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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029479
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B25J15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131771
(22)【出願日】2022-08-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月5日にhttps://ritsumei-ac-jp.zoom.us/w/98250763559?tk=5cEUuag9w1OS2W610D-x_PStfAaB1xFo1Wfl8O2qfl0.DQMAAAAW4DOtJxZjTVBqX0RyclJQZU1IVVVUV3pXUGZRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA&pwd=L0NBMHkraFVuYUQzZlplUWloZjUrdz09&uuid=WN_fZHsGzhWRpOv7Ulq7GGpCQ(開催時に限りリンク有効)のアドレスで公開された公開オンラインシンポジウム「Iot/ロボティクスによる農林水産業の自動化近未来像を探る」にて発表。 令和3年12月15日にhttps://sice-si.org/conf/si2021/のアドレスで公開された第22回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会の予稿集にて発表。 令和4年7月5日にhttps://ritsumei-ac-jp.zoom.us/w/94455167666?tk=efzLmiwzH22A8J2KXfn2h88mF_Pd_PS-T_OSFz79TYQ.DQMAAAAV_fd6shZtclRGTE5BNVNwQ3ZnZ2J5c2ljVWJnAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA&pwd=ajYxR251SzAzSzNLdjhvYmlCR0dLZz09&uuid=WN_oegYzGm0Tcmg_NtTPtsldw(開催時に限りリンク有効)のアドレスで公開されたSIPフィジカル空間ディジタル信号処理基盤・科研費新学術領域ソフトロボット合同シンポジウムにて発表。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤/サブテーマIIISociety5.0実現のための社会実装技術/CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化、産業技術力強化第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】王 忠奎
(72)【発明者】
【氏名】森 佳樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707ES03
3C707ET02
3C707EU13
3C707FS01
3C707FT02
3C707KS03
3C707KS08
3C707KT01
3C707KT06
(57)【要約】
【課題】産業用ロボットの対象物を取り扱うことができる範囲を広げるロボットハンドを提供すること。
【解決手段】ロボットアーム25の先端26に取り付けられるロボットハンド2であって、長尺な棒状の付加リンク3と、対象物を取り扱う第一エフェクタ6と、を備え、付加リンク3の長尺方向の一方の端部である基端部5は、ロボットアーム25の先端26に固定され、第一エフェクタ6は、付加リンク3の長尺方向の他方の端部である先端部4に固定されることを特徴とするロボットハンド2。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端に取り付けられるロボットハンドであって、
長尺な棒状の付加リンクと、対象物を取り扱う第一エフェクタと、を備え、
前記付加リンクの長尺方向の一方の端部である基端部は、前記ロボットアームの先端に固定され、前記第一エフェクタは、前記付加リンクの長尺方向の他方の端部である先端部に固定されることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記付加リンクの長尺方向の長さは、前記ロボットアームの可動範囲の中心を基準位置とし、前記第一エフェクタによる前記対象物の取り扱いが要求される位置を第一エフェクタ作動位置として、複数の前記第一エフェクタ作動位置のうち前記基準位置から最も遠い位置である最遠第一エフェクタ作動位置と、前記可動範囲内で前記最遠第一エフェクタ作動位置に最も近い位置である最近可動位置と、の距離と同じ長さであることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記対象物を取り扱う第二エフェクタを備え、
