(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029491
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/14 20060101AFI20240228BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
G01L3/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131791
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純一
(57)【要約】
【課題】 発熱体からの熱が伝達される第1構造体又は第2構造体の変形を均一化することができ、印加されたトルクを正確に検出することが可能なトルクセンサを提供する。
【解決手段】 環状の第1構造体11の内側に、第1構造体と同心状に環状の第2構造体12が配置される。複数の第3構造体13は、第1構造体と前記第2構造体とを接続する。複数の歪センサ14は、第1構造体と前記第2構造体との間の歪を検出する。第1熱伝導部材15は、第2構造体の第1面12aに接触された第1接触部15aと、第2構造体の第1側面12dに対応して配置される第2接触部15bとを有する。第2熱伝導部材16は、第2構造体の第2面12bに接触された第3接触部16aと、第1熱伝導部材の第2接触部に接触された第4接触部16bとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の第1構造体と、
前記第1構造体の内側に、前記第1構造体と同心状に配置され、環状の第1面と、前記第1面と平行な環状の第2面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを内側で繋ぐ第1側面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを外側で繋ぐ第2側面とを有する環状の第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間の歪を検出する複数の歪センサと、
前記第2構造体の前記第1面に接触された第1接触部と、前記第2構造体の前記第1側面に対応して配置される筒状の第2接触部とを有する第1熱伝導部材と、
前記第2構造体の前記第2面に接触された第3接触部と、前記第1側面に対応して配置され、前記第1熱伝導部材の前記第2接触部に接触された筒状の第4接触部とを有する第2熱伝導部材と、
を具備するトルクセンサ。
【請求項2】
第1構造体と、前記第2構造体と、前記複数の第3構造体は、第1熱伝導率を有し、前記第1熱伝導部材と前記第2熱伝導部材は、前記第1熱伝導率より高い第2熱伝導率を有することを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記第1熱伝導部材の前記第1接触部は、環状であり、前記第2熱伝導部材の前記第3接触部は、環状であることを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記第1熱伝導部材の前記第1接触部は、前記複数の歪センサが配置された領域以外の領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記第1熱伝導部材の前記第1接触部は、前記複数の歪センサが配置された領域と対応する領域に凹部を有することを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記第1構造体と、前記第2構造体と、前記第3構造体は、樹脂材により構成され、
前記第1熱伝導部材と前記第2熱伝導部材は、前記樹脂材の熱伝達率より高い熱伝達率を有する金属により構成され、
前記第1熱伝導部材の前記第2接触部と前記第2熱伝導部材の前記第4接触部が一体的に構成されることを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項7】
環状の第1面と、前記第1面と平行な環状の第2面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面を外側で繋ぐ第1側面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面を内側で繋ぐ第1側面とを有する環状の第1構造体と、
前記第1構造体の内側に、前記第1構造体と同心状に配置された環状の第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間の歪を検出する複数の歪センサと、
前記第1構造体の前記第1面に接触された第1接触部と、前記第1構造体の前記第1側面と対応して配置される筒状の第2接触部とを有する第1熱伝導部材と、
前記第1構造体の前記第2面に接触された第3接触部と、前記第1構造体の前記第1側面と対応して配置され、前記第1熱伝導部材の前記第2接触部に接触される筒状の第4接触部とを有する第2熱伝導部材と、
