(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002946
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】衝撃吸収床材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20231228BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20231228BHJP
E04F 15/10 20060101ALI20231228BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
E04F15/18 602F
B32B7/02
E04F15/10 104A
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100143
(22)【出願日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2022102250
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉人
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA44
2E220AB10
2E220AC01
2E220BA03
2E220BB02
2E220GA02X
2E220GA07X
2E220GA09X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB02X
2E220GB05X
2E220GB12X
2E220GB17X
2E220GB22X
2E220GB22Y
2E220GB28X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB37X
2E220GB39X
2E220GB40X
2E220GB45X
2E220GB46X
2E220GB47X
2E220GB49X
4F100AA01B
4F100AA08B
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK05B
4F100AK06B
4F100AK07B
4F100AN00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100DJ01A
4F100GB07
4F100HB00C
4F100JK11
4F100JK11A
4F100JK12A
4F100JK12B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】比較的高硬度な材料を用いた場合でも、十分な衝撃吸収性能を安定して発揮できる衝撃吸収床材を実現可能にする。
【解決手段】
衝撃吸収床材は、コア層と、コア層に重ねて配置され、コア層よりも柔軟なクッション層と、を備える。クッション層は、アスカーC硬度が10以上40以下の範囲の値に設定されている。衝撃吸収床材は、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と、
前記コア層に重ねて配置され、前記コア層よりも柔軟なクッション層と、を備え、
前記クッション層のアスカーC硬度が、10以上40以下の範囲の値に設定され、
JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されている、衝撃吸収床材。
【請求項2】
前記コア層は、主成分である少なくとも1つの無機材料と、樹脂と、を含み、前記無機材料が前記樹脂中に分散して配置されている、請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項3】
前記無機材料は、炭酸カルシウムを含む、請求項2に記載の衝撃吸収床材。
【請求項4】
前記樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうちの少なくともいずれかである、請求項2に記載の衝撃吸収床材。
【請求項5】
前記コア層は、有機材料及び無機材料のうちの少なくともいずれかの単体、又は、前記有機材料及び前記無機材料の両方を含む複合体である、請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項6】