前記第二エフェクタは、前記付加リンクの前記基端部と前記先端部との間に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記対象物を取り扱う第三エフェクタを備え、
前記第三エフェクタは、前記第一エフェクタの前記対象物の取り扱いを妨げないように、当該第一エフェクタ又は前記付加リンクの前記先端部に固定されることを特徴とする請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
耐水性を有する素材で形成され、電気回路を有しないことを特徴とする請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記第一エフェクタは、内部空間を有し且つ側面が可撓性を有する伸縮自在な蛇腹状のベローズ部と、前記ベローズ部の前記内部空間と当該内部空間の外とに繋がる第一チューブと、前記ベローズ部の伸縮方向のそれぞれの端部に固定される複数の剛指体と、を備え、
前記ベローズ部は、前記内部空間に前記第一チューブを介して空気圧が供給されることで伸縮し、
複数の前記剛指体は、前記ベローズ部の伸縮によって互いに接近又は離れるように作動し、複数の当該剛指体によって前記対象物を把持する又は放すことを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第三エフェクタは、真空パッドであり、
前記第三エフェクタは、当該第三エフェクタに空気圧が供給されることで前記対象物を吸着又は放すことを特徴とする請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記第二エフェクタは、前記付加リンクに固定された状態で、当該付加リンクから任意の方向に突出する係合部を備え、
前記係合部は、前記ロボットアームの動作によって前記対象物に係合することを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端に固定され、対象物の把持等を行うロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業分野において、労働者不足の解消、生産性向上、人件費のコスト削減を目的として、ロボットアーム及びロボットハンドを備える産業用ロボットを用いて作業の自動化が図られている。例えば、外食産業において産業用ロボットを導入することで、食器洗浄作業の自動化が図られることがある。ここで、自動化が図れる作業の範囲がロボットアームの可動範囲内に収まらない場合、一台の産業用ロボットで自動化を図ることが困難な場合がある。
【0003】
そこで、非特許文献1のように複数台の産業用ロボットを導入することが知られている。非特許文献1には、食器洗浄作業を2台の産業用ロボットによって自動化することが記載されており、1台目の産業用ロボットが、食器をぬらして下洗いを行い食洗機用のラックに並べ、そして、洗浄が終わると2台目の産業用ロボットが、ラックから食器を取り出し、食器を分類しながら並べることで食器洗浄作業の全ての作業が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日刊工業新聞、「掃除だけでなく、食器洗いもロボットの仕事になる?」、[online]、2020年2月28日、日刊工業新聞、インターネット、[2022年5月20日検索]、インターネット<https://newswitch.jp/p/21308>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、産業用ロボットは高額なため、非特許文献1のように2台又は複数台の産業用ロボットを導入することは、小規模の企業にとって困難である。さらに、複数台の産業用ロボットを設置するスペースを確保する必要があり、スペースが限られる場所においても、複数の産業用ロボットを導入することは困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、産業用ロボットの導入台数を減らすために、一台の産業用ロボットでより多くの作業を自動化できるように産業用ロボットの対象物を取り扱うことができる範囲を広げるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るロボットハンドは、ロボットアームの先端に取り付けられるロボットハンドであって、長尺な棒状の付加リンクと、対象物を取り扱う第一エフェクタと、を備え、前記付加リンクの長尺方向の一方の端部である基端部は、前記ロボットアームの先端に固定され、前記第一エフェクタは、前記付加リンクの長尺方向の他方の端部である先端部に固定されることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記付加リンクの長尺方向の長さは、前記ロボットアームの可動範囲の中心を基準位置とし、前記第一エフェクタによる前記対象物の取り扱いが要求される位置を第一エフェクタ作動位置として、複数の前記第一エフェクタ作動位置のうち前記基準位置から最も遠い位置である最遠第一エフェクタ作動位置と、前記可動範囲内で前記最遠第一エフェクタ作動位置に最も近い位置である最近可動位置と、の距離と同じ長さであることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記対象物を取り扱う第二エフェクタを備え、前記第二エフェクタは、前記付加リンクの前記基端部と前記先端部との間に固定されることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記対象物を取り扱う第三エフェクタを備え、前記第三エフェクタは、前記第一エフェクタの前記対象物の取り扱いを妨げないように、当該第一エフェクタ又は前記付加リンクの前記先端部に固定されることを特徴とする。
【0011】
さらに、耐水性を有する素材で形成され、電気回路を有しないことを特徴とする。
【0012】
さらに、前記第一エフェクタは、内部空間を有し且つ側面が可撓性を有する伸縮自在な蛇腹状のベローズ部と、前記ベローズ部の前記内部空間と当該内部空間の外とに繋がる第一チューブと、前記ベローズ部の伸縮方向のそれぞれの端部に固定される複数の剛指体と、を備え、前記ベローズ部は、前記内部空間に前記第一チューブを介して空気圧が供給されることで伸縮し、複数の前記剛指体は、前記ベローズ部の伸縮によって互いに接近又は離れるように作動し、複数の当該剛指体によって前記対象物を把持する又は放すことを特徴とする。
【0013】
さらに、前記第三エフェクタは、真空パッドであり、前記第三エフェクタは、当該第三エフェクタに空気圧が供給されることで前記対象物を吸着又は放すことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記第二エフェクタは、前記付加リンクに固定された状態で、当該付加リンクから任意の方向に突出する係合部を備え、前記係合部は、前記ロボットアームの動作によって前記対象物に係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るロボットハンドによると、対象物を取り扱う第一エフェクタは付加リンクによってロボットアームの先端からより遠方に離れるように備えられるため、第一エフェクタによる対象物の取り扱いが可能な範囲は、ロボットアームの先端に直接第一エフェクタを固定する場合に比べて広くなる。従って、当該ロボットハンドを備える産業用ロボットは、広範囲で多くの作業が行え、産業用ロボットの導入台数を減らすことができる。
【0016】
付加リンクの長さが長ければ長いほど、第一エフェクタはより広範囲で対象物を取り扱いが可能となるが、ロボットアームの動作によってロボットハンドが周辺の壁や設備等の障害物に干渉する可能性が高くなる。そのため、ロボットアームの動作はロボットアーム及びロボットハンドが障害物に干渉しないように制限される。そこで、付加リンクの長尺方向の長さを必要最小限の長さにすることで、ロボットハンドの障害物に干渉する可能性を下げ、ロボットアームの動作の制限を最低限に抑えることができる。
【0017】
第一エフェクタが付加リンクによってロボットアームの先端からより遠方に離れるように備えられるため、ロボットアームの可動範囲の中心に近い位置での対象物の取り扱いは困難になる。そこで、付加リンクの基端部と先端部との間に固定されることで、第一エフェクタよりロボットアームの先端に近い位置に備えられる第二エフェクタによって、第一エフェクタでは困難なロボットアームの可動範囲の中心に近い位置での対象物の取り扱いを可能とする。
【0018】
第一エフェクタと、第三エフェクタと、は略同じ範囲で対象物を取り扱うことが可能となるため、対象物の形状、素材及び状態等を鑑みて、対象物の取り扱いを第一エフェクタで行うか、第三エフェクタで行うか、選択することができる。
【0019】
耐水性を有し電気回路を有しないため水中での作業が可能となる。また、電気回路を有しないため、メンテナンス性が良く、故障時の修復作業が簡単である。
【0020】
第一エフェクタは空気圧の供給によって作動する剛指体の動きには遊びが発生するため、対象物が剛指体によって把持されることで壊れることを防止することができる。
【0021】
第三エフェクタは空気圧の供給によって対象物を吸着するため、対象物が油や水で濡れた状態であっても吸着し持ち上げることができる。また、対象物に滑らかな面があれば吸着できるため、第三エフェクタが取り扱うことができる対象物は、その形状及び姿勢等に制限がなく汎用性が高い。
【0022】
