(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029621
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】複合体及び複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20240228BHJP
C08J 9/16 20060101ALI20240228BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20240228BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B32B5/24 101
C08J9/16 CFD
D06N7/00
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131977
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
【テーマコード(参考)】
4F055
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA11
4F055BA12
4F055CA05
4F055FA24
4F055FA37
4F055FA38
4F055GA19
4F055GA26
4F055HA15
4F074AA65
4F074BB25
4F074BB28
4F074CA32
4F074CA49
4F074CC04Y
4F074CC06X
4F074CC10Y
4F074CC22X
4F074CE02
4F074CE26
4F074CE56
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA20
4F074DA24
4F074DA54
4F100AK41A
4F100AL05A
4F100AL09A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA01A
4F100CA02A
4F100CA30A
4F100DG15B
4F100DJ01A
4F100EC03
4F100EJ08A
4F100EJ53A
4F100JA06A
4F100JB16A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】発泡体層の発泡性が良好な複合体及び複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】複合体10は、電子線架橋による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーの発泡体層20と、不織布を有する不織布層30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線架橋による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーの発泡体層と、
不織布を有する不織布層と、
を備える、複合体。
【請求項2】
前記発泡体層が、前記不織布層に融着している、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記発泡体層は、さらに鎖延長剤、架橋剤、及び架橋助剤のうちの少なくとも一つを含む架橋樹脂組成物から得られる、請求項1又は請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記発泡体層のゲル分率が1%以上80%以下である、請求項1又は請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
発泡剤を除いた架橋樹脂組成物をせん断速度122sec-1で測定した200℃における溶融粘度が、500Pa・s以上7500Pa・s以下である、請求項1又は請求項2に記載の複合体。
【請求項6】
発泡体層と、前記発泡体層の表面に形成された不織布層と、を備える複合体の製造方法であって、
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と発泡剤とを含む原料を混練りして原料組成物を得る工程と、
前記原料組成物を架橋して架橋樹脂組成物とする工程と、
不織布を成形用型の内面に沿わせる形態で配置し、前記成形用型の内部で前記架橋樹脂組成物を前記不織布と接触するように発泡させることで、前記発泡体層及び前記不織布層を形成する工程と、を有する、複合体の製造方法。
【請求項7】
前記原料組成物を電子線照射にて架橋して前記架橋樹脂組成物とする、請求項6に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合体及び複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される表皮材は、発泡シート層と、接着剤層と、真皮層と、を備えている。発泡シート層と真皮層は、接着剤層によって貼り合わされている。発泡シート層は、熱可塑性エラストマーを原料に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような複合体において、発泡体層の発泡性が良好な構成が求められている。
