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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029608
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131954
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 功二
(72)【発明者】
【氏名】塚本 功児
(72)【発明者】
【氏名】青山 友郎
(57)【要約】
【課題】スピンドルに対してハンマが傾斜することを抑制すること。
【解決手段】インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルとハンマとの間に配置される少なくとも3つのボールと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
少なくとも一部が前記モータよりも前方に配置され、前記モータにより回転されるスピンドルと、
前記スピンドルの周囲に配置されるハンマと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、前記ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、
前記スピンドルと前記ハンマとの間に配置される少なくとも3つのボールと、を備える、
インパクト工具。
【請求項2】
前記スピンドルは、前記ボールの少なくとも一部が配置されるスピンドル溝を有し、
前記ハンマは、前記ボールの少なくとも一部が配置されるハンマ溝を有し、
前記スピンドル溝は、前記ボールの数と同じ数だけ周方向に等間隔で設けられ、
前記ハンマ溝は、前記ボールの数と同じ数だけ周方向に等間隔で設けられる、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
前記スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるように前記スピンドルの内部に形成され、潤滑油が収容される内部空間と、
前記スピンドルの外周面に設けられ、前記内部空間からの前記潤滑油を供給する第1供給口と、を備える、
請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項4】
前記第1供給口は、前記スピンドルの外周面において前記スピンドル溝よりも後方に設けられる、
請求項3に記載のインパクト工具。
【請求項5】
前記第1供給口は、周方向に複数設けられる、
請求項3又は請求項4に記載のインパクト工具。
【請求項6】
前記スピンドルの前端部に設けられ、前記内部空間からの潤滑油を前記アンビルとの間に供給する第2供給口を備える、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のインパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。特許文献1に開示されているインパクト工具は、スピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、スピンドルとハンマとの間に配置されるボールとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-037560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インパクト工具を用いる例えばねじ締め作業において、アンビルに所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル及びハンマの回転が停止する。ハンマの回転が停止している状態でスピンドルが回転すると、ハンマとスピンドルとが摺動する。ハンマとスピンドルとが摺動するとき、スピンドルに対してハンマが傾斜してしまうと、ハンマとスピンドルとの摩擦力が局所的に増大し、その結果、ハンマ及びスピンドルの少なくとも一方が過度に摩耗したり焼き付いてしまったりする可能性がある。その結果、インパクト工具の寿命が短くなる可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、スピンドルに対してハンマが傾斜することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルとハンマとの間に配置されるボールと、を備えてもよい。ボールは、少なくとも3つ配置されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、スピンドルに対してハンマが傾斜することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す縦断面図である。
図4図4は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す横断面図である。
図5図5は、実施形態に係るインパクト工具の上部を示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係るインパクト工具の要部を示す分解斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るスピンドル及びハンマを示す正面図である。
図8図8は、実施形態に係るスピンドルを示す上面図である。
図9図9は、実施形態に係るスピンドルを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、モータと、少なくとも一部がモータよりも前方に配置され、モータにより回転されるスピンドルと、スピンドルの周囲に配置されるハンマと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ハンマにより回転方向に打撃されるアンビルと、スピンドルとハンマとの間に配置されるボールと、を備えてもよい。ボールは、少なくとも3つ配置されてもよい。
【0010】