を具備するトルクセンサ。
【請求項8】
環状の第1構造体と、
前記第1構造体の内側に、前記第1構造体と同心状に配置され、発熱体からの熱を受ける環状の第1面と、前記第1面と平行な環状の第2面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを内側で繋ぐ第1側面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを外側で繋ぐ第2側面とを有する環状の第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間の歪を検出する複数の歪センサと、
前記第2構造体の前記第2面に接触された第3接触部と、前記第1側面に対応して配置され、前記発熱体からの熱を受ける筒状の第4接触部とを有する第2熱伝導部材と、
を具備するトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアーム等に適用されるトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
歪センサに対する熱の影響を防止した力/トルクセンサが開発されている。この力/トルクセンサは、中央ボアを有するツールインターフェース領域と、ツールインターフェース領域の周りに配置された環状のマウントインターフェース領域と、ツールインターフェース領域とマウントインターフェース領域とを接続する複数のビームと、中央ボアに接触する熱伝動部材と、熱伝動部材と中央ボア以外の部分とを絶縁する熱絶縁部材とを具備している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクセンサが適用されるロボットアームは、モータやモータの制御回路等の発熱体を含んでいる。例えば第1構造体と、第2構造体と、これらを接続する梁としての複数の第3構造体と、を具備するトルクセンサにおいて、例えば第2構造体の表面に発熱体からの熱が伝達される場合、第2構造体の表面と、表面に平行な裏面との間に温度差が生じる。このため、第2構造体の表面から裏面に向かって温度分布が不均一となり、さらに、第2構造体の表面内及び裏面内においても温度分布が不均一なる。この結果、第1構造体と第2構造体との間にトルクが印加された場合、第2構造体は均一に変形しないこととなり、第1構造体と第2構造体との間に接続された複数の歪センサは、印加されたトルクを正確に検出することができない。この課題は、第2構造体に限らず、第1構造体に発熱体からの熱が伝達される場合においても発生する。
【0005】
本発明は、発熱体からの熱が伝達される第1構造体又は第2構造体の変形を均一化することができ、印加されたトルクを正確に検出することが可能なトルクセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のトルクセンサは、環状の第1構造体と、前記第1構造体の内側に、前記第1構造体と同心状に配置され、環状の第1面と、前記第1面と平行な環状の第2面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを内側で繋ぐ第1側面と、環状の前記第1面と環状の前記第2面とを外側で繋ぐ第2側面とを有する環状の第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間の歪を検出する複数の歪センサと、前記第2構造体の前記第1面に接触された第1接触部と、前記第2構造体の前記第1側面に対応して配置される筒状の第2接触部とを有する第1熱伝導部材と、前記第2構造体の前記第2面に接触された第3接触部と、前記第1側面に対応して配置され、前記第1熱伝導部材の前記第2接触部に接触された筒状の第4接触部とを有する第2熱伝導部材と、を具備するトルクセンサ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るトルクセンサを示す平面図。
【
図3】
図1に示す第1熱伝導部材を取出して概略的に示す図。
【
図4】第1熱伝導部材の第1変形例を概略的に示す図。
【
図5】
図4に示す第1熱伝導部材と歪センサの位置を概略的に示す図。
【
図6】第1熱伝導部材の第2変形例を概略的に示す図。
【
図7】第2実施形態に係るトルクセンサを示す断面図。
【
図8】第3実施形態に係るトルクセンサを示す断面図。
【
図9】
図8の一部を取出して示すものであり、一部を断面として示す斜視図。
【
図10】第4実施形態に係るトルクセンサを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には、同一符号を付している。
【0009】
(第1実施形態)
図1、
図2は、第1実施形態に係るトルクセンサを示している。トルクセンサ10は、第1構造体11と、第2構造体12と、複数の第3構造体13と、複数の歪センサ14、第1熱伝導部材15、第2熱伝導部材16などを具備している。
【0010】
