つの孔117(
図6参照)に接続されている。
【0049】
ベース部材110のX軸正側の面には、下方向に延びた板部材131が設置されている。板部材131の下端には、管132およびノズル133が設置されている。管132の一方の端部は、図示しない配管を介して管106に接続されており、管106の他方の端部は、ノズル133に接続されている。圧力付与部305(
図11参照)から管105、106、132を介してノズル133に空気が供給されることにより、ノズル133の先端からホルダユニット251近傍に空気が吹き付けられる。これにより、被加工物23のスクライブ時に、ホルダユニット251近傍の破片等が吹き飛ばされるため、スクライブを適正に行うことができる。
【0050】
ベース部材110には、上下方向にベース部材110を貫通する2つの筒孔115(
図6参照)が形成されている。2つの筒孔115は、X軸方向に所定の間隔をあけて並んでいる。2つの筒孔115に、それぞれ、2つの軸受140が設置されている。2つの軸受140には、それぞれ、2つのシャフト201が通されている。2つのシャフト201の上端および下端は、それぞれ、ベース部材110から上下にはみ出している。
【0051】
2つのシャフト201の上端は、板部材202に設置されている。板部材202は、水平面に平行な平板形状を有している。板部材202の上面には、Z軸正方向に延びた2つの軸部材203(
図3、5参照)が設置されている。ブリッジ部材204は、2つの軸部材203の上端に架けられている。ブリッジ部材204の下面には、押込部材205が設置されており、押込部材205は、ロードセル104の受け部104aの真上に位置付けられている。
【0052】
2つのシャフト201の下端は、支持部材210に設置されている。支持部材210は、ブロック形状を有しており、上面および下面は水平面に平行であり、側面はX-Z平面またはY-Z平面に平行である。支持部材210には、3つのガイドシャフト221および3つのバネ222が設置されている(
図3、8参照)。3つのガイドシャフト221は、それぞれ、3つのバネ222を介して支持部材210に上下移動可能に支持されており、3つのバネ222により上方向に付勢されている。3つのガイドシャフト221の上端221c(
図8参照)は、ベース部材110の下面110aに対向している。
【0053】
3つのガイドシャフト221の下端は、押圧部材230に設置されている。ガイドシャフト221がバネ222により上方向に付勢されることにより、押圧部材230も、上方向に付勢されている。支持部材210の下端には、ホルダ240が装着されている。ホルダ240は、押圧部材230によって上方向に支持されている。ホルダ240の下部には、ホルダユニット251が設置されている。ホルダユニット251は、下端にカッターホイール251a(
図4、5参照)を備える。
【0054】
図4は、スクライブヘッド10を、カッターホイール251aの中央位置でY-Z平面に平行な平面により切断した断面を示す図である。
【0055】
支持部材210の中央には、支持部材210を上下に貫通する開口211が形成されている。ホルダ240は、開口211内に設置された2つの軸受261により、Z軸方向について回転可能に支持されている。ホルダユニット251の下端には、X軸方向にスクライブラインを形成するためのカッターホイール251aが設置されている。カッターホイール251aは、Y軸方向について回転可能にホルダユニット251に支持されている。
【0056】
流路111、112は、ベース部材110のY軸正側の面から、ベース部材110のY軸負側の端部近傍まで、Y軸方向に沿って延びている。流路111、112のY軸正側の端部は、それぞれ、2つの孔116(
図6参照)に繋がっており、2つの孔116に設置された管121、122に接続されている。ベース部材110のY軸負側の端部近傍には、上下方向に所定の間隔をあけて筒孔113、114が形成されている。筒孔113は、ベース部材110の上面から上方に開放されており、筒孔114は、ベース部材110の下面110aから下方に開放されている。筒孔113、114の内側面は、Z軸方向に延びた筒形状を有している。流路111、112のY軸負側の端部は、それぞれ、筒孔113、114のY軸正側の内側面に繋がっている。
【0057】
筒孔113には、Z軸方向に延びた筒形状の筒部材152が設置されている。筒部材152には、筒部材152を上下に貫通する受け孔152aが形成されており、受け孔152aは、Z軸方向に延びた筒形状を有している。受け孔152aには、略真球の形状のボール151が配置されている。受け孔152aは、平面視において略真円の形状を有する。受け孔152aの径は、Z軸方向に一定であり、ボール151の径よりも僅かに大きい。
【0058】