第二エフェクタは係合部が対象物に係合した状態で、さらにロボットアームを動作させることで、対象物をロボットアームが動作した方向に移動させることができる。また、第二エフェクタは単純な構造であり、第二エフェクタの導入コストが低く、メンテナンス性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドを示す三面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロボットハンドを示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第一エフェクタを示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第一エフェクタが作動する様子を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る食器洗浄作業の現場の環境を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る可動範囲、第一エフェクタ作動位置、最遠第一エフェクタ作動位置及び最近可動位置を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る第一エフェクタ作動可能範囲を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る第二エフェクタが作動する様子を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る第三エフェクタが作動する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るロボットハンド2について、以下、図面を参照しつつ説明する。ただし、以下はあくまで本発明の一実施形態を例示的に示すものであり、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0025】
一実施形態に係るロボットハンド2は、飲食店の食器洗浄作業を行う産業用ロボット1に用いられるロボットハンド2である。図5は産業用ロボット1が導入された飲食店の洗い場を上方から見下ろした図であり、産業用ロボット1は、図5に示すように、垂直多関節型であり先端26に円形状で円周方向に自転自在なフランジ27を備えるロボットアーム25と、耐水性を有する素材の合成樹脂で形成され、ロボットアーム25の先端26に固定されるロボットハンド2と、ロボットハンド2に負圧の空気圧を供給する図示しない負圧装置と、対象物34を撮影する図示しない第一カメラ及び第二カメラと、第一カメラ及び第二カメラとロボットアーム25と負圧装置とに接続されロボットハンド2及び負圧装置に制御信号を送信する図示しない処理装置と、を備える。尚、対象物とは、ロボットハンド2によって把持、吸着、運搬等の様々な取り扱いが行われる物のことであり、本実施形態においては、主に食器35、後述する食洗器Dのカバー36及び食洗器D用の食器トレー37が対象物34である。
【0026】
産業用ロボット1が設置される洗い場は、図5に示すように、使用後の食器35が運ばれてくるスペースAと、スペースAに隣接し水が溜められるシンクBと、シンクBに隣接して食洗器D用の食器トレー37が載置されるスペースCと、取っ手38を有する上方及び下方にスライド可能なカバー36を備えスペースCに隣接して設置される食洗器Dと、食洗器Dに隣接して食器トレー37を載置できるスペースEと、スペースAとスペースEとに隣接して設置される食器棚Fと、が設けられる。そして、ロボットアーム25は、スペースA、シンクB、スペースC、食洗器D、スペースE及び食器棚Fによって囲われる位置に設置され、スペースAの上方にはスペースAに載置される食器35を撮影する図示しない第一カメラが設置され、スペースEの上方にはスペースEに載置される食器トレー37に並べられた食器35を撮影する図示しない第二カメラが設置される。尚、食洗器Dは、カバー36を上方にスライドすることで当該食洗器Dへの食器トレー37の出し入れが可能となり、カバー36を下方にスライドすることで食器35の洗浄が自動で開始されるもの である。
【0027】
産業用ロボット1が行う食器洗浄作業は大きく分けて、スペースAに運ばれてきた食器35を後述する第一エフェクタ6又は第三エフェクタ19によって持ち上げ、その食器35をシンクBに溜められた水の中を潜らし、スペースCに載置される食器トレー37に並べる下洗い作業と、下洗い作業後の複数の食器35が並べられた食器トレー37を後述する第二エフェクタ16によって食洗器Dの内部まで移動させ、食洗器Dのカバー36を下方にスライドし食洗器Dを稼働させる洗浄作業と、食洗器Dによる食器35の洗浄が終了した後に、食洗器Dのカバー36を第二エフェクタ16によって上方にスライドし、食器トレー37を第二エフェクタ16によって食洗器DからスペースEに移動させ、第一エフェクタ6又は第三エフェクタ19によって食器35をスペースEの食器トレー37から食器棚Fに移動させ種類別に重ねて整頓する整頓作業と、の三つの作業となる。
【0028】
図1はロボットハンド2の三面図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は右側面図を示す。ロボットハンド2は、図1及び図2に示すように、付加リンク3、第一エフェクタ6、二つの第二エフェクタ16及び第三エフェクタ19を備える。付加リンク3は、図1及び図2に示すように、細く長尺な棒状の部材であり、その長尺方向の一方の端部である基端部5が、図5に示すようにロボットアーム25の先端26であるフランジ27に固定され、他方の端部である先端部4に第一エフェクタ6が固定される。また、付加リンク3の基端部5と、先端部4と、の間には、二つの第二エフェクタ16が固定される。