第1構造体11と、第2構造体12は、環状であり、第2構造体12は、第1構造体11の内側に同心状に配置されている。第1構造体11と第2構造体12は、放射状に配置された複数の梁としての第3構造体13により接続されている。複数の第3構造体13は、第1構造体11と第2構造体12との間でトルクを伝達する。
【0011】
第1構造体11、第2構造体12、及び複数の第3構造体13は、金属、例えばステンレス鋼により構成されるが、印加されるトルクに対して機械的に十分な強度を得ることができれば、金属以外の材料、例えば樹脂材を使用することも可能である。
【0012】
図2に示すように、第1構造体11、第2構造体12、及び複数の第3構造体13は、例えば同じ厚みを有しているが、第3構造体13の厚みは、第1構造体11及び第2構造体12の厚みより薄くてもよい。トルクセンサ10の機械的な強度は、第3構造体13の厚みや幅、長さにより設定される。
【0013】
第1構造体11及び第2構造体12は、第1面(表面)11a、12aと、第1面11a、12aと平行な第2面(裏面)11b、12bとをそれぞれ有している。第1構造体11は、第1面11aと第2面11bとを繋ぐ側面11cを少なくとも含み、第2構造体12は、中央の開口部12c内に第1面12aと第2面12bとを繋ぐ側面12dを少なくとも有している。
【0014】
第1構造体11は、第1面11aから第2面11bに貫通する複数の孔11dを含み、第2構造体12は、第1面12aから第2面12b貫通する複数の孔12eを含んでいる。
【0015】
第1構造体11と第2構造体12との間で、複数の第3構造体13以外の位置には、複数の歪センサ14が設けられる。具体的には、複数の歪センサ14は、第1構造体11の第1面11aと第2構造体12の第1面12aとの間で、第1構造体11及び第2構造体12の中心(トルクの作用中心)に対して対称な位置に等間隔に配置される。さらに、具体的には、
図1において、8個の歪センサ14は、それぞれ例えば45°離れた位置に配置される。歪センサ14の数は、8個に限定されるものではなく、例えば4個、3個、2個であってもよい。
【0016】
歪センサ14は、第3構造体13以外の位置に設けているが、第1構造体11と第2構造体12との間のトルクにより生じる歪を検出することができれば、第3構造体13に歪センサ14を設けてもよい。
【0017】
各歪センサ14は、起歪体14aと、図示せぬ歪ゲージとしての例えば複数の薄膜抵抗を具備している。複数の薄膜抵抗は、起歪体14a上に配置される。起歪体14aの厚みは、第3構造体13の厚みより薄い。複数の薄膜抵抗は、ブリッジ回路を構成する。
【0018】
起歪体14aの一端部は、第1構造体11上に固定され、起歪体14aの他端部は、第2構造体12上に固定される。起歪体14aの固定方法は、例えばネジ止め、溶接、接着材を用いた接着を用いることが可能である。ネジ止めの場合、起歪体14aの両端部上に図示せぬ押え部材がそれぞれ載置され、これら押え部材がネジにより第1構造体11及び第2構造体12に固定されることにより、起歪体14aが第1構造体11及び第2構造体12に固定される。
【0019】
図2に示すように、第2構造体12の第1面12aには、第1熱伝導部材15が装着され、第2構造体12の第2面12bには、第2熱伝導部材16が装着される。
【0020】
図3に示すように、第1熱伝導部材15は、第2構造体12の第1面12aの全面に接触される環状のフランジとしての第1接触部15aと、第1接触部15aの内側で、第2構造体12の開口部12c内に挿入される筒状の第2接触部15bとを含んでいる。第1接触部15aは、第2構造体12の複数の孔12eに対応して、複数の孔15cを含んでいる。
【0021】
図1、
図2に示す第2熱伝導部材16は、第2構造体12の第2面12bの全面に接触される環状のフランジとしての第3接触部16aと、第2構造体12の開口部12c内に挿入される筒状の第4接触部16bとを含んでいる。第4接触部16bは、第2構造体12の開口部12c内に挿入された状態において、第2構造体12の開口部12cの側面12dと第1熱伝導部材15の第2接触部15bとに接触される。第2熱伝導部材16の第4接触部16bが第2構造体12の側面12dに接触されるのは、例えば芯出しのためである。このため、心出しができれば、第2熱伝導部材16の第4接触部16bの長さ(第2構造体12の第1面11aと第2面11bと直交する方向の長さ)は、第2構造体12の厚み(第2構造体12の第1面11aと第2面11bと直交する方向の厚み)の半分以下であってもよい。
【0022】
さらに、第2熱伝導部材16の第4接触部16bは、第1熱伝導部材15の第2接触部15bに接触されていれば、第2構造体12の開口部12cの側面12dに接触されていなくてもよい。或いは、第2熱伝導部材16の第4接触部16bは、複数箇所で第2構造体12の側面12dに接触してもよい。第4接触部16bと第2構造体12の側面12dとの接触は、点接触や線接触でもよい。第4接触部16bと第2構造体12の側面12dとの接触位置は、歪センサ14が配置される位置を避けてもよい。
【0023】
