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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029470
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】操作制御システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0354 20130101AFI20240228BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20240228BHJP
   G05G 1/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06F3/0354 443
G05G5/03 B
G05G1/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131752
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】分部 暁朗
(72)【発明者】
【氏名】伊夫伎 啓之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 充典
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敬一
【テーマコード(参考)】
3J070
5B087
【Fターム(参考)】
3J070AA14
3J070BA19
3J070CC71
3J070CD31
3J070DA42
3J070DA61
5B087AA09
5B087AB12
5B087BB08
5B087BB12
(57)【要約】
【課題】コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることが可能な操作制御システムを提供する。
【解決手段】マウス制御システム1は、PC20、PC20と接続されホイールユニット11を含むマウス10を備える。ホイールユニット11は、ホイール本体部12f、MR流体保持部11g、回転検出部13a、方向検出部13b、コイル12d、コイル制御部12cを有する。PC20の出力トルク決定部23aは、回転検出部13aと方向検出部13bの検出結果に応じて、ホイール本体部12fの出力トルクを決定する。コイル制御部12cは、出力トルク決定部23aにおける決定に従って、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力して、コイル12dに流れる電流を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作制御装置と、前記操作制御装置と接続されホイールユニットを含む操作装置と、を備えた操作制御システムであって、
前記操作装置に含まれる前記ホイールユニットは、
正転・逆転方向に回転可能な状態で前記操作装置に装填されるホイール本体部と、
外部から付与された磁場によって、前記ホイール本体部に対して回転抵抗を付与するブレーキ機構と、
前記ホイール本体部の回転方向における位置を検出する回転検出部と、
前記ホイール本体部の回転方向を検出する方向検出部と、
磁場を発生させるコイルと、
前記回転検出部および前記方向検出部における検出結果に応じて、前記ホイール本体部に対する回転抵抗を変化させるように前記コイルに流れる電流を制御することで、前記ホイール本体部を回転方向に回転させた際に所定の回転角度ごとにクリック感を生じさせるコイル制御部と、
を有し、
前記操作制御装置は、
前記回転検出部および前記方向検出部における検出結果に応じて、前記ホイール本体部の出力トルクを決定する出力トルク決定部を有し、
前記コイル制御部は、前記出力トルク決定部における決定に従って、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力して、前記コイルに流れる電流を制御する、
操作制御システム。
【請求項2】
前記操作制御装置は、前記ホイール本体部の出力トルクに応じた複数のパルス波形のデータを保存する記憶部を、さらに有し、
前記出力トルク決定部は、前記回転検出部および前記方向検出部における検出結果に応じた1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転した前記パルス波形を読み出して、前記コイル制御部へ出力する、
請求項1に記載の操作制御システム。
【請求項3】
前記操作制御装置は、前記操作装置との間で通信を行う第1通信部を、さらに有し、
前記操作装置は、前記第1通信部との間で通信を行う第2通信部を、さらに有している、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項4】
前記操作制御装置は、前記出力トルク決定部において決定された出力トルクに対応するプラス側およびマイナス側のいずれか一方の波形からなる前記パルス波形を、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互になるように反転させ、前記コイル制御部へ出力する位相反転部を、さらに有している、
請求項1に記載の操作制御システム。
【請求項5】
前記コイル制御部は、前記パルス波形に基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項6】
前記回転検出部は、正転方向への回転用に第1分解能、逆転方向への回転用に前記第1分解能よりも低い第2分解能、がそれぞれ設定されている、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項7】
前記回転検出部は、正転方向への回転時における回転位置を検出する第1位相と、逆転方向への回転時における回転位置を検出する第2位相とが互いにズレた位置に設定されている、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項8】
前記コイル制御部は、前記回転検出部および前記方向検出部における検出結果に応じて、前記ホイール本体部が正転方向に回転している場合と逆転方向に回転している場合とで、前記ホイール本体部に対する回転抵抗を変化させるように前記コイルに流れる電流を制御する、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項9】
前記コイル制御部は、前記方向検出部において検出される前記ホイール本体部の回転方向に応じて、前記ホイール本体部のクリック感が異なる感覚になるように、前記コイルに流れる電流を制御する、
請求項8に記載の操作制御システム。
【請求項10】
前記コイル制御部は、前記方向検出部における検出結果が正転方向である場合には、第1ピッチでクリック感が付与され、前記方向検出部における検出結果が逆転方向である場合には、前記第1ピッチよりも広い第2ピッチでクリック感が付与されるように、前記コイルに流れる電流を制御する、
請求項9に記載の操作制御システム。
【請求項11】
前記ブレーキ機構は、電流が流れる前記コイルから付与される磁場によって粘性が変化する磁気粘性流体を保持する磁気粘性流体保持部を、有し、前記磁気粘性流体の粘性の変化に応じて、前記ホイール本体部に対する回転抵抗の大きさを変化させる、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【請求項12】
前記操作装置は、マウスである、
請求項1または2に記載の操作制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウス、キーボード等の操作装置と、操作装置に接続された操作制御装置とを備えた操作制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PC等に各種操作入力を行うマウスやキーボード等の操作装置に、回転操作によって入力を行うホイールユニットが装填された構成が採用されている。
また、近年、ホイールユニットが装填されたマウス等の操作装置は、職場や家庭に設置されたPC等を操作する操作装置としての用途だけでなく、e-Sports等のゲームを操作する操作装置としても使用されており、より繊細な操作感が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造が簡単で低コストなスクロールホイールの段数切替え機能を有するマウス装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-068411号公報(特許第6981632号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のマウス装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたマウス装置では、スクロールホイールの段数切替え機能を持たせるために、異なる溝数のコード溝を有する複数のモジュールを備えており、このモジュールを切り替えることで、スクロールホイールの段数を切り替えている。
