(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002956
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】独立した信号較正を備えたフェーズドアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20231228BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/06
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101710
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】63/366,939
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/065,957
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523225520
【氏名又は名称】トロン フューチャー テック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チャン リー ハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユー-ジウ
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021CA06
5J021DB02
5J021DB03
5J021FA13
5J021GA02
5J021HA07
5J021JA06
5J021JA08
5J045CA04
5J045DA10
5J045FA02
5J045HA02
5J045MA07
5J045NA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】各アンテナ装置の位相較正を容易かつ正確に管理することができるフェーズドアレイアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、基板と、第一の層に編成され、基板上に配置された接地板326と、第一の層に隣接する第二の層に編成され、第一のRF信号及び第二のRF信号をそれぞれ送信する第一の信号ポート302及び第二の信号ポート304と、第二の層に編成され、第一の信号ポート及び第二の信号ポートにそれぞれ接続された第一の給電線312及び第二の給電線314と、基板の上に配置された放射素子206と、を含む。基板は、放射素子206と第一の給電又は第二の給電線との間に第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルを提供するように編成され、第一の給電線及び第二の給電線は、異なる線長を有し、放射素子206は、第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルに少なくとも部分的に重なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置であって、
基板と、
第一の層に編成され、前記基板上に配置された第一の接地板と、
前記第一の層に隣接する第二の層に編成され、それぞれ第一の無線周波数(RF)信号及び第二のRF信号を送信するように構成された第一の信号ポート及び第二の信号ポートと、
前記第二の層に編成され、それぞれ前記第一の信号ポート及び前記第二の信号ポートに接続される第一の給電線及び第二の給電線と、
前記基板上に配置された放射素子と、
を備え、
前記基板は、前記第一及び第二のRF信号を送信するために、前記放射素子と前記第一又は第二の給電線との間に第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルを提供するように編成され、前記第一の給電線及び前記第二の給電線は、異なる線長を有し、前記放射素子は、上面図から見て、前記第一の信号チャネル及び前記第二の信号チャネルに少なくとも部分的に重なる、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第一の接地板は、前記第一の信号チャネルの一部として機能する第一のスリットを形成するように構成され、前記第一のスリットに隣接して、前記第二の信号チャネルの一部として機能する第二のスリットを形成するように構成される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第一のスリットと前記第二のスリットは、前記第一の接地板の一部によって分離される、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記放射素子は、前記第一のスリットの全体と前記第二のスリットの全体とに実質的に重なる、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記基板は透明であり、前記放射素子の投影領域内には導電素子が存在しない、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第一のスリットは、第一のセクションを含み、前記第二のスリットは、前記第一のセクションに実質的に垂直な第二のセクションを含む、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第一のスリットは、前記第一のセクションに接続され、前記第一のセクションに実質的に垂直な第三のセクションをさらに含む、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第二の層の下に配置され、前記第一及び第二のRF信号が前記放射素子に送信される前又は前記第一及び第二のRF信号が前記放射素子から受信された後に、前記第一及び第二のRF信号に対して振幅較正又は位相較正を独立して行うように構成されたRFチップをさらに含む、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第一の層に編成された第二の接地板をさらに備え、前記第二の接地板は、前記第一の接地板を横方向に囲み、前記第一の接地板から分離される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記基板内に延在し、前記放射素子を前記第一の給電線及び前記第二の給電線にそれぞれ接続する第一の導電ビア及び第二の導電ビアをさらに備え、前記第一の導電ビア及び前記第二の導電ビアは、それぞれ前記第一の信号チャネル及び前記第二の信号チャネルとして機能する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第一の導電ビア又は前記第二の導電ビアは、前記第一の接地板から電気的に絶縁されている、請求項10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記第一の給電線と前記第二の給電線との間の給電線長差は、前記第一のRF信号と前記第二のRF信号との間の実質的に90°の位相差に対応する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に形成されたアンテナ装置のアレイと、
を備える、アンテナアレイであって、前記アンテナ装置のそれぞれは、
第一の層に編成され、前記基板の第一の表面上に配置された第一の接地板と、
前記第一の層に隣接する第二の層に編成され、第一の無線周波数(RF)信号及び第二のRF信号を送信するように構成された、第一の信号ポート及び第二の信号ポートと、
前記第二の層に編成され、前記第一の信号ポート及び前記第二の信号ポートにそれぞれ接続される第一の給電線及び第二の給電線と、
前記第一の表面とは反対側の前記基板の第二の表面上に配置された第三層の放射素子と、
を備え、
前記第一の接地板は、前記第一及び第二のRF信号を送信するために、第一のスリット及び第二のスリットを前記第一の層に形成するように編成され、前記第一の給電線及び前記第二の給電線は、異なる線長を有し、前記放射素子は、上面図から見て、前記第一のスリット及び前記第二のスリットに少なくとも部分的に重なる、アンテナアレイ。
【請求項14】
前記アンテナ装置のそれぞれの前記放射素子は、実質的に円形又は楕円形の形状を有する、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