【0029】
ロボットハンド2は、第一エフェクタ6が長尺な付加リンク3によってロボットアーム25の先端から遠方に位置するように備えられることで、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いがより遠くの位置で行えるようになる。また、付加リンク3は細く長尺な棒状であるため、例えば、棚の奥に対象物34を収納する又は棚の奥から対象物34を取り出す作業のように、狭い場所で対象物34の取り扱いが要求される作業において、ロボットアーム25が棚等の周囲の環境に干渉することなく第一エフェクタによる対象物34の取り扱いが行える。
【0030】
第一エフェクタ6は、図1図2に示すように、図示しない内部空間を有する円筒形状であり側面が可撓性を有する伸縮自在な蛇腹状のベローズ部10と、ベローズ部10の伸縮方向の両端のそれぞれに固定される二つの剛指体8と、第一エフェクタ6を付加リンク3に固定するための第一エフェクタ固定部11と、ベローズ部10の内部空間と図示しない負圧装置とに繋がる第一チューブ14と、を備える。
【0031】
二つの剛指体8のうち一方の剛指体8は、図1(c)に示すようにZ字状に折れ曲がる部材であり、他方の剛指体8は、図1(c)に示すように板状であり対象物34を把持する部分である把持部9が湾曲した形状に形成される。そして、図1及び図2に示すように、二つの剛指体8は、把持部9がベローズ部10から当該ベローズ部10の伸縮方向に対して直角な方向に突出するように、且つ二つの剛指体8の夫々の把持部9が互いに接近する姿勢で当該ベローズ部10の伸縮方向の両端に固定される。尚、二つの剛指体8の夫々の把持部9の対象物34を把持する面には、滑り止め及び対象物34の保護を目的とした図示しないパッドが取付けられる。
【0032】
第一エフェクタ固定部11は、図1及び図2に示すように、付加リンク3の先端部4に固定される付加リンク固定部13と、ベローズ部10の伸縮方向の中間でベローズ部10の外周に密着固定されるリング状のベローズ固定部12と、を備える。本実施形態では、付加リンク固定部13を付加リンク3の先端部4の側面に固定させることで、第一エフェクタ6を付加リンク3の先端部4の側面に固定しているが、他の実施形態として、付加リンク固定部13を付加リンク3の先端部4の先端面に固定させることで、第一エフェクタ6を付加リンク3の先端部4の先端面に固定させても良い。
【0033】
図3(a)は、ベローズ部10の図示しない内部空間の圧力が大気圧である状態の第一エフェクタ6を示し、内部空間の圧力が大気圧であるときにベローズ部10は伸びた状態となる。そして、図示しない負圧装置から第一チューブ14を介して内部空間に負圧の空気圧を供給することで、図3(b)に示すように、ベローズ部10は縮んだ状態となる。つまり、負圧装置から供給される負圧の空気圧を制御することで、ベローズ部10は伸縮し、その伸縮に伴って、ベローズ部10の伸縮方向の両端のそれぞれに固定される二つの剛指体8が互いに接近又は離れ、対象物34を把持又は放すことができる。本実施形態の第一エフェクタ6が取り扱う対象物は食器35であり、図4に示すように、食器35を把持する。
【0034】
尚、第一エフェクタ6は、図3に示すように、二つの剛指体8のそれぞれの付加リンク固定部13に近い端部と、ベローズ固定部12の付加リンク固定部13に近い部分と、が互いに接近した状態で可撓性を有する拘束手段15によって繋ぎ止められる。これにより、図3(a)に示すように、ベローズ部10が伸び二つの剛指体8が互いに離れた状態であるとき、二つの剛指体8の把持部9は角度を成して大きく開くことになる。従って、対象物34が大きい物であっても二つの剛指体8で挟み込み把持することが可能となる。尚、本実施形態の拘束手段15は合成樹脂製のひも状の部材であり、拘束手段15の端部が剛指体8と、ベローズ固定部12と、に固定されるが、合成樹脂製及びひも状の部材に制限されることはなく、また、二つの剛指体8のそれぞれの付加リンク固定部13に近い端部と、付加リンク固定部13と、を繋ぐ、又は、二つの剛指体8のそれぞれの付加リンク固定部13に近い端部同士を繋ぐものであっても良い。
【0035】
ここで、図1(a)に示す付加リンク3の長尺方向の長さL1について図6を参照して説明する。図6は、伸びきった状態のロボットアーム25を示し、後述する各範囲及び各位置をわかりやすく説明するためにロボットハンド2は図示していない。図1(a)に示す付加リンク3の長尺方向の長さL1は、図6に示すロボットアーム25の可動範囲29の中心を基準位置28とし、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いが要求される位置を第一エフェクタ作動位置31として、第一エフェクタ作動位置31のうち基準位置28から最も遠い位置である最遠第一エフェクタ作動位置32と、可動範囲29内で最遠第一エフェクタ作動位置32に最も近い位置である最近可動位置30と、の距離L2と同じ長さである。本実施形態の第一エフェクタ作動位置31は、下洗い作業及び整頓作業で第一エフェクタ6が食器35を持ち上げる位置及び食器35を放す位置と、下洗い作業で食器35をシンクBに浸す位置と、であり、最遠第一エフェクタ作動位置32は、スペースAの第一エフェクタ作動位置31の端となる。
