IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図1
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図2
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図3
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図4
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図5
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図6
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図7
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図8
  • 特開-回転方法、及び回転工具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029467
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】回転方法、及び回転工具
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131747
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 弘和
(72)【発明者】
【氏名】武藤 浩三
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM14
4F206AM15
4F206JA07
4F206JL08
4F206JN08
4F206JQ90
4F206JT03
4F206JT40
(57)【要約】
【課題】回転工具の回転力を向上する、技術を提供する。
【解決手段】回転方法は、回転工具を用いて回転対象物を回転させる回転工程を有する。前記回転工具は、前記回転対象物の外周と噛み合い回転する回転部と、前記回転部から径方向外方に突出する第1の柄と、前記回転部から径方向外方に突出する第2の柄と、を備える。前記第1の柄と前記第2の柄は、前記回転部の回転方向に間隔をおいて設けられる。前記回転工程は、前記回転部と前記回転対象物を噛み合わせた状態で、前記第1の柄に対して、鉛直方向上向き、鉛直方向下向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を第1の方向に回転させる力を加える第1の工程と、前記第2の柄に対して、前記第1の柄とは異なる方向の力であって、鉛直方向下向き、鉛直方向上向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を前記第1の方向に回転させる第2の工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具を用いて回転対象物を回転させる回転工程を有する、回転方法であって、
前記回転工具は、前記回転対象物の外周と噛み合い回転する回転部と、前記回転部から径方向外方に突出する第1の柄と、前記回転部から径方向外方に突出する第2の柄と、を備え、前記第1の柄と前記第2の柄は、前記回転部の回転方向に間隔をおいて設けられ、
前記回転工程は、前記回転部と前記回転対象物を噛み合わせた状態で、
前記第1の柄に対して、鉛直方向上向き、鉛直方向下向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を第1の方向に回転させる力を加える第1の工程と、
前記第2の柄に対して、前記第1の柄とは異なる方向の力であって、鉛直方向下向き、鉛直方向上向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を前記第1の方向に回転させる第2の工程と、
を有する、回転方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記第1の柄に対して機械又は重りの力を加え、
前記第2の工程は、前記第2の柄に対して人力を加える、請求項1に記載の回転方法。
【請求項3】
前記第1の柄は、前記第2の柄よりも長い、請求項2に記載の回転方法。
【請求項4】
前記第2の工程は、前記第2の柄をハンマーで叩くことで前記第2の柄に対して人力を加える請求項2または3に記載の回転方法。
【請求項5】
前記第1の柄は、機械又は重りの力を前記第1の柄に伝える伝達部を、前記第1の柄の長手方向に間隔をおいて複数有する、請求項2または3に記載の回転方法。
【請求項6】
前記回転工具は、前記回転部から径方向外方に突出する第3の柄を備え、
前記第1の柄と前記第2の柄と前記第3の柄は、この順番で、前記回転部の回転方向に間隔をおいて設けられ、
前記回転工程は、前記回転部と前記回転対象物を噛み合わせた状態で、前記第1の柄と前記第2の柄と前記第3の柄に対して前記回転部を前記第1の方向に回転させる力を加えることを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転方法。
