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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002960
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】音響測定デバイス用の空気ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/12 20060101AFI20231228BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20231228BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20231228BHJP
   F04B 41/06 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61B5/12
F04B45/047 C
F04B45/04 A
F04B41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023102120
(22)【出願日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】22180714.2
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519235841
【氏名又は名称】インターアコースティックス アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】クラン モンラズ ノアゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス シュアセン
【テーマコード(参考)】
3H076
3H077
4C038
【Fターム(参考)】
3H076AA14
3H076AA37
3H076BB38
3H076BB40
3H076CC01
3H076CC81
3H077AA12
3H077CC02
3H077DD06
3H077EE15
3H077EE34
3H077EE36
3H077FF06
3H077FF36
3H077FF55
4C038AA02
4C038AB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】音響測定デバイス用の空気ポンプ装置を提供する。
【解決手段】音響測定デバイスは、患者の外耳道内に配置されるように構成され、外耳道内で静止位置をとるように構成されている。音響測定デバイスは耳プローブを有し、空気ポンプ装置を有する。空気ポンプ装置は、少なくとも静止位置において、耳プローブを介して延びる少なくとも1つの管を通して外耳道と流体連通している。空気ポンプ装置は、静止位置において、患者の耳の鼓膜を通じて少なくとも1つの空気圧レベルからなる空気圧制御手順を適用するように構成され、静止位置において、患者の耳の鼓膜を通じてポンプ装置によって適用される空気圧制御手順に反応して音響特性値を提供するように構成される。空気ポンプ装置は、少なくとも2つのポンプを備え、少なくとも2つのポンプは、膜の形の可動要素を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の耳の客観的な耳状態評価のための音響特性値を提供するように構成された音響測定デバイスであって、
・当該音響測定デバイスの少なくとも一部が、前記患者の外耳道内に配置されるように構成され、前記外耳道内で静止位置をとるように構成され、
・当該音響測定デバイスは耳プローブを備え、
・当該音響測定デバイスは空気ポンプ装置を備え、前記空気ポンプ装置は、少なくとも前記静止位置において、前記耳プローブを介して延びる少なくとも1つの管を通じて前記外耳道と流体連通しており、
・前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて少なくとも1つの空気圧レベルからなる空気圧制御手順を適用するように構成され、
・当該音響測定デバイスは、前記静止位置において、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて前記空気ポンプ装置によって適用される前記空気圧制御手順に反応して音響特性値を提供するように構成され、
・前記空気ポンプ装置は、少なくとも2つのポンプを備え、前記少なくとも2つのポンプは、膜の形の可動要素を備える、
音響測定デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも2つのポンプは、前記空気圧制御手順を適用するために膜ポンプとして作用するように構成されている、請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項3】
・前記外耳道内の前記空気圧レベルを表す音響信号を捕捉するように構成された音響入力ユニットと;
・前記空気ポンプ装置を制御するように構成された制御デバイスと;
・前記捕捉された音響信号をさらに処理するように構成された処理デバイスとをさらに備える、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項4】
・前記少なくとも2つのポンプは、圧電膜ポンプとして形成され、それぞれ、少なくとも1つの流れ調整コンポーネントと流体的に直列に配置され、前記2つの圧電膜ポンプ(3a,3b)は互いに並列に配置され、