よって、このマウス装置の構成では、使用者の好みの使用感になるように回転抵抗やクリック感等の各種設定を変化させたりすることは困難であった。
【0006】
また、ホイールユニットの回転抵抗を変化させる手段として、付与される磁力の大きさに応じて粘性が変化する磁気粘性流体(MR(Magneto-Rheological)流体)を回転軸の周囲に封入し、磁気粘性流体の粘度変化に応じてホイールユニットの操作感(回転抵抗)を変化させるブレーキ機構が考えられる。
このような磁気粘性流体を用いたブレーキ機構を備えたホイールユニットでは、例えば、通常の24クリック/回転から、48クリック/回転や96クリック/回転のように、細かいクリック感に設定することができる。
【0007】
しかしながら、このような構成において、ホイールユニットを高速で回転させると、クリック感を生じさせるためのON/OFFの切り替え時間が極端に短くなってしまい、コイルの電流が十分にピークおよび/またはゼロに到達しない電流波形となる。この場合、1クリック毎にコイルに流れる電流がゼロにならない波形となってしまうため、コイルには常に電流が流れて磁場を発生させ、オフセットトルクが発生する。このため、ホイールユニットを高速で回転させた際には、使用者の意図しない回転負荷が生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることが可能な操作制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る操作制御システムは、操作制御装置と、操作制御装置と接続されホイールユニットを含む操作装置と、を備えた操作制御システムであって、操作装置に含まれるホイールユニットは、ホイール本体部と、ブレーキ機構と、回転検出部と、方向検出部と、コイルと、コイル制御部と、を有している。ホイール本体部は、正転・逆転方向に回転可能な状態で操作装置に装填される。ブレーキ機構は、外部から付与された磁場によって、ホイール本体部に対して回転抵抗を付与する。回転検出部は、ホイール本体部の回転方向における位置を検出する。方向検出部は、ホイール本体部の回転方向を検出する。コイルは、磁場を発生させる。コイル制御部は、回転検出部および方向検出部における検出結果に応じて、ホイール本体部に対する回転抵抗を変化させるようにコイルに流れる電流を制御することで、ホイール本体部を回転方向に回転させた際に所定の回転角度ごとにクリック感を生じさせる。操作制御装置は、出力トルク決定部を有している。出力トルク決定部は、回転検出部および方向検出部における検出結果に応じて、ホイール本体部の出力トルクを決定する。コイル制御部は、出力トルク決定部における決定に従って、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力して、コイルに流れる電流を制御する。
【0010】
ここでは、PC(Personal Computer)等の操作制御装置と、操作制御装置と接続されブレーキ機構を含むホイールユニットを有するマウス等の操作装置とを備えた操作制御システムにおいて、操作制御装置が、出力トルク決定部における決定に従って、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力して、操作装置側のコイルに流れる電流が制御される。
【0011】
ここで、ホイールユニットが装填される操作装置は、例えば、マウス、キーボード、各種コントロールパネル等を含む。
操作制御装置は、例えば、無線あるいは有線によって操作装置に接続されたPCであって、マウス等の操作装置を制御する。
ホイールユニットは、回転操作によって操作入力を行う操作部材であって、例えば、回転操作に加えて、押圧によって操作入力が行われる構成であってもよい。
【0012】
ブレーキ機構は、ホイールユニットのホイール本体部の回転抵抗を付与する機構であって、例えば、コイルに流れる電流の大きさ・方向に応じて、ホイールユニットの回転抵抗を変化させる。
これにより、コイル制御部は、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力してコイルに流れる電流を制御することで、確実に、1クリック毎にゼロ点を通過したパルス波形に基づいて制御を行うことができる。
【0013】
よって、使用者がホイール本体部を高速で回転させた場合でも、1クリック毎の時間間隔が短すぎてパルス波形がゼロ点まで戻りきらない波形になってしまうことを防止することができる。
この結果、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【0014】
第2の発明に係る操作制御システムは、第1の発明に係る操作制御システムであって、操作制御装置は、ホイール本体部の出力トルクに応じた複数のパルス波形のデータを保存する記憶部を、さらに有している。出力トルク決定部は、回転検出部および方向検出部における検出結果に応じた1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を読み出して、コイル制御部へ出力する。
【0015】
これにより、操作制御装置側において、出力トルク決定部が、記憶部に保存された複数のパルス波形の中から、ホイール本体部の出力トルクに応じた1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を読み出して、ホイール本体部の出力トルクを決定することができる。
よって、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【0016】
第3の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、操作制御装置は、操作装置との間で通信を行う第1通信部を、さらに有している。操作装置は、第1通信部との間で通信を行う第2通信部を、さらに有している。
これにより、PC等の操作制御装置とマウス等の操作装置との間において、第1通信部と第2通信部とを介して互いに通信することで、操作装置側からホイールユニットの出力を受信して、操作制御装置が、ホイールユニットの回転抵抗を制御することができる。
【0017】
第4の発明に係る操作制御システムは、第1の発明に係る操作制御システムであって、操作制御装置は、出力トルク決定部において決定された出力トルクに対応するプラス側およびマイナス側のいずれか一方の波形からなるパルス波形を、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互になるように反転させ、コイル制御部へ出力する位相反転部を、さらに有している。
【0018】
これにより、例えば、出力トルク決定部において決定された出力トルクに対応するとして読み出されたパルス波形が、プラス側およびマイナス側のいずれか一方の波形からなるパルス波形であった場合には、位相反転部が、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互になるようにパルス波形の一部を反転させ、コイル制御部へ出力することで、ホイール本体部を高速回転させた場合でも、意図しない回転抵抗が発生することを回避して使用感を向上させることができる。
【0019】
第5の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、コイル制御部は、パルス波形に基づいて、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。
これにより、例えば、ホイール本体部の回転時における回転抵抗の大きさ、クリック感の間隔等を容易に制御することができる。
【0020】
第6の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、回転検出部は、正転方向への回転用に第1分解能、逆転方向への回転用に第1分解能よりも低い第2分解能、がそれぞれ設定されている。
これにより、例えば、シューティングゲーム等に使用される際に、正転時に銃を連射する設定、逆転時に武器を交換する設定である場合において、正転時は逆転時よりも高い分解能で操作を行うことができる。一方、逆転時には、正転時よりも低い分解能で操作を行うことで、正転から意図しない逆転操作があった場合でも、逆転操作による誤った入力を出力しないように制御することができる。
【0021】
第7の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、回転検出部は、正転方向への回転時における回転位置を検出する第1位相と、逆転方向への回転時における回転位置を検出する第2位相とが互いにズレた位置に設定されている。
これにより、例えば、シューティングゲーム等に使用される際に、正転時に銃を連射する設定、逆転時に武器を交換する設定である場合において、逆転方向における回転位置の検出位相が正転側の検出位相とずれて設定されているため、正転から意図しない逆転操作があった場合でも、逆転操作による誤った入力を出力しないように制御することができる。
【0022】
第8の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、コイル制御部は、回転検出部および方向検出部における検出結果に応じて、ホイール本体部が正転方向に回転している場合と逆転方向に回転している場合とで、ホイール本体部に対する回転抵抗を変化させるようにコイルに流れる電流を制御する。
