(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029613
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】軒樋支持具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E04D13/072 501S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131964
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】軒樋が取り付けられた状態でも軒樋の出具合の調整を簡易に行うことができる軒樋支持具を提供する。
【解決手段】縦回転操作ができるロックレバー30のロック操作がされたときには、ロックレバー30と取付部10とが膨出部11を介して圧接状態となることで突出部13が連続凹凸部23に係止される一方、ロックレバー30のアンロック操作がされたときには、ロックレバー30と取付部10との圧接状態が解除されて突出部13の係止が解除される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を吊り支持する樋支持具本体と、前記取付部に対向し、縦方向に回動されるロックレバーとを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、
前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされ、
前記取付部及び前記ロックレバーは、前記樋支持具本体の横方向の一方側に配されており、
前記取付部及び前記ロックレバーのうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に前記他方の部材側に突出する膨出部を有し、
前記樋支持具本体は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔と、該長孔に沿うように連続的に配された連続凹凸部とを横方向の一方側の面に備え、
前記樋支持具本体の横方向の一方側の面に隣接し、前記樋支持具本体に向けて突出している突出部が設けられ、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記取付部とが前記膨出部を介して圧接状態となることで前記突出部が前記連続凹凸部に係止される一方、
前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記取付部との圧接状態が解除されて前記突出部の係止が解除されることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付部は、横方向の他方側の面に前記突出部と、前記樋支持具本体の横方向の一方側の面に隣接するバネ片とを備え、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体に対して押圧されて弾性変形し、
前記ロックレバーがアンロック操作されたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体側への押圧が解除されることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項3】
請求項1において、
前記樋支持具本体と前記取付部との間に座金部材が配され、該座金部材が前記突出部と、前記樋支持具本体の横方向の一方側の面に隣接し、横方向の他方側に付勢するバネ片とを備え、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体側に押圧されて弾性変形し、
前記ロックレバーがアンロック操作されたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体側への押圧が解除されて弾性復帰することを特徴とする軒樋支持具。
【請求項4】
建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を吊り支持する樋支持具本体と、前記取付部に対向し、縦方向に回動されるロックレバーとを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、
前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされ、
前記取付部は前記樋支持具本体の横方向の一方側に配され、前記ロックレバーは前記樋支持具本体の横方向の他方側に配され、前記ロックレバーと前記樋支持具本体との間に座金部材が配されており、
前記座金部材及び前記ロックレバーのうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に前記他方の部材側に突出する膨出部を有し、
前記樋支持具本体は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔と、該長孔に沿うように連続的に配された連続凹凸部とを横方向の一方側の面に備え、