前記コア層は、少なくとも上面のモース硬度が4以上6以下の範囲の値である、請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【請求項7】
総厚み寸法が15mmよりも大きく且つ30mm以下の範囲の値であり、且つ、総厚み寸法に占める前記コア層の厚み寸法が、15%以上40%以下の範囲の値である、請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【請求項8】
前記コア層の前記クッション層側とは反対側の表面を覆うように、前記コア層に重ねて配置される意匠層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行者が転倒時等に受ける衝撃を吸収する衝撃吸収床材に関する。
【背景技術】
【0002】
介護福祉施設や病院等に用いられる床材として、歩行者が転倒時等に床材から受ける衝撃を吸収する衝撃吸収床材が知られている。このような衝撃吸収床材として、特許文献1には、木質基材を含む複合材と、緩衝材とを備える床材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、石材等の各種材料が有する風合いを持たせた内装板材が開発されている。しかしながら、例えば石材のように、単に比較的高硬度な材料を含む内装板材を衝撃吸収床材の用途に用いた場合、十分な衝撃吸収性能が安定して得られないおそれがある。
【0005】
そこで本開示は、比較的高硬度な材料を用いた場合でも、十分な衝撃吸収性能を安定して発揮できる衝撃吸収床材を実現可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る衝撃吸収床材は、コア層と、前記コア層に重ねて配置され、前記コア層よりも柔軟なクッション層と、を備え、前記クッション層は、アスカーC硬度が10以上40以下の範囲の値に設定され、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、比較的高硬度な材料を用いた場合でも、十分な衝撃吸収性能を安定して発揮できる衝撃吸収床材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る衝撃吸収床材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る衝撃吸収床材1の断面図である。
図1に示す衝撃吸収床材1は、例えば、介護福祉施設、病院、リハビリ施設等の床材として用いられる。衝撃吸収床材1は、その最表面が露出した状態、又は、最表面に別の部材が敷かれた状態で使用される。衝撃吸収床材1は、歩行者が転倒したときの衝撃を吸収することで、歩行者に衝撃が加わるのを緩和し、歩行者を骨折等の負傷から保護する。
【0010】
衝撃吸収床材1は、例えば、既設の床の上に配置される。或いは衝撃吸収床材1は、例えば、鉄筋コンクリートの上に配置される。衝撃吸収床材1が鉄筋コンクリートの上に配置される場合、衝撃吸収床材1は、例えば、コンクリートスラブなどの床スラブの表面に固定される。衝撃吸収床材1の平面視におけるサイズは、限定されない。例えば施工対象面に対し、複数の衝撃吸収床材1が敷き詰めて配置される。
図1に示されるように、衝撃吸収床材1は、クッション層10、防音層11、コア層12、意匠層13、被覆層14を備える。構成要素10~14は、下方から上方に向けて同順に重ねて配置されている。
図1では、構成要素10~14の厚み寸法を模式的に示している。
【0011】
クッション層10は、コア層12に対して作用する衝撃を弾性変形により緩和する。クッション層10は、コア層12に重ねて配置され、コア層12よりも柔軟に形成されている。クッション層10は、一例として、発泡部材を含む。本実施形態のクッション層10は、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、発泡ゴムのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