これにより、例えば、ホイールユニットの正転時には、クリック感を生じさせる間隔を狭く、逆転時には、クリック感を生じさせる間隔を広くする、あるいは、正転時には、ホイールユニットの回転抵抗を小さく、逆転時には、ホイールユニットの回転抵抗を大きくする等の設定をすることができる。
【0023】
第9の発明に係る操作制御システムは、第8の発明に係る操作制御システムであって、コイル制御部は、方向検出部において検出されるホイール本体部の回転方向に応じて、ホイール本体部のクリック感が異なる感覚になるように、コイルに流れる電流を制御する。
これにより、例えば、正転時には、ホイール本体部の回転抵抗が小さく、逆転時には、ホイール本体部の回転抵抗を大きくするパルス波形を用いて、コイルに流れる電流を制御することで、正転時および逆転時におけるクリック感を変化させることができる。
【0024】
第10の発明に係る操作制御システムは、第9の発明に係る操作制御システムであって、コイル制御部は、方向検出部における検出結果が正転方向である場合には、第1ピッチでクリック感が付与され、方向検出部における検出結果が逆転方向である場合には、第1ピッチよりも広い第2ピッチでクリック感が付与されるように、コイルに流れる電流を制御する。
これにより、例えば、正転時には、ホイール本体部に回転抵抗を付与する間隔を短く、逆転時には、ホイール本体部に回転抵抗を付与する間隔を長くするパルス波形を用いて、コイルに流れる電流を制御することで、正転時および逆転時におけるクリック感が付与される間隔を変化させることができる。
【0025】
第11の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、ブレーキ機構は、電流が流れるコイルから付与される磁場によって粘性が変化する磁気粘性流体を保持する磁気粘性流体保持部を、有し、磁気粘性流体の粘性の変化に応じて、ホイール本体部に対する回転抵抗の大きさを変化させる。
【0026】
これにより、コイルに電流を流して、磁気粘性流体保持部に保持された磁気粘性流体(MR(Magneto-Rheological)流体)に対して磁場を付与することで、磁気粘性流体の粘度が高くなって、ホイール本体部の回転抵抗を増加させるように制御することができる。
また、このような磁気粘性流体を用いたブレーキ機構を含む構成であっても、高速回転時に電流波形がゼロに到達しないことに起因する使用者の意図しない回転抵抗が生じてしまうことを回避して、使用感を向上させることができる。
【0027】
第12の発明に係る操作制御システムは、第1または第2の発明に係る操作制御システムであって、操作装置は、マウスである。
これにより、上述したホイールユニットが装填されたマウスを用いることで、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る操作制御システムによれば、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るマウス制御システムの構成を示すシステム全体図。
図2図1のマウス制御システムの構成を示すブロック図。
図3図1のマウス制御システムに含まれるマウスの外観斜視図。
図4】(a),(b),(c)は、図3のマウスの上面図、側面図、底面図。
図5図4(b)のA-A線断面図。
図6】(a)および(b)は、図3のマウスに装填されたホイールユニットの外観図。
図7】(a)は、図6のホイールユニットの側面図。(b)は、(a)のB-B線断面図。
図8図2のマウスに用いられたMR流体の磁場の強さと粘度との関係を示すグラフ。
図9】(a)は、通常モードにおいてホイールユニットの回転時に生じるクリック感を示すイメージ図。(b)は、連射モード(正転時)においてホイールユニットの回転時に生じるクリック感を示すイメージ図。(c)は、武器切替モード(逆転時)においてホイールユニットの回転時に生じるクリック感を示すイメージ図。
図10】(a)は、通常モードにおいてホイールユニットの回転時にクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形を示す図。(b)は、連射モード(正転時)においてホイールユニットの回転時にクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形を示す図。(c)は、武器切替モード(逆転時)においてホイールユニットの回転時にクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形を示す図。(d)は、(c)の検出タイミングが所定時間遅れるように位相をずらしてクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形を示す図。
図11図9(b)の連射モード(正転時)における48click/回転の場合の位置番号1~20のPWM制御の出力デューティ比の割り当てを示す図。
図12図10(a)~図10(d)に示す各モードにおける位置番号1~80のPWM制御の出力デューティ比の割り当てを示す図。
図13】縦軸が目標電圧(%)、横軸が時間(ms)であって、通常速度でホイールユニットを回転させた場合(2回転/s=48click/s=20ms/click)の参考用の波形を示すグラフ。
図14】縦軸が目標電圧(%)、横軸が時間(ms)であって、高速でホイールユニットを回転させた場合(10回転/s=240click/s=4ms/click)の参考用の波形を示すグラフ。
図15】縦軸が目標電圧(%)、横軸が時間(ms)であって、さらに高速でホイールユニットを回転させた場合(20回転/s=480click/s=2ms/click)の参考用の波形を示すグラフ。
図16図1のマウス制御システムで使用されるパルス波形であって、高速でホイールユニットを回転させた場合(10回転/s=240click/s=4ms/click)の1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形の一例を示すグラフ。
図17図1のマウス制御システムで使用されるパルス波形であって、さらに高速でホイールユニットを回転させた場合(20回転/s=480click/s=2ms/click)の1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形の一例を示すグラフ。
図18図3のマウスに含まれるホイールユニットの制御方法(トルク生成処理)の処理の流れを示すフローチャート。
図19図3のマウスに含まれるホイールユニットの制御方法(スクロール検出処理)の処理の流れを示すフローチャート。
図20】本発明の他の実施形態に係るマウス制御システムの構成を示すブロック図。
図21】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係るマウス制御システムに含まれるマウスに装填されるホイールユニットのホイール本体部の内部の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係るマウス制御システム(操作制御システム)1について、図1図19を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0031】
(1)マウス制御システム1の構成
本実施形態に係るマウス制御システム(操作制御システム)1は、例えば、e-Sports等のゲームをするプレイヤからの操作入力を受け付けて、e-Sports等のゲームを行うシステムであって、図1に示すように、マウス(操作装置)10と、PC(Personal Computer)(操作制御装置)20とを備えている。
【0032】
マウス10は、図1に示すように、キーボード20aとともにPC20の前方に配置された状態で、例えば、e-Sports等のゲームのプレイヤの手指によって、主に、回転操作および押下操作が行われる。マウス10は、後述するMR(Magneto-Rheological)流体(磁気粘性流体)12eを用いて、操作者によって回転操作される際のホイール本体部12fの回転抵抗を変化させるホイールユニット11を備えている。
【0033】
なお、マウス10の詳細な構成については、後段にて詳述する。
PC20は、マウス10が接続され、e-Sports等のゲーム等の各種アプリケーションを実行する装置であって、ゲームプログラム、ビジネスプログラム、ドライブシミュレータプログラム等のコンピュータプログラムを実行する。PC20は、図1および図2に示すように、キーボード20aと、通信部(第1通信部)21と、表示部22と、制御部23とを備えている。
【0034】
キーボード20aは、図1に示すように、マウス10と同様に、ゲームのプレイヤ等の操作者からの入力を受け付ける。
通信部(第1通信部)21は、図2に示すように、無線を介して、マウス10側の通信部14と接続されており、マウス10とPC20との間における通信を行う。
表示部22は、図1に示すように、PC20に含まれる液晶表示装置等のモニタであって、図2に示すように、制御部23と接続されており、例えば、ゲームプレイ画面等を表示するように制御される。
【0035】