上記の構成では、スピンドルとハンマとの間に少なくとも3つのボールが配置されるので、スピンドルに対してハンマが傾斜することが抑制される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、スピンドルは、ボールの少なくとも一部が配置されるスピンドル溝を有してもよい。ハンマは、ボールの少なくとも一部が配置されるハンマ溝を有してもよい。スピンドル溝は、ボールの数と同じ数だけ周方向に等間隔で設けられてもよい。ハンマ溝は、ボールの数と同じ数だけ周方向に等間隔で設けられてもよい。
【0012】
上記の構成では、少なくとも3つのボールのそれぞれは、スピンドル溝とハンマ溝との間を転がることができる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルの後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドルの内部に形成される内部空間を有してもよい。内部空間に潤滑油が収容されてもよい。スピンドルの外周面に内部空間からの潤滑油を供給する第1供給口が設けられてもよい。第1供給口は、スピンドルの外周面においてスピンドル溝よりも後方に設けられてもよい。
【0014】
上記の構成では、内部空間の潤滑油が第1供給口を介してスピンドルとハンマとの間に供給されるので、スピンドルとハンマとの摩耗が抑制される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第1供給口は、周方向に複数設けられてもよい。
【0016】
上記の構成では、第1供給口が周方向に複数設けられるので、スピンドルの外周面とハンマの内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、スピンドルの前端部に設けられ、内部空間からの潤滑油をアンビルとの間に供給する第2供給口を備えてもよい。
【0018】
上記の構成では、内部空間からの潤滑油が第2供給口を介してスピンドルとアンビルとの間に供給されるので、スピンドル及びアンビルの摩耗が抑制される。
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具1は、動力源としてモータ6を有する。
【0020】
実施形態において、モータ6の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0021】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0022】
[インパクト工具]
図1は、実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。図2は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す側面図である。図3は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す縦断面図である。図4は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す横断面図である。図5は、実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す断面図であり、図3のA-A線断面矢視図に相当する。
【0023】
実施形態において、インパクト工具1は、ねじ締め工具の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ハンマケース4と、ベアリングボックス24と、ハンマケースカバー51と、バンパ52と、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、工具保持機構11と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガレバー14と、正逆転切換レバー15と、インタフェースパネル16と、手元モード切換ボタン17と、ライトアセンブリ18とを備える。
【0024】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0025】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0026】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、ハンマケース4の少なくとも一部を収容する。モータ収容部21は、筒状である。
【0027】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガレバー14は、グリップ部22の上部に設けられる。
【0028】
バッテリ保持部23は、バッテリ装着部13を介してバッテリパック25を保持する。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0029】
リヤカバー3は、モータ収容部21の後端部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、ファン12の少なくとも一部を収容する。ファン12は、リヤカバー3の内側に配置される。リヤカバー3は、後側ロータベアリング37を保持する。リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、2本のねじ3Sによりモータ収容部21の後端部に固定される。
【0030】
モータ収容部21は、吸気口19を有する。リヤカバー3は、排気口20を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0031】
ハンマケース4は、減速機構7の少なくとも一部、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。ハンマケース4は、金属製である。実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4は、大筒部4Aと、小筒部4Bと、接続部4Cとを含む。小筒部4Bは、大筒部4Aよりも前方に配置される。大筒部4Aの前端部と小筒部4Bの後端部とは、接続部4Cを介して接続される。接続部4Cは、環状である。大筒部4Aの外径は、小筒部4Bの外径よりも大きい。大筒部4Aの内径は、小筒部4Bの内径よりも大きい。
【0032】