クッション層10は、アスカーC硬度が、10以上40以下の範囲の値に設定されている。また別の例では、クッション層10のアスカーC硬度は、10以上37以下の範囲の値に設定されている。また別の例では、クッション層10のアスカーC硬度は、10以上33以下の範囲の値に設定されている。また別の例では、クッション層10のアスカーC硬度は、10以上24以下の範囲の値に設定されている。
【0013】
例えば一定範囲において、クッション層10は、アスカーC硬度が低いほど、衝撃を吸収し易い。ここで一般に、通常の(言い換えると発泡していない)ゴムのアスカーC硬度は60以上であり、エラストマーのアスカーC硬度は80以上である。従ってクッション層10は、通常のゴム及びエラストマーよりも柔らかく構成されている。クッション層10のアスカーC硬度は、例えば、JIS K 7312:1996に準拠する方法で測定する市販品のゴム・プラスチック硬度計(デュロメータ)を用いて測定できる。
【0014】
防音層11は、衝撃吸収床材1内を通過する騒音を低減する。防音層11は、一例として、樹脂、ゴム、又はアスファルトをバインダーで結合した粘結材と、高比重充填剤とを含む。
【0015】
コア層12は、衝撃吸収床材1の主要な構成要素である。コア層12は、衝撃吸収床材1のベース層である。コア層12は、衝撃吸収床材1に対し、コア層12に含まれる各種材料の風合いを付与すると共に剛性を付与する。一例として、コア層12は、少なくとも上面のモース硬度が4以上6以下の範囲の値である。コア層12が剛性及び硬度を併せ持つことで、例えば、コア層12に対して衝撃が及んでも、衝撃がコア層12の全体に拡散され、衝撃吸収床材1に対して衝撃が局所的に及ぶのが防止される。コア層12のモース硬度は、モース硬度計により測定可能である。本実施形態のコア層12は、クッション層10よりも高密度に構成される。
【0016】
コア層12は、一例として、有機材料及び無機材料のうちの少なくともいずれかの単体、又は、有機材料及び無機材料の両方を含む複合体である。コア層12が含む有機材料としては、木材及び樹脂のうちの少なくともいずれかを例示できる。木材を含むコア層12としては、木板、合板、コルク、及び、木質板のうちの少なくともいずれかを例示できる。木質板としては、パーティクルボード(例えばJIS A 5908:2022に準拠するもの)、及び、ファイバーボード(例えばJIS A 5905:2022に準拠するもの)のうちのいずれかを例示できる。ファイバーボードとしては、インシュレーションファイバーボード(IB)、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)、及び、ハードファイバーボード(HB)のうちのいずれかを例示できる。
【0017】
また、コア層12が含む樹脂としては、ポリオレフィン及びポリ塩化ビニル(PVC)のうちの少なくともいずれかを例示できる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)のうちの少なくともいずれかを例示できる。ポリエチレン(PE)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)のうちの少なくともいずれかを例示できる。
【0018】
また別の例として、コア層12が含む樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、アクリル、スチレン、及びポリスチレン(PS)のうちの少なくともいずれかを例示できる。樹脂を含むコア層12としては、樹脂板を例示できる。コア層12は、2種以上の樹脂を含む樹脂板として構成されていてもよい。ここで言う2種以上の樹脂には、例えば、アクリル及びスチレンが含まれるが、これに限定されない。
【0019】
また、コア層12が含む無機材料としては、石材、金属、及びガラスのうちの少なくともいずれかを例示できる。石材としては、無機鉱物、岩石、礫、及び砂のうちの少なくともいずれかを含むものを例示できる。石材を含むコア層12としては、石膏板、スレート板、及び、コンクリート板のうちのいずれかを例示できる。また金属としては、アルミニウム、鉄、及び、これらを含む金属化合物のうちの少なくともいずれかを例示できる。金属を含むコア層12としては、金属板を例示できる。ガラスを含むコア層12としては、ガラス板を例示できる。また、複合体であるコア層12としては、例えば、木粉や無機材料の粉体を、樹脂やガラス等のマトリクス中に分散して配置したものを例示できる。
【0020】