本開示は、発泡体層の発泡性が良好な複合体及び複合体の製造方法を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕電子線架橋による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーの発泡体層と、
不織布を有する不織布層と、
を備える、複合体。
【0006】
〔2〕発泡体層と、前記発泡体層の表面に形成された不織布層と、を備える複合体の製造方法であって、
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と発泡剤とを含む原料を混練りして原料組成物を得る工程と、
前記原料組成物を架橋して架橋樹脂組成物とする工程と、
不織布を成形用型の内面に沿わせる形態で配置し、前記成形用型の内部で前記架橋樹脂組成物を前記不織布と接触するように発泡させることで、前記発泡体層及び前記不織布層を形成する工程と、を有する、複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発泡体層の発泡性が良好な複合体及び複合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】成形用型内に架橋樹脂組成物を配置する工程を説明する説明図である。
【
図3】成形用型に対して不織布を配置する工程を説明する説明図である。
【
図4】成形用型内で架橋樹脂組成物を発泡させる工程を説明する説明図である。
【
図5】
図1の複合体とは異なる構成の複合体の断面図である。
【
図6】発泡体層と不織布層との接着状態を調べる方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔3〕前記発泡体層が、前記不織布層に融着している、複合体。
〔4〕前記発泡体層は、さらに鎖延長剤、架橋剤、及び架橋助剤のうちの少なくとも一つを含む架橋樹脂組成物から得られる、複合体。
〔5〕前記発泡体層のゲル分率が1%以上80%以下である、複合体。
〔6〕発泡剤を除いた架橋樹脂組成物をせん断速度122sec-1で測定した200℃における溶融粘度が、500Pa・s以上7500Pa・s以下である、複合体。
〔7〕前記原料組成物を電子線照射にて架橋して前記架橋樹脂組成物とする、複合体の製造方法。
【0010】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0011】
1.複合体10
図1は、本開示の一実施形態に係る複合体10の断面図である。本実施形態の複合体10は、発泡体層20と、不織布層(表皮材)30と、を備えている。発泡体層20は、電子線架橋による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)の発泡体層である。不織布層30は、不織布を有する。例えば、複合体10は、発泡体層20と不織布層30との積層体である。
【0012】
2.発泡体層20
発泡体層20は、熱可塑性ポリエステルエラストマーの発泡体層(樹脂発泡体層)である。発泡体層20は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と、鎖延長剤と、架橋助剤と、発泡剤と、必要に応じその他の成分を含む架橋樹脂組成物から得られることが好ましい。
【0013】
(1)発泡体層20の原料
(1.1)TPEE
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、本開示では特に限定されない。TPEEは、一般的には、ハードセグメントとソフトセグメントを有するものである。ハードセグメントとしては、TPEEポリマー分子中のポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステル部分の構造が挙げられる。ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類のポリエーテルを有する構造、ポリカプロラクトンやポリブチレンアジペート等の非晶性のポリエステル等の構造が挙げられる。
【0014】
(1.2)その他の成分
発泡体層20の原料は、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、充填剤(炭酸カルシウム等)、酸化防止剤、発泡助剤、顔料、可塑剤、機能付与剤(例えば、難燃剤)、添加剤等を含んでいてもよい。
【0015】
発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好適である。発泡助剤として、例えば、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩、尿素及びその誘導体等を挙げることができる。発泡助剤は、これらを単独または複数種類組み合わせて使用することができる。
【0016】
また、発泡体層20の原料は、本開示の効果が著しく阻害されない範囲において、上述したポリマー以外の改質剤などのポリマーを含有していてもよい。
