(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029616
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】人体形状判定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20240228BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01S17/89
G01V3/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131968
(22)【出願日】2022-08-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】591212132
【氏名又は名称】美藤 均
(72)【発明者】
【氏名】美藤 均
【テーマコード(参考)】
2G105
5J084
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH01
5J084AA13
5J084AB07
5J084BA11
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】被介護者の離床および転倒を検出する装置を提供する。
【解決手段】床上に設置した反射体までの水平距離と単位掃引角θごとに加算していく掃引角を連続回転測定できるレーダースキャナーに於いて、
無人の部屋の単位掃引角θごとに測定した距離を掃引角ごとの最大距離とし、
時間経過後に掃引角の距離が最大距離より短くなった場合は人体の検出とし、
人体の検出部の掃引角については、距離にtanθを乗じた値を部分長とし、
部分長を合計した合計部分長が、転倒か足かを判定する閾値より大きい場合は転倒とし、
合計部分長が閾値より小さい場合は足と判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に設置した反射体までの水平距離と単位掃引角θごとに加算していく掃引角を連続回転測定できるレーダースキャナーに於いて、
無人の部屋の単位掃引角θごとに測定した距離を掃引角ごとの最大距離とし、
時間経過後に掃引角の距離が最大距離より短くなった場合は人体の検出とし、
人体の検出部の掃引角については、距離にtanθを乗じた値を部分長とし、
部分長を合計した合計部分長が、転倒か足かを判定する閾値より大きい場合は転倒とし、
合計部分長が閾値より小さい場合は足と判定する論理を特徴とする人体形状判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の人体形状判定方法であって、
人体の出現部の掃引角の中心角度を計算し、
中心角度が時間経過で変化する事で人体の移動を判断する事を特徴とする人体形状判定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の人体形状判定方法であって、レーダースキャナーを離床位置に近いベッドの下に設置した事を特徴とする人体形状判定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の人体形状判定方法であって、新たに出現した人体の最小距離がベッド横と判断される閾値(概ね1m)より大きい場合は、室外から介護者の入室と判断し、人体が検出されなくなるまで、離床と転倒の判断を停止する事を特徴とする人体形状判定方法。
【請求項5】
請求項4記載の人体形状判定方法であって、ベッド横に新たに出現した人体が、
その後ベッド横から移動し、人体が検出できなくなった場合は退室後に徘徊したと判定する事を特徴とする人体形状判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内の被介護者の動向を見守り、転倒や離床などの危機的状況を検出する。
【背景技術】
【0002】
高齢者人口の増加と介護者の減少のため介護者の負担は益々増加して行く傾向があり、情報化技術を活用して介護者の負担の軽減を図り、介護品質を高めることができる製品が求められている。
【0003】
介護施設において非介護者が室内で転倒し、骨折や出血があった場合は迅速に手当をしないと大事になる恐れがある。
また夜間に被介護者がベッドから離床した場合は転倒や徘徊する可能性もある。転倒や徘徊のいずれの場合も介護者に迅速に知らせ適切な介助を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006-522956