ボール151の上方において、板部材202の下面には、ピン153が設置されており、ピン153の下端とボール151の上端とが対向している。管121から流路111を通って受け孔152aに空気が供給されると、ボール151が空気によって上方向に押し出される。これにより、ボール151の上端がピン153を押し上げ、ピン153と一体的に板部材202、2つのシャフト201および支持部材210が上方向に移動する。また、支持部材210が上方向に移動することにより、支持部材210により支持されたホルダ240およびホルダユニット251も上方向に移動する。
【0059】
筒孔114には、Z軸方向に延びた筒形状の筒部材162が設置されている。筒部材162には、筒部材162を上下に貫通する受け孔162aが形成されており、受け孔162aは、Z軸方向に延びた筒形状を有している。受け孔162aには、略真球の形状のボール161が配置されている。受け孔162aは、平面視において略真円の形状を有する。受け孔162aの径は、Z軸方向に一定であり、ボール161の径よりも僅かに大きい。ボール151、ボール161、受け孔152aおよび受け孔162aの中心は、平面視において略一致している。
【0060】
ボール161の下方において、支持部材210の上面には、孔214(
図7参照)にピン163が設置されており、ピン163の上端とボール161の下端とが対向している。管122から流路112を通って受け孔162aに空気が供給されると、ボール161が空気によって下方向に押し出される。これにより、ボール161の下端がピン163を押し下げ、ピン163と一体的に支持部材210が下方向に移動する。また、支持部材210が下方向に移動することにより、支持部材210により支持されたホルダ240およびホルダユニット251も下方向に移動する。
【0061】
ボール151、161、受け孔152a、162aおよび流路111、112は、カッターホイール251aに荷重を付与する駆動部D1を構成する。駆動部D1は、ボール151を上方向に移動させることにより、板部材202、2つのシャフト201、支持部材210、ホルダユニット251およびカッターホイール251aを上方向に移動させる。これにより、駆動部D1は、カッターホイール251aに付与する荷重を減少させる。また、駆動部D1は、ボール161を下方向に移動させることにより、板部材202、2つのシャフト201、支持部材210、ホルダユニット251およびカッターホイール251aを下方向に移動させる。これにより、駆動部D1は、カッターホイール251aに付与する荷重を増加させる。
【0062】
図5は、スクライブヘッド10を、シャフト201の中央位置でX-Z平面に平行な平面により切断した断面を示す図である。
【0063】
軸受140は、ベース部材110に形成された筒孔115に設置されている。筒孔115は、筒形状を有し、ベース部材110を上下に貫通する孔である。シャフト201は、軸受140に形成された開口141内に収容されている。開口141は、筒形状を有し、軸受140を上下に貫通する孔である。開口141の径は、Z軸方向に一定であり、シャフト201の径よりも僅かに大きい。シャフト201の上端は、ネジ206により板部材202に設置されており、シャフト201の下端は、ネジ207により支持部材210に設置されている。
【0064】
後述する孔142(
図6参照)を介して軸受140に空気が導入されると、軸受140は、シャフト201の外側面との間に空気圧によるエアギャップを形成することによりシャフト201を上下動可能に案内する。2本のシャフト201および2つの軸受140は、ガイド部E1を構成する。ガイド部E1は、ベース部材110に対して上下動可能に支持部材210および板部材202を案内する。
【0065】
板部材101、ベース部材110、ブラケット102およびロードセル104は、
図1に示した昇降機構9による支持板9aの上下移動に応じて、一体的に上下に移動する。一方、ピン153(
図4参照)、板部材202、2本の軸部材203、ブリッジ部材204、押込部材205、2本のシャフト201、支持部材210、ピン163(
図4参照)、ホルダ240、ホルダユニット251およびカッターホイール251aは、ボール151、161の上下移動に応じて、一体的に上下に移動する。すなわち、ピン153、板部材202、2本の軸部材203、ブリッジ部材204、押込部材205、2本のシャフト201、支持部材210、ピン163、ホルダ240、ホルダユニット251およびカッターホイール251aは、所定範囲において上下動可能にベース部材110に支持されている。
【0066】
図6は、ベース部材110およびベース部材110に収容される各部の構成を示す斜視図である。
【0067】
軸受140の外側面は、アルミにより構成されており、軸受140のY軸正側には、孔142が形成されている。軸受140に形成された開口141の内側面は、多孔質(ポーラス)素材により構成されており、孔142と、多孔質素材に形成された多数の孔とが繋がっている。軸受140は、ベース部材110の筒孔115内に設置される。これにより、ベース部材110のY軸正側の面に形成された孔117と、軸受140の孔142とが接続される。そして、開口141にシャフト201が通される。管123、124(
