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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029592
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240228BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240228BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240228BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240228BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240228BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/058
H01M50/184 Z
H01M50/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131932
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】大倉 才昇
(72)【発明者】
【氏名】夏目 満伸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信司
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011FF01
5H011GG01
5H011HH02
5H028AA07
5H028AA10
5H028BB00
5H028BB15
5H028CC19
5H028HH09
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029BJ12
5H029CJ01
5H029CJ28
5H029HJ15
(57)【要約】
【課題】本開示は、初期不良の発生が抑制された電池の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、複数のセルが厚さ方向に積層され、かつ、上記複数のセルは互いに気密性が保持されたセルモジュールを準備する準備工程と、上記セルモジュールにおける各々の上記セルの開口に、それぞれ、圧力計を有する個別チャンバーを配置し、上記個別チャンバーを介して、上記セルの内部圧力を減圧する減圧工程と、を有し、上記減圧工程において、複数の上記圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、上記セルの内部圧力を減圧する、電池の製造方法を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが厚さ方向に積層され、かつ、前記複数のセルは互いに気密性が保持されたセルモジュールを準備する準備工程と、
前記セルモジュールにおける各々の前記セルの開口に、それぞれ、圧力計を有する個別チャンバーを配置し、前記個別チャンバーを介して、前記セルの内部圧力を減圧する減圧工程と、
を有し、
前記減圧工程において、複数の前記圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、前記セルの内部圧力を減圧する、電池の製造方法。
【請求項2】
前記複数の圧力値の中央値をPとし、前記複数の圧力値の標準偏差をσとした場合に、前記基準範囲は、P±3σである、請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項3】
前記セルモジュールは、集電体層と、前記集電体層の一方の表面上に配置された正極活物質層と、前記集電体層の他方の表面上に配置された負極活物質層と、を有するバイポーラ電極を備え、
前記セルモジュールにおいて、複数の前記バイポーラ電極は、厚さ方向に積層され、かつ、隣り合うバイポーラ電極の間にセパレータ層が配置され、
前記セルモジュールは、側面に樹脂製のシール部を有し、
前記シール部に、前記セルの前記開口が配置されている、請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造方法においては、各セルの内部を減圧して封止する方法が知られている。例えば特許文献1には、電池構造体が収容された電池ケースを減圧容器内に配置し、その減圧容器内を減圧する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-058377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のセルを有するセルモジュールを減圧する場合、いずれかのセルにおいて閉塞等の異常が発生していると、セルモジュールに破損が生じる恐れ、十分な減圧ができない恐れがあり、そのようなセルモジュールを用いて製造された電池には初期不良が生じる恐れがある。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、初期不良の発生が抑制された電池の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]