【請求項7】
前記回転対象物は、射出成形機のノズルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転方法。
【請求項8】
回転対象物の回転に用いる、回転工具であって
前記回転対象物の外周と噛み合う回転部と、前記回転部から径方向外方に突出する第1の柄と、前記回転部から径方向外方に突出する第2の柄と、を備え、
前記第1の柄と前記第2の柄は、前記回転部の回転方向に120°~240°の間隔をおいて設けられる、回転工具。
【請求項9】
前記回転部から径方向外方に突出する第3の柄を備え、
前記第1の柄と前記第2の柄と前記第3の柄は、この順番で、前記回転部の回転方向に間隔をおいて設けられ、
前記第2の柄と前記第3の柄は、前記回転部の回転方向に120°以上の間隔で設けられる、請求項8に記載の回転工具。
【請求項10】
前記第1の柄は、前記第2の柄よりも長い、請求項8または9に記載の回転工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転方法、及び回転工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボルトとナットを締める又は緩める際に、打撃スパナを使用することが記載されている。作業員は、打撃スパナの柄をハンマーで叩くことで、ボルトとナットを締める又は緩める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-108488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転工具は、回転対象物の外周と噛み合う回転部と、回転部から径方向外方に突出する柄と、を有する。柄に対して力を加えて回転部を回転させることで、回転対象物を回転させることができる。
【0005】
従来、柄の本数が1本であった。そのため、力を加える方向と手段が制限され、回転対象物に対して与える回転力が不足することがあった。あるいは、ハンマーで与える回転力が大きくなってしまい、例えば瞬間的な力が強くなり、振動が大きくなる、部品が損傷する、または叩き損ねるリスクが上がる等の課題もあった。
【0006】
本発明の一態様は、回転工具の回転力を向上する、あるいはハンマーで与える回転力を小さくする、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転方法は、回転工具を用いて回転対象物を回転させる回転工程を有する。前記回転工具は、前記回転対象物の外周と噛み合い回転する回転部と、前記回転部から径方向外方に突出する第1の柄と、前記回転部から径方向外方に突出する第2の柄と、を備える。前記第1の柄と前記第2の柄は、前記回転部の回転方向に間隔をおいて設けられる。前記回転工程は、前記回転部と前記回転対象物を噛み合わせた状態で、前記第1の柄に対して、鉛直方向上向き、鉛直方向下向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を第1の方向に回転させる力を加える第1の工程と、前記第2の柄に対して、前記第1の柄とは異なる方向の力であって、鉛直方向下向き、鉛直方向上向き又は水平方向の力を加えることで、前記回転部を前記第1の方向に回転させる第2の工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、回転工具の回転力を向上できる、あるいはハンマーで与える回転力を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る回転工具を示す図である。
図2図2は、第1の変形例に係る回転工具を示す図である。
図3図3は、第2の変形例に係る回転工具を示す図である。
図4図4は、第3の変形例に係る回転工具を示す図である。
図5図5は、射出成形機の一例を示す断面図である。
図6図6は、射出成形機の一例を示す平面図である。
図7図7は、図6のノズルを後退させる工程の一例を示す平面図である。
図8図8は、図7のノズルを回転工具で回転させる工程の一例を示す図である。
図9図9は、シリンダからスクリュを抜き取る工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
図1を参照して、一実施形態に係る回転工具10について説明する。回転工具10は、回転対象物90を回転させるのに用いられる。回転対象物90は、水平な回転中心線を中心に回転する。回転対象物90はネジを有し、そのネジは固定物95のネジ穴にねじ込まれる。なお、ネジとネジ穴の配置は逆でもよい。回転対象物90がネジ穴を有し、固定物95がネジを有してもよい。
【0012】
ネジは、時計回りに回転させることで締まる正ネジと、反時計回りに回転させることで締まる逆ネジのどちらでもよい。回転工具10は、ネジを締めるのと、ネジを緩めるのとの少なくとも一方に使用され、両方に使用されてもよい。ネジを締めるための回転工具10と、ネジを緩めるための回転工具10とが、別々に用意されてもよい。
【0013】