図3参照)を介して2つの孔117に空気が供給されると、開口141の内側面に形成された多数の孔から、開口141の中心軸に向かって空気が吹き出る。これにより、シャフト201が開口141の内側面に接触することなく、上下に移動可能となる。
【0068】
ベース部材110の上面に形成された筒孔113には、上から筒部材152が設置され、筒部材152の受け孔152aに、ボール151が配置される。組み立て後において、上述したように、ボール151の上端は、ピン153の下端に位置づけられる。同様に、ベース部材110の下面に形成された筒孔114には、下から筒部材162が設置され、筒部材162の受け孔162aに、ボール161が配置される。組み立て後において、上述したように、ボール161の下端は、ピン163の上端に位置づけられる。
【0069】
平面視において(Z軸方向に見て)、一方のシャフト201とボール151、161との距離、および、他方のシャフト201とボール151、161との距離は、互いに略等しい。これにより、ボール151、161を中心として2本のシャフト201にかかる力が略等しくなる。
【0070】
図7は、支持部材210、ホルダ240および押圧部材230の構成を示す斜視図である。
【0071】
支持部材210には、中央に形成された開口211に加えて、2つの凹部212と、3つの開口213と、孔214とが形成されている。凹部212は、シャフト201の下端が嵌る形状を有している。凹部212の下面には、支持部材210を上下に貫通する孔212aが形成されている。3つの開口213は、支持部材210を上下に貫通しており、押圧部材230の3つの孔232に対向する位置に形成されている。3つの開口213の下端から、それぞれ、3つのネジ受け271が嵌め込まれる。
【0072】
ホルダ240は、円錐台部241と、円錐台部241の上面から上方向に延びた軸部242と、を備える。円錐台部241は、先端(下端)に向かうにつれて細くなった先細り形状を有する。円錐台部241の側面には、外側面241aと、2つの平坦面241bとが形成されている。外側面241aは、平面視において略円形状であり、下方に進むにつれて径が小さくなっている。2つの平坦面241bは、X-Z平面に平行な平面である。言い換えれば、ホルダ240は、円錐体の外側面241aの一部を平坦に切欠いた形状を含む。
【0073】
軸受261は、円筒形状を有しており、軸受261の中央には、軸受261を上下に貫通する孔261aが形成されている。
【0074】
押圧部材230は、平面視において正三角形の頂点が丸められた形状を有し、上下方向に所定の厚みを有する。押圧部材230の中央には、押圧部材230を上下に貫通する開口231が形成されている。開口231は、平面視において円形状を有し、開口231の内周面には、圧接面231aが形成されている。圧接面231aは、開口231の径を下方に向かうにつれて小さくすることにより形成されている。開口231には、ホルダ240が上方から挿入される。押圧部材230の3つの頂点付近には、それぞれ、押圧部材230を上下に貫通する3つの孔232が形成されている。
【0075】
組み立て時には、一方の軸受261が、開口211の上方から開口211内に設置され、他方の軸受261が、開口211の下方から開口211内に設置される。続いて、ホルダ240の軸部242が、下方の軸受261の孔261aに通され、さらに上方の軸受261の孔261aに通される。そして、軸部242の孔242aに、ネジ262が設置される。ネジ262の外周の径は、上方の軸受261の孔261aの径よりも大きい。これにより、ホルダ240が下方向に抜けることが防止される。こうして、ホルダ240は、支持部材210に対して上下方向に移動することが抑制されつつ、Z軸方向を回転の中心軸として回転可能となる。
【0076】
その後、押圧部材230の開口231が、ホルダ240の円錐台部241に嵌め込まれる。これにより、押圧部材230の圧接面231aと、ホルダ240の外側面241aとが圧接する。
【0077】
図8は、押圧部材230を支持部材210に設置するための構成を示す斜視図である。
【0078】
開口213には、段部213a(
図4参照)が形成されている。
図4を参照して、段部213aよりも上方の開口213の部分の径は、段部213aよりも下方の開口213の部分の径よりも大きい。バネ222の外径は、段部213aよりも上方の開口213の部分の径と略同じである。したがって、3つのバネ222が開口213に上方から挿入されると、バネ222の下端は段部213aにより上向きに支持される。
【0079】