また別の例として、コア層12は、主成分である少なくとも1種類の無機材料と、有機材料とを含む。本実施形態のコア層12では、一例として、有機材料である樹脂中に、無機材料が分散して配置されている。コア層12では、樹脂中に、無機材料を含む粒状物が分散して配置されていてもよい。コア層12の樹脂は、分散して配置された無機材料を結合させる。コア層12は、無機材料を50重量%よりも多く含む。一例として、コア層12は、無機材料を60重量%以上80重量%以下の範囲の値で含み、前記樹脂を20重量%以上40重量%以下の範囲の値で含む。また一例として、衝撃吸収床材1の石材の風合いは、主に無機材料により付与される。コア層12が含む前記無機材料と前記樹脂は、適宜選択可能である。
【0021】
前記無機材料は、無機鉱物を含んでいてもよい。また前記無機材料は、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸バリウム(BaSO4)、カオリン(Al4Si4O10(OH)8)、マイカ、酸化亜鉛(ZnO)、及び、二酸化ケイ素(SiO2)のうちの少なくともいずれかを例示できる。本実施形態の前記無機材料は、一例として、炭酸カルシウム(CaCO3)を含む。前記無機材料は、例えば、石材からの抽出物である。
【0022】
前記有機材料は、有機鉱物を含んでいてもよい。また、内部に無機材料が分散して配置される前記樹脂としては、例えば、汎用プラスチックを例示できる。この汎用プラスチックとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び、ポリプロピレン(PP)のうちの少なくともいずれかを例示できる。例えば、コア層12が無機材料を主成分として含むことで、コア層12の有機物の含有量が抑制される。これにより、例えば、樹脂を主成分とする部材や、繊維強化プラスチックを含む部材等に比べて、コア層12を焼却等により処分する際に発生するCO2排出量を良好に低減でき、環境問題に対応できる。
【0023】
コア層12は、例えば、単一の層、又は、複数の層を重ねて配置した積層体として構成される。コア層12が積層体として構成される場合、例えば、少なくとも積層体中で最上位に位置する層の上面のモース硬度が、4以上6以下の範囲の値であってもよい。
【0024】
コア層12の全体において、樹脂中に無機材料等の成分が分散して配置される場合、コア層12の内部構成が、コア層12の全体において均一化される。これにより、コア層12の強度が向上されると共に、コア層12の全体において均一な特性が得られる。またコア層12を用いることで、衝撃吸収床材1の表面硬度を向上させ、耐擦傷性を付与できる。これにより、例えば、衝撃吸収床材1の表面が、車椅子の走行等により傷つくのを抑制できる。また、コア層12が樹脂を含む場合、樹脂中に分散される無機材料等の成分の結着を維持できる。これにより、コア層12の剛性を向上し易くできる。その結果、衝撃吸収床材1の運搬時、施工時、及び、通常の使用時等において、コア層12が割れや欠け等の損傷を生じるのが防止される。
【0025】
意匠層13は、衝撃吸収床材1に意匠性を付与する。意匠層13は、所望の床材の模様や色彩を有する意匠が印刷されている。意匠層13は、一例として、コア層12のクッション層10側とは反対側の表面を覆うように、コア層12に重ねて配置されている。意匠層13は、衝撃吸収床材1において、外部から視認できるように配置されている。意匠層13の材料は、適宜選択可能である。本実施形態の意匠層13は、塩化ビニル(PVC)等のビニル系材料を含む。
【0026】
被覆層14は、意匠層13とコア層12とを保護すると共に、これらを防汚する。被覆層14は、透明な板状に形成され、意匠層13を外部から視認可能に構成されている。本実施形態の被覆層14は、外光に含まれる特定波長の光線を吸収する。一例として、被覆層14は、紫外線吸収成分を含む。これにより、被覆層14は、意匠層13及びコア層12が外部から照射される紫外線により劣化するのを抑制する。被覆層14の材料は、適宜選択可能である。本実施形態の意匠層13は、例えば、耐摩耗性、耐熱性、及び絶縁性に優れる樹脂を含む。このような樹脂として、意匠層13は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系材料を含む。高硬度の被覆層14を用いることで、歩行者が歩行する際の衝撃吸収床材1の沈み込みが抑制される。