ベアリングボックス24は、減速機構7の少なくとも一部を収容する。ベアリングボックス24は、前側ロータベアリング38及びスピンドルベアリング44を保持する。ベアリングボックス24は、金属製である。ベアリングボックス24は、ハンマケース4の後部に固定される。ベアリングボックス24は、後側環状部24Aと、前側環状部24Bとを有する。前側環状部24Bは、後側環状部24Aよりも前方に配置される。後側環状部24Aの前端部と前側環状部24Bの後端部とは、接続部24Cを介して接続される。接続部24Cは、環状である。後側環状部24Aの外径は、前側環状部24Bの外径よりも小さい。後側環状部24Aの内径は、前側環状部24Bの内径よりも小さい。ベアリングボックス24とハンマケース4とは、ねじ部により固定されてもよいし、嵌め込み(軽合)により固定されてもよい。例えば、前側環状部24Bの外周部にねじ山が形成され、大筒部4Aの内周部にねじ溝が形成されてもよい。前側環状部24Bのねじ山と大筒部4Aのねじ溝とが結合されることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側環状部24Bが大筒部4Aに嵌め込まれることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定されてもよい。前側ロータベアリング38は、後側環状部24Aの径方向内側に配置される。スピンドルベアリング44は、接続部24Cの径方向内側に配置される。
【0033】
ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ハンマケース4の後部は、モータ収容部21に収容される。ハンマケース4は、モータ収容部21の前部に接続される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0034】
ハンマケースカバー51は、ハンマケース4を保護する。ハンマケースカバー51は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。ハンマケースカバー51は、大筒部4Aの外周面を覆うように配置される。
【0035】
バンパ52は、ハンマケース4を保護する。バンパ52は、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。バンパ52は、物体と接触したときの衝撃を緩和する。バンパ52は、小筒部4Bの周囲に配置される。
【0036】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0037】
ステータ26は、ステータコア28と、後側インシュレータ29と、前側インシュレータ30と、コイル31とを有する。
【0038】
ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0039】
後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30のそれぞれは、ステータコア28とコイル31とを電気的に絶縁する。後側インシュレータ29は、ステータコア28の後部に固定される。前側インシュレータ30は、ステータコア28の前部に固定される。後側インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。前側インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0040】
コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、後側インシュレータ29及び前側インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前側インシュレータ30及び後側インシュレータ29により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、ヒュージング端子36を介して接続される。
【0041】
ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア32と、ロータシャフト33と、ロータ磁石34Aと、センサ磁石34Bとを有する。
【0042】
ロータコア32及びロータシャフト33のそれぞれは、鋼製である。実施形態において、ロータコア32とロータシャフト33とは、一体である。ロータシャフト33の後部は、ロータコア32の後端面から後方に突出する。ロータシャフト33の前部は、ロータコア32の前端面から前方に突出する。
【0043】
ロータ磁石34Aは、ロータコア32に固定される。実施形態において、ロータ磁石34Aは、ロータコア32の周囲に配置される。センサ磁石34Bは、ロータコア32に固定される。実施形態において、センサ磁石34Bは、ロータコア32の前端面に配置される。
【0044】
前側インシュレータ30にセンサ基板35が取り付けられる。センサ基板35は、ねじ30Sにより前側インシュレータ30に固定される。センサ基板35は、円環状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。センサ基板35の少なくとも一部は、センサ磁石34Bの前端面に対向する。回転検出素子は、センサ磁石34Bの位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0045】
ロータシャフト33の後端部は、後側ロータベアリング37に回転可能に支持される。ロータシャフト33の前端部は、前側ロータベアリング38に回転可能に支持される。後側ロータベアリング37は、リヤカバー3に保持される。前側ロータベアリング38は、ベアリングボックス24に保持される。
【0046】
ロータシャフト33の前端部は、ベアリングボックス24の後側環状部24Aに設けられた開口を介してハンマケース4の内部空間に配置される。
【0047】
ロータシャフト33の前端部にピニオンギヤ41が固定される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0048】
減速機構7は、ロータシャフト33とスピンドル8とを連結する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、ステータ26よりも前方に配置される。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。