制御部23は、PC20全体を制御するCPU等のプロセッサであって、図2に示すように、通信部21および表示部22と接続されており、PC20内のメモリ(図示せず)に保存されているゲームプログラム等の各種プログラムを実行する。
また、制御部23は、図2に示すように、出力トルク決定部23aと、記憶部23bとを有している。
【0036】
出力トルク決定部23aは、図2に示すように、マウス10のスクロール検出部13に含まれる回転検出部13aおよび方向検出部13bにおける検出結果を、通信部14,21を介して受信して、ホイール本体部12fの出力トルクを決定する。
記憶部23bは、図2に示すように、出力トルク決定部23aにおいて決定された出力トルクでホイール本体部12fの回転抵抗を変化させるための出力パルス波形のデータ(図10(a)~図10(d)参照)、PWM制御の出力デューティ比(図11および図12参照)、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるパルス波形(図10(a)~図10(d)等参照)等を保存している。
【0037】
本実施形態のマウス制御システム1では、PC20が、マウス10のスクロール検出部13において検出されたホイール本体部12fの回転位置および回転方向を受信して、出力トルク決定部23aが記憶部23bに保存された出力パルス波形のデータを用いてホイール本体部12fの回転抵抗を決定する。そして、PC20から送信された回転抵抗に対応する出力パルス波形に基づいて、後述するマウス10のトルク生成部12において、コイル制御部12cが、コイル12dに流れる電流を制御する。
【0038】
(2)マウス10の構成
マウス10は、図2に示すように、操作者による回転操作を受け付けるホイールユニット11と、通信部(第2通信部)14とを備えている。さらに、マウス10は、図3および図4(a)~図4(c)に示すように、マウス本体10aと、スイッチ10bと、底面10cと、USB差込み口10dと、投光部10eaと、受光部10ebと、スイッチ10fとを有している。
【0039】
マウス本体10aは、マウス10の筐体部分であって、図3図4(a)および図4(b)に示すように、その上面から、ホイールユニット11の一部が突出した状態で、ホイールユニット11を回転可能な状態で支持している。
スイッチ10bは、図3図4(a)および図4(b)に示すように、マウス本体10aの上面におけるホイールユニット11の近傍に配置されている。スイッチ10bは、例えば、通常モードとゲームモードとを切り替える際、あるいは、マウス10の電源のON/OFFを切り替える際に、操作される。
【0040】
底面10cは、図4(b)に示すように、マウス本体10aとともにマウス10の外殻を構成する。
USB差込み口10dは、図3に示すように、マウス10の正面側部に設けられており、主に、マウス10に搭載された二次電池(図示せず)の充電を行うためのUSBケーブルが挿入される。
【0041】
投光部10eaおよび受光部10ebは、図4(c)に示すように、マウス10の底面10cの略中央に設けられており、投光部10eaから照射された赤外光の反射を、受光部10ebにおいて受光することで、マウス10の位置変化を検出する。
スイッチ10fは、図4(c)に示すように、マウス10の底面10cにおける投光部10eaおよび受光部10ebの近傍に設けられており、マウス10の電源をON/OFFする。
【0042】
ホイールユニット11は、図3等に示すように、マウス10のマウス本体10aの上面における前方に設けられており、主に、回転操作および押下操作を受け付ける。ホイールユニット11は、図2に示すように、トルク生成部12と、スクロール検出部13とを備えている。
トルク生成部12は、図2に示すように、コイル制御部12cと、コイル12dと、MR(Magneto-Rheological)流体12eと、ホイール本体部12fと、を有している。
【0043】
コイル制御部12cは、通信部14,21を介して、PC20側の制御部23に設けられた出力トルク決定部23aと接続されており、出力トルク決定部23aにおいて決定された出力トルクによってホイール本体部12fが回転抵抗を受けるように、MR流体12eに対して磁場を発生させるコイル12dに流れる電流を制御する。具体的には、コイル制御部12cは、パルス波形を用いたPWM(Pulse Width Modulation)制御によって、コイル12dに流れる電流を制御する。
【0044】
コイル12dは、MR流体12eが保持されたMR流体保持部(ブレーキ機構)11g(図7(b)参照)の近傍に配置されており、電流が流れることにより、MR流体12eに対して磁場を発生させる。
MR(Magneto-Rheological)流体12eは、主に、ホイールユニット11の回転体(シャフト11e等(図7(b)参照))の摺動部に設けられたMR流体保持部11g(図7(b)参照)の空間内に充填されている。そして、MR流体12eは、コイル12dから付与される磁場の影響を受けて、その形態を変化させることで、ホイール本体部12fの回転提供を変化させる。なお、MR流体12eの特性については、後段にて詳述する。
【0045】
ホイール本体部12fは、ホイールユニット11の回転軸(シャフト11e(図5等参照))と一体化した状態で、マウス本体10a(図5等参照)に対して回転可能な状態で装填されている。そして、ホイール本体部12fは、コイル12dに流れる電流の変化によって生じるMR流体12eの形態の変化によって、回転抵抗の大きさが変化する。特に、ホイール本体部12fの回転位置に応じて回転抵抗が生じるエリアと回転抵抗が生じないエリアとを交互に発生させることで、ホイール本体部12fの回転時にクリック感を生じさせることができる。
【0046】
スクロール検出部13は、図2に示すように、回転検出部13aと、方向検出部13bと、エッジ判定部13cと、を有している。
回転検出部13aは、ホイールユニット11の回転体(ホイール本体部12f等)の回転位置を検出するために設けられており、図2に示すように、ホイール本体部12fの回転方向における位置を検出する。そして、回転検出部13aは、検出したホイール本体部12fの回転方向における位置の情報を、通信部14,21を介して、PC20側の制御部23に含まれる出力トルク決定部23aに送信する。
【0047】
方向検出部13bは、ホイールユニット11の回転体(ホイール本体部12f等)の回転方向(正転・逆転)を検出するために設けられており、図2に示すように、ホイール本体部12fの回転方向を検出する。そして、方向検出部13bは、検出したホイール本体部12fの回転方向の情報を、通信部14,21を介して、PC20側の制御部23に含まれる出力トルク決定部23aに送信する。
【0048】
エッジ判定部13cは、図2に示すように、回転検出部13aと接続されており、回転検出部13aにおいて検出されたホイール本体部12fの回転方向における位置の情報から、後述するホイール本体部12fの回転制御パルスのエッジを検出し、スクロールパルスを出力する。
通信部14は、図2に示すように、PC20側の通信部21と無線を介して接続されており、マウス10とPC20との間において各種データ等の送受信を行う。
【0049】
(3)ホイールユニット11の構造
本実施形態のマウス10は、操作者によって回転操作されると、上述したMR流体12eを用いたブレーキ機構によって、PC20側において、ホイール本体部12fの回転抵抗が所望の大きさになるように制御が行われる。
ホイールユニット11は、マウス10の操作者に回転操作および押下操作が入力されるユニットであって、図5に示すように、アウターホイール(ホイール本体部)11a、インナーホイール(ホイール本体部)11b、中ボタン11c、押下検出レバー11d、シャフト(回転軸)11e、回転検出用マグネット11f、MR流体保持部(磁気粘性流体保持部)(ブレーキ機構)11gおよびシール部材11hを有している。
【0050】
アウターホイール(ホイール本体部)11aは、インナーホイール11bとともにホイール本体部12fを構成する。アウターホイール11aは、図5に示すように、インナーホイール11bとともにシャフト11eと一体化しており、操作者の回転操作によって回転する。
インナーホイール(ホイール本体部)11bは、図5に示すように、アウターホイール11aの内径側に設けられており、アウターホイール11aが操作されるとシャフト11eとともに一体化して回転する。
【0051】
中ボタン11cは、図5に示すように、アウターホイール11aへの押し下げ操作を受け付けるマイクロスイッチであって、押下検出レバー11dに当接した状態で、ホイール本体部12fの側方に設けられている。
押下検出レバー11dは、図5および図6(b)に示すように、ホイール本体部12fの一方の側方から突出するように設けられており、操作者によってアウターホイール11aが押し下げされると、中ボタン11cを押し下げる。また、押下検出レバー11dは、アウターホイール11a、インナーホイール11bおよびシャフト11eを含む回転体に対して、固定側の部材として設けられている。
【0052】
シャフト(回転軸)11eは、図5および図6(a)に示すように、ホイール本体部12fの押下検出レバー11dとは反対側の側面から突出するように設けられており、ホイール本体部12fの回転操作時の回転中心となる。
