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特開2024-29480磁気センサ、磁気式エンコーダおよび磁気センサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029480
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】磁気センサ、磁気式エンコーダおよび磁気センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20240228BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240228BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 N
G01D5/245 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131772
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永福
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077AA20
2F077AA47
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN04
2F077NN17
2F077PP15
2F077QQ05
2F077TT16
2F077UU09
2F077UU11
2G017AA01
2G017AD55
2G017BA09
2G017BA15
2G017CB02
2G017CB18
2G017CB21
(57)【要約】
【課題】2次の高調波成分に起因する誤差と製造ばらつきに起因する誤差を抑制する。
【解決手段】磁気センサ2は、第1のアームR1と第2のアームR2とを含むブリッジ回路4と、第1の基板10と、第2の基板20とを備えている。第1のアームR1は、第1の基板10に設けられている。第2のアームR2は、第2の基板20に設けられている。第1のアームR1は、直列に接続された第1の抵抗体R11および第2の抵抗体R12を含んでいる。第2のアームR2は、直列に接続された第3の抵抗体R13および第4の抵抗体R14を含んでいる。第2の基板20は、対象磁界が周期的に変化するときの第2のアームR2の抵抗値の位相が、対象磁界が周期的に変化するときの第1のアームR1の抵抗値の位相とは異なるように、第1の基板10から離れた位置に配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームを含むブリッジ回路と、電源ポートと、グランドポートと、第1の出力ポートと、第1の基板と、第2の基板とを備えた磁気センサであって、
前記複数のアームの各々は、複数の磁気抵抗効果素子によって構成されると共に、対象磁界の周期的な変化に応じて抵抗値が変化するように構成され、
前記複数のアームは、前記第1の基板に設けられた第1のアームと、前記第2の基板に設けられた第2のアームとを含み、
前記第1のアームは、回路構成上、前記グランドポートと前記第1の出力ポートとの間に設けられ、
前記第2のアームは、回路構成上、前記電源ポートと前記第1の出力ポートとの間に設けられ、
前記第1のアームは、直列に接続された第1の抵抗体および第2の抵抗体を含み、
前記第2のアームは、直列に接続された第3の抵抗体および第4の抵抗体を含み、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層と、前記磁化固定層と前記自由層の間に配置されたギャップ層とを含み、
前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含み、
前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向とは反対方向の第2の磁化方向の成分を含み、
前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含み、
前記第4の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第3の磁化方向とは反対方向の第4の磁化方向の成分を含み、
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体は、前記対象磁界が周期的に変化するときの所定のタイミングにおいて前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の磁化方向の成分を含むと共に前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第3の抵抗体と前記第4の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の磁化方向の成分を含むと共に前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第2の基板は、前記対象磁界が周期的に変化するときの前記第2のアームの抵抗値の位相が、前記対象磁界が周期的に変化するときの前記第1のアームの抵抗値の位相とは異なるように、前記第1の基板から離れた位置に配置されていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記第1のアームの抵抗値と前記第2のアームの抵抗値は、前記対象磁界の周期的な変化に応じて、互いに180°異なる位相で変化することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングと同じであり、
前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングと同じであることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングとは異なり、
前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングとは異なることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項5】
更に、第2の出力ポートを備え、
前記複数のアームは、更に、前記第1の基板に設けられた第3のアームと、前記第2の基板に設けられた第4のアームとを含み、
前記第3のアームは、回路構成上、前記グランドポートと前記第2の出力ポートとの間に設けられ、
前記第4のアームは、回路構成上、前記電源ポートと前記第2の出力ポートとの間に設けられ、
前記第3のアームは、直列に接続された第5の抵抗体および第6の抵抗体を含み、
前記第4のアームは、直列に接続された第7の抵抗体および第8の抵抗体を含み、
前記第5の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向の成分を含み、
前記第6の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第2の磁化方向の成分を含み、
前記第7の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第3の磁化方向の成分を含み、
前記第8の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第4の磁化方向の成分を含み、
前記第5の抵抗体と前記第6の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第5の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の磁化方向の成分を含むと共に前記第6の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第7の抵抗体と前記第8の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第7の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の磁化方向の成分を含むと共に前記第8の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第1の出力ポートの電位と前記第2の出力ポートの電位は、前記対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1の出力ポートの電位と前記第2の出力ポートの電位は、互いに90°異なる位相で変化することを特徴とする請求項5記載の磁気センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気センサと、
前記対象磁界を発生する磁界発生器とを備え、
前記磁気センサと前記磁界発生器は、前記磁気センサと前記磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、前記対象磁界が周期的に変化するように構成されていることを特徴とする磁気式エンコーダ。
【請求項8】
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、バイアス磁界が前記自由層に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項9】
前記第1のアームに含まれる前記複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、前記磁気センサに対する前記磁界発生器の相対的な移動方向と対応関係を有する一方向である基準方向と交差する第1の方向であり、
前記第2のアームに含まれる前記複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、前記基準方向と交差する第2の方向であることを特徴とする請求項8記載の磁気式エンコーダ。
【請求項10】
前記第1の方向と前記第2の方向の一方は、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から時計回り方向に90°回転した方向であり、
前記第1の方向と前記第2の方向の他方は、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から反時計回り方向に90°回転した方向であることを特徴とする請求項9記載の磁気式エンコーダ。
【請求項11】
前記第1の方向と前記第2の方向は、いずれも、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から時計回り方向または反時計回り方向に90°回転した方向であることを特徴とする請求項9記載の磁気式エンコーダ。
【請求項12】
前記磁界発生器は、M組のN極とS極が回転軸の周りに交互に配列された磁気スケールであることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項13】
前記Mは、奇数であり、
前記第2の基板は、nを整数としたときに、前記回転軸の周りに前記第1の基板から(180+n×360/M)°だけ回転した位置に配置されていることを特徴とする請求項12記載の磁気式エンコーダ。
【請求項14】
前記Mは、偶数であり、
前記第2の基板は、nを整数としたときに、前記回転軸の周りに前記第1の基板から(180+n×360/M±360/(2M))°だけ回転した位置に配置されていることを特徴とする請求項12記載の磁気式エンコーダ。
【請求項15】
前記磁界発生器は、複数組のN極とS極が所定の方向に交互に配列された磁気スケールであることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項16】
請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気センサの製造方法であって、
前記複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程を含み、
前記複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、
それぞれ、後に前記磁化固定層となる初期磁化固定層と、前記自由層と、前記ギャップ層とを含む複数の初期磁気抵抗効果素子を形成する工程と、
レーザ光と外部磁界とを用いて前記初期磁化固定層の前記第1の磁化の方向を固定する工程とを含むことを特徴とする磁気センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ、磁気式エンコーダおよび磁気センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサを用いた磁気式エンコーダは、所定の方向に位置が変化する可動物体の位置を検出するために用いられている。所定の方向は、直線的な方向または回転方向である。可動物体の位置を検出するために用いられる磁気式エンコーダは、可動物体の位置の変化に対応して、所定の範囲内で、磁気センサに対する磁気スケール等の磁界発生器の相対位置が変化するように構成されている。
【0003】
磁気センサに対する磁界発生器の相対位置が変化すると、磁界発生器によって発生されて磁気センサに印加される対象磁界の一方向の成分の強度が変化する。磁気センサは、例えば、対象磁界の一方向の成分の強度を検出して、この一方向の成分の強度に対応し且つ互いに位相の異なる2つの検出信号を生成する。磁気式エンコーダは、2つの検出信号に基づいて、磁気センサに対する磁界発生器の相対位置と対応関係を有する検出値を生成する。
【0004】
磁気式エンコーダ用の磁気センサとしては、複数の磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサが用いられている。例えば、特許文献1,2には、磁気抵抗効果素子として、磁石および磁気センサの相対移動方向とこの相対移動方向に直交する方向に、複数のGMR(巨大磁気抵抗効果)素子を配置した磁気センサが開示されている。
【0005】
特に、特許文献2に開示された磁気センサでは、複数のGMR素子によってA相のブリッジ回路とB相のブリッジ回路を構成している。また、この磁気センサでは、磁石のN極とS極との中心間距離(ピッチ)をλとしたときに、複数のGMR素子を、相対移動方向にλ、λ/2またはλ/4の中心間距離で配置している。A相のブリッジ回路とB相のブリッジ回路からは、位相がλ/2分だけずれた出力波形が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/031558号
【特許文献2】国際公開第2009/119471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の発明者による研究の過程で、磁気式エンコーダの構成によっては、検出信号に2次の高調波成分が発生することが分かった。検出値の誤差を低減するためには、2次の高調波成分を抑制することが望ましい。
【0008】
また、一般的に、磁気式エンコーダは、別々に製造された磁気センサと磁界発生器とを組み合わせることによって完成する。検出値の誤差を低減するためには、磁気センサと磁界発生器の各々の配置のばらつき等の製造ばらつきに起因する誤差を抑制することが望ましい。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、2次の高調波成分に起因する誤差と製造ばらつきに起因する誤差を抑制することができる磁気センサおよび磁気式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気センサは、複数のアームを含むブリッジ回路と、電源ポートと、グランドポートと、第1の出力ポートと、第1の基板と、第2の基板とを備えている。複数のアームの各々は、複数の磁気抵抗効果素子によって構成されると共に、対象磁界の周期的な変化に応じて抵抗値が変化するように構成されている。複数のアームは、第1の基板に設けられた第1のアームと、第2の基板に設けられた第2のアームとを含んでいる。第1のアームは、回路構成上、グランドポートと第1の出力ポートとの間に設けられている。第2のアームは、回路構成上、電源ポートと第1の出力ポートとの間に設けられている。第1のアームは、直列に接続された第1の抵抗体および第2の抵抗体を含んでいる。第2のアームは、直列に接続された第3の抵抗体および第4の抵抗体を含んでいる。