【0049】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。
【0050】
インターナルギヤ43は、ハンマケース4の大筒部4Aに固定される。インターナルギヤ43は、ハンマケース4に対して常に回転不可能である。
【0051】
モータ6の駆動によりロータシャフト33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0052】
図6は、実施形態に係るインパクト工具1の要部を示す分解斜視図である。図7は、実施形態に係るスピンドル8及びハンマ47を示す正面図である。図8は、実施形態に係るスピンドル8を示す上面図である。図9は、実施形態に係るスピンドル8を示す下面図である。
【0053】
スピンドル8は、モータ6により回転軸AXを中心に回転される。スピンドル8は、ロータ27により回転される。スピンドル8は、減速機構7を介して伝達されたロータ27の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の回転力を、ボール48及びハンマ47を介してアンビル10に伝達する。スピンドル8の少なくとも一部は、モータ6よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、アンビル10よりも後方に配置される。
【0054】
スピンドル8は、スピンドルシャフト部8Aと、第1フランジ部8Bと、第2フランジ部8Cと、連結部8Dと、スピンドル凸部8Fとを有する。
【0055】
スピンドルシャフト部8Aは、前後方向に長いロッド状である。スピンドルシャフト部8Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。第1フランジ部8Bは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の後端部から径方向外側に延びる。第2フランジ部8Cは、第1フランジ部8Bよりも後方に配置される。第2フランジ部8Cは、環状である。連結部8Dは、第1フランジ部8Bの一部と第2フランジ部8Cの一部とを連結する。スピンドル凸部8Fは、スピンドルシャフト部8Aの前端部から前方に突出する。ピン42Pの前端部は、第1フランジ部8Bに支持される。ピン42Pの後端部は、第2フランジ部8Cに支持される。プラネタリギヤ42は、第1フランジ部8Bと第2フランジ部8Cとの間に配置される。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介して第1フランジ部8B及び第2フランジ部8Cに回転可能に支持される。スピンドルベアリング44は、第2フランジ部8Cの後面から後方に突出するスピンドル8の筒状部8Eの内側に配置される。スピンドルベアリング44は、スピンドル8の筒状部8Eを保持する。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。
【0056】
打撃機構9は、モータ6により駆動される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。打撃機構9は、ハンマ47と、ボール48と、コイルスプリング49と、ワッシャ50とを有する。ハンマ47、ボール48、コイルスプリング49、及びワッシャ50を含む打撃機構9は、ハンマケース4の大筒部4Aに収容される。
【0057】
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、スピンドル8の周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部8Aに保持される。ボール48は、スピンドル8とハンマ47との間に配置される。
【0058】
ハンマ47は、ボディ部47Aと、外筒部47Bと、内筒部47Cと、ハンマ突起部47Dとを有する。ボディ部47Aは、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。ボディ部47Aは、環状である。外筒部47B及び内筒部47Cのそれぞれは、ボディ部47Aから後方に突出する。外筒部47Bは、内筒部47Cよりも径方向外側に配置される。ボディ部47Aの後面と外筒部47Bの内周面と内筒部47Cの外周面とにより凹部47Eが規定される。凹部47Eは、ハンマ47の後端部から前方に窪むように設けられる。凹部47Eは、リング状である。スピンドルシャフト部8Aは、ボディ部47A及び内筒部47Cよりも径方向内側に配置される。内筒部47Cは、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sに対向する内周面47Sを有する。外周面8Sと内周面47Sとは、接触する。なお、外周面8Sと内周面47Sとは、離隔してもよい。ハンマ突起部47Dは、ボディ部47Aから前方に突出する。ハンマ突起部47Dは、2つ設けられる。
【0059】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。
【0060】
ワッシャ50は、凹部47Eの内側に配置される。ワッシャ50は、複数のボール54を介してハンマ47に支持される。ボール54は、ワッシャ50よりも前方に配置される。ボール54は、ボディ部47Aの後面とワッシャ50の前面との間に配置される。
【0061】
コイルスプリング49は、スピンドルシャフト部8Aの周囲に配置される。コイルスプリング49の後端部は、第1フランジ部8Bに支持される。コイルスプリング49の前端部は、凹部47Eの内側に配置され、ワッシャ50に支持される。コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。
【0062】
ボール48は、鉄鋼のような金属製である。ボール48は、スピンドルシャフト部8Aとボディ部47Aとの間に配置される。スピンドルシャフト部8Aは、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Gを有する。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面の一部に設けられる。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Gを有する。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面の一部に設けられる。