また、第2接触部15bと第4接触部16bは、熱伝導を良好とするため、これらの間にグリスを塗布したり、第2接触部15bと第4接触部16bを機械的に接続したりしてもよい。
【0024】
さらに第3接触部13aは第2構造体12の複数の孔12eに対応して、複数の孔16cを含んでいる。
【0025】
第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16は、トルクセンサ10の材料に比べて高い熱伝導率を有する材料により構成される。具体的には、トルクセンサ10がステンレススチールにより構成される場合、第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16は、例えばアルミニウム、真鍮、銅、又は銅合金により構成される。しかし、これらの材料は、例示であり、その他の材料を適用することが可能である。また、第1熱伝導部材15の材料と第2熱伝導部材16の材料は、トルクセンサ10の材料の熱伝導率より高ければ、異なる材料を適用してもよい。
【0026】
また、
図2に示すように、第2熱伝導部材16の第3接触部16a及び第4接触部16bの厚みは、第1熱伝導部材15の第1接触部15a及び第2接触部15bの厚みより厚くされている。しかし、第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16に適用される材料に応じて、第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16の厚みを変えることが可能である。
【0027】
上記構成のトルクセンサ10が図示せぬロボットアームの関節に取付けられる場合、第1構造体11の複数の孔11dに複数のボルトがそれぞれ挿入され、第1構造体11の例えば第2面11bにロボットアームの関節の一方が接続される。また、第2構造体12の複数の孔12e、第1熱伝導部材15の複数の孔15c、及び第2熱伝導部材16の複数の孔16cに複数のボルトがそれぞれ挿入され、第2構造体12の例えば第1面12aにロボットアームの関節の他方が接続される。
【0028】
図2示すように、ロボットアームの発熱体20としての例えばモータや制御回路が、トルクセンサ10の例えば第2構造体12側に装着される場合、発熱体20は、直接又は間接的に第1熱伝導部材15に接続される。発熱体20から発生された熱は、第1熱伝導部材15の第1接触部15aから第2接触部15bに伝達され、第2熱伝導部材16の第4接触部16bを介して第2熱伝導部材16の第3接触部16aに伝達される。第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16の熱伝導率は、トルクセンサ10の熱伝導率より高いため、発熱体20から発生された熱は、第2構造体12の第1面12aと第2面12bとにほぼ均等に伝達される。このため、第2構造体12の第1面12aと第2面12bの温度は、ほぼ等しくなる。したがって、第1構造体11と第2構造体12との間にトルクが印加された場合、第2構造体12の不均一な変形を防止することができる。よって、複数の歪センサ14は、トルクセンサ10に印加されたトルクを正確に検出することが可能である。
【0029】
(第1実施形態の効果)
上記第1実施形態によれば、トルクセンサ10の第2構造体12の第1面12aに第1熱伝導部材15を取付け、第2面12bに第1熱伝導部材15に接触された第2熱伝導部材16を取付けている。このため、第1熱伝導部材15と第2熱伝導部材16により、第2構造体12の第1面12aの温度と、第2面12bの温度とを等しくすることができる。このため、印加されたトルクに対して第2構造体12の不均一な変形を防止することが可能であり、第1構造体11と第2構造体12との間に接続される複数の歪センサ14に均等にトルクを伝達することができる。したがって、印加されたトルクを正確に検出することができる。
【0030】
しかも、第2構造体12に取付けられる第1熱伝導部材15及び第2熱伝導部材16は、金属により構成されている。このため、第2構造体12の剛性を高めることが可能であり、トルクセンサ10の検出精度を向上させることが可能である。
【0031】
(第1変形例)
図4、
図5は、第1熱伝導部材15の第1変形例を示している。第1実施形態において、第1熱伝導部材15は、環状の第1接触部15aの全体が第2構造体12の第1面12aに接触していた。
【0032】
これに対して、第1変形例において、第1熱伝導部材15は、例えば3つの第1接触部15dを有している。第1接触部15dは、第2構造体12の歪センサ14が配置されていない領域に対応して配置される。具体的には、各第1接触部15dは、例えば扇形であり、第2接触部15bの周囲に所定間隔離間して配置され、第2構造体12の歪センサ14が配置されていない領域に接触される。
【0033】
図5は、第1変形例が適用されたトルクセンサ10を概略的に示している。このトルクセンサ10は、第1構造体11と第2構造体12との間に3つの歪センサ14が等間隔に配置された場合を示している。
図5において、第3構造体13は、省略されている。