前記座金部材は、前記樋支持具本体に向けて突出している突出部を備え、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記座金部材とが前記膨出部を介して圧接状態となることで前記突出部が前記連続凹凸部に係止される一方、
前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記座金部材との圧接状態が解除されて前記突出部の係止が解除されることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項5】
請求項4において、
前記座金部材は、前記突出部の突出側に突出したバネ片を備え、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体に対して押圧されて弾性変形し、
前記ロックレバーがアンロック操作されたときには、前記バネ片は前記樋支持具本体側への押圧が解除されて弾性復帰することを特徴とする軒樋支持具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項において、
前記樋支持具本体は、前記長孔に略平行に設けられた、前記取付部と係合するガイド部を備えていることを特徴とする軒樋支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軒樋を吊り支持する軒樋支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の軒樋支持具として、軒先に固定された取付部の下側に樋支持具本体を配し、その樋支持具本体の前後方向の位置調整ができる、つまり軒樋の出具合調整をすることができる技術が数多く提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような出具合調整ができる軒樋支持具は、位置調整のための樋支持具本体の取付部に対する前後の移動と、樋支持具本体の取付部に対する固定との切り替えが自在とされている。通例では、例えば特許文献1のもののように、アンロック(移動可能な状態)/ロック(固定状態)を切り替え操作するためのロックレバーが設けられている。
【0004】
特許文献1の軒樋支持具は、樋支持具本体が長孔を介して取付部に対しスライド自在に取り付けられており、ロックレバーをアンロック操作すればスライド可能となる一方、ロックレバーをロック操作すれば適宜な位置で樋支持具本体を固定できるようになっている。
【0005】
特許文献1のものでは、横回転式のロックレバーが樋支持具本体の下側に設けてあるため、軒樋を取り付ける前に、より低い安全な位置で操作することができる。例えば、比較的低い位置で、樋支持具本体の真下で樋支持具本体を下から見上げるようにしてロックレバーを操作することもできる。
【0006】
このようにして、スライド調整により適正な前後方向の位置に樋支持具本体を配することで、複数の樋支持具本体に対し、軒樋を軒先からの適切な出具合位置に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このように軒樋の取り付け前に樋支持具本体の前後位置を定めるように軒樋支持具を取り付ける手順の場合、軒樋を取り付けた後に、事前に位置決めした樋支持具本体の前後位置の誤差やずれを調整したい場合がある。また、屋根の葺き替えなどにより、軒樋をそのままの状態にして出具合を再調整したい場合もある。
【0009】
しかし、このような場合には、ロックレバーが樋支持具本体の下側にある軒樋支持具では、軒樋がそのままの状態では、ロックレバーの操作がきわめてしにくくなるおそれがある。なお、このように再調整が必要な場合でもいったん軒樋を取り外せば、軒樋を新規に施工する場合と同様の手順で出具合調整をすることができるが、長尺状の軒樋の取り外し、再取り付けをしなければならないため、結果的に面倒な作業となるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、軒樋が取り付けられた状態でも軒樋の出具合の調整を簡易に行うことができる軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の軒樋支持具は、建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を吊り支持する樋支持具本体と、前記取付部に対向し、縦方向に回動されるロックレバーとを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされ、前記取付部及び前記ロックレバーは、前記樋支持具本体の横方向の一方側に配されており、前記取付部及び前記ロックレバーのうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に前記他方の部材側に突出する膨出部を有し、前記樋支持具本体は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔と、該長孔に沿うように連続的に配された複数の凹部とを横方向の一方側の面に備え、前記樋支持具本体の横方向の一方側の面に隣接し、前記樋支持具本体に向けて突出している突出部が設けられ、前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記取付部とが前記膨出部を介して圧接状態となることで前記突出部が前記凹部に係止される一方、前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記取付部との圧接状態が解除されて前記突出部の係止が解除されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の軒樋支持具は、建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を吊り支持する樋支持具本体と、前記取付部に対向し、縦方向に回動されるロックレバーとを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされ、前記取付部は前記樋支持具本体の横方向の一方側に配され、前記ロックレバーは前記樋支持具本体の横方向の他方側に配され、前記ロックレバーと前記樋支持具本体との間に座金部材が配されており、前記座金部材及び前記ロックレバーのうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に前記他方の部材側に突出する膨出部を有し、前記樋支持具本体は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔と、該長孔に沿うように連続的に配された連続凹凸部とを横方向の一方側の面に備え、前記座金部材は、前記樋支持具本体に向けて突出している突出部を備え、前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記座金部材とが前記膨出部を介して圧接状態となることで前記突出部が前記連続凹凸部に係止される一方、前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記座金部材との圧接状態が解除されて前記突出部の係止が解除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前述した構成とされているため、軒樋が取り付けられた状態で軒樋の出具合の調整を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図である。
【
図2】同軒樋支持具の要部の概略的側面図であり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示す図である。
【
図3】同軒樋支持具の要部の概略的横断面図であり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示図である。
【
図4】同実施形態の変形例に係る軒樋支持具の要部の概略的側面図である。
【
図5】第2実施形態に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図である。
【
図6】第3実施形態に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図である。
【
図7】(a)は取付部を有する取付部材の変形例を示す要部の模式的平面図であり、(b)は取付部を有する取付部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下には、軒樋50が取り付けられる、建築構造物の軒先壁面側から見た方向を基準として、前後、上下などの方向を記述している。
【0016】
まず、以下に説明する第1、第2の実施形態に係る軒樋支持具1、1Aの基本構成を記述する。
【0017】
軒樋支持具1、1Aは、建築構造物に固定される取付部10と、取付部10に対してスライド移動可能に連結された、軒樋50を吊り支持する樋支持具本体20と、取付部10に対向し、縦方向に回動されるロックレバー30とを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具Rで連結し、樋支持具本体20が取付部10に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした支持具である。
【0018】
この軒樋支持具1、1Aは、ロックレバー30の回転操作により、取付部10に対する樋支持具本体20のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされている。取付部10及びロックレバー30は樋支持具本体20の横方向の一方側に配されており、取付部10及びロックレバー30のうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に他方の部材側に突出する膨出部11を有している。
【0019】
樋支持具本体20は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔22と、長孔22に沿うように連続的に配された連続凹凸部23とを横方向の一方側の面に備え、樋支持具本体20の横方向の一方側の面に隣接し、樋支持具本体20に向けて突出している突出部13が設けられている。