【0017】
(2)発泡体層20の構成
(2.1)架橋構造
発泡体層20には、架橋構造が形成されている。発泡体層20がシート状の場合には、発泡体層20における表層部又は発泡体層20の全体に架橋構造が形成されている。発泡体層20は、後述する原料組成物を得る工程A、電子線を照射して架橋樹脂組成物を得る工程Bの後に、複合体を得る工程Cにおいて、加熱等により発泡させて得られる。工程Bにおいて、電子線を照射して架橋構造を形成することが好ましい。このとき、工程Aで得られた原料組成物がシート状の場合には、そのシートの少なくとも一方の面、好ましくは両面に電子線が照射され、シートの少なくとも一方の面、好ましくは両面が照射面であることが好ましい。原料組成物のシートの厚さに応じた加速電圧で電子線を照射することで、複合体を得る工程Cにおいて、シートにおける表層部又はシート内部に適度な架橋構造が形成され、適切に発泡することができる。
【0018】
(2.2)ゲル分率
発泡体層20のゲル分率は、発泡時に気泡を破れにくくする観点から、1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましく、20%以上が特に好ましい。発泡体層20のゲル分率は、発泡体層20にワレや亀裂等を生じにくくする観点から、80%以下が好ましく、78%以下がより好ましく、76%以下が更に好ましく、74%以上が特に好ましい。これらの観点から、発泡体層20のゲル分率は、1%以上80%以下が好ましく、5%以上78%以下がより好ましく、10%以上76%以下が更に好ましく、20%以上74%以下が特に好ましい。
ここでいう発泡体層20のゲル分率は、JIS K 6796/ISO-15875-2:2003準拠(キシレン8h還流後、乾燥して測定)に基づいて測定できる。
【0019】
(2.3)密度
発泡体層20の密度は、成形性の観点から、30kg/m3以上が好ましい。発泡体層20の密度は、軽量性の観点から、200kg/m3以下が好ましく、150kg/m3以下がより好ましく、100kg/m3以下が更に好ましい。これらの観点から、発泡体層20の密度は、30kg/m3以上200kg/m3以下が好ましく、30kg/m3以上150kg/m3以下がより好ましく、30kg/m3以上100kg/m3以下が更に好ましい。発泡体層20の密度は、JIS K7222:2005に準じて測定される見掛け密度である。
【0020】
発泡前の組成物(架橋樹脂組成物)の密度は、1010kg/m3以上1300kg/m3以下が好ましい。
【0021】
(2.4)反発弾性率
発泡体層20の反発弾性率は、適度な反発力を確保する観点から、65%以上であることが好ましく、67%以上であることがより好ましく、69%以上であることが更に好ましい。
ここでいう発泡体層20の反発弾性率は、DIN53573に基づいて測定できる。
【0022】
(2.5)C硬度
発泡体層20の硬さは、アスカーC硬度計による測定で、25以上が好ましく、30以上がより好ましく、35以上が更に好ましい。
【0023】
(2.6)圧縮永久歪み
発泡体層20の圧縮永久歪み(C/S)は、適度な復元力を確保する観点から、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。
ここでいう発泡体層20の圧縮永久歪みは、以下のようにして測定できる。発泡体層20の元の厚さ(T1)を測定した後、発泡体層20を温度50℃の環境下で50%の状態に圧縮して厚さ(T2)を測定する。発泡体層20を圧縮した状態で6時間静置させた後、圧縮状態を解放し、30分後に発泡体層20の厚さ(T3)を測定する。発泡体層20の圧縮永久歪みは次の式(1)で算出される。
圧縮永久歪み(C/S)=[(T1-T3)/(T1-T2)]×100 (1)
【0024】
(2.7)溶融粘度
発泡剤を除いた組成物(架橋樹脂組成物)の溶融粘度は、200℃においてせん断速度122sec-1で測定する。ここで、組成物において発泡剤を配合したままであると、測定温度の200℃以下で熱分解により発泡されてしまうため、発泡剤を除いた組成物に対して溶融粘度を測定する。気泡を破れにくくする観点から、500Pa・s以上であることが好ましく、750Pa・s以上であることがより好ましく、1000Pa・s以上であることが更に好ましい。発泡体層20にワレや亀裂等を生じにくくする観点から、7500Pa・s以下であることが好ましく、7000Pa・s以下であることがより好ましく、6000Pa・s以下であることが更に好ましい。これらの観点から、発泡前の組成物(架橋樹脂組成物)の200℃においてせん断速度122sec-1で測定した溶融粘度は、500Pa・s以上7500Pa・s以下であることが好ましく、750Pa・s以上7000Pa・s以下であることがより好ましく、1000Pa・s以上6000Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度の測定方法は、JIS K7199-1999「プラスチックーキャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法」に従ってすることができる。