【0034】
第1熱伝導部材15の3つの第1接触部15dは、第2構造体12の歪センサ14が配置されていない領域に接触するように配置される。第1熱伝導部材15の第2接触部15bは、第2熱伝導部材16の第4接触部16bに接触され、第2熱伝導部材16の環状の第3接触部16aは、第2構造体12の第2面12bに接触される。
【0035】
第1変形例によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかも、第1変形例の場合、第1接触部15dは、歪センサ14から離れて配置されているため、第1接触部15dの熱が歪センサ14に伝達されることを防止できる。したがって、歪センサ14に対する熱の影響を抑制することができ、より正確にトルクを検出することが可能である。
【0036】
(第2変形例)
図6は、第2変形例を示している。第1変形例において、第1熱伝導部材15の隣接する第1接触部15dの相互間は、空間である。
これに対して、第2変形例において、第1熱伝導部材15の隣接する第1接触部15eの相互間は、凹部15fである。第2変形例も、歪センサ14の数が3つの場合を示している。
【0037】
具体的には、第1熱伝導部材15は、環状のフランジであり、3つの第1接触部15eは、筒状の第2接触部15bの周囲に等間隔に配置されている。各第1接触部15eの形状は、扇形である。隣接する第1接触部15eの相互間には、非接触部としての凹部15fがそれぞれ形成されている。各凹部15fの形状も扇形であり、歪センサ14に対応して配置されている。このため、第1熱伝導部材15の各第1接触部15eは、第2構造体12の第1面12aに接触され、各凹部15fは、第2構造体12の第1面12aに接触されない。
【0038】
第2変形例によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。しかも、第1熱伝導部材15は、環状であり、各凹部15fにおいて第2構造体12の第1面12a、及び歪センサ14から離れている。このため、歪センサ14に対する熱の影響を抑制することができるとともに、第2構造体12の剛性を高めることができる。したがって、印加されるトルクを正確に検出することが可能である。
【0039】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態を示している。第1実施形態において、発熱体20は、トルクセンサ10の第2構造体12に取着されている。
これに対して、第2実施形態において、発熱体20は、トルクセンサ10の第1構造体11に装着される。この場合、第1熱伝導部材21は、第1構造体11の第1面11aに取付けられ、第2熱伝導部材22は、第1構造体11の第2面11bに装着される。
【0040】
具体的には、第1熱伝導部材21は、第1構造体11の第1面11aの全面に接触される環状の第1接触部21aと、第1接触部21aの外側で、第1構造体11の側面11cに対向して配置される筒状の第2接触部21bとを含んでいる。
【0041】
第2熱伝導部材22は、第1構造体11の第2面11bの全面に接触される環状の第3接触部22aと、第3接触部22aの外側で、第1構造体11の側面11cと第1熱伝導部材21の第2接触部21bとの間に配置され、これらに接触される筒状の第4接触部22bとを含んでいる。第4接触部22bは、第1熱伝導部材21の第2接触部21bと接触されていれば、第1構造体11の側面11cに接触されていなくてもよい。
【0042】
第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22は、第1実施形態と同様に、トルクセンサ10の材料に比べて高い熱伝導率を有する材料により構成される。具体的には、トルクセンサ10がステンレススチールにより構成される場合、第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22は、例えばアルミニウム、真鍮、銅、又は銅合金により構成される。しかし、これらの材料は、例示であり、その他の材料を適用することが可能である。また、第1熱伝導部材21の材料と第2熱伝導部材22の材料は、トルクセンサ10の材料の熱伝導率より高ければ、異なる材料を適用してもよい。
【0043】
また、
図7において、第2熱伝導部材22の第3接触部22a及び第4接触部22bの厚みは、第1熱伝導部材21の第1接触部21a及び第2接触部21bの厚みより厚くされている。しかし、第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22に適用される材料に応じて、第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22の厚みを変えることが可能である。
【0044】
第1熱伝導部材21の第1接触部21aは、第1構造体11の複数の孔11dと連通する複数の孔21cを有し、第2熱伝導部材22の第3接触部22aは、第1構造体11の複数の孔11dと連通する複数の孔22cを有している。
【0045】