【0020】
ロックレバー30のロック操作がされたときには、ロックレバー30と取付部10とが膨出部11を介して圧接状態となることで突出部13が連続凹凸部23に係止される一方、ロックレバー30のアンロック操作がされたときには、ロックレバー30と取付部10との圧接状態が解除されて突出部13の係止が解除されるようになっている。
【0021】
ついで、第1実施形態に係る軒樋支持具1の詳細について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は軒樋支持具1の模式的分解斜視図である。
図2は軒樋支持具1の要部の概略的側面図であり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示す図である。
図3は軒樋支持具1の要部の概略的横断面図であり、(a)はロック状態、(b)はアンロック状態を示す図である。
【0022】
この軒樋支持具1は前述したように、取付部10と樋支持具本体20とロックレバー30とを備えており、これらは取付部10、樋支持具本体20の後述する本体部21及びロックレバー30の後述する基板部32がこれらの順に重ねられて横方向に貫通するリベットRよりなる固定具で連結され、樋支持具本体20が取付部10に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにして用いられる。
【0023】
取付部10は、軒先壁面などに固定されるL字形状の取付部材5のうちの、軒先壁面から突出するように配される部位である。取付部材5はL字折曲状の板状体とされ、軒先の壁面に添設、固定される添設部6と、添設部6の端部より略垂直に延びる取付部10とを備えている。
【0024】
取付部材5は、
図1に示すように、取付部材5の全体が平面視でL字となるように、添設部6が横向きに延び、添設部6の上下に跨るように固定部材4が被せられて壁面にビスなどで固定され取り付けられる。このように取付部材5が壁面に取り付けられた状態では、取付部10の板面は横方向を向く。
【0025】
取付部10は、その前部にリベットR挿通用の丸孔15を有し、その丸孔15の前後の位置には、樋支持具本体20側に突出した板片状の突出部13が切り起こし形成されている。それぞれの突出部13の外側にはロックレバー30側に突出した膨出部11が形成されている。膨出部11は、上下方向に長く、幅方向の断面が
図3に示すように略半円状とされ、上下に延びる峰の長手方向の中央には半球小突起状のへそ部12を有している。
【0026】
また、膨出部11の上下には、樋支持具本体20側に突出した板片状のバネ片14が切り起こし形成されている。
図3(b)はバネ片14が弾性変形していない状態であり、この状態でバネ片14は斜め状に突出しており、
図3(a)のようにバネ片14が本体部21と取付部10との間で押圧されれば、弾性変形して傾斜度合いが小さくなり、本体部21側に付勢した状態となる。
【0027】
バネ片14は、弾性復帰状態にあるときには、
図3(b)に示すように、その突出程度は突出部13の突出程度と略同じであるか、あるいはそれよりも大きい。
【0028】
樋支持具本体20は、取付部材5の取付部10に対し前後方向にスライド移動自在に連結された本体部21と、軒樋50の前耳51を係止する前耳係止部27と、軒樋50の後ろ耳52を係止する後ろ耳係止部28とを備えている。
【0029】
本体部21は中空で下方に開口した前後方向に長い略直方体形状とされ、横方向を向く2面のそれぞれには同形状、同寸法の相対応した長孔22が形成され、そのうちの1つの長孔22の上下には、長手方向に沿う連続凹凸部23が形成されている。連続凹凸部23を有する面は取付部10との連結面とされ、その連結面の下端部には、樋支持具本体20の長手方向の端部から他の端部に延びる突条形状のガイド部24が形成されている。
【0030】
他の長孔22Aを有する面は非連結面とされ、他の長孔22Aの周囲には、樋支持具本体20がロック状態にあるときにリベットRの頭部R1に他の長孔22Aによるずれが生じないように、梨地などの滑り止め(不図示)が形成されていることが望ましい。
【0031】
図1に示すように、前耳係止部27は本体部21の前方に配され、後ろ耳係止部28は本体部21の後方に配され、いずれも樋支持具本体20のガイド部24よりも下側に脚部29を介した位置に設けてある。後ろ耳係止部28は、後ろ耳52を係止する際には後ろ耳52を誘導し、かついったん係止された後ろ耳52を外れにくくしたバネ板片28aを備えている。
【0032】
図1に例示した樋支持具本体20は、後ろ耳係止部28のバネ板片28aを除き、金属板の折り曲げ、溶接などの加工により、前耳係止部27と本体部21と後ろ耳係止部28とが一体に形成されている。
【0033】
ロックレバー30は、コ字折曲状の板状体とされ、基板部32と、基板部32の端部より折曲状に延び相対するように略平行に配されたレバー部31とを備えている。基板部32の略中央には、リベットR挿通用の丸孔34が開設されている。この丸孔34の外側(レバー部31間)にリベットRのカシメ部R2が配される。