【0025】
3.不織布層30
不織布層30は、特に限定されない。不織布層30を構成する繊維は、合成繊維、再生繊維、半合成繊維、天然繊維であることが好ましい。不織布層30は、繊維で構成されているが、必ずしも不織布に限定されるものではなく、繊維の織物、編物もしくはこれらの複合品である繊維層や表皮であってもよい。
【0026】
合成繊維として、例えば、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリイミド系繊維、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリスチレン系繊維、アイオノマー、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0027】
ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維等が挙げられる。
ポリオレフィン系繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
ポリアミド系繊維としては、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維等が挙げられる。
【0028】
再生繊維として、例えば、セルロース系のレーヨン、精製セルロース繊維系のリヨセル等を用いることができる。レーヨンとしては、ポリノジック、ビスコース、キュプラ等が挙げられる。
【0029】
半合成繊維として、例えば、セルロース系のアセテート、たんぱく質系のプロミックス等を用いることができる。
【0030】
天然繊維として、例えば、綿、麻等の植物繊維、絹、獣毛(例えば、羊毛)等の動物繊維等を用いることができる。
【0031】
不織布層30は、以上の繊維のうちで、ポリエステル系繊維、特にポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を用いることが好ましい。
【0032】
不織布層30は、スパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ、スパンレース等の各製法が好ましく用いられ、ニードルパンチ不織布であることがより好ましい。
【0033】
不織布層30の目付量は、10g/m2以上500g/m2以下が好ましく、20g/m2以上400g/m2以下が好ましく、30g/m2以上300g/m2以下が更に好ましく、40g/m2以上250g/m2以下が特に好ましい。
【0034】
不織布層30を構成する繊維の繊維径は、1μm以上50μmが好ましく、5μm以上40μmが好ましく、10μm以上30μmが更に好ましい。
【0035】
4.複合体10の特徴
複合体10では、発泡体層20が不織布層30に融着していることが好ましい。発泡体層20が、不織布層30の表面の凹凸に追従して融着していることが好ましい。発泡体層20の樹脂が、不織布層30を構成する繊維の周辺に追従して融着していることが好ましい。そのため、アンカー効果により、不織布層30に対する発泡体層20の密着性を向上できる。
【0036】
5.複合体10の製造方法
複合体10の製造方法は、発泡体層20と、発泡体層20の表面に形成された不織布層30と、を形成する。複合体10の製造方法は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂と発泡剤とを含む原料を混練りして原料組成物を得る工程と、混練りして得た原料組成物を架橋して架橋樹脂組成物とする工程と、不織布を成形用型の内面に沿わせる形態で配置し、成形用型の内部で架橋樹脂組成物を不織布と接触するように発泡させることで、発泡体層20及び不織布層30を形成する工程と、を有する。
【0037】
複合体10の製造方法は、例えば、以下の工程A-Cを含む。
工程A:TPEE、発泡剤、及び架橋助剤、並びに必要に応じて配合されるその他添加剤(鎖延長剤等)を加熱ニーダー、二軸押出機等で溶融混練して原料組成物を得る工程
工程B:工程Aで得た原料組成物に電子線を照射して、架橋して架橋樹脂組成物を得る工程
工程C:不織布を成形用型の内面に沿わせる形態で配置し、成形用型内に工程Bで得た架橋樹脂組成物をシート状、ペレット状等の所定形状にして配置し、成形用型の内部で架橋樹脂組成物を不織布と接触するように加熱して発泡させることで、発泡体層20及び不織布層30を形成し、複合体10を得る工程
【0038】
工程Bにおいて、工程Aで得た原料組成物がシート状である場合には、少なくとも一方の面から、好ましくは両面側から電子線を少なくとも1回ずつ照射すればよい。電子線の吸収線量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、1kGy以上90kGy以下が好ましく、3kGy以上80kGy以下がより好ましい。加速電圧は、発泡前のシート厚みに応じて調整する。電子線の照射による架橋の進行は、組成物の組成に影響されるため、通常はゲル分率(架橋度)を測定しながら照射量を調整する。
【0039】
架橋樹脂組成物を成形用型内で発泡させる際に、架橋樹脂組成物の融点よりも高い温度(例えば200℃)で加熱して発泡成形する。
