(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029556
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20240228BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240228BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 612G
G09G3/20 624B
G02F1/133 550
G09G3/20 670D
G09G3/20 670K
G09G3/20 622C
G09G3/20 622D
G09G3/20 623C
G09G3/20 623D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131884
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 忠義
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZE38
2H193ZQ16
5C006AA22
5C006AC11
5C006AC24
5C006AC26
5C006AF67
5C006AF78
5C006BB16
5C006BC06
5C006FA34
5C080AA06
5C080AA07
5C080AA10
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD06
5C080DD18
5C080FF11
5C080HH09
5C080HH13
5C080JJ02
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】
【課題】電源オフ後の画素電極の残留電圧による焼き付き抑制効果を高めることができる表示装置を提供する。
【解決手段】電源オフシーケンスの第1時刻t1において、走査線SCLに第1電源電圧信号PSIG1を供給し、共通電極COMLにGND電位を供給し、信号線DTLに正値の補正電位Vcorを供給した後、第1時刻t1の後の第2時刻t2において、走査線SCLにGND電位を供給する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素トランジスタと、当該画素トランジスタのドレインに接続された画素電極と、を有する画素と、
前記画素トランジスタのゲートに接続された走査線と、
前記画素トランジスタのソースに接続された信号線と、
正値の第1電源電圧信号と負値の第2電源電圧信号とが供給されて前記画素トランジスタを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記駆動回路は、
前記走査線に走査信号を供給するゲートドライバと、
前記信号線に画素信号を供給する信号線選択回路と、
前記ゲートドライバ及び前記信号線選択回路を制御する表示制御回路と、
を備え、
前記画素電極は、
表示動作時において、GND電位よりも低電位の共通電位が供給される共通電極との間に保持容量が設けられ、
前記表示制御回路は、
電源オフシーケンスの第1時刻において、前記走査線に前記第1電源電圧信号を供給し、前記共通電極にGND電位を供給し、前記信号線に正値の補正電位を供給した後、
前記第1時刻の後の第2時刻において、前記走査線にGND電位を供給する、
表示装置。
【請求項2】
前記表示制御回路は、
前記第1時刻から少なくとも前記第2時刻までの期間、前記信号線に前記補正電位を供給した状態を維持する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記第1時刻から少なくとも前記第2時刻までの期間、前記信号線に前記補正電位を供給するスイッチ回路を備え、
前記表示制御回路は、
前記第1時刻から少なくとも前記第3時刻までの期間、前記信号線選択回路をオフ制御する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
少なくとも前記表示制御回路を含むドライバICを備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源オフ時に、共通電極とソース線とを短絡して画素トランジスタをオンさせることで、画素にソース線の接地電位を書き込み、画素電極の電位を接地電位に設定することにより、速やかに残像を消去することができ、残留電圧による液晶の焼き付きを防止することができる液晶表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、動作状態から非動作状態に移行したとき、全てのTFTのゲートをオンさせると共に、液晶駆動電源を接地電位に設定して、液晶及び保持容量に蓄積された液晶駆動電圧を放電させるようにした液晶表示装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-299253号公報
【特許文献2】特開2001-22326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、画素電極の電位を接地電位に設定した後、ゲート信号電位がオフ電位となったときに画素トランジスタのドレイン-ゲート間容量を介して画素電極の電位が変動し、画素電極に残留電圧が発生することが考慮されていない。このため、画素電極の残留電圧による焼き付きの発生を抑制する効果が十分に発揮されない場合がある。
【0005】