【0034】
基板部32は、レバー部31を上下に配した状態(ロック状態)における丸孔34の前後のそれぞれに、すくなくとも取付部10側の面が凹み、前後方向にやや長く形成されたロック凹部33を備えている。なお
図1の例では、ロック凹部33は貫通孔により構成されている。
【0035】
樋支持具本体20の本体部21、取付部10及びロックレバー30の基板部32は、本体部21の2つの長孔22、取付部10の丸孔15、基板部32の丸孔34にリベットRが挿通されて連結されている。
【0036】
ロックレバー30はリベットRの軸を中心とした縦回転が可能とされており、
図1、
図2(a)に示すようにレバー部31が上下に配された状態では、樋支持具本体20と取付部10との前後の相対的なスライド移動がロックされており、
図2(b)に示すようにロックレバー30(基板部32)が取付部10の膨出部11間に配された状態では、樋支持具本体20と取付部10とはアンロック状態にあり、前後の相対的なスライド移動が自在とされている。
【0037】
ついで、スライド移動のロック/アンロックについて
図2の概略的側面図及び
図3の概略的横断面図を参照しながら説明する。
図2(a)及び
図3(a)はロック状態にあるときの図であり、
図2(b)及び
図3(b)はアンロック状態にあるときの図である。
【0038】
ロックレバー30を操作して
図2(b)の状態から、基板部32が膨出部11に乗り上げ、ロック凹部33が膨出部11に対し十字状に重なるように回転させて
図2(a)の状態に移行させた場合には、圧接力により取付部10が樋支持具本体20側に相対的に押圧され、取付部10の突出部13は上下それぞれの連続凹凸部23の凹部23aに嵌まり込んで係止される。そうすることで、樋支持具本体20、取付部材5及びロックレバー30の3部材は相互に固定された状態となり、突出部13が凹部23aに係止されることでスライド移動が規制されてロック状態となる。
【0039】
なお、ロックレバー30を回転操作してロック凹部33の近傍部が膨出部11に乗り上げ、膨出部11の中央のへそ部12がロック凹部の中央位置に相対移動した(へそ部12が基板部32の圧接より外れた)際には、へそ部12とロック凹部33との嵌合(へそ部12と基板部32との圧接解除)により、手指にカチッとした感触が得られる。その結果、作業者は適切な位置で操作を止めることができる。
【0040】
また、このようなロック状態となった際には、本体部21の連続凹凸部23が形成されていない面では、他の長孔22Aの周囲が梨地面とされているためリベットRの頭部R1の他の長孔22Aによるずれは抑制される。なお、ずれの発生を抑制するために、リベットRの長さを短くして頭部R1を
図3(a)の2点鎖線で示すように長孔22の裏面位置に配するようにしてもよい。この場合には、非連結面を構成する、他の長孔22Aを有する横板は設けなくてもよい。
【0041】
こうして、樋支持具本体20は取付部10に対して適切な前後位置で固定され、これにより軒樋50は適切な出具合位置に吊り支持される。
【0042】
また、ロック状態では、取付部10に設けたバネ片14は本体部21に押圧されて平板状に近づくように弾性変形し、樋支持具本体20側に付勢力が作用することで取付部10とロックレバー30との圧接力が強化され、その結果、3部材の固定関係は強化される。なお、バネ片14の弾性復帰力は、突出部13が凹部23aから抜けない程度(スライド移動のロックが解除されない程度)であることは言うまでもない。
【0043】
つぎに、ロック状態を解除してアンロック状態とするには、ロックレバー30をさらに縦回転させて、ロックレバー30の基板部32を
図2(b)及び
図3(b)のように膨出部11間に配するようにすればよい。このとき、樋支持具本体20と、取付部10と、ロックレバー30とは緩んだ状態となり、相互の固定が解除される。また、このときには、突出部13の突出程度が弾性復帰したバネ片14の突出程度と同じか、あるいは小さいので、突出部13は凹部23aから外れた状態が維持されて、本体部21と取付部10の相対的なスライド移動は自在となる。
【0044】
このようなアンロック状態のときに、スライド移動により樋支持具本体20の前後位置を調整することができる。この状態では、3つの部材が横方向(略水平方向)に並んでいるため、手指がいずれかの部材に触れたり、風が吹いたりして取付部10と本体部21とが接するように相接近するが、取付部10にはバネ片14が形成されているため、突出部13が凹部23aに嵌まり込まない程度の離隔距離Lが確保され、その結果、スライド移動をスムーズに行うことができる。
【0045】
また、アンロック状態では、樋支持具本体20はリベットRの軸を中心として縦回転するおそれがあるため、スライド操作をする際には、取付部10が本体部21に設けたガイド部24の上面に接触するように樋支持具本体20を維持することが望ましい。つまり、ガイド部24はその上に取付部10が載ることで、樋支持具本体20の回転止めとなり得るとともに、樋支持具本体20のスライド移動用のガイドともなり得る。なお、ガイド部24は本体部21の上端部に設けてもよい。
