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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002959
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】時限放出型顆粒およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/02 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K47/02
A61K45/00
A61K9/14
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101879
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2022102204
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】河合 和紀
(72)【発明者】
【氏名】弓樹 佳曜
(72)【発明者】
【氏名】山下 佳士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】本庄 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA94
4C076BB01
4C076DD21H
4C076DD27H
4C076EE13H
4C076FF31
4C076FF33
4C076GG16
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA41
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA12
(57)【要約】
【課題】目的に応じて、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立または調整できる時限放出型顆粒を提供する。
【解決手段】有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成して、顆粒を調製する。前記コーティング層は、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含む。前記アルミニウム含有ケイ酸類は、ケイ酸アルミン酸塩、合成ケイ酸アルミニウムおよびベントナイトを含んでいてもよい。前記コーティング層は、さらに第2の無機化合物を含んでいてもよい。前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせであってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成された顆粒であって、
前記コーティング層が、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含む、顆粒。
【請求項2】
前記アルミニウム含有ケイ酸類が、ケイ酸アルミン酸塩、合成ケイ酸アルミニウムおよびベントナイトを含む請求項1記載の顆粒。
【請求項3】
前記コーティング層が、さらに第2の無機化合物を含む請求項1または2記載の顆粒。
【請求項4】
前記第1の無機化合物と前記第2の無機化合物との質量比が、前者/後者=95/5~10/90である請求項3記載の顆粒。
【請求項5】
前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体およびアミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1または2記載の顆粒。
【請求項6】
前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせである請求項1または2記載の顆粒。
【請求項7】
前記水不溶性高分子が、アミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含み、前記コーティング層が、さらにヒドロキシC2-4アルキルセルロースエーテルを含む請求項1または2記載の顆粒。
【請求項8】
前記第1の無機化合物および前記第2の無機化合物の合計割合が、前記水不溶性高分子100質量部に対して10質量部以上である請求項3記載の顆粒。
【請求項9】
前記コーティング層が、単層構造、または中間層と外層とを含む積層構造である請求項1または2記載の顆粒。
【請求項10】
請求項1または2記載の顆粒を含む製剤。
【請求項11】
有効成分を含む核部を製造する工程と、
アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程とを含む顆粒の製造方法。
【請求項12】
アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング層で、有効成分を含む核部を被覆することにより、前記有効成分の溶出を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の溶出のラグ時間を制御できる時限放出型顆粒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
薬効成分などの有効成分は、服用性の向上や有効成分の発現時期調整などの目的で溶出性を制御する必要がある。一方で、有効成分による治療効果を十分に発揮させるには、有効成分が体内で速やかに溶出し、体内へ吸収される必要がある。このような溶出性の制御(ラグ時間)と、有効成分の溶出とはトレードオフの関係にあるため、有効成分の溶出性と、ラグ時間の調整とを両立させるのは困難である。特に、ラグ時間が長くなると、溶出速度を維持するのが困難となる。しかし、用途によっては、溶出速度を維持しつつ、ラグ時間を延長することや、逆にラグ時間を維持しつつ、溶出速度を上昇させることが要求される。そのため、目的に応じて、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立または調整できる時限放出型組成物が待望されている。
【0003】
このような時限放出性を有する時限放出型組成物として、特開2012-250926号公報(特許文献1)には、薬物粒子と、前記薬物粒子を被覆する被覆層とを有する粒子製剤であって、前記被覆層が、水不溶性高分子2.4質量部に対して、無機粒子を0.5~2.4質量部含有する粒子製剤が開示されている。この文献には、前記無機粒子として、シリカ(含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸)、二酸化チタン、タルク、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質酸化アルミニウムが例示され、シリカおよび/または二酸化チタンが好ましいと記載されている。
【0004】
特開2006-160626号公報(特許文献2)には、微小繊維状セルロース、水不溶性または水難溶性コーティング基剤および水難溶性の無機物質を含有するコーティング組成物で、有効成分を含有する芯部を被覆することによって、有効成分の放出を徐放化させる方法が開示されている。この文献には、前記水難溶性の無機物質として、軽質無水ケイ酸、カオリン、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが例示され、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好ましく、軽質無水ケイ酸がより好ましいと記載されている。実施例では、軽質無水ケイ酸が使用されている。
【0005】
特開2018-16623号公報(特許文献3)には、コーティング層で被覆された顆粒であって、核粒子がフェブキソスタットおよび崩壊剤を含み、前記核粒子がセルロース誘導体、アクリルポリマーおよび流動化剤を含むコーティング層で被覆された顆粒が開示されている。この文献には、前記流動化剤として、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルク、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが例示され、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸が好ましく、タルクが特に好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-250926号公報
【特許文献2】特開2006-160626号公報
【特許文献3】特開2018-16623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3の組成物では、溶出速度を維持しつつ、長いラグ時間を確保することができず、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立できない。