本発明は、電源をオフするシーケンスにおいて発生する画素電極の残留電圧を速やかに除去することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る表示装置は、画素トランジスタと、当該画素トランジスタのドレインに接続された画素電極と、を有する画素と、前記画素トランジスタのゲートに接続された走査線と、前記画素トランジスタのソースに接続された信号線と、正値の第1電源電圧信号と負値の第2電源電圧信号とが供給されて前記画素トランジスタを駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記走査線に走査信号を供給するゲートドライバと、前記信号線に画素信号を供給する信号線選択回路と、前記ゲートドライバ及び前記信号線選択回路を制御する表示制御回路と、を備え、前記画素電極は、表示動作時において、GND電位よりも低電位の共通電位が供給される共通電極との間に保持容量が設けられ、前記表示制御回路は、電源オフシーケンスの第1時刻において、前記走査線に前記第1電源電圧信号を供給し、前記共通電極にGND電位を供給し、前記信号線に正値の補正電位を供給した後、前記第1時刻の後の第2時刻において、前記走査線にGND電位を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る表示装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、表示領域における画素配列の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、表示装置の概略断面構造を表す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る表示装置の駆動回路構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、
図7に示す電源オフシーケンスによるリセット後の画素電極の電位変動の拡大図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、
図9に示す電源オフシーケンスによるリセット後の画素電極の電位変動の拡大図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る表示装置の駆動回路構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、実施形態に係る表示装置の概略構成の一例を示す図である。
図2は、表示領域における画素配列の一例を示す図である。
【0010】
本実施形態に係る表示装置1は、例えば、表示素子として液晶表示素子を用いた液晶表示デバイスである。また、本開示において、表示装置1は、駆動方式として、例えばカラム反転駆動方式やフレーム反転方式等を採用することができる。表示装置1における駆動方式としては、カラム反転駆動方式やフレーム反転方式に限定されない。
【0011】
表示装置1は、表示パネル11上に表示領域AAが設けられ、表示領域AAの周辺領域に駆動回路40が設けられている。表示装置1は、電源装置12から電力供給される。
【0012】
駆動回路40は、ゲートドライバ42、信号線選択回路43、及び表示制御回路44を備える。ゲートドライバ42及び信号線選択回路43は、表示領域AAの周辺領域に形成される薄膜トランジスタ(TFT)回路である。表示制御回路44は、表示領域AAの周辺領域に実装されるドライバIC4に含まれる。ドライバIC4は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)等で構成される中継基板を介して制御装置13と接続される。
【0013】
制御装置13は、電源装置12から表示装置1への電力供給を制御する。また、制御装置13は、表示装置1の電源オン及び電源オフを制御する。電源装置12及び制御装置13は、例えば、表示装置1が搭載される機器(図示省略)に搭載される。
【0014】
表示領域AAには、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)に並ぶ複数の画素Pixが設けられている。また、表示領域AAには、画素Pixに走査信号(ゲート信号)GATEを供給する走査線(ゲート線)SCLや、画素Pixに画素信号SIGを供給する信号線DTLが設けられている。本実施形態において、走査線SCLは、Dx方向に延伸して設けられている。また、本実施形態において、信号線DTLは、Dy方向に延伸して設けられている。
【0015】
図2に示すように、画素Pixは、それぞれ画素トランジスタTr及び画素電極PXを備えている。画素トランジスタTrは、薄膜トランジスタ(TFT)により構成されるものであり、例えば、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(以下、「n型TFT」とも称する)で構成される。画素トランジスタTrのソースは信号線DTLに接続され、ゲートは走査線(ゲート線)SCLに接続され、ドレインは画素電極PXに接続されている。画素電極PXと共通電極COMLとの間に保持容量CSが形成される。
【0016】
行方向(Dx方向)に並ぶ画素Pixの画素トランジスタTrのゲートには、走査線(ゲート線)SCLを介して走査信号(ゲート信号)GATE(1,2,・・・,m,・・・,M)が供給され、列方向(Dy方向)に並ぶ画素Pixの画素トランジスタTrのソースには、信号線DTLを介して画素信号SIG(1,2,・・・,n,・・・N)が供給される。
図2では、列方向(Dx方向)にM個の画素Pixが並び、行方向(Dy方向)にN個の画素Pixが並ぶ例を示したが、これに限定されない。以下、画素Pixが行方向(Dx方向)に並ぶ行を画素行とも称する。また、画素Pixが列方向(Dy方向)に並ぶ列を画素列とも称する。
【0017】
本開示において、画素Pixは、例えば、赤色(R)を表示するための赤画素、緑色(G)を表示するための緑画素、青色(B)を表示するための青画素を含む。画素配列としては、例えば、行方向(Dx方向)にRGBの各画素が並ぶストライプ配列が例示されるが、画素配列はRGBのストライプ配列に限定されない。具体的には、例えば、画素Pixとして、白色(W)を表示するための白画素を配置しても良いし、行方向(Dx方向)や列方向(Dy方向)に対して所定の角度を有する斜め方向のストライプ配列や異なる色を表示する複数の画素群が行方向(Dx方向)および列方向(Dy方向)のいずれにも周期的に配置される配列としても良い。
【0018】
電源装置12は、表示装置1に供給する正値の第1電源電圧信号PSIG1及び負値の第2電源電圧信号PSIG2を生成する。第1電源電圧信号PSIG1は、表示装置1の稼働時において、第1電位(VGH)に制御される。第2電源電圧信号PSIG2は、表示装置1の稼働時において、第2電位(VGL)に制御される。第1電位(VGH)は、例えば7[V]とされる。第2電位(VGL)は、例えば-7[V]とされる。表示装置1の稼働時に供給される第1電位(VGH)は、7[V]に限定されない。また、表示装置1の稼働時に供給される第2電位(VGL)は、-7[V]に限定されない。
