(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029466
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】インバート桟橋
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131746
(22)【出願日】2022-08-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 猛彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 由規
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155CA03
2D155CA08
2D155KB08
2D155KC02
(57)【要約】
【課題】操作の自由度が高く簡易な作業によってコンクリートを任意の位置に打設可能なインバート桟橋を提供する。
【解決手段】本発明のインバート桟橋1は、架台11と、架台11の前後を地盤から離間して支持する複数の支持台12と、を有する桟橋本体10と、架台11の前後方向に沿って移動自在に架台11の側方に配置したホッパ21と、ホッパ21の下方に配置したベルトコンベア22と、ベルトコンベア22をホッパ21に対し水平方向に回動可能に連結した可動ジョイント23と、を有する打設ユニット20と、を備え、ホッパ21内に投入したコンクリートを、ベルトコンベア22に積載して搬送し、架台11より下方に排出可能に構成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、前記架台の前後を地盤から離間して支持する複数の支持台と、を有する桟橋本体と、
前記架台の前後方向に沿って移動自在に前記架台の側方に配置したホッパと、前記ホッパの下方に配置したベルトコンベアと、前記ベルトコンベアを前記ホッパに対し水平方向に回動可能に連結した可動ジョイントと、を有する打設ユニットと、を備え、
前記ホッパ内に投入したコンクリートを、前記ベルトコンベアに積載して搬送し、前記架台より下方に排出可能に構成したことを特徴とする、
インバート桟橋。
【請求項2】
前記ベルトコンベアが、コンベア本体と、前記コンベア本体を長手方向に沿ってスライド可能に保持するスライドガイドと、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のインバート桟橋。
【請求項3】
前記可動ジョイントが、前記ベルトコンベアを前記ホッパに対し鉛直方向に回動可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート桟橋。
【請求項4】
前記打設ユニットが、線条体と、前記線条体の一端に付設した連結具と、前記線条体を巻き取り可能な本体と、を有する吊上装置を備え、前記ホッパと前記ベルトコンベアを前記吊上装置で接続したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のインバート桟橋。
【請求項5】
前記吊上装置が、前記本体を前記ホッパに連結し、前記連結具を前記ベルトコンベアに連結した、チェーンホイストであることを特徴とする、請求項4に記載のインバート桟橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート桟橋に関し、特に操作の自由度が高く、簡易な作業によってコンクリートを任意の位置に打設可能なインバート桟橋に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事において、地山の変位を抑制しトンネルとしての必要断面を確保するために、トンネルの床面にトンネルインバートを設置する。
トンネルインバート工では、地盤の掘削時やコンクリートの打設時に工事車両の通行を確保するため、インバート工の上部を跨ぐインバート桟橋が使用される。
特許文献1には、桟橋をトンネルの幅方向に横スライド可能に架設したインバート桟橋が開示されている。
インバートコンクリートの打設時には、インバート桟橋の架台上にコンクリートミキサ車を配置し、コンクリートミキサ車からホッパ内にコンクリートを投入し、ホッパの下部に配置したシュートを介して、シュートの先端からコンクリートを排出する(
図10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下の問題点がある。