前記第一のスリットは、線形状を含み、前記第二のスリットは、U字形状を含む、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項16】
前記アンテナ装置のそれぞれは、それぞれの前記アンテナ装置の前記第一の接地板のそれぞれを互いに分離する第二の接地板をさらに備える、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項17】
前記第二の接地板は、実質的に長方形の円周を有する、請求項16に記載のアンテナ装置。
【請求項18】
前記第一の接地板は、円形又は楕円形である、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項19】
前記第一の給電線は、第一のノードを含み、前記第二の給電線は、第二のノードを含み、前記第一のノード及び前記第二のノードは、前記第一のスリット及び前記第二のスリットにそれぞれ重なる、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項20】
前記第一の給電線又は前記第二の給電線は、対応する前記第一のスリット又は前記第二のスリットを横切る突出部をさらに備える、請求項13に記載のアンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張及び相互参照)
本出願は、2022年6月24日に出願された米国仮出願第63/366,939号、及び2022年12月14日に出願された米国非仮出願第18/065,957号の優先権を主張し、これらの開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0003】
現代の無線通信技術において、衛星通信は、従来の地上通信技術と比較して、より良い信号カバレッジ及び高帯域幅等の利点があるので、多くの注目を浴びている。一般的なセルラー地上波通信に衛星通信を組み込んで、無線通信ネットワークのカバレッジと帯域幅を高めることが有望視されているようである。さらに、比較的長い伝送距離で電力効率を向上させるために、衛星通信と連携するフェーズドアレイアンテナ技術が通常採用されている。しかしながら、アンテナアレイを構成する個々のアンテナ装置の位相遅延は、短遅延かつ高精度に制御する必要があり、フェーズドアレイアンテナのコストは、依然として非常に高い。そのため、衛星通信を利用した製品化は満足のいくものではない。そのため、その製造コストを下げるために、位相制御設計を改善した新しいフェーズドアレイアンテナとそのテスト方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態によれば、アンテナ装置は、基板と、第一の層に編成され、基板上に配置された第一の接地板と、第一の層に隣接する第二の層に編成され、第一の無線周波数(RF)信号及び第二のRF信号をそれぞれ送信するように構成された第一の信号ポート及び第二の信号ポートと、第二の層に編成され、第一の信号ポート及び第二の信号ポートにそれぞれ接続された第一の給電線及び第二の給電線と、基板上に配置された放射素子とを含む。基板は、第一及び第二のRF信号を送信するために、放射素子と第一又は第二の給電線との間に第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルを提供するように編成され、第一の給電線及び第二の給電線は、異なる線長を有し、放射素子は、上面図から見て、第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルに少なくとも部分的に重なる。
【0005】
本開示の実施形態によれば、アンテナアレイは、基板と、基板上に形成されたアンテナ装置のアレイと、を含む。アンテナ装置のそれぞれは、第一の層に編成され、基板の第一の表面上に配置された第一の接地板と、第一の層に隣接する第二の層に編成され、第一の無線周波数(RF)信号及び第二のRF信号を送信するように構成された第一の信号ポート及び第二の信号ポートと、第二の層に編成され、第一の信号ポート及び第二の信号ポートにそれぞれ接続する第一の給電線及び第二の給電線と、第一の表面とは反対の基板の第二の表面上に配置された第三の層の放射素子と、を備える。第一の接地板は、第一及び第二のRF信号を送信するために、第一のスリット及び第二のスリットを第一の層に形成するように編成され、第一の給電線及び第二の給電線は、異なる線長を有し、放射素子は、上面図から見て、第一のスリット及び第二のスリットに少なくとも部分的に重なる。
【0006】
提案されたフェーズドアレイアンテナの編成を通じて、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ装置の位相較正を容易に、より正確に管理することができ、したがって、RF送信機及び受信機をより安価で製造し、より少ない電力で動作することができる。また、装置の信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の態様は、添付の図と一緒に読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。当業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴は、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。実際、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするために、任意に大きく、又は小さくすることがある。
【0008】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による、次世代通信シナリオにおける無線通信システムを示す概略図である。
【
図2A】いくつかの実施形態による、ユーザ装置の送信機又は受信機のアンテナアレイの概略透視図である。
【
図2B】いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機又は受信機の概略断面図である。
【
図2C】いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機又は受信機における無線周波数(RF)チップの概略上面図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機又は受信機のアンテナ装置の概略平面図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、
図3に示すアンテナ装置のスリットの拡大図である。
【
図5】いくつかの他の実施形態による、
図3に示すアンテナ装置のスリットの概略上面図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、位相較正テーブルの概略ブロック図である。
【
図7A】いくつかの実施形態による、電磁遮蔽構造の概略透視図である。
【
図7B】いくつかの実施形態による、
図7Aに示す電磁遮蔽構造の概略断面図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、テストプローブ装置の概略断面図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、フェーズドアンテナアレイをテストする方法の概略フローチャートである。
【
図10A】いくつかの実施形態による、
図9に示すテスト動作の概略ブロック図である。
【
図10B】いくつかの実施形態による、
図9に示すテスト動作の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するために、多くの異なる実施形態又は例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素及び配置の具体例を以下で説明する。当然、これらは単なる例であり、限定を意図するものではない。例えば、以下の説明において、第二の特徴の全体に、又はその上に第一の特徴を形成することは、第一及び第二の特徴が直接接触して形成される実施形態を含んでもよいし、また第一及び第二の特徴が直接接触し得ないように、第一及び第二の特徴の間に追加の特徴を形成し得る実施形態を含んでもよい。さらに、本開示では、様々な例において、参照番号及び/又は文字を繰り返すこともある。この繰り返しは、単純化及び明確化のためであり、それ自体では、議論される様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を指示するものではない。