・前記空気圧制御手順を適用するときに前記2つの圧電膜ポンプが双方向に稼働することができるように、前記少なくとも1つの流れ調整コンポーネントは前記空気ポンプ装置内に構成され、配置される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項5】
・前記少なくとも2つのポンプが第1のポンプおよび第2のポンプを含み、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプが互いに反対方向の極性である、
および/または
・前記少なくとも2つのポンプが圧電膜ポンプとして形成される、
および/または
・前記空気ポンプ装置は、前記少なくとも2つのポンプ、好ましくは圧電膜ポンプが、前記外耳道内の前記空気圧制御手順内の前記空気圧レベルを制御するために同時に稼働できるように構成される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項6】
・前記少なくとも2つのポンプ(3a,3b)は、それぞれ特に流れ抵抗器の形の少なくとも1つの流れ調整コンポーネントと流体的に直列に配置された圧電膜ポンプ(3a,3b)として形成され、
・前記2つの圧電膜ポンプ(3a,3b)は互いに並列に配置される、
請求項5に記載の音響測定デバイス。
【請求項7】
・前記空気ポンプ装置は、第1の流れ抵抗器と流体的に直列の第1の圧電膜ポンプと、第2の流れ抵抗器と流体的に直列の第2の圧電膜ポンプとを設けており、前記第1の圧電膜ポンプと前記第2の圧電膜ポンプは互いに並列に配置され、
・前記空気ポンプ装置は、前記第1の流れ抵抗器と前記第2の流れ抵抗器との間の圧力が前記耳の前記外耳道において制御されることができるように構成され、配置され、
・前記空気ポンプ装置は、それにより、前記第1および前記第2の圧電膜ポンプにおける入口圧力および出口圧力を維持および調節することによって、特に本質的には電圧の分圧器に類似した仕方で作用する、
請求項6に記載の音響測定デバイス。
【請求項8】
・前記耳プローブに音響マフラーが設けられて配置され、
・前記音響マフラーは、特に流れ抵抗器の形の前記流れ調整コンポーネントをなすように構成され、前記空気ポンプ装置からのノイズを減衰させるように構成されており、
・前記音響マフラーは、特に、音響ノイズを減衰させるように構成され、流れ抵抗器の様式で作用する、細い管および空洞のネットワークからなる、
請求項3に記載の音響測定デバイス。
【請求項9】
・前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、前記手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを維持する形で前記空気圧制御手順を適用するように構成され、
・前記空気圧レベルは、-600ないし+400daPaの範囲にある、
および/または
・前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、前記手順の間、空気圧レベルを変化させることを実行する形で、前記空気圧制御手順を適用するように構成され、前記手順の間に空気圧レベルを変化させることは約-600daPaないし+400daPaの間の範囲であり、
・特に、前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、調節可能な空気圧掃引速度で前記空気圧レベルを変化させることを実行するように構成される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項10】
・当該音響測定デバイスは、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて前記空気ポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、前記空気圧制御手順の第1の圧力制御手順に反応して、前記患者の中耳を表す音響特性値を提供するように構成され、
・前記第1の圧力制御手順は特に、前記手順の間に空気圧レベルを変化させることを実行することを含み、前記第1の圧力制御手順の間に前記空気圧レベルを変化させることは約-600daPaないし+400daPaの間の範囲であり、
・特に、前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、調節可能な空気圧掃引速度で前記空気圧レベルを変化させることを実行するように構成され、
・当該音響測定デバイスは、特に、ティンパノメーターとして作用するように構成される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項11】
・当該音響測定デバイスは、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて前記空気ポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、前記空気圧制御手順の第2の圧力制御手順に反応して、前記患者の内耳を表す音響特性値を提供するように構成され、
・前記第2の圧力制御手順は、特に、前記手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを実行および維持することを含み、
