(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002950
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】容量センサデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20231228BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20231228BHJP
G01D 3/028 20060101ALI20231228BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N27/22 B
G01R27/26 C
G01D3/028 D
G01N27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100555
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】22305908.0
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517220508
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ センサーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・グザヴィエ ヴィルミン
(72)【発明者】
【氏名】ロイック マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ビグー
(72)【発明者】
【氏名】フロラン ゴナール
【テーマコード(参考)】
2F075
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2F075AA02
2F075AA03
2F075EE09
2F075EE17
2F075EE18
2G028AA01
2G028AA03
2G028BC04
2G028CG08
2G028CG09
2G028HN03
2G028HN10
2G060AA05
2G060AE30
2G060AF10
2G060AF11
2G060HC01
2G060KA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容量センサデバイスに含まれるPCBの時間依存性の寄生容量によって大きく影響されない確実な検知動作を可能にする容量センサデバイスを提供する。
【解決手段】第1のビアおよび第1のビアに接続された第1のトラックを含むプリント回路基板(PCB)と、PCBの第1のビアに接続された検知デバイスと、第1のビア間および/または第1のトラック間におけるPCBの時間依存性の寄生容量を低減させるように構成されている補償手段とを備える、容量センサデバイスである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビア(33、63)および前記第1のビア(33、63)に接続された第1のトラック(43)を含むプリント回路基板(PCB)(21、31、41、51、61)と、
前記PCB(21、31、41、51、61)の前記第1のビア(33、63)に接続された検知デバイス(22)と、
前記第1のビア(33、63)間および/または前記第1のトラック(43)間における前記PCB(21、31、41、51、61)の時間依存性の寄生容量を低減させるように構成されている補償手段と
を備える、容量センサデバイス(20)。
【請求項2】
前記補償手段は、
前記PCB(21、31、41、51、61)において前記第1のビア(33、63)間および/または前記第1のトラック(43)間に配置された第2のビア(25、35、45、55)であって、前記第2のビア(25、35、45、55)は定電位源に接続されている、第2のビア(25、35、45、55)と、
前記PCB(21、31、41、51、61)に配置され、かつ前記第2のビア(25、35、45、55)に接続された第2のトラック(56)と
を含む、請求項1に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項3】
前記定電位源は接地である、請求項2に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項4】
前記補償手段は、前記PCB(21、31、41、51、61)において前記第1のビア(33、63)間および/または前記第1のトラック(43)間に形成された1つまたは複数の開口部(67)を含むか、または前記1つまたは複数の開口部(67)から構成される、請求項1に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項5】
前記PCB(21、31、41、51、61)の時間依存性の寄生容量は、前記容量センサデバイス(20)の環境の温度および/または湿度に依存する、請求項1に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項6】
前記PCB(21、31、41、51、61)はエポキシ材料を含み、前記第1のビア(33、63)は前記エポキシ材料に形成され、前記第1のトラック(43)は前記エポキシ材料内または前記エポキシの表面に形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項7】