【0011】
複数の磁気抵抗効果素子の各々は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを含んでいる。第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいる。第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向とは反対方向の第2の磁化方向の成分を含んでいる。第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含んでいる。第4の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向とは反対方向の第4の磁化方向の成分を含んでいる。
【0012】
第1の抵抗体と第2の抵抗体は、対象磁界が周期的に変化するときの所定のタイミングにおいて第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むと共に第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むように配置されている。第3の抵抗体と第4の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の磁化方向の成分を含むと共に第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の磁化方向の成分を含むように配置されている。第2の基板は、対象磁界が周期的に変化するときの第2のアームの抵抗値の位相が、対象磁界が周期的に変化するときの第1のアームの抵抗値の位相とは異なるように、第1の基板から離れた位置に配置されている。
【0013】
本発明の磁気式エンコーダは、本発明の磁気センサと、対象磁界を発生する磁界発生器とを備えている。磁気センサと磁界発生器は、磁気センサと磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、対象磁界が周期的に変化するように構成されている。
【0014】
本発明の磁気センサの製造方法は、複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程を含んでいる。複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、それぞれ、後に磁化固定層となる初期磁化固定層と、自由層と、ギャップ層とを含む複数の初期磁気抵抗効果素子を形成する工程と、レーザ光と外部磁界とを用いて初期磁化固定層の第1の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁気センサおよび磁気式エンコーダでは、第1のアームは、第1の基板に設けられていると共に、前述のように構成された第1の抵抗体および第2の抵抗体を含んでいる。第2のアームは、第2の基板に設けられていると共に、前述のように構成された第3の抵抗体および第4の抵抗体を含んでいる。第2の基板は、対象磁界が周期的に変化するときの第2のアームの抵抗値の位相が、対象磁界が周期的に変化するときの第1のアームの抵抗値の位相とは異なるように、第1の基板から離れた位置に配置されている。これにより、本発明によれば、2次の高調波成分に起因する誤差と製造ばらつきに起因する誤差を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの第1のセンサ部分と磁界発生器とを示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの第2のセンサ部分と磁界発生とを示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態における磁気センサを示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態における磁気センサの構成を示す回路図である。
図7】本発明の第1の実施の形態における第1の基板の複数の抵抗体の配置を説明するための説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態における第2の基板の複数の抵抗体の配置を説明するための説明図である。
図9】本発明の第1の実施の形態における磁気抵抗効果素子の第1の例を示す斜視図である。
図10】本発明の第1の実施の形態における磁気抵抗効果素子の第2の例を示す斜視図である。
図11】本発明の第1の実施の形態における1つの抵抗体を示す平面図である。
図12】比較例の磁気センサを示す平面図である。
図13】比較例の磁気センサの構成を示す回路図である。
図14】比較例のモデルの検出値の誤差を示す特性図である。
図15】第1の実施例のモデルの検出値の誤差を示す特性図である。
図16】本発明の第2の実施の形態における磁気センサを示す平面図である。
図17】本発明の第2の実施の形態における磁気センサの構成を示す回路図である。
図18】比較例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図19】第2の実施例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図20】本発明の第3の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図21】本発明の第4の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図22】本発明の第5の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気式エンコーダの概略の構成について説明する。図1は、磁気式エンコーダ1を示す斜視図である。図2は、磁気式エンコーダ1を示す平面図である。本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1は、本実施の形態に係る磁気センサ2と、磁界発生器3とを含んでいる。
【0018】
磁界発生器3は、位置検出用の磁界であって、磁気センサ2が検出すべき磁界(検出対象磁界)である対象磁界を発生する。対象磁界は、仮想の直線に平行な方向の磁界成分(以下、一方向の磁界成分とも記す。)を含んでいる。磁気センサ2と磁界発生器3は、磁気センサ2と磁界発生器3の少なくとも一方が動作すると、基準位置における磁界成分の強度が変化するように構成されている。基準位置は、磁気センサ2が配置された位置であってもよい。磁気センサ2は、上記の磁界成分を含む対象磁界を検出して、磁界成分の強度に対応する少なくとも1つの検出信号を生成する。
【0019】
本実施の形態では特に、磁界発生器3は、複数組のN極とS極が回転軸Cの周りに交互に配列された磁気スケール(回転スケール)である。磁界発生器3は、回転軸Cに平行な一方向の端に位置する端面3aを有している。複数組のN極とS極は、端面3aに設けられている。図1および図2では、理解を容易にするために、N極とS極の一方の極にハッチングを付している。N極とS極の組の数は、奇数であってもよいし、偶数であってもよい。図1および図2に示した例では、N極とS極の組の数は31(奇数)である。
【0020】
磁界発生器3が回転軸Cを中心として回転すると、対象磁界が周期的に変化する。対象磁界が周期的に変化すると、基準位置における磁界成分の強度が周期的に変化する。
【0021】
磁気センサ2は、第1の基板10と第2の基板20とを備えている。第1の基板10と第2の基板20の各々には、複数の磁気検出素子(以下、MR素子と記す。)が設けられている。以下、第1の基板10と複数のMR素子とによって構成された部分を第1のセンサ部分2Aと言い、第2の基板20と複数のMR素子とによって構成された部分を第2のセンサ部分2Bと言う。第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、物理的に別個のパッケージであってもよい。また、第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bの各々は、複数のMR素子に電気的に接続された複数のリードを備えていてもよい。
【0022】
第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、磁界発生器3の端面3aに対向するように配置されている。第1のセンサ部分2Aが配置された位置における一方向の磁界成分の強度と、第2のセンサ部分2Bが配置された位置における一方向の磁界成分の強度は、磁界発生器3の回転に伴って変化する。
【0023】
ここで、N極とS極の数をMで表す。本実施の形態では、Mは奇数である。第2の基板20(第2のセンサ部分2B)は、nを整数としたときに、回転軸Cの周りに第1の基板10(第1のセンサ部分2A)から(180+n×360/M)°だけ回転した位置に配置されている。図1および図2には、Mが31であり、nが0である例を示している。この例では、第2の基板20(第2のセンサ部分2B)は、回転軸Cの周りに第1の基板10(第1のセンサ部分2A)から180°だけ回転した位置に配置されている。
【0024】
ここで、図2に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。本実施の形態では、回転軸Cに直交する2つの方向をX方向とY方向とし、回転軸Cに平行な一方向であって第1のセンサ部分2Aまたは第2のセンサ部分2Bから磁界発生器3に向かう方向をZ方向とする。図2では、Z方向を図2における手前から奥に向かう方向として表している。また、回転軸Cから第1のセンサ部分2Aに向かう方向をY方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、「Z方向から見たとき」という表現は、Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0025】
第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、Z方向に平行な方向について、同じ位置に配置されていてもよいし、互いに異なる位置に配置されていてもよい。
【0026】
ここで、第1の基板10と交差し回転軸Cと直交する第1の仮想の平面を想定する。第1の基板10に設けられた複数のMR素子は、回転軸Cを中心とし且つ第1の基板10と交差する第1の仮想の平面内の第1の仮想の円の接線方向(回転軸Cに直交する方向)の磁界成分の強度を検出することができるように構成されている。本実施の形態では特に、上記の接線方向は、X方向に平行な方向である。上記の磁界成分の強度は、磁界発生器3の回転に伴って、周期的に変化する。
【0027】
また、第2の基板20と交差し回転軸Cと直交する第2の仮想の平面を想定する。第2の基板20に設けられた複数のMR素子は、回転軸Cを中心とし且つ第2の基板20と交差する第2の仮想の平面内の第2の仮想の円の接線方向(回転軸Cに直交する方向)の磁界成分の強度を検出することができるように構成されている。本実施の形態では特に、上記の接線方向は、X方向に平行な方向である。上記の磁界成分の強度は、磁界発生器3の回転に伴って、周期的に変化する。
【0028】
次に、図3および図4を参照して、磁極ピッチと、第1の座標系と、第2の座標系について説明する。図3は、第1のセンサ部分2Aと磁界発生器3とを示す平面図である。図4は、第2のセンサ部分2Bと磁界発生器3とを示す平面図である。図3および図4に示したように、磁界発生器3の回転方向に隣接する2つのN極の間隔、すなわち1つのS極を介して隣接する2つのN極の中心間距離を磁極ピッチと言い、磁極ピッチの大きさを記号Lpで表す。1つのN極を介して隣接する2つのS極の中心間距離は、磁極ピッチLpと等しい。
【0029】
第1の座標系は、第1のセンサ部分2Aを基準とした座標系であって、Z方向に直交するD11方向およびD12方向によって定義される。D11方向は、第1の仮想の円の接線方向に平行な一方向である。図3は、第1のセンサ部分2Aの姿勢の一例を示している。この例では、D11方向は、X方向と一致する。また、この例では、D12方向は、回転軸C(図1および図2参照)から第1のセンサ部分2Aに向かう方向であり、Y方向と一致する。また、D11方向とは反対の方向を-D11方向とし、D12方向とは反対の方向を-D12方向とする。
【0030】
第1の基板10に設けられた複数のMR素子が検出する磁界成分の方向は、D11方向に平行な方向である。図3には、D11方向に離れた位置に配置された2つのMR素子が検出する磁界成分MFa,MFbの方向を示している。図3に示したタイミングでは、磁界成分MFaの方向は、D11方向と同じ方向であり、磁界成分MFbの方向は、-D11方向と同じ方向である。
【0031】
第2の座標系は,第2のセンサ部分2Bを基準とした座標系であって、Z方向に直交するD21方向およびD22方向によって定義される。D21方向は、第2の仮想の円の接線方向に平行な一方向である。図4は、第2のセンサ部分2Bの姿勢の一例を示している。この例では、D21方向は、X方向と一致する。また、この例では、D22方向は、第2のセンサ部分2Bから回転軸C(図1および図2参照)に向かう方向であり、Y方向と一致する。また、D21方向とは反対の方向を-D21方向とし、D22方向とは反対の方向を-D22方向とする。
【0032】
第2の基板20に設けられた複数のMR素子が検出する磁界成分の方向は、D21方向に平行な方向である。図4には、D21方向に離れた位置に配置された2つのMR素子が検出する磁界成分MFc,MFdの方向を示している。図4に示したタイミングでは、磁界成分MFcの方向は、-D21方向と同じ方向であり、磁界成分MFdの方向は、D21方向と同じ方向である。
【0033】
ここで、第1の座標系と第2の座標系において共通に用いられる基準方向DRの定義について説明する。基準方向DRは、磁気センサ2に対する磁界発生器3の相対的な移動方向と対応関係を有する一方向である。本実施の形態では特に、基準方向DRは、第1および第2のセンサ部分2A,2Bの各々に対するN極とS極の相対的な移動方向と対応関係を有している。上記の相対的な移動方向は、便宜上、直線的な方向として定義される。本実施の形態では、基準方向DRは、D11方向および-D21方向の各々と同じ方向であるものとする。N極とS極は、第1および第2のセンサ部分2A,2Bの各々から見て、基準方向DRまたは基準方向DRとは反対の方向に移動する。
【0034】
次に、図5および図6を参照して、磁気センサ2について詳しく説明する。図5は、磁気センサ2を示す平面図である。図6は、磁気センサ2の構成を示す回路図である。図6に示したように、磁気式エンコーダ1は、更に、プロセッサ40を備えている。プロセッサ40は、磁気センサ2が生成する、磁界成分の強度に対応する少なくとも1つの検出信号に基づいて、磁気センサ2または磁界発生器3の位置と対応関係を有する検出値Vsを生成する。プロセッサ40は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
【0035】
磁気センサ2は、更に、ブリッジ回路4と、電源ポートV1と、グランドポートG1と、第1の出力ポートE1と、第2の出力ポートE2とを備えている。ブリッジ回路4は、電源ポートV1、グランドポートG1、第1の出力ポートE1および第2の出力ポートE2に電気的に接続されている。第1および第2の出力ポートE1,E2は、プロセッサ40に電気的に接続されている。
【0036】
ブリッジ回路4は、複数のアームを含んでいる。複数のアームの各々は、複数のMR素子によって構成されると共に、対象磁界の周期的な変化に応じて抵抗値が変化するように構成されている。複数のアームの各々は、第1の仮想の円の接線方向の磁界成分または第2の仮想の円の接線方向の磁界成分に対しては感度を有するが、位置によらずに強度および方向が同一の外部磁界に対しては感度を有さないように構成されている。以下、上記の外部磁界を、一様な外部磁界と言う。
【0037】