【0008】
従って、本発明の目的は、目的に応じて、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立または調整できる時限放出型顆粒およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、有効成分を含む核部を、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング層で被覆することにより、目的に応じて、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立または調整できる時限放出型顆粒を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の態様[1]としての顆粒は、
有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成された顆粒であって、
前記コーティング層が、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含む。
【0011】
本発明の態様[2]は、前記アルミニウム含有ケイ酸類が、ケイ酸アルミン酸塩、合成ケイ酸アルミニウムおよびベントナイトを含む態様である。
【0012】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]の態様において、前記コーティング層が、さらに第2の無機化合物を含む態様である。
【0013】
本発明の態様[4]は、前記態様[3]の態様において、前記第1の無機化合物と前記第2の無機化合物との質量比が、前者/後者=95/5~10/90である態様である。
【0014】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体およびアミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択された少なくとも1種を含む態様である。
【0015】
本発明の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様において、前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせである態様である。
【0016】
本発明の態様[7]は、前記水不溶性高分子が、アミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含み、前記コーティング層が、さらにヒドロキシC2-4アルキルセルロースエーテルを含む態様である。
【0017】
本発明の態様[8]は、前記態様[3]~[7]のいずれかの態様において、前記第1の無機化合物および前記第2の無機化合物の合計割合が、前記水不溶性高分子100質量部に対して10質量部以上である態様である。
【0018】
本発明の態様[9]は、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様において、前記コーティング層が、単層構造、または中間層と外層とを含む積層構造である態様である。
【0019】
本発明には、態様[10]として、前記態様[1]~[9]のいずれかの態様の顆粒を含む製剤も含まれる。
【0020】
本発明には、態様[11]として、
有効成分を含む核部を製造する工程と、
アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程とを含む顆粒の製造方法も含まれる。
【0021】
本発明には、態様[12]として、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング層で、有効成分を含む核部を被覆することにより、前記有効成分の溶出を制御する方法も含まれる。
【0022】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「アンモニオメタクリレート単位」とは、単量体としてのメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルで構成された単位を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、有効成分を含む核部が、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング層で被覆されているため、目的に応じて、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立または調整できる。例えば、第1の無機化合物を適宜選択することなどによって、有効成分の溶出速度を維持しつつ、ラグ時間を延長することもできる一方で、有効成分のラグ時間を維持しつつ、溶出速度を上昇させることもできる。さらに、核部は有効成分を含んでいればよく、崩壊剤などの他の添加剤が必須成分ではないため、製剤の小型化が容易であり、核部の成分は有効成分の性質に合わせて適宜調整可能となり(種々の有効成分に本発明の顆粒を適用でき)、生産性および汎用性が高い上に、溶出性とラグ時間とを両立できる。また、第1の無機化合物と第2の無機化合物とを組み合わせることにより、溶出性とラグ時間とのバランスを調整し易くなり、用途に応じて目的のラグ時間を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、比較例1および実施例1~6で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図2図2は、比較例1および実施例1~6で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(初期の溶出プロファイル)である。
図3図3は、実施例1および7~8で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図4図4は、実施例5および9で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図5図5は、比較例1および実施例10で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図6図6は、比較例2および実施例11で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図7図7は、比較例3および実施例12で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図8図8は、比較例4および実施例13で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図9図9は、比較例4および実施例13で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(初期の溶出プロファイル)である。
図10図10は、比較例5および実施例14で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図11図11は、比較例5および実施例14で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(初期の溶出プロファイル)である。
図12図12は、比較例6および実施例15で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
図13図13は、比較例1および実施例16で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[時限放出型顆粒]
本発明の顆粒は、有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成されており、経口製剤として所定時間後に有効成分を溶出できる時限放出型顆粒である。
【0026】
(核部)
核部は、必須成分として有効成分を含む。
【0027】
(A)有効成分
核部に含まれる有効成分(A)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、厳密なラグ時間を要求されることが多い有効成分が汎用される。
【0028】
有効成分(A)としては、慣用または新規のいずれの有効成分も利用でき、例えば、滋養強壮保健剤、解熱鎮痛消炎剤、向精神病剤、抗不安剤、抗うつ剤、催眠鎮静剤、鎮痙剤、胃腸剤、制酸剤、鎮咳去痰剤、歯科口腔用剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、利胆剤、抗結核剤、抗生物質、抗ウイルス剤、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩剤などが挙げられる。これらのうち、苦味などのマスキングが必要な有効成分(例えば、レボフロキサシンなどの抗生物質など)が好ましい。