【0010】
さらに、「下方に」、「下に」、「下部」、「上方に」、「上部」等の空間的に相対的な用語は、本明細書では、説明を容易にするために、図面に示すように、1つの要素又は特徴について、別の要素又は特徴に対する関係を説明するために使用することがある。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用中又は動作中の装置の異なる向きを包含することを意図している。装置は、別の向きを向いていてもよく(90°回転していても、他の向きにあってくよく)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、同様に、それに応じて解釈されてもよい。
【0011】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例に示す数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれのテスト測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。また、本明細書で使用される場合、「約」、「実質的な」、又は「実質的に」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%以内を意味する。あるいは、「約」、「実質的な」、及び「実質的に」という用語は、当業者が考慮した場合に、平均の許容可能な標準誤差内を意味する。操作例/動作例以外、又は特に断りのない限り、材料の量、持続時間、温度、操作条件、量の比率等の数値範囲、量、値及び百分率の全ては、本明細書に開示されるそれらの用語は、全ての場合において、「約」、「実質的な」、又は「実質的に」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲に提示される数値パラメータは、所望に応じて変化し得る近似である。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。範囲は、本明細書では、1つのエンドポイントから別のエンドポイントまで、すなわち、2つのエンドポイントの間として表すことができる。本明細書に開示される全ての範囲は、特に明記しない限り、エンドポイントを含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「接続された」という用語は、「電気的に接続された」と解釈されることがあり、また「結合された」という用語も、「電気的に結合された」と解釈されることがある。「接続された」及び「結合された」は、2つ以上の要素が相互に協働又は相互作用することを示すために使用されることもある。
【0013】
本開示の実施形態は、地上波及び非地上波の無線通信に適したフェーズドアレイアンテナ設計を論じ、アンテナ構造は、円偏波RF信号を生成するために適切に管理された位相遅延で2つの同一の無線周波数(RF)入力信号を提供するように構成された2つの給電線を含んでいる。フェーズアレイアンテナ構造は、またガラスベースの基板も含み、その上に、アンテナ構成要素及びRFチップが形成される。いくつかの実施形態では、ガラスベースの基板は、その高い平面性と低コストのために、大規模なアンテナパネルに適している。さらに、アンテナグラウンド内に形成され、それによって規定される一対のスリットが設けられ、アンテナの放射素子とその一対のスリットとの間でRF信号を結合する。いくつかの実施形態では、アンテナの放射素子と一対のスリットとの間のガラスベースの基板に編成された導電素子は実質的になく、それによって、アンテナのためのガラス貫通ビア(TGV)を形成するコストを節約することができる。各アンテナ装置のデュアル入力RF信号は、デュアル入力RF信号を合成して放射素子に結合する前、又は出力RF信号を放射素子から受信した後、RF信号の合成前に、振幅又は位相を較正するのに適している。その結果、高精度のフェーズドアンテナアレイを比較的簡単な設計と安価な製造コストで実現することができる。
【0014】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、次世代通信シナリオにおける無線通信システム10を示す概略図である。無線通信システム10は、1つ以上のユーザ装置12、14、16、18と、地上基地局22と、非地上基地局24とを含む。いくつかの実施形態では、ユーザ装置12、14は、人間によって運ばれ、動かされ、ハンドヘルド装置と呼ばれる。いくつかの実施形態では、ユーザ装置16は、自動車、電車等の陸上を移動する車両に装備されるモバイル装置である。いくつかの実施形態では、ユーザ装置18は、海、川等を移動する船舶に装備されたユーザ装置である。
【0015】
いくつかの実施形態では、地上基地局22は、セルラー通信ネットワーク等の通信ネットワークに配備される基地局の一例である。地上基地局22は、ユーザ装置12、14及び16に通信ネットワークを提供するように構成され、ユーザ装置12、14及び16は、複数の地上基地局22によって確立されたネットワークを通じて互いの間で情報を送信又は受信できる。地上基地局22は、低高度プラットフォームとも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、非地上基地局24は、通信衛星ネットワークに配備される通信衛星の一例である。非地上基地局24は、ユーザ装置12、14、16及び18に通信ネットワークを提供するように構成され、ユーザ装置12、14、16及び18は、衛星ネットワークを介して互いの間で情報を送信又は受信できる。複数の地上基地局22と複数の非地上基地局24は、相互にリンクして複合通信ネットワークを形成することができ、この場合、低高度の場所、高高度の場所、又は地上基地局22のネットワークによってカバーされていない場所のいずれに位置していても、世界中のユーザ装置をカバーするグローバル通信ネットワークを実現することができる。
【0016】
無線通信システム10によって例示されるグローバル通信ネットワークの目標を達成するために、ユーザ装置12、14、16又は18は、高空に位置する非地上基地局24と通信するために、より大きな通信能力を有する送信機又は受信機を含むように設計し直す必要があるかもしれない。様々な送信機又は受信機の設計の中で、フェーズドアレイアンテナ技術は、より高い信頼性で送信又は受信利得を大幅に増加させることができ、衛星通信に適したビームフォーミング技術を実現するための有望な解決策である。
【0017】
図2Aは、いくつかの実施形態による、ユーザ装置12、14、16又は18の送信機又は受信機200のアンテナアレイの概略透視図である。いくつかの実施形態では、送信機又は受信機200は、RF送信機又は受信機である。いくつかの実施形態では、送信機又は受信機200は、地上基地局22又は非地上基地局24の送信機又は受信機として機能する。いくつかの実施形態では、個別に示されていないが、送信機又は受信機200は、送信機200によって送信されるべきRF信号を生成及び制御するように構成された、又は受信機200によって受信されるべきRF信号を受信及び制御するように構成された制御回路基板及びRF回路基板を含む。いくつかの実施形態では、ユーザ装置12、14、16、18、地上基地局22及び非地上基地局24のそれぞれは、異なる動作周波数(例えば、それぞれ約28GHz及び18GHz)で動作する送信機200及び受信機200を含む。
【0018】
図2Aを参照すると、送信機又は受信機200は、送信機又は受信機200のRF回路基板の基板202上に形成された、放射素子206等の複数のアンテナ構成要素で形成されたアンテナアレイを含む。いくつかの実施形態では、例示的なアンテナ装置200Aは、基板202と、基板202の下に編成された相互接続構造204とを含む。相互接続構造204は、下面を有し、基板202は、上面を有する。いくつかの実施形態では、放射素子206のアレイは、基板202の上面に形成され、複数のRFチップ208は、相互接続構造204の下面に編成される。RFチップ208は、相互接続構造204の下面上の複数の導電線(別途図示せず)を介して相互接続されてもよい。いくつかの実施形態では、導電線は、電気絶縁材料によってカプセル化されてもよいし、相互接続構造204の表面を通して露出してもよい。いくつかの実施形態では、送信機又は受信機100のアンテナ装置200Aのそれぞれは、パッチアンテナ構造を含み、各放射素子206は、円形、楕円形又は卵形のようなアンテナ装置200Aのパッチ構造を含み、それぞれのアンテナ装置200Aのアンテナパッチ206と呼ばれる。