上記構成において、トルクセンサ10が図示せぬロボットアームの関節に取付けられる場合、第2構造体12の複数の孔12eに複数のボルトがそれぞれ挿入され、第2構造体12の例えば第2面12bにロボットアームの関節の一方が接続される。また、第1構造体11の複数の孔11d、第1熱伝導部材21の複数の孔21c、及び第2熱伝導部材22の複数の孔22cに複数のボルトがそれぞれ挿入され、第1構造体11の例えば第1面11aにロボットアームの関節の他方が接続される。
【0046】
トルクセンサ10の例えば第1構造体11にロボットアームの発熱体20としてのモータや制御回路が接続される場合、発熱体20から発生された熱は、第1熱伝導部材21の第1接触部21aから第2接触部21bに伝達され、第2熱伝導部材22の第4接触部22bを介して第2熱伝導部材22の第3接触部22aに伝達される。第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22の熱伝導率は、トルクセンサ10の熱伝導率より高いため、発熱体20から発生された熱は、第1構造体11の第2面11bと第1面11aとにほぼ均等に伝達される。このため、第1構造体11の第1面11aと第2面11bの温度は、ほぼ等しくなり、印加されたトルクに対して第1構造体11の不均一な変形を防止することができる。したがって、複数の歪センサ14は、トルクセンサ10に印加されたトルクを正確に検出することが可能である。
【0047】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態によっても、第1構造体11の第1面11aに第1熱伝導部材21を介して接続された発熱体20からの熱を第1熱伝導部材21及び第2熱伝導部材22を介して第1構造体11の第2面11bに伝達することができる。このため、印加されたトルクに対して第1構造体11の不均一な変形を防止できるため、第1実施形態と同様に、トルクセンサ10に印加されたトルクを正確に検出することが可能である。
【0048】
尚、第1熱伝導部材21の第2接触部21bと第2熱伝導部材22の第4接触部22bは、第1構造体11の側面11cにおいて、接触されているが、例えば、第1構造体11と第2構造体12との間で接触させることも可能である。この場合、第1熱伝導部材21の第2接触部21bと第2熱伝導部材22の第4接触部22bとを隣接する第3構造体13の間で接続する必要があるが、トルクセンサ10の外径寸法の大型化を防止することが可能である。
【0049】
(第3実施形態)
図8、
図9は、第3実施形態を示している。第1及び第2実施形態において、トルクセンサ10は、金属、例えばステンレススチールにより形成され、トルクセンサ10に対して、金属製の第1熱伝導部材15と第2熱伝導部材16が装着されている。
これに対して、第2実施形態おいて、トルクセンサ30は、例えば樹脂材により形成され、トルクセンサ30の例えば第2構造体12に金属製の熱伝導部材31が装着される。
【0050】
熱伝導部材31は、樹脂製のトルクセンサ10の熱伝導率より高い熱伝導率を有する金属、例えば例えばステンレススチール、アルミニウム、真鍮、銅、又は銅合金により構成されるが、これらに限定されるものではなく、別の材料を適用することも可能である。
【0051】
図9に示すように、熱伝導部材31は、第2構造体12の第1面12aに接触する環状の第1接触部31aと、第2構造体12の第2面12bに接触する環状の第2接触部31bと、第2構造体12の開口部12c内に配置され、第1接触部31aと第2接触部31bとを接続する筒状の第3接触部31cとを含んでいる。換言すると、熱伝導部材31は、第1実施形態の第1熱伝導部材15の第2接触部15bと第2熱伝導部材16の第4接触部16bとが一体とされた構成である。
【0052】
第1接触部31aは、第2構造体12の複数の孔12eに対応して複数の孔31dを含み、第2接触部31bは、第2構造体12の複数の孔12eに対応して複数の孔31dを含んでいる。
【0053】
第3実施形態において、トルクセンサ30は、熱伝導部材31に対して所謂インサート成型により形成される。具体的には、トルクセンサ30は、金属製の熱伝導部材31に対して、トルクセンサ30の形状を有する型を装着し、この型内に樹脂を注入することにより形成される。
【0054】
第3実施形態において、熱伝導部材31は、第2構造体12に装着されているが、第2実施形態と同様に、第1構造体11に装着することも可能である。この場合も、金属製の熱伝導部材31に対してトルクセンサ30をインサート成型により形成することが可能である。
【0055】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態によっても、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
しかも、第3実施形態の場合、金属製の熱伝導部材31に対してトルクセンサ30をインサート成型により形成することができるため、熱伝導部材31をトルクセンサ30に装着する組立作業が不要であり、製造コストを低減することが可能である。