【0063】
ボール48は、周方向に少なくとも3つ設けられる。スピンドル溝8Gは、ボール48の数と同じ数だけスピンドルシャフト部8Aの外周面に設けられる。ハンマ溝47Gは、ボール48の数と同じ数だけボディ部47A及び内筒部47Cの内周面に設けられる。実施形態において、ボール48は、周方向に3つ設けられる。スピンドル溝8Gは、スピンドルシャフト部8Aの外周面に3つ設けられる。ハンマ溝47Gは、ボディ部47A及び内筒部47Cの内周面に3つ設けられる。3つのスピンドル溝8Gは、周方向に等間隔で設けられる。3つのハンマ溝47Gは、周方向に等間隔で設けられる。
【0064】
以下の説明において、3つのボール48のそれぞれを、第1のボール48、第2のボール48、及び第3のボール48、と称する。3つのスピンドル溝8Gのそれぞれを、第1のスピンドル溝8G、第2のスピンドル溝8G、及び第3のスピンドル溝8G、と称する。3つのハンマ溝47Gのそれぞれを、第1のハンマ溝47G、第2のハンマ溝47G、及び第3のハンマ溝47G、と称する。
【0065】
第1のボール48は、第1のスピンドル溝8Gと第1のハンマ溝47Gとの間に配置される。第2のボール48は、第2のスピンドル溝8Gと第2のハンマ溝47Gとの間に配置される。第3のボール48は、第3のスピンドル溝8Gと第3のハンマ溝47Gとの間に配置される。ボール48は、スピンドル溝8Gの内側及びハンマ溝47Gの内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝8G及びハンマ溝47Gにより規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0066】
スピンドルシャフト部8Aの直径Daは、スピンドル凸部8Fの直径Dfの2倍以上4倍以下[2×Df≦Da≦2×Df]でもよいし、スピンドル凸部8Fの直径Dfの2.5倍以上3.5倍以下[2.5×Df≦Da≦3.5×Df]でもよい。実施形態において、スピンドルシャフト部8Aの直径Daは、スピンドル凸部8Fの直径Dfの約3倍である。
【0067】
図8及び図9に示すように、3つのスピンドル溝8Gのそれぞれは、中央スピンドル溝部800と、中央スピンドル溝部800から周方向一方側に向かって後方に傾斜する第1スピンドル溝部801と、中央スピンドル溝部800から周方向他方側に向かって後方に傾斜する第2スピンドル溝部802とを有する。図7に示すように、3つのハンマ溝47Gのそれぞれは、中央ハンマ溝部470と、中央ハンマ溝部470から周方向一方側に延びる第1ハンマ溝部471と、中央ハンマ溝部470から周方向他方側に延びる第2ハンマ溝部472とを有する。
【0068】
アンビル10は、モータ6よりも前方に配置される。アンビル10は、ロータ27の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力部である。アンビル10の少なくとも一部は、スピンドル8よりも前方に配置される。アンビル10の少なくとも一部は、ハンマ47よりも前方に配置される。アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。
【0069】
アンビル10は、アンビルシャフト部10Aと、アンビル突起部10Bとを有する。アンビルシャフト部10Aは、前後方向に長いロッド状である。アンビルシャフト部10Aの中心軸と回転軸AXとは、一致する。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部に設けられる。アンビル突起部10Bは、アンビルシャフト部10Aの後端部から径方向外側に突出する。アンビル突起部10Bは、2つ設けられる。
【0070】
アンビル10の前端面に工具孔10Cが設けられる。アンビル10の後端面にアンビル凹部10Dが設けられる。工具孔10Cは、アンビルシャフト部10Aの前端面から後方に延びるように形成される。工具孔10Cに先端工具が挿入される。先端工具は、アンビル10に装着される。アンビル凹部10Dは、アンビル10の後端面から前方に窪むように設けられる。アンビル凹部10Dにスピンドル凸部8Fが配置される。
【0071】
アンビル10は、アンビルベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの周囲に配置される。アンビルベアリング46とアンビルシャフト部10Aとの間にOリング45が配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bの内側に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の小筒部4Bに保持される。ハンマケース4は、アンビルベアリング46を介してアンビル10を支持する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部10Aの前部を回転可能に支持する。実施形態において、アンビルベアリング46は、前後方向に2つ配置される。
【0072】
アンビル突起部10Bの前方にワッシャ56が配置される。ワッシャ56は、アンビル突起部10Bの前面とハンマケース4との接触を抑制する。アンビルベアリング46の後方に支持部材57が配置される。支持部材57は、アンビルベアリング46の外輪の後面に接触するように配置される。支持部材57は、リング状である。支持部材57は、アンビルベアリング46が小筒部4Bから後方に抜けることを抑制する。支持部材57は、小筒部4Bの内周面に設けられた溝に配置される。
【0073】
ハンマ突起部47Dは、アンビル突起部10Bに接触可能である。ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0074】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えばねじ締め作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。コイルスプリング49の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48がスピンドル溝8G及びハンマ溝47Gのそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。ハンマ47は、ボール48から力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。