複数のセルが厚さ方向に積層され、かつ、上記複数のセルは互いに気密性が保持されたセルモジュールを準備する準備工程と、上記セルモジュールにおける各々の上記セルの開口に、それぞれ、圧力計を有する個別チャンバーを配置し、上記個別チャンバーを介して、上記セルの内部圧力を減圧する減圧工程と、を有し、上記減圧工程において、複数の上記圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、上記セルの内部圧力を減圧する、電池の製造方法。
【0006】
[2]
上記複数の圧力値の中央値をPとし、上記複数の圧力値の標準偏差をσとした場合に、上記基準範囲は、P±3σである、[1]に記載の電池の製造方法。
【0007】
[3]
上記セルモジュールは、集電体層と、上記集電体層の一方の表面上に配置された正極活物質層と、上記集電体層の他方の表面上に配置された負極活物質層と、を有するバイポーラ電極を備え、上記セルモジュールにおいて、複数の上記バイポーラ電極は、厚さ方向に積層され、かつ、隣り合うバイポーラ電極の間にセパレータ層が配置され、上記セルモジュールは、側面に樹脂製のシール部を有し、上記シール部に、上記セルの上記開口が配置されている、[1]または[2]に記載の電池の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示においては、初期不良の発生が抑制された電池を製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示における電池の製造方法を例示するフロー図である。
図2】本開示におけるセルを例示する概略断面図である。
図3】本開示におけるバイポーラ電極を例示する概略断面図である。
図4】本開示におけるセルモジュールを例示する概略平面図および概略断面図である。
図5】本開示における減圧工程を例示する図である。
図6】本開示における電池を例示する概略平面図および概略断面図である。
図7】本開示における実験例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における電池の製造方法について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示における電池の製造方法を例示するフロー図である。本開示における電池の製造方法においては、まず、複数のセルが厚さ方向に積層され、かつ、上記複数のセルは互いに気密性が保持されたセルモジュールを準備する(準備工程)。次いで、セルモジュールにおける各々の上記セルの開口に、それぞれ、圧力計を有する個別チャンバーを配置し、上記個別チャンバーを介して、上記セルの内部圧力を減圧する(減圧工程)。特に、本開示における電池の製造方法においては、上記減圧工程において、複数の上記圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、上記セルの内部圧力を減圧する。
【0012】
本開示によれば、減圧工程において、複数の圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、セルの内部圧力を減圧するため、製造された電池における初期不良の発生を抑制することができる。
【0013】
1.準備工程
本開示における準備工程は、複数のセルが厚さ方向に積層され、かつ、上記複数のセルは互いに気密性が保持されたセルモジュールを準備する工程である。
【0014】
(1)セル
図2は、本開示におけるセルを例示する概略断面図である。図2に示すセル10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に配置された電解質層3とを有している。またセル10は、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5とを有している。
【0015】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn等のスピネル型活物質、LiFePO等のオリビン型活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。
【0016】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよいが、液体電解質が好ましい。液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0017】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、LiTi12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0018】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよいが、液体電解質が好ましい。電解質については、上述した内容と同様である。電解質層は、セパレータを有していてもよい。セパレータの材料としては、従来公知の材料とすることができる。
【0019】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0020】
(2)セルモジュール
本開示におけるセルモジュールは、複数のセルが厚さ方向に積層されている。セルについては上述したとおりである。セルの数は、2以上であり、3以上であってもよく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。
【0021】
また、本開示におけるセルモジュールにおいては、上記複数のセルは互いに気密性が保持されている。「互いに気密性が保持されている」とは、隣り合うセル間において、液体および気体の漏れがないことを意味する。例えば、セルモジュールの側面に後述するシール部を設けることで、気密性を保持することができる。