【0027】
一例として、本実施形態の衝撃吸収床材1の総厚み寸法は、15mmよりも大きく且つ30mm以下の範囲の値である。更に一例として、衝撃吸収床材1の総厚み寸法に占めるコア層12の厚み寸法は、15%以上40%以下の範囲の値である。例えば一定範囲において、衝撃吸収床材1の総厚み寸法に占めるコア層12の厚み寸法が減少するほど、衝撃吸収床材1の剛性、硬度、及び衝撃吸収特性のバランスを向上できる。このため、衝撃吸収床材1の総厚み寸法に占めるコア層12の厚み寸法は、例えば、15%以上35%以下の範囲が好ましく、15%以上30%以下の範囲の値が一層好ましい。クッション層10の厚み寸法は、コア層12と意匠層13との合計厚み寸法よりも大きい。衝撃吸収床材1では、構成要素10~14のうち隣接する2つの構成要素の間に別の部材が配置されていてもよい。防音層11、コア層12、意匠層13、被覆層14が重ねて配置された床材ユニットとしては、市販品を利用できる。このような市販品の床材ユニットとしては、例えば、テンフィールズファクトリー株式会社製のタイルタイプの「STONE FLOOR」が挙げられる。
【0028】
本実施形態の衝撃吸収床材1は、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されている。また別の例では、衝撃吸収床材1は、前記加速度Gの最大値が、52以下の範囲の値に設定されている。また別の例では、前記加速度Gの最大値が、45以下の範囲の値に設定されている。いずれの例の場合にも、前記加速度Gの最大値の下限値は、例えば、36又は41に設定できる。また別の例では、前記加速度Gの最大値が、37以下の範囲の値に設定されている。
【0029】
ここで、比較的硬い床材では、衝撃吸収性能が不足することにより、前記加速度Gの最大値は高い値となる。即ち、前記加速度Gの最大値が小さいほど、衝撃吸収性能が高いと評価できる。本実施形態の衝撃吸収床材1は、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されることで、高い衝撃吸収性能を有するように構成されている。衝撃吸収床材1の前記加速度Gの最大値は、衝撃吸収床材1が備える各構成要素10~14の材料や厚み寸法により調節できる。また例えば、クッション層10の厚み寸法又はアスカーC硬度を減少させると、衝撃吸収床材1の前記加速度Gの最大値を減少できる。衝撃吸収性能を向上させる観点から、衝撃吸収床材1の前記加速度Gの最大値は、例えば一定範囲において低いことが好ましい。また例えば、衝撃吸収床材1の加速度Gの最大値を60以下の範囲内において一定範囲で増大させると、衝撃吸収性能を維持しつつ、衝撃吸収床材1の表面を損傷し易くできる。
【0030】
以上説明したように、衝撃吸収床材1によれば、クッション層10のアスカーC硬度が10以上40以下の範囲の値に設定されているため、コア層12に対して外部より作用する衝撃をクッション層10において良好に吸収できる。更に、衝撃吸収床材1は、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されているため、衝撃吸収床材1に優れた衝撃吸収性能を付与し、衝撃吸収床材1の安全性を向上できる。よって、比較的高硬度な材料を用いた場合でも、十分な衝撃吸収性能を安定して発揮できる衝撃吸収床材1を実現できる。
【0031】
また、本実施形態のコア層12は、主成分である少なくとも1つの無機材料と、樹脂と、を含み、無機材料が樹脂中に分散して配置されている。これにより、例えばコア層が石材のみで構成される場合に比べて、コア層12に対して硬度と共に剛性を付与し易くできる。
【0032】
また、本実施形態の衝撃吸収床材1では、一例として、コア層12の少なくとも上面のモース硬度が4以上6以下の範囲の値である。これにより、コア層12に対して剛性と共に優れた硬度を付与できる。また、このような硬度を有するコア層12を、クッション層10と組み合わせることにより、衝撃吸収床材1の表面に伝わった衝撃を衝撃吸収床材1の広範囲な表面領域に拡散し、衝撃が衝撃吸収床材1に局所的に及ぶのを抑制できる。また、拡散された衝撃をクッション層10により適切に吸収できる。
【0033】