ガイドシャフト221は、軸部221aと、軸部221aの上端に設けられた頭部221bと、を備える。ガイドシャフト221の上端221cは、X-Y平面に平行な平面である。軸部221aの径は、開口231およびバネ222の内径よりも小さく、頭部221bの径は、バネ222の外径よりも大きい。したがって、ガイドシャフト221が開口213に設置されたバネ222に上方から挿入されると、頭部221bの下面がバネ222の上端によって上向きに支持される。
【0080】
ガイドシャフト221およびバネ222が開口213に挿入された後、ガイドシャフト221の下端が孔232に通され、ガイドシャフト221の下端が、ネジ272により押圧部材230の孔232に設置される。これにより、
図4に示したように、押圧部材230が、バネ222により上方向に付勢され、押圧部材230の圧接面231aが、ホルダ240の外側面241aに押し付けられる。
【0081】
図9は、カッターホイール251aの位置でX-Z平面に平行な面によりスクライブヘッド10を切断したときの断面の一部を示す図である。
【0082】
上述したように、ホルダ240は、軸受261および支持部材210により、回転軸R10について回転可能に支持されている。ホルダ240の回転軸R10は、ホルダ240の中心を通り、Z軸方向に平行である。回転軸R10は、軸部242の中心に一致している。上述したように、押圧部材230は、ガイドシャフト221を介して、バネ222により上方向に付勢されている。これにより、
図9に示すように、押圧部材230の圧接面231aは、ホルダ240の外側面241aに圧接される。このとき、ホルダ240は、押圧部材230によって回転が規制された状態となる。
【0083】
ホルダ240の下面には、下方に開放された開口243が形成されている。開口243の上端には、磁石244が設置されている。また、開口243の内部には、回転軸R10と垂直な方向(
図9に示す状態ではY軸方向)に延びた位置決めピン245が配置されている。ホルダユニット251の上端は、磁性材料により構成されている。開口243にホルダユニット251が挿入されると、ホルダユニット251の上端が磁石244に吸引され、ホルダユニット251の上部の傾斜面が位置決めピン245に当接する。これにより、カッターホイール251aの回転軸方向が、位置決めピン245の延びる方向に一致した状態で、ホルダユニット251およびカッターホイール251aが、ホルダ240の下面に保持される。
【0084】
ホルダ240の回転位置調整の際には、カッターホイール251aがテスト基板66(
図2(a)、(b)参照)の上面に位置付けられる。続いて、ガイドシャフト221の上端221cがベース部材110の下面110aにより下方向に押されると、バネ222の付勢に抗して、押圧部材230が下方向に移動する。これにより、ホルダ240は、押圧部材230により規制されることなく回転軸R10について自由に回転可能となる。この状態で、スクライブヘッド10がテスト基板66に対してX軸正方向およびZ軸正方向に移動され、カッターホイール251aの稜線がX軸方向に精度良く合わせられ、ホルダ240が押圧部材230によりロックされる。こうして、ホルダ240の回転位置調整が完了する。
【0085】
図9に示すように、ホルダユニット251がホルダ240に装着された状態において、カッターホイール251aの中心は、回転軸R10から離間した位置にある。これにより、ホルダ240の回転位置調整の際に、スクライブヘッド10がテスト基板66の上面に対してX軸方向に移動すると、ホルダ240がキャスターのように回転軸R10まわりに回転し、カッターホイール251aが、ホルダ240の進行方向の後ろ側に位置付けられる。これにより、カッターホイール251aの稜線が円滑にX軸方向に合わせられる。
【0086】
図10(a)は、ボール151、161によって、ピン153、163が上下に押し出されることを模式的に示す側面図である。
図10(a)において、便宜上、空気の流れが、点線矢印で示されている。
【0087】
流路111を介して受け孔152aに空気が供給されると、ボール151は、空気によって上方向に押し出され、ピン153が、ボール151によって上方向に押し出される。このとき、ボール151の径が、筒部材152の受け孔152aの径よりも僅かに小さいため、流路111から供給された空気が、ボール151と筒部材152の内側面との間の隙間G1を通り、隙間G1にエアギャップが形成される。これにより、ボール151が、筒部材152の内側面と接することなく上下に移動可能となる。
【0088】
同様に、流路112を介して受け孔162aに空気が供給されると、ボール161は、空気によって下方向に押し出され、ピン163が、ボール161によって下方向に押し出される。このとき、ボール161の径が、筒部材162の受け孔162aの径よりも僅かに小さいため、流路112から供給された空気が、ボール161と筒部材162の内側面との間の隙間G2を通り、隙間G2にエアギャップが形成される。これにより、ボール161が、筒部材162の内側面と接することなく上下に移動可能となる。