【0022】
また、本開示におけるセルモジュールは、バイポーラ電極を有することが好ましい。図3は、本開示におけるバイポーラ電極を例示する概略断面図である。図3に示すように、バイポーラ電極11は、集電体層6と、集電体層6の一方の表面上に配置された正極活物質層1と、集電体層6の他方の表面上に配置された負極活物質層2と、を有する。集電体層6は、正極集電体および負極集電体の両方として機能する。集電体層の材料は、上述した正極集電体および負極集電体の材料と同様とすることができる。
【0023】
図4は、本開示におけるセルモジュールを例示する概略平面図および概略断面図である。具体的には、図4は上記バイポーラ電極を有するセルモジュールを例示する図であり、図4(b)は、図4(a)のA-A断面図である。図4(a)、(b)に示すように、セルモジュール20は、負極活物質層2aと、集電体層6aと、正極活物質層1bとがこの順に積層されたバイポーラ電極11aと、負極活物質層2bと、集電体層6bと、正極活物質層1cとがこの順に積層されたバイポーラ電極11bとが、厚さ方向Dに積層されている。また、バイポーラ電極11aとバイポーラ電極11bとの間にはセパレータ層7bが配置されている。また、セルモジュール20は、側面に樹脂製のシール部40を有し、シール部40には、セル10の開口50が配置されている。図4(b)に示すように、開口50は、セルモジュール20の同一側面に配置されていることが好ましい。また、開口50は、セル(10a、10b、10c)それぞれに対して、1箇所ずつ配置されていることが好ましい。
【0024】
セルモジュールにおけるバイポーラ電極の数は、セルの数をNとした場合、通常、N-1(Nは3以上の整数)である。セルモジュールがバイポーラ電極を有する場合、セルの数(N)は、3以上であり、5以上であってもよく、10以上であってもよい。
【0025】
図4(b)に示すように、バイポーラ電極を有するセルモジュールにおける厚さ方向(D)の一方の端部には、正極集電体4、正極活物質層1a、セパレータ層7aがこの順に積層された、末端正極が配置されている。末端正極は、セパレータ層がバイポーラ電極の負極活物質層と接するように配置されている。また、図示しないが、厚さ方向(D)の他方の端部には、負極集電体、負極活物質層、セパレータ層がこの順に積層された末端負極が配置されている。末端負極は、セパレータ層がバイポーラ電極の正極活物質層と接するように配置されている。なお、準備するセルモジュールにおいては、通常、開口50を介して電解液がセル内部に充填されている。
【0026】
また、本開示におけるセルモジュールは、集電体層の両面に同じ極性の電極層が配置されたモノポーラ電極を有していてもよい。電極層は正極活物質層であってもよく、負極活物質層であってもよい。電極層が正極活物質層の場合、集電体層は正極集電体であり、電極層が負極活物質層の場合、集電体層は負極集電体である。
【0027】
2.減圧工程
本開示における減圧工程は、上記セルモジュールにおける各々の上記セルの上記開口に、それぞれ、圧力計を有する個別チャンバーを配置し、上記個別チャンバーを介して、上記セルの内部圧力を減圧する工程である。
【0028】
図5は、本開示における減圧工程を例示する図であり、特に電池が液系電池である場合の減圧工程を例示する図である。図5(b)は、図5(a)のA-A断面図である。減圧工程では、例えば図5(b)に示すように、上記準備したセルモジュール20における各々のセル(10a、10b)の開口50に、それぞれ、圧力計Pを有する個別チャンバー31を配置する。そして、図5(a)に示すように、セルモジュール20を減圧容器30内に収容する。そして、個別チャンバー31を介して真空引きすることで、セル(10a、10b)の内部圧力を減圧する。圧力計はセルの内部圧力を測定できる部材であれば特に限定されず、公知の部材とすることができる。
【0029】
また、本開示における減圧工程では、複数の上記圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、上記セルの内部圧力を減圧する。各セルは、同じ減圧能力で減圧されてもよく、異なる減圧能力で減圧されてもよい。また各セルは、同じタイミングで減圧が開始されてもよく、異なるタイミングで減圧が開始されてもよい。
【0030】
まず、各セルにおける圧力は、圧力計によって測定される。各セルの圧力は、減圧工程において連続的に測定してもよく、一定間隔をあけて断続的に測定してもよい。後者の場合、例えば、1秒以上の間隔をあけて内部圧力測定してもよい。なお、圧力計は、セルの内部を減圧(排気)しながら圧力を測定してもよく、セルの内部の減圧(排気)を停止して圧力を測定してもよい。
【0031】
「複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態」とは、測定した各セルの圧力をPからP(Nはセルの数)とした場合、PからPのそれぞれが基準値から基準範囲内にあることをいう。基準値としては、PからPの中央値Pを用いてもよい。例えば、PからPのそれぞれと、Pとの差の絶対値が基準範囲内にあることを、「複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態」としてもよい。なお、圧力の中央値とは、測定された圧力Pから圧力Pを小さい順に並べたときに中央に位置する圧力の値を意味する。基準範囲としては、例えば、複数の圧力値の標準偏差をσとした場合に、±1σであってもよく、±2σであってもよく、±3σであってもよい。これらの基準範囲の中でも、±3σが好ましい。基準範囲に含まれた状態であることを精度よく判断することができるからである。