【0019】
制御装置13は、表示装置1に表示する映像の原信号である映像信号Sourceを表示装置1に送信する。また、制御装置13は、表示装置1の電源オン及び電源オフを制御するための第1電源制御信号PCTRL1を表示装置1に送信する。また、制御装置13は、電源装置12から表示装置1への電力供給を制御するための第2電源制御信号PCTRL2を電源装置12に送信する。
【0020】
制御装置13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等の記憶装置を含む。制御装置13は、CPUや記憶装置等のこれらハードウェア資源を用いてプログラムを実行することにより、表示装置1の表示機能を実現することができる。制御装置13は、プログラムの実行結果に応じて、表示装置1に表示させる画像をドライバIC4が画像入力階調の情報として扱えるように制御する。
【0021】
表示制御回路44は、ゲートドライバ42、信号線選択回路43を制御することで表示領域AAにおける表示動作を制御する。表示制御回路44は、制御装置13から映像信号Source及び第1電源制御信号PCTRL1等の各種制御信号を受信する。また、表示制御回路44は、制御装置13からの映像信号Sourceを画像信号Vsigに変換して出力する。画像信号Vsigは、例えば、RGBの画素配列に応じた画素信号Sigを時分割多重化した信号である。また、表示制御回路44は、共通電極COMLに共通電位VCOMを供給する。
【0022】
また、表示制御回路44は、信号線選択回路43と制御装置13との間のインターフェース(I/F)及びタイミングジェネレータとしての機能を備えている。なお、表示制御回路44が含まれるドライバIC4は、表示パネル11上に実装されるのではなく、表示パネル11に接続された中継基板上に実装されても良い。また、ゲートドライバ42及び信号線選択回路43は、ドライバIC4に含まれていても良い。
【0023】
次に、実施形態に係る表示装置1の概略構造について、
図3から
図5Bを参照して説明する。
図3は、表示装置の概略断面構造を表す断面図である。
図4は、画素の構成例を示す平面図である。
図5Aは、
図4のA1-A2線に沿う断面の第1例を示す図である。
図5Aに示す第1例では、画素トランジスタTrとして、ボトムゲート型トランジスタを用いた例を示している。
図5Bは、
図4のA1-A2線に沿う断面の第2例を示す図である。
図5Bに示す第2例では、画素トランジスタTrとして、トップゲート型トランジスタを用いた例を示している。
【0024】
アレイ基板2は、ガラス又は透明樹脂からなる第1基板21と、複数の画素電極PXと、共通電極COMLと、画素電極PXと共通電極COMLとを絶縁する絶縁層24と、を含む。複数の画素電極PXは、第1基板21の上方に例えば行列状(マトリクス状)に配設される。共通電極COMLは、第1基板21と画素電極PXとの間に設けられる。
【0025】
画素電極PXは、各画素Pixに対応して設けられる。表示動作を行うための画素信号SIGは、信号線選択回路43から信号線DTL及び画素トランジスタTrを介して画素電極PXに供給される。また、表示動作の際に、ドライバIC4から電圧信号である表示用の共通電位VCOMが共通電極COMLに供給される。共通電位VCOMは、GND電位とは異なる電位が好ましく、例えば-0.7[V]程度とされる。共通電位VCOMの設定値は、カラム反転駆動方式やフレーム反転方式等の駆動方式においてフリッカーの発生しない最適値に設定されている。また、共通電位VCOMは固定電位であることが好ましいが、交流矩形波からなる波形を有する構成であっても構わない。
【0026】
画素電極PX及び共通電極COMLは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電性材料で構成されている。第1基板21の下側には、接着層(図示省略)を介して偏光板35Bが設けられている。
【0027】
対向基板3は、ガラス又は透明樹脂からなる第2基板31と、この第2基板31の一方の面に形成されたカラーフィルタ32及び遮光層(図示省略)とを含む。また第2基板31の上側には、接着層(図示省略)を介して偏光板35Aが設けられている。
【0028】
アレイ基板2と対向基板3とは、所定の間隔(セルギャップ)を設けて対向して配置される。第1基板21と第2基板31との間の空間に、表示機能層として液晶層6が設けられる。液晶層6は、各画素電極PX~共通電極COML間の電界の状態に応じて画素Pixごとに液晶分子の配向状態を変化させることで、液晶層6を通過する光を変調する。本実施形態においては、例えば、FFS(フリンジフィールドスイッチング)を含むIPS(インプレーンスイッチング)等の横電界モードに適した液晶が用いられる。
【0029】
アレイ基板2は、各画素Pixの画素トランジスタTr、各画素電極PXに画素信号SIGを供給する信号線DTL、各画素トランジスタTrを駆動するゲート信号GATEを供給する走査線(ゲート線)SCL等の配線を備えている。信号線DTL及び走査線(ゲート線)SCLは、第1基板21の表面と平行な平面に延在する。
【0030】
図4に示すように、走査線(ゲート線)SCLと信号線DTLとで囲まれた領域が画素Pixである。画素電極PXは、複数の帯状電極22aと、連結部22bとを有する。
【0031】
図4に示すように、画素トランジスタTrは、半導体61、ソース電極62、ドレイン電極63及びゲート電極64を含む。
【0032】
図5Aに示すように、画素トランジスタTrとしてボトムゲート型トランジスタを用いた構成では、第1基板21の上にゲート線層51が設けられている。ゲート線層51には、ゲート電極64(走査線(ゲート線)SCL)が設けられている。絶縁層58a(第2絶縁層)は、ゲート電極64を覆って第1基板21の上に設けられている。絶縁層58aの上には半導体層52が設けられている。半導体層52には、半導体61が設けられている。半導体層52の上側に、絶縁層58c(第1絶縁層)を介して信号線層53が設けられている。
【0033】