<1>トンネル断面の制約上、架台から打設面までの高さを高くとることができない。このため、シュートに角度をつけるのが難しく、コンクリートを円滑に流下させて打設することができない。これは、打設位置がホッパから離れて、使用するシュート長が長くなるほどに顕著となる。
<2>近接した位置で短いシュートを使用する場合、コンクリートの流下に勢いがつきすぎて打設時に材料分離を起こすおそれがある。
<3>シュートはチェーン等で鋼製支保に仮留めし、打設位置が変わるたびに取り外して移動させ、再度仮留めする必要がある。このような煩雑な作業を、インバート桟橋の側方又は下方における狭隘な空間で行うため、作業効率が悪い。
<4>シュートの先端位置を自由に移動させることができないため、打設空間内にコンクリートを満遍なく行きわたらせることが難しい。打設位置からコンクリートを横移動させると、材料分離を引き起こすおそれがある。
<5>打設位置までの距離に応じて複数の種類のシュートを使い分ける必要があり、シュートの管理が煩雑である。
【0005】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決するための、インバート桟橋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバート桟橋は、架台と、架台の前後を地盤から離間して支持する複数の支持台と、を有する桟橋本体と、架台の前後方向に沿って移動自在に架台の側方に配置したホッパと、ホッパの下方に配置したベルトコンベアと、ベルトコンベアをホッパに対し水平方向に回動可能に連結した可動ジョイントと、を有する打設ユニットと、を備え、ホッパ内に投入したコンクリートを、ベルトコンベアに積載して搬送し、架台より下方に排出可能に構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明のインバート桟橋は、ベルトコンベアが、コンベア本体と、コンベア本体を長手方向に沿ってスライド可能に保持するスライドガイドと、を備えていてもよい。
【0008】
本発明のインバート桟橋は、可動ジョイントが、ベルトコンベアをホッパに対し鉛直方向に回動可能であってもよい。
【0009】
本発明のインバート桟橋は、打設ユニットが、線条体と、線条体の一端に付設した連結具と、線条体を巻き取り可能な本体と、を有する吊上装置を備え、ホッパとベルトコンベアを吊上装置で接続していてもよい。
【0010】
本発明のインバート桟橋は、吊上装置が、本体をホッパに連結し、連結具をベルトコンベアに連結した、チェーンホイストであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインバート桟橋は、以下の効果の内少なくとも1つを備える。
<1>コンクリートを、シュートによる自重滑落ではなく、ベルトコンベアによって打設位置まで搬送する構成であるため、架台から打設面までの高さや打設位置までの距離に関わらず、コンクリートを安定的に打設することができる。
<2>コンクリートの搬送速度が一定であるため、急激な落下による材料分離を防ぐことができる。
<3>簡易な操作によってベルトコンベアの先端を任意の打設位置に設定することができる。このため狭隘な作業空間内であっても高い施工効率を確保することができる。
<4>3次元回動構造によって、ベルトコンベアの先端を柔軟に移動させることができる。このため、打設空間内にコンクリートを満遍なく行きわたらせることができる。
<5>複数の種類のシュートを使い分ける必要がないため、装置の管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明のインバート桟橋について詳細に説明する。
なお、本発明のインバート桟橋における「前」とはトンネル軸方向に沿って切羽側を意味し、「後」とはトンネル軸方向に沿って坑口側を意味する。本発明のインバート桟橋における「長手方向」とはトンネル軸方向に沿った方向、「幅方向」とはトンネル軸方向に直交する水平方向を意味する。
を意味する。
【実施例0014】
[インバート桟橋]
<1>全体の構成(
図1)
インバート桟橋1は、桟橋本体10と、桟橋本体10の側方に設けた打設ユニット20と、を備える。
本例では、桟橋本体10の両側に、打設ユニット20を1つずつ設ける。
打設ユニット20は、後述するガイドレール16とホッパ21の接続を介して、桟橋本体10の側面を、桟橋本体10の長手方向に沿って移動可能である。
【0015】
<2>桟橋本体(
図2)
桟橋本体10は、工事車両の通行とコンクリートミキサ車の設置の機能を備える、移動式の桟橋である。