回転検出用マグネット11fは、図5に示すように、シャフト11eの外周面側に配置された固定側の部材であって、シャフト11eの回転を検出する。
【0053】
MR流体保持部11gは、図7(a)に示すホイールユニット11のB-B線断面図である図7(b)に示すように、ホイール本体部12fの回転機構に含まれる摺動部を含むように形成された空間であって、MR流体12eが封入されている。これにより、MR流体12eは、外部から付与された磁場によって粘度が変化することで、MR流体保持部11gとホイールユニット11の回転体(ホイール本体部12f等)との接触部分(摺動部)において、ホイール本体部12fに対して回転抵抗を変化させることができる。
【0054】
シール部材11hは、例えば、ゴム製のリング部材であって、図7(b)に示すように、MR流体保持部11gに封入されたMR流体12eが外部へ漏れ出さないように設けられている。
ここで、MR流体12eに対して付与された磁場の強さとMR流体12eの粘度の変化について説明する。
【0055】
図8は、磁場を発生させた際に、磁場の大きさと、磁場の大きさに応じて変化するMR流体12eの粘度との関係を示すグラフを示している。
MR流体12eは、水、油等の液体に、直径1~10μmの強磁性体の微粒子を分散させた機能性流体であって、磁場の影響を受けていない状態では、微粒子が液体中に均一に分散している。そして、MR流体12eは、磁場の影響を受けると強磁性体の微粒子が磁化して引きつけ合うことでクラスターを形成し、図8に示すように、磁場が強くなると粘度が高くなる。なお、MR流体12eにおけるクラスターの形成の程度は、コイル12dに流れる電流を制御することにより調整することができる。
【0056】
本実施形態のマウス制御システム1では、ホイールユニット11のコイル制御部12cが、コイル12dに流れる電流を制御してコイル12dから発生する磁場の大きさを制御することで、MR流体12eの粘度を制御することができる。よって、MR流体12eの粘度変化に応じて、ホイールユニット11の回転抵抗の大きさを制御することができる。
この結果、例えば、e-Sports等のゲームのプレイヤが操作者である場合において、プレイヤごとに繊細な操作感を実現可能なホイールユニット11が装填されたマウス10を含むマウス制御システム1を提供することができる。
【0057】
特に、本実施形態のホイールユニット11が装填されたマウス10を含むマウス制御システム1では、例えば、ゲームのプレイヤが複数の武器を用いて発砲するシューティングゲームをプレイする際に、通常モードとは異なる連射モード、武器切替モードが設定される。
なお、図9(a)~図9(c)に示すイメージ図は、各モード別のクリック感を生じさせる角度間隔をイメージしたものであって、実際に、図示した角度間隔でクリック感を生じさせることを意味するものではない。
【0058】
具体的には、通常モードでは、例えば、図9(a)に示すように、ホイールユニット11を回転させた際のクリック感は、正転時、逆転時ともに、24click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
一方、ゲームのプレイ中にプレイヤがホイールユニット11を正転方向へ回転させると、ホイールユニット11の回転方向が検出され、連射モードへ移行する。
【0059】
なお、通常モードは、ゲームモード(連射モードおよび武器切替モード)との比較として示されているが、通常モードからゲームモード(連射モードおよび武器切替モード)への切り替えは、例えば、マウス10の複数のボタンを同時に操作されたこと等により行われればよい。
連射モードでは、ホイールユニット11を正転方向へ回転させた際のクリック感は、例えば、図9(b)に示すように、通常モードの2倍の48click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
【0060】
これにより、例えば、マシンガン等の武器を用いて発砲する際に、通常モードよりも短い間隔で連射することができる。
逆に、ゲームのプレイ中にプレイヤがホイールユニット11を逆転方向へ回転させると、ホイールユニット11の回転方向が検出され、武器切替モードへ移行する。
武器切替モードでは、ホイールユニット11を逆転方向へ回転させた際のクリック感は、例えば、図9(c)に示すように、通常モードの半分の12click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
【0061】
これにより、例えば、ゲーム中のプレイヤが、マシンガン等の武器を用いて連射している状態から、無意識にホイールユニット11を少し逆転させた場合でも、逆転方向における分解能が正転方向よりも低いため、意図せずに誤って武器を交換してしまうことを回避することができる。よって、プレイヤの意図しないエラー操作を検出しないように制御することができるため、ゲームのプレイヤの満足度を高めることができる。
【0062】
ここで、図9(a)~図9(c)に示すクリック感を生じさせるために、回転位置の検出分解能が960pls/回転の場合のコイル制御部12cから出力される電流のパルス波形について、図10(a)~図10(d)を用いて説明する。
なお、図10(a)~図10(d)は、各モードにおいて、ホイールユニットの回転時にクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスが反転するパルス波形を示している。
【0063】
通常モードでは、図10(a)に示すパルス波形によって、正転時、逆転時ともに、24click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
連射モードでは、図10(b)に示すパルス波形によって、正転時に、通常モードの2倍の48click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
【0064】
武器切替モード(12click/回転)では、図10(c)に示すように、逆転時に、通常モードの半分の12click/回転の角度間隔で体感されるように、コイル12dに流れる電流が制御される。
ここで、連射モードで5連射した後、プレイヤが無意識に逆転方向へ回転操作(例えば、3pls)してしまうエラー操作を受け付けてしまうエラー率について検討する。
【0065】
ここでは、人間は、1clickの1/10程度の精度で制御することができると仮定して、時折、1/10幅の誤入力が発生するモデルでエラー率を定義する。
図10(a)に示す通常モードでは、40pls/clickの1/10である4plsの誤入力(正転方向への回転操作中の最後に逆転方向へ回転させてしまう)が起こる。
この場合、エラー率は、誤入力された4plsが、40plsの中のエッジを跨ぐ確率で定義され、4pls/40pls=10%と算出される。
【0066】
図10(b)に示す連射モード(正転)では、20pls/clickの1/10である2plsの誤入力が発生する。
この場合、エラー率は、誤入力した2plsが、逆転時は武器切替モード(逆転)が適用されるため、80plsの中のエッジを跨ぐ確率で定義され、2pls/80pls=2.5%と算出される。
これにより、上述したように、逆転方向への回転時における位置検出の分解能が、正転方向への回転時における分解能よりも粗く(低く)設定されていることで、通常モード(10%)よりも低いエラー率(2.5%)とすることができる。
【0067】
また、武器切替モード(逆転)において、逆転方向へのホイールユニット11の回転時における位置検出の判定エッジと位相をずらすことで、よりエラー率を下げられるケースも考えられる。
具体的には、図10(d)に示すように、図10(c)に示す武器切替モード用のパルス波形から検出位相をずらしたパルス波形を用いることで、例えば、1/10である2plsの誤入力よりも、2/10=4pls、3/10=6pls、4/10=8pls、5/10=10plsの誤入力が発生する確率は、指数関数的に下げることができると考えられる。
【0068】
この場合には、検出位相の調整によって、エラー率は、2.5%よりもはるかに低い0%に近い確率まで下げることができる。
次に、例えば、連射モード(正転方向)(48click/回転)における回転方向における位置(回転位置)1~20に対して割り当てられるPWM制御のデューティ比について、図11を用いて説明する。
【0069】
回転位置1~5では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられている。また、回転位置6~10では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられている。そして、回転位置11~20では、デューティ比が0%になるように割り当てられている。
【0070】
同様に、回転位置に対して割り当てられるPWM出力デューティ比は、図12に示すように、通常モード(正転・逆転方向)、連射モード(正転方向)、武器切替モードA,B(逆転方向)に対して、それぞれ割り当てられる。