【0089】
図10(b)は、シャフト201が軸受140に対して上下に移動することを模式的に示す側面図である。
図10(b)において、便宜上、空気の流れが、点線矢印で示されている。
【0090】
孔116を介して軸受140の孔142に空気が供給されると、開口141の内側面を構成する多孔質素材に形成された多数の孔から、一斉に空気が吹き出す。このとき、シャフト201の径が、開口141の内側面の径よりも僅かに小さいため、開口141の内側面から吹き出した空気が、シャフト201と軸受140の内側面との間の隙間G3を通り、隙間G3にエアギャップが形成される。これにより、シャフト201が、軸受140の内側面と接することなく上下に移動可能となる。
【0091】
図10(a)に示したようにボール151、161が上下に移動され、
図10(b)に示したようにシャフト201が軸受140に対して上下に移動すると、ボール151またはボール161の移動に応じて、支持部材210が上下に移動する。具体的には、ボール151が上方向に押されると、ピン153および板部材202を介してシャフト201が上方向に移動するため、シャフト201に設置された支持部材210も上方向に移動する。また、ボール161が下方向に押されると、ピン163を介して支持部材210が下方向に移動する。
【0092】
したがって、カッターホイール251aの下端が被当接面(被加工物23およびテスト基板66の上面)に接地したときに、ボール151が上方向に押されるよう空気が供給されていると、ピン153、163、板部材202、シャフト201、支持部材210、ガイドシャフト221、バネ222、押圧部材230、ホルダ240およびホルダユニット251などの荷重(以下、「自重」という)によってカッターホイール251aにかかる荷重を小さくできる。他方、ボール161が下方向に押されるように空気が供給されていると、上記自重に加えてカッターホイール251aにかかる荷重を大きくできる。
【0093】
図11は、スクライブ装置1の構成を示すブロック図である。
【0094】
スクライブ装置1は、制御部301と、テーブル駆動部302と、ヘッド移送部303と、ヘッド昇降部304と、圧力付与部305と、を備える。
【0095】
制御部301は、CPU等の演算処理回路や、ROM、RAM、ハードディスク、SSD等の記憶部を備え、記憶部に記憶されたプログラムに従って各部を制御する。
【0096】
テーブル駆動部302は、
図1に示したボールネジ3や回転機構5を含む。テーブル駆動部302は、制御部301からの制御に応じて、スクライブテーブル6をY軸方向に移送し、あるいは、Z軸に平行な回転軸についてスクライブテーブル6を回転させる。ヘッド移送部303は、
図1に示した移送機構8を備え、制御部301からの制御に応じてスクライブヘッド10およびカメラ11をX軸方向に移送する。ヘッド昇降部304は、
図1に示した昇降機構9を備え、制御部301からの制御に応じてスクライブヘッド10およびカメラ11をZ軸方向に昇降させる。
【0097】
圧力付与部305は、空圧源から付与される空気圧を調節するバルブ等を備える。圧力付与部305は、空圧源から付与される空気圧を、バルブ等を調整することにより、スクライブヘッド10の各部に対して個別に供給する。具体的には、圧力付与部305は、制御部301からの制御に応じて、孔64を介して溝63(
図2(a)参照)内に負圧を印加する。圧力付与部305は、制御部301からの制御に応じて、管105、106、132を介してノズル133(
図3参照)に空気を供給する。圧力付与部305は、制御部301からの制御に応じて、管121を介して筒孔113(
図3参照)に空気を供給する。圧力付与部305は、制御部301からの制御に応じて、管122を介して筒孔114(
図3参照)に空気を供給する。圧力付与部305は、制御部301からの制御に応じて、管123、124(
図3参照)を介して2つの軸受140(
図6参照)内に空気を供給する。
【0098】
図12(a)~
図13(b)は、被加工物23に対するスクライブ動作を模式的に示す側面図である。以下の
図12(a)~
図13(b)では、便宜上、スクライブヘッド10が簡略化して図示されている。
【0099】
スクライブ動作は、テスト基板66を用いたホルダ240の回転位置調整が行われた後で実行される。したがって、スクライブ動作開始時には、カッターホイール251aのスクライブ方向は、適正にX軸方向に合わせられている。
【0100】
