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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029490
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】燻蒸装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/22 20060101AFI20240228BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240228BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240228BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20240228BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61L2/22
A01P7/04
A01P3/00
A01N25/18 103A
A01M1/20 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131788
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 吏世
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
【テーマコード(参考)】
2B121
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA07
2B121FA15
2B121FA16
4C058AA23
4C058BB07
4C058EE26
4C058JJ01
4C058JJ28
4H011AA01
4H011AA03
4H011AC01
(57)【要約】
【課題】水と接することで発熱して薬剤が発煙される燻蒸装置にあって、紙製の外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりしない燻蒸装置を提供する。
【解決手段】薬剤及び発熱剤を収容する内側容器1と、内側容器1及び水を収容することができ、少なくとも内側面2bが防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器2と、を備え、外側容器2は、有底のカップ部材であり、底部2cに対して開口端側が外側広がりの周壁2aを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置であって、
前記薬剤及び発熱剤を収容する内側容器と、
前記内側容器及び水を収容することができ、少なくとも内側面が防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器と、を備え、
前記外側容器は、有底のカップ部材であり、底部に対して開口端側が外側広がりの周壁を有する、燻蒸装置。
【請求項2】
前記周壁の内側面に、前記外側容器内への注水の規定高さが表示されている、請求項1に記載の燻蒸装置。
【請求項3】
前記外側容器の内側に前記内側容器が配置された状態で注水された水面の高さ位置における前記外側容器の周壁の内側面と内側容器との間に少なくとも所定距離以上の隙間が形成される、請求項2に記載の燻蒸装置。
【請求項4】
上方に開口するように前記外側容器を配置した状態で、前記外側容器の周壁は水平に対して規定傾斜角度θでテーパ状に傾斜され、前記外側容器の内側に前記内側容器が配置された状態で、前記内側容器の下端から注水された水面の高さ位置までの高さ方向の寸法がA、前記水面の高さ位置における前記外側容器の周壁の内側面と内側容器との間の水平方向の距離がBである場合に、前記規定傾斜角度θ及び寸法Aで規定される前記距離Bが前記所定距離以上である、請求項3に記載の燻蒸装置。
【請求項5】
前記外側容器は、逆円錐台形形状、又は逆角錐台形形状の紙カップである、請求項1に記載の燻蒸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻蒸装置、特に水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような燻蒸装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この特許文献1に記載される燻蒸装置は、害虫駆除の薬剤を発煙するものであり、外側容器の内部に所定量の水を入れ、その後に薬剤が収容された内側容器を外側容器の内部に収容する。内側容器は二重缶構造となっており、内側缶の内部に薬剤が収容されており、内側缶と外側缶の間に発熱剤が収容されている。発熱剤が水と接すると発熱し、この熱量で内側缶内の薬剤が加熱されて気化した薬剤が発煙される。このように水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置には、カビを防止する薬剤を発煙するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-298016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行製品化されている燻蒸装置では、外側容器は樹脂製のものが主流であるが、環境対応(環境問題の改善や環境負荷の低減)として外側容器の紙製化が求められている。しかしながら、外側容器を紙製にすると、発熱剤が発熱したときに外側容器が焦げたり、焦げなくとも焦げた臭い(焦げ臭)がしたりするおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、紙製の外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりしない燻蒸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る燻蒸装置は、水と接することで薬剤を発煙する燻蒸装置であって、前記薬剤及び発熱剤を収容する内側容器と、前記内側容器及び水を収容することができ、少なくとも内側面が防水機能を有し、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器と、を備え、前記外側容器は、有底のカップ部材であり、底部に対して開口端側が外側広がりの周壁を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の燻蒸装置によれば、紙製の外側容器内に注水しても外側容器に水が浸み込んだり外側容器から水が漏れたりすることがないので、発煙時には、内側容器と外側容器の周壁の内側面の間には注水された水が存在し、この水を介して外側容器の周壁の内画面が内側容器から所定距離以上離れていれば、内側容器内で発熱剤が発熱しても外側容器が焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の燻蒸装置の一実施形態を示す一部断面正面図である。