【0019】
図2Bは、いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機200又は受信機200のアンテナ装置200Aの概略断面図である。断面図は、
図2Aの断面線AAに沿って取られている。
図2Bを参照すると、基板202は、ガラス、溶融シリカ、酸化ケイ素、石英等の透明材料で形成されている。いくつかの実施形態では、基板202は、アンテナパッチ206を、相互接続構造204又はRFチップ208の電子回路から分離する。いくつかの実施形態では、RF信号は、基板202の下側に形成されたRFチップ208から、相互接続構造204に形成されたRF回路を介して、透明基板202の信号チャネル212を横切って伝送され、基板202の上側に形成されたアンテナパッチ206に結合される。いくつかの実施形態では、アンテナパッチ206は、出力RF信号のより良いフィールドプロファイルを生成するために、アンテナパッチ206の円又は楕円の円周上に追加のパッチを含む。いくつかの実施形態では、アンテナパッチ206は、出力RF信号のより良いフィールドプロファイルを求めるために、アンテナパッチ206の円又は楕円の円周上に切頭部分又は半円を含むようにトリミングされてもよい。信号チャネル212は、基板202の透明材料で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、基板202の厚さは、アンテナ装置200AのRF信号の動作周波数に基づいて決定される。基板202の材料はRF信号に対して透明であるので、基板202は、アンテナパッチ206の投影領域内に導電性部材を必要としないこともあるが、それでも相互接続構造204をアンテナパッチ206に電磁気的に接続するために動作可能である。
【0020】
いくつかの他の実施形態では、基板202は、基礎半導体材料、例えば、バルクシリコン等の非透過性材料で形成されている。いくつかの実施形態では、基板202は、相互接続構造204内のRF回路をアンテナパッチ206に電気的に接続するために、信号チャネル212に形成された導電ビアを含む。その結果、RF信号は、基板202の下側に形成されたRFチップ208から、相互接続構造204に形成されたRF回路を通って送信され、非透明基板202の信号チャネル212の導電ビアを透過し、基板202の上側に形成されたアンテナパッチ206に達する。いくつかの実施形態では、絶縁膜が、導電ビアと基板202の周囲のシリコン材料との間に堆積され、より良い電気絶縁を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、相互接続構造204は、スタック内の複数のメタライゼーション層で形成される。メタライゼーション層は、パターン化された導電線又は導電ビアを含み、これらのパターン化された導電線及び導電ビアは、相互接続経路及びアンテナ装置200Aの他のパーツを形成するためにパターン化又は電気的に相互接続される。例えば、基板202の下面に形成された第一のメタライゼーション層は、第一の導電線又はパッド222Aを含む。第一の導電線又はパッド222Aは、接地板としてパターン化されてもよく、残りのスペースは、RF信号をアンテナパッチ206に、又はアンテナパッチ206から結合するためのスリット又はアパーチャとして形成されてもよい。いくつかの他の実施形態では、導電線又はパッド222Aは、RF信号を非透過性基板202内の導電ビアに中継するための信号コンタクトとして形成される。
【0022】
第二のメタライゼーション層は、第一のメタライゼーション層の下に形成され、第一の導電ビア、例えば、例示的な第一の導電ビア224Aを含む。同様に、第三のメタライゼーション層は、第二のメタライゼーション層の下に形成され、第二の導電線又はパッド222Bを含み、第四のメタライゼーション層は、第三のメタライゼーション層の下に形成され、複数の第二の導電ビア、例えば、例示の第二の導電ビア224Bを含む。第二の導電線222Bは、電力線又は信号伝送線を形成するためにパターン化されてもよい。第五のメタライゼーション層は、第四のメタライゼーション層の下に形成され、第三の導電線222Cを含む。いくつかの実施形態では、複数の導電パッド210が、第六のメタライゼーション層の下に編成され、導電線222CをRFチップ208に電気的に接続する。いくつかの実施形態では、導電線222A、222B、222Cは、導電ビア224A、224Bを介して相互接続される。いくつかの実施形態では、複数の導電パッド210が、第六のメタライゼーション層の下に編成され、導電線222CをRFチップ208に電気的に接続する。
【0023】
RFチップ208は、信号チャネル212の存在により、それぞれのアンテナパッチ206に対応するが、位置合わせされない場合があることに留意されたい。RFチップ208は、図解の目的のためだけに、アンテナパッチ206と位置合わせされるように図示されており、アンテナパッチ206とそれぞれのRFチップ208との間の必要な位置合わせを指示することを意図したものではない。
【0024】
いくつかの実施形態では、導電線222A、222B、222C及び210ならびに導電ビア224A及び224Bは、銅、タングステン、アルミニウム、チタン、タンタル、それらの合金等の導電性材料で形成されている。導電線222A、222B、222C及び導電ビア224A、224Bは、さらに、ポリマーベースの材料、例えば、ポリイミド又はエポキシ樹脂等の絶縁材料226A、226B又は226Cによって電気的に絶縁されている。
【0025】
図2Cは、いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機200又は受信機200のアンテナ装置200AにおけるRFチップ208の概略上面図である。送信機200が関係する実施形態では、各RFチップ208は、RF入力信号RF_in、電源電圧VD、較正データDin、データクロック信号CLK及び同期クロック信号SYNCを受信するための入力ポートを含む。いくつかの実施形態では、各RFチップ208は、較正データDout、及びRF出力信号RF_outの2つの成分(すなわち、同相RF信号RF_out_Iと、直交RF信号RF_out_Q)を出力するための出力ポートを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、RF出力信号RF_outは、RF出力信号RF_outの水平(H)-偏波成分及び垂直(V)-偏波成分にそれぞれ対応する同相成分RF_out_Iと直交成分RF_out_Qから形成される。分離された信号成分RF_out_IとRF_out_Qは、同相成分RF_out_Iと直交成分RF_out_Qを表し、位相較正後、送信のために一緒に合成される前に、互いに直交して調整されることになる。RF出力信号RF_outの直交成分を分離する編成は、RF信号RF_inの成分の較正を独立して支援することができる。
【0027】
受信機200が関係する実施形態では、各RFチップ208は、RF信号2つの成分RF_out_I及びRF_out_Q、電源電圧VD、較正データDin、データクロック信号CLK及び同期クロック信号SYNCを受信するための入力ポートを含む。いくつかの実施形態では、各RFチップ208は、較正データDout及びRF信号RF_inを出力するための出力ポートを含む。較正データDin、データクロック信号CLK及び同期クロック信号SYNCは、本明細書において、制御信号として集合的に呼ばれる。
【0028】
い くつかの実施形態では、上述の制御信号Din、CLK及びSYNCは、送信機又は受信機200のコントローラによって生成される。較正データDinは、振幅較正データ又は位相較正データ、あるいはその両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、較正データDinは、送信機200におけるRF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qの振幅又は位相を、それらが結合されて送信される前に較正データDinに従って独立して較正するために使用される。この段階では、RF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qは、位相較正されてチップ208から出力される前に互いに同相である。いくつかの実施形態では、較正データDinは、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qがアンテナパッチ206から受信された後、RFチップ208で合成される前に、受信機200において入力RF_信号RF_out_I及びRF_out_Qの振幅又は位相を独立して較正するために使用される。振幅及び位相を較正した後、入力RF信号RF_out_I及びRF_out_Qは、それらが合成されて送信される前に、互いに同相にされることになる。