本実施の形態では、ブリッジ回路4は、複数のアームとして、4つのアームR1,R2,R3,R4を含んでいる。アームR1,R2,R3,R4は、それぞれ、本発明の「第1のアーム」、「第2のアーム」、「第3のアーム」および「第4のアーム」に対応する。アームR1は、回路構成上、グランドポートG1と第1の出力ポートE1との間に設けられている。アームR2は、回路構成上、電源ポートV1と第1の出力ポートE1との間に設けられている。アームR3は、回路構成上、グランドポートG1と第2の出力ポートE2との間に設けられている。アームR4は、回路構成上、電源ポートV1と第2の出力ポートE2との間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0038】
アームR1,R3は、第1の基板10に設けられている。第1の基板10は、パッド11,12,13を有している。アームR1の一端は、パッド11に電気的に接続されている。アームR3の一端は、パッド12に電気的に接続されている。アームR1,R3の各他端は、パッド13に電気的に接続されている。
【0039】
アームR2,R4は、第2の基板20に設けられている。第2の基板20は、パッド21,22,23を有している。アームR2の一端は、パッド21に電気的に接続されている。アームR4の一端は、パッド22に電気的に接続されている。アームR2,R4の各他端は、パッド23に電気的に接続されている。
【0040】
パッド11,21は、第1の配線によって互いに電気的に接続されている。また、第1の配線は、第1の出力ポートE1に電気的に接続されている。パッド12,22は、第2の配線によって互いに電気的に接続されている。また、第2の配線は、第2の出力ポートE2に電気的に接続されている。パッド13は、グランドポートG1に電気的に接続されている。パッド23は、電源ポートV1に電気的に接続されている。
【0041】
磁気センサ2は、定電圧駆動であってもよいし、定電流駆動であってもよい。磁気センサ2が定電圧駆動である場合、電源ポートV1には、所定の大きさの電圧が印加される。磁気センサ2が定電流駆動である場合、電源ポートV1には、所定の大きさの電流が供給される。
【0042】
磁気センサ2は、第1の出力ポートE1の電位と対応関係を有する信号を、第1の検出信号S1として生成し、第2の出力ポートE2の電位と対応関係を有する信号を、第2の検出信号S2として生成する。プロセッサ40は、第1および第2の検出信号S1,S2に基づいて、検出値Vsを生成する。なお、磁気センサ2およびプロセッサ40の少なくとも一方は、第1および第2の検出信号S1,S2の各々の振幅、位相およびオフセットを補正することができるように構成されていてもよい。
【0043】
アームR1~R4の各々は、直列に接続された2つの抵抗体を含んでいる。2つの抵抗体の各々は、複数のMR素子によって構成されると共に、それぞれ検出対象の磁界成分の強度に応じて抵抗値が変化するように構成されている。また、理想的には、アームR1~R4の各々において、2つの抵抗値は、検出対象の磁界成分の強度の周期的な変化に応じて、2つの抵抗体の各々の抵抗値が同じ位相で変化するように構成されると共に、一様な外部磁界の強度または方向の周期的な変化に応じて、2つの抵抗体の各々の抵抗値が逆位相で変化するように構成されている。
【0044】
本実施の形態では、アームR1は、2つの抵抗体R11,R12を含んでいる。アームR2は、2つの抵抗体R13,R14を含んでいる。アームR3は、2つの抵抗体R21,R22を含んでいる。アームR4は、2つの抵抗体R23,R24を含んでいる。本実施の形態では特に、抵抗体R11,R12,R13,R14,R21,R22,R23,R24は、それぞれ、本発明の「第1の抵抗体」、「第2の抵抗体」、「第3の抵抗体」、「第4の抵抗体」、「第5の抵抗体」、「第6の抵抗体」、「第7の抵抗体」および「第8の抵抗体」に対応する。
【0045】
抵抗体R11の一端は、パッド13に電気的に接続されている。抵抗体R11の他端は、抵抗体R12の一端に電気的に接続されている。抵抗体R12の他端は、パッド11に電気的に接続されている。
【0046】
抵抗体R13の一端は、パッド23に電気的に接続されている。抵抗体R13の他端は、抵抗体R14の一端に電気的に接続されている。抵抗体R14の他端は、パッド21に電気的に接続されている。
【0047】
抵抗体R21の一端は、パッド13に電気的に接続されている。抵抗体R21の他端は、抵抗体R22の一端に電気的に接続されている。抵抗体R22の他端は、パッド12に電気的に接続されている。
【0048】
抵抗体R23の一端は、パッド23に電気的に接続されている。抵抗体R23の他端は、抵抗体R24の一端に電気的に接続されている。抵抗体R24の他端は、パッド22に電気的に接続されている。
【0049】
第1の基板10は、更に、サブパッド15を有している。サブパッド15は、アームR3の一端と他端との間に電気的に接続されている。本実施の形態では特に、サブパッド15は、抵抗体R21,R22の接続点に電気的に接続されている。
【0050】
第2の基板20は、更に、サブパッド25を有している。サブパッド25は、アームR4の一端と他端との間に電気的に接続されている。本実施の形態では特に、サブパッド25は、抵抗体R23,R24の接続点に電気的に接続されている。
【0051】
アームR1の抵抗値とアームR2の抵抗値は、対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化する。アームR3の抵抗値とアームR4の抵抗値は、対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化する。本実施の形態では、対象磁界が周期的に変化するときのアームR2の抵抗値の位相(アームR4の抵抗値の位相)が、対象磁界が周期的に変化するときのアームR1の抵抗値の位相(アームR3の抵抗値の位相)と異なるように、第2の基板20を、第1の基板10から離れた位置に配置している。
【0052】
アームR1の抵抗値とアームR2の抵抗値の位相差と、アームR3の抵抗値とアームR4の抵抗値の位相差は、それぞれ180°であってもよい。前述のように、第2の基板20を、回転軸Cの周りに第1の基板10から(180+n×360/M)°だけ回転した位置に配置することにより、これらの位相差を180°にすることができる。なお、これらの位相差は、180°に限らず、例えば175°~185°の範囲内であってもよい。
【0053】
次に、図3および図7を参照して、第1の基板10における抵抗体R11,R12,R21,R22の配置について説明する。図7は、第1の基板10における抵抗体R11,R12,R21,R22の配置を説明するための説明図である。第1の基板10に設けられた抵抗体R11,R12,R21,R22の配置は、図3を参照して説明した第1の座標系によって定義される。
【0054】
抵抗体R11,R12の各々の抵抗値は、第1の検出信号S1と対応関係を有している。抵抗体R21,R22の各々の抵抗値は、第2の検出信号S2と対応関係を有している。抵抗体R11,R12の組と抵抗体R21,R22の組は、第1の検出信号S1の位相と第2の検出信号S2の位相が互いに異なるように、D11方向に平行な方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0055】
図7において、符号C11は、抵抗体R11内の第1の位置を示し、符号C12は、抵抗体R12内の第2の位置を示し、符号C21は、抵抗体R21内の第3の位置を示し、符号C22は、抵抗体R22内の第4の位置を示している。本実施の形態では特に、第1の位置C11は、Z方向から見たときの抵抗体R11の重心であり、第2の位置C12は、Z方向から見たときの抵抗体R12の重心であり、第3の位置C21は、Z方向から見たときの抵抗体R21の重心であり、第4の位置C22は、Z方向から見たときの抵抗体R22の重心である。
【0056】
ここで、設計ピッチλを以下のように定義する。設計ピッチλは、抵抗体R11内における所定の位置と抵抗体R21内における所定の位置の、D11方向に平行な方向における間隔の4倍である。本実施の形態では特に、抵抗体R11内における所定の位置は第1の位置C11であり、抵抗体R21内における所定の位置は第3の位置C21である。
【0057】
また、本実施の形態では特に、D11方向に平行な方向における第1の位置C11と第3の位置C21との間隔と、D11方向に平行な方向における第2の位置C12と第4の位置C22との間隔は、互いに等しい。従って、抵抗体R11,R21の組の代わりに、抵抗体R12,R22の組を用いて、設計ピッチλを定義することもできる。
【0058】
ここで、複数組のN極とS極を含む特定の磁界発生器を想定する。特定の磁界発生器が動作すると、抵抗体R11,R12の組の抵抗値(アームR1の抵抗値)と抵抗体R21,R22の組の抵抗値(アームR2の抵抗値)は、周期的に変化すると共に、位相差が90°になる。設計ピッチλは、特定の磁界発生器において、1つのS極を介して隣接する2つのN極の間隔と実質的に等しくなる。
【0059】
特定の磁界発生器は、図2に示した磁界発生器3であってもよい。この場合、設計ピッチλは、図2に示した磁極ピッチLpと等しくなる。あるいは、特定の磁界発生器は、磁極ピッチが磁界発生器3の磁極ピッチLpとは異なる磁界発生器であってもよい。この場合、設計ピッチλは、磁極ピッチLpとは異なる大きさになる。
【0060】
抵抗体R11,R12,R21,R22は、物理的な配置に関する以下の要件を満たしている。D11方向に平行な方向における第1の位置C11と第2の位置C12との間隔は、設計ピッチλの1/2の奇数倍と等しい。D11方向に平行な方向における第3の位置C21と第4の位置C22との間隔は、設計ピッチλの1/2の奇数倍と等しい。D11方向に平行な方向における第1の位置C11と第3の位置C21との間隔は、設計ピッチλの(4n-3)/4と等しい。なお、nは1以上の整数である。
【0061】
本実施の形態では、第2の位置C12は、第1の位置C11からD11方向にλ/2だけ離れた位置であり、第4の位置C22は、第3の位置C21からD11方向にλ/2だけ離れた位置である。第3および第4の位置C21,C22は、第1および第2の位置C11,C12から見てD12方向の先にある。
【0062】
次に、図4および図8を参照して、第2の基板20における抵抗体R13,R14,R23,R24の配置について説明する。図8は、第2の基板20における抵抗体R13,R14,R23,R24の配置を説明するための説明図である。第2の基板20に設けられた抵抗体R13,R14,R23,R24の配置は、図4を参照して説明した第2の座標系によって定義される。
【0063】
図8において、符号C13は、抵抗体R13内の第5の位置を示し、符号C14は、抵抗体R14内の第6の位置を示し、符号C23は、抵抗体R23内の第7の位置を示し、符号C24は、抵抗体R24内の第8の位置を示している。
【0064】
第2の基板20における抵抗体R13,R14,R23,R24の物理的な配置の規則は、第1の基板10における抵抗体R11,R12,R21,R22の物理的な配置の規則と同じである。抵抗体R11,R12,R21,R22の物理的な配置の規則の説明中の抵抗体R11,R12,R21,R22、第1ないし第4の位置C11,C12,C21,C22、D11方向ならびにD12方向を、それぞれ抵抗体R13,R14,R23,R24、第5ないし第8の位置C13,C14,C23,C24、D21方向ならびにD22方向に置き換えれば、抵抗体R13,R14,R23,R24の物理的な配置の説明になる。
【0065】
次に、抵抗体R11~R14,R21~R24の構成について説明する。第1および第2の検出信号S1,S2の各々は、理想的な正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)を描くように所定の信号周期で周期的に変化する理想成分を含んでいる。本実施の形態では、第1の検出信号S1の理想成分の位相と第2の検出信号S2の理想成分の位相が、互いに異なるように、抵抗体R11~R14,R21~R24が構成されている。特定の磁界発生器が磁界発生器3である場合、すなわち設計ピッチλが磁極ピッチLpと等しい場合、図7および図8に示した設計ピッチλは、理想成分における1周期すなわち電気角の360°に相当する。
【0066】
また、第1および第2の検出信号S1,S2の各々は、理想成分の他に、それぞれ理想成分の高次の高調波に相当する複数の高調波成分を含んでいる。本実施の形態では、複数の高調波成分が低減されるように、抵抗体R11~R14,R21~R24が構成されている。
【0067】
以下、抵抗体R11~R14,R21~R24の構成について具体的に説明する。始めに、MR素子50の構成について説明する。本実施の形態では、MR素子50は、スピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化固定層51と、自由層53と、磁化固定層51と自由層53の間に配置されたギャップ層52とを含んでいる。磁化固定層51は、方向が固定された第1の磁化を有している。自由層53は、方向が変化可能な第2の磁化を有している。磁化固定層51、ギャップ層52および自由層53は、Z方向に平行な方向に積層されている。
【0068】
スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。本実施の形態では特に、磁気センサ2の寸法を小さくするために、MR素子50は、TMR素子であることが好ましい。TMR素子では、ギャップ層52はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層52は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層53の磁化の方向が磁化固定層51の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
【0069】
図5において、抵抗体R11~R14,R21~R24内に描かれた矢印は、その抵抗体に含まれる複数のMR素子50の各々の磁化固定層51の第1の磁化の方向を表している。図5では、磁化固定層51の第1の磁化の方向を、符号Mpを付した矢印で表している。図6では、磁化固定層51の第1の磁化の方向を、塗りつぶした矢印で示している。
【0070】
ここで、図9および図10を参照して、MR素子50の第1および第2の例について説明する。図9は、MR素子50の第1の例を示す斜視図である。第1の例では、MR素子50は、Z方向にこの順に積層された磁化固定層51、ギャップ層52および自由層53を含む積層膜50Aを含んでいる。Z方向から見た積層膜50Aの平面形状は、円形であってもよいし、図9に示したように正方形またはほぼ正方形であってもよい。
【0071】
MR素子50の積層膜50Aの下面は、図示しない下部電極によって、他のMR素子50の積層膜50Aの下面に電気的に接続され、MR素子50の積層膜50Aの上面は、図示しない上部電極によって、更に他のMR素子50の積層膜50Aの上面に電気的に接続されている。これにより、複数のMR素子50は、直列に接続されている。なお、積層膜50Aにおける層51~53の配置は、図9に示した配置とは上下が反対でもよい。
【0072】
MR素子50は、更に、自由層53に対して印加されるバイアス磁界を発生するバイアス磁界発生器50Bを含んでいる。バイアス磁界の方向は、磁化固定層51の第1の磁化の方向と交差する方向である。第1の例では、バイアス磁界発生器50Bは、2つの磁石54,55を含んでいる。第1の基板10に設けられたMR素子50では、磁石54,55は、D12方向に沿ってこの順に並んでいる。第2の基板20に設けられたMR素子50では、磁石54,55は、D22方向に沿ってこの順に並んでいる。積層膜50Aは、磁石54と磁石55との間に配置されている。第1の例では特に、積層膜50Aと磁石54,55は、Z方向に直交する1つの仮想の平面と交差する位置に配置されている。
【0073】
図9において、磁石54,55内の矢印は、磁石54,55の磁化の方向を表している。なお、図5では、バイアス磁界の方向を、符号Mbを付した矢印で表している。図6では、バイアス磁界の方向を、白抜きの矢印で示している。
【0074】
第1の基板10に設けられたMR素子50では、バイアス磁界の方向は、D12方向である。磁界発生器3を基準にしてバイアス磁界の方向を定義すると、第1の基板10では、バイアス磁界の方向は、磁界発生器3の上方から見て(Z方向から見て)、基準方向DR(図3参照)から反時計回り方向に90°回転した方向である。