回転対象物90は、回転工具10と噛み合う形状の外周91を有する。外周91の形状は、例えば多角形であり、好ましくは正多角形である。外周91の形状が回転中心線を中心に回転対称な形状であれば、回転工具10と回転対象物90を噛み合わせるときに後述する第1の柄30と第2の柄40を所望の向きに調整しやすい。
【0014】
但し、回転対象物90の外周91は、回転工具10と噛み合う形状であればよい。図示しないが、例えば、回転対象物90の外周91は、円周の一部に凹部又は凸部を設けた形状、例えば歯車の形状であってもよい。凹部又は凸部は、好ましくは円周に沿って等ピッチで複数設けられる。
【0015】
回転工具10は、回転対象物90の外周91と噛み合う回転部20と、回転部20から径方向外方に突出する第1の柄30と、回転部20から径方向外方に突出する第2の柄40と、を備える。第1の柄30と第2の柄40は、回転部20と一体化されている。第1の柄30と第2の柄40に対して力を加えることで、回転部20と共に回転対象物90が回転させられる。
【0016】
回転部20は、回転対象物90の外周91と噛み合う。例えば、回転部20は、リング状であって、孔21を有する。孔21の形状は、例えば多角形である。孔21の角の数は、回転対象物90の外周91の角の数のn倍(nは1以上の整数)である。図1においてnは2である。孔21は、好ましくは回転中心線を中心に回転対称な形状を有する。
【0017】
回転部20は、上記の通り、リング状の形状を有する。これにより、回転部20を回転させる際に、回転中心線と直交する方向に回転対象物90から回転部20が抜けるのを防止できる。なお、回転部20は、回転対象物90の外周91と噛み合えばよく、リング状の形状を有しなくてもよい。例えば、回転部20は、C字状の形状を有してもよい。
【0018】
第1の柄30と第2の柄40は、回転部20の回転方向に間隔をおいて設けられる。第1の柄30と第2の柄40は、回転トルクの偏りに起因する回転部20の芯ブレを抑制すべく、回転部20の回転方向に等ピッチ(ここでは180°ピッチ)で設けられる。なお、芯ブレの問題がない範囲で、第1の柄30と第2の柄40は回転部20の回転方向に不等ピッチで設けられてもよい。
【0019】
第1の柄30に対して加える力は、第1の柄30の長手方向(図1において左右方向)に直交する第1成分を有する。第1成分は、回転トルクに寄与する。第1の柄30に対して加える力は、第1の柄30の長手方向に沿う第2成分を有しないことが好ましい。第2成分は、回転トルクに寄与しないので無駄になるだけではなく、回転部20の芯ブレを引き起こしうる。
【0020】
第1の柄30に対して加える力が鉛直方向成分のみを有し、水平方向成分を有しない場合、回転部20と回転対象物90が噛み合う状態で第1の柄30は水平に配置されることが好ましい。第1の柄30に対して加える力の全てを回転トルクに利用できる。また、回転部20の芯ブレを抑制できる。
【0021】
同様に、第2の柄40に対して加える力は、第2の柄40の長手方向(図1において左右方向)に直交する成分のみを有することが好ましい。第2の柄40をハンマーで真下に叩く場合、回転部20と回転対象物90が噛み合う状態で第2の柄40は水平に配置されることが好ましい。第2の柄40に対して加える力の全てを回転トルクに利用できる。また、回転部20の芯ブレを抑制できる。機械で力を加える第1の柄30と、ハンマーで叩く第2の柄40は、回転部20の回転方向に120°~240°の間隔で設けられることが好ましい。
【0022】
第1の柄30は、鉛直方向上向き、鉛直方向下向き又は水平方向の力(図1では鉛直方向上向きの力)を加えることで、回転部20を第1の方向(図1では反時計回りの方向)に回転させる力を加える。第2の柄40は、第1の柄30とは異なる方向の力であって、鉛直方向下向き、鉛直方向上向き又は水平方向の力(図1では鉛直方向下向きの力)を加えることで、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。
【0023】
本明細書において、力を鉛直方向成分と水平方向成分に分解したときに鉛直方向成分が水平方向成分よりも大きい力を、鉛直方向の力という。鉛直方向の力のうち鉛直方向成分が上向きの力を鉛直方向上向きの力といい、鉛直方向の力のうち鉛直方向成分が下向きの力を鉛直方向下向きの力という。
【0024】
また、本明細書において、力を鉛直方向成分と水平方向成分に分解したときに水平方向成分が鉛直方向成分よりも大きい力を、水平方向の力という。水平方向の力のうち回転部20に正対したときに水平方向成分が左向きの力を水平方向左向きの力といい、水平方向の力のうち回転部20に正対したときに水平方向成分が右向きの力を水平方向右向きの力という。
【0025】
力は、鉛直方向上向きの力と、鉛直方向下向きの力と、水平方向左向きの力と、水平方向右向きの力の4つの力のいずれか1つに分類される。異なる方向の力とは、例えば、上記4つの力のうちのいずれか1つ(例えば鉛直方向上向きの力)と、残り3つの力(例えば鉛直方向下向きの力と水平方向左向きの力と水平方向右向きの力)のうちのいずれか1つとの組み合わせのことである。
【0026】