【0029】
いくつかの実施形態では、データクロック信号CLKは、RFチップ208の構成要素内のレジスタのための汎用クロックを提供するために使用される。データクロック信号CLKの周波数は、RFチップ208内のデジタルデータ処理の作業周波数を表してもよい。いくつかの実施形態では、同期クロック信号SYNCは、RFチップ208の動作を同期させるためのクロックを提供するために使用されてもよく、及び/又は、異なるステージのレジスタのいくつかに対して、同じクロック時間で較正データを出力するためにクロックを提供するために使用されてもよい。同期クロック信号SYNCは、較正データの更新レートを表してもよい。いくつかの実施形態では、制御信号がデジタル形式を含むので、それらはデジタル制御信号とも呼ばれる。
【0030】
図3は、いくつかの実施形態による、
図2Aに示す送信機又は受信機200におけるアンテナアレイの例示的なアンテナ装置200Aの概略平面図である。
図2Bの断面図も、
図3の断面線BBから取られている。いくつかの実施形態では、アンテナ装置200Aは、信号ポート302及び304を含み、この信号ポート302及び304は、RF信号源からRFチップ208を介して、アンテナ装置200AへRF信号RF_inを送信する送信機200における出力信号ポートとして構成される。あるいは、信号ポート302及び304は、RF信号RF_inをアンテナパッチ206からRFチップ208を通して信号受信モジュール(別に図示せず)に形成して受信するために、受信機200における入力ポートとして構成される。いくつかの実施形態では、
図2B及び
図3を参照すると、信号ポート302及び304は、第一のメタライゼーション層の下の相互接続構造204の第二のメタライゼーション層に形成され、
図2Cに示すように、対応するRFチップ208のRF信号RF_out_I及びRF_out_Qの入力/出力ポートに電気的に接続される。
【0031】
いくつかの実施形態では、アンテナ装置200Aは、第一の給電線312と、第一の給電線312に隣接する第二の給電線314とをさらに含む。いくつかの実施形態では、第一の給電線312及び第二の給電線314の長さ、幅、向き、及び形状の値は、設計又は製造段階の間に、伝送線のインピーダンスを一致するように、設計又は調整されてもよい。いくつかの実施形態では、第一の給電線312又は第二の給電線314は、信号ポート302、304の出力インピーダンスと一致するように、約50Ωの入力インピーダンスを有するように設計される。
【0032】
いくつかの実施形態では、第一の給電線312及び第二の給電線314は、第一の給電線312及び第二の給電線314の結合ノード312P及び314Pでそれぞれ異なる位相を提供するために異なる長さを有する(結合ノード314Pを参照するための
図2B参照)。いくつかの実施形態では、第二の給電線314は第一の給電線312よりも長く、長さの差は、結合ノード312Pと314Pとの間の位相差が実質的に90°になるように設計される。言い換えれば、第一の給電線312及び第二の給電線314は、理想的な状況において、信号ポート302及び304において同じ初期位相の同じRF信号RF_inを提供するように構成される。RF信号RF_inの電力は、RF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qのために、2つの半分に分割される。第一の給電線312及び第二の給電線314に沿って伝播した後、第一の給電線312と第二の給電線314との間の長さの差によって、結合ノード312P及び314PにおいてRF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qがそれぞれ互いに直交するか、あるいは同等に、実質的に90°の位相差になる。いくつかの実施形態では、位相誤差が確認された場合、RF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qが分割された後、第一の給電線312及び第二の給電線314にそれぞれ供給される前に、位相較正が行われる。位相較正は、結合ノード312P及び314PにおけるRF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qの間の実際の位相差と理想的な位相差、すなわち90°との間の位相誤差を補償するために行われる。いくつかの実施形態では、位相誤差は、第一の給電線312及び第二の給電線314の製造におけるプロセス変動又はインピーダンス不整合により発生し、第一の給電線312及び第二の給電線314の間の望ましくない位相誤差につながる可能性がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、アンテナ装置200Aは、相互接続構造204の第一のメタライゼーション層に形成された第一のスリット306及び第二のスリット308をさらに含む。いくつかの実施形態では、第一のスリット306及び第二のスリット308は、基板202の下面に形成され、基板202と第一の給電線312及び第二の給電線314との間にそれぞれ編成される(第二のスリット308への言及は
図2B参照)。第一のスリット306及び第二のスリット308は、信号の分離及び絶縁を支援するために互いに分離されていてもよい。いくつかの実施形態では、アンテナ装置200Aは、第一のスリット306及び308を規定し、横方向に取り囲む局所接地板316も含む。局所接地板316は、第一のスリット306を第二のスリット308から分離する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ローカル接地板316は、円形状又は楕円形状である。いくつかの実施形態では、局所接地板316は、振幅及び位相較正後であっても、RF出力信号RF_out_I及びRF_out_Qの非理想的な振幅又は位相から生じる非理想的なフィールドプロファイルを補償するために、その円周上に切頭扇形を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、第一の給電線312及び第二の給電線314のそれぞれは、それぞれ信号ポート302及び304に接続される第一の端部(RFチップ208の周囲)と、それぞれ第一のスリット306及び第二のスリット308に重なる第二の端部(結合ノード312P及び314Pの周囲)とを有する。いくつかの実施形態では、
図3に示すように、第二の端部は、インピーダンス整合要件を満たすために、第一のスリット306又は第二のスリット308を横切る突出部を含む。
【0035】
同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qは、アンテナパッチ206に結合され、合成され、アンテナパッチ206を通して外側に放射される。同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qからの合成されたRF信号RF_outは、円偏波RF信号RF_outをもたらす。いくつかの実施形態では、合成されたRF信号RF_outは、直交RF信号RF_out_Qに対する同相信号RF_out_Iの位相の順序に依存して、右側の円偏波RF信号又は左側の円偏波RF信号となる。いくつかの実施形態では、RF信号出力RF_outの理想的な円偏波は、同相RF信号RF_out_Iと直交RF信号RF_out_Qとの間の等しい振幅及び90°の正確な位相差によって決まるので、較正データDinの有効性は、重要な役割を果たす。いくつかの実施形態では、同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qは、アンテナパッチ206に伝送される前に分割され、振幅較正及び位相較正に独立して付される。あるいは、いくつかの実施形態では、同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qは、アンテナパッチ206から受信され、それらが合成されてRFチップ208から送信される前に、RFチップ208において振幅較正及び位相較正に独立して付される。したがって、較正タスクは、複雑な較正回路なしに、容易に達成することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、局所接地板312、第一のスリット306及び第二のスリット308は、第一のメタライゼーション層の導電層をパターン化することによって相互接続構造204の第一のメタライゼーション層上に形成され、第一のスリット306及び第二のスリット308は、局所接地板312をさらにパターン化して形成されている。第一のスリット306及び第二のスリット308は、第一のスリット306及び第二のスリット308からの信号放射を最大化するために、結合ノード312P及び314Pにそれぞれ少なくとも部分的に重なる。いくつかの実施形態では、結合ノード312P又は314Pは、第一のスリット306又は第二のスリット308を越えて延び、より良いインピーダンス整合を求めるために第一の給電線312又は第二の給電線314の突出部を形成する。