【0075】
第2の基板20に設けられたMR素子50では、バイアス磁界の方向は、D22方向である。磁界発生器3を基準にしてバイアス磁界の方向を定義すると、第2の基板20では、バイアス磁界の方向は、磁界発生器3の上方から見て(Z方向から見て)、基準方向DR(図4参照)から時計回り方向に90°回転した方向である。
【0076】
図10は、MR素子50の第2の例を示す斜視図である。MR素子50の第2の例の構成は、積層膜50Aの平面形状および磁石54,55の位置を除いて、MR素子50の第1の例の構成と同じである。第2の例では、磁石54,55は、Z方向について積層膜50Aとは異なる位置に配置されている。図10に示した例では特に、磁石54,55は、積層膜50Aに対して、Z方向の先に配置されている。また、Z方向から見た積層膜50Aの平面形状は、D12方向(D22)に長い長方形である。Z方向から見たときに、磁石54,55は、積層膜50Aと重なる位置に配置されている。
【0077】
なお、バイアス磁界の方向および磁石54,55の配置は、図9および図10に示した例に限られない。例えば、バイアス磁界の方向は、図3および図4に示した基準方向DRと交差する方向であればよく、D12方向(D22方向)に対して傾いた方向であってもよい。例えば、バイアス磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度は、85°~95°の範囲内であってもよい。また、磁石54,55は、D11方向(D21方向)に平行な方向において互いにずれていてもよい。
【0078】
また、バイアス磁界発生器50Bの代わりに、形状磁気異方性や結晶磁気異方性等の一軸磁気異方性によって、自由層53にバイアス磁界を印加してもよい。
【0079】
次に、抵抗体R11~R14,R21~R24の各々における磁化固定層51の第1の磁化の方向について説明する。第1の基板10に設けられた抵抗体R11,R12,R21,R22の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、図3を参照して説明した第1の座標系によって定義される。抵抗体R11,R21の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいる。抵抗体R12,R22の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、第1の磁化方向とは反対の第2の磁化方向の成分を含んでいる。本実施の形態では特に、第1の磁化方向は-D11方向であり、第2の磁化方向はD11方向である。
【0080】
第2の基板20に設けられた抵抗体R13,R14,R23,R24の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、図4を参照して説明した第2の座標系によって定義される。抵抗体R13,R23の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含んでいる。抵抗体R14,R24の各々における磁化固定層51の第1の磁化は、第3の磁化方向とは反対の第4の磁化方向の成分を含んでいる。本実施の形態では特に、第3の磁化方向は-D21方向であり、第4の磁化方向はD21方向である。
【0081】
なお、第1の磁化が特定の磁化方向の成分を含んでいる場合、特定の磁化方向の成分は、第1の磁化の主成分であってもよい。あるいは、第1の磁化は、特定の磁化方向に直交する方向の成分を含んでいなくてもよい。本実施の形態では、第1の磁化が特定の磁化方向の成分を含んでいる場合、第1の磁化の方向は、特定の磁化方向またはほぼ特定の磁化方向になる。
【0082】
次に、抵抗体R11~R14,R21~R24の配置と自由層53の第2の磁化の方向との関係について説明する。ここでは、便宜上、抵抗体R11~R14,R21~R24の各々において、複数のMR素子50を代表する1つのMR素子50の自由層53を想定して説明する。抵抗体R11~R14,R21~R24の各々において、自由層53の第2の磁化の方向は、MR素子50が検出する磁界成分の強度に応じて、Z方向に直交する平面内で変化する。これにより、抵抗体R11~R14,R21~R24の各々の抵抗値と、アームR1~R4の各々の抵抗値と、第1および第2の出力ポートE1,E2の各々の電位は、磁界成分の強度に応じて変化する。MR素子50の自由層53の第2の磁化の方向は、MR素子50が検出する磁界成分の強度が0の場合には、自由層53に印加されるバイアス磁界の方向と同じ方向になる。
【0083】
抵抗体R11と抵抗体R12は、対象磁界が周期的に変化するときの所定のタイミングにおいて、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むと共に抵抗体R12における自由層53の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むように配置される。抵抗体R11と抵抗体R12は、更に、対象磁界が周期的に変化するときの他の所定のタイミングにおいて、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むと共に抵抗体R12における自由層53の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むように配置される。
【0084】
例えば、図3に示したタイミングにおいて、抵抗体R11のMR素子50が磁界成分MFaを検出し、抵抗体R12のMR素子50が磁界成分MFbを検出するように、抵抗体R11,R12をD11方向に沿って配置した場合、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化は、バイアス磁界の方向(D12方向)からD11方向に向かって傾き、抵抗体R12における自由層53の第2の磁化は、バイアス磁界の方向(D12方向)から-D11方向に向かって傾く。この場合、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化は、D11方向の成分すなわち第2の磁化方向の成分を含み、抵抗体R12における自由層53の第2の磁化は、-D11方向の成分すなわち第1の磁化方向の成分を含んでいる。
【0085】
上述のように抵抗体R11,R12を配置した場合、磁界成分MFa,MFbの各々の方向が図3に示した方向とは反対になるタイミングでは、自由層53の磁化は、上記の説明における方向とは反対の方向に向かって傾く。この場合、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化は、-D11方向の成分すなわち第1の磁化方向の成分を含み、抵抗体R12における自由層53の第2の磁化は、D11方向の成分すなわち第2の磁化方向の成分を含んでいる。
【0086】
抵抗体R11のMR素子50が図7に示した第1の位置C11に配置され、抵抗体R12のMR素子50が図7に示した第2の位置C12に配置されている場合であって、設計ピッチλが磁極ピッチLpと等しい場合、抵抗体R11のMR素子50が検出する磁界成分MFaの強度が0になるタイミングは、抵抗体R12のMR素子50が検出する磁界成分MFbの強度が0になるタイミングと同じである。従って、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化の方向がバイアス磁界の方向(D12方向)になるタイミングは、抵抗体R12における自由層53の第2の磁化の方向がバイアス磁界の方向(D12方向)になるタイミングと同じである。
【0087】
抵抗体R11のMR素子50が図7に示した第1の位置C11に配置され、抵抗体R12のMR素子50が図7に示した第2の位置C12に配置されている場合であって、設計ピッチλが磁極ピッチLpと異なる場合、抵抗体R11のMR素子50が検出する磁界成分MFaの強度が0になるタイミングは、抵抗体R12のMR素子50が検出する磁界成分MFbの強度が0になるタイミングとは異なる。従って、抵抗体R11における自由層53の第2の磁化の方向がバイアス磁界の方向(D12方向)になるタイミングは、抵抗体R12における自由層53の第2の磁化の方向がバイアス磁界の方向(D12方向)になるタイミングとは異なる。
【0088】
抵抗体R11,R12の配置についての上記の説明は、抵抗体R13,R14の組、抵抗体R21,R22の組、および抵抗体R23,R24の組にも当てはまる。抵抗体R11,R12の配置の説明中の、抵抗体R11,R12、D11方向、D12方向、第1の磁化方向、第2の磁化方向、第1の位置C11および第2の位置C12を、それぞれ抵抗体R13,R14、D21方向、D22方向、第3の磁化方向、第4の磁化方向、第5の位置C13および第6の位置C14に置き換えれば、抵抗体R13,R14の配置の説明になる。
【0089】
また、抵抗体R11,R12の配置の説明中の、抵抗体R11,R12、第1の位置C11および第2の位置C12を、それぞれ抵抗体R21,R22、第3の位置C21および第4の位置C22に置き換えれば、抵抗体R21,R22の配置の説明になる。
【0090】
また、抵抗体R11,R12の配置の説明中の、抵抗体R11,R12、D11方向、D12方向、第1の磁化方向、第2の磁化方向、第1の位置C11および第2の位置C12を、それぞれ抵抗体R23,R24、D21方向、D22方向、第3の磁化方向、第4の磁化方向、第7の位置C23および第8の位置C24に置き換えれば、抵抗体R23,R24の配置の説明になる。
【0091】
ここまでは、抵抗体R11~R14,R21~R24の各々において、複数のMR素子50を代表する1つのMR素子50の自由層53を想定して説明してきた。抵抗体R11~R14,R21~R24の各々は、実際には、互いに異なる位置に配置された複数のMR素子50によって構成されている。そのため、複数のMR素子50のうちの少なくとも1つのMR素子50が、抵抗体R11~R14,R21~R24の配置に関する要件を満たしていればよい。
【0092】
次に、抵抗体R11~R14,R21~R24の各々における複数のMR素子50の配置について説明する。ここで、1つ以上のMR素子50の集合を、素子群という。抵抗体R11~R14,R21~R24の各々は、複数の素子群を含んでいる。複数の素子群は、誤差成分が低減されるように、設計ピッチλに基づいて、所定の間隔を開けて配置されている。なお、以下の説明において、複数の素子群の配置について説明する場合、素子群の所定の位置を基準にして説明するものとする。所定の位置は、例えば、Z方向から見たときの素子群の重心である。
【0093】
図11は、抵抗体R11を示す平面図である。図11に示したように、抵抗体R11は、8つの素子群31,32,33,34,35,36,37,38を含んでいる。素子群31~38の各々は、4つの区画に区分けされている。各区画には、1つ以上のMR素子50が配置される。従って、各素子群は、4つ以上のMR素子50を含んでいる。複数のMR素子50は、素子群内において直列に接続されていてもよい。この場合、複数の素子群は、直列に接続されていてもよい。あるいは、複数のMR素子50は、素子群に関わらずに直列に接続されていてもよい。
【0094】
図11では、理想成分の第3高調波(3次の高調波)に相当する高調波成分と、理想成分の第5高調波(5次の高調波)に相当する高調波成分と、理想成分の第7高調波(7次の高調波)に相当する高調波成分が低減されるように、素子群31~38が配置されている。図11に示したように、素子群31~34は、D11方向に沿って配置されている。素子群32は、素子群31に対して、D11方向にλ/10だけ離れた位置に配置されている。素子群33は、素子群31に対して、D11方向にλ/6だけ離れた位置に配置されている。素子群34は、素子群31に対して、D11方向にλ/10+λ/6だけ離れた位置(素子群32に対して、D11方向にλ/6だけ離れた位置)に配置されている。
【0095】
また、図11に示したように、素子群35~38は、素子群31~34の-D12方向の先において、D11方向に沿って配置されている。素子群35は、素子群31に対して、D11方向にλ/14だけ離れた位置に配置されている。素子群36は、素子群31に対して、D11方向にλ/14+λ/10だけ離れた位置(素子群32に対して、D11方向にλ/14だけ離れた位置)に配置されている。素子群37は、素子群31に対して、D11方向にλ/14+λ/6だけ離れた位置(素子群33に対して、D11方向にλ/14だけ離れた位置)に配置されている。素子群38は、素子群31に対して、D11方向にλ/14+λ/10+λ/6だけ離れた位置(素子群34に対して、D11方向にλ/14だけ離れた位置)に配置されている。
【0096】
複数の高調波成分を低減するための複数の素子群の配置は、図11に示した例に限られない。ここで、k,mをそれぞれ1以上且つ互いに異なる整数とする。例えば、2k+1次の高調波に相当する高調波成分を低減する場合、第1の素子群を第2の素子群に対してD11方向にλ/(4k+2)だけ離れた位置に配置する。更に、2m+1次の高調波に相当する誤差成分を低減する場合、第3の素子群を第1の素子群に対してD11方向にλ/(4m+2)だけ離れた位置に配置し、第4の素子群を第2の素子群に対してD11方向にλ/(4m+2)だけ離れた位置に配置する。このように、複数の高調波に相当する高調波成分を低減する場合、ある1つの高調波に相当する誤差成分を低減するための複数の素子群の各々は、他の高調波に相当する誤差成分を低減するための複数の素子群の各々に対して、D11方向に、設計ピッチλに基づく所定の間隔だけ離れた位置に配置される。
【0097】
本実施の形態では、抵抗体R12~R14,R21~R24の各々における複数の素子群の構成および配置は、抵抗体R11における複数の素子群の構成および配置と同じである。すなわち、抵抗体R12~R14,R21~R24の各々も、図11に示した構成および位置関係の8つの素子群31~38を含んでいる。なお、抵抗体R11の8つの素子群31~38の位置関係の説明中のD11方向およびD12方向を、それぞれD21方向およびD22方向に置き換えれば、抵抗体R13,R23,R23,R24の各々の8つの素子群31~38の位置関係の説明になる。
【0098】
なお、抵抗体R12の素子群31は、抵抗体R11の素子群31に対して、D11方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。抵抗体R22の素子群31は、抵抗体R21の素子群31に対して、D11方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。抵抗体R21の素子群31は、抵抗体R11の素子群31に対して、D11方向にλ/4だけ離れた位置に配置されている。
【0099】
抵抗体R14の素子群31は、抵抗体R13の素子群31に対して、D21方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。抵抗体R24の素子群31は、抵抗体R23の素子群31に対して、D21方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。抵抗体R23の素子群31は、抵抗体R13の素子群31に対して、D21方向にλ/4だけ離れた位置に配置されている。
【0100】
以上説明した抵抗体R11~R14,R21~R24の構成により、第1の検出信号S1の理想成分に対する第2の検出信号S2の理想成分の位相差が、所定の信号周期(理想成分の信号周期)の1/4の奇数倍になると共に、第1および第2の検出信号S1,S2の各々の複数の高調波成分が低減される。
【0101】
なお、抵抗体R11~R14,R21~R24の位置と、素子群31~38の位置は、MR素子50の作製の精度等の観点から、上述の位置からわずかにずれていてもよい。
【0102】
次に、本実施の形態における検出値Vsの生成方法について説明する。始めに、設計ピッチλが磁極ピッチLpと等しい場合の検出値Vsの生成方法について説明する。対象磁界が周期的に変化する場合、第1のポートE1の電位と第2の出力ポートE2の電位は、互いに90°異なる位相で変化する。これにより、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2も、互いに90°異なる位相で変化する。