【0032】
また、Pに対するPからPのそれぞれの比が、基準範囲内にあることを、「複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態」としてもよい。この場合の基準範囲は、例えば、0.2以上、1.8以下である。
【0033】
また、基準値としては、PからPの平均値PAVEを用いてもよい。例えば、PからPのそれぞれと、PAVEとの差の絶対値が基準範囲内にあることを、「複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態」としてもよい。この場合の基準範囲としては、例えば30kPa以上、70kPa以下である。また、PAVEに対するPからPのそれぞれの比が基準範囲内にあることを、「複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態」としてもよい。この場合の基準範囲としては、例えば、0.2以上、1.8以下である。
【0034】
また、減圧工程における目的とする圧力値は、適宜調整することができる。なお、電池が液系電池である場合、通常、電解液が充填された状態で減圧を行うため、目的とする圧力値は電解液の蒸気圧未満とすることはできない。例えば、目的とする圧力値は、電解液の蒸気圧をPとした場合、P以上、P+5kPa以下である。
【0035】
3.その他の工程
本開示における電池の製造方法は、上記減圧工程により減圧されたセルモジュールを封止材で封止する封止工程を有していてもよい。セルモジュールの封止は、例えば、上記減圧(排気)のために設けられたセルの開口を封止材で封止する方法を挙げることができる。封止材の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0036】
4.電池
図6は、本開示における電池を例示する概略平面図および概略断面図である。図6(b)は、図6(a)の電池100のA-A断面図である。図6(a)および(b)に示す電池100の外面には、正極集電体4または負極集電体5と、シール部40が配置されているシール部の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。また、図6(b)に示すように、減圧および電解液の注液に用いられた開口が、封止材60により封止されることで、電池100は密閉されている。
【0037】
本開示における電池は、上記電解質として液体電解質を含有する液系電池であることが好ましい。また、本開示における電池はリチウムイオン電池であることが好ましい。また、電池の形状としては、例えば、角型が挙げられる。
【0038】
また、電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0039】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0040】
[実験例1]
セルが10個積層されたバイポーラ型セルモジュールを準備した。なお、セルモジュールの側面にはシール部を配置し、シール部に配置した開口から電解液をセルの内部に充填した。図5(a)、(b)に示すように、個別チャンバーが各セルに接続されたバイポーラ型セルモジュールを減圧容器に収容して各セルの内部を減圧した。減圧しながら、1秒毎に各セルの圧力を圧力計により測定し、10個のセルの内部圧力の中央値を算出した。測定した各セルの圧力と、内部圧力の中央値との差の絶対値から、異常なセルの有無を判定した。なお、判定基準(閾値)は、±3σとした。結果を図7に示す。
【0041】
図7に示すように、圧力の差が中央値から+3σより大きいセルを確認したところ、シール材に不良が確認された。また、圧力が中央値から-3σより小さいセルを確認したところ閉塞が生じていた。一方、圧力が中央値から±3σ以内のセルを確認したところ異常は確認されなかった。このことから、減圧工程において、複数の圧力計により得られる複数の圧力値の全てが、基準範囲に含まれた状態で、目的とする圧力値まで、セルの内部圧力を減圧することで、電池の初期不良の発生を抑制できることが確認された。なお、図7に示すように、セルの内部に電解液を充填された状態で減圧を行う場合には、各セルの内部圧力は電解液の蒸気圧を下回ることはない。
【0042】
[実験例2]
実験例1と同様にバイポーラ型セルモジュールを準備し、判定基準(閾値)を±1σおよび±2σに変更して判定を行い、判定精度を確認した。判定基準を±3σとした結果と合わせて表1に示す。なお、それぞれの試験は10回行った。
【0043】
【表1】
【0044】
±1σおよび±2σの判定基準において、異常があると判定されたセルを確認したところ、それぞれ、10%および1%の割合で判定が誤っていることが確認された。一方、±3σの判定基準においては、判定の誤りはなかった。このことから、判定基準(閾値)を±3σに設定することで、異常なセルを精度よく判定できることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
1 …正極活物質層
2 …負極活物質層
3 …電解質層
4 …正極集電体
5 …負極集電体
6 …集電体層
7 …セパレータ層
10 …セル
11 …バイポーラ電極
20 …セルモジュール
30 …減圧容器
31 …個別チャンバー
100 …電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7