図12(a)に示すように、スクライブ動作では、まずスクライブヘッド10が、被加工物23の上方に位置付けられる。このとき、ロードセル104の検出荷重が所定の荷重になるよう、圧力付与部305により駆動部D1が駆動される。駆動部D1が駆動していない状態、すなわち圧力付与部305によりボール151、161のいずれも駆動されていない状態では、ベース部材110に対して一体的に上下移動するピン153、163、板部材202、シャフト201、支持部材210、ガイドシャフト221、バネ222、押圧部材230、ホルダ240およびホルダユニット251などの荷重によって、ロードセル104の検出荷重が所定の値(自重)となる。自重以下の荷重を付与する場合には、ボール151が駆動され、自重より大きな荷重を付与する場合には、ボール161が駆動される。
【0101】
図12(a)の状態から、
図12(b)に示すように、カッターホイール251aの先端が被加工物23の上面に接地するよう、ベース部材110が、昇降機構9により下方向に移送される。
【0102】
図12(b)の状態から、
図13(a)に示すように、ロードセル104の検出荷重がゼロになり、且つ、カッターホイール251aの先端が被加工物23に対して所望の深さだけ入るまで、ベース部材110が、昇降機構9により下方向に移送される。これにより、
図12(a)の状態で設定した荷重が、カッターホイール251aから被加工物23に付与される。
【0103】
このとき、ベース部材110の下面110aは、ガイドシャフト221の上端221cに接触する位置まで下降されない。これにより、ベース部材110の下面110aがガイドシャフト221の上端221cを押し下げて、ホルダ240の回転位置が意図せず変動してしまうといった事態を回避できる。
【0104】
図13(a)の状態から、移送機構8により昇降機構9がX軸方向に移送されることにより、
図13(b)に示すように、スクライブヘッド10が、被加工物23に対してX軸正方向に移送される。これにより、被加工物23に対するスクライブが行われる。
【0105】
図14は、スクライブ処理を示すフローチャートである。
【0106】
図12(a)に示したように、制御部301は、移送機構8および昇降機構9を制御して、スクライブヘッド10を被加工物23の上方位置に位置付ける(S11)。
【0107】
ここで、カッターホイール251aにより被加工物23に付与する目標荷重が閾値以下である場合(S12:YES)、制御部301は、圧力付与部305を制御して、2つのボール151、161のうち上側のボール151を上方向に移動させ、ロードセル104の検出荷重を目標荷重に設定する(S13)。他方、目標荷重が閾値より大きい場合(S12:NO)、制御部301は、圧力付与部305を制御して、2つのボール151、161のうち下側のボール161を下方向に移動させ、ロードセル104の検出荷重を目標荷重に設定する(S14)。
【0108】
ステップS12の閾値は、例えば、ピン153、163、板部材202、シャフト201、支持部材210、ガイドシャフト221、バネ222、押圧部材230、ホルダ240およびホルダユニット251などの荷重(自重)である。この場合、ステップS12~S14の制御により、目標荷重が自重以下の場合は、上側のボール151が移動され、目標荷重が自重より大きい場合は、下側のボール161が移動される。
【0109】
続いて、
図12(b)に示したように、制御部301は、昇降機構9を制御して、カッターホイール251aの先端が被加工物23の上面に接地するまでベース部材110を下降させる(S15)。さらに、
図13(a)に示したように、制御部301は、昇降機構9を制御して、ベース部材110を目標となるスクライブ深さだけ下降させる(S16)。そして、
図13(b)に示したように、制御部301は、移送機構8を制御して、スクライブヘッド10をX軸正方向に移送する(S17)。制御部301は、昇降機構9を制御して、スクライブヘッド10を被加工物23の上方位置に戻す(S18)。複数のスクライブラインを形成する場合、制御部301は、ステップS12~S18の処理を繰り返し行う。こうして、スクライブ処理が終了する。
【0110】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0111】
図10(a)に示したように、流路112を介して受け孔162aに空気圧が導入されると、ボール161(移動子)と受け孔162aとの間にエアギャップが形成されるとともに、流路112からの空気圧によりボール161(移動子)を介して支持部材210に下方向の駆動力が付与される。
【0112】
この構成によれば、ガイド部E1(シャフト201およびの軸受140)においてシャフト201が軸受140に接触することなく上下に移動し、駆動部D1においてボール161が受け孔162aに接触することなく支持部材210を押圧する。これにより、シャフト201と軸受140との間およびボール161と受け孔162aとの間に摩擦が生じることがないため、カッターホイール251aにより被加工物23に付与する荷重を安定させることができる。
【0113】