また、本実施形態の衝撃吸収床材1は、総厚み寸法が、15mmよりも大きく且つ30mm以下の範囲の値であり、且つ、総厚み寸法に占めるコア層12の厚み寸法が、15%以上40%以下の範囲の値である。これにより、十分な衝撃吸収性能を有する衝撃吸収床材1を比較的薄い厚み寸法で実現できる。更に、衝撃吸収床材1中に占めるコア層12の厚み寸法を低減することで、例えば、衝撃吸収床材1の総厚み寸法を維持しつつ、クッション層10の厚み寸法を増大し、衝撃吸収性能を向上させ易くできる。
【0034】
また本実施形態では、コア層12が含む無機材料は、炭酸カルシウムを含む。これにより、衝撃吸収床材1を比較的低コストで生産できると共に、衝撃吸収床材1に優れた衝撃吸収性能を付与できる。
【0035】
また本実施形態では、コア層12が含む樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうちの少なくともいずれかである。このような樹脂を用いることで、衝撃吸収床材1の設計自由度を向上できると共に、衝撃吸収床材1の製造コストを低減できる。
【0036】
また、本実施形態の衝撃吸収床材1は、コア層12のクッション層10側とは反対側の表面を覆うように、コア層12に重ねて配置される意匠層13を備えている。これにより、十分な衝撃吸収性能と共に意匠性の高い設計自由度を有する衝撃吸収床材1を実現できる。
【0037】
(確認試験)
次に確認試験について説明するが、本開示は、以下に示すいずれかの実施例に限定されるものではない。本確認試験では、以下の手順で、衝撃吸収床材1に対応する実施例として、防音層11、コア層12、意匠層13、被覆層14を重ねて配置した床材ユニット(以下、実施例床材ユニットとも称する。)に、材料毎にアスカーC硬度が異なるクッション層10を重ねて配置した実施例1~6の衝撃吸収床材1を作製した。
【0038】
実施例1のクッション層10としては、株式会社イノアック製ポリエチレンフォーム「P・E-LITE B-200」を用いた。実施例2のクッション層10としては、株式会社イノアック製ゴムスポンジ「C4305」を用いた。実施例3のクッション層10としては、株式会社イノアック製ゴムスポンジ「N145」を用いた。実施例4のクッション層10としては、株式会社イノアック製ゴムスポンジ「E4088」を用いた。実施例6のクッション層10としては、株式会社イノアック製ポリエチレンフォーム「P・E-LITE A-8」を用いた。実施例1~6のクッション層10は、いずれも独泡タイプの発泡部材である。実施例1~4、6のクッション層10厚み寸法は、10.0mmである。実施例5のクッション層10の厚み寸法は、20.0mmである。
【0039】
また実施例床材ユニットとして、テンフィールズファクトリー株式会社製のタイルタイプの「STONE-FLOOR」を用いた。また、実施例床材ユニット中の防音層11の厚み寸法を1.0mmに設定した。また実施例床材ユニット中のコア層12及び意匠層13の合計厚み寸法を4.5mmに設定した。また、実施例床材ユニット中の被覆層14の厚み寸法を0.5mmに設定した。これにより、実施例1~4、6に係る衝撃吸収床材1の総厚み寸法を16.0mmに設定し、実施例5に係る衝撃吸収床材1の総厚み寸法を26.0mmに設定した。実施例1~6のコア層12は、無機材料を70重量%含み、且つ、樹脂を30重量%含む。実施例1~6のコア層12が含む無機材料は、炭酸カルシウムを含む。
【0040】
また、実施例1からクッション層10を省略した構成(実施例床材ユニットのみからなる構成)を、比較例1(総厚み寸法6.0mm)として準備した。また、比較的低硬度の合板(厚み寸法6.0mm)、樹脂層(厚み寸法4.5mm)、プラスチックフィルム(厚み寸法0.5mm)を、下方から上方に向けて同順に重ねて配置した床材ユニット(以下、比較例床材ユニットAとも称する。)の下方に、アスカーC硬度が48であるクッション層(厚み寸法9.0mm)を重ねて配置した構成を、比較例2(総厚み寸法20.0mm)として準備した。比較例2では、合板と樹脂層との組み合わせが、実施例1~6のコア層12に対応する。この比較例2として、木製材料を用いた市販品の床材を用いた。
【0041】