【0056】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態を示している。第1乃至第3実施形態において、トルクセンサ10、30は、第1熱伝導部材15、21、第2熱伝導部材16、22、又は熱伝導部材31を介在してロボットアームの発熱体20に接続された。
これに対して、第4実施形態において、トルクセンサ10は、直接ロボットアームの発熱体41に接続される。
【0057】
図10において、ロボットアームの発熱体41は、トルクセンサ10の第2構造体12の第1面12aに配置される。発熱体41は、例えばモータの台座やモータの制御回路、又は、制御回路が配置される台などである。
【0058】
発熱体41は、第2構造体12の第1面12aの全体に接触される環状の接触部41aを有している。接触部41aの内径は、第2構造体12の開口部12cの直径より小さく、接触部41aの内面(以下、側面とも言う)41bは、第2構造体12の開口部12cの側面12dより内側に位置されている。しかし、後述する熱伝導部材42との十分な接触が可能であれば、接触部41aの側面41bは、第2構造体12の開口部12cの側面12dと同一位置であってもよい。
【0059】
さらに、発熱体41の接触部41aは、第2構造体12の複数の孔12eに対応して複数の例えばネジ孔41cを有している。
【0060】
熱伝導部材42は、第2構造体12の第2面12bに装着される。熱伝導部材42は、トルクセンサ10の熱伝導率より高い熱伝導率を有する金属、例えば例えばアルミニウム、真鍮、銅、又は銅合金により構成されるが、これらに限定されるものではなく、別の材料を適用することも可能である。
【0061】
熱伝導部材42は、第2構造体12の第2面12bの全面に接触される環状のフランジとしての第1接触部42aと、第1接触部42aに接続され、第2構造体12の開口部12cを通り第2構造体12の第1面12a側に延出された筒状の第2接触部42bとを含んでいる。
【0062】
熱伝導部材42の第2接触部42bは、第2構造体12の開口部12cの側面12dと第2構造体12の第1面12aに装着された発熱体41の側面41bに接触されるように、段部42dを有している。しかし、段部42dは、発熱体41の側面41bと第2構造体12の開口部12cの側面12dとが同一位置である場合、不要である。
【0063】
熱伝導部材42の第1接触部42aは、第2構造体12の複数の孔12eに対応して複数の例えば孔42cを有している。
【0064】
熱伝導部材42の複数の孔42c、第2構造体12の複数の孔12e、及び発熱体41の複数のネジ孔41cに図示せぬボルトが挿入されることにより、発熱体41と熱伝導部材42が第2構造体12に装着される。
【0065】
図示せぬロボットアームの一方は、トルクセンサ10の例えば第1構造体11に取付けられ、他方は、トルクセンサ10の第2構造体12に取付けられる。発熱体41は、ロボットアームの他方に含まれている。
【0066】
この状態において、第2構造体12の第1面12aに装着された発熱体41からの熱は、熱伝導部材42を介して第2構造体12の第2面12bに伝達される。このため、第2構造体12の第1面12aの温度と第2面12bの温度がほぼ等しくされる。したがって、第1構造体11と第2構造体12との間にトルクが印加された場合、第2構造体12の不均一な変形を防止でき、歪センサ14により正確なトルクを検出することが可能である。
【0067】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態によっても、第1実施形態乃至第3実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
しかも、第4実施形態の場合、1つの熱伝導部材42を用意するだけでよいため、部品点数、及び組立工数を削減できるため、製造コストを低減することが可能である。
【0068】
尚、第4実施形態において、発熱体41は、第2構造体12に取付けられたが、発熱体41が第1構造体11に取付けられる場合、熱伝導部材の第1接触部を第1構造体11に取付ければよい。この場合、熱伝導部材42の第2接触部は、第1構造体11の外側で発熱体41に接触されればよい。
【0069】
また、上記第1乃至第4実施形態は、本発明をトルクセンサに適用した場合について説明したが、これに限らず、トルク及びトルク以外の方向の力を検出する力覚センサに本発明を適用することも可能である。
【0070】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10、30…トルクセンサ、11…第1構造体、12…第2構造体、13…第3構造体、14…歪センサ、15、21…第1熱伝導部材、15a、15d、15e、21a、31a、42a…第1接触部、15b、21b、31b、42b…第2接触部、15f…凹部、16、22…第2熱伝導部材、16a、22a、31c…第3接触部、16b、22b…第4接触部、20、41…発熱体、31、42…熱伝導部材。