【0075】
上述のように、コイルスプリング49は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ47は、回転しながらアンビル突起部10Bに接触する。これにより、アンビル突起部10Bは、ハンマ47のハンマ突起部47Dにより回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0076】
工具保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。工具保持機構11は、アンビル10の工具孔10Cに挿入された先端工具を保持する。工具保持機構11は、先端工具を着脱可能である。
【0077】
ファン12は、モータ6のステータ26よりも後方に配置される。ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12は、ブッシュ12Aを介してロータシャフト33の後部に固定される。ファン12は、後側ロータベアリング37とステータ26との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト33と一緒に回転する。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0078】
バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリ装着部13は、バッテリパック25に接続される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリパック25は、バッテリ保持部23の前方からバッテリ装着部13に挿入されることにより、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部13から外される。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。
【0079】
トリガレバー14は、グリップ部22に設けられる。トリガレバー14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガレバー14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。
【0080】
正逆転切換レバー15は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー15は、作業者に操作される。正逆転切換レバー15が操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。
【0081】
インタフェースパネル16は、バッテリ保持部23に設けられる。インタフェースパネル16は、グリップ部22よりも前方側において、バッテリ保持部23の上面に設けられる。インタフェースパネル16は、操作ボタン16Aを有する。操作ボタン16Aは、1つでもよいし複数でもよい。実施形態において、操作ボタン16Aは、複数設けられる。作業者により操作ボタン16Aが操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。
【0082】
手元モード切換ボタン17は、トリガレバー14の上部に設けられる。手元モード切換ボタン17は、作業者に操作される。手元モード切換ボタン17が操作されることにより、モータ6の制御モードが切り換えられる。
【0083】
ライトアセンブリ18は、照明光を射出する。ライトアセンブリ18は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライトアセンブリ18は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライトアセンブリ18は、アンビル10に装着された先端工具及び先端工具の周辺を照明光で照明する。実施形態において、ライトアセンブリ18は、ハンマケース4の大筒部4Aの左側及び右側のそれぞれに配置される。
【0084】
スピンドル8は、内部空間60を有する。スピンドル8の後端面に開口が設けられる。内部空間60は、スピンドル8の後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドル8の内部に形成される。内部空間60に潤滑油が収容される。潤滑油は、グリス(grease)を含む。内部空間60の後端部には、スピンドル8の後端面の開口を介してピニオンギヤ41の前端部が挿入される。
【0085】
スピンドル8は、第1供給口81と、第2供給口82とを有する。
【0086】
第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面に設けられる。第1供給口81は、内部空間60からの潤滑油をスピンドル8とハンマ47との間に供給する。スピンドルシャフト部8Aの外周面において、第1供給口81は、スピンドル溝8Gよりも後方に設けられる。第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に潤滑油を供給する。第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの内部に形成された第1流路91を介して内部空間60に接続される。第1流路91は、内部空間60と第1供給口81とを接続するように、内部空間60から径方向外側に延びるように設けられる。スピンドル8の遠心力により、内部空間60に収容されている潤滑油は、第1供給口81に向かって第1流路91を流れる。内部空間60から第1流路91を介して第1供給口81に供給された潤滑油は、スピンドルシャフト部8Aの外周面8Sと内筒部47Cの内周面47Sとの間に供給される。
【0087】
上述のように、ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。摺動面である外周面8Sと内周面47Sとの間に潤滑油が供給されることにより、外周面8S及び内周面47Sの摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0088】