また、比較例2の構成からクッション層を省略したもの(比較例床材ユニットAのみの構成)を、比較例3(総厚み寸法11.0mm)として準備した。また、塩化ビニル(PVC)により構成される下地層と、グラスファイバーを含む中間層と、合成繊維(一例としてナイロン66)を含むパイル糸を高密度に植毛したパイル層とを、下方から上方に向けて同順に重ねて配置した床材ユニット(以下、比較例床材ユニットBとも称する。)(厚み寸法5.0mm)の下方に、実施例4と同じクッション層10を重ねて配置した構成を、比較例4(総厚み寸法15mm)として準備した。また、比較例4からクッション層10を省略したもの(比較例床材ユニットBのみの構成)を、比較例5(総厚み寸法5mm)として準備した。ここで、実施例1~6及び比較例1に用いたコア層12のモース硬度は、4以上6以下の範囲の値であるのに対し、比較例2、3に用いた合板のモース硬度は、0.5以上1.0以下の範囲の値である。また、比較例4、5に用いたパイル層のパイル糸のモース硬度は、1.5以上2.5以下の範囲の値である。
【0042】
実施例1~6、及び、比較例1~5のサンプルについて、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験に基づいて、床材の表面の測定点に高さ20cmから質量3.85kgのヘッドモデルを自由落下させ、床材の表面に衝突したときの加速度を加速度Gの最大値として測定した。この測定をサンプル毎に5回ずつ行い、測定値の平均値を算出した。また、クッション層を備える実施例1~6、及び、比較例2、4について、クッション層のアスカーC硬度を測定した。この測定結果を表1及び2に示す。表1及び2中の「加速度Gの最大値」は、前記平均値を示す。なお、本書に記載する「加速度G」は、1.0G=9.80665m/s2の関係に基づいて単位換算することが可能である。
【0043】
【0044】
【0045】
表1及び2に示すように、実施例1~6は、比較例1~5のいずれよりも加速度Gの最大値が低く、優れた衝撃吸収性能を有することが確認された。また、実施例1~6のクッション層10は、比較例2のクッション層よりもアスカーC硬度が低いことが確認された。実施例1~6と、比較例1との比較により、実施例1~6は、クッション層10を用いることで、加速度Gの最大値が、比較例1の約1/3以下にまで大幅に低減できることが確認された。また実施例2~5の結果から、特にゴムスポンジ系の材料を含むクッション層10を用いた場合に、加速度Gの最大値の優れた低減効果が得られることが確認された。
【0046】
また表1及び2に示すように、比較例4、5との比較により、実施例4で用いたものと同じクッション層を比較例床材ユニットBと組み合わせた場合でも、加速度Gの最大値は1/2程度にしか低減しないことが確認された。これらの結果から、実施例1~6のように、コア層12を、アスカーC硬度が10以上40以下の範囲の値に設定されたクッション層10と組み合わせた構成は、合成繊維のパイル糸を高密度に植毛したパイル層を含む比較例床材ユニットBとクッション層とを組み合わせた構成と比べても、クッション層10等による効果の発現が大きく、加速度Gの最大値を大幅に低減できる可能性があるものと考えられる。このような結果が得られた理由の一つとして、実施例1~6は、クッション層10による衝撃吸収効果に加え、コア層12が、主成分である無機材料と、樹脂とを含むように形成され、4以上6以下の範囲の値であるモース硬度を有することで、高硬度且つ変形しにくく、良好な剛性を有するように構成されることにより、表面に伝わる衝撃を広範囲な表面領域に拡散し、衝撃が局所的に及ぶのを抑制できたためであると考えられる。
【0047】
また、実施例1~6が備える実施例床材ユニットは、コア層12以外に防音層11、意匠層13、被覆層14を含む。しかしながら、これらの構成要素11、13、14は、コア層12に比べて厚み寸法が相当薄く、且つ、機械的特性も低いと言える。このため、実施例1~6の衝撃吸収性能は、主として、コア層12とクッション層10との組合せにより得られたものと考えられる。
【0048】
また比較例2は、厚み寸法4.5mmの樹脂層と厚み寸法6.0mmの合板とが用いられているが、厚み寸法が4.5mm未満のコア層12が用いられている実施例1~6に比べて衝撃吸収性能が低いことが確認された。また、比較例2のクッション層は、実施例1~6のクッション層よりもアスカーC硬度が高いことが確認された。これにより、厚み寸法が4.5mm未満である実施例1~6のコア層12と、クッション層10との組合せは、厚み寸法4.5mmの樹脂層、厚み寸法6.0mmの合板、及び、比較例2のクッション層を組み合わせたものよりも衝撃吸収性能が高いことが確認された。
【0049】