【0036】
尚、わかりやすく説明するため、上方から見下ろした図である図6を用いて距離L2を説明したが、実際は、二点鎖線で示す可動範囲29は球状のように高さ成分を有する立体的に広がる範囲であり、各第一エフェクタ作動位置31は高さ成分を有する位置であり、最遠第一エフェクタ作動位置32及び最近可動位置30は、高さ成分を加味した立体的な位置関係から求められ、最遠第一エフェクタ作動位置32と最近可動位置30との距離L2は、高さ成分を加味した立体的な距離である。
【0037】
付加リンク3の長さL1を最遠第一エフェクタ作動位置32と、最近可動位置30と、の距離L2と同じ長さにすることで、図7に示すように、第一エフェクタ6が対象物34を取り扱うことのできる範囲である第一エフェクタ作動可能範囲33は、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いが要求される位置である全ての第一エフェクタ作動位置31を覆う最小限の広さとなる。付加リンク3はその長さL1が長ければ長いほど、第一エフェクタ作動可能範囲33はより遠方へ広がるが、ロボットアーム25の動作によって、ロボットハンド2が周りの壁や設置物当の障害物にぶつかる可能性が高くなり、ロボットアーム25の動作に多くの制限を設ける必要がある。しかし、付加リンク3の長さL1を必要最小限の長さにすることで、ロボットハンド2が障害物にぶつかる可能性を減少させ、ロボットアーム25の動作の制限を少なくすることができる。
【0038】
第二エフェクタ16は、図1及び図2に示すように、板状の部材であり、二つの第二エフェクタ16は付加リンク3の短尺方向へ互いに相反して当該付加リンク3から突出するように付加リンク3の基端部5と先端部4との中間に固定される。このとき、第二エフェクタ16のうち付加リンク3から突出した部分が対象物34と係合する係合部18にあたる。尚、本実施形態の第二エフェクタ16は、係合部18を含めた全体が板状の部材であるが、これに限定されることはなく、他の実施形態として、係合部18がフック状といったような他の形状であっても良い。また、本発明の二つの第二エフェクタ16は、付加リンク3の長尺方向に対して互いに同じ位置に固定されるが、他の実施形態として、二つの第二エフェクタ16を付加リンク3の長尺方向に対して互いに異なる位置に固定し、対象物34と、第二エフェクタ16と、の位置を考慮して二つの第二エフェクタ16を使い分けても良い。
【0039】
第一エフェクタ6は、先述のように、付加リンク3の先端に固定されるため、第一エフェクタ作動可能範囲33を広げることができる。しかし、付加リンク3の長さL1が長ければ長いほど、基準位置28に近い位置での第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いが困難になるデメリットがある。そこで、第二エフェクタ16を付加リンク3の基端部5と先端部4との間に固定し備えることで、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いが困難な基準位置28に近い位置でも、第二エフェクタ16によって容易に対象物34の取り扱いが行えるようになる。
【0040】
本実施形態の第二エフェクタ16が取り扱う対象物34は食洗器Dのカバー36と、食器トレー37であり、第二エフェクタ16が食洗器Dのカバー36を取り扱う様子を図8に示す。図8は、スペースCの位置から見た食洗器Dの側面図であり、第二エフェクタ16は、図8(a)に示すように、カバー36の取っ手38に上方から係合部18を係合させ、その状態からロボットアーム25を下方に動作させることで、図8(b)に示すようにカバー36を下方にスライドする。また、図示しないが、取っ手38に下方から係合部18を係合させロボットアーム25を上方に動作させることでカバー36を上方にスライドさせる。同様に、食器トレー37の移動においても、食器トレー37の縁等の任意の箇所に係合部18を係合させ、その状態から食器トレー37を移動させたい方向にロボットアーム25を動作させることで、食器トレー37を移動させることができる。尚、図8は、第二エフェクタ16と、カバー36と、の様子をわかりやすく図示するためロボットアーム25は図示していない。
【0041】