【0040】
工程Cにおいて、不織布を成形用型の内面に沿わせる形態には、成形用型の内面に離型シート等の他の部材を介して不織布を配置する形態等も含まれる。
【0041】
工程Cによって、成形用型を用いて発泡体層20と不織布層30とを一体成形することができる。
【0042】
なお、上記製造工程以外にも、不織布を成形用型内の底面に配置し、不織布の上に架橋樹脂組成物を配置して発泡成形してもよい。また、成形用型内において、不織布を厚み方向の両側から架橋樹脂組成物に挟まれるように配置し、発泡成形してもよい。
【0043】
6.本実施形態の効果
本実施形態の複合体10は、発泡体層20の発泡性が良好である。
発泡体層20は、軽量であり、高反発であり、低圧縮永久歪であり、安価であり、低密度である。複合体10は、このような発泡体層20と、不織布層30との一体成形品である。
複合体10では、発泡体層20が不織布層30に融着する構成であるため、発泡体層20と不織布層30との貼り合わせに接着剤を用いる必要がない。そのため、複合体10の製造工程において、接着剤を用いた接着工程を行う必要がない。そして、発泡体層20と不織布層30とを貼り合わせる際に、接着剤が不織布層30の表面に滲出する懸念が生じない。
【0044】
7.コーティング層70を備える構成
複合体10は、
図5に示すように、コーティング層70を備えていてもよい。
図5では、コーティング層70は、発泡体層20と不織布層30との間に設けられている。コーティング層70は、アクリル系樹脂であることが好ましい。コーティング層70の密度は、10g/mL以上100g/mL以下が好ましく、20g/mL以上90g/mL以下が好ましく、30g/mL以上80g/mL以下が更に好ましい。
【実施例0045】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0046】
1.複合体の作製
表1に示す配合割合で、実施例及び比較例の複合体を作製した。表1における発泡体層の原料の詳細、表皮材(不織布層、コーティング層)の材料の詳細を以下に示す。表1において、配合割合はTPEEを100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。
【0047】
【0048】
(1)発泡体層の原料
・TPEE:ポリエステルエラストマー樹脂
190℃ 2.16kg荷重におけるMFR:10cm3/10min(ISO1133)、DUROMETER D硬度35(ASTM D2240)、融点156℃(ISO 3146)、密度1150kg/m3(ISO3146)、ビカット軟化点(ASTM D1525)77℃
・発泡剤:UNIFOAM AZ ULTRA#3245-I(大塚化学社製)
・架橋助剤:TAICROS(登録商標)-M(エボニックデグサ社製)
・鎖延長剤:エポキシ変性アクリル共重合体、重量平均分子量12000、エポキシ当量170g/eq、ガラス転移温度47℃
【0049】
(2)不織布層及びコーティング層に用いる材料
・不織布1:目付量190g/m2のポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布
・不織布2:目付量50g/m2のポリエステル繊維からなるスパンボンド不織布
・コーティング層:密度50g/mLのアクリル系樹脂
【0050】
(3)実施例及び比較例の複合体の作製
各複合体は、具体的には以下のように作製した。
(3.1)実施例1
表1に記載の配合割合でTPEEに対して鎖延長剤、架橋助剤及び発泡剤を添加して原料を得た。発泡剤の添加量は、TPEEの100質量部に対して、6.48質量部とした。
原料の架橋及び発泡は、実施形態の「6.複合体の製造方法」に記載の方法で行った。原料を加熱ニーダーで混錬して原料組成物を得た後、厚さ2mmのシート状にしてから、電子線照射装置(加速電圧:550kV、吸収線量:30kGy)による両面照射によって架橋して架橋樹脂組成物を得た。架橋樹脂組成物をペレタイザーでペレタイズした後、100mm×150mm×10mmの金型40(成形用型、
図4参照)内に入れた。
図2-
図4は、実施例1の複合体(複合体10)の製造工程を説明する説明図である。
図3に示すように、金型40は、枠部42と、下プレス部44と、上プレス部46と、を備えている。枠部42は、上下に開放された環状の枠である。下プレス部44及び上プレス部46は、板状である。
図2に示すように、枠部42と下プレス部44との間に、離型PETフィルム48を設けた。ペレタイズした架橋原料組成物50を、枠部42内で離型PETフィルム48上に配置した。
図3に示すように、表皮材として不織布60を枠部42の上側の開口を塞ぐように配置した。実施例1では、不織布1を用いた。不織布60上に離型PETフィルム48を介して上プレス部46を配置し、金型40を閉じた。これにより、不織布60が、金型40の内面(上プレス部46の下面)に沿わせる形態(具体的には、接する形態)で配置される。金型40を、空間がある状態で、200℃で8分間加熱し、