【0037】
前述のように、基板202は、基板202の材料の選択に従って、透明又は非透明とすることができる。描かれた実施形態では、基板202は、ガラス、溶融シリカ、酸化ケイ素、石英等の透明な材料で形成されている。したがって、第一のスリット306、第二のスリット308、及び第一のスリット306及び第二のスリット308と整列した基板202の部分は、
図2Bに示す信号チャネル212によって例示されるように、第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルをそれぞれ形成する。第一の信号チャネル及び第二の信号チャネルは、アンテナ装置200Aのアンテナパッチ206のカバー範囲内に実質的に編成され、それぞれの第一のスリット306及び第二のスリット308を介して、アンテナパッチ206と給電線312及び314との間のRF信号RF_out_I及びRF_out_Qを電気的又は電磁気的に結合するよう構成され、第一及び第二の信号チャネルを構成する。
【0038】
いくつかの実施形態では、アンテナ装置200Aは、また、第一のメタライゼーション層に編成された一般接地板326を含む。一般接地板326は、環状開口部によって局所接地板316から分離されてもよい。いくつかの実施形態では、局所接地板316及び一般接地板326は、アンテナ装置200A又は送信機若しくは受信機200の共通接地端子(別途図示せず)に接地される。いくつかの実施形態では、一般接地板326は、それぞれのアンテナ装置200Aを隣接するアンテナ装置200Aから分離するために使用される。一般接地板326は、長方形又は正方形の周縁を含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、一般接地板326は、アンテナパッチ206によって発生する電界を補償するために他の形状である。いくつかの実施形態では、一般接地板326は、4つの側面を有し、一般接地板326の各側面は、
図2A及び
図3に示すように、アンテナアレイの一側面に実質的に平行であり、例えば、X軸又はY軸に沿う。いくつかの実施形態では、一般接地板326の各側面は、第一のスリット306又は第二のスリット308の少なくとも1つのセクションの方向に対して実質的に平行又は垂直であり、例えば、X軸又はY軸に沿う。いくつかの実施形態では、一般接地板326の4つの側面は、第一のスリット306又は第二のスリット308と角度を有し、例えば、45°を有する。一般接地板の4つの側面は、依然として長方形の形状を維持する。いくつかの実施形態では、隣接する一般接地板326は、例えば、隣接する一般接地板326間の橋渡し部分を介して、共通接地を形成するように互いに接続される。
【0039】
図4は、いくつかの実施形態による、
図3に示すアンテナ装置200Aの第一のスリット306及び第二のスリット308の拡大図である。いくつかの実施形態では、第一のスリット306及び第二のスリット308は、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qの結合効率を最大化するために、アンテナパッチ206によって実質的に完全に覆われているか、又は少なくとも部分的に重なっている。いくつかの実施形態では、第一のスリット306は、X軸方向に延びる一次セクション306を有し、第二のスリット308は、Y軸方向に延びる一次セクション308Aを有する(一次セクション308Aを参照するために
図2Bを参照)。それぞれの第一のスリット306及び第二のスリット308の一次セクション306及び308Aは、互いに実質的に垂直であり、それによって、RF直交信号RF_out_I及びRF_out_Qは、それぞれ一次セクション306及び308Aを介して別々に伝送され得るか、又はその逆である。いくつかの実施形態では、同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qは、それぞれ水平偏波及び垂直偏波においてRF信号を表すか、又は代替として、それぞれ垂直偏波及び水平偏波においてRF信号を表す。
【0040】
いくつかの実施形態では、第一のスリット306は、バー形状、ストリップ形状、線状、又は「I」字形状である。いくつかの実施形態では、第一のスリット306又は第二のスリット308のいずれか、又は両方が、それぞれの一次セクションから延びる1つ以上の二次セクションを含む。二次セクションは、送信又は受信パワーの向上を支援しないこともあるが、インピーダンス整合の達成には役立つことがある。
図4に示すように、第二のスリット308は、第一の二次セクション308B及び第二の二次セクション308Cを含み、二次セクション308B及び308Cは、一次セクション308Aの両端部に接続されてU字形状スリットを形成する。いくつかの実施形態では、二次セクション308B及び308Cは、一次セクション308Aに対して垂直であり、一次セクション306に対して平行である。
【0041】
いくつかの実施形態では、第一のスリット306は、X軸に沿って測定される長さ306Lを有する。いくつかの実施形態では、第二のスリット308の一次セクション308Aは、Y軸に沿って測定される長さ308Lを有する。長さ306L又は308Lは、設計要件に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、長さ306L又は308Lが長いほど、RF信号のより多くの電力が第一のスリット306又は第二のスリット308を通過する。しかしながら、第一のスリット306又は第二のスリット308がアンテナパッチ206の投影面積を超えて延びる場合、RF信号の結合効率は低下する。
【0042】
いくつかの実施形態では、第一のスリット306は、Y軸に沿って測定される幅306Wを有する。いくつかの実施形態では、第二のスリット308の一次セクション308Aは、X軸に沿って測定される幅308Wを有する。幅306W又は幅308Wは、アンテナ装置200Aに対する動作周波数の範囲に基づいて決定される。一方で、幅306W又は幅308Wが最小幅制限よりも小さい場合、例えば、同相RF信号RF_out_I又は直交RF信号RF_out_Qの波長よりも小さい場合、RF信号が第一のスリット306又は第二のスリット308に屈折し、望ましくない破壊的干渉が発生することがある。他方で、幅306W又は308Wが最大幅制限値よりも大きい場合、アンテナ装置200Aの動作周波数とは別の望ましくない周波数の広帯域信号がRF信号に導入される可能性がある。したがって、幅306W又は308Wは、適切な範囲内で決定され、アンテナ装置200Aの動作周波数に適合される必要がある。
【0043】
いくつかの実施形態では、一次セクション306及び一次セクション308Aは、距離Ds又は間隔によって分離される。いくつかの実施形態では、距離Dsが大きいほど、より良好な直交信号分離を達成することができる。同相RF信号RF_out_Iと直交RF信号RF_out_Qとの間の信号結合が低くなると(すなわち、信号分離が高い状態にあると)、同相RF信号RF_out_Iと直交RF信号RF_out_Qの独立振幅又は位相較正の性能が改善される。しかしながら、距離Dsの増加は、アンテナのフットプリントと引き換えに達成される。したがって、信号の分離とアンテナサイズの間でトレードオフを行う必要がある。
【0044】
図5は、いくつかの他の実施形態による、