前記補償手段は、少なくとも部分的に前記エポキシ材料に形成されている、請求項6に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項8】
前記容量センサデバイス(20)は、1ピコファラド未満の静電容量を検知するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項9】
前記検知デバイス(22)は、流体に接触するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項10】
前記検知デバイス(22)は検知電極と検知層とを含み、前記検知電極と前記検知層とはキャパシタを形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項11】
前記容量センサデバイス(20)は、温度、圧力、相対湿度もしくは絶対湿度、またはそれらの組合せを検知するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項12】
前記容量センサデバイス(20)は、流体の特性、特に、自動車用流体、燃料、冷却液、または油の特性である、特に、粘度、濃度、比誘電率、または汚染物質を検知するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の容量センサデバイス(20)によって流体の特性を検知する方法であって、前記容量センサデバイス(20)の前記検知デバイス(22)を流体に接触させることを含む方法。
【請求項14】
前記流体は、自動車用流体、燃料、冷却液、または油であり、前記特性は、粘度、濃度、温度、比誘電率、および汚染物質のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象、例えば流体の特性を検知するための容量センサデバイスに関し、特に、温度または湿度に依存する寄生容量によって大きく影響されない正確な測定を提供する容量センサデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
センサの重要性はますます高まっており、ますます日常生活の至るところに存在するようになっている。微小電気機械システム(MEMS)は、サイズおよびコストを削減すると共にセンサの性能を向上させることに対する需要を満たす魅力的な選択肢である。例えば、温度センサ、圧力センサ、湿度センサ、またはそれらの組合せ、および流体の特性、例えば油の粘度、濃度、または比誘電率を検出するためのセンサが、様々な用途において使用されることが知られている。
【0003】
容量センサデバイスは、比較的正確な測定を可能にする種類のセンサである。例えば、当技術分野において、誘電体基板と、誘電体基板に形成された2つの電極と、水の吸収および/または吸着のための高感度層を備える湿度センサデバイスが知られている。センサによって検出される水の量が環境における水の気体分と熱平衡状態にあると仮定して、水の吸収および/または吸着によって生じる静電容量の変動を測定し、環境の(相対)湿度の決定に使用することができる。他の容量センサデバイスは、一般に、流体の温度、圧力、または特性のような測定対象(measurands)を検知するように構成されている。
【0004】
通常、容量センサデバイスの検知要素はプリント回路基板(PCB)に接続され、PCBは、検知要素によって提供される入力データを受信および処理するように構成されている分析回路を担持しているか、またはこれに接続されている。このようなPCBは、容量センサデバイスによって行われる測定の正確さに影響を与え得る寄生容量をもたらす。一定の寄生容量は、容量センサデバイスの適切な較正によって比較的容易に補償することができる。しかしながら、実際の適用において、PCBの寄生容量は、測定環境の温度および/または湿度に依存する。このような時間依存性の(時間依存、time-dependent)寄生容量は、何らかの予測できない方法で測定に影響を与えることがあり、特に、ピコファラド範囲内またはピコファラド範囲未満の低静電容量測定の状況で、誤った測定結果をもたらすことがあるため不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮して、本発明の目的は、容量センサデバイスに含まれるPCBの時間依存性の寄生容量によって大きく影響されない確実な検知動作を可能にする容量センサデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のビアおよび第1のビアに接続された第1のトラック(トレース)を含むプリント回路基板(PCB)と、(適切なコンタクトによって)PCBの第1のビアに接続された検知デバイス(要素)と、第1のビア間および/または第1のトラック間におけるPCBの時間依存性の寄生容量を低減させるように構成されている補償手段とを備える、容量センサデバイスを提供することによって、上記の目的に対処する。本明細書で、「容量センサデバイス」という用語は、場合によっては主な検知データに加えて、測定対象の測定のために使用可能な(所望のまたは寄生の)静電容量をもたらす、容量検知要素を備える任意のデバイスおよび高感度要素を備える任意のデバイスを対象とする。PCBは多層PCBであってよい。