・実行される前記本質的に単一の空気圧レベルは、特に、-600ないし+400daPaの範囲内にあり、
・当該音響測定デバイスは、特に、加圧音響反射測定のための聴覚診断機器として機能するように構成される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項12】
・当該音響測定デバイスは、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて前記空気ポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、前記空気圧制御手順の第3の圧力制御手順に反応して、前記患者の内耳を表す音響特性値を提供するように構成され、
・前記第3の圧力制御手順は、特に、前記手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを実行および維持することを含み、
・実行される前記本質的に単一の空気圧レベルは、-600ないし+400daPaの範囲内にあり、
・当該音響測定デバイスは、特に、耳音響放射測定のための聴覚診断機器として作用するように構成される、
請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項13】
当該音響測定デバイスは、前記空気ポンプ装置を制御するように構成された制御デバイスを有する、請求項1に記載の音響測定デバイス。
【請求項14】
患者の耳、特に人間の耳の少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを提供するように構成された診断機器装置であって、
・請求項1ないし13のうちいずれか一項に記載の音響測定デバイスと;
・前記捕捉された音響信号をさらに処理して評価デバイスに渡すように構成された処理デバイスとを有しており、前記評価デバイスは、前記空気圧制御手順に関連付けられた処理された音響信号に対して評価プロセスを実行して、前記患者の耳についての前記少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを得るように構成される、
診断機器装置。
【請求項15】
当該診断機器装置は、スタンドアローンデバイスに機械的に接続可能である、および/またはモバイル端末デバイス、特にタブレットまたはスマートフォンを介して操作される、請求項14に記載の診断機器装置。
【請求項16】
請求項1に記載の音響測定デバイスおよび/または請求項14に記載の診断機器装置を使用する、客観的耳状態評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、患者の耳の客観的耳状態評価のための音響特性値を提供するように構成された音響測定デバイスに関し、音響測定デバイスの少なくとも一部は、患者の外耳道内に配置されるように構成され、外耳道内で静止位置をとるように構成されている。音響測定デバイスは耳プローブを有し、音響測定デバイスは空気ポンプ装置を有する。空気ポンプ装置は、少なくとも静止位置において、耳プローブを介して延びる少なくとも1つの管を通して外耳道と流体連通している。空気ポンプ装置は、静止位置において、患者の耳の鼓膜を通じて少なくとも1つの空気圧レベルからなる空気圧制御手順を適用するように構成され、音響測定デバイスは、静止位置において、患者の耳の鼓膜を通じてポンプ装置によって適用される空気圧制御手順に反応して音響特性値を提供するように構成される。
【0002】
本願はさらに、患者の耳の少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを提供するように構成された診断機器装置であって、本願による音響測定デバイスを備え、外耳道内の空気圧レベルを表す音響信号を取り込むように構成された音響入力ユニットと、ポンプ装置を制御するように構成された制御デバイスと、捕捉された音響信号をさらに処理して評価デバイスに渡すように構成された処理デバイスとを備え、評価デバイスは、空気圧制御手順に関連する処理された音響信号に対して評価プロセスを実行して、患者の耳についての前記少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを取得するように構成されている、診断機器装置に関する。
【0003】
さらに、本願は、本願による診断機器装置を使用する客観的耳状態評価方法に関する。
【背景技術】
【0004】
音響測定デバイスおよび診断機器装置は、たとえばティンパノメトリー診断方法、加圧音響反射測定(pressured acoustic-reflex measurement)のための診断方法、または耳音響放射測定(otoacoustic-emission measurement)のための診断方法から、当技術分野で知られている。聴覚診断のために当技術分野で知られているこれらの機器は、従来、ピストン・ポンプ、蠕動ポンプ、または歯車ポンプを利用する。これらのポンプは、電気モーターによって駆動されることを特徴とし、ある一定のパワーでモーターを動作させることは、一定の容積変位速度を生成する。
【0005】
これらのポンプは、たとえばIEC60645-5(2005)においていくつかの診断タイプの機器のために標準化されているように、空気圧制御手順を実行するときに適切な性能を提供し、それにより、絶対周囲圧力(約10132.5daPa)に対してかなり小さい圧力差領域(600daPaまでの大きさを有する)内で――ティンパノメトリーの場合であっても――動作し、通例、調整を全くまたはほとんど必要としない、ほぼ一定速度の圧力掃引をもたらす。