図5Bに示すように、画素トランジスタTrとしてトップゲート型トランジスタを用いた構成では、第1基板21の上にライトシールドLSが設けられている。ライトシールドLSの上に、絶縁層58fを介して半導体層52が設けられている。半導体層52には、半導体61が設けられている。半導体層52の上側に、絶縁層58cを介してゲート線層51が設けられている。ゲート線層51には、ゲート電極64が設けられている。絶縁層58aは、ゲート電極64を覆って絶縁層58cの上に設けられている。ゲート線層51の上側に、絶縁層58aを介して信号線層53が設けられている。
【0034】
信号線層53には、ドレイン電極63及びソース電極62(信号線DTL)が設けられる。ドレイン電極63及びソース電極62(信号線DTL)の上側に、絶縁層58d(第3絶縁層)を介して補助配線層54が設けられている。補助配線層54の上側に、絶縁層58eを介して共通電極層55が設けられる。共通電極層55には、共通電極COMLが設けられる。なお、絶縁層を介することなく補助配線層と共通電極層とが重なっている構成も採用可能である。共通電極層55の上側に、絶縁層24を介して画素電極PXが設けられる。
【0035】
図4及び
図5A(又は
図5B)に示すように、画素電極PXは、コンタクトホールH11を介して画素トランジスタTrのドレイン電極63と接続されている。ドレイン電極63は、コンタクトホールH12を介して半導体61に接続される。半導体61は、平面視でゲート電極64と交差する。ゲート電極64は走査線(ゲート線)SCLに接続され、走査線(ゲート線)SCLの一辺から突出して設けられている。半導体61は、ソース電極62と重畳する位置まで延びて、コンタクトホールH13を介してソース電極62と電気的に接続される。ソース電極62は、信号線DTLに接続され、信号線DTLの一辺から突出している。
【0036】
半導体61の材料としては、ポリシリコンや酸化物半導体などの公知の材料を用いることができる。例えばTAOS(Transparent Amorphous Oxide Semiconductor、透明アモルファス酸化物半導体)を用いることで、映像表示用の電圧を長時間保持する能力(保持率)が良く、表示品位を向上させることができる。また、TAOSを含む酸化物半導体は、画素トランジスタTrオフ時のリーク電流が小さい。
【0037】
ゲート電極64(走査線(ゲート線)SCL)は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)又はこれらの合金で構成される。ドレイン電極63及びソース電極62(信号線DTL)は、例えば、チタンとアルミニウムとの合金である、チタンアルミニウム(TiAl)で構成される。
【0038】
絶縁層24,58a,58c,58d,58e,58fの材料としては、公知の絶縁材料を用いることができる。例えば、絶縁層58bの材料としては、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を用いることができる。また、例えば、絶縁層58cの材料としては、シリコン酸化膜(SiO2)を用いることができる。絶縁層58dの材料としては、アクリル等の有機絶縁膜が用いられる。これにより、共通電極COMLを設ける面の平坦化が図られる。
【0039】
補助配線層54の材料としては、ゲート電極64(走査線(ゲート線)SCL)と同様に、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)又はこれらの合金で構成される。
【0040】
上述した概略構造の表示装置1では、画素電極PXと共通電極COMLとの間に形成される保持容量CSに加え、画素電極PXと他の導電部材との間にも寄生容量が生じる。
【0041】
液晶表示装置では、電源オフの際に駆動回路の出力がハイインピーダンスとなるため、画素電極に保持された電位を電源オフ時にリセット(放電)する必要がある。画素電極に保持された電位を電源オフ時にリセットする際の制御手順を、「電源オフシーケンス」とも称する。
【0042】
(実施形態1)
以下、実施形態1に係る表示装置1の駆動回路40の具体的な構成及び電源オフシーケンスについて説明する。
【0043】
図6は、実施形態1に係る表示装置の駆動回路構成の一例を示す図である。
図6では、1画素Pix(m,n)に対応する回路構成例を示している。画素Pix(m,n)は、
図2に示す画素配列において、行方向(Dx方向)に並ぶ画素Pixの図中左からn番目、かつ、列方向(Dy方向)に並ぶ画素Pixの図中上からm番目の画素Pixを示している。また、
図6では、画素電極PXと走査線(ゲート線)SCLとの間に生じる寄生容量CPを破線で示している。
【0044】
駆動回路40を構成する各回路要素は、電源装置12から第1電源電圧信号PSIG1及び第2電源電圧信号PSIG2が供給されて動作する。表示装置1の稼働時において電源装置12から供給される第1電源電圧信号PSIG1の電位(第1電位VGH)は、画素トランジスタTrのゲートに供給する走査信号(ゲート信号)GATE(m)のハイ電位とされる。また、表示装置1の稼働時において電源装置12から供給される第2電源電圧信号PSIG2の電位(第2電位VGL)は、画素トランジスタTrのゲートに供給する走査信号GATE(m)のロー電位とされる。
【0045】
表示制御回路44(ドライバIC4)は、ゲートドライバ42及び信号線選択回路43を制御する。具体的に、表示制御回路44は、スタートパルスSTV、シフトクロックCKV等の同期信号や走査線駆動信号ENBをゲートドライバ42に供給する。また、表示制御回路44は、信号線選択制御信号ASW(n),XASW(n)を信号線選択回路43に供給する。
【0046】
また、本開示において、表示制御回路44は、電源オフシーケンスにおいて表示領域AA内の全ての画素Pixの画素トランジスタTrをオン制御して画素電極PXの電位をリセットするためのリセット信号XResetをゲートドライバ42に供給する。リセット信号XResetは、表示動作時においてハイ電位(第1電位VGH)とされ、電源オフシーケンスにおいてロー電位(第2電位VGL)とされる信号である。
【0047】