第1供給口81は、周方向に複数設けられる。実施形態において、第1供給口81は、2つ設けられる。周方向において、一方の第1供給口81の位置と他方の第1供給口81の位置とは、異なる。周方向において、一方の第1供給口81と他方の第1供給口81とは、180度だけ異なる位置に配置される。前後方向において、一方の第1供給口81の位置と他方の第1供給口81の位置とは、実質的に等しい。
【0089】
なお、周方向における一方の第1供給口81と他方の第1供給口81との相対角度は、一例である。また、第1供給口81は、2つでなくてもよく、1つでもよいし、3つ以上の任意の複数でもよい。
【0090】
第2供給口82は、スピンドル8の前端部に設けられる。第2供給口82は、内部空間60からの潤滑油をスピンドル8とアンビル10との間に供給する。内部空間60の前端部は、第2供給口82に接続される。実施形態において、第2供給口82は、スピンドル凸部8Fに設けられる。第2供給口82は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に潤滑油を供給する。内部空間60から第2供給口82に供給された潤滑油は、スピンドル凸部8Fの表面とアンビル凹部10Dの内面との間に供給される。
【0091】
[インパクト工具の動作]
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象にねじ締め作業を実施するとき、ねじ締め作業に使用される先端工具(ドライバビット)が、アンビル10の工具孔10Cに挿入される。ねじ締め作業を実施する場合、モータ6が正転するように正逆転切換レバー15が操作される。工具孔10Cに挿入された先端工具は、工具保持機構11により保持される。先端工具がアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を例えば右手で握ってトリガレバー14を右手の人差し指で引き操作する。トリガレバー14が引き操作されると、バッテリパック25からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動し、同時にライトアセンブリ18が点灯する。モータ6の起動により、ロータ27のロータシャフト33が回転する。ロータシャフト33が回転すると、ロータシャフト33の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0092】
ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとが接触している状態で、スピンドル8が回転(正転)すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、ねじ締め作業が進行する。アンビル10がハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転している場合、ボール48は、中央スピンドル溝部800と中央ハンマ溝部470との間に配置される。
【0093】
ねじ締め作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48は、第2スピンドル溝部802と第2ハンマ溝部472との間を転がりながら後方に移動する。ハンマ47は、ボール48からの力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0094】
ねじ外し作業においては、モータ6が逆転するように正逆転切換レバー15が操作される。ねじ外し作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ボール48は、第1スピンドル溝部801と第1ハンマ溝部471との間を転がりながら後方に移動する。ハンマ47は、ボール48からの力を受け、ボール48に伴って後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部47Dとアンビル突起部10Bとの接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング49の弾性力により、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。
【0095】
ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動する。実施形態においては、スピンドル8とハンマ47との間にボール48が3つ配置される。そのため、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとが摺動するとき、スピンドルシャフト部8Aに対してハンマ47が傾斜することが抑制される。スピンドルシャフト部8Aに対してハンマ47が傾斜することが抑制されるので、スピンドル8の外周面8Sとハンマ47の内周面47Sとの間の摩擦力が局所的に増大することが抑制される。
【0096】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、インパクト工具1は、モータ6と、少なくとも一部がモータ6よりも前方に配置され、モータ6により回転されるスピンドル8と、スピンドル8の周囲に配置されるハンマ47と、少なくとも一部がスピンドル8よりも前方に配置され、ハンマ47により回転方向に打撃されるアンビル10と、スピンドル8とハンマ47との間に配置されるボール48と、を備える。ボール48は、周方向に少なくとも3つ配置される。
【0097】
上記の構成では、スピンドル8とハンマ47との間に少なくとも3つのボール48が配置されるので、スピンドル8に対してハンマ47が傾斜することが抑制される。そのため、ハンマ47とスピンドル8との摺動において、ハンマ47とスピンドル8との摩擦力が局所的に増大することが抑制される。したがって、ハンマ47及びスピンドル8の少なくとも一方の過度な摩耗又は焼き付きが抑制される。
【0098】