【0006】
しかしながら、これらのポンプは、それらの機械的複雑さ、それらの大きいサイズ、および圧力が変化する前に移動する必要がある内部質量に起因するそれらの比較的遅い応答性などのいくつかのあまり望ましくない特性を有する。特に、ピストン・ポンプの適用に関して、それぞれの音響測定デバイスは、さらに、その内在的な変位限界に悩まされる。
【0007】
したがって、既知の音響測定デバイスおよびそれらの空気ポンプ装置に伴う上述の課題の少なくともいくつかに対処する解決策を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本願の目的は、上述したような音響測定デバイスおよび診断機器装置であって、上述した欠点を示さないか、または少なくともそれらをより少ない程度に示し、特に、音響測定デバイスのための省スペース設計を提供するものを提供することである。それは、たとえば診断中の音響測定デバイスおよび機器装置の扱いに関する全体的な労力を低減し、そのようなデバイスの簡単な製造を容易にするが、同時に、患者の耳の客観的な耳状態評価のための信頼できる結果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1の前提部に記載の音響測定デバイスから始まり、請求項1の特徴部の事項によって達成される。上記の目的はさらに、請求項14に記載の診断機器装置によって達成され、請求項16に記載の客観的耳状態評価方法によっても達成される。
【0010】
本願は、より省スペースの設計が、たとえば、それぞれの機器のより扱いやすい操作をもたらすという技術的教示に基づいている。さらに、これまで客観的音響測定の分野で適用されてきた既知のポンプ構成(たとえば、ピストン・ポンプ、蠕動ポンプ、または歯車ポンプ)の代わりに、膜ポンプ(ダイヤフラム・ポンプとしても知られる)構成が使用される場合、客観的耳状態評価のための信頼できる結果を達成することができる。膜ポンプ構成は、(好ましくは)圧電膜ポンプ構成(たとえば、小型圧電膜ポンプ構成)として形成されてもよい。
【0011】
この代替タイプのポンプ、すなわち膜ポンプ、特に小型圧電膜ポンプの形のポンプは、一般に、弾性要素、特に膜を、調和運動で変位させることによって動作する。
【0012】
通例、その通常の適用分野では、このポンプは、この振動変位を、前半サイクル中に入口を通って入り、後半サイクル中に出口を通って出る空気流に変えるために、内部逆止弁(すなわち、一方の方向の流れを許容するが、他方の方向の流れは許容しない)に頼る。よって、これらの種類の膜ポンプは、本来的に一方向性であることが知られており、方向性は、逆止弁の配向によって規定される。
【0013】
よって、ある側面によれば、本願は、患者の耳、特に人間の耳の客観的な耳状態評価のための音響特性値を提供するように構成された音響測定デバイスであって、前記音響測定デバイスの少なくとも一部が、前記患者の外耳道内に配置されるように構成され、前記外耳道内で静止位置をとるように構成され、前記音響測定デバイスは耳プローブを備え、前記音響測定デバイスは空気ポンプ装置を備え、前記空気ポンプ装置は、少なくとも前記静止位置において、前記耳プローブを介して延びる少なくとも1つの管を通じて前記外耳道と流体連通しており、前記空気ポンプ装置は、前記静止位置において、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて少なくとも1つの空気圧レベルからなる空気圧制御手順を適用するように構成され、前記音響測定デバイスは、前記静止位置において、前記患者の前記耳の鼓膜を通じて前記ポンプ装置によって適用される前記空気圧制御手順に反応して音響特性値を提供するように構成される、音響測定デバイスに関する。
【0014】
前記空気ポンプ装置は、少なくとも2つのポンプを備え、前記少なくとも2つのポンプは、膜の形の可動要素を備える。
【0015】
たとえば、提供される音響特性値は、前記患者の前記耳の鼓膜に対する音響インピーダンスを表す値を含む。
【0016】
たとえば、提供される音響特性値は、前記患者の前記耳の鼓膜に対する音響アドミタンスを表す値を含む。
【0017】
たとえば、提供される音響特性値は、吸光度を表す値を含む。
【0018】
この場合、音響測定デバイスはティンパノメーターとして作用し、ティンパノグラムを得ることができる。
【0019】
たとえば、提供される音響特性値は、耳音響放射を表す値を含む。
【0020】
本願による音響測定デバイスは、人間の耳についての客観的な耳状態評価のための音響特性値を提供するのに特に適しているが、本願はこれに限定されない。本願によるデバイスおよび機器の概念は、動物の客観的な耳状態評価にも同様に適用できる。
【0021】
基本的に、ポンプ装置の各ポンプの膜は、任意の好適な仕方で形成されうる。前記少なくとも2つのポンプが、空気圧制御手順を適用するための膜ポンプとして作用するように構成されている場合、特にそれらが膜ポンプとして形成されている場合、ポンプ装置のコンパクトさおよびサイズ縮小の点で、非常に有益な構成が達成できる。それらの小型サイズは、デバイスのより容易な扱いを許容し、その結果、本願による機器全体のより容易な扱いを許容する。
【0022】