ゲートドライバ42は、表示動作を行うための主要な回路要素として、シフトレジスタ回路421及び走査線駆動回路422を備える。また、本開示において、ゲートドライバ42は、少なくともリセット信号XResetがロー電位(第2電位VGL)であるとき、走査線駆動回路422にロー電位(第2電位VGL)を出力するAND回路424を備える。
【0048】
シフトレジスタ回路421は、表示制御回路44から出力されるスタートパルスSTV、シフトクロックCKV等の同期信号に基づき、m列目の画素行の選択時においてハイ電位(第1電位VGH)となる信号を生成する回路である。
【0049】
具体的に、シフトレジスタ回路421は、例えば、シフトクロックCKVがハイ電位であるとき、前段のシフトレジスタS/Rの出力(又はスタートパルスSTV)を取り込み、シフトクロックCKVがロー電位であるとき、前段のシフトレジスタS/Rの出力(又はスタートパルスSTV)を取り込む経路を遮断しつつ、シフトレジスタS/R内のラッチ動作により値を保持する。
【0050】
シフトレジスタ回路421の出力信号は、インバータ回路423により論理反転される。インバータ回路423の出力信号は、表示動作時、すなわち、リセット信号XResetがハイ電位(第1電位VGH)であるとき、AND回路424を経て走査線駆動回路422に入力される。
【0051】
走査線駆動回路422は、AND回路424から出力される信号及び表示制御回路44から出力される走査線駆動信号ENBに基づき、画素トランジスタTrのゲートに供給する走査信号GATE(m)を生成する回路である。走査線駆動信号ENBのハイ電位は、第1電位VGHとされる。
【0052】
具体的に、走査線駆動回路422は、表示動作時において、AND回路424から出力される信号がハイ電位(第1電位VGH)であるとき、pチャネルのMOS型のTFT(以下、「p型TFT」とも称する)で構成される第1トランジスタTr1、及び、n型TFTで構成される第2トランジスタTr2がオフ制御され、n型TFTで構成される第3トランジスタTr3がオン制御される。これにより、走査線駆動回路422の出力電位が第2電位VGLとなり、画素Pix(m,n)の画素トランジスタTrがオフ制御される。
【0053】
また、走査線駆動回路422は、表示動作時において、AND回路424から出力される信号がロー電位(第2電位VGL)であるとき、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2がオン制御され、第3トランジスタTr3がオフ制御される。これにより、走査線駆動回路422の出力電位が走査線駆動信号ENBのハイ電位である第1電位VGHとなり、画素Pix(m,n)の画素トランジスタTrがオン制御される。
【0054】
信号線選択回路43は、n行目の画素列の選択時において、表示制御回路44から出力される画像信号Vsigを画素信号SIGとして選択的に出力するスイッチ回路である。具体的に、信号線選択回路43は、n型TFTで構成されるスイッチトランジスタASWTr及びp型TFTで構成されるスイッチトランジスタXASWTrを備える。
【0055】
信号線選択回路43は、表示制御回路44から出力される信号線選択制御信号ASW(n)がハイ電位であり、且つ、信号線選択制御信号XASW(n)がロー電位であるとき、スイッチトランジスタASWTr,XASWTrがオン制御される。また、信号線選択回路43は、表示制御回路44から出力される信号線選択制御信号ASW(n)がロー電位であり、且つ、信号線選択制御信号XASW(n)がハイ電位であるとき、スイッチトランジスタASWTr,XASWTrがオフ制御される。
【0056】
信号線選択制御信号ASW(n)と信号線選択制御信号XASW(n)とは、互いに論理反転したコンプリメンタリ信号である。信号線選択制御信号XASW(n)は、信号線選択制御信号ASW(n)を論理反転して生成される態様であっても良い。また、信号線選択制御信号ASW(n)は、信号線選択制御信号XASW(n)を論理反転して生成される態様であっても良い。さらには、信号線選択回路43は、n型TFT又はp型TFTで構成されるスイッチトランジスタのみで構成される態様であっても良い。スイッチトランジスタがn型TFTで構成される場合、信号線選択制御信号XASWは不要である。また、スイッチトランジスタがp型TFTで構成される場合、信号線選択制御信号ASWは不要である。
【0057】
上述した駆動回路40の各回路要素の動作により、表示動作の際の画素Pix(m,n)の選択時において、画素Pix(m,n)の画素トランジスタTrがオン制御され、画素Pix(m,n)の画素電極PXに画素信号SIGが書き込まれる。その後、画素Pix(m,n)の画素トランジスタTrがオフ制御され、次回フレームにおいて画素Pix(m,n)が再びオン制御されるまでの期間において、保持容量CSに画素信号SIGの電位が保持される。上述した制御を所定の駆動方式(例えば、カラム反転駆動方式やフレーム反転方式)に対応した選択順序で表示領域AA内の全ての画素Pixに対して実行することで、表示領域AAにおける表示動作を行うことができる。
【0058】
上述した表示装置1の電源オフシーケンスにおいて、表示制御回路44は、リセット信号XResetをロー電位(第2電位VGL)とする。これにより、走査線駆動回路422にロー電位(第2電位VGL)が供給されて全ての走査線SCLの電位がロー電位(第2電位VGL)となり、表示領域AA内の全ての画素Pixの画素トランジスタTrがオン制御されて画素電極PXの電位がリセットされる。これにより、画素電極PXの残留電圧による液晶の焼き付きを抑制することができる。
【0059】
図7は、比較例に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。本開示において、表示制御回路44は、制御装置13から出力される第1電源制御信号PCTRL1に基づき、表示装置1の電源オフシーケンスを実行する。
図7に示す例では、時刻t0において電源オフシーケンスを開始する例を示している。時刻t0以前は、上述した通常の表示動作を行っているものとする。
【0060】
時刻t0において電源オフシーケンスを開始すると、表示装置1は黒画面表示を行う。具体的に、表示制御回路44は、表示領域AA内の全ての画素Pixに対応する画像信号Vsigの階調を「0」として表示動作を行う。これにより、画素電極PXに保持された電位を最小値とすることができる。以下、黒画面表示を行う期間を「黒挿入期間」とも称する。なお、黒挿入期間は必ずしも設けなくとも良い。