【0103】
プロセッサ40は、例えば、以下のようにして検出値Vsを生成する。プロセッサ40は、第1の検出信号S1に対する第2の検出信号S2の比のアークタンジェントすなわちatan(S2/S1)を計算することによって、0°以上360°未満の範囲内で初期検出値を求める。初期検出値は、上記のアークタンジェントの値そのものであってもよいし、アークタンジェントの値に所定の角度を加えたものであってもよい。
【0104】
上記のアークタンジェントの値が0°のときには、Z方向から見たときに、磁界発生器3のS極の位置と、抵抗体R11,R13の各々の素子群31の位置が一致する。また、上記のアークタンジェントの値が180°のときには、Z方向から見たときに、磁界発生器3のN極の位置と、抵抗体R11,R13の各々の素子群31の位置が一致する。従って、初期検出値は、1つのS極から1つのN極を介して隣接する他の1つのS極までの範囲内での磁界発生器3の回転位置と対応関係を有している。
【0105】
また、プロセッサ40は、初期検出値の1周期分を電気角の360°とし、基準位置からの電気角の回転数をカウントする。電気角は、磁界発生器3の回転位置と対応関係を有し、電気角の1回転は、1つのS極から1つのN極を介して隣接する他の1つのS極までの移動量に相当する。プロセッサ40は、初期検出値と、電気角の回転数に基づいて、磁界発生器3の回転位置と対応関係を有する検出値Vsを生成する。
【0106】
なお、対象磁界が周期的に変化する場合における第1のポートE1の電気と第2の出力ポートE2の電位の位相差は、90°に限らず、例えば85°~95°の範囲内であってもよい。
【0107】
次に、設計ピッチλが磁極ピッチLpと異なる場合の検出値Vsの生成方法について簡単に説明する。この場合、プロセッサ40は、まず、第1および第2の検出信号S1,S2の各々に対して所定の補正処理を実行する。補正処理は、少なくとも、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2を用いて、位相差が90°の2つの補正後信号を生成する処理を含んでいる。補正処理は、更に、第1および第2の検出信号S1,S2または2つの補正後信号の各々の振幅を補正する処理と、第1および第2の検出信号S1,S2または2つの補正後信号の各々のオフセットを補正する処理の、少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0108】
プロセッサ40は、次に、2つの補正後信号のうちの一方に対する他方の比のアークタンジェントを計算することによって、0°以上360°未満の範囲内で初期検出値を求める。初期検出値は、上記のアークタンジェントの値そのものであってもよいし、アークタンジェントの値に所定の角度を加えたものであってもよい。初期検出値から検出値Vsを生成する処理の内容は、設計ピッチλが磁極ピッチLpと等しい場合と同様である。
【0109】
次に、本実施の形態に係る磁気センサ2の製造方法について説明する。磁気センサ2の製造方法は、複数の第1のセンサ部分2Aおよび複数の第2のセンサ部分2Bを作製する工程と、1つの第1のセンサ部分2Aと1つの第2のセンサ部分2Bとを電気的に接続することによって1つの磁気センサ2を作製する工程とを含んでいる。
【0110】
第2のセンサ部分2Bの構造は、第1のセンサ部分2Aの構造と同じであってもよい。この場合、複数の第1のセンサ部分2Aおよび複数の第2のセンサ部分2Bを作製する工程は、初期基板の上に、複数のMR素子50と、複数のパッドと、複数のサブパッドと、複数の配線を形成工程と、初期基板を分割して、複数のセンサ部分を形成する工程とを含んでいる。初期基板は、後に複数の第1の基板10となる部分と後に複数の第2の基板20となる部分を含んでいる。複数のセンサ部分の各々は、分割された初期基板と、4つの抵抗体を構成する複数のMR素子50と、3つのパッドと、1つのサブパッドとを含んでいる。
【0111】
複数のセンサ部分の各々は、第1のセンサ部分2Aとしても第2のセンサ部分2Bとしても用いることが可能である。第1のセンサ部分2Aとして用いられるセンサ部分では、分割された初期基板、4つの抵抗体、3つのパッドおよび1つのサブパッドは、それぞれ第1の基板10、抵抗体R11,R12,R21,R22、パッド11~13およびサブパッド15になる。第2のセンサ部分2Bとして用いられるセンサ部分では、分割された初期基板、4つの抵抗体、3つのパッドおよび1つのサブパッドは、それぞれ第1の基板10、抵抗体R13,R14,R23,R24、パッド21~23およびサブパッド25になる。
【0112】
なお、第2のセンサ部分2Bの構造は、第1のセンサ部分2Aの構造と異なっていてもよい。この場合、1つの初期基板の上に、複数の第1のセンサ部分2Aの第1の基板10以外の構成要素と、複数の第2のセンサ部分2Bの第2の基板20以外の構成要素とを形成してもよい。あるいは、1つの初期基板の上に、複数の第1のセンサ部分2Aの第1の基板10以外の構成要素を形成し、他の1つの初期基板の上に、複数の第2のセンサ部分2Bの第2の基板20以外の構成要素を形成してもよい。
【0113】
次に、複数のMR素子50を形成する工程について更に詳しく説明する。複数のMR素子50を形成する工程では、まず、後に複数のMR素子50となる複数の初期MR素子を形成する。複数の初期MR素子の各々は、後に磁化固定層51となる初期磁化固定層と、自由層53と、ギャップ層52とを含んでいる。
【0114】
次に、レーザ光と、所定の方向の外部磁界とを用いて、初期磁化固定層の磁化の方向を、上記の所定の方向に固定する。例えば、後に抵抗体R11,R14,R22,R23を構成する複数のMR素子50になる複数の初期MR素子では、第1の方向の外部磁界を印加しながら、複数の初期MR素子に対してレーザ光を照射する。レーザ光の照射が完了すると、初期磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向に固定される。これにより、初期磁化固定層は磁化固定層51になり、複数の初期MR素子は、抵抗体R11,R14,R22,R23を構成する複数のMR素子50になる。
【0115】
また、後に抵抗体R12,R13,R21,R24を構成する複数のMR素子50になる他の複数の初期MR素子では、外部磁界の方向を第1の方向とは反対の第2の方向とすることにより、他の複数の初期MR素子の各々の初期磁化固定層の磁化の方向を、第2の方向に固定することができる。このようにして、複数のMR素子50が形成される。
【0116】
次に、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1および磁気センサ2の作用および効果について説明する。本実施の形態では、アームR1~R4と抵抗体R11~R14,R21~R24は、2次の高調波に相当する誤差と製造ばらつきに起因する誤差が低減されるように構成されている。以下、これについて、比較例の磁気式エンコーダと比較しながら説明する。
【0117】
比較例の磁気式エンコーダは、比較例の磁気センサ102と、図1および図2に示した磁界発生器3とを備えている。比較例の磁気センサ102と磁界発生器3との位置関係は、本実施の形態における第1のセンサ部分2Aと磁界発生器3との位置関係と同じである。
【0118】
図12は、比較例の磁気センサ102を示す平面図である。図13は、比較例の磁気センサ102の構成を示す回路図である。磁気センサ102の構成は、X方向、Y方向およびZ方向によって定義される座標系に基づいて説明することができる。磁気センサ102は、それぞれX方向に平行な方向の磁界成分の強度に応じて抵抗値が変化するように構成された第1の抵抗体R101、第2の抵抗体R102、第3の抵抗体R103および第4の抵抗体R104を備えている。また、磁気センサ102は、複数のMR素子50を備えている。第1ないし第4の抵抗体R101~R104の各々は、複数のMR素子50を用いて構成されている。
【0119】
磁気センサ102は、更に、電源ポートV101と、グランドポートG101と、第1の出力ポートE101と、第2の出力ポートE102とを備えている。グランドポートG101はグランドに接続される。第1および第2の出力ポートE101,E102は、プロセッサ40に接続される。
【0120】
磁気センサ102は、第1の出力ポートE101の電位と対応関係を有する信号を、第1の検出信号S101として生成し、第2の出力ポートE102の電位と対応関係を有する信号を、第2の検出信号S102として生成する。磁気センサ102が接続されたプロセッサ40は、第1および第2の検出信号S101,S102に基づいて、検出値Vsを生成する。
【0121】
第1の抵抗体R101は、電源ポートV101と第1の出力ポートE101とを接続する経路に設けられている。第2の抵抗体R102は、グランドポートG101と第1の出力ポートE101とを接続する経路に設けられている。第3の抵抗体R103は、グランドポートG101と第2の出力ポートE102とを接続する経路に設けられている。第4の抵抗体R104は、電源ポートV101と第2の出力ポートE102とを接続する経路に設けられている。
【0122】
Z方向から見たときの第2の抵抗体R102の重心は、Z方向から見たときの第1の抵抗体R101の重心に対して、X方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。Z方向から見たときの第3の抵抗体R103の重心は、Z方向から見たときの第4の抵抗体R104の重心に対して、X方向にλ/2だけ離れた位置に配置されている。Z方向から見たときの第4の抵抗体R104の重心は、Z方向から見たときの第1の抵抗体R101の重心に対して、X方向にλ/4だけ離れた位置に配置されている。
【0123】
図12および図13において、第1ないし第4の抵抗体R101~R104内に描かれた矢印は、その抵抗体に含まれる複数のMR素子50の各々の磁化固定層51の第1の磁化の方向を表している。比較例では、第1ないし第4の抵抗体R101~R104の全てにおいて、第1の磁化の方向は、-X方向である。
【0124】
第1ないし第4の抵抗体R101~R104の各々は、複数の素子群を含んでいる。第1ないし第4の抵抗体R101~R104の各々における複数の素子群の構成および配置は、本実施の形態に係る磁気センサ2の抵抗体R11における複数の素子群の構成および配置と同じである。
【0125】
次に、比較例における第1の検出信号S101について説明する。比較例では、第1の抵抗体R101の抵抗値Rと、第2の抵抗体R102の抵抗値Rは、それぞれ下記の式(1)、(2)で表される。なお、式(1)、(2)において、R,ΔRはそれぞれ所定の定数であり、θは電気角を表す。
【0126】
=R+ΔRcos(θ) …(1)
=R+ΔRcos(θ+λ/Lp×π) …(2)
【0127】
また、第1の検出信号S101は、下記の式(3)で表される。
【0128】
S101=R/(R+R) …(3)
【0129】
磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しい場合、式(1)~(3)から、第1の検出信号S101は、下記の式(4)で表される。
【0130】
S101=R/(2R+ΔRcos(θ)-ΔRcos(θ))
=R/2R …(4)
【0131】
磁極ピッチLpが設計ピッチλとは異なる場合、式(1)~(3)から、第1の検出信号S101は、下記の式(5)で表される。
【0132】
S101=R/(2R+ΔRcos(θ)+ΔRcos(θ+λ/Lp×π))
…(5)
【0133】
式(4)から理解されるように、磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しい場合には、第1の検出信号S101は、Rの定数倍と等しくなる。この場合、第1の検出信号S101は、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する(式(2)参照)。一方、式(5)から理解されるように、磁極ピッチLpが設計ピッチλとは異なる場合には、式(5)の分母に電気角θに応じて変化する成分が含まれる。この成分は、第1の検出信号S101に、2次の高調波に相当する高調波成分を生じさせる。
【0134】
第1の検出信号S101についての説明は、第2の検出信号S102にも当てはまる。第3の抵抗体R103の抵抗値R、第4の抵抗体R104の抵抗値Rおよび第2の検出信号S102は、それぞれ、電気角θに応じて変化するsin関数を用いて表すことができる。磁極ピッチLpが設計ピッチλとは異なる場合には、第2の検出信号S102にも、2次の高調波に相当する高調波成分が生じる。第1および第2の検出信号S101,S102の各々の高調波成分は、検出値Vsに誤差を生じさせる。
【0135】
次に、本実施の形態における第1の検出信号S1について説明する。本実施の形態ではでは、抵抗体R11の抵抗値R11と、抵抗体R12の抵抗値R12と、抵抗体R13の抵抗値R13と、抵抗体R14の抵抗値R14は、それぞれ下記の式(6)~(9)で表される。
【0136】
11=R+ΔRcos(θ) …(6)
12=R+ΔRcos(θ+λ/Lp×π+π)
=R-ΔRcos(θ+λ/Lp×π) …(7)
13=R+ΔRcos(θ+π)
=R-ΔRcos(θ+π) …(8)
14=R+ΔRcos(θ+λ/Lp×π) …(9)
【0137】
第1の検出信号S1は、下記の式(10)で表される。
【0138】
S1=(R13+R14)/(R11+R12+R13+R14
=(R13+R14)/4R …(10)
【0139】
式(10)から理解されるように、本実施の形態では、磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しいか否かに関わらず、式(10)の分母は定数になり、第1の検出信号S1は、抵抗値R13と抵抗値R14との和の定数倍と等しくなる。従って、本実施の形態では、第1の検出信号S1は、磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しいか否かに関わらず、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する(式(8)、(9)参照)。
【0140】
第1の検出信号S1ついての説明は、第2の検出信号S2にも当てはまる。第2の検出信号S2は、式(10)におけるR11,R12,R13,R14を、それぞれ抵抗体R21の抵抗値R21、抵抗体R22の抵抗値R22と、抵抗体R23の抵抗値R23および抵抗体R24の抵抗値R24で置き換えた式で表される。第1の検出信号S1と同様に、第2の検出信号S2は、磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しいか否かに関わらず、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する。
【0141】
以上説明したように、本実施の形態では、2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。これにより、本実施の形態によれば、製造ばらつきに起因して磁極ピッチLpが設計ピッチλと異なる場合、あるいは意図的に磁極ピッチLpと設計ピッチλとを互いに異ならせる場合であっても、検出値Vs生じる誤差を抑制することができる。
【0142】
次に、他の製造ばらつきに起因する誤差を抑制できることを示す第1のシミュレーションの結果について説明する。
【0143】
第1のシミュレーションでは、比較例のモデルと第1の実施例のモデルを用いた。比較例のモデルは、比較例の磁気式エンコーダのモデルである。第1の実施例のモデルは、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1のモデルである。
【0144】
第1のシミュレーションでは、磁極ピッチLpと設計ピッチλを、いずれも800μmとした。また、第1のシミュレーションでは、Z方向に平行な方向における第1および第2のセンサ部分2A,2Bと磁界発生器3との間隔と、Z方向に平行な方向における磁気センサ102と磁界発生器3との間隔を、いずれも0.4mmとした。また、電源ポートV1に印加する電圧と、電源ポートV101に印加する電圧を、いずれも1Vとした。
【0145】