例えば、通常モードでは、図12に示すように、回転位置1~80のうち、回転位置1~5では、10%、40%、70%、90%、100%と、段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置6~10では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置11~40までは、0%のデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置41~45では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられ、回転位置46~50では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置51~80までは、0%のデューティ比が割り当てられる。
【0071】
つまり、通常モードでは、コイル制御部12cが、回転位置1~80においてデューティ比のピークが2回現れるパルス信号を用いて制御する(図10(a)参照)。
連射モードでは、図12に示すように、回転位置1~80のうち、回転位置1~5では、通常モードと同様に、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置6~10では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置11~20までは、0%のデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置21~25では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられ、回転位置26~30では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置31~40までは、0%のデューティ比が割り当てられる。同様に、回転位置41~45では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられ、回転位置46~50では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置51~60までは、0%のデューティ比が割り当てられる。回転位置61~65では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられ、回転位置66~70では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置71~80までは、0%のデューティ比が割り当てられる。
【0072】
つまり、連射モードでは、コイル制御部12cが、通常モードの半分の回転位置の間隔で、回転位置1~80においてデューティ比のピークが4回現れるパルス信号を用いて制御する(図10(b)参照)。
一方、武器切替モードAでは、図12に示すように、回転位置1~80のうち、回転位置1~5では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置6~10では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置11~80までは、0%のデューティ比が割り当てられる。
【0073】
つまり、武器切替モードAでは、コイル制御部12cが、通常モードの2倍の回転位置の間隔で、回転位置1~80においてデューティ比のピークが1回現れるパルス信号を用いて制御する(図10(c)参照)。
また、武器切替モードBでは、図12に示すように、回転位置1~80のうち、回転位置1~10では、0%のデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置11~15では、10%、40%、70%、90%、100%と段階的に増加するようにデューティ比が割り当てられる。そして、回転位置16~20では、100%、90%、70%、40%、10%と、段階的に減少するようにデューティ比が割り当てられる。回転位置6~80までは、0%のデューティ比が割り当てられる。
これにより、武器切替モードBでは、コイル制御部12cが、武器切替モードAとは位相をずらしたパルス信号を用いて制御することができる(図10(d)参照)。
【0074】
<出力トルク決定部23aから出力されるパルス波形>
ここで、本実施形態のマウス制御システム1において、PC20の出力トルク決定部23aからマウス10のコイル制御部12cへ出力されるパルス波形について、図13から図15に示す参考用の波形と、図16および図17に示す本実施形態のパルス波形を用いて説明する。
【0075】
なお、図12に示すデューティ比の出力では説明が複雑になるため、ここでは、説明の便宜上、出力トルク決定部23aからコイル制御部12cに出力されるパルス波形が矩形波である場合を前提として、以下で説明する。
ホイールユニット11のホイール本体部12fを通常の回転速度(2回転/s)で回転操作すると、図13に示すように、時間0~10msにかけて回転負荷が発生するように、目標電圧に対してほぼ100%の出力波形となる。
【0076】
そして、時間11~20msにかけては、回転負荷がほぼ0になるように、目標電圧に対してほぼ0%の出力波形となる。
このとき、図13に示す時間0~10ms(塗りつぶし部分)では、ホイール本体部12fに回転負荷が発生し、時間11~20ms(塗りつぶしなし部分)では、ホイール本体部12fに回転負荷が発生しない。
【0077】
これにより、使用者がホイール本体部12fを回転操作すると、回転抵抗があって硬い部分と、緩んだ部分とが交互に現れ、これをクリック感として感じることができる。
ここで、通常の回転速度で回転させた場合には、目標電圧に対してほぼ100%に達する時間、ほぼ0%まで低下する時間が十分に確保されるため、図13に示すように、目標電圧の0%まで電圧が戻りきらないオフセットは発生しない。
【0078】
これに対して、ホイールユニット11のホイール本体部12fを高速の回転速度(10回転/s)で回転操作すると、図14に示すように、時間0~2,4~6,8~10,12~14,・・・(ms)にかけて回転負荷が発生する出力波形となる。
このとき、高速回転によって次の回転位置へ達する時間が短いため、出力波形は、目標電圧のほぼ100%の電圧まで達することなく、約90%をピークにして電圧が降下していく。そして、そのまま高速回転を続けると、目標電圧のほぼ0%の電圧まで低下することなく、約10%を下限値(オフセット10%)として電圧が再び上昇していく。
【0079】
このため、使用者は、ホイール本体部12fの回転抵抗が0になることなく常に回転抵抗があるまま高速回転させているため、高速回転時の使用感が損なわれてしまうおそれがある。
また、ホイールユニット11のホイール本体部12fを、さらに高速の回転速度(20回転/s)で回転操作すると、図15に示すように、時間0~1,2~3,4~5,6~7,・・・(ms)にかけて回転負荷が発生するような出力波形となる。
【0080】
このとき、高速回転によって次の回転位置へ達する時間が短いため、出力波形は、目標電圧のほぼ100%の電圧まで達することなく、約60%をピークにして電圧が降下していく。そして、そのまま高速回転を続けると、出力波形は、目標電圧のほぼ0%の電圧まで低下することなく、約25%を下限値として電圧が再び上昇していく。そして、時間3msにおいて再び電圧が上昇するものの、高速回転に伴う時間不足によって、目標電圧に対して約70%をピークとし再び降下し、時間4msにおいて目標電圧の約30%まで低下(オフセット)した後、再び、目標電圧の約70%まで上昇することを繰り返す出力波形となる。
【0081】
このため、使用者は、ホイール本体部12fの回転抵抗が0になることなく常に回転抵抗があるまま高速回転させているため、高速回転時の使用感が損なわれてしまうおそれがある。特に、図15に示す高速回転(20回転/s)の場合には、常時、目標電圧の30%以上の電圧が印加され続けるため、コイル12dには常に電流が流れ、コイル12dから発生した磁場の影響を受けてMR流体12eの粘度が高い状態が維持される。よって、MR流体12eの粘度が高い状態が維持されたまま回転させると、ホイール本体部12fには常時回転抵抗が付与された状態となるため、高速回転になるほど使用者が速く回転させたがっているにも拘らず、回転抵抗が大きくなって、使用感が低下してしまう。
【0082】
そこで、本実施形態のホイールユニット11では、コイル制御部12cは、ホイール本体部12fを回転方向に回転させた際に所定の回転角度ごとにクリック感を生じさせるとともに、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力して、コイル12dに流れる電流を制御する。
具体的には、図14に示す波形と同様に、ホイールユニット11のホイール本体部12fを高速の回転速度(10回転/s)で回転操作すると、図16に示すように、時間0~2,4~6,8~10,12~14,・・・(ms)にかけて回転負荷が発生するように、パルス波形が出力される。
【0083】
このとき、高速回転によって次の回転位置へ達する時間が短いため、出力波形は、目標電圧のほぼ100%の電圧まで達することなく、約90%をピークにして電圧が降下していく。そして、そのまま高速回転を続けると、時間3~4(ms)において、目標電圧の約10%を下限値とするパルス波形となる。