図2図1の内側容器の斜視図である。
図3図1の外側容器内に内側容器をセットした状態の斜視図である。
図4図1の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の燻蒸装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0009】
図1は、燻蒸装置の第1実施形態を示す一部断面正面図、図2は、図1の燻蒸装置の内側容器1の斜視図、図3は、図1の外側容器2内に内側容器1をセットした状態の斜視図、図4は、図1の燻蒸装置の使用状態を示す一部断面正面図である。図1は、製品状態の燻蒸装置を示す。製品状態の燻蒸装置は、例えば、外側容器2の内部に内側容器1が収容され、外側容器2の上側開口端が蓋部材4で覆われ、全体がシュリンクフィルム(包装フィルム)51で包装されている。使用時には、シュリンクフィルム51と蓋部材4を外し、内側容器1をいったん取り出す。そして、外側容器2内に規定高さ表示3まで注水し、その後に外側容器2内に内側容器1を入れる。以下では、この使用状態、或いは、使用を前提とする配置状態で説明する。なお、内側容器1と位置決め部材3の収容形態は図示に限定されない。
【0010】
図2bが内側容器1の外観であり、図2aは、製品状態で外側容器2内に収容されている内側容器1の外観である。この実施形態の内側容器1は、図2bに示すように、寸胴の円筒缶である。内側容器1内には害虫駆除や防カビなどのための薬剤が収容されている。一例として、内側容器1は金属製の二重缶構造とされており、内側缶は内側容器1内の上部に配置され、内側缶の内部に薬剤が収容され、内側缶と外側缶の間に発熱剤が収容されている。前述のように、発熱剤は水と接して発熱するので、図2aに示すように、使用以前の内側缶は外気と触れないように袋状の包装材52によって密封状態に包装されている。使用に際しては、この包装材52を外して内側容器1を取り出して使用する。
【0011】
この実施形態の外側容器2は紙製であるが、環境対応のためには紙を主体とする材料製であってもよい。使用時には、この外側容器2内に水を入れて使用するので、少なくとも内側面2bは防水機能を有する。具体的には、外側容器2の内側面2bに例えばポリエチレンなどの樹脂層(膜)が被覆されている。この外側容器2は、断面が円形の有底の紙製カップ部材であり、周壁2aは、底部2cから開口端側、すなわち上側に向けて外側広がりのテーパ状、つまり逆円錐台の錐体面形状とされている。つまり、この外側容器2は、逆円錐台形形状の紙カップである。これは、製造された外側容器2の在庫時や搬送時に外側容器2同士を互いに積み重ねておけるようにするためであり、また、後述のように、外側容器2内に内側容器1を入れたり、使用後に取り出したりする際、入れやすく、また取り出しやすくするためでもある。なお、外側容器2の断面形状は、円形の他、角部がR面取りされた方形などであってもよい。すなわち、この場合の外側容器2の周壁2aは、上方開口端に向けて外側広がりのテーパ状、すなわち逆角錐台の錐体面形状である。
【0012】
外側容器2内には水を入れて使用するので、外側容器2は開口端を上向きにして使用される。この実施形態では、図4に示すように、内側容器1が外側容器2の底部(底板部)2cに当接した状態で使用される(発熱する)ので、周壁2aの下端部に高台状の脚部21を設けて底部2cが床などに直接当接しないようにしている。この実施形態の脚部21は、周壁2aの下端部を内側上方に立ち上げるようにして構成されており、その上端部に底部(底板部)2cが連設されている。この他、一般的な紙コップのように、紙部材を丸めて逆円錐台形状のカップ部(周壁2a)を形成し、その下端部よりも少し上側の内側面2bに底板部2cを接合するようにしてそれより下方に脚部21を形成してもよい。また、この実施形態の外側容器2の上方開口端の周縁部22は、カップ部材の開口端部の強度を確保するために紙部材が外側に丸く折り込まれている。紙部材を折り込むことに代えて、リング状の別部材を開口端周縁部22に接合するようにしてもよい。
【0013】
この実施形態では、図3図4に示すように、外側容器2の内部で底板2c上に内側容器1を配置した状態で、外側容器2の周壁2aの内側面2bが内側容器1の周壁部1aと底部1bで僅かに当接し、これにより内側容器1が外側容器2内で水平方向に位置決めされる。また、周知のように、水と接することで発熱剤が発熱して薬剤が発煙される燻蒸装置では、水の量が適切であることが望まれる。そこで、この実施形態では、外側容器2の周壁2aの内側面2bに、注水の規定高さを示す規定高さ表示3が設けられている。この規定高さ表示3は、例えば、周壁2aの内側面2bへの印刷や、周壁2aの紙部材を厚さ方向に線状に加圧してできる凹条部又は凸条部で表すことができる。ちなみに、このようにしてできる凹条部や凸条部は、罫線とも呼ばれ、例えば紙素材の折り目に用いられる。この注水の規定高さ表示3は、表示位置まで注水した後に外側容器2の内部に内側容器1を配置すると、水面の高さ、すなわち水量が最適となる注水の高さ位置を(ユーザーに対して)指定している。なお、注水後に内側容器1を外側容器2の内部に配置すると、水面5の高さは規定高さ表示3より上方になる。また、注水の規定高さ表示3についての説明は、製品状態の燻蒸装置の包装材や取扱説明書などに記載したり、外側容器2の周壁2aの内側面2bに直接記載したりすればよい。
【0014】