本実施形態によれば、第1の柄30と第2の柄40の両方に対して、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。複数の力の合力で回転部20を第1の方向に回転でき、回転力を向上できる。また、複数の手段で回転部20を第1の方向に回転でき、回転力を向上できる。第1の方向は、ネジを締める方向と、ネジを緩める方向とのどちらでもよい。
【0027】
また、本実施形態によれば、複数の手段を回転対象物90の周囲に分散して配置でき、作業性を向上できる。複数の手段は、例えば作業員と機械の組み合わせである。作業員と機械を分散して配置でき、作業性を向上できる。また、作業員がハンマーで与える回転力を小さくすることができる。なお、機械を配置せずに複数の作業員を配置することも、作業員を配置せずに複数の機械を配置することも可能である。
【0028】
さらに、本実施形態によれば、第1の柄30に対して加える力の方向と、第2の柄40に対して加える力の方向とが異なる。力を加える方向が異なる複数の手段を用いて回転力を向上できる。例えば、クレーン96とジャッキは、鉛直方向上向きの力を生じさせる。重りは、鉛直方向下向きの力を生じさせるが、滑車で力の方向を変更可能である。ウインチは、水平方向の力を生じさせるが、滑車で力の方向を変更可能である。人力は、任意の方向に力を生じさせることが可能である。但し、ハンマーは重力に逆らわずに上から下に振り下ろすことが好ましい。従って、ハンマーで叩く力は、鉛直下向きの力を発生させるのに適している。
【0029】
第1の柄30と第2の柄40に対して加える力の組み合わせは、適宜選択可能である。例えば、第1の柄30に対して機械又は重りの力(図1では機械の力)を加えると共に、第2の柄40に対して人力を加えることが可能である。機械とは、2つ以上の抵抗物を組み合わせて互いに相関的運動を行う工作物をいう。抵抗物とは、互いに拘束しながら運動する物体である。機械は、例えばクレーン96、ジャッキ又はウインチを含む。
【0030】
クレーン96は、例えば天井クレーンであって、第1の柄30を吊り上げる。ジャッキは、第1の柄30の下方に設置され、第1の柄30を押し上げる。ウインチは、ワイヤー又はロープを介して第1の柄30を所定の方向に引っ張る。重りは、ウインチと同様に、ワイヤー又はロープを介して第1の柄30を所定の方向に引っ張る。
【0031】
機械は、人力によって動かす物を含む。ジャッキは、人力によって動かす物と、電動で動かす物のどちらでもよい。ウインチも同様である。ウインチは、手動ハンドルまたはモータの回転力を減速機で増幅したうえで回転ドラムに伝達し、回転ドラムにワイヤー又はロープを巻き取る機構である。
【0032】
ウインチと重りは、ワイヤー又はロープの向きを滑車で変更することで、第1の柄30を引っ張る方向を調整可能である。ウインチと重りは、第1の柄30を鉛直方向上向きに引っ張ることも、第1の柄30を鉛直方向下向きに引っ張ることも、どちらも可能である。なお、ウインチと重りは、柄を水平方向に引っ張ることも可能である。
【0033】
第1の柄30は、図1に示すように、機械又は重りの力を第1の柄30に伝える伝達部を有してもよい。伝達部は、例えばワイヤー98を通す孔31を含む。ワイヤー98は、クレーン96のフック97に掛ける物であるが、ウインチ又は重りで引っ張る物であってもよい。いずれの場合も、ワイヤー98の代わりに、ロープが用いられてもよい。
【0034】
孔31は、第1の柄30の側面に設けられる。孔31は、回転部20の回転中心線と平行に、第1の柄30を貫通して形成される。孔31の代わりに、図示しないフックが第1の柄30の上面に設けられてもよい。フックを設ければ、孔31の形成に起因する強度低下を防止でき、第1の柄30の耐久性を向上できる。
【0035】
第1の柄30は、機械又は重りの力を第1の柄30に伝える伝達部を、第1の柄30の長手方向に間隔をおいて複数有してもよい。例えば、孔31が、第1の柄30の長手方向に間隔をおいて複数設けられる。これにより、周辺部材と干渉しないように、機械又は重りの力の伝達経路を選択できる。例えば、クレーン96と周辺部材が干渉しないように、ワイヤー98を通す孔31を選択できる。
【0036】
第1の柄30と第2の柄40は同じ長さでも異なる長さでもよいが、周辺部材との干渉を考慮し、第1の柄30と第2の柄40は異なる長さであってよい。本実施形態では第1の柄30が第2の柄40よりも長い。柄の長さに応じて、柄に対して力を加える手段が適宜選択される。
【0037】
長い第1の柄30に対して機械又は重りの力を加えると共に、短い第2の柄40に対して人力を加えることが好ましい。機械は、クレーン96、ジャッキ又はウインチを含む。人力は、手で押す力、手で引く力、又はハンマーで叩く力を含む。機械又は重りの力は、人力に比べて、長時間にわたって安定して発生できる。
【0038】
瞬間的な力(例えばハンマーで叩く力)は、衝撃が生じるので、柄にかかる瞬間的な負荷が大きい。また、柄の長さが長いほど、柄の耐久性が低い。長い第1の柄30に対して安定した力を加えると共に、短い第2の柄40に対して瞬間的な力を加えることで、第1の柄30と第2の柄40が折れるのを防止できる。
【0039】