本願の好ましい変形では、音響測定デバイスは、外耳道内の空気圧レベルを表す音響信号を捕捉するように構成された音響入力ユニットをさらに備える。音響測定デバイスは、空気ポンプ装置を制御するように構成された制御デバイスを備えることができる。たとえば、制御デバイスは、空気ポンプ装置を制御するための任意の形の調整アルゴリズム/コントローラを備えてもよい。たとえば、制御デバイスは、特に、たとえば一定の圧力掃引速度を実行するための調整アルゴリズムを使用して、空気ポンプ装置を制御するための比例‐積分‐微分(PID)コントローラを備えていてもよい。これは、音響測定デバイスがティンパノメトリーで使用される場合に特に有益である。調整アルゴリズムは、音響入力ユニットに近い圧力センサーによって測定された空気圧に基づいてもよい。音響測定デバイスは、捕捉された音響信号をさらに処理するように構成された処理デバイスをさらに備えることができる。
【0023】
本願のさらなる好ましい変形では、前記少なくとも2つのポンプは、圧電膜ポンプとして形成される。圧電膜ポンプはそれぞれ、少なくとも1つの流れ調整コンポーネントと流体的に直列に配置されてもよく、それらは、流体的に並列に作用する。ここで、前記空気圧制御手順を適用するときに少なくとも1つの圧電膜ポンプが双方向に稼働することができるように、流れ調整コンポーネントのそれぞれは空気ポンプ装置内に構成され、配置されてもよい。
【0024】
ここで、本願の非常に有益な変形では、前記少なくとも2つのポンプが第1のポンプおよび第2のポンプを含み、第1のポンプおよび第2のポンプが互いに反対方向の極性であることが提供される。
【0025】
よって、換言すれば、空気ポンプ装置は、好ましくは(小型)圧電膜ポンプである前記少なくとも2つのポンプが、外耳道内の空気圧制御手順内の空気圧レベルを制御するために同時に稼働することができるように構成されてもよい。
【0026】
上記の構成における流れ調整コンポーネントは、流れ抵抗器として形成されてもよい。
【0027】
本願のいくつかの好ましい変形では、空気ポンプ装置は、第1の流れ抵抗器と流体的に直列の第1の圧電膜ポンプと、第2の流れ抵抗器と流体的に直列の第2の圧電膜ポンプとを提供する。空気ポンプ装置は、第1の流れ抵抗器と第2の流れ抵抗器との間の圧力がそれぞれの耳の外耳道において制御されうるように構成され、配置されてもよい。それにより、空気ポンプ装置は、第1および第2の圧電膜ポンプにおける入口圧力および出口圧力を維持および調節することによって、電圧の分圧器に類似した仕方で本質的に作用することができる。
【0028】
本願のさらなる好ましい変形は、耳プローブに設けられて配置される音響マフラーを含む。たとえば、音響マフラーは、空気ポンプ装置によって生成された音響ノイズが外耳道に入って進行中の音響測定に干渉するのを防ぐよう、減衰させることができる。音響マフラーは、好ましくは流れ抵抗器の形で、上述の流れ調整コンポーネントを構成するように構成されてもよい。たとえば、音響マフラーは、音響ノイズを減衰させるように構成され、流れ抵抗器の様式で作用する、細い管および空洞のネットワークから成っていてもよい。
【0029】
本願のある種の好ましい変形では(たとえば、音響測定デバイスがティンパノメトリーのために使用され、よってティンパノメーターの形で作用するとき)、その空気ポンプ装置は、患者の耳の中の静止位置において、手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを維持する形で空気圧制御手順を適用するように構成される。従来、空気圧レベルは、-600から+400daPaの範囲にある。
【0030】
加えて、または代替として、空気ポンプ装置は、静止位置において、手順中の変化する空気圧レベルを約-600daPaから+400daPaの間の範囲として、それぞれの手順中に変化する空気圧レベルを実行する形で、空気圧制御手順を適用するように構成されてもよい。そのような場合、好ましくは、それぞれの手順は、IEC60645-5(2005)に従って、異なる機器タイプについて空気圧を変化させる標準化された手順に従う。たとえば、空気ポンプ装置は、静止位置において、調節可能な空気圧掃引速度でこれらの変化する空気圧レベルを実行するように構成されてもよい。それにより、膜ポンプ、特に小型圧電膜ポンプの形の膜ポンプを使用するおかげで、信頼できる仕方で、それでいて、より扱いやすくコンパクトな音響測定デバイスを用いてティンパノグラムを得ることができる。
【0031】
音響測定デバイスは、患者の耳の鼓膜を通じて前記空気ポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、空気圧制御手順の第1の圧力制御手順に反応して、患者の中耳を表す音響特性値を提供するように構成されてもよい。
【0032】
第1の圧力制御手順は、手順中に約-600daPaから+400daPaの間の範囲で空気圧レベルを変化させることを実行することを含むことができる。ここで、提供される音響特性値は、診断されるべきそれぞれの耳の患者の鼓膜に対する音響インピーダンスを表す値であってもよい。ティンパノメトリーのためのそのような構成では、空気ポンプ装置は、静止位置において、調節可能な空気圧掃引速度で空気圧レベルを変化させることを実行するように構成されてもよい。好ましくは、ここでも、空気ポンプ装置は、IEC60645-5(2005)による標準化された手順に従って空気圧掃引速度を実行することができる。
【0033】
追加的または代替的に、音響測定デバイスは、患者の耳の鼓膜を通じてポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、空気圧制御手順の第2の圧力制御手順に反応して、患者の内耳を表す音響特性値を提供するように構成されてもよい。