スピンドル8に対してハンマ47が傾斜することを抑制するために、前後方向における内筒部47Cの長さを長くして、外周面8Sと内周面47Sとの接触面積を大きくする対応が考えられる。しかしながら、前後方向における内筒部47Cの長さを長くすると、インパクト工具1の全長が長くなってしまい、インパクト工具1を用いる作業性が低下する可能性がある。実施形態においては、スピンドル8とハンマ47との間においてボール48が周方向に少なくとも3つ配置されるので、前後方向における内筒部47Cの長さを長くしなくても、スピンドル8に対するハンマ47の傾斜が抑制される。すなわち、本実施形態によれば、インパクト工具1の全長が長くなることを抑制しつつ、スピンドル8に対してハンマ47が傾斜することを抑制することができる。なお、インパクト工具1の全長とは、前後方向におけるリヤカバー3の後端部とアンビル10の前端部との距離(長さ)をいう。
【0099】
実施形態において、スピンドル8は、ボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝8Gを有する。ハンマ47は、ボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝47Gを有する。スピンドル溝8Gは、ボール48の数と同じ数だけスピンドルシャフト部8Aの外周面において周方向に等間隔で設けられる。ハンマ溝47Gは、ボール48の数と同じ数だけハンマ47のボディ部47A及び内筒部47Cの内周面の一部において周方向に等間隔で設けられる。
【0100】
上記の構成では、少なくとも3つのボール48のそれぞれは、スピンドル溝8Gとハンマ溝47Gとの間を転がることができる。
【0101】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル8の後端面に設けられた開口から前方に延びるようにスピンドル8の内部に形成される内部空間60を有する。内部空間60に潤滑油が収容される。スピンドル8の外周面に内部空間60からの潤滑油を供給する第1供給口81が設けられる。第1供給口81は、スピンドル8の外周面においてスピンドル溝8Gよりも後方に設けられる。
【0102】
上記の構成では、内部空間60の潤滑油が第1供給口81を介してスピンドル8とハンマ47との間に供給されるので、スピンドル8とハンマ47との摩耗が抑制される。
【0103】
実施形態において、第1供給口81は、周方向に複数設けられる。
【0104】
上記の構成では、第1供給口81が周方向に複数設けられるので、スピンドル8の外周面とハンマ47の内周面との間に潤滑油が満遍なく供給される。
【0105】
実施形態において、インパクト工具1は、スピンドル8の前端部に設けられ、内部空間60からの潤滑油をスピンドル8とアンビル10との間に供給する第2供給口82を備える。
【0106】
上記の構成では、内部空間60からの潤滑油が第2供給口82を介してスピンドル8とアンビル10との間に供給されるので、スピンドル8及びアンビル10の摩耗が抑制される。
【0107】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、ボール48は、スピンドルシャフト部8Aとハンマ47との間において周方向に3つ配置されることとした。ボール48は、スピンドルシャフト部8Aとハンマ47との間において周方向に4つ配置されてもよいし、5つ配置されてもよいし、6以上の任意の数だけ配置されてもよい。
【0108】
上述の実施形態において、第1供給口81は、スピンドルシャフト部8Aの外周面においてスピンドル溝8Gよりも後方に設けられることとした。第1供給口81は、スピンドル溝8Gの後端部よりも前方に設けられてもよい。第1供給口81は、前後方向においてスピンドル溝8Gの後端部と前端部との間に設けられてもよい。
【0109】
上述の実施形態においては、インパクト工具1がインパクトドライバであることとした。インパクト工具1は、インパクトレンチでもよい。
【0110】
上述の実施形態において、インパクト工具1の電源は、バッテリパック25でなくてもよく、商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…インパクト工具、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、3S…ねじ、4…ハンマケース、4A…大筒部、4B…小筒部、4C…接続部、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…スピンドルシャフト部、8B…第1フランジ部、8C…第2フランジ部、8D…連結部、8E…筒状部、8F…スピンドル凸部、8G…スピンドル溝、8S…外周面、9…打撃機構、10…アンビル、10A…アンビルシャフト部、10B…アンビル突起部、10C…工具孔、10D…アンビル凹部、11…工具保持機構、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガレバー、15…正逆転切換レバー、16…インタフェースパネル、16A…操作ボタン、17…手元モード切換ボタン、18…ライトアセンブリ、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、24A…後側環状部、24B…前側環状部、24C…接続部、25…バッテリパック、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…後側インシュレータ、30…前側インシュレータ、30S…ねじ、31…コイル、32…ロータコア、33…ロータシャフト、34A…ロータ磁石、34B…センサ磁石、35…センサ基板、36…ヒュージング端子、37…後側ロータベアリング、38…前側ロータベアリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…Oリング、46…アンビルベアリング、47…ハンマ、47A…ボディ部、47B…外筒部、47C…内筒部、47D…ハンマ突起部、47E…凹部、47G…ハンマ溝、47S…内周面、48…ボール、49…コイルスプリング、50…ワッシャ、51…ハンマケースカバー、52…バンパ、54…ボール、56…ワッシャ、57…支持部材、60…内部空間、81…第1供給口、82…第2供給口、91…第1流路、470…中央ハンマ溝部、471…第1ハンマ溝部、472…第2ハンマ溝部、800…中央スピンドル溝部、801…第1スピンドル溝部、802…第2スピンドル溝部、AX…回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9