機械又は重りの力は、人力よりも大きい。力が大きいほど、また、力の作用点と回転中心線との距離が長いほど、回転力(回転トルク)が大きい。長い第1の柄30に対して大きいが安定した機械の力を加えると共に、短い第2の柄40に対して小さな人力で押すまたは引く力を加えることで、瞬間的な力を除いた安定した回転力を向上できる。
【0040】
図2に示すように、短い第2の柄40には、延長軸41が分離可能に取り付けられてもよい。延長軸41は、第2の柄40から、回転部20の径方向外方に突出する、延長軸41によって柄の長さを実質的に長くでき、回転力を大きくできる。延長軸41は、例えばパイプを含む。延長軸41は、状況に応じて、周辺部材との干渉を避けるべく分離可能に設けられる。
【0041】
次に、上記の回転工具10を用いた回転方法について説明する。回転方法は、回転工具10を用いて回転対象物90を回転させる回転工程を有する。回転工程は、回転工具10の回転部20と回転対象物90を噛み合わせた状態で、第1の柄30と第2の柄40に対して回転部20を第1の方向に回転させる力を加えることを有する。回転工程は、第1の工程と第2の工程とを有する。第1の工程は、第1の柄30に対して、鉛直方向上向き、鉛直方向下向き又は水平方向の力を加えることで、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。第2の工程は、第2の柄40に対して、第1の柄30とは異なる方向の力であって、鉛直方向下向き、鉛直方向上向き又は水平方向の力を加えることで、回転部20を第1の方向に回転させる。
【0042】
次に、図3を参照して、第2変形例に係る回転工具10について説明する。以下、主に上記実施形態及び上記第1変形例との相違点について説明する。回転工具10は、回転部20と第1の柄30と第2の柄40とに加えて、第3の柄50を備える。第3の柄50は、第1の柄30と第2の柄40と同様に、回転部20から径方向外方に突出する。
【0043】
第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50は、この順番で、回転部20の回転方向に間隔をおいて設けられる。第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50は、回転トルクの偏りに起因する回転部20の芯ブレを抑制すべく、回転部20の回転方向に等ピッチ(ここでは120°ピッチ)で設けられる。なお、芯ブレの問題がない範囲で、第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50は回転部20の回転方向に不等ピッチで設けられてもよい。
【0044】
機械で力を加える第1の柄30と、ハンマーで叩く第2の柄40は、上記の通り、回転部20の回転方向に120°~240°の間隔で設けられることが好ましい。また、人力で押す又は引くことが想定される第3の柄50は、第2の柄40をハンマーで叩く方向の延長線上には無いことが好ましい。それゆえ、第2の柄40と第3の柄50は、回転部20の回転方向に120°以上の間隔で設けられることが好ましい。
【0045】
第1の柄30は、鉛直方向上向きの力を加えることで、回転部20を第1の方向(図3では反時計回りの方向)に回転させる力を加える。第2の柄40は、鉛直方向下向きの力(図3では鉛直方向斜め下向きの力)を加えることで、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。第3の柄50は、水平方向の力を加えることで回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。
【0046】
回転部20と回転対象物90が噛み合う状態で、第3の柄50は回転部20から真下に突出している。この場合、第3の柄50は、建物の床面または周辺部材との干渉を防止すべく、第1の柄30と第2の柄40よりも短くてよい。回転部20の真下に周辺部材がなく、回転部20と建物の床面との距離が十分に長い場合、第3の柄50には、図3に破線で示すように延長軸51が分離可能に取り付けられてもよい。
【0047】
延長軸51は、第3の柄50から、回転部20の径方向外方に突出する、延長軸51によって柄の長さを実質的に長くでき、回転力を大きくできる。延長軸51は、例えばパイプを含む。延長軸51は、状況に応じて、建物の床面又は周辺部材との干渉を避けるべく分離可能に設けられる。
【0048】
本変形例によれば、第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50に対して、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。柄の本数を増やすことで、回転力をより向上できる。第1の方向は、ネジを締める方向と、ネジを緩める方向とのどちらでもよい。また、本変形例によれば、柄の本数を増やすことで、作業性をより向上できる。さらに、本変形例によれば、第1の柄30に対して加える力の方向と、第2の柄40に対して加える力の方向と、第3の柄50に対して加える力の方向とが異なる。力を加える方向が異なる複数の手段を用いて回転力を向上できる。
【0049】