【0034】
第2の圧力制御手順は、手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを実行および維持することを含みうる。実行される本質的に単一の空気圧レベルは、-600から+400daPaの範囲内にあってもよい。音響測定デバイスは、加圧音響反射測定のための聴覚診断機器として機能するように構成されてもよい。
【0035】
追加的または代替的に、音響測定デバイスは、患者の耳の鼓膜を通じてポンプ装置の前記少なくとも2つのポンプによって適用される、空気圧制御手順の第3の圧力制御手順に反応して、患者の内耳を表す音響特性値を提供するように構成されてもよい。第3の圧力制御手順は、手順の間、本質的に単一の空気圧レベルを実行および維持することを含みうる。実行される本質的に単一の空気圧レベルは、-600から+400daPaの範囲内にあってもよい。音響測定デバイスは、耳音響放射測定のための聴覚診断機器として作用するように構成されてもよい。
【0036】
さらなる側面によれば、本願は、患者の耳、特に人間の耳の少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを提供するように構成された診断機器装置に関する。診断機器装置は、上述のような本願による構成または変形のいずれかによる音響測定デバイスを備える。さらに、音響入力ユニットが設けられ、外耳道内の空気圧レベルを表す音響信号を捕捉するように構成される。さらに、上述したような本願による構成または変形のいずれかによるポンプ装置を制御するように構成された制御デバイスが提供される。最後に、診断機器装置は、捕捉された音響信号をさらに処理して評価デバイスに渡すように構成された処理デバイスを備え、評価デバイスは、空気圧制御手順に関連付けられた処理された音響信号に対して評価プロセスを実行して、前記患者の耳の前記少なくとも1つの客観的耳状態パラメータを得るように構成される。
【0037】
診断機器装置は、スタンドアローンデバイスに機械的に接続可能であってもよく、および/またはモバイル端末デバイス、特にタブレットまたはスマートフォンを介して操作されてもよい。
【0038】
さらなる側面によれば、本願は、上記のような本願の構成または変形のいずれか1つによる音響測定デバイスをもつ上述した診断機器装置を使用する、客観的耳状態評価方法に関する。
【0039】
音響測定デバイスは、少なくとも1つのポンプ(1つだけのポンプなど)を備える前記空気ポンプ装置を備えることができ、前記少なくとも1つのポンプは、膜の形の可動要素を備えることが考えられている。さらに、前記空気ポンプ装置は、1つまたは2つの流れ調整コンポーネントなど、少なくとも1つの流れ調整コンポーネントを備えることができる。
【0040】
本願のさらなる好ましい変形は、従属請求項、ならびに添付の図面を参照する音響測定デバイスおよび機器装置の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本願による例示的な音響測定デバイスを示す。
図2】最大出力で運転される典型的な膜ポンプの典型的な圧力‐流量関係を示す。
図3】対応電気回路の、本願による例の概略図を示す。2つの膜ポンプが、電源によって表されており、キャパシタによって表される外耳道の容積に接続されており、それぞれ流れ抵抗器と直列になっている。接地は周囲圧力を表す。
図4】2つの膜ポンプを使用してティンパノメトリー空気圧手順を生成することの、本願による例の概略図を、外耳道圧(上)、圧力レート(中)、および2つのポンプの相対ポンプ・パワー(下)を用いて示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本願による例示的な空気ポンプ装置2を備える音響測定デバイス1の例が示され、説明される。空気ポンプ装置2は、第1および第2のポンプを備えることができる。第1および/または第2のポンプは、膜ポンプであってもよい。たとえば、第1および/または第2のポンプは、圧電膜ポンプであってもよい。たとえば、第1および/または第2のポンプは、小型圧電膜ポンプであってもよい。音響測定デバイス1は、診断機器装置(ここではさらに図示せず)において使用されうる。
【0043】
図1では、音響測定デバイス1の空気ポンプ装置2が、第1の流れ抵抗器4aと流体的に直列の第1のポンプ3a(たとえば、小型圧電膜ポンプ)と、第2の流れ抵抗器4bと流体的に直列の第2のポンプ3b(たとえば、小型圧電膜ポンプ)とを提供することが示されている。空気ポンプ装置2は、それぞれの耳の外耳道内で第1の流れ抵抗器4aと前記第2の流れ抵抗器4bとの間の圧力が制御できるように構成され、配置される。それにより、空気ポンプ装置2は、第1および第2のポンプ3a、3bにおける入口圧力および出口圧力を維持および調節することによって、本質的に電圧の分圧器と同様に作用する。
【0044】
さらに、図1では、前記音響測定デバイス1の少なくとも一部が、患者6の外耳道5内に配置され、前記外耳道5内で静止位置をとるように構成されうることが示されている。音響測定デバイス1は、前記外耳道5内に少なくとも部分的に配置された耳プローブ7を備えてもよい。
【0045】