また、摺動部材とガイド部材とが互いに接触するピストンを用いてカッターホイールに荷重を付与する構成(比較例)の場合、目標荷重が小さいと、荷重に対する摺動抵抗の影響が大きくなる。これに対し、本実施形態では摺動抵抗が生じないため、摺動抵抗の影響を略無視できる。これにより、荷重が小さい場合でも荷重を細かく制御できるため荷重制御の分解能を高めることができ、目標荷重が小さい範囲にまで荷重のレンジを広げることができる。
【0114】
図10(a)に示したように、流路111(他の流路)を介して受け孔152a(他の受け孔)に空気圧が導入されると、ボール151(他の移動子)と受け孔152a(他の受け孔)との間にエアギャップが形成されるとともに、流路111(他の流路)からの空気圧によりボール151(他の移動子)を介して板部材202に上方向の駆動力が付与される。
【0115】
この構成によれば、シャフト201、ピン153、163、板部材202、シャフト201、支持部材210、ガイドシャフト221、バネ222、押圧部材230、ホルダ240およびホルダユニット251などの荷重(自重)に抗する上向きの力を板部材202に付与できる。これにより、上記自重よりも小さい荷重をカッターホイール251aに付与できる。よって、カッターホイール251aに付与できる荷重のレンジを広げることができる。また、摺動抵抗が生じないため、目標荷重が自重より小さい場合でも荷重を細かく制御できるため、荷重制御の分解能を高めることができる。
【0116】
受け孔162aおよび受け孔152a(他の受け孔)は、平面視において略真円の形状を有し、ボール161(移動子)およびボール151(他の移動子)は、略真球の形状を有する。この構成によれば、ボール151、161の受圧面積を広く確保できるため、ボール151、161に効率的に空気圧を付与できる。また、球の最大径の部分が受け孔152a、162aに最も接近するため、この部分に空気を効率的に流すことができ、空気の流れによるエアギャップを円滑に生成できる。
【0117】
ボール161(移動子)の中心およびボール151(他の移動子)の中心は、平面視において略一致している。この構成によれば、ボール161を介して支持部材210に付与される駆動力の方向と、ボール151を介して板部材202に付与される駆動力の方向とが、互いに逆向きで且つ平面視において一致する。これにより、支持部材210および板部材202に接続されたシャフト201を、上下方向に円滑に移動させることができる。
【0118】
ロードセル104は、ベース部材110に対して一体的に配置されている。押込部材205は、ベース部材110に対して上下動するシャフト201、支持部材210および板部材202に対して一体的に配置されており、ロードセル104の上方においてロードセル104に対向して配置されている。この構成によれば、ボール161を介して支持部材210に下方向の駆動力が付与された場合、および、ボール151を介して板部材202に上方向の駆動力が付与された場合のいずれにおいても、ロードセル104を用いてカッターホイール251aに付与される荷重を検出できる。
【0119】
ガイド部E1は、2本のシャフト201および2つの軸受140を備える。この構成によれば、シャフト201が1本の場合に比べて、支持部材210を安定して上下方向に移動させることができる。
【0120】
一方のシャフト201とボール161(移動子)との距離、および、他方のシャフト201とボール161(移動子)との距離は、平面視において互いに略等しい。この構成によれば、ボール161の位置を中心として2本のシャフト201にかかる力が略等しくなるため、2つの距離が異なる場合に比べて、支持部材210を安定して上下方向に移動させることができる。
【0121】
シャフト201の外側面に対向する軸受140の内側面は、多孔質素材により構成されている。この構成によれば、軸受140に導入された空気を軸受140の内側面全体から吹き出させることができる。これにより、シャフト201の外側面と軸受140の内側面との間に円滑にエアギャップを形成できる。
【0122】
圧力付与部305は、受け孔162aおよび受け孔152a(他の受け孔)に空気圧を導入する。
図14のステップS12~S14に示したように、制御部301は、圧力付与部305を制御して、カッターホイール251aに付与する荷重に応じて、受け孔162aおよび受け孔152a(他の受け孔)の何れか一方に空気圧を導入する制御を実行する。この構成によれば、2つの受け孔152a、162aに同時に空気圧が導入される場合に比べて、カッターホイール251aに高精度な荷重を付与できる。
【0123】
制御部301は、受け孔162aおよび受け孔152a(他の受け孔)の両方に空気圧が導入されていない状態においてカッターホイール251aに付与される自重(所定荷重)より大きい荷重をカッターホイール251aに付与する場合、2つの受け孔152a、162aのうち受け孔162aのみに空気圧を導入し、自重(所定荷重)以下の荷重をカッターホイール251aに付与する場合、2つの受け孔152a、162aのうち受け孔152a(他の受け孔)のみに空気圧を導入する。この構成によれば、自重を境界として2つの受け孔152a、162aの何れか一方に空気圧が導入されるため、カッターホイール251aに精度良く荷重を付与できる。