PCBは、測定データの分析および容量センサデバイスの動作の制御に使用される、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、何らかの特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または特定用途向け標準製品(ASSP)を含んでよく、またはこれに接続されてよいことに留意されたい。
【0007】
検知デバイスに接続された第1のビアおよび第1のトラックは、容量センサデバイスの検知動作に非常に重要である。PCB(例えば、エポキシ材料から形成されるか、またはエポキシ材料を含む)の時間依存性の寄生容量は、特に、容量センサデバイスの環境の温度および/または湿度に依存し得る。
【0008】
本発明によれば、容量センサデバイスは、第1のビアおよび/または第1のトラックのネットワーク間の領域におけるPCBの時間依存性の寄生容量を低減させるための専用の補償手段を備える。第1のビアおよび/または第1のトラックは、容量センサデバイスによって行われる測定が大きく影響を受けるようなPCBの時間依存性の寄生容量の衝撃に対して感度が高い。補償手段を設けることにより、PCBの時間依存性の寄生容量を大きく低減させることができるため、容量センサデバイスによって行われる静電容量測定の正確さを、当技術分野のセンサデバイスと比べて向上させることができる。
【0009】
実施形態によれば、補償手段は、PCBにおいて第1のビア間および/または第1のトラック間に配置された第2のビアであって、第2のビアは定電位源(a source of a constant electrical potential)に接続されている、第2のビアと、PCBに配置され、かつ第2のビアに接続された第2のトラックとを含むか、またはこれらから構成される。例えば、適切に提供可能な確実な定電位源は接地である。第2のトラックを、多層PCBの層のそれぞれまたはいくつかに設けることができる。
【0010】
第2のビアは、第1のビア間および/または第1のトラック間の何らかのステッチであり、これにより、第1のビア間および/または第1のトラック間のPCB材料を比較的小さい部分に分割する。この小さい部分は、PCBの第1のビア間および/または第1のトラック間のステッチのない領域によってもたらされる時間依存性の寄生容量と比べて、時間依存性の寄生容量全体を小さくする。定電位源との接続により、測定に影響を与えない明確な静電容量がもたらされる。高感度の第1のビアおよび/または第1のトラックは、第2のビアおよび第2のトラックにより提供される定電位グリッドによって、摂動(perturbations)に対して遮蔽/シールドされる。実際には、グリッドと第1のビアおよび/または第1のトラックとの間に静電容量がもたらされるが、時間依存性の寄生容量を生じさせる電圧変動は、高感度要素の接続部間に存在しない。
第2のビアおよび第2のトラックから形成された、バイアスされた(例えば、接地された)グリッドを追加することによって、本来なら1つの高感度要素ピンから別の高感度要素ピンへ延びる電界線に分離(分割)が生じ、したがって、バイアスされたグリッドの形態の補償手段なしにこのような電界線から生じる同等の寄生容量の変動を実質的に抑制することができる。
【0011】
第2のビアおよび第2のトラックのグリッドを設けることによって、低静電容量測定の正確さを大きく向上させることができることが、実験により証明されている。第2のビアおよび第2のトラックのグリッドは、PCBの製造中の適切なマスキングによって容易に形成することができる。当技術分野のセンサデバイスに使用される従来のPCBと比べて、追加のビアおよびトラックを形成する必要があるが、これは大量生産の状況において低コストで容易に行うことができる。
【0012】
代替実施形態によれば、補償手段は、PCBにおいて第1のビア間および/または第1のトラック間に形成された1つまたは複数の開口部を含むか、またはそれから構成される。本実施形態によれば、PCB材料の除去により、第1のビア間および第1のトラック間のそれぞれの寄生容量は、空気の比誘電率に依存する。
【0013】
PCB(例えば、エポキシ)材料の比誘電率と比べて、空気の比誘電率は、温度および湿度にわずかにしか依存しないため、大きな変動を示さない。したがって、開口部によって左右される寄生容量を、適切な較正処理によって比較的容易に扱うことができる。温度および湿度にわずかしか依存しない比誘電率を同様に有する高コストの材料、例えばセラミック材料を、PCBの製造に使用してもよいことに留意されたい。しかしながら、このような高コストの材料の使用は、容量センサデバイスの全体的な製造コストを大きく増加させるため不利である。開口部の形態の補償手段は、低コストで設けることができる。例えば、開口部をフライス加工によって形成することができる。
【0014】
前述したように、PCBは、エポキシ材料を(基材として)含むことができる。第1のビアをエポキシ材料に形成することができ、第1のトラックをエポキシ材料内またはその表面に形成することができる。エポキシ材料に基づくPCBを、大量生産において低コストで提供することができる。温度および湿度に対するエポキシ材料の比誘電率の感度によって生じるいずれの欠点も、本発明により提供される補償手段によって補償することができる。特に、上記の補償手段を、少なくとも部分的にエポキシ材料に形成することができる。