第1のシミュレーションでは、磁界発生器3の回転軸Cの位置を、設計上の位置から0.2mmだけずらしたときの検出値Vsを求めた。そして、磁界発生器3の回転角度と検出値Vsとの差を、誤差として求めた。
【0146】
図14は、比較例のモデルの誤差を示す特性図である。図15は、第1の実施例のモデルの誤差を示す特性図である。図14および図15において、横軸は回転角度を示し、縦軸は誤差を示している。図14および図15から理解されるように、本実施の形態によれば、磁界発生器3の位置ずれによる誤差を抑制することができる。
【0147】
次に、本実施の形態のその他の効果について説明する。本実施の形態では、磁気センサ2は、磁界発生器3によって発生される対象磁界を検出するように構成されている。検出対象の磁界成分の強度は、位置に応じて変化する。本実施の形態では特に、磁気センサ2のブリッジ回路4のアームR1~R4の各々は、検出対象の磁界成分に対して感度を有するように構成されている。
【0148】
一方、アームR1~R4の各々は、一様な外部磁界に対しては感度を有さない。すなわち、磁気センサ2に一様な外部磁界を印加しても、アームR1~R4の各々の抵抗値は、変化しないか、ほとんど変化しない。そのため、磁気センサ2に一様な外部磁界を印加しても、パッド11~13,21~23のうちの任意の2つのパッドの間の抵抗値も、変化しないか、ほとんど変化しない。また、磁気センサ2に一様な外部磁界を印加した状態で電源ポートV1を電源に接続しても、第1および第2の出力ポートE1,E2の各々の電位は、変化しないか、ほとんど変化しない。
【0149】
このように、アームR1~R4の各々が一様な外部磁界に対して感度を有していないため、検査用の磁界として一様な外部磁界を用いた場合には、2つのパッド間の抵抗値を測定する方法や、2つのパッドの電位を測定する方法によって、磁気センサ2を検査することはできない。
【0150】
これに対し、本実施の形態では、サブパッド15が第1の基板10に設けられ、サブパッド25が第2の基板20に設けられている。サブパッド15は、抵抗体R21,R22の接続点に接続されている。抵抗体R21の抵抗値は、一様な外部磁界の強度および方向に応じて変化する。そのため、パッド11とサブパッド15との間の抵抗値も、一様な外部磁界の強度および方向に応じて変化する。また、抵抗体R22の抵抗値も、一様な外部磁界の強度および方向に応じて変化する。そのため、パッド12とサブパッド15との間の抵抗値と、パッド13とサブパッド15との間の抵抗値も、一様な外部磁界の強度および方向に応じて変化する。また、電源ポートV1を電源に接続すると、サブパッド15の電位は、一様な外部磁界の強度および方向に応じて変化する。従って、本実施の形態によれば、検査用の磁界として一様な外部磁界を用いた場合であっても、サブパッド15を利用して抵抗値を測定する方法や、サブパッド15の電位を測定する方法によって、第1のセンサ部分2Aを検査することができる。
【0151】
上記のサブパッド15についての説明は、サブパッド25にも当てはまる。サブパッド15についての説明中のパッド11~13、サブパッド15および抵抗体R21,R22を、それぞれパッド21~23、サブパッド25および抵抗体R23,R24に置き換えれば、サブパッド25についての説明になる。本実施の形態によれば、検査用の磁界として一様な外部磁界を用いた場合であっても、サブパッド25を利用して抵抗値を測定する方法や、サブパッド25の電位を測定する方法によって、第2のセンサ部分2Bを検査することができる。
【0152】
なお、第1の基板10は、サブパッド15の代わりに、あるいはサブパッド15に加えて、抵抗体R11,R12の接続点に接続された他のサブパッドを有していてもよい。また、第2の基板20は、サブパッド25の代わりに、あるいはサブパッド25に加えて、抵抗体R13,R14の接続点に接続された他のサブパッドを有していてもよい。
【0153】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、図16および図17を参照して、本実施の形態に係る磁気センサ2の構成について説明する。図16は、磁気センサ2を示す平面図である。図17は、磁気センサ2の構成を示す回路図である。
【0154】
本実施の形態では、第2のセンサ部分2Bの姿勢が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態における第2のセンサ部分2Bは、第1の実施の形態における姿勢から、Z方向に平行な軸周りに180°回転した姿勢で配置されている。第2のセンサ部分2Bの配置は、第1の実施の形態と同じである。
【0155】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態における図4に示した第2の座標系の定義が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、D21方向は-X方向と一致し、D22方向は-Y方向と一致する。また、基準方向DRは、D21方向と同じ方向になる。
【0156】
また、本実施の形態では、第1のセンサ部分2Aの第1の基板10のパッド11,12と第2のセンサ部分2Bの第2の基板20のパッド21,22との接続関係が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、パッド22は、第3の配線によってパッド11に電気的に接続されている。また、第3の配線は、第1の出力ポートE1に電気的に接続されている。パッド21は、第4の配線によってパッド12に電気的に接続されている。また、第4の配線は、第2の出力ポートE2に電気的に接続されている。
【0157】
また、本実施の形態では、ブリッジ回路4のアームR2,R4が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態におけるアームR4が本実施の形態におけるアームR2になり、第1の実施の形態におけるアームR2が本実施の形態におけるアームR4になる。従って、本実施の形態では、アームR2の一端は、パッド22に電気的に接続されている。アームR4の一端は、パッド21に電気的に接続されている。アームR2,R4の各他端は、パッド23に電気的に接続されている。
【0158】
また、本実施の形態では、アームR2,R4の各々に含まれる2つの抵抗体が、第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、アームR2は、2つの抵抗体R23,R24を含んでいる。アームR4は、2つの抵抗体R13,R14を含んでいる。本実施の形態では特に、抵抗体R13,R14,R23,R24は、それぞれ、本発明の「第8の抵抗体」、「第7の抵抗体」、「第6の抵抗体」および「第5の抵抗体」に対応する。
【0159】
また、本実施の形態では、第2の基板20に設けられた複数のMR素子50の各々におけるバイアス磁界の方向が、第1の実施の形態と異なっている。図16では、バイアス磁界の方向を、符号Mbを付した矢印で表している。図17では、バイアス磁界の方向を、白抜きの矢印で示している。第2の基板20に設けられたMR素子50では、バイアス磁界の方向は、D22方向である。すなわち、第2の基板20では、バイアス磁界の方向は、磁界発生器3の上方から見て(Z方向から見て)、基準方向DR(図4参照)から反時計回り方向に90°回転した方向である。
【0160】
なお、基準方向DRが、図3および図4に示した方向とは反対の方向である場合、第2の基板20では、バイアス磁界の方向は、磁界発生器3の上方から見て(Z方向から見て)、基準方向DRから時計回り方向に90°回転した方向になる。この場合、第1の基板10においても、バイアス磁界の方向は、磁界発生器3の上方から見て(Z方向から見て)、基準方向DRから時計回り方向に90°回転した方向になる。
【0161】
第1の実施の形態と同様に、バイアス磁界が基準方向DRに対してなす角度は、90°に限らず、例えば85°~95°の範囲内であってもよい。
【0162】
次に、第2のシミュレーションの結果を参照して、本実施の形態の効果について説明する。第2のシミュレーションでは、第1の実施の形態で説明した比較例のモデルと、第2の実施例のモデルを用いた。比較例のモデルは、比較例の磁気式エンコーダのモデルである。第2の実施例のモデルは、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1のモデルである。
【0163】
第2のシミュレーションの条件は、磁界発生器3の回転軸Cの位置を除いて、第1のシミュレーションと同様である。第2のシミュレーションでは、磁界発生器3の回転軸Cの位置を、設計上の位置と一致させた。
【0164】
第2のシミュレーションでは、比較例の磁気センサ102に対して、Y方向に平行な方向の一様な外部磁界を印加すると共に、一様な外部磁界の強度を変化させて、第1の検出信号S101の振幅を求めた。そして、求めた振幅と、一様な外部磁界の強度が0のときの第1の検出信号S101の振幅との比を、比較例のモデルの振幅比として求めた。
【0165】
同様に、第2のシミュレーションでは、磁気センサ2に対して、Y方向に平行な方向の一様な外部磁界を印加すると共に、一様な外部磁界の強度を変化させて、第1の検出信号S1の振幅を求めた。そして、求めた振幅と、一様な外部磁界の強度が0のときの第1の検出信号S1の振幅との比を、第2の実施例のモデルの振幅比として求めた。
【0166】
以下、一様な外部磁界の強度を、一様な外部磁界の方向がY方向のときは正の値で表し、一様な外部磁界の方向が-Y方向のときは負の値で表す。また、一様な外部磁界の強度を、一様な外部磁界の強度に対応する磁束密度の大きさで表す。第2のシミュレーションでは、一様な外部磁界を、-5~5mTの範囲内で変化させた。
【0167】
図18は、比較例のモデルの振幅比を示す特性図である。図19は、第2の実施例のモデルの振幅比を示す特性図である。図18および図19において、横軸は一様な外部磁界Hextの強度を示し、縦軸は振幅比を示している。図18および図19から理解されるように、本実施の形態によれば、一様な外部磁界に起因する第1の検出信号S1の変動を抑制することができる。
【0168】
第2のシミュレーションの結果は、第2の検出信号S2にも当てはまる。すなわち、本実施の形態によれば、一様な外部磁界に起因する第2の検出信号S2の変動を抑制することができる。なお、一様な外部磁界は、例えば、磁界発生器3の駆動装置として、ボイスコイルモータを用いた場合に、ボイスコイルモータの磁石から発生される。
【0169】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0170】
[第3の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気式エンコーダについて説明する。図20は、本実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【0171】
本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1は、第1の実施の形態における磁界発生器3の代わりに、磁界発生器103を備えている。磁界発生器103の構成は、N極とS極の組の数を除いて、磁界発生器3と同様である。磁界発生器103のN極とS極の組の数は、偶数である。図20に示した例では、N極とS極の組の数は30である。図20では、理解を容易にするために、N極とS極の一方の極にハッチングを付している。
【0172】
磁界発生器103は、回転軸Cに平行な一方向の端に位置する端面103aを有している。複数組のN極とS極は、端面103aに設けられている。磁気センサ2の第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bの各々は、磁界発生器103の端面103aに対向するように配置されている。
【0173】
ここで、N極とS極の数をMで表す。本実施の形態では、Mは偶数である。第2の基板20(第2のセンサ部分2B)は、nを整数としたときに、回転軸Cの周りに第1の基板10(第1のセンサ部分2A)から(180+n×360/M±360/(2M))°だけ回転した位置に配置されている。図20には、Mが30であり、nが0である例を示している。この例では、第2の基板20(第2のセンサ部分2B)は、回転軸Cの周りに第1の基板10(第1のセンサ部分2A)から174°(図20における紙面上方から見て時計回り方向)または186°(図20における紙面上方から見て反時計回り方向)だけ回転した位置に配置されている。
【0174】
磁気センサ2の第2のセンサ部分2Bの構成は、第1の実施の形態と同じであってもよいし、第2の実施の形態と同じであってもよい。第2のセンサ部分2Bの構成が第1の実施の形態と同じである場合、図20に示した例では、D21方向(図4参照)は、X方向からY方向に向かって6°だけ回転した方向と一致し、D22方向(図4参照)は、Y方向から-X方向に向かって6°だけ回転した方向と一致する。第2のセンサ部分2Bの構成が第2の実施の形態と同じである場合、図20に示した例では、D21方向(図4参照)は、-X方向から-Y方向に向かって6°だけ回転した方向と一致し、D22方向(図4参照)は、-Y方向からX方向に向かって6°だけか移転した方向と一致する。
【0175】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0176】
[第4の実施の形態]
次に、図21を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気式エンコーダについて説明する。図21は、本実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【0177】
本実施の形態に係る磁気式エンコーダ201は、第1または第2の実施の形態で説明した磁気センサ2と、磁界発生器203とを備えている。磁界発生器203は、直線的な方向に複数組のN極とS極を着磁したリニアスケールである。磁気センサ2または磁界発生器203は、磁界発生器203の長手方向に沿って移動可能である。
【0178】
本実施の形態では、磁界発生器3の長手方向に平行な一方向をX方向とする。磁気センサ2の第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、磁界発生器203に対してZ方向に離れた位置に配置されている。磁気センサ2は、対象磁界のX方向に平行な方向の磁界成分の強度を検出することができるように構成されている。
【0179】
本実施の形態における第1の座標系(図3参照)の定義は、以下の通りである。本実施の形態では、D11方向はX方向と一致し、D12方向はY方向と一致する。
【0180】
本実施の形態における第2の座標系(図4参照)の定義は、以下の通りである。第2のセンサ部分2Bの構成が第1の実施の形態と同じである場合、D21方向はX方向と一致し、D22方向はY方向と一致する。第2のセンサ部分2Bの構成が第2の実施の形態と同じである場合、D21方向は-X方向と一致し、D22方向は-Y方向と一致する。
【0181】
また、本実施の形態における基準方向DRは、D11方向と同じ方向である。第2のセンサ部分2Bの構成が第1の実施の形態と同じである場合、基準方向DRは、更に、D21方向と同じ方向である。第2のセンサ部分2Bの構成が第2の実施の形態と同じである場合、基準方向DRは、更に、-D21方向と同じ方向である。
【0182】
また、本実施の形態では、第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、Y方向に平行な方向について互いに異なる位置に配置されている。本実施の形態では特に、第2のセンサ部分2Bは、第1のセンサ部分2Aから見て-Y方向の先に配置されている。
【0183】
また、本実施の形態では、第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、X方向に平行な方向において互いに異なる位置に配置されている。第2のセンサ部分2Bは、第1のセンサ部分2AからX方向または-X方向に磁極ピッチLpの1/2の奇数倍だけ離れた位置に配置されていてもよい。図21には、第2のセンサ部分2Bが、第1のセンサ部分2Aから-X方向に磁極ピッチLpの1/2だけ離れた位置に配置されている例を示している。