耳プローブ7は、耳プローブ本体9に取り外し可能に取り付けられうるイヤーチップ8を備えうる。耳プローブ7が外耳道5に挿入され(そして静止位置をとる)とき、イヤーチップ8は、外耳道5の外耳道壁10に向かって気圧シールを提供することができる。耳プローブ7は、外耳道5内に位置する2つの矢印によって示されるように、鼓膜11に向かう方向で患者6の耳に刺激を提供し、前記刺激の反射された部分を受信する(すなわち、音響信号を捕捉する)ことができる。
【0046】
音響測定デバイス1は、前記ポンプ装置2を制御するように構成された制御デバイス12をさらに備えることができる。
【0047】
音響測定デバイス1は、前記捕捉された音響信号を処理するように構成された処理デバイス13をさらに備えることができる。前記処理デバイス13の評価デバイスは、前記患者6の耳の少なくとも1つの客観的な耳状態パラメータを得るために、空気圧制御手順に関連する前記処理された音響信号に対して評価プロセスを実行するように構成されてもよい。
【0048】
好ましくは、音響測定デバイス1は、ティンパノメトリーのために使用され、よって、ティンパノメーターの形で作用する。しかしながら、加えて、音響測定デバイス1はまた、加圧音響反射測定のための診断方法、または耳音響放射測定のための診断方法を実行するように構成されてもよい。
【0049】
空気ポンプ装置2は、手順中に本質的に単一の空気圧レベルを維持する形で空気圧制御手順を適用するように構成されてもよい。たとえば、空気圧レベルは、-600から+400daPaの範囲にある。
【0050】
加えて、空気ポンプ装置2は、約-600daPaから+400daPaの範囲で手順中に空気圧レベルを変化させながら、それぞれの手順中に空気圧レベルを変化させることを実行する形で、空気圧制御手順を適用するように構成されてもよい。空気ポンプ装置2は、IEC60645-5(2005)に従って異なる機器タイプについて空気圧を変化させる標準化された手順を実行することが可能であってもよく、これは、以下で図2図4との関連で例として説明される。
【0051】
図2には、最大出力で動作する当技術分野で知られている単一膜ポンプ(本明細書では3aまたは3b)の最大圧力P(max)と最大流量Umaxとの間の典型的な関係が示されている。ポンプに供給されるパワーを減少させると、この線形関係に平行なオフセットが生じる。
【0052】
図3は、対応電気回路による音響測定デバイス1の空気ポンプ装置2の動作原理を示している。2つの膜ポンプ3a、3bは、電源によって表され、キャパシタCecによって表される外耳道の容積に接続され、それぞれ流れ抵抗器4a、4bの形の流れ調整コンポーネントと直列である。接地14は周囲圧力を表す。
【0053】
それぞれが1つの逆止弁と流体的に直列である2つの膜ポンプが決して同時に動作しない通常の膜ポンプ装置とは異なり、図3に示されるような空気ポンプ装置2は、膜ポンプ3a、3bとして形成される2つの膜ポンプの同時動作に基づく。
【0054】
空気ポンプ装置2のこの構成は、(流れ抵抗器がない場合と比較して)系を通る総流量を制限するが、それぞれ膜ポンプ3aおよび3bの出口および入口における圧力、よって抵抗器4a、4bを通る流量を維持および調節することによって、電圧の分圧器に類似した仕方で、2つの流れ抵抗器4a、4bの間、すなわち外耳道内の圧力を正確に制御することを許容する。すなわち、外耳道内の一定の空気圧を維持することは、1つの膜ポンプ(3aまたは3b)を連続的に動作させることを要求する。
【0055】
これは、一定の外耳道圧を維持することが単にポンプを停止することを要求する、ピストン・ポンプ、蠕動ポンプ、および歯車ポンプのような、音響測定デバイスにおいて使用される従来技術のポンプとは反対である。
【0056】
特に、空気ポンプ装置2は、2つの流れ抵抗器4a、4bを通じて系内の圧力降下が生じるため、流れ方向における負の圧力降下に起因して膜ポンプ3a、3bを通る流れを制御することができない通常の膜ポンプに関連する問題を解決する。すなわち、各膜ポンプ3a、3bは、外耳道内の圧力にかかわらず、膜ポンプ3a、3bと流れ抵抗器4a、4bとの間の圧力の変化を生成することができ、外耳道と周囲との圧力差によって決定されるよりも大きな流れを抵抗器に強制的に流すことができる。
【0057】
流れ抵抗R1(流れ抵抗器4aに関連付けられる)およびR2(流れ抵抗器4bに関連付けられる)に依存して、膜ポンプ3aおよび3bをある一定のパワーで動作させることは、図2における圧力‐流量関係上の所与の動作点ならびに圧力P1およびP2をもたらす。各流れ抵抗器4aおよび4bの流れ抵抗R1およびR2が流量に依存しないと仮定することによって非線形効果を無視すると、系が定常状態にあるときの外耳道内の圧力Pecは、電圧の分圧器の式
Pec=(P1-P2)R2/(R1+R2)
に基づいて計算できる。
【0058】
よって、各膜ポンプ3a、3bへの駆動パワーを制御することによってP1およびP2を操作することにより、外耳道Pec内で任意の圧力が達成でき、この圧力は任意の方向に変更できる。
【0059】
各ポンプの圧力‐流量動作点は、パワーの突然の変化に応答して、定常状態が再び達成されるまで、一時的に変化するので、一定レートの外耳道圧Pec(t)を与えるポンプ駆動パワーを導出することは、より複雑である。圧力‐流量動作点が一定のままであり、ポンプ・パワーの変化がP1(t)またはP2(t)の比例した変化をもたらすと仮定すると、ポンプ駆動パワーのステップ変化から生じる外耳道圧力応答Pec(t)は、指数関数的減衰の形
Pec(t)=ae-bt+c
をとる。