【0029】
有効成分(A)の含有質量は、核部中10質量%以上であってもよく、例えば30~99質量%、好ましくは50~98質量%、さらに好ましくは70~95質量%、より好ましくは75~93質量%、最も好ましくは80~90質量%である。有効成分の含有質量が少なすぎると、顆粒が大型化する虞があり、多すぎると、核部の成形性が低下する虞がある。
【0030】
(B)結合剤
核部は、有効成分(A)に加えて、結合剤(B)(第1の結合剤)をさらに含んでいてもよい。結合剤(B)としては、例えば、ポリビニルピロリドン類(ポビドン、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体など)、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸共重合体など)、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルなどの合成高分子;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)などのヒドロキシアルキルセルロースエーテル類;酢酸セルロースなどのセルロースエステル類などが挙げられる。
【0031】
これらの結合剤(B)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、HPCなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロースエーテルが好ましい。
【0032】
結合剤(B)の含有質量は、核部中0.1~90質量%であってもよく、例えば1~50質量%、好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%、最も好ましくは8~12質量%である。結合剤の割合が少なすぎると、顆粒の機械的特性が低下し、逆に多すぎると、顆粒が大型化する虞がある。
【0033】
(C)水膨潤性物質
核部は、水膨潤性物質(C)を含んでいてもよい。水膨潤性物質(C)としては、例えば、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスポビドンコポリマーなどの架橋ポリビニルピロリドン類;トウモロコシデンプン、バレイショデンプンなどのデンプン;アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、酸化デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムなどのデンプン誘導体;微結晶セルロース、結晶セルロース、粉末セルロースなどのセルロース類;低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルメロースまたはCMC)、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのセルロースエーテル類;結晶セルロース・カルメロースナトリウム;寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビンガム、アラビアガム、トラガントガム、プルラン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ペクチン、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ゼラチン、カゼイン、ダイズタンパク質などのタンパク質などが挙げられる。
【0034】
これらの水膨潤性物質(C)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、L-HPCなどの低置換度ヒドロキシC2-4アルキルセルロースが好ましい。
【0035】
水膨潤性物質(C)の含有質量は、核部中30質量%未満が好ましく、コーティング層を破壊することなく、有効成分を溶出でき、顆粒の小型化および生産性を向上できる点から、15質量%以下が特に好ましく、さらに好ましくは10質量%以下、より好ましくは1~10質量%、最も好ましくは3~8質量%である。本発明では、核部中の水膨潤性物質(C)は必須成分ではなく、核部は、水膨潤性物質(C)を実質的に含まなくてもよく、完全に含まなくてもよい。
【0036】
(D)慣用の添加剤
核部は、有効成分(A)に加えて、経口製剤に配合される慣用の添加剤(D)をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤(D)としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤(D)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤(D)の合計の含有質量は、核部中30質量%以下であってもよく、例えば20質量%以下(例えば0.01~20質量%)、好ましくは10質量%以下(例えば0.1~10質量%)、さらに好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0037】
(E)核部の特性
核部の形状は、特に限定されず、無定形状、繊維状、楕円体状、球状、平板状、粉粒状などであってもよいが、球状が好ましい。さらに、核部の形状は、中空形状であってもよいが、顆粒を小型化できる点から、中実状が好ましい。
【0038】
核部の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、ラグ時間と溶出性とのバランスに優れる点から、例えば100~500μm、好ましくは100~450μm、さらに好ましくは100~350μm、より好ましくは100~250μm、最も好ましくは150~200μmである。
【0039】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、体積基準の累積50%粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布計を用いて体積基準で測定できる。
【0040】
(コーティング層)
本発明の顆粒は、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物と、水不溶性高分子とを含むコーティング層で前記核部を被覆している。本発明では、前記核部を被覆するコーティング層が、前記第1の無機化合物および水不溶性高分子を含むため、有効成分の溶出性を維持しつつ、ラグ時間を向上できる。
【0041】
(a)第1の無機化合物
コーティング層は、第1の無機化合物(a)として、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種を含む。
【0042】
前記アルミニウム含有ケイ酸類としては、例えば、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸アルミン酸塩;合成ケイ酸アルミニウム;ベントナイト、カオリンなどの鉱物類などが挙げられる。これらのアルミニウム含有ケイ酸類のうち、ケイ酸アルミン酸塩、合成ケイ酸アルミニウムおよびベントナイトが好ましく、ケイ酸アルミン酸塩、ベントナイトがさらに好ましく、ケイ酸アルミン酸塩がより好ましく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが最も好ましい。
【0043】
4質量%のケイ酸アルミン酸塩の水スラリーのpHは、例えば6~11、好ましくは6~10.5、さらに好ましくは6~10である。
【0044】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記水スラリーのpHは、ケイ酸アルミン酸塩2gに水を加えて全量を50mLに調製し、攪拌後2分間放置した水スラリーを、pHメーターで測定した値である。
【0045】
これらの無機化合物(a)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ケイ酸アルミン酸塩、ベントナイト、合成ヒドロタルサイトが好ましく、溶出性を向上できる点から、合成ヒドロタルサイトが好ましく、溶出性の向上とラグ時間の向上とを両立できる点から、ケイ酸アルミン酸塩、ベントナイトが好ましい。なかでも、ケイ酸アルミン酸塩がより好ましく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが最も好ましい。
【0046】
第1の無機化合物(a)(特に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)のBET比表面積は、例えば50~1000m/g、好ましくは100~500m/g、さらに好ましくは150~450m/g、最も好ましくは200~400m/gである。BET比表面積が小さすぎると、ラグ時間が短くなる虞があり、逆に大きすぎると、溶出性が低下する虞がある。