【0184】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0185】
[第5の実施の形態]
次に、図22を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る磁気式エンコーダについて説明する。図22は、本実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【0186】
本実施の形態では、磁気センサ2の第2のセンサ部分2Bの配置が、第3の実施の形態と異なっている。本実施の形態では、第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、Y方向に平行な方向について同じ位置に配置されている。また、第2のセンサ部分2Bは、第1のセンサ部分2AからX方向に磁極ピッチLpの3/2だけ離れた位置に配置されている。
【0187】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第4の実施の形態と同様である。
【0188】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、MR素子50の数および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。また、請求の範囲の要件を満たす限り、第1および第2の基板10,20の各々の配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
【0189】
以上説明したように、本発明の磁気センサは、複数のアームを含むブリッジ回路と、電源ポートと、グランドポートと、第1の出力ポートと、第1の基板と、第2の基板とを備えている。複数のアームの各々は、複数の磁気抵抗効果素子によって構成されると共に、対象磁界の周期的な変化に応じて抵抗値が変化するように構成されている。複数のアームは、第1の基板に設けられた第1のアームと、第2の基板に設けられた第2のアームとを含んでいる。第1のアームは、回路構成上、グランドポートと第1の出力ポートとの間に設けられている。第2のアームは、回路構成上、電源ポートと第1の出力ポートとの間に設けられている。第1のアームは、直列に接続された第1の抵抗体および第2の抵抗体を含んでいる。第2のアームは、直列に接続された第3の抵抗体および第4の抵抗体を含んでいる。
【0190】
複数の磁気抵抗効果素子の各々は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを含んでいる。第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいる。第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向とは反対方向の第2の磁化方向の成分を含んでいる。第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含んでいる。第4の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向とは反対方向の第4の磁化方向の成分を含んでいる。
【0191】
第1の抵抗体と第2の抵抗体は、対象磁界が周期的に変化するときの所定のタイミングにおいて第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むと共に第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むように配置されている。第3の抵抗体と第4の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の磁化方向の成分を含むと共に第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の磁化方向の成分を含むように配置されている。第2の基板は、対象磁界が周期的に変化するときの第2のアームの抵抗値の位相が、対象磁界が周期的に変化するときの第1のアームの抵抗値の位相とは異なるように、第1の基板から離れた位置に配置されている。
【0192】
本発明の磁気センサにおいて、第1のアームの抵抗値と第2のアームの抵抗値は、対象磁界の周期的な変化に応じて、互いに180°異なる位相で変化してもよい。
【0193】
また、本発明の磁気センサにおいて、第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングと同じであってもよい。第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングと同じであってもよい。
【0194】
また、本発明の磁気センサにおいて、第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングとは異なっていてもよい。第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングとは異なっていてもよい。
【0195】
また、本発明の磁気センサは、更に、第2の出力ポートを備えていてもよい。複数のアームは、更に、第1の基板に設けられた第3のアームと、第2の基板に設けられた第4のアームとを含んでいてもよい。第3のアームは、回路構成上、グランドポートと第2の出力ポートとの間に設けられていてもよい。第4のアームは、回路構成上、電源ポートと第2の出力ポートとの間に設けられていてもよい。第3のアームは、直列に接続された第5の抵抗体および第6の抵抗体を含んでいてもよい。第4のアームは、直列に接続された第7の抵抗体および第8の抵抗体を含んでいてもよい。第5の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第6の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第2の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第7の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第8の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第4の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第5の抵抗体と第6の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第5の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むと共に第6の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むように配置されていてもよい。第7の抵抗体と第8の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第7の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の磁化方向の成分を含むと共に第8の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の磁化方向の成分を含むように配置されていてもよい。第1の出力ポートの電位と第2の出力ポートの電位は、対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化してもよしい。第1の出力ポートの電位と第2の出力ポートの電位は、互いに90°異なる位相で変化してもよい。
【0196】
本発明の磁気式エンコーダは、本発明の磁気センサと、対象磁界を発生する磁界発生器とを備えている。磁気センサと磁界発生器は、磁気センサと磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、対象磁界が周期的に変化するように構成されている。
【0197】
本発明の磁気式エンコーダにおいて、複数の磁気抵抗効果素子の各々は、バイアス磁界が自由層に印加されるように構成されていてもよい。第1のアームに含まれる複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、磁気センサに対する磁界発生器の相対的な移動方向と対応関係を有する一方向である基準方向と交差する第1の方向であってもよい。第2のアームに含まれる複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、基準方向と交差する第2の方向であってもよい。この場合、第1の方向と第2の方向の一方は、磁界発生器の上方から見て、基準方向から時計回り方向に90°回転した方向であってもよく、第1の方向と第2の方向の他方は、磁界発生器の上方から見て、基準方向から反時計回り方向に90°回転した方向であってもよい。あるいは、この場合、第1の方向と第2の方向は、いずれも、磁界発生器の上方から見て、基準方向から時計回り方向または反時計回り方向に90°回転した方向であってもよい。
【0198】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁界発生器は、M組のN極とS極が回転軸の周りに交互に配列された磁気スケールであってもよい。Mは、奇数であってもよい。この場合、第2の基板は、nを整数としたときに、回転軸の周りに第1の基板から(180+n×360/M)°だけ回転した位置に配置されていてもよい。あるいは、Mは、偶数であってもよい。第2の基板は、nを整数としたときに、回転軸の周りに第1の基板から(180+n×360/M±360/(2M))°だけ回転した位置に配置されていてもよい。
【0199】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、複数組のN極とS極が所定の方向に交互に配列された磁気スケールであってもよい。
【0200】
本発明の磁気センサの製造方法は、複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程を含んでいる。複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、それぞれ、後に磁化固定層となる初期磁化固定層と、自由層と、ギャップ層とを含む複数の初期磁気抵抗効果素子を形成する工程と、レーザ光と外部磁界とを用いて初期磁化固定層の第1の磁化の方向を固定する工程とを含んでいる。
【符号の説明】
【0201】
1…磁気式エンコーダ、2…磁気センサ、2A…第1のセンサ部分、2B…第2のセンサ部分、3…磁界発生器、4……ブリッジ回路、10…第1の基板、11~13…パッド、15…サブパッド、20…第2の基板、21~23…パッド、25…サブパッド、31~38…素子群、40…プロセッサ、50…MR素子、50A…積層膜、50B…バイアス磁界発生器、51…磁化固定層、52…ギャップ層、53…自由層、54,55…磁石、R1~R4…アーム、R11,R12,R13,R14,R21,R22,R23,R24…抵抗体、S1…第1の検出信号、S2…第2の検出信号、Vs…検出値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの第1のセンサ部分と磁界発生器とを示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気センサの第2のセンサ部分と磁界発生器とを示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態における磁気センサを示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態における磁気センサの構成を示す回路図である。
図7】本発明の第1の実施の形態における第1の基板の複数の抵抗体の配置を説明するための説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態における第2の基板の複数の抵抗体の配置を説明するための説明図である。
図9】本発明の第1の実施の形態における磁気抵抗効果素子の第1の例を示す斜視図である。
図10】本発明の第1の実施の形態における磁気抵抗効果素子の第2の例を示す斜視図である。
図11】本発明の第1の実施の形態における1つの抵抗体を示す平面図である。
図12】比較例の磁気センサを示す平面図である。
図13】比較例の磁気センサの構成を示す回路図である。
図14】比較例のモデルの検出値の誤差を示す特性図である。
図15】第1の実施例のモデルの検出値の誤差を示す特性図である。
図16】本発明の第2の実施の形態における磁気センサを示す平面図である。
図17】本発明の第2の実施の形態における磁気センサの構成を示す回路図である。
図18】比較例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図19】第2の実施例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図20】本発明の第3の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図21】本発明の第4の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
図22】本発明の第5の実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
図10は、MR素子50の第2の例を示す斜視図である。MR素子50の第2の例の構成は、積層膜50Aの平面形状および磁石54,55の位置を除いて、MR素子50の第1の例の構成と同じである。第2の例では、磁石54,55は、Z方向について積層膜50Aとは異なる位置に配置されている。図10に示した例では特に、磁石54,55は、積層膜50Aに対して、Z方向の先に配置されている。また、Z方向から見た積層膜50Aの平面形状は、D12方向(D22方向)に長い長方形である。Z方向から見たときに、磁石54,55は、積層膜50Aと重なる位置に配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
本実施の形態では、抵抗体R12~R14,R21~R24の各々における複数の素子群の構成および配置は、抵抗体R11における複数の素子群の構成および配置と同じである。すなわち、抵抗体R12~R14,R21~R24の各々も、図11に示した構成および位置関係の8つの素子群31~38を含んでいる。なお、抵抗体R11の8つの素子群31~38の位置関係の説明中のD11方向およびD12方向を、それぞれD21方向およびD22方向に置き換えれば、抵抗体R13,R14,R23,R24の各々の8つの素子群31~38の位置関係の説明になる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
次に、本実施の形態における検出値Vsの生成方法について説明する。始めに、設計ピッチλが磁極ピッチLpと等しい場合の検出値Vsの生成方法について説明する。対象磁界が周期的に変化する場合、第1の出力ポートE1の電位と第2の出力ポートE2の電位は、互いに90°異なる位相で変化する。これにより、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2も、互いに90°異なる位相で変化する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
なお、対象磁界が周期的に変化する場合における第1の出力ポートE1の電位と第2の出力ポートE2の電位の位相差は、90°に限らず、例えば85°~95°の範囲内であってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
次に、本実施の形態における第1の検出信号S1について説明する。本実施の形態では、抵抗体R11の抵抗値R11と、抵抗体R12の抵抗値R12と、抵抗体R13の抵抗値R13と、抵抗体R14の抵抗値R14は、それぞれ下記の式(6)~(9)で表される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