第三エフェクタ19は、図1及び図2に示すように、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いを妨げないように当該第一エフェクタ6の一方の剛指体8に固定される吸着パッドである。第三エフェクタ19は、吸着パッド本体21と、吸着パッド本体21の吸着面22と図示しない負圧装置とに繋がる第二チューブ24と、を備える。尚、本実施形態では、第三エフェクタ19は第一エフェクタ6に固定されるが、他の実施形態として、第三エフェクタ19は第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いを妨げないように付加リンク3の先端部4に固定されても良い。
【0042】
本実施形態の第三エフェクタ19が取り扱う対象物34は食器35であり、図9に示すように、第三エフェクタ19は、吸着パッド本体21を食器35の平坦な面に当接させ、吸着パッド本体21と食器35との間に空間23を形成し、その状態で、空間23に図示しない負圧装置から第二チューブ24を介して負圧である空気圧を供給することで、食器35を吸着パッド本体21に吸着させ、下洗い作業及び整頓作業を行う。尚、第三エフェクタ19によって食器35を取り扱う際には、図9に示すように、第一エフェクタ6の内部空間にも負圧である空気圧を供給し、ベローズ部10が縮まった状態にする。これにより、第三エフェクタ19は、ベローズ部10の意図せぬ伸縮の影響を受けず、安定して食器35を取り扱うことができる。
【0043】
第三エフェクタ19は、第一エフェクタ6に固定されるため、第三エフェクタ19による対象物34の取り扱いが可能な範囲と、第一エフェクタ6による対象物34の取り扱いが可能な範囲と、は略同じ範囲となる。従って、第一エフェクタ6の剛指体8によって対象物34を把持するか、第三エフェクタ19の吸着パッド本体21によって対象物34を吸着するか、は対象物34の形状、素材及び状態等を鑑みて適切な一方を選択して対象物34を取り扱うことができる。
【0044】
下洗い作業及び整頓作業において、第一エフェクタ6の剛指体8によって食器35を把持するか、第三エフェクタ19の吸着パッド本体21によって食器35を吸着するか、の選択は、処理装置によって行われる。処理装置は、第一カメラと、第二カメラと、ロボットアーム25と、負圧装置と、に接続され、産業用ロボット1を制御するものである。処理装置は、第一カメラが撮影したスペースAの食器35の映像データ及び第二カメラが撮影したスペースEの食器35の映像データを受け取り、その映像データからスペースA及びスペースEの食器35の種類、食器35の位置及び状態を判断する。さらに、その判断結果から、第一エフェクタ6又は第三エフェクタ19のどちらを使用するかを判断し、ロボットアーム25及び負圧装置に制御信号を送信することで、ロボットアーム25の動作や負圧装置から第一エフェクタ6又は第三エフェクタ19に供給される負圧の供給量等を制御する。
【0045】
また、ロボットハンド2の第一エフェクタ6と、第二エフェクタ16と、第三エフェクタ19と、付加リンク3と、は耐水性を有する素材の合成樹脂で形成され、第一エフェクタ6及び第三エフェクタ19は空気圧によって作動し、第二エフェクタ16はロボットアーム25の動作によって作動するものであり、第一エフェクタ6と、第二エフェクタ16と、第三エフェクタ19と、付加リンク3と、は電気回路を有しない。従って、下洗い作業において、ロボットハンド2を水没させてもロボットハンド2が故障することがなく、水中での作業が可能となる。
【0046】
尚、本実施形態に係るロボットハンド2は、一つの第一エフェクタ6と、二つの第二エフェクタ16と、一つの第三エフェクタ19と、を備えるが、本発明は各エフェクタの数を限定することはなく、他の実施形態として、二つの第一エフェクタ6と、三つの第二エフェクタ16と、二つの第三エフェクタ19と、を備え、食洗器Dによる洗浄前の食器35を操作する第一エフェクタ6及び第二エフェクタ16と、食洗器Dによる洗浄後の食器35を操作する第一エフェクタ6及び第二エフェクタ16と、を使い分けることで衛生面に配慮する等の使い分けを行うロボットハンド2のように、ロボットハンドが用いられる環境や対象物の状態等を鑑みて各エフェクタを複数備えるものであっても良い。
【0047】
また、本実施形態に係るロボットハンド2は、飲食店の食器洗浄作業を行う産業用ロボット1に使用されるが、本発明の思想を逸脱しない範囲であれば、異なる産業の異なる作業を行う産業用ロボットに使用されても良い。
【符号の説明】
【0048】
2 ロボットハンド
3 付加リンク
4 付加リンクの先端部
5 付加リンクの基端部
6 第一エフェクタ
8 剛指体
10 ベローズ部
14 第一チューブ
16 第二エフェクタ
18 係合部
19 第三エフェクタ
25 ロボットアーム
26 ロボットアームの先端
28 基準位置
29 可動範囲
30 最近可動位置
31 第一エフェクタ作動位置
32 最遠第一エフェクタ作動位置
34 対象物
35 食器(対象物)
36 食洗器のカバー(対象物)
37 食器トレー(対象物)
L1 付加リンクの長尺方向の長さ
L2 最遠第一エフェクタ作動位置と最近可動位置との距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9