【0047】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、BET比表面積は、慣用の方法、例えば、窒素吸着法に基づいて測定できる。
【0048】
第1の無機化合物(a)(特に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)の形状は、特に限定されず、無定形状、繊維状、楕円体状、球状、平板状、粉粒状などであってもよく、通常、無定形状、平板上、粉粒状などである。
【0049】
第1の無機化合物(a)(特に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば0.5~20μm、好ましくは1~18μm、さらに好ましくは2~15μm、より好ましくは3~12μm、特に好ましくは5~10μm、最も好ましくは8~10μmである。体積基準の累積50%粒子径(中心粒径)が小さすぎると、ラグ時間が短くなる虞があり、逆に大きすぎると、溶出性が低下する虞がある。
【0050】
第1の無機化合物(a)(特に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)の吸油量は、例えば1~10mL/g、好ましくは1.2~7mL/g、さらに好ましくは1.5~5mL/g、より好ましくは2~4mL/g、最も好ましくは2.5~3.5mL/gである。吸油量が少なすぎると、ラグ時間が短くなる虞があり、逆に多すぎると、溶出性が低下する虞がある。
【0051】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、第1の無機化合物(a)の吸油量は、JIS K 5101(顔料試験法)に基づいて測定できる。
【0052】
第1の無機化合物(a)の含有質量は、コーティング層中1質量%以上であればよく、例えば3~50質量%、好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは8~35質量%、より好ましくは10~30質量%、最も好ましくは15~25質量%である。長いラグ時間が要求される場合、第1の無機化合物(a)の含有質量は10質量%以上であってもよく、例えば10~50質量%、好ましくは20~40質量%、さらに好ましくは30~35質量%である。溶出性とラグ時間とのバランスが要求される場合、第1の無機化合物(a)の含有質量は、例えば5~40質量%、好ましくは10~35質量%、さらに好ましくは15~30質量%、最も好ましくは20~25質量%である。
【0053】
(b)第2の無機化合物
コーティング層は、無機化合物として第1の無機化合物(a)単独であってもよく、特に、長いラグ時間が要求される場合は、第1の無機化合物(a)の割合が多い方が好ましく、無機化合物として第1の無機化合物(a)単独が特に好ましい。一方、溶出性とラグ時間とのバランスが要求される場合は、無機化合物として、第1の無機化合物(a)と第2の無機化合物(b)とを組み合わせるのが好ましい。
【0054】
第2の無機化合物(b)としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸などの無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素(含水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどのアルミニウム非含有ケイ酸類;酸化マグネシウム、酸化チタンなどの金属酸化物;沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウムなどのリン酸塩などが挙げられる。
【0055】
これらの無機化合物(b)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アルミニウム非含有ケイ酸類が好ましく、溶出性とラグ時間とのバランスを調整し易い点から、タルクが特に好ましい。
【0056】
第2の無機化合物(b)(特に、タルク)のBET比表面積は、例えば50~1000m/g、好ましくは100~500m/g、さらに好ましくは150~450m/g、最も好ましくは200~400m/gである。
【0057】
第2の無機化合物(b)(特に、タルク)の形状は、特に限定されず、無定形状、繊維状、楕円体状、球状、平板状、粉粒状などであってもよく、通常、無定形状、粉粒状などである。
【0058】
第2の無機化合物(b)(特に、タルク)の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば0.3~10μm、好ましくは0.5~8μm、さらに好ましくは1~7μm、より好ましくは1.5~5μm、最も好ましくは2~4μmである。
【0059】
第2の無機化合物(b)の含有質量は、コーティング層中40質量%以下であってもよく、例えば1~40質量%、好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%、最も好ましくは8~15質量%である。
【0060】
第1の無機化合物(a)と第2の無機化合物(b)とを組み合わせる場合、両者の質量比は、前者/後者=99/1~1/99の範囲から選択でき、例えば95/5~10/90、好ましくは90/10~30/70、さらに好ましくは80/20~50/50、最も好ましくは70/30~60/40である。第2の無機化合物(b)の割合が少なすぎると、溶出性とラグ時間とのバランスを取る効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、ラグ時間が短くなる虞がある。
【0061】
第1の無機化合物(a)および第2の無機化合物(b)の合計割合は、後述する水不溶性高分子100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば10~100質量部、好ましくは15~90質量部、さらに好ましくは20~80質量部、より好ましくは30~70質量部、最も好ましくは40~60質量部である。無機化合物の合計割合が少なすぎると、ラグ時間が短くなる虞がある。
【0062】
(c)水不溶性高分子
コーティング層は、第1の無機化合物(a)と水不溶性高分子(c)とを組み合わせることにより、溶出性とラグ時間の向上とを両立できる。
【0063】
水不溶性高分子としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル単量体など)の単独または共重合体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体(ビニルエステル系単量体、N,N-ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、アンモニオ(メタ)アクリレート、複素環式ビニル系単量体、重合性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体などのビニル系単量体)との共重合体であってもよい。
【0065】
(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体としては、例えば、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(メタクリル酸コポリマーLD)、メタクリル酸-アクリル酸n-ブチル共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸コポリマーL,S)などが挙げられる。
【0066】
(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル(アンモニオメタクリレート)共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体などが挙げられる。
【0067】
ビニル系樹脂としては、例えば、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。
【0068】
セルロース誘導体は、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、セルロースエーテルエステル類のいずれであってもよい。
【0069】
セルロースエーテル類としては、例えば、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースアルキルエーテル類;カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)などのセルロースカルボキシアルキルアルキルエーテル類;ベンジルセルロースなどのセルロースアラルキルエーテル類;シアノエチルセルロースなどのセルロースシアノアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0070】