【0061】
時刻t1において黒挿入期間を終了すると、表示制御回路44は、信号線DTLに供給する電位として、GND電位を供給する。このとき、表示制御回路44は、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号ASWをハイ電位とし、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号XASWをロー電位とする。これにより、スイッチトランジスタASWTr,XASWTrがオン制御されて信号線DTLにGND電位が供給され、信号線DTLの電位はGND電位に設定される。
【0062】
また、時刻t1において、表示制御回路44は、共通電極COMLへの共通電位VCOMの供給を停止する。これにより、共通電極COMLの電位は、時刻t4に至るまでにGND電位に収束する。また、時刻t1において、表示制御回路44は、全ての走査線駆動信号ENBをハイ電位(第1電位VGH)とする。また、表示制御回路44は、リセット信号XResetをロー電位(第2電位VGL)とする。これにより、AND回路424の出力信号の電位がロー電位(第2電位VGL)となる。この結果として、走査線駆動回路422の第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2がオン制御され、第3トランジスタTr3がオフ制御され、全ての走査線SCLの電位が走査線駆動信号ENBのハイ電位として供給される第1電位VGHとなり、全ての画素Pixの画素トランジスタTrがオン制御される。これにより、全ての画素Pixの画素電極PXは、オン制御された画素トランジスタTrを介してGND電位の信号線DTLと電気的に接続され、全ての画素Pixの画素電極PXの電位がGND電位にリセットされる。
【0063】
全ての画素Pixの画素電極PXの電位をリセットした後の時刻t3において、電源装置12は、制御装置13から出力される第2電源制御信号PCTRL2に基づき、表示装置1への第1電源電圧信号PSIG1及び第2電源電圧信号PSIG2の供給を停止する。これにより、ドライバIC4は制御を停止し、スタートパルスSTVやシフトクロックCKV等の同期信号、全ての走査線駆動信号ENB、リセット信号XReset、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号ASW,XASW等の各制御信号の電位がGND電位となる。
【0064】
なお、第1電源電圧信号PSIG1及び第2電源電圧信号PSIG2は、電源装置12に具備された電源平滑用コンデンサ(図示省略)によって徐々に電位が低下する。このため、第1電源電圧信号PSIG1及び第2電源電圧信号PSIG2の電位は、各制御信号がGND電位となった後にGND電位に収束する。言い換えると、ドライバICから出力される各制御信号の電位は、第1電源電圧信号PSIG1及び第2電源電圧信号PSIG2よりも急峻にGND電位に収束する。
【0065】
このとき、走査線SCLには、走査信号GATEの走査線駆動信号ENBのハイ電位である第1電位VGHからGND電位への急峻な電位変動が生じる。上述の如く画素トランジスタTrのドレイン-ゲート間は寄生容量CPが形成されているが、当該走査線SCLの急激な電圧変動が当該寄生容量CPに作用し、画素電極PXの電位が本来のリセット電位であるGND電位から低下する。
【0066】
ここで、画素電極PXの電位が低下する原理についてより詳細に説明する。
図8は、
図7に示す電源オフシーケンスによるリセット後の画素電極の電位変動の拡大図である。
図8に示す実線は、画素電極PXの電位を示している。
図8に示す破線は、走査線(ゲート線)SCLの電位を示している。なお、当該比較例においては、時刻t3の時点では、共通電極COMLはGND電位に収束し、また、信号線DTLの電位もGND電位に収束した後、ハイインピーダンス状態(フローティング状態)となっている。
【0067】
図8に示す如く、走査線SCLに接続された画素トランジスタTrのゲート電位が第1電位VGHからGND電位に変動すると、それに伴って寄生容量CPが放電する。画素トランジスタTrの電位が閾値電圧Vthを下回るまでの画素トランジスタTrがオン状態を維持している期間は、信号線DTLから画素トランジスタTrを介して寄生容量CPが再充電されるが、画素トランジスタTrのゲート電位の変動が急峻である場合、寄生容量CPの放電速度が寄生容量CPの再充電速度を上回る。これにより、画素電極PXの電位低下が発生する。
【0068】
また、上述の如き画素トランジスタTrがオン状態を維持しているわずかな期間において画素電極PXの再充電のための電荷供給元となり得る信号線DTLは、信号線選択制御信号ASW,XASWがGND電位となることによりハイインピーダンス状態(フローティング状態)であるので、画素電極PXの再充電のための電荷供給により信号線DTLの電位がGND電位から低下していく。これにより、信号線DTLから再充電される画素電極PXの電位低下がより顕著となる。そして、画素トランジスタTrの電位が閾値電圧Vthを下回ると、画素トランジスタTrがオフ状態となり、画素電極PXの電位がGND電位よりも低下した状態で維持されることとなる。
【0069】
この結果として、ドライバIC4の制御を停止した時刻t3後の画素電極PXの電位は、
図7及び
図8に示すように、リセット後の電位であるGND電位に対して負値の電位差ΔVが残留電圧として生じることとなる(GND-ΔV)。ここで、画素トランジスタTrのオフ時のリーク電流に期待して当該残留電圧が経時的に徐々に抜けていくことが考えられるが、特に、半導体61の材料として、例えばTAOS(透明アモルファス酸化物半導体)等の映像表示用の電圧保持率が良い、あるいはオフ時のリーク電流が著しく小さい酸化物半導体等の半導体を用いた場合、長時間に亘り電位差ΔVが画素電極PXに残留した状態が維持され、液晶の焼き付きが発生する可能性がある。また、焼き付きによって共通電位VCOMの最適値が変動することも考えられ、これによってカラム反転駆動方式やフレーム反転方式等の駆動方式によるフリッカーの発生要因となる可能性がある。