ここで、本実施形態では、パルス波形が再び上昇するのではなく、マイナス側にピークを持つパルス波形に基づいて、コイル制御部12cがコイル12dに流れる電流を制御する。このため、本実施形態によれば、図16に示すように、時間5~6(ms)では、約-90%にピークを持ち、時間7~8(ms)にかけて、約-10%まで上昇する波形となる。
【0084】
そして、ホイール本体部12fを高速でさらに回転させていくと、再び、約90%をピークにして約10%まで電圧が降下し、約-90%にピークを持ち約-10%まで上昇する波形となる。
このため、ホイール本体部12fの回転抵抗が1クリック毎にゼロ点を確実に通過する波形となる(オフセットなし)ため、1クリック毎に回転抵抗が0になる地点を通過して高速回転させることができる。よって、高速回転時の使用感が損なわれてしまうことを回避することができる。
【0085】
同様に、図16に示す波形と同様に、ホイールユニット11のホイール本体部12fを高速の回転速度(20回転/s)で回転操作すると、図17に示すように、時間0~1,2~3,4~5,6~7,・・・(ms)にかけて回転負荷が発生するように、パルス波形が出力される。
このとき、出力波形は、目標電圧のほぼ100%の電圧まで達することなく、約60%をピークにして電圧が降下していく。そして、そのまま高速回転を続けると、時間2~3(ms)において、目標電圧の約35%を下限値とするパルス波形となる。
【0086】
ここで、本実施形態では、パルス波形が再び上昇するのではなく、1クリック毎にプラス側とマイナス側とにピークを持つパルス波形に基づいて、コイル制御部12cがコイル12dに流れる電流を制御する。このため、本実施形態によれば、図17に示すように、時間2~3(ms)では、約-50%にピークを持ち、時間3~4(ms)にかけて、約-20%まで上昇する波形となる。
【0087】
そして、ホイール本体部12fを高速でさらに回転させていくと、再び、約50%をピークにして約20%まで電圧が降下し、約-50%にピークを持ち約-20%まで上昇する波形となる。
このため、ホイール本体部12fの回転抵抗が1クリック毎にゼロ点を確実に通過する波形となる(オフセットなし)ため、1クリック毎に回転抵抗が0になる地点を通過して高速回転させることができる。よって、高速回転時の使用感が損なわれてしまうことを回避することができる。
【0088】
<ホイールユニット11の制御方法>
本実施形態のホイールユニット11は、図18および図19に示すフローチャートに従って制御される。
まず、ホイールユニット11の回転抵抗を制御するトルク生成処理について、図18を用いて説明する。
【0089】
すなわち、図18に示すように、まず、回転検出部13aが、ステップS11において、ホイール本体部12fの回転を検出すると、ステップS12では、回転検出部13aが、ホイール本体部12fの回転位置を検出し、通信部14,21を介して、PC20側の出力トルク決定部23aへ検出結果を送信する(回転検出ステップ)。
次に、ステップS13では、方向検出部13bが、ホイール本体部12fの回転方向(正転、逆転)を検出し、通信部14,21を介して、PC20側の出力トルク決定部23aへ検出結果を送信する(方向検出ステップ)。
【0090】
次に、ステップS14では、PC20側において、出力トルク決定部23aが、記憶部23bに保存された複数のパルス波形を含むテーブルを読み込む。
次に、ステップS15では、PC20側において、出力トルク決定部23aが、ステップS14において読み込まれたパルス波形の中から、回転検出部13aおよび方向検出部13bにおける検出結果に対応する、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を決定する。
【0091】
次に、ステップS16では、出力トルク決定部23aが決定した、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を、通信部21,14を介して、マウス10側のコイル制御部12cに出力する。
次に、ステップS17では、マウス10側のコイル制御部12cが、ステップS16において出力トルク決定部23aから出力されたパルス波形に従って、コイル12dに流れる電流を制御することで、コイル12dが決定された出力トルクとなるように励磁され、MR流体12eの粘度が調整される(コイル制御ステップ)。
【0092】
すなわち、本実施形態のマウス制御システム1では、PC20側の出力トルク決定部23aにおいて決定された出力トルクに対応するパルス波形を選択してコイル制御部12cへ出力するとともに、このパルス波形は、1クリック毎にプラス/マイナスが反転する波形を有している(図10(a)~図10(d)等参照)。
これにより、マウス10側のコイル制御部12cは、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力してコイル12dに流れる電流を制御することで、確実に、1クリック毎にゼロ点を通過したパルス波形に基づいて制御を行うことができる。
【0093】
よって、使用者がホイール本体部12fを高速で回転させた場合でも、1クリック毎の時間間隔が短すぎてパルス波形がゼロ点まで戻りきらない波形になってしまうことを防止することができる。
この結果、コイル12dに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイール本体部12fを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態のマウス制御システム1では、ホイール本体部12fの回転方向および回転位置の検出結果に基づいて、正転方向および逆転方向への回転時に、互いに異なる回転抵抗(クリック感)になるように制御することができる。
より詳細には、正転方向への回転時には、クリック感が短い周期で現れ、逆転方向への回転時には、クリック感が正転方向よりも長い周期で現れる。
【0095】
これにより、使用者の繊細な使用感を実現することが可能なマウス10を提供することができる。
次に、マウス10におけるスクロール検出処理について、図19を用いて説明する。
すなわち、図19に示すように、まず、ステップS21において、マウス10の回転検出部13aがホイール本体部12fの回転を検出すると、ステップS22では、回転検出部13aが、ホイール本体部12fの回転位置を検出する。
【0096】
次に、ステップS23では、ステップS22において検出された回転位置を用いて、マウス10のエッジ判定部13cが、パルス波形のエッジ部分を検出する。
次に、ステップS24では、ステップS23と並行して、マウス10の方向検出部13bが、ホイール本体部12fの回転方向を検出する。
次に、ステップS25では、ステップS23において検出されたエッジ部分に基づいて、マウス10側の通信部14からPC20側の通信部21に対してスクロールパルスを出力する。
次に、ステップS26では、PC20の通信部21が、ステップS25において出力されたスクロールパルスを受信して、PC20における制御に反映される。
【0097】
(実施形態2)
本発明の一実施形態に係るマウス制御システム(操作制御システム)101について、図20を用いて説明すれば以下の通りである。
【0098】
本実施形態のマウス制御システム(操作制御システム)101は、上述した実施形態1のマウス制御システム1と比較して、PC120の制御部123内に、プラス側のみのパルス波形を1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるように位相を反転させる位相反転部123cを備えている点で異なっている。
なお、その他の主要な構成については、上記実施形態1と同様であることから、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0099】
本実施形態のホイールユニット111は、図20に示すように、PC120の制御部123内に、出力トルク決定部23aおよび記憶部23bとともに、位相反転部123cを備えている。
位相反転部123cは、図20に示すように、出力トルク決定部23aによって決定された出力トルクになるように選択され記憶部23bから取り出されたパルス波形について、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるパルス波形に変換する。
【0100】
すなわち、位相反転部123cは、例えば、図14に示す波形が検出されるプラス側のみの波形を出力トルク決定部23aから受信して、図16に示す波形が検出されるように、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるパルス波形になるように、位相を反転させる。
同様に、位相反転部123cは、例えば、図15に示す波形が検出されるプラス側のみの波形を出力トルク決定部23aから受信して、図17に示す波形が検出されるように、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるパルス波形になるように、位相を反転させる。