図3に示すアンテナ装置300Aのスリットの概略上面図である。アンテナ装置300Aは、アンテナ装置200Aと類似しており、したがって、類似の特徴は、簡潔にするために繰り返さない。アンテナ装置300Aは、第一のスリット306がY軸方向に延びる第一の二次セクション306B及び第二の二次セクション306Cをさらに含む点で主にアンテナ装置200Aとは異なる。いくつかの実施形態では、第一の二次セクション306B及び第二の二次セクション306Cは、一次セクション306Aのそれぞれの両端部に接続され、それによって、U字形状スリットを形成する。いくつかの実施形態では、二次セクション306B又は306Cは、一次セクション306A及び二次セクション308B、308Cに対して垂直であるか、あるいは一次セクション308Aに対して平行である。いくつかの実施形態では、第一のスリット306及び第二のスリット308の一方又は両方は、1つの二次セクションのみを有し、したがって、第一のスリット306又は第二のスリット308、あるいはその両方は、L字型を含む。
【0045】
図6は、いくつかの実施形態による、位相較正テーブル500Aの概略ブロック図である。位相較正500Aは、例示的な12x12アンテナアレイのアンテナ装置のそれぞれに対する位相補償値を表す。位相補償値の数値は、度単位で示され、較正基準として機能する同相RF信号RF_out_Iに対する直交RF信号RF_out_Qの位相補償値を示す。
【0046】
位相較正テーブル500Aから、位相補償値は、12x12アンテナアレイの中央領域の近傍で実質的にゼロであることが分かる。これは、中央領域の周辺に編成されたアンテナ装置が、その近傍で一般接地板326(
図3参照)によって提供されるより均一又は対称な接地を経験することに起因すると考えられる。アンテナアレイの周辺領域に近いアンテナ装置に関しては、アンテナ装置200Aがアンテナアレイの端部に編成されるまで、一般接地板326によって提供される接地の対称性の状態が低下し続ける。その結果、アンテナアレイの端部に編成されたアンテナ装置では、電界の対称性が最悪となり、その結果、位相歪みが最悪となる。しかしながら、
図6に示すように、12×12の大規模なアンテナアレイにおいても、最悪の位相誤差は約16度以内であり、この誤差は、提案する簡易デジタル位相較正手順により容易に較正することができる。したがって、フェーズドアンテナアレイの位相歪みを低コストで較正することができる。
【0047】
図7Aは、いくつかの実施形態による、電磁遮蔽アレイ700の概略透視図である。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽アレイ700は、アンテナテスト方法において使用され、アンテナの放射素子、例えば、アンテナ装置200Aのアンテナパッチ206がRF信号を放射するのを阻止する。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽アレイ700は、行と列に編成された電磁遮蔽構造700Aのアレイを含む。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽アレイ700の形状は、
図2Aに示すように、アンテナアレイ200の形状に従う。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽アレイ700は、基板702を含む。基板702は、半導体材料、例えば、シリコン、又は酸化シリコン、窒化シリコン等の誘電体材料、又はエポキシ樹脂、ポリイミド等のポリマー材料、又は他の適切な材料で形成されてもよい。電磁遮蔽アレイ700又は基板702は、前面700Fと、前面700Fとは反対側の裏面700Bとを含んでもよい。
【0048】
電磁遮蔽構造700Aのそれぞれは、基板702の前面700F上に形成された導電パッド704のアレイで形成される。いくつかの実施形態では、導電パッド704は、長方形の形状である。導電パッド704は、所定距離Dxだけ互いに離間している。基板702の裏面700Bには、共通導電層708が形成されている。複数の導電ビア706は、基板702を貫通して形成され、共通導電層708を対応する導電パッド704に電気的に接続する。いくつかの実施形態では、共通導電層708は、導電パッド704のそれぞれよりも大きな面積を有する。描かれた実施形態では、各電磁遮蔽構造700Aは、導電パッド704の5x5のアレイを含むが、本開示は、それに限定されない。電磁遮蔽構造700Aのアレイサイズの他の数も、本開示の企図された範囲内である。
【0049】
図7Bは、いくつかの実施形態による、
図7Aに示す電磁遮蔽構造700Aの概略断面図である。共通導電層708は、電磁遮蔽構造700Aの共通接地として機能する。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽構造700Aは、インダクタLがキャパシタCに並列に接続される複数の等価インダクタ-キャパシタ(LC)回路のカスケードとして見ることができる。LC回路は、周波数の一部を通過させる一方、周波数の別の一部を遮断するためのバンドパスフィルタの効果をもたらす。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽構造700Aの周波数応答又は阻止帯域は、導電パッド704の寸法又は幅Lxと、導電パッド704の間の距離Wx又は間隔によって決定されることになる。導電パッド704及び距離Dxの適切な決定を通じて、RF信号RF_outのためのバンドパスフィルタは、電磁遮蔽構造700Aによって実現することができる。
【0050】
図8は、いくつかの実施形態による、テストプローブアレイ800の概略断面図である。いくつかの実施形態では、テストプローブアレイ800は、電磁遮蔽アレイ700を用いたアンテナテスト方法において使用され、そうでなければアンテナ装置200Aのアンテナパッチ206から放射されるであろう同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qを含むRF信号RF_outが電磁遮蔽アレイ700によって遮られると、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qは、給電線312又は314を通して取得され、検査することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、テストプローブアレイ800は、行と列に編成された検査プローブ装置800Aのアレイを含む。いくつかの実施形態では、テストプローブアレイ800の形状は、
図2Aに示すように、アンテナアレイ200の形状に従う。いくつかの実施形態では、テストプローブアレイ800は、基板802を含む。基板802は、半導体材料、例えば、シリコン、又は酸化シリコン、窒化シリコン等の誘電体材料、又はエポキシ樹脂、ポリイミド等のポリマー材料、又は他の適切な材料で形成されてもよい。テストプローブアレイ800又は基板802は、前面800Fと、前面800Fとは反対側の背面800Bとを含んでもよい。複数のプローブ針セット812が前面800Fに形成される。プローブ針セット812は、第一の給電線312及び第二の給電線314をそれぞれプローブし、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qが実質的に等しい振幅及び実質的に90°の所定の位相差を有するかどうかを調べるように構成された一対のプローブ針804、806を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プローブ針314、316は、スプリング針又は他の適切なテストプローブを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、基板802は、基板802の前面800F又は封止面上に形成されたパターン化伝送線805、807を含む。伝送線805、807は、テストツール、例えば、オシロスコープ、信号分析器又はネットワーク分析器に電気的に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、プローブ針314、316は、それぞれ伝送線805、807を介してテストツールに電気的に接続される。いくつかの実施形態では、第一の給電線312及び第二の給電線314は、それぞれのプロービング領域を含み、プローブ針314、316の位置及びプローブ針314と316との間の間隔は、それぞれ第一の給電線312及び第二の給電線314のプロービング領域と整列するよう決定される。
【0053】
図9は、いくつかの実施形態による、アンテナアレイ、例えば、アンテナアレイ200をテストする方法900の概略フローチャートである。
図10A及び