第1の検出信号S1ついての説明は、第2の検出信号S2にも当てはまる。第2の検出信号S2は、式(10)におけるR11,R12,R13,R14を、それぞれ抵抗体R21の抵抗値R21、抵抗体R22の抵抗値R22と、抵抗体R23の抵抗値R23および抵抗体R24の抵抗値R24で置き換えた式で表される。第1の検出信号S1と同様に、第2の検出信号S2は、磁極ピッチLpが設計ピッチλと等しいか否かに関わらず、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0174
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0174】
磁気センサ2の第2のセンサ部分2Bの構成は、第1の実施の形態と同じであってもよいし、第2の実施の形態と同じであってもよい。第2のセンサ部分2Bの構成が第1の実施の形態と同じである場合、図20に示した例では、D21方向(図4参照)は、X方向からY方向に向かって6°だけ回転した方向と一致し、D22方向(図4参照)は、Y方向から-X方向に向かって6°だけ回転した方向と一致する。第2のセンサ部分2Bの構成が第2の実施の形態と同じである場合、図20に示した例では、D21方向(図4参照)は、-X方向から-Y方向に向かって6°だけ回転した方向と一致し、D22方向(図4参照)は、-Y方向からX方向に向かって6°だけ回転した方向と一致する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0178
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0178】
本実施の形態では、磁界発生器203の長手方向に平行な一方向をX方向とする。磁気センサ2の第1のセンサ部分2Aと第2のセンサ部分2Bは、磁界発生器203に対してZ方向に離れた位置に配置されている。磁気センサ2は、対象磁界のX方向に平行な方向の磁界成分の強度を検出することができるように構成されている。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0193
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0193】
また、本発明の磁気センサにおいて、第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングと同じであってもよい。第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングと同じであってもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0194
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0194】
また、本発明の磁気センサにおいて、第1の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第2の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングとは異なっていてもよい。第3の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングは、第4の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化と直交するタイミングとは異なっていてもよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0195】
また、本発明の磁気センサは、更に、第2の出力ポートを備えていてもよい。複数のアームは、更に、第1の基板に設けられた第3のアームと、第2の基板に設けられた第4のアームとを含んでいてもよい。第3のアームは、回路構成上、グランドポートと第2の出力ポートとの間に設けられていてもよい。第4のアームは、回路構成上、電源ポートと第2の出力ポートとの間に設けられていてもよい。第3のアームは、直列に接続された第5の抵抗体および第6の抵抗体を含んでいてもよい。第4のアームは、直列に接続された第7の抵抗体および第8の抵抗体を含んでいてもよい。第5の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第6の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第2の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第7の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第8の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第4の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第5の抵抗体と第6の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第5の抵抗体における自由層の第2の磁化が第1の磁化方向の成分を含むと共に第6の抵抗体における自由層の第2の磁化が第2の磁化方向の成分を含むように配置されていてもよい。第7の抵抗体と第8の抵抗体は、所定のタイミングにおいて第7の抵抗体における自由層の第2の磁化が第4の磁化方向の成分を含むと共に第8の抵抗体における自由層の第2の磁化が第3の磁化方向の成分を含むように配置されていてもよい。第1の出力ポートの電位と第2の出力ポートの電位は、対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化してもよい。第1の出力ポートの電位と第2の出力ポートの電位は、互いに90°異なる位相で変化してもよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0199
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0199】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁界発生器は、複数組のN極とS極が所定の方向に交互に配列された磁気スケールであってもよい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームを含むブリッジ回路と、電源ポートと、グランドポートと、第1の出力ポートと、第1の基板と、第2の基板とを備えた磁気センサであって、
前記複数のアームの各々は、複数の磁気抵抗効果素子によって構成されると共に、対象磁界の周期的な変化に応じて抵抗値が変化するように構成され、
前記複数のアームは、前記第1の基板に設けられた第1のアームと、前記第2の基板に設けられた第2のアームとを含み、
前記第1のアームは、回路構成上、前記グランドポートと前記第1の出力ポートとの間に設けられ、
前記第2のアームは、回路構成上、前記電源ポートと前記第1の出力ポートとの間に設けられ、
前記第1のアームは、直列に接続された第1の抵抗体および第2の抵抗体を含み、
前記第2のアームは、直列に接続された第3の抵抗体および第4の抵抗体を含み、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、方向が固定された第1の磁化を有する磁化固定層と、方向が変化可能な第2の磁化を有する自由層と、前記磁化固定層と前記自由層の間に配置されたギャップ層とを含み、
前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含み、
前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向とは反対方向の第2の磁化方向の成分を含み、
前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、第3の磁化方向の成分を含み、
前記第4の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第3の磁化方向とは反対方向の第4の磁化方向の成分を含み、
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体は、前記対象磁界が周期的に変化するときの所定のタイミングにおいて前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の磁化方向の成分を含むと共に前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第3の抵抗体と前記第4の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の磁化方向の成分を含むと共に前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第2の基板は、前記対象磁界が周期的に変化するときの前記第2のアームの抵抗値の位相が、前記対象磁界が周期的に変化するときの前記第1のアームの抵抗値の位相とは異なるように、前記第1の基板から離れた位置に配置されていることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記第1のアームの抵抗値と前記第2のアームの抵抗値は、前記対象磁界の周期的な変化に応じて、互いに180°異なる位相で変化することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングと同じであり、
前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングと同じであることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第2の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングとは異なり、
前記第3の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングは、前記第4の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化と直交するタイミングとは異なることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項5】
更に、第2の出力ポートを備え、
前記複数のアームは、更に、前記第1の基板に設けられた第3のアームと、前記第2の基板に設けられた第4のアームとを含み、
前記第3のアームは、回路構成上、前記グランドポートと前記第2の出力ポートとの間に設けられ、
前記第4のアームは、回路構成上、前記電源ポートと前記第2の出力ポートとの間に設けられ、
前記第3のアームは、直列に接続された第5の抵抗体および第6の抵抗体を含み、
前記第4のアームは、直列に接続された第7の抵抗体および第8の抵抗体を含み、
前記第5の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向の成分を含み、
前記第6の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第2の磁化方向の成分を含み、
前記第7の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第3の磁化方向の成分を含み、
前記第8の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第4の磁化方向の成分を含み、
前記第5の抵抗体と前記第6の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第5の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第1の磁化方向の成分を含むと共に前記第6の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第2の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第7の抵抗体と前記第8の抵抗体は、前記所定のタイミングにおいて前記第7の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第4の磁化方向の成分を含むと共に前記第8の抵抗体における前記自由層の前記第2の磁化が前記第3の磁化方向の成分を含むように配置され、
前記第1の出力ポートの電位と前記第2の出力ポートの電位は、前記対象磁界の周期的な変化に応じて互いに異なる位相で変化することを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1の出力ポートの電位と前記第2の出力ポートの電位は、互いに90°異なる位相で変化することを特徴とする請求項5記載の磁気センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気センサと、
前記対象磁界を発生する磁界発生器とを備え、
前記磁気センサと前記磁界発生器は、前記磁気センサと前記磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、前記対象磁界が周期的に変化するように構成されていることを特徴とする磁気式エンコーダ。
【請求項8】
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、バイアス磁界が前記自由層に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項9】
前記第1のアームに含まれる前記複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、前記磁気センサに対する前記磁界発生器の相対的な移動方向と対応関係を有する一方向である基準方向と交差する第1の方向であり、
前記第2のアームに含まれる前記複数の磁気抵抗効果素子の各々におけるバイアス磁界の方向は、前記基準方向と交差する第2の方向であることを特徴とする請求項8記載の磁気式エンコーダ。
【請求項10】
前記第1の方向と前記第2の方向の一方は、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から時計回り方向に90°回転した方向であり、
前記第1の方向と前記第2の方向の他方は、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から反時計回り方向に90°回転した方向であることを特徴とする請求項9記載の磁気式エンコーダ。
【請求項11】
前記第1の方向と前記第2の方向は、いずれも、前記磁界発生器の上方から見て、前記基準方向から時計回り方向または反時計回り方向に90°回転した方向であることを特徴とする請求項9記載の磁気式エンコーダ。
【請求項12】
前記磁界発生器は、M組のN極とS極が回転軸の周りに交互に配列された磁気スケールであることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項13】
前記Mは、奇数であり、
前記第2の基板は、nを整数としたときに、前記回転軸の周りに前記第1の基板から(180+n×360/M)°だけ回転した位置に配置されていることを特徴とする請求項12記載の磁気式エンコーダ。
【請求項14】
前記Mは、偶数であり、
前記第2の基板は、nを整数としたときに、前記回転軸の周りに前記第1の基板から(180+n×360/M±360/(2M))°だけ回転した位置に配置されていることを特徴とする請求項12記載の磁気式エンコーダ。
【請求項15】
前記磁界発生器は、複数組のN極とS極が所定の方向に交互に配列された磁気スケールであることを特徴とする請求項7記載の磁気式エンコーダ。
【請求項16】
請求項1ないし6のいずれかに記載の磁気センサの製造方法であって、
前記複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程を含み、
前記複数の磁気抵抗効果素子を形成する工程は、
それぞれ、後に前記磁化固定層となる初期磁化固定層と、前記自由層と、前記ギャップ層とを含む複数の初期磁気抵抗効果素子を形成する工程と、
レーザ光と外部磁界とを用いて前記初期磁化固定層の前記第1の磁化の方向を固定する工程とを含むことを特徴とする磁気センサの製造方法。