次に、図4を参照して、第3変形例に係る回転工具10について説明する。以下、主に上記実施形態、上記第1変形例及び上記第2変形例との相違点について説明する。回転工具10は、回転部20と第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50とに加えて、第4の柄60を備える。第4の柄60は、第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50と同様に、回転部20から径方向外方に突出する。
【0050】
第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50と第4の柄60は、この順番で、回転部20の回転方向に間隔をおいて設けられる。第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50と第4の柄60は、回転トルクの偏りに起因する回転部20の芯ブレを抑制すべく、回転部20の回転方向に等ピッチ(ここでは90°ピッチ)で設けられる。なお、芯ブレの問題がない範囲で、第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50と第4の柄60は回転部20の回転方向に不等ピッチで設けられてもよい。
【0051】
第1の柄30は、鉛直方向上向きの力を加えることで、回転部20を第1の方向(図4では反時計回りの方向)に回転させる力を加える。第2の柄40は、水平方向の力を加えることで回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。第3の柄50は、鉛直方向下向きの力を加えることで、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。第4の柄60は、第2の柄40とは逆向きの力であって水平方向の力を加えることで回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。
【0052】
回転部20と回転対象物90が噛み合う状態で、第2の柄40は回転部20から真上に突出しており、第4の柄60は回転部20から真下に突出している。この場合、第2の柄40と第4の柄60は、建物の床面または周辺部材との干渉を防止すべく、第1の柄30と第3の柄50よりも短くてよい。
【0053】
回転部20の真下に周辺部材がなく、回転部20と建物の床面との距離が十分に長い場合、第4の柄60には、延長軸61が分離可能に取り付けられてもよい。延長軸61は、第4の柄60から、回転部20の径方向外方に突出する、延長軸61によって柄の長さを実質的に長くでき、回転力を大きくできる。延長軸61は、例えばパイプを含む。延長軸61は、状況に応じて、建物の床面又は周辺部材との干渉を避けるべく分離可能に設けられる。
【0054】
本変形例によれば、第1の柄30と第2の柄40と第3の柄50と第4の柄60に対して、回転部20を第1の方向に回転させる力を加える。柄の本数を増やすことで、回転力をより向上できる。第1の方向は、ネジを締める方向と、ネジを緩める方向とのどちらでもよい。また、本変形例によれば、柄の本数を増やすことで、作業性をより向上できる。さらに、本変形例によれば、第1の柄30に対して加える力の方向と、第2の柄40に対して加える力の方向と、第3の柄50に対して加える力の方向と、第4の柄60に対して加える力の方向とが異なる。力を加える方向が異なる複数の手段を用いて回転力を向上できる。
【0055】
次に、図5図7を参照して、射出成形機100の一例について説明する。射出成形機100のノズル122が回転対象物90の一例であり、射出成形機100のシリンダ121が固定物95の一例である。ノズル122のネジは、シリンダ121のネジ穴にねじ込まれる。ノズル122の回転は、回転工具10を用いて行う。図8を参照してノズル122の回転について説明する前に、図5図7を参照して、射出成形機100について説明する。なお、図5図9において、X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。
【0056】
射出成形機100は、金型装置190を開閉する型締装置110と、金型装置190に樹脂などの成形材料を射出する射出装置120と、金型装置190に対し射出装置120を進退させる移動装置130と、射出成形機100の各構成要素を支持するフレーム140とを有する。
【0057】
型締装置110は、金型装置190の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置190は、固定金型191と可動金型192とを含む。型締装置110は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向(X軸方向)である。型締装置110は、固定金型191が取付けられる固定プラテン111と、可動金型192が取付けられる可動プラテン112と、を有する。
【0058】
固定プラテン111は、フレーム140に対し固定される。固定プラテン111における可動プラテン112との対向面に固定金型191が取付けられる。可動プラテン112は、フレーム140に対し型開閉方向に移動自在に配置される。可動プラテン112における固定プラテン111との対向面に可動金型192が取付けられる。