セルロースエステル類としては、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースフタレート、セルロースアセテートフタレートなどが挙げられる。
【0071】
セルロースエーテルエステル類としては、例えば、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCF)などが挙げられる。
【0072】
これらの水不溶性高分子(c)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体およびアミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体がさらに好ましく、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-アンモニオメタクリレート共重合体が特に好ましい。また、水不溶性高分子(c)は、単独の配合でラグ時間と溶出性とを両立できる点からは、アミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
【0073】
さらに、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体は、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体を少なくとも含むのが好ましく、コーティング層に対する水の浸透性を調整できる点から、アンモニオメタクリレート単位の割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、前記高水浸透性重合体との組み合わせが好ましい。低水浸透性重合体と高水浸透性重合体とを組み合わせることにより、ラグ時間を調整できるとともに、コーティング層の厚みが小さくても、ラグ時間を長くできるため、顆粒を小型化できる。
【0074】
低水浸透性重合体において、アンモニオメタクリレート単位の割合は、7.5質量%未満であればよく、例えば1~7.4質量%、好ましくは2~7.3質量%、さらに好ましくは3~7.2質量%、より好ましくは4~7質量%、最も好ましくは4.3~6.8質量%である。アンモニオメタクリレート単位の割合が多すぎると、コーティング層に対する水の浸透性が高くなってラグ時間が短くなる虞がある。低水浸透性重合体としては、市販品を利用でき、例えば、エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRSPO」などを利用できる。
【0075】
高水浸透性重合体において、アンモニオメタクリレート単位の割合は、7.5質量%以上であればよく、例えば7.5~30質量%、好ましくは7.8~20質量%、さらに好ましくは8~15質量%、より好ましくは8.5~13質量%、最も好ましくは8.8~12質量%である。アンモニオメタクリレート単位の割合が少なすぎると、コーティング層に対する水の浸透性が低くなって有効成分の溶出性が低下する虞がある。高水浸透性重合体としては、市販品を利用でき、例えば、エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」などを利用できる。
【0076】
低水浸透性重合体と高水浸透性重合体との質量比は、前者/後者=99/1~0/100(特に99/1~1/99)程度の範囲から選択でき、例えば90/10~0/100(特に90/10~10/90)、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60、最も好ましくは55/45~45/55である。この質量比は、溶出速度を上昇させ、かつラグタイムも向上できる点から、低水浸透性重合体と高水浸透性重合体との質量比は、前者/後者=0/100(すなわち、高水浸透性重合体単独)であってもよい。低水浸透性重合体の割合が多すぎると、有効成分の溶出性が低下する虞がある。
【0077】
水不溶性高分子(c)[特に、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体]の含有質量は、コーティング層中10質量%以上であってもよく、例えば10~99質量%、好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%、より好ましくは50~80質量%、最も好ましくは60~70質量%である。水不溶性高分子(c)の割合が少なすぎると、ラグ時間を制御するのが困難となる虞があり、多すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒が大型化する虞がある。
【0078】
水不溶性高分子(c)[特に、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体]の割合は、前記核部100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば10~100質量部、好ましくは13~80質量部、さらに好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~40質量部、最も好ましくは25~30質量部である。水不溶性高分子(c)の割合が少なすぎると、ラグ時間を制御するのが困難となる虞があり、多すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒が大型化する虞がある。
【0079】
(d)結合剤
コーティング層は、さらに結合剤(d)(第2の結合剤)を含んでいてもよい。結合剤(d)としては、前記核部の結合剤(B)の項で例示された結合剤などが挙げられる。前記結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記結合剤のうち、ヒドロキシアルキルセルロースエーテル類が好ましく、HPCなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロースエーテルが特に好ましい。
【0080】
本発明では、特に、コーティング層は、前記水不溶性高分子(c)として、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含む場合、結合剤(d)を含むのが好ましい。
【0081】
コーティング層が、アミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体と、結合剤(d)(特に、ヒドロキシC2-4アルキルセルロースエーテル)を含む場合、前記(メタ)アクリル系重合体の割合は、結合剤(d)100質量部に対して1質量部以上であってもよく、例えば1~1000質量部、好ましくは3~100質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは6~20質量部である。
【0082】
結合剤(d)の含有質量は、コーティング層中50質量%以下であってもよく、好ましくは40質量%以下である。
【0083】
コーティング層は、結合剤(d)を含まなくてもよく、水不溶性高分子(c)がアンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含む場合、結合剤(d)の含有質量は30質量%以下であってもよく、好ましくは20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%である。コーティング層は、結合剤(d)を実質的に含まなくてもよく、結合剤(d)を含まないのが最も好ましい。
【0084】
コーティング層が、アミノアルキルメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含む場合、結合剤(d)の含有質量は、例えば10~50質量%、好ましくは20~45質量%、さらに好ましくは30~40質量%である。
【0085】
(e)他の成分
コーティング層は、他の成分(e)として、経口製剤に配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、水膨潤性物質、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、コーティング層中30質量%以下であってもよく、例えば20質量%以下(例えば0.01~20質量%)、好ましくは10質量%以下(例えば0.1~10質量%)、さらに好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0086】
特に、コーティング層は、ラグ時間を向上できる点から、水膨潤性物質を実質的に含まないのが好ましい。水膨潤性物質の含有質量は、コーティング層中1質量%以下であってもよく、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。コーティング層は、水膨潤性物質を完全に含まないのが最も好ましい。
【0087】