【0046】
このような突条形状のガイド部24に代えて、第2のスライド軸を装着できる、
図4に示すような第2の長孔24Aを設けてもよい。
図4に示すように、第2の長孔(ガイド部)24は長孔22に平行に設けてあり、第2の長孔24Aの高さ位置に合うように、取付部10の本体部21を向く面には第2のスライド軸として凸部16が設けてある。
【0047】
リベットRの軸は長孔22に挿通され、かつ凸部16は第2の長孔24Aに挿通された状態となるため、アンロック状態で樋支持具本体20が回転することが抑制される。なお、凸部16を複数箇所に設けてもよい。
【0048】
以上に説明した軒樋支持具1によれば、樋支持具本体20の前後位置調整、つまり軒樋50の出具合調整をロックレバー30の操作により簡単に行うことができる。特に、ロックレバー30が樋支持具本体20の横方向(側方)に配されているため、軒樋50が取り付けられた状態でも操作がしやすく、軒樋50の取り付け後の微調整や、屋根の葺き替え後の調整を軒樋50を取り外すことなく実施することができる。
図1の軒樋支持具1を用いれば、作業者は軒樋50の上端よりも上方でロックレバー30の操作を行うことができる。
【0049】
また、この軒樋支持具1によれば、取付部材5は添設部6が取付部10の側方に配されるように取り付けされるため、固定部材4の軒先壁面への固定具による打ち付けの際に取付部10が邪魔になりにくく、取り付けをしやすくできる。軒樋50の施工後には、添設部6や固定部材4は軒樋50によりおおむね隠されるため、美観は担保される。特に
図1の例では、添設部6が横向きに延びているので、添設部6や固定部材は軒樋50の前方の下方位置からはほとんど見えない。
【0050】
ついで、第2実施形態に係る軒樋支持具1Aについて、
図5の模式的分解斜視図を参照しながら説明する。
【0051】
この軒樋支持具1Aでは、第1実施形態において取付部10に設けた突出部13及びバネ片14が、取付部10ではなく、別部材の座金部材40に設けてある。座金部材40は
図5に示すように略矩形状の板材とされ、樋支持具本体20の本体部21と取付部10との間に配せられている。
【0052】
座金部材40には、リベットRが挿通する丸孔43と、その丸孔43の前後位置に設けた2つの突出部41と、上下2箇所ずつに設けた4つのバネ片42とを備えている。なお、突出部41及びバネ片42は切り起こしにより形成されている。
【0053】
本実施形態に係る軒樋支持具1Aによれば、第1実施形態のものと同様、ロックレバー30が樋支持具本体20の側方に配されているため、軒樋50の取り付け後の樋支持具本体20の前後位置調整がしやすくなるという効果が奏される。
【0054】
また、突出部41及びバネ片42が取付部10とは別体の座金部材40に形成されているため、取付部10に多くの切り起こし孔を形成しなくてもよく、孔形成による取付部材5の強度の低下を防止でき、取付部10に吊り支持のための強度を持たせることができる。
【0055】
また、座金部材40は軒樋支持具1Aとして組み立てる前に、取付部10に丸孔43の位置を合わせて溶接などで固着させておいてもよい。そうすることで座金部材40を取付部10と一体化させることができ、取付部10に一体化された座金部材40の下端面をガイド部24の上面に接触させておくことで、アンロック状態での樋支持具本体20の縦回転を抑止することができる。
【0056】
なお座金部材40は、軒樋50や樋支持具本体20を吊り支持するために十分な強度を必要とする取付部材5よりも薄めの板材で形成してもよい。薄めの材料で形成することで、加工がしやすくなり、突出部41及びバネ片42の突出程度の調整もしやすくなる。
【0057】
ついで、第3実施形態に係る軒樋支持具1Bについて、
図6の模式的分解斜視図を参照しながら説明する。
【0058】
この軒樋支持具1Bは、建築構造物に固定される取付部10と、取付部10に対してスライド移動可能に連結された、軒樋50を吊り支持する樋支持具本体20と、取付部10に対向し、縦方向に回動されるロックレバー30とを備え、これらを重ねて横方向に貫通する固定具Rで連結し、樋支持具本体20が取付部10に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした支持具である。
【0059】
この軒樋支持具1Bは、ロックレバー30の回転操作により、取付部10に対する樋支持具本体20のスライド移動のロック/アンロックの切り替えが自在とされている。取付部10は樋支持具本体20の横方向の一方側に配され、ロックレバー30は樋支持具本体20の横方向の他方側に配され、ロックレバー30と樋支持具本体20との間に座金部材40が配されている。座金部材40及びロックレバー30のうちいずれか一方の部材は、他方の部材に対向する面に他方の部材側に突出する膨出部44を有している。
【0060】
樋支持具本体20は、前後方向に延び横方向に貫通する長孔22と、長孔22に沿うように連続的に配された連続凹凸部23とを横方向の一方側の面に備えている。座金部材40は、樋支持具本体20に向けて突出している突出部41を備えている。