【0070】
図9は、実施形態1に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
図10は、
図9に示す電源オフシーケンスによるリセット後の画素電極の電位変動の拡大図である。
図10に示す実線は、画素電極PXの電位を示している。
図10に示す破線は、走査線(ゲート線)SCLの電位を示している。ここでは、
図7及び
図8に示す比較例に係る電源オフシーケンスとは異なる点について詳細に説明し、重複する説明を省略する場合がある。
【0071】
実施形態1に係る表示装置1の電源オフシーケンスでは、時刻t1(第1時刻)において黒挿入期間を終了すると、表示制御回路44は、信号線DTLに供給する電位として、正値の補正電位Vcorを供給する。補正電位Vcorは、時刻t2(第2時刻)において画素電極PXの再充電のための電荷供給元となる信号線DTLの電位低下分であるΔV2の大きさに相当する(Vcor≒|ΔV2|)。このとき、表示制御回路44は、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号ASWをハイ電位とし、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号XASWをロー電位とする。これにより、スイッチトランジスタASWTr,XASWTrがオン制御されて信号線DTLに補正電位Vcorが供給され、信号線DTLの電位は補正電位Vcorに設定される。
【0072】
また、時刻t1(第1時刻)において、表示制御回路44は、共通電極COMLへの共通電位VCOMの供給を停止する。これにより、共通電極の電位はGND電位に収束する。また、表示制御回路44は、全ての走査線駆動信号ENBをハイ電位(第1電位VGH)とし、リセット信号XResetをロー電位(第2電位VGL)とする。これにより、AND回路424の出力信号の電位がロー電位(第2電位VGL)となる。この結果として、走査線駆動回路422の第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2がオン制御され、第3トランジスタTr3がオフ制御され、全ての走査線SCLの電位が走査線駆動信号ENBのハイ電位として供給される第1電位VGHとなり、全ての画素Pixの画素トランジスタTrがオン制御される。これにより、全ての画素Pixの画素電極PXは、オン制御された画素トランジスタTrを介して補正電位Vcorの信号線DTLと電気的に接続され、全ての画素Pixの画素電極PXのリセット後の本来の電位であるGND電位に補正電位Vcorと略等価の電位差ΔV1を加算した電位に設定される(GND+ΔV1)。
【0073】
全ての画素Pixの画素電極PXの電位をリセット後の本来の電位であるGND電位に電位差ΔV1(≒Vcor)を加算した電位(GND+ΔV1)に設定した後、時刻t2(第2時刻)において、全ての走査線駆動信号ENBの電位をGND電位とする。これにより、走査線SCLには、走査信号GATEの走査線駆動信号ENBの第1電位VGHからGND電位への電位変動が生じ、この走査線SCLの電圧変動が、画素トランジスタTrのドレイン-ゲート間に生じる寄生容量CPを介して画素電極PXに重畳する。具体的には、走査線SCLに接続された画素トランジスタTrのゲート電位が第1電位VGHからGND電位に変位すると、画素トランジスタTrがオフとなるまで寄生容量CPが放電して画素電極PXの電位低下が発生する。このため、時刻t2(第2時刻)後の画素電極PXの電位は、
図9及び
図10に示すように、GND電位に電位差ΔV1を加算した電位に対して負値の電位差ΔV2の電位変動が生じる(GND+ΔV1-ΔV2)。
【0074】
実施形態1に係る表示装置1の電源オフシーケンスでは、時刻t2において信号線選択制御信号ASW,XASWの制御状態が維持される。具体的には、信号線選択制御信号ASWの電位はハイ電位に維持され、信号線選択制御信号XASWの電位はロー電位に維持される。このため、画素電極PXの再充電のための電荷供給元となる信号線DTLの電位低下は、
図7及び
図8に示す比較例の電源オフシーケンスの時刻t2における電位低下よりも抑制される。これにより、画素電極PXに生じる負値の電位差ΔV2は、
図7及び
図8に示す比較例の電源オフシーケンスの時刻t3における電位差ΔVよりも小さくなる(ΔV2<ΔV)。ここで、時刻t1において画像信号Vsigの電位として供給した補正電位Vcorと略等価の電位差ΔV1は、時刻t2において画素電極PXの再充電のための電荷供給元となる信号線DTLの電位低下分であるΔV2の大きさに相当する。
【0075】
すなわち、実施形態1に係る表示装置1の電源オフシーケンスでは、時刻t1において画像信号Vsigの電位として供給する補正電位Vcorは、時刻t1において画素電極PXに生じる正値の電位差ΔV1の大きさと、時刻t2において画素電極PXに生じる負値の電位差ΔV2の大きさとが略等価となるように設定する(|ΔV1|≒|ΔV2|)。これにより、実施形態1に係る電源オフシーケンスにおける画素電極PXのリセット後の電位は、GND電位に収束する(GND+ΔV1-ΔV2≒GND)。
【0076】
時刻t2(第2時刻)の後の時刻t3(第3時刻)においてドライバIC4が制御を停止すると、スタートパルスSTVやシフトクロックCKV等の同期信号、リセット信号XReset、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号ASW,XASW等の各制御信号の電位、及び、画像信号Vsigの電位がGND電位となる。これにより、信号線DTLの電位がGND電位となる。すなわち、時刻t1(第1時刻)において信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給されてから、時刻t2(第2時刻)の後の時刻t3(第3時刻)においてドライバIC4が制御を停止するまでの間、信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給された状態が維持される。言い換えると、時刻t1(第1時刻)において信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給されてから、少なくとも時刻t2(第2時刻)までの期間、信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給された状態が維持される。