【0059】
型締装置110は、制御装置による制御下で、固定プラテン111に対して可動プラテン112を進退させることで、金型装置190の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。型締中に、可動金型192と固定金型191との間にキャビティ空間が形成され、射出装置120がキャビティ空間に液状の成形材料を充填する。充填した成形材料を固化することで、成形品が得られる。
【0060】
射出装置120はスライドベース141に設置され、スライドベース141はフレーム140に対し進退自在に配置される。射出装置120は、金型装置190に対し進退自在に配置される。射出装置120は、金型装置190にタッチし、金型装置190内のキャビティ空間に成形材料を充填する。
【0061】
射出装置120は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ121と、シリンダ121の前端部に設けられるノズル122と、シリンダ121の後端部が取り付けられる射出フレーム123と、を有する。射出装置120は、シリンダ121の内部で溶融した成形材料を、ノズル122から金型装置190に充填する。
【0062】
移動装置130は、金型装置190に対し射出装置120を進退させる。また、移動装置130は、金型装置190に対しノズル122を押し付ける。移動装置130は、例えば油圧シリンダ131を有する。油圧シリンダ131は、ノズル122を中心に対称に複数本(例えば2本)設置されてよい。
【0063】
油圧シリンダ131は、射出フレーム123に固定されるシリンダチューブ132と、シリンダチューブ132から前方に突出するピストンロッド133とを含む。ピストンロッド133の前端には、フランジ135が設けられる。フランジ135は、ボルトなどで固定プラテン111に締結される。ピストンロッド133の後端には、ピストン134が設けられる。ピストン134は、シリンダチューブ132の内部を、前室132aと後室132bとに区画する。
【0064】
シリンダチューブ132の前室132aに油を供給することで、射出装置120が前方に押される。射出装置120が前進され、ノズル122が固定プラテン111の貫通孔111aに入り込み、固定金型191に押し付けられる(図6参照)。一方、シリンダチューブ132の後室132bに油を供給することで、射出装置120が後方に押される。射出装置120が後退され、ノズル122が固定金型191から離隔され、固定プラテン111の貫通孔111aから抜き出される(図7参照)。
【0065】
次に、図8を参照して、回転工具10を用いたノズル122の回転の一例について説明する。ノズル122の回転は、図8に示すように、ノズル122を固定プラテン111よりも後退させ、且つ固定プラテン111からフランジ135を取外し、フランジ135をノズル122よりも後退させた状態で行われる。
【0066】
作業員は、回転工具10の回転部20をノズル122の根元に掛け、回転部20とノズル122を噛み合わせた状態で、第1の柄30と第2の柄40に対して力を加える。加える力の方向は、ノズル122を緩める方向であるが、ノズル122を締める方向であってもよい。ノズル122を緩める時と、ノズル122を締める時とで、第1の柄30と第2の柄40の配置が逆であってもよい。
【0067】
ノズル122は、シリンダ121の前端部に取り付けられる。シリンダ121の後端部が、射出フレーム123に取り付けられる。シリンダ121は、射出フレーム123によって片持ち支持される。それゆえ、ノズル122の回転によってシリンダ121に曲げ応力が加わらないように、ノズル122の芯ブレを抑制することが重要である。回転工具10を使用することで、上記の通り、ノズル122の芯ブレを抑制することが可能である。
【0068】
ノズル122をシリンダ121から取り外す工程(図8参照)の後、シリンダ121からスクリュ124を抜き取る工程(図9参照)が行われてもよい。スクリュ124を抜き取る工程は、先ずスライドベース141に対して射出フレーム123を固定する不図示のボルトとナットを取り外し、射出フレーム123を旋回する。この状態で、シリンダ121からスクリュ124を抜き取る。
【0069】
なお、ノズル122をシリンダ121から取り外す工程は、射出フレーム123を旋回する前に行われ、スライドベース141に対して射出フレーム123を固定した状態(シリンダ121が型開閉方向(X軸方向)に平行な状態)で行われる(図8参照)。これにより、シリンダ121を安定した状態で、シリンダ121からノズル122を取り外すことができる。
【0070】
以上、本発明に係る回転方法及び回転工具について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0071】
10 回転工具
20 回転部
30 第1の柄
40 第2の柄
90 回転対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9