【特許文献2】特開2022-72765
【特許文献3】特開2014-149731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は高所に設置したカメラの画像により直立か、床上に横たわっているかをは判断する方法である。
特許文献2は高所に設置したカメラの画像処理でベッド領域を抽出し、離床、転落および転倒といった行動を検知する方法である。
いずれの方法も画像を処理する方法であり、画像では距離的要素が加味されないため、発生した位置によっては誤判定となる場合がある。
また画像は被介護者のプライバシーを守るためのボカシ等の処理が必要となる。
特許文書3は高所に設置した3次元の赤外線レーザーとカメラの画像でベッド上の被介護者の体位を推察するシステムであって、特許文献1、2と同じように高所に機材を設置しなければいけない点や、画像と3次元の赤外線レーザーをするため複雑な機器構成となりシステム価格が高価となる問題点がある。
【0006】
上記の従来の技術ではカメラを使うため、カメラを高所に設置しなければいけない事や、プライバシーの確保保のためのボカシ等の加工処置などが必要となる事や、距離情報がない事で誤判定を生じる恐れがある等の問題点がある。
【0007】
本発明では、従来技術におけるこのような課題の解決を目的とするものであって、設置が簡単で非接触で部屋全体を監視し、転倒や離床を確実に検出できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
床上に設置した反射体までの水平距離と掃引角を連続回転測定できるレーダースキャナーに於いて、
無人の部屋の単位掃引角θごとに測定した距離を掃引角ごとの最大距離とし、
時間経過後に掃引角の距離が最大距離より短くなった場合は人体の検出とし、
人体の検出の掃引角については、距離にtanθを乗じた値を部分長とし、
部分長を合計した合計部分長が、転倒か足かを判断する閾値より大きい場合は転倒とし、
合計部分長が閾値より小さい場合は足と判断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は機材の設置が簡単でプライバシーも確保でき、被介護者の部屋の中での転倒や離床を正確に検出でき迅速な介助が可能となるため被介護者の安全性を高め、その上介護者の労働負担を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】部屋の中央付近で人体が転倒した場合のレーザースキャナーの掃引状況を表す平面図
【
図2】部屋の入口付近で人体が転倒した場合のレーザースキャナーの掃引状況を表す平面図
【
図3】部屋のベッド付近で足を検知した場合のレーザースキャナーの掃引状況を表す平面図
【
図4】部屋のベッドから離れた位置で足を検知した場合のレーザースキャナーの掃引状況を表す平面図
【
図5】無人の部屋のレーザースキャナーの掃引状況を表す平面図
【
図6】
図1から
図5までのレーダースキャナーの掃引角度と距離を集計し、人体と足を検出する計算表
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いるレーザースキャナーはLiDAR(Light Detection and Ranging)とも呼ばれ、レーザー光線を2次元で回転させ反射光が戻ってくる時間から掃引角度の距離を測定する。
【0012】
床上に設置した反射体までの水平距離を測定できるレーダースキャナーの掃引高さは、人体の手や足の一番細い部分は概ね5cm位であるため、人体が転倒した場合に全身をくまなく計測するためには床上5cm以下であることが望ましい。
また正確に5cm以下をスキャンするためにはレーダースキャナーの水平度は正確にする必要がある。
床上5cm以下で掃引するためレーザー光は目に入り難いが、レーザークラス1の本格的に安全なレベルのレーザースキャナーを使うことが望ましい。
【0013】
床上に設置した反射体までの水平距離と単位掃引角θごとに加算していく掃引角を連続回転測定できるレーダースキャナーに於いて、
無人の部屋の単位掃引角θごとに測定した距離を掃引角ごとの最大距離とし、
時間経過後に掃引角の距離が最大距離より短くなった場合は人体の検出とし、
人体の検出部の掃引角については、距離にtanθを乗じた値を部分長とし、