【0077】
上述した実施形態1に係る表示装置1の電源オフシーケンスにより、ドライバIC4が制御を停止した時刻t3後の画素電極PXの電位は、リセット後の本来の電位であるGND電位に収束する。これにより、時刻t1から時刻t2において画素電極PXに残留した電位差ΔV1が速やかに除去され、電源オフ後の画素電極PXの残留電圧による液晶の焼き付きの発生を抑制することができる。また、焼き付きに起因する共通電位VCOMの最適値変動によるフリッカーの発生を抑制することができる。
【0078】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る表示装置1aの駆動回路40aの具体的な構成及び電源オフシーケンスについて説明する。
【0079】
図11は、実施形態2に係る表示装置の駆動回路構成の一例を示す図である。
図12は、実施形態2に係る電源オフシーケンスの一例を示すタイミングチャートである。ここでは、実施形態1に係る表示装置1の駆動回路構成、及び、実施形態1に係る電源オフシーケンスとは異なる点について詳細に説明し、重複する説明を省略する場合がある。
【0080】
実施形態2の駆動回路40aでは、電源オフシーケンスの時刻t1において、画像信号Vsigの電位として正値の補正電位Vcorを供給する構成に代えて、電源オフシーケンスのリセット信号XResetのロー電位(第2電位VGL)期間において、信号線DTLの電位を正値の補正電位Vcorに設定するスイッチ回路45を備えている。
【0081】
スイッチ回路45は、例えば、p型TFTで構成されるスイッチトランジスタRSWTrを備える。スイッチトランジスタRSWTrのドレインは、信号線DTLに接続され、スイッチトランジスタRSWTrのソースには、表示制御回路44a(ドライバIC4a)から補正電位Vcorが供給される。また、スイッチトランジスタRSWTrのゲートには、表示制御回路44aからリセット信号XResetが供給される。
【0082】
実施形態2に係る表示装置1aの電源オフシーケンスでは、時刻t1(第1時刻)において全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号ASWがロー電位とされ、全ての信号線DTLに対応する信号線選択制御信号XASWがハイ電位とされる。これにより、スイッチトランジスタASWTr,XASWTrがオフ制御される。同時に、リセット信号XResetがロー電位(第2電位VGL)とされ、スイッチ回路45のスイッチトランジスタRSWTrがオン制御される。これにより、表示制御回路44aから信号線DTLに補正電位Vcorが供給され、信号線DTLの電位は補正電位Vcorに設定される。このとき、全ての画素Pixの画素電極PXは、オン制御された画素トランジスタTrを介して、スイッチ回路45によって補正電位Vcorに設定された信号線DTLと電気的に接続され、全ての画素Pixの画素電極PXのリセット後の本来の電位であるGND電位に補正電位Vcorと略等価の電位差ΔV1を加算した電位に設定される(GND+ΔV1)。時刻t2(第2時刻)以降の動作は、実施形態1に係る表示装置1の電源オフシーケンスと同様である。すなわち、実施形態1と同様に、時刻t1(第1時刻)において信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給されてから、時刻t2(第2時刻)の後の時刻t3(第3時刻)においてドライバIC4が制御を停止するまでの間、信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給された状態が維持される。言い換えると、時刻t1(第1時刻)において信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給されてから、少なくとも時刻t2(第2時刻)までの期間、信号線DTLに正値の補正電位Vcorが供給された状態が維持される。
【0083】
上述した実施形態2に係る表示装置1aの電源オフシーケンスにおいても、実施形態1と同様に、ドライバIC4aが制御を停止した時刻t3後の画素電極PXの電位は、リセット後の本来の電位であるGND電位に収束する。これにより、実施形態1と同様に、時刻t1から時刻t2において画素電極PXに残留した電位差ΔV1が速やかに除去され、電源オフ後の画素電極PXの残留電圧による液晶の焼き付きの発生を抑制することができる。また、焼き付きに起因する共通電位VCOMの最適値変動によるフリッカーの発生を抑制することができる。
【0084】
なお、表示装置1,1aは、液晶表示デバイスに限らず、例えば、表示素子として有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を用いた有機ELディスプレイであっても良い。また、表示装置1は、表示素子として無機発光ダイオード(マイクロLED(micro LED))を用いた無機ELディスプレイであっても良い。また、表示装置1は、電気泳動型ディスプレイ(EPD:Electrophoretic Display)であっても良いし、さらには、透過性を有する表示面に画像を表示させる透明ディスプレイであっても良い。
【0085】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0086】
1,1a 表示装置
4,4a ドライバIC
11 表示パネル
12 電源装置
13 制御装置
40,40a 駆動回路
42 ゲートドライバ
43 信号線選択回路
44,44a 表示制御回路
45 スイッチ回路
AA 表示領域
COML 共通電極
CS 保持容量
CP 寄生容量
DTL 信号線
ENB 走査線駆動信号
GATE 走査信号(ゲート信号)
PCTRL1 第1電源制御信号
PCTRL2 第2電源制御信号
Pix 画素
PX 画素電極
Source 映像信号
SCL 走査線(ゲート線)
SIG 画素信号
Tr 画素トランジスタ
VCOM 共通電位
Vcor 補正電位
VGH 第1電位
VGL 第2電位
Vsig 画像信号
XReset リセット信号