【0061】
ロックレバー30のロック操作がされたときには、ロックレバー30と座金部材40とが膨出部44を介して圧接状態となることで突出部41が連続凹凸部23に係止される一方、ロックレバー30のアンロック操作がされたときには、ロックレバー30と座金部材40との圧接状態が解除されて突出部41の係止が解除されるようになっている。
【0062】
図6の例では、膨出部44は座金部材40に設けられている。ロックレバー30の基板部32には、膨出部44に対応するようにロック凹部33が設けてある。座金部材40はさらに、
図5に示した座金部材40と同様、リベットR挿通用の丸孔43、突出部41及びバネ片42を備えている。また、ロックレバー30は
図1、
図5に示したロックレバー30と略同一構成とされる。
【0063】
また、本実施形態では、ロック/アンロックの切り替えはロックレバー30と座金部材40とがおもに担っており、樋支持具本体20のロックレバー30配設側とは反対側に配された他の取付部材5Aの取付部10には丸孔15を介してリベットRが挿通されているだけで、ロック/アンロックに関わる各部(膨出部44、突出部41、バネ片42)は設けられていない。
【0064】
樋支持具本体20は、
図1、
図5に示したものと略同一構成とされるが、ガイド部24は取付部10配設側の面に形成されている。
図6の例では、ガイド部24は突条形状のもので、本体部21の上端部に形成されている。また、本体部21のロックレバー30配設側の面には、座金部材40の縦回転を規制する第2ガイド部25が形成されている。
【0065】
本実施形態に係る軒樋支持具1Bによれば、第1実施形態のものと同様、ロックレバー30が樋支持具本体20の側方に配されているため、軒樋50の取り付け後の樋支持具本体20の前後位置調整がしやすくなる。
【0066】
また、本実施形態のものは、取付部材5(取付部10)、樋支持具本体20(本体部21)、座金部材40及びロックレバー30がこの順に並べられて、丸孔15、34を有する部材が両端に配されているため、ロック状態のときにリベットRの前後のずれが発生しにくい。
【0067】
なお、第1、第2実施形態に係る軒樋支持具1、1Aは、ロック状態であっても、リベットRの頭部R1が樋支持具本体20の他の長孔22Aに沿ってずれが発生するおそれがあるため梨地などの滑り止めを設けてずれ防止対策をとっている。
【0068】
ずれ防止対策としては、長孔22や他の長孔22Aを、リベットRの軸径よりもやや大きい径の丸孔を一部が重なるように連続させて形成した開口を設けてもよい。スライド移動はしにくくなり、かつ微調整はしにくくなるが、端部(リベットRの頭部R1)側でのずれは起こりにくい。滑り止めと併用してもよい。
【0069】
さらに、第1、第2実施形態に係る軒樋支持具1、1Aにおいて、より確実に頭部R1側のずれの防止を図るために、
図7(a)のように、樋支持具本体20の取付部10側とは反対側の面に隣接するように他の取付部材5Aを設けて、取付部材5、5A間で樋支持具本体20を挟み込むようにしてもよい。両端の部材が丸孔15を有する部材であるため、リベットRの頭部R1やカシメ部R2が前後にずれ動くおそれはない。
【0070】
また、以上の実施形態では、取付部材5の添設部6が横向き(横方向に長い形状)とされているが、
図7(b)に示した取付部材5Bは添設部6が縦長形状とされ、その添設部6を、左右に跨るような固定部材4で固定する構成としてもよい。固定部材4の取り付け作業を下方位置でできるので、安全である。
【0071】
また、第1、第2実施形態では膨出部11は取付部10に設けてあり、ロック凹部33がロックレバー30の基板部32に設けてあるが、ロックレバー30に膨出部11を設け、取付部10にロック凹部33を設けたものであってもよい。同様に、第3実施形態では膨出部44は座金部材40に設けてあり、ロック凹部33がロックレバー30の基板部32に設けてあるが、ロックレバー30に膨出部44を設け、座金部材40にロック凹部33を設けたものであってもよい。
【0072】
また以上の実施形態では、ロック凹部33を有する構成であるが、膨出部11、44への他方の部材の乗り上げで圧接状態となれば相互の固定関係が成り立つので、ロック凹部33がないものであってもよい。よってその場合は膨出部11、44には、へそ部12、45の必要はよい。
【符号の説明】
【0073】
1、1A 軒樋支持具
1B 軒樋支持具
4 固定部材
5、5A 取付部材
6 添設部
10、10A 取付部
11 膨出部
12 へそ部
13 突出部
14 バネ片
15 丸孔
16 凸部
20 樋支持具本体
21 本体部
22 長孔
22A 他の長孔
23 連続凹凸部
23a 凹部
24 ガイド部
24A ガイド部(第2の長孔)
25 第2ガイド部
27 前耳係止部
28 後ろ耳係止部
28a バネ板片
29 脚部
30 ロックレバー
31 レバー部
32 基板部
33 ロック凹部
34 丸孔
R 固定具(リベット)
R1
40 座金部材
41 突出部
42 バネ片
43 丸孔
44 膨出部
45 へそ部
50 軒樋
51 前耳
52 後ろ耳