【0015】
容量センサデバイスのPCBの寄生容量の問題は、低静電容量測定の状況に特に関連する。したがって、本発明により提供される補償手段は、低静電容量測定の用途に特に有利であり得る。したがって、実施形態によれば、容量センサデバイスは、1ピコファラド未満(例えば、フェムトファラド範囲)の静電容量を検知するように構成されている。
【0016】
第1のビアにより容量センサデバイスのPCBに電気的に接続された容量センサデバイスの検知デバイスによって、生の測定データが提供される。検知デバイスは、流体に接触して、容量センサデバイスがその流体の特性を測定できるように構成されていてよい。
【0017】
実施形態によれば、検知デバイスは、検知電極(例えば、櫛形電極)と検知層とを含み、検知電極と検知層とはキャパシタを形成する。検知デバイスは基板を含むことができ、基板上に検知層が形成される。検知電極のうちの少なくとも1つを、基板上、特に検知層上に形成してもよい。基板に対する安定した電極の接着を保証する接着層(例えばクロムから形成される)を配置してもよい。例えば、検知層は、測定対象(例えば、温度、圧力、湿度、粘度、または比誘電率/誘電率)の量に応じて変化する、検知電極間に形成された静電容量を示す。検知層は、例えば、水の明確な吸着率/吸収率を示す有機誘電体層または無機誘電体層であってよく、検知電極のうちの少なくとも1つを、検知層にまたは検知層上に形成することができる。無機誘電体層は、窒化物材料、特にSi3N4または炭化ケイ素から形成されてよく、またはそれを含んでよい。
【0018】
原則として、容量センサデバイスは、温度、圧力、相対湿度もしくは絶対湿度、またはそれらの組合せを検知するように構成されていてよい。特定の実施形態によれば、容量センサデバイスは、流体(液体もしくは気体)の特性、特に、粘度、濃度、比誘電率、または汚染物質を検知するように構成されている。流体は、油、例えば、潤滑油、トランスミッションオイル、ギアボックスオイル、エンジンオイルなどであってよく、または流体は、例えば、燃料もしくは冷却液などのような自動車用流体であってもよい。流体は空気であってもよい。
【0019】
さらに、上記の実施形態のうちの1つによる容量センサデバイスによって流体の特性を検知する方法であって、容量センサデバイスの検知デバイスを流体に接触させることを含む方法が提供される。流体は、油または燃料もしくは冷却液などのような自動車用流体であってよく、特性は、濃度、粘度、温度、比誘電率、および汚染物質のうちの少なくとも1つであってよい。
【0020】
図面を参照しながら、本発明の追加の機構および利点について説明する。説明において、本発明の好ましい実施形態を示すことを意図する添付図面を参照する。このような実施形態は、本発明の完全な範囲を示すものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】容量センサデバイスのPCBによってもたらされる寄生容量の問題を示す図である。
【
図2】実施形態による、補償手段を備える容量センサデバイスを示す図である。
【
図3】実施形態による、高感度ビア間のステッチを含む容量センサデバイスのPCBの一部の上面図である。
【
図4】実施形態による、高感度トラック間のステッチを含む容量センサデバイスのPCBの一部の上面図である。
【
図5】実施形態による、容量センサデバイスのPCBに形成された遮蔽/シールドグリッドの形態の補償手段を備える容量センサデバイスを示す図である。
【
図6】実施形態による、容量センサデバイスのPCBの高感度ビア間に形成された開口部の形態の補償手段を備える容量センサデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、容量センサデバイスのPCBの、PCBの高感度ビアおよび/またはトラック間における時間依存性の寄生容量を低減させるための補償手段を備えて、容量センサデバイスにより行われる測定の正確さが寄生容量によって大きく影響されないようにする容量センサデバイスを提供する。提供される構成は、大量生産の半導体製造プロセスによって容易に製造することができる。この構成は、比較的小型に低コストで製造することができる。
【0023】
図1は、本発明が対処する、容量センサデバイスのPCBによってもたらされる時間依存性の寄生容量の問題を示す。
図1は、PCB100を備える容量センサデバイス1000を示す。検知デバイス(要素)110が、PCB100に形成されたビアにはんだ付けされたコンタクト120を介してPCB100に接続されている。さらに、分析(検知)回路130がPCB100に接続されている。コンタクト120およびビアを通って流れる電流により、PCB100のビア間に寄生容量PCが生じる。この寄生容量PCは、容量センサデバイス1000の環境の温度および湿度に依存する。これにより生じる時間依存性の寄生容量PCは、容量センサデバイス1000によって行われる測定の正確さに影響を与える。以下で、本発明によるこの問題の解決策について説明する。
【0024】
図2は、本発明による容量センサデバイス20の実施形態を例示的に示す。容量センサデバイス20は、PCB21、例えば多層PCB21を備える。検知デバイス(要素)22が、PCB21に形成された第1のビアにはんだ付けされたコンタクト23によってPCB21に接続され、このコンタクト23は、検知デバイス(