図4に示すように、架橋原料組成物50を発泡と共に成形した。その後、水冷により金型40を冷却した後、金型40を開けることで、発泡体層20と不織布層30が一体となった複合体10を得た。発泡体層20は、金型40内のキャビティ容積が満たされた100mm×150mm×10mmの形状(金型40と同じ形状)になった。
【0051】
(3.2)実施例2
実施例2では、発泡体層と不織布層との間にコーティング層を設けた点、不織布2を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で複合体を作製した。
【0052】
(3.3)比較例1
電子線架橋を行っていない点以外は、実施例1と同様の方法で複合体を作製した。
【0053】
(3.4)比較例2
電子線照射時の吸収線量を100kGyとした点以外は、実施例1と同様の方法で複合体を作製した。
【0054】
(3.5)比較例3
原料に鎖延長剤及び架橋助剤を用いていない点以外は、比較例1と同様の方法で複合体を作製した。
【0055】
2.評価方法
(1)複合体の接着性の評価
(1.1)最大剥離強度
実施例1,2、比較例1-3では、
図6に示す試験装置を用いて、不織布層を引き剥がす際の剥離強度を調べた。発泡体層20の下面を試験板80に接着剤で貼り付け、不織布層30をチャック90で固定し、オートグラフで引っ張った。オートグラフで引っ張ったところ、いずれの場合も層間の剥離よりも先に発泡体層が破壊された。そのため、表1に示す最大剥離強度の値は、発泡体層の材破が生じる際に計測された応力の値としている。このように層間の剥離よりも先に発泡体層が破壊されているので、実際の剥離強度は、表1に示す値以上の大きさと推定される。
表1中の「破壊モード」の欄の「材破」は、発泡体層に破断、割れ等が生じる状態を表す。
【0056】
(1.2)不織布層への滲み出し
発泡体層の不織布層への滲み出しの有無を、目視により確認した。
【0057】
(1.3)接着性の評価
発泡体層と表皮材との接着性評価は、以下の基準とした。
A :最大剥離強度の試験で材破が生じ、かつ発泡体層の不織布層への滲み出しがない。
B :最大剥離強度の試験で材破が生じない、又は発泡体層の不織布層への滲み出しがある。
【0058】
(2)発泡体層の評価
(2.1)発泡性・外観
発泡性及び外観の評価は、以下の基準とした。外観は、目視により確認した。
A :型に対して同程度の寸法まで膨らんでおり、外観が良好である。
B :未発泡、又は外観が不良である。
【0059】
(2.2)発泡前密度、発泡後密度
発泡前密度(kg/m3)、及び発泡後密度(kg/m3)は、JIS K6268(ISO-2781)に準じて測定した。
【0060】
(2.3)反発弾性率
反発弾性率(%)は、DIN53573に準じて測定した。
【0061】
(2.4)C硬度
C硬度は、JIS K7312に準じて23±2℃で測定した。
【0062】
(2.5)圧縮永久歪み
発泡体層の圧縮永久歪み(C/S)は、以下のようにして測定した。発泡体層の元の厚さ(T1)を測定した後、発泡体層を温度50℃の環境下で50%の状態に圧縮して厚さ(T2)を測定した。発泡体層を圧縮した状態で6時間静置させた後、圧縮状態を開放し、30分後に発泡体層の厚さ(T3)を測定した。発泡体層の圧縮永久歪みは次の式(1)で算出した。
圧縮永久歪み(C/S)=[(T1-T3)/(T1-T2)]×100 (1)
【0063】
(2.6)溶融粘度
溶融粘度の測定は、表1に記載の配合から発泡剤を除いた組成物(架橋樹脂組成物)に対して行った。溶融粘度は、200℃の測定温度下で、キャピログラフを用い、せん断速度122sec-1で測定した。
【0064】
(2.7)ゲル分率
ゲル分率は、JIS K 6796に準じて測定した。
【0065】
3.結果
結果を表1に併記する。
実施例1,2では、発泡性及び外観が良好である発泡体層が得られた。比較例1-3では、破泡が生じ、発泡が不良であった。比較例1,3では、原料組成物を電子線架橋することなく発泡工程を行っているため、発泡が不良であったと考えられる。比較例2では、電子線架橋時の吸収線量が大きすぎたため、発泡が不良であったと考えられる。これにより、比較例1-3では、表皮材との一体成形品を作製できなかった。
実施例1では、最大剥離強度の測定試験において、発泡体層と不織布層との間で剥離が生じず、発泡体層が破損した。実施例1では、発泡体層と表皮材との接着状態を、接着剤を用いることなく良好にできた。実施例2では、最大剥離強度の測定試験において、発泡体層とコーティング層との間で剥離が生じず、発泡体層が破損した。実施例2では、発泡体層とコーティング層との接着状態を、接着剤を用いることなく良好にできた。
実施例1,2では、発泡体層として種々の用途に適用可能な密度であることが確認できた。
実施例1,2では、反発弾性が比較的高いことが確認できた。
実施例1,2では、圧縮永久歪みが60%に近く、発泡体の形状回復性に優れている。
【0066】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、発泡体層の発泡性が良好であり、発泡体層と不織布層との接着状態が良好な一体成形体(複合体)を提供できる。
【0067】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。