部分長を合計した合計部分長が、転倒か足かを判定する閾値より大きい場合は転倒とし、
合計部分長が閾値より小さい場合は足と判定する。
【0014】
人体の検出部の掃引角の中心角度を計算し、中心角度が時間経過で変化する事で人体の移動を判断する。
【0015】
レーダースキャナーを部屋の任意の位置に設置しても人体の転倒を検知する事は可能であるが、離床を検知する場合は距離と掃引角を設置場所に応じた値を指定しなければいけないが、レーダースキャナーを離床位置に近いベッドの下に設置した場合は掃引角と距離の指定が不要となる。
【0016】
新たに出現した人体の最小距離がベッド横と判断される閾値(概ね1m)より大きい場合は、
室外から介護者の入室と判断し、介護者が退室したと判断されるまで、
即ち人体が検出されなくなるまで、離床と転倒の判断を停止する。
【0017】
ベッド横で新たに出現した人体が、その後ベッド横から移動し、人体が検出できなくなった場合は退室後に徘徊したと判断する。
【実施例0018】
図5は無人の部屋のレーザースキャナー1の掃引状況を表す平面図であり、放射状に広がる線はレーザースキャナー1と反射物との掃引角と距離2を表し、部屋の壁以外の反射物はベッド足3と家具4がある。ベッドは
図1から
図5には、描かれていないが4個のベッド足3の上に存在する。
実施例のレーザースキャナー1は連続的に基準角度0度から反時計回りに単位掃引角θ(5度)毎に部屋を連続的に掃引するが、人体5の形状をより正確に把握するには単位掃引角θは小さい方が良い。
無人の部屋の掃引角ごとの距離は最大距離とし、
図6の
図5列の最大距離列に記載し、
図1から
図4までの実施例で最大距離として共有する。
【0019】
図1は部屋の中央付近で人体5が転倒した場合のレーザースキャナー1の掃引状況を表す平面図であり、放射状に広がる線はレーザースキャナー1と反射物との掃引角と距離2を表す。
人体5を検知した掃引角の距離、部分長(距離に単位掃引角θのtanθを乗じた値)、掃引角は、
図6の
図1列の距離列、部分長列、掃引角列に記載する。
【0020】
図2は部屋の入口付近で人体5が転倒した場合のレーザースキャナー1の掃引状況を表す平面図であり、放射状に広がる線はレーザースキャナー1と反射物との掃引角と距離2を表す。
人体5を検知した掃引角の距離、部分長(距離に単位掃引角θのtanθを乗じた値)、掃引角は、
図6の
図2列の距離列、部分長列、掃引角列に記載する。
【0021】
図3は部屋のベッド付近で足6を検知した場合のレーザースキャナー1の掃引状況を表す平面図であり、放射状に広がる線はレーザースキャナー1と反射物との掃引角と距離2を表す。
人体5を検知した掃引角の距離、部分長(距離に単位掃引角θのtanθを乗じた値)、掃引角は、
図6の
図3列の距離列、部分長列、掃引角列に記載する。
【0022】
図4は部屋のベッドから離れた位置で足6を検知した場合のレーザースキャナー1の掃引状況を表す平面図であり、放射状に広がる線はレーザースキャナー1と反射物との掃引角と距離2を表す。
人体5を検知した掃引角の距離、部分長(距離に単位掃引角θのtanθを乗じた値)、掃引角は、
図6の
図4列の距離列、部分長列、掃引角列に記載する。
【0023】
図6は
図1から
図5までのデーターを表にまとめたものである。ただし
図6の走査角度105度から345度までの最大値は実施例で人体5の検出に影響がないので省略する。
表の最下段には
図1から
図4までの最小距離、部分長合計、中心角を記載している。
最小距離はレーザースキャナー1から人体5の一番近い距離を算出し、その距離がベッド近傍かそれともベッドから離れた位置かを判断するために用いる。
人体5が最初に出現した位置がベッド近傍であれば、非介護者がベッドから離床や転落をしたと判断し、ベッド近傍でない場合は介護者が入り口から入ってきたものと判断し、介護者が退去するまでは、被介護者の転倒と離床の検出を停止する事で、離床や転倒の誤検知を防止する事が出来る。
レーザースキャナー1で検出した人体5の部分長合計が、転倒した人体5の長さと足6の長さと判別する閾値より大きい場合は転倒と判断し、小さい場合は足6と判断する。
図1と
図2の転倒の場合の部分長合計は約70cmで
図3と
図4の足6の場合の部分長は約40cmで明確な違いが出ている。転倒と足6の判断する閾値は50cmであれば、確実に転倒と足6を判断することが出来る。
角度は集合の中心の角度を算定し、この角度が時間と共に変化する場合は人体5が移動していることが判断できる。