そして、この実施形態では、図4に明示するように、注水後、内側容器1を外側容器2の内部に配置した状態で、外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間に所定距離以上の水面5が形成される(広がる)ように構成されている。換言すれば、注水後に内側容器1を外側容器2の内部に配置すると、外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間に所定距離以上の隙間ができ、その隙間の部分に水が存在していることになる。この所定距離は、内側容器1と外側容器2の間に水が介在することにより、内側容器1の内部で発熱剤が発熱しても、紙製又は紙を主体とする材料製の外側容器2が焦げたり焦げ臭がしたりすることのない寸法であり、一例として、内側容器1と外側容器2の内側面2bの所定距離は10mm以上であることが望ましい。
【0015】
この実施形態のように、外側容器2の内部で底板2c上に内側容器1を配置した状態で、外側容器2の周壁2aの内側面2bが内側容器1の周壁部1aと底部1bで当接する場合、水面5の高さ位置における外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間の隙間は、例えば外側容器2の周壁2aの水平に対する傾斜角度θで規定することができる。この実施形態では、外側容器2の周壁2aは上方に向けて傾き一様のテーパ状に外側広がりとなっているので、この周壁2aの水平に対する傾斜角度を規定傾斜角度θとすると、内側容器1の下端から水面5の高さ位置までの高さ方向の寸法がA(mm)、水面5の高さ位置における外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1との間の水平方向の距離がBである場合、規定傾斜角度θの正接関数値tanθはA/Bとなる。前述のように、Bは所定距離10mm以上であることから、この値を代入してθについて解くと、θ≦arctan(A/10)となる。したがって、外側容器2の周壁2aの水平に対する規定傾斜角度θをこの値にすることで、水面5の高さ位置における外側容器の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間に10mm以上の水面を形成することができ、これにより発煙時にも外側容器2が焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【0016】
このように、この実施形態の燻蒸装置では、薬剤が収容された内側容器1及び水を収容する外側容器2が紙製又は紙を主体とする材料製であることから環境対応することができる。また、外側容器2の少なくとも内側面2bが防水機能を有することから、紙製の外側容器2内に注水しても外側容器2に水が浸み込んだり外側容器2から水が漏れたりすることがなく、また外側容器2の周壁2aは底部2cに対して上方開口端側が外側広がりであるので、発煙時には、内側容器1と外側容器2の周壁2aの内側面2bの間には注水された水が存在し、この水を介して外側容器2の周壁2aの内画面2bが内側容器1から所定距離(=10mm)以上離れていれば、内側容器1内で発熱剤が発熱しても外側容器2が焦げたり焦げ臭がしたりすることがない。
【0017】
また、外側容器2が有底のカップ部材であり、その周壁2aは底部2cに対して開口端側が外側広がりとなっているので、外側容器2同士が互いに内側に収容されるようにして積み重ねておくことが可能であり、例えば、在庫時には場所をとらず、搬送時には搬送しやすい。また、外側容器2の開口端が広がっているので、外側容器2内に内側容器1を入れやすく、また取り出しやすい。
【0018】
また、外側容器2の周壁2aの内側面2bに注水の規定高さ表示3が設けられているので、発熱剤を発熱させるための注水量を確保することができると共に、水面の高さ位置における外側容器2の周壁2aの内画面2bと内側容器1の間の距離を所定距離(=10mm)以上に確保することが可能となる。
【0019】
また、外側容器2を逆円錐台形形状又は逆角錐台形形状の紙カップとすることにより、外側容器2の製造が容易になると共にコストの増加を抑制することもできる。
【0020】
以上、実施形態に係る燻蒸装置について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態の燻蒸装置では、外側容器2の周壁2aが水平に対して規定傾斜角度θで一様に外側広がりに傾斜しているものについてのみ説明した。周壁2aが水平に対して規定傾斜角度θで一様に外側広がりに傾斜する角錐台形形状の外側容器2では、周壁2aのうち、内側容器1に最も接近している部分で規定傾斜角度θを規定する。一方で、本発明の燻蒸装置では、注水後、内側容器1を外側容器2の内部に配置した状態で、外側容器2の周壁2aと内側容器1の間に所定距離B以上の水面が形成されればよい。換言すれば、注水後に、内側容器1を外側容器2の内部に配置した状態で、水面の高さ位置において、外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間に所定距離B以上の隙間ができればよい。したがって、外側容器2の周壁2aは一様に外側広がりになるテーパ状である必要はなく、上記を満たすように底部に対して上方開口端側が外側広がりになっていればよい。
【0021】
また、上記実施形態では、内側容器1の周壁部1aが、その底部1bにおいて、外側容器2の周壁2aの内側面2bに当接し、これにより内側容器1の水平方向の位置が位置決めされる例について説明したが、上記より推察されるように、内側容器1が外側容器2の内部に配置された状態で、水面の高さ位置において、外側容器2の周壁2aの内側面2bと内側容器1の間に所定距離B以上の隙間ができれば、内側容器1や外側容器2が不安定にならない限り、内側容器1の位置を外側容器2の周壁部2aの内側面2bで規制しなくともよい。その場合であっても、すなわち内側容器1を外側容器2の底部2bのどこに置こうとも、内側容器1と外側容器2の間に必要な注水量は同じであるから、注水の規定高さ表示3の高さ方向位置は一定である。
【符号の説明】
【0022】
1 内側容器
2 外側容器
2a 周壁
2b 内側面
2c 底部
3 (注水の)規定高さ表示
4 蓋部材
5 水面
図1
図2
図3
図4