図10Bは、いくつかの実施形態による、テスト動作の概略ブロック図を示す。方法900のステップの前、間、及び後に、追加のステップを提供することができ、以下に説明するステップのいくつかは、他の実施形態と置き換えることが、又は排除することができることを理解されたい。
図9に示すステップの順序は、交換可能であってもよい。ステップのいくつかは、同時に、又は独立して実行してもよい。
【0054】
ステップ902で、アンテナアレイ、プローブ針セット、及び導電パッドのアレイを含む遮蔽構造が受領又は提供される。いくつかの実施形態では、アンテナアレイは、アンテナアレイ20と同様である。プローブ針セットは、プローブ針セット812と同様であってもよい。遮蔽構造は、電磁遮蔽構造700Aと同様であってもよい。
【0055】
ステップ904で、
図10A及び10Bに示すように、遮蔽構造は、少なくとも1つのアンテナ装置200Aの放射素子又はアンテナパッチ206を覆うようにされる。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽構造700Aは、アンテナ装置200A又はアンテナ装置200Aのアンテナパッチ206と位置合わせされる。いくつかの実施形態では、電磁遮蔽構造700Aの導電パッド704は、アンテナパッチ206と物理的に接触している。
【0056】
ステップ906で、プローブ針セットは、第一の給電線と第二の給電線とに接触するようにされる。いくつかの実施形態では、2つのプローブ針804、806は、同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qを受信するために第一の給電線314及び第二の給電線316に接触するように適合される。いくつかの実施形態では、
図2B、
図3及び
図10Aを参照すると、第一の給電線312及び第二の給電線314は、それぞれ絶縁材料226Cから露出したプロービング領域312T、314Tを含む。いくつかの実施形態では、導電線222A、222B又は222Cは、銅等の導電性材料又は他の適切な材料で形成される。いくつかの実施形態では、
図10Bに示すように、第一の給電線312及び第二の給電線314は、プローブ針804及び806を受容又は接触するように適合されたそれぞれのプロービング領域312T及び314Tを含む。いくつかの実施形態では、プロービング領域312T及び314Tは、アンテナパッチ206に結合されるとき又はそこから結合されるときに、実際のRF信号振幅及び位相を反映するために、第一の給電線312及び第二の給電線314Tの結合ノード312P及び314P、例えば、第一のスリット306及び第二のスリット308にそれぞれ重なる場所に配置されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、プロービング領域312T及び314Tが絶縁材料226Cによって保護されていないとき、プロービング領域312T及び314Tは、下にある導電性材料、例えば銅の浸食を防止するために、プロービング領域312T及び314Tの露出表面上に形成された浸食防止コーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、浸食防止コーティングは、複合ニッケル-金層であるか、あるいは無電解ニッケル浸漬金(ENIG)層と称されるものである。ENIG層によるプロービング領域312T及び314T上の処理を通じて、プロービング領域312T及び314Tにおける浸食による導電性損失の悪影響なしに、テストをより確実に実行することができる。
【0058】
ステップ908で、第一のテスト信号及び第二のテスト信号が、RF信号源、例えば、テストツールのRF信号発生器から、少なくとも1つのアンテナ装置の第一の信号ポート(例えば、信号ポート302)及び第二の信号ポート(例えば、信号ポート304)へそれぞれ提供される。例えば、第一の信号ポート302及び第二の信号ポート304は、RFチップ208から第一のテスト信号及び第二のテスト信号をそれぞれ受信するように構成される。いくつかの実施形態では、アンテナ装置の振幅較正又は位相較正情報がない場合、第一のテスト信号及び第二のテスト信号は、実質的に等しい振幅及び同じ位相、例えば、ゼロ度で提供される。
【0059】
ステップ910で、第一の出力信号及び第二の出力信号は、プローブ針セット812から、少なくとも1つのアンテナ装置の第一の給電線(例えば、第一の給電線312)及び第二の給電線(例えば、第二の給電線314)を介して、それぞれ信号分析器によって取得される。電磁遮蔽アレイ700又は電磁遮蔽構造700Aの1つ以上の支援を受けることで、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qは、アンテナパッチ206によって外側に放射されないであろう。むしろ、アンテナパッチ206は開回路とみなされ、したがって、RF信号RF_out_I及びRF_out_Qは、対応するプロービング領域312T及び314Tで第一の給電線312及び第二の給電線314を介して、それぞれ第一の出力信号及び第二の出力信号として受信することができる。
【0060】
ステップ912で、第一の出力信号の第一の位相と第二の出力信号の第二の位相との間の第一の位相差が、例えば、テストツール又は信号分析器によって決定される。いくつかの実施形態では、テストツール又は信号分析器によって、第一の出力信号と第二の出力信号との間に位相誤差が存在するか否かが識別される。いくつかの実施形態では、位相誤差の特定又は判定は、アンテナアレイ200のアンテナ装置200Aの全部又は一部について同時に進行する。いくつかの実施形態では、位相誤差の特定又は決定は、アンテナ素子200Aを1つずつ用いて進行する。
【0061】
いくつかの実施形態では、電磁遮蔽アレイ700(又は電磁遮蔽構造700Aの1つ以上)、テストプローブアレイ800(又はテストプローブ装置800Aの1つ以上)及びテストツール(RF信号発生器及び信号分析器を含む)は、アンテナ装置200Aのアレイを同時にテストするか、アンテナ装置200Aのテストを1つずつ実行するためのテストシステムと、本明細書では総称する。
【0062】
いくつかの実施形態では、位相誤差Ph_eは、第一の出力信号の第一の位相Ph_1を第二の出力信号の第二の位相Ph_2で減算したものとして、以下の式:
Ph_2-Ph_1=90+Ph_e
で表されるように、特定される。
【0063】
上式において、位相誤差Ph_eは、ゼロでない値である。その後、位相誤差を補償するために、第二のテスト動作が行われ、テストツールのRF信号源又はRF信号発生器から第一のテスト信号と第三のテスト信号が第二のテスト動作で提供され、第一のテスト信号と第三のテスト信号は同じRF信号であり、第二の位相差Ph_kは、第一のテスト信号の第一の位相Ph_1から、位相誤差に等しい初期位相での第三のテスト信号の第三の位相Ph_3を差し引いたものとして、定義され、すなわち、
Ph_k=Ph_1-Ph_3=Ph_e
となる。
【0064】
それは、このようにすると、位相較正後の第三のテスト信号には、-Ph_kの初期位相が与えられるので、第三の出力信号と第一の出力信号との間の位相差は、
Ph_3-Ph_1=-Ph_k+90+Ph_e=90
のようになるからである。
【0065】
結果として生じる第一の給電線と第二の給電線との間の位相差は、位相較正後に完全な90°の差となるであろう。いくつかの実施形態では、第二のテスト動作は省略され、RFチップ208は、第一の信号ポート302及び第二の信号ポート304の出力信号を、それぞれゼロ及びPh_k度の初期位相で直接設定する。結果として生じる同相RF信号RF_out_I及び直交RF信号RF_out_Qは、実質的に90°の位相差で直交することになる。
【0066】
本明細書では振幅較正手順を詳細に説明しないが、上述した同じ位相較正手順を振幅較正に適用することも可能である。
【0067】
前述は、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を概説したものである。当業者は、本開示を、本明細書で紹介した実施形態の同じ目的を実行するために、及び/又は同じ利点を達成するために、他のプロセス及び構造を設計又は修正するための基礎として、本開示を容易に使用できることを理解すべきである。また、当業者は、そのような同等の構築が本開示の精神及び範囲から逸脱しないことも、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書において様々な変更、置換、及び改変を実行可能なことを認識すべきである。