また、コーティング層は、製剤を小型化できる点などから、微小繊維状セルロースを実質的に含まないのが好ましく、微小繊維状セルロースを完全に含まないのが特に好ましい。
【0088】
(f)コーティング層の特性
コーティング層の割合は、核部100質量部に対して10~300質量部程度の範囲から選択でき、例えば20~200質量部、好ましくは25~150質量部、さらに好ましくは30~100質量部、より好ましくは35~80質量部、最も好ましくは40~70質量部である。コーティング層の割合が少なすぎると、有効成分の溶出の遮蔽が困難となる虞があり、多すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒の小型化も困難となる虞がある。
【0089】
コーティング層の平均厚みは、例えば5~50μm、好ましくは10~30μm、さらに好ましくは11~25μm、より好ましくは12~20μm、最も好ましくは13~17μmである。厚みが薄すぎると、有効成分の溶出の遮蔽が困難となる虞があり、厚すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒の小型化も困難となる虞がある。
【0090】
コーティング層の構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。積層構造は、中間層と外層とを含む積層構造であればよく、三層以上の構造であってもよい。これらの構造のうち、製剤を小型化できる点から、単層構造、中間層と外層とからなる二層構造が好ましく、単層構造が特に好ましい。
【0091】
コーティング層が積層構造の場合、第1の無機化合物(a)、第2の無機化合物(b)、水不溶性高分子(c)、結合剤(d)および他の成分(e)について、各成分における前記割合は、コーティング層全体において、前記割合であればよい。
【0092】
コーティング層が、核部を被覆する中間層と、中間層を被覆する外層とからなる二層構造である場合、前記中間層が、第1の無機化合物(a)および結合剤を含み、前記外層が、水不溶性高分子(c)を含むものとすることもできる。
【0093】
前記中間層において、結合剤としては、核部の結合剤(B)として例示された結合剤などが挙げられる。前記結合剤のうち、HPCなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロースが好ましい。中間層において、結合剤の割合は、第1の無機化合物(a)100質量部に対して10~300質量部、好ましくは30~200質量部、さらに好ましくは50~150質量部である。
【0094】
前記外層において、第2の無機化合物(b)の割合は、水不溶性高分子(c)100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは40~60質量部である。
【0095】
[時限放出型顆粒の特性および製造方法]
本発明の時限放出型顆粒は、有効成分の溶出性を維持しつつ、ラグ時間を制御できるため、有効成分が苦味を有していても、口腔内では有効成分の溶出を抑制し、胃の中で溶出が完了するように設計することもできる。すなわち、本発明の時限放出型顆粒は、ラグ時間までは高度に有効成分の溶出を抑制でき、ラグ時間経過後は短時間で速やかに有効成分を溶出できる即時放出製剤を調製することができる。さらに、コーティング層において、第1の無機化合物(a)と第2の無機化合物(b)とを組み合わせることにより、用途に応じてラグ時間の長さを調整でき、例えば、比較的長いラグ時間にも調整できる。
【0096】
本発明の顆粒の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば130~500μm、好ましくは130~450μm、さらに好ましくは150~400μm、より好ましくは160~350μm、最も好ましくは170~300μmである。
【0097】
[時限放出型顆粒の製造方法]
本発明の顆粒は、有効成分を含む核部を製造する工程(核部調製工程)と、アルミニウム含有ケイ酸類および合成ヒドロタルサイトからなる群より選択された少なくとも1種である第1の無機化合物(a)と、水不溶性高分子とを含むコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程(被覆工程)とを経ることにより製造できる。
【0098】
核部調製工程において、核部を製造するための造粒方法としては、特に限定されず、慣用の造粒方法を利用できる。慣用の造粒方法は、乾式造粒法であってもよいが、湿式造粒法が好ましい。湿式造粒法は、溶媒を用いて複合粒子を造粒する方法であればよく、例えば、押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、混合・攪拌造粒法、噴霧乾燥造粒法、振動造粒法などが挙げられる。これらのうち、流動層造粒法、混合・攪拌造粒法を利用する造粒法が好ましく、混合・攪拌造粒法が特に好ましい。
【0099】
混合・攪拌造粒法としては、有効成分を含む組成物を一括して混合・攪拌して核部を得る方法であれば特に限定されず、慣用の方法を利用できる。前記組成物は、造粒溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0100】
造粒溶媒としては、特に制限されないが、安全性の点から、水、水性溶媒などが利用できる。水性溶媒としては、例えば、低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのC2-4アルカノールなど)、脂肪族ケトン(例えば、アセトンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0101】
これらの造粒溶媒のうち、水単独、水性溶媒単独、水および水性溶媒の混合溶媒が好ましく、水単独、水およびC2-4アルカノールの混合溶媒がより好ましく、水単独、水およびエタノールの混合溶媒が最も好ましい。
【0102】
造粒溶媒の割合は、有効成分100質量部に対して、例えば1~1000質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~100質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは20~40質量部である。
【0103】
被覆工程では、核部に対して、前記コーティング組成物を慣用のコーティング方法でコーティングしてもよい。慣用のコーティング方法としては、例えば、塗布、噴霧、含浸・浸漬、パンコーティング、流動層コーティング、転動コーティング、転動流動コーティングなどが挙げられる。これらのうち、流動層コーティング、転動流動コーティングが好ましく、転動流動コーティングが特に好ましい。
【0104】
[製剤]
本発明の製剤は、前記時限放出型顆粒を含んでいればよく、なかでも、各種の経口製剤に対して好適に利用できる。経口製剤としては、例えば、丸剤、液剤、散剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤などが挙げられる。これらのうち、有効成分が口腔内に溶出し易い経口製剤、例えば、散剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、錠剤、懸濁剤などに対して有効であり、口腔内崩壊錠(OD錠)に対して特に有効である。
【実施例0105】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法を以下に示す。また、使用した原料の質量は全て固形分質量である。
【0106】
[粒径分布]
粒径分布(D50)は、所定の篩で分級した後、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、商品名「マスターサイザー3000」)を用いて、体積基準で測定した。
【0107】
[コーティング層の平均厚み]
コーティング前後の粒径分布(D50)から算出した。
【0108】
[顆粒の溶出性]
コーティング顆粒の平均溶出率を、日本薬局方 溶出試験法 パドル法(回転数75rpm、溶出試験第2液900mL)で測定した。溶出試験中のコーティング顆粒同士の付着・凝集を防ぐため、事前にコーティング顆粒に対して等倍の崩壊性顆粒(下記製造方法で得られた賦形剤と崩壊剤で構成される顆粒)を混合し、試験ベッセルへ投入した。
【0109】
溶出率は、ファイバープローブ型紫外可視分光光度計(Rainbow,Pion株式会社製)を用いて測定した(測定波長:288nm)。
【0110】
(崩壊性顆粒の製造方法)
流動層造粒乾燥機にD-マンニトール71質量部、エチルセルロース2質量部、軽質無水ケイ酸1質量部を投入した。トウモロコシデンプン20質量部およびクロスポビドン6質量部を精製水80質量部に分散させ、この分散液を前記投入物にスプレーして造粒した後、乾燥し、目開き30M(目開き500μm)の篩で分級し、崩壊性顆粒を得た。
【0111】
比較例1
[球状核部の調製]