定数a、b、およびcは、R1、R2、外耳道のコンプライアンスCec(その容積に反比例する)、ならびに圧力ステップ関数P1(t)およびP2(t)の初期値および最終値によって構成される数式である。その結果、一度に1つの膜ポンプ3aまたは3bのみを動作させるときに外耳道圧Pec(t)に線形変化を生じさせるのに必要な圧力P1(t)またはP2(t)は、すぐに計算できる。
【0060】
所与の近似および所与の外耳道容積を用いて、一定の圧力掃引速度をもつ外耳道圧を達成するために膜ポンプ3a、3bがどのように駆動されるべきかを予測することが可能であるが、変化する容積の外耳道における実際の適用は、調整アルゴリズムを必要とする。そのような場合、たとえば、PIDコントローラが、これらの一定の圧力掃引速度を達成するために使用される。たとえば、この調整アルゴリズムは、耳プローブに近い圧力センサーによって測定された空気圧に基づく。
【0061】
よって、音響測定デバイスは圧力センサーを備えてもよい。
【0062】
ティンパノグラムを生成するために必要とされる標準的な空気圧手順は、通例、3つの主要なステップからなる。
【0063】
第1に、空気ポンプ装置を使用して所望の開始圧力までポンピングする。鼓膜を通じた圧力差に関して、この開始圧力は、少なくとも、タイプ1の機器については-600~+200daPa、タイプ2およびタイプ3の機器については-200~+200daPaの範囲内でありうる(IEC60645-5(2005))が、機器は、しばしば、より広い圧力範囲、たとえば、-600~+400daPaをサポートする(図4を参照)。
【0064】
第2のステップは、開始圧力から反対の動作符号の停止圧力までの、daPa/sの単位での一定の圧力掃引速度(掃引の方向に依存して正または負)によって特定される圧力掃引を含む。タイプ1の機器は、0daPaの圧力差の点を通って、掃引の持続時間にわたって±10daPa/sの許容差で50daPa/sの一定の掃引速度を維持することができなければならない(IEC60645-5(2005))。中耳の音響測定値は、第2のステップのこの圧力掃引中に取得されうる。
【0065】
最後に、第3のステップとして、外耳道圧力は、患者の不快感を最小限にするよう、制御された仕方で周囲圧力に戻され、加圧手順を完結する。
【0066】
ティンパノメトリーで使用される他の空気圧手順は、手動ティンパノグラムを含んでいてもよい。手動ティンパノグラムでは、オペレーターが、中耳に対する音響変化を観察しながら、たとえばスライダーを使用して、外耳道内の圧力を調節する。
【0067】
ここで、図4は、小さな空洞におけるティンパノグラムの空気圧手順の上述の標準化された3ステップ・シーケンスを生じる、2つの膜ポンプ3a、3bおよび2つの(精密オリフィス)流れ抵抗器4a、4bを備えた音響測定デバイス1の適用を、圧力センサーによって測定された圧力(上)、圧力レート(中)、および2つの膜ポンプ3a、3bの相対的なポンプ駆動パワー(下)に関して、例示している。
【0068】
図4に示されるシーケンスは、調整アルゴリズムに基づくものではなく、代わりに、ポンプ駆動パワー曲線は、所与の空洞容積においてほぼ線形の圧力変化を生成するように、試行錯誤的な調節により事前定義された。外耳道の初期の線形加圧のためには膜ポンプ3aのみが必要であり、最後の線形減圧のためには膜ポンプ3bのみが必要であることが明らかである。0daPa点を横切る圧力掃引中の2つの膜ポンプ3a、3bの同時動作にも注目されたい。この例における圧力掃引のために、ポンプ3aの出力は、ある指定された時間にわたって線形に減少するように設定され、一方、ポンプ3bの出力は、線形圧力掃引を生成するように調節された。
【0069】
詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかにおいて上述したデバイス、装置、および機器の構造的特徴は、そのようなデバイス、装置、および機器を使用する客観的耳状態評価方法によって特許請求されるような対応するプロセスも説明しうることが意図される。
【0070】
特定の特徴、構造または特性は、本開示の一つまたは複数の実施形態において適宜組み合わされてもよい。先の説明は、当業者が本明細書で説明されたさまざまな側面を実施することを可能にするために提供される。これらの側面、変形、および構成に対するさまざまな修正が、当業者には容易に明らかになり、本明細書で定義される一般原理は、他の側面に適用されうる。
【0071】
よって、範囲は、以下の特許請求の範囲に関して判断されるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0072】
【非特許文献1】IEC 60645-5 (2005):IEC 60645-5, 2005 “Instruments for the measurement of aural acoustic impedance/admittance. (International Electrotechnical Commission, Geneva, Switzerland)”
【符号の説明】
【0073】
1 音響測定デバイス
2 空気ポンプ装置
3a 第1のポンプ
3b 第2のポンプ
4a 第1の流れ抵抗器
4b 第2の流れ抵抗器
5 外耳道
6 患者
7 耳プローブ
8 イヤーチップ
9 耳プローブ本体
10 外耳道壁
11 鼓膜
12 制御デバイス
13 処理デバイス
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】