【0101】
これにより、上記実施形態1と同様に、マウス110のホイールユニット111のトルク生成部112内のコイル制御部12cは、1クリック毎にプラス/マイナスの位相が反転したパルス波形を出力してコイル12dに流れる電流を制御することで、確実に、1クリック毎にゼロ点を通過したパルス波形に基づいて制御を行うことができる。
よって、使用者がホイール本体部12fを高速で回転させた場合でも、1クリック毎の時間間隔が短すぎてゼロ点まで戻りきらない波形になってしまうことを防止することができる。
この結果、コイル12dに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイール本体部12fを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができる。
【0102】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0103】
(A)
上記実施形態では、ブレーキ機構として、MR流体保持部11gに保持されたMR流体12eに磁場を付与してMR流体12eの粘度を変化させることで、ホイール本体部12fの回転抵抗を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
例えば、図21(a)および図21(b)に示すように、強磁性を有するホイール本体部212fの内部に、電気永久磁石221a,221bを配置し、電気永久磁石221a,221bに含まれるコイルに流れる電流の向きを制御することで、そのプラス(陽極)とマイナス(陰極)とを切り替えて、回転抵抗の大きさ、回転抵抗の有無を制御するホイールユニット211であってもよい。
【0105】
具体的には、ホイール本体部212fが回転操作された際に、図21(a)に示すように、電気永久磁石221a,221bよって放出される磁場(図中破線参照)の極性が同じ方向に向けられている場合には、半径方向に突出する複数の歯222から放出される磁束が、強磁性材料を含むホイール本体部212fの内周面に設けられた複数の歯223に作用する。
【0106】
このとき、強磁性材料からなるホイール本体部212fには、複数の歯223から放出される磁束によって、内周面側の歯222に対して回転抵抗が生じる。
すなわち、図21(a)に示すように、電気永久磁石221a,221bから放出される磁場の極性が同じ方向を向くように、電気永久磁石に流れる電流を制御することで、強磁性材料からなるホイール本体部212fに回転抵抗を生じさせることができる(ラチェットモード)。
【0107】
一方、ホイール本体部212fが回転操作された際に、図21(b)に示すように、電気永久磁石221a,221bよって放出される磁場(図中破線参照)の極性が反対方向に向けられている場合には、電気永久磁石221a,221bの極性によって、磁束が、電気永久磁石221a,221bおよびフェライト基板224によって画定される磁気回路内を循環する。このため、磁束がフェライト基板224内に含まれる。
【0108】
この結果、電気永久磁石221a,221bと強磁性を有するホイール本体部212fとの間の相互作用によって回転抵抗を得ることはできず、回転抵抗のない状態で回転操作される(フリーホイール)。
以上のように、電気永久磁石221a,221bを構成するコイルに流れる電流の向きを変化させて、電気永久磁石221a,221bから放出される磁場を変化させることで、ホイール本体部212fの回転抵抗の大きさ、回転抵抗の有無を容易に制御することができる。
また、本実施形態のホイールユニット211において、上述した実施形態において説明した1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れるパルス波形によってコイルに流れる電流を制御することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
(B)
上記実施形態2では、位相反転部123cが、プラス側にのみピークを有する波形を、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れる波形になるように位相を反転させる処理を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、マイナス側にのみピークを有する波形を、1クリック毎にプラスとマイナスとが交互に現れる波形になるように位相を反転させる処理を行う構成であってもよい。
【0110】
(C)
上記実施形態では、本発明に係るマウス制御システム1に含まれる操作装置として、マウス10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のマウス制御システムに含まれる操作装置としては、マウス以外にも、キーボード、ハンドル等のゲーム用のコントローラ、音楽の演奏する際等に使用されるコントロールパネル等であってもよい。
【0111】
(D)
上記実施形態では、正転方向と逆転方向とでクリック感の間隔を変化させるように、コイル制御部12cがコイル12dに流れる電流を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0112】
例えば、正転方向と逆転方向とで、ホイールユニット11の回転抵抗の大きさを変化させるように、コイルに流れる電流を制御する構成であってもよい。具体的には、例えば、連射モード(正転時)では回転抵抗が小さくなるように制御しつつ、武器切替モード(逆転時)には回転抵抗が連射モードよりも大きくなるように制御する。
これにより、ゲームのプレイヤにとって、より繊細な操作が可能となるとともに、無意識に正転方向から逆転方向へ操作して、意図しない操作を実行してしまうことを抑止することができる。
また、正転方向と逆転方向とで、クリック感を生じさせる間隔および回転抵抗の大きさを組み合わせて、異なる制御を行ってもよい。
【0113】
(E)
上記実施形態では、正転方向における回転時に、逆転方向における回転時よりも短い間隔でクリック感が生じるように、コイル12dに流れる電流を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ゲームの操作内容等に応じて、正転方向における回転時に、逆転方向における回転時よりも長い間隔でクリック感が生じするように、コイルに流れる電流を制御してもよい。
【0114】
(F)
上記実施形態では、逆転方向における回転時には、正転方向における回転時よりも粗い分解能となるように制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ゲームの操作内容等に応じて、逆転方向における回転時には、正転方向における回転時よりも細かい分解能となるように制御してもよい。
【0115】
(G)
上記実施形態では、本発明に係るホイールユニット11が装填されたマウス10が、主として、e-Sports等のゲームに使用される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0116】
例えば、ゲーム以外の分野として、通常のPC業務、設計、音楽等のビジネス用途に対して、本発明に係るホイールユニットが装填された操作装置が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の操作制御システムは、コイルに電流を流すことで回転抵抗が付与されるホイールユニットを高速で回転させた際に使用者の意図しない回転抵抗が発生することを回避して、使用感を向上させることができるという効果を奏することから、マウス、キーボード、コントロールパネル等の各種操作装置を含むシステムに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 マウス制御システム(操作制御システム)
10 マウス(操作装置)
10a マウス本体
10b スイッチ
10c 底面
10d USB差込み口
10ea 投光部
10eb 受光部
10f スイッチ
11 ホイールユニット
11a アウターホイール(ホイール本体部)
11b インナーホイール(ホイール本体部)
11c 中ボタン
11d 押下検出レバー
11e シャフト
11f 回転検出用マグネット
11g MR流体保持部(磁気粘性流体保持部、ブレーキ機構)
11h シール部材
12 トルク生成部
12c コイル制御部
12d コイル
12e MR流体(磁気粘性流体)
12f ホイール本体部
13 スクロール検出部
13a 回転検出部
13b 方向検出部
13c エッジ判定部
14 通信部(第2通信部)
20 PC(操作制御装置)
20a キーボード
21 通信部(第1通信部)
22 表示部
23 制御部
23a 出力トルク決定部
23b 記憶部
101 マウス制御システム(操作制御システム)
110 マウス
111 ホイールユニット
112 トルク生成部
120 PC
123 制御部
123c 位相反転部
211 ホイールユニット
212f ホイール本体部
221a 電気永久磁石
221b 電気永久磁石
222 歯
223 歯
224 フェライト基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21