【0124】
図4に示したように、流路111のY軸負側の端部は、筒孔113のY軸正側の内側面に繋がっており、流路112のY軸負側の端部は、筒孔114のY軸正側の内側面に繋がっている。この構成によれば、筒孔113および筒部材152と、筒孔114および筒部材162とを互いに接近させて配置できるため、ベース部材110を上下方向に小型化できる。
【0125】
<変形例>
上記実施形態では、板部材202を上方向に移動させるための構成(流路111、受け孔152aおよびボール151)は、1組だけ設けられたが、2組以上設けられてもよい。この場合、たとえば、2組以上の上記構成がX軸方向に並んで配置され、各ボール151の上方にそれぞれピン153が配置される。同様に、支持部材210を下方向に移動させるための構成(流路112、受け孔162aおよびボール161)は、1組だけ設けられたが、2組以上設けられてもよい。この場合、たとえば、2組以上の上記構成がX軸方向に並んで配置され、各ボール161の上方にそれぞれピン163が配置される。
【0126】
上記実施形態では、板部材202を上方向に移動させるための構成(流路111、受け孔152aおよびボール151)と、支持部材210を下方向に移動させるための構成(流路112、受け孔162aおよびボール161)とが設けられたが、上下に配置されたこれら2つの構成のうち、一方が省略されてもよい。ただし、一方の構成が省略されると、カッターホイール251aに付与できる荷重のレンジが狭くなってしまうため、両方の構成が設けられるのが好ましい。
【0127】
上記実施形態では、ボール151は、筒部材152を介して筒孔113に配置されたが、これに限らず、筒部材152が省略され、筒孔113に直接ボール151が配置されてもよい。この場合、筒孔113の内側面の径は、ボール151の径よりも僅かに大きくなるように構成される。同様に、ボール161は、筒部材162を介して筒孔114に配置されたが、これに限らず、筒部材162が省略され、筒孔114に直接ボール161が配置されてもよい。この場合、筒孔114の内側面の径は、ボール161の径よりも僅かに大きくなるように構成される。
【0128】
上記実施形態において、ボール151および受け孔152aは、ボール151の全周に亘って適正にエアギャップが形成されれば、上記形状に限らない。同様に、ボール161および受け孔162aは、ボール161の全周に亘って適正にエアギャップが形成されれば、上記形状に限らない。たとえば、2つのボール151、161が、平面視において真円で、側面視において楕円形であるように構成されてもよい。すなわち、2つのボール151、161は、楕円球形状を有してもよい。また、2つのボール151、161のサイズおよび形状は、互いに異なってもよく、2つの受け孔152a、162aのサイズおよび形状は、互いに異なってもよい。
【0129】
上記実施形態では、シャフト201および軸受140からなる組が、2組だけ設けられたが、1組だけ設けられてもよく、3組以上設けられてもよい。ただし、2組以上設けられる方が、支持部材210を安定して上下方向に移動させることができる。また、3組以上設けられる場合、ベース部材110が大型化するため、2組だけ設けられる方がベース部材110をコンパクトに構成できる。
【0130】
上記実施形態では、スクライブ動作時に、
図14のステップS12~S14に示したように、目標荷重に応じて2つのボール151、161の何れか一方が駆動されたが、ボール151が上方向に駆動されつつ、ボール161が下方向に駆動されてもよい。ただし、上記実施形態のように、ボール151、161の何れか一方が駆動されるほうが、目標荷重を精度良く設定できる。
【0131】
上記実施形態において、スクライブ装置1の構成は、
図1に示した構成に限られるものではない。たとえば、
図1の構成では、スクライブヘッド10が、移送機構8によりX軸方向に移送されたが、スクライブヘッド10が移送されることに代えて、スクライブテーブル6がX軸方向に移送されてもよい。
【0132】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 スクライブ装置
10 スクライブヘッド
104 ロードセル
110 ベース部材
111 流路(他の流路)
112 流路
140 軸受
141 開口(内側面)
151 ボール(他の移動子)
152a 受け孔(他の受け孔)
161 ボール(移動子)
162a 受け孔
201 シャフト
202 板部材
205 押込部材
210 支持部材
240 ホルダ
251a カッターホイール
301 制御部
305 圧力付与部
D1 駆動部
E1 ガイド部