本例では桟橋本体10が、長尺の架台11と、架台11の前端と後端を支持する複数の支持台12と、架台11の前端と後端に設けた複数の車輪13と、架台11の前端と後端に設けた2つの斜路14と、架台11の上面両側縁に沿って設けた2つの高欄15と、架台11の両側面に沿って平行に設けた各2本のガイドレール16と、からなる。
支持台12は伸縮式であり、インバート桟橋1の据え付け時には架台11を持ち上げて支持し、移動時には架台11を下ろして車輪13を接地させる。
斜路14は跳ね上げ式であり、インバート桟橋1の据え付け時には架台11の前後から地盤上に架け渡す。
高欄15は、架台11上に設置したコンクリートミキサ車Xから、打設ユニット20内にコンクリートを投入できるように、複数の開口を備える。
【0016】
<3>打設ユニット(
図3)
打設ユニット20は、桟橋本体10の下方にコンクリートを打設するための装置である。
打設ユニット20は、桟橋本体10の側面から下方に延在する。
打設ユニット20は、ホッパ21と、ホッパ21の下方に配置したベルトコンベア22と、ベルトコンベア22をホッパ21に連結する可動ジョイント23と、を少なくとも備える。
【0017】
<3.1>ホッパ(
図4)
ホッパ21は、コンクリートを受け入れてベルトコンベア22上に排出する部材である。
ホッパ21は、コンクリートの投入口21aと排出口21bを備える。
投入口21aは上方に開放する。排出口21bは可動ジョイント23内を貫通してベルトコンベア22の上方に接続する。
ホッパ21は、架台11の側方に、架台11の前後方向に沿って移動自在に付設する。本例では、ホッパ21の側部に上下2列のローラ21cを設け、ローラ21cを上下2本のガイドレール16の間に回転自在に挟持する。
【0018】
<3.2>ベルトコンベア(
図5)
ベルトコンベア22は、コンクリートを搬送する装置である。
本例ではベルトコンベア22を、コンベア本体22aと、コンベア本体22aを長手方向に沿って摺動自在に保持するスライドガイド22bと、からなるスライド構造とする。
詳細には、ローラを備える左右一対のスライドガイド22bの間に、コンベア本体22aを配置し、コンベア本体22aのフレームをローラで挟持する。
スライドガイド22bは、所定の位置でスライドを固定する固定手段を備える。
なおベルトコンベア22はスライド構造に限らず、固定構造であってもよい。
【0019】
<3.3>可動ジョイント(
図6、7)
可動ジョイント23は、ベルトコンベア22をホッパ21に回動可能に接続する部材である。
本例では可動ジョイント23が、水平回動部23aと、鉛直回動部23bと、を備える。
水平回動部23aは、ベルトコンベア22をホッパ21に対し水平方向に回動させる。本例では水平回動部23aとして、下部ジョイントを上部ジョイント内に包持したつば付ローラを採用する。ただしこれに限らず、公知の各種の回動機構を使用することができる。
鉛直回動部23bは、ベルトコンベア22をホッパ21に対し鉛直方向に回動させる。本例では鉛直回動部23bとして、スライドガイド22bを幅方向に軸支した下部ジョイントを採用する。ただしこれに限らず、公知の各種の回動機構を使用することができる。
水平回動部23aと鉛直回動部23bは、所定の位置で角度を固定する固定手段を備える。
なお、鉛直回動部23bは必須の構成要素ではなく、水平回動部23aのみを備える構造とすることもできる。
【0020】
<4>インバート桟橋の使用方法(
図8)
インバート桟橋1をインバート工の施工区間に移動し、前方の支持台12を前施工区間で構築したインバートコンクリート上に、後方の支持台12を地盤上に設置する。
架台11下方の地盤を掘削して、打設空間を構成する。
打設空間の後方に妻型枠を設置する。
打設ユニット20をガイドレール16に沿って移動させ、コンクリートの打設位置に配置する。
可動ジョイント23の水平回動部23a及び鉛直回動部23bを介してベルトコンベア22を任意の方向に向けて固定する。
スライドガイド22b内でコンベア本体22aをスライドさせることで、ベルトコンベア22の先端を任意の打設位置に固定する。
コンクリートミキサ車Xを架台11上に移動し、シュートをホッパ21の上方に位置決めして、ホッパ21の投入口21a内にコンクリートを投入する。
コンクリートはホッパ21の排出口21bからベルトコンベア22のベルト上に排出される。
ベルトコンベア22を稼働させて、ベルト上のコンクリートを打設位置まで搬送して打設する。
以上のように、本発明のインバート桟橋1は、コンクリートを架台11下方の任意の位置に打設することができる。