(開示項目)
以下の項目は、本開示の衝撃吸収床材の好ましい形態の開示である。
[項目1]
コア層と、
前記コア層に重ねて配置され、前記コア層よりも柔軟なクッション層と、を備え、
前記クッション層のアスカーC硬度が、10以上40以下の範囲の値に設定され、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されている、衝撃吸収床材。
【0050】
上記構成によれば、クッション層のアスカーC硬度が10以上40以下の範囲の値に設定されているため、コア層に対して外部より作用する衝撃をクッション層において良好に吸収できる。更に、上記構成の衝撃吸収床材は、JIS A 6519:2018に準拠する床の硬さ試験で測定される加速度Gの最大値が、60以下の範囲の値に設定されているため、衝撃吸収床材1に優れた衝撃吸収性能を付与でき、衝撃吸収床材1の安全性を一層向上できる。その結果、比較的高硬度な材料を衝撃吸収床材に用いた場合でも、衝撃吸収床材に対して十分な衝撃吸収性能を備えさせることができる。
【0051】
[項目2]
前記コア層は、主成分である少なくとも1つの無機材料と、樹脂と、を含み、前記無機材料が前記樹脂中に分散して配置されている、項目1に記載の衝撃吸収床材。
【0052】
上記構成によれば、コア層において、主成分である少なくとも1つの無機材料が樹脂中に分散して配置されることで、例えばコア層が石材のみで構成される場合に比べて、コア層に対して硬度と共に剛性を付与し易くできる。
【0053】
[項目3]
前記無機材料は、炭酸カルシウムを含む、項目2に記載の衝撃吸収床材。
【0054】
上記構成によれば、衝撃吸収床材を比較的低コストで生産できると共に、衝撃吸収床材に優れた衝撃吸収性能を付与できる。
【0055】
[項目4]
前記樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び、ポリプロピレンのうちの少なくともいずれかである、項目2又は3に記載の衝撃吸収床材。
【0056】
上記構成によれば、衝撃吸収床材の設計自由度を向上できると共に、衝撃吸収床材の製造コストを低減できる。
【0057】
[項目5]
前記コア層は、有機材料及び無機材料のうちの少なくともいずれかの単体、又は、前記有機材料及び前記無機材料の両方を含む複合体である、項目1に記載の衝撃吸収床材。
【0058】
上記構成によれば、コア層の材料幅が拡大されることにより、コア層の設計自由度を向上させることができる。
【0059】
[項目6]
前記コア層は、少なくとも上面のモース硬度が4以上6以下の範囲の値である、項目1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【0060】
上記構成によれば、コア層に対して剛性と共に優れた硬度を付与できる。また、このような硬度を有するコア層を、前記クッション層と組み合わせることにより、衝撃吸収床材の表面に伝わった衝撃を衝撃吸収床材の広範囲な表面領域に拡散し、衝撃が衝撃吸収床材に局所的に及ぶのを抑制できる。また、拡散された衝撃をクッション層により適切に吸収できる。
【0061】
[項目7]
総厚み寸法が15mmよりも大きく且つ30mm以下の範囲の値であり、且つ、総厚み寸法に占める前記コア層の厚み寸法が、15%以上40%以下の範囲の値である、項目1~6のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【0062】
上記構成によれば、十分な衝撃吸収性能を有する衝撃吸収床材1を比較的薄い厚み寸法で実現できる。更に、衝撃吸収床材中に占めるコア層の厚み寸法を低減することで、例えば、衝撃吸収床材の総厚み寸法を維持しつつ、クッション層の厚み寸法を増大し、衝撃吸収性能を向上させ易くできる。
【0063】
[項目8]
前記コア層の前記クッション層側とは反対側の表面を覆うように、前記コア層に重ねて配置される意匠層を備える、項目1~7のいずれか1項に記載の衝撃吸収床材。
【0064】
上記構成によれば、十分な衝撃吸収性能と共に意匠性の高い設計自由度を有する衝撃吸収床材1を実現できる。
【0065】
本開示の構成は、前記実施形態及び前記実施例のものに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 衝撃吸収床材
10 クッション層
12 コア層
13 意匠層