レボフロキサシン水和物(0.5水和物)85質量部、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC:日本曹達株式会社製「HPC-L」、以下同じ)15質量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(低置換度HPC:信越化学工業株式会社製「LH-31」、以下同じ)5質量部からなる混合粉体に、50質量%エタノール水溶液10質量部を噴霧し、高速攪拌混合機を用いて造粒した。流動層造粒乾燥機を用いて得られた造粒物を乾燥後、目開き60M(目開き250μm)の篩と200M(目開き75μm)の篩で分級し、粒径75~250μmの球状核部を得た。比較例1で得られた球状核部の組成を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[コーティング層の被覆工程]
得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。高水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」、アンモニオメタクリレート単位の割合8.85~11.96質量%、以下同じ)14質量部、低水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRSPO」アンモニオメタクリレート単位の割合4.48~6.77質量%、以下同じ)14質量部を90質量%エタノール水溶液252質量部に溶解後、タルク(日本タルク株式会社製「ミクロエースP-3」、以下同じ)14質量部を分散させた分散液を、前記球状核部100質量部に対して全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、目開き60Mの篩で分級し、粒径(D50)182μmの時限放出型顆粒を得た。
【0114】
実施例1
コーティング層の被覆工程において、タルクの代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa(富士化学工業株式会社製「ノイシリンUFL2」、4%水スラリーのpH6~8、平均粒子径9μm、BET比表面積300m/g、吸油量2.7~3.4mL/g、以下同じ)を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)187μmの時限放出型顆粒を得た。
【0115】
実施例2
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 1.4質量部およびタルク12.6質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)181μmの時限放出型顆粒を得た。
【0116】
実施例3
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 4.67質量部およびタルク9.33質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)178μmの時限放出型顆粒を得た。
【0117】
実施例4
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 7質量部およびタルク7質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)182μmの時限放出型顆粒を得た。
【0118】
実施例5
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 9.33質量部およびタルク4.67質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)183μmの時限放出型顆粒を得た。
【0119】
実施例6
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 12.6質量部およびタルク1.4質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)182μmの時限放出型顆粒を得た。
【0120】
実施例7
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 7質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)186μmの時限放出型顆粒を得た。
【0121】
実施例8
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 1.75質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)182μmの時限放出型顆粒を得た。
【0122】
実施例9
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 1.87質量部およびタルク0.93質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)184μmの時限放出型顆粒を得た。
【0123】
実施例10
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりに合成ヒドロタルサイト(協和化学工業株式会社製「アルカマックVF」)4.67質量部およびタルク9.33質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)176μmの時限放出型顆粒を得た。
【0124】
比較例2
[中間層の被覆工程]
比較例1と同様の方法で得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。ヒドロキシプロピルセルロース21質量部を精製水600質量部に溶解後、タルク21質量部を分散させた分散液を、前記球状核部100質量部に対して全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、目開き60Mの篩で分級し、中心粒径(D50)194μmの中間層被覆球状核部を得た。
【0125】
[外層の被覆工程]
得られた中間層被覆球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。高水浸透性重合体20質量部、低水浸透性重合体20質量部を90質量%エタノール水溶液360質量部に溶解後、タルク20質量部を分散させた分散液を、前記球状核部100質量部に対して全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、目開き60Mの篩で分級し、中心粒径(D50)221μmの時限放出型顆粒を得た。
【0126】
実施例11
中間層の被覆工程において、タルク21質量部の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 21質量部を用いる以外は比較例2と同様にして中心粒径(D50)196μmの時限放出型顆粒を得た。
【0127】
比較例3
比較例1と同様の方法で得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。アミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニック社製「オイドラギットE」、以下同じ)83質量部を80質量%エタノール水溶液2066質量部に溶解後、ヒドロキシプロピルセルロース41質量部を溶解させ、さらにタルク41質量部を分散させた分散液を、前記球状核部100質量部に対して全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、目開き60Mの篩で分級し、中心粒径(D50)217μmの時限放出型顆粒を得た。
【0128】
実施例12
比較例1と同様の方法で得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。アミノアルキルメタクリレートコポリマー83質量部を80質量%エタノール水溶液2066質量部に溶解後、ヒドロキシプロピルセルロース41質量部を溶解させ、さらにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 21質量部およびタルク41質量部を分散させた分散液を、前記球状核部100質量部に対して全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、目開き60Mの篩で分級し、中心粒径(D50)226μmの時限放出型顆粒を得た。
【0129】
比較例4
外層の被覆工程において、高水浸透性重合体20質量部、低水浸透性重合体20質量部およびタルク20質量部の代わりに、アミノアルキルメタクリレートコポリマー3.55質量部およびタルク3.55質量部を用いる以外は比較例2と同様にして中心粒径(D50)193μmの時限放出型顆粒を得た。