図2には示さず)に接続されている。媒体の測定対象が、検知デバイス22によって検知される。さらに、分析(検知)回路24がPCB21に接続されている。
【0025】
加えて、容量センサデバイス20は、PCB21の第1のビア間におけるPCB21の時間依存性の寄生容量を低減させるように構成されている補償手段を備える。
図1に示す構成において、補償手段は、PCB21において第1のビア間に形成された第2のビア25を含む。第2のビア25は接地(または別の定電位源)に接続されている。
図3は、
図2に示すものと同様の構成の上面図である。第1のビア33がPCB31に形成されている。
図2に示す第2のビア25と同様の第2のビア35が、PCB31の第1のビア33間の領域に形成されている。第2のビア35は、PCB31の第1のビア33間の領域のステッチ(stitching)である。このステッチにより、PCB31の第1のビア33間の領域は、より小さい部分に分割され、その領域におけるPCB21の全体的な時間依存性の寄生容量を低減させる。
同様に、
図4に示すように、ステッチを高感度トラック間に設けることができる。
図4は、多層PCB41の層に形成されたトラック(トレース)43を含む構成の上面図である。トラック43は、途中で検知デバイスに接続されているビア(例えば、
図3に示す第1のビア33など)に接続されている。層は、多層PCB41の上層または何らかの中間層であってよい。ステッチは、(第2の)ビア45によって実現される。
【0026】
図2、
図3、および
図4に示す構成は、第2のビア35、45に接続された追加の(第2の)トラックをさらに含む。例えば、
図5は、
図2に示すものと同様の構成を示す。
図5に示す構成はPCB51を含む。コンタクト53が、PCB51に形成された対応する第1のビアに接続され、分析回路54まで延びている。第1のビア間に第2のビア55が形成されている。第2のビア55は、多層PCB51の層に形成された(第2の)トラック56に接続されている。さらに、第2のビア55は、接地に接続されている(
図2も参照)。接地に接続された第2のビア55と(第2の)トラック56とは、高感度の第1のビア33および第1のトラック43(
図3および
図4参照)を変動する寄生容量から保護する遮蔽/シールドグリッドを形成する。
【0027】
本明細書に示す本発明の容量センサデバイスの代替実施形態が、
図6に示されている。ビア63(
図3に示すビア33と同様)が、容量センサデバイスのPCB61に形成されている。ビアは、コンタクトによって検知デバイス(
図6には示さず)に接続されている。開口部67が、PCB61においてビア63間の領域にフライス加工されている。フライス加工プロセスにより、接触のために基板から延びるビア63のバレルの部分の幅が小さくなっていることに留意されたい。PCB61の材料がビア63間で除去されているため、その材料によって寄生容量がもたらされることはない。むしろ、開口部の空気が寄生容量誘電体(parasitic capacitor dielectric)となる。
しかしながら、空気の比誘電率は、PCB材料(例えば、エポキシ材料)の比誘電率と比べて、容量センサデバイスの環境の温度および湿度にほとんど依存しない。したがって、ビア63間の空気は、容量センサデバイスの適切な較正によって補償可能な略一定の寄生容量をもたらす。
【0028】
同じ効果をもたらすために、
図6に示す開口部67のような開口部を、高感度トラック間、例えば、
図4に示すトラック43のように互いに平行に延びるトラック間に形成してもよい。
【0029】
上記の構成において、PCBはエポキシ材料を(基材として)含むことができ、第1のビアおよび/または第2のビアは、銅バレルを含むことができ、第1のトラックおよび/または第2のトラックを、例えば銅から形成することができる。
【0030】
容量センサデバイスの上記の実施形態を、温度、圧力、相対湿度および絶対湿度、粘度、比誘電率、汚染物質など、ならびにそれらの組合せを含む様々な測定対象を検知するために使用することができる。例えば、容量センサデバイスは、流体、例えば油の特性を検知するための流体センサデバイスであってよい。このような容量センサデバイスは、(例えば、航空機もしくは自動車で使用される)燃料、または冷却液、またはトランスミッションオイル、ギアボックスオイル、エンジンオイル、または潤滑油の特性(例えば、粘度、濃度、比誘電率、および/もしくは汚染物質)を検知するために使用することができる。例えば、粒子による汚染に起因するこのような油の劣化を、このような容量センサデバイスによって判定することができる。
これは、汚染物質が、油の比誘電率を変化させ、それにより、検知される静電容量を変化させるからである。自動車の用途において、容量センサデバイスを、データ伝送のためにCANバスに接続するように構成してもよい。
【0031】
前述したすべての実施形態は、限定を意図したものではなく、本発明の機構および利点を示す例として機能する。前述した機構の一部または全部を、異なる方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0032】
20、1000 容量センサデバイス
21、31、41、51、61、100 PCB
22、110 検知デバイス
23、53、120 コンタクト
24、130 分析回路
25、35、45、55 第2のビア
33、63 第1のビア
43 第1のトラック
56 第2のトラック
67 開口部
【外国語明細書】