【0130】
実施例13
球状核部の調製において、タルクの代わりにベントナイトを用いる以外は比較例4と同様にして中心粒径(D50)192μmの時限放出型顆粒を得た。
【0131】
比較例5
コーティング層の被覆工程において、高水浸透性重合体14質量部、低水浸透性重合体14質量部およびタルク14質量部の代わりに高水浸透性重合体40質量部およびタルク30質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)185μmの時限放出型顆粒を得た。
【0132】
実施例14
コーティング層の被覆工程において、タルク30質量部の代わりにタルク10質量部およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムa 20質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)182μmの時限放出型顆粒を得た。
【0133】
比較例6
外層の被覆工程において、アミノアルキルメタクリレートコポリマー3.55質量部およびタルク3.55質量部の代わりに高水浸透性重合体9.33質量部、低水浸透性重合体9.33質量部およびタルク9.33質量部を用いる以外は比較例4と同様にして中心粒径(D50)168μmの時限放出型顆粒を得た。
【0134】
実施例15
中間層の被覆工程において、タルクの代わりにベントナイトを用いる以外は比較例6と同様にして中心粒径(D50)171μmの時限放出型顆粒を得た。
【0135】
実施例16
コーティング層の被覆工程において、タルク14質量部の代わりに高水浸透性重合体14質量部およびタルク9.33質量部およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムb(富士化学工業株式会社製「ノイシリンFL2」、4%水スラリーのpH8.5~10.0、平均粒子径7μm、BET比表面積150m/g、吸油量1.4mL/g)4.67質量部を用いる以外は比較例1と同様にして中心粒径(D50)175μmの時限放出型顆粒を得た。
【0136】
実施例1~10および比較例1で得られた時限放出型顆粒の組成を表2に示し、実施例11~16および比較例2~6で得られた時限放出型顆粒の組成を表3に示す。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
比較例1および実施例1~6で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図1~2に示す。なお、図2は、図1において試験時間20分までの溶出初期のプロファイルを拡大したグラフである。図1~2の結果から明らかなように、実施例1~6で得られた時限放出型顆粒は、比較例1で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間を長く調整できた。特に、図2から明らかなように、比較例1で得られた時限放出型顆粒は、5%溶出するまでの時間が短かった。実施例1~6では、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムaとタルクとの割合を変化させることにより、ラグ時間を調整できることが示された。詳しくは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムaの割合を増加させることにより、ラグ時間を長くすることができた。溶出性とラグ時間とをバランス良く発現させるためには、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムaをタルクに対して2倍量配合した実施例5が優れていた。
【0140】
実施例1および7~8で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図3に示す。図3の結果から明らかなように、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムaの割合を少なくすると、ラグ時間も短くなった。
【0141】
実施例5および9で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図4に示す。実施例9は、実施例5の割合で、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムaとタルクとを含み、両者の配合量を減少させた例であるが、図4の結果から明らかなように、実施例5に比べて、溶出性は若干優れていたが、ラグ時間は短かった。
【0142】
比較例1および実施例10で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図5に示す。図5の結果から明らかなように、実施例10で得られた時限放出型顆粒は、合成ヒドロタルサイトおよびタルクを含む例であるが、比較例1で得られた時限放出型顆粒に比べて、溶出性に優れていた。
【0143】
比較例2および実施例11で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図6に示す。図6の結果から明らかなように、実施例11で得られた時限放出型顆粒は、中間層がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムaを含む例であるが、比較例2で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間が延長し、且つ溶出性に優れていた。
【0144】
比較例3および実施例12で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図7に示す。図7の結果から明らかなように、実施例12で得られた時限放出型顆粒は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムaを含む例であるが、比較例3で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間が延長し、且つ溶出性に優れていた。
【0145】
比較例4および実施例13で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図8~9に示す。なお、図9は、図8において試験時間5分までの溶出初期のプロファイルを拡大したグラフである。図8~9の結果から明らかなように、実施例13で得られた時限放出型顆粒は、中間層がベントナイトを含む例であるが、比較例4で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間が延長し、且つ溶出性に優れていた。特に、図9から明らかなように、比較例4で得られた時限放出型顆粒は、1%溶出するまでの時間が短かった。
【0146】
比較例5および実施例14で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図10~11に示す。なお、図11は、図10において試験時間10分までの溶出初期のプロファイルを拡大したグラフである。図10~11の結果から明らかなように、実施例14で得られた時限放出型顆粒は、高水浸透性重合体およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムaを含む例であるが、比較例5で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間が延長し、且つ溶出性に優れていた。特に、図11から明らかなように、比較例5で得られた時限放出型顆粒は、1%溶出するまでの時間が短かった。
【0147】
比較例6および実施例15で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図12に示す。図12の結果から明らかなように、実施例15で得られた時限放出型顆粒は、中間層がベントナイトを含む例であるが、比較例6で得られた時限放出型顆粒に比べて、ラグ時間が延長し、且つ溶出性に優れていた。
【0148】
比較例1および実施例16で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを図13に示す。図13の結果から明らかなように、実施例16で得られた時限放出型顆粒は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムbを含む例であるが、比較例1で得られた時限放出型顆粒に比べて、溶出性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の時限放出型顆粒は、有効成分を含む経口製剤に含まれる顆粒として利用でき、有効成分の溶出性とラグ時間とを高度に両立できるため、即時放出製剤に含まれる顆粒として特に有効に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13